説明

薬用ポリウレタン発泡体

【課題】薬剤の徐放性が大きく、低コストの薬用ポリウレタン発泡体を提供する。
【解決手段】創傷接触層として使用するのに適したポリウレタン発泡体を形成する方法であって、0.5〜1.2ミリ当量のNCO基/gを含有する、イソシアネートでキャップされたプレポリマー1重量部を、C1〜C3一価アルコール0.05〜0.4重量部の存在下、水0.4〜1.0重量部と混合して発泡生成物を形成する工程と、前記発泡生成物を治療薬の分散系で処理する工程と、前記の処理済み発泡生成物を乾燥させる工程とを包含する、方法である。さらに、本発明の方法によって得られる薬用ポリウレタン発泡体と、そのような発泡体を有する創傷包帯とを提供する。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
本発明は、薬用ポリウレタン発泡体に関し、さらに詳しくは、薬用ポリウレタン発泡体を製造する方法に関する。本発明は、そのような発泡体(foam)で形成された、創傷接触層(wound-contacting layer)を有する創傷包帯にも関する。
【0002】
ポリウレタン発泡体は、多数の医薬用途として提案されてきた。該発泡体は、特定のジイソシアネート(diisocyanates)またはイソシアネートでキャップされたプレポリマー(isocyanatecapped prepolymers)を、アミンおよび/またはアルコールの複数の官能価(functionality)を有する適切な鎖延長化合物(chain extending compounds)と反応させることによって製造される。その反応混合物の中に、モノアミンまたは一価アルコールのような反応停止化合物(chain terminating compounds)を含有させることができる。反応混合物の中に水を含有させることができる。なぜなら、水はイソシアネートと反応して、該混合物を発泡させるための二酸化炭素を遊離させるからである。
【0003】
米国特許第4339550号明細書には、約2〜約8の官能価を有する、イソシアネートでキャップされたポリエーテルプレポリマーと、水と、化学的に相溶性で、本質的に非極性の揮発性有機化合物との「インサイツ(in situ)」反応によって製造される親水性発泡体組成物(hydrophilic foam composition)が開示されている。その発泡体は、その発泡構造体からの、揮発性物質の持続的かつ制御された放出を達成することができると述べられている。適切な「制御放出(control release)」成分には、プロピレングリコールおよびグリセリンのようなポリオールが包含される。
【0004】
欧州特許第0541391号明細書には、創傷接触層として使用するのに適したポリウレタン発泡体を形成する方法であって、0.5〜1.2ミリ当量のNCO基/gという比較的低いイソシアネート含有量を有する、イソシアネートでキャップされたプレポリマー1重量部を、C1〜C3一価アルコール0.05〜0.4重量部の存在下、水0.4〜1.0重量部と混合し、次いで、該生成物を乾燥させることを包含する方法が記述されている。比較的少量の水を使用することによって、初期粘度が遥かに高い初期反応混合物が生成される。したがって、イソシアネート末端基の加水分解によって形成される二酸化炭素は、取り込まれて、発泡ヒドロゲルを生成する。創傷接触層として使用されるためには、スルファジアジン銀(silver sulfadiazine)、ポビドンヨード(povidone iodine)、酢酸クロルヘキシジン(chlorhexidine acetate)およびグルコン酸クロルヘキシジン(chlorhexidine gluconate)のような局所用薬剤および消毒薬(antiseptics)だけでなく、ポリペプチド成長因子および酵素のような治療に有用な他の添加剤をも、発泡性混合物を製造するのに使用される1種以上の前記諸成分の中に含有させることができる。
【0005】
米国特許第5833665号明細書には、薬用多糖類材料であって、該多糖類は、イソシアネートプレポリマーで処理されることによって架橋されており、しかも、該架橋多糖類は次いで、治療薬の溶液で処理され、次いで、乾燥された、薬用多糖類材料が記述されている。該多糖類によって、治療薬のための、生分解性の徐放性マトリックスが提供される。活性剤のための、架橋タンパク質マトリックスを用いた類似材料は、米国特許第5002769号明細書に記述されている。しかし、架橋生体高分子に基づくこれらの材料は、比較的高価であり、かつ、他の欠点を有することがある。
【0006】
