説明

蛍光体、画像表示装置及びこれらの製造方法

【課題】GA24:EUの蛍光体について、1000NM以下の粒子サイズとしても、高い輝度が得られるようにする。
【解決手段】硫黄成分を除く母体材料の構成成分と付活剤の構成成分を前記蛍光体における組成比で含む原料粒子を作製する工程と、前記原料粒子を熱プラズマで加熱し冷却することで、非晶質の前駆体粒子を作製する工程と、前記前駆体粒子を、硫化雰囲気下で、硫化温度以上で結晶化温度未満の温度で焼成した後、結晶化温度以上の温度で焼成し、粒子サイズが1000NM以下で、結晶子サイズを粒子サイズの60%以上とする工程とを有する蛍光体の製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電界放出表示装置(FED)、プラズマ表示装置(PDP)等のように、蛍光体の発光により画像を表示する画像表示装置に用いられる蛍光体、この蛍光体を用いた画像表示装置及びこれらの製造方法に関する。具体的にはチオガレート系硫化物を母体材料とする蛍光体、この蛍光体を用いた画像表示装置及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、Y22S:Eu蛍光体で平均粒径3μmのものを原料として、高温プラズマで処理した後冷却することで、0.05〜2μmの粒径の蛍光体を製造することが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、原料の溶液を高温の炉中に噴霧し、SrGa24:Euである前駆体微粒子を作製し、この前駆体微粒子を分級した後、硫化水素中で熱処理することで、微粒子のSrGa24:Eu蛍光体を製造する方法も提案知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−292354号公報
【特許文献2】アメリカ特許第6875372号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、画像表示装置の高精細化が進むにつれて、1画素のサイズは小さくなり、蛍光体も粒子のサイズが小さいものが求められている。具体的には、1000nm以下の粒子サイズで、高い輝度が得られる蛍光体が求められている。
【0006】
しかしながら、前記従来のY22S:Eu蛍光体も、SrGa24:Eu蛍光体も、特に1000nm以下の粒子サイズにおいては高い輝度が得られない問題がある。特許文献2に示される蛍光体は、チオガレート硫化物を母体材料とする蛍光体である点で本発明に係る蛍光体と共通している。しかし、後述する比較例から明らかなように、粒子サイズに対する結晶子サイズが小さく、これが十分な輝度が得られない原因になっていると考えられる。
【0007】
本発明は、1000nm以下の粒子サイズとしても、高い輝度が得られる蛍光体を提供すると共に、これを用いることで高精細で明るい画像表示が可能な画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一は、下記一般式で表されるチオガレート系硫化物の母体材料と付活剤を含む蛍光体の製造方法において、
AGa24(但し、AはCa、Sr又はBa)
(a)硫黄成分を除く母体材料の構成成分と付活剤の構成成分を前記蛍光体における組成比で含む原料粒子を作製する工程と、
(b)前記原料粒子を熱プラズマで加熱し冷却することで、非晶質の前駆体粒子を作製する工程と、
(c)0.3g以下の前記前駆体粒子を、硫化雰囲気下で、結晶化する温度以上の温度で焼成し、粒子サイズが1000nm以下で、結晶子サイズを粒子サイズの60%以上とする工程
とを有することを特徴とする蛍光体の製造方法を提供するものである。
【0009】
また、本発明の第二は、上記本発明の第一において、(c)工程での焼成の温度プロファイルを、硫化温度以上で結晶化する温度未満の温度で焼成した後、結晶化温度以上の温度で焼成する二段階温度プロファイルとすることにより、前駆体粒子の処理量に拘わらず(c)工程を行えるようにしたことを特徴とする蛍光体の製造方法を提供するものである。
【0010】
本発明の第三は、選択的に発光可能に設けられた蛍光体によって複数の画素を構成し、該画素を選択的に発光させることで画像を表示する画像表示装置の製造方法において、上記本発明に係る蛍光体の製造方法により製造した蛍光体で前記画素を構成することを特徴とする画像表示装置の製造方法を提供するものである。
【0011】
本発明の第四は、粒子サイズが1000nm以下、結晶子サイズが粒子サイズの60%以上で、母体材料が下記一般式で表されるチオガレート系硫化物であることを特徴とする蛍光体を提供するものである。
【0012】
AGa24(但し、AはCa、Sr又はBa)
【0013】
本発明の第五は、選択的に発光可能に設けられた蛍光体によって複数の画素を構成し、該画素を選択的に発光させることで画像を表示する画像表示装置において、前記蛍光体が、上記本発明に係る蛍光体であることを特徴とする画像表示装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る蛍光体の製造方法によると、(b)の工程により、ナノサイズで、非晶質の前駆体粒子を得ることができる。そして、(c)の工程により、前駆体を硫化し結晶化することができる。そして、これにより、粒子径が1000nm以下結晶性の高い蛍光体を得ることができる。特に(c)の工程での焼成を二段階の温度プロファイルを経るものとすると、処理量に拘わらず、所望の粒子サイズに制御された均質な硫化物蛍光体を容易にかつ確実に形成することができる。本発明に係る蛍光体は、結晶サイズが大きいので、粒子サイズが1000nm以下であっても高い輝度が得られる。従って、これを用いた本発明に係る画像表示装置及び本発明に係る画像表示装置の製造方法により得られる画像表示装置は、高精細で明るい画像表示ができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】画像表示装置の実施形態の一例の全体構成を示す、一部を切り欠いた模式的斜視図である。
