説明

虚血性網膜組織の血行再建及びそのためのスクリーニング方法

本発明は、虚血性網膜組織の有益な生理学的血行再建を促進するための治療方法を提供する。本方法は、網膜血管の虚血に罹患する哺乳類へ、トリプトファン−tRNA合成酵素(TrpRS)の血管新生阻害断片の治療的有効量を投与し、これにより、網膜の損傷した領域の有益な生理学的血行再建を促進しながら、病理学的血管新生を同時に阻害することを含む。好ましい実施形態において、TrpRSの血管新生阻害断片は、T2−TrpRS又はT2−TrpRS−GDである。好ましくは、哺乳類は、網膜虚血に罹患するヒト患者である。網膜血管新生疾病を治療するための治療剤を同定及び評価するためのスクリーニング方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、網膜の血管新生疾患の治療に関する。より具体的には、本発明は、血管新生阻害タンパク質断片を患者へ投与することによって網膜の血行再建を促進するための方法、及び網膜の血管疾患を治療するための治療剤を同定するためのスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病性網膜症、滲出性加齢関連黄斑変性(ARMD)、未熟児網膜症(ROP)及び血管閉塞を含む網膜の血管系疾患は、視力障害及び失明の主な原因である。疾患のこの群は、病理学的な眼の血管新生を防止又は改変するのに役立つ新規の治療様式を同定することを目的とした集中的な研究の焦点である。例えば、ARMDは、65歳を超える1200万ないし1500万人のアメリカ人に罹患され、脈絡膜(網膜下)血管新生の直接的な効果として、彼らの10ないし15%に失明を引き起こす。65歳未満のアメリカ人における失明の原因として最も多いのは、糖尿病であり、1600万人のアメリカ人が糖尿病であり、年間40,000人が本疾病の眼の合併症(多くの場合、網膜血管新生の結果)に罹患している。レーザー光凝固は、ハイリスク糖尿病患者のサブグループの重度の失明を防止するのに効果的であるが、10年間全体の網膜症の発病率は実質的に変わらないままである。ARMD又は眼のヒストプラスマ症などの炎症性眼疾患による脈絡膜血管新生を有する患者に対して、光凝固は、少数の例を除き、失明を防止する上で効果的ではない。最近開発された非破壊性の光力学的療法は、すでに治療できない脈絡膜血管新生を生じている患者の個々の失明を一時的に軽減させるための見込みはあるものの、偽薬処置群の45.9%と比較して、3ないし4ヶ月ごとに治療を受けた患者の僅か61.4%が視力を改善したか又は安定化したに過ぎない。
【0003】
加齢関連黄斑変性及び糖尿病性網膜症は、先進国における失明の主原因であり、異常性網膜血管新生の結果として失明に至る。網膜は、ニューロン要素、グリア要素及び血管要素の明瞭な層からなるので、血管増殖又は浮腫においてみられるものなどの比較的小さな障害が視覚機能の有意な低下に至りうる。網膜色素変性症(RP)などの遺伝性網膜変性は、細動脈狭小化及び血管萎縮などの血管異常とも関連する。血管新生を促進及び阻害する因子を同定する上で有意な進歩を遂げてきたが、眼の血管疾患を特異的に治療するために現在利用可能な治療は存在しない。
【0004】
網膜の遺伝性変性には3500名に1名が罹患し、進行性夜盲、失明、視神経萎縮、細動脈減衰、血管透過性の変化及び完全な失明へとしばしば進行する視界の中心の喪失によって特徴付けられる(Heckenlively, J. R., editor, 1988; Retinitis Pigmentosa, Philadelphia: JB Lippincott Co.)。これらの疾患の分子遺伝学的分析によって、公知の罹患した個体の比較的わずかな割合を占めるに過ぎない110を超える異なる遺伝子中に突然変異が同定された(Humphries et al., 1992, Science 256:804−808; Farrar et al. 2002, EMBO J. 21: 857−864)。これらの突然変異の多くは、ロドプシン、cGMPホスホジエステラーゼ、rdsペリフェリン及びRPE65を含む光伝達機構の酵素的及び構造的要素と関連する。これらの観察にもかかわらず、これらの網膜変性疾患の進行を遅延させるか又は逆行させる効果的な治療は未だ存在しない。遺伝子治療における最新の進展によって、野生型導入遺伝子が特異的突然変異を有する動物の光受容体又は網膜色素上皮(RPE)へ送達されると、マウスのrds(Ali et al. 2000, Nat. Genet. 25:306−310)及びrd(Takahashi et al. 1999, J Virol. 73:7812−7816)の表現型及びイヌのRPE65表現型(Acland et al. 2001, Nat. Genet. 28:92−95)がうまく逆転するに至った。
【0005】
血管新生は、新たな血管が形成する過程である。特異的化学シグナルに応じて、既存の血管から毛細血管が出芽し、最終的に、生物体によって必要とされる大きさに成長する。まず、血管の内側を覆う内皮細胞は、既存の血管と直交する方向に分裂し、しっかりした出芽を形成する。空胞がそれ自体の端と端を接するように配向し、最終的に、合流して新たな血管の管腔を形成する(管形成)ように、隣接する内皮細胞はその後、大きな空胞を形成し、細胞が再編成する。
【0006】
血管新生は、傷害への応答など、多くの条件によって刺激され、哺乳類動物などの脊椎動物の全組織の成長に実質的に付随する。血管新生は、糖尿病性網膜症及び特定の癌などの特定の疾病状態においても役割を担う。例えば、腫瘍の増殖は、増殖している腫瘍組織へ酸素及び栄養物質を提供するために血管の増殖を必要する。
【0007】
血管新生は、血管新生過程を刺激する化学シグナルを妨げることによって、停止されるか又は阻害され得る。例えば、血管新生内皮細胞は、血管を取り囲む基底層を消化するプロテアーゼを産生し、したがって、新たな毛細血管のための通路を片付ける。これらのプロテアーゼ又はそれらの形成の阻害は、新たな血管が形成するのを防止できる。同様に、内皮細胞は、化学シグナルに応じて増殖する。特に重要な増殖シグナルには、タンパク質の血管内皮増殖因子(VEGF)及び線維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリーが含まれる。VEGFは、特定の腫瘍の血管新生に関与することが示されている。これらの増殖シグナル伝達過程の妨害も血管新生を阻害することができる。
【0008】
幾つもの因子が血管新生に関与する。酸性及び塩基性の両線維芽細胞増殖因子分子は内皮細胞及び他の細胞の種類のための分裂促進因子である。血管内皮細胞のための高度に選択的な分裂促進因子は、血管内皮増殖因子(VEGF)である。
【0009】
正常な成体において、血管新生は堅固に制御され、創傷治癒、妊娠及び子宮周期に限定される。血管新生は、塩基性及び酸性線維芽細胞増殖因子(FGF)、VEGF、アンジオゲニン、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)及び血小板由来増殖因子(PDGF)などの特異的血管新生分子によって惹起される。血管新生は、インターフェロン−α、トロンボスポンジン−1、アンジオスタチン及びエンドスタチンなどの阻害分子によって抑制できる。通常静止状態にある毛細血管を調節するのは、天然に存在するこれらの刺激剤及び阻害剤の均衡である。特定の疾病状態におけるように、この均衡が乱れる場合、毛細血管内皮細胞は増殖し、遊走し、及び最終的には分化するよう誘導される。
