説明

蛍光ランプ

【課題】従来の蛍光ランプと最大外径を変えることなく、放電路を長くすることで、ランプの全光束及び発光効率を改善し、最冷点温度を低下させた蛍光ランプを提供する。
【解決手段】環径が異なる3本以上の環形発光管が略同一平面内に略同心円状に設けられ、前記環形発光管の端部をブリッジ接合により順次連結していき、最外輪の環形発光管と最内輪の環形発光管の端部にそれぞれ設けた電極で一つの放電路が形成され、前記環形発光管に設けた電極側の環形発光管端部を包囲する形で一つの口金を備え、前記放電路は異なる環形の発光管をブリッジ接合により連結することで長くし、ランプ電流の最適範囲で点灯させることにより、全光束及び発光効率を向上し、最冷点温度を低下させた蛍光ランプとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は3本以上の環形発光管を略同一平面内に略同心円状に設けた蛍光ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
環形蛍光ランプの1種として、図5に示すような放電路が二重環形状になる発光管51a,発光管51bを備えた蛍光ランプ50が公知である(特許文献1)。図5の蛍光ランプは、いわゆる二重環形蛍光ランプであって、発光管51aと発光管51bがブリッジ接合部52で連結され、発光管51aの管端部にある電極(図示せず)から発光管51bの管端部にある電極(図示せず)で一つの放電路が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2776840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の蛍光ランプではより全光束を大きくし、発光効率のよいランプを作成しようとした際に満足できなくなる恐れがある。
【0005】
本発明は、ランプの全光束が大きく、発光効率が高い蛍光ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の本発明に係る蛍光ランプは、環径が異なる3本以上の環形発光管が略同一平面内に略同心円状に設けられ、前記環形発光管の端部をブリッジ接合により順次連結していき、最外輪の環形発光管と最内輪の環形発光管の端部にそれぞれ設けた電極で一つの放電路が形成され、前記環形発光管の管端部を包囲する形で一つの口金を備えた構成を有することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の本発明に係る蛍光ランプは、請求項1に記載の蛍光ランプにおいて、環形発光管のブリッジ接合部の近傍に最冷点が設けられている構成を有することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の本発明に係る蛍光ランプは、請求項1に記載の蛍光ランプにおいて、前記環形発光管の管壁同士の隙間Sが複数設けられ、隙間Sは略均一である構成を有することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の本発明に係る蛍光ランプは、請求項1に記載の蛍光ランプにおいて、前記環形発光管の管壁同士の隙間Sが略均一であり、それぞれ少なくとも1箇所以上において、接着剤等により管壁同士が固着されている構成を有する。
【0010】
請求項5に記載の本発明に係る蛍光ランプは、請求項1に記載の蛍光ランプにおいて、前記最外輪の環形発光管の最大外径が408mmを超えない構成を有することを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の本発明に係る蛍光ランプは、請求項2に記載の蛍光ランプにおいて、前記放電路が2500mmより長く、ランプ電流は150〜320mAの範囲で点灯することで前記最冷点の温度を低くする構成を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の蛍光ランプは、環径が異なる3本以上の環形発光管が略同一平面内に略同心円状に設けられ、前記環形発光管の端部をブリッジ接合により順次連結していき、最外輪の環形発光管と最内輪の環形発光管の端部にそれぞれ設けた電極で一つの放電路が形成されているため、従来の二重環形蛍光ランプに比べ、ランプの最大外径を大きくすることなく、環形発光管を内側に設けていくことで、発光管の放電路を長くし、放電路が長くなったため、発光面積が増えることにより、全光束を大きく、発光効率を向上させることができる。
