説明

蛍光ラベル付け

蛍光ラベル付け。この発明は、一般的に蛍光ラベル付けの技術と、蛍光信号データを処理する方法、装置およびコンピュータプログラムコードに関する。共通のエンティティに関連付けられた、異なる第一および第二の蛍光体のそれぞれについての第一および第二のラベル付け度信号のそれぞれを決定する方法であって、前記第一および第二の蛍光体から第一の蛍光信号を、第一の条件下で決定することと、前記第一および第二の蛍光体から第二の蛍光信号を、前記第一の条件とは異なる第二の条件下で決定することと、前記第一および第二の蛍光信号から前記第一および第二の蛍光体についての前記第一および第二のラベル付け度信号を決定することからなり、前記第一および第二のラベル付け度信号の前記決定は、前記蛍光体の間のエネルギーの結合を表す少なくとも1つの結合値(c12;c21)に応じたものである方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的に蛍光ラベル付けの技術と、蛍光信号データを処理する方法、装置および計算アルゴリズムを実装したコンピュータプログラムコードに関する。我々が記載する技術は、バイオテクノロジーの応用で特に有用である。
【背景技術】
【0002】
通常の生物学的問題は、空間的に一致した蛍光体(染料)からの光放射の測定である。生体セルの機能的構成要素の撮像はしばしば多数の蛍光マーカーの登録を要する。ラベル付けされた核酸(プローブ)のハイブリダイゼーションを定量化してマイクロアレイ(「遺伝子チップ」)中のターゲット分子を固定化することもまた、多数の構成要素の蛍光スペクトルの同時検出を要求することができる。
【0003】
我々は以前に、WO03/023376(その全体をここで参照によって組み込む)において、例えばDNA(デオキシリボ核酸)マイクロアレイからの蛍光信号の検出のための低温検出器技術、特に超伝導トンネルジャンクション(STJ)を採用したもの、を記載した。STJ装置は、一般的には単一光子レベルまで下がる波長(色またはエネルギー)の範囲に渡って感度があると共に、高度に線形な応答と高い信号対雑音比を提示する。光帯域中のSTJのエネルギー解像能力(装置の実施形態はハイパースペクトラルとして記載し得る)は、薬物発見のような応用のためにマイクロアレイに対するハイブリダイゼーションの同時マルチカラー検出を容易にする。
【0004】
典型的なマイクロアレイ実験では、2つのサンプルまたはターゲットが、cDNA(相補的DNA)に逆転写され、異なる蛍光染料を使ってラベル付けされる。DNAマイクロアレイは、プローブとして働くDNAシーケンスのアレイからなり、ターゲットは混合されてそれらのプローブとハイブリッド化され、それから洗浄による余分な非束縛材料の除去の後に、一般的にはアレイスポットの各々において蛍光信号に対して応答するスキャナを使って、マイクロアレイが撮像される。2つのターゲットのプローブシーケンスへの差分ハイブリダイゼーションは、大まかに言うと、プローブシーケンスについてのマイクロアレイ上のスポットにおける蛍光強度の比によって決められる。このようにして、2つのターゲット中のプローブシーケンスの各々の相対的豊富さを評価し得る。この基本技術の数多くの変形がある。現在大多数のマイクロアレイはDNA(ここではcDNAを含む)からなるが、マイクロアレイはまたRNA(リボ核酸)、蛋白質、抗体、抗原等を使っても組み立てられ得る。
【0005】
従来のスキャナは典型的にはマイクロアレイからの信号を記録するのに光電子増倍管を採用するが、我々はパフォーマンスに実質的な向上を提供するのにどのようにSTJ検出器装置を使うことができるかを記載した(ibid; またReview of Scientific Instruments, Volume 74, Number 9, September 2003, “Detection of multiple fluorescent labels using superconducting tunnel junction detectors”, G.W. Fraser, J.S. Helsop-Harrison, T. Schwarzacher, A.D. Holland, P. Verhoeve, and A. Peacock)。例えば生物学的蛍光の研究に使われた1つの検出器は、トンネルバリアのどちらかの側に100nm厚のTaレイヤと30nm厚のA1レイヤをもった単一の30×30μmSTJであった。検出器は、研磨されたサファイア基板上に蒸着されたTa/A1マルチレイヤから写真平板技術を使って作成された。He低温槽中で300mKまで冷却すること(即ち、T〜T/15、ここでTは超伝導遷移温度を示す)は、熱的に励起された擬似粒子電流を漏れ電流レベルのはるか下に保持した。STJは600nmで14.1の測定された解像力(λ/Δλ)を有した。サンプルは、水銀ランプ励起をもつLeica顕微鏡でシミュレートされた。蛍光体サンプルからの色の優先的選択は、Omegaトリプルフィルタセットを使って行うことができ、それは450nm(青)、520nm(緑)、620nm(赤)を中心とした狭帯域での送信を与える。積分時間は約30sであった。
【0006】
そのようなTa/A1装置(解像力約10−20)は、少なくとも4つのよく分離された蛍光体を同時に測定することができる。より小さいバンドギャップ、より低い動作温度、例えばR〜80をもつHfまたはR〜40をもつMoのようなより良い解像力をもつSTJ装置は、潜在的にはもっと良い。単一ピクセルSTJの控えめなスループットは、大きいフォーマットのアレイを開発することによって向上することができる(Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 559 (2006) 782-784, “Optical Fluorescence of biological samples using STJs”, G.W. Fraser, J.S. Helsop-Harrison, T. Schwarzacher, P. Verhoeve, A. Peacock, and S.J. Smith参照)。
【0007】
典型的には、スキャナは、例えばデジタル信号プロセッサまたは好適にプログラムされた汎用コンピュータに基づいた画像捕捉/処理システムを含んでおり、撮像されたマイクロアレイからの蛍光信号は典型的には16ビットGIF(graphics interchange format)またはTIFF(tagged image file format)のような業界標準フォーマットの色画像ファイルとして出力される。異なる蛍光体は異なる放射ピークと、一般的には異なる(より短い波長の)吸収ピークを有する。スキャナは、単一の波長で両吸収ピークを同時に励起してそれから両放射波長を同時に読み取っても良いか、またはマイクロアレイが最初1つの吸収波長でスキャンされそれから他のものでスキャンされても良い。しばしば蛍光を励起するのにレーザーが採用される。再スキャニングはハイブリッド化されたエンティティを損傷することができ、特に光漂白を引き起こすことができるので、多数の蛍光信号(色)を同時に読み取ることが一般的には好ましい。一般的に、励起照射と蛍光放射の間およびオプションで異なる蛍光信号の間を区別するのに通過帯域フィルタリングが採用される。
【0008】
マイクロアレイデータ分析に関する背景資料は、”Microarray data analysis: from disarray to consolidation and consensus”; David B. Allison, Xiangpin Cui, Grier P. Page and Mahyar Sabripour, NATURE REVIEWS, GENETICS, Volume 7, January 2006, page 55-65; および”Improving false discovery rate estimation”, Bioinformatics 20(11), 2004, page 1737-1745に見つけることができ、本出願の最先の優先日後に出版された資料は、”Speed-mapping quantitative trait loci using microarrays”, Chao-Qiang Lai, Jeff Leips, Wei Zou, Jessica F Roberts, Kurt R Wollenberg, Laurence D Parnell, Zhao-Bang Zeng, Jose M Ordovas & Trudy F C Mackay, NATURE METHODS, Vol. 4 No. 10, October 2007, pages 841-839; および”HoughFeature, a novel method for assessing drug effects in three-color cDNA microarray experiments”, Hongya Zhao and Hong Yan, 17 July 2007, BMC Mioinformatics 2007, 8:256, doi: 10.1186/1471-2105-8-256に見つけることができる。
