説明

蛍光ランプ

【課題】
点灯直後の光束立ち上がり特性を改善するとともに、光束低下を生じにくい蛍光ランプを提供する。
【解決手段】
蛍光ランプは、気密容器1と、気密容器1の内部に封装された一対の電極2、2と、気密容器1内に封入された水銀および希ガスを含む放電媒体と、蛍光体粒子4aならびに選択金属として金、銀、白金およびパラジウムの少なくとも一種を含んで光束立ち上がりを改善し、気密容器1の内面側に配設された蛍光体層4とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された蛍光体層を備えている蛍光ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
一般照明に用いられている電球形蛍光ランプは、点灯後の光束立ち上がり特性を向上することを目的として改良が重ねられてきた。また、電球形蛍光ランプでは、ランプ温度が高くなりすぎるので、アマルガムを用いて適正な水銀蒸気圧になるように構成している。さらに、点灯後の光束立ち上がり特性を改善するために、補助アマルガムを用いることも知られている。この補助アマルガムには、水銀と結合してアマルガムを形成しやすいインジウムなどを用いていて、電極近傍などに配置され、点灯直後の温度上昇により水銀を解離して水銀蒸気を放電空間内に放出するように作用する。
【0003】
しかしながら、補助アマルガムを用いても、点灯後に補助アマルガムから放出された水銀蒸気が放電空間内に拡散するまでになお時間がかかるため、光束立ち上がり特性が十分に改善されるまでには至っていない。
【0004】
光束立ち上がり特性をさらに改善すべく、蛍光体層にインジウムからなるアマルガム形成金属を混合したもの(特許文献1参照。)および酸化マグネシウム(MgO)、酸化スズ(SnO)、酸化鉛(PbO)または酸化インジウム(In)からなる金属酸化物を水銀の結着物質として添加したもの(特許文献2参照。)が提案されている。
【特許文献1】特開平08−031374号公報
【特許文献2】特開平2001−297731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載されている構成の場合、インジウムは融点が156℃と低いため、電球形蛍光ランプの点灯中の温度上昇で溶融して蛍光体を被覆してしまい、その結果光束低下を来たす。また、インジウムは、水銀の吸着力が強いので、捕捉された水銀が放電による発光管の温度上昇では速やかに蒸発されず、かえって光束立ち上がりを悪化させてしまうという問題がある。
【0006】
また、特許文献2に記載されている構成は、アマルガム形成金属よりも水銀との結合が弱い上記金属酸化物を0.3〜3.0重量%添加することで、水銀の放出を早めようとするものであるが、添加する上記金属酸化物は蛍光体の結着剤として添加する酸化アルミニウムとともに蛍光体中に分散するために、蛍光体以外の金属酸化物の添加量が増大しすぎてしまい、光束低下を来たしてしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、点灯直後の光束立ち上がり特性を改善するとともに、光束低下を生じにくい蛍光ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の蛍光ランプは、気密容器と;気密容器の内部に封装された一対の電極と;気密容器内に封入された水銀および希ガスを含む放電媒体と;蛍光体粒子ならびに金、銀、白金およびパラジウムの少なくとも一種を含んで光束立ち上がりを改善し、気密容器の内面側に配設された蛍光体層と;を具備していることを特徴としている。
【0009】
上記の解決手段において、各構成要素は、以下のように構成されることが許容される。
【0010】
〔気密容器について〕 気密容器は、その内部に放電空間が形成されるならばその余の構成は問わない。すなわち、気密容器の材質、形状およびサイズは自由である。例えば、気密容器の材質は、ガラスが最適であるが、所望により透光性セラミックスなどガラス以外の透光性材料を用いて気密容器を形成することができる。
【0011】
また、気密容器の形状は、電球形蛍光ランプを含んで既知の蛍光ランプに採用されている各種の形状であることを許容する。しかし、本発明によれば、従来補助アマルガムを配設している電球形蛍光ランプなどにおいて、蛍光体層をもって従来構造の補助アマルガムに代えることも可能になることから、本発明は電球形蛍光ランプに採用するのが最適である。電球形蛍光ランプの場合、気密容器は、U字状のガラス管を3個または4個ブリッジにより連結してなるいわゆるU字管構造や細長い1本のガラス管を二重スパイラル構造に湾曲させたいわゆるスパイラル管構造など既知の気密容器構造などのいずれであってもよい。また、気密容器の構造は、上記構造に限定されるものではなく、本発明の性質上、任意所望の構造であってもよいことを理解できるであろう。
