説明

蛍光偏極撮像装置及び方法

発明は大視野での組織の迅速な撮像を可能にする新規な多重スペクトル外因性蛍光偏極撮像法に向けられる。撮像装置は、同調可能な単色光源及びCCDカメラを備える。蛍光偏極画像及び/または蛍光異方性画像を得るために、直線偏光子が入射光経路及び収集光経路のいずれにも配置される。外因性傾向画像をとるため、蛍光造影剤が目標組織に運ばれる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は2003年9月19日に出願された米国仮特許出願第60/504513号への優先権の恩典を主張する。この仮特許出願の明細書の開示はその全体が参照として本明細書に含まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は生体組織を撮像するための実時間方法に関する。本方法は生体組織の画像を得るために偏極強化型蛍光撮像システムを用いる。得られた画像は、とりわけ、非メラノーマ性皮膚癌の境界画定に用いることができる。
【背景技術】
【0003】
非メラノーマ性皮膚癌はヒトのガンの最も一般的な形態である。全皮膚癌の約75%は基底細胞カルシノーマ(BCC)であり、約20%は扁平上皮細胞カルシノーマ(SCC)である。これらの癌は白色人種の人口比罹病率の主要な原因である。これらの癌は普通、頭及び首のような、身体の陽に当たる領域に見られる。多くの腫瘍は顔に生じるから、腫瘍の周りの正常な皮膚を維持することが肝要である。残念ながら、これらの腫瘍のほとんどはあまりはっきりしていない境界を有し、腫瘍の境界の目視検出、したがって腫瘍の精確な切除が困難な課題になる。
【0004】
米国においては、モース氏顕微鏡手術(MMS)が、正常な皮膚の除去を可能な限り少なくすると同時に最高の治癒率を提供する、一般に認められた処置である。詳細なマッピング及び切除される病巣の完全な顕微鏡制御を用いて、モース氏手術医は、他の場合では肉眼で見ることができない、癌に関わる手術境界において領域を精密に決定できる。精密かつ正確ではあるが、MMSは時間がかかり、多くの熟練スタッフが必要な処置でもある。MMSには、皮膚描記症に熟練した外科医、専用の検査室及び凍結させた切片を作成及び評価するための技師が必要である。これらの難点のため、MMSは少数の事例でしか用いられない。
【0005】
近年、光撮像方式の発展が皮膚腫瘍の検出及び境界画定の既存の方法に対する実行可能な代替方法となり得る手法の導入をもたらした。しかし、そのような手法の全てには臨床環境における実用に必要な1つまたはそれより多くの要素が欠けている。
【0006】
様々な正常な皮膚状態及び病理学的皮膚状態を調べるために、共焦点反射顕微鏡検査法が用いられてきた。共焦点反射顕微鏡検査法により、組織検査に匹敵する高い解像度(横方向で〜1μm、縦方向(切片厚)で〜3μm)で、濃密媒質内の撮像が可能になる。皮膚腫瘍境界の評価についての生体内共焦点顕微鏡検査法の主要な欠点は小さい視野(0.25mmから0.3mm)である。軸方向解像度を犠牲にする(〜30μmにする)ことによって視野を2mmまで拡大することは可能である。しかし、2mm視野であってもほとんどの病巣の大きさよりかなり小さい。癌とおぼしい領域全体を検査するためには、連続する画像をとり、つなぎ合せなければならない。このプロセスには時間がかかり、得られた画像は患者の動きによって歪むことがあり得る。
【0007】
偏光は生物学的用途及び医学的用途に対して広く用いられてきた。ほとんどの事例において、皮膚癌は表皮から発生する。したがって、皮膚の病巣の検出については、近表皮画像をとることが有利である。この目標を達成すると同時に大視野を維持するため、偏光撮像法を用いることができる。偏光の使用により、近表皮組織層だけの撮像が可能になる。試料への入射光が直線偏光であれば、主に近表皮層から生じる単散乱成分の大部分を分離するために平行偏光及び直交偏光によってとられた2つの画像を用いることができる。皮膚のような濃密媒質が直線偏光で照射される場合、後方散乱光はその偏極をある程度保持する。無秩序な濃密媒質によって正反射され、単散乱された光は入射ビームと同じ偏極を有する。
【0008】
例えばIMを像面における単散乱光の強度とする。多重散乱は伝搬ビームの偏極をランダム化する。最終的には、多重散乱光の1/2は同じ偏極(IM)を有し、残り1/2は入射ビームの偏極に直交する偏極(IM)を有する。したがって、IM=IMである。
【0009】
従来の画像IMは単散乱光及び多重散乱光によってつくられ、式1:
【数1】

【0010】
で与えられる。
【0011】
入射光の偏極に平行な方向に偏極された放射光を用いてとられる画像は単散乱光及び多重散乱光の和によってつくられ、式2:
【数2】

【0012】
で与えられる。
【0013】
入射光の偏極に直交する方向に偏極された放射光を用いてとられる画像は多重散乱光だけでつくられ、式3:
【数3】

【0014】
で与えられる。
【0015】
差像DIMは式4:
【数4】

【0016】
で与えられる減算によって得られる。
【0017】
この画像は、上で説明したように、IM=IMであるから、単散乱光でつくられる。
【0018】
皮膚において、単後方散乱は、光の波長、色素沈着及び血液成分に依存して、可視及び近赤外スペクトル範囲においてほぼ70μmから200μmの深さでおこる。近年、白色偏光デジタル撮像法が、色素が沈着した皮膚病巣を評価するために用いられている(非特許文献1)。式5:
【数5】

【0019】
で与えられる偏極画像PIMがつくられ、分析される。
【0020】
分子はDIMに等しい。分母は通常の画像である。通常の画像に対する差像の比は、組織に存在するいずれの近表皮着色体(すなわち、メラニン、血液)にもともなうコントラストを相殺するために用いることができる。撮像層厚は約200μm(白色光)である。メラニンは光を強く散乱し、色素が沈着した病巣において優れたコントラストをもつ明るい領域を生じる。可変量のメラニンを含む非メラノーマ性皮膚癌において、散乱に基づくそのような強コントラストが確実に生じるとは考えられないであろう。したがって、この方法では、病巣の特性決定のために白色光画像にエンコードされたスペクトル情報を用いることができず、画像における非メラノーマ性皮膚癌病巣のコントラストは比較的弱い。
【0021】
内因性蛍光及び光増感剤の外因性蛍光の検出に基づく皮膚癌撮像法の開発にかなりの努力がかたむけられてきた。ブランカレオン(Brancaleon)等によれば、非メラノーマ性皮膚癌の検出に対する自己蛍光(内因性蛍光)分光法の使用の可能性が調べられた(非特許文献2)。ブランカレオン等の生体内及び生体外の研究は、正常組織よりも腫瘍において、残留トリプトファンの内因性蛍光が強く、コラーゲン及びエラスチンにともなう蛍光が弱いことを示した。同時に、ブランカレオン等は、限局性強皮症型BCCの事例においてはコラーゲン線維が腫瘍細胞に囲まれている場合に、またインシトゥのSCCにおいては腫瘍が真皮を侵していない場合に、コラーゲンの蛍光が強くなり得ることを述べている。新鮮な凍結癌組織試料の78%では、腫瘍近傍でのコラーゲン及びエラスチンの蛍光の低下が見られた。蛍光の低下で特徴付けられる領域は組織検査評価で決定された腫瘍寸法より2ないし3倍大きかった。したがって、非特許文献2で示唆される方法は、非メラノーマ性癌検出には適用できるが、手術中の精確な腫瘍境界画定に用いることはできない。
【0022】
皮膚癌の処置のための代替方法として、光力学的療法(PDT)も試みられた。皮膚科学のためのPDT処置の一例には、δ-アミノレブリン酸(ALA)の局所適用に続く赤色光(λ〜635nm)照射がある。ALAは腫瘍組織に蓄積するプロトポルフィリンIX(PpIX)の生合成における前駆体である。PpIXを含む細胞が赤色光で照射されると、そのような細胞は選択的に殺される。PpIXは蛍光性であり、したがって腫瘍検出に用いることができる。
【0023】
