説明

蛍光内視鏡装置

【課題】分光画像の種類及び露光時間が少なくても、多重蛍光画像から濃度の誤差を最小限に抑えて各蛍光を分離でき、各蛍光が分離された画像を、より少ないノイズで表示可能な蛍光内視鏡装置を提供する。
【解決手段】蛍光スペクトル記録部、蛍光画像取得部、蛍光濃度演算部を有し、演算部は、記録部に記録された蛍光色素1〜mの基準濃度での波長λ1〜λnでの係数をa1(λ1)〜am(λn)、取得部が取得した蛍光画像の波長λ1〜λnでの強度をIall(λ1)〜Iall(λn)、蛍光色素1〜mの濃度をD1〜Dmとしたとき、次の式を用いて、濃度D1〜Dmを、画素ごとに全画素について計算し、濃度D1〜Dmの計算値のいずれかが0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、該式において、当該濃度に計算値よりも大きい所定値を代入して、その他の濃度を再計算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織に励起光を照射し前記生体組織から発生する蛍光により生体組織の病変部を観察する蛍光内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡を用いた蛍光観察において、生体を複数種類の蛍光色素で染色した場合や、蛍光色素からの蛍光の他に生体の自家蛍光や便等の内容物が光るような場合、生体画像は、複数種類の光が多重化された状態となる。しかし、光が多重化された状態の生体画像をそのまま観察したのでは、蛍光色素が集積する癌等の病変部の位置がわかり難くなる。このため、蛍光が多重化された状態の生体画像から個々の蛍光を分離し、蛍光ごとに識別できる色を付加した画像を再構築することが必要となる。
【0003】
従来、多重化された蛍光画像から個々の蛍光を分離する手法としては、例えば、測定対象中に存在する、各蛍光色素の濃度を算出することを目的としたアンミキシング(Unmixing)と呼ばれる方法がある。
【0004】
Unmixingによる蛍光の分離手順を、図8を用いて概念的に説明する。なお、ここでは、測定対象に既知の2種類の蛍光色素(蛍光物質)1,2が存在することが判明しているものとする。
まず、あらかじめ測定対象中に存在する個々の蛍光色素1,2の蛍光スペクトルを所定の基準濃度で測定する。ここで、図8(a)は蛍光色素1の基準濃度での蛍光スペクトル、図8(b)は蛍光色素2の基準濃度での蛍光スペクトルの一例を示している。
次いで、蛍光色素1,2が存在する測定対象の蛍光スペクトルを測定する。図8(c)は測定された測定対象の蛍光スペクトルの一例を示している。
次いで、図8(a)、図8(b)に示す蛍光色素1,2の基準濃度での蛍光スペクトルの測定データを用いて、図8(c)に示されている測定対象の蛍光スペクトルの測定データが得られるための蛍光色素1,2の濃度を演算する。図8(d)に図8(c)に示されている測定対象の蛍光スペクトルの測定データを、夫々所定の濃度の蛍光色素1,2の蛍光スペクトルに分離した例を模式的に示す。
【0005】
次に、Unmixingにおける各蛍光色素の濃度の演算方法について説明する。
測定対象の波長λnでの信号強度Iall(λn)は、各蛍光色素の波長λnでの信号強度の合計であり、次の式(2)のように表すことができる。
all(λn)=I1(λn)+I2(λn)・・・+Im(λn) …(2)
但し、I1は蛍光色素1から得られる波長λnでの信号強度、I2は蛍光色素2から得られる波長λnでの信号強度、Imは蛍光色素mから得られる波長λnでの信号強度である。
【0006】
ところで、蛍光色素から得られる信号強度は蛍光色素の濃度に比例する。従って、測定対象中にm種類の蛍光色素が存在する場合、波長λnでの各蛍光色素から得られる信号強度は、次の式(3a)〜(3c)のように表すことができる。
I1(λn)=a1(λn)*D1 …(3a)
但し、D1は蛍光色素1の濃度、a1(λn)は蛍光色素1の基準濃度での波長λnでの係数である。
I2(λn)=a2(λn)*D2 …(3b)
但し、D2は蛍光色素2の濃度、a2(λn)は蛍光色素2の基準濃度での波長λnでの係数である。
Im(λn)=am(λn)*Dm …(3c)
但し、Dmは蛍光色素mの濃度、am(λn)は蛍光色素mの基準濃度での波長λnでの係数である。
【0007】
これらの式(3a)〜(3c)より、測定対象中にm種類の蛍光色素が存在すると想定される場合におけるn種類の波長λ1〜波長λnでの測定対象の信号強度は、例えば、次の行列式(4)で表すことができる。

【0008】
ここで、行列式(4)の左辺の

は測定対象の分光スペクトルを示す。
【0009】
また、行列式(4)の右辺における

は各蛍光色素の基準濃度での蛍光スペクトルを示している。
【0010】
そこで、次の行列式(5)を解くことで、各蛍光色素の濃度D1,D2,…,Dmが求まる。

【0011】
なお、上記行列式において、分光画像の種類と蛍光色素の種類とが同数(即ち、n=m)の場合は、式の数と蛍光色素の濃度の種類とが同数となるので、一意的に行列式を解くことができる。また、分光画像の種類が蛍光色素の種類よりも多い(即ち、n>m)場合は、式の数が蛍光色素の濃度の種類よりも多くなるが、この場合は最小2乗法等を用いることで行列式を解くことができる。これに対し、分光画像の種類が蛍光色素の種類よりも少ない(即ち、n<m)場合は、式の数が蛍光色素の濃度の種類よりも少なくなるため、行列式を解くことができない。
従って、Unmixingの手法は、分光画像の種類を蛍光色素の種類以上(即ち、n≧m)にすることが前提となる。
【0012】
このように、Unmixingの手法によれば、予め蛍光色素の基準濃度での蛍光スペクトルを取得しておいた状態で、複数枚の分光画像を取得し、各画素について行列式(5)の演算を行うことで、各画素での、それぞれの蛍光色素の濃度を算出することができる。図9に所定の画素において取得されるn種類の分光画像と行列式における分光スペクトルとの関係を概念的に示す。
図9中、Iall(λ1)は分光画像1の強度、Iall(λn)は分光画像nの強度である。
【0013】
従来、このようなUnmixingの手法は、例えば、次の特許文献1〜3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】WO2005/036143号公報
【特許文献2】特開2006−242899号公報
【特許文献3】特開2005−181276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1〜3の記載におけるUnmixingの手法は、例えば顕微鏡等、試料を固定した状態にして蛍光画像を得る装置に用いられている。
【0016】
ところで、Unmixingを用いた蛍光の分離には、次のような課題がある。
蛍光観察においては、測定対象から発せられる蛍光が微弱であるため、計測される蛍光信号に対する、撮像装置の暗電流を主成分とするノイズの比率が大きくなり、S/Nが悪くなる。
【0017】
即ち、計測の際には、蛍光信号にノイズが混じるため、行列式(5)は次の行列式(6)のようになっている。

ここで、Iall’(λ)はノイズを含まない蛍光信号の値である。
しかるに、蛍光観察においては、上述のように、蛍光信号Iall’(λ)にノイズ±Noiseが加算(減算)される割合が大きくなるため、行列式(6)を演算することにより求められる蛍光色素の濃度D1,D2,…,Dnの値が、実際の濃度から大きくずれたものとなってしまう。
【0018】
Unmixingを用いる場合において、蛍光色素の濃度D1,D2,…Dnの値を極力正確に求める方法としては、次の2つの方法が考えられる。
第一の方法は、露光時間を長くして各分光波長での蛍光信号を極力精度よく取得する方法である。
撮像素子においてノイズの主成分となる暗電流は、露光時間にかかわり無く一定と考えられるのに対し、蛍光信号の強度は露光時間に比例する。このため、例えば、露光時間を長くして各分光波長での蛍光信号に対するノイズの比率を小さくして、S/Nをよくする。
【0019】
第二の方法は、分光画像の種類を増やす方法である。
分光画像の種類を増やすと、蛍光色素の濃度の計算精度を上げることができる。
例えば、2種類の蛍光色素に対して、次の行列式(7)に示すように、分光画像の数を2から5に増やすと、最小二乗法を用いた計算結果の精度が上がる。

