蛍光に基づいた検出方法及び装置
同一期間にわたって2つ以上の異なる放射供給源(145,160)による励起に応答して、サンプルからの蛍光放射の放出を検出する装置では、それぞれの放射供給源(145,160)が、放出された蛍光放射においてその後個々に検出され得る変調方式を備えている。例えば、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に基づいた技術において、2つ以上の異なるLED供給源(145,160)に対する駆動電流は、異なる変調方式に従って、周波数変調又はパルス幅変調される。それぞれの供給源(145,160)に対するサンプルの応答は、例えばサンプルに含まれる異なった供与体/受容体プローブの応答は、例え応答の波長又は波長レンジが同じか又は重なっていても、異なる変調方式を用いて、その後個々に検出され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アッセイや画像生成に使用可能なものなどの蛍光に基づいた検出方法及び装置に関するものである。これは、蛍光顕微鏡検査用の方法及び装置、並びに、蛍光共鳴エネルギー移動に基づいた方法及び装置に具体的な用途を有している。
【背景技術】
【0002】
発光(luminescence)に基づいたアッセイ又は画像生成法においては、影響を受け易い分子を物理的、化学的、又は機械的な刺激によって励起することにより、検出可能な光を放出させている。放出光を使用することにより、分子の位置を検出可能であり、従って、これは、画像生成に使用可能であると共に/又は、これを使用することにより、プロセスにおける放出分子の関与を検出可能である。
【0003】
便利な形態の刺激は、影響を受け易い分子を含むサンプル上に導波可能な光であり、この形態の発光を蛍光と呼んでいる。放出光は、刺激光(stimulating light)のものとは異なる波長又は波長レンジを具備しており、この結果、刺激光の存在下において、相対的に容易に検出可能である。刺激光にしても、放出光にしても、必ずしも、可視スペクトルにあるものではないが、放出光を検出する適切な方法の存在が明らかに必要である。
【0004】
蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescent Resonant Energy Transfer:FRET)アッセイ法においては、サンプル内におけるプロセスの進捗を放出光から決定可能である。影響を受け易い部分には、2つのタイプが存在しており、これらのタイプは、供与体(donor)部分と受容体(acceptor)部分から構成されている。これらの部分は、別個の蛍光分子又は同一分子における異なるフルオロフォアグループ(fluorophore group)などの様々な形態をとることが可能であり、或いは、分子の形態を具備することなしに、例えば、蛍光ビーズ又は蛍光量子ドットなどのように粒子状であってもよい。供与体は、サンプルに供給された刺激光(本明細書においては、これを「励起放射」とも呼ぶ)に応答し、独力で蛍光を発する。しかしながら、受容体が物理的に近接している場合には、双極子間における励起エネルギーの移動が発生し、この結果、供与体の蛍光が消光され、この代わりに、受容体が蛍光を発することになる。これは、しばしば、「Forster」共鳴エネルギー移動とも呼ばれている。エネルギー移動の程度は、供与体と受容体間の離隔距離に依存している。FRETアッセイ法は、供与体/受容体ペアの物理的な近接性に対するプロセスの影響に基づいたものである。それらが互いに十分に近接している際には、供与体から受容体へのエネルギーの移動が発生し、ペアの全体的な蛍光出力は、この影響を受けることになる。ペアが離隔している場合には、エネルギーの移動が減少又は停止し、ペアの全体的な蛍光出力は、異なって検出可能である。従って、サンプル内の供与体/受容体ペアの物理的な近接性を変化させるプロセスにより、サンプルから放出される光のスペクトルコンテンツの変化が生じ、これを検出することにより、プロセスの進捗の尺度が得られる。
【0005】
供与体/受容体ペアを含む影響を受け易いフルオロフォアは、しばしば、「プローブ」と呼ばれる構造に組み込まれている。プローブは、特定の方式によってサンプル内において振舞い、この結果、そのプローブの場所から放出される蛍光が有用な情報を付与することになるという特性を具備している。例えば、プローブは、蛍光がそれらのサイトを示すことになる特定のサイトを占有可能であろう。FRETにおいては、プローブは、しばしば、アッセイの対象であるプロセスによって構築又は分割されるように、選択されており、供与体及び受容体は、プローブの構築又は分割に伴って近接又は離隔するように、プローブの異なる部分に配置されている。或いは、この代わりに、プローブは、複数のコンポーネントを具備することも可能であり、これらのコンポーネントは、それぞれ、供与体及び受容体を保持すると共に、アッセイの対象であるプロセスによって接近又は離隔することになる。
【0006】
供与体及び受容体フルオロフォアを提供する材料は、しばしば、色素と呼ばれており、このような色素の周知の例には、フルオレセイン(fluorescein)(青励起、緑放出:通常、供与体として使用されている)及びローダミン(rhodamine)(緑励起、赤放出:通常、受容体として使用されている)が含まれている。
【0007】
供与体/受容体ペアの物理的な近接性における変化は、様々な方法によって検出可能である。受容体は、供与体からエネルギーを受容した際に、独力で、但し、供与体が蛍光を発するものとは異なる波長において、蛍光を発することができる。従って、供与体又は受容体のこの波長における蛍光出力のレベルの変化を計測することにより、物理的な近接性の変化を検出可能である。供与体であるか受容体であるかを問わず、この変化を検出するべく監視されるものを「レポーター」と呼んでいる。いくつかの受容体は、それ自体は蛍光を発することなしに、供与体の蛍光を「消光」しているのみである。これらは、「ダーククエンチャ(dark quencher)」と呼ばれており、この場合には、必然的に供与体がレポーターである。レポーターを内蔵している監視又は検出構成は、一般的に、レポーターシステムと呼称可能である。
【0008】
又、受容体分子は、しばしば、「レセプタ」とも呼ばれているが、監視対象のプロセスに応じて、そのプロセスのその他の要素と混同される可能性があり、本明細書においては、受容体という用語を一般的に使用することとする。
【0009】
FRET法を使用して監視可能なプロセスには、蛋白質−蛋白質相互作用、核酸−核酸相互作用、及び蛋白質−核酸相互作用が含まれる。例えば、細胞膜内におけるレセプタに対する上皮成長因子(Epidermal Growth Factor:EGF)のバインディングにおいては、この際に、レセプタが二量化し、EGFの個々の単位のいくつかのものに、供与体分子及び受容体分子として標識が予め付与される。この膜内におけるレセプタの二量化により、少なくともいくつかの供与体/受容体分子ペアが近接し、これにより、前述のように、サンプルから放出される光のスペクトルコンテンツにおける検出可能な変化が発生する。2つの蛍光標識抗体を使用して抗原に対する同時バインディングを通じてFRETペアを形成し、抗体−抗原−抗体挟持複合体を形成することにより、或いは、ビーズの表面に固定されたキャプチャー抗体の作用因子を通じて抗原の存在下において蛍光ビーズの近傍に蛍光標識抗体を移動させることなどにより、同様の原理によって免疫アッセイ(immunoassay)を構築可能である。核酸相互作用の観点においては、細胞及び組織の染色のためのFISH(Fluorescence in situ hybridisation)において、(特に、「DNAチップ」におけるアレイフォーマットの)核酸ハイブリダイゼーションアッセイ(nuclei acid hybridisation assay)において、並びに、供与体/受容体ペアを含むシーケンス固有のプローブを試薬マスターミックスに追加可能であるDNA複製酵素の動作の検出において、FRET標識試薬を使用可能である。酵素は、DNAに沿って移動するのに伴ってプローブと遭遇し、これを開裂させ、これにより、供与体/受容体ペアを分離し、前述のように、この場合にも、放出光のスペクトルコンテンツにおける変化を引き起こす。
【0010】
酵素がDNAを複製する既知のプロセスの非常に良好な例がポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction:PCR)であり、この場合には、サンプルDNAの二重螺旋が、そのヌクレオチドの2つのストランド(strand)に変性し、次いで、それぞれのストランドをポリメラーゼの働きによって複写し、2つの新しい二重螺旋を生成している。このプロセスをいくつかの加熱及び冷却サイクルを使用して反復することにより、サンプルDNAの量における大きな増大を得ている。この複写プロセスは、テンプレートとして使用されるそれぞれのストランドに対して「プライマ」をバインドすることによってトリガされている。プライマとは、DNAの変性ストランド内においてヌクレオチドの相補的なシーケンスに対してバインド可能である特定の順序のヌクレオチドの単一チェーンである。次いで、このプライマから開始し、ポリメラーゼは、テンプレートストランドを「判読」すると共に、これを相補的なヌクレオチドと非常に迅速に一致させることができる。この結果が、最初のものに代わる2つの新しい螺旋であり、このそれぞれは、オリジナルのストランドの中の1つのものにその新しく組み立てられた相補的なストランドを加えたものから構成されている。
【0011】
又、PCRプロセスを監視するべく、1つ又は複数のプローブをDNAの変性ストランドにバインドしている。プローブは、プライマと同一の原理を踏襲しているが、複写をトリガすることはない。この代わりに、これは、供与体、受容体、又はこれらの両方を保持しており、且つ、ストランドに沿った1つ又は複数の位置にバインドする。この結果、これが、プライマからストランドに沿って進入するのに伴ってポリメラーゼによって加水分解された場合に、結果的に供与体/受容体ペアが分離され、FRETに対する計測可能な変化を検出可能である。
【0012】
供与体/受容体ペアを使用しており、且つ、従って、FRETに基づいたアッセイにおいて有用であるその他のプローブには、ターゲットコードがストランド内に存在している場合にストランドに沿って隣接位置にバインドすることによって物理的な近接状態となった異なる構造上に供与体及び受容体が保持されたデュアルハイブリダイゼーションを使用するプローブ、ループせずにストランドに対してバインドし、これにより、供与体/受容体ペアを分離するループ構造のそれぞれの端部に供与体及び受容体が保持された「分子ビーコン」、並びに、供与体/受容体ペアが標識プローブ及び挿入色素である「Resonsense(登録商標)」が含まれている。
【0013】
PCRプロセス及びFRETアッセイ法については、Horizon Bioscience社から2004年に出版されたEdwards、Logan、及びSaunders編集による「Real−Time PCR: An Essential Guide」(ISBN 0−9545232−7−X)に記述されている。これからわかるように、1つのサンプルに関する計測値を多重化することが知られている。サンプル内において発生可能である複数のプロセスが存在可能であり、これらは、異なるプローブを使用して別個に検出可能であり、そして、これらのプローブは、異なる供与体/受容体ペアの組み合わせを保持することによって「ラベル付け」されている。例えば、供与体/受容体ペアは、異なる供与体分子の使用、異なる波長レンジにおける蛍光発光、又は異なる受容体分子の使用という点において異なることができる。複数のタイプの供与体が存在する場合には、1つのタイプの受容体分子が複数のタイプの供与体から共鳴エネルギーを受容する「ユニバーサル受容体」を使用することが知られている。受容体の蛍光のものである1つの波長を検出するだけでよいため、ユニバーサル受容体法によれば、検出が単純化される。供与体のタイプに応じて、複数波長の励起放射を提供する必要があろう。同様に、複数のタイプの受容体が存在する場合には、1つの供与体の共鳴エネルギーを複数の受容体によって受容可能である「ユニバーサル供与体」法を使用することも知られている。それぞれのプローブタイプは、同一の供与体を保持可能であるが、個々の受容体の蛍光波長レンジにより、異なるプローブタイプを弁別可能である。ユニバーサル供与体法及びユニバーサル受容体法は、いずれも、複数のユニバーサル供与体及び/又は受容体を使用することにより、プローブのグループが同一の供与体又は受容体を共有するように、拡張可能である。
