蛍光分光分析装置
【課題】スイッチングFCCS法を実施しつつも欠損のない相関曲線を取得し得る蛍光分光分析装置を提供する。
【解決手段】蛍光分光分析装置100は顕微鏡部110と励起光制御部130と蛍光検出部140と信号処理部150と演算部160とを有している。顕微鏡部110は、対物レンズ114と、励起光と蛍光を分離するダイクロイックミラー116と、波長の異なる励起光を切り替えながら試料Sに照射する励起光照射部120とを有している。励起光制御部130は、励起光の切り替えを時間経過とともに変化させるように励起光照射部120を制御する。蛍光検出部140は、励起光の照射に応じて試料Sから発生する波長の異なる複数の蛍光を検出する。演算部160は、試料Sに照射される励起光の波長と蛍光検出部140で検出される蛍光の強度とに基づいて相関分析を行なう。
【解決手段】蛍光分光分析装置100は顕微鏡部110と励起光制御部130と蛍光検出部140と信号処理部150と演算部160とを有している。顕微鏡部110は、対物レンズ114と、励起光と蛍光を分離するダイクロイックミラー116と、波長の異なる励起光を切り替えながら試料Sに照射する励起光照射部120とを有している。励起光制御部130は、励起光の切り替えを時間経過とともに変化させるように励起光照射部120を制御する。蛍光検出部140は、励起光の照射に応じて試料Sから発生する波長の異なる複数の蛍光を検出する。演算部160は、試料Sに照射される励起光の波長と蛍光検出部140で検出される蛍光の強度とに基づいて相関分析を行なう。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光分光分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光相関分光分析法(FCS法)は、顕微鏡視野の微小観測領域内で蛍光分子のブラウン運動が作り出す光の揺らぎを解析することにより、蛍光強度の自己相関関数を求め、分子の並進拡散時間や平均分子数を解析する手法であり、例えば非特許文献1に記載されている。
【0003】
蛍光相互相関分光分析法(FCCS法)は、異なる蛍光信号間の相互相関関数を求めることにより、両者の関連性を解析する手法で、2色の蛍光色素で標識された分子間の相互作用の解析に用いられ、例えば非特許文献2、非特許文献3に詳述されている。同様の解析法に共焦点蛍光コインシデンス分析(CFCA法)があり、非特許文献4に詳述されている。
【0004】
ここで、例えば相互相関分光分析法(FCCS法)では、通常は光源と受光器がそれぞれ2つずつの構成で測定している。しかし、この方法(測定)では色分離フィルターで色分離を通常行うが、蛍光色素の蛍光スペクトルにクロストークが発生し、測定結果の精度が低下する。特許文献1は、励起光を交互に切り替えながらFCCS法を実施してクロストークを解消する手法を開示している。
【非特許文献1】「蛍光相関分光法による1分子検出」金城著、蛋白質核酸酵素、1999, vol. 44, N09 1431-1438
【非特許文献2】"Dual-Color Fluorescence Cross-Correlation Spectroscopy for Multicomponent Diffusional Analysis in Solution", Petra. Schwille et al, Biophysical Journal 1997, 72, 1878-1886
【非特許文献3】A dynamic view of cellular processes by in vivo fluorescence auto- and cross-correlation spectroscopy, Petra. Schwille et al, Methods 29 (2003) 74-85
【非特許文献4】Confocal fluorescence coincidence analysis (CFCA), Winkler et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96: 1375-1378, 1999
【特許文献1】特開2005−283264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によるスイッチングFCCS法は、クロストークを解消するが、特定の遅延時間帯(片方の蛍光強度が無い遅延時間帯)で蛍光強度データの抜けが生じる。このため、測定結果として得られる相関曲線の特定の遅延時間帯に欠損が生じ、結果的に測定結果の信頼性を低下させてしまう。
【0006】
本発明の目的は、スイッチングFCCS法を実施しつつも欠損のない相関曲線を取得し得る蛍光分光分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による蛍光分光分析装置は、波長の異なる複数の励起光を切り替えながら試料に照射する励起光照射部と、前記励起光の切り替えを時間経過とともに変化させる励起光制御部と、前記励起光の照射に応じて前記試料から発生する波長の異なる複数の蛍光を検出する蛍光検出部と、前記試料に照射される励起光の波長と前記蛍光検出部で検出される蛍光の強度とに基づいて相関分析を行なう演算部とを有している。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スイッチングFCCS法を実施しつつも欠損のない相関曲線を取得し得る蛍光分光分析装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態による蛍光分光分析装置を概略的に示している。図1に示されるように、蛍光分光分析装置100は、顕微鏡部110と励起光制御部130と蛍光検出部140と信号処理部150と演算部160とを有している。顕微鏡部110は、試料Sを支持するためのステージ112と、ステージ112の下方に配置された対物レンズ114と、励起光と蛍光を分離するダイクロイックミラー116と、試料Sに照射する励起光を発生させる励起光照射部120とを有している。励起光照射部120で発生した励起光は、ダイクロイックミラー116と対物レンズ114を介して試料Sに照射される。試料Sは、励起波長の異なる複数種類の蛍光色素を含んでいる。励起光照射部120は、波長の異なる励起光を切り替えながら試料に照射する。励起光照射部120から射出される励起光の波長は、それぞれ、試料Sに含まれる蛍光色素の励起波長に対応している。
【0011】
励起光制御部130は、波長の異なる励起光が時間をずらして排他的に試料Sに照射されるように励起光照射部120を制御する。従って、励起光照射部120は、波長の異なる励起光を試料Sの同一部位に所定のタイミングで繰り返し照射し得る。励起光制御部130はさらに、励起光の切り替えを時間経過とともに変化させるように励起光照射部120を制御する。このため励起光制御部130は、励起光操作信号生成部134と変化パターン生成部132とを有している。変化パターン生成部132は、各種パラメーターに対して、所定の値を常時出力する。各種パラメーターとは、時間経過とともに周期やデューティー比を変化させるようなパラメーターである。励起光操作信号生成部134は、変化パターン生成部132から入力される各種パラメーターの値に従って励起光操作信号を生成して励起光照射部120に出力する。励起光操作信号生成部134は、一般の任意信号発生器で構成してもよく、また、例えばFPGAを代表とするロジック回路構成で構成してもよい。
【0012】
蛍光検出部140は、試料Sから発生する蛍光を検出する。試料Sからは、波長の異なる励起光の照射に応じてそれぞれ異なる波長(波長帯域)の蛍光が発生する。蛍光検出部140は、異なる波長ごとに蛍光を分離して検出を行なう。
【0013】
信号処理部150は、蛍光検出部140で検出された蛍光の強度を反映した蛍光強度データを生成する。演算部160は、試料Sに照射される励起光の波長と蛍光検出部140で検出される蛍光の強度とに基づいて、異なる波長ごとの蛍光のゆらぎの相関分析を行なう。例えば、演算部160は、それぞれの蛍光に対応した蛍光検出部140からの出力信号同士の比較に基づいて、自己相関分析または相互相関分析または共焦点蛍光コインシデンス分析解析する。
【0014】
