説明

蛍光ランプ用塗料とそれを用いた塗膜及び塗膜の製造方法並びに蛍光ランプ

【課題】透光性封止管に対する蛍光体の接合強度が向上し、剥離等の不具合を防止することのできる蛍光ランプ用塗料と塗膜及び塗膜の製造方法並びに蛍光ランプを提供する。
【解決手段】本発明の蛍光ランプ用塗料は、蛍光体同士を接着させるとともに、これらの蛍光体を透光性封止管に接着させる結着用物質と、溶媒とを含有してなる蛍光ランプ用塗料であり、この結着用物質は、酸化アルミニウム及び有機ケイ素化合物を含有し、この有機ケイ素化合物は、ケイ酸メチル及びシランカップリング剤のうちいずれか1種または2種であり、この溶媒は、水及び低沸点有機溶媒のうちいずれか1種または2種である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光ランプ用塗料とそれを用いた塗膜及び塗膜の製造方法並びに蛍光ランプに関し、更に詳しくは、蛍光体同士の接着強度及び蛍光体と透光性封止管との接着強度を向上させることが可能な塗膜を形成するための蛍光ランプ用塗料、この蛍光ランプ用塗料を用いた塗膜、及び塗膜の製造方法、並びに蛍光体同士の接着強度及び蛍光体と透光性封止管との接着強度を向上させることにより、蛍光体層の機械的強度を高め、剥がれ等の不具合を防止することが可能な蛍光ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、蛍光ランプのガラス管の内面に蛍光体を付着させて蛍光体層を形成する場合、バインダーを含む溶液に蛍光体を懸濁させた蛍光体スラリーをガラス管内面に塗布し、乾燥、焼成工程を経て蛍光体層を形成している。
省資源、省エネルギー、作業環境、防災等の観点から、バインダーとして、水溶性バインダーを用いた蛍光ランプ用塗料があるが、この水溶性バインダーは、有機溶媒のバインダーと比べてガラス管への蛍光体の付着強度が低く、蛍光体層がガラス管から剥離してしまうという問題点があった。
【0003】
そこで、蛍光体同士の接着強度及び蛍光体と透光性封止管との接着強度を向上させるために、ホウ酸ストロンチウム、水溶性の希土類化合物及びコロイダルアルミナ、水溶性の希土類化合物及びホウ酸並びにコロイダルアルミナ、等の結着剤を添加した塗料が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2004−207100号公報
【特許文献2】特許第2760202号公報
【特許文献3】特許第2783077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のホウ酸ストロンチウム等の結着剤を添加した蛍光ランプ用塗料においても、蛍光体同士の接着強度は実用レベルに達するものの、ガラス管に対する蛍光体の接着強度が依然として実用レベルに達していないという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ガラス管等の透光性封止管に対する蛍光体の接合強度が向上し、しかも、剥離等の不具合を防止することのできる蛍光ランプ用塗料とそれを用いた塗膜及び塗膜の製造方法並びに蛍光ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、蛍光体同士を接着させるとともに、これらの蛍光体をガラス管等の透光性封止管に接着させる結着用物質として、酸化アルミニウムと有機ケイ素化合物とを用いたことにより、ガラス管等の透光性封止管に対する蛍光体の接合強度が向上し、しかも、蛍光体層の剥離等の不具合を防止することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の蛍光ランプ用塗料は、蛍光体同士を接着させるとともに、これらの蛍光体を透光性封止管に接着させる結着用物質と、溶媒とを含有してなる蛍光ランプ用塗料であって、前記結着用物質は、酸化アルミニウム及び有機ケイ素化合物を含有してなることを特徴とする。
【0008】
前記有機ケイ素化合物は、ケイ酸メチル及びシランカップリング剤のうちいずれか1種または2種を含有してなることが好ましい。
前記溶媒は、水及び低沸点有機溶媒のうちいずれか1種または2種を含有してなることが好ましい。
さらに、蛍光体を添加してもよい。
【0009】
本発明の塗膜は、本発明の蛍光ランプ用塗料と蛍光体を含むスラリーとを混合してなる蛍光体を含む塗料を用いて形成してなることを特徴とする。
【0010】
本発明の塗膜は、本発明の蛍光体を添加した蛍光ランプ用塗料を用いて形成してもよい。
【0011】
本発明の塗膜の製造方法は、本発明の蛍光ランプ用塗料と蛍光体を含むスラリーとを混合して蛍光体を含む塗料を作製し、次いで、この蛍光体を含む塗料を基材上に塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を乾燥、または乾燥及び熱処理することを特徴とする。
【0012】
本発明の塗膜の製造方法は、本発明の蛍光体を添加した蛍光ランプ用塗料を基材上に塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を乾燥、または乾燥及び熱処理することを特徴とする。
【0013】
本発明の蛍光ランプは、本発明の塗膜を透光性封止管の内部に形成してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の蛍光ランプ用塗料によれば、蛍光体同士を接着させるとともに、これらの蛍光体を透光性封止管に接着させる結着用物質が、酸化アルミニウム及び有機ケイ素化合物を含有したので、蛍光体同士の接着強度及び蛍光体と透光性封止管との間の接着強度を向上させることができる。
したがって、この蛍光ランプ用塗料を用いることにより、透光性封止管に対する蛍光体の接合強度を向上させることができ、蛍光体層の剥離等の不具合を防止することができる塗膜を容易に形成することができる。
【0015】
さらに、蛍光体を添加すれば、蛍光体を含むスラリーを混合する操作が不要となり、塗膜を形成する際の操作を簡略化することができる。
【0016】
本発明の塗膜によれば、本発明の蛍光ランプ用塗料と蛍光体を含むスラリーとを混合してなる混合塗料を用いて形成したので、透光性封止管に対する蛍光体の接合強度を向上させることができ、蛍光体層の剥離等の不具合を防止することができる。
