説明

蛍光体ペースト及びそれを用いたプラズマディスプレイパネルの製造方法

【課題】塗布性が良好で、不灯のない、表示特性の良好なプラズマディスプレイを得ることができる蛍光体ペーストを提供する。
【解決手段】蛍光体粉末、有機溶媒およびバインダー樹脂を含む蛍光体ペーストであって、25℃、ずり速度1.2s−1における粘度をη1.2、25℃、ずり速度1000s−1における粘度をη1000としたときに、下式(1)で定義される指数DI0.1〜1.0の範囲内であり、かつ、η1.2が20〜150Pa・sの範囲であることを特徴とする蛍光体ペースト。
DI=η1.2/η1000 (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はテレビやディスプレイの製造に用いられる蛍光体ペーストおよびそれを用いたプラズマディスプレイパネルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下PDPと称する)は、液晶パネルに比べて高速の表示が可能であり、また大型化が容易であることからOA機器および広報表示装置などの分野に浸透している。さらに、高品位テレビジョンの分野などでの進展が非常に期待されている。このような用途拡大に伴って、いわゆるフルHD(200万画素)やスーパーHD(3200万画素)に対応する微細で多数の表示セルを有するカラーPDPが注目されている。
【0003】
PDPは前面ガラス基板と背面ガラス基板との間に備えられた放電空間内で電極間にプラズマ放電を生じさせ、上記放電空間内に封入されているガスから発生した紫外線により放電空間内の蛍光体層を発光させることにより表示を行うものである。一般的に、背面板には放電空間を仕切るために、背面板上に設けられた電極と略平行なストライプ状の隔壁、または背面板上に設けられた電極と略平行なストライプ状の主隔壁およびこれに略直交する補助隔壁からなる格子状の隔壁が設けられており、蛍光体層はこれら隔壁の間の、隔壁の側面および表示セルの底面(隔壁間の背面板基板上)に設けられるのが一般的である。
【0004】
この蛍光体層の形成方法としては、蛍光体粉末、バインダー樹脂及び有機溶媒から構成される蛍光体ペーストを用いた方法が知られている。具体的には、スクリーン印刷法、インクジェット法、ディスペンサーから蛍光体ペーストを吐出する方法、感光性有機成分を含む感光性蛍光体ペーストを用いたフォトフィルム法やフォトペースト法などが知られている。その中でも、ディスペンサー、すなわち複数の吐出孔を有する塗布ヘッドから蛍光体ペーストを吐出する方法はペーストの吐出圧力、塗布速度、吐出孔の孔径を変えることで、セルに充填する蛍光体ペーストの量を精度良く制御でき、高精細パターンにも対応できる為好ましい。また、スクリーン印刷法のようにスクリーン版に付着することによるペーストのロスも無く、コストパフォーマンスも良い為好ましい。
【0005】
これまで、ディスペンサーによる塗布抜けや塗布ムラ等の塗布不良を解決する方法として、例えば蛍光体ペースト中の蛍光体粉末、バインダー樹脂、有機溶媒及び分散剤の配合比を適正化することにより塗布性を改善する方法が知られていた(特許文献1)。
【0006】
しかし、特許文献1記載の技術では、当時対象として考えていた精細セルでは十分であったが、更なる高精細化に伴い隔壁のピッチが狭くなると不十分であることが分かった。すなわち、隔壁のピッチが狭くなることにあわせてディスペンサーの吐出孔の孔径を小さくすると、ディスペンサーから吐出する際に生じる蛍光体ペーストのバラス効果が大きくなるため、ディスペンサーから吐出する際に蛍光体ペーストが膨張し、吐出孔の孔径よりも太い柱状となるため隔壁間のスペースに収まらずに隔壁頂部にも塗布されてしまうという問題を生じる。蛍光体ペーストが隔壁頂部にも塗布された場合、隣のセルとの混色が発生したり、前面板に張り合わせる際に隔壁にクラックを生じ、飛散した蛍光体粉末が前面板に付着する事によって不灯セルが発生するという問題を起こす。一方、バラス効果を抑える為にディスペンサーでの塗布圧力を下げると、ディスペンサーから吐出された後の蛍光体ペーストの形状が安定せず、例えば上述の格子状隔壁を有する背面板に蛍光体ペーストを塗布する場合、補助隔壁に蛍光体ペーストが衝突する際に液切れを起こし、所望のペースト量が入らないセルが発生するという問題を生じるようになった。以上のようにディスプレイ高精細化の進展に伴い、蛍光体の塗布不良の無い高品質なプラズマディスプレイを得る事が困難となってきた。
【0007】