創傷接触層として使用するのに適したポリウレタン発泡体を形成する方法であって、0.5〜1.2ミリ当量のNCO基/gを含有する、イソシアネートでキャップされた(isocyanate-capped)プレポリマー1重量部を、C1〜C3一価アルコール0.05〜0.4重量部の存在下、水0.4〜1.0重量部と混合して発泡生成物を形成する工程と、前記発泡生成物を治療薬の分散系(dispersion)で処理する工程と、前記の処理済み発泡生成物を乾燥させる工程とを包含する、方法が、本発明によって提供される。
【0007】
薬剤の分散系で後処理することによって薬剤を含まされたこの特殊タイプのポリウレタン発泡体は、発泡性ポリウレタン反応混合物の中に薬剤を組み入れることによって薬剤を含まされたポリウレタン発泡体の徐放挙動(sustained release behaviour)よりも優れた徐放挙動を示すことが、意外にも見出だされた。本発明によって製造された生成物は、多糖類またはタンパク質のマトリックスを含有する従来技術の組成物を用いて達成された生成物に匹敵する徐放挙動を示すが、コストがより低い。
【0008】
前記ポリウレタン発泡体は、該発泡体を形成する工程の後、治療薬で処理される。即ち、該治療薬は、前記ポリウレタン反応混合物を構成する1種以上の前記諸成分の中に組み入れられない。代わりに、該発泡体は、該発泡体が形成された後、治療薬の分散系(即ち、懸濁液または適切な溶媒の溶液)で処理され、また、ポリウレタン硬化反応は、好ましくはイソシアネート基の実質的に全てが反応した後、実質的に完成される。幾つかの具体例において、発泡体は、治療薬で処理される工程の前に、残存する水およびアルコールを除去するために乾燥することができる。
【0009】
本発明の方法によって製造された発泡体は典型的には、少なくとも0.28g/cm3、好ましくは少なくとも0.30g/cm3の密度を有する。とりわけ好ましい発泡体は、0.32〜0.48g/cm3の範囲の密度、例えば約0.35g/cm3の密度を有する。
【0010】
本発明の方法によって製造された発泡体はまた、好ましくは少なくとも150%、さらに好ましくは少なくとも300%の破断点伸び(elongation at break)を有する。本発明の方法によるとりわけ好ましい発泡体はまた、500〜2000%の範囲の破断点伸びを有する。
【0011】
本発明によって得ることのできる発泡体は好ましくは、多糖類またはポリペプチドのような生体高分子(biopolymers)を含有しない。幾つかの具体例において、本発明によって得ることのできる発泡体は本質的に、ポリウレタン、治療薬、および任意の可塑剤(plasticisers)から本質的に成る。
【0012】
本発明の方法によって生成された発泡体は、他の添加剤の割合に左右されるが、少なくとも3g/g、好ましくは少なくとも5g/g、さらに好ましくは8〜20g/gの生理食塩水吸収度を有する。該発泡体は、このように、吸収性が高く、さらに、なじみ易い(conformable)。
【0013】
本発明の方法によって生成された発泡体は、水が吸収されるとき、膨潤性および膨張性をさらに有する。このことは、創傷接触層においてとりわけ好都合である。なぜなら、該発泡体が膨潤することによって、該発泡体は、創傷床(wound bed)の内側に向かって移動し、このようにして、創腔(wound cavity)が充填されるからである。このことによって、創傷が基部(base)から上および外に向かって回復するのが促進され、それによって、創傷床が肉芽組織で充填されてしまう前に、創傷表面上に上皮が形成されるのが阻害される。
【0014】
本発明の方法によって製造された発泡体が水性媒体で完全に飽和されたときの膨潤度は典型的には、(体積増加に換算して)少なくとも100%であり、好ましくは少なくとも200%である。好ましい発泡体は、400〜800%だけ膨潤する。しかし、本発明の発泡体は、膨潤度がこのように大きいにもかかわらず、多量の水を吸収した後でさえ、それら発泡体の無欠性(integrity)を保持する。本発明の発泡体の気泡(cells)は典型的には、0.1〜0.6mmの範囲の平均直径を有する。
【0015】
本発明の方法で使用される前記プレポリマーは、エチレンオキシ/プロピレンオキシ共重合体等の、イソシアネートでキャップされたポリエーテルであるのが好ましい。とりわけ適切なプレポリマーは、ハイポール・ヒドロゲル(HYPOL Hydrogel)なる商標で入手することのできるものである。
【0016】
本発明は、C1〜C3一価アルコールとしてメタノール、エタノールまたはプロパノールのいずれかを使用することを包含するが、メタノールを使用することが、とりわけ好ましい。3種のアルコールは全て、前記のイソシアネートでキャップされたプレポリマーと水との間の反応の速度を減少させるが、メタノールの効果はいっそう著しい。様々な成分を混合すること、および、該反応混合物を、硬化のために適切な厚さの層に広げることを容易にするために、該反応速度の減少は望ましい。
