説明

蛍光体ナノ粒子複合体及びそれを用いた多色蛍光検出方法

【課題】可視域から赤外域の波長領域の光励起により、可視域から赤外域の波長領域の多色の光を発光し、かつ生体に対する損傷性及び毒性の低い蛍光体ナノ粒子複合体を提供する。また、当該蛍光体ナノ粒子複合体を用いた多色蛍光検出方法を提供する。
【解決手段】赤外光照射により可視域で発光する蛍光体ナノ粒子と可視光照射により可視域又は赤外域で発光する蛍光体ナノ粒子とを組み合わせて形成されたことを特徴とする請求項1に記載の蛍光体ナノ粒子複合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視域から赤外域の波長領域の光励起により、可視域から赤外域の波長領域の多色の光を発光し、かつ生体に対する損傷性及び毒性の低い蛍光体ナノ粒子複合体に関する。また、当該蛍光体ナノ粒子複合体を用いた多色蛍光検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体物質を標識する手段として、分子標識物質をマーカー物質に結合した生体物質標識剤を用いる方法が検討されている。マーカー物質に蛍光材料が用いられる場合には励起光として用いられる波長の短い紫外域の光が細胞にダメージを与えることが問題となっており、ダメージの少ない長波長励起・発光の蛍光体が求められている。
【0003】
一方、特に近年、小動物を対象としたin vivo光イメージングが注目されており、小動物の生体内の細胞を外部より、生体を傷つけることなく(非侵襲で)観察するような光学系装置が各メーカから販売され始めている。これは、生体内の観察したい部位に選択的に集まるような標識をつけた蛍光材料を生体内に注入し、外部より励起光を照射し出てきた発光を外部でモニターする方法である。
【0004】
このように、生体内の蛍光材料を励起し、発光を外部に取り出すためには、励起光及び発光が生体を透過する必要がある。紫外光は、生体の吸収が高く、ほとんど透過することができないので好ましくない。また、1000nm以上の波長では、水の吸収が立ち上がり透過率が低くなり、好ましくない。しかしながら、近赤外線の700〜1000nmは、「生体の窓」及び「分光領域の窓」と呼ばれる生体の透過率が特異的に高い領域であり、この範囲内で励起及び発光を示す蛍光材料が求められている。
【0005】
上記方法で従来使用されてきた有機蛍光色素などのマーカー物質は、励起光照射時の劣化が激しく寿命が短いことが欠点であり、また発光効率が低く、感度も十分ではなかった。
【0006】
そのため、近年、上記マーカー物質として半導体ナノ粒子を用いる方法が注目されている。例えば、極性官能基を有する高分子を半導体ナノ粒子の表面に物理的および/または化学的に吸接合した生体物質標識剤が検討されている(例えば特許文献1参照)。また、有機分子をSi/SiO型半導体ナノ粒子の表面に結合した生体物質標識剤が検討されている(例えば特許文献2参照)。
【0007】
例えば、特許文献1で実質的にその効果も含めて開示されている半導体ナノ粒子は、(CdSe/ZnS型)半導体ナノ粒子であるが、一般的に量子ドットと呼ばれ励起子のボーア半径よりも小さな粒径を持つ場合に、バンドギャップがサイズに依存して変化するという性質、すなわち、同一組成で粒子サイズを変化させることで発光波長が変化するという特徴を持っている。このような量子ドット蛍光材料はサイズにより発光波長を自在に変化させることが可能であるという長所を持つ一方、生体に対する毒性等の短所があった。
【0008】
なお、標識法として、CdSeナノ粒子を用いる方法が提案されている(非特許文献1及び2参照)。しかしながら、この方法は、励起光が青色光もしくは紫外光であることから、分析または検出対象が生細胞や生組織である場合等においては、分析または検出対象に対して損傷を与えてしまうといった問題があった。また、分析または検出対象がDNAやたんぱく質などである場合においても、紫外光により分子に損傷が加えられる可能性があり、塩基配列の決定や活性サイトの決定などを精度良く行うに際しての妨げとなる場合があった。
【0009】
また、長波長側の励起光で発光するものとしては、二光子励起を起こすSiナノ粒子が提案されている(非特許文献3参照)。しかしながら、この方法は二光子吸収により発光するメカニズムであることから、発光効率が悪く、検出精度が低下するといった問題の他に、1nm以下の超微粒子とする必要があることから、加工が煩雑である等の問題があった。
【0010】
上記のように、従来の半導体ナノ粒子を用いた生体物質標識剤には、励起光が紫外領域となるものが多いことから、可視光〜赤外光領域内で励起及び発光を示す蛍光材料が求められている。また、生体に対する損傷性及び毒性の低い材料が求められている。
【0011】
