説明

蛍光体、プラズマ・チューブ・アレイ型表示装置、及び平面光源

【課題】本発明は、短時間の駆動で輝度特性が低下することなく、アドレス放電電圧特性が安定した蛍光体、該蛍光体を用いた蛍光体層を放電細長管の内部に形成したプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置、及び平面光源を提供する。
【解決手段】本発明は、ガス放電で発する紫外光によって励起される蛍光体160において、蛍光体160の粒子の表面を保護する少なくとも一層の保護膜161と、蛍光体160の粒子の表面又は保護膜161の表面を微粒子162が分散被覆するように形成された微粒子被覆層とを備える。また、本発明に係るプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置、及び平面光源は、蛍光体160を用いた蛍光体層を放電細長管の内部に形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス放電で発する紫外光によって励起される蛍光体、該蛍光体を用いた蛍光体層を放電細長管の内部に形成したプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置、及び平面光源に関する。
【背景技術】
【0002】
新世代の大画面表示装置を実現する技術として、内部に蛍光体層を形成し、放電ガス(例えば、ネオン、キセノン等)を封入した放電細長管を複数本並置したプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置が開発されている。例えば特許文献1には、例えば管径1mm、長さ1mの放電細長管を複数本並置したプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置が開示されており、放電細長管の内部には蛍光体層を形成する他に、放電特性を改善するために二次電子放出層であるMgO層を形成してある。また、放電細長管は、放電ガスを封入してあるため、両端から放電ガスが漏れないように封止部材で封止してある。
【0003】
なお、プラズマ・チューブ・アレイ型表示装置では、カラー表示するために、例えば放電細長管ごとに、ガス放電で発する紫外光によって励起されて赤色の光を発する蛍光体を用いて形成された赤色蛍光体層、ガス放電で発する紫外光によって励起されて緑色の光を発する蛍光体を用いて形成された緑色蛍光体層、ガス放電で発する紫外光によって励起されて青色の光を発する蛍光体を用いて形成された青色蛍光体層を形成してある。特許文献2には、蛍光体層に用いる蛍光体のそれぞれの粒子をフッ化物で被覆することが開示してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−297249号公報
【特許文献2】特開2005−68343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プラズマ・チューブ・アレイ型表示装置は、従来のプラズマディスプレイのように一枚のパネルを封止部材で封止するのと異なり、複数の放電細長管のそれぞれの両端を封止部材で封止する必要がある。そのため、それぞれの放電細長管において封止条件のばらつきにより封止状態に差が生じることがある。例えば封止部材に含まれるバインダー樹脂を除去するための焼成時間がばらつくと、放電細長管の両端を封止した封止部材からバインダー樹脂が十分に除去されない場合が生じる。封止部材からバインダー樹脂が十分に除去されず、放電細長管の両端を封止した封止部材の内部に残留すると、放電細長管の内部に形成した蛍光体層やMgO層をバインダー樹脂が汚染することになる。蛍光体層又はMgO層がバインダー樹脂で汚染されると、放電細長管は、短時間の駆動で輝度特性が低下し、アドレス放電電圧特性が変化するという問題があった。特に、封止部材に近い放電細長管の両端付近は、蛍光体層、MgO層等の汚染が著しい。
【0006】
図10は、従来の長さ1m、管径1mmのガラス管の内部に蛍光体層及びMgO層を形成した放電細長管の駆動時間に対する全長にわたる平均輝度特性の変化を示すグラフである。図10に示すように、緑色蛍光体層を内部に形成した放電細長管の輝度特性の低下が、赤色蛍光体層、青色蛍光体層を内部に形成した放電細長管の輝度特性の低下よりも著しい。特に、駆動時間が300時間を超えた辺りからの緑色蛍光体層を内部に形成した放電細長管の輝度特性の低下が著しい(破線で囲った部分)。図10では、赤色蛍光体層、緑色蛍光体層、青色蛍光体層をそれぞれ内部に形成した放電細長管を点灯して白色の光を発するプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置の輝度特性も示している。白色の光を発するプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置の輝度特性が低下する最大の要因は、緑色蛍光体層を内部に形成した放電細長管の輝度特性の低下であり、緑色蛍光体層を内部に形成した放電細長管の輝度特性の低下を抑えれば、白色の光を発するプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置の輝度特性の低下を抑えることもできる。
【0007】
図11は、従来の緑色蛍光体層を内部に形成した長さ1mの放電細長管を長手方向に9分割した領域ごとの、駆動時間に対する平均輝度特性の変化を示すグラフである。図11に示すように、一本の放電細長管の内部であっても場所によって輝度特性の低下の度合いが異なる。特に、駆動時間が300時間を超えた辺りからの放電細長管の先端側(平坦シール側)端部領域及び尾部側(チップオフ側)端部領域における輝度特性の低下は、放電細長管の中央部領域の輝度特性の低下に比べて著しい(破線で囲った部分)。なお、図10及び図11に示した駆動時間は、所定の加速率で行った加速試験の試験時間であり、プラズマ・チューブ・アレイ型表示装置を実際に駆動した時間とは異なる。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、短時間の駆動で輝度特性が低下することなく、アドレス放電電圧特性が安定した蛍光体、該蛍光体を用いた蛍光体層を放電細長管の内部に形成したプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置、及び平面光源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために第1発明に係る蛍光体は、ガス放電で発する紫外光によって励起される蛍光体において、前記蛍光体の粒子の表面を保護する少なくとも一層の保護膜と、前記蛍光体の粒子の表面又は前記保護膜の表面を微粒子が分散被覆するように形成された微粒子被覆層とを備える。