【0020】
これら2つの方法は、特許文献1〜3に記載のような、顕微鏡等の試料を固定した状態にして画像を取得する装置においては有効である。
【0021】
しかし、内視鏡装置は、生体に対し内視鏡先端部を移動させながら動画で分光画像を取得する必要があり、取得可能な分光画像の数や、露光時間が限られている。
このため、内視鏡装置を用いた蛍光観察においては、上述のような顕微鏡等の試料を固定した状態にして画像を取得する装置において有効な2つの方法を用いることができず、その結果、蛍光色素の濃度の計算値が、実際の値から大きくずれ易い。
【0022】
ここで、複数の蛍光色素の濃度の計算値うち、所定の蛍光色素の濃度の計算値が0よりも小さい値となる場合には、その他の蛍光色素の濃度の計算値が、実際の濃度よりも大きくなり易い。蛍光色素の濃度の計算値が実際の濃度よりも大きくずれた場合、計算された濃度に基づいて当該蛍光色素の画像を再構築して表示装置に表示したときに、ノイズが生じやすく、画像が観察し難いものとなってしまい易い。
【0023】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、分光画像の種類および露光時間が少なくても、取得された多重蛍光画像から、濃度の誤差を最小限に抑えて各蛍光を分離でき、各蛍光が分離された状態の蛍光画像を、より少ないノイズで表示可能な蛍光内視鏡装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するため、本発明による蛍光内視鏡装置は、生体組織に励起光を照射し前記生体組織から発生する蛍光により生体組織の病変部を観察する蛍光内視鏡装置であって、前記生体組織中に存在することが想定されるm種類[但し、2≦m]の蛍光色素1〜蛍光色素mの夫々の基準濃度での蛍光スペクトルが記録された蛍光スペクトル記録部と、前記生体組織から発生する蛍光画像を、n種類[但し、m≦n]の波長λ1〜波長λnごとに取得する蛍光画像取得部と、前記蛍光スペクトル記録部に記録されたm種類の蛍光色素1〜蛍光色素mの夫々の基準濃度での蛍光スペクトルと前記蛍光画像取得部が取得したn種類の波長λ1〜波長λnごとの蛍光画像を用いて、前記生体組織中に存在する夫々の蛍光色素の濃度を、該蛍光画像における全ての画素について演算により求める蛍光色素濃度演算部を有し、前記蛍光色素濃度演算部は、前記蛍光スペクトル記録部に記録された蛍光色素1〜蛍光色素mの夫々の基準濃度での蛍光スペクトルより得られる蛍光色素1〜蛍光色素mの夫々における基準濃度での波長λ1〜波長λnの夫々での係数をa1(λ1)〜am(λn)、前記蛍光画像取得部が取得した蛍光画像の波長λ1〜波長λnの夫々での強度をIall(λ1)〜Iall(λn)、蛍光色素1〜蛍光色素mの夫々の濃度をD1〜Dmとしたとき、次の式(1”)を用いて、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素mの濃度Dmを、該蛍光画像における画素ごとに全ての画素について計算し、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素mの濃度Dmの計算値の少なくともいずれか一つが0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、前記式(1”)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に該計算値よりも大きい所定値を代入して、計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算することを特徴としている。

【0025】
また、本発明の蛍光内視鏡装置においては、前記蛍光色素濃度演算部は、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素mの濃度Dmの計算値の少なくともいずれか一つが0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、前記式(1”)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に0を代入して、計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算するのが好ましい。
【0026】
また、本発明の蛍光内視鏡装置においては、前記蛍光色素濃度演算部は、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素mの濃度Dmの計算値の少なくともいずれか一つが0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、前記式(1”)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度にその絶対値が該計算値の絶対値よりも小さい所定値を代入して、計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算するのが好ましい。
【0027】
また、本発明の蛍光内視鏡装置においては、前記蛍光色素濃度演算部は、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素mの濃度Dmの計算値の少なくともいずれか一つが0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、前記式(1”)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度にその絶対値が該計算値の絶対値の2分の1以下の所定値を代入して、計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算するのが好ましい。
【0028】
また、本発明の蛍光内視鏡装置においては、前記蛍光色素濃度演算部は、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素mの濃度Dmの計算値の少なくともいずれか一つが0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、前記式(1”)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に該計算値よりも大きい、当該画素の近傍に位置する所定画素における対応する蛍光色素の濃度の計算値を代入して、計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算するのが好ましい。
【0029】
また、本発明の蛍光内視鏡装置においては、前記蛍光色素濃度演算部は、計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算する場合に、前記式(1”)において、蛍光色素1〜蛍光色素mの夫々における基準濃度での波長λ1〜波長λnの夫々での係数a1(λ1)〜am(λn)及び前記蛍光画像取得部が取得した蛍光画像の波長λ1〜波長λnの夫々での強度Iall(λ1)〜Iall(λn)のうち、濃度を再計算する対象となっている蛍光色素における蛍光強度が大きい波長成分以外の波長での基準濃度での係数及び蛍光強度を再計算の対象から除外し、波長の種類を蛍光色素の種類と同数にして、再計算を行うのが好ましい。
【0030】
また、本発明による蛍光内視鏡装置は、生体組織に励起光を照射し前記生体組織から発生する蛍光により生体組織の病変部を観察する蛍光内視鏡装置であって、前記生体組織中に存在することが想定される2種類の蛍光色素1,蛍光色素2の夫々の基準濃度での蛍光スペクトルが記録された蛍光スペクトル記録部と、前記生体組織から発生する蛍光画像を、2種類の波長λ1,波長λ2ごとに取得する蛍光画像取得部と、前記蛍光スペクトル記録部に記録された2種類の蛍光色素1,蛍光色素2の夫々の基準濃度での蛍光スペクトルと前記蛍光画像取得部が取得した2種類の波長λ1,λ2ごとの蛍光画像を用いて、前記生体組織中に存在する夫々の蛍光色素の濃度を、該蛍光画像における全ての画素について演算により求める蛍光色素濃度演算部を有し、前記蛍光色素濃度演算部は、前記蛍光スペクトル記録部に記録された蛍光色素1,蛍光色素2の夫々の基準濃度での蛍光スペクトルより得られる蛍光色素1の基準濃度での波長λ1での係数をa1(λ1)、蛍光色素1の基準濃度での波長λ2での係数をa1(λ2)、蛍光色素2の基準濃度での波長λ1での係数をa2(λ1)、蛍光色素2の基準濃度での波長λ2での係数をa2(λ2)、前記蛍光画像取得部が取得した蛍光画像の波長λ1での強度をIall(λ1)、波長λ2での強度をIall(λ2)、蛍光色素1の濃度をD1、蛍光色素2の濃度をD2としたとき、次の式(1)を用いて、蛍光色素1の濃度D1,蛍光色素2の濃度D2を、該蛍光画像における画素ごとに全ての画素について計算し、蛍光色素の濃度D1,蛍光色素2の濃度D2の計算値のいずれか一方が0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、前記式(1)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に該計算値よりも大きい所定値を代入して、他方の蛍光要素の濃度を再計算することを特徴としている。