図2は、励起光照射部120の構成例を示している。この例では、励起光照射部120は、複数の光源と、対物レンズ(図1参照)と、複数のダイクロイックミラーを有している。複数の光源122a,122b,122c,・・・は、互いに波長の異なる励起光をそれぞれ発する。ダイクロイックミラー124a,124b,124c,・・・は、光源122a,122b,122c,・・・の発する励起光を、それぞれ対物レンズ114に向けて反射する。光源122a,122b,122c,・・・は連続的に駆動され、波長の異なる励起光をそれぞれ発し続ける。ダイクロイックミラー124a,124b,124c,・・・は、対応する光源122a,122b,122c,・・・以外の光源122a,122b,122c,・・・の発する励起光は透過する。励起光照射部120はさらに、透過帯域を制御可能な音響光学素子(AOTF)126を有している。ダイクロイックミラー124aとダイクロイックミラー116(図1参照)との間に配置されている。また、音響光学素子126は、励起光制御部130(図1参照)から供給される励起光操作信号に従って、光源122a,122b,122c,・・・の発する光のうちの1つを通過させる。これにより、波長の異なる励起光のうちから試料Sに照射する励起光を選択することができる。
【0015】
この構成において、光源122a,122b,122c,・・・は、こ単一の光源に置き換えられてもよい。この場合、単一の光源は、これらの光源が発する光の波長帯域の全てを含む光を発する。また、光源が単一の場合、ダイクロイックミラー124a,124b,124c,・・・は不要となる。
【0016】
図3は、励起光照射部120の別の構成例を示している。この例でも励起光照射部120は、複数の光源122a,122b,122c,・・・と、複数のダイクロイックミラー124a,124b,124c,・・・とを有している。光源122a,122b,122c,・・・とダイクロイックミラー124a,124b,124c,・・・の機能は図2の例と同様である。光源122a,122b,122c,・・・はオンオフ制御可能である。励起光照射部120はさらに、発光する光源122a,122b,122c,・・・を選択する切替器128を有している。切替器128は、図1の励起光制御部130から供給される励起光操作信号に従って、光源122a,122b,122c,・・・のいずれか一つを選択的にオンにし、残りをオフにする。これにより、光源122a,122b,122c,・・・の発する波長の異なる励起光から試料Sに照射する励起光を選択する。
【0017】
図4は、蛍光検出部140の構成例を示している。蛍光検出部140は、複数のビームスプリッター142a,142b,142c,・・・と、複数の蛍光フィルター144a,144b,144c,・・・と、複数の受光素子146a,146b,146c,・・・とを有している。複数のビームスプリッター142a,142b,142c,・・・は、顕微鏡部110から入射する蛍光を分割する。なお複数のビームスプリッター142a,142b,142c,・・・に変えて、ダイクロイックミラを用いると光の利用効率を高めることができる。複数の蛍光フィルター144a,144b,144c,・・・は、ビームスプリッター142a,142b,142c,・・・で分割された蛍光から特定の蛍光を選択的に透過する複数の受光素子146a,146b,146c,・・・は、蛍光フィルター144a,144b,144c,・・・を透過した蛍光をそれぞれ検出する。蛍光フィルター144a,144b,144c,・・・はそれぞれ異なる透過帯域を有し、試料Sから発する複数の蛍光の一つを選択的に透過する。受光素子146a,146b,146c,・・・は、それぞれ、蛍光フィルター144a,144b,144c,・・・の透過帯域に対応する波長帯域の光を受光する。
【0018】
この構成において、複数の受光素子146a,146b,146c,・・・は、単一の受光素子に置き換えられてもよい。この場合、ビームスプリッター142a,142b,142c,・・・は不要となる。また、蛍光フィルター144a,144b,144c,・・・は、励起光の切り替えに応じて、対応する傾向蛍光フィルターが光路中に挿入されるようにしておけばよい。
【0019】
以下、図5のフローチャートを参照しながら、本実施形態の蛍光分光分析装置の動作について説明する。続く説明では、説明を簡単にするため、二つの励起光(第1励起光と第2励起光)を切り替える例について述べる。
【0020】
励起光制御部130による励起光操作信号の生成に先立って、励起光の切り替えを時間経過とともに変化させるために、励起光切り替えタイミングを設定しておく。
【0021】
変化パターン生成部132は、設定された励起光切り替えタイミングに基づいて、時間経過とともに周期やデューティー比が変化するようなパラメーターについて、所定の値を常時出力する。励起光操作信号生成部134は、変化パターン生成部132から入力されるパラメーターの値に従って励起光操作信号を生成し、これを励起光照射部120に出力する。
【0022】
励起光操作信号は、図6に示されるように、「0」と「1」の二値信号である。励起光照射部120が図2の構成の場合、音響光学素子126は、励起光操作信号が「0」のときに第1励起光を選択的に透過し、励起光操作信号が「1」のときに第2励起光を選択的に透過する。また、励起光照射部120が図3の構成の場合、切替器128は、励起光操作信号が「0」のときに第1励起光を発する第1光源122aを選択的にオンし、励起光操作信号が「1」のときに第2励起光を発する第2光源122bを選択的にオンにする。その結果、試料Sに照射される励起光は、図7に示されるように、第1励起光と第2励起光が交互に切り替わるものとなる。
【0023】
さらに励起光操作信号は、例えば、図6に示されるように、互いに周期が異なるブロック1とブロック2とを繰り返したものとなっている。これにより、励起光照射部120は、第1励起光と第2励起光の切り替え周期をブロックごとに変えながら、第1励起光と第2励起光を切り替える。ここでは、励起光操作信号は、2つのブロックの繰り返しになっているが、周期がそれぞれ異なる3つ以上のブロックの繰り返してであってもよい。つまり、励起光操作信号は、一定の時間間隔のブロックごとに、その周期が異なっている。これにより、励起光制御部130は、一定の時間間隔のブロックごとに、励起光の切り替えの周期を変更する。
【0024】
励起光の照射に応じて試料Sから蛍光が発生する。第1受光素子146aは、第1励起光の照射に応じて試料Sから発生する第1蛍光を検出し、図7に示される第1蛍光検出信号を信号処理部150に出力する。第2受光素子146bは、第2励起光の照射に応じて試料Sから発生する第2蛍光を検出し、図7に示される第2蛍光検出信号を信号処理部150に出力する。
【0025】
信号処理部150には、蛍光検出部140の第1受光素子146aと第2受光素子146bから、それぞれ第1蛍光検出信号と第2蛍光検出信号が供給される。信号処理部150は、供給された第1蛍光検出信号と第2蛍光検出信号を一定時間ごとの蛍光強度信号に変換し、その蛍光強度信号と励起光制御信号を最適な形で組み合わせて演算用データを生成し、これを演算部160に出力する。
【0026】
演算部160は、信号処理部150から供給される演算用データに基づいて、自己相関分析または相互相関分析または共焦点蛍光コインシデンス分析を実施する。
【0027】
スイッチングFCCSにおいて、波長の異なる複数の励起光を一定の周期で切り替えて測定した場合、蛍光色素が励起されていない間は、その蛍光色素に対応する蛍光強度データが欠損する。このような部分的にデータ欠損のある蛍光強度データに基づいて相関演算を行なうと、相関演算によって得られる相関曲線には欠損区間が生じる。例えば、常に図7中のブロック1の周期T1で、第1励起光と第2励起光を切り替えながら測定をおこなったとする。この場合、測定によって取得された蛍光強度データに基づいて相関分析を行なうと、図8の上段に示すように、相関曲線に欠損区間が生じる。また、常に図7中のブロック2の周期T2で、第1励起光と第2励起光を切り替えながら測定を行なったとする。この場合、測定によって取得された蛍光強度データに基づいて相関分析を行なうと、やはり、図8の中段に示すように、相関曲線に欠損区間が生じる。図8では、周期T2による相関曲線の不連続区間が、周期T1による相関曲線の連続区間に一致している。しかしながら、実際は、周期T1による相関曲線の連続区間の中のごく一部に、不連続区間が一致することになる。