一方、赤外光励起により可視光発光する材料として希土類を含有した蛍光体(所謂「アップコンバージョン蛍光体」)が知られている(例えば特許文献3〜6参照)。このような蛍光体微粒子を、例えば蛍光プローブ等に用いると、励起光として波長の長い光を使用することができるため、紫外光等のように被分析物に悪影響を及ぼさず、安定した発光を維持することができる。しかしながら、当該蛍光体微粒子は、希土類のドープ量を選択することで任意のアップコンバージョン発光を得ることができるが、異なる発光色を得るにはドープする希土類の材料を選択しなければならないこと、発光色が限定され、選択が困難であるという問題がある。
【特許文献1】特開2003−329686号公報
【特許文献2】特開2005−172429号公報
【特許文献3】特開2004−107612号公報
【特許文献4】特開2004−292599号公報
【特許文献5】特開2006−117864号公報
【特許文献6】特開2006−249253号公報
【非特許文献1】”Semiconductor Nanocrystals as Fluorescent Biological Labels” Marcel Bruchez Jr,et al.,p2013−2016,SCIENCE Vol. 281,25 September 1998”
【非特許文献2】”Quantum Dot Bioconjugates for Ultrasensitive Nonisotopic Detection” Warren C. W. Chan and Shuming Nie, p2016−2018,SCIENCE Vol.281,25 September 1998
【非特許文献3】”Second harmonic generation in microcrystallite films of ultra small Si nanoparticles” APPLIED PHYSICS LETTERS VOLUME 77,No.25 18 DECEMBER 2000”
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、可視域から赤外域の波長領域の光励起により、可視域から赤外域の波長領域の多色の光を発光し、かつ生体に対する損傷性及び毒性の低い蛍光体ナノ粒子複合体を提供することである。また、当該蛍光体ナノ粒子複合体を用いた多色蛍光検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る上記課題は、下記の手段により解決される。
1.赤外光照射により可視域で発光する蛍光体ナノ粒子と可視光照射により可視域又は赤外域で発光する蛍光体ナノ粒子とを組み合わせて形成されたことを特徴とする蛍光体ナノ粒子複合体。
2.前記可視光照射により可視域又は赤外域で発光する蛍光体ナノ粒子が、半導体ナノ粒子であることを特徴とする前記1に記載の蛍光体ナノ粒子複合体。
3.前記可視光照射により可視域又は赤外域で発光する蛍光体ナノ粒子が、シリコン(Si)又はゲルマニウム(Ge)の少なくとも一方を含有する半導体ナノ粒子であることを特徴とする前記1又は2に記載の蛍光体ナノ粒子複合体。
4.平均粒径が、1〜100nmであることを特徴とする前記1〜3のいずれか一項に記載の蛍光体ナノ粒子複合体。
5.分散媒中に分散されていることを特徴とする前記1〜4のいずれか一項に記載の蛍光体ナノ粒子複合体。
6.前記1〜5のいずれか一項に記載の蛍光体ナノ粒子複合体を用いたことを特徴とする多色蛍光検出方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上記手段により、可視域から赤外域の波長領域の光励起により、可視域から赤外域の波長領域の多色の光を発光し、かつ生体に対する損傷性及び毒性の低い蛍光体ナノ粒子複合体を提供することができる。また、当該蛍光体ナノ粒子複合体を用いた多色蛍光検出方法を提供することができる。
【0015】
すなわち、赤外光励起により可視光を発光する蛍光体ナノ粒子と可視光等の励起により可視光〜赤外光領域の発光をする蛍光体ナノ粒子を組み合わせることで、励起光と発光波長を広範囲において選択でき、多色発光を得ることができる。また、生体応用のイメージングにおいて紫外線照射をしないため細胞を損傷しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の蛍光体ナノ粒子複合体は、赤外光照射により可視域で発光する蛍光体ナノ粒子と可視光照射により可視域又は赤外域で発光する蛍光体ナノ粒子とを組み合わせて形成されたことを特徴とする。この特徴は、請求項1〜6に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0017】
なお、本願において、「蛍光体ナノ粒子複合体」とは、異種の組成の蛍光体ナノ粒子を混合して形成された蛍光体ナノ粒子の複合体をいう。当該複合体は、原料としての異種の組成の蛍光体ナノ粒子を構成する元素が相互に混合され新たな化合物として形成された態様の複合体であっても、当該異種の組成の蛍光体ナノ粒子が部分的に融合した態様の複合体であってもよい。