【0009】
従来、マイクロアレイからの蛍光信号の処理は、いくつかの暗黙の仮定、特に特定のスポットからの蛍光信号とラベル付けされたサンプルまたはターゲットの相対的豊富さの間に線形の関係があるというもの、に基づいていた。発明者は、しかしながら、これは一般的には真実ではなく、2つの異なる蛍光体の間の結合が非線形性を導入することを認識した。発明者は、非線形性が単一蛍光体システムにおいてさえ起こることができることを更に認識した。非線形性度は部分的には採用された蛍光体に依存する。我々は、それによりこれらの非線形性を考慮に入れることができる技術を記載する。より特定には、我々は、2つの異なる蛍光体でラベル付けされたかまたは関連付けされたエンティティからの信号の向上した処理のための技術と、最適ラベル付け度、即ち、最大の輝度を生成するもの、の決定に関する技術の両方を記載する。
【発明の概要】
【0010】
発明の第一の側面によると、従って、共通のエンティティに関連付けられた、異なる第一および第二の蛍光体のそれぞれについての第一および第二のラベル付け度信号のそれぞれを決定する方法であって、前記第一および第二の蛍光体から第一の蛍光信号を、第一の条件下で決定することと、前記第一および第二の蛍光体から第二の蛍光信号を、前記第一の条件とは異なる第二の条件下で決定することと、前記第一および第二の蛍光信号から前記第一および第二の蛍光体についての前記第一および第二のラベル付け度信号を決定することからなり、前記第一および第二のラベル付け度信号の前記決定は、前記蛍光体の間のエネルギーの結合、または1つ蛍光体によって放射された光の他の蛍光体による吸収、を表す少なくとも1つの結合値(c12;c21)に応じたものである方法、が提供される。
【0011】
当業者は、マイクロアレイ実験では(非線形性の効果について修正された)信号強度が測定されることを理解するであろう。ラベル付け度は、例えば、特定の分子またはエンティティ上の蛍光体の数かエンティティに束縛される蛍光ラベルされた分子の数のどちらかであっても良い。第一のケースの例は、多数の蛍光体が空間的間隔でDNAに束縛される場合である。第二のケースの例は、例えば抗体が多数の束縛サイトを有し、各々が単一の蛍光体を運びながら複数の分子に同時に束縛される場合である。技術の実施形態は更にまた、共通のエンティティに関連付けられたラベル付け度信号が、同じタイプの異なる個別の分子またはエンティティに付着された、異なる蛍光体の物理的混合から生じる状況においても使うことができる。これの例は、マイクロアレイスポットが同じ共役分子の物理的混合を含み、そのいくつかは1つ以上の蛍光剤A半分が付着されており、その他のものは1つ以上の蛍光剤B半分が付着されている場合である。
【0012】
技術の実施形態は、2つの異なる蛍光体からのラベル付け度信号が分離されることを許容し、よって再スキャニングの必要がなくても済むようにし光漂白の有害な効果を最小化する。いくつかの特定の好ましい実施形態では、技術は上述したような超伝導トンネルジャンクション検出器装置からの蛍光信号と共に採用される。検出され得る光子の比較的小さな数のために、技術はこの種の検出器では特に有利である。しかし、より一般的には、方法の実施形態は、あらゆるタイプのマイクロアレイスキャニングシステムと共に採用され得るし、空間的に実質的に一致した蛍光体からの光放射が観察され得る他のシステムのコンテクストにおいても採用され得る。よって、例えば、方法は従来のマイクロアレイスキャン分析ソフトウェアのためのフロントエンドを実装するコンピュータプログラムコードとして具体化され得る。第一および第二の発色団(蛍光体)について決定されたラベル付け度信号は、本質的なラベル付け度信号か、例えばそれらからそれぞれのラベル付け度または他のハイブリダイゼーション情報が後に導出し得る2つの蛍光体からの分離された信号のどちらかであり得る。
【0013】
方法の好ましい実施形態では、少なくとも1つの結合値は、蛍光体の1つによって放射され蛍光体の他のものによって吸収された光の間の結合を表す。
【0014】
方法の実施形態では、第一の蛍光体は、第二の蛍光体よりも長い波長に放射ピークを有し、結合値は、第二の蛍光体によって放射され第一の蛍光体によって吸収された光の間の結合を表し、方法の実施形態では、他の方向への結合は実質的に無視され得る。
【0015】
それらの下で第一および第二の蛍光信号が決定される条件は、一般的に第一および第二の蛍光信号の決定のための異なる照射波長と異なる検出波長の一方または両方を規定する。従って、2つの蛍光信号を決定するように、例えばフィルタによって選択された、異なる波長または波長帯域を使って、単一のスキャンにおいて共通の照射信号をマイクロアレイに印加し得る。
【0016】
実施形態では、1つ以上の結合値についての推定を、第一および第二の蛍光体の異なる割合の組み合わせの範囲に渡ってカリブレーションを行うことによって決定し得る。方法の好ましい実施形態では、2つのラベル付け度信号の決定はまた、それぞれの自己消光度を表す2つ蛍光体についてのそれぞれのパラメータを考慮に入れる。そのようなパラメータは、公表されたデータから入手可能かまたは導出可能であっても良いし、ここでは各蛍光体について別々に再びカリブレーションを行うことによって決定しても良い。
【0017】
当業者は、我々が記載する技術は第一および第二の蛍光体が関連付けられた広範なエンティティに適用され得ることを理解するであろう。例えば、マイクロアレイ実験では、2つの蛍光体は、例えば相対的ハイブリダイゼーションを決定するように、別々にタグが付けられたターゲットが付着された共通のプローブエンティティと関連付けられていても良い。加えてまたはそれに代えて、2つの蛍光体は共通のサンプルまたはターゲットエンティティと関連付けされていても良い。典型的には、2つの蛍光体は、プローブターゲット実験の一部であろうが、潜在的には、それらは例えばDNAまたはRNAの紐において異なるように蛍光的にタグ付けされた塩基として、共通の分子の構造に組み込まれていても良い。
【0018】
いくつかの好ましい実施形態では、方法は、マイクロアレイからの蛍光データを処理するのに採用される。一般的に、これはDNAまたはRNAのマイクロアレイからなるが、加えてまたはその代わりに、マイクロアレイは抗体または抗原からなるものであっても良く、他の応用では、技術は、サンドイッチ検定からの蛍光データを処理するのに採用されても良い。
【0019】
よって、更なる側面では、2つ以上の異なる蛍光体でラベル付けされたマイクロアレイからの蛍光データを処理する方法であって、2つ以上の波長における前記マイクロアレイからの蛍光信号を表す前記蛍光データを入力することと、前記蛍光信号についてのパリティラインを表すデータを決定することであって、前記パリティラインは、それに沿って前記2つ以上の波長における蛍光からの信号強度が、それらに蛍光体が付着されている実質的に同量のエンティティを表すことが期待されるラインであるものと、前記決定されたパリティラインを使って前記波長の1つにおける前記マイクロアレイからの前記蛍光信号を修正することからなる方法、が提供される。
【0020】
当業者は、技術が3つ以上の蛍光体に拡張され得て、その場合パリティラインの概念もそれに応じて(即ち、同等の表面またはそのような表面のセットへと)拡張され得ることを理解するであろう。よって、上記方法では、「パリティライン」は「パリティ表面」を含む。方法の実施形態では、蛍光信号は、遺伝子表現レベル等の1つ以上の生物学的パラメータに対応する。方法の実施形態では、パリティラインを決定するために使われた蛍光信号の1つは蛍光の制御レベルを表すことが好ましい(ただし、両方とも生物学的パラメータのレベルを表すときでも、1つの信号を他のものについての制御として使い得るので、これは本質的ではない)。前述したように、1つの信号が制御として使われたときに、他のものは一般的に生物学的パラメータのレベルを表す。
【0021】
実施形態では、パリティラインの決定は、オプションで外郭データ信号を除外して、ラインの第一および第二のエンドポイントを決定することからなる。1つのエンドポイントは、第一および第二の波長における蛍光強度信号が実質的にゼロ(後の式で言うと、nが近似的に1単位であることを仮定して)であるものに相当しても良い。よって、パリティライン上の1つのポイントは、
/S=(a−b)/(a−b
