蛍光検出のための励起および結像光学素子
【課題】マイクロタイタープレート形式の蛍光検出に関し、より小さい蛍光信号であっても検出することを可能とするため、信号対雑音比または解像度を改善する結像光学素子を提供する。
【解決手段】マイクロタイタープレートのウェルからなる複数の個々の検出部位からの蛍光信号7を結像するための光学機器を備える。励起光9を用いた蛍光励起における光収率および蛍光信号7の検出における光収率を改善するために、視野レンズと検出部位との間のビーム経路内に配置され、視野レンズアレイ素子20を有する視野レンズアレイ19と、瞳レンズアレイ素子22を有する瞳レンズアレイ21とを備える。チャネル分離を改善するため、および干渉光を抑制するために、この対物レンズアレイ18は、2つの絞り開口部(24、25)を有する絞りアレイ23を検出部位ごとに備えている。
【解決手段】マイクロタイタープレートのウェルからなる複数の個々の検出部位からの蛍光信号7を結像するための光学機器を備える。励起光9を用いた蛍光励起における光収率および蛍光信号7の検出における光収率を改善するために、視野レンズと検出部位との間のビーム経路内に配置され、視野レンズアレイ素子20を有する視野レンズアレイ19と、瞳レンズアレイ素子22を有する瞳レンズアレイ21とを備える。チャネル分離を改善するため、および干渉光を抑制するために、この対物レンズアレイ18は、2つの絞り開口部(24、25)を有する絞りアレイ23を検出部位ごとに備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNA分析の分野に関する。具体的には、本発明は、複数の検出部位における蛍光強度の平行結像のためのデバイスに関し、さらにこれに関連して、特に蛍光信号の蛍光検出のための励起および結像光学素子に関する。
【0002】
本発明は、DNA分析の分野に関する。具体的には、本発明は、複数の検出部位における蛍光強度の平行結像のためのデバイスに関し、さらにこれに関連して、特に蛍光信号の蛍光検出のための励起および結像光学素子に関する。
【背景技術】
【0003】
当業者は、生体サンプルを分析するために、蛍光法および蛍光技術における様々な用途に精通している。電気泳動法の場合、タンパク質またはDNAの電気泳動バンドを、ゲルまたはカラム中で可視化するために、これらタンパク質またはDNAが蛍光プローブによって標識する。さらに、従前におけるバイオチップの用途のほとんどは、蛍光読み取りに基づいている。この読み取りでは、固体の支持体に固定化されたプローブ分子に対する、蛍光標識されたターゲット分子における特定の結合がモニターされる。液相におけるDNA分析の用途には、色素SybrGreen1などの蛍光ハイブリダイゼーションプローブが含まれる。この色素SybrGreen1は、2つの蛍光プローブおよびエネルギー転移を利用する、2本鎖DNAまたはFRET(fluorescence Resonance Energy Transfer:蛍光共鳴エネルギー転移)プローブに結合するものである。液相における蛍光技術に関する1つの非常に重要な用途としては、リアルタイムでのPCR産物の定量、いわゆるリアルタイムPCRがある。
【0004】
PCR(polymerase chain reaction;ポリメラーゼ連鎖反応)は、2本鎖DNA(deoxyribonucleic acid:デオキシリボ核酸)の量を増幅または増殖するための方法である。PCR装置では、温度サイクリングのためのブロックが、サンプルベッセル(ウェル)を備えた1つ以上の保持デバイスを有している。このベッセルは、DNAの初期量をもってスタートし、より多くのDNAを得るために使用される、反応に関する成分の混合物を収容している。スタート時の成分は、溶液中に、「種苗量」のDNA、特定の初期DNA、DNA要素、酵素および他の化学薬品を含んでいる。前記のブロックの温度は、全てのDNA鎖が二重鎖に再結合する、約60℃のPCR反応における低温の拡張位相と、DNAが単一鎖に分離または変性される、約95℃のより高温の変性位相との間で循環する。このような温度プログラムは、基本的に、各サイクルにおいてDNAを倍増し、これは、DNAの実質的な量を、わずかな初期量から複製することが可能である。DNAの定量的決定は、蛍光測定を使用することによって実行され、これはまた、リアルタイムで実行される。
【0005】
前記のすべての場合において、光学機器、すなわち、蛍光に関する励起および読み取りデバイスは、アッセイの蛍光マーカーを励起するために特定波長の光を供給すること、および、わずかに異なる波長をもって放射されるマーカーからの蛍光を検出することが可能であること、が求められている。全ての蛍光測定デバイスにおける大きな問題は、色素によって放射される蛍光に比べて、励起光の強度がはるかに強いことにある。このために、蛍光信号を正確にモニターすることを可能とするためには、励起ビームが検出器にあたらないことを確保しなければならない。言い換えれば、励起光のビーム経路(光路)は、少なくとも部分的に、蛍光のビーム経路(光路)と異なっていなければならない。この目的のために、一般に、以下に示す測定が採用されている。a)励起および放射フィルターによって、大きくオーバーラップしないスペクトルを分離する。b)垂直照明(または落射照明)、または側面照明を使用する。これらを採用する場合には、照明光のビームは、直接的に検出されることの可能な方向を向かなくなる(暗視野)。少なくとも1つの反射、弾性散乱または蛍光発光(非弾性散乱)が必要とされる。測定b)は、通常、測定a)のサポートとして使用される。これは、測定a)にしたがうフィルタブロッキングが、完全ではないためである。
【0006】
たとえば毛細管の液相において、1種類の蛍光プローブだけがモニターされなければならない場合、蛍光原理を実施することは非常に容易である。この場合、この要件を満たすためには、たとえば、2色性ミラーとフィルターとのセットを備えた白色光源で十分である。しかしながら、サンプル中に1種類より多い蛍光マーカーが存在する場合には、固体の支持体上において横方向に分布する位置、またはマイクロタイタープレートの蛍光をモニターする必要があり(単一のサンプルベッセル内において、異なる色素が存在し検出される場合を除く)、蛍光測定のための光学機器に対する要件を満たすことは、より困難となる。
【0007】
基本的に、横方向に分布する検出部位の蛍光を励起してモニターするためには、2つの異なった戦略が存在する。第1の戦略は、横方向に分布する検出部位を走査し、個々の検出部位を1つずつ連続的に分析していくことである。第2の戦略は、分布する検出部位の全体に対して同時に照明を行って、複数の光学センサー(たとえばCCDチップ)上において、対応する蛍光を結像することである。前記の走査戦略は、支持体を二次元的に移動させる必要がある(たとえば、国際公開第03/069391号パンフレット、独国特許第102 00 499号明細書を参照されたい)、支持体に関して検出器を移動させる必要がある(米国特許出願公開第2002/159057号明細書)、検出器を1つの次元において移動する必要がある一方、支持体を他の次元において移動する必要がある、または光学システムが、1次元または2次元の走査手段(たとえばガルボミラー)を備える必要がある、という明白な欠点を有している。一方、支持体全体を同時に照明する第2の戦略における主な難点は、分布している検出部位の全体に対して、均一な照明を行わなければならない点にある。
【0008】
分布している検出部位の全体にわたって均一な照明を行うことの代替法は、複数の光源からなる配列を使用することにあり、これにより個々の検出部位はその各自の光源によって照明される。独国特許第101 31 687号明細書は、複数のウェルを備えた熱サイクラー中において、照明のためのビームスプリッターおよびLED配列を用いてPCRの評価を行うための戦略について記載している。独国特許第101 55 142号明細書は、蛍光信号の暗視野モニタリングについて記載している。この場合も、LED配列によってマイクロアレイを照明するが、この実施形態においては、ビームスプリッターは必要とされていない。
【0009】
励起ビームおよび蛍光(検出される蛍光信号の蛍光)におけるビーム経路を、少なくとも部分的に分離するための要件に関しても、同様に2つの異なる可能性が存在する。第1の可能性は、いわゆる落射照明である。この場合ビームスプリッターが利用され、励起ビームおよび蛍光が、光学システムの少なくとも一部を共有している。第2の可能性は、傾斜照明を用いることである。この場合励起ビームが支持体の表面の法線に対して特定の角度を有し、この励起ビームにおける対応する反射が、検出システムにおける開口角の外側にくるように励起ビームが構成される(たとえば、米国特許出願公開第2002/0005493号明細書、欧州特許出願公開第1 275 954号明細書)。
【0010】
米国特許出願公開第2003/0011772号明細書は、ビームスプリッターを用いてプローブ内の複数の蛍光色素を同時に観測するための、光学デバイスを記載している。独国特許出願公開第197 48 211号明細書は、ビームスプリッターと、視野レンズと、各ウェルに光の焦点を合わせるレンズ配列とを用いて、マイクロタイタープレートのウェル内において発生する蛍光信号を同時にモニターするためのシステムを開示している。検出は、フォトダイオード配列またはCCDチップ上に、光を結像することによってなされる。このシステムにおける前記の実施形態において集光される蛍光は、集光レンズの光円錐によって励起される色素の量によって決まるため、ウェルの充填レベルに依存することになる。
【0011】
国際公開第99/60381号パンフレットは、その温度が循環的に制御されるブロック内において、複数のウェルにおけるPCR反応を同時にモニターするためのデバイスを記載している。このデバイスの光学部品も、同様に、ビームスプリッターと、視野レンズと、各ウェルに個々の光ビームの焦点を合わせるウェル用のレンズ配列と、たとえばCCD検出器上に放射光の焦点を合わせる検出手段とを含んでいる。ウェル用のレンズ配列を必要とするために、個々の検出部位におけるサイズおよび横方向の密度が制約される。この構成における光収率は低く、個々の検出ウェル間に無視できないクロストークが発生する(すなわち、チャネル分離が低い)。
【0012】
特開2002−014044号公報は、複数のウェルにおいて発生する蛍光をモニターするための、蛍光分析デバイスを記載している。光学部品は、ビームスプリッターと、ウェルの深さ方向に平行な光によってウェルを一括して照明するレンズシステムとを含んでいる。しかしながら、この画像光学システムは、検出手段上に光を集める。米国特許第6498690号明細書は、テレセントリックレンズを有する対物レンズを用いた結像アッセイ方法を開示している。米国特許第6246525号明細書は、フレネルレンズを含む、サンプルキャリアを結像するための結像デバイスを記載している。欧州特許出願公開第0 987 540号明細書は、テレセントリックレンズのセットを備えた結像ユニットを有する、蛍光アッセイのための結像デバイスを開示している。欧州特許出願公開第1 406 082号明細書は、テレセントリック照明を備えた蛍光読み取りデバイスについて記載している。
【0013】
欧州特許第1 681 555号明細書は、横方向に分布している検出部位からの蛍光信号を同時にモニターするための、改善されたデバイスを記載している。この構成では、ビーム経路が、均一な照明および正確な検出に関して最適化されている。この構成は、結像レンズ配列を有している。このレンズ配列は、視野レンズから光学センサーに向けて蛍光信号を転送するように、および励起光のビーム経路および複数の個々の検出部位からの蛍光信号におけるビーム経路が、視野レンズの物体側においてテレセントリックとなるという特性を有するように構成されている。
【0014】
欧州特許第1 681 556号明細書は、類似しているが、さらに改善されたデバイスについて記載している。このデバイスでは、複数の個々の検出部位からなる配列における平らな支持体に対する入射角度が0°より大きくなっている励起光を生成するように視野レンズが構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
これらのデバイスを用いることによって、よい結果を得ることが可能である。しかしながら、実際には、より小さい蛍光信号であっても検出することを可能とするため、または改善された信号対雑音比または改善された解像度をもつ蛍光信号を検出することを可能とするために光収率をさらに改善することが可能である、ということが判明している。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の目的は、より高い光収率に関してビーム経路を最適化することによって、横方向に分布している複数の個々の検出部位からの蛍光信号を同時にモニターするための改善されたデバイスまたは改善された光学機器を提供することにある。本発明における一態様では、解決すべき問題は、マイクロタイタープレート形式におけるリアルタイム多重化PCRのモニタリングにおける改善に関連している。
【0017】
このように本発明は、複数の個々の検出部位からなる配列の蛍光信号を結像するための光学機器であって配列の全体的なエリアにわたる均一な励起、対応する蛍光信号における正確な結像および高い光収率を実現する光学機器を対象としている。
【0018】
より詳細には、本発明はマイクロタイタープレートのウェル中において生じている複数のPCR増幅を同時にリアルタイムに分析するための光学機器またはターゲットとプローブとの間における特定の相互作用に関する尺度として、マイクロアレイの蛍光強度を結像するための光学機器を対象としている。
【0019】
この目的は、本発明にしたがって請求項1の構成を有する光学機器によって達成される。好ましい実施形態については、従属および独立の請求項および添付図面を用いた後述する説明に由来する。
【0020】
したがって、本発明にしたがう光学機器は、複数の個々の検出部位からなる配列からの蛍光信号を結像するための光学機器であって、
複数の個々の検出部位からなる配列を有する平面支持体を保持するための保持デバイスと、
少なくとも1つの励起周波数を含む光を放射するための、少なくとも1つの光源と、
複数の個々の検出部位からなる配列から蛍光信号を受光するように構成されているとともにコンピュータによって読み取り可能な一次データを生成するように設計されている光学センサーと、
複数の個々の検出部位からなる配列に対して光源からの励起光を転送するとともに、複数の個々の検出部位からなる配列から光学センサーに対して蛍光信号を転送するように構成されている視野レンズと、
光源から視野レンズに対して励起光を転送するように構成されている励起レンズ配列と、
視野レンズから光学センサーに対して蛍光信号を転送するように構成されている結像レンズ配列とを備えた光学機器において、
これが、瞳レンズアレイ素子を有する瞳レンズアレイと、視野レンズアレイ素子を有する視野レンズアレイとを備えた、対物レンズアレイを備えており、
この対物レンズアレイが、複数の個々の検出部位からなる配列と視野レンズとの間のビーム経路内に配置されていることを特徴としている。
【0021】
好ましい実施形態では、励起光のビーム経路と複数の個々の検出部位からの蛍光信号のビーム経路とは、視野レンズの物体側においてテレセントリックである。すなわちこの光学機器はテレセントリックな瞳位置を使用している。より正確に表現すると、視野レンズの物体側および視野レンズアレイの物体側におけるビーム経路は、本発明の範囲内においてテレセントリックである。他方の側では、すなわち瞳レンズアレイと複数の個々の検出部位からなる配列との間では、ビーム経路は、もはやテレセントリックではない。ここではテレセントリズムは、もはや不要である。各検出部位は周期的な対物レンズアレイを介して照明および検出のための同じ非テレセントリックな瞳に「対面」する。
【0022】
本発明は、より小さい蛍光信号であっても検出することを可能とするため、または改善された信号対雑音比または改善された解像度をもつ蛍光信号を検出することを可能とするために高い光収率を可能とするだけでなく、さらに多くの他の利点(たとえば、より急速な蛍光測定など)を有するものである。また従来技術では、従前から低かった光収率を補うために高い照明密度を有する高性能のランプ(たとえば、キセノンアークランプ)が使用されている。しかしながら、このような高性能のランプは、入念な熱除去または冷却を必要とする高い熱的な散逸損失を有するだけでなく、かなり短い寿命(通常、約500時間程度)を有するものである。したがって従来技術では、周期的なランプ交換が必要である。継続的な測定(たとえば、リアルタイムPCR)の最中にランプが壊れた場合、特定のサンプルに対する測定の全体が失われることさえありうる。本発明による信号利得および感度の改善は、これらの問題を回避するとともにより弱い(したがってより長持ちする)ランプを使用可能とし、さらにより長い寿命およびより高い信頼性を有する代替的な光源(たとえばLED)を使用可能とする。このように本発明における重要な利点は、使用される光源の寿命を長期化することにある。したがって本発明における前記の光学機器は、光源として、好ましくはLEDまたはレーザーを有しており、より好ましくはLEDを有している。
【0023】
本発明の文脈において、複数の個々の検出部位からなる配列とは、空間的に分離され、横方向に分布している2つ以上の検出部位からなる物体の総称である。この検出部位は、たとえばマイクロタイタープレートのウェルまたは顕微鏡のスライドまたはスライドガラスにおける官能化表面エリアとすることが可能である。
【0024】
本発明の範囲内においては、前記の配列における平面支持体は、好ましくは平面状の固相である。マイクロアレイの場合、この配列の平面支持体は検出部位の配置されているこの平面状固相の表面である。マイクロタイタープレートの場合、この配列の平面支持体はウェルの開口部が配置されている平面である。この配列の平らな支持体は、ビーム経路内において、個々の検出部位のそれぞれをターゲット位置において安定化するために保持デバイスによって固定されている。
【0025】
本発明の範囲内においては、光源という表現は、単一の周波数を有する光または複数の異なる周波数を有する光を発する発光体を含んでいる。さらにこの光源については、1つより多くの前記発光体からなる配列とすることも可能である。
【0026】
本発明の文脈においては、光学センサー(検出器、変換器)とは、可視光をコンピュータによって処理することの可能な電気信号に変換するためのデバイスである。この光学センサーは、1つの個別の光学センサーまたは、より多くの光学センサーを備えることが可能である。好ましい実施形態では、光学センサーは、空間的に分布された配列(好ましくは、複数の個々の検出部位からなる配列に対応するように設計された配列)に配置された、複数の光学センサーを含んでいる。好ましい実施形態は、たとえばフォトダイオードまたは特に電化結合部品(たとえばCCDチップ)などの半導体部品である。
【0027】
本発明の範囲内においては、テレセントリック光学システムとは開口絞りを有する光学システムであって、この開口絞りが開口絞りと物体との間の光学素子によって、無限遠に向けて投影されている光学システムである。換言すればこのテレセントリック光学システムの主ビームは、物体空間において準平行状態にある。主ビームという表現は、開口絞りの中心を抜けて進む全てのビームのために使用されている。物体、物体面および物体空間という表現は、複数の個々の検出部位からなる配列を有する平面支持体を記述するために使用されている。このテレセントリック光学システムでは、励起レンズ配列および結像レンズ配列の双方はそれら自身の開口絞りを有している。このテレセントリック光学システムは、励起および対物レンズアレイの視野レンズ側における蛍光信号を検出するためのビーム経路に関してテレセントリックである。光軸に垂直な平面内における各物点は、主励起ビームおよび主検出ビームに対応している。全ての主励起ビーム、さらに全ての主検出ビームが準平行状態にあるために物体面内における横方向へのきわめて均一な分布が確保され、また前記配列における中央部にある検出部位が、この配列の端部にある検出部位と同様になる。
【0028】