【0014】
ユニバーサル受容体フォーマットを使用する既知の構成においては、受容体分子が、異なる供与体のそれぞれに応答し、同一の方法によって蛍光を発することになるため、受容体の蛍光を計測することにより、異なるプローブからの応答を互いに直接的に弁別することはできない。従って、例えば、一連の異なる励起波長において計測をシーケンシャルに実行してきた。この結果、核酸増幅反応などのプロセスにおける蛍光の変化の連続的な監視が不可能であった。異なる励起波長に対するサンプルの蛍光応答を直接的に弁別可能である場合にも、例えば、異なる供与体分子は、ユニバーサル「クエンチャ」フォーマット(universal ”quencher” format)において、異なる波長において蛍光を発するため、或いは、ユニバーサル供与体フォーマットが使用されており、且つ、異なる受容体分子が異なる波長において蛍光を発するため、非常に多数の異なるプローブの多重化を得ることは、実際には困難であろう。例えば、FRETをリアルタイムで使用してPCRのプロセスを監視する際には、略4つという実際的な限度が存在している。これは、蛍光の放出が、波長レンジにおいて相対的に広くなるという傾向を有しているためである。
【発明の開示】
【0015】
本発明の実施例の第1の態様によれば、放射供給源による励起に応答したサンプルからの蛍光放射の放出を検出する装置が提供されており、この装置は、i)同一期間にわたって少なくとも2つの供給源からの励起放射によってサンプルを照射するサンプル照射器であって、2つの供給源は、異なる波長の励起放射を供給している、サンプル照射器と、ii)異なる個々の変調方式に従って前述の少なくとも2つの供給源のそれぞれのものの励起放射を変調する変調構成と、iii)サンプルからの蛍光放射の放出を検出する放出検出器と、を有しており、放出検出器は、前述の少なくとも2つの供給源に対するサンプルの応答を別個に検出できるように、放出された放射内の前述の異なる個々の変調方式のそれぞれを検出するべく適合されている。
【0016】
同一期間にわたって少なくとも2つの供給源からの励起放射を取り扱うことができるため、本発明の一実施例による装置は、少なくとも2つの供給源からの励起放射をサンプルに対して同一期間にわたって供給するべくサンプル照射器が設計されているという点において特徴付けられている。例えば、サンプル照射器は、サンプルに供給するために、前述の供給源の中の少なくとも1つの供給源から供給される励起放射を、前述の供給源の中の少なくとも1つのその他の供給源から供給される励起放射と共有された経路上に偏向させるべく、ハーフミラー又は2色性ミラー(ダイクロイックミラー)などの少なくとも1つの照射偏向器を有することができよう。
【0017】
本発明の実施例の1つの固有の特徴は、異なる供給源に応答したサンプルからの放出の波長が潜在的に同一であるか又はオーバーラッピング可能であるという事実にある。当然のことながら、これは、その代わりに、異なる放出をその変調方式によって弁別可能であるためである。従って、放出検出器は、異なる共有源に応答したサンプルからの蛍光放射の放出をフィルタリングする単一の又は共有されたフィルタを有することができよう。尚、単一の又は共有されたフィルタは、システム内の雑音を低減するのに有用ではあるが、異なる応答を分離するべく、複数の異なるフィルタ、即ち、実際には、複数の異なる放射経路を提供する必要はない。
【0018】
本発明の一実施例においては、蛍光応答の波長がそれぞれの供給源において同一である場合にも、同時に少なくとも2つの異なる励起源を使用することにより、サンプルを照射すると共に、供給源の中の1つのもののみによる励起に対するサンプルの蛍光応答を依然として弁別可能である。これは、サンプル放出内におけるそれぞれの放射供給源と関連した個別の変調方式を検出することによって実行可能である。従って、少なくとも2つの異なるプローブを使用することにより、同一のサンプルにおける少なくとも2つの異なるプロセス又は1つのプロセスの2つの異なる側面を検出すると共に、必要に応じて、その進捗を監視可能である。これは、サンプル放出内に1つの波長又は波長レンジしか存在しておらず、従って、サンプルが応答している励起源を弁別する方法として波長が機能しない場合にも、可能である。それぞれの個別の変調方式を使用することにより、励起源のそれぞれに応答して生成された蛍光内の波長又は波長レンジが同一である場合にもサンプル内のレポーターによって生成された蛍光内において検出可能である方式により、特定の励起源を効果的に「ラベル付け」又は刻み付けている。
【0019】
サンプル放出内に1つの波長又は波長レンジしか存在していないが、少なくとも2つの励起源が存在している状況は、複数の異なる供与体を有するユニバーサル受容体の使用を含んでいる。従って、供与体が異なる励起源に応答しているが、たまたま同一又はオーバーラップする波長において蛍光を発するレポーターとして2つの異なる供与体を使用している(即ち、ユニバーサルクエンチャを有する)ケースにおいては、励起源を介した変調信号のインプリンティング(imprinting)を使用することにより、放出信号の分離分析を向上させることができる。
【0020】
従って、その第1の態様における本発明の一実施例は、サンプルからの蛍光放射の放出を検出する蛍光共鳴エネルギー移動アッセイにおいて使用する装置を有することが可能であり、サンプルは、少なくとも2つの異なるプローブを含んでおり、それぞれのプローブは、供与体/受容体ペアを有しており、前述の少なくとも2つの供給源それぞれの励起放射の波長は、サンプル内の異なるそれぞれのプローブからの応答を励起するべく選択されており、放出検出器は、前述の少なくとも2つの供給源に対する少なくとも2つの異なるプローブの応答を別個に検出できるように、放出された放射内の前述の異なる個々の変調方式のそれぞれを検出するべく適合されている。
【0021】
本発明の実施例において使用される変調構成の便利な形態は、放射供給源の振幅又は強度の周期的な変調を適用して個別の変調方式を付与するものである。放射供給源が発光ダイオードである場合には、これは、例えば、ダイオードに対する駆動電流における正弦波変動によって実行可能であろう。或いは、この代わりに、例えば、光電子変調器、振動シャッター、又は離隔したアパーチャを有する回転ホイールを供給源とサンプルの間の放射経路内に挿入することにより、変調を供給源の放出放射に印加することも可能であろう。この場合には、供給源によって放出される励起放射は、パルス列を有することが可能であり、変調構成は、パルス列の1つ又は複数のパラメータを制御し、その供給源用の変調方式を付与するべく適合されている。この方法において変調可能であるパルス列のパラメータは、0.1キロヘルツ〜10メガヘルツのレンジのパルス周波数又は位相及び0.1マイクロ秒〜10マイクロ秒のレンジのパルス幅を含んでいる。
【0022】
複数の励起波長を使用することにより、検出可能であるサンプルによって付与される異なる応答の数を増大させることも1つの選択肢である。この場合には、放出検出器は、独立的に第1及び第2波長(又は、波長レンジ)において蛍光放射の放出を検出するべく適合可能であり、これにより、サンプルの少なくとも4つの異なる応答を、それぞれのケースにおいて、変調方式及び/又は波長により、別個に検出及び弁別可能である。異なる変調方式を使用することにより、この原理を、例えば、6つ以上の数の異なる応答に対して更に拡張可能である。
【0023】
同時に複数の励起波長の使用を可能にすることにより、本発明の実施例は、リアルタイムPCRなどのプロセスにおいて特に有用である動的な計測を実行するための能力を向上させている。リアルタイムPCRは、数十秒の時間スケールにおいて発生する非特異的な熱サイクルによって誘発された蛍光の変化を伴う非常に動的なシステムである。例えば、pH、温度、及び蛍光放出の波長レンジの間には、複雑な関係が存在可能である。但し、例えば、プライマ内において又は生成物ストランドのアニーリング及びメルティングにおいて動作する使用プローブからの蛍光報告は、数十分の1秒〜数秒において発生可能である。蛍光報告をシーケンシャルにしか検出できない場合には、誤差を導入すると共に更なる時間及びサンプル材料を所要可能であるアッセイの反復の必要性を伴うことなしには、入手可能な豊富な蛍光情報を完全に取得する時間が存在しないであろう。しかしながら、本発明の実施例を使用することにより、1つを上回る、実際には、いくつかのプローブからの報告を同時に検出可能である。
【0024】
従来は、最大で4つの異なる蛍光放出を弁別可能ではあったが、これには、多くの場合に、困難が伴っていた。本発明の一実施例を使用してそれぞれの励起源に「ラベル付け」することにより、この実際的なバリアが除去されることになり、この結果、はるかに大きな数の蛍光放出を弁別可能であり、これにより、多くの更なるプローブを同時に検出可能である。これが有効であるアッセイの例は、第1プローブを使用してサンプルDNAにPCRを適用し、同時に第2プローブを使用して制御DNAにPCRを適用すると共に、PCRプロセスを認証するべく制御プローブをも使用している既知の「三重アッセイ(triplet assay)」に基づいたものであろう。いくつかのアッセイにおいては、適用される複数のPCRプロセスが存在すると共に、制御DNA及び1つ又は複数の制御プローブを使用可能である。本発明の実施例は、同一のサンプル内において、且つ、同一時点において、5つ以上のすべてのこれらのプロセスの同時監視をサポートしている。
【0025】
従って、このような検出及び/又は監視において使用される既知の励起源は、既に波長によって弁別されてはいるが、PCRプロセスの監視に供給源変調を導入することは、大きな利益を具備している。類似した又はオーバーラップする蛍光波長レンジを放出することにより、2つの異なるプローブが2つの異なる励起源に対して良好に応答可能であるため、本発明の実施においては、波長によって励起放射の供給源を弁別する能力は、プローブ放出のドメインにまで持続されないことが判明している。
【0026】
本発明の実施例の更なる利益は、信号対雑音比の改善を通じた蛍光検出の改善された感度にある。
【0027】
前述のように、本発明の実施例を使用することにより、1つ又は複数の計測の実行や一定の期間にわたる放出の監視などの様々な目的に、放出を検出及び弁別可能であろう。
【0028】
本発明の実施例の第2の態様によれば、放射供給源による励起に応答して核酸増幅反応の過程においてサンプルから放出された蛍光放射を検出する装置が提供されており、この装置は、i)供給源からの励起放射によってサンプルを照射するサンプル照射器と、ii)検出可能な変調方式に従って励起放射を変調する変調構成と、iii)サンプルからの蛍光放射の放出を検出する放出検出器と、を有しており、放出検出器は、供給源に対するサンプルの応答を、放出検出器に対する1つ又は複数のその他の放射入力の存在下において、検出できるように、放出された放射内の前述の変調方式を検出するべく適合されている。
【0029】
その第2の態様における本発明の一実施例は、蛍光共鳴エネルギー移動を使用するプロセスにおいて、サンプル照射器は、少なくとも2つの異なる供給源からの励起放射によってサンプルを照射するべく適合されており、且つ、放出検出器は、サンプルの複数の異なる応答を検出するべく適合されており、それぞれの応答は、レポーターシステムの異なるプローブによって生成されており、それぞれのプローブは、供与体/受容体ペアを有している装置を有することが可能であろう。
【0030】
本発明の第3の態様によれば、サンプルから蛍光放出を検出する方法が提供されており、この方法は、少なくとも2つの蛍光放出を検出する段階を有しており、少なくとも2つの放出は、異なる個々の変調方式によって区別されている。
【0031】
その第3の態様における本発明の一実施例による方法においては、それぞれの蛍光放出の検出は、それぞれの蛍光放出に相応しい変調方式を検出することにより、別個に実行可能である。
【0032】