【0028】
そこで、本実施形態では、励起光の切り替えを時間経過とともに変化させながら測定を行なっている。具体的には、一定時間間隔のブロックごとに周期を変えつつ、第1励起光と第2励起光を切り替えながら相関分析を行なっている。これにより、図8の下段に示すように、蛍光強度データの欠損に起因する欠損区間のない相関曲線が得られる。
【0029】
以下、一定の周期で複数の励起光を切り替えるスイッチングFCCSにおけるデータ欠損が発生するメカニズムについて図12〜図22を参照しながら説明する。続く説明では、説明を簡単にするため、2つの励起光(第1励起光と第2励起光)を切り替える例について述べる。3つ以上の励起光を切り替えるスイッチングFCCSにおいてもデータ欠損の発生メカニズムは同様である。
【0030】
FCCSでは、遅延時間ごとに2つの蛍光強度データ(第1蛍光強度データと第2蛍光強度データ)を積和演算する。スイッチングFCCSでは、2つの励起光が遅延時間を挟んで照射されている場合の積和演算のみを実施するが、励起光切り替え周期の倍数の遅延時間ごとに、積和演算データが存在しない部分が生じる。また、実際には励起光切り替え間際のデータを無効とするので、積和演算データの生じない遅延時間範囲はさらに拡大する。遅延時間を横軸に取ったグラフにおいてはこの遅延時間範囲ではデータの欠損が生じることになる。
【0031】
図12〜図16は、さまざまな遅延時間における積和演算の蛍光強度データの組み合わせと積和演算実施の結果とを示している。図中、sは有効な蛍光強度データがあることを示し、oは有効な蛍光強度データ間の積和演算により有効な演算結果が得られていることを示し、xは有効な蛍光強度データがないか、または有効な演算結果がないことを示している。
【0032】
図17と図18は、さまざまな遅延時間における積和演算の蛍光強度データの組み合わせと積和演算実施の結果とを示している。図12〜図16に示した積和演算は、図17と図18に示すように、第1蛍光強度データを1つずつ右にずらしながら縦の列で積和演算することと等価である。
【0033】
図19は、図17と図18に示した積和演算結果の一覧と積和演算データのグラフを示している。積和演算データ数sは、τ=0では0、τ=τ0では2、τ=2τ0では4と、遅延時間が大きくなるにつれて増えていき、τ=8τ0では最大の16となる。その後は、τ=9τ0では14、τ=10τ0では12と、遅延時間が大きくなるにつれて減っていき、τ=16τ0では再び0となる。その後は、τ=17τ0では1、τ=18τ0では2と、遅延時間が大きくなるにつれて増えていき、τ=24τ0では8となる。その後は、τ=25τ0では7、τ=26τ0では6と、遅延時間が大きくなるにつれて減っていき、τ=32τ0で0となり、その後は常に0となる。
【0034】
図20と図21は、図17と図18に示した蛍光強度データ(data1)のサンプリング周期の1/2のサンプリング周期で取得した蛍光強度データ(data2)において、さまざまな遅延時間における積和演算の蛍光強度データの組み合わせと積和演算実施の結果とを示している。
【0035】
図22は、図20と図21に示した積和演算結果の一覧と積和演算データ(data2)のグラフを、図19に示した積和演算データ(data2)のグラフとともに示している。積和演算データ数sは、τ=0では0、τ=τ0では5、τ=2τ0では10と、遅延時間が大きくなるにつれて増えていき、τ=4τ0では最大の20となる。その後は、τ=5τ0では15、τ=6τ0では10と、遅延時間が大きくなるにつれて減っていき、τ=8τ0では再び0となる。その後は、τ=9τ0では4、τ=10τ0では8と、遅延時間が大きくなるにつれて増えていき、τ=12τ0では16となる。その後は、τ=13τ0では12、τ=14τ0では8と、遅延時間が大きくなるにつれて減っていき、τ=16τ0で0となる。その後も同様に、遅延時間が大きくなるにつれて増加と減少を繰り返す。
【0036】
data1とdata2では、共にデータの欠損が生じている。相互相関の計算では、計算の対象となるデータは、遅延時間相当分の2つのデータである。この2つのデータの片方が無効区間(上述の励起光切り替え間際のデータを無効とする区間)にあるとき、その計算値は相互相関演算の対象外として無視する。その結果、データの欠損が発生する。
【0037】
図22において、data1とdata2を比べて分かるように、τ=8τ0においてdata2にはデータ欠損があるが、data1にはデータ欠損がない。従って、data2のデータ欠損はdata1を用いて補填することができる。しかし、この例では、data2のサンプリング周期がdata1のサンプリング周期の1/2なので、τ=16τ0においてdata1とdata2の両方にデータ欠損がある。このため、τ=16τ0におけるデータ欠損はdata1とdata2を組み合わせても補填できない。
【0038】
しかし、例えばdata2のサンプリング周期をdata1のサンプリング周期の1/3にすれば、data1にデータ欠損が生じるτ=16τ0においてdata2のデータは存在する。したがって、data2を用いてdata1のτ=16τ0におけるデータの欠損を補填することができる。
【0039】
欠損を補填できる条件の例としては、(1)一方の蛍光強度データのサンプリング周波数が他方の蛍光強度データのサンプリング周波数の整数倍でないこと、(2)データの欠損部分が重ならないように2つの蛍光強度データのサンプリング周波数の比が適度に大きいこと、が挙げられる。なお、(2)については、互いの遅延時間がデータの無効区間を補填しうる適度な比である、ということができる。
【0040】
つまり、同じ遅延時間帯にdata1とdata2の両方にデータ欠損が生じないように各ブロック内での励起光の切り替えの周期を調整すれば、data1とdata2のデータ欠損を相互に補填することができる。これにより、スイッチングFCCS法を実施しつつも欠損区間のない相関曲線を取得することができる。
【0041】
[励起光操作信号の変形例]
図9は、図6に示した励起光操作信号に代替可能な別の励起光操作信号を示している。励起光操作信号は、例えば、図9に示されるように、周期が時間経過とともに変化するブロックを繰り返したものとなっている。これにより、励起光照射部120は、各ブロックにおいて第1励起光と第2励起光の切り替えの各回の周期を変えながら、第1励起光と第2励起光を切り替える。図9の例では、周期が徐々に減少しているが、周期の変化の仕方は、これに限定されるものではなく、一定の時間間隔のブロック内で周期が変化していればよい。また、周期の変化の仕方は、各ブロックで同じであるが、これに限らず、ブロックごとに異なっていてもよい。つまり、励起光操作信号は、一定の時間間隔の各ブロックにおいて、その周期が時間経過とともに変化している。これにより、励起光制御部130は、一定の時間間隔の各ブロックにおいて、励起光の切り替えの周期を時間経過とともに変更している。この場合も、二つの蛍光強度データの両方に同じ遅延時間帯に欠損が生じないように各ブロック内での励起光の切り替えの周期の変化を調整すれば、データ欠損を互いに補填することができる。これにより、スイッチングFCCS法を実施しつつも欠損区間のない相関曲線を取得することができる。
【0042】
図10は、図6に示した励起光操作信号に代替可能なまた別の励起光操作信号を示している。励起光操作信号は、例えば、図10に示されるように、デューティー比がそれぞれ異なるブロック1とブロック2とブロック3とを繰り返したものとなっている。これにより、励起光照射部120は、ブロックごとに第1励起光と第2励起光の照射時間の割合を変えながら、第1励起光と第2励起光を切り替える。ここでは、励起光操作信号は、3つのブロックの繰り返しになっているが、デューティー比がそれぞれ異なる2つまたは4つ以上のブロックの繰り返してであってもよい。つまり、励起光操作信号は、一定の時間間隔のブロックごとに、そのデューティー比が異なっている。これにより、励起光制御部130は、一定の時間間隔のブロックごとに、励起光の切り替えのデューティー比を変更している。この場合も、二つの蛍光強度データの両方に同じ遅延時間帯に欠損が生じないように各ブロックの励起光の切り替えのデューティー比を調整すれば、データ欠損を互いに補填することができる。これにより、スイッチングFCCS法を実施しつつも欠損区間のない相関曲線を取得することができる。
