説明

蛍光カーペット

【課題】蓄光顔料による避難誘導標識等が、明るい常態では目に付かず、停電した非常時の暗闇に蛍光を放って初めて目視可能となり、而も、靴裏に擦られて剥脱するようなことがなく、内装材としての装飾性と床材としての耐摩耗性を兼ね備えた蛍光カーペットを得る。
【解決手段】パイル層11とパイル14の下端を把持・係止する基布15とから成るパイル布帛によって構成されるカーペットのパイル層のパイル繊維先端13と基布15の間に蓄光顔料を介在させる。蓄光顔料は、それを繊維ポリマーに練り込んで蛍光繊維に調製し、或いは、それをバインダー樹脂と混合した液状蓄光組成物に調製し、それをベースシート18に積層して蛍光シート17とし、パイル繊維先端13と基布15の間に介在させることも出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、停電時の暗闇に蛍光を放つ蛍光カーペットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
蓄光顔料を繊維ポリマーに練り込んで紡糸した蛍光繊維をパイル繊維に用いた蛍光カーペット(例えば、特許文献1、2、3参照)、或いは、蓄光顔料を配合した塗料によって避難誘導標識等を表面パイル面に印捺した蛍光カーペット(例えば、特許文献4、5参照)は公知である。
アルミン酸塩蛍光体(M・Al24 、M;カルシウム、ストロンチウム、バリウム、マグネシウム)にユウロピウム、ジスプロシウム、ネオジウム等の金属イオン賦活剤を付与した蓄光性蛍光体は、暗闇に放つ蛍光ないし燐光の残光時間が長く、繊維ポリマーや蛍光塗料に配合され、床材表面に避難誘導標識等を表示するために使用されている(例えば、特許文献3、6、7、8、9、10、11参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平09−299313号公報
【特許文献2】特開平09−299215号公報
【特許文献3】特開2002−105762号公報
【特許文献4】特開2002−142956号公報
【特許文献5】実開昭58−183179号公報
【特許文献6】特開平07−011250号公報
【特許文献7】特開平10−250006号公報
【特許文献8】特開平09−111678号公報
【特許文献9】特開2003−171867号公報
【特許文献10】特許第3127198号公報(特開平09−031369)
【特許文献11】特許第3546320号公報(特開平10−114030)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来公知の蛍光カーペットや蛍光床材では、蓄光顔料による避難誘導標識等が表面に露出しているので、それが明るい常態においては目障りになり、床面の美観を損なう。
そして、蛍光カーペットや蛍光床材の表面に露出した避難誘導標識等は、仮令透明樹脂の塗膜に被覆保護されていても、その被覆保護する塗膜自体が靴裏に擦られて摩耗し易く、特に、蛍光カーペットでは、1本1本のパイル繊維の先端に付着しているだけなので剥脱し易い。
【0005】
そこで本発明は、蓄光顔料による避難誘導標識等が、明るい常態では目に付かず、停電した非常時の暗闇に蛍光を放って初めて目視可能となり、而も、靴裏に擦られて剥脱するようなことがなく、内装材としての装飾性と床材としての耐摩耗性を兼ね備え、航空機、船舶、自動車、列車等の交通機関、特に非常時の避難誘導標識の必要な航空機の内装材に好適な蛍光カーペットを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る蛍光カーペットは、パイル層11とパイル14の下端を把持・係止する基布15とから成るパイル布帛によって構成され、パイル層のパイル繊維先端13と基布15の間に蓄光顔料が介在していることを第1の特徴とする。
【0007】
本発明に係る蛍光カーペットの第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、蓄光顔料がバインダー樹脂と共に蓄光組成物16を構成しており、その蓄光組成物16が、パイル14のパイル繊維先端13と基布15の間の内部のパイル繊維間に介在している点にある。