【0013】
本発明の蛍光ランプにおいて、環形発光管のブリッジ接合部近傍の管端部に最冷点が設けられている場合は、最冷点が放電路から離れているため、温度を下げることが可能であり、2個以上のブリッジ接合部とそれぞれ近傍の管端部の位置関係で、最冷点を任意の管端部に設けることが可能となる。したがって、ランプを密閉形器具内に装着した場合の周囲温度が高くなる雰囲気においても、任意に設けた最冷点の温度を器具に装着した状態で下げることができる。そのため、従来では最冷点の温度が高い状態で使用し全光束が最大値を超える発光効率の悪くなる状態となる場合があったが、本発明の蛍光ランプでは全光束が最大値に近づき、器具内での発光効率が高い状態で点灯させることが可能となる。
【0014】
本発明の蛍光ランプにおいて、3本以上の環形発光管を同一平面内に設け、管壁同士の隙間を環形発光管と同一平面内に2箇所以上設けている場合は、2箇所以上の隙間を略均一にすれば、蛍光ランプとして発光する部分である発光管と発光しない部分である隙間による発光の明暗差が目立たなくなり、全体の発光が均一になるため、密閉形器具に装着した場合に器具のカバー部材で光を拡散する必要性が少なくなり、カバー部材での光の反射,吸収を抑え、比較的高い照度を得る照明器具を設計することができる。
【0015】
本発明の蛍光ランプにおいて、管壁同士のそれぞれの隙間の1箇所以上において、接着剤等により管壁同士が固着されている場合は、接着剤等とブリッジ接合部の合わせて2箇所以上で管壁同士が固着され、蛍光ランプの口金を器具のソケットに差し込む際に力加減を間違えても、発光管が折れてしまう恐れを低減することができる。
【0016】
本発明の蛍光ランプにおいて、最外輪の環形発光管の外径が蛍光ランプの最大外径となり、3本以上の複数の環形蛍光管を最大外径408mm以下の内側に並べていくことで、従来の器具と同等の大きさで装着できる蛍光ランプを作成することが可能となる。
【0017】
本発明の蛍光ランプにおいて、前記放電路を2500mmより長くし、かつランプ電流は150〜320mAの範囲で蛍光ランプを点灯させることで、発光効率を低下させることなく、環形発光管のブリッジ接合部近傍の管端部に設けられた最冷点の温度を下げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一の実施の形態である蛍光ランプを示す正面図。
【図2】本発明の第二の実施の形態である蛍光ランプを示す正面図。
【図3】本発明の第一の実施の形態である蛍光ランプの発光管を示す正面断面図。
【図4】本発明の第二の実施の形態である蛍光ランプの発光管を示す正面断面図。
【図5】従来の例を示す蛍光ランプの正面図。
【図6】本発明の第一の実施の形態と第二の実施の形態である蛍光ランプのランプ電流と発光効率の関係を示す図。
【図7】本発明の第一の実施の形態と第二の実施の形態である蛍光ランプの最冷点と全光束の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る蛍光ランプについて、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本発明の第一の実施の形態に係る蛍光ランプ10を示す図である。本発明の第一の実施の形態に係る蛍光ランプ10は、主にリビングやダイニングルーム等に好適な家庭用照明器具に用いられる蛍光ランプであって、環形発光管11a,11b,11cは管壁同士の隙間S1,S2が略均一になるよう略同一平面内に略同心円状に並べられ、前記環形発光管11a,11bを連結するブリッジ接合部12a、前記環形発光管11b,11cを連結するブリッジ接合部12b、前記環形発光管11a,11b,11cの管端部を包囲する形の口金13、前記環形発光管11a,11b,11cの管壁同士を固着する接着剤14を備えている。蛍光ランプ10の環形発光管11a,11b,11cは3本の環形発光管を連結し、一つの放電路を形成しているため、2本の環形発光管で一つの放電路を形成している蛍光ランプに比べ、同じ最大外径で蛍光ランプを作成した場合、発光管10aの内側に発光管10bや10cが形成されていることにより、2本の環形発光管よりも放電路を長くすることができる。したがって、発光管の放電路が長くなり発光面積が増えたことで、全光束を大きく、発光効率を向上させたランプを作成することができる。同じ消費電力であれば、発光面積を増やすことで、結果、全光束が大きくなって、発光効率があがる。