【0031】
また、本発明の蛍光内視鏡装置においては、前記蛍光色素濃度演算部は、蛍光色素の濃度D1,蛍光色素2の濃度D2の計算値のいずれか一方が0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、前記式(1)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に0を代入して、他方の蛍光要素の濃度を再計算するのが好ましい。
【0032】
また、本発明の蛍光内視鏡装置においては、前記蛍光色素濃度演算部は、蛍光色素の濃度D1,蛍光色素2の濃度D2の計算値のいずれか一方が0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、前記式(1)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度にその絶対値が該計算値の絶対値よりも小さい所定値を代入して、他方の蛍光色素の濃度を再計算するのが好ましい。
【0033】
また、本発明の蛍光内視鏡装置においては、前記蛍光色素濃度演算部は、蛍光色素の濃度D1,蛍光色素2の濃度D2の計算値のいずれか一方が0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、前記式(1)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度にその絶対値が該計算値の絶対値の2分の1以下の所定値を代入して、他方の蛍光色素の濃度を再計算するのが好ましい。
【0034】
また、本発明の蛍光内視鏡装置においては、前記蛍光色素濃度演算部は、蛍光色素の濃度D1,蛍光色素2の濃度D2の計算値のいずれか一方が0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、前記式(1)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に該計算値よりも大きい、当該画素の近傍に位置する所定画素における対応する蛍光色素の濃度の計算値を代入して、他方の蛍光色素の濃度を再計算するのが好ましい。
【0035】
また、本発明による蛍光内視鏡装置は、生体組織に励起光を照射し前記生体組織から発生する蛍光により生体組織の病変部を観察する蛍光内視鏡装置であって、前記生体組織中に存在することが想定される3種類の蛍光色素1〜蛍光色素3の夫々の基準濃度での蛍光スペクトルが記録された蛍光スペクトル記録部と、前記生体組織から発生する蛍光画像を、3種類の波長λ1〜波長λ3ごとに取得する蛍光画像取得部と、前記蛍光スペクトル記録部に記録された3種類の蛍光色素1〜蛍光色素3の夫々の基準濃度での蛍光スペクトルと前記蛍光画像取得部が取得した3種類の波長λ1〜波長λ3ごとの蛍光画像を用いて、前記生体組織中に存在する夫々の蛍光色素の濃度を、該蛍光画像における全ての画素について演算により求める蛍光色素濃度演算部を有し、前記蛍光色素濃度演算部は、前記蛍光スペクトル記録部に記録された蛍光色素1〜蛍光色素3の夫々の基準濃度での蛍光スペクトルより得られる蛍光色素1の基準濃度での波長λ1での係数をa1(λ1)、蛍光色素1の基準濃度での波長λ2での係数をa1(λ2)、蛍光色素1の基準濃度での波長λ3での係数をa1(λ3)、蛍光色素2の基準濃度での波長λ1での係数をa2(λ1)、蛍光色素2の基準濃度での波長λ2での係数をa2(λ2)、蛍光色素2の基準濃度での波長λ3での係数をa2(λ3)、蛍光色素3の基準濃度での波長λ1での係数をa3(λ1)、蛍光色素3の基準濃度での波長λ2での係数をa3(λ2)、蛍光色素3の基準濃度での波長λ3での係数をa3(λ3)、前記蛍光画像取得部が取得した蛍光画像の波長λ1での強度をIall(λ1)、波長λ2での強度をIall(λ2)、波長λ3での強度をIall(λ3)、蛍光色素1の濃度をD1、蛍光色素2の濃度をD2、蛍光色素3の濃度をD3としたとき、次の式(1’)を用いて、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素3の濃度D3を、該蛍光画像における画素ごとに全ての画素について計算し、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素3の濃度D3の計算値の少なくともいずれか一つが0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、前記式(1’)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に該計算値よりも大きい所定値を代入して、計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算することを特徴としている。

【0036】
また、本発明の蛍光内視鏡装置においては、前記蛍光色素濃度演算部は、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素3の濃度D3の計算値の少なくともいずれか一つが0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、前記式(1’)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に0を代入して、計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算するのが好ましい。
【0037】
また、本発明の蛍光内視鏡装置においては、前記蛍光色素濃度演算部は、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素3の濃度D3の計算値の少なくともいずれか一つが0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、前記式(1’)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度にその絶対値が該計算値の絶対値よりも小さい所定値を代入して、計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算するのが好ましい。
【0038】
また、本発明の蛍光内視鏡装置においては、前記蛍光色素濃度演算部は、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素3の濃度D3の計算値の少なくともいずれか一つが0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、前記式(1’)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度にその絶対値が該計算値の絶対値の2分の1以下の所定値を代入して、計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算するのが好ましい。
【0039】
また、本発明の蛍光内視鏡装置においては、前記蛍光色素濃度演算部は、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素3の濃度D3の計算値の少なくともいずれか一つが0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、前記式(1’)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に該計算値よりも大きい、当該画素の近傍に位置する所定画素における対応する蛍光色素の濃度の計算値を代入して、計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算するのが好ましい。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、分光画像の種類および露光時間が少なくても、取得された多重蛍光画像から、濃度の誤差を最小限に抑えて各蛍光を分離でき、各蛍光が分離された状態の蛍光画像を、少ないノイズで表示可能な蛍光内視鏡装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の各実施形態に共通の蛍光内視鏡装置全体の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】本発明の各実施例に共通の蛍光内視鏡装置全体の構成を示すブロック図である。
【図3】図2の蛍光内視鏡装置を用いた蛍光観察における光学特性の一例を示すグラフで、(a)は励起光のスペクトルを示す図、(b)は励起光カットフィルタの分光透過率を示す図、(c)は自家蛍光スペクトルと蛍光色素の蛍光スペクトルを示す図、(d)は図2の蛍光内視鏡装置において用いられている分光光学素子が繰り返し切替える透過波長域を示す図である。
【図4】図2の蛍光内視鏡装置を用いた蛍光観察の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】実施例1の蛍光内視鏡装置の要部として、図4に示したUNMIX計算および再計算、各蛍光色素の濃度の決定の処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【図6】実施例1の変形例の蛍光内視鏡装置の要部として、図4に示したUNMIX計算および再計算、各蛍光色素の濃度の決定の処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【図7】実施例2の蛍光内視鏡装置の要部として、図4に示したUNMIX計算および再計算、各蛍光色素の濃度の決定の処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【図8】Unmixingによる2種類の蛍光の分離手順についての概念的な説明図で、(a)は蛍光色素1の基準濃度での蛍光スペクトルの一例を示すグラフ、(b)は蛍光色素2の基準濃度での蛍光スペクトルの一例を示すグラフ、(c)は測定された測定対象の蛍光スペクトルの一例を示すグラフ、(d)は(c)に示されている測定対象の蛍光スペクトルの測定データを、夫々所定の濃度の蛍光色素1,2の蛍光スペクトルに分離した例を模式的に示す図である。
【図9】所定の画素において取得されるn種類の分光画像と行列式における分光スペクトルとの関係を概念的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は本発明の各実施形態に共通の蛍光内視鏡装置全体の構成を概略的に示すブロック図である。
図1の蛍光内視鏡装置は、光源部1と、内視鏡先端挿入部2と、画像処理部3と、表示ユニット4を有している。
【0043】
光源部1は、光源と励起フィルタを有し、励起用の波長域の光を発することができるように構成されている。
内視鏡先端挿入部2は、照明光学系21と、撮像光学系22を有している。
照明光学系21は、光源部11からの励起光を生体組織5に照射するように構成されている。
撮像光学系22は、対物光学系、結像光学系、励起カットフィルタ、分光光学素子、撮像素子等(図示省略)を有し、図示省略した所定の制御手段による制御を介して、本発明における蛍光画像取得部としての機能を有し、生体組織5から発生する蛍光画像を、n種類[但し、2≦n]の波長λ1〜波長λnごとに取得することができるように構成されている。
【0044】
画像処理部3は、フレームメモリ31と、画像処理装置32と、蛍光スペクトル記録部33と、蛍光色素濃度演算部34を有している。
フレームメモリ31は、撮像光学系22を介して取得された各画像信号を記憶する、
画像処理装置32は、フレームメモリ31に記憶された各画像信号を合成する。その際、各画像信号に対して、正常組織部分と病変組織部分とが識別し易くなるように、蛍光色素ごとに、異なる色相を割り当てて、蛍光色素濃度演算部34で演算された蛍光色素の濃度に基づく強度の出力信号に変換する。
表示ユニット4は、画像処理装置32を介して処理された画像を表示する。
【0045】
蛍光スペクトル記録部33には、生体組織5中に存在することが想定されるm種類[但し、2≦m≦n]の蛍光色素1〜蛍光色素mの夫々の基準濃度での蛍光スペクトルが記録されている。
【0046】
蛍光色素濃度演算部34は、蛍光スペクトル記録部1に記録された蛍光色素1〜蛍光色素mの夫々の基準濃度での蛍光スペクトルより得られる蛍光色素1〜蛍光色素mの夫々における基準濃度での波長λ1〜波長λnの夫々での係数をa1(λ1)〜am(λn)、蛍光画像取得部が取得した蛍光画像の波長λ1〜波長λnの夫々での強度をIall(λ1)〜Iall(λn)、蛍光色素1〜蛍光色素mの夫々の濃度をD1〜Dmとしたとき、次の式(1”)を用いて、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素mの濃度Dmを計算する。ここで、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素mの濃度Dmの計算値の少なくともいずれか一つが0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、式(1”)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に、該計算した濃度の値よりも大きい所定値を代入して、当該蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算する。