を使って決定されても良く、ここでaとbは蛍光体の特性を表し、添え字GとRは、例えば、シアニン3蛍光染料Cy3(登録商標)のような緑蛍光体とシアニン5蛍光染料Cy5(登録商標)のような赤蛍光体などの、第一と第二の波長のそれぞれにおいて主に蛍光する蛍光体を表している。
【0022】
好ましい実施形態では、ライン上の第二のポイントは、
/S=(b+cRG)/b
を使って決定し、ここでcRGは1つの蛍光体からの放射が他の蛍光体によって吸収されることを考慮に入れるものである。より特定には、cRG項は、長波長蛍光放射対による短波長蛍光放射体の消光を考慮に入れる(長波長放射体がこの効果によって短波長放射体よりも少なく摂動されるように)。いくつかの好ましい実施形態では、cRGのための値は、例えばベストフィット技術によって、蛍光データから決定されても良い。この方法によって決定されたパリティライン上のポイントは、最大蛍光エンドポイント、つまり2つ以上の波長における蛍光強度信号が実質的に最大値にあるところ、であっても良い。
【0023】
好ましい実施形態では、修正プロセスは、測定変数(即ち、非制御)の蛍光信号と、パリティラインから予測されたその蛍光信号の値の間の差を、例えば1つを他から差し引くことによって、補償することからなる。いくつかの好ましい実施形態では、方法はまた、マイクロアレイからの固定パターンノイズと、1つのデジタル数の他の1つによる分割から引き起こされるノイズの一方または両方からなる、システマティックなノイズについて修正することからなる。固定パターンノイズは、例えば、マイクロアレイの析出によるアーチファクトから引き起こされ、例えば行または列のサブアレイ間隔での巡回的繰り返しを有しても良い。
【0024】
よって、発明の更なる側面は、マイクロアレイからの蛍光データを処理する方法であって、複数の異なるスポット位置における前記マイクロアレイからの蛍光信号を表す前記蛍光データを入力することと、前記蛍光データを処理して、前記スポットからの蛍光に関連付けられた生物学的パラメータを決定することからなり、前記処理は、前記マイクロアレイからの固定パターンノイズと、1つのデジタル数の他の1つによる分割から引き起こされるノイズの一方または両方からなる、システマティックなノイズについての前記蛍光データを補償することを含む方法、を提供する。
【0025】
発明は更に、上記方法の実施形態を実装する、特に搬送体上のプロセッサ制御コードを提供する。搬送体は、CD(コンパクトディスク)またはDVD(デジタルビデオディスク)ROMのようなディスク、リードオンリーメモリのようなプログラムされたメモリ、または光または電気信号搬送体のようなデータ搬送体、からなるものであっても良い。プロセッサ制御コードは、例えばCなどのあらゆる従来のプログラム言語によるソース、オブジェクトまたは実行可能コード、またはハードウェア記述言語のためのコードであっても良い。当業者が理解するであろうように、そのようなコードおよび/または関連するデータは、互いに通信している複数の結合されたコンポーネントの間で配布されても良い。
【0026】
発明は更に、上記のような方法を実装するように構成された装置を提供する。一般的に、そのような装置は、処理すべき蛍光データを受信する入力と、更なる分析のためかまたは例えば遺伝子表現レベルのセットとして、処理された蛍光データを提供する出力と、入力と、出力と、作業メモリと、蛍光データ処理方法を実装するプロセッサ制御コードを格納 したプログラムメモリと、に結合されたプロセッサからなる。
【0027】
関連した側面では、発明は、共通のエンティティに関連付けられた、異なる第一および第二の蛍光体のそれぞれについての第一および第二のラベル付け度信号のそれぞれを決定する装置であって、前記第一および第二の蛍光体から第一の蛍光信号を、第一の条件下で決定する手段と、前記第一および第二の蛍光体から第二の蛍光信号を、前記第一の条件とは異なる第二の条件下で決定する手段と、前記第一および第二の蛍光信号から前記第一および第二の蛍光体についての前記第一および第二のラベル付け度信号を決定する手段からなり、前記第一および第二のラベル付け度信号を決定する前記手段は、前記蛍光体の間のエネルギーの結合を表す少なくとも1つの結合値(c12;c21)に応じたものである装置、を提供する。
【0028】
発明者は更に、上記の技術が、より特定には2つ以上の蛍光体によって、蛍光体をもつエンティティの最適ラベル付け度を決定するのにも採用され得ること、を認識した。1つ以上の蛍光タグをもつエンティティをラベル付けする手順は、一般的に面倒で時間のかかる多数のラベル付け実験を要するので、これは有利である。発明者は、利用可能なデータによっては、単一のラベル付け実験のみが必要であり得るか、または潜在的にはラベル付け実験が必要ないこと、を認識した。
【0029】
よって、発明の更なる側面によると、エンティティを蛍光体でラベル付けする方法であって、前記蛍光体の光生成効率に依存した第一のパラメータを入力することと、前記蛍光体の自己消光度に依存した第二のパラメータを入力することと、前記第一および第二のパラメータを使って前記蛍光体による前記エンティティの最適ラベル付け度の推定を決定することと、前記推定された最適ラベル付け度に従って前記蛍光体で前記エンティティをラベル付けすることからなる方法、が提供される。
【0030】
実施形態では、推定された最適ラベル付け度は、蛍光強度(輝度)が最大であることが予測される推定されたラベル付け度(例えば分子のようなエンティティ毎の蛍光体の数)からなる。
【0031】
好ましくは、第一のパラメータは、エンティティの構造、蛍光体の構造、蛍光体とエンティティの間の結合、の1つ以上に更に依存する。いくつかの特に好ましい実施形態では、方法は、複数の蛍光体とともに採用されて、複数の蛍光体の少なくとも2つの間の結合度に依存する第三のパラメータを使って、他のものが在るなかでの蛍光体の各々についての推定された最適ラベル付け度を決定する。結合度は、例えば、複数の蛍光体の広範な異なるそれぞれの組み合わせでラベル付けされたエンティティを使ってカリブレーション実験を行うことによって推定しても良い。
【0032】
更なる側面では、発明は、上記方法を使って1つ以上の蛍光体でラベル付けされたエンティティを提供する。よって、実施形態では、エンティティは1つ以上の蛍光体によって実質的に最適なラベル付け度を有する。最適ラベル付け度は、関係のある蛍光体についてのラベル付けされたエンティティからの実質的な最大蛍光発生量に対応するラベル付け度として規定され得る。
【0033】
よって、更なる側面では、発明は、複数の異なる蛍光体でラベル付けされたエンティティおよび蛍光プローブのキットであって、前記異なる蛍光体のそれぞれの数は、前記蛍光体の各々からの蛍光信号(S(n))が実質的に最大化されるようになっているもの、を提供する。
【0034】
発明は更にまた、その例が後述される良度指数(R)掛ける複数の異なる他の蛍光体についてのそれぞれの良度指数に対する蛍光のピーク値の測定されたセットから決定された比例定数の積によって決定された、ラベル付けしている蛍光体の数を有する蛍光体ラベル付けされたエンティティを提供する。例えば、比例定数は、後述する、図7に示されたもの、+/−50%、であっても良い。
【0035】
発明は更にまた、蛍光体でラベル付けされたプローブのキットを製造する方法であって、前記キットのための蛍光体の組み合わせを決定することと、前記決定された蛍光体の組み合わせを使って前記キットを製造することからなり、前記蛍光体の組み合わせの前記決定は、蛍光体でラベル付けされたプローブの前記キットのための蛍光体のセットと、セットの前記蛍光体の候補についての蛍光輝度良度指数関数(R)を使った前記蛍光体による前記プローブのラベル付け度の一方または両方を選択することからなる方法、を提供する。
【0036】
実施形態では、蛍光輝度良度指数関数は、前記蛍光体の前記候補の放射および吸収スペクトルの間の重複度に依存する。好ましくは、Rはまた、前記候補蛍光体、蛍光体の消滅係数の最大値、からなる。加えてまたはそれに代えて、前記関数は、i)蛍光体の光生成効率に依存するパラメータと、ii)蛍光体の自己消光度に依存するパラメータの関数からなり、前記選択は更にiii)蛍光体と別の蛍光体の間の結合度に依存するパラメータに依存するものである。
【0037】
実施形態では、蛍光体でラベル付けされたプローブのキットは、マイクロアレイまたは他の診断プラットフォームのためのカリブレーションキットからなる。実施形態では、カリブレーション蛍光体の数は、実験的蛍光体の数と合致する。いくつかの好ましい実施形態では、蛍光体でラベル付けされたプローブのキットは、STJ検出器とともに使用されるためのものである。
【0038】