【0010】
血管新生は、癌及び眼の血管新生を含む多様な疾病において中心的な役割を担っている。多様な腫瘍の持続的な増殖及び転移も、腫瘍由来の血管新生因子に応じて新たな宿主血管が腫瘍へと増殖することに依存することも示されている。多様な刺激に応じた新たな血管の増殖は、増殖性糖尿病性網膜症、ARMD、血管新生緑内障、角膜実質炎及び未熟児の網膜症を含む眼の疾病及びそれによる盲人の大部分における最も有力な知見となっている。これらの疾病において、組織損傷は、毛細血管増殖をもたらす血管新生因子の放出を刺激できる。VEGFは、虹彩の血管新生及び血管新生網膜症において主要な役割を担う。報告は、眼内VEGFレベルと虚血性網膜症による眼の血管新生との間の相関を明確に示す一方で、FGFは、役割を担っている可能性がある。検出可能なレベルが血管新生と必ずしも相関していないが、塩基性及び酸性FGFは、正常成体網膜中に存在することが公知である。このことは、FGFが細胞外マトリクスの荷電した構成要素に極めて緊密に結合し、眼内液の標準的なアッセイによって検出される自由に拡散可能な形態で即座に利用可能ではないかもしれないという事実に大きく依存し得る。
【0011】
血管新生反応における最後の共通経路は、増殖性血管内皮細胞と細胞外マトリクスとの間のインテグリン仲介性情報交換を包含する。インテグリンと呼ばれる接着受容体のこのクラスは、全ての細胞上に、α及びβサブユニットを有するヘテロ二量体として発現されている。このようなインテグリンの一つであるαβは、このファミリーの最も乱雑なメンバーであり、内皮細胞が多様な細胞外マトリックス成分と相互作用できるようにする。このインテグリンのペプチド及び抗体アンタゴニストは、増殖性血管内皮細胞のアポトーシスを選択的に誘導することによって、血管新生を阻害する。血管新生の2つのサイトカイン依存性経路が存在し、異なる血管細胞インテグリンαβ及びαβに対するそれらの依存性によって定義され得る。各インテグリンの抗体アンタゴニストがウサギ角膜及びニワトリ絨毛尿膜(CAM)モデルにおけるこれらの血管新生経路の1つを選択的に遮断するので、具体的には、塩基性FGF誘導性及びVEGF誘導性血管新生は、それぞれ、インテグリンαβ及びαβに依存する。全てのαインテグリンを遮断するペプチドアンタゴニストは、FGF刺激性及びVEGF刺激性血管新生を阻害する。正常なヒトの眼血管は、何れのインテグリンも提示しないが、活発な血管新生癌疾患を有する患者から得た組織中の血管上には、αβ及びαβインテグリンが選択的に提示される。ARMD患者由来の組織では、αβのみが一貫して観察されたのに対して、増殖性糖尿病性網膜症患者由来の組織中には、αβ及びαβの両方が存在した。全身投与されたインテグリンのペプチドアンタゴニストは、網膜血管新生のマウスのモデルにおいて新たな血管形成を遮断した。
【0012】
網膜の血管新生疾患に対して使用可能性がある治療の検査は、子ネコ、ビーグル犬の子犬、ラット及びマウスを含む幾つかの動物種における酸素誘発性網膜症(OIR)のモデルの開発によって大きく促進されてきた。これらの各モデルにおいて、新生児動物を高酸素状態へ(又は高酸素状態及び低酸素状態へ交互に)曝露することは、網膜の血管の発達の退化又は遅延を刺激した後、それらの正常な酸素レベルへの復帰後に異常な血管新生が生じる。これらのモデルは、未熟児に影響し得る病理学的血管新生を伴う状態である未熟児網膜症(ROP)の間に生じる事象を反映する。
【0013】
ここ10年にわたり、OIRのマウスモデルは、酸素誘発性網膜症と関連した異常な血管新生を研究するための最も一般的なモデルとなった。このモデルの血管の異常パターンは、ROPにおいて観察されるものとは若干異なり、該マウスにおいて、中央後部網膜は、高酸素状態への曝露後に無血管になるのに対して、ヒトの幼児では、末梢が無血管である。それにもかかわらず、これは、低酸素誘発性網膜症の疾病の気候及び可能性のある治療を研究するための十分に受容されたモデルであり、血管の変化は非常に一致性があり、再現可能であり、及び定量可能である。近年、このモデルの使用は、虚血性血管病理及び関連する抗血管新生介入の一般的な研究まで拡張されており、今では、基礎及び応用研究の環境において広範囲に使用されている。
【0014】
マウスOIRモデルにおける増殖性血管新生反応を定量化するための歴史的に一般的な方法は、網膜から硝子体へと延びる新生血管と関連する細胞の数(「前内境界膜(ILM)核」)を計数することに基づいている。これは、矢状切片において、通常、視神経円板近くの(但し、視神経円板を含まない。)領域において実施される。該方法は、非常に大きな労働力を要し、時間がかかり、硝子体において異常な血管の細胞を硝子体血管の細胞と区別する必要性などの困難さをはらんでいる。一般に、30枚目ごとの切片のみが評価されるため、組織の大部分は、導入される可能性がある大きなサンプリングエラーを定量化されない。さらに、全眼が直ちに切片化されるので、このモデルの別の重要なパラメータ、すなわち、血管閉塞の程度及び、異常な血管新生房状分岐形成と同時に生じる網膜の血行再建の速度を、同一の眼で評価することができない。このパラメータは、網膜の全網膜包埋調製物において最良に評価される。
【0015】
したがって、網膜の血管新生性疾患を治療する改善された方法に対して、及び全網膜におけるこのような処置の治療効果を評価することに対して継続した需要が存在する。本発明の方法は、これらの需要を満たす。
【発明の開示】
【0016】
本発明は、虚血性網膜組織の生理学的血行再建を促進するための治療方法を提供する。本方法は、網膜虚血に罹患する哺乳類へ、トリプトファン−tRNA合成酵素(TrpRS)の血管新生阻害断片の治療的有効量を投与し、これにより、網膜の損傷した領域の有益な生理学的血行再建を促進しながら、網膜の病理学的血管新生を同時に阻害することを含む。好ましい実施形態において、TrpRSの血管新生阻害断片は、T2断片である。好ましくは、哺乳類は、網膜虚血に罹患しているヒト患者である。
【0017】
本発明の治療方法は、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症などの虚血性網膜症を含む虚血性及び血管新生性の眼疾患の治療に有用である。
【0018】
本発明の別の態様は、網膜の血管新生性疾病を治療するための治療剤候補の治療効能を同定及び評価するためのスクリーニング方法である。本方法は、新生児マウス、好ましくは約7日齢の新生児マウスを、網膜の血管系の測定可能な退化を誘導するのに十分な期間、好ましくは約5日間、高酸素状態へ曝露し、及びその後マウスを正常酸素状態へ復帰させることを含む。正常酸素状態への復帰後、次に、治療剤候補をマウスの眼へ投与する。好ましくは正常酸素状態への復帰の約5日後、治療された眼由来の完全な網膜を単離する。実質的に完全な網膜は、同一マウス又は時間の同一量にわたって高酸素状態の同一レベルへ曝露された同一齢のマウス由来の対照眼からも単離される。対照眼は、好ましくは、治療剤候補の代わりに、緩衝液又は塩類溶液を投与されている。治療される網膜及び対照網膜の血管は、迅速な同定及び可視化のために染色される。