【0047】
即ち、図1の蛍光内視鏡装置は、蛍光色素濃度演算部34が、ある蛍光色素の濃度の計算値が、想定される値から大きくずれてマイナスになる場合、想定される範囲内の計算した値よりも大きな値(例えば、0)に置き換えて、それ以外の蛍光色素の濃度について再計算を行うように構成されている。
【0048】
例えば、2種類の蛍光色素1,蛍光色素2に対して、2種類の波長λ1,波長λ2での蛍光画像を得る構成において蛍光色素1の濃度D1,蛍光色素2の濃度D2を求める行列式は次の式(1)で表される。

ここで、蛍光色素濃度演算部34が行列式(1)の計算を行った結果、例えば蛍光色素2の濃度D2がマイナスの値になる場合がある。
しかし、実際には、蛍光色素の濃度は、最小値が0であって、マイナスの値になることはありえない。そして、蛍光色素2の濃度D2の計算値がマイナスの値に計算される場合、蛍光色素1の濃度D1は実際の濃度よりも大きく計算されている確率が高い。
【0049】
この点に関し、式を用いて詳しく説明する。
例えば、上記のような2種類の蛍光色素1,蛍光色素2に対して、2種類の波長λ1,波長λ2での蛍光画像を得る構成において、測定対象の波長λ1での信号強度Iall(λ1)を、上記2種類の蛍光色素1,蛍光色素2の波長λ1での信号強度の合計で表すと、次の式(2’)のように表すことができる。
all(λ1)=a1(λ1)*D1+a2(λ1)*D2 …(2’)
但し、a1(λ1)は蛍光色素1の基準濃度での波長λ1での係数、a2(λ1)は蛍光色素2の基準濃度での波長λ1での係数である。
【0050】
ここで、蛍光色素1の濃度D1、蛍光色素2の濃度D2の最小値は、夫々0であり、マイナスになることはない。このため、蛍光色素1の波長λ1での明るさ(信号強度)の最小値、蛍光色素2の波長λ1での明るさ(信号強度)の最小値は、夫々0である。
このことから、理論上は、上記式(2’)において、例えば、蛍光色素1の波長λ1での明るさ(信号強度)a1(λ1)*D1が0のときは、蛍光色素2の波長λ1での明るさ(信号強度)a2(λ1)*D2が観察対象の波長λ1での明るさ(信号強度)Iall(λ1)に等しくなる。また、例えば、蛍光色素2の波長λ1での明るさ(信号強度)a2(λ1)*D2が0のときは、蛍光色素1の波長λ1での明るさ(信号強度)a1(λ1)*D1が観察対象の波長λ1での明るさ(信号強度)Iall(λ1)に等しくなる。
【0051】
しかるに、例えば、上記行列式(1)において、蛍光色素2の波長λ1での濃度D2がマイナスの値に計算されると、蛍光色素2の波長λ1での明るさ(信号強度)a2(λ1)*D2がマイナスの値に計算されることになる。そうすると、上記式(2’)における、蛍光色素1の波長λ1での明るさ(信号強度)a1(λ1)*D1の計算値が、観察対象の波長λ1での明るさ(信号強度)Iall(λ1)よりも明るい値となり、理論上の最大値を上回ってしまうことになる。
【0052】
そのような計算値に基づいて蛍光色素1について再構築した画像を、表示ユニット4が表示すると、蛍光色素1が集積している部位での信号強度が強くなり過ぎてノイズを生じ易い。
【0053】
図1の蛍光内視鏡のように、蛍光色素濃度演算部34が、行列式(1)における蛍光色素2の濃度D2に想定の範囲内の値(例えば、0)を代入して、蛍光色素1の濃度D1を再計算すれば、蛍光色素1の濃度D1における計算値と実際の濃度との誤差を小さくすることができる。その結果、蛍光色素1を再構築した画像を表示ユニット4が表示した場合において蛍光色素1が集積している部位でのノイズの発生を抑えることができ、画像が観察し易くなる。
【0054】
以下、図1の構成を備えた蛍光内視鏡装置における蛍光色素濃度演算部34による蛍光光色素の濃度の再計算処理の具体例を本発明の実施形態として示す。
【0055】
第一実施形態(0を代入する例)
第一実施形態の蛍光内視鏡装置は、3種類の蛍光色素1〜蛍光色素3に対して、3種類の波長λ1〜波長λ3での蛍光画像を得る場合において、蛍光色素濃度演算部34が、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素3の濃度D3を求める行列式(1’)を用いて計算した、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素3の濃度D3の計算値の少なくともいずれか一つが0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、式(1’)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に0を代入して、計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算するように構成されている。
【0056】
蛍光色素濃度演算部34は、例えば、蛍光色素3の濃度D3の計算値が0よりも小さい値となった画素が存在する場合、当該画素について、式(1’)において、蛍光色素3の濃度D3に0を代入して再計算、つまり、次の式(1’α)を計算して蛍光色素1の濃度D1,蛍光色素2の濃度D2を求める。

なお、式(1’α)におけるa11〜a33は蛍光色素1〜蛍光色素3の夫々における基準濃度での波長λ1〜波長λ3の夫々での係数a1(λ1)〜係数a3(λ3)を、便宜上、簡略化して示したものである。また、(1’α)におけるIg〜Irは蛍光画像取得部(撮像光学系22と分光光学素子制御ユニット22f)が取得した蛍光画像の波長λ1〜波長λ3の夫々での強度Iall(λ1)〜強度Iall(λ3)を、便宜上、簡略化して示したものである。
【0057】
また、蛍光色素濃度演算部34は、例えば、蛍光色素2の濃度D2,蛍光色素3の濃度D3が0よりも小さい値となった画素が存在する場合、当該画素について、式(1’)において、蛍光色素2の濃度D2,蛍光色素3の濃度D3に0を代入して再計算、つまり、次の式(1’β)を計算して、蛍光色素1の濃度D1を求める。