その第3の態様における本発明の実施例は、その第1及び第2の態様における本発明の実施例による装置を使用することにより、適用可能であろう。本発明の一態様又は任意の一実施例との関係において記述されている任意の特徴は、適宜、本発明の1つ又は複数のその他の態様又は実施例との関係において適用可能である。
【0033】
例えば、FRET法の唯一の要件は、供与体/受容体ペアが方法又はプロセスの過程において互いの関係において移動するということであるため、本発明の実施例は、非生物学的な方法及びプロセスに用途を見出すことも可能であろう。但し、サンプルが生物学的なサンプルから構成されている多数の用途が明らかに存在している。1つのこのような用途は、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応などの核酸増幅反応に基づいたプロセスである。但し、本発明の実施例の用途は、FRETに基づいたアッセイ及びPCRプロセス以外にも広がっている。例えば、変調による放出の区別は、サンプル内の異なるコンポーネントが励起放射に対する蛍光応答によってその位置を示している蛍光に基づいた画像生成においても有用であろう。FRETに基づいたアッセイ及びPCRプロセスと同様に、放出波長によっては容易に弁別できないが異なる励起源によって励起可能であるコンポーネントによって放出を弁別することが重要であろう。この場合にも、異なる供給源の固有の変調を、それに対する応答において検出可能であってよい。これは、CCDカメラなどの一般的な検出器が、内在的な波長弁別を欠いていると共に、感度、単純さ、及び費用の観点における結果としてのペナルティを伴う色分離を実現するためのフィルタ構成を必要としている画像生成アプリケーションにおいて特に好適であろう。
【0034】
以下、添付の図面を参照し、一例としてのみ、本発明の一実施例として、PCRアッセイにおいて使用される蛍光放射プローブモニタについて説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図1を参照すれば、アッセイ用のサンプルが、既知の方式において、サンプル供給入力100を介して、キャピラリーアセンブリ105を構成している導電性ポリマーによってコーティングされた15mmのガラスキャピラリーに供給されている。キャピラリーアセンブリ105には、加熱回路115に対する動的なフィードバック制御のためのポリマー及び赤外線サーモパイル110を介して、熱を供給する加熱回路115が提供されている。蛍光プローブの動作の監視において使用される励起放射170を、個々のレンズ140、155、ハーフミラー135、ダイクロイックミラー130、及び更なるレンズ125を介して、2つの供給源145、160からキャピラリーアセンブリ105に供給している。キャピラリー自体は、ビーデッド端部(beaded end)120を具備しており、これを通じて、励起放射170を受光すると共に、蛍光出力を供給している。このような構成は、既知のタイプである。ダイクロイックミラー130は、励起放射の波長を有する放射を反射するべく適合されており、従って、更なるレンズ125を介して励起放射をキャピラリーアセンブリ105に対して供給しているが、サンプル内に存在している蛍光プローブの波長を有する放射は透過している。従って、サンプルから放出された蛍光放射175は、更なるレンズ125によって集光されると共に、ダイクロイックミラー130により、異なる光経路に沿って放射検出器150に供給可能である。
【0036】
それぞれの供給源145、160の出力において、ショートパスフィルタ195、197を使用することにより、励起放射170を所望の波長に制限すると共に、寄生励起を遮断している。検出器150への入力において、ロングパスフィルタ196を使用することにより、サンプル内に存在している蛍光プローブ以外の供給源からの雑音を低減している。
【0037】
図2を参照すれば、それぞれのフィルタ195、196、197は、既知のタイプであり、且つ、任意選択により、いくつかの異なるフィルタリングアパーチャ205を有するディスク200から構成可能である。ディスク200を回転させることによって選択されたフィルタリングアパーチャ205をビームに対して提示可能であり、この結果、これを使用し、いくつかの異なる波長レンジの中のいずれかをフィルタリング可能である。図1に示されている構成においては、ロングパスフィルタ196のみがディスク200を有しており、ショートパスフィルタ195、197は、それぞれ、単純なフィルタしか有していない。
【0038】
再度図1を参照すれば、2つの供給源145、160は、それぞれ、360nm(紫)及び480nm(青)に中心を有する波長において励起放射170を放出している。それぞれの供給源は、駆動電流の供給によって励起放射を放出するべく駆動される発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)を有している。駆動電流における変動は、供給される励起放射の強度を変化させることになり、それぞれの供給源145、160は、正弦波に基づいた強度の変動を示すべく、変調構成180を介して駆動されている。周波数はそれぞれの供給源に固有のものであり、それぞれの供給源ごとに特徴的な変調方式を生成している。例えば、紫の供給源145は、5kHZにおいて変調可能であり、青の供給源160は、12kHZにおいて変調可能であろう。
【0039】
尚、5kHZ及び12kHZという前述の周波数は、一例に過ぎない。例えば、65Hz〜10MHzなどの広い周波数レンジ内のどこかにおいて変調を適用可能であろう。このレンジは、米国の商用電源周波数(60Hz)を大きく上回っているところから、最大では、それを超過した場合に蛍光緩和時間(約100ナノ秒)が有意となる周波数までをカバーしているため、適切である。
【0040】
使用可能であるフォトダイオードの駆動電流用の好適な変調構成180については、既知であり、従って、本明細書においてはその詳細な説明を省略することとする。1つの変調構成180は、実際には、複数の駆動電流出力を具備可能であり、従って、複数のフォトダイオード145、160の駆動電流を制御可能であろう。このような構成180は、それぞれの出力においてフォトダイオード145、160に供給される個々の駆動電流を設定する制御ソフトウェアを内蔵可能であろう。或いは、この代わりに、変調構成180は、実際には、個々の駆動電流を設定するべくそれぞれのものが独立的に制御可能である複数の別個の変調構成によって表現することも可能であろう。
【0041】
フォトダイオードに対する駆動電流の変動は、ダイオード出力における色のドリフトを生成する可能性があるが、これは、一般に、わずかであり、従って、問題にはならないであろう。但し、駆動電流の強度変調に対する1つの代替肢は、1つの又はそれぞれのフォトダイオード145、160の駆動電流に対して又は個々の出力ビームに対してオン/オフスイッチとして適用可能であるパルス幅又は反復レート変調である。この場合にも、適切な変調構成180については、既知であり、本明細書においては、詳細な説明を省略することとする。例えば、変調構成180は、1つ又は複数の出力ビームを選択的に遮断するべく、1つ又は複数の制御信号を1つ又は複数の光電変調器(図示されてはいない)に対して供給可能であろう。尚、パルスに基づいた変調は、色のドリフトを回避するが、フィルタリングによる除去を必要とすることになる高調波をシステムに導入し得る。
【0042】
キャピラリーアセンブリ105内の蛍光プローブは、既知の方式により、励起放射170に応答して蛍光を発することになる。キャピラリーアセンブリ105内において発生しているプロセスの進捗及び使用されている特定のプローブに応じて、1つ又は複数のプローブからの蛍光放射が、キャピラリーのビーデッド端部120を介して放出され、更なるレンズ125を介してピックアップされると共に、ロングパスフィルタ196を介して放射検出器150に供給されている。検出器150の適切な既知の形態は、関連する増幅器を有するフォトダイオードであり、この結果、1つ又は複数のプローブによって監視されている1つ又は複数のプロセスの活動レベルを表す増幅された電気出力信号を供給している。この出力信号は、信号アナライザ185に供給されており、且つ、モニタ190上において観察すると共に/又は保存可能である。
【0043】
放射検出器150の出力信号は、検出されている蛍光放射内の変動を反映することになる。従って、蛍光放射内の変調を生成することになる供給源の特徴的な変調方式は、検出器150の電気出力に継続されている。複数の供給源145、160が存在している場合には、複数の特徴的な変調方式が存在することになる。蛍光が、供給源145、160のそれぞれのものによって同一期間において刺激され、且つ、同一検出器によって検出されている場合には、これらの変調方式の両方が、検出器150の電気出力信号内に存在することになる。
【0044】
図3を参照すれば、一例は、例えば、駆動電流コントローラが、5kHZにおいて変調されている第1駆動電流信号300を第1供給源145に対して、そして、12kHZにおいて変調されている第2駆動電流信号305を第2供給源160に対して生成するというものであってよいであろう。次いで、これらは、独立的に、変調された蛍光をサンプル内において生成可能であり、これが、変調された電気出力信号310を検出器150において生成することになる。電気出力信号310は、重畳された両方の方式の周波数、即ち、5kHZ及び12kHZを含む更に複雑な変調を示すことになる。検出器の電気出力信号310内における変調方式のいずれか1つの存在又は不存在は、2つの異なる供給源145、160に対するプローブによる応答の存在又は不存在と、従って、サンプル内における関連するプロセス活動の存在又は不存在を示すことになる。
【0045】
更に図1を参照すれば、相対的に単純な方式で検出器150の電気出力310において個々の変調方式を検出するべく、検出器出力310を、同期検出を提供している既知のタイプの信号アナライザ185に供給している。又、信号アナライザ185は、変調構成180から5kHZ及び12kHZの第1及び第2駆動電流信号をも受信している。供給源145、160のそれぞれのものに対する別個の蛍光応答を識別するべく、これらの駆動電流信号をオシロスコープと共に使用して信号アナライザ185をチューニングすることにより、検出を要する2つの変調方式の周波数において検出器出力310をサンプリング可能である。
【0046】
図4を参照すれば、前述のように、同期検出と共に使用される変調の一代替形態においては、変調は、この代わりに、パルス幅又は反復レートなどのパルスに基づいた変調の形態をとることができよう。図4に示されている例においては、第1変調方式は、4:5のデューティ比を具備したパルス列400によって表されており、第2変調方式は、1:5のデューティ比を具備したパルス列405によって表されている。この結果、信号アナライザ185によって観察されるサンプル410の蛍光応答は、変調方式のそれぞれのものから派生した成分を提示可能であり、これらも既知の検出法によって分離可能である。
【0047】
前述のように、蛍光放出の寿命は、100ナノ秒のレベルである。従って、実際の最大変調周波数又はパルス反復レートは、約10MHzとなろう。最小値は、通常、システム内における雑音の潜在的な供給源を低減するべく、商用電源周波数(英国においては50Hzであり、米国において60Hzである)を上回るように設定されることになろう。適切なパルス幅、又はパルス幅における変調は、0.1マイクロ秒〜約10ミリ秒というレンジ内に位置することになり、これは、約100Hz〜10MHzのレンジの周波数ドメインにおいて検出可能である変調を生成することになる。
【0048】
図4に示されているように、パルス幅は変調されているが、パルス反復レートは、変調方式間において同一に留まっている。或いは、この代わりに、又は、これに加えて、パルス反復レートを変化させることによって変調方式を適用することも可能であろう。
【0049】
図5〜図7を参照すれば、いずれも同一サンプル内の、且つ、同一波長を具備したプローブの様々なペア500の応答が示されている。プローブのそれぞれのペア500は、変調された励起放射505に応答しており、この結果、変調された応答510を生成している。
【0050】