ウエンバーグ等は生体内のPpIX蛍光領域を撮像して、これらの領域の位置及び寸法を組織検査法で決定された病巣の寸法と比較した(非特許文献3)。ウエンバーグ等は病巣の50%において組織検査との相関が良好であり、23%において相関がある程度あり、27%において相関が全くないことを見いだした。ウエンバーグ等はいくつかの事例において、日焼けした皮膚、治癒中の傷及び正常な毛包からPpIX蛍光が検出されたことから、PpIX蛍光の選択性が十分に高くはないことを指摘している。複数波長蛍光撮像法及びライフタイム蛍光撮像法を用いた同様の研究が他のいくつかのグループで行われた。PpIX蛍光撮像法の予測能力及び腫瘍の横方向広がりの境界を画定できる能力は未だに疑わしい(非特許文献4及び5)。
【0024】
多くの事例において正常組織及び病変組織からの光信号の差は微妙であり、したがって、新規な光造影剤の開発及び評価に多大の努力がかたむけられている。金の極微細粒子及び光散乱剤で満たされた微小球がそのような造影剤の例である(非特許文献6)。これらの造影剤の利点はそれらの光特性の調整可能性である。言い換えれば、可変パラメータとして、構造、寸法及び屈折率を用いれば、これらの粒子を含む組織の特定のあらかじめ定められた波長における散乱及び/または吸収を強めるであろう粒子を作成することができる。
【0025】
そのような造影剤の有用性はそれぞれの粒子が目標腫瘍組織に運ばれる効率に大きく依存する。手法の1つは、静脈に注射することができ、腫瘍まで移動して腫瘍内に局在するであろう、極めて選択的な造影剤を設計することである。別の手法は、既存の造影剤を特定の細胞表面タンパク質に結合させ、よって腫瘍選択性を得ることである(非特許文献7)。
【0026】
最高技術の特定分子対応造影剤の開発は複雑で困難な課題である。ヒトの生体内腫瘍撮像のためのこれらの手法の能力を評価するには、精巧で時間がかかる動物モデル検査が必要である。開発のこの時点で、これらの実験的造影剤の臨床環境での適用を試みることはできない。BCCが問題である場合、ヒトの皮膚のBCCのための動物モデルは存在しないから、そのような特定分子対応剤の適用可能性の検査は一層問題が大きい。したがって、既存の造影剤の利用に基づく手法が現在の臨床環境における適用により良く適すると思われる。
【0027】
口腔、膀胱及び頸の病巣の目視検査を補助するために癌組織によって選択的に保持される非毒性造影剤が以前から適用されている。特にメチレンブルー(MB)及びトルイジンブルー(TB)を含むフェノチアジニウム造影剤が生体内の様々なカルシノーマを染色するために用いられてきた(非特許文献8及び9)。フェノチアジニウム造影剤は正常細胞に比較してカルシノーマ細胞のミトコンドリアにかなり多くの量が蓄積する(非特許文献10)。MBは、膀胱の新形成腫瘍、膵臓の腫瘍及びバレット氏食道化生の明白な境界画定に成功裏に適用された。TBは口腔カルシノーマ及びバレット氏食道化生を検出するために局所的に用いられた。
【0028】
TB染色は高度に識別可能なBCCの染色パターン(異染性)を有するヘマトキシリン−エオシン(H&E)に比較していくつかの利点を提供することから、TBはBCCのモース氏手術における使用に好ましい染色剤である。TBはMMS中に新鮮凍結組織切片を染色するために日常的に用いられているから、染色された腫瘍の処理された偏光画像は標準のモース氏顕微鏡手術マップに極めて類似している。この類似性により、モース氏手術医のための画像の理解及び解釈のプロセスがかなり簡単になる。毛包、皮脂腺、脂肪及び正常基質要素が詳細に見え、正常組織に比較して造影剤をより多く取り込むことによって非常に黒く見える腫瘍とは異なって見える。
【0029】
用いられる別のタイプの造影剤は蛍光性造影剤(蛍光発色団)である。蛍光性造影剤は特定の波長において光を吸収し、より長い波長で光を放射する。腫瘍を優先的に染色し、したがって腫瘍の検出及び境界画定に用いることができる、いくつかの蛍光発色団がある。これらには、PpIX,テトラサイクリン(TCN),TB及びMBがある。蛍光スペクトルは蛍光発色団分子の生化学的環境の変化に敏感である。病変した皮膚の生化学的組成は正常な組成とかなり異なる。偏光で励起されると、蛍光試料からの発光も偏極される(非特許文献11)。この偏極は、励起光の偏極の方向に対する蛍光発色団の配向にしたがう、蛍光発色団の光選択の結果である。蛍光偏極はP=(I||−I)/(I||+I)と定義される。
【0030】
あるいは、I=(I||−I)/(I||+2I)と定義される蛍光異方性を評価することができる。蛍光偏極を測定するため、試料は直線偏光で励起される。観測偏光子が励起偏光の方向に平行(||)に配位されていれば、観測像(すなわち強度)はI||である。偏光子が励起偏光の偏光面に垂直()に配位されていれば、観測像はIである。
【0031】
蛍光発光には、励起状態のライフタイムの間の蛍光発色団の回転拡散、エネルギー転移、再吸収等を含む多くの現象によって減偏光がおこり得る。蛍光偏極の回転拡散依存性は生化学研究におけるこの手法の多くの応用をもたらした。例えば、蛍光偏極測定は、細胞内構造変化の研究、タンパク質の変性及びタンパク質の回転率の定量化に用いられてきた。蛍光偏極定量法のいくつかの臨床応用もある。これらの定量法は、治療薬のモニタリング、胎児の肺成熟の判定等に用いられる。したがって、蛍光偏極撮像法にはTB,MB及びTCNのような造影剤の特異性をさらに高める見込みがある。
【非特許文献1】エス・エル・ジャック(S.L. Jacques),ジェイ・アール・ロマン(J. R. Roman),ケイ・リー(K. Lee),「偏光による近表皮組織の撮像(Imaging superficial tissues with polarized light)」,Las. Surg. Med.,2000年,第26巻,p.119−129
【非特許文献2】エル・ブランカレオン(L. Brancaleon),エイ・ジェイ・ダーキン(A. J. Durkin),ジェイ・エイチ・トゥー(J. H. Tu),ジー・メネイカー(G. Menaker),ジェイ・ディー・ファロン(J. D. Fallon),エヌ・コリアンス(N. Kollians),「非メラノーマ性皮膚癌の生体内蛍光分光法(In vivo fluorescence spectroscopy of nonmelanoma skin cancer)」,Photochem. Photobiol.,2001年,第73巻,第2号,p.178−183
【非特許文献3】エイ・エム・ウエンバーグ(A. M. Wennberg),エフ・グドムンドソン(F. Gudmundson),ビー・ステンキスト(B. Stenquist),エイ・ターネステン(A. Ternesten),エル・メーレン(L. Moelrn),エイ・ローゼン(A. Rosen),オー・ラーコ(O. Larko),「撮像分光法を用いる基底細胞カルシノーマの生体内検出(In vivo detection of basal cell carcimoma using imaging spectroscopy)」,Acta Derm. Venereol.,1999年,第79巻,p.54−61
【非特許文献4】ジェイ・ヒューウエット(J. Hewett),ブイ・ネイドー(V. Nadeau),ジェイ・ファーガソン(J. Ferguson),エイチ・モーズリー(H. Moseley),エス・アイボットソン(S. Ibottoson),ジェイ・ダブリュー・アレン(J. W. Allen),ダブリュー・シベット(W. Sibbett),エム・パジェット(M. Padgett),「励起源が一体化された小型多重スペクトル撮像システムの近表皮癌の局所光力学的療法中の蛍光の生体内観察への適用(The application of a compact multispectral imaging system with integrated excitation source to in vivo monitoring of fluorescence during topical photodynamic therapy of superficial skin cancers)」,Photochem. Photobiol.,2001年,第73巻,第3号,p.278−282