なお、行列式(1’β)は、式の数(3つ)が、蛍光色素の濃度の種類(1種類)よりも多くなるが、この場合は最小2乗法等を用いることで解くことができる。
【0058】
第一実施形態の内視鏡装置のように、蛍光色素濃度演算部34が、計算値が0よりも小さい蛍光色素3の濃度D3(又は蛍光色素の濃度D2,蛍光色素3の濃度D3)に0を代入して、計算値が0よりも小さい蛍光色素3以外の蛍光色素1の濃度D1,蛍光色素2の濃度D2(又は蛍光色素の濃度D1)を再計算するようにすれば、計算値が0よりも小さい蛍光色素3以外の蛍光色素1の濃度D1,蛍光色素2のD2(又は蛍光色素1の濃度D1)の誤差を小さくすることができる。その結果、蛍光色素1(又は蛍光色素1,蛍光色素2)を画像で表示装置に表示したときに蛍光色素1(又は蛍光色素1,蛍光色素2)が集積した部位に輝点を生じることがなく、画像が観察し易くなる。
また、行列式における列の数を減らすことができる。
【0059】
第二実施形態(0以外の数を代入する例)
第二実施形態の蛍光内視鏡装置は、3種類の蛍光色素1〜蛍光色素3に対して、3種類の波長λ1〜波長λ3での蛍光画像を得る場合において、蛍光色素濃度演算部34が、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素3の濃度D3を求める行列式(1’)を用いて計算した、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素3の濃度D3の計算値の少なくともいずれか一つが0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、式(1’)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に0以外の数を代入して、計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算するように構成されている。
【0060】
蛍光色素濃度演算部34が、再計算に際し、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に代入する値としては、第一実施形態の蛍光内視鏡装置のように0に限定されることなく、0に近い値を代入して計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算しても、ノイズを減らすことができる。その場合は、極力0に近い値を代入するのが好ましい。再計算に際し、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に代入する値が0に近い値であるほど、計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度の再計算値の誤差を小さくすることができる。
【0061】
例えば、蛍光色素濃度演算部34は、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素3の濃度D3の計算値の少なくともいずれか一つが0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、式(1’)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度にその絶対値が該計算値の絶対値よりも小さい所定値を代入して、計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算するように構成するとよい。
【0062】
さらに、例えば、蛍光色素濃度演算部34は、蛍光色素の濃度D1〜蛍光色素3の濃度D3の計算値の少なくともいずれか一つが0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、式(1’)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度にその絶対値が該計算値の絶対値の2分の1以下の所定値を代入して、計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算するように構成すると、より好ましい。
【0063】
第三実施形態(当該画素の近傍に位置する所定画素の蛍光色素の濃度の計算値を代入する例)
第三実施形態の蛍光内視鏡装置は、3種類の蛍光色素1〜蛍光色素3に対して、3種類の波長λ1〜波長λ3での蛍光画像を得る場合において、蛍光色素濃度演算部34が、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素3の濃度D3を求める行列式(1’)を用いて計算した、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素3の濃度D3の少なくともいずれか一つが0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、式(1’)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に、該計算値よりも大きい、当該画素の近傍に位置する所定画素における対応する蛍光色素の濃度の計算値を代入して、計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算するように構成されている。
【0064】
例えば、蛍光色素濃度演算部34は、蛍光色素の濃度の計算値が0よりも小さい画素について、この計算値よりも大きい、隣接する画素における対応する蛍光色素の濃度の計算値を代入して、再計算するように構成する。あるいは、この計算値よりも大きい、周囲の画素における対応する蛍光色素の濃度の値の平均値を代入して、再計算するように構成する。ここでの周囲の画素の範囲は、当該画素に隣接する範囲に限らず、当該画素に隣接する画素から数画素離れた範囲までを含んでもよい。
なお、蛍光色素濃度演算部34が、蛍光色素の濃度の計算値が0よりも小さい画素について代入する、当該画素の近傍に位置する所定画素における対応する蛍光色素の濃度の計算値としては、正の数を用いるのが好ましい。
【0065】
第四実施形態(計算時間の短縮処理)
第四実施形態の蛍光内視鏡装置は、蛍光色素濃度演算部34は、計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算する場合に、式(1’)において、蛍光色素1〜蛍光色素mの夫々における基準濃度での波長λ1〜波長λnの夫々での係数a1(λ1)〜am(λn)及び蛍光画像取得部が取得した蛍光画像の波長λ1〜波長λnの夫々での強度Iall(λ1)〜Iall(λn)のうち、濃度を再計算する対象となっている蛍光色素における蛍光強度が大きい波長成分以外の波長での基準濃度での係数及び蛍光強度を再計算の対象から除外し、波長の種類を蛍光色素の種類と同数にして、再計算を行うように構成されている。
【0066】
波長の種類(式の数)が蛍光色素の種類(蛍光色素の濃度の種類)よりも多い行列式は、例えば最小2乗法を用いれば解くことができるが、最小2乗法を用いた計算に時間がかかり過ぎて、演算により得られた濃度に基づいて動画で表示するのが難しくなる場合がある。
このような場合、式の数を蛍光色素の濃度の種類と同数となるように減らして再計算すれば、計算時間を短縮でき、動画表示が行いやすくなる。
【0067】
例えば、蛍光色素3の濃度D3の計算値が0より小さい値となった場合には、式(1’)における蛍光色素3の濃度D3に0を代入すると式(1’α)となるが、第四実施形態の蛍光内視鏡装置では、蛍光色素濃度演算部34は、さらに、次の式(1’α’)のように、行列式の行の成分を減らすことで、式の数を蛍光色素の濃度の種類と同数にする。

なお、この場合は、誤差を極力小さく抑えるために、再計算する蛍光色素1の濃度D1,蛍光色素2の濃度D2への寄与が大きい(例えば、蛍光色素1,蛍光色素2の蛍光強度が大きい)波長の成分を残す。ここでは、波長の成分Ig,波長の成分Ibが、波長の成分Irに比べて、蛍光色素1の蛍光強度、蛍光色素2の蛍光強度が大きい波長成分としている。
【0068】
次に、本発明の蛍光内視鏡装置の実施例を説明する。
図2は本発明の各実施例に共通の蛍光内視鏡装置全体の構成を示すブロック図、図3は図2の蛍光内視鏡装置を用いた蛍光観察における光学特性の一例を示すグラフで、(a)は励起光のスペクトルを示す図、(b)は励起光カットフィルタの分光透過率を示す図、(c)は自家蛍光スペクトルと蛍光色素の蛍光スペクトルを示す図、(d)は図2の蛍光内視鏡装置において用いられている分光光学素子が繰り返し切替える透過波長域を示す図である。図4は図2の蛍光内視鏡装置を用いた蛍光観察の処理手順を示すフローチャートである。
【0069】
図2の蛍光内視鏡装置は、光源部1と、内視鏡先端挿入部2と、画像処理部3と、表示ユニット4を有している。
【0070】
光源部1は、光源と励起フィルタを有し、図3(a)に示すように、440nmを中心波長とする430nm〜450nmの励起用の波長域の光を発することができるように構成された励起光源11を備えている。なお、図2の内視鏡システムでは、光源部1は、白色光源12も備えるとともに、照明光切替え制御ユニット13に接続されており、照明光切替え制御ユニット11の制御を介して、励起光源11からの励起光と白色光源12からの白色光とを切替えて出射可能になっている。
【0071】
内視鏡先端挿入部2は、照明光学系21と、撮像光学系22を有している。
照明光学系21は、ライトガイド23を経由した光源部11からの励起光を生体組織5に照射する。
生体組織5は、図3(c)に示すように、ピーク波長が460nmで440nm〜650nmの自家蛍光を発する蛍光色素(物質)1を有するとともに、ピーク波長が520nmで500nm〜635nmの蛍光を発する蛍光色素2を含む蛍光プローブが標識されている。図2中、5aは生体組織5における蛍光色素2を含む蛍光プローブの集積部を示している。
【0072】
撮像光学系22は、対物光学系22aと、結像光学系22bと、励起光カットフィルタ22cと、分光光学素子22eと、撮像素子22dを有している。また、分光光学素子制御ユニット22fが、分光光学素子22eと画像処理部3とに接続されている。
励起光カットフィルタ22cは、図3(b)に示すように、励起光を含む450nm以下の波長域をカットし、450nm〜800nmの波長域の光を透過させる光学特性を有している。
【0073】
分光光学素子22eは、エタロンからなり、分光光学素子制御ユニット22fを介して、所定の波長域の光を透過させる複数の波長透過状態の切替えを繰り返すことができるように制御されている。ここでは、図3(d)に示すように、470nmをピーク波長とする450nm〜480nmの波長λ1と、520nmをピーク波長とする510nm〜530nmの波長λ2を切替えて透過する。
エタロンとは、光の干渉を利用するものであり、対向するように配置された一対のミラー面の間隔を変化させることによって、透過又は反射し得る光の波長を変化させることができるものである。
【0074】
分光光学素子制御ユニット22fは、分光光学素子22eの波長透過状態(透過波長域)、透過波長状態の切替えピッチ等、分光光学素子22eの駆動を制御するとともに、画像処理部3における画像処理装置32による画像処理のタイミングを制御しており、分光光学素子22eにおける透過波長状態の切替えごとに、画像処理装置32に画像処理をさせるように構成されている。
撮像素子22dは、単板式イメージセンサ(図示省略)を備えたCCDで構成されている。
【0075】
そして、撮像光学系22は、分光光学素子制御ユニット22fの制御を介して、本発明の蛍光画像取得部としての機能を有し、生体組織5から発生する蛍光画像を、図3(d)に示す2種類の波長λ1,波長λ2ごとに取得することができるように構成されている。
【0076】
画像処理部3は、フレームメモリ31と、画像処理装置32と、蛍光スペクトル記録部33と、蛍光色素濃度演算部34を有している。
フレームメモリ31は、撮像光学系22を介して取得された各画像信号を記憶する、
画像処理装置32は、分光光学素子制御ユニット22fの制御を介して(例えば、画像処理の指示信号を受信するごとに)、フレームメモリ31に記憶された波長λ1,波長λ2の各画像信号を合成する。その際、各画像信号に対して、正常組織部分と病変組織部分とが識別し易くなるように、蛍光色素ごとに異なる色相を割り当てて、蛍光色素濃度演算部34で演算された蛍光色素の濃度に基づく強度の出力信号に変換する。
表示ユニット4は、画像処理装置32を介して処理された画像を表示する。
【0077】
蛍光スペクトル記録部33には、生体組織5中に存在することが想定される2種類の蛍光色素1,蛍光色素2(図3(c)参照)の夫々の基準濃度での蛍光スペクトルが記録されている。
【0078】
蛍光色素濃度演算部34は、蛍光スペクトル記録部1に記録された蛍光色素1,蛍光色素2の夫々の基準濃度での蛍光スペクトルより得られる蛍光色素1,蛍光色素2の夫々における基準濃度での波長λ1,波長λ2の夫々での係数をa1(λ1),a2(λ2)、蛍光画像取得部が取得した蛍光画像の波長λ1,波長λ2の夫々での強度をIall(λ1),Iall(λ2)、蛍光色素1,蛍光色素2の夫々の濃度をD1,D2としたとき、次の式(1)を用いて、蛍光色素1の濃度D1,蛍光色素2の濃度D2を計算する。ここで、蛍光色素1の濃度D1,蛍光色素2の濃度D2の計算値のいずれか一方が0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、式(1)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に該計算した濃度の値よりも大きい所定値を代入して、他方の蛍光色素の濃度を再計算するように構成されている。