【0019】
高酸素状態によって引き起こされた血管閉塞の領域及び正常酸素状態への復帰の際に形成する網膜前血管新生房状分岐の領域を可視化するために、実質的に完全な染色された網膜の顕微鏡画像が獲得される。次いで、高酸素条件によって引き起こされた血管閉塞の面積を評価するために、及び正常酸素状態への復帰の際に生じる病理学的血管新生の程度を評価するために、顕微鏡画像を分析する。治療剤候補の効能は、治療された眼と対照眼における血管閉塞の面積を比較することによって、及び治療された眼と対照眼における網膜前血管新生房状分岐の面積を比較することによって評価される。病理学的血管新生の程度は、対照眼に対する治療された眼の網膜前血管新生房状分岐を呈する網膜の面積によって証明される。網膜前血管新生房状分岐の面積の減少は血管新生阻害活性を示唆している。すなわち、薬剤が病理学的血管新生を阻害することを示唆している。血行再建の評価は、対照眼に対する治療された眼の血管閉塞面積を比較することによって実施される。対照に対する治療された眼の血管閉塞面積の減少は、治療剤が、損傷を受けた網膜の有益な生理学的血行再建を誘導することを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
虚血性網膜組織の有益な生理学的血行再建を促進するための方法は、網膜虚血を罹病している哺乳類へ、トリプトファン−tRNA合成酵素(TrpRS)の血管新生阻害断片の治療的有効量を投与し、これにより、網膜の損傷を受けた領域の生理学的血管新生を促進しながら病理学的血管新生を同時に阻害することを含む。好ましくは、TrpRS断片は、眼内への硝子体内注入によって投与される。
【0021】
TrpRSの好ましい血管新生阻害断片には、T2断片(T2−TrpRS;配列番号1、図6)、T2−TrpRSの突然変異体(T2−TrpRS−GD;配列番号2、図6)、ミニTrpRSとして公知の末端切断型TrpRS(配列番号3、図7)及びT1−TrpRS(配列番号4、図8)が含まれる。T2−TrpRS−GD(配列番号2)のアミノ酸残基配列では、2つのアミノ酸残基の置換(すなわちS121G及びY122D)が配列番号1と異なっている。より好ましくは、TrpRSの血管新生阻害断片は、T2断片である。
【0022】
本発明の別の態様は、網膜の血管新生性疾病を治療するための治療剤候補の治療効能を評価するためのスクリーニング方法である。本方法は、酸素誘導性網膜症のマウスモデルを利用して、マウスの眼の網膜症疾病状態をシミュレートする。本方法は、新生児マウス(好ましくは約7日齢)を、網膜の血管系の測定可能な退化を誘導するのに十分な期間、好ましくは約5日間、高酸素状態(例、75%酸素雰囲気)へ曝露し、その後マウスを正常酸素状態(すなわち、正常大気)へ復帰させることを含む。正常酸素状態への復帰後、次に、治療剤候補を各マウスの眼へ投与する。好ましくは、個々のマウスの一方の眼に治療薬を投与する一方、他方の眼に生理的食塩水又は緩衝液などの偽薬を対照として投与する。あるいは、幾つかのマウスを対照として利用できるのに対し、その他のマウスを治療剤候補で処理する。治療された又は対照マウス由来の完全な網膜を、好ましくは正常酸素状態への復帰の約5日後に単離し、迅速な同定のためにその血管を染色する。
【0023】
高酸素条件によって引き起こされた血管閉塞の面積を評価するために、及び正常酸素状態への復帰の際に生じる病理学的血管新生の程度を評価するために、実質的に完全な染色された網膜の顕微鏡画像が獲得及び分析される。治療剤候補の効果は、治療された眼と対照眼における血管閉塞の面積を比較することによって、及び/又は治療された眼と対照眼における網膜前血管新生房状分岐の面積を比較することによって評価される。
【0024】
網膜の血管新生性疾病を治療するための治療剤候補の治療効能を同定及び評価するための好ましいスクリーニング方法は、網膜の血管系の測定可能な退化を誘導するのに十分な期間にわたって、新生児マウスを高酸素状態へ曝露すること、及びマウスを正常酸素状態へ復帰させることを含む。次に、治療剤候補の溶液をマウスの眼へ投与する。最長約5日の期間の後、マウスを安楽死させ、治療剤候補を投与した眼から実質的に完全な網膜を摘出する。網膜の血管系を染色し、実質的に完全な染色された網膜について顕微鏡画像を作製し、網膜の血管系を可視化する。(a)染色された網膜中の観察可能な血管閉塞の面積及び(b)染色された網膜中の網膜前血管新生房状分岐の面積の少なくとも1つが画像から測定される。その後、(i)高酸素状態の同一条件へ曝露されるが、治療剤候補を投与されていないマウスの対照眼由来の染色された網膜中の観察可能な血管閉塞の面積と比較した、染色された網膜中の観察可能な血管閉塞の面積、及び(b)高酸素状態の同一条件へ曝露されるが、治療剤候補を投与されていないマウスの対照眼由来の染色された網膜中の網膜前血管房状分岐の面積と比較した、染色された網膜中の網膜前血管新生房状分岐の面積の少なくとも1つの比較がなされる。
【0025】
網膜血管新生性疾病を治療するための治療剤候補の治療効能を同定及び評価するための好ましいスクリーニング方法は、
約75%の酸素を含有する雰囲気へ7日齢新生児マウスを約5日間曝露すること(高酸素条件)、
正常空気の雰囲気(正常酸素状態)へマウスを復帰させること、
正常空気への復帰後、治療剤候補をマウスの眼へ投与すること、
前記マウスを安楽死させ、及び治療剤候補が投与された眼から実質的に完全な網膜を摘出すること、
治療剤候補が投与された眼の網膜の血管系を染色すること、
染色された実質的に完全な網膜の少なくとも1枚の顕微鏡画像を作製して、その血管系を可視化すること、
少なくとも1枚の画像由来の染色された網膜中の観察可能な血管閉塞の面積及び染色された網膜中の網膜前血管新生房状分岐の面積を測定すること、
染色された網膜中の観察可能な血管閉塞の面積を、同一の高酸素条件へ曝露されたマウスの、治療剤候補を投与されなかった対照眼由来の染色された網膜中の観察可能な血管閉塞面積と比較すること、並びに
染色された網膜中の網膜前血管新生房状分岐の面積を、同一の高酸素条件へ曝露されたマウスの、治療剤候補を投与されなかった対照眼由来の染色された網膜中の観察可能な網膜前血管房状分岐の面積と比較すること、を含む。
【0026】
病理学的血管新生の程度は、顕微鏡画像において可視的な対照眼に対する、治療された眼中の網膜前血管新生房状分岐を呈する網膜の面積によって証明される。網膜前血管新生房状分岐の面積の減少は新生阻害活性を示唆する。すなわち薬剤が病理学的血管新生を阻害することを示唆する。血行再建の評価は、対照眼と比較して治療された眼由来の網膜中の血管閉塞の面積を比較することによって実施される。対照に対する治療された眼由来の網膜中の血管閉塞の面積の減少は、治療剤が、損傷を受けた網膜の有益な生理学的血行再建を誘導することを示す。
【0027】