【0018】
本発明の実施態様としては、前記可視光照射により可視域又は赤外域で発光する蛍光体ナノ粒子が、半導体ナノ粒子である態様であることが好ましい。本発明においては、可視光照射により可視域又は赤外域で発光する蛍光体ナノ粒子が、シリコン(Si)又はゲルマニウム(Ge)の少なくとも一方を含有する半導体ナノ粒子であることが好ましい。また、当該蛍光体ナノ粒子複合体の平均粒径は、1〜100nmであることが好ましい。更に、当該蛍光体ナノ粒子複合体が、分散媒中に分散されている態様であることが好ましい。
【0019】
本発明の蛍光体ナノ粒子複合体は多色蛍光検出方法に好適に用いることができる。
【0020】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための最良の形態・態様について詳細な説明をする。
【0021】
(赤外励起可視光等発光蛍光体ナノ粒子)
赤外光照射により紫外光領域又は可視光領域で発光する蛍光体ナノ粒子(以下において「アップコンバージョン蛍光体ナノ粒子」又は「赤外励起可視光等発光蛍光体ナノ粒子」ともいう。)の典型的例について説明する。
【0022】
希土類元素として、イッテルビウム(Yb)とエルビウム(Er)の2種類を用いた系であり、励起光として1000nmの赤外光を照射した例では、1000nmの励起光によりイッテルビウム(Yb3+)が励起されて7/2準位からよりエネルギー準位の高い5/2準位に移動する。そして、このエネルギーが、エネルギー移動1により、エルビウム(Er3+)のエネルギー準位を、15/2準位から11/2準位に押し上げる。そして、同様に1000nmの励起光によりイッテルビウム(Yb3+)が励起され、このエネルギーがエネルギー移動により、さらにエルビウム(Er3+)のエネルギー準位を11/2準位から11/2準位に押し上げる。そして、上記励起されたエルビウム(Er3+)が基底状態に戻る際に、550nmの光を発光する。このように、1000nmの光で励起されたものが、よりエネルギーの高い550nmの光を発するような場合、すなわち、波長からみて励起光より高いエネルギーの光を発するような場合をアップコンバージョン発光という。
【0023】
希土類元素を1種類で用いる場合のアップコンバージョン発光のメカニズムとして、Er+がドープされた蛍光体ナノ粒子を例に挙げた場合、励起光として970nmまたは1500nmの光を照射した場合、アップコンバージョン過程を経て、Er+イオンのエネルギー準位において、410nm(9/215/2)、550nm(3/215/2)、660nm(9/215/2)などの可視光発光を示す。
【0024】
アップコンバージョン発光を生じる希土類元素を用いるものであるので、エネルギーの高い光、例えば紫外光等で励起する必要がない。アップコンバージョン蛍光体微粒子を励起する励起光の波長の範囲としては、700nm〜2000nmの範囲内、特に800nm〜1600nmの範囲内の波長であることが好ましい。励起源としては、Nd−YAGレーザー等の各種レーザー等赤外領域に発光を持つ光源を使用する。
【0025】
アップコンバージョン蛍光体ナノ粒子については、純粋な組成で蛍光を発する蛍光体ナノ粒子、および、母材に蛍光を発する元素等がドープされた蛍光体ナノ粒子のいずれも得ることができるが、本発明においては母材に蛍光を発する元素等がドープされた蛍光体ナノ粒子を用いることが好ましい。元素等の種類やドープ量により、発光の強さや色を調整することができるからである。
【0026】
本発明に用いられる希土類元素は、アップコンバージョン発光することが可能であって、赤色領域、緑色領域、および青色領域のいずれの領域においてもピークを有する蛍光体微粒子を得ることができる希土類元素であれば特に限定されるものではなく、希土類元素単独で上記領域にピークを有するものであっても良く、希土類元素の組合せによって上記領域にピークを有するものであってもよい。
【0027】
このような希土類元素としては、所定の範囲内の波長の光により励起されてアップコンバージョン発光することが可能な希土類元素であれば特に限定されるものではないが、一般的には3価のイオンとなる希土類元素を挙げることができる。中でもエルビウム(Er)、ホロミウム(Ho)、プラセオジウム(Pr)、ツリウム(Tm)、ネオジウム(Nd)、ガドリニウム(Gd)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)、サマリウム(Sm)およびセリウム(Ce)からなる群から選択される。これらの希土類元素は、1種類で用いても、2種類以上同時に用いてもよい。これらの希土類元素を選択的に使用することにより、本発明の目的に適うアップコンバージョン蛍光体ナノ粒子を得ることができるからである。
【0028】
