説明

蛍光体

【課題】意図的に結晶場の反転対称をくずして遷移強度を増大させることにより、発光量子効率が向上した蛍光体を提供する。
【解決手段】少なくとも第1の金属イオンと第2の金属イオンとを含有する酸化物結晶を母体とする蛍光体であって、前記第1の金属イオンは、アルミニウム、ガリウム、バナジウム、スカンジウム、アンチモンおよびインジウムからなる群から選択される1種以上のIII価金属イオンを含み、かつ、前記III価金属イオンの一部は、発光体となる1種以上のIII価希土類イオンで置換されていることを特徴とする蛍光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な蛍光体、より詳しくは、結晶場の反転対称をくずして遷移強度を増大させることにより、発光量子効率が向上した蛍光体に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光体とは、無機、有機あるいは両者の複合化合物を母体とし、当該母体中に発光体となる元素イオンを添加したものであり、これに励起源となる電磁波を照射して励起エネルギーを発光体で光に変換し放出するものである。励起源となる電磁波には、光、電子線、X線などが用いられるが、特に400nm以下の紫外光を照射し、蛍光体から可視光を得る構成が、最も多く実用化されている。
【0003】
発光体としては、希土類元素や遷移元素のイオンが用いられ、元素種およびイオン価数は、所望する発光波長やスペクトル幅などの性質に沿って適宜選択される。特に希土類元素は、遷移元素と比較して吸収発光遷移の安定性、遷移強度の強さ、発光量子効率の高さなどから、種々の蛍光材料における発光体として多く用いられている。
【0004】
希土類元素の吸収発光遷移にはいくつかの過程があるが、このうち分裂した4fn軌道準位間の遷移は、母体材料に影響を受けにくい、選択的な励起光吸収および発光が可能である、といった特長を有する。なお、以下、4f軌道に少なくとも1個の電子を持ち、吸収発光遷移を生じ得るランタニド(CeからLuまでの14元素)を発光体となる希土類元素と定義し、Sc、YおよびLaは希土類元素に含めないものとする。
【0005】
ここで、希土類元素の4fn準位間遷移は同じパリティ間での遷移であり、電気双極子による遷移は本来禁制である。しかし、母体が形成する結晶場の反転対称がくずれると、4fnとは別のパリティを持った状態が混じるため、著しく遷移強度が増大する。このことにより、4fn準位間遷移を利用し実用的な発光量子効率を有する蛍光体がこれまで実用化されてきた。
【0006】
SmやEuなどの希土類元素において、固有の4fn準位間遷移を得るには、希土類元素がIII価イオンの状態で母体の結晶場と相互作用している必要がある。このような構成を実現するために、蛍光体材料の設計においては、III価希土類のイオン半径と略同程度のイオン半径を有する同じ価数の金属イオンを母体の構成に含め、これと格子置換することで、希土類イオンを付活する手法が採られる。
【0007】
たとえば、Y23:Eu3+赤色蛍光体においては、YのIII価イオン半径が0.90Åであるため、III価イオン半径が0.95ÅであるEuは、容易にYと格子置換される。このような観点から、希土類イオンの4fn準位間遷移を利用する蛍光体においては、III価のY、Laを構成元素に含めた酸化物を母体とする蛍光体が多く開示されている(例えば、特許文献1)。
【0008】
同様に、4f−5d準位間遷移を利用した発光を得たい場合には、SmやEuをII価イオンとする場合があり、上記特許文献1にもII価のSr、Mg、Caを構成元素に含めて格子置換させた蛍光体が開示されている。
【特許文献1】特公平8−19405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
蛍光体の発光量子効率の向上は、これまで主にフォノン損失の抑制や濃度・温度消光を回避する観点から改善がなされてきた。しかし、吸収発光の遷移強度を増大させるという観点からの試みは少なく、また顕著な効果が得られていない。
【0010】
上述した4fn準位間の遷移機構を鑑みると、遷移強度の増大には結晶場の反転対称を大きくくずせばよいことが想定されるが、希土類イオンに影響を与える結晶場は近接する高々数個の原子であり、このような微細な結晶場を意図的に制御することは非常に困難であった。
【0011】