【0012】
さらに、気密容器のサイズは、放電に投入する電力の大きさに応じて適宜設定すればよい。
【0013】
〔一対の電極について〕 一対の電極は、気密容器の内部に形成される放電路の両端内部に封装されることにより、それらの間に低圧水銀蒸気放電を生起させるための電気エネルギー投入手段である。電極の構造としては、既知の各種のものを適宜採用することができる。一般的にはタングステン(W)製のコイルフィラメントに電子放射性物質を被着させてなるフィラメント電極を採用するのがよい。また、電極を気密容器内に封装するための構造についても、既知の手段、例えばフレアステムマウント構造、ピンチステムマウント構造などを用いて気密容器の放電路の端部内部に電極を封着することができる。なお、ピンチステム構造としては、予め電極の導入線にガラスビーズを封着しておき、気密容器の端部をピンチシールする際に、上記ガラスビーズの部分でピンチシールするように構成してもよいし、ガラスビーズを用いないで、上記導入線の上から直接気密容器の端部をピンチシールするように構成してもよい。
【0014】
〔放電媒体について〕 放電媒体は、水銀および希ガスを含むものとする。水銀は、低圧水銀蒸気放電のための水銀蒸気を供給する。水銀を気密容器内に封入するには、純水銀をそのまま気密容器内に滴下したり、カプセル内に充填して気密容器内に導入し、その後カプセルを破壊して水銀を取り出したり、あるいは水銀をアマルガムにして気密容器内に導入したりするなど既知の各種手段を採用することができる。なお、アマルガムには、温度−蒸気圧特性が純水銀に近似したものや、最適蒸気圧を純水銀より高温域側へシフトさせたものなどがあり、いずれであってもよい。
【0015】
希ガスは、始動ガスおよび緩衝ガスとして作用する。また、希ガスとしては、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)およびキセノン(Xe)の一種または複数種を用いることができる。
【0016】
〔蛍光体層について〕 蛍光体層は、気密容器の内面側に配設されて、低圧水銀蒸気放電により放射された主として波長254nmの紫外線の照射を受けることによって、例えば可視光などの長波長の光を発生して波長変換を行う手段である。また、蛍光体層は、蛍光体粒子を主成分とし、かつ、後述する選択金属の微粒子が添加されることにより光束立ち上がりが改善されていて、気密容器の内面側に配設されている。蛍光体層に用いる蛍光体は、特定のものに限定されない。例えば、3波長発光形蛍光体を用いることができる。
【0017】
蛍光体層を形成するには、一般に主成分の蛍光体粒子に少量のバインダーおよび結着剤を水などの溶媒中に分散させてなる蛍光体懸濁液を調製する。そして、この蛍光体懸濁液を気密容器の内面側に常法により塗布し、加熱して乾燥させる。本発明においても上記の一般的な方法で蛍光体層を形成することを許容する。しかし、どのような方法で蛍光体層を形成してもよい。
【0018】
本発明において、蛍光体層は、主成分の蛍光体粒子に添加する選択金属として、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)およびパラジウム(Pd)の少なくとも一種すなわち上記のグループから選択された一種または複数種の金属またはそれを含む合金の微粒子を分散状態で含んでいて、光束立ち上がりが改善されているという特徴的構成を有している。選択金属の微粒子を蛍光体層内に分散させるには、例えば予め選択金属の微粒子を所定量用意して、これを蛍光体懸濁液中に分散させてなる塗布液を調整し、この塗布液を常法により気密容器の内面側に塗布し、乾燥させて蛍光体層を形成すればよい。また、選択金属の化合物、例えば金属有機化合物の所定量を蛍光体懸濁液中に混合して気密容器に塗布し、加熱することにより、選択金属の化合物から選択金属を析出させてもよい。
【0019】