【0010】
第1発明では、蛍光体の粒子の表面を保護する少なくとも一層の保護膜を備えることで、バインダー樹脂で蛍光体が汚染されるのを防ぎ、アドレス放電によるイオン衝撃から蛍光体を保護することができ、長時間駆動しても輝度特性の低下を抑えることができる。また、蛍光体の粒子の表面又は保護膜の表面を微粒子が分散被覆するように形成された微粒子被覆層を備えるので、微粒子被覆層からの電子放出によりアドレス放電電圧特性を安定させることができる。
【0011】
また、第2発明に係る蛍光体は、第1発明において、前記保護膜は、酸化物で構成され、前記酸化物は、MgO、SiO2 、Al2 3 、TiO2 、ZnO、SrO、CsO、ZrO2 、La2 3 、CaO、CeO2 、Y2 3 、Gd2 3 、SnO2 、GeO2 、Ta2 3 、Nb2 5 、V2 5 、MoO3 、B2 3 、Sb2 3 、Bi2 3 、Eu2 3 、MgAlO、ZrAlO、SrTiO3 からなる群より選ばれた少なくとも一種である。
【0012】
第2発明では、保護膜は、酸化物で構成されるので、バインダー樹脂で蛍光体が汚染されるのを防ぎ、アドレス放電によるイオン衝撃から蛍光体を保護することができ、長時間駆動しても輝度特性の低下を抑えることができる。
【0013】
また、第3発明に係る蛍光体は、第1発明において、前記保護膜は、フッ化物で構成され、前記フッ化物は、MgF2 、CaF2 、BaF2 、LiF2 、LaF3 、MnF2 からなる群より選ばれた少なくとも一種である。
【0014】
第3発明では、保護膜は、フッ化物で構成されるので、真空紫外光を透過しやすくなり、真空紫外光によって励起される蛍光体の発光効率の低下を防ぐことができる。
【0015】
また、第4発明に係る蛍光体は、第1乃至第3発明のいずれか一つにおいて、前記微粒子被覆層は、前記微粒子が酸化物で構成され、前記酸化物は、MgO、SiO2 、Al2 3 、TiO2 、ZnO、SrO、CsO、ZrO2 、La2 3 、CaO、CeO2 、Y2 3 、Gd2 3 、SnO2 、GeO2 、Ta2 3 、Nb2 5 、V2 5 、MoO3 、B2 3 、Sb2 3 、Bi2 3 、Eu2 3 、MgAlO、ZrAlO、SrTiO3 からなる群より選ばれた少なくとも一種である。
【0016】
第4発明では、蛍光体の粒子の表面又は保護膜の表面を酸化物からなる微粒子が分散被覆するように形成された微粒子被覆層を備えるので、微粒子被覆層からの電子放出によりアドレス放電電圧特性を安定させることができる。
【0017】
また、第5発明に係る蛍光体は、第1乃至第3発明のいずれか一つにおいて、前記微粒子被覆層は、前記微粒子がフッ化物で構成され、前記フッ化物は、MgF2 、CaF2 、BaF2 、LiF2 、LaF3 、MnF2 からなる群より選ばれた少なくとも一種である。
【0018】
第5発明では、蛍光体の粒子の表面又は保護膜の表面をフッ化物からなる微粒子が分散被覆するよう形成された微粒子被覆層を備えるので、真空紫外光によって励起される蛍光体の発光効率の低下を防ぎ、微粒子被覆層からの電子放出によりアドレス放電電圧特性を安定させることができる。
【0019】
また、第6発明に係る蛍光体は、第1乃至第5発明のいずれか一つにおいて、前記保護膜の膜厚は、0.5nm以上、1000nm以下である。
【0020】
第6発明では、保護膜の膜厚は、0.5nm以上、1000nm以下であるので、バインダー樹脂で蛍光体が汚染されるのを防ぎ、アドレス放電によるイオン衝撃から蛍光体を保護することができるとともに、紫外光を透過させ、透過した紫外光によって励起されて蛍光体が発する光も透過させることができる。
【0021】
また、第7発明に係る蛍光体は、第1乃至第6発明のいずれか一つにおいて、前記蛍光体が紫外光によって励起されて赤色の光、緑色の光、青色の光又は紫外光を発する少なくとも1種の蛍光体であって、前記蛍光体の粒子の表面積の0.1%以上、20%以下の範囲に、前記微粒子被覆層が形成されている
【0022】
第7発明では、少なくとも1種の蛍光体の粒子の表面積の0.1%以上、20%以下の範囲に、微粒子被覆層が形成されているので、微粒子被覆層からの電子放出によりアドレス放電電圧特性を安定させることができるとともに、紫外光を透過しやすく、透過した紫外光によって励起されて蛍光体が発する光も透過しやすくすることができる。
【0023】
また、第8発明に係る蛍光体は、第1乃至第7発明のいずれか一つにおいて、前記微粒子被覆層は、前記蛍光体の粒子の表面に直接形成された前記保護膜に覆われている。
【0024】
第8発明では、蛍光体の粒子の表面とともに蛍光体の粒子の表面を分散被覆するように形成された微粒子被覆層も保護膜で覆うことで、バインダー樹脂で微粒子が汚染されるのを防ぎ、アドレス放電によるイオン衝撃から微粒子を保護することができる。
【0025】
また、第9発明に係る蛍光体は、ガス放電で発する紫外光によって励起されて緑色の光を発する蛍光体において、前記蛍光体の粒子の表面を保護する少なくとも一層のAl2 3 からなる保護膜と、前記蛍光体の粒子の表面又は前記保護膜の表面をMgOからなる微粒子が分散被覆するように形成された微粒子被覆層とを備え、前記保護膜の膜厚が1nm以上、20nm以下で、かつ前記微粒子被覆層が前記蛍光体の粒子の表面積の0.1%以上、20%以下の範囲に形成されている。
【0026】
第9発明では、ガス放電で発する紫外光によって励起されて緑色の光を発する蛍光体は、蛍光体の粒子の表面を保護する少なくとも一層のAl2 3 からなる保護膜と、MgOからなる微粒子が分散被覆するように形成された微粒子被覆層とを備えることで、二重に被覆してあり、保護膜の膜厚を1nm以上、20nm以下とし、かつ微粒子被覆層を蛍光体の粒子の表面積の0.1%以上、20%以下の範囲に形成しているので、バインダー樹脂で蛍光体が汚染されるのを防ぎ、アドレス放電によるイオン衝撃から蛍光体を保護することができ、長時間駆動しても輝度特性の低下を抑えることができるとともに、MgOからなる微粒子が分散被覆するように形成された微粒子被覆層からの電子放出によりアドレス放電電圧特性を安定させることができる。従って特に放電細長管の端部における輝度特性が低下しやすい緑色の光を発する蛍光体を用いた放電細長管において、輝度特性の低下を抑えることができる。
【0027】