本発明は上記課題に鑑み、意図的に結晶場の反転対称をくずして遷移強度を増大させることにより、発光量子効率が向上した蛍光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、少なくとも第1の金属イオンと第2の金属イオンとを含有する酸化物結晶を母体とする蛍光体であって、前記第1の金属イオンは、アルミニウム、ガリウム、バナジウム、スカンジウム、アンチモンおよびインジウムからなる群から選択される1種以上のIII価金属イオンを含み、かつ、前記III価金属イオンの一部は、発光体となる1種以上のIII価希土類イオンで置換されていることを特徴とする蛍光体を提供する。
【0013】
ここで、第2の金属イオンは、I価、IV価またはV価の金属イオンを含むことが好ましい。
【0014】
また、上記III価希土類イオンは、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウムおよびイッテルビウムからなる群から選択される1種以上の希土類イオンであることが好ましい。
【0015】
また、III価希土類イオン中のユウロピウム、サマリウム、テルビウム、ツリウムのいずれか1種が占める割合は、III価希土類イオンの全原子数に対して50%以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、意図的に結晶場の反転対称をくずして遷移強度を増大させているため、発光量子効率が向上した蛍光体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の蛍光体は、第1の金属イオンである1種以上のIII価金属イオンと、第2の金属イオンとを少なくとも含有する酸化物結晶の母体および、該III価金属イオンの一部を置換する、発光体となる1種以上のIII価希土類イオンを含んでなる。
【0018】
<第1の金属イオン>
母体に含まれるIII価金属イオンのイオン半径は、発光体となるIII価希土類イオンのイオン半径より小さいことが好ましい。このように、III価金属イオンを含む母体結晶に対して、III価希土類イオンを発光体として用いることにより、該III価金属イオンの格子サイトに、III価希土類イオンが置換されやすくなる。さらに、希土類イオンのIII価イオン半径より小さなイオン半径を有するIII価金属イオンを用いることにより、該希土類イオンで置換された周囲の結晶が若干の歪みを有し、結晶場の反転対称がくずれ、遷移強度が増大する。
【0019】
ここで、表1に、母体に含まれる第1の金属イオンとして用い得るイオン種の具体例とそのIII価イオン半径(配位数6)、および発光体に用い得る希土類イオン種の具体例とそのIII価イオン半径(配位数6)を示す。
【0020】
【表1】

【0021】
表1に示されるように、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、バナジウム(V)、スカンジウム(Sc)、アンチモン(Sb)、インジウム(In)のIII価イオンは、発光体に用いられ得る希土類イオンのIII価イオン半径より小さなイオン半径を有し、これらは母体を構成する第1の金属イオンとして好適に用いることができる。これらAl、Ga、V、Sc、Sb、Inから選択される金属イオンは、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0022】
Alよりさらに小さいIII価イオン半径有するIII価金属イオンを母体に用いると、III価希土類イオンによって置換されにくく、また、過大な格子歪みにより、かえって発光量子効率が低下する傾向にある。また、III価希土類イオンと同程度のIII価イオン半径を有するイットリウム(Y)、ビスマス(Bi)、ルテチウム(Lu)、ランタン(La)が母体構成要素として含まれていると、III価希土類イオンが優先的に格子置換されるが、ほとんど結晶歪みを生じないため,遷移強度は増大しない。
【0023】
<III価希土類イオン>
発光体として用いられるIII価希土類イオンとしては、たとえばセリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のIII価イオンを挙げることができる。なかでも、本発明において蛍光体として利用できる程度の発光を生じる、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbのIII価イオンが好ましく用いられる。
【0024】
