蛍光体及びディスプレイ装置
【課題】電界放出型および表面伝導型の薄型のディスプレイ装置において、電子源の汚染および蛍光体の経時的輝度劣化によるディスプレイの輝度の低下を抑制し得るディスプレイ装置及びこれに用いられる蛍光体を提供する。
【解決手段】蛍光体は、硫化亜鉛を母体とし、表面に燐酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)の被覆層を備える。ディスプレイ装置1は、蛍光膜3に対向する基板4上に設けられ、蛍光膜3に対向する電子源10と、電子源10から放出される電子線によって励起される前記蛍光体からなる蛍光膜3を組み込んだスクリーンとを備える。
【解決手段】蛍光体は、硫化亜鉛を母体とし、表面に燐酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)の被覆層を備える。ディスプレイ装置1は、蛍光膜3に対向する基板4上に設けられ、蛍光膜3に対向する電子源10と、電子源10から放出される電子線によって励起される前記蛍光体からなる蛍光膜3を組み込んだスクリーンとを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体及びディスプレイ装置に関し、FED(電界放出型ディスプレイ)等、スクリーンに電子線励起蛍光体を用いた薄型のディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ装置に関する開発は、PDP(プラズマディスプレイ)、LCD(液晶ディスプレイ)において精力的に行われている。これらのディスプレイは、薄型かつ大画面に構成することが可能であるという特徴を有しており、ホームシアター用のものまで製品化が進められている。但し、陰極線管を用いたカラーテレビジョン装置(CRT)は、鮮明な画像を表示し得る点において有利である。そこで、この従来のCRTの構成の特徴である蛍光面とこの蛍光面に電子ビームをあてる電子銃とを有する薄型のディスプレイとして、FED(電界放出型ディスプレイ)が考えられている。この電界放出型ディスプレイは、鮮明な画像を提供するという点でPDP、LCDを凌駕するものとして期待されている。
【0003】
電界放出型ディスプレイは、赤色、緑色、青色の蛍光体がストライプ状又はドット状に配列されたスクリーンと、このスクリーンに対してCRTよりも狭い間隔で対向するカソードを備えている。カソードには、赤色、緑色、青色の各蛍光体に対応して三角錐型の電子源がエミッタ素子として複数配置され、その近傍に配置されたゲート電極との電位差に応じて電子を放出するようになされている。
【0004】
放出された電子は、蛍光体側のアノード電圧(加速電圧)により加速されて蛍光体に衝突し、これにより蛍光体が発光するようになされている。
【0005】
ところでかかる構成の電界放出型ディスプレイにおいては、カソードと蛍光体側のアノードとの間の距離がCRTに比べて小さいこと、スクリーンの蛍光体を発光させるための電子線の加速電圧(約2〜10kV)がCRTにおける加速電圧(25〜35kV)に比べて低く、逆にその電流密度が高密度であることにより、CRT用の蛍光体に比べて、電子線の衝突によって経時的な劣化を生じ易い。特に電界放出型ディスプレイのように加速電圧が低い低エネルギー陰極線ディスプレイにおいては、スクリーンの画面輝度やエネルギー効率が減少することにより、この不足分を補うために、CRTに比べて、高密度で励起エネルギーを蛍光体にかける必要がある。よって、このスクリーンに使用する蛍光体としては、十分に高い発光効率を有し、高電流密度の励起において飽和に至った時に十分に高い発光効率を示すことが要求される。これまでCRT用蛍光体に用いられてきた硫化物系蛍光体(ZnS:Cu、ZnS:Ag)はこの候補となり得る。
【0006】
しかしながら、低エネルギー陰極線ディスプレイスクリーンの励起条件下では、ZnSのような硫化物は、非特許文献1、非特許文献2に示されるように分解することが報告されている。低エネルギー電子の侵入深さが低いため、蛍光体粒子表面層での反応が増加するためと考えられる。
【0007】
かかる課題を解決するための一つの方策として、特許文献1ではアルカリ土類金属、亜鉛およびマンガンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素のリン酸塩の1種以上を含有するコーティングを設けることで、硫化物を含有する蛍光物質の蛍光組成物を含むディスプレイスクリーンにおいて、輝度維持率が改善され、長時間の使用によっても発光輝度の低下の程度が小さく、高輝度の発光を呈する効果があることを示している。
【0008】
また、特許文献1ではアルカリ土類元素、亜鉛およびマンガンの中のすくなくとも1種の金属元素の燐酸塩化合物を、S(硫黄)を含んだ蛍光体に対して施すことで、蛍光体の経時的な輝度変化を抑制すること示している。しかしながら、具体的な化合物は示されてはいない。また、燐酸塩化合物の量も寿命の点から下限値を示し、寿命の点に関しての上限値が存在することが示されていない。
【特許文献1】特開2000−96045
【非特許文献1】B.L.Abrams, W.Roos,P.H.Holloway,H.C.Swart,Surface Science 451(2000)p.174-181.
【非特許文献2】H.C.Swart, J.S.Sebastian, T.A.Trottier, S.L.Jones, and P.H.Holloway,J.Vac.Sci.Technol.A14(3)(1996)p.1697-1703.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、電界放出型ディスプレイのような低エネルギー陰極線ディスプレイスクリーンの励起条件下では、非特許文献1、非特許文献2において、次式、
2ZnS+3O2 → 2ZnO + 2SO2↑
ZnS+H2 → Zn↑+ H2S↑
に示されるようにH2S、SO2ガスが生成されることが報告されている。
【0010】
ここで、例えば、電子源にカーボン・ナノ・チューブを用いた電界放出型ディスプレイ(FED)もしくは、酸化パラジウム薄膜を用いた表面伝導型ディスプレイ(SED)においては、電子線照射によって、上記式の反応等による蛍光体自体の分解、非発光層の形成、もしくは着色から生じる発光輝度の低下が起こる。また、蛍光体の分解ガスによる電子源の汚染からくる電子放出効率の低下も生じる。したがって、これまでのCRTで達成されていた数千時間での作動でも十分な輝度維持することが示すことが難しくなる。この改良が強く望まれていた。
【0011】
本発明は、このような技術的課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、電界放出型ディスプレイ(FED)や表面伝導型ディスプレイ(SED)などのディスプレイ装置において、蛍光体自体の輝度変化や電子源の汚染によるディスプレイの輝度の低下を抑制し得る蛍光体及びこの蛍光体を用いたディスプレイ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施の形態に係る特徴は、硫化亜鉛を母体とする蛍光体であって、表面にMg3(PO4)2の構造式で表されるマグネシウムの燐酸塩化合物の被覆層を備えることである。
【0013】
また本発明の実施の形態に係る特徴は、ディスプレイ装置において、基板上に設けられた電子源と、電子源に対向する蛍光膜を組み込んだスクリーンとを備え、蛍光膜は、電子源から放出される電子線によって励起される硫化亜鉛を母体とする蛍光体であって、表面にMg3(PO4)2の構造式で表されるマグネシウムの燐酸塩化合物の被覆層を備えた蛍光体からなることである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、蛍光体自体の分解や組成変化からくる輝度劣化を抑制し、かつ、電子源であるエミッタ素子の汚染に起因する電子放出特性の劣化を抑制し、輝度・寿命に優れ、高画質のディスプレイ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態の例である電界放出型ディスプレイ(FED)や表面伝導型ディスプレイ(SED)などの薄型のディスプレイ装置について説明する。このFEDおよびSEDについて、図面を参照して詳細に説明する。以下の図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付し、重複する記載は省略する。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1(a)に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るディスプレイ装置1は、棒状の炭素分子であるカーボン・ナノ・チューブ2を電子源とする電界放出型ディスプレイ(FED)であって、硫化亜鉛(ZnS)を母体とする蛍光体にMg3(PO4)2の構造式で表されるマグネシウムの燐酸塩化合物を被覆したものを蛍光膜3に用いるようになされている。
【0017】
なお、カーボン・ナノ・チューブは、長手方向の寸法を含めて数nm(ナノ・メートル=10−9m)から数十nmの非常に微細な物質であるが、図1(a)、(b)にはこれを拡大して示す。
【0018】
図1(a)に示すように、ディスプレイ装置1は、電子を放出するための電子源が設けられた基板4と、電子源から放出された電子が衝突することにより発光する蛍光膜3が設けられたフェースプレート5とが対向配置されている。基板4とフェースプレート5との間の空隙は、基板4及びフェースプレート5の周囲に設けられた側壁(図示せず)によって気密性が保たれるようになされており、真空状態に維持される。フェースプレート5は、例えばガラス基板によって形成され、このフェースプレート5の基板4に対向する面部には蛍光膜3が形成される。また蛍光膜3にはアノードとしてアルミニウム膜6が形成されている。
【0019】
図2に示すように、蛍光膜3においては、スラリー塗布、露光、現像を順次繰り返すことにより、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3原色の蛍光体がストライプ状に塗り分けられている。緑色及び青色の蛍光体は、硫化亜鉛(ZnS)を母体とし、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)の少なくとも1種を付活剤として含有すると共に、アルミニウム(Al)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)の少なくとも1種を共付活剤として含有する蛍光体であり、その表面にアルカリ土類の燐酸塩化合物を被覆している。また赤色の蛍光体は、イットリウムのオキシ硫化物(Y2O2S)を主成分とする蛍光体である。なお赤色、緑色、青色の各蛍光体の配列は、ドット状に配列するようにしてもよい。また蛍光膜3の形成方法としては、スプレー法や印刷法を用いてもよい。
【0020】
蛍光体の各ストライプの間には黒色の導電体7が設けられている。黒色の導電体7を設けることにより、電子ビームの照射位置に多少のずれがあっても表示色にずれが生じないようにすることができ、また外光の反射を防止して表示コントラストの低下を防ぐことができ、また電子ビームによる蛍光膜のチャージアップを防止することができる。黒色の導電体7には、黒鉛を主成分として用いたが、上記の効果を得るものであればこれ以外の材料を用いても良い。
【0021】
図1(a)、(b)に示すように、基板4上には、電子を放出するためのエミッタ素子10が赤色、緑色、青色の各蛍光体に対応して複数設けられている。なお図1においては、複数配置されたエミッタ素子の1つについて示している。このエミッタ素子10においては、カソード9と絶縁材11とが順次積層されており、絶縁材11には開口部11aが形成され、これによりこの開口部11aを介してカソード9の一定範囲が蛍光膜3側に露出するようになされている。基板4としては、例えば、石英ガラス又は青板ガラス等の各種ガラス基板、アルミナ等の各種セラミクス基板、あるいは上述の各種基板上に例えば酸化シリコン(SiO2)を材料とする絶縁層を積層した基板等を用いることができる。
【0022】
開口部11a内のカソード9には、一定範囲に亘って電子源であるカーボン・ナノ・チューブ2が設けられている。カーボン・ナノ・チューブ2のように微細な物質をカソード9に固定するに際し、複数のカーボン・ナノ・チューブ2を銀等の導電性ペーストに分散させ、これを絶縁材11の開口11a又は隙間から露出したカソード9の上面に滴下し、導電性ペーストを硬化させて導電膜13を形成する。これにより、カーボン・ナノ・チューブ2は導電膜13の表面に一定の面積をもって分散配置される。
【0023】
すなわち電子源であるカーボン・ナノ・チューブ2は、蛍光膜3に対向する基板4上において一定範囲の電子放出領域を形成している。
【0024】
このように導電膜13に固定されたカーボン・ナノ・チューブ2においては、その先端部が膜形状の導電膜13の面部から突出し、この吐出した部分と制御電極(ゲート電極)15との間に素子印加電圧Vf(電位差ΔV)を与えることにより、カーボン・ナノ・チューブ2の先端部から電子を放出させる。放出した電子は、カソード9と蛍光膜3側のアノード(アルミニウム膜6)との間に印加された加速電圧Vaによって加速され、蛍光膜3に衝突する。この電子の衝突によって蛍光膜3を発光させることができる。
【0025】
次に、蛍光膜3の蛍光体について説明する。図3は図1に示したディスプレイ装置1の蛍光膜3を構成する蛍光体21の構造を模式的に説明するための図である。図3に示すように、蛍光体21は、電子源から放出される電子によって励起する蛍光体であり、緑色及び青色の各蛍光体粒子は、硫化亜鉛(ZnS)を母体として、Cu、Au、Agの少なくとも1種類を付活剤とし、アルミニウム(Al)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)の少なくとも1種を共付活剤として含有する蛍光体であり、その表面にアルカリ土類の燐酸塩化合物による被覆層23を形成している。また赤色の蛍光体は、例えばユーロピウム付活酸硫化イットリウム(Y2O2S:Eu)等の希土類オキシ硫化物蛍光体である。
【0026】
本実施の形態においては、硫化亜鉛を母体とする緑色及び青色の蛍光体をアルカリ土類の燐酸塩化合物により被覆することにより、蛍光体が高密度の電子線にさらされた場合であっても、分解ガスの発生を抑制して、この分解ガスが電子源である電子放出部に付着することを防止するようになされている。
【0027】
この実施の形態において、蛍光体21の被覆層23は、上述した燐酸塩化合物として、リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)の組成で表される物質からなるものである。リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)は、蛍光体の分解を抑え、雰囲気中の水分を乾燥させる作用を有することから、蛍光体21の分解による電子源(カーボン・ナノ・チューブ2及び導線膜13)の汚染を抑制、ならびに蛍光体自体の輝度劣化を抑制する性質を有する。これにより、このマグネシウムのリン酸化合物を蛍光体に均一にコーティングすることによって、蛍光体の発光効率の耐劣化特性ならびに電子源の電子放出の耐劣化性を高めることができる。
【0028】
また、この被覆層23は透明性に優れることにより、初期輝度の低下が少ない。従って、蛍光体21にこの被覆層23を形成することにより、電子放出特性、蛍光体発光特性の経時的な低下を抑制しつつ、良好な発光輝度を得ることが可能となる。
【0029】
ここで、ZnS:Cu、Au、Al(Cu、Auを付活剤、Alを共付活剤として含有する硫化亜鉛蛍光体)に対して、被覆層23としてリン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)を0.05重量%コーティングした蛍光体により構成される蛍光膜3が設けられたディスプレイ装置1と、ZnシリケートがコーテイングされているZnS:Cu、Au、Al蛍光体からなる蛍光膜が設けられたディスプレイ装置との電子放出特性の比較として、(放出電流Ie)対(素子印加電圧Vf)特性、および(素子電流If)対(素子印加電圧Vf)特性の典型的な例を図4に示す。
【0030】
図4に示すように、リン酸マグネシウムがコーティングされた蛍光体21を用いたディスプレイ装置1の放出電流Ie1は、Znシリケートがコーティングされた蛍光体を用いたディスプレイ装置の放出電流Ie2に比べて大きく、電子放出効率が改善されている。
【0031】
また電子放出効率Ie/Ifも3000時間経過後も低下が見られなかった。
【0032】
このディスプレイパネルの10kV放射エネルギーの電子線促進寿命試験の結果は、Znシリケート処理を施したZnS:Ag、Al及びZnS:Cu、Al蛍光体を搭載したディスプレイスクリーンの効率I/I0はその初期に著しく減少し、最終的に初期値の30%程度で一定にとどまるが、本実施の形態にかかる蛍光体を有するディスプレイスクリーンの画面輝度はわずかにしか減少せず、初期値の約80%で一定にとどまる。
【0033】
被覆層23の具体的な形成方法については実施例1から8において説明する。
【0034】
以上説明したように、電子源としてカーボン・ナノ・チューブ2を導電膜13の比較的広い面積に分散して配置した電界放出型のディスプレイ装置1においては、三角錐形状の素子の頂点を電子源とするスピンド型の電界放出ディスプレイに比べて電子源の数が多くなっている。このことは、蛍光膜3において発生する分解ガスが電子源に付着し易いことを意味する。
【0035】
この実施の形態に係るディスプレイ装置1においては、蛍光膜3の蛍光体21にアルカリ土類の燐酸塩化合物を被覆することにより、電子線による分解ガスの発生を抑制する。
【0036】
これにより、電子源であるカーボン・ナノ・チューブ2に蛍光体21の分解ガスが付着することを抑制して、電子放出特性の劣化を回避および蛍光体の発光効率の低下を回避することができる。
【0037】
また、水分も電子源汚染の一因となると考えられるが、リンの酸化物(P2O5)は酸性雰囲気中では脱水作用があることが知られており、燐酸塩化合物も類似した効果をもち、コーティング層自身が、残留水分を吸着し、電子源の汚染を低減することができる。
【0038】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施形態に係るディスプレイ装置31は、図5に示すように、電子線を放出するための電子源であり、蛍光膜に対向する基板において一定範囲を電子放出領域とするエミッタ素子と、エミッタ素子の電子線を放出する部位に対向し、電子源から放出される電子線によって励起される硫化亜鉛を母体とする蛍光体であって、表面にMg3(PO4)2の構造式で表されるマグネシウムの燐酸塩化合物を被覆した蛍光体により形成される蛍光膜を組み込んだスクリーンとを備えている。なお図5において、図1と同一の部分には同一符号を付してその重複した説明は省略する。
【0039】
図5に示すディスプレイ装置31は、電子を放出するための電子源である膜形状のエミッタ素子32が設けられた基板4と、エミッタ素子32から放出された電子が衝突することにより発光する蛍光膜3が設けられたフェースプレート5とが対向配置されている。基板4とフェースプレート5との間の空隙は、基板4及びフェースプレート5の周囲に設けられた側壁(図示せず)によって気密性が保たれるようになされており、真空状態に維持される。
【0040】
フェースプレート5は、例えばガラス基板によって形成され、このフェースプレート5の基板4に対向する面部には蛍光膜3が形成されている。
【0041】