【0008】
本発明に係る蛍光カーペットの第3の特徴は、上記第1の特徴に加えて、蓄光顔料がバインダー樹脂と共に蓄光組成物16を構成して基布15の表面に固着している点にある。
【0009】
本発明に係る蛍光カーペットの第4の特徴は、上記第1の特徴に加えて、基布15の表面に蛍光シート17が積層されており、その蛍光シート17に蓄光顔料が介在している点にある。
【0010】
本発明に係る蛍光カーペットの第5の特徴は、上記第4の特徴に加えて、蛍光シート17が、蓄光顔料を繊維ポリマーに練り込んで紡糸された蛍光繊維によって構成されている点にある。
【0011】
本発明に係る蛍光カーペットの第6の特徴は、上記第4の特徴に加えて、蛍光シート17が、蓄光顔料とバインダー樹脂とから成る蓄光組成物16によって構成されている点にある。
【0012】
本発明に係る蛍光カーペットの第7の特徴は、上記第4の特徴に加えて、蛍光シート17が、蓄光顔料とバインダー樹脂とから成る蓄光組成物16をベースシート18に積層して構成されている点にある。
【0013】
本発明に係る蛍光カーペットの第8の特徴は、上記第4、第5、第6および第7の何れかの特徴に加えて、蛍光シート17が、基布15の表面に、接着剤19を介して接合されている点にある。
【0014】
本発明に係る蛍光カーペットの第9の特徴は、上記第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7および第8の何れかの特徴に加えて、蓄光顔料がパイル繊維先端13と基布15の間に部分的に介在し、パイル層11が、パイル繊維先端13と基布15の間に蓄光顔料が介在している発光パイル14aと、パイル繊維先端13と基布15の間に蓄光顔料が無介在の非発光パイル14bとによって構成されている点にある。
【0015】
本発明に係る蛍光カーペットの第10の特徴は、上記第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8および第9の何れかの特徴に加えて、パイル層11の嵩密度(δ)をパイル繊維の比重(ρ)で除して算定されるパイル層11の絶対嵩密度が0.03〜0.13g/cm3 である点にある。
【0016】
本発明に係る蛍光カーペットの第11の特徴は、上記第10の特徴に加えて、パイル層11の絶対嵩密度が0.065〜0.1g/cm3 である点にある。
【0017】
本発明に係る蛍光カーペットの第12の特徴は、上記第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10および第11の何れかの特徴に加えて、パイル層11の厚み(h)が4mm以下である点にある。
【0018】
本発明に係る蛍光カーペットの第13の特徴は、上記第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11および第12の何れかの特徴に加えて、パイル層11がパイル長(h)の長いハイパイルとパイル長(h)の短いローパイルとによって構成されており、ローパイルのパイル長(h)が4mm以下である点にある。
【0019】
本発明に係る蛍光カーペットの第14の特徴は、上記第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12および第13の何れかの特徴に加えて、蓄光顔料がアルミン酸ストロンチウムと賦活剤に成る蓄光性蛍光体である点にある。
【0020】
本発明に係る蛍光カーペットの第15の特徴は、上記第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13および第14の何れかの特徴に加えて、蓄光顔料の介在箇所のパイル14aの色彩の明度L値が25以上である点にある。
【発明の効果】
【0021】