上記III価希土類イオンは1種のみを用いてもよく、2種以上を共付活させてもよい。2種以上のIII価希土類イオンを共付活させることにより、吸収発光のスペクトルを微細に制御したり、一方の希土類イオンから他方の希土類イオンへのエネルギー移動によって、発光効率を向上させることができる。ただし、共付活させるIII価希土類イオンの濃度が同程度である場合、双方の吸収発光が競合し、全体的な発光効率が低下する。したがって、産業利用において重要な可視光を高効率で発するSm、Eu、Tb、Tmについては、共付活においても蛍光体の発光量子効率が向上させるために、これら単独でIII価希土類イオンの50%以上を占めるようにすることが好ましい。
【0025】
<第2の金属イオン>
本発明の蛍光体の酸化物結晶母体は、上記第1の金属イオンとしてのIII価金属イオンとともに、第2の金属イオンを含む。第2の金属イオンとしては、I価、IV価またはV価の金属イオンを用いることが好ましく、たとえば、Li、Na、K、Rb、Cs、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Si、Ge、Sn、Pb、P、As、Sb、Bi等を挙げることができる。第2の金属イオンとしてII価金属イオンを用いることもできるが、たとえばII価のMg、Ca、Sr、Baイオンが存在すると、発光体となるIII価希土類イオンが容易にII価に還元置換されるため、所望の4fn準位間遷移発光が得られなくなる虞がある。母体に用いられる第2の金属イオンは1種であってもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
以上のように、酸化物結晶母体は、2種以上の金属イオンを含む。すなわち、少なくとも上記第1の金属イオンと上記第2の金属イオンとを含む。このように、2種以上の金属イオンを用いることにより、結晶性の悪化を生じさせることなく適度な結晶歪みを内在させ、遷移強度を向上させることができる。
【0027】
なお、蛍光体の結晶構造としては、特に限定されるものではなく、たとえばペロブスカイト構造、スピネル構造、パイロクロア構造、ガーネット構造などを採ることができる。
【0028】
本発明の蛍光体の構成金属元素および組成は、蛍光X線法、ICP発光分光法、電子線マイクロアナライザ法などによって確認することができる。蛍光体の結晶構造は、X線回折により確認することができる。また、希土類イオンがIII価であることは、蛍光体の励起発光スペクトルにより確認することが出来る。また、III価希土類イオンがIII価金属イオンの格子サイトを置換していることは、X線吸収微細構造(EXAFS)の解析によって確認することが出来る。
【0029】
本発明の蛍光体を製造する方法としては、特に限定されるものではなく、たとえば固相合成法、液相合成法、気相合成法などの手法を用いて合成することができる。特に、結晶性を均一に保ち、付活希土類の格子置換を適切に生ぜしめるには、非平衡状態を実現する合成手法が好ましく、液相合成法であれば超臨界合成法やグリコサーマル合成法、気相合成であれば、HVPE法やMBE法などが適している。
【0030】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
<実施例1>
LiAlTiO4:Eu3+蛍光体
純度99.99%の炭酸リチウム(Li2CO3)7.39g、純度99.99%の酸化アルミニウム(Al23)10.20g、純度99.99%の酸化チタン(TiO2)16.00g、純度99.99%の酸化ユウロピウム(Eu23)0.4gを計量し、自動乳鉢で混合し、大気中1500℃で3時間焼成した。その後、公知の処理工程(粉砕、分級および洗浄)を経て、LiAlTiO4:Eu3+蛍光体を得た。
【0032】
当該蛍光体の発光スペクトルを図1に示す。図1の発光スペクトルより、付活したEuがIII価イオンとなって発光していることが確認された。また、蛍光体の構成元素をICP発光分光法により分析したところ、Li、Al、Ti、Euの存在が確認された。また、蛍光体のX線回折により結晶構造を分析したところ、当該蛍光体がスピネル構造を有するLiAlTiO4であることが確認された。また、X線吸収微細構造(EXAFS)の解析により、III価Euイオンは、III価Alサイトを格子置換していることが推認できた。さらに、当該蛍光体の発光量子効率は、60%であった。
【0033】
<比較例1>
酸化イットリウム(Y23)を微量添加したこと以外は、実施例1と同様にして蛍光体を作製した。当該蛍光体の発光量子効率は、30%であり、実施例1の1/2に低減した。X線回折およびX線吸収微細構造評価の結果、比較例1の蛍光体はLi(Al、Y)TiO4であり、III価Euイオンは、優先的にIII価Yサイトを格子置換していることが推認できた。