本発明においては、テレセントリック光学システムは常に視野レンズを有している。本発明の文脈においては、視野レンズとは物体に対して最も近くにあるレンズのことである(本発明にしたがう対物レンズアレイをもたない光学機器の実施形態に関連する)。全ての励起光ビームおよび全ての蛍光信号はこの視野レンズを通過する。この視野レンズは、1つ以上の部品を有することが可能であり、デバイスの追加的な光学部品とともにデバイスの物体空間および/または画像空間におけるテレセントリック性に寄与する。視野レンズにおける1つ以上の部品(色消しシステム)は、それ自体が空間的に分離されたレンズ素子となることが可能である。この視野レンズは光学デバイスの視野を決定する。
【0029】
本発明の範囲内においては、テレセントリック光学システムは追加的に非常に小さな開口部を有する(したがって深い焦点深度を有する)光学システムであることが好ましい。これにより物体空間内において、テレセントリック性を用いている励起光学システムまたは結像光学システムの品質は、光学システムから特定の物点までの距離に無関係になる。テレセントリック光学システムの開口部は無限遠に結像される。
【0030】
本発明の視野レンズは、光源からの励起光を複数の個々の検出部位からなる配列に対して転送する一方、複数の個々の検出部位からなる配列からの蛍光信号を光学センサーに対して転送する。このことはビーム経路内、たとえば光源と視野レンズとの間、視野レンズと光学センサーとの間または視野レンズと複数の個々の検出部位からなる配列(特に本発明にしたがう対物レンズアレイ)との間に追加的な光学部品が導入されるかもしれない可能性を除外するものではない。
【0031】
入射角αは、励起光ビームにおける準平行状態にある主ビームと界面(本発明の範囲おいては前記配列の支持体である)の法線との間の角度として規定されている。
【0032】
本発明における改良された態様にしたがうと、この態様は複数の個々の検出部位からなる配列からの化学発光または生物発光の信号を結像するための光学機器であって、
複数の個々の検出部位からなる配列を有する平面支持体を保持するための保持デバイスと、
複数の個々の検出部位からなる配列から、化学発光または生物発光の信号を受光するように構成されているとともにコンピュータによって読み取り可能な一次データを生成するように設計されている光学センサーと、
複数の個々の検出部位からなる配列から光学センサーに対して、化学発光または生物発光の信号を転送するように構成されている視野レンズと、
視野レンズから光学センサーに対して、化学発光または生物発光の信号を転送するように構成されている結像レンズ配列とを備えた光学機器において、
これが、対物レンズアレイを備えており、この対物レンズアレイが視野レンズアレイ素子を有する視野レンズアレイと瞳レンズアレイ素子を有する瞳レンズアレイとを備えており、
この対物レンズアレイが複数の個々の検出部位からなる配列と視野レンズとの間のビーム経路内に配置されていることを特徴とする光学機器を対象としている。
【0033】
本発明における他の対象は、
本発明にしたがう光学機器と、
PCR反応を実行することの可能な反応混合物をそれぞれ含んだ1つ以上のウェルを有する支持体を加熱および冷却するためのデバイスと、
を備えたリアルタイムPCR機器である。
【0034】
本発明の範囲内においては、加熱および冷却のための手段は核酸の周期的なPCR増幅を実行するために複数の個々の検出部位からなる配列の温度を周期的な方法において制御および変更することの可能な任意の手段を含んでいる。このような加熱および冷却デバイスは熱循環装置において一般的に使用されており、当業者にとって周知のものである。
【0035】
本発明においては、複数の個々の検出部位からなる配列は並行分析を実現するために好ましくはマイクロタイタープレート内またはスライドガラスの官能化表面上において、空間的に分離された2つ以上のアッセイからなる、個々のアッセイ体の総称であることが好ましい。
【0036】
さらにビーム経路という表現は、本発明においては少なくとも視野レンズを介して光源から複数の個々のアッセイからなる配列に向かうまでの間および少なくとも1つの視野レンズを介して複数の個々のアッセイからなる配列から光学センサーに向かうまでの間に光ビームが通過する、全てのエリアを総称するために使用されている。
【0037】
本発明における他の主題は、1つ以上のPCR反応をリアルタイムに同時に実行およびモニターするためのシステムであって、
PCR反応を実行することが可能な反応混合物をそれぞれ含んでいる複数の個々の検出部位からなる配列としてのマルチウェルプレートと、
蛍光DNA結合実体と、
マルチウェルプレートにおける複数の個々の検出部位を光(好ましくは、テレセントリック光)によって照明するとともにマルチウェルプレートの各ウェルからの蛍光信号をコンピュータによって読み取り可能な一次データを生成するために、対応する蛍光信号を受光することができるように構成された光学センサーによって検出するための、本発明にしたがう光学機器を備えた、本発明にしたがうリアルタイムPCR機器とを有するシステムである。
【0038】
好ましくは、前記PCR機器の光源はLEDである。
【0039】
本発明においては、前記の蛍光DNA結合実体は増幅されたDNAをリアルタイムに検出するための任意の蛍光色素または蛍光色素からなる配列である。これらは、当業者によって知られており、増幅されたDNAを検出するために使用することの可能なものであって、たとえば2本鎖DNA特異的結合色素、蛍光標識されたハイブリダイゼーションプローブ(そのターゲット核酸と結合したときにだけ、蛍光を放射する)、TaqManプローブ、分子ビーコン、単一標識プローブ(SLP:single label probes)またはFRETハイブリダイゼーションプローブである。
【0040】
本発明のさらに他の主題は、複数のDNAターゲット配列を増幅、検出および/または定量するための方法において、
PCR反応を実行することの可能な組成物または反応混合物を提供すること、
複数のDNAターゲット配列の増幅が起こり得るように熱サイクリックプロトコルにしたがって反応混合物を処理すること、および
蛍光DNA結合実体および本発明にしたがうリアルタイムPCR機器を用いた複数の増幅サイクルの後に、各DNA配列の存在および数量を少なくとも1回は測定することを含む方法である。
【0041】
PCR反応を実行することの可能な組成物または反応混合物は、本発明の範囲内においては、バッファー、ヌクレオチド、酵素、プライマーおよび蛍光DNA結合実体を含んでいる。
【0042】
熱サイクリックプロトコルは、溶解、アニーリングおよび増幅温度のサイクルおよび時間周期を規定するプロトコルである。
【0043】
本発明は、さらに図面に示された非限定的な実施例に基づいて以下に説明される。そこに記述された特徴点については、本発明における好ましい実施形態を作り出すために単独で、または互いに結合された状態で使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】従来技術にしたがう光学機器における実施形態の概略図である。
【図2】ウェル内のサンプルに対する光学的な分析および照明のための孔を有する、PCRマルチウェルプレートにおける熱伝達カバーを示す図である。
【図3】本発明にしたがう光学機器の実施形態における、本発明にしたがう詳細部分を示す概略図である。
【図4】視野レンズアレイ、絞りアレイおよび瞳レンズアレイを備えた、本発明にしたがう対物レンズアレイを示す図である。
【図5】蛍光励起に関するビーム経路とともに、本発明にしたがう対物レンズアレイのチャネルを通る断面を示す図である。
【図6】蛍光検出に関するビーム経路とともに、本発明にしたがう対物レンズアレイのチャネルを通る断面を示す図である。
【図7】蛍光励起および蛍光検出に関する2つの分離された絞り開口部を有する絞りとともに、本発明にしたがう対物レンズアレイのチャネルを通る断面を示す図である。
【図8】対物レンズアレイによって結像される物体としての、図2に示した熱伝達カバーの上面図である。
【図9】対物レンズアレイによって結像された後の、図8に示した熱伝達カバーの画像を示す図である。
【図10】視野レンズアレイの部位における、検出光学素子および照明光学素子のビーム方向と、対物レンズアレイにおける全ての方向のエンベロープとを示す図である。
【図11】対物レンズアレイにおける4つの隣接するチャネル(いずれの場合にも、3つの視野ポイントからの光線の束を示している)の断面を示す図である。
【図12】対物レンズアレイの絞り画像をマスクするための、絞りアレイを示す図である。
【図13】熱伝達カバーにおける円形の孔内にある、矩形の視野レンズアレイ素子を示す図である。
【図14】矩形状に区切られた視野レンズアレイを備えた対物レンズアレイを、上側の視点から示す図である。
【図15】図14に示した対物レンズアレイを、下側の視点から示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、従来技術にしたがう(たとえば、欧州特許第1 681 555号明細書または欧州特許第1 681 556号明細書にしたがう)、複数の個々の検出部位2における蛍光信号を結像するための、光学機器1における実施形態の概略図を示している。光学機器1は、マイクロタイタープレートにおける個々のウェル中において生じる複数のPCR増幅(ポリメラーゼ連鎖反応増幅)を、同時にモニターおよび検出するために使用される。したがって、マルチウェルプレートのウェルは、複数の個々の検出部位2からなる配列を形成している。
【0046】
光学機器1は、複数の個々の検出部位2からなる配列からの蛍光信号を結像するための機器であって、複数の個々の検出部位2からなる配列を備える平面支持体4を保持するための保持デバイス3、少なくとも1つの励起周波数で光を放射する少なくとも1つの光源5、複数の個々の検出部位2からなる配列からの蛍光信号7を受信するように構成されているとともに、コンピュータによって読み取り可能な一次データを生成するように設計されている光学センサー6、光源5からの励起光9を複数の個々の検出部位2からなる配列に転送するとともに、複数の個々の検出部位2からなる配列からの蛍光信号7を光学センサー6に転送するように構成されている視野レンズ8、光源5からの励起光9を視野レンズ8に転送するように構成されている励起レンズアレイ10および視野レンズ8からの蛍光信号7を光学センサー6に転送するように構成されている結像レンズ配列11を備えている。
【0047】
蛍光信号7を結像することの可能な多くの機器が、当業者によって知られている。光学機器1が、複数の個々の検出部位2(たとえば、マイクロタイタープレートのウェルまたはマイクロアレイのスポット)からなる配列からの蛍光信号7を同時に結像することが可能であるべきである場合、配列の中央および配列の境界部における、励起光9による色素の励起および蛍光信号7の結像が同程度であることを保証しなければならない。さらに光ビーム全体にわたる均一な強度分布の要件が満たされているとしても、支持体4が全体として結像光学素子および励起光学素子の焦点面内にあることを確保するためには、この平面支持体4の位置合わせは、まだなお重要である。これに加えてマイクロタイタープレートのウェルの場合のように、光学機器1によって検出される支持体4または複数の個々の検出部位2が深さを有するときにはいくつかの特別の問題が生じる。
【0048】
前記の問題に対する解決策は、テレセントリック光学素子を使用することにある。テレセントリック光学システムでは、個々の物点から拡がる主ビームは準平行状態にある。実質的にはこれらの主ビームは、光学的な収差のない場合には完全に平行にもなる。ここで後者は、テレセントリック性の誤差と呼ばれるものである。もちろん各物点は、瞳の中央から照射される主ビームだけでなく、瞳の端部から照射されるエッジビーム、さらにエッジビームと主ビームとの間にあるビームも見ている。このように各物点は、円錐内に位置している光線の束に対して配置されている。この円錐の軸は主ビームである。円錐は理想的には小さな開口角を有している。実際には円錐が2つになることもある。すなわちその1つは照明用であり、もう1つは検出用である。テレセントリック光学システムの結果として有限の視野内にあるすべての物点は、ほぼ同じ遠近感および、ほぼ同じ強度をもって観察される。換言すると、テレセントリック光学システムは、大きな焦点深度および均一な励起または結像プロファイルを有している。
【0049】
光学システムの特性については、その開口数(NA:開口数)によって特徴づけることが可能である。この開口数は、一般には高い感度および良好な結像解像度を達成するためにできるだけ大きくすべきである。
【数1】
【0050】
この式では、nは媒体の屈折率であり、θは開口角である。
【0051】
横方向に分布する検出部位2のテレセントリック励起および、この検出部位2からの蛍光信号7におけるテレセントリック結像のための光学機器を設計する場合には、いくつかの態様を考慮に入れる必要がある。
【0052】
一方においては、NA値をできるだけ大きくするべきである。これは、結像光学素子に対してNA値が小さいと結像解像度が悪くなり、励起光学素子に対してNA値が小さいと励起のための照明力が損なわれるからである。他方においては、NA値を最小化することによってマイクロタイタープレートの場合のように、個々の検出部位2からなる配列が一定の深さを有する場合に重要となりえるテレセントリック光学素子の焦点深度を増大することが可能となる。さらに小さい開口を有する光学システムは、一般に安価に製造することが可能である。このため商業的な観点からも小さいNA値が好ましい。
【0053】
テレセントリック光学機器1を全ての周波数範囲において使用することを目的とする場合には、光学素子についても無色のものとしなければならない。蛍光結像自体に関しても対処しなければならない要件はさらに多い。これは光学センサー6上において横方向に分布する検出部位2を正確に再現するために、蛍光結像が正しいスケーリングを有していなければならないからである。さらに球面収差、色収差、コマ収差、非点収差または視野の湾曲などの結像誤差についても考慮に入れなければならない。
【0054】
テレセントリック光学素子を作成するためにはいくつかの方法がある。一般にテレセントリック光学システムは、ビーム路内に複数のレンズを連続的に配置した多素子レンズの形状を有している。テレセントリック光学システムについては、物体面においてテレセントリックなものとして、または結像面においてテレセントリックなものとして、または、いわゆる二重テレセントリック光学システムである、両方の面においてテレセントリックなものとして設計することが可能である。さらにテレセントリック光によって物体を照明すること、および/または、テレセントリックな方法において物体を検出することが可能である。一般的には、物体面においてテレセントリック性を有する光学システムを提供するだけで十分である。これはこのことによって、すでに横方向および3次元的に物体全体を均一に照明することが可能であるとともに、物体から放射される光を正確に集光することができるからである。
【0055】
この発明の範囲内においては、複数の個々の検出部位2の励起および複数の個々の検出部位2によって放射される蛍光信号7の結像については、好ましくはテレセントリックな方法において実施される。
【0056】
すべてのテレセントリック光学素子の中心部は、視野レンズ8である。このレンズは物体に最も近く、かつ、機器1の視野を決定するものである。したがって複数の個々の検出部位2からなる配列が広いエリアにわたって分布している場合には、通常このレンズの直径は増大する。視野レンズ8はシングレット(1つの単レンズ)として、または、たとえば互いに貼り付けられた2つのレンズを含む色消しレンズとして存在する。この発明にも用いることの可能な特有の視野レンズ8はフレネルレンズである。フレネルレンズは、視野レンズ8と同じテレセントリック特性を提供する少なくとも1つの光学的に有効な表面上に複数のテーパー領域を有する独特の複雑な湾曲を有している。ほとんどの場合、フレネルレンズは光軸に垂直な平坦面によって支持される複数のテーパー領域を有する表面を1つしか有していない。このためフレネルレンズは、通常の視野レンズに比べて薄くなっている。いわゆるフリーフォームレンズを使用することも可能である。実際に視野レンズは、テレセントリック性の誤差を最小化するために多くの場合に非球面である。しかしながら、通常これらの非球面は回転対称性を有している。この場合後者は、自由曲面ではない。
【0057】
特に一定の深さを有するマイクロタイタープレートのウェルの場合、入射角が大きいとウェルにおける内側の領域の一部だけが照明される、という影響が及ぼされる。したがってマイクロタイタープレートに関しては、入射角を20°より小さくすることが適当である。光学機器1における好ましい実施形態では励起光9の入射角αは、20°未満であり、好ましくは10°未満であり、最も好ましくは5°未満である。
【0058】
一方で、入射角αは、また励起光学素子および結像光学素子の双方における有限の開口がゼロより大きいために小さい値に制限されることに留意されたい。
【0059】
本発明にしたがう光学機器1における他の好ましい実施形態では、入射角αは以下のように表される。
【数2】
【0060】
ここで、θ1は励起光学素子の開口半角であり、θ2は結像光学素子の開口半角である。
【0061】
励起光学素子および結像光学素子の双方における開口半角θは、対応する開口数NAによって、
【数3】
のように定義される。
【0062】
ここで、niは物体とそれぞれの光学素子との間における媒体の屈折率であり、励起光学素子に関してはi=1である一方、結像光学素子に関してはi=2である。入射角αが前記の等式によって定義されるよりも小さくなる場合には、光学センサー6にあたる励起光ビームの反射光の量が増大する。このことは平面の固体支持体4上の官能化スポットからなる配列に関してあてはまるとともに、マイクロタイタープレートに関してもあてはまる。
【0063】
他の好ましい変化形において、本発明にしたがう光学機器1は光源5から複数の個々の検出部位2からなる配列に向けて、他の複数の周波数を遮断しながら少なくとも1つの励起周波数を転送することの可能な励起フィルターシステム12、および/または、励起周波数の光を遮断しながら複数の個々の検出部位2からなる配列から光学センサー6に向けて蛍光信号を転送することの可能な結像フィルターシステム13をさらに備えている。
【0064】
前述のように光学機器1は、光源5から視野レンズ8に向けて光を転送する、励起レンズ配列10を備えている。このことは光源5の光が、複数の個々の検出部位2からなる配列上において、視野レンズ8および励起レンズ配列10を含む励起光学システムを用いて結像されることを意味している。この励起光学システムは、視野レンズ8の物体側上にテレセントリックな励起光9を与えるのでテレセントリック励起光学システムである。励起レンズ配列10は、光源の出力の利用性をより高めるべく、励起開口を増大させるために少なくとも1つのレンズを含んでおり、好ましくは少なくとも3つのレンズを含んでいる。レンズの量を減らすべき場合には、励起レンズ配列10は非球面のものを含むことが可能である。このテレセントリック励起光学システムは、励起波長によらずに複数の個々の検出部位2からなる配列の全体にわたる均一な強度分布を達成するために無色に設計されている。
【0065】
光源5は、たとえば白色光源、ガス放電ランプ、キセノンランプ、水銀ランプ、フィラメントランプ、またはタングステンランプなどの複数の周波数を含む光を放射する光源とすることが可能である。光源5は、また、たとえばレーザーまたはLEDなどの単一周波数の光または狭い周波数帯域の光のみを放射するものであってもよい。光源5は、また、1つ以上の発光体を組み合わせたものを備えていてもよい。さらにフィルターまたはフィルターのセットを使用することも可能である。
【0066】
前記のテレセントリック励起光学システムは、視野レンズ8、励起フィルターシステム12および励起レンズ配列10に加えて、いくつかの追加的な部品を備えることが可能である。一実施形態では、このテレセントリック励起光学システムは光源から光学システムの光学部品に光を転送するために光ガイドをさらに備えている。光ガイドを用いることによって種々の光源5からの光を結合し、この結合光を光学部品に対して同時に転送することが可能となる。励起光9および/または蛍光信号7の方向については、ミラーまたはビームスプリッター14または光偏向ユニットによって、変更することが可能である。さらに光ミキサー(たとえば、光ミキシングロッド)を使用することも可能である。
【0067】