プリント捺染の施された多くの捺染カーペットのパイル面では、パイルの先端から3〜4mmの先端部分しか着色されておらず、パイルの先端から4mm以上深く入り込んだ根元部分は未着色の生地のまま残されているが、その未着色の根元部分の色彩は、パイル面に露顕せず、パイル面に描出された捺染模様の美観が、その未着色の根元部分の色彩によって格別左右されず、その根元部分が未着色のまま残されているカーペットでも”捺染カーペット”として市販されている。本発明の蛍光カーペットは、その市販の”捺染カーペット”と同様に、蓄光顔料が、パイル繊維先端13と基布15との間に介在し、パイル面に露出していないので、明るい常態では目に付かず、従って、それが避難誘導標識等(24)を表示するものであっても目障りにならない。しかし、パイル繊維先端13を目視し得ない停電した非常時の暗闇においては、蓄光顔料が蛍光を放ち、その蛍光がパイル繊維の隙間を透過してパイル面に露顕し、暗闇において初めて目視可能となる。そして、蓄光顔料は、靴裏に擦られることのないパイル繊維先端13と基布15の間に介在するので、蛍光カーペットの使用状態においてパイル面から剥脱することはない。しかして、本発明によると、内装材としての装飾性と床材としての耐摩耗性を兼ね備えた蛍光カーペットが得られる。一方、そのように蓄光顔料がパイル層内部に介在していても、パイル繊維は起立状態にあり、その起立したパイル繊維間に外部光が入り込むので、明るい常態において蓄光顔料が光エネルギーを吸収して蓄え、暗闇においては蓄光顔料の蛍光がパイル繊維間の隙間を透過してパイル面に現われ、それによる避難誘導標識等(24)が目視可能となり、蓄光顔料をカーペットに適用する所期の目的が達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
日光や屋内照明による外部光や蓄光顔料からの蛍光がパイル繊維間の隙間を透過し易くするためには、パイル層の絶対嵩密度を0.13g/cm3 以下にし、パイル繊維間に隙間が出来易くする。しかし、パイル層の絶対嵩密度が余り低くなると、カーペットのクッション性、吸音性、保温性等の機能性や耐久性が損なわれると共に、パイル層が摩耗し易く、パイル繊維と共に蓄光顔料が剥脱し、パイル層による蓄光顔料の被覆保護効果が期待し難くなる。そこで、本発明では、パイル層11の絶対嵩密度を0.03g/cm3 以上としているが、好ましくは0.05〜0.1g/cm3 に、概して0.08g/cm3 前後(0.065〜0.095g/cm3 )にすることが望ましい。
【0023】
本発明では、パイル層の嵩密度を、パイル層の単位容積(1cm3 )に占めるパイル層の質量として表示される見掛けの比重ないし嵩密度(δ)ではなく、その見掛けの比重ないし嵩密度(δ)を、パイル層を構成しているパイル繊維の比重(ρ)で除して算定される”パイル層の絶対嵩密度”によって規定しているが、その理由は、パイル層の見掛けの比重ないし嵩密度(δ)が同じであっても、パイル繊維の比重(ρ)が変わればパイル層のパイル繊維間の空隙率(隙間)が変わるので、パイル層の見掛けの比重ないし嵩密度(δ)によっては、外部光や蛍光がパイル層を透過する度合いを規定することが出来ないことにある。
【0024】
パイル14の形態は、カットパイルでもループパイルでもよいが、パイル繊維が輪奈状を成していてパイル繊維間が分離し難く、その輪奈状を成すパイル繊維の形状からして嵩高な割りには構造的に押し潰され難く、又、蓄光顔料が輪奈状を成すパイル繊維に引っ掛かってパイル層内部から離脱し難い点では、パイル14の形態をループパイルにすることが推奨される。
【0025】
本発明において、蓄光組成物16を、パイル繊維先端13と基布15の間において、パイル14の内部のパイル繊維間に介在させるためには、パイル面に撥水撥油性防汚剤20を付与してパイル繊維先端13に液状蓄光組成物が付着し難くカーペットを前処理し、その後、液状蓄光組成物をパイル層に付与し、押圧して液状蓄光組成物をパイル層内部に含浸させる。そのようにすると、その押圧から解放されてパイル層11が元の厚み(嵩)を回復する過程において、パイル繊維先端13に付着していた液状蓄光組成物がパイル層内部へと吸収され、パイル14aの内部のパイル繊維間にだけ蓄光組成物を付与することが出来る。そのパイル層内部に吸収された液状蓄光組成物は、その後加熱して固化される。パイル面への撥水撥油性防汚剤20の付与は、蓄光顔料の介在箇所のパイル14aの色彩の明度L値を25以上に維持する上でも推奨される。