蛍光膜3においては、図3について上述したように、赤色、緑色、青色、の3原色の蛍光体がストライプ状に塗り分けられている。緑色及び青色の蛍光体は、第1の実施形態の場合と同様にして、硫化亜鉛(ZnS)を母体とし、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)の少なくとも1種を付活剤として含有すると共に、アルミニウム(Al)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)の少なくとも1種を共付活剤として含有する蛍光体であり、その表面にアルカリ土類の燐酸塩化合物を被覆している。また赤色の蛍光体は、イットリウムのオキシ硫化物(Y2O2S)を主成分とする蛍光体である。なお赤色、緑色、青色の各蛍光体の配列は、ドット状に配列するようにしてもよい。また、蛍光体の各ストライプの間には黒色の導電体7(図2)が設けられている。
【0042】
図6(a)、(b)に示すように、基板4上には、電子を放出するためのエミッタ素子32が赤色、緑色、青色の各蛍光体に対応して複数設けられている。なお図6においては、複数配置されたエミッタ素子の1つを示している。このエミッタ素子32は、基板4上に形成された素子電極35、36と、基板4の表面及び素子電極35、36の表面に亘って形成された導電性薄膜37と、導電性薄膜37において通電フォーミング処理により形成された亀裂状の電子放出部38と、電子放出部38の両側において導電性薄膜37の表面に通電活性化処理により形成された薄膜39とを備えている。電子放出部38は、基板4上において一定範囲の電子放出領域Sを形成している。
【0043】
基板4としては、例えば、石英ガラス又は青板ガラス等の各種ガラス基板、アルミナ等の各種セラミクス基板、あるいは上述の各種基板上に例えば酸化シリコン(SiO2)を材料とする絶縁層を積層した基板等を用いることができる。
【0044】
また、基板4上に互いに対向して設けられた素子電極35、36は、導電性を有する材料によって形成されている。この素子電極35、36としては、例えば、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、金(Au)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、白金(Pt)、チタン(Ti)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)等の金属、あるいはこれらの金属の合金、あるいはIn2O3−SnO2をはじめとする金属酸化物、ポリシリコンなどの半導体、等の中から適宜材料を選択して用いればよい。素子電極35、36を形成する方法としては、たとえば真空蒸着などの製膜技術とフォトリソグラフィー、エッチングなどのパターニング技術とを組み合わせて用いれば容易に形成できるが、それ以外の例えば印刷技術等を用いて形成してもよい。
【0045】
素子電極35、36の形状は、ディスプレイ装置31の構造に合わせて適宜設計される。
【0046】
素子電極35、36の電極間隔Lは、数十ナノメートル(nm)から数百マイクロメートル(μm)の範囲が望ましい。この実施形態においては、この電極間隔Lを、表示装置に応用するためにより望ましい数マイクロメートルから数十マイクロメートルの範囲に設定する。素子電極35、36の厚さDは、数十nmから数μmの範囲に設定する。
【0047】
また、導電性薄膜37としては、微粒子膜を用いる。この微粒子膜に用いる微粒子の粒径は、数百ピコメートル(pm)から数百nmの範囲が望ましく、この実施形態においては、数nmから20nmの範囲に設定する。
【0048】
また、この微粒子膜の膜厚は、素子電極35、36と電気的に良好に接続するために必要な条件、後述する通電フォーミングを良好に行うために必要な条件、微粒子膜自身の電気抵抗を後述する適宜の値にするために必要な条件等を考慮して適宜設定する。具体的には、数百pmから数百nmの範囲が望ましく、この実施形態においては、1nmから50nmの範囲に設定する。
【0049】
また、導電性薄膜37を形成するのに用いられ得る材料としては、例えば、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、銀(Ag)、金(Au)、チタン(Ti)、インジウム(In)、銅(Cu)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、鉛(Pb)、等の金属、PdO、SnO2、In2O3、PbO、Sb2O3などをはじめとする酸化物、HfB2、ZrB2、LaB6、CeB6、YB4、GdB4などをはじめとする硼化物、TiC、ZrC、HfC、TaC、SiC、WCなどをはじめとする炭化物や、TiN、ZrN、HfNなどをはじめとする窒化物や、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)などをはじめとする半導体、カーボンなどがあげられ、これらの中から適宜選択される。
【0050】
以上述べたように、導電性薄膜37を微粒子膜で形成したが、そのシート抵抗値については、103〜107Ω/cm2の範囲に含まれるよう設定した。
【0051】
なお、導電性薄膜37と素子電極35、36とは、電気的に良好に接続されることが望ましいため、互いの一部が重なりあうような構造としている。その重なり方は、図6(b)に示す構成においては、基板4、素子電極35、36、導電性薄膜37の順序で積層したが、必要に応じて基板4、導電性薄膜37、素子電極35、36の順序で積層するようにしてもよい。
【0052】
また、電子放出部38は、導電性薄膜37の一部に形成された亀裂状の部分であり、電気的には周囲の導電性薄膜37よりも高抵抗な性質を有している。この亀裂は、導電性薄膜37に対して、通電フォーミングの処理を行うことにより形成する。通電フォーミング処理とは、微粒子膜で形成された導電性薄膜37に通電を行ってその一部を破壊、変形、変質させることにより、電子放出を行うために好適な構造に変化させる処理である。亀裂内には、数百pmから数十nmの粒径の微粒子を配置する場合がある。なお、実際の電子放出部38の位置や形状を精密かつ正確に図示するのは困難なため、図5、図6においては模式的に示している。
【0053】
また、薄膜39は、炭素又は炭素化合物よりなる薄膜であり、電子放出部38及びその近傍を被覆している。薄膜39は、通電フォーミング処理後に、通電活性化の処理を行うことにより形成する。通電活性化処理とは、真空雰囲気中で電圧パルスを定期的に印加することにより、真空雰囲気中に存在する有機化合物を起源とする炭素又は炭素化合物を堆積させる処理である。この堆積物は、単結晶グラファイト、多結晶グラファイト、非晶質カーボンのいずれか、もしくはその混合物であり、膜厚は50nm以下とするが、30nm以下とするのがさらに好ましい。
【0054】
なお、実際の薄膜39の位置や形状を精密に図示するのは困難なため、図5、図6においては模式的に示している。
【0055】
以上説明した構成のエミッタ素子32を有するディスプレイ装置31において、素子電極35、36間に10数ボルトの電圧(Vf)を印加することにより、導電性薄膜37に形成された亀裂状の電子放出部38の一方の端部から電子が放出され、その電子の一部が他方の端部で散乱される。この散乱した電子は、10キロボルト程度のアノード電圧Vaによって加速されて、蛍光膜3の蛍光体に衝突する。この衝突により蛍光体が発光する。
【0056】
次に、蛍光膜3の蛍光体について説明する。この実施の形態の蛍光体は、図3について上述した第1の実施の形態の蛍光体21と同様の蛍光体であり、緑色及び青色の各蛍光体粒子は、硫化亜鉛(ZnS)を母体として、Cu、Au、Agの少なくとも1種類を付活剤とし、アルミニウム(Al)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)の少なくとも1種を共付活剤として含有する蛍光体であり、その表面にアルカリ土類の燐酸塩化合物による被覆層23を形成している。また赤色の蛍光体は、例えばユーロピウム付活酸硫化イットリウム(Y2O2S:Eu)等の希土類オキシ硫化物蛍光体である。
【0057】
このように、硫化亜鉛を母体とする緑色及び青色の蛍光体をアルカリ土類の燐酸塩化合物により被覆することにより、蛍光体が高密度の電子線にさらされた場合であっても、分解ガスの発生を抑制して、この分解ガスが電子源である電子放出領域S(図6(a))に付着することを防止するようになされている。
【0058】
蛍光体21の被覆層23は、上述したアルカリ土類の燐酸塩化合物として、リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)からなるものである。リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)は、蛍光体の分解を抑える作用を有することから、蛍光体の分解による電子放出領域Sの汚染を抑制する性質を有する。これにより、このマグネシウムのリン酸化合物を蛍光体に均一にコーティングすることによって、電子源側の電子放出の耐劣化性を高めることができる。
【0059】
また、この被覆層23は透明性に優れることにより、初期輝度の低下が少ない。従って、蛍光体21にこの被覆層23を形成することにより、電子放出特性の経時的な低下を抑制しつつ、良好な発光輝度を得ることが可能となる。
【0060】
ここで、ZnS:Cu、Au、Al(Cu、Auを付活剤、Alを共付活剤として含有する硫化亜鉛蛍光体)に対して、被覆層23としてリン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)を0.05質量%コーティングした蛍光体により構成される蛍光膜3が設けられたディスプレイ装置31と、ZnシリケートがコーテイングされているZnS:Cu、Au、Al蛍光体からなる蛍光膜が設けられたディスプレイ装置との電子放出特性として、(放出電流Ie)対(素子印加電圧Vf)特性、および(素子電流If)対(素子印加電圧Vf)特性の典型的な例を図7に示す。
【0061】
図7に示すように、リン酸マグネシウムがコーティングされた蛍光体21を用いたディスプレイ装置31の放出電流Ie1は、Znシリケートがコーティングされた蛍光体を用いたディスプレイ装置の放出電流Ie2に比べて大きく、電子放出効率が改善されている。
【0062】
Ie/If=1.0%であり、3500時間経過後もこの放出効率の維持率の低下が見られなかった。
【0063】
10kVの放射エネルギーの電子線促進寿命試験結果は、Znシリケート処理を施したZnS:Ag、Al及びZnS:Cu、Al蛍光体を搭載したディスプレイスクリーンの効率I/I0(I0は初期の輝度、Iは一定時間経過後の輝度を表す)は、その初期に著しく減少し、最終的に初期値の20%程度で一定にとどまるが、本実施形態にかかる蛍光物質を有するディスプレイスクリーンの画面輝度はわずかにしか減少せず、初期値の約80%で一定にとどまる。
【0064】
図8に示すように、電子放出効率(Ie/If)は、電子線照射時間hrの経過と共に低下するが、本実施の形態の被覆層23を形成した蛍光体21を用いたディスプレイ装置31における電子放出率(Ie/If)1は、Znシリケート処理を施したディスプレイ装置における電子放出率(Ie/If)2に比べて3000時間経過しても高い効率を維持する。
【0065】
被覆層23の具体的な形成方法については実施例1から8において説明する。
【0066】
以上説明したように、電子源として亀裂状の電子放出部38を有するエミッタ素子32を用いたディスプレイ装置31においては、電子放出部38と蛍光膜3との間の距離が小さく、これらの真空封入管の空間が狭いため、生成ガスがCRTのように側壁に吸着することも少なく、このガスの排気も難しい。またエミッタ素子32においては、三角錐形状の素子の頂点を電子放出部とする電界放出ディスプレイ(FED)に比べて電子放出領域Sの面積が大きい。このことは、蛍光膜3において発生する分解ガスが電子放出領域Sに付着し易いことを意味する。
【0067】
この実施の形態に係るディスプレイ装置31においては、亀裂状の電子放出部38を有するエミッタ素子32を用いた構成において、蛍光膜3の蛍光体21にアルカリ土類の燐酸塩化合物を被覆することにより、電子線による分解ガスの発生を抑制することができる。
【0068】
これにより、電子源であるエミッタ素子32の電子放出領域Sに蛍光体の分解ガスが付着することを抑制して、電子放出特性の劣化を回避することができる。
【0069】
また、水分も電子源汚染の一因となると考えられるが、リンの酸化物(P2O5)は酸性雰囲気中では脱水作用があることが知られており、燐酸塩化合物も類似した効果をもち、コーティング層自身が、残留水分を吸着し、電子源の汚染を低減ならびに蛍光体の発光効率の維持が図ることができる。
【0070】
(蛍光体の被覆層)
上述の第1及び第2の実施の形態に用いられる蛍光体21の被覆層23について説明する。
【0071】
後述する実施例及び比較例では、リン酸マグネシウム処理、メタリン酸マグネシウム処理又はメタリン酸カルシウム処理によって被覆層23付きの蛍光体21を作製しており、図9は、これらの各処理において被覆層23付きの蛍光体21を作製する際の表面処理原料であるマグネシウム(Mg)原料もしくはカルシウム(Ca)原料の作成時の仕込み量と、蛍光体21の表面に実際に生成された被覆層23について化学分析によって求めたマグネシウム(Mg)もしくはカルシウム(Ca)量(これをコーティング量(重量%)と呼ぶ)との関係を示すグラフである。なお、コーティング量とは、母体(蛍光体21)及び被覆層23を含めた蛍光体全体に対する重量%を表すものである。このコーティング量を求めるための化学分析方法は、誘導結合プラズマ発光分析法(ICPS)を用いる。
【0072】
図9において、特性曲線C1は、リン酸マグネシウム処理における仕込み量とコーティング量との関係を示し、特性曲線C2は、メタリン酸マグネシウム処理における仕込量とコーティング量との関係を示し、特性曲線C3は、メタリン酸カルシウム処理における仕込量とコーティング量との関係を示す。後述する各実施例及び各比較例では、種々の仕込み量で被覆層23を形成しており、この図9に示す関係より、各実施例及び各比較例において実際に生成されたコーティング量を求めることができる。
【0073】
また、各実施例や比較例においてリン酸マグネシウム処理により種々のコーティング量の被覆層23が生成された各蛍光体21や各比較例においてメタリン酸マグネシウム処理やメタリン酸カルシウム処理により被覆層が生成された各蛍光体を第2の実施の形態のディスプレイ装置31(図5、図6)に組み込んだ場合のコーティング量と蛍光膜3(ディスプレイパネル)の寿命改善度との関係を図10に示す。寿命改善度とは、各被覆した蛍光体を組み込んだパネル輝度が初期の80%になるまでの時間を、何も被覆しなかった蛍光体を組み込んだパネルのパネル輝度が初期の80%になるまでの時間で割った値である。
【0074】
図10において、特性曲線C11は、各実施例や各比較例のリン酸マグネシウム処理におけるコーティング量と寿命改善度との関係を示し、プロットP11は、実施例1及び実施例4により作製された被覆層23付きの蛍光体21のコーティング量と寿命改善度との関係を示し、プロットP12は、実施例2及び実施例5により作製された被覆層23付きの蛍光体21のコーティング量と寿命改善度との関係を示し、プロットP13は、実施例3及び実施例6により作製された被覆層23付きの蛍光体21のコーティング量と寿命改善度との関係を示し、プロットP14は、比較例1及び比較例6により作製された被覆層23付きの蛍光体21のコーティング量と寿命改善度との関係を示し、プロットP15は、比較例2及び比較例7により作製された被覆層23付きの蛍光体21のコーティング量と寿命改善度との関係を示し、プロットP16は、比較例3及び比較例8により作製された被覆層23付きの蛍光体21のコーティング量と寿命改善度との関係を示し、プロットP17は、比較例4及び比較例9により作製された被覆層23付きの蛍光体21のコーティング量と寿命改善度との関係を示し、プロットP18は、比較例5及び比較例10により作製された被覆層23付きの蛍光体21のコーティング量と寿命改善度との関係を示す。
【0075】
また図10において、特性曲線C21は、比較例11、12、13、14のメタリン酸マグネシウム処理におけるコーティング量と寿命改善度との関係を示し、特性曲線C31は、比較例15、16、17、18のメタリン酸カルシウム処理におけるコーティング量と寿命改善度との関係を示す。
【0076】
図10に示すように、リン酸マグネシウムのコーティング量が増加するにつれて、パネル寿命が延びるが、あるコーティング量以上では寿命が短くなることがわかる。この図10に示す結果に基づき、被覆層23に用いられるマグネシウムのリン酸塩は、Mgに換算して、0.01〜0.15重量%の範囲になるようにコーティングすることが好ましい。この範囲では、パネル寿命の改善が認められるからである。ただし、実用的なパネル寿命を得る上で、マグネシウム燐酸塩によるコーティング量はMgに換算して、0.03質量%以上であることが好ましい。これらにより、この実施の形態においては、コーティング量を0.03〜0.15重量%の範囲に設定する。
【0077】
このようにして製造したコーティングは約4nmの厚さを有する。コーティング膜厚は、透過型電子顕微鏡(TEM)で分析することができる。表面を構成している元素を確認するための分析手段として、Auger エレクトロン スペクトロスコピー測定法により、コーティングが蛍光物質基材を完全に覆うことを確かめることができる。このコーティングは親水性であり、通常のコーティングと親和性があり、その後に設けられる、他のコーティングのための基底層として適切に用いて、この物質の粉体特性又は彩度を改良することができる。このコーティングはそれ自体、劣化の信号を何も示さない。電子線照射試験が示すところでは、電子放出効率の向上と安定が図られ、全体として、コーティングによりそのディスプレイの寿命が向上する。後述する比較例1〜21までの被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0078】
図11は、上記寿命改善度が、加熱気体分析時の放出二酸化硫黄(SO2)量でどのように変化するかを示したものである。加熱気体分析とは、ヘリウム雰囲気中で、室温(30℃)から昇温速度20℃/minで1000℃まで昇温させた場合に発生する気体を分析した結果であり、二酸化硫黄(SO2)の発生量は、重量%によって表される。この重量%は、二酸化硫黄(SO2)量を、分析した蛍光体重量(母体及び被覆層を含む全体の重量)で割った結果である。
【0079】
図11において、プロットP21は、実施例7のリン酸マグネシウム処理により作製された被覆層23付きの蛍光体21の放出二酸化硫黄(SO2)量とこれを用いたディスプレイパネルの寿命改善度との関係を示し、プロット22は、実施例8のリン酸マグネシウム処理により作製された被覆層23付きの蛍光体21の放出二酸化硫黄(SO2)量とこれを用いたディスプレイパネルの寿命改善度との関係を示し、プロット23は、比較例19のリン酸マグネシウム処理により作製された被覆層23付きの蛍光体21の放出二酸化硫黄(SO2)量とこれを用いたディスプレイパネルの寿命改善度との関係を示し、プロット24は、比較例20のリン酸マグネシウム処理により作製された被覆層23付きの蛍光体21の放出二酸化硫黄(SO2)量とこれを用いたディスプレイパネルの寿命改善度との関係を示し、プロット25は、比較例21のリン酸マグネシウム処理により作製された被覆層23付きの蛍光体21の放出二酸化硫黄(SO2)量とこれを用いたディスプレイパネルの寿命改善度との関係を示す。
【0080】
この図11に示されるように、被覆が十分になされて、放出二酸化硫黄(SO2)量が1×10-2重量%以下である場合には、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0以上となり、寿命改善がなされていることが分かる。