【0043】
図11は、図6に示した励起光操作信号に代替可能なさらに別の励起光操作信号を示している。励起光操作信号は、例えば、図11に示されるように、デューティー比が時間経過とともに変化するブロックを繰り返したものとなっている。これにより、励起光照射部120は、各ブロックにおいて第1励起光と第2励起光の切り替えの各回における第1励起光と第2励起光の照射時間の割合を変えながら、第1励起光と第2励起光を切り替える。図11の例では、デューティー比が一方向に(「1」が減少するように)変化しているが、デューティー比の変化の仕方は、これに限定されるものではなく、一定の時間間隔のブロック内でデューティー比が変化していればよい。また、デューティー比の変化の仕方は、各ブロックで同じであるが、これに限らず、ブロックごとに異なっていてもよい。つまり、励起光操作信号は、一定の時間間隔の各ブロックにおいて、そのデューティー比が時間経過とともに変化している。これにより、励起光制御部130は、一定の時間間隔の各ブロックにおいて、励起光の切り替えのデューティー比を時間経過とともに変更している。この場合も、二つの蛍光強度データの両方に同じ遅延時間帯に欠損が生じないように各ブロック内での励起光の切り替えのデューティー比の変化を調整すれば、データ欠損を互いに補填することができる。これにより、スイッチングFCCS法を実施しつつも欠損区間のない相関曲線を取得することができる。
【0044】
さらに、励起光操作信号は、図6と図10の組み合わせとして、周期とデューティー比がそれぞれ異なる複数のブロックを繰り返したものであってもよい。この場合、励起光照射部120は、ブロックごとに第1励起光と第2励起光の切り替え周期と第1励起光と第2励起光の照射時間の割合とを変えながら、第1励起光と第2励起光を切り替える。つまり、励起光制御部130は、一定の時間間隔のブロックごとに、励起光の切り替えの周期とデューティー比を変更する。また、図9と図11の組み合わせとして、周期とデューティー比が時間経過とともに変化するブロックを繰り返したものであってもよい。この場合、励起光照射部120は、各ブロックにおいて、第1励起光と第2励起光の切り替えの各回の周期と、切り替えの各回における第1励起光と第2励起光の照射時間の割合とを変えながら、第1励起光と第2励起光を切り替える。つまり、励起光制御部130は、一定の時間間隔の各ブロックにおいて、励起光の切り替えの周期とデューティー比を時間経過とともに変更する。
【0045】
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態による蛍光分光分析装置を概略的に示している。
【図2】図1に示した励起光照射部の構成例を示している。
【図3】図1に示した励起光照射部の別の構成例を示している。
【図4】図1に示した蛍光検出部の構成例を示している。
【図5】図1に示した蛍光分光分析装置の動作のフローチャートを示している。
【図6】励起光操作信号を示している。
【図7】図1に示した蛍光分光分析装置における信号のタイムチャートを示している。
【図8】周期T1による相関曲線と、周期T2による相関曲線と、周期T1と周期T2の切り替えによる相関曲線とを示している。
【図9】図6に示した励起光操作信号に代替可能な別の励起光操作信号を示している。
【図10】図6に示した励起光操作信号に代替可能なまた別の励起光操作信号を示している。
【図11】図6に示した励起光操作信号に代替可能なさらに別の励起光操作信号を示している。
【図12】τ=0とτ=τ0とτ=2τ0の遅延時間における積和演算の蛍光強度データの組み合わせと積和演算実施の結果とを示している。
【図13】τ=3τ0とτ=7τ0とτ=8τ0の遅延時間における積和演算の蛍光強度データの組み合わせと積和演算実施の結果とを示している。
【図14】τ=9τ0とτ=13τ0とτ=14τ0の遅延時間における積和演算の蛍光強度データの組み合わせと積和演算実施の結果とを示している。
【図15】τ=15τ0とτ=16τ0とτ=17τ0の遅延時間における積和演算の蛍光強度データの組み合わせと積和演算実施の結果とを示している。
【図16】τ=18τ0とτ=19τ0の遅延時間における積和演算の蛍光強度データの組み合わせと積和演算実施の結果とを示している。
【図17】τ=0とτ=τ0とτ=2τ0とτ=3τ0とτ=6τ0とτ=7τ0とτ=8τ0の遅延時間における積和演算の蛍光強度データの組み合わせと積和演算実施の結果とを示している。
【図18】τ=9τ0とτ=10τ0とτ=15τ0とτ=16τ0とτ=17τ0とτ=24τ0とτ=32τ0の遅延時間における積和演算の蛍光強度データの組み合わせと積和演算実施の結果とを示している。
【図19】図17と図18に示した積和演算結果の一覧と積和演算データのグラフを示している。
【図20】図17と図18に示した蛍光強度データのサンプリング周期の1/2のサンプリング周期で取得した蛍光強度データにおいて、τ=0とτ=τ0とτ=2τ0とτ=3τ0とτ=4τ0とτ=5τ0とτ=6τ0の遅延時間における積和演算の蛍光強度データの組み合わせと積和演算実施の結果とを示している。
【図21】図17と図18に示した蛍光強度データのサンプリング周期の1/2のサンプリング周期で取得した蛍光強度データにおいて、τ=7τ0とτ=8τ0とτ=9τ0とτ=10τ0とτ=14τ0とτ=15τ0とτ=16τ0の遅延時間における積和演算の蛍光強度データの組み合わせと積和演算実施の結果とを示している。
【図22】図20と図21に示した積和演算結果の一覧と積和演算データのグラフを、図19に示した積和演算データのグラフとともに示している。
【符号の説明】
【0047】
100…蛍光分光分析装置、110…顕微鏡部、112…ステージ、114…対物レンズ、116…ダイクロイックミラー、120…励起光照射部、122a,122b,122c…光源、124a,124b,124c…ダイクロイックミラー、126…音響光学素子、128…切替器、130…励起光制御部、132…変化パターン生成部、134…励起光操作信号生成部、140…蛍光検出部、142a,142b,142c…ビームスプリッター、144a,144b,144c…蛍光フィルター、146a,146b,146c…受光素子、150…信号処理部、160…演算部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光分光分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光相関分光分析法(FCS法)は、顕微鏡視野の微小観測領域内で蛍光分子のブラウン運動が作り出す光の揺らぎを解析することにより、蛍光強度の自己相関関数を求め、分子の並進拡散時間や平均分子数を解析する手法であり、例えば非特許文献1に記載されている。
【0003】
蛍光相互相関分光分析法(FCCS法)は、異なる蛍光信号間の相互相関関数を求めることにより、両者の関連性を解析する手法で、2色の蛍光色素で標識された分子間の相互作用の解析に用いられ、例えば非特許文献2、非特許文献3に詳述されている。同様の解析法に共焦点蛍光コインシデンス分析(CFCA法)があり、非特許文献4に詳述されている。
【0004】
ここで、例えば相互相関分光分析法(FCCS法)では、通常は光源と受光器がそれぞれ2つずつの構成で測定している。しかし、この方法(測定)では色分離フィルターで色分離を通常行うが、蛍光色素の蛍光スペクトルにクロストークが発生し、測定結果の精度が低下する。特許文献1は、励起光を交互に切り替えながらFCCS法を実施してクロストークを解消する手法を開示している。
【非特許文献1】「蛍光相関分光法による1分子検出」金城著、蛋白質核酸酵素、1999, vol. 44, N09 1431-1438