血管新生阻害TrpRS断片を含む治療組成物は、薬理学的に適切な、医薬として許容される担体、賦形剤及びビヒクルを含み得る。一般に、これらの担体は、生理的食塩水及びリン酸緩衝液(PBS)などの緩衝媒体など、水性又はアルコール/水性溶液、乳剤又は懸濁液を含む。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルのデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液又は不揮発性油が含まれ得る。さらに、静脈内ビヒクルは、液体及び栄養物質補充剤並びにリンゲルのデキストロースをベースにするものなどの電解質補充剤を含むことができる。例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤及び不活性ガスなどの保存料及び他の添加物などの賦形剤も存在することができる。適切な剤形補助剤、担体、他の賦形剤及び医薬組成物を調合する方法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 14th Ed., Mack Publishing Co., 1970の特にPart Vlll,「Pharmaceutical Preparations and Their Manufacture」, 1461−1762ページに開示されており、その関連する開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0028】
治療組成物は、適切に滅菌された瓶又はバイアル中に、複数投与形態又は単位投与形態のいずれかで包装できる。容器は、本発明の組成物で充填された後に好ましく気密に密封される。好ましくは、組成物は、貼付されたラベルを有する容器中に包装され、該ラベルは組成物中に存在する薬物を特定し、適切な法の下での組成物の認可、薬用量情報などを反映する米国食品医薬品庁などの政府機関によって規定された形式の注意書きを有する。ラベルは、好ましくは、患者への組成物を投与する保健医療専門家に有用な、組成物に関する情報を含有する。包装は、組成物の投与に関連する印刷された情報材料、指示、指標及び必要な要求されるあらゆる警告も好ましく含有する。
【0029】
酸素誘導性網膜症(OIR)モデル
全ての動物実験は、ヒトの治療及び研究上の動物の使用のための厳格なプロトコール指針を厳守した。Smith et al. Invest. Opthalmol. Vis. Sci., 1994; 35: 101−111に記載のプロトコールにしたがって、OIRを誘導した。7日齢の仔マウス及びそれらの母親を室内空気から約75%酸素の高酸素環境へと5日間移した後、室内空気(正常酸素状態)へと復帰させた。改変されたヒト用保育器内に動物ケージを設置することによって、高酸素条件への曝露を実施した。(流量を調節するために動物麻酔機械を使用して)保育器を通じて酸素を循環させ、レベルをモニターし、FDA認可の酸素分析装置(AX−300, Teledyne Analytical Instruments, CA, USA)を使用して74ないし75%に維持した。高酸素状態の5日間、動物を毎日少なくとも3回検査した。実験を通じて母親に対して食餌及び水を自由摂取させた。5日後、すなわち生後12日(P12)に、ケージを室内大気へと復帰させた。
【0030】
網膜完全包埋調製及び免疫組織化学
マウスを安楽死させた後、摘出した眼球をPBS中の4%パラホルムアルデヒド中で約10分間固定し、ほぼ虹彩根部の箇所で、角膜縁の後ろに環状切断部を作製し、その後、眼の前部を摘出することによって、網膜を解剖した。レンズ及び硝子体を解剖し、眼杯構造中に網膜を残しながら、強膜層及び脈絡膜層から網膜を分離した。放射状の減張切開を網膜中に作製し、網膜を平らにさせ、平らにした網膜から硝子体又はガラス質の全ての残遺物も注意深く除去した。
【0031】
FITC−デキストラン血管造影法のため、ケタミンHCl(Ketalar, Parke Davis, UK, 100mg/kg)を、弛緩剤キシラジン(2mg/kg)と組み合わせて腹腔内注射することによって、動物を麻酔した。高分子量(2×106Da)のFITC−デキストラン(濃度50mg/mL、Sigma, St. Louis, MO)約300μLを左心室中に注入し、約2分間循環させた後、動物を安楽死させ、眼球摘出した。イソレクチンG4染色のため、4%パラホルムアルデヒド中で約45分間、網膜を後固定し、Alexa Fluor 594(Molecular Probes、リン酸緩衝生理的食塩水(PBS)中で1:150希釈)に抱合された、グリフォニア・シンプリシフォリア(Griffonia simplicifolia)由来のイソレクチンGS−IB4(イソレクチンGS)とともに室温で一晩インキュベートして、「イソレクチンGS−594」を得た。PBSによる2時間にわたる4ないし5回の洗浄後、その後の画像化のためにSLOW FADE(Molecular Probes)でスライド上に完全包埋プレパラートとして網膜を包埋した。
【0032】
イソレクチンGSは、血管内皮細胞のみを染色するのみならず、活性化されたマウスマクロファージも染色するので、内皮のマーカーCD31に対して特異的なポリクローナル抗体(BD Biosciences−Pharmingen、10%ウシ胎仔血清(FBS)/10%NGS緩衝液中で1:100希釈)及びマクロファージのマーカーF4/80に対する抗体(1:150)を網膜のサブセットにおいて使用し、イソレクチンGS陽性細胞をさらに特徴付けた。PBS中の20%FBS、20%NGSで、室温において1時間、網膜をブロッキングし、一次抗体及びイソレクチンGS−594とともに一晩インキュベートした。PBSによる洗浄後、Alexa488抱合二次抗体(Invitrogen Corporation)を2時間適用し、洗浄し、網膜を上述のとおり包埋した。
【0033】
画像化及び定量化
512×512画素の検出器解像度を有する4倍の対物レンズを使用して、顕微鏡画像を撮影した。篩板前部(pre−laminar)の血管新生房状分岐が、その下に位置する表層部血管叢よりも顕著になって、血管新生房状分岐面積のその後の定量化をより容易にするように、共焦点顕微鏡(BioRad)を使用して網膜の内境界膜のすぐ上に焦点を合わせるよう特に注意を払った。多くの事例で、4つの重複する画像(各々1つの網膜の四分円を表す。)を各網膜から獲得した。その後、AdobeのPHOTOSHOP(登録商標)6.0を使用し、画像を整列させるために、視神経円板及び主要血管などの網膜の目印を使用してモンタージュを作製した。これらのモンタージュによって、完全な網膜の可視化及び定量化が可能となった。閉塞面積及び血管新生の全面積の両方が網膜の中心へ向かって配置される数少ない場合には、視神経円板を中心とする単一の4倍画像を獲得した。末梢網膜の全体はこのような画像中に含まれないのに対して、関連するOIR誘発性変化は、これらの事例において完全に観察できる。1インチあたり300画素の解像度を有する2×2インチのサイズへ、各個々の画像を変換した後、モンタージュを作製し、閉塞面積及び血管新生房状分岐面積を定量化した。
【0034】