次の実施例1,2では、図2の蛍光内視鏡装置において、蛍光色素濃度演算部34による具体的な蛍光光色素の濃度の再計算処理が異なっている。
【0079】
実施例1
図5は実施例1の蛍光内視鏡装置の要部として、図4に示したUNMIX計算および再計算、各蛍光色素の濃度の決定の処理手順の詳細を示すフローチャートである。
実施例1の蛍光内視鏡装置では、蛍光色素濃度演算部34は、第一実施形態、第二実施形態と略同様に構成されており、蛍光色素1の濃度D1,蛍光色素2の濃度D2のいずれか一方が0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、式(1)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に0(もしくは、例えば、その濃度D2の計算値の絶対値の1/2以下の値等の0に近い値)を代入して、他方の蛍光色素の濃度を再計算するように構成されている。
実施例1の蛍光内視鏡装置の効果は、第一実施形態、第二実施形態の蛍光内視鏡装置と略同じである。
【0080】
変形例
図6は実施例1の変形例の蛍光内視鏡装置の要部として、図4に示したUNMIX計算および再計算、各蛍光色素の濃度の決定の処理手順の詳細を示すフローチャートである。
実施例1の変形例の蛍光内視鏡装置では、蛍光色素濃度演算部34は、第四実施形態と略同様に構成されており、蛍光色素1の濃度D1,蛍光色素2の濃度D2のいずれか一方の計算値が0よりも小さい画素が存在し、当該画素について、式(1)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に0を代入して、計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算する場合に、濃度を再計算する対象となっている蛍光色素における蛍光強度が大きい波長成分以外の波長での基準濃度での係数及び蛍光強度を再計算の対象から除外し、波長の種類を蛍光色素の種類と同数にして、再計算を行うように構成されている。
変形例の蛍光内視鏡装置の効果は、第四実施形態の蛍光内視鏡装置と略同じである。
【0081】
実施例2
図7は実施例2の蛍光内視鏡装置の要部として、図4に示したUNMIX計算および再計算、各蛍光色素の濃度の決定の処理手順の詳細を示すフローチャートである。
実施例2の蛍光内視鏡装置では、蛍光色素濃度演算部34は、第三実施形態と略同様に構成されており、蛍光色素1の濃度D1,蛍光色素2の濃度D2のいずれかの計算値が0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、式(1)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に、該計算値よりも大きい、当該画素の近傍に位置する所定画素における対応する蛍光色素の濃度の計算値、[周囲の画素の当該濃度の計算値から得られる値(例えば周囲の画素の当該濃度の計算値の平均値)]を代入して再計算するように構成されている。
実施例2の蛍光内視鏡装置の効果は、第三実施形態の蛍光内視鏡装置と略同じである。
【0082】
このように構成された実施例1,2の蛍光内視鏡装置を用いた多重蛍光の計測手順について図4を用いて説明する。
まず、前準備処理を行う。
前準備処理では、生体組織5中に存在することが想定される蛍光色素1,蛍光色素2ごとに、例えば蛍光色素の溶液を準備し、蛍光内視鏡装置を用いて蛍光スペクトルを取得する(ステップS1)。詳しくは、光源部1は、照明光切替え制御ユニット11の制御を介して、励起光源11から励起光を出射する。出射した光はライトガイド23を経由し、照明光学系21から蛍光色素1(又は蛍光色素2)に照射される。蛍光色素1(又は蛍光色素2)から発した蛍光及び蛍光色素1(又は蛍光色素2)で反射された励起光は、対物光学系22a、結像光学系22bを通過した後、励起光のみが励起光カットフィルタ22cでカットされ、分光光学素子22eに入射する。分光光学素子22eは、入射した光のうち、波長λ1と波長λ2の光を交互に通過させる。分光光学素子22eを通過した光は撮像素子22dで撮像される。
次いで、画像処理部3の蛍光スペクトル記録部33が、取得された各蛍光色素の蛍光スペクトルを記録する(ステップS2)。蛍光スペクトル記録部33に記録された蛍光色素1,2夫々の蛍光スペクトルにおける波長λ1,波長λ2での夫々の信号強度が、蛍光色素1,蛍光色素2夫々の基準濃度での波長λ1,波長λ2ごとの濃度係数となる。
【0083】
次に、多重蛍光の計測処理を行う。
多重蛍光の計測処理では、まず、蛍光色素1(または自家蛍光)を有し、蛍光色素2(または薬剤)を標識された生体組織5の蛍光画像を2種類の波長λ1,波長λ2ごとに取得する(ステップS3)。詳しくは、光源部1は、照明光切替え制御ユニット11の制御を介して、励起光源11から励起光を出射する。出射した光はライトガイド23を経由し、照明光学系21から生体組織5に照射される。生体組織5から発した蛍光色素1の自家蛍光,蛍光色素2の蛍光及び生体組織5で反射された励起光は、対物光学系22a、結像光学系22bを通過した後、励起光のみが励起光カットフィルタ22cでカットされ、分光光学素子22eに入射する。分光光学素子22eが、入射した光のうち、波長λ1と波長λ2の光を交互に通過させる。分光光学素子22eを通過した光は撮像素子22dで撮像される。取得した蛍光画像は、フレームメモリ31に記憶される。
【0084】
次いで、蛍光色素濃度演算部34は、蛍光画像取得部(撮像光学系22、分光光学素子制御ユニット22f)が取得しフレームメモリ31に記憶された2種類の蛍光分光画像と蛍光スペクトル記録部33に記録された蛍光色素1,蛍光色素2の夫々の基準濃度での蛍光スペクトルと蛍光画像取得部が取得した2種類の波長λ1,波長λnごとの蛍光画像を用いて、生体組織5中に存在する夫々の蛍光色素1の濃度D1,蛍光色素2の濃度D2を、式(1)を用いて蛍光画像における全ての画素について計算する。
【0085】
ここで、蛍光色素濃度演算部34は、蛍光色素1の濃度D1,蛍光色素の濃度D2の計算値のいずれか一方が0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、式(1)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に該計算値よりも大きい所定値を代入して、他方の蛍光色素の濃度を再計算する。