【0034】
<実施例2>
ScAlO3:Sm3+蛍光体
純度99.99%の酸化スカンジウム(Sc23)13.80g、純度99.99%の酸化アルミニウム(Al23)10.20g、純度99.99%の酸化サマリウム(Sm23)0.07gを計量し、自動乳鉢で混合し、大気中1700℃で3時間焼成した。その後、公知の処理工程(粉砕、分級および洗浄)を経て、ScAlO3:Sm3+蛍光体を得た。
【0035】
当該蛍光体の発光スペクトルを図2に示す。図2の発光スペクトルより、付活したSmがIII価イオンとなって発光していることが確認された。また、蛍光体の構成元素をICP発光分光法により分析したところ、Sc、Al、Smの存在が確認された。また、蛍光体のX線回折により結晶構造を分析したところ、当該蛍光体がペロブスカイト構造を有するScAlO4であることが確認された。また、X線吸収微細構造(EXAFS)の解析により、III価Smイオンは、主にIII価Scサイトを格子置換していることが推認できた。さらに、当該蛍光体の発光量子効率は、55%であった。
【0036】
<比較例2>
酸化スカンジウム(Sc23)に代えて炭酸ストロンチウム(SrCO3)30gを用いたこと以外は、実施例2と同様にして蛍光体を作製した。当該蛍光体の発光量子効率は、30%であり、実施例2のおよそ1/2に低減した。発光スペクトルを測定したところ、実施例2の蛍光体とは異なる発光スペクトルが得られ、また、X線回折およびX線吸収微細構造評価の結果、比較例2の蛍光体はSrAl24であり、SmはII価イオンとして、II価Srイオンを格子置換していることが推認できた。
【0037】
<実施例3>
ScTaO7:Tb3+蛍光体
純度99.99%の酸化スカンジウム(Sc23)13.80g、純度99.99%の5酸化タンタル(Ta25)44.18g、純度99.99%の酸化テルビウム(Tb47)0.15gを計量し、自動乳鉢で混合し、大気中1700℃で3時間焼成した。その後、公知の処理工程(粉砕、分級および洗浄)を経て、ScTaO7:Tb3+蛍光体を得た。
【0038】
当該蛍光体の発光スペクトルを図3に示す。図3の発光スペクトルより、付活したTbがIII価イオンとなって発光していることが確認された。また、蛍光体の構成元素をICP発光分光法により分析したところ、Sc、Ta、Tbの存在が確認された。また、蛍光体のX線回折により結晶構造を分析したところ、当該蛍光体がパイロクロア構造を有するScTaO7であることが確認された。また、X線吸収微細構造(EXAFS)の解析により、III価Tbイオンは、III価Scサイトを格子置換していることが推認できた。さらに、当該蛍光体の発光量子効率は、60%であった。
【0039】
<比較例3>
酸化スカンジウム(Sc23)に代えて酸化ランタン(La23)32.58gを用いたこと以外は、実施例3と同様にして蛍光体を作製した。当該蛍光体の発光量子効率は、30%であり、実施例3の1/2に低減した。X線回折およびX線吸収微細構造評価の結果、比較例3の蛍光体はLaTaO7であり、III価Tbイオンは、優先的にIII価Laサイトを格子置換していることが推認できた。
【0040】
<実施例4>
Mn3Al2Si312:Sm3+蛍光体
純度99.99%の二酸化マンガン(MnO2)26.08g、純度99.99%の酸化アルミニウム(Al23)10.2g、純度99.99%の二酸化シリコン(SiO2)18.03g、純度99.99%の酸化サマリウム(Sm23)0.07gを計量し、自動乳鉢で混合し、大気中1600℃で3時間焼成した。その後、公知の処理工程(粉砕、分級および洗浄)を経て、Mn3Al2Si312:Sm3+蛍光体を得た。
【0041】
当該蛍光体の発光スペクトルを測定したところ、図2と同じ発光スペクトルが得られた。このことより、付活したSmがIII価イオンとなって発光していることが確認された。また、蛍光体の構成元素をICP発光分光法により分析したところ、Mn、Al、Si、Smの存在が確認された。また、蛍光体のX線回折により結晶構造を分析したところ、当該蛍光体がガーネット構造を有するMn3Al2Si312であることが確認された。また、X線吸収微細構造(EXAFS)の解析により、III価Smイオンは、III価Alサイトを格子置換していることが推認できた。さらに、当該蛍光体の発光量子効率は、30%であった。
【0042】