【0017】
本発明の塗膜によれば、本発明の蛍光体を添加した蛍光ランプ用塗料を用いて形成したので、透光性封止管に対する蛍光体の接合強度を向上させることができ、蛍光体層の剥離等の不具合を防止することができる。
しかも、蛍光ランプ用塗料に蛍光体を添加したので、蛍光体を含むスラリーを混合する操作が不要となり、塗膜を形成する際の操作を簡略化することができる。
【0018】
本発明の塗膜の製造方法によれば、本発明の蛍光ランプ用塗料と蛍光体を含むスラリーとを混合して混合塗料を作製し、次いで、この混合塗料を基材上に塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を乾燥、または乾燥及び熱処理するので、透光性封止管に対する蛍光体の接合強度を向上させることができ、蛍光体層の剥離等の不具合を防止することができる塗膜を、製造コストを上昇させることなく、容易に形成することができる。
【0019】
本発明の塗膜の製造方法によれば、本発明の蛍光体を添加した蛍光ランプ用塗料を基材上に塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を乾燥、または乾燥及び熱処理するので、透光性封止管に対する蛍光体の接合強度を向上させることができ、蛍光体層の剥離等の不具合を防止することができる塗膜を、製造コストを上昇させることなく、容易に形成することができる。
【0020】
本発明の蛍光ランプによれば、本発明の塗膜を透光性封止管の内部に形成したので、蛍光体層の透光性封止管に対する接合強度を向上させることができ、したがって、剥離等の不具合を防止することができる。
その結果、剥離等の不具合が生じる虞のない信頼性に優れた蛍光ランプを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の蛍光ランプ用塗料とそれを用いた塗膜及び塗膜の製造方法並びに蛍光ランプを実施するための最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0022】
「蛍光ランプ用塗料」
本実施形態の蛍光ランプ用塗料は、蛍光体同士を接着させるとともに、これらの蛍光体を透光性封止管に接着させる結着用物質と、溶媒とを含有してなる蛍光ランプ用塗料であり、前記結着用物質が酸化アルミニウム及び有機ケイ素化合物を含有した塗料である。
【0023】
酸化アルミニウムの平均粒子径は10nm以上かつ500nm以下であることが好ましく、より好ましくは20nm以上かつ200nm以下である。
ここで、酸化アルミニウムの好ましい平均粒子径を10nm以上かつ500nm以下とした理由は、酸化アルミニウムの平均粒子径が10nm未満では、比表面積が大きくなるために、塗料の安定性、及びこの塗料により得られた塗膜の輝度維持率に悪影響を及ぼすからであり、一方、酸化アルミニウムの平均粒子径が500nmを超えると、蛍光体同士及び蛍光体と透光性封止管との間の接着強度を十分に発現させることができなくなるからである。
【0024】
有機ケイ素化合物としては、構造式を示す下記の式(1)
【化1】

でn=1としたケイ酸メチル(テトラメトキシシラン:TMOS)及びシランカップリング剤のうちいずれか1種または2種が好ましい。
【0025】
シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、5−ヘキセニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−(4−ビニルフェニル)プロピルトリメトキシシラン、4−ビニルフェニルメチルトリメトキシシラン、4−ビニルフェニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
このシランカップリング剤は、上記の群から1種のみ、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
この蛍光ランプ用塗料における酸化アルミニウムの質量(M)と有機ケイ素化合物の質量(M)との比(M:M)は、98:2〜80:20が好ましく、より好ましくは98:2〜85:15である。
ここで、酸化アルミニウムの質量(M)と有機ケイ素化合物の質量(M)との比(M:M)が上記の範囲が好ましいとした理由は、98:2より酸化アルミニウムの比率が多くなると、蛍光体同士及び蛍光体と透光性封止管との間の接着強度が低下するからであり、一方、80:20より酸化アルミニウムの比率が少なくなると、蛍光ランプの輝度が低下するからである。
【0027】
ここで、この有機ケイ素化合物のみを蛍光体同士及び蛍光体と透光性封止管との間を接着させる結着用物質として用いた場合、接着強度が強くなる一方、この有機ケイ素化合物が反応して生じた蛍光体層中の酸化ケイ素に封入ガス中の水銀(Hg)が吸着するために、蛍光ランプの輝度が低下する。
そこで、この有機ケイ素化合物に酸化アルミニウムを一定の割合で混合すれば、蛍光体層中に、有機ケイ素化合物が反応して生じた酸化ケイ素と酸化アルミニウムが結合するケイ酸アルミニウム化合物を含む構成となり、このケイ酸アルミニウム化合物が水銀(Hg)の吸着を防ぐとともに、蛍光体同士及び蛍光体と透光性封止管との間の接着強度を制御することができる。
【0028】
この蛍光ランプ用塗料に用いられる溶媒は、基本的には、水及び低沸点有機溶媒のうちいずれか1種または2種を含有している。
上記の低沸点有機溶媒は、乾燥速度を向上させるために用いられるもので、常圧(1気圧)下で150℃以下の沸点を有する有機溶媒である。
この低沸点有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等の低級アルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸−1−ブチル、酢酸−2−ブチル等のエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等から選択される1種または2種以上が用いられる。
【0029】
これらの溶媒の中でも、水、低級アルコール類、ケトン類等が好ましく、特に、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)等が好適に用いられる。