これらの計算、再計算を経て、蛍光色素1の濃度1,蛍光色素2の濃度が求まる(ステップS4)。
【0086】
ここで、各実施例におけるステップS4の処理手順をより詳しく説明する。
実施例1
実施例1の蛍光内視鏡装置では、蛍光色素濃度演算部34は、処理対象となる一番目の画素を選択する(ステップS41)。次いで、当該画素についてUNMIX計算(蛍光色素1の濃度D1,蛍光色素2の濃度D2の計算)を行なう(ステップS42)。蛍光色素1の濃度D1,蛍光色素2の濃度D2のいずれか一方が0よりも小さい画素が存在する場合(ステップS43)、当該画素について、式(1)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に0(もしくは、例えば、その濃度D2の計算値の絶対値の1/2以下の値等の0に近い値)を代入し(ステップS44)、他方の蛍光色素の濃度を再計算する(ステップS45)。当該画素におけるすべての蛍光色素の濃度の計算値が0以上であるとき(ステップS43)、0以上となった各蛍光色素の濃度を当該画素についての各蛍光色素の濃度情報として決定する(ステップS46)。これらステップS42〜ステップS46の処理をすべての画素に対して行なう(ステップS47,ステップS48)。
【0087】
実施例1の変形例
実施例1の変形例の蛍光内視鏡装置では、蛍光色素濃度演算部34は、処理対象となる一番目の画素を選択する(ステップS41)。次いで、当該画素についてUNMIX計算(蛍光色素1の濃度D1,蛍光色素2の濃度D2の計算)を行なう(ステップS42)。蛍光色素1の濃度D1,蛍光色素2の濃度D2のいずれか一方が0よりも小さい画素が存在する場合(ステップS43)、当該画素について、式(1)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に0を代入し(ステップS44’)、他方の蛍光色素の濃度を再計算する。その際、蛍光強度が大きい波長成分以外の基準濃度での係数及び蛍光強度を再計算の対象から除外し、波長の種類を蛍光色素の種類と同数にして再計算を行なう(ステップS45’)。当該画素におけるすべての蛍光色素の濃度の計算値が0以上であるとき(ステップS43)、0以上となった各蛍光色素の濃度を当該画素についての各蛍光色素の濃度情報として決定する(ステップS46)。これらステップS42〜ステップS46の処理をすべての画素に対して行なう(ステップS47,ステップS48)。
【0088】
実施例2
実施例2の蛍光内視鏡装置では、蛍光色素濃度演算部34は、処理対象となる一番目の画素を選択する(ステップS41)。次いで、当該画素についてUNMIX計算(蛍光色素1の濃度D1,蛍光色素2の濃度D2の計算)を行なう(ステップS42)。蛍光色素1の濃度D1,蛍光色素2の濃度D2のいずれか一方が0よりも小さい画素が存在する場合(ステップS43)、当該画素について、式(1)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に、その計算値よりも大きい、当該画素の近傍に位置する所定画素における対応する蛍光画素の濃度の計算値として、周囲の画素の当該濃度の計算値から得られる値(例えば、周囲の画素の当該濃度の計算値の平均値)を代入し(ステップS44”)、他方の蛍光色素の濃度を再計算する(ステップS45)。当該画素におけるすべての蛍光色素の濃度の計算値が0以上であるとき(ステップS43)、0以上となった各蛍光色素の濃度を当該画素についての各蛍光色素の濃度情報として決定する(ステップS46)。これらステップS42〜ステップS46の処理をすべての画素に対して行なう(ステップS47,ステップS48)。
【0089】
次いで、画像処理装置32は、波長1,波長2ごとの各画像信号に対して、蛍光色素1,蛍光色素2ごとに、(例えば、蛍光色素1については赤を、蛍光色素2については緑というように)異なる色相を割り当てる。そして、式(1)の演算により求められた蛍光色素1の濃度D1,蛍光色素2の濃度D2に基づく強度の出力信号に変換し、変換した各画像信号を合成する。これにより、生体組織の画像が、蛍光色素ごとに色分けされた状態で再構築される。なお、画像処理装置32は、波長1,波長2ごとの各画像信号に対して、蛍光色素1,蛍光色素2ごとに、その蛍光色素の濃度に基づく強度の出力信号に変換し、変換した各画像信号を合成して、画像を再構築するようにしてもよい(ステップS5)。
【0090】
次いで、表示ユニット4が、再構築された画像を、2種類の蛍光色素1,2夫々の蛍光の濃度画像情報を色割り当てした態様で、あるいは、1種類の蛍光色素の蛍光の濃度画像情報ごとに表示する(ステップS6)。
これらのステップS3〜ステップS6の処理は、生体組織5に対する観察を終了するまで、繰り返し行う。
【0091】
なお、実施例1,実施例2の蛍光内視鏡装置は、もちろん、上述した多重蛍光の観察以外の観察も行うことができる。
例えば、照明光切替え制御ユニット11の制御を介して、光源部1が白色光源12からの白色光を出射するように切替えたときは、白色光が生体組織5に照射され、生体組織5からの反射光が一部の波長領域を除き撮像光学系22を介して取得され、画像処理装置32を介してカラー画像が合成され、合成されたカラー画像が表示ユニット4を介して表示される。これにより、通常の白色光を用いたカラーでの反射画像観察を行うことができる。
【0092】
また、例えば、蛍光観察を行う場合において、分光光学素子制御ユニット22fを介して、一種類の波長域のみを分光光学素子22eが透過するように制御した場合には、一種類の波長域についての蛍光画像が取得され、その蛍光画像が表示ユニット4を介して表示される。これにより、一種類の波長による蛍光画像観察を行うことができる。
【0093】
また、例えば、多波長での蛍光観察を行う場合において、画像処理装置32が、分光光学素子制御ユニット22fの制御を介して、フレームメモリ31に記憶された波長λ1,波長λ2の各画像信号を合成する際、各画像信号ごとに異なる色相の割り当てを行うようにする。
これにより、波長ごとに色分けされた状態の蛍光画像観察を行うことができる。
【0094】
以上、本発明の蛍光内視鏡装置の実施形態及び実施例を説明したが、本発明の蛍光内視鏡装置は、これらに限定されるものではなく、各実施形態及び実施例における特徴的な構成を組み合わせたものであってもよい。
【0095】
また、観察対象となる生体組織や観察目的、観察条件等により異なる蛍光色素の種類に応じて、所望の蛍光色素の種類を画面入力等を介して設定できるようにするとともに、蛍光スペクトル記録部33に多種類の蛍光色素の基準濃度での蛍光スペクトルを備え、蛍光色素濃度演算部34を画面入力等により設定された所望の蛍光色素の濃度を演算することができるように構成するとさらによい。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の蛍光内視鏡装置は、生体組織に励起光を照射し前記生体組織から発生する蛍光により生体組織の病変部を観察する蛍光内視鏡装置に有用である。
【符号の説明】
【0097】
1 蛍光内視鏡装置
11 光源部
2 内視鏡先端挿入部
21 照明光学系
22 撮像光学系
22a 対物光学系
22b 結像光学系
22c 励起光カットフィルタ
22e 分光光学素子
22d 撮像素子
22f 分光光学素子制御ユニット
23 ライトガイド
3 画像処理部
31 フレームメモリ
32 画像処理装置
33 蛍光スペクトル記録部
34 蛍光色素濃度演算部
4 表示ユニット
5 生体組織
5a 蛍光薬剤集積部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織に励起光を照射し前記生体組織から発生する蛍光により生体組織の病変部を観察する蛍光内視鏡装置であって、
前記生体組織中に存在することが想定されるm種類[但し、2≦m]の蛍光色素1〜蛍光色素mの夫々の基準濃度での蛍光スペクトルが記録された蛍光スペクトル記録部と、
前記生体組織から発生する蛍光画像を、n種類[但し、m≦n]の波長λ1〜波長λnごとに取得する蛍光画像取得部と、
前記蛍光スペクトル記録部に記録されたm種類の蛍光色素1〜蛍光色素mの夫々の基準濃度での蛍光スペクトルと前記蛍光画像取得部が取得したn種類の波長λ1〜波長λnごとの蛍光画像を用いて、前記生体組織中に存在する夫々の蛍光色素の濃度を、該蛍光画像における全ての画素について演算により求める蛍光色素濃度演算部を有し、
前記蛍光色素濃度演算部は、
前記蛍光スペクトル記録部に記録された蛍光色素1〜蛍光色素mの夫々の基準濃度での蛍光スペクトルより得られる蛍光色素1〜蛍光色素mの夫々における基準濃度での波長λ1〜波長λnの夫々での係数をa1(λ1)〜am(λn)、前記蛍光画像取得部が取得した蛍光画像の波長λ1〜波長λnの夫々での強度をIall(λ1)〜Iall(λn)、蛍光色素1〜蛍光色素mの夫々の濃度をD1〜Dmとしたとき、次の式(1”)を用いて、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素mの濃度Dmを、該蛍光画像における画素ごとに全ての画素について計算し、
蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素mの濃度Dmの計算値の少なくともいずれか一つが0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、前記式(1”)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に該計算値よりも大きい所定値を代入して、計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算することを特徴とする蛍光内視鏡装置。