【非特許文献5】エス・アンダーソン−エンゲルス(S. Andersson-Engels),ジー・キャンティ(G. Canti),アール・キュードゥ(R. Cueddu),シー・エカー(C. Eker),シー・アフ−クリンテベルグ(C. af Klinteberg),エイ・ピフェリ(A. Pifferi),ケイ・スヴァンベルグ(K. Svanberg),エス・スヴァンベルグ(S. Svanberg),ピー・タローニ(P. Taroni),ジー・バレンティニ(G. Valentini),アイ・ウオン(I. Wang),「皮膚の基底細胞カルシノーマの検出及び画定のための2つの蛍光撮像法の予備評価(Preliminary evaluation of two fluorescence imaging methods for the detection and delineation of basal cell carcinomas of the skin)」,Las. Surg. Med.,2000年,第26巻,p.76−82
【非特許文献6】ジェイ・エル・ウエスト(J. L. West)及びエヌ・ジェイ・ハラス(N. J. Halas),「ナノテクノロジーのバイオテクノロジーへの適用−個人的見解(Application of Nanotechnology to Biotechnology - Commentary)」,Current Opinion in Biotechnology,2000年,第11巻,p.215−220
【非特許文献7】ジェイ・イー・ブガイ(J. E. Bugaj),エス・アキレフ(S. Achilefu),アール・ビー・ドルショー(R. B. Dorshow),アール・ラジャゴパラン(R. Rajagopalan),「レセプタ標的造影剤−ペプチド共役プラットフォームに基づく生体内腫瘍の光学撮像のための新規な蛍光性造影剤(Novel fluorescent contrast agents for optical imaging of in vivo tumors based on a receptor-targeted contrast agent-peptide conjugate platform)」,J. Biomed. Opt.,2001年、第6巻,p.122−133
【非特許文献8】エイ・ブイ・カイサリー(A V. Kaisary),「生体内メチレンブルー染色法を用いる侵襲性膀胱カルシノーマにおける放射線治療の評価(Assessment of radiotherapy in invasive bladder carcinomas using in vivo methylene blue staining technique)」,Urology,1986年,第28巻,第2号,p.100−102
【非特許文献9】ジー・エム・アイゼン(G. M. Eisen),イー・エイ・モンゴメリー(E. A. Montgomery),エヌ・アズミ(N. Azumi),ディー−ピー・ハットマン(D-P. Hatmann),ピー・バーガバ(P. Bhargava),エム・リップマン(M. Loppman),エス・ビー・ベンジャミン(S. B. Benjamin),「バレット氏化生の定性的マッピング:介入試行のための前提条件(Qualitative mapping of Barrett's metaplasia: a prerequisite for intervention trials)」,Gastrointestinal Endoscopy,1999年,第50巻,第6号,p.814−818
【非特許文献10】エイ・アール・オセロフ(A. R. Oseroff),ディー・オフオハ(D. Ohuoha),ジー・アラ(G. Ara),ディー・マコーリッフェ(D. McAuliffe),ジェイ・フォリー(J. Foley),エル・チンコッタ(L. Cincotta),「ミトコンドリア内造影剤がカルシノーマ細胞の選択的生体外光分解を可能にする(Intramitochondrial contrast agents allow selective in vitro photolysis of carcinoma cells)」,Proc. Natl. Acad. Sci. USA.,1986年,第83巻,p.9729−9733
【非特許文献11】ジェイ・アール・レイコビック(J. R. Lakowic)著,「蛍光顕微鏡検査法の原理(Principles of Fluorescence Spectroscopy)」,(米国ニューヨーク),プレナム・プレス(Plenum Press),1983年
【非特許文献12】ピー・ピー・フェオフィロフ(P. P. Feofilov),Izv. Akad. Nauk SSSR. Ser. Fiz.,1945年,第9巻,p.317
【非特許文献13】アール・エフ・チェン(R. F. Chen)及びアール・エル・ボウマン(R. L. Bowman),1965年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
皮膚癌の臨床撮像のためにこれまで試みられた、上述した手法の全ては利点と欠点を有する。しかし、これらの手法は全て臨床環境における実用に必要な1つまたはそれより多くの要素を欠いていると思われる。すなわち、共焦点顕微鏡法は、優れた空間解像度を提供するが、極めて限られた視野及び複雑な多重波長撮像の実施という問題を抱えている。
【0033】
さらに、この手法は被験者の位置の小さな変化に極めて敏感である。白色偏光撮像法は、簡単で費用がかからないが、同時にスペクトル情報を利用することができず、この結果、必要なコントラストを与えない。PpIX蛍光撮像法は十分な特異性をもたず、自己蛍光撮像法は腫瘍の寸法を誇張しがちであり、限局性強皮症型BCCの位置を局限することができない。
【0034】
すなわち、上述した欠陥の観点から、腫瘍境界をマッピングするための、より簡単で、より正確であり、より時間効率が高い方法が望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明は、上述した必要を満たすこと及び、特には上で論じた、全般的には従来技術の、欠陥を扱うことに向けられる。本発明にしたがって構成される方法、システム及び装置は、手術中の非メラノーマ性皮膚腫瘍境界の実時間画定に特に有用であり、とりわけ、腫瘍切除プロセスを速め、実施できる手術処置の数を多くすることによって、標準癌手術におけるかなりの改善を提供する。さらに、本発明は実際の腫瘍切除手術を誘導するために用いることができる。
【0036】
本発明の一実施形態に腫瘍領域を撮像するための装置がある。本装置は、ある波長及び第1の偏極を有する光を腫瘍領域に放射するために用いることができる偏光放射器、第1の偏極を有する腫瘍領域から放射される光及び第1の偏極に垂直な第2の偏極を有する腫瘍領域から放射される光を検出するために用いることができる光検出器並びに、励起波長を遮断するために用いられ、第1の偏極を有する検出された光及び第2の偏極を有する検出された光に基づいて蛍光画像を形成するために用いることができる、アナライザを備える。
【0037】
本発明の別の実施形態において、あらかじめ定められた偏光波長は200nmから2000nm(すなわち、紫外(UV)-可視(VIS)-近赤外(NIR))の範囲にある。
【0038】
本発明のまた別の実施形態において組織領域は造影剤で染色される。造影剤は、TB,MB,テトラサイクリン,PpIX,デメクロサイクリン等のような、蛍光発色団とすることができると予想される。造影剤は、手術前の局所的塗布によるか腫瘍部位への注射によるような、いずれか適する態様で与えることができる。
【0039】
本発明のまた別の実施形態に、組織領域を撮像するための撮像方法がある、本方法は、組織領域を蛍光性造影剤で染色する工程、染料の吸収帯に対応する波長及び第1の偏極方向を有する光を組織領域に放射する工程、第1の偏極方向を有する組織領域から放射される蛍光及び第1の偏極方向に垂直な第2の偏極方向を有する組織領域から放射される光を検出する工程、並びに第1の偏極方向を有する検出された光及び第2の偏極方向を有する検出された光に基づいて蛍光偏極画像を形成する工程を有してなる。