光源5からの光は、視野レンズ8および励起レンズ配列10を含むテレセントリック励起光学システムを用いて複数の個々の検出部位2からなる配列上に結像される。したがって、本発明におけるこの実施形態では複数の個々の検出部位における励起は、物体空間において好ましくはテレセントリックな励起光学システムによって実行される。
【0068】
図1に示した光学機器1については、化学発光および生物発光の信号の結像にも適用することが可能である。これらの場合においては、励起光9は必要ないので、光源5、励起レンズ配列10および励起フィルターシステム12を省略することができる。蛍光信号7を結像するための光学機器1において他の設計を実施することも可能である。
【0069】
図1に示した光学機器1は、視野レンズ8から光学センサー6に向けて光を転送する結像レンズ配列11を備えている。このことは複数の個々の検出部位2からなる配列において生成された蛍光信号7が視野レンズ8および結像レンズ配列11を含むテレセントリック結像光学システムによって光学センサー6上に結像されることを意味する。本発明における他の実施形態では、このテレセントリック結像光学システムは、たとえば光ビームフォールディングユニット、および/または、特別な結像フィルターシステム13をさらに備えている。
【0070】
テレセントリック結像光学システムについては、光学センサー6のサイズおよび複数の個々の検出部位2からなる配列の空間的な大きさに対して最適化しなければならない。励起レンズ配列10の場合のように、結像レンズ配列11は少なくとも1つのレンズを含んでおり、好ましくは少なくとも5つのレンズからなる配列を含んでいる。励起光学システムに比べて、結像光学素子に関してはより高度な要件が考慮されなければならない。このため結像レンズ配列11に関しては、レンズを多数にすることが有利である。蛍光結像は、横方向に分布する検出部位2を光学センサー6上に正確に再現するために、正しい縮尺を有しなければならない。さらに球面収差、色収差、コマ収差、非点収差、特別の誤差または視野の湾曲のような結像誤差を考慮に入れなければならない。光学センサー6上に蛍光信号7を結像するので、蛍光結像は、好ましくは視野レンズ8の物体側のみにおいてテレセントリックな結像光学システムを用いて実行される。結像レンズ配列11については、結像ユニット15を形成するために光学センサー6と結合することも可能である。
【0071】
本発明にしたがう光学機器1における同様に好ましい実施形態は、前記した配列における個々の検出部位2が平面支持体4上のスポットであり、これらのスポットに蛍光色素が塗布されている光学機器である。光学機器1における前記の好ましい実施形態の実施例は、平面配列における様々なスポットからの蛍光信号7を同時に結像するためのデバイスである。特定の実施形態では前記の配列がDNA配列であり、このDNA配列では、横方向に限定されたエリアが種々の配列を有するDNAプローブによって官能化されている。この場合本発明にしたがう光学機器1は、たとえば相補的DNA鎖を蛍光色素によって標識する場合に、核酸を含むサンプルとのハイブリダイゼーション事象をモニターすることが可能である。サンプル中のDNA分子を標識することに代えて、ハイブリダイゼーション事象を二本鎖核酸に結合している蛍光色素によって可視化することも可能である。
【0072】
図1に示した実施例では前記のテレセントリック励起光学システムが、たとえば450nm〜650nmの周波数で動作する一方、前記のテレセントリック結像光学システムが500nm〜740nmの周波数で動作する。この実施例では、光源5はキセノンランプであり光学センサー6として、1024×1344の画素を有する冷却2/3インチCCDチップが機能している。光学機器1は、96個のウェル(間隔9mm、直径5mm)および384個のウェル(間隔4.5mm、直径3mm)を使用することが可能となるように、83mm×117mmの面積を結像するように設計されている。特定の蛍光色素に対する励起および結像のために好適な波長はフィルターホイールによって調整されている。
【0073】
この実施例ではテレセントリック励起光学システムは、光源側に0.35の開口数を有している一方、マイクロタイタープレート側に0.014の開口数を有している。幾何学的な理由のために光源5がCCDチップに対して垂直に配置されている一方、励起光ビーム9が追加のミラーを用いるによってマイクロタイタープレートの方向に向けられている。励起光ビーム9自体は、マイクロタイタープレートに対して2°の入射光を有している。また、物体視野(88mm×122mm)の強度変化は10%未満である。ビーム経路が1つだけではなく多数のビームを含んでいるために、この構成における「励起光ビーム9」は「照明の光軸」と同じ意味である。結像光学システムは、また物体側に0.014の絞り(diaphragm)を有しているとともに、物体と画像との間の距離(800mm)に対応する、0.075の結像スケールを有している。この大きな距離については、2つのフォールディングミラーを用いて達成することが可能である。この結像光学システムは、±3mmの焦点深度を有している。
【0074】
図1にしたがう限定的な既知の機器1は、光源5の放射出力を利用して非常に非効率的に検出部位2の蛍光を励起している。これは本質的に、検出部位2における周囲のエリア(たとえば、マイクロタイタープレートにおける一体成形された熱伝達カバー)を照明しているからである。実際には、蛍光励起にとっては、検出部位2上に照射される光(たとえば、このためにマイクロタイタープレートの熱伝達カバーに設けられた孔を介して照射される)だけが有用なのである。このことについて、図2に基づいて説明する。
【0075】
図2は、マイクロタイタープレートのウェルにおける上側部に配置されている、前記した熱伝達カバー16を示している。これは、通常は不透明であり、各ウェルに応じた孔17を有している。そして、この孔17を介して、ウェル内の溶液が励起光9によって照明され、さらにこの孔17を介して溶液から放射された蛍光信号7が検出される。
【0076】
熱伝達カバー16における孔どうしの間隔dは、たとえばSBSマイクロタイター標準形式にしたがう9mmである。孔の直径Dは5.2mmであり、これはウェルにおける円筒形部分の直径(5.5mm)よりほんのわずかに小さく、かつ、孔どうしの間隔dに比べると著しく小さい。熱伝達カバー16における不透明な部分によって遮断されることによって失われる光については、孔どうしの間隔dおよび孔の直径Dから後述するように計算することが可能である。
【0077】
孔17の面積ALは、以下のようになる。
【数4】
【0078】
熱伝達カバー16内の各孔17については、エッジの長さが正確に孔どうしの間隔dである四角形であって、間をあけずに周辺の四角形と互いに隣接している四角形に対して割りあてることが可能である。この四角形の面積AQは、以下のようになる。
【数5】
【0079】
照明に使用される励起光9の割合ηAは、ALのAQに対する比率である。
【数6】
【0080】
したがってηAの値は純粋に幾何学的な比率によって決定され、「充填率(filling factor)」として解釈されることが可能である。この充填率および検出部位2の蛍光励起における効率は、本発明にしたがう対物レンズアレイによって改善される。
【0081】
蛍光励起の効率に加えて、本発明はさらに蛍光検出も改善する。これは従来技術にしたがう光学機器1が光学センサー6に向かう蛍光信号7の放射フラックスを非効率的に利用しているからである。検出部位2において色素分子から放射される蛍光は、換言すれば空間的に等方的な方法で放射される。この光におけるわずかな部分だけが検出光学素子によって検出され、かつ、検出器6に向かう。図1に示した検出光学システムの開口数は、きわめて小さく、典型的にはNA=0.014である。検出光学素子の開口数NAと、これらの光学素子によって検出される立体角ΩDとの間の関係は、以下のようになる。
【数7】
【0082】
蛍光放射によって照明される完全な立体角Ωtotは4πである。したがって光学センサー6を用いた測定のために使用される蛍光の部分ηDは、約0.05%だけである。
【数8】
【0083】
本発明は蛍光励起の効率性だけでなく蛍光検出の効率性についても改善する。このことは、視野レンズ8と熱伝達カバー16または複数の個々の検出部位2からなる配列との間に対物レンズアレイ18を配置することによって達成される。
【0084】
図3に、対物レンズアレイ18の構成部品および位置が示されている。対物レンズアレイ18は、視野レンズアレイ素子20を備えた視野レンズアレイ19および瞳レンズアレイ素子22を備えた瞳レンズアレイ21を有しており、視野レンズ8と複数の個々の検出部位2からなる配列との間のビーム経路に配置されている。したがって、この対物レンズアレイ18については、アレイ対物レンズと称することも可能である。視野レンズアレイ19は、視野レンズ8と向かい合っており、また、瞳レンズアレイ21は、複数の個々の検出部位2と向かい合っている。視野レンズアレイ19は、瞳レンズアレイ21と平行に配置されている。このようにこの実施例では、光学機器1は、マイクロタイタープレートにおけるウェルの数に対応する、複数の光学チャネルを有している。そして、各光学チャネルは、専用の視野レンズアレイ素子20および専用の瞳レンズアレイ素子22を備えている。
【0085】
物体面は従来技術にしたがう光学機器1の場合と同様に、好ましくはウェルと向かい合っている熱伝達カバー16の下側部に配されている。この物体面は視野平面(field plane)を形成しており、それに接合しているこの視野平面が視野レンズアレイ素子20内に、すなわち瞳レンズアレイ素子22から見て外側を向いている視野レンズアレイ素子20の表面上に位置している。視野レンズ8または視野レンズアレイ素子20の視野平面と、熱伝達カバー16の視野平面とは、本発明にしたがう対物レンズアレイ18においても互いに接合されたままである。より正確に表現すれば、視野レンズ8は単独では視野平面を有していないけれども、視野レンズ8を含む検出光学システム(結像レンズ配列11)が視野平面を有している。これらはともに、視野レンズアレイ19における上側部の画像を光学センサー6上に形成するようになっており、視野レンズ8の単独によるわけではない。これは照明ブランチにも準用される。
【0086】
図4は、視野レンズアレイ19および瞳レンズアレイ21を備えた、本発明にしたがう対物レンズアレイ18を示している。この構成における好ましい実施形態では、視野レンズアレイ19と瞳レンズアレイ21との間に絞りアレイ23が配置されている。視野レンズアレイ素子20および瞳レンズアレイ素子22を含む2レンズの対物レンズは、いずれの場合にも、マイクロタイタープレートの各ウェルまたは熱伝達カバー16内の各孔17に割りあてられている。これらの対物レンズは互いに同一である。このように視野アレイ光学配列18では、いずれの場合にも視野レンズアレイ素子20および瞳レンズアレイ素子22から形成されているレンズ対が、いずれの場合にも検出部位2の1つに割りあてられている。
【0087】
マイクロタイタープレートおよび熱伝達カバー16は、従来技術に比して、視野レンズ8に対する元来の位置(約60mm離れた位置)から取り除かれている。これは、これらの間に配置され、かつ、対物レンズアレイ18における96個の対物レンズの結像面(励起光9による照明に関する結像面)内に配置された、対物レンズアレイ18のためである。従来技術における場合と同様に熱伝達カバー16の下側部における元来の位置は、好ましくは、対物レンズアレイ18における96個の対物レンズの物体面(蛍光信号7の検出に関する物体面)として選択される。対物レンズアレイ18におけるこれらの対物レンズは、一方において、照明の充填率を改善し、また他方において、これらは、検出の開口数を増大する。このことは、図5から図8に基づいて、以下のように説明される。
【0088】
図5および図6は、96チャネルの対物レンズアレイ18における、1つのチャネルを示している。この対物レンズアレイ18は、視野レンズアレイ素子20、瞳レンズアレイ素子22および、これら双方のレンズ間における瞳レンズアレイ素子22に近い位置に配された、絞りアレイ23の開口部を備えている。励起光9による蛍光励起のためのビーム経路が、図5に描かれている。図6は、蛍光信号7の蛍光検出のためのビーム経路を示している。いずれの場合にも、瞳レンズアレイ21における1つの瞳レンズアレイ素子22は、検出部位2の1つの上に(すなわち、熱伝達カバー16内の孔17における低い方のエッジ上に)、視野レンズアレイ19における視野レンズアレイ素子20(または、視野レンズアレイ素子20のエッジ)の画像を形成している。検出部位2は、これらの図における下端部に配置され、そこに視野平面を形成している。熱伝達カバー16における個々の関連する孔17は、図5および図6には示されていないが、検出部位2上の視野平面から瞳レンズアレイ素子22に向けて上方向に延びている。図5から図7に示すように、瞳レンズアレイ素子22および視野レンズアレイ素子20からなる配列は、照明(6)および検出(5)システムの絞りによって、絞りアレイ素子23に対して光学的に接合している。
【0089】
図示されていない視野レンズ8は、視野レンズアレイ素子20の上部、すなわち、視野レンズアレイ素子20における励起光9の入射側および視野レンズアレイ素子20における蛍光信号7の出射側に配置されている。ここで、すなわち視野レンズアレイ素子20の上部では、複数の主ビームが平行に走っており、さらにこれらのビーム束の軸も平行である。すなわち、この構成は、この領域においてはテレセントリックである。視野レンズアレイ19の視野レンズアレイ素子20は、励起光9に関する照明瞳および蛍光信号7に関する検出瞳を生成する。対物レンズアレイ18は、視野(物体、画像)だけでなく、絞り(瞳)も結像する。複合的な光学システムを設計する際には、視野の結像だけでなく、瞳の結像についても考慮に入れるべきである。
【0090】
入射側(図6の最上部)では、蛍光検出に関する光線の束の軸は、互いに平行であり、また、光軸に対しても平行である。蛍光励起に関する光線の束は、入射側(図5の最上部)において同様に互いに平行となっているものの、光軸に対しては蛍光検出とは対照的にわずかに傾いている。この傾きは、蛍光励起および蛍光検出に関する光線の束が視野平面(検出部位2における物体面)を突き抜けないように(図10も参照されたい)選択されている。これは、励起光9と蛍光信号7との間の分離を実現するためである。
【0091】
当然のことではあるが、蛍光励起が光軸に対して傾いている一方、蛍光検出が光軸に対してある角度をなして実施されるような、反対向きの配置を形成することも可能である。または、蛍光励起および蛍光検出を、光軸に対して異なる角度をもって実行することも可能である。蛍光励起および蛍光検出に関する入射側におけるビームの方向は、機器1の光学システムによって、あらかじめ決定されている。これらは、光学機器1内における照明ビーム経路および検出ビーム経路の、横方向に分離されている絞りによって形成されている。通常、検出の主ビームについては、これらが光軸に平行となるように選択することが有利である。対称性の破れると、通常、結像能力における障害を引き起こす。実際には、良好な結像能力は、照明に関する場合よりも検出に関する場合に、より必要とされる。
【0092】
図7は、図5および図6の組み合わせたものにおいて、本発明にしたがう対物レンズアレイ18のチャネルを介する部分を、絞りアレイ23の絞りとともに示している。この絞りアレイ23は、2つの分離されている絞り開口部24、25を備えており、その1つは励起光9による蛍光励起に関するものであり、もう1つは蛍光信号7の蛍光検出に関するものである。蛍光励起に関するビーム経路と、蛍光検出に関するビーム経路とが、一緒に示されている。この実施例では、視野レンズアレイ素子20と瞳レンズアレイ素子22との間の絞り23は、2つの分離された絞り開口部24、25を、チャネルごとに有している。しかしながら、各チャネル対して、1つだけの絞り開口部を設けることも可能である(前記を参照されたい)。軸上にない絞り開口部24(左)は、蛍光励起のために励起光9を通過させる。軸上の絞り開口部25(右)は、蛍光検出のために蛍光信号7を通過させる。さらに絞り開口部24も検出光を通過させる。これは蛍光光源が等方的に光を放射するためである。しかしながら、この光は遅くとも検出光学素子の絞りにおいて吸収される。検出部位2、すなわち熱伝達カバー16内の孔17は、瞳レンズアレイ素子22によって、形式充足法によって(すなわち、形状およびサイズの点で正確に)、視野レンズアレイ素子20の上側部に結像される。このようにこれら上側部と熱伝達カバー内の孔17とは光学的に接合している。
【0093】
熱伝達カバー16における孔の直径Dに対する孔どうしの間隔dの比率は、好ましくは、96個の対物レンズにおける結像スケールβに関して、以下のように選択される。
【数9】
【0094】
一般的に複数の検出部位2が直径Dを有しており、互いの間隔dをおいて配置されている場合には、瞳レンズアレイ素子22の結像スケールβは直径Dに対する間隔dの比率に等しくなっていることが有利である。この場合、対物レンズアレイ18における個々の2レンズの対物レンズのそれぞれは、熱伝達カバー16における関連する孔17の画像を形成し、この画像はサイズDを有する。この場合、照明光学素子の視点からは、熱伝達カバー16内の孔17は、結像スケールβによって拡大されて見える。そして、複数の孔17の画像間における複数の隙間は、これらの画像が接線方向において互いにぴったりと接しているように互いに縮んで見える。
【0095】
図8は、対物レンズアレイ18によって結像される物体としての、図2に示した熱伝達カバー16の上面図を示している。また、図9は、対物レンズアレイ18によって結像された後の、図2に示した熱伝達カバー16の画像を示している。孔17だけが拡大されて見える一方、これら間の間隔が同時に拡大されて見えない、という事実は、これが、対物レンズによる拡大結像ではなく、むしろ、光学アレイによる結像であることに起因する。このように対物レンズアレイ18の光学アレイは、孔17の拡大画像を生成するだけであって、これらの間の間隔dを変更しない。結像スケールβによって画像が拡大されているため、図9における孔の画像26の面積ALBは、以下のようになる。
【数10】
【0096】
利用されている励起光9の割合η'Aは、AQに対するALBの比率である。
【数11】
【0097】
蛍光励起に関する対物レンズアレイ18の利得係数(gain factor)gAは、ηAに対するη'Aの比率である。
【数12】
【0098】
蛍光検出に関する対物レンズアレイ18の利得係数gDは以下に示す検討から得られる。光学機器1における検出光学素子の物体面における開口数NAは0.014である。この平面は対物レンズアレイ18によって、96個の分離されたチャネル内において熱伝達カバーの下側部上に結像される。この方向においては、対物レンズアレイ18は縮小効果を有している。したがって熱伝達カバー16の下側部上の開口数NA'は、結像スケールβに等しい係数によって光学機器1における検出光学素子の物体面内にある場合よりも大きくなっている。
【数13】
【0099】
検出光学素子の対物レンズアレイ18を用いて検出された立体角Ω'Dは以下のようになる。
【数14】
【0100】
対物レンズアレイ18によって利用されている蛍光の割合η'Dは以下のようになる。
【数15】
【0101】
蛍光検出に関する対物レンズアレイ18の利得係数gDは、ηDに対するη'Dの比率である。
【数16】
【0102】
対物レンズアレイ18におけるトータルの利得係数gtotは、蛍光励起に関する利得係数gAと、蛍光検出に関する利得係数gDとの積である。
【数17】
【0103】
単純な変換を実行することによって、対物レンズアレイ18の利得係数gtotを、以下のように表現することも可能であることがわかる。
【数18】
【0104】
このようにこれは幾何学的な数量だけに、すなわち熱伝達カバー16における孔どうしの間隔dおよび孔の直径Dだけに依存している。
【0105】
この対物レンズアレイ18は、充填率(パッキング密度)を増大する。この実施例においては、励起光9によるウェルの照明に関して、3倍に増大する。さらに、この対物レンズアレイ18は開口数を増大する。この実施例においては、蛍光信号7の検出に関して√3倍に増大する。しかしながら利得は、開口数の2乗にほぼ比例する。この場合、これは結果的に検出において3倍の利得をもたらす。双方を重ね合わせることにより、光学機器1による蛍光測定の信号利得はこの実施例においては9倍となる。
【0106】