【0030】
この蛍光ランプ用塗料の乾燥速度を調節するために、高沸点有機溶媒を添加してもよい。
この高沸点有機溶媒は、常圧(1気圧)下で150℃を超える沸点を有する有機溶媒であり、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0031】
この蛍光ランプ用塗料では、さらに分散性を向上させるために、分散剤を添加することが好ましい。
分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸塩、ポリアルキル硫酸塩、ポリビニルアルコール(PVA)等の水に可溶なポリマー類が挙げられる。
【0032】
この蛍光ランプ用塗料に、蛍光体を添加することとしてもよい。
この蛍光体としては、蛍光体を含む微粒子が好ましく、この蛍光体を含む微粒子としては、赤色系発光蛍光体、緑色系発光蛍光体及び青色系発光蛍光体のうち1種または2種以上からなる蛍光体を含む微粒子が好ましい。
この蛍光体を含む微粒子の平均粒子径は、0.05μm以上かつ5μm以下が好ましく、より好ましくは0.05μm以上かつ3μm以下である。
【0033】
ここで、赤色系発光蛍光体としては、例えば、Y:Eu、Y(PV)O:Eu、YVO:Eu、YS:Eu、(Y,Gd)BO:Eu等が挙げられる。
また、緑色系発光蛍光体としては、例えば、(Ba,Eu)(Mg,Mn)Al1017、LaPO:Ce,Tb、ZnSiO:Mn、ZnS:Cu,Al、CeMgAl1119:Tb、GdMgB10:Ce,Tb等が挙げられる。
また、青色系発光蛍光体としては、例えば、(Sr,Ca,Ba,Mg)(POCl:Eu、(Ba,Sr,Eu)(Mg,Mn)Al10、Sr10(POCl:Eu、ZnS:Ag,Al、BaMgAl1017:Eu等が挙げられる。
これら赤色系発光蛍光体、緑色系発光蛍光体及び青色系発光蛍光体それぞれの含有率は、目的とする蛍光ランプの発光特性に合わせて、適宜設定すればよい。
【0034】
この場合、この塗料中の酸化アルミニウム及び有機ケイ素化合物の合計の質量は、上記の蛍光体に対して0.5質量%以上かつ3.5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.0質量%以上かつ2.5質量%以下である。
ここで、酸化アルミニウム及び有機ケイ素化合物の合計の質量が、上記の蛍光体に対して0.5質量%以上かつ3.5質量%以下であることが好ましい理由は、0.5質量%未満では、蛍光体同士及び蛍光体と透光性封止管との間の接着強度が不十分であるからであり、一方、3.5質量%を超えると、蛍光ランプの初期の輝度が低下するからである。
【0035】
この蛍光ランプ用塗料では、蛍光ランプの特性を低下させない範囲で、用途や仕様に応じて、界面活性剤、樹脂等の有機高分子、硼珪酸亜鉛ガラス等の低融点ガラス等を添加してもよい。
【0036】
本実施形態の蛍光ランプ用塗料によれば、蛍光体同士を接着させるとともに、これらの蛍光体を透光性封止管に接着させる結着用物質が、酸化アルミニウム及び有機ケイ素化合物を含有したので、蛍光体同士の接着強度及び蛍光体と透光性封止管との間の接着強度を向上させることができる。
したがって、この蛍光ランプ用塗料を用いることにより、透光性封止管に対する蛍光体の接合強度を向上させることができ、蛍光体層の剥離等の不具合を防止することができる塗膜を容易に形成することができる。
【0037】
さらに、蛍光体を添加した蛍光ランプ用塗料とすれば、蛍光体を含むスラリーを混合する操作が不要となり、塗膜を形成する際の操作を簡略化することができる。
【0038】
「塗膜の製造方法及び塗膜」
本実施形態の塗膜の製造方法には、次の(1)、(2)の2通りの方法がある。
(1)上記の(蛍光体を含有しない)蛍光ランプ用塗料と、蛍光体を含むスラリーと、を混合して混合塗料を作製し、次いで、この混合塗料を基材上に塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を乾燥、または乾燥及び熱処理する方法。
【0039】
まず、上記の蛍光体を含有しない蛍光ランプ用塗料と、蛍光体を含むスラリーと、を混合して混合塗料を作製する。
この蛍光体を含むスラリーとは、上述した蛍光体を上述した溶媒、すなわち水及び低沸点有機溶媒のうちいずれか1種または2種に分散させたスラリーであり、ここでは、蛍光ランプ用塗料中の酸化アルミニウム及び有機ケイ素化合物の合計の質量が、スラリー中の蛍光体に対して0.5質量%以上かつ3.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%以上かつ2.5質量%以下となるように、蛍光ランプ用塗料と蛍光体を含むスラリーとの混合比(質量比)を設定する。
【0040】
ここで、蛍光ランプ用塗料中の酸化アルミニウム及び有機ケイ素化合物の合計の質量が、スラリー中の蛍光体に対して0.5質量%以上かつ3.5質量%以下となるように、蛍光ランプ用塗料と蛍光体を含むスラリーとの混合比(質量比)を設定した理由は、酸化アルミニウム及び有機ケイ素化合物の合計の質量が、スラリー中の蛍光体に対して0.5質量%未満では、蛍光体同士及び蛍光体と透光性封止管との間の接着強度が不十分であるからであり、一方、上記の合計の質量が、スラリー中の蛍光体に対して3.5質量%を超えると、蛍光ランプの初期の輝度が低下するからである。
【0041】
次いで、この混合塗料を基材上に塗布して塗布膜を形成する。
ここで、基材としては、熱処理温度に耐える基材であればよく、ガラス基材、透光性のセラミックス基材等が好適であるが、蛍光ランプ用途を考慮すると、蛍光ランプの仕様に適合可能なガラス管が好ましい。
塗布方法としては、スピンコート法、ロールコート法、スプレーコート法、バーコート法、ディップコート法、メニスカスコート法、吸上げ塗工法、フローコート法等、通常のウエットコート法を用いることができる。特に、蛍光ランプのようにガラス管の内面に塗膜を形成する場合、吸上げ塗工法、フローコート法等が好適に用いられる。
【0042】
次いで、この塗布膜を、大気中にて乾燥、または乾燥及び熱処理する。