【非特許文献2】"Dual-Color Fluorescence Cross-Correlation Spectroscopy for Multicomponent Diffusional Analysis in Solution", Petra. Schwille et al, Biophysical Journal 1997, 72, 1878-1886
【非特許文献3】A dynamic view of cellular processes by in vivo fluorescence auto- and cross-correlation spectroscopy, Petra. Schwille et al, Methods 29 (2003) 74-85
【非特許文献4】Confocal fluorescence coincidence analysis (CFCA), Winkler et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96: 1375-1378, 1999
【特許文献1】特開2005−283264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によるスイッチングFCCS法は、クロストークを解消するが、特定の遅延時間帯(片方の蛍光強度が無い遅延時間帯)で蛍光強度データの抜けが生じる。このため、測定結果として得られる相関曲線の特定の遅延時間帯に欠損が生じ、結果的に測定結果の信頼性を低下させてしまう。
【0006】
本発明の目的は、スイッチングFCCS法を実施しつつも欠損のない相関曲線を取得し得る蛍光分光分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による蛍光分光分析装置は、波長の異なる複数の励起光を切り替えながら試料に照射する励起光照射部と、前記励起光の切り替えを時間経過とともに変化させる励起光制御部と、前記励起光の照射に応じて前記試料から発生する波長の異なる複数の蛍光を検出する蛍光検出部と、前記試料に照射される励起光の波長と前記蛍光検出部で検出される蛍光の強度とに基づいて相関分析を行なう演算部とを有している。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スイッチングFCCS法を実施しつつも欠損のない相関曲線を取得し得る蛍光分光分析装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態による蛍光分光分析装置を概略的に示している。図1に示されるように、蛍光分光分析装置100は、顕微鏡部110と励起光制御部130と蛍光検出部140と信号処理部150と演算部160とを有している。顕微鏡部110は、試料Sを支持するためのステージ112と、ステージ112の下方に配置された対物レンズ114と、励起光と蛍光を分離するダイクロイックミラー116と、試料Sに照射する励起光を発生させる励起光照射部120とを有している。励起光照射部120で発生した励起光は、ダイクロイックミラー116と対物レンズ114を介して試料Sに照射される。試料Sは、励起波長の異なる複数種類の蛍光色素を含んでいる。励起光照射部120は、波長の異なる励起光を切り替えながら試料に照射する。励起光照射部120から射出される励起光の波長は、それぞれ、試料Sに含まれる蛍光色素の励起波長に対応している。
【0011】
励起光制御部130は、波長の異なる励起光が時間をずらして排他的に試料Sに照射されるように励起光照射部120を制御する。従って、励起光照射部120は、波長の異なる励起光を試料Sの同一部位に所定のタイミングで繰り返し照射し得る。励起光制御部130はさらに、励起光の切り替えを時間経過とともに変化させるように励起光照射部120を制御する。このため励起光制御部130は、励起光操作信号生成部134と変化パターン生成部132とを有している。変化パターン生成部132は、各種パラメーターに対して、所定の値を常時出力する。各種パラメーターとは、時間経過とともに周期やデューティー比を変化させるようなパラメーターである。励起光操作信号生成部134は、変化パターン生成部132から入力される各種パラメーターの値に従って励起光操作信号を生成して励起光照射部120に出力する。励起光操作信号生成部134は、一般の任意信号発生器で構成してもよく、また、例えばFPGAを代表とするロジック回路構成で構成してもよい。
【0012】
蛍光検出部140は、試料Sから発生する蛍光を検出する。試料Sからは、波長の異なる励起光の照射に応じてそれぞれ異なる波長(波長帯域)の蛍光が発生する。蛍光検出部140は、異なる波長ごとに蛍光を分離して検出を行なう。
【0013】
信号処理部150は、蛍光検出部140で検出された蛍光の強度を反映した蛍光強度データを生成する。演算部160は、試料Sに照射される励起光の波長と蛍光検出部140で検出される蛍光の強度とに基づいて、異なる波長ごとの蛍光のゆらぎの相関分析を行なう。例えば、演算部160は、それぞれの蛍光に対応した蛍光検出部140からの出力信号同士の比較に基づいて、自己相関分析または相互相関分析または共焦点蛍光コインシデンス分析解析する。
【0014】
図2は、励起光照射部120の構成例を示している。この例では、励起光照射部120は、複数の光源と、対物レンズ(図1参照)と、複数のダイクロイックミラーを有している。複数の光源122a,122b,122c,・・・は、互いに波長の異なる励起光をそれぞれ発する。ダイクロイックミラー124a,124b,124c,・・・は、光源122a,122b,122c,・・・の発する励起光を、それぞれ対物レンズ114に向けて反射する。光源122a,122b,122c,・・・は連続的に駆動され、波長の異なる励起光をそれぞれ発し続ける。ダイクロイックミラー124a,124b,124c,・・・は、対応する光源122a,122b,122c,・・・以外の光源122a,122b,122c,・・・の発する励起光は透過する。励起光照射部120はさらに、透過帯域を制御可能な音響光学素子(AOTF)126を有している。ダイクロイックミラー124aとダイクロイックミラー116(図1参照)との間に配置されている。また、音響光学素子126は、励起光制御部130(図1参照)から供給される励起光操作信号に従って、光源122a,122b,122c,・・・の発する光のうちの1つを通過させる。これにより、波長の異なる励起光のうちから試料Sに照射する励起光を選択することができる。
【0015】
この構成において、光源122a,122b,122c,・・・は、こ単一の光源に置き換えられてもよい。この場合、単一の光源は、これらの光源が発する光の波長帯域の全てを含む光を発する。また、光源が単一の場合、ダイクロイックミラー124a,124b,124c,・・・は不要となる。
【0016】
図3は、励起光照射部120の別の構成例を示している。この例でも励起光照射部120は、複数の光源122a,122b,122c,・・・と、複数のダイクロイックミラー124a,124b,124c,・・・とを有している。光源122a,122b,122c,・・・とダイクロイックミラー124a,124b,124c,・・・の機能は図2の例と同様である。光源122a,122b,122c,・・・はオンオフ制御可能である。励起光照射部120はさらに、発光する光源122a,122b,122c,・・・を選択する切替器128を有している。切替器128は、図1の励起光制御部130から供給される励起光操作信号に従って、光源122a,122b,122c,・・・のいずれか一つを選択的にオンにし、残りをオフにする。これにより、光源122a,122b,122c,・・・の発する波長の異なる励起光から試料Sに照射する励起光を選択する。
【0017】
図4は、蛍光検出部140の構成例を示している。蛍光検出部140は、複数のビームスプリッター142a,142b,142c,・・・と、複数の蛍光フィルター144a,144b,144c,・・・と、複数の受光素子146a,146b,146c,・・・とを有している。複数のビームスプリッター142a,142b,142c,・・・は、顕微鏡部110から入射する蛍光を分割する。なお複数のビームスプリッター142a,142b,142c,・・・に変えて、ダイクロイックミラを用いると光の利用効率を高めることができる。複数の蛍光フィルター144a,144b,144c,・・・は、ビームスプリッター142a,142b,142c,・・・で分割された蛍光から特定の蛍光を選択的に透過する複数の受光素子146a,146b,146c,・・・は、蛍光フィルター144a,144b,144c,・・・を透過した蛍光をそれぞれ検出する。蛍光フィルター144a,144b,144c,・・・はそれぞれ異なる透過帯域を有し、試料Sから発する複数の蛍光の一つを選択的に透過する。受光素子146a,146b,146c,・・・は、それぞれ、蛍光フィルター144a,144b,144c,・・・の透過帯域に対応する波長帯域の光を受光する。