【0021】
接着剤14は、例えば長さ30mm,幅6mmで管壁同士を固着している。接着剤14には、例えばシリコーン樹脂,エポキシ樹脂,アクリル樹脂あるいはセメント等が用いられる。
【0022】
図2は、本発明の第二の実施の形態に係る蛍光ランプを示す図である。本発明の第二の実施の形態に係る蛍光ランプ20は、主にリビングやダイニングルーム等に好適な家庭用照明器具に用いられる蛍光ランプであって、環形発光管21a,21b,21c,21dは管壁同士の隙間S1,S2,S3を略均一に略同一平面内に略同心円状に並べられ、前記環形発光管21a,21bを連結するブリッジ接合部22a、前記環形発光管21b,21cを連結するブリッジ接合部22b、前記環形発光管21c,21dを連結するブリッジ接合部22c、前記環形発光管21a,21b,21c,21dの管端部を包囲する形の口金23、前記環形発光管21a,21b,21c,21dの管壁同士を固着する接着剤24を備えている。
【0023】
接着剤24は、例えば長さ30mm,幅6mmで管壁同士を固着している。接着剤24には、例えばシリコーン樹脂,エポキシ樹脂,アクリル樹脂あるいはセメント等が用いられる。
【0024】
図3は、本発明の第一の実施の形態である蛍光ランプの発光管を示す正面断面図である。発光管31は、口金13,接着剤14を取り付ける前の状態を示す断面図である。発光管31は、環形発光管11aの一方の管端部に配置された電極35aと環形蛍光管11cの一方の管端部に配置された電極35bで形成される一つの放電路が3本の環形発光管11a,11b,11cの環中央を中心として、略同一平面内に略同心円状に並べられた形状を有している。また、発光管31の環形発光管11a,11b,11cの管壁同士の隙間S1,S2は略均一である。
【0025】
発光管31は、例えば72Wの蛍光ランプの場合、環形発光管11a,11b,11cの管外径が20.0mm、管内径が17.6mmであり、環形発光管11aの環外径は354mm、環内径は314mm、環形発光管11bの環外径は308mm、環内径は268mm、環形発光管11cの環外径は262mm、環内径は222mm、ブリッジ接合部12a,12bの外径が9.0mm、内径が6.0mmであり、環形発光管11a,11b,11cのそれぞれの管壁同士の隙間S1,S2が3.0mm、電極35aと電極35bで形成される一つの放電路の距離が2570mmである。蛍光管31は、例えば、鉛フリーガラス(軟化点665℃の軟質ガラス)で形成されている。なお、最外輪の環形発光管11aの環外径354mmが発光管31の最大外径であり、したがって蛍光ランプ10の大きさは354mmとなる。
【0026】
発光管31の内面には、酸化セリウム(CeO2)からなる保護膜層(図示せず),赤色蛍光体(Y23:Eu),緑色蛍光体(LaPO4:Ce,Tb)及び青色蛍光体((Sr,Ca,Ba,Mg)5(PO4)3Cl:Eu)からなる希土類蛍光体によって蛍光体膜層(図示せず)が形成されている。
【0027】
発光管31の内部には、水銀(図示せず)が約15mg封入されているとともに、緩衝ガスとしてのアルゴンが約300Paとなるように封入されている。封入する水銀は、水銀単体の他に亜鉛水銀,錫水銀等の水銀合金であっても良く、また緩衝ガスはアルゴン単体の他にネオン,クリプトン,キセノンの混合ガスでも良い。
【0028】
また前記隙間S1,S2は平均的に3.0〜15.0mmの範囲とする必要がある。前記隙間S1,S2を3.0mmよりも狭く設計すると、発光管11a,11b,11cを同一平面内に並べるためには、3本とも真円環状に精度よく加工しなければならず、製造費が著しく高くなる。加えて、隙間S1,S2が狭い場合は、発光管11a,11b,11cから放射される赤外線で、互いに管壁温度が上昇し、特に密閉形器具に装着した場合、最冷点温度の上昇による発光効率の低下が顕著になる。
【0029】