乾燥温度は、塗料に含まれる低沸点有機溶媒(または低沸点有機溶媒及び高沸点有機溶媒)が充分に散逸する温度であればよく、例えば、常温(25℃)〜150℃である。
この乾燥工程では、塗布膜が充分乾燥すればよく、加熱だけの乾燥でもよく、空気を吹き付けてもよい。具体的には、常温のエアブローでも、熱風を吹き付けてもよい。
【0043】
熱処理する場合、熱処理温度を500℃〜800℃の範囲の温度として、蛍光ランプに不具合が生じない範囲で所定時間行う。
また、この熱処理工程は、基材上に蛍光体層及び本発明の塗布膜を順次形成した場合には、蛍光体層と同時に熱処理してもよい。
このようにして本実施形態の塗膜を得ることができる。
【0044】
(2)上記の蛍光体を添加した蛍光ランプ用塗料を、基材上に塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を乾燥、または乾燥及び熱処理する方法。
この(2)の方法は、(蛍光体を含有しない)蛍光ランプ用塗料と、蛍光体を含むスラリーと、を混合した混合塗料を用いる替わりに、蛍光体を添加した蛍光ランプ用塗料を用いた点が、上記の(1)の方法と異なるのみであり、他の点は全く同様である。
この方法によっても、本実施形態の塗膜を得ることができる。
【0045】
上記のいずれの塗膜の製造方法によっても、透光性封止管に対する蛍光体の接合強度を向上させることができ、蛍光体層の剥離等の不具合を防止することができる塗膜を、製造コストを上昇させることなく、容易に形成することができる。
【0046】
この様にして得られた塗膜は、透光性封止管との接合強度が向上したことにより、この透光性封止管から剥離する虞が無くなり、長期間、安定して蛍光体層を維持することが可能である。
【0047】
このように、本発明の塗膜によれば、蛍光体同士の接着強度及び蛍光体と透光性封止管との間の接着強度が向上し、蛍光体層の剥離等の不具合が生じる虞が無くなるので、透光性封止管に対する蛍光体の接合強度を向上させることができ、蛍光体層の剥離等の不具合を防止することができる。
【0048】
「蛍光ランプ」
本発明の蛍光ランプは、本発明の塗膜を透光性封止管の内部に形成したものであり、このような構成とすることにより、蛍光体同士の接着強度及び蛍光体と透光性封止管との間の接着強度が向上し、蛍光体層の剥離等の不具合が生じる虞が無くなっている。
【0049】
図1は、本発明の一実施形態の蛍光ランプを示す縦断面図、図2は同横断面図であり、図において、1は両端が封止されたガラス管からなる透光性封止管、2は透光性封止管1の内壁全体(内面)に形成された電子放射機能を有する保護膜、3は本発明の塗膜であり保護膜2の内面全体に形成された赤色系発光蛍光体、緑色系発光蛍光体及び青色系発光蛍光体の混合物からなる蛍光体と、有機ケイ素化合物が反応して生じた酸化ケイ素と酸化アルミニウムが結合したケイ酸アルミニウム化合物とを含む蛍光体層、4は透光性封止管1内の両端部側にそれぞれ設けられた電極、5は電極4に電気的に接続されたリード線である。
【0050】
また、Gは透光性封止管1内に封入された封入ガスであり、この封入ガスGは、水銀、ネオンやアルゴン等の希ガスや窒素等の不活性ガスにより構成されている。
また、保護膜2は、電極4、4間に高周波の高電圧を印加することにより電子放射性物質から電子を放出する機能と、透光性封止管1に含まれる物質とガスGに含まれる水銀とが反応してアマルガムを生成するのを防止する機能とを兼ね備えている膜である。
【0051】
この蛍光ランプは、本実施形態の塗膜からなる蛍光体層3を透光性封止管1の内壁に形成したので、赤色系発光蛍光体、緑色系発光蛍光体及び青色系発光蛍光体の間の接着強度、及びこれらの蛍光体物質と透光性封止管との間の接着強度が向上し、蛍光体層の剥離等の不具合が生じる虞が無くなっている。
したがって、初期輝度の維持率が高く、長期に渡って安定した輝度を得ることができる。
【0052】
この蛍光ランプを製造するには、透光性封止管1の内壁に保護膜形成用塗料を塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を乾燥または乾燥・熱処理して保護膜2を形成し、次いで、この保護膜2上に上記の混合塗料を塗布し、乾燥、または乾燥及び熱処理して、蛍光体層3を形成し、次いで、透光性封止管1内に電極4、4を取り付け、さらに、希ガス及び水銀を導入して透光性封止管1を封止し、蛍光ランプを得る。
【0053】
なお、本実施形態の蛍光ランプでは、透光性封止管1の内壁全体に電子放射機能を有する保護膜2を形成し、この保護膜2上に蛍光体層3を形成した構成としたが、本実施形態の蛍光ランプはこれに限定されない。本発明の蛍光ランプは、例えば、まず、透光性封止管の内壁に蛍光体層3を形成し、この蛍光体層3上に保護膜3を形成してもよく、また、保護膜2、蛍光体層3、保護膜2を順に積層した3層構造としてもよい。
【実施例】
【0054】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
1.有機ケイ素化合物としてケイ酸メチルを用いた実施例
「実施例1」
酸化アルミニウム(Al)粉末(平均粒子径が20nmのγ−Alと平均粒子径が140nmのα−Alとを含む)を、分散剤を含む水中にビーズミルを用いて分散させ、その後ビーズを分離し、さらにケイ酸メチル(TMOS)を添加し、酸化アルミニウム(Al)粉末15.0質量%(平均粒子径が20nmのγ−Al:11.3質量%、平均粒子径が140nmのα−Al:3.7質量%)、ケイ酸メチル(TMOS)1.0質量%、分散剤1.0質量%を含み、残分を水(83.0質量%)とした分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
【0056】
次いで、この分散液を、蛍光体スラリーと混合し、蛍光体スラリー中の蛍光体に対して、酸化アルミニウム粉末及びケイ酸メチルを1.5質量%含む混合塗料を調製した。
蛍光体スラリーとしては、赤色系発光蛍光体、緑色系発光蛍光体及び青色系発光蛍光体の混合物と、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide:PEO)を含む水との混合物を使用した。
【0057】