ここでバラス効果とは、高分子溶液や、高分子融液を細い孔から押し出す時に分子鎖が完全に緩和せず、弾性変形として剪断エネルギーが一部蓄えられ、孔から出た途端に緩和されることによって、液体が膨張する現象の事である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−96443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて、塗布性が良好で、混色のない、表示特性の良好なプラズマディスプレイを得ることができる蛍光体ペーストを提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明の目的はかかる蛍光体ペーストを用いた、高品質なプラズマディスプレイパネルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち本発明は蛍光体粉末、有機溶媒およびバインダー樹脂を含む蛍光体ペーストであって、25℃、ずり速度1.2s−1における粘度をη1.2、25℃、ずり速度1000s−1における粘度をη1000としたときに、下式(1)で定義される指数DIが0.1〜1.0の範囲内であり、かつ、η1.2が20〜150Pa・sの範囲内であることを特徴とする蛍光体ペーストである。
DI=η1.2/η1000 (1)
さらにα−1,4グルガンを含む事を特徴とする請求項1に記載の蛍光体ペーストである。
【0012】
また、上記ペーストを複数の吐出孔を有する塗布ヘッドを用い、前記吐出孔から基板上に蛍光体ペーストを柱状に吐出して基板上に塗布し、乾燥し、焼成する工程を含むディスプレイパネルの製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、蛍光体ペーストの複数の吐出孔を有する塗布ヘッドによる塗布性が良好となり、混色のない、均一な表示が可能な高品質のプラズマディスプレイパネルを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の蛍光体ペーストは25℃、ずり速度1.2s−1における粘度をη1.2、25℃、ずり速度1000s−1における粘度をη1000としたときに、下式(1)で定義される指数DIが0.1〜1.0の範囲内であり、かつ、η1.2が20〜150Pa・sの範囲内である。
DI=η1.2/η1000 (1)
指数DIが1.0を超えると、チキソ性を有し、ディスペンサーからペーストが吐出する際にバラス効果が発生し、ペーストが膨張し、隔壁頂部に乗り上げる等の塗布困難に陥る。
【0015】
指数DIが0.1を下回ると、吐出孔からペーストが吐出する際にペースト粘度が高くなり過ぎ、ペーストが吐出されないという問題を生じる。
【0016】
ずり速度1.2[s−1]での粘度η1.2が20Pa・sより低いと吐出孔が吐出する際の蛍光体ペーストの形状が安定して柱状を保つことができず、井桁型セル内の補助隔壁に蛍光体ペーストが衝突する際に液切れを起こすという問題を生じる。更に吐出間でペーストが吐出孔から染みだし、連続塗布安定性が悪くなる。また粘度η1.2が150Pa・sより高いと吐出孔からペーストが吐出する際にペーストが吐出しにくいという問題を生じる。
【0017】
本発明の蛍光体ペーストに用いられる蛍光体粉末としては特に限定されない。例えば、赤色では、Y:Eu、YVO:Eu、(Y,Gd)BO:Eu、Y(P,V)O:Eu、YS:Eu、などがあげられる。緑色では、ZnGeO:M、BaAl1219:Mn、ZnSiO:Mn、ZnSiO:Mn,As、YAl12:Ce、GdS:Tb、などがあげられる。青色では、BaMgAl1423:Eu、BaMgAl1627:Eu、BaMgAl1424:Eu、YSiO:Ceなどがあげられる。中でも、組成式Y1−aEuTaO(式中、aは、0.005〜0.1である)で表されるユーロピウム付活タンタル酸イットリウム蛍光体である。赤色蛍光体には、ユーロピウム付活ホウ酸イットリウムガドリニウムやユーロピウム付活燐酸バナジン酸イットリウムなどが好ましく用いられ、緑色蛍光体には、組成式Y1−bTbTaO(式中、bは、0.001〜0.2である)で表されるテルビウム付活タンタル酸イットリウムが好ましく用いられる。また、青色蛍光体には、Y1−cTmTaO(式中、cは、0.001〜0.2である)で表されるツリウム付活タンタル酸イットリウムが好ましく用いられる。
【0018】