前記隙間S1,S2が15.0mmを超えると、発光管11a,11b,11cがそれぞれ独立して存在するように見え、均一な発光が得られず、密閉形器具に装着した場合に器具のカバー部材で光を拡散する必要性が多くなり、カバー部材での光の反射,吸収が増え、前記発光管31から得られる照度が低くなる。
【0030】
ブリッジ接合部12aの管軸中心位置は、発光管11aの電極35a側ではない管端部から30mmの位置にあり、ブリッジ接合部12bの管軸中心位置は、発光管11bのブリッジ接合部12aの近傍ではない他方の管端部から25mmの位置にある。発光管11aの電極35a側ではない管端部が発光管31の最冷点となる。
【0031】
電極35a,35bはタングステン製フィラメントと一対の給電のためのリード線とを備え、発光管11a及び発光管11cの管端部で気密封着されている。
【0032】
図6は、本発明の第一の実施の形態と第二の実施の形態である蛍光ランプのランプ電流と発光効率の関係を示す図であり、発光管31のランプ電流(放電電流)と発光効率の関係を示す。発光管31の発光効率は、従来の二重環形の定格ランプ電流に対する発光効率の相対値である。本実施例においては発光効率(相対値)が103以上であれば発光効率がよいと判断しているため、発光管31の発光効率を高くするためには、ランプ電流を150〜320mAの範囲にすることが好適であると判断する。ランプ電流が150mAより小さい場合は、発光管31内の放電で流れる電子が少ないため、電子と水銀原子との衝突が減少し、水銀原子から発生する紫外線が減少する。紫外線の発生が減ることにより、蛍光体膜層で紫外線を可視光に変換する量が減り、発光効率が低下する恐れがある。ランプ電流が320mAを超えると、発光管31内の放電で流れる電子は多くなるため、電子と水銀原子との衝突が増加し、水銀原子から発生する紫外線が増加する恐れがある。また、ランプ電流が大きくなると発光管31の管壁温度が上昇し、蛍光体膜層の温度が上昇する。蛍光体膜層の発光効率(紫外線を可視光に変換する変換効率)には温度依存性があるため、蛍光体膜層の温度上昇で発光効率が低下する。したがって、ランプ電流を150〜320mAの範囲にすることで発光効率の高い発光管31を作成することができると判断する。なお、前記ランプ電流の範囲で作成した発光管31は、放電路の距離が2570mmであるため、ランプ電力の最適範囲は、53〜90Wとなる。ただし、従来よりも効率が上がるということを考えると、発光効率が100よりも大きければ良い場合もある。その場合は、ランプ電流の範囲は図6から明らかなように450mA以下とすれば良い。また、発光効率の最大範囲だけで考えると220〜230mAで蛍光ランプを作成することが良い。
【0033】
図7は、本発明の第一の実施の形態と第二の実施の形態である蛍光ランプの最冷点と全光束の関係を示す図であり、発光管31の最冷点温度と全光束の関係を示す。ランプ電力が前記範囲である場合は、発光管31の大きさ(放電路の長さ)に対し、発光管への管入力が低くなるため、発光管31の管壁温度が低くなり、最冷点の温度も低くなる。器具に装着した場合に全光束を大きくするためには、最冷点を45〜55℃の範囲にすることが好適である。密閉形器具に装着した場合、器具内の温度は常温に比べ、著しく上昇し、最冷点は前記範囲内になる可能性が高く、発光管31は実使用状態で全光束が大きくなる。
【0034】
本実施の形態に係る蛍光ランプ10を用いて、諸特性について評価した。実験は、蛍光ランプ10を高周波点灯形蛍光ランプ専用の点灯装置で点灯させ、前記蛍光ランプ10の諸特性を測定した。光源色を昼光色とし、72Wの蛍光ランプ10では、ランプ電流220mA,ランプ電圧331V,全光束6420lm,ランプ効率89.2lm/Wという優れたランプ特性を示した。また、周囲温度25℃の雰囲気での最冷点は31℃となり、図5に示す従来の蛍光ランプ50よりも約9℃低くなった。
【0035】
したがって、前記蛍光ランプ10を密閉形器具に装着し、器具内での最冷点温度が約50℃であった場合、器具内での全光束は7480lmとなる。
【0036】