利得係数gtotを計算する際には、対物レンズアレイ18の結像が口径食なく生じる、ということが黙示的に仮定されている。この場合、口径食から自由であることは、有用な光がビーム経路においてまったく遮断されることなく、光学機器1の照明および検出光学素子における全てのビームが対物レンズアレイ18を通過しなければならない、ということを意味する。このことは当然ながら熱伝達カバー16または絞りアレイ23によって遮断される他の光(散乱光、干渉光)にもあてはまる。
【0107】
図10は、光学機器1における照明および検出光学素子のビーム方向を、サイナスグリッド(sinus grid)において示している。このサイナスグリッドは、ビーム方向を、開口数として直接的に解釈すること可能とする。視野レンズアレイ19の位置におけるビーム方向が示されている。熱伝達カバー16(または検出部位2)の位置においては、これらのビーム方向は、さらに異なって見える。特に、この場合、これらは、視野依存性(または、位置依存性)を有している。光学機器1における照明および検出光学素子がテレセントリックであるために、図10に示されているビーム方向は、収差の範囲内において視野依存性を有している。対物レンズアレイ18における1つのチャネルに関しては、蛍光信号7に関する検出システムにおける全てのビーム方向が、軸上の曲線27(図6)内にある。また、励起光9に関する照明システムにおける全てのビーム方向は、軸外の曲線28(図5)内にある。これらの曲線27、28自体は、絞りのエッジによって規定される。破線の曲線は、対物レンズアレイ18の全体における全てのチャネルの全てのビームに関する、光軸を中心とするエンベロープ29を示している。このエンベロープ29における個別の開口数は0.059である。
【0108】
双方の曲線27、28によって囲まれている領域は、接触も重複もしておらず、むしろ隙間を介している。この事実のために、励起光9を蛍光信号7から分離することが可能である。国際公開第99/60381号パンフレットによれば、これは従来技術の場合とは異なっている。なぜならば、従来技術では2つの対応する曲線27、28の領域が完全に重複しているからである。
【0109】
入射側における対物レンズアレイ18の開口数がエンベロープ29の開口数(この場合には0.059)よりも大きく、かつ、入射側における瞳の位置がテレセントリックである場合には、対物レンズアレイ18は口径食なく動作する。対物レンズアレイ18における入射側でのテレセントリック性は、対物レンズアレイ18における前面レンズ(視野レンズアレイ素子20)の焦点面の近傍に絞り(絞り24、25または絞りアレイ23)を配置することによって実現される。ビームの開口数NAと絞り面におけるビーム高さh(光軸に垂直な平面内における貫通ポイントにおいて測定された、光軸からの距離)と前面レンズ(視野レンズアレイ素子20)の焦点距離との間の関係は以下のようになる。
【数19】
【0110】
絞り面における最大のビーム高さhは、孔の間隔の半分d/2よりも小さいことが必要である。これは、対物レンズアレイ18の隣接チャネルにおける空間的な貫通を避けるためである。
【数20】
【0111】
これに応じて、前面レンズ(視野レンズアレイ素子20)の焦点距離に関する要件は以下のようになるべきである。
【数21】
【0112】
いくつかの実施形態では、検出部位2に関して第1および第2の絞り開口部24、25の絞り画像が重複しない程度に、視野レンズアレイ素子20の焦点距離が小さいことが、励起光9と蛍光信号7との分離を可能とするために好ましい可能性もある。さらに、いくつかの実施形態では、隣接するチャネル(隣接する検出部位2)における絞り画像が重複しない程度に、視野レンズアレイ素子20の焦点距離が小さいことが、干渉光を抑制するために好ましい可能性もある。対物レンズアレイ18の周期性のために、入射側において、右のエッジと左のエッジとにおける光線の束を一致させることが可能である。
【0113】
図11は、直接的に隣接している右側のエッジの束と左側のエッジの束とを前面レンズ(視野レンズアレイ素子20)がどのように分離するのか、および個別の絞りの方向において空間的に分離されている光線を、この前面レンズがどのように偏向するのか、について示している。これらの前面レンズ(視野レンズアレイ素子20)は、光学機器1の照明および検出光学素子における視野平面内に、直接的に位置している。このためこれらは、きわめて一般的に視野レンズ(この場合には視野レンズアレイ素子20)とみなされている。換言すれば、準視野レンズ(near-field lenses;すなわち、視野の近くにある(このため物体または画像の近くにある)もの)は視野レンズとみなされており、準瞳レンズは瞳レンズとみなされている。視野平面は照明されているか、または結像されている平面であり、すなわち物体、画像または中間画像である。瞳は、絞りまたは絞りの画像である。視野レンズは瞳の画像を形成し、瞳レンズは視野の画像を形成する。視野レンズアレイ19は視野の近傍にあり、瞳レンズアレイ21および絞りアレイ23は瞳の近傍にある。
【0114】
複数の視野レンズアレイ素子20は、対物レンズアレイ18における全体的な屈折力に対して大きくは寄与していない。これはそれらの位置が視野に近く、それらの焦点距離が比較的に大きいことに起因する。すなわちこれらは、画像の位置およびサイズを変更しないか、または小さい範囲で変更するだけである。これらの中心的な機能は、より正確にいえば、光学チャネルを空間的に分離することにある。すなわちこれらは、ビーム経路に関する瞳を形成する。これにより瞳の位置が調整されるとともに、光線の角度が制限される。これらの視野レンズアレイ素子20は、好ましくは、出射側(観察位置、検出部位2の側部)において、テレセントリック光学システム(上述のように、図11の上部はテレセントリック、底部は非テレセントリック)を提供する。すなわち絞りの画像は、無限遠となる。瞳は、開口絞りの画像である。光学システムには、入射瞳と出射瞳とが存在する。これらの画像が無限遠である場合には、光学システムは入射側および出射側において、テレセントリックとして示される。視野レンズアレイ素子20のそれぞれは、その絞り面において照明システムの絞りにおける軸外の画像および検出システムの絞りにおける軸上の画像を形成する。これらの画像はチャネルによって分離されている。
【0115】
対物レンズアレイ18のレンズ対における全体的な屈折力は、ほとんどいずれの場合にも近いレンズ(瞳レンズアレイ素子22)内に集中されている。これらが瞳の近傍に配置されているために、これらも非常に一般的に瞳レンズ(この場合には瞳レンズアレイ素子22)とみなされる。瞳レンズアレイ素子22は、視野レンズアレイ素子20におけるエッジの画像を形成する。この画像は、熱伝達カバー16の孔17における低い方のエッジ上において形状に忠実である。このため熱伝達カバー16内の孔17は、視野絞りのアレイとして作用する。
【0116】
いずれの場合にも、絞りアレイ素子(絞り開口部、絞り)は、視野レンズアレイ素子20の焦点絞り面内に配置されている。またこの絞りアレイ素子は、照明システムにおける絞りの画像および検出システムにおける絞りの画像をマスクする。これらの絞りアレイ素子の全体が、絞りアレイ23を形成している。この意味における「マスキング」は、絞りアレイ23が、マスクまたはスクリーンを形成すること(この場合、各絞りアレイ素子は1つ以上の絞り開口部を有している)、絞りアレイ23が視野レンズアレイ素子20および瞳レンズアレイ素子23内に割りあてられていること、および絞りアレイ23が個々の視野レンズアレイ素子20および瞳レンズアレイ素子23を介するビーム経路のためのマスク(すなわち、対物レンズアレイ18の各「チャネル」のためのマスク)を形成することを意味している。このマスキングは、図2から図12に示した実施例においては正確な形状を有している。すなわち、絞りアレイ素子における2つの開口部の形状は、励起レンズ配列10および結像レンズ配列11における絞りの画像の形状に一致している。他の実施形態では、絞りアレイ素子の形状を視野レンズアレイ素子20および/または瞳レンズアレイ素子23および/または検出部位2(熱伝達カバー16内の孔17)の形状に対しても一致させることが可能である。
【0117】
他の実施例では追加的に、このマスキングをサイズに忠実なものとすることも可能である。この場合、絞りアレイ素子のサイズは、たとえば励起光9における照明瞳のサイズ、および/または、蛍光信号7における検出瞳のサイズ、および/または、検出部位2(熱伝達カバー16内の孔17)の瞳のサイズと一致する。
【0118】
しかしながら、このマスキングについては形状に忠実なもの、および/または、サイズに忠実なものとする必要はない。たとえば絞り開口部(絞りアレイ素子)を円形にしないことも可能である。この場合たとえば、2つの絞り画像(照明システム(励起光9の照明瞳)における絞りの画像および検出システム(蛍光信号7の検出瞳)における絞りの画像を、たとえばチャネルごとに共通の外接矩形によってマスクすることも可能である。このことは、製作精度に対する要求水準を低減するとともにチャネルのクロストークを著しく損なうこともない。
【0119】
このように前記のような実施形態では、対物レンズアレイ18は、励起光9の照明瞳および蛍光信号7の検出瞳のためのマスクを形成する、絞りアレイ23を有している。この場合、図示されている実施例では絞りアレイ23は、視野レンズアレイ19と瞳レンズアレイ21との間に配置されている。しかしながら絞りアレイ23については、瞳レンズアレイ21と複数の個々の検出部位2からなる配列(熱伝達カバー16)との間に配置することも可能であり、この場合には瞳レンズアレイ21の近傍に配置することが好ましい。
【0120】
図12は、前記のような絞りアレイ23における上面図の例を示している。この絞りアレイ23では、絞りアレイ素子が絞り開口部24、25の対から形成されている。このように、図示されている絞りアレイ23には96対の絞り開口部24、25が備えられており、これらのそれぞれは96個の検出部位2の1つに対して割りあてられている。これらの絞り開口部対は、いずれの場合にも絞り開口部対における第1の絞り開口部24が検出部位2に関する励起光9を通過させるように、および絞り開口部対における第2の絞り開口部25がこの検出部位2からの蛍光信号7を通過させるように構成されている。孔の間隔dおよび面積AQに対応するエッジ長によって上述した四角形の範囲を定める仮想線の経路についても例示のために示されている。現実の絞りアレイ23では、これらの線は通常示されていない。
【0121】
絞りアレイ23における本質的な機能は、対物レンズアレイ18の様々なチャネル間におけるクロストークを抑制することにある。このクロストークについては、対物レンズアレイ18内および特に瞳レンズアレイ21内における、内部的な反射光(有向の干渉光)または無向の拡散された散乱光によって生じる可能性もある。絞りアレイ23内における孔24、25のトータルの面積は、外見上、絞りアレイ23の全面積に比べてきわめて狭くなっている。このことにより、蛍光信号7が形成される部位(すなわち検出部位2)に対して実際にすでに非常に近づいている干渉光と有用な光とを(検出ビーム経路における早期のポイントにおいて)非常に効果的に分離することが可能となる。これは光学的な検出に関して非常に有利なことである。これらの面積の比率についても、同様に充填率として説明することが可能である。クロストークの抑制に関する絞りアレイ23の有効性は充填率の減少にともなって増大する。
【0122】
本発明における本質的な特徴および有利なさらなる展開については、以下のように短く要約することが可能である。すなわち対物レンズアレイ18は、視野レンズアレイ19および瞳レンズアレイ21を備えており、好ましくは追加的な絞りアレイ23も備えている。視野レンズアレイ19は照明瞳および検出瞳を生成し、これらはいずれの場合にも検出部位2の数に対応している(前記の実施例では、それぞれ96個)。絞りアレイ23は、これらの瞳(前記の実施例では、192個)をマスクすることによって、局所的なクロストークを防止する。瞳レンズアレイ21は、検出部位2(マルチウェルプレート)上に視野レンズアレイ19の画像を形成する。照明に関しては、対物レンズアレイ18は検出部位2(ウェル)の充填率(パッキング密度)を増大する検出に関しては、対物レンズアレイ18は開口数を増大する。前記の配置により名目上の信号利得(ここでは9倍)がもたらされる。
【0123】
視野レンズアレイ19の視野レンズアレイ素子20は、円形の境界線を有するように設計される必要はない。1つの好ましい実施形態では、視野レンズアレイ素子20は矩形である。図13は、熱伝達カバー16の孔17内における矩形の視野レンズアレイ素子20の画像を示している。熱伝達カバー16内における孔の間隔d(前記の場合には9mm)に対応するエッジ長を有する矩形の境界線を用いることによって、全ての視野レンズアレイ素子20をギャップなく互いに結合することが可能となる。なおギャップがないとは、すなわち光学的な結像のために使用されない視野レンズアレイ素子20間の隙間がない、ということである。ここで図13に示すように、熱伝達カバー16の孔17における低い方の円形のエッジ上に、すなわち複数の検出部位2における円形のエッジ上に、視野レンズアレイ素子20における4つの角が結像されるように結像スケールβQを選択した場合、利用される励起光9の割合η'AQは以下のように与えられる。
【数22】
【0124】
外見上、視野レンズアレイ19、絞りアレイ23および熱伝達カバー16のいずれの上にも遮断はない。
【0125】
蛍光励起のための矩形の視野レンズアレイ素子20を有する対物レンズアレイ18の利得係数gAQは、ηAに対するη'AQの比率である。
【数23】
【0126】
結像スケールβQは、矩形の視野レンズアレイ素子20の対角線(√2・d)における、熱伝達カバー16内における孔17の直径Dに対する比率によって与えられる。
【数24】
【0127】
矩形の視野レンズアレイ素子20の場合、熱伝達カバー16の部位における開口数NA'Qは以下のようになる。
【数25】
【0128】
対物レンズアレイ18を活用して検出光学素子によって検出される立体角Ω'DQは、この場合以下のようになる。
【数26】
【0129】
したがって、対物レンズアレイ18によって利用される蛍光の割合η'DQは以下のようになる。
【数27】
【0130】
対物レンズアレイ18を利用した蛍光検出に関する利得係数gDQは、円形の視野レンズアレイの場合とは対照的に、もはやηDに対するη'DQの比率によって単純に与えられるものではない。それどころか光学センサー6上に結像されているものは、孔17における全体的な円形のエリアではなく、むしろ外接四角形のみである、ということを考慮に入れる必要がある。この矩形の視野レンズアレイ素子20は、対応する視野絞りとして作用する。したがって以下のようになる。
【数28】
【0131】
対物レンズアレイ18におけるトータルの利得係数gtotQは、蛍光励起に関する利得係数gAQと、蛍光検出に関する利得係数gQDとの積である。
【数29】
【0132】
この値は、円形の視野レンズアレイ素子20におけるトータルの利得係数gtotである9.0(前記を参照されたい)よりも大幅に大きい。すでに述べたように、円形の視野レンズアレイ素子20のエッジ上に形状に忠実な方法で視野絞りが結像されるように、対物レンズアレイ18が設計されている場合には、熱伝達カバー16の孔17における低い方の円形のエッジは視野絞りのアレイとして作用する。
【0133】
このように矩形の視野レンズアレイ素子20の場合には、熱伝達カバー16における視野絞りの効果はあてはまらない。このことは図13における円と四角形との間において放射される光が、隣接する4つの視野レンズアレイ素子20に作用する、ということに相当する。しかしながらこれらの視野レンズアレイ素子20は、この光を光学センサー6に転送することはできない。隣接するチャネルの視点からは、この光は対物レンズアレイ18における不適切な開口絞りから生じるものである。この不適切な開口絞りは、隣接するチャネルの開口絞りに比べて、はるかに中心から外れている。このように隣接する視野レンズアレイ素子20に作用する光線は、これらが検出光学素子によって直接に検出される可能性がない程度の大きな開口角を有している。
【0134】
直接的に検出されることのない前記の蛍光は、多重反射の結果として、または検出光学素子における散乱によって、せいぜい光学センサー6にあたるだけである。信号における前記の部分は、原則的には有害となるはずである。なぜならば、この部分は非常に高い可能性をもって誤ったチャネルに割りあてられるはずだからである。しかしながら、実用評価においてコンピュータによる強度の非シーケンシャルなレイトレーシングを使用すると、散乱光における前記の部分は定量化された場合には、実際上ほとんど重要ではなく無視できるものであることが判明した。
【0135】
視野レンズアレイ素子20のエッジを熱伝達カバー16内における孔17の境界線上に結像することは、利得係数に関するボーダーラインケースである。視野レンズアレイ素子20における4つの角は、熱伝達カバー16の孔17における低い方の円形のエッジ上(またはこのエッジの内部)に、すなわち複数の検出部位2における円形のエッジ上に結像される。結像スケールβQが以下のように選択された場合、トータルの利得係数gtot,Qは一定となる。
【数30】
【0136】
四角形における利用可能な面積は減少するが、これに関連する損失は、開口数の増加によって正確に補償される。反対のケースでは利得係数は減少する。なぜならば、一方において開口数は減少するけれども、四角形の面積は同じようには増加しないからである。この場合後者は、熱伝達カバー16内の孔17によって囲まれている。
【0137】
図14は、矩形の境界線を有する視野レンズアレイ素子20を備えた、前記のような対物レンズアレイ18を「上側」の視点から、すなわち励起光9の側から示している。また図15は、図14に示した対物レンズアレイ18を「下側」の視点から、すなわち蛍光信号7の側から示している。この構成では、絞りアレイ素子(絞りアレイ23内の絞り開口部)が長方形の形状を有するように、および、いずれの場合にも、瞳レンズアレイ素子22のチャネルごとに(すなわち、視野レンズアレイ素子20および関連する瞳レンズアレイ素子22ごとに)1つの絞り開口部だけが存在するように、すなわちチャネルにおける励起光9および蛍光信号7の双方のための、1つの共通する絞り開口部が存在するように絞りアレイ素子が設計されている。
【0138】
本発明にしたがう光学機器1については、この出願においては参照されていないけれども、従来技術、特に欧州特許第1681555号明細書または欧州特許第1681556号明細書にしたがう特徴点によって、さらに粉飾することも可能である。これらに開示されている内容は明白に組み込まれている。特に以下に示す有利な特徴点については、好ましい実施形態において実現することが可能である。
【0139】
a)視野レンズ8は、複数の個々の検出部位2からなる配列の平面支持体4に対する入射角α(0°より大きい)を有する、励起光9を生成するように構成されている。より正確に表現すると、αは、照明および検出システムにおける軸間の角度である。2つの軸の一方は、ミラーまたはビームスプリッター14によって曲げられている。
【0140】
b)光学機器1は、少なくとも1つの励起周波数に関して透明性を有する一方、蛍光信号7の周波数に関して反射性を有するミラーまたはビームスプリッター14を、または少なくとも1つの励起周波数に関して反射性を有する一方、蛍光信号7の周波数に関して透明性を有するビームスプリッター14を備えている。
【0141】
c)励起光9の入射角αは、20°よりも小さく、好ましくは10°よりも小さく、最も好ましくは5°よりも小さい。
【0142】
d)この入射角αは、以下のように示される。
【数31】
ここでθ1は励起光学素子の開口半角であり、θ2は結像光学素子の開口半角である。
【0143】
e)結像レンズ配列11は光学センサーに結合しており、結像ユニット15を形成している。
【0144】
f)光学機器1は、1つ、2つ、またはそれより多くのフォールディングミラーを有する、光ビームフォールディングユニットを備えている。この構成ではフォールディングユニットは、光源5からの光および複数の個々の検出部位2からなる配列からの蛍光信号7を折り返すように構成されている。
【0145】
g)前記の配列における個々の検出部位2がウェルに相当し、励起光9がウェルの側壁に平行でウェルに充填される溶液が蛍光色素を含んでいる。