【0081】
次に、被覆層23の具体的な形成方法と比較例を説明する。
【0082】
(実施例1)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
4.5gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Ag、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、46gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。
【0083】
この実施例1によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP11となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0以上となり、寿命改善がなされていることが分かる。
【0084】
(実施例2)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
実施例2は、実施例1に対して、リン酸二水素ナトリウムの量及び塩化マグネシウムの量が異なる。すなわち、9gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Ag、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、92gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。
【0085】
この実施例2によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP12となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0以上となり、寿命改善がなされていることが分かる。
【0086】
(実施例3)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
実施例3は、実施例1に対して、リン酸二水素ナトリウムの量及び塩化マグネシウムの量が異なる。すなわち、12.1gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタ(ショット(Shott)社製)に通す。2000gのZnS:Ag、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、123gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。
【0087】
この実施例3によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP13となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0以上となり、寿命改善がなされていることが分かる。
【0088】
(実施例4)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
実施例4は、実施例1のZnS:Ag、Al蛍光物質に代えて、ZnS:Cu、Al蛍光物質を用いる点が異なる。すなわち、4.5gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのを前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、46gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。
【0089】
この実施例4によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP11となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0以上となり、寿命改善がなされていることが分かる。
【0090】
(実施例5)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
実施例4は、実施例2のZnS:Ag、Al蛍光物質に代えて、ZnS:Cu、Al蛍光物質を用いる点が異なる。すなわち、9gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、92gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。
【0091】
この実施例5によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP12となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0以上となり、寿命改善がなされていることが分かる。
【0092】
(実施例6)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
実施例5は、実施例3のZnS:Ag、Al蛍光物質に代えて、ZnS:Cu、Al蛍光物質を用いる点が異なる。すなわち、12.1gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、123gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。
【0093】
この実施例6によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP13となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0以上となり、寿命改善がなされていることが分かる。
【0094】
(実施例7)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
実施例7は、実施例4により作製された蛍光体について加熱気体分析を行うものである。すなわち、4.5gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、46gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。
【0095】
この被覆蛍光体の加熱気体分析時の放出二酸化硫黄(SO2)量は0.8×10-2(重量%)であった。この放出二酸化硫黄(SO2)量は、図11に示すプロットP21となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0以上となり、寿命改善がなされていることが分かる。
【0096】
加熱気体分析はヘリウム雰囲気中で行い、昇温速度、20℃/minで温度範囲は室温(30℃)から1000(℃)までで行った。
【0097】
(実施例8)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
実施例8は、実施例4により作製された蛍光体について加熱気体分析を行うものである。すなわち、9gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、92gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。
【0098】
この被覆蛍光体の加熱気体分析時の放出二酸化硫黄(SO2)量は0.5×10-2(重量%)であった。この放出二酸化硫黄(SO2)量は、図11に示すプロットP22となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0以上となり、寿命改善がなされていることが分かる。
【0099】
加熱気体分析はヘリウム雰囲気中で行い、昇温速度、20℃/minで温度範囲は室温(30℃)から1000(℃)までで行った。
【0100】
(比較例1)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
14.9gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これをG3グラスフィルタに通す。2000gのZnS:Ag、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、153gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。この比較例1の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0101】
すなわち、この比較例1によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP14となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0未満となり、寿命が低下していることが分かる。
【0102】
(比較例2)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
比較例2は、比較例1に対して、リン酸二水素ナトリウムの量及び塩化マグネシウムの量が異なる。すなわち、18gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後、これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Ag、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、184gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。この比較例2の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0103】
すなわち、この比較例2によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP15となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0未満となり、寿命が低下していることが分かる。
【0104】
(比較例3)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
比較例3は、比較例1に対して、リン酸二水素ナトリウムの量及び塩化マグネシウムの量が異なる。すなわち、36gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Ag、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、368gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。この比較例3の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0105】
すなわち、この比較例3によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP16となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0未満となり、寿命が低下していることが分かる。
【0106】
(比較例4)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
比較例4は、比較例1に対して、リン酸二水素ナトリウムの量及び塩化マグネシウムの量が異なる。すなわち、72gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Ag、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、736gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。この比較例4の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0107】
すなわち、この比較例4によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP17となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0未満となり、寿命が低下していることが分かる。
【0108】
(比較例5)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
比較例5は、比較例1に対して、リン酸二水素ナトリウムの量及び塩化マグネシウムの量が異なる。144gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Ag、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、1472gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。この比較例5の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0109】
すなわち、この比較例5によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP18となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0未満となり、寿命が低下していることが分かる。
【0110】
(比較例6)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
比較例6は、比較例1のZnS:Ag、Al蛍光物質に代えて、ZnS:Cu、Al蛍光物質を用いる点が異なる。すなわち、14.9gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、153gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。この比較例6の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0111】
すなわち、この比較例6によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP14となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0未満となり、寿命が低下していることが分かる。
【0112】
(比較例7)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
比較例7は、比較例2のZnS:Ag、Al蛍光物質に代えて、ZnS:Cu、Al蛍光物質を用いる点が異なる。すなわち、18gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後、これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、184gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。この比較例7の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0113】
すなわち、この比較例7によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP15となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0未満となり、寿命が低下していることが分かる。
【0114】
(比較例8)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
比較例8は、比較例3のZnS:Ag、Al蛍光物質に代えて、ZnS:Cu、Al蛍光物質を用いる点が異なる。すなわち、36gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、368gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。この比較例8の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0115】
すなわち、この比較例8によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP16となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0未満となり、寿命が低下していることが分かる。
【0116】
(比較例9)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
比較例9は、比較例4のZnS:Ag、Al蛍光物質に代えて、ZnS:Cu、Al蛍光物質を用いる点が異なる。すなわち、72gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、736gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。この比較例9の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0117】
すなわち、この比較例9によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP17となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0未満となり、寿命が低下していることが分かる。
【0118】
(比較例10)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
比較例10は、比較例5のZnS:Ag、Al蛍光物質に代えて、ZnS:Cu、Al蛍光物質を用いる点が異なる。すなわち、144gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、1472gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。この比較例10の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0119】
すなわち、この比較例10によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP18となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0未満となり、寿命が低下していることが分かる。
【0120】
(比較例11)
[メタリン酸マグネシウム(Mg(PO3)2)被覆層の形成方法]
比較例11は、実施例に対して被覆層の材質が異なるものである。すなわち、16.8gのポリリン酸を5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。これと同時に、38.4gのMg(NO3)2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、1モルのアンモニア溶液 200mLを添加する。添加中はpH=6.5から7.5の範囲になるように1モルのアンモニア溶液 を前記溶液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で3回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。この比較例11の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、図10の特性曲線C21に示すように、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0121】