【0040】
本発明のまた別の実施形態に、組織領域を撮像するための撮像方法がある。本方法は、染料の吸収帯に対応する波長及び第1の偏極方向を有する光を組織領域に放射する工程、第1の偏極方向を有する組織領域から放射される内因性蛍光及び第1の偏極方向に垂直な第2の偏極方向を有する組織領域から放射される光を検出する工程、第1の偏極方向を有する検出された光及び第2の偏極方向を有する検出された光に基づいて背景蛍光偏極画像を形成する工程、組織領域を蛍光性造影剤で染色する工程、第1の偏極方向を有する染色された組織領域から放射される蛍光及び第1の偏極方向に垂直な第2の偏極方向を有する染色された組織領域から放射される光を検出する工程、第1の偏極方向を有する検出された光及び第2の偏極方向を有する検出された光に基づいて総蛍光偏極画像を形成する工程、並びに背景蛍光偏極画像(すなわち内因性蛍光偏極画像)及び総蛍光偏極画像に基づいて純蛍光偏極画像(すなわち外因性蛍光偏極画像)を形成する工程を有してなる。
【0041】
本発明のさらなる特徴は、図面とともになされる以下の詳細な説明からさらに明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明をいかに作成及び使用するかを本出願が属する技術分野の当業者がより容易に理解するであろうように、図面を参照することができる。
【0043】
以下の本発明の詳細な説明においては、本明細書の一部をなし、本発明の例示的実施形態が略図で示される、添付図面を参照する。これらの略図では本発明にしたがって構成されるシステムまたは装置の正確な構成を描くことは必ずしも目的とされていない。しかし、本明細書の記述とともに見れば、当業者は図面が当業者による本発明の実施を可能にするに十分に詳細であることを容易に理解するであろう。
【0044】
図1に示されるように、コンピュータ1が非メラノーマ性皮膚癌のような生体組織10の画像を得るために撮像装置100を制御する。詳しくは、コンピュータ1は光を放射するために、キセノンアークランプのような、ランプ2を制御する。光はレンズ3を通過してフィルタホイール4に向かう。フィルタホイール4は自動波長選択及びスキャンを可能にするために多くの干渉フィルタを備えることができる。好ましい実施形態においては、干渉フィルタが390nmから750nmのスペクトル範囲をカバーすることになろう。フィルタホイールでつくられた単色光は集束レンズ5によって、液体光ガイドのような、光ガイド6に結合される。
【0045】
光ガイド6の終端において単色光は、ホログラフ拡散板のような、拡散板7,コリメーティング色消しレンズのような、コリメータ8及び、直線偏光フィルタのような、偏光子9を通過する。単色光に拡散板7,コリメータ8及び偏光子9を通過させることにより、組織10の均質偏光照明を達成できる。組織10から放射される偏光は、レンズ11,フィルタ12,偏光子13及びレンズ14を通過し、集束されて、電荷結合素子(CCD)カメラ15に入射する。フィルタ12及び/または偏光子13は組織画像の蛍光発光及び/または偏極の考察を可能にするように適切に選ぶことができる。
【0046】
上に論じたように、外因性蛍光偏極スペクトロスコピーは癌検出に適するが、健康な組織及び癌組織からの光信号の差は微妙であることが多く、したがって、画像の病変領域のコントラストを改善することが必要である。
【0047】
本発明の一実施形態において、組織10は、撮像装置100で組織10の画像を得る前に、トルイジンブルーO(TBO)及びテトラサイクリン(TCN)のような蛍光染料で染色される。蛍光偏極撮像法(FPLI)は癌検出に十分適する。この手法の利点には、実時間撮像、フレキシビリティ及び比較的低い費用がある。しかし、多くの事例において、正常組織及び病変組織からの光信号の差は微妙であり、したがって、信頼度の高い異常性評価のためには、画像内の病変領域のコントラストを改善することが重要である。
【0048】
組織10を蛍光染料で染色する前に、組織10から放射される光を用いて背景または内因性蛍光画像がとられる。放射光は、入射光の偏極面に平行な面の偏光(I||)及び垂直な面の偏光(I)になり、集束されてCCD15に入る。コンピュータ1はCCD15から平行偏光信号I||及び垂直偏光信号Iを受け取り、背景蛍光異方性画像I=(I||−I)/(I||+2I)及び背景蛍光画像I=I||+Iを計算する。
【0049】
背景蛍光画像及び背景蛍光異方性画像がとられた後、腫瘍対応蛍光染料が組織10上/内に塗布または注射される。過剰な染料が洗い流され、蛍光発色団から放射される入射光の偏極面に平行な面の偏光(I||)及び垂直な面の偏光(I)を用いて蛍光画像がとられる。再び、CCD15が蛍光発色団から放射される入射光の偏極面に平行な面の偏光(I||)及び垂直な面の偏光(I)を受け取り、データをコンピュータ1に送る。コンピュータ1は蛍光異方性画像I=(I||−I)/(I||+2I)及び蛍光画像I=I||+Iを生成する。
【0050】
コンピュータ1は、蛍光画像から背景蛍光画像を差し引く(I−I)ことにより純蛍光画像(I)を計算し、式(II−I)/Iによって純蛍光異方性画像(I)を計算する。純蛍光異方性画像は式3I/(2+I)によって純蛍光偏極画像(I)に変換することができる。得られた画像は撮像装置100のダイナミックレンジを用いるために規格化することもできる。
【0051】
上述した手順は、組織10がかなりの量の背景蛍光を放射する場合に組織10のコントラストを改善するために用いられる。しかし、背景蛍光が無視可能であれば、組織上/内への腫瘍対応蛍光染料の塗布または注射の前に背景蛍光画像及び背景蛍光異方性画像をとることはないから、手順を簡略化することができる。
【0052】
この場合、前述したようして蛍光画像がとられる。入射光の偏極面に平行な面の偏光(I||)及び垂直な面の偏光(I)が蛍光発色団から放射され、CCD15によって受け取られる。CCD15によってコンピュータ1に送られるデータを用いて、差像Iδ=I||−I,偏極画像I偏極=(I||−I)/(I||+I)または異方性画像I=(I||−I)/(I||+2I)がコンピュータ1によってつくられる。得られた画像は撮像装置のダイナミックレンジを最適に用いるために規格化することができる。
【0053】
撮像装置はPLIまたはFPLIを実施するためにコンピュータプログラムを用いる。コンピュータプログラムは、テープ媒体、ディスク記録媒体、フラッシュメモリ等のような、但しこれらには限定されない、記録媒体上に格納することができる。
【実施例】
【0054】
PLI法によってとられた組織画像を示す、図5〜9を参照することによって本発明をさらに説明する。容易に明らかであろうように、MB及びTBのような造影剤を適用すれば画像内の腫瘍のコントラストが大きく改善される。
【0055】
図2〜6を参照することによってFPLI法によってとられた組織画像をさらに説明する。容易に明らかであろうように、TBO及びTCNのような蛍光造影剤を適用すれば画像内の腫瘍のコントラストが大きく改善される。
【0056】
TCNは強蛍光性抗生物質である。TBOの蛍光も容易に検出できる。TBO及びTCNの吸収及び蛍光発光スペクトルがそれぞれ図2及び3に示される。組織を染色するために市販のTBO(TB1%AQ,LC26265-1,米国フィッシャー・サイエンティフィック社(Fischer Scientific Company))及びテトラサイクリンを用いた。
【0057】
励起光を遮断するために撮像装置100のCCD15の前面に補助フィルタを組み込んだ。TBOに対する励起波長を577nmとして、650nmより長波長で蛍光画像をとった。テトラサイクリンには390nmの励起波長を用いた。440nmより長波長で蛍光画像(最大2.8cm×2.5cm)をとった。横方向解像度はほぼ15μmであった。放射された入射光の偏極に平行な方向の偏光(I||)及び垂直な方向の偏光(I)を用いて2つの画像をとった。次いでこれらを処理して差像,FPLT(Iδ=I||−I)を得て、組織の蛍光減偏光の尺度として用いた。