【図2】図1のフェースプレートの説明図で、(a)はフェースプレートの一部分を拡大した模式的断面図、(b)は蛍光体の拡大模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る蛍光体は、粒子サイズが1000nm以下、結晶子サイズが粒子サイズの60%以上で、母体材料が一般式AGa24(但し、AはCa、Sr又はBa)で表されるチオガレート系硫化物である。
【0017】
本発明における粒子サイズは、粒度分布を測定することで得られるD50(メジアン径)をいう。D50は、例えば、蛍光体をエタノールに分散させた分散液から、Malvern instruments社の「ZETASIZER(Nano−ZS)」を用いて測定することができる。本発明に係る蛍光体は、高精細な画像表示装置に使用しやすい1000nm以下の粒子サイズにおいて、同じ粒子サイズであれば従来の蛍光体に比して高い輝度を呈する。しかし、粒子サイズが小さくなるに従って得られる輝度も低下する傾向にある。粒子サイズが300nm未満となると、同じ粒子サイズの従来の蛍光体に比しては高い輝度が得られるが、画像表示装置に用いるには輝度が不十分となりやすい。このため、本発明に係る蛍光体の粒子サイズは1000nm以下300nm以上であることが好ましい。
【0018】
また、結晶子とは、単結晶としてみなせる最大の集まりを意味する。蛍光体の粒子サイズが結晶子サイズより大きい場合は、蛍光体の1粒子中に結晶子と非晶質が混在している状態又は多結晶の状態である。結晶子サイズが粒子サイズに近くなるほど蛍光体の1粒子中に占める非晶質又は多結晶の領域が少なくなり単結晶の領域の割合が多くなる。本発明の蛍光体の結晶子サイズは、粒子サイズに対して60%以上の大きさである。そして、本発明の蛍光体の粒子サイズが1000nm以下であることから、本発明における結晶子サイズの上限は必然的に1000nmとなる。
【0019】
結晶子サイズは、典型的にはX線回折測定から求めることが可能である。回折線のプロファイルから、Scherrer法と呼ばれる方法によって算出することができる。Sherrerの式は、一般的に下記式(1)で表される。式(1)において、dは結晶子サイズ、Kは定数(0.9)、λは測定X線波長(Cu:15.4058nm)、βは回折線半値幅、θは回折線のブラッグ角である。
【0020】
d=K・λ/β・cosθ ・・・(1)
【0021】
X線回折測定は、標準セルに蛍光体粉末を充填したサンプルを用いて行う。結晶子サイズが100nmより大きな粒子においては、TEM観察や電子線回折分析等により結晶子サイズや結晶性を分析することができる。
【0022】
本発明に係る蛍光体の母体材料は、一般式AGa24(但し、AはCa、Sr又はBa)で表されるものであるが、用途に応じて選択することができる。画像表示用としては、高い輝度が得やすいことから、SrGa24が好ましい。また、付活剤としては、例えばEu、Ce等を用いることができるが、緑色蛍光体としてはEuとSrGa24が組み合わせて用いられる。やはり高い輝度が得やすいことから、Euが好ましい。CeやEuはAの原子の一部を置換して添加される。その濃度は、Aの原子数に対して例えば0.1〜15%の範囲から選択することができるが、高い輝度が得やすいことから0.5〜7%の範囲で選択することが好ましい。
【0023】
上記本発明に係る蛍光体は、次の(a)〜(c)の工程を経ることによって製造することができる。(a)の工程は、硫黄成分を除く母体材料の構成成分と付活剤の構成成分を所定の組成比(前記蛍光体における組成比)で含む原料粒子を作製する工程である。(b)の工程は、前記原料粒子を熱プラズマで加熱し冷却することで、非晶質の前駆体粒子を作製する工程である。(c)の工程は、前記前駆体粒子を硫化雰囲気で焼成し、結晶子サイズを粒子サイズの60%以上とする工程である。
【0024】
まず、(a)の工程では、蛍光体を構成するA成分とGa2成分と付活剤成分が、作製する蛍光体における組成比となるように、各成分単体又は各成分を含む化合物を原料として、各原料の重量(グラム)を秤量して混合し、焼成する。
【0025】
例えば、SrGa24:Euを作製する場合、炭酸ストロンチウム(SrCO3)と、酸化ガリウム(Ga23)と、塩化ユーロピウム(EuCl3)とを原料として用いることができる。Euの配合量をSrのモル濃度に対して3原子%(1モルのSrに対してEuを3/100原子配合)とした場合、これらの原料の粉末を、SrとGaとEuのモル組成比が、0.97:2:0.03となるように秤量して調合し、焼成する。
【0026】
焼成は、Sr、Ga、Euが均一に拡散された粒子が作製されれば良く、大気雰囲気中で、温度900〜1200℃で0.5〜5時間程度行われる。原料粒子の粒子サイズは、1〜30μmであることが好ましい。
【0027】
次に、(b)の工程では、原料粒子を高周波熱プラズマ装置で熱プラズマ処理し、前駆体粒子を作製する。この前駆体粒子は、原料粒子を、プラズマトーチに生成した熱プラズマ中に投入して液滴化し、チャンバー内でこの液滴化した状態から急冷することでナノレベルの粒子として得ることができる。プラズマは、プラズマトーチに高周波を印加することで生成する。使用する高周波の周波数は、0.1〜5MHz程度である。トーチ内の圧力は、大気圧以下の状態に保持されれば良く、例えば660Pa〜100000Paとすることができる。プラズマを生成するためのガスとしては、アルゴン、窒素、水素、酸素又はそれらの混合ガス等が挙げられる。十分な量のキャリアガスと共に原料粒子を供給することで、液滴化した状態から急冷することができる。キャリアガスの供給量としては、チャンバー内の平均流速が0.1〜20m/sec程度となるように設定することが好ましい。キャリアガスとしても、アルゴン、窒素、水素、酸素又はそれらの混合ガス等を用いることができる。前駆体粒子は、チャンバーに接続された回収フィルターと真空ポンプとで回収する。高周波熱プラズマ装置に供給するガスの流量及びパワーを調整することで、粒子サイズが8〜50nmの前駆体粒子を得ることができる。前駆体粒子としては、粒子サイズが50nm以下のものが好ましく、より好ましくは30nm以下のものである。