【0026】
蓄光顔料は、そのように液状蓄光組成物に調製してパイル内部のパイル繊維間に介在させるほか、バインダー樹脂と共に液状蓄光組成物に調製して基布15の表面に塗着することも出来る。又、蓄光顔料は、繊維ポリマーに練り込んで蛍光繊維に調製して蛍光シート17とし、或いは、バインダー樹脂と共に液状蓄光組成物に調製して蛍光シート17とし、或いは又、バインダー樹脂と共に調製した蓄光組成物をベースシート18に積層して蛍光シート17とし、それらの基布表面15に重ね合わせ、必要に応じてニードルパンチングを施し、或いは縫合し、或いは接着剤19によって接着する等、蛍光シート17を基布表面15に接合して、パイル繊維先端13と基布15の間に介在させることも出来る。
【0027】
蓄光顔料を液状蓄光組成物に調製して基布表面15に塗着したり、蛍光シート17に調製して基布表面15に積層する場合、パイル層11は、その蓄光組成物16の積層された基布15に、その蓄光組成物16の積層面をパイル面側に向けて、タフテッド機によってパイル糸21を差し込んで形成(タフティング)される。接着剤19によって蛍光シート17を基布表面15に接着する場合、接着剤19は基布の表面と蛍光シートの裏面の何れか一方に部分的(ドット状)に塗着するとよく、そのようにすると、基布15と蛍光シート17からニードルが受ける抵抗が少なく、タフティングが容易になる。
【0028】
蓄光顔料が外部光を吸収し易く、又、蓄光顔料の放つ蛍光がパイル面に現われ易くするためには、パイル繊維先端13(パイル層表面)と蓄光組成物16の積層との間の距離tが4mm以下になるように、概して1〜3mmになるようにするとよい。従って、パイル長hが5mm以上のカーペットでは、蛍光シート17、特にベースシート18の厚み(m)によって、パイル繊維先端13と蓄光組成物16の積層との間の距離(t)を調整する。そのように、蛍光シート17は、パイル長(h)が5mmを越えるカーペットに特に有効である。
【0029】
ベースシート18によってパイル繊維先端13と蓄光組成物16との距離tを調整するためには、ウレタンフォーム等の高倍率発泡樹脂シート、繊維ウエブの繊維間を軽く接着した樹脂綿、表裏二枚の編地間を連結糸で連結して空気層を表裏二枚の編地間に形成した立体経編地(ダブルラッシェル地)、ニードルパンチングフェルト、パイル布帛等の厚く嵩高なシート状物をベースシート18に使用する。そのように嵩高なベースシート18では、それが厚くても、基布15に植設されたパイル14が嵩高に開毛することを妨げたり、タフティングの妨げにもならない。ベースシート18には、パイル14を把持・係止する基布15のように、タフティング時にニードルによって破られない程度の強度や、カーペットの使用中に伸縮変形しない程度の寸法安定性は要求されない。
【0030】
蓄光顔料の放つ蛍光がパイル面に現われ易くするためには、蓄光組成物16に至るパイル繊維先端からのパイル層の深さ(t)を4mm以下にし、パイル層の絶対嵩密度を0.03〜0.13g/cm3 にすると共に、パイル糸21に色彩の明度L値が25以上となる淡色系の明るい繊維、特に艶消剤(酸化チタン)を殆ど含有せず、光沢のあるブライト繊維を使用することが推奨され、好ましくは、パイル14aの色彩の明度L値を50以上にする。パイル14の色彩の明度L値は、グレタグマクベス社(GretagMacbeth)の測色計”スペクトロリノ(Spectrolino)”によって測定される。
【0031】