本発明で用いられるバインダー樹脂の具体的な例としては、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、シリコンポリマー(例えば、ポリメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン)、ポリスチレン、ブタジエン/スチレンコポリマー、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、高分子量ポリエーテル、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのコポリマー、ポリアクリルアミドおよび種々のアクリルポリマー(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリ低級アルキルアクリレート、ポリ低級アルキルメタクリレートおよび低級アルキルアクリレートおよびメタクリレートの種々のコポリマーおよびマルチポリマー)が挙げられる。また、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、メチルヒドロキシセルロース等のセルロース化合物は、焼成後のバインダー残りが少ない蛍光体層を形成できるため、好ましく用いることができる。
【0019】
本発明の蛍光体ペーストに含まれる有機溶媒は、バインダー樹脂に対して良溶媒であり水素結合力が大きいことが好ましい。具体的には、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、テルピネオール、ベンジルアルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、ジヒドロターピネオール、γ−ブチルラクトン、ジヒドロターピニルアセテート、ヘキシレングリコール、ブロモ安息香酸などやこれらのうちの1種以上を含有する有機溶媒混合物が用いられる。有機溶媒の選定は、有機溶媒の揮発性と使用するバインダー樹脂の溶解性及び水素結合力を主に考慮して選定される。有機溶媒に対するバインダー樹脂の溶解性が低いと固形分比が同一でも蛍光体ペーストの粘度が高くなりすぎてしまい、塗布特性が悪化する傾向がある。有機溶媒の水素結合力が無いと指数DIを満たさすのが困難になる。有機溶媒の含有率は、多すぎると粘度が低くなり、蛍光体粉末の沈降が速くなり、蛍光体ペーストの組成を安定化することが困難となり、且つ、乾燥に多大なエネルギーと時間を要する等の問題を生じる傾向がある。反対に少なすぎると、蛍光体ペーストの粘度が高くなりすぎ蛍光体ペースト中の気泡を抜くことが困難となり塗布不良を生じたり、レベリング不良により塗布面の平滑性が不良となる傾向があるため、有機溶媒の好ましい含有率は、蛍光体ペースト中に15〜60重量%、更に好ましくは、20〜40重量%である。
【0020】
本発明の蛍光体ペーストは分散剤を含むことが好ましい。分散剤としては、具体的には、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸、脂肪酸アルキロールアミド、ポリオキシレンポリオキシプロピレンブロックポリマーなどを例として挙げることができる。また、脂肪酸ナトリウム石けんなどの脂肪酸石けん、アルキルサフェート、ジオクチルスルコハク酸ナトリウム、エトキシフォスフェートなどは輝度が低下する可能性があるため、使用する際は添加量が0.01〜10重量%、更に好ましくは0.01〜2.00重量%であることが好ましい。
【0021】
本発明の蛍光体ペーストは、指数DIを0.1〜1.0の範囲内とするために、α−1,4グルガンを含むことが好ましい。使用されるα−1,4グルガンとしては、具体的にはトウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、豆澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉やタピオカ澱粉等が挙げられる。α−1,4グルガンの選定としてはディスペンサーでの塗布時に孔径が狭い場合でも詰まる事無く塗布する事が可能な粒径である事が必要であり平均粒径が30μm以下である事が好ましく最大粒径は50μm以下である事が好ましい。これらのα−1,4グルガンは量が少なすぎるとダイラタンシー性の付与が不十分であり、また、量が多すぎると、ダイラタンシー性が強くなりすぎて所望の特性が出せなくなる傾向がある為、α−1,4グルガンの好ましい含有率は10重量%〜60重量%であり且つ、蛍光体粉末とα−1,4グルガンの総量が65重量%〜80重量%である事が好ましい。