【0028】
(c)の工程では、上記の前駆体粒子を硫化雰囲気下で焼成することで、硫化し結晶化することができる。そして、これにより、粒子径が1000nm以下で結晶性の高い蛍光体を得ることができる。具体的には、前記前駆体粒子を石英製ルツボや石英製トレーに充填し、硫化水素ガスをフローしながら前駆体粒子の結晶化温度以上の温度に加熱することで、蛍光体を作製することができる。結晶化温度は前駆体粒子の結晶化が始まる温度で、これらは前駆体の種類で異なる。一般的な焼成温度は530〜1000℃で、590〜900℃が好ましい。
【0029】
SrとGaとEuのモル組成比が0.97:2:0.03となるように秤量して調合し、焼成した原料粒子を熱プラズマ処理した前駆体粒子からSrGa24:Eu蛍光体を作製する場合を例にして説明する。この場合の(c)の工程での焼成は、例えば、アルゴンや窒素で希釈された硫化水素ガス雰囲気で590℃で10分間焼成すると、粒子サイズ約50nmで結晶子サイズも約50nmであるSrGa24:Eu蛍光体粒子が得られる(実施例9参照)。また、同様に、900℃で40分間焼成することで、粒子サイズ約1000nmで結晶子サイズも約1000nmであるSrGa24:Eu蛍光体粒子を得ることができる(実施例8参照)。このように、焼成温度と時間を変えることで、蛍光体粒子の粒子サイズと結晶子サイズを制御することができ、それぞれの用途に必要な粒子サイズから適宜最適な焼成条件を選択することができる。
【0030】
(c)の工程での温度プロファイルは、上記一段階温度プロファイルとするよりも、450〜1000℃程度の温度範囲の二段階温度プロファイルとすることが好ましい。この二段階温度プロファイルにおける一段目の温度は、酸化物の前駆体粒子を硫化物に変化させるための温度で、前駆体粒子の硫化温度以上で酸化物が結晶化する温度未満の温度である。硫化温度は硫化雰囲気中で前駆体粒子の硫化が始まる温度で、前駆体の種類で異なる。また、保持時間は、前駆体の量や装置構成により異なるが、数分から数時間の間一定の時間で保持する。二段階目の温度は、前駆体粒子を結晶化させるための温度で、結晶化温度以上の温度である。処理温度や保持時間は、必要な蛍光体の種類や必要な粒子のサイズで異なり、数分の保持の場合もあれば、数時間保持する場合もある。硫化雰囲気中での処理温度を二段階に昇温する理由を説明する。
【0031】
1μm以下の所望のサイズの硫化物蛍光体を形成するためには、低温で硫化と結晶化の処理を完了する必要がある。前駆体粒子の硫化反応を詳細に検討した結果、非晶質性と結晶性の前駆体粒子を比較した場合、非晶質性の前駆体粒子はより低温で硫化が進行することが分かった。特に処理すべき前駆体粒子の量が多くなると、連続的に昇温する処理条件下では処理すべき前駆体粒子の全量を所定の温度範囲で硫化しにくくなる。その結果、前駆体が完全に硫化される前に温度が上昇してしまい、酸化物の状態で結晶化する前駆体の量が増える。酸化物の状態で結晶化してしまうと、前駆体粒子は低温では硫化することが困難となり、硫化のために高温で処理すると、粒子サイズが大きくなってしまうという問題が発生する。つまり、結晶化温度に至る前に、前駆体粒子を完全に硫化するような二段階の温度プロファイルを設定することで、(c)の工程で一度に多量の前駆体粒子を処理しても、所望の粒子サイズに制御された均質で結晶性の高い硫化物蛍光体を容易に形成することができる。
【0032】
例えば、SrとGaとEuのモル組成比が0.97:2:0.03となるように秤量して調合し、焼成した原料粒子を熱プラズマ処理した前駆体粒子からSrGa24:Eu蛍光体を作製する場合を例にして説明する。この場合、一段目の温度を450〜580℃として硫化を進行させる。この温度範囲では、前駆体粒子は50nm以下に保持される。保持時間は、処理する前駆体の量で異なり、適宜最適な時間を設定することができる。25gの前駆体の場合、550℃で約80分で完全に硫化が完了し(例えば実施例14参照)、50gの前駆体の場合、550℃で約120分で完全に硫化が完了する(例えば実施例15参照)。
【0033】
次いで、二段目の温度として590℃以上に上昇させると結晶化が進行する。処理温度と処理時間は必要な粒子サイズにより異なる。590℃で保持時間10分の条件の場合、粒子サイズ及び結晶子サイズ共に約50nmの結晶化した蛍光体粒子が得られる(実施例14、15参照)。また、900℃、40分間焼成することで、粒子サイズ約1000nmで結晶子サイズも約1000nmであるSrGa24:Eu蛍光体粒子を得ることができる(実施例22参照)。このように、二段目の焼成温度と時間を変えることで、蛍光体粒子の粒子サイズと結晶子サイズを制御することができ、それぞれの用途に必要な粒子サイズから適宜最適な焼成条件を選択することができる。
【0034】
(c)の工程での温度プロファイルを一段階温度プロファイルとすることができるのは、(c)の工程で一度に処理すべき前駆体粒子の量が0.3g以下の場合である。一度に処理すべき前駆体粒子の量が0.3gを超えると、酸化物の状態で結晶化してしまう前駆体の量が増え、低温では硫化ができずに必要な輝度が得られなくなる。また、高温で硫化すると粒子サイズが大きくなってしまい、粒子サイズが1000nm以下の蛍光体粒子が得られなくなる。一方、二段階温度プロファイルとすると、(c)の工程で一度に処理すべき前駆体粒子の量に拘わらず、所望の粒子サイズに制御された均質な硫化物蛍光体を容易に形成することができる。
【0035】
次に、本発明に係る画像表示装置の一例について、図1を用いて説明する。
【0036】