発明はまた、蛍光体のキットからなる蛍光体でラベル付けされたプローブのキットであって、蛍光体でラベル付けされたプローブの前記キットと、前記蛍光体による前記プローブのラベル付け度の一方または両方は、セットの前記蛍光体の候補についての蛍光輝度良度指数関数(R)を使って選択され、前記蛍光輝度良度指数関数は、前記蛍光体の前記候補の放射および吸収スペクトルの間の重複度に依存するもの、を提供する。
【0039】
実施形態では、蛍光体および/または蛍光体のラベル付け度は、後続の信号検出および/または測定および/またはスペクトルデコンボルーションを最適化するように選択される。
【0040】
発明のこれらおよびその他の側面が、添付された図面を参照して、例としてのみここで更に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、Alexa(Invitrogen Corp.の登録商標)488(個々の四角)、Fluorescein-EX(丸)、およびAlexa(登録商標)546(三角)についての測定された輝度データの比較を、式3bとテーブル2に与えられたパラメータaおよびbについてのベストフィット値に基づく計算されたカーブと共に示す(Alexa(登録商標)蛍光体についてはimmunoglobulin、F-EXについてはstreptavidinのG構造形に基づくGAM IgG Goat Anti-Mouse(二次抗体共役))。
【図2】図2は、Alexa(登録商標)350(ダイヤモンド;streptavidin共役)、Alexa(登録商標)555(四角;GARテーブル1共役(Goat Anti-Rabbit(二次抗体共役))、AMCA(fluorophore amino-methylcoumarin acetic acid)(ぺけ;streptavidin)およびCy3(白丸;streptavidin共役;黒丸GAR共役)についての測定されたおよび計算された輝度データの比較を示す。
【図3】図3は、Oregon Green 514(ダイヤモンド)、Oregon Green 488(四角)、FITC(fluorophore fluorescein isothiocyanate)(丸)、およびRhodamine Red-X(丸)(全てのケースにおいてGAM共役)についての測定されたおよび計算された輝度データの比較を示す。
【図4】図4は、Alexa(登録商標)647でラベル付けされた共役についての測定された(個々のシンボル)および計算された(完全なカーブ)輝度関数の比較を示す:十字−streptavidin共役;四角−transferrin Transferrin(蛋白質);丸−concanavidin A;ダイヤモンド−GAR IgG;ぺけ−GAM IgG;単一の理論的カーブはa = 1.5, b = 0.14について計算されている。
【図5】図5は、Texas Red-Xでラベル付けされた共役についての測定された(個々のシンボル)および計算された(完全なカーブ)輝度関数の比較を示す
【図6】図6は、両方ともGAMに共役された、Alexa(登録商標)532およびRhodamine 6Gについての測定されたおよび計算された輝度データの比較を示す。
【図7】図7は、テーブル2のGAM共役についての測定されたnpeakと良度指数Rの間の線形関係を示す;この図は輝度関数S(n)の最大が、それについてRの値を構築することができるあらゆる(GAM共役された)蛍光体について推定されることを許容する。
【図8】図8は、発明に従った技術の実施形態を実装した装置を示す。
【図9】図9a−9cは、それぞれ、発明の実施形態に従ったパリティラインの構築を示すマイクロアレイデータスキャッタープロットを示し、図9aのプロットは、図9aのパリティラインからの蛍光レベル予測に基づく蛍光体間蛍光消光について修正された蛍光データと、修正されたデータについてのいわゆるMAプロット(変換された軸をもつスキャッタープロット)をもち、また信号対雑音(S/N)閾値を課することを描いている。
【図10】図10a−10dは、それぞれ、HFF-PDS(Human foreskin fibroblasts, infected with the PDS strain of the parasite Toxoplasma gondii(マラリアを引き起こす有機体の近い親類)のモジュロ28で折り畳まれたデータセットからの背景ノイズを示し、固定パターンノイズ、1つの小さなデジタル数の他の1つによる分割から引き起こされるシステマティックノイズによるアーチファクト、どのようにノイズが遺伝子表現と誤解釈され得るかを描いたシミュレーションの結果、および現実の生のマイクロアレイを示す同様の例(SMDデータセット3932から)を描いている。
【発明を実施するための形態】
【0042】
大まかに言うと、我々は、蛍光放射の自己消光のモデルを記載し、これを光発生量対生物学で一般に用いられる数々の蛍光体(染料)についてのラベル付け度の測定と比較する。モデルは物理的には同種の分子による光の放射と吸収に基づいている。モデルは、最大光発生量に対応する最適ラベル付け度が、蛍光体の基本パラメータの組み合わせから予測可能であることを示す。しかしながら、最大は蛍光体の共役分子にも依存することができる。モデルのマルチ蛍光体システムへの拡張が、そのようなシステムにおけるラベル付け度信号を決定する方法と、非線形性が存在する中でそのようなシステムにおける生物学的情報の復元のための手順とともに記載される。
【0043】
染料ラベル付けされた生物学的システムでは、蛍光体信号ISはラベル付け度n−共役分子当りの存在する蛍光体の数、に常に線形に関連しているわけではない。(以下では、
【数1】

【0044】
は、出力フィルタバンドパス[λ1≦λ≦λ2]に渡る波長依存放射関数iの積分を形式的に表記する。共役分子は、それに蛍光体が付着される生物学的に活性な蛋白質または抗体である。自己消光の現象−高ラベル付け密度について観察される蛍光信号の減少−は,多くの場合にそれが最大輝度のための良く定義されたラベル付け度(n=npeak)へと導くにも関わらず、あまり良く理解されていない[S. Hamann, J.F. Kiilgaard, T. Litman, F.J. Alvarez-Leefmans, B.R. Winther and Zeuthen, J. Fluorescenece 12 (2002) 139]。
【0045】
可能な消光メカニズムの内、動的蛍光消光は、蛍光体自体から区別された消光エージェントとの衝突性エネルギー交換に依存するため、普遍的なプロセスとは考えられない。対照的に、静的消光は、蛍光体と消光剤による非放射性分子複合体の形成に依存する。3番目に、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)は、その2つの成分が約ナノメートルの距離だけしか離れていないシステムにおけるドナー放射スペクトルとアクセプターの吸収スペクトルの重複を要求する。
【0046】
ここで、我々は自己消光−信号非線形性を導く−は、主に蛍光体分子によるそれら自体が放射した光の吸収によるものと仮定する。つまり我々は、原理的には自己消光は、そうでなければ透明なシステムにおける同じ染料分子での吸収および放射スペクトルの重複から引き起こされるものと考える。以下で我々は、我々のモデルの予測を、文献に報告された輝度関数S(n)の測定と比較し、最大信号に対応するラベル付け密度であるnpeakを計算する。
【0047】
テーブル1は、量子収量の推定のための特定の蛍光体、共役分子、および参照標準を表記するのに以下で使われる頭字語をまとめている[R.F. Rubin and A.N. Fletcher, J. Luminescence 27 (1982) 445]。
【0048】
テーブル1
生物学的エンティティの頭字語

AMCA Amino-methylcoumarin acetic acid (蛍光体)
CTMR Cardboxyltetramethylrhodamine (参照標準)
DDAO Dodecyldimethylamine Oxide (参照標準)
FITC Fluorescein Isothiocynanate (蛍光体)
GAM IgG immunoglobulinのG構造形に基づくGoat Anti-Mouse (二次抗体共役)
GAR IgG Goat Anit-Rabbit (二次抗体共役)
S101 Sulforhodamine 101 (参照標準)

テーブル1
蛍光強度の計算
厚さがdで容積がVの染料ラベル付けされた生物学的サンプル中での、強度I0(光子/cm/s)で波長λの単色ソースからの光の吸収を考える。弱く吸収しているシステムでは、蛍光体による吸収度Aは、
A = ε.d.C -(1a)
または
A = N.σ.d -(1b)
ここで:
εはcm−1Mol−1の単位での消滅係数
CはMolでの濃度
σはcmの単位での波長依存吸収断面