次いで、この混合塗料を、乾燥後の膜厚が20μmとなるように硬質ガラス基板上に塗布し、得られた塗膜を室温にて乾燥させた後、600℃にて5分間、熱処理し、硬質ガラス基板上に蛍光体層が形成された実施例1の平板状の試料を作製した。
さらに、蛍光ランプ用のガラス管(透光性封止管)を用意し、このガラス管の内面に吸上げ塗工法を用いて上記の混合塗料を乾燥後の膜厚が20μmとなるように塗布し、得られた塗膜を室温にて乾燥させた後、600℃にて5分間、熱処理した。
その後、このガラス管に電極やリード線を取り付けて封止し、実施例1の蛍光ランプを作製した。
【0058】
「実施例2」
ケイ酸メチル(TMOS)を0.5質量%とした以外は実施例1と同様にして、分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
次いで、この分散液を用い、実施例1と同様にして、実施例2の混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプを作製した。
【0059】
「実施例3」
ケイ酸メチル(TMOS)を2.0質量%とした以外は実施例1と同様にして、分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
次いで、この分散液を用い、実施例1と同様にして、実施例3の混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプを作製した。
【0060】
「実施例4」
酸化アルミニウム(Al)粉末を10.0質量%とした以外は実施例1と同様にして、分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
次いで、この分散液を用い、実施例1と同様にして、実施例4の混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプを作製した。
【0061】
「実施例5」
酸化アルミニウム(Al)粉末を20.0質量%とした以外は実施例1と同様にして、分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
次いで、この分散液を用い、実施例1と同様にして、実施例5の混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプを作製した。
【0062】
「比較例1」
ケイ酸メチル(TMOS)を0.2質量%とした以外は実施例1と同様にして、分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
次いで、この分散液を用い、実施例1と同様にして、比較例1の混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプを作製した。
【0063】
「比較例2」
ケイ酸メチル(TMOS)を3.0質量%とした以外は実施例1と同様にして、分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
次いで、この分散液を用い、実施例1と同様にして、比較例2の混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプを作製した。
【0064】
「比較例3」
酸化アルミニウム(Al)粉末を5.0質量%とした以外は実施例1と同様にして、分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
次いで、この分散液を用い、実施例1と同様にして、比較例3の混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプを作製した。
【0065】
「比較例4」
酸化アルミニウム(Al)粉末を30.0質量%とした以外は実施例1と同様にして、分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
次いで、この分散液を用い、実施例1と同様にして、比較例4の混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプを作製した。
【0066】
「比較例5」
ケイ酸メチル(TMOS)をケイ酸エチル(テトラエトキシシラン:TEOS)に代えた以外は実施例1と同様にして、分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
次いで、この分散液を用い、実施例1と同様にして、比較例5の混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプを作製した。
【0067】
「比較例6」
ケイ酸メチル(TMOS)を、有機ケイ素化合物の構造式を示す上記の式(1)でn=2としたものに代えた以外は実施例1と同様にして、分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
次いで、この分散液を用い、実施例1と同様にして、比較例6の混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプを作製した。
【0068】
「比較例7」
ケイ酸メチル(TMOS)を、有機ケイ素化合物の構造式を示す上記の式(1)でn=3としたものに代えた以外は実施例1と同様にして、分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
次いで、この分散液を用い、実施例1と同様にして、比較例7の混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプを作製した。
【0069】
「比較例8」
ケイ酸メチル(TMOS)を、有機ケイ素化合物の構造式を示す上記の式(1)でn=8としたものに代えた以外は実施例1と同様にして、分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
次いで、この分散液を用い、実施例1と同様にして、比較例8の混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプを作製した。
【0070】
「比較例9」