【0146】
h)前記の配列における個々の検出部位2がウェルに相当し、励起光9がウェルの側壁に関して20°より小さい角度を有しており、ウェルに充填される溶液が蛍光色素を含んでいる。
【0147】
i)前記の配列における個々の検出部位2が平面支持体4上の部位であり、これらの部位に対して蛍光色素が塗布されている。
【符号の説明】
【0148】
1 光学機器
2 検出部位
3 保持デバイス
4 平面支持体
5 光源
6 光学センサー
7 蛍光信号
8 視野レンズ
9 励起光
10 励起レンズ配列
11 結像レンズ配列
12 励起フィルターシステム
13 結像フィルターシステム
14 ビームスプリッター
15 結像ユニット
16 熱伝達カバー
17 孔
18 対物レンズアレイ
19 視野レンズアレイ
20 視野レンズアレイ素子
21 瞳レンズアレイ
22 瞳レンズアレイ素子
23 絞りアレイ
24 23における第1の絞り開口部
25 23における第2の絞り開口部
26 孔の画像
27 軸上の曲線
28 軸外の曲線
29 エンベロープ
α 入射角
θ 開口角
AL 孔(物体)の面積
ALB 孔(画像)の面積
AQ 四角形の面積
d 孔どうしの間隔
D 孔の直径
h 光線の高さ
NA 開口数
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNA分析の分野に関する。具体的には、本発明は、複数の検出部位における蛍光強度の平行結像のためのデバイスに関し、さらにこれに関連して、特に蛍光信号の蛍光検出のための励起および結像光学素子に関する。
【0002】
本発明は、DNA分析の分野に関する。具体的には、本発明は、複数の検出部位における蛍光強度の平行結像のためのデバイスに関し、さらにこれに関連して、特に蛍光信号の蛍光検出のための励起および結像光学素子に関する。
【背景技術】
【0003】
当業者は、生体サンプルを分析するために、蛍光法および蛍光技術における様々な用途に精通している。電気泳動法の場合、タンパク質またはDNAの電気泳動バンドを、ゲルまたはカラム中で可視化するために、これらタンパク質またはDNAが蛍光プローブによって標識する。さらに、従前におけるバイオチップの用途のほとんどは、蛍光読み取りに基づいている。この読み取りでは、固体の支持体に固定化されたプローブ分子に対する、蛍光標識されたターゲット分子における特定の結合がモニターされる。液相におけるDNA分析の用途には、色素SybrGreen1などの蛍光ハイブリダイゼーションプローブが含まれる。この色素SybrGreen1は、2つの蛍光プローブおよびエネルギー転移を利用する、2本鎖DNAまたはFRET(fluorescence Resonance Energy Transfer:蛍光共鳴エネルギー転移)プローブに結合するものである。液相における蛍光技術に関する1つの非常に重要な用途としては、リアルタイムでのPCR産物の定量、いわゆるリアルタイムPCRがある。
【0004】
PCR(polymerase chain reaction;ポリメラーゼ連鎖反応)は、2本鎖DNA(deoxyribonucleic acid:デオキシリボ核酸)の量を増幅または増殖するための方法である。PCR装置では、温度サイクリングのためのブロックが、サンプルベッセル(ウェル)を備えた1つ以上の保持デバイスを有している。このベッセルは、DNAの初期量をもってスタートし、より多くのDNAを得るために使用される、反応に関する成分の混合物を収容している。スタート時の成分は、溶液中に、「種苗量」のDNA、特定の初期DNA、DNA要素、酵素および他の化学薬品を含んでいる。前記のブロックの温度は、全てのDNA鎖が二重鎖に再結合する、約60℃のPCR反応における低温の拡張位相と、DNAが単一鎖に分離または変性される、約95℃のより高温の変性位相との間で循環する。このような温度プログラムは、基本的に、各サイクルにおいてDNAを倍増し、これは、DNAの実質的な量を、わずかな初期量から複製することが可能である。DNAの定量的決定は、蛍光測定を使用することによって実行され、これはまた、リアルタイムで実行される。
【0005】
前記のすべての場合において、光学機器、すなわち、蛍光に関する励起および読み取りデバイスは、アッセイの蛍光マーカーを励起するために特定波長の光を供給すること、および、わずかに異なる波長をもって放射されるマーカーからの蛍光を検出することが可能であること、が求められている。全ての蛍光測定デバイスにおける大きな問題は、色素によって放射される蛍光に比べて、励起光の強度がはるかに強いことにある。このために、蛍光信号を正確にモニターすることを可能とするためには、励起ビームが検出器にあたらないことを確保しなければならない。言い換えれば、励起光のビーム経路(光路)は、少なくとも部分的に、蛍光のビーム経路(光路)と異なっていなければならない。この目的のために、一般に、以下に示す測定が採用されている。a)励起および放射フィルターによって、大きくオーバーラップしないスペクトルを分離する。b)垂直照明(または落射照明)、または側面照明を使用する。これらを採用する場合には、照明光のビームは、直接的に検出されることの可能な方向を向かなくなる(暗視野)。少なくとも1つの反射、弾性散乱または蛍光発光(非弾性散乱)が必要とされる。測定b)は、通常、測定a)のサポートとして使用される。これは、測定a)にしたがうフィルタブロッキングが、完全ではないためである。
【0006】
たとえば毛細管の液相において、1種類の蛍光プローブだけがモニターされなければならない場合、蛍光原理を実施することは非常に容易である。この場合、この要件を満たすためには、たとえば、2色性ミラーとフィルターとのセットを備えた白色光源で十分である。しかしながら、サンプル中に1種類より多い蛍光マーカーが存在する場合には、固体の支持体上において横方向に分布する位置、またはマイクロタイタープレートの蛍光をモニターする必要があり(単一のサンプルベッセル内において、異なる色素が存在し検出される場合を除く)、蛍光測定のための光学機器に対する要件を満たすことは、より困難となる。
【0007】
基本的に、横方向に分布する検出部位の蛍光を励起してモニターするためには、2つの異なった戦略が存在する。第1の戦略は、横方向に分布する検出部位を走査し、個々の検出部位を1つずつ連続的に分析していくことである。第2の戦略は、分布する検出部位の全体に対して同時に照明を行って、複数の光学センサー(たとえばCCDチップ)上において、対応する蛍光を結像することである。前記の走査戦略は、支持体を二次元的に移動させる必要がある(たとえば、国際公開第03/069391号パンフレット、独国特許第102 00 499号明細書を参照されたい)、支持体に関して検出器を移動させる必要がある(米国特許出願公開第2002/159057号明細書)、検出器を1つの次元において移動する必要がある一方、支持体を他の次元において移動する必要がある、または光学システムが、1次元または2次元の走査手段(たとえばガルボミラー)を備える必要がある、という明白な欠点を有している。一方、支持体全体を同時に照明する第2の戦略における主な難点は、分布している検出部位の全体に対して、均一な照明を行わなければならない点にある。
【0008】
分布している検出部位の全体にわたって均一な照明を行うことの代替法は、複数の光源からなる配列を使用することにあり、これにより個々の検出部位はその各自の光源によって照明される。独国特許第101 31 687号明細書は、複数のウェルを備えた熱サイクラー中において、照明のためのビームスプリッターおよびLED配列を用いてPCRの評価を行うための戦略について記載している。独国特許第101 55 142号明細書は、蛍光信号の暗視野モニタリングについて記載している。この場合も、LED配列によってマイクロアレイを照明するが、この実施形態においては、ビームスプリッターは必要とされていない。
【0009】
励起ビームおよび蛍光(検出される蛍光信号の蛍光)におけるビーム経路を、少なくとも部分的に分離するための要件に関しても、同様に2つの異なる可能性が存在する。第1の可能性は、いわゆる落射照明である。この場合ビームスプリッターが利用され、励起ビームおよび蛍光が、光学システムの少なくとも一部を共有している。第2の可能性は、傾斜照明を用いることである。この場合励起ビームが支持体の表面の法線に対して特定の角度を有し、この励起ビームにおける対応する反射が、検出システムにおける開口角の外側にくるように励起ビームが構成される(たとえば、米国特許出願公開第2002/0005493号明細書、欧州特許出願公開第1 275 954号明細書)。
【0010】
米国特許出願公開第2003/0011772号明細書は、ビームスプリッターを用いてプローブ内の複数の蛍光色素を同時に観測するための、光学デバイスを記載している。独国特許出願公開第197 48 211号明細書は、ビームスプリッターと、視野レンズと、各ウェルに光の焦点を合わせるレンズ配列とを用いて、マイクロタイタープレートのウェル内において発生する蛍光信号を同時にモニターするためのシステムを開示している。検出は、フォトダイオード配列またはCCDチップ上に、光を結像することによってなされる。このシステムにおける前記の実施形態において集光される蛍光は、集光レンズの光円錐によって励起される色素の量によって決まるため、ウェルの充填レベルに依存することになる。
【0011】
国際公開第99/60381号パンフレットは、その温度が循環的に制御されるブロック内において、複数のウェルにおけるPCR反応を同時にモニターするためのデバイスを記載している。このデバイスの光学部品も、同様に、ビームスプリッターと、視野レンズと、各ウェルに個々の光ビームの焦点を合わせるウェル用のレンズ配列と、たとえばCCD検出器上に放射光の焦点を合わせる検出手段とを含んでいる。ウェル用のレンズ配列を必要とするために、個々の検出部位におけるサイズおよび横方向の密度が制約される。この構成における光収率は低く、個々の検出ウェル間に無視できないクロストークが発生する(すなわち、チャネル分離が低い)。
【0012】
特開2002−014044号公報は、複数のウェルにおいて発生する蛍光をモニターするための、蛍光分析デバイスを記載している。光学部品は、ビームスプリッターと、ウェルの深さ方向に平行な光によってウェルを一括して照明するレンズシステムとを含んでいる。しかしながら、この画像光学システムは、検出手段上に光を集める。米国特許第6498690号明細書は、テレセントリックレンズを有する対物レンズを用いた結像アッセイ方法を開示している。米国特許第6246525号明細書は、フレネルレンズを含む、サンプルキャリアを結像するための結像デバイスを記載している。欧州特許出願公開第0 987 540号明細書は、テレセントリックレンズのセットを備えた結像ユニットを有する、蛍光アッセイのための結像デバイスを開示している。欧州特許出願公開第1 406 082号明細書は、テレセントリック照明を備えた蛍光読み取りデバイスについて記載している。
【0013】
欧州特許第1 681 555号明細書は、横方向に分布している検出部位からの蛍光信号を同時にモニターするための、改善されたデバイスを記載している。この構成では、ビーム経路が、均一な照明および正確な検出に関して最適化されている。この構成は、結像レンズ配列を有している。このレンズ配列は、視野レンズから光学センサーに向けて蛍光信号を転送するように、および励起光のビーム経路および複数の個々の検出部位からの蛍光信号におけるビーム経路が、視野レンズの物体側においてテレセントリックとなるという特性を有するように構成されている。
【0014】
欧州特許第1 681 556号明細書は、類似しているが、さらに改善されたデバイスについて記載している。このデバイスでは、複数の個々の検出部位からなる配列における平らな支持体に対する入射角度が0°より大きくなっている励起光を生成するように視野レンズが構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
これらのデバイスを用いることによって、よい結果を得ることが可能である。しかしながら、実際には、より小さい蛍光信号であっても検出することを可能とするため、または改善された信号対雑音比または改善された解像度をもつ蛍光信号を検出することを可能とするために光収率をさらに改善することが可能である、ということが判明している。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の目的は、より高い光収率に関してビーム経路を最適化することによって、横方向に分布している複数の個々の検出部位からの蛍光信号を同時にモニターするための改善されたデバイスまたは改善された光学機器を提供することにある。本発明における一態様では、解決すべき問題は、マイクロタイタープレート形式におけるリアルタイム多重化PCRのモニタリングにおける改善に関連している。
【0017】
このように本発明は、複数の個々の検出部位からなる配列の蛍光信号を結像するための光学機器であって配列の全体的なエリアにわたる均一な励起、対応する蛍光信号における正確な結像および高い光収率を実現する光学機器を対象としている。
【0018】
より詳細には、本発明はマイクロタイタープレートのウェル中において生じている複数のPCR増幅を同時にリアルタイムに分析するための光学機器またはターゲットとプローブとの間における特定の相互作用に関する尺度として、マイクロアレイの蛍光強度を結像するための光学機器を対象としている。
【0019】
この目的は、本発明にしたがって請求項1の構成を有する光学機器によって達成される。好ましい実施形態については、従属および独立の請求項および添付図面を用いた後述する説明に由来する。
【0020】
したがって、本発明にしたがう光学機器は、複数の個々の検出部位からなる配列からの蛍光信号を結像するための光学機器であって、
複数の個々の検出部位からなる配列を有する平面支持体を保持するための保持デバイスと、
少なくとも1つの励起周波数を含む光を放射するための、少なくとも1つの光源と、
複数の個々の検出部位からなる配列から蛍光信号を受光するように構成されているとともにコンピュータによって読み取り可能な一次データを生成するように設計されている光学センサーと、
複数の個々の検出部位からなる配列に対して光源からの励起光を転送するとともに、複数の個々の検出部位からなる配列から光学センサーに対して蛍光信号を転送するように構成されている視野レンズと、
光源から視野レンズに対して励起光を転送するように構成されている励起レンズ配列と、
視野レンズから光学センサーに対して蛍光信号を転送するように構成されている結像レンズ配列とを備えた光学機器において、
これが、瞳レンズアレイ素子を有する瞳レンズアレイと、視野レンズアレイ素子を有する視野レンズアレイとを備えた、対物レンズアレイを備えており、
この対物レンズアレイが、複数の個々の検出部位からなる配列と視野レンズとの間のビーム経路内に配置されていることを特徴としている。
【0021】
好ましい実施形態では、励起光のビーム経路と複数の個々の検出部位からの蛍光信号のビーム経路とは、視野レンズの物体側においてテレセントリックである。すなわちこの光学機器はテレセントリックな瞳位置を使用している。より正確に表現すると、視野レンズの物体側および視野レンズアレイの物体側におけるビーム経路は、本発明の範囲内においてテレセントリックである。他方の側では、すなわち瞳レンズアレイと複数の個々の検出部位からなる配列との間では、ビーム経路は、もはやテレセントリックではない。ここではテレセントリズムは、もはや不要である。各検出部位は周期的な対物レンズアレイを介して照明および検出のための同じ非テレセントリックな瞳に「対面」する。
【0022】
本発明は、より小さい蛍光信号であっても検出することを可能とするため、または改善された信号対雑音比または改善された解像度をもつ蛍光信号を検出することを可能とするために高い光収率を可能とするだけでなく、さらに多くの他の利点(たとえば、より急速な蛍光測定など)を有するものである。また従来技術では、従前から低かった光収率を補うために高い照明密度を有する高性能のランプ(たとえば、キセノンアークランプ)が使用されている。しかしながら、このような高性能のランプは、入念な熱除去または冷却を必要とする高い熱的な散逸損失を有するだけでなく、かなり短い寿命(通常、約500時間程度)を有するものである。したがって従来技術では、周期的なランプ交換が必要である。継続的な測定(たとえば、リアルタイムPCR)の最中にランプが壊れた場合、特定のサンプルに対する測定の全体が失われることさえありうる。本発明による信号利得および感度の改善は、これらの問題を回避するとともにより弱い(したがってより長持ちする)ランプを使用可能とし、さらにより長い寿命およびより高い信頼性を有する代替的な光源(たとえばLED)を使用可能とする。このように本発明における重要な利点は、使用される光源の寿命を長期化することにある。したがって本発明における前記の光学機器は、光源として、好ましくはLEDまたはレーザーを有しており、より好ましくはLEDを有している。
【0023】
本発明の文脈において、複数の個々の検出部位からなる配列とは、空間的に分離され、横方向に分布している2つ以上の検出部位からなる物体の総称である。この検出部位は、たとえばマイクロタイタープレートのウェルまたは顕微鏡のスライドまたはスライドガラスにおける官能化表面エリアとすることが可能である。
【0024】
本発明の範囲内においては、前記の配列における平面支持体は、好ましくは平面状の固相である。マイクロアレイの場合、この配列の平面支持体は検出部位の配置されているこの平面状固相の表面である。マイクロタイタープレートの場合、この配列の平面支持体はウェルの開口部が配置されている平面である。この配列の平らな支持体は、ビーム経路内において、個々の検出部位のそれぞれをターゲット位置において安定化するために保持デバイスによって固定されている。
【0025】
本発明の範囲内においては、光源という表現は、単一の周波数を有する光または複数の異なる周波数を有する光を発する発光体を含んでいる。さらにこの光源については、1つより多くの前記発光体からなる配列とすることも可能である。
【0026】
本発明の文脈においては、光学センサー(検出器、変換器)とは、可視光をコンピュータによって処理することの可能な電気信号に変換するためのデバイスである。この光学センサーは、1つの個別の光学センサーまたは、より多くの光学センサーを備えることが可能である。好ましい実施形態では、光学センサーは、空間的に分布された配列(好ましくは、複数の個々の検出部位からなる配列に対応するように設計された配列)に配置された、複数の光学センサーを含んでいる。好ましい実施形態は、たとえばフォトダイオードまたは特に電化結合部品(たとえばCCDチップ)などの半導体部品である。
【0027】
本発明の範囲内においては、テレセントリック光学システムとは開口絞りを有する光学システムであって、この開口絞りが開口絞りと物体との間の光学素子によって、無限遠に向けて投影されている光学システムである。換言すればこのテレセントリック光学システムの主ビームは、物体空間において準平行状態にある。主ビームという表現は、開口絞りの中心を抜けて進む全てのビームのために使用されている。物体、物体面および物体空間という表現は、複数の個々の検出部位からなる配列を有する平面支持体を記述するために使用されている。このテレセントリック光学システムでは、励起レンズ配列および結像レンズ配列の双方はそれら自身の開口絞りを有している。このテレセントリック光学システムは、励起および対物レンズアレイの視野レンズ側における蛍光信号を検出するためのビーム経路に関してテレセントリックである。光軸に垂直な平面内における各物点は、主励起ビームおよび主検出ビームに対応している。全ての主励起ビーム、さらに全ての主検出ビームが準平行状態にあるために物体面内における横方向へのきわめて均一な分布が確保され、また前記配列における中央部にある検出部位が、この配列の端部にある検出部位と同様になる。
【0028】
本発明においては、テレセントリック光学システムは常に視野レンズを有している。本発明の文脈においては、視野レンズとは物体に対して最も近くにあるレンズのことである(本発明にしたがう対物レンズアレイをもたない光学機器の実施形態に関連する)。全ての励起光ビームおよび全ての蛍光信号はこの視野レンズを通過する。この視野レンズは、1つ以上の部品を有することが可能であり、デバイスの追加的な光学部品とともにデバイスの物体空間および/または画像空間におけるテレセントリック性に寄与する。視野レンズにおける1つ以上の部品(色消しシステム)は、それ自体が空間的に分離されたレンズ素子となることが可能である。この視野レンズは光学デバイスの視野を決定する。