上記目的を達成するために第10発明に係るプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置は、内部に蛍光体層を形成し、放電ガスを封入した放電細長管を複数本並置したプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置において、前記蛍光体層は、第1乃至第9発明のいずれか一つの蛍光体を用いて形成されている。
【0028】
第10発明では、蛍光体層は、第1乃至第9発明のいずれか一つの蛍光体を用いて形成されているので、長時間駆動しても輝度特性の低下を抑えることができるとともに、アドレス放電電圧特性を安定させることができ、輝度特性の安定化と長寿命化を図ることができるプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置を得ることができる。
【0029】
上記目的を達成するために第11発明に係るプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置は、内部に赤色、緑色及び青色の蛍光体層を形成し、放電ガスを封入した放電細長管を複数本並置したプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置において、少なくとも緑色の前記蛍光体層に用いる蛍光体は、該蛍光体の粒子の表面を保護する少なくとも一層のAl2 3 からなる保護膜と、前記蛍光体の粒子の表面又は前記保護膜の表面をMgOからなる微粒子が分散被覆するように形成された微粒子被覆層とを備える。
【0030】
第11発明では、蛍光体は、保護膜と、微粒子被覆層とを備えることで、二重に被覆してあるので、緑色の光を発する放電細長管の端部近傍において、長時間駆動しても輝度特性の低下を抑えることができるとともに、アドレス放電電圧特性を安定させることができ、輝度特性の安定化と長寿命化を図ることができるプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置を得ることができる。
【0031】
上記目的を達成するために第12発明に係る平面光源は、内部に蛍光体層を形成し、放電ガスを封入した放電細長管を複数本並置した平面光源において、前記蛍光体層は、第1乃至第9発明のいずれか一つの蛍光体を用いて形成されている。
【0032】
第12発明では、蛍光体層は、第1乃至第9発明のいずれか一つの蛍光体を用いて形成されているので、長時間駆動しても輝度特性の低下を抑えることができるとともに、アドレス放電電圧特性を安定させることができ、輝度特性の安定化と長寿命化を図ることができる平面光源を得ることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明では、蛍光体の粒子の表面を保護する少なくとも一層の保護膜を備えることで、バインダー樹脂で蛍光体が汚染されるのを防ぎ、アドレス放電によるイオン衝撃から蛍光体を保護することができ、長時間駆動しても輝度特性の低下を抑えることができる。また、蛍光体の粒子の表面又は保護膜の表面を微粒子が分散被覆するように形成された微粒子被覆層を備えるので、微粒子被覆層からの電子放出によりアドレス放電電圧特性を安定させることができる。
【0034】
また、本発明に係る蛍光体を用いて蛍光体層を形成したプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置、及び平面光源の場合、特に緑色の光を発する放電細長管の端部近傍での輝度特性の低下を抑えることができ、輝度特性の安定化と長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態に係るプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置の構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】プラズマ・チューブ・アレイ型表示装置の放電細長管の構成を模式的に示す斜視図である。
【図3】複数のプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置を縦横に接続した状態を示す斜視図である。
【図4】本実施の形態に係る蛍光体の粒子の構成を示す概略図である。
【図5】本実施の形態に係る蛍光体の粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図6】本実施の形態に係る保護膜を複数の結晶粒で形成した蛍光体の粒子の構成を示す概略図である。
【図7】本実施の形態に係る保護膜を二層で形成した蛍光体の粒子の構成を示す概略図である。
【図8】本実施の形態に係る微粒子を別の部材で形成した蛍光体の粒子の構成を示す概略図である。
【図9】本実施の形態に係る別の蛍光体の粒子の構成を示す概略図である。
【図10】従来の長さ1m、管径1mmのガラス管の内部に蛍光体層及びMgO層を形成した放電細長管の駆動時間に対する全長にわたる平均輝度特性の変化を示すグラフである。
【図11】従来の緑色蛍光体層を内部に形成した長さ1mの放電細長管を長手方向に9分割した領域ごとの、駆動時間に対する平均輝度特性の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態に係る蛍光体、該蛍光体を用いた蛍光体層を放電細長管の内部に形成したプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置、及び平面光源について、図面を用いて詳細に説明する。以下の実施の形態は、特許請求の範囲に記載された発明を限定するものではなく、実施の形態の中で説明されている特徴的事項の組み合わせの全てが解決手段の必須事項であるとは限らないことは言うまでもない。
【0037】
図1は、本発明の実施の形態に係るプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置の構成を模式的に示す斜視図である。図2は、プラズマ・チューブ・アレイ型表示装置の放電細長管の構成を模式的に示す斜視図である。図3は、複数のプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置を縦横に接続した状態を示す斜視図である。