<比較例4>
酸化イットリウム(Y23)を微量添加したこと以外は、実施例4と同様にして蛍光体を作製した。当該蛍光体の発光量子効率は、10%であり、実施例4の1/3に低減した。X線回折およびX線吸収微細構造評価の結果、比較例4の蛍光体はMn3(Al、Y)2Si312であり、III価Smイオンは、優先的にIII価Yサイトを格子置換していることが推認できた。
【0043】
<実施例5>
Mn3Al2Si312:Sm3+,Eu3+蛍光体等
酸化サマリウム(Sm23)の添加量を0.06gとし、酸化ユウロピウム(Eu23)を0.01g添加したこと以外は、実施例4と同様にしてMn3Al2Si312:Sm3+,Eu3+蛍光体を得た。また、酸化ユウロピウム(Eu23)に代えてPr23、Tb23、Er23、またはYb23をそれぞれ0.01g添加したこと以外は実施例4と同様にして蛍光体を作製した。
【0044】
上記5種の蛍光体の発光量子効率は、それぞれ40%(Eu23添加)、35%(Pr23添加)、33%(Tb23添加)、32%(Er23添加)、30.5%(Yb23添加)であり、実施例4の蛍光体と比較して、それぞれ約30%、20%、10%、5%、3%の向上がみられた。
【0045】
<実施例6>
酸化サマリウム(Sm23)の添加量を0.035gとし、酸化ユウロピウム(Eu23)を0.35g添加したこと以外は、実施例4と同様にしてMn3Al2Si312:Sm3+Eu3+蛍光体を得た。また、酸化ユウロピウム(Eu23)に代えてPr23、Tb23、Er23、またはYb23をそれぞれ0.01g添加したこと以外は実施例4と同様にして蛍光体を作製した。
【0046】
上記5種の蛍光体の発光量子効率は、それぞれ27%(Eu23添加)、25.5%(Pr23添加)、25.5%(Tb23添加)、24%(Er23添加)、24%(Yb23添加)であり、比較例4の場合と比較すると、より高い発光量子効率が得られたが、実施例4の蛍光体と比較して、それぞれ約10%、15%、15%、20%、20%低下した。
【0047】
なお、上記蛍光体の特性評価のための各種測定は、以下の測定条件に従うものである。
(1)発光スペクトルの測定:蛍光分光光度計 FluoroMax−3 堀場製作所製を用いて測定した。
【0048】
(2)X線回折:粉末X線回折測定装置 MPX18 マックサイエンス製を用いて測定した。
【0049】
(3)発光量子効率:蛍光測定システム 大塚電子製を用いて測定した。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施例1で得られた蛍光体の発光スペクトルである。
【図2】実施例2および実施例4で得られた蛍光体の発光スペクトルである。
【図3】実施例3で得られた蛍光体の発光スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の金属イオンと第2の金属イオンとを含有する酸化物結晶を母体とする蛍光体であって、
前記第1の金属イオンは、アルミニウム、ガリウム、バナジウム、スカンジウム、アンチモンおよびインジウムからなる群から選択される1種以上のIII価金属イオンを含み、かつ、
前記III価金属イオンの一部は、発光体となる1種以上のIII価希土類イオンで置換されていることを特徴とする蛍光体。
【請求項2】
前記第2の金属イオンは、I価、IV価またはV価の金属イオンを含むことを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
前記III価希土類イオンは、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウムおよびイッテルビウムからなる群から選択される1種以上の希土類イオンであることを特徴とする請求項1または2に記載の蛍光体。
【請求項4】
前記III価希土類イオン中のユウロピウム、サマリウム、テルビウム、ツリウムのいずれか1種が占める割合は、前記III価希土類イオンの全原子数に対して50%以上であることを特徴とする請求項3に記載の蛍光体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−88349(P2008−88349A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272836(P2006−272836)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】