【0017】
本発明の方法において、生成物に所望の特性を与えるために、前記反応混合物に他の諸成分を添加することができることは、容易に理解されるであろう。とりわけ、少ない割合(例えば、湿潤組成物30重量%以下)のゴムを含有させることは好ましい。該ゴムは天然のものであっても、合成されたものであってもよい。これは、前記ポリウレタンの硬化時間を長くする効果があり、しかも、伸展性(extensibility)、強度および粘性(tack)を増大させる。最も重要なことであるが、それによって、乾燥時における該ゲルの収縮が減少し、しかも、それによって、気泡の形成が改善され、より一定のより小さい気泡が生じる。
【0018】
前記ゴムは、ラテックス(latex)(即ち、水性媒体中の懸濁液またはエマルジョン)の形態で添加するのが好ましい。該ラテックスは通常、40〜70重量%、例えば50〜60重量%の固形分を含有する。創傷接触層として前記発泡体を使用する場合、ゴムは、当然、医薬品を受け入れることができなければならない。アクリルベースのゴムは、とりわけ好ましい。これらは、ラテックスの形態(例えば、ローム・アンド・ハース社(Rohm & Haas company)によって製造される、PRIMAL N-582およびRHOPLEX N-560)で市販されている。
【0019】
前記反応混合物に、メタノールまたはエタノールの他に、他のアルコール、および、とりわけポリオールを含有させて、より軟質で、よりなじみ易い発泡体を生成することができる。例えば、Levagelなる商標で、バイエル社 (Bayer AG)によって販売されているポリオールを使用することができる。しかし、発泡反応の後、そのようなアルコールの痕跡量は、自由形態で残留し易く、しかも、これらの痕跡量は、加熱するだけで発泡体から除去することは困難であることがある。したがって、発泡体が、創傷接触層として使用される予定である場合、沸点がより高いアルコールを使用することは回避することが好ましい。なぜなら、創傷包帯を使用している間、そのようなアルコールが発泡体から浸出される恐れがあるからである。本発明の発泡体は、創傷包帯として使用されるか、または創傷包帯中で使用される場合、水溶性アルコールを好ましくは1重量%未満で、さらに好ましくは0.1重量%未満で含有する。本発明の発泡体は、水溶性アルコールを本質的に含有しないこと(例えば、0.01重量%未満)が、とりわけ好ましい。
【0020】
本発明に基づき薬剤の分散系で処理するのにとりわけ適しているのは、ジョンソン・エンド・ジョンソン・メディカル社(Johnson & Johnson Medical Ltd.)から、TIELLEなる登録商標で入手することのできるポリウレタン発泡体である。
【0021】
前記治療薬(薬剤)は、抗菌薬または巨大分子、例えば、成長因子、抗菌性物質、鎮痙薬、もしくは他のいずれかの活性な生物学的生体活性剤[例えば、エフェドリン(ephedrine)、デソキシエフェドリン(desoxyephedrine)、フェニレフリン(phenylephrine)、エピネフリン(epinephrine))等のアドレナリン作動薬(adrenergic agents))、フィゾスチグミン(physostigmine)、ネオスチグミン(neostigmine)等のコリン作動薬(cholinergic agents)、アトロピン(atropine)、メタンテリン(methantheline)、パパベリン(papaverine)等の鎮痙薬(antispasmodic agents)、フルフェナジン(fluphenazine)、クロルプロマジン(chlorpromazine)、トリフルプロマジン(triflupromazine)、メフェネシン(mephenesin)、メプロバメート(meprobamate)等の鎮静剤(tranquilizers)および筋弛緩剤(muscle relaxants)、アミトリプチリン(amitriptyline)、ノルトリプチリン(nortriptyline)等の抗鬱薬(antidepressants)、ジフェンヒドラミン(diphenhydramine)、ジメンヒドリネート(dimenhydrinate)、トリペレナミン(tripelennamine)、ペルフェナジン(perphenazine)、クロルプロフェナジン(chlorprophenazine)、クロルプロフェンピラジミン(chlorprophenpyradimine)等の抗ヒスタミン剤(antihistamines)、ラウオルフィア(rauwolfia)、レセルピン(reserpine)等の血圧降下剤(hyptotensive