図1中、1は電子源基板、2はX方向配線、3はY方向配線、4は電子放出素子、5はX方向配線2とY方向配線3缶を絶縁する層間絶縁層である。電子放出素子4としては、表面伝導型、スピント型、MIM型、カーボンナノチューブ型等の電子放出素子を用いることができる。6は電子源基板1を固定した外側基板で、電子源基板1と外側基板6でリアプレート7を構成している。8はガラス等で構成された透明基板9の内面に、蛍光体10と、アノード電極としてのメタルバック11等とが形成された蛍光体基板(フェースプレート)である。11は支持枠であり、この支持枠11にリアプレート6とフェースプレート7がフリットガラス等を介して取り付けられ、内部を密閉している。なお、外側基板6は主に電子源基板1の強度を補強する目的で設けられるため、電子源基板1自体で十分な強度を持つ場合には、別体の外側基板6は不要で、電子源基板1単独でリアプレート7を構成する。また、フェースプレート8とリアプレート7との間に、スペーサーとよばれる不図示の支持体を設置することにより、大気圧に対して十分な強度を持たせた構成とすることもできる。
【0037】
m本のX方向配線2は、端子Dx1,Dx2,…Dxmと接続されている。n本のY方向配線3は、端子Dy1,Dy2,…Dynと接続されている(m,nは、共に正の整数)。これらm本のX方向配線2とn本のY方向配線3との間には、層間絶縁層5が設けられており、両者を電気的に分離している。
【0038】
高圧端子はメタルバック11に接続され、例えば10kVの直流電圧が供給される。これは電子放出素子から放出される電子に蛍光体10を励起するのに十分なエネルギーを付与するための加速電圧である。
【0039】
図2(a)に示されるように、透明基板9の上にはブラックマトリクス21が形成されている。ブラックマトリクス21の間に蛍光体10が付設され、蛍光体10の上にメタルバック11が形成されている。ブラックマトリクス21で囲まれた領域に設けられた蛍光体10が一画素を構成しており、この画素が複数形成されている。この複数の画素は、図1の電子放出素子4が選択的に駆動され、選択的に電子線の照射を受けることで、選択的に発光されて画像を表示するものとなっている。蛍光体10は、前記のように、各粒子22が結晶子23を有している。蛍光体10は、粒子22が結晶子23を有することで、高い輝度が得られるものとなっている。結晶子サイズは、高い輝度を得る上で、粒子サイズの60%以上であることが必要で、粒子22全体が結晶子23になっていることが好ましい。
【0040】
本発明に係る画像表示装置は、選択的に発光可能に設けられた蛍光体10によって複数の画素を構成し、該画素を選択的に発光させることで画像を表示する画像表示装置を製造するに際し、本発明の蛍光体10で画素を構成ることで製造することができる。蛍光体10の透明基板9上への付設は、ディスペンサーによる吐出、印刷又はインクジェット法等によって、蛍光体10と樹脂との混合物を透明基板9上へ配置し、その後、加熱処理により樹脂を消失させることにより行うことができる。用いられる樹脂の具体的な例としては、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、セルロース系ポリマー、ポリエチレン、シリコンポリマー、ポリスチレン、アクリルポリマー等を挙げることができる。セルロース系ポリマーとしては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロースである。シリコンポリマーとしては、例えば、ポリメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンである。
【0041】
なお、図示した例は電子放出素子4を用いたものとなっているが、蛍光体10で構成された画素を選択的に発光させることで画像を表示する画像表示装置であれば、PDPであってもよい。
【実施例】
【0042】
〔実施例1〕
本発明に係るSrGa24:Eu蛍光体を本発明の製造方法で作製した。原材料として、炭酸ストロンチウム粉末(SrCO3)、酸化ガリウム粉末(Ga23)及び塩化ユーロピウム粉末(EuCl3)を用いて、これらの粉末を乳鉢を用いて混合した。この時、硫黄成分を除く母体材料の構成成分と付活剤の構成成分が、作製する蛍光体における組成比となるように、それぞれの粉末を重量(グラム)で以下の比率なるように秤量して用いた。つまり、硫化前の母体の原材料がSrGa24となるように秤量して用いた。Eu濃度は、Srのモル濃度に対して3原子%とした。
【0043】
SrCO3:Ga23:EuCl3≒4.23:5.54:0.23
【0044】
次に、上記混合粉末をアルミナ製坩堝に入れ、大気雰囲気中にセットし、2時間、1050℃の雰囲気で焼成し、原料粒子を作製した。この原料粒子の粒度分布を測定したところ、D50は7.8μmであった。
【0045】
次に、作製した原料粒子を、高周波熱プラズマ法でナノサイズに加工し、前駆体を作製した。高周波熱プラズマ装置には、酸素ガスを80L/min(Lはリットル)の流量で導入した。プラズマを生成するために、高周波発振用コイルに約4MHz、80kVAのパワーを投入し、熱プラズマを発生させた。このように調整した熱プラズマ装置内に、キャリアガスのアルゴンとともに上記の原料粒子を投入し、溶融・冷却し作製した前駆体微粒子を捕集した。得られた粒子をSEMで観察した結果、およそ20nmの粒子サイズであることが分かった。また、XRDで結晶構造を分析した結果、非晶質であることが分かった。
【0046】
次に、作製した前駆体粒子の焼成を行った。焼成雰囲気はアルゴンで希釈した3%の硫化水素ガス雰囲気で、0.1gの前駆体粒子について、740℃、13の焼成を行い、蛍光体を作製した。このようにして作製した蛍光体をSEMにより観察した結果、粒子サイズは50nmであることが分かり、粒度分布測定において、D50は50nmであることが分かった。また、リガク製XRD回折装置において、結晶構造を分析した結果、SrGa24結晶の単一相であることが確認できた。更に、得られた回折ピークからSrGa24の主ピークを選択し、その半値幅からSherrerの式を使って結晶子サイズを見積もると、50nmであることが分かった。
【0047】