それぞれのケースにおいて、2つの供給源145、160が使用されており、その1つである紫(360nm)は、5kHZにおいて変調されており、もう1つの青(480nm)は、12kHZにおいて変調されている。図5及び図6を参照すれば、プローブの第1ペア500は、両方とも、520nmにおいて変調された蛍光510によって応答可能であり、プローブの第2ペア500は、いずれも、660nmにおいて変調された蛍光510によって応答可能であろう。プローブのこれらのペア500は、波長によっては弁別不可能であるが、これらは、供給源に対する駆動電流の2つの変調方式である5kHZ及び12kHZによって「ラベル付け」されているため、その個々の変調によって弁別可能である。
【0051】
図7を参照すれば、前述のものの一変形においては、プローブのペア500は、両方とも、ダーククエンチャDQ3を使用可能である。このケースにおいては、レポーターは、個々の供与体D1、D2となり、例えば、600nm及び620nmにおける蛍光を付与している。これらの波長は、明瞭に弁別するには、近接し過ぎている可能性があるが、この場合にも、検出された蛍光510は、供給源に対する駆動電流の変調方式である5kHZ及び12kHZを保持しており、従って、弁別可能である。
【0052】
図8を参照すれば、本発明の実施例の感度は、既知の変調されていない装置と比べて、非常に高いことが判明した。プローブ内において一般的に使用されている色素であるフルオレセインの異なる濃度を有する一連の溶液を使用することにより、変調された蛍光との関係において検出器出力において計測される電圧は、10pMのフルオレセインの濃度において雑音を上回る明瞭な信号を示し始めた。更に高い濃度においては、信号レベルが大幅に増大し、同一の傾向を検出する既知の構成によって実現されているものを数倍も上回っていた。
【0053】
以上の説明においては、複数の異なる供給源に対するサンプルによる蛍光応答の分離は、すべての供給源によるサンプルの同時照射を使用して実行可能であり、これらの供給源及びそれらに対する個々の応答は、固有の変調方式を使用することによって「ラベル付け」されている。異なる供給源に対する応答を波長によって識別することが既に知られている。異なるレポーターは、異なる波長において蛍光を発することが可能であり、検出器150においてフィルタを使用することにより、一度に1つのレポーターに検出を制限することが知られている。或いは、この代わりに、例えば、複数の光検出器を有する蛍光分光計又は蛍光計を使用することにより、更に高度な検出を実行することも可能である。適切なシステムの例は、Applied Biosystems 7700、Applied Biosystems 7000、Roche LightCycler、Cepheid SmartCycler、及びCorbett Rotor−Geneである。本発明の一実施例における変調及び波長弁別を使用することにより、格段に大きな数の蛍光応答を弁別することが可能になる。従って、蛍光応答の波長特性に起因し、FRETに基づいたアッセイにおいて波長弁別のみを使用して最大で4つの応答しか弁別できなかった場合にも、同時に単純な変調方式を使用することにより、弁別される応答の数が、16、又は、潜在的には、これを上回るものに到達可能である。これは、4つの変調方式及び異なる波長の4つの供給源の使用に基づいている。適切な供給源を提供するための発光ダイオードは、既に容易に入手可能である。
【0054】
別の利点は、複数の変調方式を同時に弁別可能であるという点にある。既知のシステムにおいては、しばしば、蛍光応答の様々な波長を検出するべく、シーケンシャル検出を実行する必要がある。従って、変調方式を使用することにより、サンプルの量を低減可能であると共に、全体的なアッセイの時間を極小化可能である。
【0055】
本発明の実施例においては、蛍光応答は、互いに弁別されるべく異なる波長である必要がないため、検出器150の前面のフィルタは、単純なロングパスフィルタであってよい。このような単純な光学構成は、放出フィルタを伴う既知の構成と比べて、キャピラリーチューブ105がマルチウェルプレートフォーマットによって置換されている場合などのその他のタイプのアッセイ構成において特に有用であろう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】モニタの概略的な平面図を示している。
【図2】図1のモニタ内において使用されるフィルタの概略正面図を示している。
【図3】図1のモニタの使用の際に存在可能である2つの異なる正弦波変調方式及び可能な検出出力を示している。
【図4】図1のモニタの使用の際に存在可能である2つの異なるパルス幅変調方式及び可能な検出出力を示している。
【図5】図1のモニタを使用するアッセイにおいて使用される弁別可能なプローブの1つのペアを概略的に示している。
【図6】図1のモニタを使用するアッセイにおいて使用される弁別可能なプローブの他の1つのペアを概略的に示している。
【図7】図1のモニタを使用するアッセイにおいて使用される弁別可能なプローブの更に他の1つのペアを概略的に示している。
【図8】図1のモニタを使用することによって実現可能である検出の限度を示している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、アッセイや画像生成に使用可能なものなどの蛍光に基づいた検出方法及び装置に関するものである。これは、蛍光顕微鏡検査用の方法及び装置、並びに、蛍光共鳴エネルギー移動に基づいた方法及び装置に具体的な用途を有している。
【背景技術】
【0002】
発光(luminescence)に基づいたアッセイ又は画像生成法においては、影響を受け易い分子を物理的、化学的、又は機械的な刺激によって励起することにより、検出可能な光を放出させている。放出光を使用することにより、分子の位置を検出可能であり、従って、これは、画像生成に使用可能であると共に/又は、これを使用することにより、プロセスにおける放出分子の関与を検出可能である。
【0003】
便利な形態の刺激は、影響を受け易い分子を含むサンプル上に導波可能な光であり、この形態の発光を蛍光と呼んでいる。放出光は、刺激光(stimulating light)のものとは異なる波長又は波長レンジを具備しており、この結果、刺激光の存在下において、相対的に容易に検出可能である。刺激光にしても、放出光にしても、必ずしも、可視スペクトルにあるものではないが、放出光を検出する適切な方法の存在が明らかに必要である。
【0004】
蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescent Resonant Energy Transfer:FRET)アッセイ法においては、サンプル内におけるプロセスの進捗を放出光から決定可能である。影響を受け易い部分には、2つのタイプが存在しており、これらのタイプは、供与体(donor)部分と受容体(acceptor)部分から構成されている。これらの部分は、別個の蛍光分子又は同一分子における異なるフルオロフォアグループ(fluorophore group)などの様々な形態をとることが可能であり、或いは、分子の形態を具備することなしに、例えば、蛍光ビーズ又は蛍光量子ドットなどのように粒子状であってもよい。供与体は、サンプルに供給された刺激光(本明細書においては、これを「励起放射」とも呼ぶ)に応答し、独力で蛍光を発する。しかしながら、受容体が物理的に近接している場合には、双極子間における励起エネルギーの移動が発生し、この結果、供与体の蛍光が消光され、この代わりに、受容体が蛍光を発することになる。これは、しばしば、「Forster」共鳴エネルギー移動とも呼ばれている。エネルギー移動の程度は、供与体と受容体間の離隔距離に依存している。FRETアッセイ法は、供与体/受容体ペアの物理的な近接性に対するプロセスの影響に基づいたものである。それらが互いに十分に近接している際には、供与体から受容体へのエネルギーの移動が発生し、ペアの全体的な蛍光出力は、この影響を受けることになる。ペアが離隔している場合には、エネルギーの移動が減少又は停止し、ペアの全体的な蛍光出力は、異なって検出可能である。従って、サンプル内の供与体/受容体ペアの物理的な近接性を変化させるプロセスにより、サンプルから放出される光のスペクトルコンテンツの変化が生じ、これを検出することにより、プロセスの進捗の尺度が得られる。
【0005】
供与体/受容体ペアを含む影響を受け易いフルオロフォアは、しばしば、「プローブ」と呼ばれる構造に組み込まれている。プローブは、特定の方式によってサンプル内において振舞い、この結果、そのプローブの場所から放出される蛍光が有用な情報を付与することになるという特性を具備している。例えば、プローブは、蛍光がそれらのサイトを示すことになる特定のサイトを占有可能であろう。FRETにおいては、プローブは、しばしば、アッセイの対象であるプロセスによって構築又は分割されるように、選択されており、供与体及び受容体は、プローブの構築又は分割に伴って近接又は離隔するように、プローブの異なる部分に配置されている。或いは、この代わりに、プローブは、複数のコンポーネントを具備することも可能であり、これらのコンポーネントは、それぞれ、供与体及び受容体を保持すると共に、アッセイの対象であるプロセスによって接近又は離隔することになる。
【0006】
供与体及び受容体フルオロフォアを提供する材料は、しばしば、色素と呼ばれており、このような色素の周知の例には、フルオレセイン(fluorescein)(青励起、緑放出:通常、供与体として使用されている)及びローダミン(rhodamine)(緑励起、赤放出:通常、受容体として使用されている)が含まれている。
【0007】
供与体/受容体ペアの物理的な近接性における変化は、様々な方法によって検出可能である。受容体は、供与体からエネルギーを受容した際に、独力で、但し、供与体が蛍光を発するものとは異なる波長において、蛍光を発することができる。従って、供与体又は受容体のこの波長における蛍光出力のレベルの変化を計測することにより、物理的な近接性の変化を検出可能である。供与体であるか受容体であるかを問わず、この変化を検出するべく監視されるものを「レポーター」と呼んでいる。いくつかの受容体は、それ自体は蛍光を発することなしに、供与体の蛍光を「消光」しているのみである。これらは、「ダーククエンチャ(dark quencher)」と呼ばれており、この場合には、必然的に供与体がレポーターである。レポーターを内蔵している監視又は検出構成は、一般的に、レポーターシステムと呼称可能である。
【0008】
又、受容体分子は、しばしば、「レセプタ」とも呼ばれているが、監視対象のプロセスに応じて、そのプロセスのその他の要素と混同される可能性があり、本明細書においては、受容体という用語を一般的に使用することとする。
【0009】
FRET法を使用して監視可能なプロセスには、蛋白質−蛋白質相互作用、核酸−核酸相互作用、及び蛋白質−核酸相互作用が含まれる。例えば、細胞膜内におけるレセプタに対する上皮成長因子(Epidermal Growth Factor:EGF)のバインディングにおいては、この際に、レセプタが二量化し、EGFの個々の単位のいくつかのものに、供与体分子及び受容体分子として標識が予め付与される。この膜内におけるレセプタの二量化により、少なくともいくつかの供与体/受容体分子ペアが近接し、これにより、前述のように、サンプルから放出される光のスペクトルコンテンツにおける検出可能な変化が発生する。2つの蛍光標識抗体を使用して抗原に対する同時バインディングを通じてFRETペアを形成し、抗体−抗原−抗体挟持複合体を形成することにより、或いは、ビーズの表面に固定されたキャプチャー抗体の作用因子を通じて抗原の存在下において蛍光ビーズの近傍に蛍光標識抗体を移動させることなどにより、同様の原理によって免疫アッセイ(immunoassay)を構築可能である。核酸相互作用の観点においては、細胞及び組織の染色のためのFISH(Fluorescence in situ hybridisation)において、(特に、「DNAチップ」におけるアレイフォーマットの)核酸ハイブリダイゼーションアッセイ(nuclei acid hybridisation assay)において、並びに、供与体/受容体ペアを含むシーケンス固有のプローブを試薬マスターミックスに追加可能であるDNA複製酵素の動作の検出において、FRET標識試薬を使用可能である。酵素は、DNAに沿って移動するのに伴ってプローブと遭遇し、これを開裂させ、これにより、供与体/受容体ペアを分離し、前述のように、この場合にも、放出光のスペクトルコンテンツにおける変化を引き起こす。