agents)、ベンドロフルメチアジド(bendroflumethiazide)、フルメチアジド(flumethiazide)、クロロチアジド(chlorothiazide)、アミノトラート(aminotrate)、プロプラノロール(propranolol)、ナドロール(nadolol)、プロカインアミド(procainamide)等の心臓作用薬(cardioactive agents)、カプトプリル(captopril)、エナラプリル(enalapril)等のアンギオテンシン変換酵素阻害薬(angiotensin converting enzyme inhibitors)、テオフィリン(theophylline)等の気管支拡張薬(bronchodialators)、テストステロン(testosterone)、プレドニソロン(prednisolone)等のステロイド(steroids)、抗菌剤(antibacterial agents)(例えば、スルファジアジン(sulfadiazine)、スルファメラジン(sulfamerazine)、スルファメタジン(sulfamethazine)、スルフィソキサゾール(sulfisoxazole)等のスルホンアミド(sulfonamides))、クロロキン(chloroquine)等の抗マラリア薬(antimalarials)、テトラサイクリン(tetracyclines)、ニスタチン(nystatin)、ストレプトマイシン(streptomycin)、セフラジン(cephradine)、および他のセファロスポリン(cephalosporins)、ペニシリン(penicillin)、半合成ペニシリン(semi-synthetic penicillins)、グリセオフルビン(griseofulvin)等の抗生物質(antibiotics)、抱水クロラール(chloral hydrate)、フェノバルビタール(phenobarbital)および他のバルビツール酸誘導体(barbiturates)、グルテチミド(glutethimide)等の鎮静剤(sedatives)、イソニアジド(isoniazid)等の抗結核薬(antitubercular agents)、アスピリン(aspirin)、アセトアミノフェン(acetaminophen)、フェニルブタゾン(phenylbutazone)、プロポキシフェン(propoxyphene)、メタドン(methadone)、メペリジン(meperidine)等の鎮痛剤(analgesics)]であってもよい。これらの物質は、遊離化合物(free compound)もしくは、例えば、酸付加塩(acid addition salt)、アルカリ金属塩等の塩基性塩のような、塩の形態で頻繁に使用される。単純な抗菌化合物が好ましく、とりわけ、銀塩、ポビドンヨード、カデキソマーヨード(cadexomer iodine)、トリクロサン(triclosan)、ポリヘキサメチレンビグアニド(polyhexamethylene biguanide)(PHMB)、クロルヘキシジン塩(chlorhexidine salts)(例えば、グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)(chlorhexidine gluconate))が好ましい。
【0022】
水等の適切な溶媒に、典型的には約0.01〜約20%w/v、例えば約0.1〜約10%w/vの濃度で溶解しているかまたは懸濁している治療薬は、典型的には、浸漬によってポリウレタン発泡体と接触させる。浸漬のための適切な温度は、約0℃〜約80℃、例えば約5℃〜約50℃である。その後、該溶媒から前記発泡体を除去する。該発泡体は、空気もしくは他の雰囲気(atmosphere)の中で、例えば約20℃〜約80℃の温度で乾燥させるか、または、凍結乾燥することができる。結果として得られる材料は、(例えば、ガンマ線によって)殺菌することが好ましい。
【0023】
発泡体の治療薬充填量は、該発泡体によって吸収される溶液の重量に基づいて容易に決定することができる。クロルヘキシジン塩、ポビドンヨードまたはトリクロサン(triclosan)のような抗菌薬の適切な充填量は、発泡体の乾燥重量を基準として、約0.1重量%〜約10重量%、例えば約0.5重量%〜約5重量%である。
【0024】
充填されたポリウレタン発泡体を形成するための好ましい方法において、治療薬を水に適切な濃度で、典型的には約1〜10重量%で溶解し、次いで、前記スポンジをその中に、周囲温度(約20〜25℃)で約10〜約300分間、浸漬する。
【0025】