ケイ酸メチル(TMOS)1.0質量%を、酸化ケイ素微粒子(平均粒子径:30nm)2.0質量%に代えた以外は実施例1と同様にして、分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
次いで、この分散液を用い、実施例1と同様にして、比較例9の混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプを作製した。
【0071】
「比較例10」
ケイ酸メチル(TMOS)1.0質量%を、酸化アルミニウムの前駆体(Al:w−zは任意の数)2.0質量%に代えた以外は実施例1と同様にして、分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
次いで、この分散液を用い、実施例1と同様にして、比較例10の混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプを作製した。
【0072】
2.有機ケイ素化合物としてシランカップリング剤を用いた実施例
「実施例6」
ケイ酸メチル(TMOS)を、シランカップリング剤 KBM−403(信越化学社製)に代えた以外は実施例1と同様にして、分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
次いで、この分散液を用い、実施例1と同様にして、実施例6の混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプを作製した。
【0073】
「実施例7」
ケイ酸メチル(TMOS)1.0質量%を、シランカップリング剤 KBM−403(信越化学社製)0.5質量%とした以外は実施例1と同様にして、分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
次いで、この分散液を用い、実施例1と同様にして、実施例7の混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプを作製した。
【0074】
「実施例8」
ケイ酸メチル(TMOS)1.0質量%を、シランカップリング剤 KBM−403(信越化学社製)2.0質量%とした以外は実施例1と同様にして、分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
次いで、この分散液を用い、実施例1と同様にして、実施例8の混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプを作製した。
【0075】
「実施例9」
ケイ酸メチル(TMOS)1.0質量%を、シランカップリング剤 KBM−403(信越化学社製)3.0質量%とした以外は実施例1と同様にして、分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
次いで、この分散液を用い、実施例1と同様にして、実施例9の混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプを作製した。
【0076】
「実施例10」
酸化アルミニウム(Al)粉末を15.0質量%から10.0質量%に代え、ケイ酸メチル(TMOS)1.0質量%を、シランカップリング剤 KBM−403(信越化学社製)1.0質量%とした以外は実施例1と同様にして、分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
次いで、この分散液を用い、実施例1と同様にして、実施例10の混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプを作製した。
【0077】
「実施例11」
酸化アルミニウム(Al)粉末を15.0質量%から20.0質量%に代え、ケイ酸メチル(TMOS)1.0質量%を、シランカップリング剤 KBM−403(信越化学社製)1.0質量%とした以外は実施例1と同様にして、分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
次いで、この分散液を用い、実施例1と同様にして、実施例11の混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプを作製した。
【0078】
「比較例11」
ケイ酸メチル(TMOS)1.0質量%を、シランカップリング剤 KBM−403(信越化学社製)0.3質量%とした以外は実施例1と同様にして、分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
次いで、この分散液を用い、実施例1と同様にして、比較例11の混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプを作製した。
【0079】
「比較例12」
ケイ酸メチル(TMOS)1.0質量%を、シランカップリング剤 KBM−403(信越化学社製)4.0質量%とした以外は実施例1と同様にして、分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
次いで、この分散液を用い、実施例1と同様にして、比較例12の混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプを作製した。
【0080】
「比較例13」
ケイ酸メチル(TMOS)1.0質量%を、シランカップリング剤 KBM−403(信越化学社製)6.0質量%とした以外は実施例1と同様にして、分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
次いで、この分散液を用い、実施例1と同様にして、比較例13の混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプを作製した。
【0081】
「比較例14」
酸化アルミニウム(Al)粉末を0質量%とし、ケイ酸メチル(TMOS)1.0質量%を、シランカップリング剤 KBM−403(信越化学社製)1.0質量%とした以外は実施例1と同様にして、分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