【0058】
処理した画像を組織検査切片水平断面と比較した。切片は、手術中にモース氏組織検査技師が以下のようにして作成した。非メラノーマ性皮膚癌処置を受けている患者から取り出した組織を最適切断温度コンパウンド内で凍結させ、標準的なモース氏水平断面形成法(モース(Mohs),1941年;ミカイル(Mikhail),1991年)で処理した。5μm厚切片をスライドガラスに載せて、ヘマトキシリン−エオシン(H&E)で染色した。次いでこれらの凍結切片を境界において残留腫瘍について分析した。次いで処置中に作成された最終の凍結切片を残された廃棄切除片の上述した手法を用いてとった近表皮画像と比較した。FPLI画像の組織検査との比較例を図4〜6に示す。
【0059】
図4に中程度に分化したSCC腫瘍の画像が示される。図4aに620nmでとられた腫瘍の通常の反射率画像が示される。この画像では腫瘍の境界を画定することがほとんどできない。TBOを用いて染色した組織の蛍光画像(図4b)では至る所で染料濃度が非常に高く、したがって試料全体が非常に明るく、腫瘍を見ることができない。図4cは同じ腫瘍試料のFPLIを示す。この画像から、放射蛍光は癌組織より健康な組織ではるかに強く減偏光されることが明らかである。組織検査との比較(図4d)はFPLIにおける明領域とモース氏手術医が赤色マーカーを用いて輪郭を描いた腫瘍の良好な相関を示す。
【0060】
図5a及び図5bはそれぞれ厚い癌(SCC)皮膚切除片のTCN FPLI及び組織検査片を比較して示す。図5aは組織をTCNで染色してFPLIで得た画像を示す。図5bはモース氏手術中に作成した組織検査H&E凍結切片(切片厚〜6μm)である。モース氏手術医が決定した腫瘍境界が赤線で示される。前図と同様に、画像において腫瘍のコントラストは強く、FPLIに輪郭が示される腫瘍領域は凍結切片で手術医がマークした腫瘍領域と十分に相関している。
【0061】
TBOで染色した結節性BCCの、FPLIの別の例が図6aに示される。図6bはモース氏手術中に作成された組織検査H&E凍結切片(切片厚〜5μm)を示す。凍結切片(図6b)と比較すると、FPLIで得た画像が腫瘍の境界を確実に画定することが容易に分かる。
【0062】
これまでに全部で20の(結節性、小結節性及び浸潤性を含む)BCC試料及び(中程度に分化しているSCC及び十分に分化しているSCCを含む)SCC試料を撮像した。20試料の内、15試料はTBOを用いて染色し、5試料はTCNを用いて染色した。全ての事例において、画像内で腫瘍を容易に識別することができ、蛍光偏極画像(FPLI)は組織検査との良好な相関を示した。FPLIは組織検査画像とは独立に分析した。全試料の内因性蛍光の強度は染料(すなわちTBO及びTCN)の外因性傾向強度よりはるかに低く、雑音レベルと同等であった。したがって、自己蛍光は全く問題にならなかった。
【0063】
図4〜6に示される画像は外因性蛍光偏極撮像法が癌組織領域の弁別をどのように可能にするかを実証する。蛍光は生化学的組成の差により正常組織と病変組織では異なって減偏光されるから、有効な弁別を達成できた。
【0064】
結果は、限局性強皮症型BCCを含む、様々なタイプの非メラノーマ性癌の境界を外因性蛍光偏極撮像法で正確に確定できることを示す。手術中にこれらの画像を迅速にとれることにより、MMSにおいて最も時間がかかる工程である凍結切片の処理に時間をかけずに、腫瘍除去を進めることがおそらく可能になり得る。腫瘍層を除去することができ、手術台で撮像することができ、残留腫瘍を検出することができ、誘導された腫瘍除去を行うことができる。
【0065】
図7は本発明にしたがって構成された別の実施形態の撮像システム200を示し、撮像システム200では、光を組織試料110に向ける励起源としてのランプ102は単色光源、好ましくは1つまたはそれより多くの干渉フィルタと組み合されたキセノンランプである。組織110に向けられた入射光の経路に直線偏光フィルタレンズ103がある。組織110から放射された光は、偏光子113及びフィルタ112を通過してから、撮像装置、すなわちCCDカメラ/アナライザ115で集められる。
【0066】
CCD115を回転させることで入射光の偏極面に平行な面の偏光(I||)及び垂直な面の偏光(I)の撮像が可能になる。弾性散乱光を排除するためにフィルタ112がCCD115の前面に配置される。本発明のこの実施形態では約2.8cm×2.5cmの大視野及び迅速な画像撮影が得られる。CCDアレイの積分時間は10秒をこえない。システムの横方向解像度の測定値は約15μmであった。軸方向解像度(切片の光学厚さ)は与えられた波長における皮膚の光学特性に依存する。本実施例において、すなわち650nmから750nmの波長範囲におけるヒトの真皮については、約200μmである。
【0067】
米国医学会審査委員会(Institutional Review Board)に承認されたプロトコルの下でモース氏手術から得られた15の厚い、切除されたばかりののBCC及びSCC試料を用いて本発明の方法を試験した。検査した試料の横寸法及び厚さは様々でそれぞれ、約5〜30mm及び約5〜20mmであった。腫瘍の大きさは約0.35mmから15mmの範囲にあった。本実施例では、切除した皮膚を染色するためにTB及びMBを用いた。皮膚の自己蛍光のレベルを評価するため、染料を与える前に腫瘍試料を撮像した。
【0068】
撮像のため、組織試料をペトリ皿内で湿らせたガーゼの上に置き、カバースリップで覆った。650nmより長波長の内因性蛍光は無視できることがわかった。切除した皮膚を、市販のTBまたはMB,例えば、MBは米国アメリカン・リージェント・ラボラトリーズ社(American Regent Laboratories, Inc.)の米国薬局方1%注射液、TBは米国フィッシャー・サイエンティフィック社の1%AQ,LC26165-1の、0.05〜0.25mg/ml水溶液に最長で15分間浸漬した。
【0069】
染色後、試料組織をリンスして、再度撮像した。TB及びMBの蛍光はそれぞれ577nm及び620nmで励起した。0.15mW/cmをこえない入射パワー密度を用いた。650nmから750nmの波長範囲で画像をとった。実験は全て室温で行った。
【0070】
上で論じたように、蛍光偏極画像(FPI)はP=(I||−I)/(I||+I)として定義される。提案する方法の確度を評価するため、得られたFPIのそれぞれをモース氏手術の間に処理された最終の組織検査凍結切片と比較した。理想的には、この凍結切片は残りの組織片からとられたFPIの鏡像になるべきである。しかし切片の蛍光光学厚さは〜200μmであり、これは組織検査切片の40倍の厚さである。したがって、2つの切片の定量的比較は単純ではない。それでも、FPIと組織検査試料の定性的比較は、形態的特徴が極めて類似しており、容易に認め得るから、問題を生じない。
【0071】
確度の定量的評価を得るため、FPIの腫瘍で占められる表面積(Sfpi)及び組織検査スライドの腫瘍で占められる表面積(S)を比較した。撮像された腫瘍面積が組織検査試料の腫瘍面積に等しいかまたは大きくとも10%まで(1≦Sfpi/S<1.1)であれば、一致は許容される、すなわち画像誘導手術による完全な腫瘍除去に対応するであろうと見なした。
【0072】
2つの代表的な、染色前後の、切除された癌の画像が図8,9及び10に示される。図8には結節型BCCの反射強度画像及び蛍光強度画像が示される。TB(0.05mg/ml)による染色の前に577nmでとられた反射画像(図8a)は正常組織に比較した腫瘍のコントラストが信頼できる境界画定には不十分であることを実証する。高濃度のTBにより、健康な組織においてさえ蛍光が見られ、蛍光強度画像(図8b)において腫瘍の境界を画定することはできない。
【0073】