本発明は、第2の面において、本発明の方法によって得ることのできる薬用ポリウレタン発泡体を提供する。
【0026】
本発明は、更なる面において、本発明の方法によって得ることのできる薬用ポリウレタン発泡体を有する創傷包帯をも提供する。
【0027】
創傷包帯中の薬用ポリウレタン発泡体は、シートの形態であるのが適切であり、例えば、約1cm2〜約200cm2の面積のシートであり、非圧縮時の厚さは約1mm〜約5mmであるのが好都合である。該薬用ポリウレタン発泡体は、創傷包帯の創傷接触層を形成することができることが好ましいが、該創傷接触層は、創傷表面と流体交換(fluid exchange)することのできるいかなる層であってもよいであろう。
【0028】
本発明の創傷包帯は、吸収層および/または裏当て層(backing layer)をさらに有するのが好ましい。上記記載から明らかなように、吸収層は、例えば、薬用ポリウレタン発泡体の創傷接触層と裏当て層との間に配置することができる。任意の吸収層の面積は、典型的には、1cm2〜200cm2、さらに好ましくは4cm2〜100cm2の範囲である。
【0029】
前記の任意の吸収層は、創傷治癒技術において、創傷液(wound fluids)、漿液または血液を吸収するために一般に使用される、ガーゼ、不織布、高吸収材、ヒドロゲル、およびそれらの混合物を包含する諸材料のいずれかを有することができる。吸収層は、例えば、不織繊維網(nonwoven fibrous web)、例えば、ビスコース短繊維の梳毛網(carded web)であってもよい。吸収層の坪量は、50〜500g/m2、例えば100〜400g/m2の範囲であってもよい。吸収層の非圧縮時の厚さは、0.5mm〜10mm、例えば1mm〜4mmの範囲であってもよい。生理食塩水で測定された自由(非圧縮)液吸収度は、25℃で5〜30g/gの範囲であってもよい。該ビスコース網(viscose web)は、高吸収性繊維、例えば、OASIS(登録商標)として知られている製品を組み込むことができる。
【0030】
前記創傷包帯は、薬用ポリウレタン発泡体を覆う裏当て層と、該包帯の、創傷に面する側と背中合わせの側の任意の吸収層とをさらに有することが好ましい。裏当て層は、微生物が該包帯を通過することに対する障壁(barrier)を提供するのが好ましく、さらに、創傷液が該包帯から漏れるのを阻止することが好ましい。薬用ポリウレタン発泡体および任意の吸収層の少なくとも一方の端部を越えて広がって、前記端部に隣接する、粘着剤塗布縁(adhesive-coated margin)であって、該包帯を表面に(例えば、処置されている創傷に隣接する、患者の皮膚に)粘着させるための粘着剤塗布縁を、裏当て層に提供することができる。粘着剤塗布縁は、該包帯がいわゆる島様包帯(island dressing)となるように、薬用ポリウレタン発泡体および任意の吸収層の全ての辺の周りに広げることができる。しかし、全ての粘着剤塗布縁がその状態である必要はない。
【0031】
前記裏当て層は、実質的に液体不浸透性であることが好ましい。該裏当てシートは、半透性であることが好ましい。即ち、該裏当てシートは好ましくは、水蒸気に対しては透過性であるが、液体水または創傷滲出液に対しては透過性でない。該裏当てシートはまた、微生物不透過性であることが好ましい。連続的でなじみ易い適切な裏当てシートは、37.5℃で100%〜10%の相対湿度差で、該裏当てシートのみで300〜5000g/m2/24時間、好ましくは500〜2000g/m2/24時間の透湿度(MVTR)を有することが好ましい。該裏当てシートの厚さは、好ましくは10〜1000μm、さらに好ましくは100〜500μmの範囲である。
【0032】
前記裏当てシートを形成するための適切なポリマーには、ポリウレタン、ならびに、ポリアルコキシアルキルアクリレート(polyalkoxyalkyl acrylates)およびメタクリレート、例えば、英国特許第1280631号明細書に開示されているものが包含される。該裏当てシートは、主として独立気泡である高密度ブロックポリウレタン発泡体の連続層を有することが好ましい。適切な裏当てシート材料は、ESTANE5714Fなる登録商標で入手することのできるポリウレタン膜である。
【0033】
前記粘着剤層は(存在する場合)、水蒸気透過性であること、および/または、水蒸気が該粘着剤層を通過するようにパターン化されていることが望ましい。該粘着剤層は好ましくは、一般に島型(island-type)創傷包帯のために使用されているタイプの連続的蒸気透過性の感圧性粘着剤層であり、例えば、アクリル酸エステル共重合体、ポリビニルエチルエーテルおよびポリウレタンに基づく感圧性粘着剤であり、例えば英国特許第1280631号明細書に記述されているものである。該粘着剤層の坪量は、好ましくは20〜250g/m2、さらに好ましくは50〜150g/m2である。ポリウレタンベースの感圧性粘着剤が好ましい。