【0010】
酵素がDNAを複製する既知のプロセスの非常に良好な例がポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction:PCR)であり、この場合には、サンプルDNAの二重螺旋が、そのヌクレオチドの2つのストランド(strand)に変性し、次いで、それぞれのストランドをポリメラーゼの働きによって複写し、2つの新しい二重螺旋を生成している。このプロセスをいくつかの加熱及び冷却サイクルを使用して反復することにより、サンプルDNAの量における大きな増大を得ている。この複写プロセスは、テンプレートとして使用されるそれぞれのストランドに対して「プライマ」をバインドすることによってトリガされている。プライマとは、DNAの変性ストランド内においてヌクレオチドの相補的なシーケンスに対してバインド可能である特定の順序のヌクレオチドの単一チェーンである。次いで、このプライマから開始し、ポリメラーゼは、テンプレートストランドを「判読」すると共に、これを相補的なヌクレオチドと非常に迅速に一致させることができる。この結果が、最初のものに代わる2つの新しい螺旋であり、このそれぞれは、オリジナルのストランドの中の1つのものにその新しく組み立てられた相補的なストランドを加えたものから構成されている。
【0011】
又、PCRプロセスを監視するべく、1つ又は複数のプローブをDNAの変性ストランドにバインドしている。プローブは、プライマと同一の原理を踏襲しているが、複写をトリガすることはない。この代わりに、これは、供与体、受容体、又はこれらの両方を保持しており、且つ、ストランドに沿った1つ又は複数の位置にバインドする。この結果、これが、プライマからストランドに沿って進入するのに伴ってポリメラーゼによって加水分解された場合に、結果的に供与体/受容体ペアが分離され、FRETに対する計測可能な変化を検出可能である。
【0012】
供与体/受容体ペアを使用しており、且つ、従って、FRETに基づいたアッセイにおいて有用であるその他のプローブには、ターゲットコードがストランド内に存在している場合にストランドに沿って隣接位置にバインドすることによって物理的な近接状態となった異なる構造上に供与体及び受容体が保持されたデュアルハイブリダイゼーションを使用するプローブ、ループせずにストランドに対してバインドし、これにより、供与体/受容体ペアを分離するループ構造のそれぞれの端部に供与体及び受容体が保持された「分子ビーコン」、並びに、供与体/受容体ペアが標識プローブ及び挿入色素である「Resonsense(登録商標)」が含まれている。
【0013】
PCRプロセス及びFRETアッセイ法については、Horizon Bioscience社から2004年に出版されたEdwards、Logan、及びSaunders編集による「Real−Time PCR: An Essential Guide」(ISBN 0−9545232−7−X)に記述されている。これからわかるように、1つのサンプルに関する計測値を多重化することが知られている。サンプル内において発生可能である複数のプロセスが存在可能であり、これらは、異なるプローブを使用して別個に検出可能であり、そして、これらのプローブは、異なる供与体/受容体ペアの組み合わせを保持することによって「ラベル付け」されている。例えば、供与体/受容体ペアは、異なる供与体分子の使用、異なる波長レンジにおける蛍光発光、又は異なる受容体分子の使用という点において異なることができる。複数のタイプの供与体が存在する場合には、1つのタイプの受容体分子が複数のタイプの供与体から共鳴エネルギーを受容する「ユニバーサル受容体」を使用することが知られている。受容体の蛍光のものである1つの波長を検出するだけでよいため、ユニバーサル受容体法によれば、検出が単純化される。供与体のタイプに応じて、複数波長の励起放射を提供する必要があろう。同様に、複数のタイプの受容体が存在する場合には、1つの供与体の共鳴エネルギーを複数の受容体によって受容可能である「ユニバーサル供与体」法を使用することも知られている。それぞれのプローブタイプは、同一の供与体を保持可能であるが、個々の受容体の蛍光波長レンジにより、異なるプローブタイプを弁別可能である。ユニバーサル供与体法及びユニバーサル受容体法は、いずれも、複数のユニバーサル供与体及び/又は受容体を使用することにより、プローブのグループが同一の供与体又は受容体を共有するように、拡張可能である。
【0014】
ユニバーサル受容体フォーマットを使用する既知の構成においては、受容体分子が、異なる供与体のそれぞれに応答し、同一の方法によって蛍光を発することになるため、受容体の蛍光を計測することにより、異なるプローブからの応答を互いに直接的に弁別することはできない。従って、例えば、一連の異なる励起波長において計測をシーケンシャルに実行してきた。この結果、核酸増幅反応などのプロセスにおける蛍光の変化の連続的な監視が不可能であった。異なる励起波長に対するサンプルの蛍光応答を直接的に弁別可能である場合にも、例えば、異なる供与体分子は、ユニバーサル「クエンチャ」フォーマット(universal ”quencher” format)において、異なる波長において蛍光を発するため、或いは、ユニバーサル供与体フォーマットが使用されており、且つ、異なる受容体分子が異なる波長において蛍光を発するため、非常に多数の異なるプローブの多重化を得ることは、実際には困難であろう。例えば、FRETをリアルタイムで使用してPCRのプロセスを監視する際には、略4つという実際的な限度が存在している。これは、蛍光の放出が、波長レンジにおいて相対的に広くなるという傾向を有しているためである。
【発明の開示】
【0015】
本発明の実施例の第1の態様によれば、放射供給源による励起に応答したサンプルからの蛍光放射の放出を検出する装置が提供されており、この装置は、i)同一期間にわたって少なくとも2つの供給源からの励起放射によってサンプルを照射するサンプル照射器であって、2つの供給源は、異なる波長の励起放射を供給している、サンプル照射器と、ii)異なる個々の変調方式に従って前述の少なくとも2つの供給源のそれぞれのものの励起放射を変調する変調構成と、iii)サンプルからの蛍光放射の放出を検出する放出検出器と、を有しており、放出検出器は、前述の少なくとも2つの供給源に対するサンプルの応答を別個に検出できるように、放出された放射内の前述の異なる個々の変調方式のそれぞれを検出するべく適合されている。
【0016】
同一期間にわたって少なくとも2つの供給源からの励起放射を取り扱うことができるため、本発明の一実施例による装置は、少なくとも2つの供給源からの励起放射をサンプルに対して同一期間にわたって供給するべくサンプル照射器が設計されているという点において特徴付けられている。例えば、サンプル照射器は、サンプルに供給するために、前述の供給源の中の少なくとも1つの供給源から供給される励起放射を、前述の供給源の中の少なくとも1つのその他の供給源から供給される励起放射と共有された経路上に偏向させるべく、ハーフミラー又は2色性ミラー(ダイクロイックミラー)などの少なくとも1つの照射偏向器を有することができよう。
【0017】
本発明の実施例の1つの固有の特徴は、異なる供給源に応答したサンプルからの放出の波長が潜在的に同一であるか又はオーバーラッピング可能であるという事実にある。当然のことながら、これは、その代わりに、異なる放出をその変調方式によって弁別可能であるためである。従って、放出検出器は、異なる共有源に応答したサンプルからの蛍光放射の放出をフィルタリングする単一の又は共有されたフィルタを有することができよう。尚、単一の又は共有されたフィルタは、システム内の雑音を低減するのに有用ではあるが、異なる応答を分離するべく、複数の異なるフィルタ、即ち、実際には、複数の異なる放射経路を提供する必要はない。
【0018】
本発明の一実施例においては、蛍光応答の波長がそれぞれの供給源において同一である場合にも、同時に少なくとも2つの異なる励起源を使用することにより、サンプルを照射すると共に、供給源の中の1つのもののみによる励起に対するサンプルの蛍光応答を依然として弁別可能である。これは、サンプル放出内におけるそれぞれの放射供給源と関連した個別の変調方式を検出することによって実行可能である。従って、少なくとも2つの異なるプローブを使用することにより、同一のサンプルにおける少なくとも2つの異なるプロセス又は1つのプロセスの2つの異なる側面を検出すると共に、必要に応じて、その進捗を監視可能である。これは、サンプル放出内に1つの波長又は波長レンジしか存在しておらず、従って、サンプルが応答している励起源を弁別する方法として波長が機能しない場合にも、可能である。それぞれの個別の変調方式を使用することにより、励起源のそれぞれに応答して生成された蛍光内の波長又は波長レンジが同一である場合にもサンプル内のレポーターによって生成された蛍光内において検出可能である方式により、特定の励起源を効果的に「ラベル付け」又は刻み付けている。
【0019】
サンプル放出内に1つの波長又は波長レンジしか存在していないが、少なくとも2つの励起源が存在している状況は、複数の異なる供与体を有するユニバーサル受容体の使用を含んでいる。従って、供与体が異なる励起源に応答しているが、たまたま同一又はオーバーラップする波長において蛍光を発するレポーターとして2つの異なる供与体を使用している(即ち、ユニバーサルクエンチャを有する)ケースにおいては、励起源を介した変調信号のインプリンティング(imprinting)を使用することにより、放出信号の分離分析を向上させることができる。
【0020】
従って、その第1の態様における本発明の一実施例は、サンプルからの蛍光放射の放出を検出する蛍光共鳴エネルギー移動アッセイにおいて使用する装置を有することが可能であり、サンプルは、少なくとも2つの異なるプローブを含んでおり、それぞれのプローブは、供与体/受容体ペアを有しており、前述の少なくとも2つの供給源それぞれの励起放射の波長は、サンプル内の異なるそれぞれのプローブからの応答を励起するべく選択されており、放出検出器は、前述の少なくとも2つの供給源に対する少なくとも2つの異なるプローブの応答を別個に検出できるように、放出された放射内の前述の異なる個々の変調方式のそれぞれを検出するべく適合されている。
【0021】
本発明の実施例において使用される変調構成の便利な形態は、放射供給源の振幅又は強度の周期的な変調を適用して個別の変調方式を付与するものである。放射供給源が発光ダイオードである場合には、これは、例えば、ダイオードに対する駆動電流における正弦波変動によって実行可能であろう。或いは、この代わりに、例えば、光電子変調器、振動シャッター、又は離隔したアパーチャを有する回転ホイールを供給源とサンプルの間の放射経路内に挿入することにより、変調を供給源の放出放射に印加することも可能であろう。この場合には、供給源によって放出される励起放射は、パルス列を有することが可能であり、変調構成は、パルス列の1つ又は複数のパラメータを制御し、その供給源用の変調方式を付与するべく適合されている。この方法において変調可能であるパルス列のパラメータは、0.1キロヘルツ〜10メガヘルツのレンジのパルス周波数又は位相及び0.1マイクロ秒〜10マイクロ秒のレンジのパルス幅を含んでいる。
【0022】
複数の励起波長を使用することにより、検出可能であるサンプルによって付与される異なる応答の数を増大させることも1つの選択肢である。この場合には、放出検出器は、独立的に第1及び第2波長(又は、波長レンジ)において蛍光放射の放出を検出するべく適合可能であり、これにより、サンプルの少なくとも4つの異なる応答を、それぞれのケースにおいて、変調方式及び/又は波長により、別個に検出及び弁別可能である。異なる変調方式を使用することにより、この原理を、例えば、6つ以上の数の異なる応答に対して更に拡張可能である。
【0023】