前記発光管31の変態例として、発光管31が例えば90Wの蛍光ランプの場合、環形発光管11a,11b,11cの管外径が20.0mm、管内径が17.6mmであり、環形発光管11aの環外径は400mm、環内径は360mm、環形発光管11bの環外径は354mm、環内径は314mm、環形発光管11cの環外径は308mm、環内径は268mm、ブリッジ接合部12a,12bの外径が9.0mm、内径が6.0mmであり、環形発光管11a,11b,11cのそれぞれの管壁同士の隙間S1,S2が3.0mm、電極35aと電極35bで形成される一つの放電路の距離が3000mmである。最外輪の環形発光管11aの環外径400mmが発光管31の最大外径であり、したがって蛍光ランプ10の大きさは400mmとなる。
【0037】
また前記隙間S1,S2は平均的に3.0〜15.0mmの範囲とする必要がある。前記隙間S1,S2を3.0mmよりも狭く設計すると、発光管11a,11b,11cを同一平面内に並べるためには、3本とも真円環状に精度よく加工しなければならず、製造費が著しく高くなる。また、隙間S1,S2が狭い場合は、発光管11a,11b,11cから放射される赤外線で、互いに管壁温度が上昇し、特に密閉形器具に装着した場合、最冷点温度の上昇による発光効率の低下が顕著になる。
【0038】
前記隙間S1,S2が15.0mmを超えると、発光管11a,11b,11cがそれぞれ独立して存在するように見え、均一な発光が得られず、密閉形器具に装着した場合に器具のカバー部材で光を拡散する必要性が多くなり、カバー部材での光の反射,吸収が増え、前記発光管31から得られる照度が低くなる。
【0039】
ブリッジ接合部12aの管軸中心位置は、発光管11aの電極35a側ではない管端部から30mmの位置にあり、ブリッジ接合部12bの管軸中心位置は、発光管11bのブリッジ接合部12aの近傍ではない他方の管端部から25mmの位置にある。発光管11aの電極35a側ではない管端部が発光管31の最冷点となる。
【0040】
図6の本発明の第一の実施の形態と第二の実施の形態である蛍光ランプの最冷点と全光束の関係を示す図は、前記発光管31のランプ電流(放電電流)と発光効率の関係を示しており、前記発光管31の発光効率を高くするためには、ランプ電流を150〜320mAの範囲にすることが好適である。なお、前記ランプ電流の範囲で作成した前記発光管31は、放電路の距離が3000mmであるため、ランプ電力の最適範囲は、63〜106Wとなる。
【0041】
図7は、本発明の第一の実施の形態と第二の実施の形態である蛍光ランプの最冷点と全光束の関係を示しており、前記発光管31の最冷点温度と全光束の関係を示す。ランプ電力が前記範囲である場合は、発光管31の大きさに対し、発光管への管入力が低くなるため、発光管31の管壁温度が低くなり、最冷点の温度も低くなる。器具に装着した場合に全光束を大きくするためには、最冷点を45〜55℃の範囲にすることが好適である。密閉形器具に装着した場合、器具内の温度は常温に比べ、著しく上昇し、最冷点は前記範囲内になる可能性が高く、発光管31は実使用状態で全光束が大きくなる。
【0042】
本実施の形態に係る蛍光ランプ10を用いて、諸特性について評価した。実験は、蛍光ランプ10を高周波点灯形蛍光ランプ専用の点灯装置で点灯させ、前記蛍光ランプ10の諸特性を測定した。光源色を昼光色とし、90Wの蛍光ランプ10では、ランプ電流240mA,ランプ電圧378V,全光束8120lm,ランプ効率90.2lm/Wという優れたランプ特性を示した。また、周囲温度25℃の雰囲気での最冷点は31℃となり、図5に示す従来の蛍光ランプ50よりも約9℃低くなった。
【0043】
したがって、前記蛍光ランプ10を密閉形器具に装着し、器具内での最冷点温度が約50℃であった場合、器具内での全光束は9460lmとなる。
【0044】
図4は、本発明の第二の実施の形態である蛍光ランプの発光管を示す正面断面図である。発光管41は、口金23,接着剤24を取り付ける前の状態を示す断面図である。発光管41は、環形発光管21aの一方の管端部に配置された電極45aと環形蛍光管21dの一方の管端部に配置された電極45bで形成される一つの放電路が4本の環形発光管21a,21b,21c,21dの環中央を中心として、略同一平面内に略同心円状に並べられた形状を有している。また、発光管41の環形発光管21a,21b,21c,21dは管壁同士の隙間S1,S2,S3は略均一である。
【0045】