【0022】
蛍光体ペーストとしては、上記の蛍光体粉末、α−1,4グルガン、バインダー樹脂、有機溶媒及び分散剤を含有し、好ましくは、赤、緑、青いずれか一色に発光する蛍光体粉末20〜60重量%、α−1,4グルガン10〜60重量%、バインダー樹脂5〜30重量%および有機溶媒15〜60重量%からなることが好ましい。この組成にすることによって、隔壁側面と放電空間底部に均一な厚みの蛍光体層を形成できる。
【0023】
上記の蛍光体粉末とバインダー樹脂および有機溶媒を所望の比率で混合、分散、混練して蛍光体ペーストを作製する。
【0024】
上記蛍光体ペーストの塗布方法としては複数の吐出孔を有する塗布ヘッドによる塗布が望ましい。
【実施例】
【0025】
実施例1〜8、比較例1〜6
以下に本発明を実施例より具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0026】
本発明の実施例および比較例に使用した材料を以下に示す。
赤色蛍光体粉末:(Y,Gd)BO:Eu
バインダー樹脂:エチルセルロース
有機溶媒 :テルピネオールとジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートの混合溶液
分散剤 :ポリオキシアルキレンアルキルエーテル
α−1,4グルガン
まずエチルセルロース、赤色蛍光体粉末、混合有機溶媒及び分散剤を表1に記載の配合比率で混合し、更にローラー間のクリアランスを5〜20μmに設定したセラミックス製の3本ローラーで混練した。その後に表1に記載の平均粒径および最大粒径を有するα−1,4グルガンを上記混合ペーストに対して表1に記載の量添加し、更にローラー間のクリアランスを50〜100μmに設定したセラミックス製の3本ローラーで混練し蛍光体ペーストを得た。
【0027】
次に、570×964mm、厚さ2.8mmのガラス基板(旭硝子(株)製)を使用してAC(交流)型プラズマディスプレイパネルの背面板を形成した。
【0028】
ガラス基板上に、アドレス電極として、感光性銀ペーストを用いてフォトリソグラフィー法により、ピッチ160μm、線幅65μm、焼成後厚み3μmのストライプ状電極を形成した。この部材上に酸化ビスマスを75質量%含有する低融点ガラスの粉末を60質量%、中心粒子径(D50 )0.3μmの酸化チタン粉末を10質量%、エチルセルロース15質量%、テルピネオール15質量%を混練して得られたガラスペーストをスクリーン印刷により、表示部分のアドレス電極が覆われるように50μmの厚みで塗布した後に、570℃で15分間の焼成を行って誘電体層を形成した。
【0029】
さらに、誘電体上に、段違い井桁構造の隔壁を形成する為に1層目の感光性ペーストを塗布した。感光性ペーストはガラス粉末と感光性成分を含む有機成分から構成され、ガラス粉末としては、酸化リチウム10重量%、酸化珪素25重量%、酸化硼素30重量%、酸化亜鉛15重量%、酸化アルミニウム5重量%、酸化カルシウム15重量%からなる組成のガラスを粉砕した平均粒子径2μmのガラス粉末を用いた。感光性成分を含む有機成分としては、カルボキシル基を含有するアクリルポリマー30重量%、トリメチロールプロパントリアクリレート30重量%、光重合開始剤である“イルガキュア369”(チバガイギー社製)10重量%、γ−ブチロラクトン30重量%からなるものを用いた。
【0030】
感光性ペーストは、これらのガラス粉末と感光性成分を含む有機成分を70:30の重量比率で混合した後に、ロールミルで混練して作製した。次にこの感光性ペーストをダイコーターで乾燥後厚み90μmになるように塗布した。乾燥は、クリーンオーブン(ヤマト科学社製)で行った。乾燥後、ピッチ480μm、線幅30μmのストライプパターンを有するフォトマスクを用いて、フォトマスクのストライプパターンの長手方向がアドレス電極と垂直になるように露光した。
【0031】
露光後、上記感光性ペーストをさらに塗布、乾燥し、90μmの塗布膜を得た。
【0032】
次に、ピッチ160μm、線幅30μmのストライプパターンを有するフォトマスクを用いて、フォトマスクのストライプパターンの長手方向がアドレス電極と平行になるように露光した。
【0033】
露光後、0.5重量%のエタノールアミン水溶液中で現像し、さらに、560℃で15分間焼成することにより、ピッチ160μm、線幅30μm、高さ130μmの隔壁とピッチ480μm、線幅30μm、高さ65μmの補助隔壁からなる段違い井桁構造の隔壁を形成した。