(比較例12)
[メタリン酸マグネシウム(Mg(PO3)2)被覆層の形成方法]
比較例12は、比較例11に対して、ポリリン酸の量及び硝酸マグネシウムの量が異なる。すなわち、33.6gのポリリン酸を5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。これと同時に、77gのMg(NO3)2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、1モルのアンモニア溶液 200mLを添加する。添加中はpH=6.5から7.5の範囲になるように1モルのアンモニア溶液 を前記溶液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で3回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。この比較例12の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、図10の特性曲線C21に示すように、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0122】
(比較例13)
[メタリン酸マグネシウム(Mg(PO3)2)被覆層の形成方法]
比較例13は、比較例11に対して、ポリリン酸の量及び硝酸マグネシウムの量が異なる。すなわち、67.2gのポリリン酸を5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。これと同時に、154gのMg(NO3)2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、1モルのアンモニア溶液 200mLを添加する。添加中はpH=6.5から7.5の範囲になるように1モルのアンモニア溶液 を前記溶液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で3回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。この比較例13の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、図10の特性曲線C21に示すように、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0123】
(比較例14)
[メタリン酸マグネシウム(Mg(PO3)2)被覆層の形成方法]
比較例14は、比較例11に対して、ポリリン酸の量及び硝酸マグネシウムの量が異なる。すなわち、100.8gのポリリン酸を5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。これと同時に、231gのMg(NO3)2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、1モルのアンモニア溶液 200mLを添加する。添加中はpH=6.5から7.5の範囲になるように1モルのアンモニア溶液 を前記溶液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で3回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。この比較例14の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、図10の特性曲線C21に示すように、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0124】
(比較例15)
[メタリン酸カルシウム(Ca(PO3)2)被覆層の形成方法]
比較例15は、実施例に対して被覆層の材質が異なるものである。すなわち、19.2gのヘキサメタリン酸を1モルのアンモニア溶液200mLと混合する。pH値が6未満に低下するとすぐに、アンモニア溶液を滴加することにより、ヘキサメタリン酸が完全に溶解した後のこの溶液のpH値が約7になるようにする。次いで、この溶液に水を添加して2500mLとする。1000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液中に懸濁させ、20分間かき混ぜる。これと同時に、35.4gのCa(NO3)2・4H2Oとを2400mLの水に溶解し、カルシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に滴加し、水酸化リチウム溶液を添加することにより、この懸濁液のpH値を6.9〜7.5の間に保持する。1時間かき混ぜた後、このコーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を除去する。前記蛍光物質粉末を水とアセトンの1:1混合物で数回洗浄し、次にこの蛍光物質粉末をアセトンで洗浄し、次いでこの蛍光物質粉末を 100℃で乾燥する。この比較例15の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、図10の特性曲線C31に示すように、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0125】
(比較例16)
[メタリン酸カルシウム(Ca(PO3)2)被覆層の形成方法]
比較例16は、比較例15に対して、ヘキサメタリン酸の量及び硝酸カルシウムの量が異なる。すなわち、38.5gのヘキサメタリン酸を1モルのアンモニア溶液200mLと混合する。pH値が6未満に低下するとすぐに、アンモニア溶液を滴加することにより、ヘキサメタリン酸が完全に溶解した後のこの溶液のpH値が約7になるようにする。次いで、この溶液に水を添加して2500mLとする。1000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液中に懸濁させ、20分間かき混ぜる。これと同時に、70.8gのCa(NO3)2・4H2Oとを2400mLの水に溶解し、カルシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に滴加し、水酸化リチウム溶液を添加することにより、この懸濁液のpH値を6.9〜7.5の間に保持する。1時間かき混ぜた後、このコーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を除去する。前記蛍光物質粉末を水とアセトンの1:1混合物で数回洗浄し、次にこの蛍光物質粉末をアセトンで洗浄し、次いでこの蛍光物質粉末を 100℃で乾燥する。この比較例16の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、図10の特性曲線C31に示すように、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0126】
(比較例17)
[メタリン酸カルシウム(Ca(PO3)2)被覆層の形成方法]
比較例17は、比較例15に対して、ヘキサメタリン酸の量及び硝酸カルシウムの量が異なる。すなわち、77gのヘキサメタリン酸を1モルのアンモニア溶液200mLと混合する。pH値が6未満に低下するとすぐに、アンモニア溶液を滴加することにより、ヘキサメタリン酸が完全に溶解した後のこの溶液のpH値が約7になるようにする。次いで、この溶液に水を添加して2500mLとする。1000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液中に懸濁させ、20分間かき混ぜる。これと同時に、141.6gのCa(NO3)2・4H2Oとを2400mLの水に溶解し、カルシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に滴加し、水酸化リチウム溶液を添加することにより、この懸濁液のpH値を6.9〜7.5の間に保持する。1時間かき混ぜた後、このコーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を除去する。前記蛍光物質粉末を水とアセトンの1:1混合物で数回洗浄し、次にこの蛍光物質粉末をアセトンで洗浄し、次いでこの蛍光物質粉末を 100℃で乾燥する。この比較例17の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、図10の特性曲線C31に示すように、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0127】
(比較例18)
[メタリン酸カルシウム(Ca(PO3)2)被覆層の形成方法]
比較例17は、比較例15に対して、ヘキサメタリン酸の量及び硝酸カルシウムの量が異なる。すなわち、115.6gのヘキサメタリン酸を1モルのアンモニア溶液200mLと混合する。pH値が6未満に低下するとすぐに、アンモニア溶液を滴加することにより、ヘキサメタリン酸が完全に溶解した後のこの溶液のpH値が約7になるようにする。次いで、この溶液に水を添加して2500mLとする。1000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液中に懸濁させ、20分間かき混ぜる。これと同時に、212.4gのCa(NO3)2・4H2Oとを2400mLの水に溶解し、カルシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に滴加し、水酸化リチウム溶液を添加することにより、この懸濁液のpH値を6.9〜7.5の間に保持する。1時間かき混ぜた後、このコーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を除去する。前記蛍光物質粉末を水とアセトンの1:1混合物で数回洗浄し、次にこの蛍光物質粉末をアセトンで洗浄し、次いでこの蛍光物質粉末を 100℃で乾燥する。この比較例18の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、図10の特性曲線C31に示すように、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0128】
(比較例19)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
比較例19は、比較例7により作製された蛍光体について加熱気体分析を行うものである。すなわち、18gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、184gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。
【0129】
この被覆蛍光体の加熱気体分析時の放出二酸化硫黄(SO2)量は、図11のプロットP23に示すように、1.5×10-2(重量%)であった。
【0130】
加熱気体分析はヘリウム雰囲気中で行い、昇温速度、20℃/minで温度範囲は室温(30℃)から1000(℃)までで行った。
【0131】
この比較例19の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0132】
(比較例20)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
比較例20は、比較例9により作製された蛍光体について加熱気体分析を行うものである。すなわち、72gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、736gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。
【0133】
この被覆蛍光体の加熱気体分析時の放出二酸化硫黄(SO2)量は、図11のプロットP24に示すように、3.2×10-2(重量%)であった。
【0134】
加熱気体分析はヘリウム雰囲気中で行い、昇温速度、20℃/minで温度範囲は室温(30℃)から1000(℃)までで行った。
【0135】
この比較例20の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0136】
(比較例21)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
比較例21は、比較例10により作製された蛍光体について加熱気体分析を行うものである。すなわち、144gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、1472gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。
【0137】
この被覆蛍光体の加熱気体分析時の放出二酸化硫黄(SO2)量は、図11のプロットP25に示すように、3.8×10-2(重量%)であった。
【0138】
加熱気体分析はヘリウム雰囲気中で行い、昇温速度、20℃/minで温度範囲は室温(30℃)から1000(℃)までで行った。
【0139】
この比較例21の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0140】
(他の実施例)
なお上述の実施例においては、リン酸マグネシウムからなる被覆層23の形成方法として、実施例1〜実施例8の方法を用いる場合について述べたが、これに限られるものではなく水溶性のリン酸塩、もしくはリン酸アンモニウム、水溶性マグネシウム塩を用いて反応させることにより形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】第1の実施の形態に係るディスプレイ装置を示す断面図及び平面図である。
【図2】図1のディスプレイ装置の蛍光膜を示す平面図である。
【図3】図1のディスプレイ装置の蛍光膜を構成する蛍光体を示す断面図である。
【図4】図1のディスプレイ装置における電子放出効率と従来の蛍光体を用いたディスプレイ装置の電子放出効率を示す特性曲線図である。
【図5】第2の実施の形態に係るディスプレイ装置を示す断面図である。
【図6】図5のディスプレイ装置の電子源を示す平面図及び断面図である。
【図7】図5のディスプレイ装置における電子放出効率と従来の蛍光体を用いたディスプレイ装置の電子放出効率を示す特性曲線図である。
【図8】図5のディスプレイ装置における電子放出率の時間経過による変化を示す特性曲線図である。
【図9】図3の被覆された蛍光体作製時のマグネシウムもしくはカルシウム原料の仕込み重量と実際に付着した分析量の関係を示す図である。
【図10】図5のディスプレイ装置における蛍光体のコーティング量を表すと考えられるMgもしくはCa分析量とこの蛍光体を用いたスクリーンの寿命改善度との関係を示す特性曲線図である。
【図11】図5のディスプレイ装置における蛍光体の加熱気体分析時の放出二酸化硫黄(SO2)量と、この蛍光体を用いたスクリーンの寿命改善度との関係を示す特性曲線図である。
【符号の説明】
【0142】
1、31 ディスプレイ装置
2 カーボン・ナノ・チューブ
3 蛍光膜
4 基板
5 フェースプレート
6 アルミニウム膜
9 カソード
10、32 エミッタ素子
11 絶縁材
13 導電膜
15 制御電極
35、36 素子電極
37 導電性薄膜
38 電子放出部
39 薄膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体及びディスプレイ装置に関し、FED(電界放出型ディスプレイ)等、スクリーンに電子線励起蛍光体を用いた薄型のディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ装置に関する開発は、PDP(プラズマディスプレイ)、LCD(液晶ディスプレイ)において精力的に行われている。これらのディスプレイは、薄型かつ大画面に構成することが可能であるという特徴を有しており、ホームシアター用のものまで製品化が進められている。但し、陰極線管を用いたカラーテレビジョン装置(CRT)は、鮮明な画像を表示し得る点において有利である。そこで、この従来のCRTの構成の特徴である蛍光面とこの蛍光面に電子ビームをあてる電子銃とを有する薄型のディスプレイとして、FED(電界放出型ディスプレイ)が考えられている。この電界放出型ディスプレイは、鮮明な画像を提供するという点でPDP、LCDを凌駕するものとして期待されている。
【0003】
電界放出型ディスプレイは、赤色、緑色、青色の蛍光体がストライプ状又はドット状に配列されたスクリーンと、このスクリーンに対してCRTよりも狭い間隔で対向するカソードを備えている。カソードには、赤色、緑色、青色の各蛍光体に対応して三角錐型の電子源がエミッタ素子として複数配置され、その近傍に配置されたゲート電極との電位差に応じて電子を放出するようになされている。
【0004】
放出された電子は、蛍光体側のアノード電圧(加速電圧)により加速されて蛍光体に衝突し、これにより蛍光体が発光するようになされている。
【0005】
ところでかかる構成の電界放出型ディスプレイにおいては、カソードと蛍光体側のアノードとの間の距離がCRTに比べて小さいこと、スクリーンの蛍光体を発光させるための電子線の加速電圧(約2〜10kV)がCRTにおける加速電圧(25〜35kV)に比べて低く、逆にその電流密度が高密度であることにより、CRT用の蛍光体に比べて、電子線の衝突によって経時的な劣化を生じ易い。特に電界放出型ディスプレイのように加速電圧が低い低エネルギー陰極線ディスプレイにおいては、スクリーンの画面輝度やエネルギー効率が減少することにより、この不足分を補うために、CRTに比べて、高密度で励起エネルギーを蛍光体にかける必要がある。よって、このスクリーンに使用する蛍光体としては、十分に高い発光効率を有し、高電流密度の励起において飽和に至った時に十分に高い発光効率を示すことが要求される。これまでCRT用蛍光体に用いられてきた硫化物系蛍光体(ZnS:Cu、ZnS:Ag)はこの候補となり得る。
【0006】
しかしながら、低エネルギー陰極線ディスプレイスクリーンの励起条件下では、ZnSのような硫化物は、非特許文献1、非特許文献2に示されるように分解することが報告されている。低エネルギー電子の侵入深さが低いため、蛍光体粒子表面層での反応が増加するためと考えられる。
【0007】
かかる課題を解決するための一つの方策として、特許文献1ではアルカリ土類金属、亜鉛およびマンガンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素のリン酸塩の1種以上を含有するコーティングを設けることで、硫化物を含有する蛍光物質の蛍光組成物を含むディスプレイスクリーンにおいて、輝度維持率が改善され、長時間の使用によっても発光輝度の低下の程度が小さく、高輝度の発光を呈する効果があることを示している。
【0008】
また、特許文献1ではアルカリ土類元素、亜鉛およびマンガンの中のすくなくとも1種の金属元素の燐酸塩化合物を、S(硫黄)を含んだ蛍光体に対して施すことで、蛍光体の経時的な輝度変化を抑制すること示している。しかしながら、具体的な化合物は示されてはいない。また、燐酸塩化合物の量も寿命の点から下限値を示し、寿命の点に関しての上限値が存在することが示されていない。
【特許文献1】特開2000−96045
【非特許文献1】B.L.Abrams, W.Roos,P.H.Holloway,H.C.Swart,Surface Science 451(2000)p.174-181.