上記の蛍光体の発光特性を評価した。0.1gの粉末を真空容器内にセットし、パルス状の電子線を照射した。パルス幅は20μsec、周波数は100Hz、照射電流密度は20mA/cm2とした。放射輝度計で輝度を測定した結果、緑の発光で、255cd/m2の輝度が得られた。画像表示装置に求められる輝度を緑の発光で210cd/m2と設定すると、本実施例の蛍光体でこれを実現できたと言える。作製条件と評価した結果を表1に示す。
【0048】
〔実施例2〕
実施例1と同一条件で前駆体粒子を作製した。次に、作製した前駆体粒子の焼成を、焼成雰囲気と焼成温度は実施例1同じで、焼成時間のみを長くして焼成を行い、蛍光体を作製した。このようにして作製した蛍光体を実施例1と同様の方法で評価した。作製条件と評価した結果を表1に示す。
【0049】
実施例1の蛍光体に比べ、実施例2で作製した蛍光体は、粒子サイズは同じだったが、結晶子サイズが大きくなっており、緑の発光での輝度も大きくなっていた。このことから、蛍光体粒子中の結晶子サイズを大きくすることで、同じ色度の発光で輝度大きくできると言える。本実施例の蛍光体で、画像表示装置に求められる輝度を実現できたと言える。
【0050】
〔比較例1〕
実施例1と同一条件で前駆体粒子を作製した。次に、作製した前駆体粒子の焼成を、焼成雰囲気と焼成温度は実施例1同じで、焼成時間のみを短くして焼成を行い、蛍光体を作製した。このようにして作製した蛍光体を実施例1と同様の方法で評価した。作製条件と評価した結果を表1に示す。
【0051】
実施例1の蛍光体に比べ、比較例1で作製した蛍光体は、粒子サイズは同じであるが、結晶子サイズが小さくなっており、輝度も小さくなっていた。このことから、蛍光体粒子中の結晶子サイズを小さすぎると、輝度が小さくなると言える。本比較例の蛍光体では先に設定した、画像表示装置に求められる輝度を実現できなかった。
【0052】
以上説明した実施例1、2と比較例1の結果から、蛍光体の粒子サイズが300nmの時、良好な輝度(210cd/m2以上)を達成するためには、蛍光体の粒子サイズに対して、結晶子サイズを60%以上とすることが必要だと言える。
【0053】
〔実施例3、4と比較例2〕
実施例1と同一条件で前駆体粒子を作製した。次に、作製した前駆体粒子の焼成を、焼成雰囲気は実施例1同じで、焼成温度を780℃とし、焼成時間はそれぞれ表1記載の時間にして焼成を行い、蛍光体を作製した。このようにして作製した蛍光体を実施例1と同様の方法で評価した。作製条件と評価した結果を表1に示す。
【0054】
実施例3、4と比較例2で作製した蛍光体粒子の粒子サイズは500nmで、実施例1の時に比べ大きくなっていた。蛍光体の結晶子サイズは、焼成時間が長いほど大きくなった。結晶子サイズが大きい程、同じ色度の発光で輝度が大きくなっていた。このことから、蛍光体粒子中の結晶子サイズを大きくすることで、輝度大きくできると言える。実施例3、4と比較例2の結果から、蛍光体の粒子サイズが500nmの時、良好な輝度(210cd/m2以上)を達成するためには、蛍光体の粒子サイズに対して、結晶子サイズを60%以上とすることが必要だと言える。
【0055】
〔実施例5、6と比較例3〕
実施例1と同一条件で前駆体粒子を作製した。次に、作製した前駆体粒子の焼成を、焼成雰囲気は実施例1同じで、焼成温度を830℃とし焼成時間のみをそれぞれ表1記載の時間にし焼成を行い、蛍光体粒子を作製した。このようにして作製した蛍光体粒子を実施例1と同様の方法で評価した。作製条件と評価した結果を表1に示す。
【0056】
実施例5、6と比較例3で作製した蛍光体の粒子サイズは800nmで、実施例1の時に比べ大きくなっていた。蛍光体の結晶子サイズは、焼成時間が長いほど大きくなった。結晶子サイズが大きい程、同じ色度の発光で輝度も大きくなっていた。このことから、蛍光体粒子中の結晶子サイズを大きくすることで、輝度大きくできると言える。実施例5、6と比較例3の結果から、蛍光体の粒子サイズが800nmの時、良好な輝度(210cd/m2以上)を達成するためには、蛍光体の粒子サイズに対して、結晶子サイズを60%以上とすることが必要だと言える。
【0057】
〔実施例7、8と比較例4〕
実施例1と同一条件で前駆体粒子を作製した。次に、作製した前駆体粒子の焼成を、焼成雰囲気は実施例1同じで、焼成温度を900℃とし、焼成時間はそれぞれ表1記載の時間にして焼成を行い、蛍光体を作製した。このようにして作製した蛍光体を実施例1と同様の方法で評価した。作製条件と評価した結果を表1に示す。
【0058】
実施例7、8と比較例4で作製した蛍光体の粒子サイズは1000nmで、実施例1の時に比べ大きくなっていた。蛍光体の結晶子サイズは、焼成時間が長いほど大きくなった。結晶子サイズが大きい程、同じ色度の発光で輝度も大きくなっていた。このことから、蛍光体粒子中の結晶子サイズを大きくすることで、輝度大きくできると言える。実施例5、6と比較例3の結果から、蛍光体の粒子サイズが1000nmの時、良好な輝度(210cd/m2以上)を達成するためには、蛍光体の粒子サイズに対して、結晶子サイズを60%以上とすることが必要だと言える。
【0059】
以上説明した実施例1〜8と比較例1〜4の結果から、蛍光体の粒子サイズが300nm〜1000nmの時、良好な輝度(210cd/m2以上)を達成するためには、蛍光体の粒子サイズに対して、結晶子サイズを60%以上とすることが必要だと言える。
【0060】
【表1】

【0061】
〔比較例5〕
先行技術2に記載の製造方法で前駆体粒子を作製した以外は、実施例8と同じ条件で、蛍光体粒子を作製した。以下、先行技術2の記載に基づく製造方法について記載する。
【0062】
原料として、Ga(NO33とSr(NO32とEu(NO33を混合した。この時、得られる母体の原材料がSrGa24となるように秤量して用いた。Eu濃度は、Srのモル濃度に対して3原子%とした。この原料を、大気の800℃に加熱された炉に噴霧した。噴霧により作製された前駆体粒子を捕集し、実施例9の前駆体粒子と同じ粒径のものを分級した。
【0063】
次に、作製した前駆体粒子の焼成を、実施例8同じ条件で行い、蛍光体を作製した。このようにして作製した蛍光体を実施例1と同様の方法で評価した。作製条件と評価した結果を表2に示す。比較例5の結果から、先行技術2に記載の製造方法で作製した蛍光体では、良好な輝度を得ることができないと言える。