【0029】
本発明の範囲内においては、テレセントリック光学システムは追加的に非常に小さな開口部を有する(したがって深い焦点深度を有する)光学システムであることが好ましい。これにより物体空間内において、テレセントリック性を用いている励起光学システムまたは結像光学システムの品質は、光学システムから特定の物点までの距離に無関係になる。テレセントリック光学システムの開口部は無限遠に結像される。
【0030】
本発明の視野レンズは、光源からの励起光を複数の個々の検出部位からなる配列に対して転送する一方、複数の個々の検出部位からなる配列からの蛍光信号を光学センサーに対して転送する。このことはビーム経路内、たとえば光源と視野レンズとの間、視野レンズと光学センサーとの間または視野レンズと複数の個々の検出部位からなる配列(特に本発明にしたがう対物レンズアレイ)との間に追加的な光学部品が導入されるかもしれない可能性を除外するものではない。
【0031】
入射角αは、励起光ビームにおける準平行状態にある主ビームと界面(本発明の範囲おいては前記配列の支持体である)の法線との間の角度として規定されている。
【0032】
本発明における改良された態様にしたがうと、この態様は複数の個々の検出部位からなる配列からの化学発光または生物発光の信号を結像するための光学機器であって、
複数の個々の検出部位からなる配列を有する平面支持体を保持するための保持デバイスと、
複数の個々の検出部位からなる配列から、化学発光または生物発光の信号を受光するように構成されているとともにコンピュータによって読み取り可能な一次データを生成するように設計されている光学センサーと、
複数の個々の検出部位からなる配列から光学センサーに対して、化学発光または生物発光の信号を転送するように構成されている視野レンズと、
視野レンズから光学センサーに対して、化学発光または生物発光の信号を転送するように構成されている結像レンズ配列とを備えた光学機器において、
これが、対物レンズアレイを備えており、この対物レンズアレイが視野レンズアレイ素子を有する視野レンズアレイと瞳レンズアレイ素子を有する瞳レンズアレイとを備えており、
この対物レンズアレイが複数の個々の検出部位からなる配列と視野レンズとの間のビーム経路内に配置されていることを特徴とする光学機器を対象としている。
【0033】
本発明における他の対象は、
本発明にしたがう光学機器と、
PCR反応を実行することの可能な反応混合物をそれぞれ含んだ1つ以上のウェルを有する支持体を加熱および冷却するためのデバイスと、
を備えたリアルタイムPCR機器である。
【0034】
本発明の範囲内においては、加熱および冷却のための手段は核酸の周期的なPCR増幅を実行するために複数の個々の検出部位からなる配列の温度を周期的な方法において制御および変更することの可能な任意の手段を含んでいる。このような加熱および冷却デバイスは熱循環装置において一般的に使用されており、当業者にとって周知のものである。
【0035】
本発明においては、複数の個々の検出部位からなる配列は並行分析を実現するために好ましくはマイクロタイタープレート内またはスライドガラスの官能化表面上において、空間的に分離された2つ以上のアッセイからなる、個々のアッセイ体の総称であることが好ましい。
【0036】
さらにビーム経路という表現は、本発明においては少なくとも視野レンズを介して光源から複数の個々のアッセイからなる配列に向かうまでの間および少なくとも1つの視野レンズを介して複数の個々のアッセイからなる配列から光学センサーに向かうまでの間に光ビームが通過する、全てのエリアを総称するために使用されている。
【0037】
本発明における他の主題は、1つ以上のPCR反応をリアルタイムに同時に実行およびモニターするためのシステムであって、
PCR反応を実行することが可能な反応混合物をそれぞれ含んでいる複数の個々の検出部位からなる配列としてのマルチウェルプレートと、
蛍光DNA結合実体と、
マルチウェルプレートにおける複数の個々の検出部位を光(好ましくは、テレセントリック光)によって照明するとともにマルチウェルプレートの各ウェルからの蛍光信号をコンピュータによって読み取り可能な一次データを生成するために、対応する蛍光信号を受光することができるように構成された光学センサーによって検出するための、本発明にしたがう光学機器を備えた、本発明にしたがうリアルタイムPCR機器とを有するシステムである。
【0038】
好ましくは、前記PCR機器の光源はLEDである。
【0039】
本発明においては、前記の蛍光DNA結合実体は増幅されたDNAをリアルタイムに検出するための任意の蛍光色素または蛍光色素からなる配列である。これらは、当業者によって知られており、増幅されたDNAを検出するために使用することの可能なものであって、たとえば2本鎖DNA特異的結合色素、蛍光標識されたハイブリダイゼーションプローブ(そのターゲット核酸と結合したときにだけ、蛍光を放射する)、TaqManプローブ、分子ビーコン、単一標識プローブ(SLP:single label probes)またはFRETハイブリダイゼーションプローブである。
【0040】
本発明のさらに他の主題は、複数のDNAターゲット配列を増幅、検出および/または定量するための方法において、
PCR反応を実行することの可能な組成物または反応混合物を提供すること、
複数のDNAターゲット配列の増幅が起こり得るように熱サイクリックプロトコルにしたがって反応混合物を処理すること、および
蛍光DNA結合実体および本発明にしたがうリアルタイムPCR機器を用いた複数の増幅サイクルの後に、各DNA配列の存在および数量を少なくとも1回は測定することを含む方法である。
【0041】
PCR反応を実行することの可能な組成物または反応混合物は、本発明の範囲内においては、バッファー、ヌクレオチド、酵素、プライマーおよび蛍光DNA結合実体を含んでいる。
【0042】
熱サイクリックプロトコルは、溶解、アニーリングおよび増幅温度のサイクルおよび時間周期を規定するプロトコルである。
【0043】
本発明は、さらに図面に示された非限定的な実施例に基づいて以下に説明される。そこに記述された特徴点については、本発明における好ましい実施形態を作り出すために単独で、または互いに結合された状態で使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】従来技術にしたがう光学機器における実施形態の概略図である。
【図2】ウェル内のサンプルに対する光学的な分析および照明のための孔を有する、PCRマルチウェルプレートにおける熱伝達カバーを示す図である。
【図3】本発明にしたがう光学機器の実施形態における、本発明にしたがう詳細部分を示す概略図である。
【図4】視野レンズアレイ、絞りアレイおよび瞳レンズアレイを備えた、本発明にしたがう対物レンズアレイを示す図である。
【図5】蛍光励起に関するビーム経路とともに、本発明にしたがう対物レンズアレイのチャネルを通る断面を示す図である。
【図6】蛍光検出に関するビーム経路とともに、本発明にしたがう対物レンズアレイのチャネルを通る断面を示す図である。
【図7】蛍光励起および蛍光検出に関する2つの分離された絞り開口部を有する絞りとともに、本発明にしたがう対物レンズアレイのチャネルを通る断面を示す図である。
【図8】対物レンズアレイによって結像される物体としての、図2に示した熱伝達カバーの上面図である。
【図9】対物レンズアレイによって結像された後の、図8に示した熱伝達カバーの画像を示す図である。
【図10】視野レンズアレイの部位における、検出光学素子および照明光学素子のビーム方向と、対物レンズアレイにおける全ての方向のエンベロープとを示す図である。
【図11】対物レンズアレイにおける4つの隣接するチャネル(いずれの場合にも、3つの視野ポイントからの光線の束を示している)の断面を示す図である。
【図12】対物レンズアレイの絞り画像をマスクするための、絞りアレイを示す図である。
【図13】熱伝達カバーにおける円形の孔内にある、矩形の視野レンズアレイ素子を示す図である。
【図14】矩形状に区切られた視野レンズアレイを備えた対物レンズアレイを、上側の視点から示す図である。
【図15】図14に示した対物レンズアレイを、下側の視点から示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、従来技術にしたがう(たとえば、欧州特許第1 681 555号明細書または欧州特許第1 681 556号明細書にしたがう)、複数の個々の検出部位2における蛍光信号を結像するための、光学機器1における実施形態の概略図を示している。光学機器1は、マイクロタイタープレートにおける個々のウェル中において生じる複数のPCR増幅(ポリメラーゼ連鎖反応増幅)を、同時にモニターおよび検出するために使用される。したがって、マルチウェルプレートのウェルは、複数の個々の検出部位2からなる配列を形成している。
【0046】
光学機器1は、複数の個々の検出部位2からなる配列からの蛍光信号を結像するための機器であって、複数の個々の検出部位2からなる配列を備える平面支持体4を保持するための保持デバイス3、少なくとも1つの励起周波数で光を放射する少なくとも1つの光源5、複数の個々の検出部位2からなる配列からの蛍光信号7を受信するように構成されているとともに、コンピュータによって読み取り可能な一次データを生成するように設計されている光学センサー6、光源5からの励起光9を複数の個々の検出部位2からなる配列に転送するとともに、複数の個々の検出部位2からなる配列からの蛍光信号7を光学センサー6に転送するように構成されている視野レンズ8、光源5からの励起光9を視野レンズ8に転送するように構成されている励起レンズアレイ10および視野レンズ8からの蛍光信号7を光学センサー6に転送するように構成されている結像レンズ配列11を備えている。
【0047】
蛍光信号7を結像することの可能な多くの機器が、当業者によって知られている。光学機器1が、複数の個々の検出部位2(たとえば、マイクロタイタープレートのウェルまたはマイクロアレイのスポット)からなる配列からの蛍光信号7を同時に結像することが可能であるべきである場合、配列の中央および配列の境界部における、励起光9による色素の励起および蛍光信号7の結像が同程度であることを保証しなければならない。さらに光ビーム全体にわたる均一な強度分布の要件が満たされているとしても、支持体4が全体として結像光学素子および励起光学素子の焦点面内にあることを確保するためには、この平面支持体4の位置合わせは、まだなお重要である。これに加えてマイクロタイタープレートのウェルの場合のように、光学機器1によって検出される支持体4または複数の個々の検出部位2が深さを有するときにはいくつかの特別の問題が生じる。
【0048】
前記の問題に対する解決策は、テレセントリック光学素子を使用することにある。テレセントリック光学システムでは、個々の物点から拡がる主ビームは準平行状態にある。実質的にはこれらの主ビームは、光学的な収差のない場合には完全に平行にもなる。ここで後者は、テレセントリック性の誤差と呼ばれるものである。もちろん各物点は、瞳の中央から照射される主ビームだけでなく、瞳の端部から照射されるエッジビーム、さらにエッジビームと主ビームとの間にあるビームも見ている。このように各物点は、円錐内に位置している光線の束に対して配置されている。この円錐の軸は主ビームである。円錐は理想的には小さな開口角を有している。実際には円錐が2つになることもある。すなわちその1つは照明用であり、もう1つは検出用である。テレセントリック光学システムの結果として有限の視野内にあるすべての物点は、ほぼ同じ遠近感および、ほぼ同じ強度をもって観察される。換言すると、テレセントリック光学システムは、大きな焦点深度および均一な励起または結像プロファイルを有している。
【0049】
光学システムの特性については、その開口数(NA:開口数)によって特徴づけることが可能である。この開口数は、一般には高い感度および良好な結像解像度を達成するためにできるだけ大きくすべきである。
【数1】
【0050】
この式では、nは媒体の屈折率であり、θは開口角である。
【0051】
横方向に分布する検出部位2のテレセントリック励起および、この検出部位2からの蛍光信号7におけるテレセントリック結像のための光学機器を設計する場合には、いくつかの態様を考慮に入れる必要がある。
【0052】
一方においては、NA値をできるだけ大きくするべきである。これは、結像光学素子に対してNA値が小さいと結像解像度が悪くなり、励起光学素子に対してNA値が小さいと励起のための照明力が損なわれるからである。他方においては、NA値を最小化することによってマイクロタイタープレートの場合のように、個々の検出部位2からなる配列が一定の深さを有する場合に重要となりえるテレセントリック光学素子の焦点深度を増大することが可能となる。さらに小さい開口を有する光学システムは、一般に安価に製造することが可能である。このため商業的な観点からも小さいNA値が好ましい。
【0053】
テレセントリック光学機器1を全ての周波数範囲において使用することを目的とする場合には、光学素子についても無色のものとしなければならない。蛍光結像自体に関しても対処しなければならない要件はさらに多い。これは光学センサー6上において横方向に分布する検出部位2を正確に再現するために、蛍光結像が正しいスケーリングを有していなければならないからである。さらに球面収差、色収差、コマ収差、非点収差または視野の湾曲などの結像誤差についても考慮に入れなければならない。
【0054】
テレセントリック光学素子を作成するためにはいくつかの方法がある。一般にテレセントリック光学システムは、ビーム路内に複数のレンズを連続的に配置した多素子レンズの形状を有している。テレセントリック光学システムについては、物体面においてテレセントリックなものとして、または結像面においてテレセントリックなものとして、または、いわゆる二重テレセントリック光学システムである、両方の面においてテレセントリックなものとして設計することが可能である。さらにテレセントリック光によって物体を照明すること、および/または、テレセントリックな方法において物体を検出することが可能である。一般的には、物体面においてテレセントリック性を有する光学システムを提供するだけで十分である。これはこのことによって、すでに横方向および3次元的に物体全体を均一に照明することが可能であるとともに、物体から放射される光を正確に集光することができるからである。
【0055】
この発明の範囲内においては、複数の個々の検出部位2の励起および複数の個々の検出部位2によって放射される蛍光信号7の結像については、好ましくはテレセントリックな方法において実施される。
【0056】
すべてのテレセントリック光学素子の中心部は、視野レンズ8である。このレンズは物体に最も近く、かつ、機器1の視野を決定するものである。したがって複数の個々の検出部位2からなる配列が広いエリアにわたって分布している場合には、通常このレンズの直径は増大する。視野レンズ8はシングレット(1つの単レンズ)として、または、たとえば互いに貼り付けられた2つのレンズを含む色消しレンズとして存在する。この発明にも用いることの可能な特有の視野レンズ8はフレネルレンズである。フレネルレンズは、視野レンズ8と同じテレセントリック特性を提供する少なくとも1つの光学的に有効な表面上に複数のテーパー領域を有する独特の複雑な湾曲を有している。ほとんどの場合、フレネルレンズは光軸に垂直な平坦面によって支持される複数のテーパー領域を有する表面を1つしか有していない。このためフレネルレンズは、通常の視野レンズに比べて薄くなっている。いわゆるフリーフォームレンズを使用することも可能である。実際に視野レンズは、テレセントリック性の誤差を最小化するために多くの場合に非球面である。しかしながら、通常これらの非球面は回転対称性を有している。この場合後者は、自由曲面ではない。
【0057】
特に一定の深さを有するマイクロタイタープレートのウェルの場合、入射角が大きいとウェルにおける内側の領域の一部だけが照明される、という影響が及ぼされる。したがってマイクロタイタープレートに関しては、入射角を20°より小さくすることが適当である。光学機器1における好ましい実施形態では励起光9の入射角αは、20°未満であり、好ましくは10°未満であり、最も好ましくは5°未満である。
【0058】
一方で、入射角αは、また励起光学素子および結像光学素子の双方における有限の開口がゼロより大きいために小さい値に制限されることに留意されたい。
【0059】
本発明にしたがう光学機器1における他の好ましい実施形態では、入射角αは以下のように表される。
【数2】
【0060】
ここで、θ1は励起光学素子の開口半角であり、θ2は結像光学素子の開口半角である。
【0061】
励起光学素子および結像光学素子の双方における開口半角θは、対応する開口数NAによって、
【数3】
のように定義される。
【0062】
ここで、niは物体とそれぞれの光学素子との間における媒体の屈折率であり、励起光学素子に関してはi=1である一方、結像光学素子に関してはi=2である。入射角αが前記の等式によって定義されるよりも小さくなる場合には、光学センサー6にあたる励起光ビームの反射光の量が増大する。このことは平面の固体支持体4上の官能化スポットからなる配列に関してあてはまるとともに、マイクロタイタープレートに関してもあてはまる。
【0063】
他の好ましい変化形において、本発明にしたがう光学機器1は光源5から複数の個々の検出部位2からなる配列に向けて、他の複数の周波数を遮断しながら少なくとも1つの励起周波数を転送することの可能な励起フィルターシステム12、および/または、励起周波数の光を遮断しながら複数の個々の検出部位2からなる配列から光学センサー6に向けて蛍光信号を転送することの可能な結像フィルターシステム13をさらに備えている。
【0064】
前述のように光学機器1は、光源5から視野レンズ8に向けて光を転送する、励起レンズ配列10を備えている。このことは光源5の光が、複数の個々の検出部位2からなる配列上において、視野レンズ8および励起レンズ配列10を含む励起光学システムを用いて結像されることを意味している。この励起光学システムは、視野レンズ8の物体側上にテレセントリックな励起光9を与えるのでテレセントリック励起光学システムである。励起レンズ配列10は、光源の出力の利用性をより高めるべく、励起開口を増大させるために少なくとも1つのレンズを含んでおり、好ましくは少なくとも3つのレンズを含んでいる。レンズの量を減らすべき場合には、励起レンズ配列10は非球面のものを含むことが可能である。このテレセントリック励起光学システムは、励起波長によらずに複数の個々の検出部位2からなる配列の全体にわたる均一な強度分布を達成するために無色に設計されている。
【0065】
光源5は、たとえば白色光源、ガス放電ランプ、キセノンランプ、水銀ランプ、フィラメントランプ、またはタングステンランプなどの複数の周波数を含む光を放射する光源とすることが可能である。光源5は、また、たとえばレーザーまたはLEDなどの単一周波数の光または狭い周波数帯域の光のみを放射するものであってもよい。光源5は、また、1つ以上の発光体を組み合わせたものを備えていてもよい。さらにフィルターまたはフィルターのセットを使用することも可能である。
【0066】
前記のテレセントリック励起光学システムは、視野レンズ8、励起フィルターシステム12および励起レンズ配列10に加えて、いくつかの追加的な部品を備えることが可能である。一実施形態では、このテレセントリック励起光学システムは光源から光学システムの光学部品に光を転送するために光ガイドをさらに備えている。光ガイドを用いることによって種々の光源5からの光を結合し、この結合光を光学部品に対して同時に転送することが可能となる。励起光9および/または蛍光信号7の方向については、ミラーまたはビームスプリッター14または光偏向ユニットによって、変更することが可能である。さらに光ミキサー(たとえば、光ミキシングロッド)を使用することも可能である。
【0067】
光源5からの光は、視野レンズ8および励起レンズ配列10を含むテレセントリック励起光学システムを用いて複数の個々の検出部位2からなる配列上に結像される。したがって、本発明におけるこの実施形態では複数の個々の検出部位における励起は、物体空間において好ましくはテレセントリックな励起光学システムによって実行される。