次いで、この分散液を用い、実施例1と同様にして、比較例14の混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプを作製した。
【0082】
「比較例15」
酸化アルミニウム(Al)粉末を5.0質量%とし、ケイ酸メチル(TMOS)1.0質量%を、シランカップリング剤 KBM−403(信越化学社製)1.0質量%とした以外は実施例1と同様にして、分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
次いで、この分散液を用い、実施例1と同様にして、比較例15の混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプを作製した。
【0083】
「比較例16」
酸化アルミニウム(Al)粉末を10.0質量%とし、ケイ酸メチル(TMOS)1.0質量%を、シランカップリング剤 KBM−403(信越化学社製)2.0質量%とした以外は実施例1と同様にして、分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
次いで、この分散液を用い、実施例1と同様にして、比較例16の混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプを作製した。
【0084】
「比較例17」
ケイ酸メチル(TMOS)1.0質量%を、有機ケイ素化合物の構造式を示す上記の式(1)でn=2とし、その含有率を1.0質量%としたものに代えた以外は実施例1と同様にして、分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
次いで、この分散液を用い、実施例1と同様にして、比較例17の混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプを作製した。
【0085】
「比較例18」
酸化アルミニウム(Al)粉末を0質量%とし、ケイ酸メチル(TMOS)1.0質量%を、有機ケイ素化合物の構造式を示す上記の式(1)でn=3とし、その含有率を15.0質量%としたものに代えた以外は実施例1と同様にして、分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
次いで、この分散液を用い、実施例1と同様にして、比較例18の混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプを作製した。
【0086】
「比較例19」
ケイ酸メチル(TMOS)1.0質量%を、有機ケイ素化合物の構造式を示す上記の式(1)でn=8とし、その含有率を2.0質量%としたものに代えた以外は実施例1と同様にして、分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
次いで、この分散液を用い、実施例1と同様にして、比較例19の混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプを作製した。
【0087】
「比較例20」
ケイ酸メチル(TMOS)1.0質量%を、酸化ケイ素微粒子(平均粒子径:30nm)2.0質量%に代えた以外は実施例1と同様にして、分散液(蛍光ランプ用塗料)を作製した。
次いで、この分散液を用い、実施例1と同様にして、比較例20の混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプを作製した。
【0088】
「塗膜の評価」
実施例1〜11及び比較例1〜20それぞれの混合塗料、平板状の試料及び蛍光ランプについて、エアー剥離強度(結着力(接着強度))、耐衝撃性(結着力(接着強度))、輝度維持率、混合塗料の安定性の評価を下記の方法により行った。
実施例1〜11及び比較例1〜20それぞれの混合塗料の組成及び評価結果を表1〜表3に示す。
【0089】
(1)エアー剥離強度
塗膜から1.5cmの位置に、口径2mmのエアースプレーガンを固定し、このエアースプレーガンから塗膜に対して空気を吹き付け、吹き付け開始から10秒以内に塗膜が剥離する空気圧を測定した。ここでは、主に塗膜の剥がれむらを評価した。
なお、測定開始時の空気圧を0.1MPaとし、空気圧を0.01MPaずつ昇圧した。
得られた測定値を下記の4段階で評価した。
◎:0.6MPaを超えた場合
○:0.4MPa%以上かつ0.6MPa以下
△:0.2MPa%以上かつ0.4MPa未満
×:0.2MPa未満
【0090】
(2)耐衝撃性
塗膜に、その表面に対して垂直になるように、1.0mm間隔で平行に、縦10本×横10本の線状の切れ込みを入れて計100個の評価用塗膜を作製し、次いで、硬質ガラス基板の裏面(塗膜が形成されていない側の面)から、1.2mmのピアノ線を用いて衝撃を加え、塗膜の剥がれの有無を調べた。ここでは、塗膜における硬質ガラス基板の表面との面剥がれを評価した。
得られた結果を下記の4段階で評価した。
◎:塗膜100個のうち全ての塗膜が残存している場合
○:塗膜100個のうち80個以上かつ100個未満の塗膜が残存している場合
△:塗膜100個のうち50個以上かつ80個未満の塗膜が残存している場合
×:塗膜100個のうち50個未満の塗膜が残存している場合
【0091】
(3)輝度維持率
蛍光ランプを点灯し、点灯直後の輝度と、点灯から100時間経過後の輝度と、点灯から500時間経過後または1000時間経過後の輝度とを測定し、点灯開始から100時間後と、500時間経過後または1000時間経過後とにおける蛍光ランプの輝度維持率を、比較例1の蛍光ランプの輝度を基準として算出した。
得られた結果を下記の4段階で評価した。
◎:蛍光ランプ点灯から100時間(500時間、1000時間)経過後の輝度維持率が、比較例1の蛍光ランプの輝度維持率と比較して99%以上
○:蛍光ランプ点灯から100時間(500時間、1000時間)経過後の輝度維持率が、比較例1の蛍光ランプの輝度維持率と比較して95%以上
△:蛍光ランプ点灯から100時間(500時間、1000時間)経過後の輝度維持率が、比較例1の蛍光ランプの輝度維持率と比較して90%以上
×:蛍光ランプ点灯から100時間(500時間、1000時間)経過後の輝度維持率が、比較例1の蛍光ランプの輝度維持率と比較して90%未満