【0038】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係るプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置1は、矩形形状を有しており、内部に放電ガスが封入された複数の放電細長管11、11、・・・を並列に配置している。放電細長管11、11、・・・はガラス製の発光管であり、管体となる細管の径は、特に大きさが限定されるものではないが、管径0.5〜5mm程度であることが望ましい。細管の形状は、円形の断面、扁平楕円状の断面、方形の断面等、どのような形状の断面を有していてもよい。また、放電細長管11、11、・・・の内部にはネオン、キセノン等の放電ガスが所定の割合で所定の圧力で封入されている。
【0039】
並列に配置された放電細長管11、11、・・・は、放電細長管11、11、・・・の長手方向に沿って配設されているアドレス電極12、12、・・・を有する背面側のアドレス電極支持シート13と、放電細長管11、11、・・・の長手方向に略直交する方向に配設されている表示電極14、14、・・・を有する表面側の表示電極支持シート15とに挟持されることでプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置1を構成している。表示電極支持シート15はフレキシブルシートであり、例えばポリカーボネートフィルム、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等で構成されている。
【0040】
複数の表示電極14、14、・・・は、プラズマ・チューブ・アレイ型表示装置1の表示面側に、放電細長管11、11、・・・の長手方向に略直交する方向にストライプ状に配置されており、隣接する表示電極14、14間で放電細長管11、11、・・・において表示放電を発生させることができるものであれば、特に限定されるものではない。表示電極14は、当該分野で公知の各種の材料を用いて形成することができる。表示電極14に用いられる材料としては、例えば、ITO(酸化錫ドープ酸化インジウム)、SnO2 等の透明な導電性材料や、Ag、Au、Al、Cu、Cr等の金属の導電性材料が挙げられる。
【0041】
表示電極14の形成方法としては、当該分野で公知の各種の方法を適用することができる。例えば、印刷等の厚膜形成技術を用いて形成しても良いし、物理的堆積法又は化学的堆積法からなる薄膜形成技術を用いて形成しても良い。厚膜形成技術としては、スクリーン印刷法等が挙げられる。薄膜形成技術のうち、物理的堆積法としては、蒸着法、スパッタ法等が挙げられる。化学的堆積法としては、熱CVD法、光CVD法、あるいはプラズマCVD法等が挙げられる。
【0042】
アドレス電極12、12、・・・は、プラズマ・チューブ・アレイ型表示装置1の背面側に、放電細長管11、11、・・・の長手方向に沿って放電細長管11ごとに設けられ、表示電極対14、14、・・・との交差部に発光セルを形成する発光セル選択用のものであれば、特に限定されるものではない。アドレス電極12も、当該分野で公知の各種の材料と方法を用いて形成することができる。
【0043】
上記構成において、プラズマ・チューブ・アレイ型表示装置1をカラー表示対応とする場合には、図2に示すように、放電細長管11ごとに単色の蛍光体層16、例えば赤色(R)用の蛍光体層16R、緑色(G)用の蛍光体層16G、青色(B)用の蛍光体層16Bを有する。RGB3色の放電細長管11、11、11を一組として一つの画素を構成することで、カラー表示に対応することができる。なお、蛍光体層16は、赤色(R)用の蛍光体層16Rでは、紫外光によって励起されて赤色の光を発する(Y、Gd)BO3 :Eu3+等の蛍光体を用いる。緑色(G)用の蛍光体層16Gでは、紫外光によって励起されて緑色の光を発するZn2 SiO4 :Mn等の蛍光体を用い、青色(B)用の蛍光体層16Bでは、紫外光によって励起されて青色の光を発するBaMgAl1217:Eu2+等の蛍光体を用いる。また、蛍光体層16は、細長放電管11となるガラス製の発光管の内壁面の下半分の領域に直接形成される場合と、断面が半楕円形の蛍光体支持ボートの内側に形成し、該蛍光体支持ボートをガラス製の発光管の中に挿入する場合とがある。
【0044】
複数枚の図1に示すプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置1を縦横に接続して、大画面のプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置10を構成することができる。図3では、4枚のプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置1から1枚の大画面のプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置10を構成しており、1枚1枚のプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置1は、駆動回路、電源回路等を含まない半完成品である。大画面のプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置10を構成した段階で、全体を一つの表示装置として駆動回路、電源回路等を組み込むことで、1枚のプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置1ごとに表示画像の品質のばらつきが少ない大画面のプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置10を構成することができる。
【0045】
以上の構成において、走査電極として用いる表示電極対の一方の表示電極14とアドレス電極12との間でアドレス放電を起こし、該アドレス放電により生じた壁電荷を利用して表示電極対14、14で維持放電を発生させる。このプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置1の動作は、周知のAC型プラズマ・ディスプレイ・パネルの動作と実質的に同じである。
【0046】
アドレス放電は、表示電極14とアドレス電極12との間に細長放電管11の管壁とMgO層と蛍光体層16とガス空間とを挟んだ対向放電形式となるので、蛍光体層16の表面とMgO層の表面の状態が放電特性に大きな影響を及ぼすことになる。表示電極対14、14とアドレス電極12との交差部に定まる放電セルの全てにおいてアドレス放電することが可能となる最小アドレス放電開始電圧の電圧値をAdminで表すと、細長放電管11の端部でMgO層や蛍光体層16が汚染された場合、Adminの電圧値が上昇し、無用な放電セルで誤放電が生じることになる。
【0047】