【0068】
図1に示した光学機器1については、化学発光および生物発光の信号の結像にも適用することが可能である。これらの場合においては、励起光9は必要ないので、光源5、励起レンズ配列10および励起フィルターシステム12を省略することができる。蛍光信号7を結像するための光学機器1において他の設計を実施することも可能である。
【0069】
図1に示した光学機器1は、視野レンズ8から光学センサー6に向けて光を転送する結像レンズ配列11を備えている。このことは複数の個々の検出部位2からなる配列において生成された蛍光信号7が視野レンズ8および結像レンズ配列11を含むテレセントリック結像光学システムによって光学センサー6上に結像されることを意味する。本発明における他の実施形態では、このテレセントリック結像光学システムは、たとえば光ビームフォールディングユニット、および/または、特別な結像フィルターシステム13をさらに備えている。
【0070】
テレセントリック結像光学システムについては、光学センサー6のサイズおよび複数の個々の検出部位2からなる配列の空間的な大きさに対して最適化しなければならない。励起レンズ配列10の場合のように、結像レンズ配列11は少なくとも1つのレンズを含んでおり、好ましくは少なくとも5つのレンズからなる配列を含んでいる。励起光学システムに比べて、結像光学素子に関してはより高度な要件が考慮されなければならない。このため結像レンズ配列11に関しては、レンズを多数にすることが有利である。蛍光結像は、横方向に分布する検出部位2を光学センサー6上に正確に再現するために、正しい縮尺を有しなければならない。さらに球面収差、色収差、コマ収差、非点収差、特別の誤差または視野の湾曲のような結像誤差を考慮に入れなければならない。光学センサー6上に蛍光信号7を結像するので、蛍光結像は、好ましくは視野レンズ8の物体側のみにおいてテレセントリックな結像光学システムを用いて実行される。結像レンズ配列11については、結像ユニット15を形成するために光学センサー6と結合することも可能である。
【0071】
本発明にしたがう光学機器1における同様に好ましい実施形態は、前記した配列における個々の検出部位2が平面支持体4上のスポットであり、これらのスポットに蛍光色素が塗布されている光学機器である。光学機器1における前記の好ましい実施形態の実施例は、平面配列における様々なスポットからの蛍光信号7を同時に結像するためのデバイスである。特定の実施形態では前記の配列がDNA配列であり、このDNA配列では、横方向に限定されたエリアが種々の配列を有するDNAプローブによって官能化されている。この場合本発明にしたがう光学機器1は、たとえば相補的DNA鎖を蛍光色素によって標識する場合に、核酸を含むサンプルとのハイブリダイゼーション事象をモニターすることが可能である。サンプル中のDNA分子を標識することに代えて、ハイブリダイゼーション事象を二本鎖核酸に結合している蛍光色素によって可視化することも可能である。
【0072】
図1に示した実施例では前記のテレセントリック励起光学システムが、たとえば450nm〜650nmの周波数で動作する一方、前記のテレセントリック結像光学システムが500nm〜740nmの周波数で動作する。この実施例では、光源5はキセノンランプであり光学センサー6として、1024×1344の画素を有する冷却2/3インチCCDチップが機能している。光学機器1は、96個のウェル(間隔9mm、直径5mm)および384個のウェル(間隔4.5mm、直径3mm)を使用することが可能となるように、83mm×117mmの面積を結像するように設計されている。特定の蛍光色素に対する励起および結像のために好適な波長はフィルターホイールによって調整されている。
【0073】
この実施例ではテレセントリック励起光学システムは、光源側に0.35の開口数を有している一方、マイクロタイタープレート側に0.014の開口数を有している。幾何学的な理由のために光源5がCCDチップに対して垂直に配置されている一方、励起光ビーム9が追加のミラーを用いるによってマイクロタイタープレートの方向に向けられている。励起光ビーム9自体は、マイクロタイタープレートに対して2°の入射光を有している。また、物体視野(88mm×122mm)の強度変化は10%未満である。ビーム経路が1つだけではなく多数のビームを含んでいるために、この構成における「励起光ビーム9」は「照明の光軸」と同じ意味である。結像光学システムは、また物体側に0.014の絞り(diaphragm)を有しているとともに、物体と画像との間の距離(800mm)に対応する、0.075の結像スケールを有している。この大きな距離については、2つのフォールディングミラーを用いて達成することが可能である。この結像光学システムは、±3mmの焦点深度を有している。
【0074】
図1にしたがう限定的な既知の機器1は、光源5の放射出力を利用して非常に非効率的に検出部位2の蛍光を励起している。これは本質的に、検出部位2における周囲のエリア(たとえば、マイクロタイタープレートにおける一体成形された熱伝達カバー)を照明しているからである。実際には、蛍光励起にとっては、検出部位2上に照射される光(たとえば、このためにマイクロタイタープレートの熱伝達カバーに設けられた孔を介して照射される)だけが有用なのである。このことについて、図2に基づいて説明する。
【0075】
図2は、マイクロタイタープレートのウェルにおける上側部に配置されている、前記した熱伝達カバー16を示している。これは、通常は不透明であり、各ウェルに応じた孔17を有している。そして、この孔17を介して、ウェル内の溶液が励起光9によって照明され、さらにこの孔17を介して溶液から放射された蛍光信号7が検出される。
【0076】
熱伝達カバー16における孔どうしの間隔dは、たとえばSBSマイクロタイター標準形式にしたがう9mmである。孔の直径Dは5.2mmであり、これはウェルにおける円筒形部分の直径(5.5mm)よりほんのわずかに小さく、かつ、孔どうしの間隔dに比べると著しく小さい。熱伝達カバー16における不透明な部分によって遮断されることによって失われる光については、孔どうしの間隔dおよび孔の直径Dから後述するように計算することが可能である。
【0077】
孔17の面積ALは、以下のようになる。
【数4】
【0078】
熱伝達カバー16内の各孔17については、エッジの長さが正確に孔どうしの間隔dである四角形であって、間をあけずに周辺の四角形と互いに隣接している四角形に対して割りあてることが可能である。この四角形の面積AQは、以下のようになる。
【数5】
【0079】
照明に使用される励起光9の割合ηAは、ALのAQに対する比率である。
【数6】
【0080】
したがってηAの値は純粋に幾何学的な比率によって決定され、「充填率(filling factor)」として解釈されることが可能である。この充填率および検出部位2の蛍光励起における効率は、本発明にしたがう対物レンズアレイによって改善される。
【0081】
蛍光励起の効率に加えて、本発明はさらに蛍光検出も改善する。これは従来技術にしたがう光学機器1が光学センサー6に向かう蛍光信号7の放射フラックスを非効率的に利用しているからである。検出部位2において色素分子から放射される蛍光は、換言すれば空間的に等方的な方法で放射される。この光におけるわずかな部分だけが検出光学素子によって検出され、かつ、検出器6に向かう。図1に示した検出光学システムの開口数は、きわめて小さく、典型的にはNA=0.014である。検出光学素子の開口数NAと、これらの光学素子によって検出される立体角ΩDとの間の関係は、以下のようになる。
【数7】
【0082】
蛍光放射によって照明される完全な立体角Ωtotは4πである。したがって光学センサー6を用いた測定のために使用される蛍光の部分ηDは、約0.05%だけである。
【数8】
【0083】
本発明は蛍光励起の効率性だけでなく蛍光検出の効率性についても改善する。このことは、視野レンズ8と熱伝達カバー16または複数の個々の検出部位2からなる配列との間に対物レンズアレイ18を配置することによって達成される。
【0084】
図3に、対物レンズアレイ18の構成部品および位置が示されている。対物レンズアレイ18は、視野レンズアレイ素子20を備えた視野レンズアレイ19および瞳レンズアレイ素子22を備えた瞳レンズアレイ21を有しており、視野レンズ8と複数の個々の検出部位2からなる配列との間のビーム経路に配置されている。したがって、この対物レンズアレイ18については、アレイ対物レンズと称することも可能である。視野レンズアレイ19は、視野レンズ8と向かい合っており、また、瞳レンズアレイ21は、複数の個々の検出部位2と向かい合っている。視野レンズアレイ19は、瞳レンズアレイ21と平行に配置されている。このようにこの実施例では、光学機器1は、マイクロタイタープレートにおけるウェルの数に対応する、複数の光学チャネルを有している。そして、各光学チャネルは、専用の視野レンズアレイ素子20および専用の瞳レンズアレイ素子22を備えている。
【0085】
物体面は従来技術にしたがう光学機器1の場合と同様に、好ましくはウェルと向かい合っている熱伝達カバー16の下側部に配されている。この物体面は視野平面(field plane)を形成しており、それに接合しているこの視野平面が視野レンズアレイ素子20内に、すなわち瞳レンズアレイ素子22から見て外側を向いている視野レンズアレイ素子20の表面上に位置している。視野レンズ8または視野レンズアレイ素子20の視野平面と、熱伝達カバー16の視野平面とは、本発明にしたがう対物レンズアレイ18においても互いに接合されたままである。より正確に表現すれば、視野レンズ8は単独では視野平面を有していないけれども、視野レンズ8を含む検出光学システム(結像レンズ配列11)が視野平面を有している。これらはともに、視野レンズアレイ19における上側部の画像を光学センサー6上に形成するようになっており、視野レンズ8の単独によるわけではない。これは照明ブランチにも準用される。
【0086】
図4は、視野レンズアレイ19および瞳レンズアレイ21を備えた、本発明にしたがう対物レンズアレイ18を示している。この構成における好ましい実施形態では、視野レンズアレイ19と瞳レンズアレイ21との間に絞りアレイ23が配置されている。視野レンズアレイ素子20および瞳レンズアレイ素子22を含む2レンズの対物レンズは、いずれの場合にも、マイクロタイタープレートの各ウェルまたは熱伝達カバー16内の各孔17に割りあてられている。これらの対物レンズは互いに同一である。このように視野アレイ光学配列18では、いずれの場合にも視野レンズアレイ素子20および瞳レンズアレイ素子22から形成されているレンズ対が、いずれの場合にも検出部位2の1つに割りあてられている。
【0087】
マイクロタイタープレートおよび熱伝達カバー16は、従来技術に比して、視野レンズ8に対する元来の位置(約60mm離れた位置)から取り除かれている。これは、これらの間に配置され、かつ、対物レンズアレイ18における96個の対物レンズの結像面(励起光9による照明に関する結像面)内に配置された、対物レンズアレイ18のためである。従来技術における場合と同様に熱伝達カバー16の下側部における元来の位置は、好ましくは、対物レンズアレイ18における96個の対物レンズの物体面(蛍光信号7の検出に関する物体面)として選択される。対物レンズアレイ18におけるこれらの対物レンズは、一方において、照明の充填率を改善し、また他方において、これらは、検出の開口数を増大する。このことは、図5から図8に基づいて、以下のように説明される。
【0088】
図5および図6は、96チャネルの対物レンズアレイ18における、1つのチャネルを示している。この対物レンズアレイ18は、視野レンズアレイ素子20、瞳レンズアレイ素子22および、これら双方のレンズ間における瞳レンズアレイ素子22に近い位置に配された、絞りアレイ23の開口部を備えている。励起光9による蛍光励起のためのビーム経路が、図5に描かれている。図6は、蛍光信号7の蛍光検出のためのビーム経路を示している。いずれの場合にも、瞳レンズアレイ21における1つの瞳レンズアレイ素子22は、検出部位2の1つの上に(すなわち、熱伝達カバー16内の孔17における低い方のエッジ上に)、視野レンズアレイ19における視野レンズアレイ素子20(または、視野レンズアレイ素子20のエッジ)の画像を形成している。検出部位2は、これらの図における下端部に配置され、そこに視野平面を形成している。熱伝達カバー16における個々の関連する孔17は、図5および図6には示されていないが、検出部位2上の視野平面から瞳レンズアレイ素子22に向けて上方向に延びている。図5から図7に示すように、瞳レンズアレイ素子22および視野レンズアレイ素子20からなる配列は、照明(6)および検出(5)システムの絞りによって、絞りアレイ素子23に対して光学的に接合している。
【0089】
図示されていない視野レンズ8は、視野レンズアレイ素子20の上部、すなわち、視野レンズアレイ素子20における励起光9の入射側および視野レンズアレイ素子20における蛍光信号7の出射側に配置されている。ここで、すなわち視野レンズアレイ素子20の上部では、複数の主ビームが平行に走っており、さらにこれらのビーム束の軸も平行である。すなわち、この構成は、この領域においてはテレセントリックである。視野レンズアレイ19の視野レンズアレイ素子20は、励起光9に関する照明瞳および蛍光信号7に関する検出瞳を生成する。対物レンズアレイ18は、視野(物体、画像)だけでなく、絞り(瞳)も結像する。複合的な光学システムを設計する際には、視野の結像だけでなく、瞳の結像についても考慮に入れるべきである。
【0090】
入射側(図6の最上部)では、蛍光検出に関する光線の束の軸は、互いに平行であり、また、光軸に対しても平行である。蛍光励起に関する光線の束は、入射側(図5の最上部)において同様に互いに平行となっているものの、光軸に対しては蛍光検出とは対照的にわずかに傾いている。この傾きは、蛍光励起および蛍光検出に関する光線の束が視野平面(検出部位2における物体面)を突き抜けないように(図10も参照されたい)選択されている。これは、励起光9と蛍光信号7との間の分離を実現するためである。
【0091】
当然のことではあるが、蛍光励起が光軸に対して傾いている一方、蛍光検出が光軸に対してある角度をなして実施されるような、反対向きの配置を形成することも可能である。または、蛍光励起および蛍光検出を、光軸に対して異なる角度をもって実行することも可能である。蛍光励起および蛍光検出に関する入射側におけるビームの方向は、機器1の光学システムによって、あらかじめ決定されている。これらは、光学機器1内における照明ビーム経路および検出ビーム経路の、横方向に分離されている絞りによって形成されている。通常、検出の主ビームについては、これらが光軸に平行となるように選択することが有利である。対称性の破れると、通常、結像能力における障害を引き起こす。実際には、良好な結像能力は、照明に関する場合よりも検出に関する場合に、より必要とされる。
【0092】
図7は、図5および図6の組み合わせたものにおいて、本発明にしたがう対物レンズアレイ18のチャネルを介する部分を、絞りアレイ23の絞りとともに示している。この絞りアレイ23は、2つの分離されている絞り開口部24、25を備えており、その1つは励起光9による蛍光励起に関するものであり、もう1つは蛍光信号7の蛍光検出に関するものである。蛍光励起に関するビーム経路と、蛍光検出に関するビーム経路とが、一緒に示されている。この実施例では、視野レンズアレイ素子20と瞳レンズアレイ素子22との間の絞り23は、2つの分離された絞り開口部24、25を、チャネルごとに有している。しかしながら、各チャネル対して、1つだけの絞り開口部を設けることも可能である(前記を参照されたい)。軸上にない絞り開口部24(左)は、蛍光励起のために励起光9を通過させる。軸上の絞り開口部25(右)は、蛍光検出のために蛍光信号7を通過させる。さらに絞り開口部24も検出光を通過させる。これは蛍光光源が等方的に光を放射するためである。しかしながら、この光は遅くとも検出光学素子の絞りにおいて吸収される。検出部位2、すなわち熱伝達カバー16内の孔17は、瞳レンズアレイ素子22によって、形式充足法によって(すなわち、形状およびサイズの点で正確に)、視野レンズアレイ素子20の上側部に結像される。このようにこれら上側部と熱伝達カバー内の孔17とは光学的に接合している。
【0093】
熱伝達カバー16における孔の直径Dに対する孔どうしの間隔dの比率は、好ましくは、96個の対物レンズにおける結像スケールβに関して、以下のように選択される。
【数9】
【0094】
一般的に複数の検出部位2が直径Dを有しており、互いの間隔dをおいて配置されている場合には、瞳レンズアレイ素子22の結像スケールβは直径Dに対する間隔dの比率に等しくなっていることが有利である。この場合、対物レンズアレイ18における個々の2レンズの対物レンズのそれぞれは、熱伝達カバー16における関連する孔17の画像を形成し、この画像はサイズDを有する。この場合、照明光学素子の視点からは、熱伝達カバー16内の孔17は、結像スケールβによって拡大されて見える。そして、複数の孔17の画像間における複数の隙間は、これらの画像が接線方向において互いにぴったりと接しているように互いに縮んで見える。
【0095】
図8は、対物レンズアレイ18によって結像される物体としての、図2に示した熱伝達カバー16の上面図を示している。また、図9は、対物レンズアレイ18によって結像された後の、図2に示した熱伝達カバー16の画像を示している。孔17だけが拡大されて見える一方、これら間の間隔が同時に拡大されて見えない、という事実は、これが、対物レンズによる拡大結像ではなく、むしろ、光学アレイによる結像であることに起因する。このように対物レンズアレイ18の光学アレイは、孔17の拡大画像を生成するだけであって、これらの間の間隔dを変更しない。結像スケールβによって画像が拡大されているため、図9における孔の画像26の面積ALBは、以下のようになる。
【数10】
【0096】
利用されている励起光9の割合η'Aは、AQに対するALBの比率である。
【数11】
【0097】
蛍光励起に関する対物レンズアレイ18の利得係数(gain factor)gAは、ηAに対するη'Aの比率である。
【数12】
【0098】
蛍光検出に関する対物レンズアレイ18の利得係数gDは以下に示す検討から得られる。光学機器1における検出光学素子の物体面における開口数NAは0.014である。この平面は対物レンズアレイ18によって、96個の分離されたチャネル内において熱伝達カバーの下側部上に結像される。この方向においては、対物レンズアレイ18は縮小効果を有している。したがって熱伝達カバー16の下側部上の開口数NA'は、結像スケールβに等しい係数によって光学機器1における検出光学素子の物体面内にある場合よりも大きくなっている。
【数13】
【0099】
検出光学素子の対物レンズアレイ18を用いて検出された立体角Ω'Dは以下のようになる。
【数14】
【0100】
対物レンズアレイ18によって利用されている蛍光の割合η'Dは以下のようになる。
【数15】
【0101】
蛍光検出に関する対物レンズアレイ18の利得係数gDは、ηDに対するη'Dの比率である。
【数16】
【0102】
対物レンズアレイ18におけるトータルの利得係数gtotは、蛍光励起に関する利得係数gAと、蛍光検出に関する利得係数gDとの積である。
【数17】
【0103】
単純な変換を実行することによって、対物レンズアレイ18の利得係数gtotを、以下のように表現することも可能であることがわかる。
【数18】
【0104】
このようにこれは幾何学的な数量だけに、すなわち熱伝達カバー16における孔どうしの間隔dおよび孔の直径Dだけに依存している。
【0105】
この対物レンズアレイ18は、充填率(パッキング密度)を増大する。この実施例においては、励起光9によるウェルの照明に関して、3倍に増大する。さらに、この対物レンズアレイ18は開口数を増大する。この実施例においては、蛍光信号7の検出に関して√3倍に増大する。しかしながら利得は、開口数の2乗にほぼ比例する。この場合、これは結果的に検出において3倍の利得をもたらす。双方を重ね合わせることにより、光学機器1による蛍光測定の信号利得はこの実施例においては9倍となる。
【0106】