【0064】
〔比較例6、7〕
比較例5と同じ条件で作製した前駆体粒子を用いて、表2に示すように焼成時間を長くした以外は、比較例5と同じ条件で行い、蛍光体を作製した。このようにして作製した蛍光体を実施例1と同様の方法で評価した。作製条件と評価した結果を表2に示す。
【0065】
比較例6、7の結果から、先行技術2に記載の製造方法で作製した蛍光体では、結晶子サイズを粒子サイズの35%より大きくすることができず、良好な輝度を得ることができないと言える。焼成温度を高くすると、粒子サイズが大きくなってしまうことから、1000nm以下の粒子サイズの蛍光体粒子を作製することができなくなる。従って、比較例5、6、7の結果から、先行技術2記載の製造法では、製造条件を変えても、1000nm以下の粒子サイズで、良好な輝度を得ることはできないと言える。本発明者らは、前駆体粒子の製造方法を詳細に検討した。その結果、前駆体粒子を、熱プラズマ法で作製した非晶質前駆体を用いることで、結晶子サイズを大きくすることができ、良好な輝度を得ることができることを発明したものである。
【0066】
【表2】

【0067】
〔実施例9〕
実施例1と同一条件で前駆体粒子を作製した。次に、作製した前駆体粒子の焼成を、焼成雰囲気は実施例1同じで、焼成温度を590℃とし、焼成時間を10分間として、蛍光体を作製した。このようにして作製した蛍光体を実施例1と同様の方法で評価した。作製条件と評価した結果を表3に示す。
【0068】
〔比較例8〕
比較例5と同一条件で前駆体粒子を作製した。次に、作製した前駆体粒子の焼成を、焼成雰囲気は実施例1同じで、焼成温度を590℃とし、焼成時間を10分間として、蛍光体を作製した。このようにして作製した蛍光体を実施例1と同様の方法で評価した。作製条件と評価した結果を表3に示す。
【0069】
〔比較例9〕
先行技術1に記載の製造方法で蛍光体を作製した。それ以外は、実施例9と同じ条件で、蛍光体を作製した。原料として、SrS、Ga23、EuSの粉末を乳鉢を用いて混合した。この時、母体の原材料がSrGa24となるように秤量して用いた。Eu濃度は、Srのモル濃度に対して3原子%とした。この粉末をアルミナ製坩堝に入れ、大気雰囲気中にセットし、2時間、1050℃の雰囲気で焼成を行った。得られた原料粒子の粒度分布を測定したところ、D50で7.8μmであった。
【0070】
次に、作製した原料粒子を、高周波熱プラズマ法でナノサイズに加工して前駆体を形成した。具体的には、高周波熱プラズマ装置に、アルゴンを80L/minの流量で導入した。プラズマを生成するために、高周波発振用コイルに約4MHz、80kVAのパワーを投入し熱プラズマを発生させた。上記のように調整した熱プラズマ装置内に、キャリアガスのアルゴンと共に上記の原料粒子を投入し、溶融・冷却した。このようにして形成した粒子を捕集した。
【0071】
捕集した粒子をSEMで観察した結果、およそ50nmの粒子サイズであることが分かった。また、XRDで結晶構造を分析した結果、非晶質であることが分かった。このようにして作製した蛍光体を実施例1と同様の方法で評価した。作製条件と評価した結果を表3に示す。
【0072】
【表3】

【0073】
以上説明した実施例9と比較例8、9の結果から、先行技術に記載の製造方法で作製した蛍光体に比べ、本発明の製造法により作製した蛍光体は、輝度が向上できると言える。
【0074】
〔実施例10〕
本発明に係るCaGa24:Eu蛍光体を作製した。実施例9において、原材料として、炭酸カルシウム粉末(CaCO3)、酸化ガリウム粉末(Ga23)及び塩化ユーロピウム粉末(EuCl3)を用いて、これらの粉末を乳鉢を用いて混合した。この時、硫黄成分を除く母体材料の構成成分と付活剤の構成成分が、作製する蛍光体における組成比となるように、それぞれの粉末を重量(グラム)で以下の比率なるように秤量して用いた。つまり、硫化前の母体の原材料がCaGa24となるように秤量して用いた。Eu濃度は、Caのモル濃度に対して3原子%とした。これ以外は、実施例9と同じ条件で蛍光体を作製した。
【0075】
CaCO3:Ga23:EuCl3≒2.87:5.54:0.23
【0076】
このようにして作製した蛍光体を実施例1と同様の方法で評価した。作製条件と評価した結果を表3に示す。
【0077】
〔比較例10〕
比較例5において、原料として、Ga(NO33とCa(NO32とEu(NO33を混合した。この時、硫化前の母体の原材料がCaGa24となるように秤量して用いた。それ以外は、比較例5と同じ条件で蛍光体を作製した。このようにして作製した蛍光体を実施例1と同様の方法で評価した。作製条件と評価した結果を表3に示す。
【0078】
〔比較例11〕
比較例9において、原料として、CaS、Ga23、EuSの粉末を乳鉢を用いて混合した。この時、母体の原材料がCaGa24となるように秤量して用いた。それ以外は、比較例9と同じ条件で蛍光体を作製した。このようにして作製した蛍光体を実施例1と同様の方法で評価した。作製条件と評価した結果を表4に示す。
【0079】
【表4】

【0080】
以上説明した実施例10と比較例10、11の結果から、先行技術に記載の製造方法で作製した蛍光体に比べ、本発明の製造法により作製した蛍光体は、輝度が向上できると言える。
【0081】
〔実施例11〕
本発明のBaGa2S4:Eu蛍光体を作製した。実施例9において、原材料として、炭酸バリウム粉末(BaCO3)、酸化ガリウム粉末(Ga23)及び、塩化ユーロピウム粉末(EuCl3)を用いて、これらの粉末を乳鉢を用いて混合した。この時、硫黄成分を除く母体材料の構成成分と付活剤の構成成分が、作製する蛍光体における組成比となるように、それぞれの粉末を重量(グラム)で以下の比率なるように秤量して用いた。つまり、硫化前の母体の原材料がBaGa24となるように秤量して用いた。Eu濃度は、Caのモル濃度に対して3原子%とした。これ以外は、実施例9と同じ条件で蛍光体粒子を作製した。
【0082】
BaCO3:Ga23:EuCl3≒2.87:5.54:0.23