【0018】
この構成において、複数の受光素子146a,146b,146c,・・・は、単一の受光素子に置き換えられてもよい。この場合、ビームスプリッター142a,142b,142c,・・・は不要となる。また、蛍光フィルター144a,144b,144c,・・・は、励起光の切り替えに応じて、対応する傾向蛍光フィルターが光路中に挿入されるようにしておけばよい。
【0019】
以下、図5のフローチャートを参照しながら、本実施形態の蛍光分光分析装置の動作について説明する。続く説明では、説明を簡単にするため、二つの励起光(第1励起光と第2励起光)を切り替える例について述べる。
【0020】
励起光制御部130による励起光操作信号の生成に先立って、励起光の切り替えを時間経過とともに変化させるために、励起光切り替えタイミングを設定しておく。
【0021】
変化パターン生成部132は、設定された励起光切り替えタイミングに基づいて、時間経過とともに周期やデューティー比が変化するようなパラメーターについて、所定の値を常時出力する。励起光操作信号生成部134は、変化パターン生成部132から入力されるパラメーターの値に従って励起光操作信号を生成し、これを励起光照射部120に出力する。
【0022】
励起光操作信号は、図6に示されるように、「0」と「1」の二値信号である。励起光照射部120が図2の構成の場合、音響光学素子126は、励起光操作信号が「0」のときに第1励起光を選択的に透過し、励起光操作信号が「1」のときに第2励起光を選択的に透過する。また、励起光照射部120が図3の構成の場合、切替器128は、励起光操作信号が「0」のときに第1励起光を発する第1光源122aを選択的にオンし、励起光操作信号が「1」のときに第2励起光を発する第2光源122bを選択的にオンにする。その結果、試料Sに照射される励起光は、図7に示されるように、第1励起光と第2励起光が交互に切り替わるものとなる。
【0023】
さらに励起光操作信号は、例えば、図6に示されるように、互いに周期が異なるブロック1とブロック2とを繰り返したものとなっている。これにより、励起光照射部120は、第1励起光と第2励起光の切り替え周期をブロックごとに変えながら、第1励起光と第2励起光を切り替える。ここでは、励起光操作信号は、2つのブロックの繰り返しになっているが、周期がそれぞれ異なる3つ以上のブロックの繰り返してであってもよい。つまり、励起光操作信号は、一定の時間間隔のブロックごとに、その周期が異なっている。これにより、励起光制御部130は、一定の時間間隔のブロックごとに、励起光の切り替えの周期を変更する。
【0024】
励起光の照射に応じて試料Sから蛍光が発生する。第1受光素子146aは、第1励起光の照射に応じて試料Sから発生する第1蛍光を検出し、図7に示される第1蛍光検出信号を信号処理部150に出力する。第2受光素子146bは、第2励起光の照射に応じて試料Sから発生する第2蛍光を検出し、図7に示される第2蛍光検出信号を信号処理部150に出力する。
【0025】
信号処理部150には、蛍光検出部140の第1受光素子146aと第2受光素子146bから、それぞれ第1蛍光検出信号と第2蛍光検出信号が供給される。信号処理部150は、供給された第1蛍光検出信号と第2蛍光検出信号を一定時間ごとの蛍光強度信号に変換し、その蛍光強度信号と励起光制御信号を最適な形で組み合わせて演算用データを生成し、これを演算部160に出力する。
【0026】
演算部160は、信号処理部150から供給される演算用データに基づいて、自己相関分析または相互相関分析または共焦点蛍光コインシデンス分析を実施する。
【0027】
スイッチングFCCSにおいて、波長の異なる複数の励起光を一定の周期で切り替えて測定した場合、蛍光色素が励起されていない間は、その蛍光色素に対応する蛍光強度データが欠損する。このような部分的にデータ欠損のある蛍光強度データに基づいて相関演算を行なうと、相関演算によって得られる相関曲線には欠損区間が生じる。例えば、常に図7中のブロック1の周期T1で、第1励起光と第2励起光を切り替えながら測定をおこなったとする。この場合、測定によって取得された蛍光強度データに基づいて相関分析を行なうと、図8の上段に示すように、相関曲線に欠損区間が生じる。また、常に図7中のブロック2の周期T2で、第1励起光と第2励起光を切り替えながら測定を行なったとする。この場合、測定によって取得された蛍光強度データに基づいて相関分析を行なうと、やはり、図8の中段に示すように、相関曲線に欠損区間が生じる。図8では、周期T2による相関曲線の不連続区間が、周期T1による相関曲線の連続区間に一致している。しかしながら、実際は、周期T1による相関曲線の連続区間の中のごく一部に、不連続区間が一致することになる。
【0028】
そこで、本実施形態では、励起光の切り替えを時間経過とともに変化させながら測定を行なっている。具体的には、一定時間間隔のブロックごとに周期を変えつつ、第1励起光と第2励起光を切り替えながら相関分析を行なっている。これにより、図8の下段に示すように、蛍光強度データの欠損に起因する欠損区間のない相関曲線が得られる。
【0029】
以下、一定の周期で複数の励起光を切り替えるスイッチングFCCSにおけるデータ欠損が発生するメカニズムについて図12〜図22を参照しながら説明する。続く説明では、説明を簡単にするため、2つの励起光(第1励起光と第2励起光)を切り替える例について述べる。3つ以上の励起光を切り替えるスイッチングFCCSにおいてもデータ欠損の発生メカニズムは同様である。
【0030】
FCCSでは、遅延時間ごとに2つの蛍光強度データ(第1蛍光強度データと第2蛍光強度データ)を積和演算する。スイッチングFCCSでは、2つの励起光が遅延時間を挟んで照射されている場合の積和演算のみを実施するが、励起光切り替え周期の倍数の遅延時間ごとに、積和演算データが存在しない部分が生じる。また、実際には励起光切り替え間際のデータを無効とするので、積和演算データの生じない遅延時間範囲はさらに拡大する。遅延時間を横軸に取ったグラフにおいてはこの遅延時間範囲ではデータの欠損が生じることになる。
【0031】
図12〜図16は、さまざまな遅延時間における積和演算の蛍光強度データの組み合わせと積和演算実施の結果とを示している。図中、sは有効な蛍光強度データがあることを示し、oは有効な蛍光強度データ間の積和演算により有効な演算結果が得られていることを示し、xは有効な蛍光強度データがないか、または有効な演算結果がないことを示している。
【0032】
図17と図18は、さまざまな遅延時間における積和演算の蛍光強度データの組み合わせと積和演算実施の結果とを示している。図12〜図16に示した積和演算は、図17と図18に示すように、第1蛍光強度データを1つずつ右にずらしながら縦の列で積和演算することと等価である。
【0033】
図19は、図17と図18に示した積和演算結果の一覧と積和演算データのグラフを示している。積和演算データ数sは、τ=0では0、τ=τ0では2、τ=2τ0では4と、遅延時間が大きくなるにつれて増えていき、τ=8τ0では最大の16となる。その後は、τ=9τ0では14、τ=10τ0では12と、遅延時間が大きくなるにつれて減っていき、τ=16τ0では再び0となる。その後は、τ=17τ0では1、τ=18τ0では2と、遅延時間が大きくなるにつれて増えていき、τ=24τ0では8となる。その後は、τ=25τ0では7、τ=26τ0では6と、遅延時間が大きくなるにつれて減っていき、τ=32τ0で0となり、その後は常に0となる。
【0034】
図20と図21は、図17と図18に示した蛍光強度データ(data1)のサンプリング周期の1/2のサンプリング周期で取得した蛍光強度データ(data2)において、さまざまな遅延時間における積和演算の蛍光強度データの組み合わせと積和演算実施の結果とを示している。