【0092】
(4)混合塗料の安定性
混合塗料を調製した直後の粘度と、調製から1ヶ月経過後の粘度とを測定し、調製から1ヶ月後の混合塗料の粘度の変動率を算出した。
得られた結果を下記の4段階で評価した。
◎:混合塗料の粘度の変動率が±20%以内
○:混合塗料の粘度の変動率が20%を超えかつ40%以下
△:混合塗料の粘度の変動率が40%を超えかつ60%以下
×:混合塗料の粘度の変動率が60%を超えるか、混合塗料に分離が生じた場合
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
【表3】

【0096】
表1〜表3の結果によれば、実施例1〜11の塗膜は、エアー剥離強度及び耐衝撃性に優れており、十分な結着力(接着強度)を有していることが分かった。また、実施例1〜11の塗膜を備えた蛍光ランプは、100時間経過後及び1000時間経過後のいずれにおいても輝度の低下が小さく、長時間に亘って初期輝度がほぼ維持されていることが分かった。
さらに、実施例1〜11の混合塗料は、調製から1ヶ月経過後の粘度の変動率が小さく、混合塗料のポットライフ(品質を維持できる期間)を長く取ることができ、長期間における品質の維持及び取り扱い性に優れていることが分かった。
【0097】
一方、比較例1の混合塗料は、安定性に優れているために、この混合塗料を用いて作製した塗膜は、エアー剥離強度及び輝度維持率に優れていたが、耐衝撃性が十分ではなかった。
比較例2〜4の混合塗料は、安定性に優れているものの、この混合塗料を用いて作製した塗膜は、エアー剥離強度、耐衝撃性及び輝度維持率のいずれかが不十分なものであった。
【0098】
比較例5〜7の混合塗料は、粘度の変動率が40%を超えているために安定性が十分ではなく、したがって、この混合塗料を用いて作製した塗膜は、輝度維持率が不十分なものであり、さらに、エアー剥離強度及び耐衝撃性のいずれか1つ以上が不十分なものであった。
比較例8の混合塗料は、粘度の変動率が60%を超えているために安定性が不十分であり、したがって、この混合塗料を用いて作製した塗膜は、エアー剥離強度、耐衝撃性、輝度維持率共に非常に悪く、実用に供し得ないものであった。
【0099】
比較例9の混合塗料は、酸化アルミニウムの前駆体を用いたために、この混合塗料を用いて作製した塗膜は、エアー剥離強度及び輝度維持率に優れていたが、耐衝撃性が十分ではなかった。
比較例10の混合塗料は、酸化ケイ素微粒子を含んでいるために、初期の輝度維持率は実施例1〜11と全く変わらないものの、長期(500時間)における輝度維持率が低下しており、十分なものではなかった。
【0100】
比較例11の混合塗料は、安定性に優れているために、この混合塗料を用いて作製した塗膜は、エアー剥離強度及び耐衝撃性に優れていたが、輝度維持率が不十分であった。
比較例12、13の混合塗料は、安定性が不十分であったために、この混合塗料を用いて作製した塗膜は、エアー剥離強度及び耐衝撃性に優れていたが、輝度維持率が不十分であった。
比較例14〜17の混合塗料は、安定性には優れていたが、この混合塗料を用いて作製した塗膜は、輝度維持率が不十分であった。
【0101】
比較例18、19の混合塗料は、重合度の高いケイ酸メチルを用いていたために、耐衝撃性は優れていたが、エアー剥離強度及び耐衝撃性の一方、特に長期(1000時間)における輝度維持率が低下していた。
比較例20の混合塗料は、安定性には優れていたが、この混合塗料を用いて作製した塗膜は、耐衝撃性が不十分であった。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の一実施形態の蛍光ランプを示す縦断面図である。
【図2】本発明の一実施形態の蛍光ランプを示す横断面図である。
【符号の説明】
【0103】
1 透光性封止管
2 保護膜
3 蛍光体層
4 電極
5 リード線
G 封入ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体同士を接着させるとともに、これらの蛍光体を透光性封止管に接着させる結着用物質と、溶媒とを含有してなる蛍光ランプ用塗料であって、
前記結着用物質は、酸化アルミニウム及び有機ケイ素化合物を含有してなることを特徴とする蛍光ランプ用塗料。
【請求項2】
前記有機ケイ素化合物は、ケイ酸メチル及びシランカップリング剤のうちいずれか1種または2種を含有してなることを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプ用塗料。
【請求項3】
前記溶媒は、水及び低沸点有機溶媒のうちいずれか1種または2種を含有してなることを特徴とする請求項1または2記載の蛍光ランプ用塗料。
【請求項4】
さらに、蛍光体を添加してなることを特徴とする請求項1、2または3記載の蛍光ランプ用塗料。
【請求項5】
請求項1、2または3記載の蛍光ランプ用塗料と蛍光体を含むスラリーとを混合してなる混合塗料を用いて形成してなることを特徴とする塗膜。
【請求項6】
請求項4記載の蛍光ランプ用塗料を用いて形成してなることを特徴とする塗膜。
【請求項7】
請求項1、2または3記載の蛍光ランプ用塗料と蛍光体を含むスラリーとを混合して混合塗料を作製し、次いで、この混合塗料を基材上に塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を乾燥、または乾燥及び熱処理することを特徴とする塗膜の製造方法。
【請求項8】
請求項4記載の蛍光ランプ用塗料を基材上に塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を乾燥、または乾燥及び熱処理することを特徴とする塗膜の製造方法。
【請求項9】
請求項5または6記載の塗膜を透光性封止管の内部に形成してなることを特徴とする蛍光ランプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−157357(P2010−157357A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333339(P2008−333339)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】