本実施の形態に係る蛍光体層16に用いる蛍光体は、蛍光体の粒子の表面を保護する少なくとも一層の保護膜と、蛍光体の粒子の表面又は保護膜の表面を分散被覆するように形成された微粒子被覆層とを備えている。なお、蛍光体は、赤色(R)用の蛍光体層16R、緑色(G)用の蛍光体層16G、青色(B)用の蛍光体層16Bに用いる全ての蛍光体の粒子に対して保護膜及び微粒子被覆層を備えている場合に限定されるものではなく、例えば、図10で示したように輝度特性が低下しやすい緑色(G)用の蛍光体層16Gの蛍光体の粒子に対してのみ保護膜及び微粒子被覆層を備えても良い。また、放電細長管11を複数本並置したプラズマ・チューブ・アレイを、紫外光を発する平面光源として構成する場合、蛍光体層16に用いる蛍光体は、紫外光を発する蛍光体で、該蛍光体の粒子に対して保護膜及び微粒子被覆層を備えている。
【0048】
以下、蛍光体の粒子の構成について詳しく説明する。図4は、本実施の形態に係る蛍光体の粒子の構成を示す概略図である。図4(a)に示す蛍光体160の粒子は、粒子の表面を保護する保護膜161と、粒子の表面を微粒子162が分散被覆するように形成された微粒子被覆層とを備えている。図4(b)に示す蛍光体160の粒子は、粒子の表面を保護する保護膜161と、保護膜161の表面を微粒子162が分散被覆するように形成された微粒子被覆層とを備えている。図4(c)に示す蛍光体160の粒子は、粒子の表面を保護する保護膜161と、粒子の表面を微粒子162が分散被覆するように形成された微粒子被覆層とを備え、微粒子162が、保護膜161に覆われている。微粒子162自体を保護膜161で覆うことで、バインダー樹脂で微粒子162が汚染されるのを防ぎ、アドレス放電によるイオン衝撃から微粒子162を保護することができる。図5は、本実施の形態に係る蛍光体160の粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【0049】
保護膜161は、酸化物で構成され、MgO、SiO2 、Al2 3 、TiO2 、ZnO、SrO、CsO、ZrO2 、La2 3 、CaO、CeO2 、Y2 3 、Gd2 3 、SnO2 、GeO2 、Ta2 3 、Nb2 5 、V2 5 、MoO3 、B2 3 、Sb2 3 、Bi2 3 、Eu2 3 、MgAlO、ZrAlO、SrTiO3 からなる群より選ばれた少なくとも一種の酸化物で形成してある。
【0050】
例えば、0.5nm以上、1000nm以下の膜厚のAl2 3 の酸化物を保護膜161として蛍光体160の粒子(平均粒径5μm)の表面に形成する。なお、保護膜161は、バインダー樹脂による汚染やアドレス放電によるイオン衝撃から蛍光体160を保護するために、膜厚を0.5nm以上に限定しているが、保護膜161の膜厚を1.0nm以上に限定することで、より高電圧のアドレス放電によるイオン衝撃であっても、確実に蛍光体160を保護することができる。また、保護膜161の膜厚を1000nm以下に限定しているのは、ガス放電で発する紫外光を透過させ、且つ紫外光によって励起されて蛍光体160が発する光を透過させるためである。具体的には、Al2 3 の保護膜161の膜厚を20nm以下に限定することで、保護膜161を透過したガス放電で発する紫外光、及び紫外光によって励起されて蛍光体160が発する光の減衰を5%以下に抑えることができる。
【0051】
保護膜161は、所定濃度の有機金属化合物の溶液に粉体状の蛍光体160を浸漬して攪拌し、蛍光体160を溶液と分離して乾燥させて、加熱処理することで蛍光体160の粒子の表面に形成される(浸漬法)。なお、加熱処理では、所定温度で加熱する一次処理と、所定温度より高い温度で加熱する二次処理とを行うことで、蛍光体160の粒子の表面に形成される保護膜161の膜質を、より緻密化することができる。
【0052】
具体的に、Al2 3 の保護膜161を形成する場合に用いる有機金属化合物の溶液は、Al(OCH3 3 、Al(OC2 5 3 、Al(i−OC3 7 3 、Al(i−OC4 9 3 、C1521AlO6 のいずれか一つと、CH3 COCH3 とを含む溶液である。なお、ZrO2 の保護膜161を形成する場合に用いる有機金属化合物の溶液は、Zr(OCH3 4 、Zr(OC2 5 4 、Zr(i−OC3 7 4 、Zr(i−OC4 9 4 のいずれか一つと、C3 7 OHと、CH3 COCH2 COCH3 とを含む溶液である。MgOの保護膜161を形成する場合に用いる有機金属化合物の溶液は、Mg(CH3 COO)2 と、C2 5 OHとを含む溶液である。SiO2 の保護膜161を形成する場合に用いる有機金属化合物の溶液は、Si(OCH3 4 、Si(OC2 5 4 、Si(i−OC3 7 4 、Si(i−OC4 9 4 のいずれか一つと、C2 5 OHとを含む溶液である。SrOの保護膜161を形成する場合に用いる有機金属化合物の溶液は、Sr(OC2 5 2 と、C2 5 OHとを含む溶液である。MgAlOの保護膜161を形成する場合に用いる有機金属化合物の溶液は、Mg[Al(iso−OC3 7 4 2 と、Mg[Al(sec−OC4 9 4 2 と、C2 5 OHとを含む溶液である。ZrAlOの保護膜161を形成する場合に用いる有機金属化合物の溶液は、(C3 7 O)2 Zr[Al(OC3 7 4 2 と、C2 5 OHとを含む溶液である。Al2 3 −SiO2 の保護膜161を形成する場合に用いる有機金属化合物の溶液は、Si(OC2 5 4 と、Al(OC3 7 3 と、C2 5 OHと、CH3 COOH3 とを含む溶液である。SrTiO3 の保護膜161を形成する場合に用いる有機金属化合物の溶液は、Sr(OC2 5 2 と、Ti(OC4 9 4 と、CH3 COOH3 と、CH3 COCH2 COCH3 とを含む溶液である。
【0053】
保護膜161を形成する方法は、浸漬法に限定されるものではなく、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置やスパッタリング装置を用いて、蛍光体160の粒子の表面に、Al2 3 の酸化物を保護膜161として形成する方法(CVD法やスパッタ法)でも良い。
【0054】