Nは単位容積当りの蛍光体分子の数
のどちらかとして書き得る一方、もしdΩがサンプルにおいて理想的な検出器がなす立体角でありQが蛍光体の絶対量子効率であれば、信号強度IS(検出光子/s)は、
IS = I0AQ[V/d][dΩ/4π] -(1c)
である。
【0049】
式(1a,b)は、それぞれ生物学者と物理学者にとって、同じ根元的なBeer-Lambertの法則を表現する。我々は、式(1b)から、それは吸収度を量的に決定する、単位容積当りの蛍光体の数、N、であることが分かるが、生物学においてほぼ常に報告されるパラメータは、Mol/Molで測定された共役分子当りの蛍光体の数、n、であることを上記から注意されたい。しかしもしM、共役分子の質量(例えば蛋白質streptavidin については52,800Da)が、蛍光体のそれ(例えば、以下の蛍光体については300−900Da)よりもはるかに大きければ、Nとnの間の関係は単純である。グラム単位のMでは、
N = [n.Na.ρ]/M -(2)
ここで:
Naはアボガドロ数
ρは共役分子の実効密度
である。
【0050】
(式1bから)Aと(式2から)Nを式(1c)に代入すると、我々は、いくらかの操作の後に、
IS = I0nQNcσ[dΩ/4π]= I0S(n)Ncσ[dΩ/4π] -(3)
ここでNcはサンプル中の共役分子の数であり、物理的輝度関数S(n)=nQは量子効率がラベル付け度、n、に依存する可能性を組み入れている、であることを見つける。
【0051】
この分析は、与えられたnの値について、共役分子の質量がより低いと、共役の間で密度が殆ど変動しないとして、単位容積当りに比例してより多くの蛍光体があることになるので、輝度関数S(n)はより高いはずであることを示唆する。
【0052】
輝度関数
S(n)の形を推定するために、我々はソースフラックスの吸収を第一に、染料分子の同じ集団による蛍光放射の再吸収を第二に考える必要がある。式(1b,2)を適用して、蛍光光放射の確率およびサンプル内でのその蛍光光子の再吸収の確率はどちらもn、共役分子当りの蛍光体の数、に比例する。我々は、蛍光体の放射スペクトルのピークに対応する波長についてλ(>λ)と書く。
【0053】
よって、サンプルのジオメトリーと蛍光体のそのホスト分子との相互作用の両方の詳細を無視すると、任意の単位で輝度関数はそれから、生成および再吸収確率の積から次のように見つけられる。
【0054】
S = [k1n][1-k2n] -(4a)
これは、
S = an-bn2 -(4b)
の形であり、ここでa=k1、b=ak2は蛍光体の特性である。前者の定数の緊密な同定は、輝度関数の生物学的定義:
S(n) = n.RQY(n) -(5)
ここでRQY(n)はラベル付け度、n、についての相対的量子収量を表記する、から得られる。式(4b)から、
【数2】

【0055】
が得られる。
【0056】
式(4b)を微分すると、我々は、もしnpeakが最大光発生量に対応するnの値であれば、我々が、
【数3】

【0057】
をもつことを見つける。
【0058】
従って、最適ラベル付け度は、定数aとb(または単純にk2)が決定されているあらゆる蛍光体について推定することができる。同じ分析は、それについて信号が完全に消光される、最大有用ラベル付け密度nzeroを与える。
【0059】
nzero = 2npeak -(8)
よって、自己吸収による自己消光を見せる蛍光体を定義する特性は、最大ラベル付け度が、最大光発生量の丁度2倍であることである。形式的には、この結果は弱い吸収という最初の数学的仮定およびほとんどの蛍光体について吸収スペクトルは放射スペクトルと完全には重複しないという物理的観測と相容れない。輝度関数の物理的(上記)および生物学的定義は、参照標準の絶対量子収量である積算ファクターによってのみ異なる(下記参照)。
【0060】
公表されたデータとの比較
図1から6は、公表されたS(n)データセットを式(4b)に基づいた計算と比較する。我々は、aとbの決定された値について、自己消光の「自己吸収」モデルから導出された普遍的関数は、様々な生物分子に共役された、多数の良く知られた染料での測定によって良く支持されていることが分かる[B. Randolph and A.S. Waggoner, Nucleic Acids Research 25 (1997) 2923; N. Panchuk-Voloshina and seven co-authors, Bioconjugate Chem. 11 (2000) 696; J.E. Berlier and fourteen co-authors, J. Histochemistry and Cytochemistry 51 (2003) 1699; Invitrogen (formerly Molecular Probes Inc., Oregon) Online Handbook, Section 1, http://www.probes.com/handbook/sections/0001.html; C. Lefevre, H.C. Kang, R.P. Haugland, N. Malekzadeh, S. Arttamangkul and R.P. Haugland, Bioconjugate Chem. 7 (1996) 482]。F-EXとTexas Red-Xデータセット(それぞれ図1と5)は特に完全消光に対応するラベル付け度の半分において最大光発生量を見せる。
【0061】
図4と5はまた、最大光発生量が、(テーブル1に定義された)GAMのような(はるかに重たい)二次抗体共役についてよりも、蛋白質streptavidinに共役された蛍光体についての方がより高いn値で起こることを示す。これらの抗体の質量は文献で見つけることは難しいが、それだけで約50,000Daの質量をもつimmunoglobin(Ig)の単一の重い(H)鎖は、streptavidinとほぼ同じ重さである。よって、蛍光信号は共役分子の質量の逆数に依存すべきである、という我々の予測は確認されたように見える。図3に表された他の蛋白質−Concanavidin A−は、104kDaにおいてstreptavidinよりも約2倍重たい。
【0062】
新しい蛍光体の自己消光性質の予測
基本的な物理的データだけが与えられたときに、新しい蛍光体について最適ラベル付け度を予測できることは有用である。
【0063】
式(4)に戻って、蛍光体定数k1は、蛍光光生成プロセスの詳細と、与えられた吸収体ジオメトリーにおける蛍光光波長依存損失を考慮に入れ、それは蛍光体とその共役生物分子の間の化学結合の微妙さを含む。従って測定された量で言うと、k1は、既に実証された(式(6))ように、量子収量Q(蛍光光子/吸収された光子)と、消滅係数の最大値、εmax、に関連する。対照的に蛍光体定数k2は、蛍光体の放射および吸収スペクトルの間の重複度も考慮に入れるべきである。この重複の1つの尺度は、最大放射の波長における消滅係数の値、ε(λp)、である。従って、測定可能な量の組み合わせ:
R = Qεmax/ε(λp) -(9)
は、もし自己消光の自己吸収モデルが正しければ、npeakを追跡すべきであると主張し得る。
【0064】
この仮説をテストするために、我々は、共通のラベル付け度、n=1、について(理想的に)測定された、絶対量子収量Qの値を使う。容易に利用可能な効率値は通常スペクトル的に同様な蛍光体のペア毎の比較を参照し、蛍光体ペアの吸収度に合致するように選ばれたラベル付け度について(S101のような)参照標準に対して測定されたものである。テーブル2(下記)は、相対的量子収量RQY(n)についての値と、
【数4】

【0065】
を通じて望ましい絶対量子収量Q(n=1)に到達するのに使われる修正ファクターとを与える。
【表1】

【0066】
よって、我々は、全ての基本データが利用可能なGAMに共役された8つの蛍光体について、npeakと図6に示された良度指数Rの間の関係を構築することができる。一つの外郭を別として、関係は線形で、Rの推定が利用可能ではない2つの更なる蛍光体−Alexa(登録商標)568とAlexa(登録商標)594−についてのnpeakの値を予測することを可能にする。Alexa(登録商標)568については、R=1.28であり、輝度関数が約2蛍光体/分子において最大を有するべきであることを暗示している。Alexa(登録商標)594については、R=2.39であり、n〜4におけるピークを暗示している。
【0067】
2つ以上の蛍光体への拡張
もし2つの蛍光体(1と2で下つき添え字された)が同じ共役分子をそれぞれn1とn2の度合でラベル付けし、両方の蛍光体が独立に自己吸収による自己消光を見せるならば、輝度関数Sは:
S(n1,n2) = a1n1-b1n12+a2n2-b2n22-(c12+c21) n1n2 -(11a)