【非特許文献2】H.C.Swart, J.S.Sebastian, T.A.Trottier, S.L.Jones, and P.H.Holloway,J.Vac.Sci.Technol.A14(3)(1996)p.1697-1703.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、電界放出型ディスプレイのような低エネルギー陰極線ディスプレイスクリーンの励起条件下では、非特許文献1、非特許文献2において、次式、
2ZnS+3O2 → 2ZnO + 2SO2↑
ZnS+H2 → Zn↑+ H2S↑
に示されるようにH2S、SO2ガスが生成されることが報告されている。
【0010】
ここで、例えば、電子源にカーボン・ナノ・チューブを用いた電界放出型ディスプレイ(FED)もしくは、酸化パラジウム薄膜を用いた表面伝導型ディスプレイ(SED)においては、電子線照射によって、上記式の反応等による蛍光体自体の分解、非発光層の形成、もしくは着色から生じる発光輝度の低下が起こる。また、蛍光体の分解ガスによる電子源の汚染からくる電子放出効率の低下も生じる。したがって、これまでのCRTで達成されていた数千時間での作動でも十分な輝度維持することが示すことが難しくなる。この改良が強く望まれていた。
【0011】
本発明は、このような技術的課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、電界放出型ディスプレイ(FED)や表面伝導型ディスプレイ(SED)などのディスプレイ装置において、蛍光体自体の輝度変化や電子源の汚染によるディスプレイの輝度の低下を抑制し得る蛍光体及びこの蛍光体を用いたディスプレイ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施の形態に係る特徴は、硫化亜鉛を母体とする蛍光体であって、表面にMg3(PO4)2の構造式で表されるマグネシウムの燐酸塩化合物の被覆層を備えることである。
【0013】
また本発明の実施の形態に係る特徴は、ディスプレイ装置において、基板上に設けられた電子源と、電子源に対向する蛍光膜を組み込んだスクリーンとを備え、蛍光膜は、電子源から放出される電子線によって励起される硫化亜鉛を母体とする蛍光体であって、表面にMg3(PO4)2の構造式で表されるマグネシウムの燐酸塩化合物の被覆層を備えた蛍光体からなることである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、蛍光体自体の分解や組成変化からくる輝度劣化を抑制し、かつ、電子源であるエミッタ素子の汚染に起因する電子放出特性の劣化を抑制し、輝度・寿命に優れ、高画質のディスプレイ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態の例である電界放出型ディスプレイ(FED)や表面伝導型ディスプレイ(SED)などの薄型のディスプレイ装置について説明する。このFEDおよびSEDについて、図面を参照して詳細に説明する。以下の図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付し、重複する記載は省略する。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1(a)に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るディスプレイ装置1は、棒状の炭素分子であるカーボン・ナノ・チューブ2を電子源とする電界放出型ディスプレイ(FED)であって、硫化亜鉛(ZnS)を母体とする蛍光体にMg3(PO4)2の構造式で表されるマグネシウムの燐酸塩化合物を被覆したものを蛍光膜3に用いるようになされている。
【0017】
なお、カーボン・ナノ・チューブは、長手方向の寸法を含めて数nm(ナノ・メートル=10−9m)から数十nmの非常に微細な物質であるが、図1(a)、(b)にはこれを拡大して示す。
【0018】
図1(a)に示すように、ディスプレイ装置1は、電子を放出するための電子源が設けられた基板4と、電子源から放出された電子が衝突することにより発光する蛍光膜3が設けられたフェースプレート5とが対向配置されている。基板4とフェースプレート5との間の空隙は、基板4及びフェースプレート5の周囲に設けられた側壁(図示せず)によって気密性が保たれるようになされており、真空状態に維持される。フェースプレート5は、例えばガラス基板によって形成され、このフェースプレート5の基板4に対向する面部には蛍光膜3が形成される。また蛍光膜3にはアノードとしてアルミニウム膜6が形成されている。
【0019】
図2に示すように、蛍光膜3においては、スラリー塗布、露光、現像を順次繰り返すことにより、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3原色の蛍光体がストライプ状に塗り分けられている。緑色及び青色の蛍光体は、硫化亜鉛(ZnS)を母体とし、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)の少なくとも1種を付活剤として含有すると共に、アルミニウム(Al)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)の少なくとも1種を共付活剤として含有する蛍光体であり、その表面にアルカリ土類の燐酸塩化合物を被覆している。また赤色の蛍光体は、イットリウムのオキシ硫化物(Y2O2S)を主成分とする蛍光体である。なお赤色、緑色、青色の各蛍光体の配列は、ドット状に配列するようにしてもよい。また蛍光膜3の形成方法としては、スプレー法や印刷法を用いてもよい。
【0020】
蛍光体の各ストライプの間には黒色の導電体7が設けられている。黒色の導電体7を設けることにより、電子ビームの照射位置に多少のずれがあっても表示色にずれが生じないようにすることができ、また外光の反射を防止して表示コントラストの低下を防ぐことができ、また電子ビームによる蛍光膜のチャージアップを防止することができる。黒色の導電体7には、黒鉛を主成分として用いたが、上記の効果を得るものであればこれ以外の材料を用いても良い。
【0021】
図1(a)、(b)に示すように、基板4上には、電子を放出するためのエミッタ素子10が赤色、緑色、青色の各蛍光体に対応して複数設けられている。なお図1においては、複数配置されたエミッタ素子の1つについて示している。このエミッタ素子10においては、カソード9と絶縁材11とが順次積層されており、絶縁材11には開口部11aが形成され、これによりこの開口部11aを介してカソード9の一定範囲が蛍光膜3側に露出するようになされている。基板4としては、例えば、石英ガラス又は青板ガラス等の各種ガラス基板、アルミナ等の各種セラミクス基板、あるいは上述の各種基板上に例えば酸化シリコン(SiO2)を材料とする絶縁層を積層した基板等を用いることができる。
【0022】
開口部11a内のカソード9には、一定範囲に亘って電子源であるカーボン・ナノ・チューブ2が設けられている。カーボン・ナノ・チューブ2のように微細な物質をカソード9に固定するに際し、複数のカーボン・ナノ・チューブ2を銀等の導電性ペーストに分散させ、これを絶縁材11の開口11a又は隙間から露出したカソード9の上面に滴下し、導電性ペーストを硬化させて導電膜13を形成する。これにより、カーボン・ナノ・チューブ2は導電膜13の表面に一定の面積をもって分散配置される。
【0023】
すなわち電子源であるカーボン・ナノ・チューブ2は、蛍光膜3に対向する基板4上において一定範囲の電子放出領域を形成している。
【0024】
このように導電膜13に固定されたカーボン・ナノ・チューブ2においては、その先端部が膜形状の導電膜13の面部から突出し、この吐出した部分と制御電極(ゲート電極)15との間に素子印加電圧Vf(電位差ΔV)を与えることにより、カーボン・ナノ・チューブ2の先端部から電子を放出させる。放出した電子は、カソード9と蛍光膜3側のアノード(アルミニウム膜6)との間に印加された加速電圧Vaによって加速され、蛍光膜3に衝突する。この電子の衝突によって蛍光膜3を発光させることができる。
【0025】
次に、蛍光膜3の蛍光体について説明する。図3は図1に示したディスプレイ装置1の蛍光膜3を構成する蛍光体21の構造を模式的に説明するための図である。図3に示すように、蛍光体21は、電子源から放出される電子によって励起する蛍光体であり、緑色及び青色の各蛍光体粒子は、硫化亜鉛(ZnS)を母体として、Cu、Au、Agの少なくとも1種類を付活剤とし、アルミニウム(Al)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)の少なくとも1種を共付活剤として含有する蛍光体であり、その表面にアルカリ土類の燐酸塩化合物による被覆層23を形成している。また赤色の蛍光体は、例えばユーロピウム付活酸硫化イットリウム(Y2O2S:Eu)等の希土類オキシ硫化物蛍光体である。
【0026】
本実施の形態においては、硫化亜鉛を母体とする緑色及び青色の蛍光体をアルカリ土類の燐酸塩化合物により被覆することにより、蛍光体が高密度の電子線にさらされた場合であっても、分解ガスの発生を抑制して、この分解ガスが電子源である電子放出部に付着することを防止するようになされている。
【0027】
この実施の形態において、蛍光体21の被覆層23は、上述した燐酸塩化合物として、リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)の組成で表される物質からなるものである。リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)は、蛍光体の分解を抑え、雰囲気中の水分を乾燥させる作用を有することから、蛍光体21の分解による電子源(カーボン・ナノ・チューブ2及び導線膜13)の汚染を抑制、ならびに蛍光体自体の輝度劣化を抑制する性質を有する。これにより、このマグネシウムのリン酸化合物を蛍光体に均一にコーティングすることによって、蛍光体の発光効率の耐劣化特性ならびに電子源の電子放出の耐劣化性を高めることができる。
【0028】
また、この被覆層23は透明性に優れることにより、初期輝度の低下が少ない。従って、蛍光体21にこの被覆層23を形成することにより、電子放出特性、蛍光体発光特性の経時的な低下を抑制しつつ、良好な発光輝度を得ることが可能となる。
【0029】
ここで、ZnS:Cu、Au、Al(Cu、Auを付活剤、Alを共付活剤として含有する硫化亜鉛蛍光体)に対して、被覆層23としてリン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)を0.05重量%コーティングした蛍光体により構成される蛍光膜3が設けられたディスプレイ装置1と、ZnシリケートがコーテイングされているZnS:Cu、Au、Al蛍光体からなる蛍光膜が設けられたディスプレイ装置との電子放出特性の比較として、(放出電流Ie)対(素子印加電圧Vf)特性、および(素子電流If)対(素子印加電圧Vf)特性の典型的な例を図4に示す。
【0030】
図4に示すように、リン酸マグネシウムがコーティングされた蛍光体21を用いたディスプレイ装置1の放出電流Ie1は、Znシリケートがコーティングされた蛍光体を用いたディスプレイ装置の放出電流Ie2に比べて大きく、電子放出効率が改善されている。
【0031】
また電子放出効率Ie/Ifも3000時間経過後も低下が見られなかった。
【0032】
このディスプレイパネルの10kV放射エネルギーの電子線促進寿命試験の結果は、Znシリケート処理を施したZnS:Ag、Al及びZnS:Cu、Al蛍光体を搭載したディスプレイスクリーンの効率I/I0はその初期に著しく減少し、最終的に初期値の30%程度で一定にとどまるが、本実施の形態にかかる蛍光体を有するディスプレイスクリーンの画面輝度はわずかにしか減少せず、初期値の約80%で一定にとどまる。
【0033】
被覆層23の具体的な形成方法については実施例1から8において説明する。
【0034】
以上説明したように、電子源としてカーボン・ナノ・チューブ2を導電膜13の比較的広い面積に分散して配置した電界放出型のディスプレイ装置1においては、三角錐形状の素子の頂点を電子源とするスピンド型の電界放出ディスプレイに比べて電子源の数が多くなっている。このことは、蛍光膜3において発生する分解ガスが電子源に付着し易いことを意味する。
【0035】
この実施の形態に係るディスプレイ装置1においては、蛍光膜3の蛍光体21にアルカリ土類の燐酸塩化合物を被覆することにより、電子線による分解ガスの発生を抑制する。
【0036】
これにより、電子源であるカーボン・ナノ・チューブ2に蛍光体21の分解ガスが付着することを抑制して、電子放出特性の劣化を回避および蛍光体の発光効率の低下を回避することができる。
【0037】
また、水分も電子源汚染の一因となると考えられるが、リンの酸化物(P2O5)は酸性雰囲気中では脱水作用があることが知られており、燐酸塩化合物も類似した効果をもち、コーティング層自身が、残留水分を吸着し、電子源の汚染を低減することができる。
【0038】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施形態に係るディスプレイ装置31は、図5に示すように、電子線を放出するための電子源であり、蛍光膜に対向する基板において一定範囲を電子放出領域とするエミッタ素子と、エミッタ素子の電子線を放出する部位に対向し、電子源から放出される電子線によって励起される硫化亜鉛を母体とする蛍光体であって、表面にMg3(PO4)2の構造式で表されるマグネシウムの燐酸塩化合物を被覆した蛍光体により形成される蛍光膜を組み込んだスクリーンとを備えている。なお図5において、図1と同一の部分には同一符号を付してその重複した説明は省略する。
【0039】
図5に示すディスプレイ装置31は、電子を放出するための電子源である膜形状のエミッタ素子32が設けられた基板4と、エミッタ素子32から放出された電子が衝突することにより発光する蛍光膜3が設けられたフェースプレート5とが対向配置されている。基板4とフェースプレート5との間の空隙は、基板4及びフェースプレート5の周囲に設けられた側壁(図示せず)によって気密性が保たれるようになされており、真空状態に維持される。
【0040】
フェースプレート5は、例えばガラス基板によって形成され、このフェースプレート5の基板4に対向する面部には蛍光膜3が形成されている。
【0041】
蛍光膜3においては、図3について上述したように、赤色、緑色、青色、の3原色の蛍光体がストライプ状に塗り分けられている。緑色及び青色の蛍光体は、第1の実施形態の場合と同様にして、硫化亜鉛(ZnS)を母体とし、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)の少なくとも1種を付活剤として含有すると共に、アルミニウム(Al)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)の少なくとも1種を共付活剤として含有する蛍光体であり、その表面にアルカリ土類の燐酸塩化合物を被覆している。また赤色の蛍光体は、イットリウムのオキシ硫化物(Y2O2S)を主成分とする蛍光体である。なお赤色、緑色、青色の各蛍光体の配列は、ドット状に配列するようにしてもよい。また、蛍光体の各ストライプの間には黒色の導電体7(図2)が設けられている。
【0042】
図6(a)、(b)に示すように、基板4上には、電子を放出するためのエミッタ素子32が赤色、緑色、青色の各蛍光体に対応して複数設けられている。なお図6においては、複数配置されたエミッタ素子の1つを示している。このエミッタ素子32は、基板4上に形成された素子電極35、36と、基板4の表面及び素子電極35、36の表面に亘って形成された導電性薄膜37と、導電性薄膜37において通電フォーミング処理により形成された亀裂状の電子放出部38と、電子放出部38の両側において導電性薄膜37の表面に通電活性化処理により形成された薄膜39とを備えている。電子放出部38は、基板4上において一定範囲の電子放出領域Sを形成している。
【0043】
基板4としては、例えば、石英ガラス又は青板ガラス等の各種ガラス基板、アルミナ等の各種セラミクス基板、あるいは上述の各種基板上に例えば酸化シリコン(SiO2)を材料とする絶縁層を積層した基板等を用いることができる。
【0044】
また、基板4上に互いに対向して設けられた素子電極35、36は、導電性を有する材料によって形成されている。この素子電極35、36としては、例えば、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、金(Au)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、白金(Pt)、チタン(Ti)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)等の金属、あるいはこれらの金属の合金、あるいはIn2O3−SnO2をはじめとする金属酸化物、ポリシリコンなどの半導体、等の中から適宜材料を選択して用いればよい。素子電極35、36を形成する方法としては、たとえば真空蒸着などの製膜技術とフォトリソグラフィー、エッチングなどのパターニング技術とを組み合わせて用いれば容易に形成できるが、それ以外の例えば印刷技術等を用いて形成してもよい。
【0045】
素子電極35、36の形状は、ディスプレイ装置31の構造に合わせて適宜設計される。
【0046】
素子電極35、36の電極間隔Lは、数十ナノメートル(nm)から数百マイクロメートル(μm)の範囲が望ましい。この実施形態においては、この電極間隔Lを、表示装置に応用するためにより望ましい数マイクロメートルから数十マイクロメートルの範囲に設定する。素子電極35、36の厚さDは、数十nmから数μmの範囲に設定する。
【0047】
また、導電性薄膜37としては、微粒子膜を用いる。この微粒子膜に用いる微粒子の粒径は、数百ピコメートル(pm)から数百nmの範囲が望ましく、この実施形態においては、数nmから20nmの範囲に設定する。
【0048】
また、この微粒子膜の膜厚は、素子電極35、36と電気的に良好に接続するために必要な条件、後述する通電フォーミングを良好に行うために必要な条件、微粒子膜自身の電気抵抗を後述する適宜の値にするために必要な条件等を考慮して適宜設定する。具体的には、数百pmから数百nmの範囲が望ましく、この実施形態においては、1nmから50nmの範囲に設定する。
【0049】