さらに、保護膜161は、蛍光体160の粒子の表面に、所定濃度の有機金属化合物の溶液をスプレーして、有機金属化合物の溶液がスプレーされた蛍光体160の粒子を所定温度で加熱することでも蛍光体160の粒子の表面に形成される(スプレー法)。浸漬法、スプレー法等で保護膜161を形成した場合、蛍光体160の粒子を加熱する温度等の条件により、Al2 3 等の複数の結晶粒で保護膜161が形成される。図6は、本実施の形態に係る保護膜161を複数の結晶粒で形成した蛍光体160の粒子の構成を示す概略図である。図6(a)に示す蛍光体160の粒子は、粒子の表面を保護する保護膜161と、粒子の表面を微粒子162が分散被覆するように形成された微粒子被覆層とを備えている。図6(b)に示す蛍光体160の粒子は、粒子の表面を保護する保護膜161と、保護膜161の表面を微粒子162が分散被覆するように形成された微粒子被覆層とを備えている。図6(c)に示す蛍光体160の粒子は、粒子の表面を保護する保護膜161と、粒子の表面を微粒子162が分散被覆するように形成された微粒子被覆層とを備え、微粒子162が、保護膜161に覆われている。
【0055】
また、保護膜161は、酸化物に限定されるものではなく、フッ化物で形成されても良い。保護膜161は、MgF2 、CaF2 、BaF2 、LiF2 、LaF3 、MnF2 からなる群より選ばれた少なくとも一種のフッ化物で形成してある。保護膜161をフッ化物で構成することで、保護膜161は真空紫外光を透過しやすくなり、真空紫外光によって励起される蛍光体160の発光効率の低下を防ぐことができる。なお、保護膜161をフッ化物で構成する場合であっても、保護膜161を酸化物で構成する場合と同じ方法で形成することができる。
【0056】
さらに、保護膜161は、一層に限定されるものではない。図7は、本実施の形態に係る保護膜161を二層で形成した蛍光体160の粒子の構成を示す概略図である。図7(a)に示す蛍光体160の粒子は、図6(a)に示す蛍光体160の粒子の表面に形成した保護膜161を二層にしてある。図7(b)に示す蛍光体160の粒子は、図6(c)に示す蛍光体160の粒子の表面に形成した保護膜161を二層にし、微粒子162を覆う保護膜161は一層のままにしてある。図7(c)に示す蛍光体160の粒子は、図4(a)に示す蛍光体160の粒子の表面に形成した保護膜161を二層にしてある。図7(d)に示す蛍光体160は、図4(c)に示す蛍光体160の粒子の表面に形成した保護膜161を二層にし、微粒子162を覆う保護膜161は一層のままにしてある。図7(a)及び図7(b)に示す保護膜161は、結晶粒が大きい第一層161a、結晶粒が小さい第二層161bで構成されている。なお、第一層161a及び第二層161bは同じ材料で形成しても、異なった材料で形成しても良い。また、第一層161aと第二層161bとの結晶粒の大きさの関係は、図7(a)及び図7(b)に示す場合に限定されるものではなく、同じ大きさの結晶粒であっても、結晶粒の大きさが逆転しても良い。
【0057】
図7(c)及び図7(d)に示す保護膜161は、第一層161c、第一層161cの厚みと略同じ厚みの第二層161dで構成されている。なお、第一層161c及び第二層161dは同じ材料で形成しても、異なった材料で形成しても良い。また、第一層161cと第二層161dとの厚みの関係は、図7(c)及び図7(d)に示す場合に限定されるものではなく、同じ厚みであっても、異なった厚みであっても良い。保護膜161は、二層に限定されるものではなく、二層以上の多層であっても良い。
【0058】
次に、微粒子被覆層は、微粒子162が酸化物で構成され、MgO、SiO2 、Al2 3 、TiO2 、ZnO、SrO、CsO、ZrO2 、La2 3 、CaO、CeO2 、Y2 3 、Gd2 3 、SnO2 、GeO2 、Ta2 3 、Nb2 5 、V2 5 、MoO3 、B2 3 、Sb2 3 、Bi2 3 、Eu2 3 、MgAlO、ZrAlO、SrTiO3 からなる群より選ばれた少なくとも一種の酸化物で形成してある。また、微粒子被覆層は、微粒子162がフッ化物で構成され、MgF2 、CaF2 、BaF2 、LiF2 、LaF3 、MnF2 からなる群より選ばれた少なくとも一種のフッ化物で形成しても良い。
【0059】
蛍光体160の粒子の表面を微粒子162が分散被覆するように形成された微粒子被覆層を備えることで、微粒子被覆層からの電子放出によりアドレス放電電圧特性を安定させることができる。具体的には、蛍光体160の粒子の表面を、MgO、SrO、CsO、ZrO2 、La2 3 、CaO、CeO2 、MgF2 、CaF2 からなる結晶の微粒子162が分散被覆するように形成された微粒子被覆層を備える蛍光体をプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置1に適用した場合、蛍光体160の粒子の表面に形成された微粒子162から二次電子が放出され、MgO層及び蛍光体層表面の汚染によるアドレス放電電圧特性の低下を補い、アドレス放電電圧特性を安定させることができる。また、蛍光体160の粒子の表面を、Y2 3 、Gd2 3 、La2 3 、Ta2 3 、Bi2 3 、Al2 3 、ZnO、ZrO2 の酸化物又はLaF3 のフッ化物からなる微粒子162が分散被覆するように形成された微粒子被覆層を備える蛍光体をプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置1に適用した場合、蛍光体160の粒子の表面に形成された微粒子162の表面に正電荷が集中して、蛍光体160の粒子の表面近傍における電子の帯電状態を変化させて、微粒子被覆層からの電子放出によりアドレス放電電圧特性を安定させることができる。さらに、蛍光体160の粒子の表面に、SiO2 、TiO2 、SnO2 、Sb2 3 、B2 3 、GeO2 、Nb2 5 、V2 5 、MoO3 の酸化物からなる微粒子162が分散被覆するように形成された微粒子被覆層を備える蛍光体をプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置1に適用した場合、蛍光体160の粒子の表面に形成された微粒子162の表面に負電荷が集中して、蛍光体160の粒子の表面近傍における電子の帯電状態を変化させて、微粒子被覆層からの電子放出によりアドレス放電電圧特性を安定させることができる。
【0060】
本実施の形態に係る蛍光体160では、蛍光体160の粒子の表面積の0.1%以上、20%以下の範囲に、例えば、MgOの結晶の微粒子162からなる微粒子被覆層が形成されている。蛍光体160の粒子の表面積の0.1%以上の範囲にMgOの結晶の微粒子162からなる微粒子被覆層が形成される場合に限定しているのは、微粒子被覆層の微粒子162から二次電子が放出されアドレス放電電圧特性を安定させるためである。一方、蛍光体160の粒子の表面積の20%以下の範囲にMgOの結晶の微粒子162からなる微粒子被覆層が形成される場合に限定しているのは、ガス放電で発する紫外光を透過しやすく、かつ紫外光によって励起されて蛍光体160が発する光を透過しやすくするためである。さらに、蛍光体160の粒子の表面積の10%以下の範囲にMgOの結晶の微粒子162からなる微粒子被覆層が形成される場合に限定することで、ガス放電で発する紫外光、及び紫外光によって励起されて蛍光体160が発する光の減衰を5%以下に抑えることができる。