蓄光組成物16は、ベースシート18に強く固着させる必要はなく、そのベースシート18との接着の程度は、タフティング過程で蓄光組成物16がベースシート18から剥脱しない程度でよい。そのように蓄光組成物16をベースシート18に軽く接着しても、カーペットの使用中にパイル層内部(11)に付着した塵埃が容易には除去し得ないのと同様に、カーペットの使用中に蓄光組成物16がパイル層内部(11)から離脱することはない。このことは、ベースシート18と基布15との接着の場合も同様であり、又、それ故、ベースシート18を基布15に接着剤19によって強固に接着することは必ずしも必要とされない。従って、パイル長(h)の長いカーペットでは、ベースシート18を基布15に単に重ね合わせただけでもよく、ニードルパンチングを施してベースシート18を基布15に仮係止させただけでも十分である。
【0032】
パイル長(h)が5mm以下の薄手のパイル層11では、薄手の布帛や紙、プラスチックフイルム等の薄手のシート状物や粘着テープをベースシート18に使用することが出来る。従って、装飾材として市販の蓄光性粘着テープは、そのまま蛍光シート17として使用することが出来る。
【0033】
蓄光顔料をパイル繊維先端13と基布15の間に部分的に介在させ、カーペットの表面を、パイル繊維先端13と基布15の間に蓄光顔料が介在している発光パイル14aと、パイル繊維先端13と基布15の間に蓄光顔料が無介在の非発光パイル14bとによって区分するのは、蓄光顔料の放つ蛍光が消灯時にカーペットの表面に模様状に現れ、その美観を看得し得るようにするため、又、停電した非常時の暗闇に蓄光顔料の放つ蛍光によって避難誘導標識24がパイル面に顕現するようにするためである。
【0034】
基布15の全面に蓄光組成物16を薄く積層するか薄手の蛍光シート17を積層すると、パイル層11がパイル長(h)の長いハイパイルとパイル長(h)の短いローパイルとによって構成されており、ローパイルのパイル長(h)が4mm以下の蛍光カーペットでは、そのローパイルが暗闇で蛍光を放つ発光パイル14aとなり、ハイパイルは暗闇で蛍光を放たない非発光パイル14bとなる。従って、ハイパイルとローパイルとのパイル長(h)の長短差によってパイル面に図柄を描出された蛍光カーペットでは、その図柄に沿って避難誘導標識24がパイル面に模様状に顕現することになる。
尚、避難誘導標識24がパイル面の所要の箇所に部分的に顕現するようにする場合には、基布15の所要の箇所に蓄光組成物16や蛍光シート17を部分的に積層することになる。
【0035】
蓄光顔料の使用量は、消灯後30分経過時の発光パイル14aの残光輝度が1.5〜4.5mcd/m2 になるように設定するとよい。蓄光顔料としては、アルミン酸ストロンチウムと賦活剤に成る蓄光性蛍光体を使用することが、その放つ蛍光の残光時間が長い点で有効である。アルミン酸ストロンチウムと賦活剤に成る蓄光性蛍光体は、本発明の技術的背景として先に説明の通り公知であり、それには一般市販のものを使用することが出来る。
【0036】
基布裏面にはバッキング剤22を塗布し、パイル糸21(バックステッチ)を基布15に接着固定する。バッキング剤22を塗布した基布裏面には裏材23を貼り合わせることも出来る。裏打層12は、そのバッキング剤22の塗膜や裏材23によって構成される。裏材23には、布帛や発泡樹脂シートが使用される。
【0037】
タイルカーペットでは、塩化ビニル樹脂やアスファルト、ポリオレフィン樹脂とガラス繊維メッシュ布帛、ガラス繊維不織布を重ねて積層し、厚い裏打層12が形成される。ダストコントロールマットとして使用されるカーペットでは、未加硫ゴムシートが裏材23に使用され、基布裏面に塗布したバッキング剤22の塗膜の上に未加硫ゴムシートを重ね合わせ、加熱加硫して一体化される。
【実施例】
【0038】
総繊度550dtexのポリエステル繊維糸条を経糸と緯糸に使用し、経糸密度29本/25.4mm、緯糸密度30本/25.4mm、目付け182g/m2 の織物を織成した。
【0039】
上記織物の片面に、アルミン酸ストロンチウムを主材とする市販の蓄光顔料60重量部と、アクリル系樹脂エマルジョン18重量部(固形分)と、界面活性剤1重量部と、イソプロピルアルコール1重量部と、水20重量部から成る蓄光組成物を、80メッシュ無双版シルクスクリーンによって塗布量150g/m2 (wet)の塗膜を印捺積層し、加熱乾燥してタフテッド一次基布(P)を調製した。
【0040】