図9a及び9bでは同じ腫瘍の疑似着色FPIを対応する組織検査試料と比較している。腫瘍は隣接する健康な皮膚に比較して明るく、これは癌におけるより健康な組織において放射蛍光がかなり強く減偏光されることを意味する。癌にわたって平均した蛍光偏極値及び正常組織にわたって平均した蛍光偏極値はそれぞれ、(2.7±0.3)×10−2及び(1.0±0.7)×10−2である。組織検査試料との比較は、FPIにおける明領域と、モース氏手術医が赤色マーカーで輪郭を描いた、矢印118で示される腫瘍の良好な相関を示す。矢印120(図9a)で示される大きい方の腫瘍については、比Sfpi/Sが1.04であり、矢印122で示される小さい方の腫瘍小葉については、Sfpi/S=1.07である。
【0074】
図10a及び10bはMB(0.25mg/ml)を用いて染色したBCC切除片の疑似着色FPIの組織検査試料との比較を示す。図9a及び9bにおけると同様に、画像における腫瘍のコントラストは強く、矢印124で示される輪郭が描かれた癌領域は矢印126で示される凍結切片にモース氏手術医がマークした癌領域と良く相関している。この試料について、癌領域にわたって平均した蛍光偏極値及び正常組織にわたって平均した蛍光偏極値はそれぞれ、(7.1±0.3)×10−2及び(2.7±0.3)×10−2である。図10に示した試料については比Sfpi/S=1.06である。
【0075】
15試料の内、8試料をTBで染色し、7試料をMBで染色した。全事例において、腫瘍を容易に識別することができ、FPIは組織検査試料とのよい相関を示した。検査した全ての腫瘍について1.01≦Sfpi/S≦1.08であった。TB及びMBで染色した癌組織及び正常組織についての平均蛍光偏極値がそれぞれ図11a及び11bにまとめてある。それぞれの試料において、病変組織の蛍光偏極値及び健康な組織の蛍光偏極値は試料の癌領域及び正常領域にわたる平均を決定することによって決定した。
【0076】
改変形態
これまで本発明の好ましい実施形態及びそれらの改変形態を詳細に説明したが、本発明がこれらの実施形態及び改変形態に限定されず、添付される特許請求の範囲に定められる本発明の精神及び範囲を逸脱することなく当業者によってその他の改変及び変形が実施され得ることは当然である。
【0077】
例えば、撮像装置は図1に示される実施形態に限定されない。そのような装置には単一ユニットを含めることができ、あるいはそのような装置には内視鏡を含めることができる。
【0078】
差像Iδ=I||−Iは、蛍光偏極/蛍光異方性画像に加えて、またはこれらの代りに、蛍光偏極の尺度として用いることができる。
【0079】
さらに、本発明は組織を染色するためにTCN及びTBOを用いるが、組織を染色し、よって画像における腫瘍のコントラストを強めるためにその他の多くの蛍光造影剤を用いることができる。
【0080】
例えば、画像のコントラストを強めるために蛍光発色団及び光増感剤を用いることができる。本明細書で用いられる「発色団」は説明される方法及び装置によって画像コントラストを強めるために有用ないかなる光吸収化合物も意味する。発色団には、光を吸収する、光増感剤、薬物、染料、微粒子、極微粒子または染色剤がある。本明細書で用いられる「光増感剤」は光活性化に際して生物学的効果を生じる化合物または光活性化に際して生物学的効果を生じる化合物の生物学的前駆体を意味する。本発明の目的のために光増感剤が用いられる必要はない。しかし、多くの光増感剤は特に癌腫瘍内に局在させ得ることから開発された。光増感剤も光増感剤として機能するため(すなわち光によって活性化されるため)には光を吸収しなければならない。したがって、光増感剤は、本発明において画像コントラストを強めるために用いることができる、大多数の光を吸収する染料及び薬物の有用な構成要素である。
【0081】
ポルフィリン、合成ポルフィリン及び変性ポルフィリンは従来から光力学的療法(PDT)のための光増感剤として用いられてきた。ポルフィリンは、赤血球における酸素担体である、ヘモグロビンの主成分である、ヘム分子の主鎖である。酸素に富む環境において、ポルフィリンは光子からエネルギーを吸収し、このエネルギーを周囲の酸素分子に移すことができる。入射光の波長に対応する特定の波長においてポルフィリンは励起されて一重項励起状態()になる。この一重項励起ポルフィリン分子は蛍光の形でエネルギーを放出して基底状態(P)に戻ることができる。一重項状態の寿命が十分に長ければ、一重項状態は三重項励起状態()に変換されることが可能であり、三重項状態は別の三重項状態にエネルギーを移すことができる。細胞に豊富に存在する分子は酸素であり、酸素は自然にはOの形で発生する。この分子状酸素は三重項基底状態を有し、分子のエネルギーがその生成物のエネルギーより高ければ、三重項状態にある分子状酸素は非常に有毒な原子状酸素に変換される。
【0082】
上述したように、原子状酸素は、同じく光活性化プロセス中につくられる自由ラジカルとともに、極めて反応性が高く、タンパク質、脂質、核酸及びその他の細胞成分を害し得る。原子状酸素に対する細胞の反応は複雑であるが、一般に、原子状酸素は、細胞膜損傷及び血管閉塞媒介虚血をもたらすリン脂質の過酸化を生じさせ、これらは注目する細胞にネオクロシスまたはアポトーシスを生じさせる。この細胞死機構は、消散されなければ最終的に細胞死に至るであろうDNA二本鎖の切断を生じさせるためにγ線が用いられる、放射線処置によって誘起される細胞損傷とは異なる。
【0083】
技術上既知の光増感剤は、治療での使用に対し、(1)送達効能、(2)目標組織における適切な局在、(3)吸収波長、(4)適する励起波長、並びに(5)純度、薬物動力学、代謝及び減毒性にしたがって選択される。臨床使用のための光増感剤は最適には両親媒性であり、これは光増感剤が水溶性であるが疎水性であるという相反する特性を併せ持っていなければならないことを意味する。これは本発明に対する絶対要件ではないが、好ましい特性である。
【0084】
静脈を通して送られる場合、血流を介して全身に回るためには光増感剤が水溶性であるべきであるが、細胞膜を通り抜けるためには十分に疎水性でもあるべきである。疎水性ポルフィリン環に極性残基(アミノ酸、糖及びヌクレオシド)を付けるような変性によって極性及び分配係数を所望のレベルに変えることができる。同様に、本発明における撮像に先立ち、組織に局所的に(直接に)与える場合、コントラスト強化剤として用いられる光増感剤は癌腫瘍または周囲の正常組織に、優先的に分配されるか、付着するか、及び/または結合することができる。本発明において、光増感剤あるいはその他の光を吸収する染料または薬物による吸収は、腫瘍の検出のために画像コントラストを強めるために用いられる。
【0085】
本発明の光増感剤は血流内に存在するリポタンパク質に結合することができ、腫瘍のような、急激に分裂している細胞に主に運ばれる。急激に分裂している細胞は大量のリポタンパク質を必要とし、この結果、光増感剤はそのような細胞に選択的に、高レベルで、高速に送られる。
【0086】
本発明の蛍光発色団は200nmと2000nmの間のスペクトル領域、すなわち電磁スペクトルの光領域において1つまたはそれより多くの波長帯で光を吸収することが好ましい。発色団がこのスペクトルにおける長波長で、すなわち短波長に比較して組織内深くまで透通しないような波長で光を吸収する必要はない。本発明の発色団及び光増感剤は、以下を含むがこれらには限定されない、技術上既知のいずれかとすることができる。
【0087】
組織染料及び染色剤
通常の顕微鏡による撮像の前に組織試料を染色するために多数の染色剤及び染料が病理学で用いられる。いくつかの染色剤は無毒であり、生体内で癌腫瘍に優先的に結合する。これらの発色団は生体染色剤と呼ばれ、本発明に関して特に注目され、有用である。特に、非局在化陽イオン電荷をもつ染料または染色剤は腫瘍において選択的な結合及び保持が可能である。これらには、ローダミン123のようなローダミン、フェノチアジニウム染料、メチレンブルー及びトルイジンブルーがある。生体内でコラーゲンに結合する赤−ピンク染色剤である、ローズベンガル及びエオシンのようなその他の生体染色剤を用いることができる。
【0088】