また、上記希土類元素の組合せとしては、例えば、イッテルビウム(Yb)、エルビウム(Er)およびツリウム(Tm)の組合せ、プラセオジウム(Pr)、エルビウム(Er)およびツリウム(Tm)の組合せ、エルビウム(Er)およびツリウム(Tm)の組合せ、等を挙げることができ、中でもイッテルビウム(Yb)、エルビウム(Er)およびツリウム(Tm)の組合せが好ましい。
【0029】
次に、本発明に用いられる希土類元素を担持する母材について説明する。
【0030】
本発明に用いられる母材は、希土類元素を担持するものであって、上記希土類元素をアップコンバージョン発光可能な状態で担持するものであれば特に限定されるものではなく、希土類元素と反応し、錯体、デンドリマー等を形成する有機物であっても良く、無機物であっても良い。中でも、本発明においては、無機物を使用することが好ましい。上記希土類元素を発光可能な状態で含有させることが容易だからである。
【0031】
このような無機物の母材としては、励起光に対して透明性を有する材料が、発光効率の観点から好ましく、具体的には中でもフッ化物、塩化物等のハロゲン化物、酸化物、硫化物等が好適に用いられる。
【0032】
ハロゲン化物としては、具体的には、塩化バリウム(BaCl)、塩化鉛(PbCl)、フッ化鉛(PbF)、フッ化カドミニウム(CdF)、フッ化ランタン(LaF)、フッ化イットリウム(YF)等を挙げることができ、中でも塩化バリウム(BaCl)、塩化鉛(PbCl)およびフッ化イットリウム(YF)が好ましい。
【0033】
耐水性等の耐環境性の高い母材としては、酸化物を挙げることができる。このような酸化物としては、具体的には、酸化イットリウム(Y)、酸化アルミニウム(Al)、酸化シリコン(SiO)、酸化タンタル(Ta)等を挙げることができ、中でも酸化イットリウム(Y)が好ましい。
【0034】
ハロゲン化物を本発明の蛍光体微粒子の母材として用いた場合は、周囲に保護層を形成することが好ましい。すなわち、ハロゲン化物は一般的には水等に対して不安定であり、そのままアップコンバージョン蛍光体微粒子として用いると正確に分析ができない場合があり、このような場合は、ハロゲン化物を母材とするアップコンバージョン蛍光体微粒子の周囲に耐水性等を有する被覆材が形成された複合核部にするとよい。この被覆材としては、上に挙げたような酸化物を好適に用いることができる。
【0035】
励起光として紫外光を用いる必要がないことから、例えば蛍光プローブ等に用いた際に生体高分子などの被分析物に対して損傷を与えることがない。また、アップコンバージョン粒子と半導体ナノ粒子を使用することにより、有機蛍光体のように保存時の安定性に欠けることがない。
【0036】
アップコンバージョン蛍光体ナノ粒子の製造方法としては、高周波プラズマ法を含むガス中蒸発法、スパッタリング法、ガラス結晶化法、化学析出法、逆ミセル法、ゾル−ゲル法、水熱合成法や共沈法を含む沈殿法またはスプレー法等を挙げることができる。
【0037】
作製したアップコンバージョン粒子を解粒し液中に取り出す。この溶媒としてはアップコンバージョン発光に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されるものではない。このような溶媒としては、非水系溶媒を使用し、例えばケトン系、アルコール系、エーテル系、炭化水素系、エステル系、多価アルコール系、またはフッ素系等の溶媒を挙げることができる。これらの非水系溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、非水系溶媒は脱水処理を施してから使用してもよい。すなわち、解粒処理前に非水系溶媒に脱水処理を施してもよい。脱水処理を行うことにより、非水系溶媒中の水分量が少なくなるので、水によるアップコンバージョン発光への影響を回避することができるからである。
【0038】
本発明における解粒処理は非水系溶媒の存在下で行われるものであり、例えば非水系溶媒中で解粒処理を行ってもよく、非水系溶媒を噴霧しながら解粒処理を行ってもよく、非水系溶媒を気化させた気流中で解粒処理を行ってもよい。
【0039】
また、解粒処理を行う雰囲気としては特に限定されるものではなく、例えば空気雰囲気であってもよく、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気であってもよい。
【0040】
本発明における解粒処理を施す方法としては、一般的な解粒の方法を適用することができる。例えば、ビーズミル、高エネルギーボールミル、高速導体衝突式気流型粉砕機、衝突式粉砕機、ゲージミル、媒体攪拌型ミル、高水圧式粉砕装置などを用いる方法等が挙げられる。これらの中でも、ビーズミル、高速導体衝突式気流型粉砕機、衝突式粉砕機、媒体攪拌型ミル、高水圧式粉砕装置などを用いる方法を採用することが好ましい。これらの方法では、蛍光体微粒子を効率よく微小化することができるからである。
【0041】