【0061】
ここで、蛍光体160の粒子の表面を微粒子162が分散被覆する面積の割合(微粒子被覆層の表面被覆率)は、直接測定することが困難である。そのため、例えば透過型電子顕微鏡による撮影写真から微粒子162が蛍光体160の粒子の表面を被覆している面積を測定して類推する方法や、MgOの結晶の微粒子162を蛍光体160の粉末ペーストに混練して塗布する場合に、蛍光体160の粉末ペーストの重量に対するMgOの結晶の微粒子162の重量比を算出して類推する方法を用いて、微粒子被覆層の表面被覆率を間接的に測定する。即ち、蛍光体160の粉末ペーストの重量に対するMgOの結晶の微粒子162の重量比が、20重量%以下、或いは10重量%以下とした場合、微粒子被覆層の表面被覆率は、略20%以下、或いは10%以下とする。
【0062】
微粒子162は、所定濃度の有機金属化合物の溶液に粉体状の蛍光体160を浸漬して攪拌し、蛍光体160を溶液と分離して乾燥させて、加熱処理することで蛍光体160の粒子の表面に形成される(浸漬法)。なお、加熱処理における、蛍光体160の粒子を加熱する温度等の条件により、蛍光体160の粒子の表面に形成される微粒子162の大きさや数を制御することができる。
【0063】
具体的に、Al2 3 の微粒子162を形成する場合に用いる有機金属化合物の溶液は、Al(OCH3 3 、Al(OC2 5 3 、Al(i−OC3 7 3 、Al(i−OC4 9 3 、C1521AlO6 のいずれか一つと、CH3 COCH3 とを含む溶液である。なお、ZrO2 の微粒子162を形成する場合に用いる有機金属化合物の溶液は、Zr(OCH3 4 、Zr(OC2 5 4 、Zr(i−OC3 7 4 、Zr(i−OC4 9 4 のいずれか一つと、C3 7 OHと、CH3 COCH2 COCH3 とを含む溶液である。MgOの結晶の微粒子162を形成する場合に用いる有機金属化合物の溶液は、Mg(CH3 COO)2 と、C2 5 OHとを含む溶液である。SiO2 の微粒子162を形成する場合に用いる有機金属化合物の溶液は、Si(OCH3 4 、Si(OC2 5 4 、Si(i−OC3 7 4 、Si(i−OC4 9 4 のいずれか一つと、C2 5 OHとを含む溶液である。SrOの微粒子162を形成する場合に用いる有機金属化合物の溶液は、Sr(OC2 5 2 と、C2 5 OHとを含む溶液である。MgAlOの微粒子162を形成する場合に用いる有機金属化合物の溶液は、Mg[Al(iso−OC3 7 4 2 と、Mg[Al(sec−OC4 9 4 2 と、C2 5 OHとを含む溶液である。ZrAlOの微粒子162を形成する場合に用いる有機金属化合物の溶液は、(C3 7 O)2 Zr[Al(OC3 7 4 2 と、C2 5 OHとを含む溶液である。Al2 3 −SiO2 の微粒子162を形成する場合に用いる有機金属化合物の溶液は、Si(OC2 5 4 と、Al(OC3 7 3 と、C2 5 OHと、CH3 COOH3 とを含む溶液である。SrTiO3 の微粒子162を形成する場合に用いる有機金属化合物の溶液は、Sr(OC2 5 2 と、Ti(OC4 9 4 と、CH3 COOH3 と、CH3 COCH2 COCH3 とを含む溶液である。
【0064】
微粒子162を形成する方法は、浸漬法に限定されるものではなく、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置を用いて、蛍光体160の粒子の表面に、MgO等の酸化物の微結晶の微粒子162を形成する方法(CVD法)でも良い。
【0065】
さらに、微粒子162は、蛍光体160の粒子の表面に、気相生成法であらかじめ作成したMgO等の酸化物の微結晶を揮発性の溶媒に分散させた分散溶液をスプレーした後、スプレーされた蛍光体160の粒子を所定温度で加熱することでも形成される(スプレー法)。また、微粒子162は、別途気相生成法などで作成したMgOの結晶の微粒子を、あらかじめ保護膜161を被覆した蛍光体160の粉末ペーストに混練して塗布した後、焼成することでも形成される(混合法)。
【0066】
また、微粒子162は、MgO等の一つの結晶粒で形成される場合に限定されるものではない。図8は、本実施の形態に係る微粒子162を別の部材で形成した蛍光体160の粒子の構成を示す概略図である。図8(a)に示す微粒子162は、複数のファイバ状の部材を束ねて、蛍光体160の粒子の表面に形成されている。図8(b)に示す微粒子162は、一本又は複数本のワイヤ状の部材を折り畳んで、蛍光体160の粒子の表面に形成されている。図8(c)に示す微粒子162は、複数の結晶粒を集めて、蛍光体160の粒子の表面に形成されている。
【0067】
以上のように、本実施の形態に係る蛍光体160は、蛍光体160の粒子の表面を保護する少なくとも一層の保護膜161を備えることで、バインダー樹脂で蛍光体160が汚染されるのを防ぎ、アドレス放電によるイオン衝撃から蛍光体160を保護することができ、長時間駆動しても輝度特性の低下を抑えることができる。また、蛍光体160の粒子の表面又は保護膜161の表面を微粒子162が分散被覆するように形成された微粒子被覆層を備えるので、微粒子被覆層からの電子放出によりアドレス放電電圧特性を安定させることができる。
【0068】
また、本発明に係る蛍光体160を用いて蛍光体層16を形成したプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置1の場合、特に緑色の光を発する放電細長管11の端部近傍での輝度特性の低下を抑えることができ、輝度特性の安定化と長寿命化を図ることができる。なお、放電細長管11を複数本並置する構成は、プラズマ・チューブ・アレイ型表示装置1に限定されるものではなく、紫外光を発する蛍光体160を用いた紫外光用の平面光源に用いても良い。
【0069】