画像を生成させ、網膜モンタージュを作製した後、偏向を防止するために、ブラインドプロトコールにおいて個体ごとに血管閉塞及び異常な血管新生形成を定量化し、画像中の閉塞及び血管新生房状分岐の実際の面積の測定を補助することが必要な場合には常に、顕微鏡下で実際の網膜を可視化した。血管閉塞の面積を測定するために、AdobeのPHOTOSHOP(登録商標)のフリーハンド選択ツールを使用した。無血管領域の境界線をトレースし、画素中の閉塞の総面積を算出した。血管新生房状分岐の面積の測定は、完全な網膜包埋構造においても実施され、これらの領域中のイソレクチン染色のより高い強度、それらの特徴的な外観及び網膜の内境界膜の上に焦点を合わせることによって作製される画像に基づいた。血管新生房状分岐は、AdobeのPHOTOSHOP(登録商標)ソフトウェアの魔法の杖ツールを使用して、手で特異的に選択された。その後、画素中の総面積を測定した。一度、画素中の領域を測定すると、本発明者のパラメータに関して画素あたり27.8μmであると算出された変換因子が適用され、(μmで表される)絶対面積が得られた。画像獲得(4倍率レンズ)及びAdobeのPHOTOSHOP(登録商標)ソフトウェアにおいてモンタージュをインポート及び作製する際の大きさ(2×2インチ)及び解像度(1インチあたり300画素)などのモンタージュ組み立てパラメータに基づいて、この変換因子を算出した。
【0035】
網膜横断切片及び前ILM核の計数
6個の眼のサブセットにおいて、完全な包埋構造中での定量化の後、網膜をスライドから取り外し、横断切片作製及び前ILM核計数のために処理した。4%PFA中でのさらなる固定の後、網膜をパラフィン中に包埋し、その全体の連続切片を作製した。標準的なHE染色を実施し、ILMの硝子体側に存在する全ての核を計数した。切片あたりの核の平均数を算出した。iNOS阻害剤(後述)で処理された眼の付加的なセットにおいて、全眼をパラフィン中に包埋し、横断切片を作製し、HEで染色し、Smithらによりすでに記載されるとおり、横断切片の試料を計数した。視神経を同定し、視神経の各側に30ないし90μm間隔で存在する2ないし4枚の切片を血管新生に関して計数した。
【0036】
血管新生阻害化合物の注入
(正常酸素状態への復帰時に)P12で単一注入処置のために、又はP13及びP16で二重注入処置のために、硝子体内注入を実施した。各事例において、33ゲージ針が装着されたハミルトンシリンジを使用して、適切な溶液(PBS対照、個々の治療剤を含有するPBS溶液、又は組み合わせ治療法を含有するPBS溶液)の0.5μL容量を注入した。赤道と角膜縁との間に注入した。注入の間、硝子体空洞の中にあることを確認するために、解剖顕微鏡を通じて針の位置を可視化することにより、網膜又はレンズの損傷の可能性を最小化した。注入の後、眼瞼を再度配置し、裂溝を閉鎖した。
【0037】
結果
マウスにおける生後の網膜の血管の発達の正常な過程は十分特徴付けられており、誕生時に視神経円板から出現して、約9ないし11日後に網膜の遠位周辺部に到達する表層部の血管の求心性の増殖が含まれる。誕生後最初の週の終了時近くに、短い血管がこの表層部のネットワークから分裂し始めて、深層部血管ネットワークを形成し、これは通常、約P11ないし12までに完了する。その後、血管の最終的な中間層(IL)が形成する。本過程には、リモデリング及び余分なものを除去する波が伴い、約P21ないし23までにほぼ完了する。新生児C57B16/Jマウスにおいて、酸素の高レベルへの曝露は、事象のこの秩序だった順序を有意に変化させる。P7とP12との間で75%酸素へ曝露した後、血管ネットワークの大きな領域が網膜の中心で退化し(血管閉塞)、主要な血管のみを残し、毛細管ネットワークは実質的には存在しない。これは、P9の眼のデキストランを灌流させた(図1、パネルA)及びイソレクチンで染色した(図1、パネルD)全戴調製物の両者において見ることができる。イソレクチン陽性マクロファージは、血管閉塞の領域内にも存在した(図1、パネルD及び図2、パネルCも同様)。末梢の網膜は、血管ネットワークが表層部血管から主として構成されるという証拠をなお示している(図2、パネルC)。P12での正常酸素状態への復帰の際、ほとんど血管新生していない網膜中の虚血の相対的な状態は、網膜内での血管の出芽を伴って、末梢から内側へ表層部の血管の再増殖を促進させ、深層血管層を形成し、さらには網膜と硝子体(網膜前血管房状分岐)との界面での異常な出芽も形成する。約P18までに、血管閉塞面積はより小さくなり、視神経円板の周囲に、主要な網膜動脈に沿って延び(図1、パネルB及びE)、網膜前房状分岐は明るく染色されたレクチン陽性領域として明白である(図1のパネルE、図3のパネルA)。蛍光色素(この場合、デキストランFITC)による網膜血管の灌流後、血管閉塞の領域は明らかに描画されるが、房状分岐は簡単には同定できないことに注目することが重要である(図1のパネルBないしパネルEを比較されたい。)。約P22ないし23までに、網膜は通常ほぼ血行再建され(図1のパネルC及びパネルF)、房状分岐はほぼ消散するが、それが完全に正常な様相を呈するまでにさらに数日間経過し得る。
【実施例1】
【0038】
血管閉塞の面積及び網膜の血行再建速度の定量化
血管閉塞及び網膜の血行再建の速度を定量化するため、低い倍率で蛍光顕微鏡を使用して、デキストランを注入したか又はイソレクチンで染色した網膜の全戴調製物を画像化した。4つの重複する画像を使用して、網膜のモンタージュ(図2のパネルA)を構築し、迅速に利用可能なコンピュータ化された画像処理プログラムを使用して、閉塞の面積(黄色)及び網膜総面積(青線)を測定した(図2のパネルB)。血管のある網膜と無血管の網膜との境界は通常、これらの調製物において十分に区分されているので、観察者間の変動は非常に低かった(図2のパネルG)。解剖又は戴置上の人為産物が存在する分析領域に含まれないよう注意を払った。経時的な網膜総面積の変化を図2のパネルDの上部パネルに示す。網膜の増殖は、高酸素状態の間明らかに継続し、網膜総面積はP8とP13との間で約20%まで増大する。後に、変化の速度は低下する。血管閉塞及び血行再建の時間経過(図2のパネルD、下部のグラフ)は、高酸素状態への曝露後に、閉塞がP7の時点で極めて急速に生じ、P8とP12との間で網膜総面積の約30ないし35%を占めることを示す。正常酸素状態への復帰後の血行再建は、正常酸素状態への復帰から4日後のほぼP16で開始する広範囲の血管新生とともによりゆっくりした速度で生じる。網膜総面積(図2のパネルE)の点で、特に血管閉塞の程度(図2のパネルF)において、対の眼(すなわち、同一動物の眼)間の相関の高い程度によって示されるように、前記過程は極めて対称的である。好ましくは、本発明の方法を実施する上で、対の眼の対照を使用する。
【実施例2】
【0039】
異常な血管新生の程度の定量化