解粒処理の際には、上記非水系溶媒と共に分散剤を用いてもよい。具体的には、非水系溶媒に分散剤を添加してもよく、非水系溶媒とともに分散剤を噴霧してもよく、非水系溶媒とともに分散剤を気化させてもよい。分散剤を用いることにより、アップコンバージョン蛍光体ナノ粒子の分散状態がさらに安定化するからである。
【0042】
また、解粒処理が施されることにより、アップコンバージョン蛍光体ナノ粒子の平均粒径が1〜100nmの範囲内となることが好ましく、より好ましくは1〜50nmの範囲内である。平均粒径が上記範囲未満の粒子は合成が極めて困難であり、また、平均粒径が上記範囲を超える粒子は被標識物の反応を妨げたりしてデータの精度を低下させるおそれがあるからである。
【0043】
なお、上記平均粒径は、透過型電子顕微鏡写真より100個の粒子を抽出し、それぞれの粒径を平均した値とする。
【0044】
蛍光体微粒子分散体中のアップコンバージョン蛍光体ナノ粒子の濃度を調整するために、解粒処理後に非水系溶媒を除去してもよい。非水系溶媒の除去方法としては、一般的な溶媒の除去方法を適用することができる。
【0045】
(半導体ナノ粒子)
本発明においては、可視光照射により可視域又は赤外域で発光する蛍光体ナノ粒子は、半導体材料を用いて形成された半導体ナノ粒子であることが好ましい。
【0046】
本発明に係る半導体ナノ粒子は半導体の性質を有する粒子であり、種々の半導体材料を用いて形成することができる。
【0047】
本発明に係る半導体体ナノ粒子を形成する工程に用いられる、半導体材料としては以下のようなものが挙げられる。例えば、元素の周期表のIV族、II−VI族、及びIII−V族の半導体化合物を用いることができる。
【0048】
II−VI族の半導体の中では、MgS、MgSe、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、HgS、HgSe及びHgTeを挙げることができる。
【0049】
III−V族の半導体の中では、GaAs、GaN、GaPGaSb、InGaAs、InP、InN、InSb、InAs、AlAs、AlP、AlSb及びAlSを挙げることができる。
【0050】
IV族の半導体の中では、Ge、Pb及びSiを挙げることができるが、Ge及びSiがより好ましく、特に、毒性が殆ど無いことから、Siが適している。
【0051】
本発明に係る半導体ナノ粒子の製造については、従来公知の種々の方法を用いることができる。大きく分類すると、液相法と気相法がある。
【0052】
気相法の製造方法としては、(1)対向する原料半導体を電極間で発生させた第一の高温プラズマによって蒸発させ、減圧雰囲気中において無電局放電で発生させた第二の高温プラズマ中に通過させる方法(例えば特開平6−279015号公報参照)、(2)電気化学的エッチングによって原料半導体からなる陽極からなるナノ粒子を分離・除去する方法、(3)レーザーアブレーション法、(4)高周波スパッタリング法などが用いられる。
【0053】
液相法の製造方法としては、逆ミセル法、ゾル−ゲル法、水熱合成法等が挙げられる。
【0054】
粒子表面の酸化とフッ酸処理を繰り返すことによりSiナノ粒の粒径を制御できる。その際に、加熱温度や加熱時間を変えることによってさらに精密な制御が可能である。これにより本発明の発光スペクトルが実現できる。
【0055】
半導体ナノ粒子の平均粒径は発光色及び生体分子に対する検出性を高めた半導体ナノ粒子標識体の作製等の観点から、1〜10nmであることが好ましい。更に、平均粒径は1〜8nmの範囲にあることが好ましい。なお、半導体ナノ粒子蛍光体の発光色は、粒径によって決まり、粒径が小さいほど短波長の発光を示す。従って、各種発光色の混合防止の観点から、半導体ナノ粒子蛍光体の粒径分布の標準偏差は、平均粒径に対して20%以下であることが好ましい。
【0056】
半導体ナノ粒子は粒径により発光波長が変わるため、半導体ナノ粒子の粒径を制御することで波長を選択し、多色のナノ粒子複合体を得ることができる。
【0057】
粒子表面の酸化とフッ酸処理を繰り返すことにより半導体ナノ粒子(例えばSiナノ粒子)の粒径を制御できる。その際に、加熱温度や加熱時間を変えることによってさらに精密な制御が可能である。これにより波長を選択し多色発光が実現できる。
【0058】
(蛍光体ナノ粒子複合体)
本発明の蛍光体ナノ粒子複合体は、赤外光照射により紫外域又は可視域で発光する蛍光体ナノ粒子(「アップコンバージョン蛍光体ナノ粒子」又は「赤外励起可視光等発光蛍光体ナノ粒子」ともいう。)と可視光照射により可視域又は赤外域で発光する蛍光体ナノ粒子(適宜「半導体ナノ粒子」ともいう。)とを組み合わせて形成されたことを特徴とする。
【0059】
本発明の蛍光体ナノ粒子複合体の平均粒径は、合成及び被標識物の反応阻害等の観点から、1〜900nmであることが好ましい。特には、1〜100nmであることが好ましい。
【0060】
なお、可視領域の発光は、400〜700nmの範囲であり、赤外領域の発光は、700〜1300nmである。
【0061】