発光管41は、例えば130Wの蛍光ランプの場合、環形発光管21a,21b,21c,21dの管外径が20.0mm、管内径が17.6mmであり、環形発光管21aの環外径は400mm、環内径は360mm、環形発光管21bの環外径は354mm、環内径は314mm、環形発光管21cの環外径は308mm、環内径は268mm、環形発光管21dの環外径は262mm、環内径は222mm、ブリッジ接合部22a,22b,22cの外径が9.0mm、内径が6.0mmであり、環形発光管21a,21b,21c,21dのそれぞれの管壁同士の隙間S1,S2,S3が3.0mm、電極45aと電極45bで形成される一つの放電路の距離が3720mmである。蛍光管41は、例えば、鉛フリーガラス(軟化点665℃の軟質ガラス)で形成されている。なお、最外輪の環形発光管21aの環外径400mmが発光管41の最大外径であり、したがって蛍光ランプ20の大きさは400mmとなる。
【0046】
発光管41の内面には、酸化セリウム(CeO2)からなる保護膜層(図示せず),赤色蛍光体(Y23:Eu),緑色蛍光体(LaPO4:Ce,Tb)及び青色蛍光体((Sr,Ca,Ba,Mg)5(PO4)3Cl:Eu)からなる希土類蛍光体によって蛍光体膜層(図示せず)が形成されている。
【0047】
発光管41の内部には、水銀(図示せず)が約15mg封入されているとともに、緩衝ガスとしてのアルゴンが約300Paとなるように封入されている。封入する水銀は、水銀単体の他に亜鉛水銀,錫水銀等の水銀合金であっても良く、また緩衝ガスはアルゴン単体の他にネオン,クリプトン,キセノンの混合ガスでも良い。
【0048】
また前記隙間S1,S2,S3は平均的に3.0〜15.0mmの範囲とする必要がある。前記隙間S1,S2,S3を3.0mmよりも狭く設計すると、発光管21a,21b,21c,21dを同一平面内に並べるためには、4本とも真円環状に精度よく加工しなければならず、製造費が著しく高くなる。また、隙間S1,S2,S3が狭い場合は、発光管21a,21b,21c,21dから放射される赤外線で、互いに管壁温度が上昇し、特に密閉形器具に装着した場合、最冷点温度の上昇による発光効率の低下が顕著になる。
【0049】
前記隙間S1,S2,S3が15.0mmを超えると、発光管21a,21b,21c,21dがそれぞれ独立して存在するように見え、均一な発光が得られず、密閉形器具に装着した場合に器具のカバー部材で光を拡散する必要性が多くなり、カバー部材での光の反射,吸収が増え、前記発光管41から得られる照度が低くなる。
【0050】
ブリッジ接合部22aの管軸中心位置は、発光管21aの電極45a側ではない管端部から30mmの位置にあり、ブリッジ接合部22bの管軸中心位置は、発光管21bのブリッジ接合部22aの近傍ではない他方の管端部から25mmの位置にあり、ブリッジ接合部22cの管軸中心位置は、発光管21cのブリッジ接合部22bの近傍ではない他方の管端部から25mmの位置にある。発光管21aの電極45a側ではない管端部が発光管41の最冷点となる。
【0051】
電極45a,45bはタングステン製フィラメントと一対の給電のためのリード線とを備え、発光管21a及び発光管21dの管端部で気密封着されている。
【0052】
図6の本発明の第一の実施の形態と第二の実施の形態である蛍光ランプの最冷点と全光束の関係を示す図は、発光管41のランプ電流(放電電流)と発光効率の関係を示しており、発光管41の発光効率を高くするためには、ランプ電流を150〜320mAの範囲にすることが好適である。ランプ電流が150mAより小さい場合は、発光管41内の放電で流れる電子が少ないため、電子と水銀原子との衝突が減少し、水銀原子から発生する紫外線が減少する。紫外線の発生が減ることにより、蛍光体膜層で紫外線を可視光に変換する量が減り、発光効率が低下する。ランプ電流が320mAを超えると、発光管41内の放電で流れる電子は多くなるため、電子と水銀原子との衝突が増加し、水銀原子から発生する紫外線が増加する。しかし、ランプ電流が大きくなると発光管41の管壁温度が上昇し、蛍光体膜層の温度が上昇する。蛍光体膜層の発光効率(紫外線を可視光に変換する変換効率)には温度依存性があるため、蛍光体膜層の温度上昇で発光効率が低下する。したがって、ランプ電流を150〜320mAの範囲にすることで発光効率の高い発光管41を作成することができる。なお、前記ランプ電流の範囲で作成した発光管41は、放電路の距離が3720mmであるため、ランプ電力の最適範囲は、84〜138Wとなる。