上記織物の片面に、アルミン酸ストロンチウムを主材とする市販の蓄光顔料30重量部と、アクリル系樹脂エマルジョン33重量部(固形分)と、界面活性剤1重量部と、イソプロピルアルコール1重量部と、水35重量部から成る蓄光組成物を、80メッシュ無双版シルクスクリーンによって塗布量150g/m2 (wet)の塗膜を印捺積層し、加熱乾燥してタフテッド一次基布(Q)を調製した。
【0041】
(実施例1)
上記一次基布(P)の蓄光組成物塗膜をパイル面側に向け、単繊維繊度21dtex、総繊度1370dtex/2本双糸の淡ベージ色(明度L値;52)の原着ナイロンマルチフィラメント捲縮加工糸をパイル糸としてループパイルを上記一次基布(P)にタフティングし、ニードルゲージ(パイル横密度)8本/25.4mm、ステッチゲージ(パイル縦密度)8.9本/25.4mm、パイル長3mm、バックステッチを含む総厚み5mm、パイル層の絶対嵩密度0.07g/cm3 、パイル層目付239.4g/m2 、基布を含む総目付400g/m2 のタフテッドパイル布帛を製造し、スチレンブタジエン系ラテックスを裏打してタフテッドカーペットAに仕上げた。
【0042】
(実施例2)
上記一次基布(Q)の蓄光組成物塗膜をパイル面側に向け、単繊維繊度21dtex、総繊度1370dtex/2本双糸の淡ベージ色(明度L値;52)の原着ナイロンマルチフィラメント捲縮加工糸をパイル糸としてループパイルを上記一次基布(Q)にタフティングし、ニードルゲージ(パイル横密度)8本/25.4mm、ステッチゲージ(パイル縦密度)8.9本/25.4mm、パイル長3mm、バックステッチを含む総厚み5mm、パイル層の絶対嵩密度0.07g/cm3 、パイル層目付239.4g/m2 、基布を含む総目付400g/m2 のタフテッドパイル布帛を製造し、スチレンブタジエン系ラテックスを裏打してタフテッドカーペットBに仕上げた。
【0043】
(実施例3)
上記一次基布(P)の蓄光組成物塗膜をパイル面側に向け、単繊維繊度21dtex、総繊度1370dtex/2本双糸の淡ベージ色(明度L値;52)の原着ナイロンマルチフィラメント捲縮加工糸をパイル糸としてループパイルを上記一次基布(P)にタフティングし、ニードルゲージ(パイル横密度)8本/25.4mm、ステッチゲージ(パイル縦密度)8.3本、パイル長3mm、バックステッチを含む総厚み5mm、パイル層の絶対嵩密度0.065g/cm3 、パイル層目付222.6g/m2 のタフテッドパイル布帛を製造し、スチレンブタジエン系ラテックスを裏打してタフテッドカーペットCに仕上げた。
【0044】
(実施例4)
上記一次基布(Q)の蓄光組成物塗膜をパイル面側に向け、単繊維繊度21dtex、総繊度1370dtex/2本双糸の淡ベージ色(明度L値;52)の原着ナイロンマルチフィラメント捲縮加工糸をパイル糸としてループパイルを上記一次基布(Q)にタフティングし、ニードルゲージ(パイル横密度)8本/25.4mm、ステッチゲージ(パイル縦密度)8.3本、パイル長3mm、バックステッチを含む総厚み5mm、パイル層の絶対嵩密度0.065g/cm3 、パイル層目付222.6g/m2 のタフテッドパイル布帛を製造し、スチレンブタジエン系ラテックスを裏打してタフテッドカーペットDに仕上げた。
【0045】
上記実施例1〜4に係るタフテッドカーペットA〜Dを、パイル面を上向きにして暗室内の水平な 床面に敷き込んで24時間放置し、それらのタフテッドカーペットA〜Dのパイル面での照度を300ルックスになる市販の蛍光灯を10分間照射して消灯し、その消灯後5分おきにパイル面での残光輝度を株式会社トプコン製の色彩輝度計BM−5Aによって測定し、次の表1と図4に示す通り、蓄光組成物がパイル繊維に覆われていても、それらのタフテッドカーペットA〜Dのパイル面が消灯後10分間以上蛍光を放ち、停電した非常時の暗闇の中で避難誘導標識機能を発揮することが確認された。
【0046】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る蛍光カーペットの一部切截斜視図である。