蛍光体ナノ粒子複合体の作製には、スプレー法、噴霧焼成法等を使用することができる。また、液相合成として逆ミセル法等での作製も可能である。検出で使用するためには、蛍光体ナノ粒子複合体を分散媒中に分散させることが好ましい。
【0062】
噴霧焼成炉は、勾配をもった加熱フローを持ち、低温から高温まで段階的に昇温を行うことができる。菅状炉の長さ方向に目的の温度段階に合わせ、加熱温度が制御できる炉を複数つなぎ合わせることで、入り口から出口までの温度段階制御が可能となる。高温で均一に熱をかけることができるために粒子に十分なエネルギーを付与することができ、粒子を凝集させることができる。また、噴霧焼成時の温度を制御することで粒径の大きさを制御することが可能である。
【0063】
蛍光体ナノ粒子複合体の分散媒は、当該粒子が安定に分散されるものであれば限定されず、水、エタノール、メタノールなどの脂肪族アルコール、トルエン等の芳香族炭化水素、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素などおよびこれらの混合物などが用いられる。必要に応じて、界面活性剤、分散安定剤、酸化防止剤などの添加物、ならびにポリマーや重合性官能基を有するモノマー、オリゴマーからなる組成物を加えることができる。生体応用の場合は、親水性であることが好ましい。
【0064】
蛍光体ナノ粒子複合体の表面は必要に応じて化学的・物理的に修飾することができる。これらのナノ粒子は、逆ミセル法、ホットソープ法、自然酸化などの公知の手法により合成することが可能である。
【0065】
蛍光体ナノ粒子複合体の作製方法は、逆ミセル法等を利用した液相合成法で行ってもよい。
【0066】
蛍光体ナノ粒子複合体を構成する赤外励起可視光等発光ナノ粒子は各濃度を調整することで比率を変えることができる。赤外励起可視光等発光ナノ粒子が少ないと半導体ナノ粒子(例えばSiナノ粒子)の発光ができないため、比率0.4〜0.6であることが好ましい。生体応用では赤外励起可視光等発光ナノ粒子の比率が多すぎると、これによる発光の影響を細胞が受けるため好ましくない。
【0067】
[応用例:蛍光検出方法]
本発明の蛍光体ナノ粒子複合体は、種々の技術分野における分析に応用できる。例えば、異なる発光スペクトルをもつ、すなわち多色の発光をする半導体ナノ粒子を使用した蛍光体ナノ粒子複合体で複数種類の分子をそれぞれ標識し、当該分子に励起光を照射することによって、同時に複数種類の分子の同定を行うこともできる。なお、適用可能な複数種類の分子としては、化学組成は同じであるが化学構造の異なる構造異性体等も含む。
【0068】
上記のように、本発明の蛍光体ナノ粒子複合体は、多色蛍光検出方法に好適に用いることができることを特徴とする。ここで、「多色」とは、3色以上とする。発光色を3色以上とするのは、従来の赤・緑・青の3色に加えて、その中間色を見分けることができることと赤外領域での発光を含めたためである。また、可視領域では、他のスペクトルと識別して視認する場合は、極大発光強度に対して強度10%以上のスペクトルが重ならないように蛍光体ナノ粒子複合体の粒径や、使用する半導体ナノ粒子の比率等を調整する必要がある。スペクトルの強度が10%以上の部分が重なっている場合、他のスペクトルの区別が難しくなるからである。
【0069】
以下において、代表的な応用例について説明する。
【0070】
(生体物質標識剤とバイオイメージング)
本発明の蛍光体ナノ粒子複合体は、生体物質蛍光標識剤に適応することができる。また、標的(追跡)物質を有する生細胞もしくは生体に本発明に係る生体物質標識剤を添加することで、標的物質と結合もしくは吸着し、当該結合体もしくは吸着体に所定の波長の励起光を照射し、当該励起光に応じてアップコンバージョン粒子からの発光を励起光とした蛍光半導体微粒子から発生する所定の波長の蛍光を検出することにより、上記標的(追跡)物質の蛍光動態イメージングを行うことができる。すなわち、本発明に係る生体物質標識剤は、バイオイメージング法(生体物質を構成する生体分子やその動的現象を可視化する技術手段)に利用することができる。
【0071】
〔複合体ナノ粒子集合体の親水化処理〕
上述した蛍光体ナノ粒子複合体は、疎水性であるため、例えば生体物質標識剤として使用する場合は、このままでは水分散性が悪く、粒子が凝集してしまう等の問題があるため、表面を親水化処理することが好ましい。
【0072】
親水化処理の方法としては、例えば、表面の親油性基をピリジン等で除去した後に粒子表面に表面修飾剤を化学的および/または物理的に結合させる方法がある。表面修飾剤としては、親水基として、カルボキシル基・アミノ基を持つものが好ましく用いられ、具体的にはメルカプトプロピオン酸、メルカプトウンデカン酸、アミノプロパンチオールなどがあげられる。具体的には、例えば、Ge/GeO型ナノ粒子10−5gをメルカプトウンデカン酸0.2gが溶解した純水10ml中に分散させて、40℃、10分間攪拌し、シェルの表面を処理することで無機ナノ粒子のシェルの表面をカルボキシル基で修飾することができる。