また、蛍光体層中に添加されて分散する選択金属の量は、光束立ち上がり特性が改善される範囲であり、特許文献2に比較して極めて僅かでよい。例えば、金の場合は質量比で0.05〜0.1%の範囲が好適である。また、銀の場合はさらに少なくて0.01〜0.05%の範囲が好適である。なお、上記の好適な添加比率範囲から外れている場合、例えば下限値未満であると、水銀の吸着が少なすぎるために点灯直後の光束立ち上がり特性改善の効果が十分でなくなるし、また上限値を超えると、水銀の吸着が多くなり点灯直後の光束立ち上がり特性改善の効果が低下していく傾向にある。白金(Pt)およびパラジウム(Pd)の場合も光束立ち上がりが改善される範囲の添加量であり、好ましくは上記の両数値範囲の間で設定することができる。
【0020】
さらに、選択金属の微粒子の好ましいサイズは、平均粒径が0.1〜20μmの範囲、好適には0.3〜2μmの範囲である。
【0021】
〔本発明の作用について〕 本発明においては、蛍光ランプの消灯時に気密容器内の水銀の一部が蛍光体層中に分散した選択金属の微粒子に結着される。蛍光ランプが点灯すると、放電の発生熱による蛍光体層のわずかな温度上昇に伴って選択金属すなわち金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)およびパラジウム(Pd)のグループから選択された一種または複数種の金属または合金の微粒子に結着されていた水銀が選択金属から解離して放電空間内に再び放出される。上記選択金属の微粒子の場合、水銀の結着力が強すぎることがなく、かつ、弱すぎることもなく、誠に適当であるため、点灯直後における水銀の放出が迅速に、しかも適切に行われる。
【0022】
したがって、点灯直後の段階から選択金属の微粒子から解離して放出された水銀蒸気が放電空間内に速やかに、しかも広く拡散するので、放電空間内の全体にわたって水銀蒸気圧が急激に上昇する。その結果、点灯直後からの光束の立ち上がりが早くなる。
【0023】
また、本発明における選択金属は、蛍光体粒子に対する添加比率が極めて小さくてよく、これに伴って実質的な光束低下を生じにくくなる。
【0024】
さらに、蛍光体層は、蛍光ランプの気密容器のほぼ全体にわたって形成されるのが一般的であるから、放電空間の全体にわたる水銀蒸気の拡散が早くなり、気密容器内のほぼ全域にわたって均一な光束立ち上がりを実現することができる。
【0025】
さらにまた、本発明によれば、上述のように蛍光体層が補助アマルガム的な作用を奏するために、従来の補助アマルガムのように、アマルガム形成金属を支持する手段が不要になるから、スパイラル構造の気密容器を備えた電球形蛍光ランプなど補助アマルガムを配置することが困難な蛍光ランプに採用するのに好適である。
【0026】
〔本発明のその他の構成について〕 以上説明した本発明の必須構成要素ではないが、以下に掲げる構成を付加することにより、蛍光ランプの性能が向上したり、コンパクトになったりする。
【0027】
1.(主アマルガムについて) 水銀供給手段として主アマルガムを採用することができる。この場合、主アマルガムを気密容器内の水銀蒸気圧を高温雰囲気中でも最適化するための手段として用いることができる。なお、主アマルガムを封止した排気管の内部などに収納することができる。アマルガムをこのような目的で用いる場合、既知の各種組成を用いることができる。例えば、In−Pb−Snなどである。
【0028】
2.(補助アマルガムについて) この場合の補助アマルガムは、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)およびインジウム(In)などのアマルガムを形成しやすいいわゆるアマルガム形成金属または水銀を吸着しやすい金属(以下、これらの金属を包括して「水銀結着金属」という。)からなる。そして、必要に応じて水銀結着金属を例えばステンレス鋼のメッシュ体などからなる基体金属にめっきすることができる。また、上記基体金属を電極近傍においてその導入線に溶接したり、気密容器の中間部においてピンチシール部に封着した導体に溶接して支持させたりする既知の構造を備えていることが許容される。水銀結着金属は、温度上昇により容易に水銀を解離するので、水銀が放電空間内に放出される。
【0029】
したがって、補助アマルガムは、点灯直後に水銀を供給して、光束立ち上がり特性を改善するための手段の一つとして用いられる。なお、補助アマルガムに用いる水銀結着金属と蛍光体層に添加する選択金属とを同一種の金属とすることにより、水銀蒸気の気密容器内の拡散がなお一層バランスよく、しかも良好に行われるようになる。
【0030】
本発明においては、既述のように蛍光体層の構成の改良により光束立ち上がり特性を向上させるので、本質的には補助アマルガムを必要とするものではないが、補助アマルガムを付加することにより、光束立ち上がり特性のさらなる向上が期待できる。このため、本発明においては、所望により補助アマルガムを付加すると効果的である。