同時に複数の励起波長の使用を可能にすることにより、本発明の実施例は、リアルタイムPCRなどのプロセスにおいて特に有用である動的な計測を実行するための能力を向上させている。リアルタイムPCRは、数十秒の時間スケールにおいて発生する非特異的な熱サイクルによって誘発された蛍光の変化を伴う非常に動的なシステムである。例えば、pH、温度、及び蛍光放出の波長レンジの間には、複雑な関係が存在可能である。但し、例えば、プライマ内において又は生成物ストランドのアニーリング及びメルティングにおいて動作する使用プローブからの蛍光報告は、数十分の1秒〜数秒において発生可能である。蛍光報告をシーケンシャルにしか検出できない場合には、誤差を導入すると共に更なる時間及びサンプル材料を所要可能であるアッセイの反復の必要性を伴うことなしには、入手可能な豊富な蛍光情報を完全に取得する時間が存在しないであろう。しかしながら、本発明の実施例を使用することにより、1つを上回る、実際には、いくつかのプローブからの報告を同時に検出可能である。
【0024】
従来は、最大で4つの異なる蛍光放出を弁別可能ではあったが、これには、多くの場合に、困難が伴っていた。本発明の一実施例を使用してそれぞれの励起源に「ラベル付け」することにより、この実際的なバリアが除去されることになり、この結果、はるかに大きな数の蛍光放出を弁別可能であり、これにより、多くの更なるプローブを同時に検出可能である。これが有効であるアッセイの例は、第1プローブを使用してサンプルDNAにPCRを適用し、同時に第2プローブを使用して制御DNAにPCRを適用すると共に、PCRプロセスを認証するべく制御プローブをも使用している既知の「三重アッセイ(triplet assay)」に基づいたものであろう。いくつかのアッセイにおいては、適用される複数のPCRプロセスが存在すると共に、制御DNA及び1つ又は複数の制御プローブを使用可能である。本発明の実施例は、同一のサンプル内において、且つ、同一時点において、5つ以上のすべてのこれらのプロセスの同時監視をサポートしている。
【0025】
従って、このような検出及び/又は監視において使用される既知の励起源は、既に波長によって弁別されてはいるが、PCRプロセスの監視に供給源変調を導入することは、大きな利益を具備している。類似した又はオーバーラップする蛍光波長レンジを放出することにより、2つの異なるプローブが2つの異なる励起源に対して良好に応答可能であるため、本発明の実施においては、波長によって励起放射の供給源を弁別する能力は、プローブ放出のドメインにまで持続されないことが判明している。
【0026】
本発明の実施例の更なる利益は、信号対雑音比の改善を通じた蛍光検出の改善された感度にある。
【0027】
前述のように、本発明の実施例を使用することにより、1つ又は複数の計測の実行や一定の期間にわたる放出の監視などの様々な目的に、放出を検出及び弁別可能であろう。
【0028】
本発明の実施例の第2の態様によれば、放射供給源による励起に応答して核酸増幅反応の過程においてサンプルから放出された蛍光放射を検出する装置が提供されており、この装置は、i)供給源からの励起放射によってサンプルを照射するサンプル照射器と、ii)検出可能な変調方式に従って励起放射を変調する変調構成と、iii)サンプルからの蛍光放射の放出を検出する放出検出器と、を有しており、放出検出器は、供給源に対するサンプルの応答を、放出検出器に対する1つ又は複数のその他の放射入力の存在下において、検出できるように、放出された放射内の前述の変調方式を検出するべく適合されている。
【0029】
その第2の態様における本発明の一実施例は、蛍光共鳴エネルギー移動を使用するプロセスにおいて、サンプル照射器は、少なくとも2つの異なる供給源からの励起放射によってサンプルを照射するべく適合されており、且つ、放出検出器は、サンプルの複数の異なる応答を検出するべく適合されており、それぞれの応答は、レポーターシステムの異なるプローブによって生成されており、それぞれのプローブは、供与体/受容体ペアを有している装置を有することが可能であろう。
【0030】
本発明の第3の態様によれば、サンプルから蛍光放出を検出する方法が提供されており、この方法は、少なくとも2つの蛍光放出を検出する段階を有しており、少なくとも2つの放出は、異なる個々の変調方式によって区別されている。
【0031】
その第3の態様における本発明の一実施例による方法においては、それぞれの蛍光放出の検出は、それぞれの蛍光放出に相応しい変調方式を検出することにより、別個に実行可能である。
【0032】
その第3の態様における本発明の実施例は、その第1及び第2の態様における本発明の実施例による装置を使用することにより、適用可能であろう。本発明の一態様又は任意の一実施例との関係において記述されている任意の特徴は、適宜、本発明の1つ又は複数のその他の態様又は実施例との関係において適用可能である。
【0033】
例えば、FRET法の唯一の要件は、供与体/受容体ペアが方法又はプロセスの過程において互いの関係において移動するということであるため、本発明の実施例は、非生物学的な方法及びプロセスに用途を見出すことも可能であろう。但し、サンプルが生物学的なサンプルから構成されている多数の用途が明らかに存在している。1つのこのような用途は、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応などの核酸増幅反応に基づいたプロセスである。但し、本発明の実施例の用途は、FRETに基づいたアッセイ及びPCRプロセス以外にも広がっている。例えば、変調による放出の区別は、サンプル内の異なるコンポーネントが励起放射に対する蛍光応答によってその位置を示している蛍光に基づいた画像生成においても有用であろう。FRETに基づいたアッセイ及びPCRプロセスと同様に、放出波長によっては容易に弁別できないが異なる励起源によって励起可能であるコンポーネントによって放出を弁別することが重要であろう。この場合にも、異なる供給源の固有の変調を、それに対する応答において検出可能であってよい。これは、CCDカメラなどの一般的な検出器が、内在的な波長弁別を欠いていると共に、感度、単純さ、及び費用の観点における結果としてのペナルティを伴う色分離を実現するためのフィルタ構成を必要としている画像生成アプリケーションにおいて特に好適であろう。
【0034】
以下、添付の図面を参照し、一例としてのみ、本発明の一実施例として、PCRアッセイにおいて使用される蛍光放射プローブモニタについて説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図1を参照すれば、アッセイ用のサンプルが、既知の方式において、サンプル供給入力100を介して、キャピラリーアセンブリ105を構成している導電性ポリマーによってコーティングされた15mmのガラスキャピラリーに供給されている。キャピラリーアセンブリ105には、加熱回路115に対する動的なフィードバック制御のためのポリマー及び赤外線サーモパイル110を介して、熱を供給する加熱回路115が提供されている。蛍光プローブの動作の監視において使用される励起放射170を、個々のレンズ140、155、ハーフミラー135、ダイクロイックミラー130、及び更なるレンズ125を介して、2つの供給源145、160からキャピラリーアセンブリ105に供給している。キャピラリー自体は、ビーデッド端部(beaded end)120を具備しており、これを通じて、励起放射170を受光すると共に、蛍光出力を供給している。このような構成は、既知のタイプである。ダイクロイックミラー130は、励起放射の波長を有する放射を反射するべく適合されており、従って、更なるレンズ125を介して励起放射をキャピラリーアセンブリ105に対して供給しているが、サンプル内に存在している蛍光プローブの波長を有する放射は透過している。従って、サンプルから放出された蛍光放射175は、更なるレンズ125によって集光されると共に、ダイクロイックミラー130により、異なる光経路に沿って放射検出器150に供給可能である。
【0036】
それぞれの供給源145、160の出力において、ショートパスフィルタ195、197を使用することにより、励起放射170を所望の波長に制限すると共に、寄生励起を遮断している。検出器150への入力において、ロングパスフィルタ196を使用することにより、サンプル内に存在している蛍光プローブ以外の供給源からの雑音を低減している。
【0037】
図2を参照すれば、それぞれのフィルタ195、196、197は、既知のタイプであり、且つ、任意選択により、いくつかの異なるフィルタリングアパーチャ205を有するディスク200から構成可能である。ディスク200を回転させることによって選択されたフィルタリングアパーチャ205をビームに対して提示可能であり、この結果、これを使用し、いくつかの異なる波長レンジの中のいずれかをフィルタリング可能である。図1に示されている構成においては、ロングパスフィルタ196のみがディスク200を有しており、ショートパスフィルタ195、197は、それぞれ、単純なフィルタしか有していない。
【0038】
再度図1を参照すれば、2つの供給源145、160は、それぞれ、360nm(紫)及び480nm(青)に中心を有する波長において励起放射170を放出している。それぞれの供給源は、駆動電流の供給によって励起放射を放出するべく駆動される発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)を有している。駆動電流における変動は、供給される励起放射の強度を変化させることになり、それぞれの供給源145、160は、正弦波に基づいた強度の変動を示すべく、変調構成180を介して駆動されている。周波数はそれぞれの供給源に固有のものであり、それぞれの供給源ごとに特徴的な変調方式を生成している。例えば、紫の供給源145は、5kHZにおいて変調可能であり、青の供給源160は、12kHZにおいて変調可能であろう。
【0039】
尚、5kHZ及び12kHZという前述の周波数は、一例に過ぎない。例えば、65Hz〜10MHzなどの広い周波数レンジ内のどこかにおいて変調を適用可能であろう。このレンジは、米国の商用電源周波数(60Hz)を大きく上回っているところから、最大では、それを超過した場合に蛍光緩和時間(約100ナノ秒)が有意となる周波数までをカバーしているため、適切である。
【0040】
使用可能であるフォトダイオードの駆動電流用の好適な変調構成180については、既知であり、従って、本明細書においてはその詳細な説明を省略することとする。1つの変調構成180は、実際には、複数の駆動電流出力を具備可能であり、従って、複数のフォトダイオード145、160の駆動電流を制御可能であろう。このような構成180は、それぞれの出力においてフォトダイオード145、160に供給される個々の駆動電流を設定する制御ソフトウェアを内蔵可能であろう。或いは、この代わりに、変調構成180は、実際には、個々の駆動電流を設定するべくそれぞれのものが独立的に制御可能である複数の別個の変調構成によって表現することも可能であろう。
【0041】
フォトダイオードに対する駆動電流の変動は、ダイオード出力における色のドリフトを生成する可能性があるが、これは、一般に、わずかであり、従って、問題にはならないであろう。但し、駆動電流の強度変調に対する1つの代替肢は、1つの又はそれぞれのフォトダイオード145、160の駆動電流に対して又は個々の出力ビームに対してオン/オフスイッチとして適用可能であるパルス幅又は反復レート変調である。この場合にも、適切な変調構成180については、既知であり、本明細書においては、詳細な説明を省略することとする。例えば、変調構成180は、1つ又は複数の出力ビームを選択的に遮断するべく、1つ又は複数の制御信号を1つ又は複数の光電変調器(図示されてはいない)に対して供給可能であろう。尚、パルスに基づいた変調は、色のドリフトを回避するが、フィルタリングによる除去を必要とすることになる高調波をシステムに導入し得る。
【0042】
キャピラリーアセンブリ105内の蛍光プローブは、既知の方式により、励起放射170に応答して蛍光を発することになる。キャピラリーアセンブリ105内において発生しているプロセスの進捗及び使用されている特定のプローブに応じて、1つ又は複数のプローブからの蛍光放射が、キャピラリーのビーデッド端部120を介して放出され、更なるレンズ125を介してピックアップされると共に、ロングパスフィルタ196を介して放射検出器150に供給されている。検出器150の適切な既知の形態は、関連する増幅器を有するフォトダイオードであり、この結果、1つ又は複数のプローブによって監視されている1つ又は複数のプロセスの活動レベルを表す増幅された電気出力信号を供給している。この出力信号は、信号アナライザ185に供給されており、且つ、モニタ190上において観察すると共に/又は保存可能である。