【0083】
このようにして作製した蛍光体粒子を実施例1と同様の方法で評価した。作製条件と評価した結果を表3に示す。
【0084】
〔比較例12〕
比較例5において、原料として、Ga(NO33とBa(NO32とEu(NO33を混合した。この時、硫化前の母体の原材料がBaGa24となるように秤量して用いた。それ以外は、比較例5と同じ条件で蛍光体を作製した。このようにして作製した蛍光体を実施例1と同様の方法で評価した。作製条件と評価した結果を表4に示す。
【0085】
〔比較例13〕
比較例9において、原料として、BaS、Ga23、EuSの粉末を乳鉢を用いて混合した。この時、母体の原材料がBaGa24となるように秤量して用いた。それ以外は、比較例9と同じ条件で蛍光体を作製した。このようにして作製した蛍光体を実施例1と同様の方法で評価した。作製条件と評価した結果を表5に示す。
【0086】
【表5】

【0087】
以上説明した実施例11と比較例12、13の結果から、先行技術に記載の製造方法で作製した蛍光体に比べ、本発明の製造法により作製した蛍光体は、輝度が向上できると言える。
【0088】
〔実施例12〕
実施例10と同じ条件で前駆体粒子を作製した。作製した前駆体粒子を、焼成温度を900℃、焼成時間40分で焼成を行い、蛍光体を作製した。このようにして作製した蛍光体を実施例1と同様の方法で評価した。作製条件と評価した結果を表6に示す。
【0089】
〔比較例14、15、16〕
比較例10と同じ条件で前駆体粒子を作製した。作製した前駆体粒子を、焼成温度を900℃、焼成時間をそれぞれ40分、50分、60分で焼成を行い、蛍光体を作製した。このようにして作製した蛍光体を実施例1と同様の方法で評価した。作製条件と評価した結果を表6に示す。
【0090】
【表6】

【0091】
先行技術1の製造方法では50nmを超える粒子サイズの蛍光体を作製することはできなかった。従って、実施例12と比較例14、15、16の結果から、先行技術に記載の製造方法で作製した蛍光体に比べ、本発明の製造法により作製したCaGa24蛍光体は、輝度が向上できると言える。
【0092】
〔実施例13〕
実施例11と同じ条件で前駆体粒子を作製した。作製した前駆体粒子を、焼成温度を900℃、焼成時間40分で焼成を行い、蛍光体を作製した。このようにして作製した蛍光体を実施例1と同様の方法で評価した。作製条件と評価した結果を表7に示す。
【0093】
〔比較例17、18、19〕
比較例12と同じ条件で前駆体粒子を作製した。作製した前駆体粒子を、焼成温度を900℃、焼成時間をそれぞれ40分、50分、60分で焼成を行い、蛍光体を作製した。このようにして作製した蛍光体を実施例1と同様の方法で評価した。作製条件と評価した結果を表7に示す。
【0094】
【表7】

【0095】
先行技術1の製造方法では50nm以上の粒子サイズの蛍光体を作製することは、できなかった。従って、実施例12と比較例14、15、16の結果から、先行技術に記載の製造方法で作製した蛍光体に比べ、本発明の製造法により作製したBaGa24蛍光体は、輝度が向上できると言える。
【0096】
〔比較例20、21〕
粒子サイズの大きなSrGa24:Eu蛍光体を、二種類の方法で作製した。
【0097】
まず、実施例1と同一条件で前駆体粒子を作製した。次に、作製した前駆体粒子の焼成を、焼成雰囲気は実施例1同じで、焼成温度を1000℃とし、焼成時間を2時間として、蛍光体粒子を作製した。このようにして作製した蛍光体粒子を実施例1と同様の方法で評価した。粒子サイズは3000nm(3μm)、結晶子サイズは3000nm、輝度は394cd/m2であった。
【0098】
一方、硫化ストロンチウム、オキシ酸化ガリウム及びシュウ酸ユーロピウムを、硫黄成分を除く母体材料の構成成分と付活剤の構成成分が、作製する蛍光体における組成比となるように、それぞれの粉末秤量して混合した。Eu濃度は、Srのモル濃度に対して3原子%とした。これらを混合した粉末を、硫化水素雰囲気で1000℃、2時間焼成し蛍光体を作製した。このようにして作製した蛍光体粒子を実施例1と同様の方法で評価した。粒子サイズは3000nm(3μm)、結晶子サイズは3000nm、輝度は394cd/m2であった。
【0099】
比較例20及び21の結果から、粒子サイズが大きくなると、特に熱プラズマ処理による前駆体粒子を経て製作した蛍光体も、この前駆体粒子を経ずに硫化水素雰囲気下で焼成した蛍光体も、結晶子サイズは同等なものが得られる。従って、得られる輝度にほとんど差は認められなくなるといえる。
【0100】
〔実施例14〕
実施例1で作製した蛍光体を用いて、先に説明した画像表示装置を作製した。高圧端子への印加電圧は、7kVとした。リアプレートには、カソード電極とゲート電極に、それぞれ信号入力端子Dx1〜Dmx、Dy1〜Dmyが接続されており、それぞれの端子には、駆動ドライバからの信号を入力した。パルス幅は20μsec、周波数は100Hz、照射電流密度は20mA/cm2とした。
【0101】
本発明の蛍光体を用いた装置では、緑の発光で210cd/m2となり画像表示装置に求められる輝度を実現することができた。本発明で作製した蛍光体は、画像表示装置に求められる輝度を実現した微粒子SrGa24蛍光体であると言える。従って、本発明で作製した蛍光体を用いることにより、高精細で画像表示装置に求められる輝度を実現できる蛍光体膜を形成することができると言える。また、実施例2〜8で作製した蛍光体は、実施例1の蛍光体よりも輝度が高いことから、これらの蛍光体を用いれば、210cd/m2以上の輝度を実現することができると言える。
【0102】
〔実施例15〜23〕
実施例1と同一条件で前駆体粒子を作製した。次に、作製した前駆体粒子の焼成を、表8に示される処理量と、やはり表8に示される温度と時間の二段階温度プロファイルで行って、蛍光体を作製した。焼成雰囲気は実施例1と同様とした。このようにして作製した蛍光体を実施例1と同様の方法で評価した。蛍光体は、焼成した全量から0.1gを取り出して評価を行った。作製条件と評価した結果を表8に示す。