の形を有する。
【0068】
項c12は、蛍光体2によって吸収される蛍光体1からの放射を考慮に入れる一方、c21は蛍光体1によって吸収される蛍光体2からの放射を記述する。つまり、2つの信号チャネルにおいて観察される相互消光がある可能性が高い。
【0069】
典型的には、二重ラベル付け実験のために選ばれた蛍光体は、非常に区別された(吸収および)放射スペクトルを有する。良く定義されたバンドパスで測定すると、従ってペアの1つの蛍光体だけの印を見ることを期待するであろうが、我々のモデルはそうではないことを示す。蛍光体番号1に適切なバンドパスでは:
S(n1,n2) = S(n1)-c12n1n2<S(n1) -(11b)
および
(IS )1 = I0S1(n1,n2)Ncσ1[dΩ/4π] -(11c)
であり、蛍光体番号2についての同様な表現:
S2(n1,n2) = S(n2)-c21n1n2<S(n2) -(11d)
(IS )2 = I0S2(n1,n2)Ncσ2[dΩ/4π] -(11e)
がある。
【0070】
この議論から多くのポイントが現れ、それは(例えば)DNAマイクロアレイデータの解釈に有用な含蓄を持つ。
【0071】
出力バンドパス間で放射スペクトルのこぼれが完全に無い場合でも、二重(または、拡張により、多重)ラベル付け実験は、相互消光のため出力チャネルにおいて相互依存した信号強度を見せることが期待できる。その濃度が一定に保たれた、1つの蛍光体からの蛍光強度は、第二の蛍光体の濃度の増加によって低減される。
【0072】
式(11c)と(11e)に記載された信号強度は従って、マイクロアレイ実験における「本当の」表現度の過小評価を導く。更に、もし蛍光体が最大放射の増加する波長によって並べられていれば、我々はc21<<c12であることを期待する。つまり、二重ラベル付け実験における赤い蛍光体の応答は、第二の種の存在によって、青い蛍光体のそれよりもより少なく摂動される。
【0073】
上記考察は、検出器カリブレーションのための蛍光体キットのための2つ以上の蛍光体を選択するのに使うことができることも、当業者は理解するであろう。蛍光体は、例えば、
最適には検出器感度を考慮に入れて、上記式に従って各々からの信号を最適化(最大に)するように選択されても良い。
【0074】
これらの予測は、特にSTJ検出器と共に希釈実験の形の実験的テストを受けることができ、半導体トンネルジャンクション(STJ)検出器の使用は、Alexa(登録商標)488(トリプルバンド出力フィルターの510−543nm帯における放射)とCy3(より長い波長帯607−659nmにおける放射)の両方と共に、1:4から4:1の比率の範囲で、ラベル付けされたDNAから光子毎のベースでの蛍光スペクトルの登録を許容する。これら2つの帯域における計数レートはテーブル3(下記)にまとめられている。計数レートの比は、希釈比に大体線形に従うが、ダイナミックレンジは、蛍光体の既知の量から期待される16:1ではなく、6.4:1だけである。本コンテクストでより興味深いのは、存在するCy3の量がパリティより上に増加されるにつれたAlexa(登録商標)488信号の減少(0.45から0.27〜0.32カウント/秒まで)と、Alexa(登録商標)488の量の増加につれたCy3信号の減少(1.85から0.8〜1.39カウント/秒まで)である。これらの結果は、様々なサンプル中に存在する染料の絶対量の微妙な変動のアーチファクトであり得るが、第二の蛍光体の増加された存在による1つの蛍光体の信号強度の抑制は、式(11a−e)にもはっきりと具現化されている。
【0075】
これらの結果は、(マイクロアレイのような)多数蛍光体システムからの生物学的情報の完全な復元が、自己および相互消光による非線形な振る舞いを考慮に入れるために、テーブル3にまとめられた種類の準備的カリブレーション実験から恩恵を受けることを示唆する。
【表2】

【0076】
上述した輝度関数は、数々の異なる方法で採用されても良いことを当業者は理解するであろう。例えば、c12の値(およびオプションでc21も)は、組み合わされた輝度関数Sがn1とn2の異なる値の範囲について測定されたカリブレーション手順によって決定されても良い。それからS(n1,n2)の値を測定しても良く、c12を知ることで、S(n1)の値を決定しても良く、S(n2)についても同様である。式11aを使って、自己消光を考慮に入れても良い(k2と関連しているbを通じて)。
【0077】
図8は、記載された方法の実施形態を実装するように構成されたマイクロアレイスキャナおよび分析システム800のブロック図を示す。システムは、式9bに従って、2つの異なる蛍光体でタグ付けされたエンティティについてのラベル付け度信号を決定するためのコードを格納しているデータプロセッサ806に出力を提供するインターフェース804に結合された、超伝導トンネルジャンクション検出器を採用しているマイクロアレイスキャナ802を含む。このデータプロセッサの出力は、マイクロアレイからの蛍光データを更に分析するように更なるデータプロセッサ808に提供される。
【0078】
マイクロアレイ分析への応用
例示的2色マイクロアレイ分析の望ましい結果は、正常または制御状態に対して疾病または実験状態において顕著に過大または過小表現されている遺伝子の同定である。実験状態信号は、第二の色チャネル(Cy5で表された赤)中の強度に対する1つの色チャネル(下記の例では蛍光体Cy3で表された緑)中の蛍光強度によって表される。あらゆるマイクロアレイ分析における決定的なステップは、従って、パリティライン−2つのチャネルでの表現度−信号強度によって外部的に表される−が等しいポイントの場所、を確立することである。上記の分析は、パリティラインを緊密に近似する明瞭な方法を示唆する。
【0079】
実験強度の制御強度に対する比をG/Rと表記することにする。すると、
【数5】

【0080】
この一般的表現は、マイクロアレイのコンテクストではnの物理的値を同定することが簡単ではないので特に有用ではないが、有用である2つの制限的ケースを同定することができるる。
【数6】

【0081】
のとき、nは1単位に近づき、
【数7】

【0082】
のとき、nは無限に近づく。
【0083】
あらゆる与えられた蛍光体について、2つの波長独立な定数:aとbがある。上記式において、下つき添え字Gは緑蛍光体(例えばCy3)を表記する。下つき添え字Rは赤蛍光体(例えば、Cy5)を表記する。aG、bG、aR、bR の値は、光発生量対ラベル付け度の公表されたカーブの分析からは独立に決定される。残りの結合定数(cRG)は、蛍光体間の相互自己消光を表現し、データへの適合によって固定される自由パラメータである。
【0084】
式(13a,b)の全てのパラメータは、cRG を除き、個々のCy3およびCy5蛍光体の以前の特性付けから既知であり、cRG は希釈なケース、式(13a)、では安全に0であると近似できるが、集中的なケース、式(13b)、ではそうではない。よって、我々は、データ(cRG)に適合されるべき自由パラメータを1つだけもち、システムの生物学に関する先験的な仮定のない、ローカルなパリティラインの制限的表現を有する。
【0085】
手順は、Stamford Microarray Database (SMD)からのデータセットを使って図9(a,b)に描かれている。データセットSMD3932からの最初の1000個の遺伝子(合計23,000個から)は(基数2)log-log空間にプロットされており、上位900と下位902の「タンジェント」ラインが、差し込み図に記録され以下に示された蛍光体パラメータの値をもつ式13a,bから見つけられた:
aG = 0.55
bG = 0.044
aR = 1.65
bR = 0.55
cRG = 0.4(適合された)
SG = K.SR
ライン900について、k=(bG+cRG)/bR
ライン902について、k=(aG-bG)/(aR-bR)
ライン904について、k=1
全体的なパリティラインは、データポイントの大部分を含んでいる「ボックス」の左下(ライン902の底)と右上(ライン904の頭)を結んだ対角的直線であると取られている。
【0086】
図9(b)は、測定された緑信号強度と、赤信号強度と真のパリティラインの知識から予測されたものとの間の差をポイント毎のベースで差し引くことによって、このパリティライン上にデータをつぶした結果を示す。図9(b)はまた、最初の1000個のデータポイントへのベストフィットは、シーケンス中の次の1000個(異なる形状のデータポイントは、2つの異なる1000ポイントデータセットを表す)についても良好であることを示す。
【0087】