また、図9は、本実施の形態に係る蛍光体160の粒子の別の構成を示す概略図である。図9に示す蛍光体160の粒子は、矢印の方向の蛍光体160の粒子の表面に保護膜161及び微粒子162が分散被覆するように形成された微粒子被覆層が形成されている。矢印の方向は、プラズマ・チューブ・アレイ型表示装置1であれば画像を表示する方向、平面光源であれば発光する方向である。蛍光体160の粒子は、少なくとも矢印の方向の蛍光体160の粒子の表面に保護膜161及び微粒子162が分散被覆するように形成された微粒子被覆層を形成することで、蛍光体160のそれぞれの粒子において保護及びアドレス放電電圧特性の安定が必要な部分にのみ保護膜161及び微粒子162が分散被覆するように形成された微粒子被覆層を集中的に形成して、保護膜161及び微粒子162が分散被覆するように形成された微粒子被覆層を形成するための材料を低減することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 プラズマ・チューブ・アレイ型表示装置
10 大画面のプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置
11 放電細長管
12 アドレス電極
13 アドレス電極支持シート
14 表示電極(対)
15 表示電極支持シート
16 蛍光体層
160 蛍光体
161 保護膜
162 微粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス放電で発する紫外光によって励起される蛍光体において、
前記蛍光体の粒子の表面を保護する少なくとも一層の保護膜と、
前記蛍光体の粒子の表面又は前記保護膜の表面を微粒子が分散被覆するように形成された微粒子被覆層と
を備えることを特徴とする蛍光体。
【請求項2】
前記保護膜は、酸化物で構成され、
前記酸化物は、MgO、SiO2 、Al2 3 、TiO2 、ZnO、SrO、CsO、ZrO2 、La2 3 、CaO、CeO2 、Y2 3 、Gd2 3 、SnO2 、GeO2 、Ta2 3 、Nb2 5 、V2 5 、MoO3 、B2 3 、Sb2 3 、Bi2 3 、Eu2 3 、MgAlO、ZrAlO、SrTiO3 からなる群より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
前記保護膜は、フッ化物で構成され、
前記フッ化物は、MgF2 、CaF2 、BaF2 、LiF2 、LaF3 、MnF2 からなる群より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項4】
前記微粒子被覆層は、前記微粒子が酸化物で構成され、
前記酸化物は、MgO、SiO2 、Al2 3 、TiO2 、ZnO、SrO、CsO、ZrO2 、La2 3 、CaO、CeO2 、Y2 3 、Gd2 3 、SnO2 、GeO2 、Ta2 3 、Nb2 5 、V2 5 、MoO3 、B2 3 、Sb2 3 、Bi2 3 、Eu2 3 、MgAlO、ZrAlO、SrTiO3 からなる群より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の蛍光体。
【請求項5】
前記微粒子被覆層は、前記微粒子がフッ化物で構成され、
前記フッ化物は、MgF2 、CaF2 、BaF2 、LiF2 、LaF3 、MnF2 からなる群より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の蛍光体。
【請求項6】
前記保護膜の膜厚は、0.5nm以上、1000nm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の蛍光体。
【請求項7】
前記蛍光体が紫外光によって励起されて赤色の光、緑色の光、青色の光又は紫外光を発光する少なくとも1種の蛍光体であって、
前記蛍光体の粒子の表面積の0.1%以上、20%以下の範囲に、前記微粒子被覆層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の蛍光体。
【請求項8】
前記微粒子被覆層は、前記蛍光体の粒子の表面に直接形成された前記保護膜に覆われていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の蛍光体。
【請求項9】
ガス放電で発する紫外光によって励起されて緑色の光を発する蛍光体において、
前記蛍光体の粒子の表面を保護する少なくとも一層のAl2 3 からなる保護膜と、
前記蛍光体の粒子の表面又は前記保護膜の表面をMgOからなる微粒子が分散被覆するように形成された微粒子被覆層とを備え、
前記保護膜の膜厚が1nm以上、20nm以下で、かつ前記微粒子被覆層が前記蛍光体の粒子の表面積の0.1%以上、20%以下の範囲に形成されていることを特徴とする蛍光体。
【請求項10】
内部に蛍光体層を形成し、放電ガスを封入した放電細長管を複数本並置したプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置において、
前記蛍光体層は、請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の蛍光体を用いて形成されていることを特徴とするプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置。
【請求項11】
内部に赤色、緑色及び青色の蛍光体層を形成し、放電ガスを封入した放電細長管を複数本並置したプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置において、
少なくとも緑色の前記蛍光体層に用いる蛍光体は、
該蛍光体の粒子の表面を保護する少なくとも一層のAl2 3 からなる保護膜と、
前記蛍光体の粒子の表面又は前記保護膜の表面をMgOからなる微粒子が分散被覆するように形成された微粒子被覆層と
を備えることを特徴とするプラズマ・チューブ・アレイ型表示装置。
【請求項12】
内部に蛍光体層を形成し、放電ガスを封入した放電細長管を複数本並置した平面光源において、
前記蛍光体層は、請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の蛍光体を用いて形成されていることを特徴とする平面光源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−256313(P2011−256313A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133129(P2010−133129)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(506025648)篠田プラズマ株式会社 (29)
【Fターム(参考)】