【0034】
このようにして形成された隔壁にピッチ480μm、孔径80μm、孔長300μmの1922個の吐出孔を有する塗布ヘッドを用いて塗布速度は100mm/secに固定し、ペースト吐出量が90μmになるように圧力を調整した後、隔壁と塗布ヘッド先端の距離を5μm刻みで変更させながら塗布を行った。なお、本実施例においてペースト吐出量とは、塗布後、乾燥前に蛍光体ペーストの流動が収まった状態で、隔壁間に塗布された蛍光体ペーストの厚さ、すなわち、主隔壁と補助隔壁に囲まれた表示セルの底面(誘電体層表面)から蛍光体ペースト上面までの高さを指す。その後、塗布速度は100mm/sec、隔壁と塗布ヘッド先端の距離を120μmで固定し、塗布圧力を変える事でペースト吐出量を5μm刻みで変えながら塗布を行った。
【0035】
蛍光体ペーストを塗布、180℃で15分乾燥させた後、焼成(500℃、30分)して隔壁の側面および底部に蛍光体層を形成し、蛍光体層の隔壁頂部への乗り上げの有無及びセル内の蛍光体層の塗布抜けの有無を確認した。蛍光体層が隔壁頂部に乗り上げている部分があると、前面板と張り合わせてPDPを製造する際に隔壁にクラックを生じ、飛散した蛍光体粉末が前面板に付着する事によって不灯セルが発生するという問題を起こす。また、セル内の蛍光体層の塗布抜けが存在すると、そのセルは不灯セルとなり表示欠点となる。
【0036】
(粒度分布測定方法)
レーザー光回折・散乱式の粒度分布計、日機装株式会社製Microtrac MT3000を使用した。
【0037】
(粘度の測定方法)
Rheotec社のB型粘度計RC20を用いた。ジオメトリはCC14を用いた。
【0038】
実施例及び比較例の結果を下表に記す。
【0039】
表中のクリアランスマージンとは安定塗布できる吐出孔と隔壁頂部間の距離がどれだけ許容されているかを示しており、許容幅が60μm以上だと◎、40μm以上60μm未満だと○、40μm未満は×としている。ウェットマージンとは安定塗布できるペースト吐出量がどれだけ許容されていいるかを示しており、安定塗布できるペースト吐出量の最大値と最小値の差を許容幅として、許容幅が30μm以上だと◎、20μm以上30μm未満だと○、20μ未満は×と示している。連続塗布安定性は吐出孔からのペースト吐出が連続で何回塗布するとノズル詰まりなどで安定塗布が不可になるかを示している。2000ショット以上は◎、1600以上2000未満ショットは○、1000以上1600ショット未満で△、1000ショット未満で×としている。本実験では◎、○及び△は合格、×は不合格とした。
【0040】
指数DIが0.1〜1.0且つη1.2が20〜150Pa・sである場合はペースト塗布結果においても良好な塗布性を示した。これに対して、比較例として指数DIが1.0を越えるとペーストが塗布の際にバラス効果を起こし塗布性が悪かった。指数DIが0.1以下になると吐出孔からのペースト吐出が困難になり塗布性が悪くなった。η1.2が20Pa・sより小さくなると吐出孔からペーストが染みだし塗布性が悪くなった。η1.2が150Pa・sを越える場合は吐出孔からペーストが吐出しにくく塗布性が悪くなった。
【0041】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体粉末、有機溶媒、バインダー樹脂及び分散剤を含む蛍光体ペーストであって、25℃、ずり速度1.2s−1における粘度をη1.2、25℃、ずり速度1000s−1における粘度をη1000としたときに、下式(1)で定義される指数DIが0.1〜1.0の範囲内であり、かつ、η1.2が20〜150Pa・sの範囲内であることを特徴とする蛍光体ペースト。
DI=η1.2/η1000 (1)
【請求項2】
さらにα−1,4グルガンを含むことを特徴とする請求項1に記載の蛍光体ペースト。
【請求項3】
複数の吐出孔を有する塗布ヘッドを用い、前記吐出孔から蛍光体ペーストを柱状に吐出して基板上に塗布、乾燥、焼成する工程を含むディスプレイパネルの製造方法であって、前記蛍光体ペーストとして請求項1または2に記載の蛍光体ペーストを用いることを特徴とするディスプレイパネルの製造方法。

【公開番号】特開2011−253708(P2011−253708A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126587(P2010−126587)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】