【0031】
3.(電子化点灯回路の一体化について) 電子化点灯回路を用いて本発明の蛍光ランプを高周波点灯する構成において、当該電子化点灯回路をランプ部分と一体化して電球形蛍光ランプを構成することができる。電球形蛍光ランプは、コンパクトなものにするために、気密容器に細径のガラス管を用いる関係で、水銀蒸気の拡散が遅い。そのために、一般に光束立ち上がり特性が悪い。
【0032】
これに対して、本発明によれば、光束立ち上がり特性が向上するとともに、光束低下が問題にならない程度になる。したがって、本発明は、電球形蛍光ランプに実施する場合に最適である。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、点灯直後の光束立ち上がり特性が改善するとともに、光束低下を生じにくい蛍光ランプを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0035】
図1ないし図3は、本発明の蛍光ランプを実施するための第1の形態を示し、図1は中央断面正面図、図2は排気管チップオフ前の発光管の展開図、図3は発光管の要部拡大断面図である。本形態は、本発明をU字管構造の電球形蛍光ランプに実施したものである。各図において、蛍光ランプは、発光管LT、外管OT、基体カバーBC、電子化点灯回路ELCおよび口金Bを具備している。
【0036】
発光管LTは、気密容器1、一対の電極2、2、放電媒体、保護膜3および蛍光体層4を備えている。
【0037】
気密容器1は、図2における排気管チップオフ前の発光管の展開図に示すように、U字管部1a、ブリッジ部1b、排気管部1cを備えていて、3個のU字管部1aおよび2個のブリッジ部1bが交互に直列に接続して1本の放電路1eを形成している。U字管部1aは、細径のガラス管をU字状に湾曲させたもので、その3個が用いられている。ブリッジ部1bは、吹き破り法により形成され、隣接するU字管部1aを直列に接続していて、その2個がそれぞれ隣接する一対のU字管部1aの間に介在して上述のように気密容器1の内部に1本の放電路1eを形成している。なお、放電路1eの両端に位置するU字管部1aの端部は、フレアステム1dにより封止されている。排気管部1cは、気密容器1の内部を排気し、放電媒体を封入するために設けられているが、排気および封入後に封じ切られて図示しない排気チップオフ部を形成する。そうして、3個のU字管部1aは、実際には3角形の3辺を形成するように立体的に配置されている。
【0038】
一対の電極2、2は、それぞれフィラメント電極からなり、気密容器1に形成される放電路の両端内部にフレアステム1dを介して封装されている。
【0039】
放電媒体は、水銀および希ガスからなり、気密容器1の内部に封入されている。水銀は、既知の主アマルガムにより供給されるように構成されている。また、補助アマルガム5が配設されている。補助アマルガム5は、蛍光体層に添加する選択金属4bと同一種の金属の箔からなり、一対の電極2、2の導入線と、中間に位置するU字管部1aの一端部を封止するフレアステム1dに基端が封着された導入線とに、それぞれ溶接することによって、気密容器1内の両端部および中間部の3箇所に封装されている。
【0040】
保護膜3は、アルミナ薄膜からなり、気密容器1の内面に形成されている。
【0041】
蛍光体層4は、蛍光体粒子4aに僅かな量の選択金属の微粒子4bが分散した構成であり、保護膜3を介して気密容器1の内面に被着している。なお、蛍光体層は、その蛍光体粒子4aおよび選択金属の微粒子4bが既知の結着剤によりそれら粒子相互間および保護膜3との間が結着されている。
【0042】
外管OTは、光拡散性または透明性のガラスなどからなり、発光管LTを包囲している。なお、外管OTに光拡散性を付与するには、例えばシリカ粉末などの光拡散物質をガラス基体の内面に静電塗装することができる。また、外管OTは、その開口部が後述する基体カバーBCに支持されている。
【0043】
基体カバーBCは、カップ状部分6および仕切り壁部7を備えていて、発光管LTを所定の位置に支持するとともに、内部に後述する電子化点灯回路ELCを収納する。カップ状部分6は、その拡径された開口端で外管OTのネック部を支持する。仕切り壁部7は、カップ状部分6の拡径された開口端内に支持されている。そして、発光管LTは仕切り壁7に装着される。
【0044】