P15とP22との間、特にP17ないしP19で、異常な血管の増殖がマウスOIRモデルの網膜と硝子体との間の界面で生じる。これらの網膜前血管房状分岐は特に、網膜の血管新生した末梢と閉塞した中央領域との間の境界で明白である。これらの誤配向した血管要素は、HE染色されパラフィン包埋された横断切片において、内境界膜(ILM)の硝子体側へと突出する細胞の核を計数することによって古典的に定量化されてきた。しかしながら、これらの面積は、表層部血管ネットワークに重なる細胞の集合として、イソレクチン染色した全戴画像においても極めて明確に観察できる(図1、パネルE、図3、パネルA)。(多数の市販の画像分析プログラムで利用可能な)強度閾値ツール又はAdobeのPHOTOSHOP(登録商標)ソフトウェアのいずれかを使用して、網膜前房状分岐形成領域を手で選択して、これらの強く染色しているイソレクチン陽性領域の面積を迅速に測定できる(図3のパネルB、血管新生面積は赤で標識される。)。共焦点顕微鏡は、これらの細胞の位置及び下に存在する網膜血管に対するそれらの関連を明確にする上で役立つ(図3のパネルC)。これらの領域内の静脈内注射されたデキストラン−FITCの緑のスポットによって見られる(図3のパネルC)ように、増殖のこれらの領域が単に部分的に灌流されることに留意してほしい。この灌流の限定されたレベルは、デキストラン−FITC血管造影法を使用して房状分岐を適切に可視化及び定量化することを妨げる。細胞特異的マーカーは、房状分岐内のイソレクチン陽性細胞の大部分が内皮細胞マーカーCD31を発現することを示している、血管の同一性が確認される(図3のパネルD)。興味深いことに、マクロファージ系列の細胞は、F4/80免疫染色によって示されるように、凝集塊中にも存在する(図3のパネルE)。
【0040】
異常な血管新生の程度及び時間経過を図3のパネルGに示す。P16とP20との間で、網膜総面積の約12ないし16%は血管新生房状分岐によって覆われ、P17でピークに到達する。これらの房状分岐の連続した迅速なリモデリングは、P15とP22との間で生じることに留意することは重要である。リモデリングと同時に進行する網膜の血行再建の結果として、リモデリングされた領域も消散する。より初期に見られる細胞の比較的大きな突出した群(図3のパネルAないしE)は、イソレクチン陽性細胞の列まで余分なものを除去し、これは、一般に網膜血管に従い(図3のパネルF)、最終的にはP22とP25との間で消失する(図1のパネルF)。
【0041】
対の眼の間の相関が、房状分岐形成の点において、血管閉塞に関して見られるものほどには良好ではないものの、それにもかかわらず、これは概ね対称的な過程である(図3のパネルH)。観察者間の変動は、研究される時点及び明らかな房状分岐形成の程度にもかかわらず、同じく低く(図3のパネルI)、本発明の定量化方法の相対的な一貫性及び明確さを証明する。最後に、全戴において測定される血管新生面積が、横断切片中での前ILM(すなわち網膜前)核計数と相関するかどうかを検討するため、多くのすでに定量化された全戴された網膜をパラフィン包埋し、横断切片を作製し、前ILM核を全切片において計数した。図2のパネルJは、各パラメータの平均に対して標準化された6個の異なる眼の各々における房状分岐面積と核計数の比を示す。定量化のこれら2つの方法が、一般的に一致することは明白である(すなわち、より大きな房状分岐面積を有する眼は、より多い核数を有する傾向にあり、その逆もまた真である。)。しかしながら、本発明の方法の定量化プロトコールは、完全な網膜がすぐに評価されるという点で、横断切片上での計数方法を上回る利点を有する。
【実施例3】
【0042】
iNOS阻害剤の抗血管新生効果
本発明の定量化技術の利用性をさらに評価し、新規抗血管新生剤であるiNOSの阻害剤の網膜血行再建及び血管新生阻害に及ぼす効果を検討することによって、前ILM核計数の従来技術の方法と比較した。P12とP17との間で、マウスの眼に1日1回腹膜内注射することによって、阻害剤(又は対照生理的食塩水)を送達し、P17で眼を摘出し、2つの技術のうちの1つによる定量化のために処理した。図4のパネルAは、P17対照マウス(上の行)及びiNOS阻害剤で処理した動物(下の行)由来の網膜の全戴調製物及び横断切片を示す。血管閉塞の面積は左のパネルで示され(青線)、血管新生房状分岐の面積は中央パネルの同一の全戴上で標識され(赤)、前ILMの例は、右の横断切片において示される(矢印)。iNOS阻害剤の注入によって、対照と比較すると、血管閉塞の面積が約28%低下した(図4のパネルBの左のバー)。全戴から定量化される血管新生房状分岐面積は約30%低下し(中央のバー)、これは、前ILM核が横断切片において計数されるときに観察された効果の規模と同様である(すなわち、約36%、右下のグラフ参照)。
【実施例4】
【0043】
T2−TrpRSはOIRモデルにおける血管新生房状分岐形成を強力に阻害する。
【0044】
T2−TrpRSは、マウスMatrigelモデル及び新生児マウス網膜血管新生モデルを含む血管新生の幾つかのモデルにおける強力な血管新生阻害能を示したトリプトファンtRNA合成酵素(TrpRS)のタンパク質分解断片である。本発明の方法を使用して、マウスOIRモデルにおける病理学的血管新生に及ぼすT2−TrpRSの活性を検査した。定量化の本発明の方法を使用して、酸素誘導性血管閉塞後の表層部網膜叢の血行再建に及ぼすT2−TrpRS注入の効果も評価した。マウスが高酸素状態(75%O)から正常酸素状態へ復帰したP12で硝子体内に注入すると、T2−TrpRSによって、用量依存的様式でP17において血管新生房状分岐形成面積が顕著に減少した(図5)。完全長のトリプトファンtRNA合成酵素(FL−TrpRS)も最大投与量で幾分かの活性を示したが、T2−TrpRSの等価の注入と比較したとき、阻害の有意に低いレベルを観察した。FL−TrpRSが血管新生の他のモデルで血管新生阻害活性を有さないことがすでに明らかとなっているので、観察された活性は、インビボ注入後の、T2−TrpRSと類似の生成物へのFL−TrpRSの自然な開裂から生じる可能性がある。
【0045】
酸素誘発性閉塞後の網膜の生理学的血行再建に及ぼす効果を分析するために、閉塞された面積を、対照処理及びT2−TrpRS処理した網膜においても定量化した(図5のパネルB)。T2−TrpRSは血管新生房状分岐形成を強力に阻害したが、正常な表層部及び深層部の網膜血管叢の血行再建は阻害しなかった。実際、T2−TrpRSを注入された網膜では、より低い投与量のときでさえ、一貫して、血行再建が有意に増強されることを示した。T2−TrpRSを注入された網膜において、P17での閉塞面積は、P17のPBS対照を注入した網膜中の閉塞された面積と比較して、一貫して、約40%減少した(図5のパネルB)。注入の時点(P12)での閉塞された面積はほぼ等しかった(データは示さず。)。したがって、P17で閉塞の面積が有意且つ予想に反して減少したことは、病理学的血管新生を同時に阻害しながら、生理学的血行再建を促進する上でのT2−TrpRSに関する新規の活性を示唆する。眼あたり1.25mgのT2−TrpRSを注入した後、網膜の血管の形態は、特に正常又は対照注入されたOIR網膜と比較すると、ほぼ正常に見えた(図5のパネルCないしE)。P22の時点でさえ、血管新生房状分岐が自然に退化し、網膜が治癒しているときには、対照のOIR網膜における新生血管は、P17のT2−TrpRS注入した網膜と比較して重度に異常であるように見える(図5のパネルE)。FL−TrpRSを注入された網膜は、血行再建過程の有意な増強も示したが、より多い投与量のときだけであった。
【0046】