【0043】
放射検出器150の出力信号は、検出されている蛍光放射内の変動を反映することになる。従って、蛍光放射内の変調を生成することになる供給源の特徴的な変調方式は、検出器150の電気出力に継続されている。複数の供給源145、160が存在している場合には、複数の特徴的な変調方式が存在することになる。蛍光が、供給源145、160のそれぞれのものによって同一期間において刺激され、且つ、同一検出器によって検出されている場合には、これらの変調方式の両方が、検出器150の電気出力信号内に存在することになる。
【0044】
図3を参照すれば、一例は、例えば、駆動電流コントローラが、5kHZにおいて変調されている第1駆動電流信号300を第1供給源145に対して、そして、12kHZにおいて変調されている第2駆動電流信号305を第2供給源160に対して生成するというものであってよいであろう。次いで、これらは、独立的に、変調された蛍光をサンプル内において生成可能であり、これが、変調された電気出力信号310を検出器150において生成することになる。電気出力信号310は、重畳された両方の方式の周波数、即ち、5kHZ及び12kHZを含む更に複雑な変調を示すことになる。検出器の電気出力信号310内における変調方式のいずれか1つの存在又は不存在は、2つの異なる供給源145、160に対するプローブによる応答の存在又は不存在と、従って、サンプル内における関連するプロセス活動の存在又は不存在を示すことになる。
【0045】
更に図1を参照すれば、相対的に単純な方式で検出器150の電気出力310において個々の変調方式を検出するべく、検出器出力310を、同期検出を提供している既知のタイプの信号アナライザ185に供給している。又、信号アナライザ185は、変調構成180から5kHZ及び12kHZの第1及び第2駆動電流信号をも受信している。供給源145、160のそれぞれのものに対する別個の蛍光応答を識別するべく、これらの駆動電流信号をオシロスコープと共に使用して信号アナライザ185をチューニングすることにより、検出を要する2つの変調方式の周波数において検出器出力310をサンプリング可能である。
【0046】
図4を参照すれば、前述のように、同期検出と共に使用される変調の一代替形態においては、変調は、この代わりに、パルス幅又は反復レートなどのパルスに基づいた変調の形態をとることができよう。図4に示されている例においては、第1変調方式は、4:5のデューティ比を具備したパルス列400によって表されており、第2変調方式は、1:5のデューティ比を具備したパルス列405によって表されている。この結果、信号アナライザ185によって観察されるサンプル410の蛍光応答は、変調方式のそれぞれのものから派生した成分を提示可能であり、これらも既知の検出法によって分離可能である。
【0047】
前述のように、蛍光放出の寿命は、100ナノ秒のレベルである。従って、実際の最大変調周波数又はパルス反復レートは、約10MHzとなろう。最小値は、通常、システム内における雑音の潜在的な供給源を低減するべく、商用電源周波数(英国においては50Hzであり、米国において60Hzである)を上回るように設定されることになろう。適切なパルス幅、又はパルス幅における変調は、0.1マイクロ秒〜約10ミリ秒というレンジ内に位置することになり、これは、約100Hz〜10MHzのレンジの周波数ドメインにおいて検出可能である変調を生成することになる。
【0048】
図4に示されているように、パルス幅は変調されているが、パルス反復レートは、変調方式間において同一に留まっている。或いは、この代わりに、又は、これに加えて、パルス反復レートを変化させることによって変調方式を適用することも可能であろう。
【0049】
図5〜図7を参照すれば、いずれも同一サンプル内の、且つ、同一波長を具備したプローブの様々なペア500の応答が示されている。プローブのそれぞれのペア500は、変調された励起放射505に応答しており、この結果、変調された応答510を生成している。
【0050】
それぞれのケースにおいて、2つの供給源145、160が使用されており、その1つである紫(360nm)は、5kHZにおいて変調されており、もう1つの青(480nm)は、12kHZにおいて変調されている。図5及び図6を参照すれば、プローブの第1ペア500は、両方とも、520nmにおいて変調された蛍光510によって応答可能であり、プローブの第2ペア500は、いずれも、660nmにおいて変調された蛍光510によって応答可能であろう。プローブのこれらのペア500は、波長によっては弁別不可能であるが、これらは、供給源に対する駆動電流の2つの変調方式である5kHZ及び12kHZによって「ラベル付け」されているため、その個々の変調によって弁別可能である。
【0051】
図7を参照すれば、前述のものの一変形においては、プローブのペア500は、両方とも、ダーククエンチャDQ3を使用可能である。このケースにおいては、レポーターは、個々の供与体D1、D2となり、例えば、600nm及び620nmにおける蛍光を付与している。これらの波長は、明瞭に弁別するには、近接し過ぎている可能性があるが、この場合にも、検出された蛍光510は、供給源に対する駆動電流の変調方式である5kHZ及び12kHZを保持しており、従って、弁別可能である。
【0052】
図8を参照すれば、本発明の実施例の感度は、既知の変調されていない装置と比べて、非常に高いことが判明した。プローブ内において一般的に使用されている色素であるフルオレセインの異なる濃度を有する一連の溶液を使用することにより、変調された蛍光との関係において検出器出力において計測される電圧は、10pMのフルオレセインの濃度において雑音を上回る明瞭な信号を示し始めた。更に高い濃度においては、信号レベルが大幅に増大し、同一の傾向を検出する既知の構成によって実現されているものを数倍も上回っていた。
【0053】
以上の説明においては、複数の異なる供給源に対するサンプルによる蛍光応答の分離は、すべての供給源によるサンプルの同時照射を使用して実行可能であり、これらの供給源及びそれらに対する個々の応答は、固有の変調方式を使用することによって「ラベル付け」されている。異なる供給源に対する応答を波長によって識別することが既に知られている。異なるレポーターは、異なる波長において蛍光を発することが可能であり、検出器150においてフィルタを使用することにより、一度に1つのレポーターに検出を制限することが知られている。或いは、この代わりに、例えば、複数の光検出器を有する蛍光分光計又は蛍光計を使用することにより、更に高度な検出を実行することも可能である。適切なシステムの例は、Applied Biosystems 7700、Applied Biosystems 7000、Roche LightCycler、Cepheid SmartCycler、及びCorbett Rotor−Geneである。本発明の一実施例における変調及び波長弁別を使用することにより、格段に大きな数の蛍光応答を弁別することが可能になる。従って、蛍光応答の波長特性に起因し、FRETに基づいたアッセイにおいて波長弁別のみを使用して最大で4つの応答しか弁別できなかった場合にも、同時に単純な変調方式を使用することにより、弁別される応答の数が、16、又は、潜在的には、これを上回るものに到達可能である。これは、4つの変調方式及び異なる波長の4つの供給源の使用に基づいている。適切な供給源を提供するための発光ダイオードは、既に容易に入手可能である。
【0054】
別の利点は、複数の変調方式を同時に弁別可能であるという点にある。既知のシステムにおいては、しばしば、蛍光応答の様々な波長を検出するべく、シーケンシャル検出を実行する必要がある。従って、変調方式を使用することにより、サンプルの量を低減可能であると共に、全体的なアッセイの時間を極小化可能である。
【0055】
本発明の実施例においては、蛍光応答は、互いに弁別されるべく異なる波長である必要がないため、検出器150の前面のフィルタは、単純なロングパスフィルタであってよい。このような単純な光学構成は、放出フィルタを伴う既知の構成と比べて、キャピラリーチューブ105がマルチウェルプレートフォーマットによって置換されている場合などのその他のタイプのアッセイ構成において特に有用であろう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】モニタの概略的な平面図を示している。
【図2】図1のモニタ内において使用されるフィルタの概略正面図を示している。
【図3】図1のモニタの使用の際に存在可能である2つの異なる正弦波変調方式及び可能な検出出力を示している。
【図4】図1のモニタの使用の際に存在可能である2つの異なるパルス幅変調方式及び可能な検出出力を示している。
【図5】図1のモニタを使用するアッセイにおいて使用される弁別可能なプローブの1つのペアを概略的に示している。
【図6】図1のモニタを使用するアッセイにおいて使用される弁別可能なプローブの他の1つのペアを概略的に示している。
【図7】図1のモニタを使用するアッセイにおいて使用される弁別可能なプローブの更に他の1つのペアを概略的に示している。
【図8】図1のモニタを使用することによって実現可能である検出の限度を示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射供給源による励起に応答したサンプルからの蛍光放射の放出を検出する装置において、
i)同一期間にわたって少なくとも2つの供給源からの励起放射によって前記サンプルを照射するサンプル照射器であって、前記2つの供給源は、異なる波長の励起放射を供給している、サンプル照射器と、
ii)異なる個々の変調方式に従って前記少なくとも2つの供給源それぞれの前記励起放射を変調する変調構成と、
iii)前記サンプルからの蛍光放射の放出を検出する放出検出器と、
を有しており、
前記放出検出器は、前記少なくとも2つの供給源に対する前記サンプルの応答を別個に検出できるように、放出された放射内において前記異なる個々の変調方式のそれぞれを検出するべく適合されている、ことを特徴とする装置。
【請求項2】
サンプルからの蛍光放射の放出を検出するべく蛍光共鳴エネルギー移動アッセイにおいて使用するために、前記サンプルは、少なくとも2つの異なるプローブを含んでおり、それぞれのプローブは、供与体/受容体ペアを有しており、前記少なくとも2つの供給源それぞれの前記励起放射の前記波長は、前記サンプル内の異なる個々のプローブからの応答を励起するべく選択されており、前記放出検出器は、前記少なくとも2つの供給源に対する前記少なくとも2つの異なるプローブの応答を別個に検出できるように、放出された放射内の前記異なる個々の変調方式のそれぞれを検出するべく適合されている請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記放出検出器は、第1波長における蛍光放射の放出と、第2波長における蛍光放射の放出と、を検出するべく適合されており、これにより、前記サンプルの少なくとも4つの異なる応答を、それぞれのケースにおいて、変調方式及び/又は波長により、別個に検出及び弁別可能である請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも4つの異なる応答は、前記サンプル内の少なくとも4つの異なるプローブの応答を有する請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記サンプル照射器は、前記同一期間にわたって2つを上回る数の供給源からの励起放射によって前記サンプルを照射するべく適合されており、前記変調構成は、異なる個々の変調方式に従って前記供給源それぞれの前記励起放射を変調するべく適合されており、これにより、前記サンプルの少なくとも6つの異なる応答を、それぞれのケースにおいて、変調方式及び/又は波長により、別個に検出及び弁別可能である請求項2〜4のいずれか一項記載の装置。
【請求項6】
前記サンプル照射器は、使用の際に、前記サンプルに供給するべく、前記供給源の中の少なくとも1つの供給源によって供給される励起放射を前記供給源の中の少なくと1つのその他の供給源によって供給される励起放射と共有された経路上に偏向させる少なくとも1つの放射偏向器を有する請求項1〜5のいずれか一項記載の装置。