また、導電性薄膜37を形成するのに用いられ得る材料としては、例えば、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、銀(Ag)、金(Au)、チタン(Ti)、インジウム(In)、銅(Cu)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、鉛(Pb)、等の金属、PdO、SnO2、In2O3、PbO、Sb2O3などをはじめとする酸化物、HfB2、ZrB2、LaB6、CeB6、YB4、GdB4などをはじめとする硼化物、TiC、ZrC、HfC、TaC、SiC、WCなどをはじめとする炭化物や、TiN、ZrN、HfNなどをはじめとする窒化物や、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)などをはじめとする半導体、カーボンなどがあげられ、これらの中から適宜選択される。
【0050】
以上述べたように、導電性薄膜37を微粒子膜で形成したが、そのシート抵抗値については、103〜107Ω/cm2の範囲に含まれるよう設定した。
【0051】
なお、導電性薄膜37と素子電極35、36とは、電気的に良好に接続されることが望ましいため、互いの一部が重なりあうような構造としている。その重なり方は、図6(b)に示す構成においては、基板4、素子電極35、36、導電性薄膜37の順序で積層したが、必要に応じて基板4、導電性薄膜37、素子電極35、36の順序で積層するようにしてもよい。
【0052】
また、電子放出部38は、導電性薄膜37の一部に形成された亀裂状の部分であり、電気的には周囲の導電性薄膜37よりも高抵抗な性質を有している。この亀裂は、導電性薄膜37に対して、通電フォーミングの処理を行うことにより形成する。通電フォーミング処理とは、微粒子膜で形成された導電性薄膜37に通電を行ってその一部を破壊、変形、変質させることにより、電子放出を行うために好適な構造に変化させる処理である。亀裂内には、数百pmから数十nmの粒径の微粒子を配置する場合がある。なお、実際の電子放出部38の位置や形状を精密かつ正確に図示するのは困難なため、図5、図6においては模式的に示している。
【0053】
また、薄膜39は、炭素又は炭素化合物よりなる薄膜であり、電子放出部38及びその近傍を被覆している。薄膜39は、通電フォーミング処理後に、通電活性化の処理を行うことにより形成する。通電活性化処理とは、真空雰囲気中で電圧パルスを定期的に印加することにより、真空雰囲気中に存在する有機化合物を起源とする炭素又は炭素化合物を堆積させる処理である。この堆積物は、単結晶グラファイト、多結晶グラファイト、非晶質カーボンのいずれか、もしくはその混合物であり、膜厚は50nm以下とするが、30nm以下とするのがさらに好ましい。
【0054】
なお、実際の薄膜39の位置や形状を精密に図示するのは困難なため、図5、図6においては模式的に示している。
【0055】
以上説明した構成のエミッタ素子32を有するディスプレイ装置31において、素子電極35、36間に10数ボルトの電圧(Vf)を印加することにより、導電性薄膜37に形成された亀裂状の電子放出部38の一方の端部から電子が放出され、その電子の一部が他方の端部で散乱される。この散乱した電子は、10キロボルト程度のアノード電圧Vaによって加速されて、蛍光膜3の蛍光体に衝突する。この衝突により蛍光体が発光する。
【0056】
次に、蛍光膜3の蛍光体について説明する。この実施の形態の蛍光体は、図3について上述した第1の実施の形態の蛍光体21と同様の蛍光体であり、緑色及び青色の各蛍光体粒子は、硫化亜鉛(ZnS)を母体として、Cu、Au、Agの少なくとも1種類を付活剤とし、アルミニウム(Al)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)の少なくとも1種を共付活剤として含有する蛍光体であり、その表面にアルカリ土類の燐酸塩化合物による被覆層23を形成している。また赤色の蛍光体は、例えばユーロピウム付活酸硫化イットリウム(Y2O2S:Eu)等の希土類オキシ硫化物蛍光体である。
【0057】
このように、硫化亜鉛を母体とする緑色及び青色の蛍光体をアルカリ土類の燐酸塩化合物により被覆することにより、蛍光体が高密度の電子線にさらされた場合であっても、分解ガスの発生を抑制して、この分解ガスが電子源である電子放出領域S(図6(a))に付着することを防止するようになされている。
【0058】
蛍光体21の被覆層23は、上述したアルカリ土類の燐酸塩化合物として、リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)からなるものである。リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)は、蛍光体の分解を抑える作用を有することから、蛍光体の分解による電子放出領域Sの汚染を抑制する性質を有する。これにより、このマグネシウムのリン酸化合物を蛍光体に均一にコーティングすることによって、電子源側の電子放出の耐劣化性を高めることができる。
【0059】
また、この被覆層23は透明性に優れることにより、初期輝度の低下が少ない。従って、蛍光体21にこの被覆層23を形成することにより、電子放出特性の経時的な低下を抑制しつつ、良好な発光輝度を得ることが可能となる。
【0060】
ここで、ZnS:Cu、Au、Al(Cu、Auを付活剤、Alを共付活剤として含有する硫化亜鉛蛍光体)に対して、被覆層23としてリン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)を0.05質量%コーティングした蛍光体により構成される蛍光膜3が設けられたディスプレイ装置31と、ZnシリケートがコーテイングされているZnS:Cu、Au、Al蛍光体からなる蛍光膜が設けられたディスプレイ装置との電子放出特性として、(放出電流Ie)対(素子印加電圧Vf)特性、および(素子電流If)対(素子印加電圧Vf)特性の典型的な例を図7に示す。
【0061】
図7に示すように、リン酸マグネシウムがコーティングされた蛍光体21を用いたディスプレイ装置31の放出電流Ie1は、Znシリケートがコーティングされた蛍光体を用いたディスプレイ装置の放出電流Ie2に比べて大きく、電子放出効率が改善されている。
【0062】
Ie/If=1.0%であり、3500時間経過後もこの放出効率の維持率の低下が見られなかった。
【0063】
10kVの放射エネルギーの電子線促進寿命試験結果は、Znシリケート処理を施したZnS:Ag、Al及びZnS:Cu、Al蛍光体を搭載したディスプレイスクリーンの効率I/I0(I0は初期の輝度、Iは一定時間経過後の輝度を表す)は、その初期に著しく減少し、最終的に初期値の20%程度で一定にとどまるが、本実施形態にかかる蛍光物質を有するディスプレイスクリーンの画面輝度はわずかにしか減少せず、初期値の約80%で一定にとどまる。
【0064】
図8に示すように、電子放出効率(Ie/If)は、電子線照射時間hrの経過と共に低下するが、本実施の形態の被覆層23を形成した蛍光体21を用いたディスプレイ装置31における電子放出率(Ie/If)1は、Znシリケート処理を施したディスプレイ装置における電子放出率(Ie/If)2に比べて3000時間経過しても高い効率を維持する。
【0065】
被覆層23の具体的な形成方法については実施例1から8において説明する。
【0066】
以上説明したように、電子源として亀裂状の電子放出部38を有するエミッタ素子32を用いたディスプレイ装置31においては、電子放出部38と蛍光膜3との間の距離が小さく、これらの真空封入管の空間が狭いため、生成ガスがCRTのように側壁に吸着することも少なく、このガスの排気も難しい。またエミッタ素子32においては、三角錐形状の素子の頂点を電子放出部とする電界放出ディスプレイ(FED)に比べて電子放出領域Sの面積が大きい。このことは、蛍光膜3において発生する分解ガスが電子放出領域Sに付着し易いことを意味する。
【0067】
この実施の形態に係るディスプレイ装置31においては、亀裂状の電子放出部38を有するエミッタ素子32を用いた構成において、蛍光膜3の蛍光体21にアルカリ土類の燐酸塩化合物を被覆することにより、電子線による分解ガスの発生を抑制することができる。
【0068】
これにより、電子源であるエミッタ素子32の電子放出領域Sに蛍光体の分解ガスが付着することを抑制して、電子放出特性の劣化を回避することができる。
【0069】
また、水分も電子源汚染の一因となると考えられるが、リンの酸化物(P2O5)は酸性雰囲気中では脱水作用があることが知られており、燐酸塩化合物も類似した効果をもち、コーティング層自身が、残留水分を吸着し、電子源の汚染を低減ならびに蛍光体の発光効率の維持が図ることができる。
【0070】
(蛍光体の被覆層)
上述の第1及び第2の実施の形態に用いられる蛍光体21の被覆層23について説明する。
【0071】
後述する実施例及び比較例では、リン酸マグネシウム処理、メタリン酸マグネシウム処理又はメタリン酸カルシウム処理によって被覆層23付きの蛍光体21を作製しており、図9は、これらの各処理において被覆層23付きの蛍光体21を作製する際の表面処理原料であるマグネシウム(Mg)原料もしくはカルシウム(Ca)原料の作成時の仕込み量と、蛍光体21の表面に実際に生成された被覆層23について化学分析によって求めたマグネシウム(Mg)もしくはカルシウム(Ca)量(これをコーティング量(重量%)と呼ぶ)との関係を示すグラフである。なお、コーティング量とは、母体(蛍光体21)及び被覆層23を含めた蛍光体全体に対する重量%を表すものである。このコーティング量を求めるための化学分析方法は、誘導結合プラズマ発光分析法(ICPS)を用いる。
【0072】
図9において、特性曲線C1は、リン酸マグネシウム処理における仕込み量とコーティング量との関係を示し、特性曲線C2は、メタリン酸マグネシウム処理における仕込量とコーティング量との関係を示し、特性曲線C3は、メタリン酸カルシウム処理における仕込量とコーティング量との関係を示す。後述する各実施例及び各比較例では、種々の仕込み量で被覆層23を形成しており、この図9に示す関係より、各実施例及び各比較例において実際に生成されたコーティング量を求めることができる。
【0073】
また、各実施例や比較例においてリン酸マグネシウム処理により種々のコーティング量の被覆層23が生成された各蛍光体21や各比較例においてメタリン酸マグネシウム処理やメタリン酸カルシウム処理により被覆層が生成された各蛍光体を第2の実施の形態のディスプレイ装置31(図5、図6)に組み込んだ場合のコーティング量と蛍光膜3(ディスプレイパネル)の寿命改善度との関係を図10に示す。寿命改善度とは、各被覆した蛍光体を組み込んだパネル輝度が初期の80%になるまでの時間を、何も被覆しなかった蛍光体を組み込んだパネルのパネル輝度が初期の80%になるまでの時間で割った値である。
【0074】
図10において、特性曲線C11は、各実施例や各比較例のリン酸マグネシウム処理におけるコーティング量と寿命改善度との関係を示し、プロットP11は、実施例1及び実施例4により作製された被覆層23付きの蛍光体21のコーティング量と寿命改善度との関係を示し、プロットP12は、実施例2及び実施例5により作製された被覆層23付きの蛍光体21のコーティング量と寿命改善度との関係を示し、プロットP13は、実施例3及び実施例6により作製された被覆層23付きの蛍光体21のコーティング量と寿命改善度との関係を示し、プロットP14は、比較例1及び比較例6により作製された被覆層23付きの蛍光体21のコーティング量と寿命改善度との関係を示し、プロットP15は、比較例2及び比較例7により作製された被覆層23付きの蛍光体21のコーティング量と寿命改善度との関係を示し、プロットP16は、比較例3及び比較例8により作製された被覆層23付きの蛍光体21のコーティング量と寿命改善度との関係を示し、プロットP17は、比較例4及び比較例9により作製された被覆層23付きの蛍光体21のコーティング量と寿命改善度との関係を示し、プロットP18は、比較例5及び比較例10により作製された被覆層23付きの蛍光体21のコーティング量と寿命改善度との関係を示す。
【0075】
また図10において、特性曲線C21は、比較例11、12、13、14のメタリン酸マグネシウム処理におけるコーティング量と寿命改善度との関係を示し、特性曲線C31は、比較例15、16、17、18のメタリン酸カルシウム処理におけるコーティング量と寿命改善度との関係を示す。
【0076】
図10に示すように、リン酸マグネシウムのコーティング量が増加するにつれて、パネル寿命が延びるが、あるコーティング量以上では寿命が短くなることがわかる。この図10に示す結果に基づき、被覆層23に用いられるマグネシウムのリン酸塩は、Mgに換算して、0.01〜0.15重量%の範囲になるようにコーティングすることが好ましい。この範囲では、パネル寿命の改善が認められるからである。ただし、実用的なパネル寿命を得る上で、マグネシウム燐酸塩によるコーティング量はMgに換算して、0.03質量%以上であることが好ましい。これらにより、この実施の形態においては、コーティング量を0.03〜0.15重量%の範囲に設定する。
【0077】
このようにして製造したコーティングは約4nmの厚さを有する。コーティング膜厚は、透過型電子顕微鏡(TEM)で分析することができる。表面を構成している元素を確認するための分析手段として、Auger エレクトロン スペクトロスコピー測定法により、コーティングが蛍光物質基材を完全に覆うことを確かめることができる。このコーティングは親水性であり、通常のコーティングと親和性があり、その後に設けられる、他のコーティングのための基底層として適切に用いて、この物質の粉体特性又は彩度を改良することができる。このコーティングはそれ自体、劣化の信号を何も示さない。電子線照射試験が示すところでは、電子放出効率の向上と安定が図られ、全体として、コーティングによりそのディスプレイの寿命が向上する。後述する比較例1〜21までの被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0078】
図11は、上記寿命改善度が、加熱気体分析時の放出二酸化硫黄(SO2)量でどのように変化するかを示したものである。加熱気体分析とは、ヘリウム雰囲気中で、室温(30℃)から昇温速度20℃/minで1000℃まで昇温させた場合に発生する気体を分析した結果であり、二酸化硫黄(SO2)の発生量は、重量%によって表される。この重量%は、二酸化硫黄(SO2)量を、分析した蛍光体重量(母体及び被覆層を含む全体の重量)で割った結果である。
【0079】
図11において、プロットP21は、実施例7のリン酸マグネシウム処理により作製された被覆層23付きの蛍光体21の放出二酸化硫黄(SO2)量とこれを用いたディスプレイパネルの寿命改善度との関係を示し、プロット22は、実施例8のリン酸マグネシウム処理により作製された被覆層23付きの蛍光体21の放出二酸化硫黄(SO2)量とこれを用いたディスプレイパネルの寿命改善度との関係を示し、プロット23は、比較例19のリン酸マグネシウム処理により作製された被覆層23付きの蛍光体21の放出二酸化硫黄(SO2)量とこれを用いたディスプレイパネルの寿命改善度との関係を示し、プロット24は、比較例20のリン酸マグネシウム処理により作製された被覆層23付きの蛍光体21の放出二酸化硫黄(SO2)量とこれを用いたディスプレイパネルの寿命改善度との関係を示し、プロット25は、比較例21のリン酸マグネシウム処理により作製された被覆層23付きの蛍光体21の放出二酸化硫黄(SO2)量とこれを用いたディスプレイパネルの寿命改善度との関係を示す。
【0080】
この図11に示されるように、被覆が十分になされて、放出二酸化硫黄(SO2)量が1×10-2重量%以下である場合には、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0以上となり、寿命改善がなされていることが分かる。
【0081】
次に、被覆層23の具体的な形成方法と比較例を説明する。
【0082】
(実施例1)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
4.5gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Ag、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、46gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。
【0083】
この実施例1によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP11となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0以上となり、寿命改善がなされていることが分かる。
【0084】
(実施例2)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
実施例2は、実施例1に対して、リン酸二水素ナトリウムの量及び塩化マグネシウムの量が異なる。すなわち、9gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Ag、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、92gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。
【0085】
この実施例2によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP12となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0以上となり、寿命改善がなされていることが分かる。
【0086】
(実施例3)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
実施例3は、実施例1に対して、リン酸二水素ナトリウムの量及び塩化マグネシウムの量が異なる。すなわち、12.1gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタ(ショット(Shott)社製)に通す。2000gのZnS:Ag、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、123gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。
【0087】
この実施例3によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP13となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0以上となり、寿命改善がなされていることが分かる。