OIRモデルにおけるT2−TrpRS活性を、VEGF165活性のアンタゴニストとして証明された特性を有するVEGFアプタマーのT2−TrpRS活性と直接比較し、OIR誘導性血管新生房状分岐形成の強力な阻害を示した。両血管新生阻害分子は、血管新生房状分岐形成の強力な阻害剤であった。眼あたり1.25mgのT2−TrpRSを注入された眼は、VEGFアプタマー処理された網膜と比較して、血管新生房状分岐面積のわずかだが有意な減少を示した。したがって、アプタマーを10倍下回るモル濃度の注入後でさえ、T2−TrpRSは、OIRモデルにおける血管新生房状分岐形成に及ぼす非常に競合的な阻害活性を示した。T2−TrpRSとは異なり、VEGFアプタマーは、表層部の叢の血行再建を増強しなかった。実際、VEGFアプタマーは生理学的血行再建が生じるのを防止しなかったが、対照ビヒクル(PBS)を注入された網膜と比較すると、血行再建は一貫して遅延した(図5のパネルFないしG)。VEGFアプタマーで処理した眼に関する血行再建過程におけるこの遅延は、より少量の投与量の2つの別個の注入の後にP19でさらにより明白であった(図5のパネルH)。
【0047】
考察
OIRモデルにおける異常な血管新生を定量化するための現在受容されている方法は、HE染色され、パラフィン包埋された眼の組織学的横断切片における篩板前部の核を計数することに基づいている。網膜完全包埋が作製されないので、この方法は、非常に労力が要り、時間を浪費し、非常に変動的であり、観察者に依存し、同一眼における血管閉塞の程度の正確な定量化もできない。全戴分析を使用して、無血管領域の分析がすでに報告されているが、出願人の知る限り、本発明の方法は、同一眼分析において血管新生房状分岐形成及び閉塞の絶対面積を定量化するために使用できる最初のスクリーニング方法である。本発明の方法は、ルーチンの組織切除及び染色方法及び容易に入手可能なコンピュータプログラムを使用するため、簡単に習得でき、観察者間の変動が低い。さらに、この新規方法は、切片の限定された数ではなく完全な網膜を定量化するので、サンプリングエラーを低下させるという利点も有する。硝子体システムと関連した硝子体核を、血管新生房状分岐と関連した硝子体核と区別することも従来技術の横断切片法では困難であり、特に硝子体システムの存続が生じるOIRモデルにおいて困難である。本発明の方法において、硝子体血管は、解剖中に一般的に除去され、残存するいずれの残遺物も簡単に同定され、分析から削除される。
【0048】
本発明のスクリーニング方法を使用して、病理学的血管新生のOIRモデルにおけるT2−TrpRSの血管新生阻害活性を評価した。OIRモデルにおける病理学的血管新生に及ぼすT2−TrpRSの強い用量依存的血管新生阻害効果を観察した。眼あたり約1.25μgのT2−TrpRSの注入によって、血管新生房状分岐形成がほぼ完全に阻害された。これらの観察された効果は、OIRモデルにおける病理学的血管新生の別の強力な阻害剤であるVEGFアプタマーの効果を上回ることはないとしても、それと同等であった。より少量の投与量の阻害剤の2回の注入後、P19に網膜の血管新生を分析することによって、OIR関連の血管新生に及ぼす長期的効果を評価した。T2−TrpRSは、病理学的血管新生を阻害し、VEGFアプタマーによる処理(0.5mg/眼/注入、53.9pmol)の後の55%の低下と比較して、房状分岐形成を75%超低下させた。
【0049】
驚くべきことに、T2−TrpRSは、酸素誘導性網膜症後の有益な生理学的血行再建過程も増強した。閉塞の面積は注入時で等しかったが、T2−TrpRS処理した網膜中の閉塞された面積は、対照網膜と比較して、一貫して、半分減少した。したがって、T2−TrpRSによる処理によって、驚くべきことにより迅速で、より完全な網膜治癒に至り、生じた血管系は、正常な網膜血管系に解剖学的により酷似している。
【0050】
上述の実施形態の多くの変動及び改変は、本発明の新規の特性の精神及び範囲から逸脱せずに実施され得る。本明細書に示される特異的な実施形態に関する限定は意図されておらず、又は推論されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】新生児マウスから得た染色された完全な網膜の顕微鏡写真のモンタージュを図示しており、生後9日齢(P9)から22日齢(P22)までのマウスの眼における血管系の正常な発達を示している。パネルA、B及びCはそれぞれ、FITC−デキストラン灌流による染色によって可視化されたP9、P18及びP22での血管系を示す。パネルD、E及びFはそれぞれ、レクチンGSによる染色によって可視化されたP9、P18及びP22での血管系を示す。
【図2】P7ないしP12の間、高酸素状態に曝露された新生児マウスにおける網膜血管系の発達を示す顕微鏡写真のモンタージュ及びグラフを図示する。パネルA、B及びCは、血管閉塞の面積を示す顕微鏡写真である。パネルD(上部グラフ)は、網膜の面積対日齢のグラフである。パネルD(下部グラフ)は、血管閉塞の面積対日齢のグラフである。パネルEは、左眼の網膜面積と右眼の網膜面積との相関を示す散布図である。パネルFは、左眼血管の閉塞された面積と右眼血管の閉塞された面積との相関を示す散布図である。パネルGは、本発明のスクリーニング方法にしたがって4名の異なる観察者によって測定される異なる齢で単離された6個の異なる網膜に対する血管閉塞の測定された面積の観察者間での低い変動を示す棒グラフである。
【図3】P7ないしP12の期間、高酸素状態に曝露された新生児マウスにおける網膜前血管新生房状分岐の発達を示す顕微鏡写真及びグラフを示す。パネルAないしFは、顕微鏡写真であり、パネルAは、網膜前血管新生房状分岐(明るい部分)を示すために画像化されている。パネルBは、血管房状分岐が赤で示されたパネルAの画像を示す。パネルCは、血管新生房状分岐の領域が、部分的に灌流されているに過ぎないことを示しており、下に存在する血管系へ接続される房状分岐が緑で示されることを示す。パネルDは、イソレクチンGSで染色された細胞が、血管系統を示す主にCD31陽性(緑色)であることを示す。パネルEは、CD31陽性血管新生房状分岐間にマクロファージ系統の幾つかの細胞(緑色)が存在することを示す。パネルGは、日齢の関数として血管新生房状分岐の面積を示すグラフである。パネルHは、右眼と左眼との血管新生房状分岐面積の相関を示す。パネルIは、本発明のスクリーニング方法にしたがった血管新生房状分岐面積の測定において観察者間の変動が低いことを示す棒グラフである。パネルJは、本発明のスクリーニング法によって測定される房状分岐面積と、前ILM核を測定する労力を要する従来技術の横断切片法との相関を示す。