電子化点灯回路ELCは、発光管LTを高周波で付勢して点灯する高周波インバータを主体とする回路手段であり、その入力端が後述する口金Bに接続し、高周波出力端が発光管LTの一対の電極2、2に接続している。そして、基体カバーCBのカップ状部分6の内部に収納されている。
【0045】
口金Bは、E26形口金からなり、図1において下端に位置する基体カバーBCのカップ状部分6の縮径部分に装着されている。
【0046】
次に、第1の形態の点灯100時間における光束立ち上がり特性を比較例のそれとともに図4を参照して説明する。
【0047】
図4は、本発明の第1の形態における電球形蛍光ランプの点灯100時間における光束立ち上がり特性を比較例のそれとともに示すグラフである。図において、横軸は点灯後の経過時間(秒)を、縦軸は全光束(%lm)を、それぞれ示す。なお、%lmは、比較例の安定点灯時における全光束を100%としたときの光束比を示す。図中、曲線Iは実施例1、曲線IIは実施例2、曲線IIIは実施例3、曲線IVは実施例4、曲線Vは比較例、をそれぞれ示す。各例における添加金属とその量は、以下のとおりである。各実施例は、添加金属またはその添加比率が異なる以外は同一仕様で、定格電力13W、気密容器1のU字管部1aの数が3個の電球形蛍光ランプである。また、比較例は、添加金属を含んでいない以外は、実施例と同一仕様である。
【0048】
曲線I :金(Au)0.1質量%
曲線II :金(Au)1.0質量%
曲線III :銀(Ag)0.05質量%
曲線IV :銀(Ag)0.1質量%
曲線V :添加金属なし
図4から理解できるように、曲線IないしIVに示す各実施例によれば、点灯直後から約0.2秒までにおける光束立ち上がりが曲線Vに示す比較例のそれより明らかに優れ、かつ、約1秒までの光束立ち上がりが比較例のそれとほぼ同等ないし優れている。
【0049】
曲線Iの実施例1の場合、点灯直後から約2秒までにおける光束立ち上がりが各実施例中で顕著に優れ、約1秒までは比較例より約10%程度優れている。また、2秒以降10秒までの光束立ち上がりも比較例に対して全体として同等以上に優れている。
【0050】
曲線IIの実施例2の場合、点灯直後の約0.2秒までにおける光束立ち上がりが優れているものの、それ以降の光束立ち上がりが比較例より劣っている。
【0051】
曲線IIIの実施例3の場合、点灯直後から約7秒までにおける光束立ち上がりが比較例より優れており、また約7秒以降は比較例と同等である。
【0052】
曲線IVの実施例4の場合、点灯直後の約0.2秒までにおける光束立ち上がりは比較例より優れているものの、その後の約2.0秒までの間の光束立ち上がりが比較例より若干劣っている。しかし、約2秒以降の光束立ち上がりは実施例中で最も優れている。
【0053】
次に、第1の形態において、選択金属の添加比率を変化させた場合の光束立ち上がり時における全光束に対する影響ついて、図5および図6を参照して説明する。
【0054】
図5および図6は、本発明を実施するための第1の形態において選択金属の添加比率と光束立ち上がり時における全光束の関係を示し、図5は選択金属が金の場合、図6は選択金属が銀の場合である。なお、各図において、黒丸(●)を結んだ曲線は点灯直後(0.2秒まで)の全光束を、三角(△)を結んだ曲線は点灯2秒後の全光束を、黒四角(■)を結んだ曲線は点灯5秒後の全光束を、それぞれ示す。
【0055】
まず、選択金属として金(Au)を添加する場合について図5を参照して説明する。図5において、横軸は金微粒子量を質量%で示し、縦軸は全光束を%lmで示す。なお、%lmは、金を添加しない以外は同一仕様の電球形蛍光ランプにおける安定時の全光束を示す。蛍光体層に金を添加する場合、蛍光体粒子に対する添加比率が0.1質量%までは、光束立ち上がりが向上する傾向を示し、0.1質量%超においては緩やかに全光束が低下していく傾向を示している。したがって、本発明において、金を添加する場合には、0.1質量%までの範囲が好適である。
【0056】
次に、選択金属として銀(Ag)を添加する場合について図6を参照して説明する。図6において、横軸は銀微粒子量を質量%で示し、縦軸は全光束を%lmで示す。なお、%lmは、図5と同様の意味である。蛍光体層に銀を添加する場合、蛍光体粒子に対する添加比率が0.05質量%までは、光束立ち上がりが一定の傾向を示し、0.05質量%超においては緩やかに全光束が低下していく傾向を示している。したがって、本発明において、銀を添加する場合には、0.05質量%までの範囲が好適である。
【0057】