【0073】
〔生体物質標識剤〕
生体物質標識剤は、上述した親水化処理された蛍光体ナノ粒子複合体と、分子標識物質と有機分子を介して結合させて得られる。
【0074】
〈分子標識物質〉
生体物質標識剤は分子標識物質が目的とする生体物質と特異的に結合および/または反応することにより、生体物質の標識が可能となる。
【0075】
当該分子標識物質としては例えば、ヌクレオチド鎖、抗体、抗原およびシクロデキストリン等が挙げられる。
【0076】
〈有機分子〉
生体物質標識剤は、親水化処理された蛍光体ナノ粒子複合体と、分子標識物質とが有機分子により結合されている。当該有機分子としては蛍光体ナノ粒子複合体と分子標識物質とを結合できる有機分子であれば特に制限はないが、例えば、タンパク質中でも、アルブミン、ミオグロビンおよびカゼイン等、またタンパク質の一種であるアビジンをビオチンと共に用いることも好適に用いられる。上記結合の態様としては特に限定されず、共有結合、イオン結合、水素結合、配位結合、物理吸着および化学吸着等が挙げられる。結合の安定性から共有結合などの結合力の強い結合が好ましい。
【0077】
具体的には、蛍光体ナノ粒子複合体をメルカプトウンデカン酸で親水化処理した場合は、有機分子としてアビジンおよびビオチンを用いることができる。この場合親水化処理されたナノ粒子のカルボキシル基はアビジンと好適に共有結合し、アビジンがさらにビオチンと選択的に結合し、ビオチンがさらに分子標識物質と結合することにより生体物質標識剤となる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0079】
[赤外励起可視発光粒子の作製法]
特開平6−25660号公報に記載されている方法に準拠した方法により作製した。すなわち、市販の粉末試薬ErBr及びYBrを30:70(mol%)の割合に秤量した後、乳鉢で粉砕すると同時に撹拌混合した。次に、この混合原料粉末をグラッシーカーボンルツボに入れ、このルツボを650℃に保った電気炉に入れた後、電気炉の温度を昇温させた。焼成温度は950℃とし、1時間程度保持して原料を十分に反応させた後、5℃/分程度の速度で徐々に降温させた。炉温が約650℃に到達した後試料を取り出して、作製を完了した。なお、焼成時の炉内には常にNガスを流し、酸素や水分の混入を防ぐ雰囲気とした。また、酸素や水分との接触による原料の酸化を防止するため、試料の秤量から調合、溶融、焼結までのすべての操作はNガス中で行った。なお、使用するルツボとしては、グラッシーカーボンの他に、石英、白金、金等のルツボを用いることができる。このようにして作製した赤外可視波長上方変換材料を波長1.5μm帯のLD光(5mW)で励起したとき発光ピーク波長は、405〜415nm、520〜550nm、650〜670nm、790〜830nmであった。
【0080】
[赤外励起青色発光粒子]
特開平7−62345号公報に記載されている方法に準拠した方法により作製した。すなわち、組成99YCl1TmCl(mol%)になるように、無水粉末YCl、TmClを高純度窒素ガス充填のグローブボックス中で秤量調合し、混合した。混合物をグラシカーボンるつぼに入れ、温度800度で窒素と塩素ガスの混合雰囲気中で約1時間溶解し、反応させた。均一に溶けた溶解物をゆっくりと室温まで冷却し、細かく粉砕した。このようにして得られた塩化物蛍光体に波長1060nmのYAGレーザ(3W)で照射した。450nmと480nm波長帯に非常に強い青色発光が観測された。
【0081】
なお、本例では、固相反応で材料作製を行ったが、真空蒸着法やスパッタリング蒸着法、化学的気相成長法などの気相反応により材料作製を行っても同様の効果を得ることができる。
【0082】
まずアップコンバージョン蛍光体微粒子を合成すしたが、合成されたアップコンバージョン蛍光体微粒子は凝集または融着した状態となってしまうので、次いで、このような状態の蛍光体微粒子に非水系溶媒の存在下で解粒処理を施した。これにより、アップコンバージョン蛍光体微粒子が分散したアップコンバージョン蛍光体微粒子分散体を製造することができた。
【0083】
上記で作製したアップコンバージョン粒子を、特開2006−249253号公報記載の方法に準拠して、下記のように溶媒中に分散させた。
【0084】
合成した微粒子0.1gをメチルイソブチルケトン(MIBK)10mlに入れ、分散剤としてDisperbyk−161(ビックケミー・ジャパン(株)製)を加えた。さらにφ0.05mmのYTZボール(株式会社ニッカトー製)を20g加え、ペイントシェーカー(浅田鉄鋼社製)を用いて1時間解粒処理を行い、アップコンバージョン粒子分散体を作製した。得られたアップコンバージョン粒子分散体を静置させることにより分級し、分散・安定化した蛍光体微粒子分散体を調製した。SEMおよびTEM観察により、蛍光体微粒子は球状であり粒子径が30〜50nmであることが確認された。