【請求項2】
前記蛍光色素濃度演算部は、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素mの濃度Dmの計算値の少なくともいずれか一つが0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、前記式(1”)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に0を代入して、計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算することを特徴とする請求項1に記載の蛍光内視鏡装置。
【請求項3】
前記蛍光色素濃度演算部は、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素mの濃度Dmの計算値の少なくともいずれか一つが0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、前記式(1”)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度にその絶対値が該計算値の絶対値よりも小さい所定値を代入して、計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算することを特徴とする請求項1に記載の蛍光内視鏡装置。
【請求項4】
前記蛍光色素濃度演算部は、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素mの濃度Dmの計算値の少なくともいずれか一つが0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、前記式(1”)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度にその絶対値が該計算値の絶対値の2分の1以下の所定値を代入して、計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算することを特徴とする請求項1に記載の蛍光内視鏡装置。
【請求項5】
前記蛍光色素濃度演算部は、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素mの濃度Dmの計算値の少なくともいずれか一つが0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、前記式(1”)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に該計算値よりも大きい、当該画素の近傍に位置する所定画素における対応する蛍光色素の濃度の計算値を代入して、計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算することを特徴とする請求項1に記載の蛍光内視鏡装置。
【請求項6】
前記蛍光色素濃度演算部は、計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算する場合に、前記式(1”)において、蛍光色素1〜蛍光色素mの夫々における基準濃度での波長λ1〜波長λnの夫々での係数a1(λ1)〜am(λn)及び前記蛍光画像取得部が取得した蛍光画像の波長λ1〜波長λnの夫々での強度Iall(λ1)〜Iall(λn)のうち、濃度を再計算する対象となっている蛍光色素における蛍光強度が大きい波長成分以外の波長での基準濃度での係数及び蛍光強度を再計算の対象から除外し、波長の種類を蛍光色素の種類と同数にして、再計算を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の蛍光内視鏡装置。
【請求項7】
生体組織に励起光を照射し前記生体組織から発生する蛍光により生体組織の病変部を観察する蛍光内視鏡装置であって、
前記生体組織中に存在することが想定される2種類の蛍光色素1,蛍光色素2の夫々の基準濃度での蛍光スペクトルが記録された蛍光スペクトル記録部と、
前記生体組織から発生する蛍光画像を、2種類の波長λ1,波長λ2ごとに取得する蛍光画像取得部と、
前記蛍光スペクトル記録部に記録された2種類の蛍光色素1,蛍光色素2の夫々の基準濃度での蛍光スペクトルと前記蛍光画像取得部が取得した2種類の波長λ1,波長λ2ごとの蛍光画像を用いて、前記生体組織中に存在する夫々の蛍光色素の濃度を、該蛍光画像における全ての画素について演算により求める蛍光色素濃度演算部を有し、
前記蛍光色素濃度演算部は、
前記蛍光スペクトル記録部に記録された蛍光色素1,蛍光色素2の夫々の基準濃度での蛍光スペクトルより得られる蛍光色素1の基準濃度での波長λ1での係数をa1(λ1)、蛍光色素1の基準濃度での波長λ2での係数をa1(λ2)、蛍光色素2の基準濃度での波長λ1での係数をa2(λ1)、蛍光色素2の基準濃度での波長λ2での係数をa2(λ2)、前記蛍光画像取得部が取得した蛍光画像の波長λ1での強度をIall(λ1)、波長λ2での強度をIall(λ2)、蛍光色素1の濃度をD1、蛍光色素2の濃度をD2としたとき、次の式(1)を用いて、蛍光色素1の濃度D1,蛍光色素2の濃度D2を、該蛍光画像における画素ごとに全ての画素について計算し、
蛍光色素1の濃度D1,蛍光色素2の濃度D2の計算値のいずれか一方が0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、前記式(1)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に該計算値よりも大きい所定値を代入して、他方の蛍光要素の濃度を再計算することを特徴とする蛍光内視鏡装置。

【請求項8】
前記蛍光色素濃度演算部は、蛍光色素1の濃度D1,蛍光色素2の濃度D2の計算値のいずれか一方が0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、前記式(1)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に0を代入して、他方の蛍光要素の濃度を再計算することを特徴とする請求項7に記載の蛍光内視鏡装置。
【請求項9】
前記蛍光色素濃度演算部は、蛍光色素1の濃度D1,蛍光色素2の濃度D2の計算値のいずれか一方が0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、前記式(1)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度にその絶対値が該計算値の絶対値よりも小さい所定値を代入して、他方の蛍光色素の濃度を再計算することを特徴とする請求項7に記載の蛍光内視鏡装置。
【請求項10】
前記蛍光色素濃度演算部は、蛍光色素1の濃度D1,蛍光色素2の濃度D2の計算値のいずれか一方が0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、前記式(1)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度にその絶対値が該計算値の絶対値の2分の1以下の所定値を代入して、他方の蛍光色素の濃度を再計算することを特徴とする請求項7に記載の蛍光内視鏡装置。
【請求項11】
前記蛍光色素濃度演算部は、蛍光色素1の濃度D1,蛍光色素2の濃度D2の計算値のいずれか一方が0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、前記式(1)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に該計算値よりも大きい、当該画素の近傍に位置する所定画素における対応する蛍光色素の濃度の計算値を代入して、他方の蛍光色素の濃度を再計算することを特徴とする請求項7に記載の蛍光内視鏡装置。
【請求項12】
生体組織に励起光を照射し前記生体組織から発生する蛍光により生体組織の病変部を観察する蛍光内視鏡装置であって、
前記生体組織中に存在することが想定される3種類の蛍光色素1〜蛍光色素3の夫々の基準濃度での蛍光スペクトルが記録された蛍光スペクトル記録部と、
前記生体組織から発生する蛍光画像を、3種類の波長λ1〜波長λ3ごとに取得する蛍光画像取得部と、
前記蛍光スペクトル記録部に記録された3種類の蛍光色素1〜蛍光色素3の夫々の基準濃度での蛍光スペクトルと前記蛍光画像取得部が取得した3種類の波長λ1〜波長λ3ごとの蛍光画像を用いて、前記生体組織中に存在する夫々の蛍光色素の濃度を、該蛍光画像における全ての画素について演算により求める蛍光色素濃度演算部を有し、
前記蛍光色素濃度演算部は、
前記蛍光スペクトル記録部に記録された蛍光色素1〜蛍光色素3の夫々の基準濃度での蛍光スペクトルより得られる蛍光色素1の基準濃度での波長λ1での係数をa1(λ1)、蛍光色素1の基準濃度での波長λ2での係数をa1(λ2)、蛍光色素1の基準濃度での波長λ3での係数をa1(λ3)、蛍光色素2の基準濃度での波長λ1での係数をa2(λ1)、蛍光色素2の基準濃度での波長λ2での係数をa2(λ2)、蛍光色素2の基準濃度での波長λ3での係数をa2(λ3)、蛍光色素3の基準濃度での波長λ1での係数をa3(λ1)、蛍光色素3の基準濃度での波長λ2での係数をa3(λ2)、蛍光色素3の基準濃度での波長λ3での係数をa3(λ3)、前記蛍光画像取得部が取得した蛍光画像の波長λ1での強度をIall(λ1)、波長λ2での強度をIall(λ2)、波長λ3での強度をIall(λ3)、蛍光色素1の濃度をD1、蛍光色素2の濃度をD2、蛍光色素3の濃度をD3としたとき、次の式(1’)を用いて、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素3の濃度D3を、該蛍光画像における画素ごとに全ての画素について計算し、
蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素3の濃度D3の計算値の少なくともいずれか一つが0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、前記式(1’)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に該計算値よりも大きい所定値を代入して、計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算することを特徴とする蛍光内視鏡装置。

【請求項13】
前記蛍光色素濃度演算部は、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素3の濃度D3の計算値の少なくともいずれか一つが0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、前記式(1’)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に0を代入して、計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算することを特徴とする請求項12に記載の蛍光内視鏡装置。
【請求項14】
前記蛍光色素濃度演算部は、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素3の濃度D3の計算値の少なくともいずれか一つが0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、前記式(1’)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度にその絶対値が該計算値の絶対値よりも小さい所定値を代入して、計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算することを特徴とする請求項12に記載の蛍光内視鏡装置。
【請求項15】
前記蛍光色素濃度演算部は、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素3の濃度D3の計算値の少なくともいずれか一つが0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、前記式(1’)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度にその絶対値が該計算値の絶対値の2分の1以下の所定値を代入して、計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算することを特徴とする請求項12に記載の蛍光内視鏡装置。
【請求項16】
前記蛍光色素濃度演算部は、蛍光色素1の濃度D1〜蛍光色素3の濃度D3の計算値の少なくともいずれか一つが0よりも小さい画素が存在する場合、当該画素について、前記式(1’)において、計算値が0よりも小さい蛍光色素の濃度に該計算値よりも大きい、当該画素の近傍に位置する所定画素における対応する蛍光色素の濃度の計算値を代入して、計算値が0よりも小さい蛍光色素以外の蛍光色素の濃度を再計算することを特徴とする請求項12に記載の蛍光内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−191271(P2011−191271A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59781(P2010−59781)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】