【0034】
前記粘着剤層は好ましくは、前記吸収層および前記薬用ポリウレタン発泡体から外に向かって広がって、従来の島様包帯の場合のように、吸収層の周辺の前記裏当てシート上に粘着剤塗布縁を形成する。
【0035】
本発明による創傷包帯は、無菌であり、微生物不透過性容器中に詰められる。
【0036】
次に、添付図面を参照し、例証として、本発明の具体例をさらに記述する。
【0037】
〔実施例1:ポリウレタン発泡体の製造〕
使い捨てカップに入れたHYPOLヒドロゲルプレポリマー(50g;NCO含有量0.5〜1.2ミリ当量/g)に、メタノール(6g)を添加し、次いで、数秒間、十分に混合した。次いで、水(44g)をそのHYPOL混合物に添加し、次いで、激しく撹拌した。その発泡性混合物は、剥離紙の上に注ぎ、次いで、2.2mmのギャップに設定されたステンレス鋼製の手動延展機(hand spreader)を用いて延展した。その発泡体は、放置して硬化させ、次いで、その発泡体シートと剥離紙とを、オーブンに80〜100℃で30分間置いて、水分を飛ばした。結果として得られた発泡体は、0.38g/cm3の密度と、930%の破断点伸びとを有し、生理食塩水10.7g/gを吸収することができた。
【0038】
前記発泡体は、冷却した後、前記剥離紙から取り上げ、次いで、グルコン酸クロルヘキシジン(chlorhexidine gluconate)の水溶液(10%w/v)の中に室温で30分間浸漬し、次いで、引き上げた。次いで、第1の試料は、80〜100℃で30分間、オーブン乾燥を行った。第2の試料は、送風凍結を行って−10℃にし、次いで、凍結乾燥を行った。
【0039】
市販のTIELLE(ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)の登録商標)ポリウレタン発泡体から、さらなる試料を製造した。
【0040】
〔実施例2:参考例〕
CHG(グルコン酸クロルヘキシジン)を含有させる異なる方法の効果を調べるために、前記発泡性混合物の水性成分の中にCHGを2%w/vで組み入れたこと以外、実施例1の方法に従った。水性CHGによる発泡体生成物の処理は行わなかった。
【0041】
〔方法1〕
発泡体の一断片を、周囲温度(20℃)で生理食塩水の貯蔵容器の中に入れ、該容器中の生理食塩水を毎日取り換えることによって、本発明の発泡体材料からのクロルヘキシジンの徐放性(sustained release)を調べた。該溶液中のCHG(グルコン酸クロルヘキシジン)濃度は、紫外線/可視分光光度計を用いて決定した。
【0042】
それらの結果を、図1に示す。水性CHGで後処理を行い、次いで、凍結乾燥(円形)またはオーブン乾燥(三角形)によって製造された薬用発泡体は、反応混合物の中にCHGを組み入れることによって製造された薬用発泡体(正方形)に比べて、CHGの徐放性がより大きいことが分かる。この結果は意外である。なぜなら、薬用ポリウレタン発泡体の反応混合物の中に活物質を組み入れることは、これまで一般的でなかったからである。
【0043】
上記の諸態様は、単なる例証として記述されてきた。他の多くの態様が付随の特許請求の範囲の中に含まれることは、当業者には明らかであろう。
【0044】
〔実施の態様〕
(1)創傷接触層として使用するのに適したポリウレタン発泡体を形成する方法において、
0.5〜1.2ミリ当量のNCO基/gを含有する、イソシアネートでキャップされたプレポリマー1重量部を、C1〜C3一価アルコール0.05〜0.4重量部の存在下、水0.4〜1.0重量部と混合して発泡生成物(foamed product)を形成する工程と、
前記発泡生成物を治療薬の分散系で処理する工程と、
処理済みの前記発泡生成物を乾燥させる工程と、
を包含する、方法。
(2)実施態様1記載の方法において、
前記一価アルコールがメタノールである、方法。
(3)実施態様1または2に記載の方法において、
前記イソシアネートでキャップされたプレポリマーは、イソシアネートでキャップされたポリエーテルプレポリマーである、方法。
(4)実施態様3記載の方法において、
前記イソシアネートでキャップされたポリエーテルプレポリマーが、イソシアネートでキャップされたエチレンオキシ/プロピレンオキシ共重合体である、方法。
(5)実施態様1〜4のいずれか1項に記載の方法において、
前記イソシアネートでキャップされたプレポリマー1重量部を、水0.6〜0.9重量部と混合する、方法。
(6)実施態様1〜5のいずれか1項に記載の方法において、