【0085】
また、溶媒は水でも可能である。このときの解粒処理時間は10時間程度となる。
【0086】
[Siナノ粒子の作製法]
特開2007−63378号公報に記載されている方法に準拠した方法により作製した。
【0087】
(スパッタリングによる成膜)
真空チャンバー内にArガスを導入し、高周波コントローラによりイオン化されたArガスイオンをSiチップと石英ガラスからなるターゲット材料に衝突させた。これらの放出された原子および分子を半導体基板上に堆積し、酸化ケイ素膜内にSi原子が混ざった膜を形成した。このときチップの比率は、Si/SiO=20とした。
【0088】
(アニール処理)
得られたSi原子を含有した酸化ケイ素膜をAr雰囲気中で1000℃まで急速に昇温し熱処理を行い、膜中のSi原子をナノサイズまで凝集させた。
【0089】
(フッ酸処理)
得られたSiナノ粒子含有酸化ケイ素膜を40℃のフッ酸蒸気にさらすことで、表面処理を行った。
【0090】
(加熱酸化処理)
フッ酸処理後のSiナノ粒子含有酸化ケイ素膜を自然酸化、または過熱酸化処理を行った。
【0091】
(シリコンナノ粒子の分離・液中への分散)
自然酸化または過熱酸化したシリコンナノ粒子含有酸化ケイ素膜をエタノール中に投入して10分間の超音波処理を行った。
【0092】
[Geナノ粒子の作製法]
特開2007−63378号公報に記載されている方法に準拠した方法により作製した。
【0093】
四塩化ゲルマニウム100μL、テトラオクチルアンモニウムブロマイド1.5gを無水トルエン100mlに溶解させ、超音波を30分照射し、逆ミセル溶液Aを作製した。1MのLiAlHのTHF溶液を還元剤溶液Bとした。ガラス製キャピラリーをマイクロ流路として用い、定量ポンプを使用して、逆ミセル溶液Aを0.5ml/分で、還元剤溶液Bを0.5ml/分でそれぞれ供給し、Y字型ジャンクションを設け両者を混合、反応させた。
【0094】
反応混合物にメタノール添加し、反応を停止させた。ついで、ロータリーエバポレーターにてトルエン、メタノールを除いた。ヘキサン、さらにジメチルホルムアミドを添加した。分液ロートを用いて、テトラオクチルアンモニウムブロマイドを含むジメチルホルムアミド層を分離し、ヘキサン中にシリコンナノ粒子を得た。波長400nmを励起光とする蛍光スペクトルを測定したところ、発光極大波長は、430nmであった。
【0095】
[赤外励起ナノ粒子複合体の作製]
作製した赤外励起可視発光ナノ粒子溶液とSiナノ粒子溶液を混合し、噴霧焼成炉を用いて凝集させた。このとき、複合体ナノ粒子を構成する赤外励起可視発光ナノ粒子とSiナノ粒子が1:1になるように濃度を調整した。噴霧焼成炉の温度を制御することによって、平均粒径35nmの粒子が得られた。平均粒径は、透過型顕微鏡写真より100個の微粒子の平均値とした。
【0096】
[発光スペクトル測定]
得られた液中に分散したナノ粒子複合体に波長980nmの励起光を照射し発生する蛍光スペクトルを測定した。発光スペクトルはHamamatsu社のスペクトロメータ(SWNIR)を使用して測定を行った。発光スペクトルは、平均4nmに作製したSiナノ粒子では、650nmでの発光であり、平均7nmに作製したSiナノ粒子では900nmの発光であり、半導体ナノ粒子の粒径に応じた発光が得られた。同様にして、当該半導体ナノ粒子(Siナノ粒子)の粒径を変化することにより発光波長の異なる多色の発光を得られることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外光照射により可視域で発光する蛍光体ナノ粒子と可視光照射により可視域又は赤外域で発光する蛍光体ナノ粒子とを組み合わせて形成されたことを特徴とする蛍光体ナノ粒子複合体。
【請求項2】
前記可視光照射により可視域又は赤外域で発光する蛍光体ナノ粒子が、半導体ナノ粒子であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体ナノ粒子複合体。
【請求項3】
前記可視光照射により可視域又は赤外域で発光する蛍光体ナノ粒子が、シリコン(Si)又はゲルマニウム(Ge)の少なくとも一方を含有する半導体ナノ粒子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の蛍光体ナノ粒子複合体。
【請求項4】
平均粒径が、1〜100nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の蛍光体ナノ粒子複合体。
【請求項5】
分散媒中に分散されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の蛍光体ナノ粒子複合体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の蛍光体ナノ粒子複合体を用いたことを特徴とする多色蛍光検出方法。