ポルフィリン及びヒドロポルフィリン
Photofrin(登録商標)RTM(ポルフィマーナトリウム)、ヘマトポルフィリンIX、ヘマトポルフィリンエステル、ジヘマトポルフィリンエステル、合成ジポルフィリン、O-置換テトラフェニルポルフィリン(ピケットフェンスポルフィリン)、3,1-メソテトラキス(o-プロピナミドフェニル)ポルフィリン、ヒドロポルフィリン、ベンゾポルフィリン誘導体、ベンゾポルフィリン一酸誘導体(BPD-MA)、一酸環“a”誘導体、ベンゾポルフィリンのテトラシアノエチレン付加体、ベンゾポルフィリンのジメチルアセチレンジカルボキシレート付加体、内因性代謝前駆体、δ-アミノレブリン酸、ベンゾナフトポルフィラジン、自然生成ポルフィリン、ALA-誘導プロトポルフィリンIX、合成ジクロリン、テトラ(ヒドロキシフェニル)ポルフィリンシリーズのバクテリオクロリン、プルプリン、オクタエチルプルプリンのスズ及び亜鉛誘導体、エチオプルプリン、スズ-エチオプルプリン、ポルフィセン、クロリン、クロリンe、クロリンeのモノ-l-アスパチル誘導体、クロリンeのジ-l-アスパチル誘導体、スズ(IV)クロリンe、メタ-テトラヒドロキシフェニルクロリン、クロリンeモノエチレンジアミンモノアミド、亜鉛メチルピロベルジン(ZNMPV)、コプロIIベルジントリメチルエステル(CVTME)及びジューテロベルジンメチルエステル(DVME)のような、ただしこれらには限定されない、ベルジン、フェオホルバイド誘導体、及びピロフェオホルバイド化合物、ランタナイドまたは金属置換または無置換テクサフィリン、ルテチウム(III)テクサフィリン、ガドリニウム(III)テクサフィリン。
【0089】
ポルフィリン、ヒドロポルフィリン、ベンゾポルフィリン及び誘導体は全て、赤血球に見られる、ヘモグロビンの主成分であるヘムの生合成前駆体である分子である、ヘマトポルフィリンと構造上の関係がある。クロリン及びバクテリオクロリンもポルフィリン誘導体であるが、これらは、650nmより長波長における吸収を可能にする、ポルフィリン環主鎖の水素化エキソピロール二重結合という独特の特性を有する。クロリンはクロロフィルから誘導され、メタ-テトラヒドロキシフェニルクロリン(mTHPC)のような変性クロリンは溶解度を高める官能基を有する。バクテリオクロリンは光合成バクテリアから得られ、吸収波長がさらに〜740nmまで赤方シフトしている。
【0090】
プルプリン、ポルフィセン及びベルジンもポルフィリン誘導体である。プルプリンは基本ポルフィリンマクロシクルを含むが、吸収波長が〜715nmに赤方シフトしている。ポルフィセンはヘマトポルフィリン(〜635nm)と同様の吸収波長を有し、癌腫瘍に対する結合活性をもつ安定な合成化化合物である。ベルジンはポルフィリン環のピロールの内の1つに融合されたシクロヘキサノン環を含む。ホルバイド及びフェオホルバイドはクロロフィルから誘導され、PDT薬として用いられてきた。これらも本発明において発色団として用いることができる。テクサフィリンは新しい金属配位拡張ポルフィリンである。テクサフィリンの独特の特徴はピロール環内の、4つではなく、5つの配位窒素の存在である。これにより、三価のランタナイドのような、より大きな金属陽イオンの配位が可能になる。ガドリニウム及びルテチウムが配位金属として用いられる。
【0091】
シアニン及びその他の光活性染料
メロシアニン、金属置換基の有無にかかわらないフタロシアニン、可変置換基の有無にかかわらないクロロアルミニウムフタロシアニン、スルホン化アルミニウムPC、環置換陽イオンPC、スルホン化AlPc、二スルホン化及び三スルホン化誘導体、スルホン化アルミニウムナフタロシアニン、金属置換基の有無にかかわらない及び可変置換基の有無に拘わらないナフタロシアニン、テトラシアノエチレン付加体、ナイルブルー、クリスタルバイオレット、アズールβクロライド、ローズベンガル、ベンゾフェノチアジニウム化合物、メチレンブルーを含むフェノチアジン誘導体。
【0092】
シアニンはポルフィリンと構造上類似している濃青色または紫色の化合物である。しかし、これらの染料はポルフィリン分子より熱、光、強酸及び強塩基に対してさらに一層安定である。シアニン、フタロシアニン及びナフタロシアニンは最長吸収波長が約680nmのヘマトポルフィリン誘導体より長波長の光を吸収する化学的に純粋な化合物である。フタロシアニンは、PDTのための新世代物質に属し、様々な金属、主にアルミニウム及び亜鉛によってキレート化されるが、これらの反磁性金属は光毒性を強める。スルホン化された基によるフタロシアニンの環置換は溶解度を高め、細胞の取込みに影響するであろう。スルホン化度が低い化合物ほど、より親油性であり、最良の細胞膜透通特性及び最高の生物学的活性を示す。反応速度はHPDの反応速度よりかなり大きく、1〜3時間後に高い腫瘍対組織比(8:1)に達する。シアニンは急速に排出され、24時間後に薬物は腫瘍にほとんど全く残らない。
【0093】
メチレンブルー及びローズベンガルのようなその他の光活性染料もPDTに用いられる。メチレンブルーは、特にミトコンドリア膜電位を目標にできる能力によって例証される、陽イオン性フェノチアジン染料である。陽イオン性フェノチアジン染料に反応する特定の殺腫瘍性効果は腫瘍細胞のミトコンドリア膜にかかる電位によると考えられる。正常細胞と比較すると、腫瘍細胞の電位はかなり急峻であり、非局在化陽電荷(すなわち陽イオン性光増感剤)をもつ化合物の高濃度蓄積を生じさせる。ローズベンガル及びフルオレセインはPDTに、また本発明における発色団として、用いることができるキサンテン染料である。二酢酸ローズベンガルは原子状酸素の、高効率で細胞浸透性の発生基である。二酢酸ローズベンガルは酢酸基の導入によって化学的に変成されたヨウ素化キサンテン誘導体である。そのような変成により、蛍光及び光増感特性はいずれも不活性化されるが、細胞膜を透通できる能力は高められる。細胞内に入ると、エステラーゼが酢酸基を取り除き、ローズベンガルを本来の構造に復元させる。この細胞内局在化により、二酢酸ローズベンガルは極めて有効な光増感剤となることができる。
【0094】
その他の発色団
ディールス・アルダー付加体、ジメチルアセチレンジカルボキシレート付加体、アントラセンジオン、アントラピラゾール、アミノアントラキノン、フェノキサジン染料、陽イオン性のピリリウムセレン及びピリリウムテルルの誘導体のようなピリリウムカルコゲン染料、陽イオン性イミン塩、テトラサイクリン及び、エバンスブルー、コンゴレッド及びトリパンブルーのような陰イオン性染料。
【0095】
免疫接合体
発色団または光増感剤は必要に応じて目標成分に連結させることができる。好ましい実施形態において、目標成分は抗体である。抗体成分は腫瘍細胞の表面に存在するエピトープに特異的に結合することができる。「特異的結合」は、抗体が非癌細胞に選択的に結合しないか、または非癌細胞が抗体によって僅かにしか認識されないことを意味する。抗体には、完全自然抗体、二価抗体、キメラ抗体、Fab、Fab'、単鎖V領域フラグメント(scFv)及び融合ポリペプチドを含めることができる。抗体はモノクローナルであることが好ましい。本実施形態において、担体分子、例えば抗体は、腫瘍細胞または癌腫瘍のその他の成分への発色団の結合に対するさらなる特異性を与えた。
【0096】
さらに、組織を染色するために用いられる造影剤は、局所的に与えられるだけでなく、静脈または皮下に与えることができ、あるいは錠剤として与えることができる。
【0097】
さらに、上の説明は非メラノーマ性皮膚癌の境界画定に向けられているが、本発明はいかなる組織の撮像にも用いることができる。例えば、本発明は他の器官の癌の検出及び境界画定に用いることができ、あるいは胃腸管または結合組織の画像をとるために用いることができる。本発明は、その他の皮膚状態の境界画定に加えて、口、咽頭及び喉頭、気管−気管支管系、食道、膀胱、結腸、鞘、頸等の撮像にも用いることができる。
【0098】