前記イソシアネートでキャップされたプレポリマー1重量部を、メタノール0.05〜0.25重量部またはエタノール0.1〜0.3重量部の存在下、水と混合する、方法。
(7)実施態様1〜6のいずれか1項に記載の方法において、
前記発泡生成物を治療薬の分散系で処理する前記工程の前に、前記ポリウレタン発泡生成物(polyurethane foamed product)を乾燥させる工程をさらに包含する、方法。
(8)実施態様1〜7のいずれか1項に記載の方法において、
前記発泡体を、1〜20重量%の濃度を有する前記治療薬の水溶液または懸濁液で処理し、次いで、乾燥または凍結乾燥を行う、方法。
(9)実施態様1〜8のいずれか1項に記載の方法によって得られる、薬用ポリウレタン発泡体。
(10)実施態様9記載の薬用ポリウレタン発泡体を含有する、創傷包帯。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明によって製造された2種類の材料(円形および三角形)と、ポリウレタン反応混合物の中にグルコン酸クロルヘキシジンを組み入れることによって製造された比較の発泡材料(正方形)とに関し、時間に対するグルコン酸クロルヘキシジンの測定放出量のグラフを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷接触層として使用するのに適したポリウレタン発泡体を形成する方法において、
0.5〜1.2ミリ当量のNCO基/gを含有する、イソシアネートでキャップされたプレポリマー1重量部を、C1〜C3一価アルコール0.05〜0.4重量部の存在下、水0.4〜1.0重量部と混合して発泡生成物を形成する工程と、
前記発泡生成物を治療薬の分散系で処理する工程と、
処理済みの前記発泡生成物を乾燥させる工程と、
を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
前記一価アルコールがメタノールである、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、
前記イソシアネートでキャップされたプレポリマーは、イソシアネートでキャップされたポリエーテルプレポリマーである、方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法において、
前記イソシアネートでキャップされたポリエーテルプレポリマーが、イソシアネートでキャップされたエチレンオキシ/プロピレンオキシ共重合体である、方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法において、
前記イソシアネートでキャップされたプレポリマー1重量部を、水0.6〜0.9重量部と混合する、方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法において、
前記イソシアネートでキャップされたプレポリマー1重量部を、メタノール0.05〜0.25重量部またはエタノール0.1〜0.3重量部の存在下、水と混合する、方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法において、
前記発泡生成物を治療薬の分散系で処理する前記工程の前に、前記ポリウレタン発泡生成物を乾燥させる工程をさらに包含する、方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法において、
前記発泡体を、1〜20重量%の濃度を有する前記治療薬の水溶液または懸濁液で処理し、次いで、乾燥または凍結乾燥を行う、方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法によって得られる、薬用ポリウレタン発泡体。
【請求項10】
請求項9記載の薬用ポリウレタン発泡体を含有する、創傷包帯。

【図1】
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【公表番号】特表2007−520614(P2007−520614A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551910(P2006−551910)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000359
【国際公開番号】WO2005/075001
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(591286579)エシコン・インコーポレイテッド (170)
【氏名又は名称原語表記】ETHICON, INCORPORATED
【Fターム(参考)】