図7および図8は、本発明の蛍光ランプを実施するための第2の形態を示し、図7は中央断面正面図、図8は排気管チップオフ前の発光管の正面図である。本形態は、本発明をスパイラル管構造の電球形蛍光ランプに実施したものである。各図において、図1ないし図3と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。
【0058】
気密容器1は、二重のスパイラル管構造を有している。すなわち、1本の細径のガラス管が中央部から2手に分かれて同一方向へスパイラルに湾曲して1本のスパイラル構造の放電路が形成されている。
【0059】
気密容器1の両端内部には図示を省略している一対の電極が封装されている。
【0060】
一対の補助アマルガムが電極を支持する導入線に溶接されている。しかし、第1の形態におけるような放電路の中間部に配設される補助アマルガムは用いられていない。
【0061】
次に、第2の形態における光束立ち上がり特性について図9を参照して説明する。
【0062】
図9は、本発明の第2の形態における電球形蛍光ランプの点灯100時間の光束立ち上がり特性を比較例のそれとともに示すグラフである。なお、本図は、図4と同様な書式で作成されている。図中の実線で示す曲線は第2の形態の実施例、点線で示す曲線は比較例、の光束立ち上がり特性をそれぞれ示している。実施例は、定格電力が12W、添加金属が金で、その添加比率が0.1質量%である。また、比較例は選択金属が添加されていない以外は実施例と同一仕様である。
【0063】
図9から理解できるように、実施例はその光束立ち上がり特性が比較例のそれより5%以上改善されている。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の蛍光ランプを実施するための第1の形態を示す中央断面正面図
【図2】同じく排気管チップオフ前の発光管の展開図
【図3】同じく発光管の要部拡大断面図
【図4】本発明の第1の形態における電球形蛍光ランプの点灯100時間における光束立ち上がり特性を比較例のそれとともに示すグラフ
【図5】本発明を実施するための第1の形態において選択金属が金の場合の添加比率と光束立ち上がり時における全光束の関係を示す図
【図6】本発明を実施するための第1の形態において選択金属が銀の場合の添加比率と光束立ち上がり時における全光束の関係を示す図
【図7】本発明の蛍光ランプを実施するための第2の形態を示す中央断面正面図
【図8】同じく排気管チップオフ前の発光管の正面図
【図9】本発明の第2の形態における電球形蛍光ランプの点灯100時間の光束立ち上がり特性を比較例のそれとともに示すグラフ
【符号の説明】
【0065】
1…気密容器、3…保護膜、4…蛍光体層、4a…蛍光体粒子、4b…選択金属の微粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密容器と;
気密容器の内部に封装された一対の電極と;
気密容器内に封入された水銀および希ガスを含む放電媒体と;
蛍光体粒子ならびに金、銀、白金およびパラジウムの少なくとも一種を含んで光束立ち上がりを改善し、気密容器の内面側に配設された蛍光体層と;
を具備していることを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】
前記金属または合金の微粒子は、蛍光体に対する混合比率が0.05〜0.1質量%の金または金の合金を主体としていることを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプ。
【請求項3】
前記金属または合金の微粒子は、蛍光体に対する混合比率が0.01〜0.05質量%の銀または銀の合金を主体としていることを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプ。
【請求項4】
気密容器内に水銀蒸気を供給するように配設された主アマルガムを具備していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の蛍光ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−216472(P2006−216472A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−29887(P2005−29887)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】