【0053】
図7は、本発明の第一の実施の形態と第二の実施の形態である蛍光ランプの最冷点と全光束の関係を示しており、前記発光管41の最冷点温度と全光束の関係を示す。ランプ電力が前記範囲である場合は、発光管41の大きさに対し、発光管への管入力が低くなるため、発光管41の管壁温度が低くなり、最冷点の温度も低くなる。器具に装着した場合に全光束を大きくするためには、最冷点を45〜55℃の範囲にすることが好適である。密閉形器具に装着した場合、器具内の温度は常温に比べ、著しく上昇し、最冷点は前記範囲内になる可能性が高く、発光管41は実使用状態で全光束が大きくなる。
【0054】
本実施の形態に係る蛍光ランプ20を用いて、諸特性について評価した。実験は、蛍光ランプ20を高周波点灯形蛍光ランプ専用の点灯装置で点灯させ、前記蛍光ランプ20の諸特性を測定した。光源色を昼光色とし、130Wの蛍光ランプ20では、ランプ電流290mA,ランプ電圧455V,全光束11760lm,ランプ効率90.5lm/Wという優れたランプ特性を示した。また、周囲温度25℃の雰囲気での最冷点は32℃となり、図5に示す従来の蛍光ランプ50よりも約8℃低くなった。
【0055】
したがって、前記蛍光ランプ20を密閉形器具に装着し、器具内での最冷点温度が約50℃であった場合、器具内での全光束は13720lmとなる。
【0056】
以上説明したように、本発明は環径が異なる3本以上の環形発光管が略同一平面内に略同心円状に設けられ、前記環形発光管の端部をブリッジ接合により順次連結していき、最外輪の環形発光管と最内輪の環形発光管の端部にそれぞれ設けた電極で一つの放電路が形成することで放電路を長くし、ランプの全光束及び発光効率を向上し、最冷点温度を低下させたランプを得ることができる。
【0057】
以上に説明した数値は上記に限るものではない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、蛍光ランプにおいて利用される特許である。
【符号の説明】
【0059】
10,20,50 蛍光ランプ
11,21,31,41,51 発光管
12,22,52 ブリッジ接合部
13,23,53 口金
14,24,54 接着剤
35,45 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環径が異なる3本以上の環形発光管が略同一平面内に略同心円状に設けられ、前記環形発光管の端部をブリッジ接合部により順次連結していき、最外輪の環形発光管と最内輪の環形発光管の端部にそれぞれ設けた電極で一つの放電路が形成され、前記環形発光管の管端部を包囲する形で一つの口金を備えたことを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】
二つ以上の複数のブリッジ接合部が設けられ、ブリッジ接合部近傍の発光管の管端部に最冷点が位置することを特徴とする請求項1の記載された蛍光ランプ。
【請求項3】
前記環形発光管の管壁同士の間に二つ以上の複数の隙間Sが設けられ、隙間Sは略均一であること特徴とする請求項1に記載された蛍光ランプ。
【請求項4】
前記隙間Sは、それぞれ少なくとも1箇所以上において、接着剤等により管壁同士が固着されることを特徴とする請求項1に記載の蛍光ランプ。
【請求項5】
前記最外輪の環形発光管の最大外径は408mmを超えないことを特徴とする請求項1に記載された蛍光ランプ。
【請求項6】
前記放電路が2500mmより長く、かつランプ電流は150〜320mAの範囲にあることを特徴とする請求項2に記載された蛍光ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−4329(P2013−4329A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134764(P2011−134764)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】