【図2】本発明に係る蛍光カーペットの断面図である。
【図3】本発明に係る蛍光カーペットの断面図である。
【図4】本発明に係る蛍光カーペットの消灯後の残光輝度変化曲線図である。
【図5】本発明に係る蛍光カーペットの表面図である。
【符号の説明】
【0048】
11:パイル層
12:裏打層
13:パイル繊維先端
14:パイル
15:基布
16:蓄光組成物
17:蛍光シート
18:ベースシート
19:接着剤
20:防汚剤
21:パイル糸
22:バッキング剤
23:裏材
24:標識

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイルの下端を把持・係止する基布とパイル層に成るパイル布帛によって構成され、パイル層のパイル繊維先端と基布の間に蓄光顔料が介在している蛍光カーペット。
【請求項2】
蓄光顔料がバインダー樹脂と共に蓄光組成物を構成しており、その蓄光組成物が、パイルのパイル繊維先端と基布の間の内部のパイル繊維間に介在している前掲請求項1に記載の蛍光カーペット。
【請求項3】
蓄光顔料がバインダー樹脂と共に蓄光組成物を構成して基布の表面に固着している前掲請求項1に記載の蛍光カーペット。
【請求項4】
基布の表面に蛍光シートが積層されており、その蛍光シートに蓄光顔料が介在している前掲請求項1に記載の蛍光カーペット。
【請求項5】
蛍光シートが、蓄光顔料を繊維ポリマーに練り込んで紡糸された蛍光繊維によって構成されている前掲請求項4に記載の蛍光カーペット。
【請求項6】
蛍光シートが、蓄光顔料とバインダー樹脂とから成る蓄光組成物によって構成されている前掲請求項4に記載の蛍光カーペット。
【請求項7】
蛍光シートが、蓄光顔料とバインダー樹脂とから成る蓄光組成物をベースシートに積層して構成されている前掲請求項4に記載の蛍光カーペット。
【請求項8】
蛍光シートが、基布の表面に接着剤を介して接合されている前掲請求項4と5と6と7の何れかに記載の蛍光カーペット。
【請求項9】
蓄光顔料がパイル繊維先端と基布の間に部分的に介在し、カーペットの表面が、パイル繊維先端と基布の間に蓄光顔料が介在している発光パイルと、パイル繊維先端と基布の間に蓄光顔料が無介在の非発光パイルとによって区分されている前掲請求項1と2と3と4と5と6と7と8の何れかに記載の蛍光カーペット。
【請求項10】
パイル層の絶対嵩密度が0.03〜0.13g/cm3 である前掲請求項1と2と3と4と5と6と7と8と9の何れかに記載の蛍光カーペット。
【請求項11】
パイル層の嵩密度(δ)をパイル繊維の比重(ρ)で除して算定されるパイル層の絶対嵩密度が0.065〜0.1g/cm3 である前掲請求項10に記載の蛍光カーペット。
【請求項12】
パイル層の厚みが4mm以下である前掲請求項1と2と3と4と5と6と7と8と9と10と11の何れかに記載の蛍光カーペット。
【請求項13】
パイル層がパイル長の長いハイパイルと短いローパイルとによって構成されており、ローパイルのパイル長が4mm以下である前掲請求項1と2と3と4と5と6と7と8と9と10と11と12の何れかに記載の蛍光カーペット。
【請求項14】
蓄光顔料が、アルミン酸ストロンチウムと賦活剤に成る蓄光性蛍光体である前掲請求項1と2と3と4と5と6と7と8と9と10と11と12と13の何れかに記載の蛍光カーペット。
【請求項15】
蓄光顔料の介在箇所のパイルの色彩の明度L値が25以上である前掲請求項1と2と3と4と5と6と7と8と9と10と11と12と13と14の何れかに記載の蛍光カーペット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−6160(P2008−6160A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−181250(P2006−181250)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000148151)株式会社川島織物セルコン (104)
【Fターム(参考)】