【0088】
(実施例4)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
実施例4は、実施例1のZnS:Ag、Al蛍光物質に代えて、ZnS:Cu、Al蛍光物質を用いる点が異なる。すなわち、4.5gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのを前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、46gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。
【0089】
この実施例4によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP11となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0以上となり、寿命改善がなされていることが分かる。
【0090】
(実施例5)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
実施例4は、実施例2のZnS:Ag、Al蛍光物質に代えて、ZnS:Cu、Al蛍光物質を用いる点が異なる。すなわち、9gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、92gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。
【0091】
この実施例5によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP12となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0以上となり、寿命改善がなされていることが分かる。
【0092】
(実施例6)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
実施例5は、実施例3のZnS:Ag、Al蛍光物質に代えて、ZnS:Cu、Al蛍光物質を用いる点が異なる。すなわち、12.1gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、123gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。
【0093】
この実施例6によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP13となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0以上となり、寿命改善がなされていることが分かる。
【0094】
(実施例7)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
実施例7は、実施例4により作製された蛍光体について加熱気体分析を行うものである。すなわち、4.5gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、46gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。
【0095】
この被覆蛍光体の加熱気体分析時の放出二酸化硫黄(SO2)量は0.8×10-2(重量%)であった。この放出二酸化硫黄(SO2)量は、図11に示すプロットP21となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0以上となり、寿命改善がなされていることが分かる。
【0096】
加熱気体分析はヘリウム雰囲気中で行い、昇温速度、20℃/minで温度範囲は室温(30℃)から1000(℃)までで行った。
【0097】
(実施例8)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
実施例8は、実施例4により作製された蛍光体について加熱気体分析を行うものである。すなわち、9gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、92gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。
【0098】
この被覆蛍光体の加熱気体分析時の放出二酸化硫黄(SO2)量は0.5×10-2(重量%)であった。この放出二酸化硫黄(SO2)量は、図11に示すプロットP22となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0以上となり、寿命改善がなされていることが分かる。
【0099】
加熱気体分析はヘリウム雰囲気中で行い、昇温速度、20℃/minで温度範囲は室温(30℃)から1000(℃)までで行った。
【0100】
(比較例1)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
14.9gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これをG3グラスフィルタに通す。2000gのZnS:Ag、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、153gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。この比較例1の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0101】
すなわち、この比較例1によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP14となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0未満となり、寿命が低下していることが分かる。
【0102】
(比較例2)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
比較例2は、比較例1に対して、リン酸二水素ナトリウムの量及び塩化マグネシウムの量が異なる。すなわち、18gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後、これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Ag、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、184gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。この比較例2の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0103】
すなわち、この比較例2によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP15となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0未満となり、寿命が低下していることが分かる。
【0104】
(比較例3)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
比較例3は、比較例1に対して、リン酸二水素ナトリウムの量及び塩化マグネシウムの量が異なる。すなわち、36gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Ag、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、368gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。この比較例3の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0105】
すなわち、この比較例3によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP16となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0未満となり、寿命が低下していることが分かる。
【0106】
(比較例4)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
比較例4は、比較例1に対して、リン酸二水素ナトリウムの量及び塩化マグネシウムの量が異なる。すなわち、72gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Ag、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、736gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。この比較例4の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0107】
すなわち、この比較例4によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP17となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0未満となり、寿命が低下していることが分かる。
【0108】
(比較例5)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
比較例5は、比較例1に対して、リン酸二水素ナトリウムの量及び塩化マグネシウムの量が異なる。144gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Ag、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、1472gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。この比較例5の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0109】
すなわち、この比較例5によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP18となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0未満となり、寿命が低下していることが分かる。
【0110】
(比較例6)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
比較例6は、比較例1のZnS:Ag、Al蛍光物質に代えて、ZnS:Cu、Al蛍光物質を用いる点が異なる。すなわち、14.9gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、153gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。この比較例6の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0111】
すなわち、この比較例6によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP14となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0未満となり、寿命が低下していることが分かる。
【0112】
(比較例7)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
比較例7は、比較例2のZnS:Ag、Al蛍光物質に代えて、ZnS:Cu、Al蛍光物質を用いる点が異なる。すなわち、18gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後、これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、184gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。この比較例7の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0113】
すなわち、この比較例7によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP15となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0未満となり、寿命が低下していることが分かる。
【0114】
(比較例8)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
比較例8は、比較例3のZnS:Ag、Al蛍光物質に代えて、ZnS:Cu、Al蛍光物質を用いる点が異なる。すなわち、36gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、368gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。この比較例8の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0115】
すなわち、この比較例8によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP16となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0未満となり、寿命が低下していることが分かる。
【0116】
(比較例9)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
比較例9は、比較例4のZnS:Ag、Al蛍光物質に代えて、ZnS:Cu、Al蛍光物質を用いる点が異なる。すなわち、72gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、736gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。この比較例9の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0117】
すなわち、この比較例9によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP17となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0未満となり、寿命が低下していることが分かる。
【0118】
(比較例10)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
比較例10は、比較例5のZnS:Ag、Al蛍光物質に代えて、ZnS:Cu、Al蛍光物質を用いる点が異なる。すなわち、144gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、1472gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20℃から30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。この比較例10の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0119】
すなわち、この比較例10によって作製された被覆層23付きの蛍光体21をディスプレイパネルに用いた場合のパネル寿命の改善度は、図10に示すプロットP18となり、未被覆の場合に比べて寿命改善度が1.0未満となり、寿命が低下していることが分かる。
【0120】
(比較例11)
[メタリン酸マグネシウム(Mg(PO3)2)被覆層の形成方法]
比較例11は、実施例に対して被覆層の材質が異なるものである。すなわち、16.8gのポリリン酸を5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。これと同時に、38.4gのMg(NO3)2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、1モルのアンモニア溶液 200mLを添加する。添加中はpH=6.5から7.5の範囲になるように1モルのアンモニア溶液 を前記溶液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で3回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。この比較例11の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、図10の特性曲線C21に示すように、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0121】
(比較例12)
[メタリン酸マグネシウム(Mg(PO3)2)被覆層の形成方法]
比較例12は、比較例11に対して、ポリリン酸の量及び硝酸マグネシウムの量が異なる。すなわち、33.6gのポリリン酸を5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。これと同時に、77gのMg(NO3)2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、1モルのアンモニア溶液 200mLを添加する。添加中はpH=6.5から7.5の範囲になるように1モルのアンモニア溶液 を前記溶液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で3回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。この比較例12の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、図10の特性曲線C21に示すように、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0122】
(比較例13)
[メタリン酸マグネシウム(Mg(PO3)2)被覆層の形成方法]