【0103】
〔比較例20〜25〕
前駆体粒子の焼成を、表8に示される処理量と、表8に示される温度と時間の一段階温度プロファイルで行った他は実施例15〜23と同様にして蛍光体を作成した。作製した蛍光体を実施例1と同様の方法で評価した。作製条件と評価した結果を表8に示す。なお、結晶子サイズはSrGa24の単一層ではなかったため確定することができなかった。
【0104】
【表8】

【0105】
〔実施例24、25〕
実施例10と同一条件で前駆体粒子を作製した。次に、作製した前駆体粒子の焼成を、表9示される処理量と、やはり表9に示される温度と時間の二段階温度プロファイルで行って、蛍光体を作製した。焼成雰囲気は実施例1と同様とした。このようにして作製した蛍光体を実施例1と同様の方法で評価した。作製条件と評価した結果を表9に示す。
【0106】
〔比較例26〕
前駆体粒子の焼成を、表9に示される処理量と、表9に示される温度と時間の一段階温度プロファイルで行った他は実施例24、25と同様にして蛍光体を作成した。作製した蛍光体を実施例1と同様の方法で評価した。作製条件と評価した結果を表9に示す。なお、結晶子サイズはCaGa24の単一層ではなかったため確定することができなかった。
【0107】
【表9】

【0108】
〔実施例26、27〕
実施例11と同一条件で前駆体粒子を作製した。次に、作製した前駆体粒子の焼成を、表10示される処理量と、やはり表10に示される温度と時間の二段階温度プロファイルで行って、蛍光体を作製した。焼成雰囲気は実施例1と同様とした。このようにして作製した蛍光体を実施例1と同様の方法で評価した。作製条件と評価した結果を表10に示す。
【0109】
〔比較例27〕
前駆体粒子の焼成を、表10に示される処理量と、表10に示される温度と時間の一段階温度プロファイルで行った他は実施例26、27と同様にして蛍光体を作製した。作製した蛍光体を実施例1と同様の方法で評価した。作製条件と評価した結果を表10に示す。なお、結晶子サイズはBaGa24の単一層ではなかったため確定することができなかった。
【0110】
【表10】

【符号の説明】
【0111】
1:電子源基板、2:X方向配線、3:Y方向配線、4:電子放出素子、5:層間絶縁層、6:外面基板、7:リアプレート、8:蛍光体基板(フェースプレート)、9:透明基板、10:蛍光体、11メタルバック、21:ブラックマトリクス、22:粒子、23:結晶子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式で表されるチオガレート系硫化物の母体材料と付活剤を含む蛍光体の製造方法において、
AGa24(但し、AはCa、Sr又はBa)
(a)硫黄成分を除く母体材料の構成成分と付活剤の構成成分を前記蛍光体における組成比で含む原料粒子を作製する工程と、
(b)前記原料粒子を熱プラズマで加熱し冷却することで、非晶質の前駆体粒子を作製する工程と、
(c)0.3g以下の前記前駆体粒子を、硫化雰囲気下で、結晶化する温度以上の温度で焼成し、粒子サイズが1000nm以下で、結晶子サイズを粒子サイズの60%以上とする工程
とを有することを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項2】
下記一般式で表されるチオガレート系硫化物の母体材料と付活剤を含む蛍光体の製造方法において、
AGa24(但し、AはCa、Sr又はBa)
(a)硫黄成分を除く母体材料の構成成分と付活剤の構成成分を前記蛍光体における組成比で含む原料粒子を作製する工程と、
(b)前記原料粒子を熱プラズマで加熱し冷却することで、非晶質の前駆体粒子を作製する工程と、
(c)前記前駆体粒子を、硫化雰囲気下で、硫化温度以上で結晶化する温度未満の温度で焼成した後、結晶化温度以上の温度で焼成し、粒子サイズが1000nm以下で、結晶子サイズを粒子サイズの60%以上とする工程
とを有することを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項3】
前記(b)の工程で得られる前駆体粒子の粒子サイズを50nm以下とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項4】
前記(c)の工程における粒子サイズを1000nm以下300nm以上とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項5】
付活剤としてEuを用いることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項6】
選択的に発光可能に設けられた蛍光体によって複数の画素を構成し、該画素を選択的に発光させることで画像を表示する画像表示装置の製造方法において、請求項1乃至5のいずれか一項の製造方法により製造した蛍光体で前記画素を構成することを特徴とする画像表示装置の製造方法。
【請求項7】
粒子サイズが1000nm以下、結晶子サイズが粒子サイズの60%以上で、母体材料が下記一般式で表されるチオガレート系硫化物であることを特徴とする蛍光体。
AGa24(但し、AはCa、Sr又はBa)
【請求項8】
粒子サイズが1000nm以下300nm以上であることを特徴とする請求項7に記載の蛍光体。
【請求項9】
付活剤がEuであることを特徴とする請求項7又は8に記載の蛍光体。
【請求項10】
選択的に発光可能に設けられた蛍光体によって複数の画素を構成し、該画素を選択的に発光させることで画像を表示する画像表示装置において、前記蛍光体が、請求項7乃至9のいずれか一項に記載の蛍光体であることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−36372(P2012−36372A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103445(P2011−103445)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】