よって、上記例は、マイクロアレイデータスキャッタープロットを「ボックス」化するように蛍光体輝度関数比S(n)Cy3/S(n)Cy5の制限的ケースを使う。ボックスの隅を結ぶことは、2つの蛍光体応答の非線形性を考慮に入れて、真のパリティラインへの良好な近似を与える。そして、データポイントと確立されたパリティラインの間のy軸での差を計算することにより、データが名目上のパリティライン上につぶされる。図9cは、変換後の、単位信号対雑音比S/Nラインの同定(単位S/N閾値を課すること)をもつ、ln2比対制御Cy5信号、(もし何らかの遺伝子表現があれば平均化はx軸をよりノイズが多いものにするので、Cy3とCy5の平均に対してではない)、のMAプロットを示す。オプションとして、それから、例えば、固定パターンノイズのようなシステマティックなノイズに基づいてポイントの拒絶があっても良い。
【0088】
システムHFF-PDS(no. 3932)についてのマイクロアレイデータの28×27のサブアレイパターンに関連する固定ノイズパターンの証拠がある。図10aでは、データ列をモジュロ(この例では)28で折り畳むことは、信号チャネル1中のノイズのその平均からの巡回的なずれを生成する。よって、全てのサイクルのチャネル8−10と25−28は信頼できないものとしてフラグ付けされても良い。また、低信号レベルにおいて、1つのデジタル数の他のものによる分割と関連付けられた「好まれた位置」の証拠がある。図10bは、(8±2)の範囲内の2つの整数の1つを他によって割ることの25個の可能性のある結果を示す。更に、ローエンドにおける信号レベルの広がりは、両チャネルでのポアソン統計によって摂動された厳密なパリティ(R=G)を仮定することによって説明ができる。これは図10cに示されたシミュレーションによって確認されるが、これは「過大」および「過小」表現された遺伝子と同定され得るものを生成する。
【0089】
図10cは、リアルデータをそれに変換することができるモデルテンプレートを提供する。図10dは、このテンプレート上にオーバーレイされた生の3932データセットを示す。
【0090】
従って分析は、好ましくは、システマティックエラー分析と修正、特に:固定データパターンに対応するデータポイントの除去(上記の例ではx=28);理論的および測定されたLn(G/R)対Ln(R)パターン(RとGは、例えば赤と緑のような第一および第二の色の信号データからなる)の間の合致の(客観的な)最小化を目的とした上述したようなアプローチ、の1つ以上を含む。
【0091】
精密な検査では、モジュロ−x(例えば28)固定パターンノイズ効果は、「間違って表現された」遺伝子に対する最も有効な判別式ではないことが分かる。もしピンアレイがχ×y(27×28)のサイズまたはモジュロχy(例えば756)サイクルを有すれば−それは実験的に確認されている:モジュロ28効果は小さいさざ波として観察可能であるが、サイクルの同じ部分に繰り返す「波」と「巨大な逸脱」も起きる。よって、単純に「全ての28番目のイベント」を拒絶することよりもより効率的に固定パターンノイズを削減するやり方は、閾値より大きな平均ノイズ値をもつか、例えば200−550のような決められた範囲の外にある全てのイベントを、(例えば)チャネル1とチャネル2の両方で拒絶することである。
【0092】
平均ノイズが例えば550のような閾値レベルよりも少ないこと、という要求を課することは、約8ビットのS/N=1レベルより上の明らかに過小表現された遺伝子の数を、殆ど0まで削減する。平均ノイズレベルが例えば200のような閾値レベルよりも下に落ちるべきではない、という条件を課することは、過大表現された遺伝子上に同様の効果を持つ。
【0093】
多くの他の効果的な代替形が当業者に思い浮かぶことは疑いようが無い。特に我々が記載する技術の応用は、STJ型検出器を使うことに限定はされない。
【0094】
我々が記載する技術はまた、例えば高スループットの薬物発見のような、全体または生体セルを巻き込んだ実験を含んだ、マイクロ滴定プレート上で行われた比較生化学からの蛍光画像を修正すること、に応用されても良い。また、フローサイトメトリーを巻き込んだ生物学的実験において蛍光体がタグ付けされた半分が付着された全体または生体セルまたは合成粒子の蛍光撮像に応用されても良い。また、特に例えば癌の発達の最初期ステージの同定のための、単一分子検出のレベルまで下がる蛍光顕微鏡または共焦点顕微鏡による組織および全体セル撮像に応用されても良い。全体セル中の個々の蛋白質の空間的位置と動きは、基礎生物医学的研究および薬物発見の両方において初期発展下にある。大半の全体セル実験は現在は質的な性質のものであるが、量的な撮像への増加する需要があり、それには蛍光体間の結合とエネルギー移動についての理解と修正が要求される。特に全体セル中のバイオマーカーの自動蛍光の特性付けを巻き込んだ、現在は揺籃期にある将来の研究の重要な領域でも同様である。
【0095】
発明は記載された実施形態に限定はされず、ここに添付された請求項の精神と範囲内に入る当業者に明らかな変形を包含することが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通のエンティティに関連付けられた、異なる第一および第二の蛍光体のそれぞれについての第一および第二のラベル付け度信号のそれぞれを決定する方法であって、
前記第一および第二の蛍光体から第一の蛍光信号を、第一の条件下で決定することと、
前記第一および第二の蛍光体から第二の蛍光信号を、前記第一の条件とは異なる第二の条件下で決定することと、
前記第一および第二の蛍光信号から前記第一および第二の蛍光体についての前記第一および第二のラベル付け度信号を決定することからなり、
前記第一および第二のラベル付け度信号の前記決定は、前記蛍光体の間のエネルギーの結合を表す少なくとも1つの結合値(c12;c21)に応じたものである方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの結合値は、前記蛍光体の1つによって放射され前記蛍光体の他のものによって吸収された光の間の結合を表す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第一の蛍光体は、前記第二の蛍光体よりも長い波長に放射ピークを有し、前記少なくとも1つの結合値は、前記第二の蛍光体によって放射され前記第一の蛍光体によって吸収された光の間の結合を表す、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記第一および第二の条件は、前記第一および第二の蛍光信号の決定のための異なる照射波長と異なる検出波長の一方または両方を規定する、請求項1、2または3記載の方法。
【請求項5】
前記第一および第二の蛍光体の異なる割合の組み合わせの範囲に渡ってカリブレーションを行って、前記少なくとも1つの結合値についての推定を決定することから更になる、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第一および第二のラベル付け度信号の前記決定は、前記第一および第二の蛍光体についての自己消光度のそれぞれに依存する第一および第二のパラメータ(b;b)に更に応したものである、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記第一および第二の蛍光信号の前記決定は、超伝導トンネルジャンクション装置を使って前記蛍光信号を検出することからなる、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記共通のエンティティは、プローブエンティティからなる、請求項1から7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記共通のエンティティは、ターゲットエンティティからなる、請求項1から8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記蛍光体の1つの他の1つによる蛍光消光についてのマイクロアレイデータを修正することから更になる、先行する請求項のいずれかの方法に従ってマイクロアレイからの蛍光データを処理する方法。
【請求項11】
前記第一および第二の蛍光信号の前記決定は、前記第一および第二の蛍光信号の入力からなる、実行された時に先行する請求項のいずれかの方法を実装する、プロセッサ制御コードを搬送する搬送体。
【請求項12】
共通のエンティティに関連付けられた、異なる第一および第二の蛍光体のそれぞれについての第一および第二のラベル付け度信号のそれぞれを決定する装置であって、
前記第一および第二の蛍光体から第一の蛍光信号を、第一の条件下で決定する手段と、
前記第一および第二の蛍光体から第二の蛍光信号を、前記第一の条件とは異なる第二の条件下で決定する手段と、
前記第一および第二の蛍光信号から前記第一および第二の蛍光体についての前記第一および第二のラベル付け度信号を決定する手段からなり、