比較例13は、比較例11に対して、ポリリン酸の量及び硝酸マグネシウムの量が異なる。すなわち、67.2gのポリリン酸を5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。これと同時に、154gのMg(NO3)2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、1モルのアンモニア溶液 200mLを添加する。添加中はpH=6.5から7.5の範囲になるように1モルのアンモニア溶液 を前記溶液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で3回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。この比較例13の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、図10の特性曲線C21に示すように、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0123】
(比較例14)
[メタリン酸マグネシウム(Mg(PO3)2)被覆層の形成方法]
比較例14は、比較例11に対して、ポリリン酸の量及び硝酸マグネシウムの量が異なる。すなわち、100.8gのポリリン酸を5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。これと同時に、231gのMg(NO3)2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、1モルのアンモニア溶液 200mLを添加する。添加中はpH=6.5から7.5の範囲になるように1モルのアンモニア溶液 を前記溶液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で3回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。この比較例14の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、図10の特性曲線C21に示すように、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0124】
(比較例15)
[メタリン酸カルシウム(Ca(PO3)2)被覆層の形成方法]
比較例15は、実施例に対して被覆層の材質が異なるものである。すなわち、19.2gのヘキサメタリン酸を1モルのアンモニア溶液200mLと混合する。pH値が6未満に低下するとすぐに、アンモニア溶液を滴加することにより、ヘキサメタリン酸が完全に溶解した後のこの溶液のpH値が約7になるようにする。次いで、この溶液に水を添加して2500mLとする。1000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液中に懸濁させ、20分間かき混ぜる。これと同時に、35.4gのCa(NO3)2・4H2Oとを2400mLの水に溶解し、カルシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に滴加し、水酸化リチウム溶液を添加することにより、この懸濁液のpH値を6.9〜7.5の間に保持する。1時間かき混ぜた後、このコーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を除去する。前記蛍光物質粉末を水とアセトンの1:1混合物で数回洗浄し、次にこの蛍光物質粉末をアセトンで洗浄し、次いでこの蛍光物質粉末を 100℃で乾燥する。この比較例15の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、図10の特性曲線C31に示すように、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0125】
(比較例16)
[メタリン酸カルシウム(Ca(PO3)2)被覆層の形成方法]
比較例16は、比較例15に対して、ヘキサメタリン酸の量及び硝酸カルシウムの量が異なる。すなわち、38.5gのヘキサメタリン酸を1モルのアンモニア溶液200mLと混合する。pH値が6未満に低下するとすぐに、アンモニア溶液を滴加することにより、ヘキサメタリン酸が完全に溶解した後のこの溶液のpH値が約7になるようにする。次いで、この溶液に水を添加して2500mLとする。1000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液中に懸濁させ、20分間かき混ぜる。これと同時に、70.8gのCa(NO3)2・4H2Oとを2400mLの水に溶解し、カルシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に滴加し、水酸化リチウム溶液を添加することにより、この懸濁液のpH値を6.9〜7.5の間に保持する。1時間かき混ぜた後、このコーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を除去する。前記蛍光物質粉末を水とアセトンの1:1混合物で数回洗浄し、次にこの蛍光物質粉末をアセトンで洗浄し、次いでこの蛍光物質粉末を 100℃で乾燥する。この比較例16の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、図10の特性曲線C31に示すように、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0126】
(比較例17)
[メタリン酸カルシウム(Ca(PO3)2)被覆層の形成方法]
比較例17は、比較例15に対して、ヘキサメタリン酸の量及び硝酸カルシウムの量が異なる。すなわち、77gのヘキサメタリン酸を1モルのアンモニア溶液200mLと混合する。pH値が6未満に低下するとすぐに、アンモニア溶液を滴加することにより、ヘキサメタリン酸が完全に溶解した後のこの溶液のpH値が約7になるようにする。次いで、この溶液に水を添加して2500mLとする。1000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液中に懸濁させ、20分間かき混ぜる。これと同時に、141.6gのCa(NO3)2・4H2Oとを2400mLの水に溶解し、カルシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に滴加し、水酸化リチウム溶液を添加することにより、この懸濁液のpH値を6.9〜7.5の間に保持する。1時間かき混ぜた後、このコーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を除去する。前記蛍光物質粉末を水とアセトンの1:1混合物で数回洗浄し、次にこの蛍光物質粉末をアセトンで洗浄し、次いでこの蛍光物質粉末を 100℃で乾燥する。この比較例17の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、図10の特性曲線C31に示すように、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0127】
(比較例18)
[メタリン酸カルシウム(Ca(PO3)2)被覆層の形成方法]
比較例17は、比較例15に対して、ヘキサメタリン酸の量及び硝酸カルシウムの量が異なる。すなわち、115.6gのヘキサメタリン酸を1モルのアンモニア溶液200mLと混合する。pH値が6未満に低下するとすぐに、アンモニア溶液を滴加することにより、ヘキサメタリン酸が完全に溶解した後のこの溶液のpH値が約7になるようにする。次いで、この溶液に水を添加して2500mLとする。1000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液中に懸濁させ、20分間かき混ぜる。これと同時に、212.4gのCa(NO3)2・4H2Oとを2400mLの水に溶解し、カルシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に滴加し、水酸化リチウム溶液を添加することにより、この懸濁液のpH値を6.9〜7.5の間に保持する。1時間かき混ぜた後、このコーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を除去する。前記蛍光物質粉末を水とアセトンの1:1混合物で数回洗浄し、次にこの蛍光物質粉末をアセトンで洗浄し、次いでこの蛍光物質粉末を 100℃で乾燥する。この比較例18の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、図10の特性曲線C31に示すように、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0128】
(比較例19)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
比較例19は、比較例7により作製された蛍光体について加熱気体分析を行うものである。すなわち、18gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、184gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。
【0129】
この被覆蛍光体の加熱気体分析時の放出二酸化硫黄(SO2)量は、図11のプロットP23に示すように、1.5×10-2(重量%)であった。
【0130】
加熱気体分析はヘリウム雰囲気中で行い、昇温速度、20℃/minで温度範囲は室温(30℃)から1000(℃)までで行った。
【0131】
この比較例19の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0132】
(比較例20)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
比較例20は、比較例9により作製された蛍光体について加熱気体分析を行うものである。すなわち、72gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、736gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。
【0133】
この被覆蛍光体の加熱気体分析時の放出二酸化硫黄(SO2)量は、図11のプロットP24に示すように、3.2×10-2(重量%)であった。
【0134】
加熱気体分析はヘリウム雰囲気中で行い、昇温速度、20℃/minで温度範囲は室温(30℃)から1000(℃)までで行った。
【0135】
この比較例20の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0136】
(比較例21)
[リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)被覆層の形成方法]
比較例21は、比較例10により作製された蛍光体について加熱気体分析を行うものである。すなわち、144gのリン酸二水素ナトリウムを5000mLの水に加えてかき混ぜ、1時間かき混ぜて溶解し、しかる後これを、例えばグラスフィルタに通す。2000gのZnS:Cu、Al蛍光物質を前記溶液に懸濁させ、20分間かき混ぜる。3Nの水酸化ナトリウム溶液 を前記溶液に添加しpH=10に調製する。これと同時に、1472gのMgCl2・6H2Oを4800mLの水に溶解し、前記溶液に添加する。上記2つの溶液は液温が20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行っておく。添加中はpH=9から10の範囲になるように水酸化ナトリウム溶液を添加する反応温度は20-30℃になるように、加温もしくは氷冷を行う。マグネシウム塩溶液をこの蛍光物質懸濁液に添加する。2時間かき混ぜた後、コーティングした蛍光物質を沈降させ、上澄溶液を遠心分離により除く。このようにしてコーティングした蛍光物質を遠心分離して溶液から分離し、純水で4回洗浄し、次にアセトンで洗浄し、しかる後140℃で乾燥する。
【0137】
この被覆蛍光体の加熱気体分析時の放出二酸化硫黄(SO2)量は、図11のプロットP25に示すように、3.8×10-2(重量%)であった。
【0138】
加熱気体分析はヘリウム雰囲気中で行い、昇温速度、20℃/minで温度範囲は室温(30℃)から1000(℃)までで行った。
【0139】
この比較例21の被覆形成方法で作製した蛍光体を用いたところ、蛍光体の分解による、非発光層の増加、着色が生じ、蛍光体の輝度劣化が生じ、ディスプレイ寿命が何も被覆しなかった時よりも低下した。
【0140】
(他の実施例)
なお上述の実施例においては、リン酸マグネシウムからなる被覆層23の形成方法として、実施例1〜実施例8の方法を用いる場合について述べたが、これに限られるものではなく水溶性のリン酸塩、もしくはリン酸アンモニウム、水溶性マグネシウム塩を用いて反応させることにより形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】第1の実施の形態に係るディスプレイ装置を示す断面図及び平面図である。
【図2】図1のディスプレイ装置の蛍光膜を示す平面図である。
【図3】図1のディスプレイ装置の蛍光膜を構成する蛍光体を示す断面図である。
【図4】図1のディスプレイ装置における電子放出効率と従来の蛍光体を用いたディスプレイ装置の電子放出効率を示す特性曲線図である。
【図5】第2の実施の形態に係るディスプレイ装置を示す断面図である。
【図6】図5のディスプレイ装置の電子源を示す平面図及び断面図である。
【図7】図5のディスプレイ装置における電子放出効率と従来の蛍光体を用いたディスプレイ装置の電子放出効率を示す特性曲線図である。
【図8】図5のディスプレイ装置における電子放出率の時間経過による変化を示す特性曲線図である。
【図9】図3の被覆された蛍光体作製時のマグネシウムもしくはカルシウム原料の仕込み重量と実際に付着した分析量の関係を示す図である。
【図10】図5のディスプレイ装置における蛍光体のコーティング量を表すと考えられるMgもしくはCa分析量とこの蛍光体を用いたスクリーンの寿命改善度との関係を示す特性曲線図である。
【図11】図5のディスプレイ装置における蛍光体の加熱気体分析時の放出二酸化硫黄(SO2)量と、この蛍光体を用いたスクリーンの寿命改善度との関係を示す特性曲線図である。
【符号の説明】
【0142】
1、31 ディスプレイ装置
2 カーボン・ナノ・チューブ
3 蛍光膜
4 基板
5 フェースプレート
6 アルミニウム膜
9 カソード
10、32 エミッタ素子
11 絶縁材
13 導電膜
15 制御電極
35、36 素子電極
37 導電性薄膜
38 電子放出部
39 薄膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫化亜鉛を母体とする蛍光体であって、表面にMg3(PO4)2の構造式で表されるマグネシウムの燐酸塩化合物の被覆層を備えることを特徴とする蛍光体。
【請求項2】
前記マグネシウムの燐酸塩化合物は、マグネシウム元素に換算して、0.01乃至0.15重量%の範囲で被覆されていることを特徴する請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
20℃/分の昇温速度で30℃から1000℃まで加熱した場合に放出される二酸化硫黄(SO2)量が1×10-2重量%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の蛍光体。
【請求項4】
基板上に設けられた電子源と、
前記電子源に対向する蛍光膜を組み込んだスクリーンとを備え、
前記蛍光膜は、前記電子源から放出される電子線によって励起される硫化亜鉛を母体とする蛍光体であって、表面にMg3(PO4)2の構造式で表されるマグネシウムの燐酸塩化合物の被覆層を備えた蛍光体からなることを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項5】
前記マグネシウムの燐酸塩化合物は、マグネシウム元素に換算して、0.01乃至0.15重量%の範囲で被覆されていることを特徴する請求項4に記載のディスプレイ装置。
【請求項6】
20℃/分の昇温速度で30℃から1000℃まで加熱した場合に放出される二酸化硫黄(SO2)量が1×10-2重量%以下であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のディスプレイ装置。
【請求項1】
硫化亜鉛を母体とする蛍光体であって、表面にMg3(PO4)2の構造式で表されるマグネシウムの燐酸塩化合物の被覆層を備えることを特徴とする蛍光体。
【請求項2】
前記マグネシウムの燐酸塩化合物は、マグネシウム元素に換算して、0.01乃至0.15重量%の範囲で被覆されていることを特徴する請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
20℃/分の昇温速度で30℃から1000℃まで加熱した場合に放出される二酸化硫黄(SO2)量が1×10-2重量%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の蛍光体。
【請求項4】
基板上に設けられた電子源と、
前記電子源に対向する蛍光膜を組み込んだスクリーンとを備え、
前記蛍光膜は、前記電子源から放出される電子線によって励起される硫化亜鉛を母体とする蛍光体であって、表面にMg3(PO4)2の構造式で表されるマグネシウムの燐酸塩化合物の被覆層を備えた蛍光体からなることを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項5】
前記マグネシウムの燐酸塩化合物は、マグネシウム元素に換算して、0.01乃至0.15重量%の範囲で被覆されていることを特徴する請求項4に記載のディスプレイ装置。
【請求項6】
20℃/分の昇温速度で30℃から1000℃まで加熱した場合に放出される二酸化硫黄(SO2)量が1×10-2重量%以下であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のディスプレイ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−177184(P2007−177184A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−380276(P2005−380276)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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