【図4】本発明のスクリーニング方法にしたがって、P7ないしP12の期間、高酸素状態に曝露された新生児マウスの血管閉塞及び網膜前血管新生房状分岐面積の定量化を示す顕微鏡写真及びグラフを示す。パネルA:(右上画像)は、本発明のスクリーニング方法にしたがって高酸素状態に曝露された対照マウスの眼の血管閉塞の面積を示し、(中央上画像)は、対照マウスの眼に対する血管新生房状分岐の面積を示し、(左上画像)は、前ILM核(矢印)を示す対照網膜の横断切片である。パネルB:(右下画像)は、本発明のスクリーニング方法にしたがって、高酸素状態へ曝露され、iNOS阻害剤で処理されたマウスの眼の血管閉塞の面積を示し、(中下画像)は、処理されたマウスの眼に関する血管新生房状分岐(赤)の面積を示し、(左下画像)は、前ILM核(矢印)を示す処理された網膜の横断切片である。パネルB:(左グラフ)は、対照眼とiNOS処理した眼に関する血管閉塞の面積を比較し、(中グラフ)は、対照眼とiNOS処理した眼に関する血管新生房状分岐の面積を比較し、(右グラフ)は、対照眼とiNOS処理した眼に関する前ILM核の数を比較する。
【図5】本発明のスクリーニング方法にしたがって、P7ないしP12の期間、高酸素状態に曝露された新生児マウスにおける血管閉塞及び新生児房状分岐形成に及ぼすTrpRSの血管新生阻害断片の改善効果の定量化を示す顕微鏡写真及びグラフを示す。パネルAは、本発明のスクリーニング方法において完全長TrpRSの同様の投与量で処理された眼と比較した、T2−TrpRSの多様な投与量で処理された眼に関する血管新生房状分岐面積を比較するグラフである。パネルBは、本発明のスクリーニング方法において、完全長TrpRSの同様の投与量で処理された眼と比較した、T2−TrpRSの多様な投与量で処理された眼に関する血管閉塞面積を比較するグラフである。パネルC及びDは、T2−TrpRS処理された眼(C)とPBS緩衝液を注入した対照眼(D)とに関する血管閉塞面積の減少を示す。パネルEは、T2−TrpRSによって誘導される血行再建の加速(上部画像)と対照眼(下部画像)とを示す。パネルFは、VEGFアプタマーが、血管閉塞した領域の血行再建の遅延を引き起こすことを示す。パネルG及びHは、本発明のスクリーニング方法においてT2−TrpRS及びVEGFアプタマーの活性を比較するグラフである。
【図6】T2−TrpRS(配列番号1)及び突然変異体T2−TrpRS−GD(配列番号2)のアミノ酸残基配列を示す。
【図7】ミニ−TrpRS(配列番号3)のアミノ酸残基配列を示す。
【図8】T1−TrpRS(配列番号4)のアミノ酸残基配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
病理学的血管新生を阻害するのに十分であり、及び網膜の虚血領域の生理学的血行再建を促進するのに十分なトリプトファン−tRNA合成酵素(TrpRS)の血管新生阻害断片の治療的有効量を、網膜虚血に罹患している哺乳類へ投与することを含む、虚血性網膜組織の有益な生理学的血行再建を促進するための方法。
【請求項2】
TrpRSの血管新生阻害断片がT2−TrpRS(配列番号1)である、請求項1の方法。
【請求項3】
TrpRSの血管新生阻害断片がT2−TrpRS―GD(配列番号2)である、請求項1の方法。
【請求項4】
TrpRSの血管新生阻害断片がミニ−TrpRS(配列番号3)である、請求項1の方法。
【請求項5】
TrpRSの血管新生阻害断片がT1−TrpRS(配列番号4)である、請求項1の方法。
【請求項6】
網膜血管新生疾患を治療するための治療剤の候補の治療効能を同定及び評価するためのスクリーニング方法であり、
網膜の血管系の測定可能な退化を誘導するのに十分な時間にわたり、新生児マウスを高酸素状態へ曝露すること、
前記マウスを正常酸素状態へ復帰させること、
正常酸素状態への復帰後、治療剤の候補を前記マウスの眼へ投与すること、
前記治療剤の候補を前記眼へ投与してから最長約5日後の期間後に前記マウスを安楽死させること、
前記治療剤の候補が投与された、安楽死された前記マウスの前記眼から実質的に完全な網膜を摘出すること、
前記治療剤の候補が投与された前記網膜の前記血管系を染色すること、
前記網膜の前記染色された血管系の少なくとも1つの顕微鏡画像を作製し、少なくとも1つの前記画像において血管閉塞の領域及び網膜前血管新生房状分岐の領域を可視化すること、並びに
(a)高酸素状態の同一条件へ曝露されたマウスの前記治療剤の候補を投与されていない対照眼から得られた染色された網膜中の観察可能な血管閉塞の前記領域と比較される前記染色された網膜中の観察可能な血管閉塞の前記領域、及び(b)高酸素状態の同一条件へ曝露されたマウスの前記治療剤の候補を投与されていない対照眼から得られた染色された網膜中の観察可能な網膜前血管房状分岐の領域と比較される前記染色された網膜中の網膜前血管新生房状分岐の前記領域のうちの少なくとも1つを比較すること
を含む、方法。
【請求項7】
高酸素状態へ最初に曝露されるときに、新生児マウスが約7日齢である、請求項6の方法。
【請求項8】
新生児マウスが、高酸素状態へ約5日間曝露される、請求項6の方法。
【請求項9】
約75%の酸素を含む雰囲気中にマウスを配置することによって、マウスが高酸素状態へ曝露される、請求項6の方法。
【請求項10】
マウスの一方の眼が治療剤の候補を投与されるのに対し、他方の眼が非治療溶液を対照として投与される、請求項6の方法。
【請求項11】
網膜血管新生疾患を治療するための治療剤の候補の治療効能を同定及び評価するためのスクリーニング方法であり、
約75%の酸素を含有する雰囲気へ、7日齢新生児マウスを約5日間曝露すること(高酸素条件)、
通常空気の雰囲気(正常酸素状態)へ前記マウスを復帰させること、
通常空気への復帰後、治療剤の候補を前記マウスの眼へ投与すること、
前記マウスを安楽死させ、及び前記治療剤の候補が投与された前記眼から実質的に網膜全体を摘出すること、
前記治療剤の候補が投与された前記眼の網膜の血管系を染色すること、
実質的に染色された網膜全体の少なくとも1つの顕微鏡画像を作製する(前記少なくとも1つの画像が、前記染色された網膜における血管閉塞領域及び網膜前血管新生房状分岐領域を可視化する)こと、
前記少なくとも1つの画像から、前記染色された網膜中の観察可能な前記血管閉塞領域及び前記染色された網膜中の前記網膜前血管新生房状分岐領域を測定すること、
前記染色された網膜中の観察可能な前記血管閉塞領域を、前記同一の高酸素条件へ曝露されたマウスの、前記治療剤の候補を投与されていない対照眼由来の染色された網膜中の観察可能な血管閉塞領域と比較すること、並びに
前記染色された網膜中の網膜前血管新生房状分岐の領域を、同一の高酸素条件へ曝露されたマウスの前記治療剤の候補を投与されていない対照眼から得られた染色された網膜中の観察可能な網膜前血管房状分岐の領域と比較すること
を含む、方法。
【請求項12】
対照眼が、治療剤候補が投与される眼と同一のマウス由来である、請求項11の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−532941(P2008−532941A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557152(P2007−557152)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/006402
【国際公開番号】WO2006/091729
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(501318914)ザ・スクリプス・リサーチ・インステイチユート (23)
【Fターム(参考)】