【0035】
図22は、図20と図21に示した積和演算結果の一覧と積和演算データ(data2)のグラフを、図19に示した積和演算データ(data2)のグラフとともに示している。積和演算データ数sは、τ=0では0、τ=τ0では5、τ=2τ0では10と、遅延時間が大きくなるにつれて増えていき、τ=4τ0では最大の20となる。その後は、τ=5τ0では15、τ=6τ0では10と、遅延時間が大きくなるにつれて減っていき、τ=8τ0では再び0となる。その後は、τ=9τ0では4、τ=10τ0では8と、遅延時間が大きくなるにつれて増えていき、τ=12τ0では16となる。その後は、τ=13τ0では12、τ=14τ0では8と、遅延時間が大きくなるにつれて減っていき、τ=16τ0で0となる。その後も同様に、遅延時間が大きくなるにつれて増加と減少を繰り返す。
【0036】
data1とdata2では、共にデータの欠損が生じている。相互相関の計算では、計算の対象となるデータは、遅延時間相当分の2つのデータである。この2つのデータの片方が無効区間(上述の励起光切り替え間際のデータを無効とする区間)にあるとき、その計算値は相互相関演算の対象外として無視する。その結果、データの欠損が発生する。
【0037】
図22において、data1とdata2を比べて分かるように、τ=8τ0においてdata2にはデータ欠損があるが、data1にはデータ欠損がない。従って、data2のデータ欠損はdata1を用いて補填することができる。しかし、この例では、data2のサンプリング周期がdata1のサンプリング周期の1/2なので、τ=16τ0においてdata1とdata2の両方にデータ欠損がある。このため、τ=16τ0におけるデータ欠損はdata1とdata2を組み合わせても補填できない。
【0038】
しかし、例えばdata2のサンプリング周期をdata1のサンプリング周期の1/3にすれば、data1にデータ欠損が生じるτ=16τ0においてdata2のデータは存在する。したがって、data2を用いてdata1のτ=16τ0におけるデータの欠損を補填することができる。
【0039】
欠損を補填できる条件の例としては、(1)一方の蛍光強度データのサンプリング周波数が他方の蛍光強度データのサンプリング周波数の整数倍でないこと、(2)データの欠損部分が重ならないように2つの蛍光強度データのサンプリング周波数の比が適度に大きいこと、が挙げられる。なお、(2)については、互いの遅延時間がデータの無効区間を補填しうる適度な比である、ということができる。
【0040】
つまり、同じ遅延時間帯にdata1とdata2の両方にデータ欠損が生じないように各ブロック内での励起光の切り替えの周期を調整すれば、data1とdata2のデータ欠損を相互に補填することができる。これにより、スイッチングFCCS法を実施しつつも欠損区間のない相関曲線を取得することができる。
【0041】
[励起光操作信号の変形例]
図9は、図6に示した励起光操作信号に代替可能な別の励起光操作信号を示している。励起光操作信号は、例えば、図9に示されるように、周期が時間経過とともに変化するブロックを繰り返したものとなっている。これにより、励起光照射部120は、各ブロックにおいて第1励起光と第2励起光の切り替えの各回の周期を変えながら、第1励起光と第2励起光を切り替える。図9の例では、周期が徐々に減少しているが、周期の変化の仕方は、これに限定されるものではなく、一定の時間間隔のブロック内で周期が変化していればよい。また、周期の変化の仕方は、各ブロックで同じであるが、これに限らず、ブロックごとに異なっていてもよい。つまり、励起光操作信号は、一定の時間間隔の各ブロックにおいて、その周期が時間経過とともに変化している。これにより、励起光制御部130は、一定の時間間隔の各ブロックにおいて、励起光の切り替えの周期を時間経過とともに変更している。この場合も、二つの蛍光強度データの両方に同じ遅延時間帯に欠損が生じないように各ブロック内での励起光の切り替えの周期の変化を調整すれば、データ欠損を互いに補填することができる。これにより、スイッチングFCCS法を実施しつつも欠損区間のない相関曲線を取得することができる。
【0042】
図10は、図6に示した励起光操作信号に代替可能なまた別の励起光操作信号を示している。励起光操作信号は、例えば、図10に示されるように、デューティー比がそれぞれ異なるブロック1とブロック2とブロック3とを繰り返したものとなっている。これにより、励起光照射部120は、ブロックごとに第1励起光と第2励起光の照射時間の割合を変えながら、第1励起光と第2励起光を切り替える。ここでは、励起光操作信号は、3つのブロックの繰り返しになっているが、デューティー比がそれぞれ異なる2つまたは4つ以上のブロックの繰り返してであってもよい。つまり、励起光操作信号は、一定の時間間隔のブロックごとに、そのデューティー比が異なっている。これにより、励起光制御部130は、一定の時間間隔のブロックごとに、励起光の切り替えのデューティー比を変更している。この場合も、二つの蛍光強度データの両方に同じ遅延時間帯に欠損が生じないように各ブロックの励起光の切り替えのデューティー比を調整すれば、データ欠損を互いに補填することができる。これにより、スイッチングFCCS法を実施しつつも欠損区間のない相関曲線を取得することができる。
【0043】
図11は、図6に示した励起光操作信号に代替可能なさらに別の励起光操作信号を示している。励起光操作信号は、例えば、図11に示されるように、デューティー比が時間経過とともに変化するブロックを繰り返したものとなっている。これにより、励起光照射部120は、各ブロックにおいて第1励起光と第2励起光の切り替えの各回における第1励起光と第2励起光の照射時間の割合を変えながら、第1励起光と第2励起光を切り替える。図11の例では、デューティー比が一方向に(「1」が減少するように)変化しているが、デューティー比の変化の仕方は、これに限定されるものではなく、一定の時間間隔のブロック内でデューティー比が変化していればよい。また、デューティー比の変化の仕方は、各ブロックで同じであるが、これに限らず、ブロックごとに異なっていてもよい。つまり、励起光操作信号は、一定の時間間隔の各ブロックにおいて、そのデューティー比が時間経過とともに変化している。これにより、励起光制御部130は、一定の時間間隔の各ブロックにおいて、励起光の切り替えのデューティー比を時間経過とともに変更している。この場合も、二つの蛍光強度データの両方に同じ遅延時間帯に欠損が生じないように各ブロック内での励起光の切り替えのデューティー比の変化を調整すれば、データ欠損を互いに補填することができる。これにより、スイッチングFCCS法を実施しつつも欠損区間のない相関曲線を取得することができる。
【0044】
さらに、励起光操作信号は、図6と図10の組み合わせとして、周期とデューティー比がそれぞれ異なる複数のブロックを繰り返したものであってもよい。この場合、励起光照射部120は、ブロックごとに第1励起光と第2励起光の切り替え周期と第1励起光と第2励起光の照射時間の割合とを変えながら、第1励起光と第2励起光を切り替える。つまり、励起光制御部130は、一定の時間間隔のブロックごとに、励起光の切り替えの周期とデューティー比を変更する。また、図9と図11の組み合わせとして、周期とデューティー比が時間経過とともに変化するブロックを繰り返したものであってもよい。この場合、励起光照射部120は、各ブロックにおいて、第1励起光と第2励起光の切り替えの各回の周期と、切り替えの各回における第1励起光と第2励起光の照射時間の割合とを変えながら、第1励起光と第2励起光を切り替える。つまり、励起光制御部130は、一定の時間間隔の各ブロックにおいて、励起光の切り替えの周期とデューティー比を時間経過とともに変更する。
【0045】
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態による蛍光分光分析装置を概略的に示している。
【図2】図1に示した励起光照射部の構成例を示している。
【図3】図1に示した励起光照射部の別の構成例を示している。
【図4】図1に示した蛍光検出部の構成例を示している。
【図5】図1に示した蛍光分光分析装置の動作のフローチャートを示している。