前記第一および第二のラベル付け度信号を決定する前記手段は、前記蛍光体の間のエネルギーの結合を表す少なくとも1つの結合値(c12;c21)に応じたものである装置。
【請求項13】
請求項12の装置を組み込んだマイクロアレイスキャニング装置。
【請求項14】
エンティティを蛍光体でラベル付けする方法であって、
前記蛍光体の光生成効率に依存した第一のパラメータを入力することと、
前記蛍光体の自己消光度に依存した第二のパラメータを入力することと、
前記第一および第二のパラメータを使って前記蛍光体による前記エンティティの最適ラベル付け度の推定を決定することと、
前記推定された最適ラベル付け度に従って前記蛍光体で前記エンティティをラベル付けすることからなる方法。
【請求項15】
前記第一のパラメータは、前記蛍光体の構造に更に依存する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
推定の前記決定は、複数の蛍光体による前記エンティティの最適ラベル付け度の推定を決定し、前記推定の前記決定は、前記複数の蛍光体の少なくとも2つの間の結合度に依存する第三のパラメータに応じたものである、請求項14または15の方法を使って複数の蛍光体でエンティティをラベル付けする方法。
【請求項17】
前記複数の蛍光体の広範な異なるそれぞれの組み合わせでラベル付けされたエンティティを使ってカリブレーションを行って、前記結合度を推定することから更になる、請求項16記載の方法。
【請求項18】
請求項14、15、16または17の方法に従って1つ以上の蛍光体でラベル付けされたエンティティ。
【請求項19】
複数の異なる蛍光体でラベル付けされたエンティティであって、前記異なる蛍光体のそれぞれの数は、前記蛍光体の各々からの蛍光信号(S(n))が実質的に最大化されるようになっているもの。
【請求項20】
蛍光体でラベル付けされたプローブのキットであって、前記異なる蛍光体のそれぞれの数は、前記蛍光体の各々からの蛍光信号(S(n))が実質的に最大化されるようになっているもの。
【請求項21】
蛍光体でラベル付けされたプローブのキットを製造する方法であって、
前記キットのための蛍光体の組み合わせを決定することと、
前記決定された蛍光体の組み合わせを使って前記キットを製造することからなり、
前記蛍光体の組み合わせの前記決定は、
蛍光体でラベル付けされたプローブの前記キットのための蛍光体のセットと、セットの前記蛍光体の候補についての蛍光輝度良度指数関数を使った前記蛍光体による前記プローブのラベル付け度の一方または両方を選択することからなり、前記蛍光輝度良度指数関数は、前記蛍光体の前記候補の放射および吸収スペクトルの間の重複度に依存する方法。
【請求項22】
前記関数が前記重複度に依存するものであることに加えてまたは代えて、前記関数は、i)蛍光体の光生成効率に依存するパラメータと、ii)蛍光体の自己消光度に依存するパラメータの関数からなり、前記選択は更にiii)蛍光体と別の蛍光体の間の結合度に依存するパラメータに依存するものである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
請求項21または22の方法に従って製造された蛍光体でラベル付けされたプローブのキット。
【請求項24】
蛍光体のキットからなる蛍光体でラベル付けされたプローブのキットであって、蛍光体でラベル付けされたプローブの前記キットと、前記蛍光体による前記プローブのラベル付け度の一方または両方は、セットの前記蛍光体の候補についての蛍光輝度良度指数関数(R)を使って選択され、前記蛍光輝度良度指数関数は、前記蛍光体の前記候補の放射および吸収スペクトルの間の重複度に依存するもの。
【請求項25】
前記関数が前記重複度に依存するものであることに加えてまたは代えて、前記関数は、i)蛍光体の光生成効率に依存するパラメータと、ii)蛍光体の自己消光度に依存するパラメータの関数からなり、前記選択は更にiii)蛍光体と別の蛍光体の間の結合度に依存するパラメータに依存するものである、請求項24記載のキット。
【請求項26】
2つ以上の異なる蛍光体でラベル付けされたマイクロアレイからの蛍光データを処理する方法であって、
2つ以上の波長における前記マイクロアレイからの蛍光信号を表す前記蛍光データを入力することと、
前記蛍光信号についてのパリティラインを表すデータを決定することであって、前記パリティラインは、それに沿って前記2つ以上の波長における蛍光からの信号強度が実質的に同等であることが期待されるラインであるものと、
前記決定されたパリティラインを使って前記波長の1つにおける前記マイクロアレイからの前記蛍光信号を修正することからなる方法。
【請求項27】
前記パリティラインは、を決定するために使われた前記蛍光信号の1つは、制御蛍光強度を表す、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記パリティラインを表すデータの前記決定は、
/S=(a−b)/(a−b
を使って前記パリティライン上の第一のポイントを決定することからなり、ここでSとSは前記2つ以上の波長の第一および第二の波長のそれぞれにおける蛍光強度信号を表し、a、bとa、bは前記蛍光体の異なるそれぞれの特性を表す、請求項26または27記載の方法。
【請求項29】
前記パリティラインを表すデータの前記決定は、
/S=(b+cRG)/b
を使って前記パリティライン上の第二のポイントを決定することからなり、ここでSとSは前記2つ以上の波長の第一および第二の波長のそれぞれにおける蛍光強度信号を表し、bとbは前記蛍光体の特性を表し、cRGは前記蛍光体の1つからの放射が前記蛍光体の第二のものによって吸収されることを考慮に入れるものである、請求項26、27または28記載の方法。
【請求項30】
前記蛍光データからcRGのための値を決定することから更になる、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記修正は、前記波長の前記1つにおける前記マイクロアレイからの前記蛍光信号と、前記パリティラインから予測された前記波長の前記1つにおける前記蛍光信号の値の間の差を補償することからなる、請求項26から30のいずれか1つに記載の方法。
【請求項32】
前記マイクロアレイからの固定パターンノイズと、1つのデジタル数の他の1つによる分割から引き起こされるノイズの一方または両方からなる、システマティックなノイズについての前記蛍光データを補償することから更になる、請求項26から31のいずれか1つに記載の方法。
【請求項33】
マイクロアレイからの蛍光データを処理する方法であって、
複数の異なるスポット位置における前記マイクロアレイからの蛍光信号を表す前記蛍光データを入力することと、
前記蛍光データを処理して、前記スポットからの蛍光に関連付けられた生物学的パラメータを決定することからなり、
前記処理は、
前記マイクロアレイからの固定パターンノイズと、1つのデジタル数の他の1つによる分割から引き起こされるノイズの一方または両方からなる、システマティックなノイズについての前記蛍光データを補償することを含む方法。
【請求項34】
前記パリティラインの前記決定または前記蛍光データの前記処理は、前記蛍光体の1つの他の1つによる蛍光消光を補償することからなる、請求項26から33のいずれか1つに記載の方法。
【請求項35】
実行された時に請求項26から34のいずれか1つの方法を実装する、コンピュータプログラムコードを搬送する搬送体。
【請求項36】
請求項26から34のいずれか1つの方法を実装するように構成された装置であって、
前記マイクロアレイからの蛍光信号を表す前記蛍光データを入力する入力と、
処理された前記蛍光データを出力する出力と、
前記入力と、前記出力と、作業メモリと、請求項26から34のいずれか1つの方法を実装するプロセッサ制御コードを格納したプログラムメモリと、に結合されたプロセッサからなる装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図10d】
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【公表番号】特表2010−515074(P2010−515074A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544446(P2009−544446)
【出願日】平成20年1月4日(2008.1.4)
【国際出願番号】PCT/GB2008/050009
【国際公開番号】WO2008/081203
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(506410121)ユニバーシティ オブ レスター (4)
【Fターム(参考)】