【請求項7】
前記放出検出器は、前記サンプルからの蛍光放射の放出をフィルタリングするフィルタを有しており、前記異なる個々の変調方式の少なくとも2つの変調方式を示している放射が、前記装置の使用の際に、前記フィルタを介して前記同一期間にわたって検出される請求項1〜6のいずれか一項記載の装置。
【請求項8】
放射供給源による励起に応答して核酸増幅反応の過程においてサンプルから放出される蛍光放射を監視する装置において、
i)供給源からの励起放射によって前記サンプルを照射するサンプル照射器と、
ii)検出可能な変調方式に従って前記励起放射を変調する変調構成と、
iii)前記サンプルからの蛍光放射の放出を検出する放出検出器と、
を有しており、
前記放出検出器は、前記供給源に対する前記サンプルの応答を前記放出検出器に対する1つ又は複数のその他の放射入力の存在下において検出できるように、放出された放射内の前記変調方式を検出するべく適合されている、ことを特徴とする装置。
【請求項9】
前記放出検出器は、前記サンプルの1つ又は複数の応答を検出するべく適合されており、前記1つ又は複数の応答は、蛍光共鳴エネルギー移動を使用するプロセスにおける供与体/受容体ペアを有するレポーターシステムによって生成されている請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記サンプル照射器は、少なくとも2つの異なる供給源からの励起放射によって前記サンプルを照射するべく適合されており、前記放出検出器は、前記サンプルの複数の異なる応答を検出するべく適合されており、それぞれの応答は、前記レポーターシステムの異なるプローブによって生成されており、それぞれのプローブは、蛍光共鳴エネルギー移動を使用するプロセスにおける供与体/受容体ペアを有する請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記変調構成は、少なくとも1つの前記供給源の前記励起放射の強度を変調することにより、その供給源用の前記変調方式を付与するべく適合されている請求項1〜10のいずれか一項記載の装置。
【請求項12】
少なくとも1つの前記供給源によって放出された前記励起放射は、パルス列を有しており、前記変調構成は、前記パルス列を変調することにより、その供給源用の前記変調方式を付与するべく適合されている請求項1〜11のいずれか一項記載の装置。
【請求項13】
前記変調構成は、前記パルス列内のパルス幅を変調することにより、前記変調方式を付与するべく適合されている請求項12記載の装置。
【請求項14】
前記変調構成は、前記パルス列内のパルス反復レートを変調することにより、前記変調方式を付与するべく適合されている請求項12記載の装置。
【請求項15】
前記変調構成は、65Hz〜10MHzの周波数レンジ内の周波数として検出可能である変調を提供する請求項1〜14のいずれか一項記載の装置。
【請求項16】
前記サンプルは、生物学的なサンプルを有する請求項1〜15のいずれか一項記載の装置。
【請求項17】
前記サンプルからの蛍光放射の検出される放出をもたらすプロセスは、核酸増幅反応を有する請求項1〜16のいずれか一項記載の装置。
【請求項18】
前記サンプルからの蛍光放射の検出される放出をもたらすプロセスは、免疫アッセイを有する請求項1〜17のいずれか一項記載の装置。
【請求項19】
前記サンプルからの蛍光放射の検出される放出をもたらすプロセスは、核酸ハイブリダイゼーション反応を有する請求項1〜18のいずれか一項記載の装置。
【請求項20】
前記サンプルからの蛍光放射の検出される放出をもたらすプロセスは、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応を有する請求項1〜19のいずれか一項記載の装置。
【請求項21】
サンプルからの蛍光放出を検出する方法において、
少なくとも2つの蛍光放出を検出する段階を有しており、
前記少なくとも2つの放出は、異なる個々の変調方式によって区別されている、ことを特徴とする方法。
【請求項1】
放射供給源による励起に応答したサンプルからの蛍光放射の放出を検出する装置において、
i)同一期間にわたって少なくとも2つの供給源からの励起放射によって前記サンプルを照射するサンプル照射器であって、前記2つの供給源は、異なる波長の励起放射を供給している、サンプル照射器と、
ii)異なる個々の変調方式に従って前記少なくとも2つの供給源それぞれの前記励起放射を変調する変調構成と、
iii)前記サンプルからの蛍光放射の放出を検出する放出検出器と、
を有しており、
前記放出検出器は、前記少なくとも2つの供給源に対する前記サンプルの応答を別個に検出できるように、放出された放射内において前記異なる個々の変調方式のそれぞれを検出するべく適合されている、ことを特徴とする装置。
【請求項2】
サンプルからの蛍光放射の放出を検出するべく蛍光共鳴エネルギー移動アッセイにおいて使用するために、前記サンプルは、少なくとも2つの異なるプローブを含んでおり、それぞれのプローブは、供与体/受容体ペアを有しており、前記少なくとも2つの供給源それぞれの前記励起放射の前記波長は、前記サンプル内の異なる個々のプローブからの応答を励起するべく選択されており、前記放出検出器は、前記少なくとも2つの供給源に対する前記少なくとも2つの異なるプローブの応答を別個に検出できるように、放出された放射内の前記異なる個々の変調方式のそれぞれを検出するべく適合されている請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記放出検出器は、第1波長における蛍光放射の放出と、第2波長における蛍光放射の放出と、を検出するべく適合されており、これにより、前記サンプルの少なくとも4つの異なる応答を、それぞれのケースにおいて、変調方式及び/又は波長により、別個に検出及び弁別可能である請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも4つの異なる応答は、前記サンプル内の少なくとも4つの異なるプローブの応答を有する請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記サンプル照射器は、前記同一期間にわたって2つを上回る数の供給源からの励起放射によって前記サンプルを照射するべく適合されており、前記変調構成は、異なる個々の変調方式に従って前記供給源それぞれの前記励起放射を変調するべく適合されており、これにより、前記サンプルの少なくとも6つの異なる応答を、それぞれのケースにおいて、変調方式及び/又は波長により、別個に検出及び弁別可能である請求項2〜4のいずれか一項記載の装置。
【請求項6】
前記サンプル照射器は、使用の際に、前記サンプルに供給するべく、前記供給源の中の少なくとも1つの供給源によって供給される励起放射を前記供給源の中の少なくと1つのその他の供給源によって供給される励起放射と共有された経路上に偏向させる少なくとも1つの放射偏向器を有する請求項1〜5のいずれか一項記載の装置。
【請求項7】
前記放出検出器は、前記サンプルからの蛍光放射の放出をフィルタリングするフィルタを有しており、前記異なる個々の変調方式の少なくとも2つの変調方式を示している放射が、前記装置の使用の際に、前記フィルタを介して前記同一期間にわたって検出される請求項1〜6のいずれか一項記載の装置。
【請求項8】
放射供給源による励起に応答して核酸増幅反応の過程においてサンプルから放出される蛍光放射を監視する装置において、
i)供給源からの励起放射によって前記サンプルを照射するサンプル照射器と、
ii)検出可能な変調方式に従って前記励起放射を変調する変調構成と、
iii)前記サンプルからの蛍光放射の放出を検出する放出検出器と、
を有しており、
前記放出検出器は、前記供給源に対する前記サンプルの応答を前記放出検出器に対する1つ又は複数のその他の放射入力の存在下において検出できるように、放出された放射内の前記変調方式を検出するべく適合されている、ことを特徴とする装置。
【請求項9】
前記放出検出器は、前記サンプルの1つ又は複数の応答を検出するべく適合されており、前記1つ又は複数の応答は、蛍光共鳴エネルギー移動を使用するプロセスにおける供与体/受容体ペアを有するレポーターシステムによって生成されている請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記サンプル照射器は、少なくとも2つの異なる供給源からの励起放射によって前記サンプルを照射するべく適合されており、前記放出検出器は、前記サンプルの複数の異なる応答を検出するべく適合されており、それぞれの応答は、前記レポーターシステムの異なるプローブによって生成されており、それぞれのプローブは、蛍光共鳴エネルギー移動を使用するプロセスにおける供与体/受容体ペアを有する請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記変調構成は、少なくとも1つの前記供給源の前記励起放射の強度を変調することにより、その供給源用の前記変調方式を付与するべく適合されている請求項1〜10のいずれか一項記載の装置。
【請求項12】
少なくとも1つの前記供給源によって放出された前記励起放射は、パルス列を有しており、前記変調構成は、前記パルス列を変調することにより、その供給源用の前記変調方式を付与するべく適合されている請求項1〜11のいずれか一項記載の装置。
【請求項13】
前記変調構成は、前記パルス列内のパルス幅を変調することにより、前記変調方式を付与するべく適合されている請求項12記載の装置。
【請求項14】
前記変調構成は、前記パルス列内のパルス反復レートを変調することにより、前記変調方式を付与するべく適合されている請求項12記載の装置。
【請求項15】
前記変調構成は、65Hz〜10MHzの周波数レンジ内の周波数として検出可能である変調を提供する請求項1〜14のいずれか一項記載の装置。
【請求項16】
前記サンプルは、生物学的なサンプルを有する請求項1〜15のいずれか一項記載の装置。
【請求項17】
前記サンプルからの蛍光放射の検出される放出をもたらすプロセスは、核酸増幅反応を有する請求項1〜16のいずれか一項記載の装置。
【請求項18】
前記サンプルからの蛍光放射の検出される放出をもたらすプロセスは、免疫アッセイを有する請求項1〜17のいずれか一項記載の装置。
【請求項19】
前記サンプルからの蛍光放射の検出される放出をもたらすプロセスは、核酸ハイブリダイゼーション反応を有する請求項1〜18のいずれか一項記載の装置。
【請求項20】
前記サンプルからの蛍光放射の検出される放出をもたらすプロセスは、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応を有する請求項1〜19のいずれか一項記載の装置。
【請求項21】
サンプルからの蛍光放出を検出する方法において、
少なくとも2つの蛍光放出を検出する段階を有しており、
前記少なくとも2つの放出は、異なる個々の変調方式によって区別されている、ことを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【公表番号】特表2009−518638(P2009−518638A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543905(P2008−543905)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004592
【国際公開番号】WO2007/066126
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(506072055)エニグマ ディアグノスティックス リミテッド (13)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004592
【国際公開番号】WO2007/066126
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(506072055)エニグマ ディアグノスティックス リミテッド (13)
【Fターム(参考)】
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