【図6】励起光操作信号を示している。
【図7】図1に示した蛍光分光分析装置における信号のタイムチャートを示している。
【図8】周期T1による相関曲線と、周期T2による相関曲線と、周期T1と周期T2の切り替えによる相関曲線とを示している。
【図9】図6に示した励起光操作信号に代替可能な別の励起光操作信号を示している。
【図10】図6に示した励起光操作信号に代替可能なまた別の励起光操作信号を示している。
【図11】図6に示した励起光操作信号に代替可能なさらに別の励起光操作信号を示している。
【図12】τ=0とτ=τ0とτ=2τ0の遅延時間における積和演算の蛍光強度データの組み合わせと積和演算実施の結果とを示している。
【図13】τ=3τ0とτ=7τ0とτ=8τ0の遅延時間における積和演算の蛍光強度データの組み合わせと積和演算実施の結果とを示している。
【図14】τ=9τ0とτ=13τ0とτ=14τ0の遅延時間における積和演算の蛍光強度データの組み合わせと積和演算実施の結果とを示している。
【図15】τ=15τ0とτ=16τ0とτ=17τ0の遅延時間における積和演算の蛍光強度データの組み合わせと積和演算実施の結果とを示している。
【図16】τ=18τ0とτ=19τ0の遅延時間における積和演算の蛍光強度データの組み合わせと積和演算実施の結果とを示している。
【図17】τ=0とτ=τ0とτ=2τ0とτ=3τ0とτ=6τ0とτ=7τ0とτ=8τ0の遅延時間における積和演算の蛍光強度データの組み合わせと積和演算実施の結果とを示している。
【図18】τ=9τ0とτ=10τ0とτ=15τ0とτ=16τ0とτ=17τ0とτ=24τ0とτ=32τ0の遅延時間における積和演算の蛍光強度データの組み合わせと積和演算実施の結果とを示している。
【図19】図17と図18に示した積和演算結果の一覧と積和演算データのグラフを示している。
【図20】図17と図18に示した蛍光強度データのサンプリング周期の1/2のサンプリング周期で取得した蛍光強度データにおいて、τ=0とτ=τ0とτ=2τ0とτ=3τ0とτ=4τ0とτ=5τ0とτ=6τ0の遅延時間における積和演算の蛍光強度データの組み合わせと積和演算実施の結果とを示している。
【図21】図17と図18に示した蛍光強度データのサンプリング周期の1/2のサンプリング周期で取得した蛍光強度データにおいて、τ=7τ0とτ=8τ0とτ=9τ0とτ=10τ0とτ=14τ0とτ=15τ0とτ=16τ0の遅延時間における積和演算の蛍光強度データの組み合わせと積和演算実施の結果とを示している。
【図22】図20と図21に示した積和演算結果の一覧と積和演算データのグラフを、図19に示した積和演算データのグラフとともに示している。
【符号の説明】
【0047】
100…蛍光分光分析装置、110…顕微鏡部、112…ステージ、114…対物レンズ、116…ダイクロイックミラー、120…励起光照射部、122a,122b,122c…光源、124a,124b,124c…ダイクロイックミラー、126…音響光学素子、128…切替器、130…励起光制御部、132…変化パターン生成部、134…励起光操作信号生成部、140…蛍光検出部、142a,142b,142c…ビームスプリッター、144a,144b,144c…蛍光フィルター、146a,146b,146c…受光素子、150…信号処理部、160…演算部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長の異なる複数の励起光を切り替えながら試料に照射する励起光照射部と、
前記励起光の切り替えを時間経過とともに変化させる励起光制御部と、
前記励起光の照射に応じて前記試料から発生する波長の異なる複数の蛍光を検出する蛍光検出部と、
前記試料に照射される励起光の波長と前記蛍光検出部で検出される蛍光の強度とに基づいて相関分析を行なう演算部とを有している蛍光分光分析装置。
【請求項2】
前記励起光制御部は、一定の時間間隔のブロックごとに、前記励起光の切り替えの周期を変更する、請求項1に記載の蛍光分光分析装置。
【請求項3】
前記励起光制御部は、一定の時間間隔のブロックごとに、前記励起光の切り替えのデューティー比を変更する、請求項1に記載の蛍光分光分析装置。
【請求項4】
前記励起光制御部は、一定の時間間隔の各ブロックにおいて、前記励起光の切り替えのデューティー比を時間経過とともに変更する、請求項1に記載の蛍光分光分析装置。
【請求項5】
前記演算部は、相関分析を行う際の補完処理条件は一定である、請求項1に記載の蛍光分光分析装置。
【請求項6】
前記励起光学部は、前記複数の励起光を含む波長帯域の光を発する単一の光源と、この光源の発する光から前記試料に照射する励起光を選択する選択部とを有している、請求項1に記載の蛍光分光分析装置。
【請求項7】
前記励起光学部は、前記複数の励起光をそれぞれ発する複数の光源と、これら複数の光源の発する複数の励起光から前記試料に照射する励起光を選択する選択部とを有している、請求項1に記載の蛍光分光分析装置。
【請求項8】
前記選択部は、透過帯域を制御可能な音響光学素子を有している、請求項6または請求項7に記載の蛍光分光装置。
【請求項9】
前記選択部は、発光する光源を選択する光源切替部を有している、請求項7に記載の蛍光分光装置。
【請求項10】
前記蛍光検出部は、それぞれ異なる波長帯域に感度を有する複数の受光素子を有している、請求項1に記載の蛍光分光分析装置。
【請求項11】
前記蛍光検出部は、前記複数の蛍光の波長帯域を含む受光帯域を有する単一の受光素子を有している、請求項1に記載の蛍光分光装置。
【請求項1】
波長の異なる複数の励起光を切り替えながら試料に照射する励起光照射部と、
前記励起光の切り替えを時間経過とともに変化させる励起光制御部と、
前記励起光の照射に応じて前記試料から発生する波長の異なる複数の蛍光を検出する蛍光検出部と、
前記試料に照射される励起光の波長と前記蛍光検出部で検出される蛍光の強度とに基づいて相関分析を行なう演算部とを有している蛍光分光分析装置。
【請求項2】
前記励起光制御部は、一定の時間間隔のブロックごとに、前記励起光の切り替えの周期を変更する、請求項1に記載の蛍光分光分析装置。
【請求項3】
前記励起光制御部は、一定の時間間隔のブロックごとに、前記励起光の切り替えのデューティー比を変更する、請求項1に記載の蛍光分光分析装置。
【請求項4】
前記励起光制御部は、一定の時間間隔の各ブロックにおいて、前記励起光の切り替えのデューティー比を時間経過とともに変更する、請求項1に記載の蛍光分光分析装置。
【請求項5】
前記演算部は、相関分析を行う際の補完処理条件は一定である、請求項1に記載の蛍光分光分析装置。
【請求項6】
前記励起光学部は、前記複数の励起光を含む波長帯域の光を発する単一の光源と、この光源の発する光から前記試料に照射する励起光を選択する選択部とを有している、請求項1に記載の蛍光分光分析装置。
【請求項7】
前記励起光学部は、前記複数の励起光をそれぞれ発する複数の光源と、これら複数の光源の発する複数の励起光から前記試料に照射する励起光を選択する選択部とを有している、請求項1に記載の蛍光分光分析装置。
【請求項8】
前記選択部は、透過帯域を制御可能な音響光学素子を有している、請求項6または請求項7に記載の蛍光分光装置。
【請求項9】
前記選択部は、発光する光源を選択する光源切替部を有している、請求項7に記載の蛍光分光装置。
【請求項10】
前記蛍光検出部は、それぞれ異なる波長帯域に感度を有する複数の受光素子を有している、請求項1に記載の蛍光分光分析装置。
【請求項11】
前記蛍光検出部は、前記複数の蛍光の波長帯域を含む受光帯域を有する単一の受光素子を有している、請求項1に記載の蛍光分光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2009−103522(P2009−103522A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274224(P2007−274224)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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