本発明の例示的で好ましい態様及び実施形態を特徴の全てを含めて説明したが、開示したシステム、装置及び方法がこれらの特徴のそれぞれを組み入れずとも実施に成功できることは当然である。さらに、当業者であれば容易に理解するであろうように、本発明のシステム、装置及び方法の精神及び範囲を逸脱することなく改変及び変形を利用できることは当然である。そのような改変及び変形は添付される特許請求項及びそれらの等価物の範囲内にあると見なされる。本明細書に引用した文献が本明細書に明白に含まれることも当然である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明にしたがって構成された撮像装置の例示的実施形態の略図である
【図2】(577nmで励起された)TBOの励起(吸収)及び発光スペクトルを示す
【図3】(390nmで励起された)TCNの励起(吸収)及び発光スペクトルを示す
【図4】図1のシステムで得られた画像を含む、中程度に分化したSCC(視野:25mm×6mm)を示す
【図5】図1のシステムで得られた画像を含む、十分に分化したSCC(視野:25mm×10mm)を示す
【図6】図1のシステムで得られた画像を含む、結節性BSS(視野:27mm×20mm)を示す
【図7】本発明にしたがって構成された撮像装置の別の例示的実施形態の略図である
【図8】図8aおよび8bは、それぞれ、図7のシステムで得られた画像を含む、TBの0.05mg/ml水溶液で染色されたBCC組織試料の反射強度画像および蛍光強度画像を示す
【図9】図9aおよび9bは、それぞれ、図7のシステムで得られた画像を含む、TBの0.05mg/ml水溶液で染色されたBCCの蛍光偏極画像と蛍光偏極等級および組織検査凍結切片画像を示す。図9bにおいては、腫瘍の輪郭がモース氏手術医によって描かれている
【図10】図10aおよび10bは、それぞれ、図7のシステムで得られた画像を含む、MBの0.25mg/ml水溶液で染色されたBCCの蛍光偏極画像と蛍光偏極等級および組織検査凍結切片画像を示す。図10bにおいては、腫瘍の輪郭がモース氏手術医によって描かれている
【図11】図11aおよび11bは、それぞれ、本明細書で論じた15の試料の内のTBで染色した8つおよび7つの試料についての癌組織及び正常組織の外因性傾向偏極を表す棒グラフを示す
【符号の説明】
【0100】
1 コンピュータ
2 ランプ
3,11,14 レンズ
4 フィルタホイール
5 集束レンズ
6 光ガイド
7 拡散板
8 コリメータ
9,13 偏光子
10 生体組織
12 フィルタ
15 CCDカメラ
100 撮像装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織領域を撮像するための装置において、
波長及び第1の偏極方向を有する光を前記組織領域に放射するために用いることができる偏光発光器、
前記第1の偏極方向を有する前記組織領域から放射される光及び前記第1の偏極方向に垂直な第2の偏極方向を有する前記組織領域から放射される光を検出するために用いることができる光検出器、及び
前記第1の偏極方向を有する前記検出された光及び前記第2の偏極方向を有する前記検出された光に基づいて蛍光画像を形成するために用いることができるアナライザ、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記波長が200nmから2000nmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記波長が390nmから750nmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記組織領域に造影剤が与えられることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記組織領域が蛍光造影剤で染色されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
組織領域を撮像する方法において、
前記組織領域を蛍光造影剤で染色する工程、
波長及び第1の偏極方向を有する光を前記組織領域に放射する工程、
前記第1の偏極方向を有する前記組織領域から放射される蛍光及び前記第1の偏極方向に垂直な第2の偏極方向を有する前記組織領域から放射される光を検出する工程、及び
前記第1の偏極方向を有する前記検出された光及び前記第2の偏極方向を有する前記検出された光に基づいて蛍光画像を形成する工程、
を有してなることを特徴とする方法。
【請求項7】
前記波長が200nmから2000nmの範囲にあることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記波長が390nmから750nmの範囲にあることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
様々な深さにおける複数の画像を形成するために前記波長を変える工程をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記蛍光画像が蛍光偏極画像であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記蛍光画像が蛍光異方性画像であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項12】
組織領域を撮像する方法において、
波長及び第1の偏極方向を有する光を前記組織領域に放射する工程、
前記第1の偏極方向を有する前記組織領域から放射される蛍光及び前記第1の偏極方向に垂直な第2の偏極方向を有する前記組織領域から放射される光を検出する工程、
前記第1の偏極方向を有する前記検出された光及び前記第2の偏極方向を有する前記検出された光に基づいて背景蛍光偏極画像を形成する工程、
前記組織領域を蛍光造影剤で染色する工程、
前記第1の偏極方向を有する前記染色された組織領域から放射される蛍光及び前記第1の偏極方向に垂直な第2の偏極方向を有する前記染色された組織領域から放射される光を検出する工程、
前記第1の偏極方向を有する前記検出された光及び前記第2の偏極方向を有する前記検出された光に基づいて総蛍光偏極画像を形成する工程、及び
前記背景蛍光偏極画像(内因性蛍光画像)及び前記総蛍光偏極画像に基づいて異方性の純蛍光偏極画像を形成する工程、
を有してなることを特徴とする方法。
【請求項13】
組織領域を撮像する方法において、
波長及び第1の偏極方向を有する光を前記組織領域に放射する工程、
前記第1の偏極方向を有する前記組織領域から放射される蛍光及び前記第1の偏極方向に垂直な第2の偏極方向を有する前記組織領域から放射される光を検出する工程、
前記第1の偏極方向を有する前記検出された光及び前記第2の偏極方向を有する前記検出された光に基づいて背景蛍光異方性画像を形成する工程、
前記組織領域を蛍光造影剤で染色する工程、
前記第1の偏極方向を有する前記染色された組織領域から放射される蛍光及び前記第1の偏極方向に垂直な第2の偏極方向を有する前記染色された組織領域から放射される光を検出する工程、
前記第1の偏極方向を有する前記検出された光及び前記第2の偏極方向を有する前記検出された光に基づいて総蛍光異方性画像を形成する工程、及び
前記背景蛍光異方性画像(内因性蛍光画像)及び前記総蛍光異方性画像に基づいて異方性の純蛍光異方性画像を形成する工程、
を有してなることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−511243(P2007−511243A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527087(P2006−527087)
【出願日】平成16年9月20日(2004.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/030623
【国際公開番号】WO2005/027730
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(300052453)ザ・ジェネラル・ホスピタル・コーポレイション (24)
【Fターム(参考)】