利得係数gtotを計算する際には、対物レンズアレイ18の結像が口径食なく生じる、ということが黙示的に仮定されている。この場合、口径食から自由であることは、有用な光がビーム経路においてまったく遮断されることなく、光学機器1の照明および検出光学素子における全てのビームが対物レンズアレイ18を通過しなければならない、ということを意味する。このことは当然ながら熱伝達カバー16または絞りアレイ23によって遮断される他の光(散乱光、干渉光)にもあてはまる。
【0107】
図10は、光学機器1における照明および検出光学素子のビーム方向を、サイナスグリッド(sinus grid)において示している。このサイナスグリッドは、ビーム方向を、開口数として直接的に解釈すること可能とする。視野レンズアレイ19の位置におけるビーム方向が示されている。熱伝達カバー16(または検出部位2)の位置においては、これらのビーム方向は、さらに異なって見える。特に、この場合、これらは、視野依存性(または、位置依存性)を有している。光学機器1における照明および検出光学素子がテレセントリックであるために、図10に示されているビーム方向は、収差の範囲内において視野依存性を有している。対物レンズアレイ18における1つのチャネルに関しては、蛍光信号7に関する検出システムにおける全てのビーム方向が、軸上の曲線27(図6)内にある。また、励起光9に関する照明システムにおける全てのビーム方向は、軸外の曲線28(図5)内にある。これらの曲線27、28自体は、絞りのエッジによって規定される。破線の曲線は、対物レンズアレイ18の全体における全てのチャネルの全てのビームに関する、光軸を中心とするエンベロープ29を示している。このエンベロープ29における個別の開口数は0.059である。
【0108】
双方の曲線27、28によって囲まれている領域は、接触も重複もしておらず、むしろ隙間を介している。この事実のために、励起光9を蛍光信号7から分離することが可能である。国際公開第99/60381号パンフレットによれば、これは従来技術の場合とは異なっている。なぜならば、従来技術では2つの対応する曲線27、28の領域が完全に重複しているからである。
【0109】
入射側における対物レンズアレイ18の開口数がエンベロープ29の開口数(この場合には0.059)よりも大きく、かつ、入射側における瞳の位置がテレセントリックである場合には、対物レンズアレイ18は口径食なく動作する。対物レンズアレイ18における入射側でのテレセントリック性は、対物レンズアレイ18における前面レンズ(視野レンズアレイ素子20)の焦点面の近傍に絞り(絞り24、25または絞りアレイ23)を配置することによって実現される。ビームの開口数NAと絞り面におけるビーム高さh(光軸に垂直な平面内における貫通ポイントにおいて測定された、光軸からの距離)と前面レンズ(視野レンズアレイ素子20)の焦点距離との間の関係は以下のようになる。
【数19】
【0110】
絞り面における最大のビーム高さhは、孔の間隔の半分d/2よりも小さいことが必要である。これは、対物レンズアレイ18の隣接チャネルにおける空間的な貫通を避けるためである。
【数20】
【0111】
これに応じて、前面レンズ(視野レンズアレイ素子20)の焦点距離に関する要件は以下のようになるべきである。
【数21】
【0112】
いくつかの実施形態では、検出部位2に関して第1および第2の絞り開口部24、25の絞り画像が重複しない程度に、視野レンズアレイ素子20の焦点距離が小さいことが、励起光9と蛍光信号7との分離を可能とするために好ましい可能性もある。さらに、いくつかの実施形態では、隣接するチャネル(隣接する検出部位2)における絞り画像が重複しない程度に、視野レンズアレイ素子20の焦点距離が小さいことが、干渉光を抑制するために好ましい可能性もある。対物レンズアレイ18の周期性のために、入射側において、右のエッジと左のエッジとにおける光線の束を一致させることが可能である。
【0113】
図11は、直接的に隣接している右側のエッジの束と左側のエッジの束とを前面レンズ(視野レンズアレイ素子20)がどのように分離するのか、および個別の絞りの方向において空間的に分離されている光線を、この前面レンズがどのように偏向するのか、について示している。これらの前面レンズ(視野レンズアレイ素子20)は、光学機器1の照明および検出光学素子における視野平面内に、直接的に位置している。このためこれらは、きわめて一般的に視野レンズ(この場合には視野レンズアレイ素子20)とみなされている。換言すれば、準視野レンズ(near-field lenses;すなわち、視野の近くにある(このため物体または画像の近くにある)もの)は視野レンズとみなされており、準瞳レンズは瞳レンズとみなされている。視野平面は照明されているか、または結像されている平面であり、すなわち物体、画像または中間画像である。瞳は、絞りまたは絞りの画像である。視野レンズは瞳の画像を形成し、瞳レンズは視野の画像を形成する。視野レンズアレイ19は視野の近傍にあり、瞳レンズアレイ21および絞りアレイ23は瞳の近傍にある。
【0114】
複数の視野レンズアレイ素子20は、対物レンズアレイ18における全体的な屈折力に対して大きくは寄与していない。これはそれらの位置が視野に近く、それらの焦点距離が比較的に大きいことに起因する。すなわちこれらは、画像の位置およびサイズを変更しないか、または小さい範囲で変更するだけである。これらの中心的な機能は、より正確にいえば、光学チャネルを空間的に分離することにある。すなわちこれらは、ビーム経路に関する瞳を形成する。これにより瞳の位置が調整されるとともに、光線の角度が制限される。これらの視野レンズアレイ素子20は、好ましくは、出射側(観察位置、検出部位2の側部)において、テレセントリック光学システム(上述のように、図11の上部はテレセントリック、底部は非テレセントリック)を提供する。すなわち絞りの画像は、無限遠となる。瞳は、開口絞りの画像である。光学システムには、入射瞳と出射瞳とが存在する。これらの画像が無限遠である場合には、光学システムは入射側および出射側において、テレセントリックとして示される。視野レンズアレイ素子20のそれぞれは、その絞り面において照明システムの絞りにおける軸外の画像および検出システムの絞りにおける軸上の画像を形成する。これらの画像はチャネルによって分離されている。
【0115】
対物レンズアレイ18のレンズ対における全体的な屈折力は、ほとんどいずれの場合にも近いレンズ(瞳レンズアレイ素子22)内に集中されている。これらが瞳の近傍に配置されているために、これらも非常に一般的に瞳レンズ(この場合には瞳レンズアレイ素子22)とみなされる。瞳レンズアレイ素子22は、視野レンズアレイ素子20におけるエッジの画像を形成する。この画像は、熱伝達カバー16の孔17における低い方のエッジ上において形状に忠実である。このため熱伝達カバー16内の孔17は、視野絞りのアレイとして作用する。
【0116】
いずれの場合にも、絞りアレイ素子(絞り開口部、絞り)は、視野レンズアレイ素子20の焦点絞り面内に配置されている。またこの絞りアレイ素子は、照明システムにおける絞りの画像および検出システムにおける絞りの画像をマスクする。これらの絞りアレイ素子の全体が、絞りアレイ23を形成している。この意味における「マスキング」は、絞りアレイ23が、マスクまたはスクリーンを形成すること(この場合、各絞りアレイ素子は1つ以上の絞り開口部を有している)、絞りアレイ23が視野レンズアレイ素子20および瞳レンズアレイ素子23内に割りあてられていること、および絞りアレイ23が個々の視野レンズアレイ素子20および瞳レンズアレイ素子23を介するビーム経路のためのマスク(すなわち、対物レンズアレイ18の各「チャネル」のためのマスク)を形成することを意味している。このマスキングは、図2から図12に示した実施例においては正確な形状を有している。すなわち、絞りアレイ素子における2つの開口部の形状は、励起レンズ配列10および結像レンズ配列11における絞りの画像の形状に一致している。他の実施形態では、絞りアレイ素子の形状を視野レンズアレイ素子20および/または瞳レンズアレイ素子23および/または検出部位2(熱伝達カバー16内の孔17)の形状に対しても一致させることが可能である。
【0117】
他の実施例では追加的に、このマスキングをサイズに忠実なものとすることも可能である。この場合、絞りアレイ素子のサイズは、たとえば励起光9における照明瞳のサイズ、および/または、蛍光信号7における検出瞳のサイズ、および/または、検出部位2(熱伝達カバー16内の孔17)の瞳のサイズと一致する。
【0118】
しかしながら、このマスキングについては形状に忠実なもの、および/または、サイズに忠実なものとする必要はない。たとえば絞り開口部(絞りアレイ素子)を円形にしないことも可能である。この場合たとえば、2つの絞り画像(照明システム(励起光9の照明瞳)における絞りの画像および検出システム(蛍光信号7の検出瞳)における絞りの画像を、たとえばチャネルごとに共通の外接矩形によってマスクすることも可能である。このことは、製作精度に対する要求水準を低減するとともにチャネルのクロストークを著しく損なうこともない。
【0119】
このように前記のような実施形態では、対物レンズアレイ18は、励起光9の照明瞳および蛍光信号7の検出瞳のためのマスクを形成する、絞りアレイ23を有している。この場合、図示されている実施例では絞りアレイ23は、視野レンズアレイ19と瞳レンズアレイ21との間に配置されている。しかしながら絞りアレイ23については、瞳レンズアレイ21と複数の個々の検出部位2からなる配列(熱伝達カバー16)との間に配置することも可能であり、この場合には瞳レンズアレイ21の近傍に配置することが好ましい。
【0120】
図12は、前記のような絞りアレイ23における上面図の例を示している。この絞りアレイ23では、絞りアレイ素子が絞り開口部24、25の対から形成されている。このように、図示されている絞りアレイ23には96対の絞り開口部24、25が備えられており、これらのそれぞれは96個の検出部位2の1つに対して割りあてられている。これらの絞り開口部対は、いずれの場合にも絞り開口部対における第1の絞り開口部24が検出部位2に関する励起光9を通過させるように、および絞り開口部対における第2の絞り開口部25がこの検出部位2からの蛍光信号7を通過させるように構成されている。孔の間隔dおよび面積AQに対応するエッジ長によって上述した四角形の範囲を定める仮想線の経路についても例示のために示されている。現実の絞りアレイ23では、これらの線は通常示されていない。
【0121】
絞りアレイ23における本質的な機能は、対物レンズアレイ18の様々なチャネル間におけるクロストークを抑制することにある。このクロストークについては、対物レンズアレイ18内および特に瞳レンズアレイ21内における、内部的な反射光(有向の干渉光)または無向の拡散された散乱光によって生じる可能性もある。絞りアレイ23内における孔24、25のトータルの面積は、外見上、絞りアレイ23の全面積に比べてきわめて狭くなっている。このことにより、蛍光信号7が形成される部位(すなわち検出部位2)に対して実際にすでに非常に近づいている干渉光と有用な光とを(検出ビーム経路における早期のポイントにおいて)非常に効果的に分離することが可能となる。これは光学的な検出に関して非常に有利なことである。これらの面積の比率についても、同様に充填率として説明することが可能である。クロストークの抑制に関する絞りアレイ23の有効性は充填率の減少にともなって増大する。
【0122】
本発明における本質的な特徴および有利なさらなる展開については、以下のように短く要約することが可能である。すなわち対物レンズアレイ18は、視野レンズアレイ19および瞳レンズアレイ21を備えており、好ましくは追加的な絞りアレイ23も備えている。視野レンズアレイ19は照明瞳および検出瞳を生成し、これらはいずれの場合にも検出部位2の数に対応している(前記の実施例では、それぞれ96個)。絞りアレイ23は、これらの瞳(前記の実施例では、192個)をマスクすることによって、局所的なクロストークを防止する。瞳レンズアレイ21は、検出部位2(マルチウェルプレート)上に視野レンズアレイ19の画像を形成する。照明に関しては、対物レンズアレイ18は検出部位2(ウェル)の充填率(パッキング密度)を増大する検出に関しては、対物レンズアレイ18は開口数を増大する。前記の配置により名目上の信号利得(ここでは9倍)がもたらされる。
【0123】
視野レンズアレイ19の視野レンズアレイ素子20は、円形の境界線を有するように設計される必要はない。1つの好ましい実施形態では、視野レンズアレイ素子20は矩形である。図13は、熱伝達カバー16の孔17内における矩形の視野レンズアレイ素子20の画像を示している。熱伝達カバー16内における孔の間隔d(前記の場合には9mm)に対応するエッジ長を有する矩形の境界線を用いることによって、全ての視野レンズアレイ素子20をギャップなく互いに結合することが可能となる。なおギャップがないとは、すなわち光学的な結像のために使用されない視野レンズアレイ素子20間の隙間がない、ということである。ここで図13に示すように、熱伝達カバー16の孔17における低い方の円形のエッジ上に、すなわち複数の検出部位2における円形のエッジ上に、視野レンズアレイ素子20における4つの角が結像されるように結像スケールβQを選択した場合、利用される励起光9の割合η'AQは以下のように与えられる。
【数22】
【0124】
外見上、視野レンズアレイ19、絞りアレイ23および熱伝達カバー16のいずれの上にも遮断はない。
【0125】
蛍光励起のための矩形の視野レンズアレイ素子20を有する対物レンズアレイ18の利得係数gAQは、ηAに対するη'AQの比率である。
【数23】
【0126】
結像スケールβQは、矩形の視野レンズアレイ素子20の対角線(√2・d)における、熱伝達カバー16内における孔17の直径Dに対する比率によって与えられる。
【数24】
【0127】
矩形の視野レンズアレイ素子20の場合、熱伝達カバー16の部位における開口数NA'Qは以下のようになる。
【数25】
【0128】
対物レンズアレイ18を活用して検出光学素子によって検出される立体角Ω'DQは、この場合以下のようになる。
【数26】
【0129】
したがって、対物レンズアレイ18によって利用される蛍光の割合η'DQは以下のようになる。
【数27】
【0130】
対物レンズアレイ18を利用した蛍光検出に関する利得係数gDQは、円形の視野レンズアレイの場合とは対照的に、もはやηDに対するη'DQの比率によって単純に与えられるものではない。それどころか光学センサー6上に結像されているものは、孔17における全体的な円形のエリアではなく、むしろ外接四角形のみである、ということを考慮に入れる必要がある。この矩形の視野レンズアレイ素子20は、対応する視野絞りとして作用する。したがって以下のようになる。
【数28】
【0131】
対物レンズアレイ18におけるトータルの利得係数gtotQは、蛍光励起に関する利得係数gAQと、蛍光検出に関する利得係数gQDとの積である。
【数29】
【0132】
この値は、円形の視野レンズアレイ素子20におけるトータルの利得係数gtotである9.0(前記を参照されたい)よりも大幅に大きい。すでに述べたように、円形の視野レンズアレイ素子20のエッジ上に形状に忠実な方法で視野絞りが結像されるように、対物レンズアレイ18が設計されている場合には、熱伝達カバー16の孔17における低い方の円形のエッジは視野絞りのアレイとして作用する。
【0133】
このように矩形の視野レンズアレイ素子20の場合には、熱伝達カバー16における視野絞りの効果はあてはまらない。このことは図13における円と四角形との間において放射される光が、隣接する4つの視野レンズアレイ素子20に作用する、ということに相当する。しかしながらこれらの視野レンズアレイ素子20は、この光を光学センサー6に転送することはできない。隣接するチャネルの視点からは、この光は対物レンズアレイ18における不適切な開口絞りから生じるものである。この不適切な開口絞りは、隣接するチャネルの開口絞りに比べて、はるかに中心から外れている。このように隣接する視野レンズアレイ素子20に作用する光線は、これらが検出光学素子によって直接に検出される可能性がない程度の大きな開口角を有している。
【0134】
直接的に検出されることのない前記の蛍光は、多重反射の結果として、または検出光学素子における散乱によって、せいぜい光学センサー6にあたるだけである。信号における前記の部分は、原則的には有害となるはずである。なぜならば、この部分は非常に高い可能性をもって誤ったチャネルに割りあてられるはずだからである。しかしながら、実用評価においてコンピュータによる強度の非シーケンシャルなレイトレーシングを使用すると、散乱光における前記の部分は定量化された場合には、実際上ほとんど重要ではなく無視できるものであることが判明した。
【0135】
視野レンズアレイ素子20のエッジを熱伝達カバー16内における孔17の境界線上に結像することは、利得係数に関するボーダーラインケースである。視野レンズアレイ素子20における4つの角は、熱伝達カバー16の孔17における低い方の円形のエッジ上(またはこのエッジの内部)に、すなわち複数の検出部位2における円形のエッジ上に結像される。結像スケールβQが以下のように選択された場合、トータルの利得係数gtot,Qは一定となる。
【数30】
【0136】
四角形における利用可能な面積は減少するが、これに関連する損失は、開口数の増加によって正確に補償される。反対のケースでは利得係数は減少する。なぜならば、一方において開口数は減少するけれども、四角形の面積は同じようには増加しないからである。この場合後者は、熱伝達カバー16内の孔17によって囲まれている。
【0137】
図14は、矩形の境界線を有する視野レンズアレイ素子20を備えた、前記のような対物レンズアレイ18を「上側」の視点から、すなわち励起光9の側から示している。また図15は、図14に示した対物レンズアレイ18を「下側」の視点から、すなわち蛍光信号7の側から示している。この構成では、絞りアレイ素子(絞りアレイ23内の絞り開口部)が長方形の形状を有するように、および、いずれの場合にも、瞳レンズアレイ素子22のチャネルごとに(すなわち、視野レンズアレイ素子20および関連する瞳レンズアレイ素子22ごとに)1つの絞り開口部だけが存在するように、すなわちチャネルにおける励起光9および蛍光信号7の双方のための、1つの共通する絞り開口部が存在するように絞りアレイ素子が設計されている。
【0138】
本発明にしたがう光学機器1については、この出願においては参照されていないけれども、従来技術、特に欧州特許第1681555号明細書または欧州特許第1681556号明細書にしたがう特徴点によって、さらに粉飾することも可能である。これらに開示されている内容は明白に組み込まれている。特に以下に示す有利な特徴点については、好ましい実施形態において実現することが可能である。
【0139】
a)視野レンズ8は、複数の個々の検出部位2からなる配列の平面支持体4に対する入射角α(0°より大きい)を有する、励起光9を生成するように構成されている。より正確に表現すると、αは、照明および検出システムにおける軸間の角度である。2つの軸の一方は、ミラーまたはビームスプリッター14によって曲げられている。
【0140】
b)光学機器1は、少なくとも1つの励起周波数に関して透明性を有する一方、蛍光信号7の周波数に関して反射性を有するミラーまたはビームスプリッター14を、または少なくとも1つの励起周波数に関して反射性を有する一方、蛍光信号7の周波数に関して透明性を有するビームスプリッター14を備えている。
【0141】
c)励起光9の入射角αは、20°よりも小さく、好ましくは10°よりも小さく、最も好ましくは5°よりも小さい。
【0142】
d)この入射角αは、以下のように示される。
【数31】
ここでθ1は励起光学素子の開口半角であり、θ2は結像光学素子の開口半角である。
【0143】
e)結像レンズ配列11は光学センサーに結合しており、結像ユニット15を形成している。
【0144】
f)光学機器1は、1つ、2つ、またはそれより多くのフォールディングミラーを有する、光ビームフォールディングユニットを備えている。この構成ではフォールディングユニットは、光源5からの光および複数の個々の検出部位2からなる配列からの蛍光信号7を折り返すように構成されている。
【0145】
g)前記の配列における個々の検出部位2がウェルに相当し、励起光9がウェルの側壁に平行でウェルに充填される溶液が蛍光色素を含んでいる。
【0146】
h)前記の配列における個々の検出部位2がウェルに相当し、励起光9がウェルの側壁に関して20°より小さい角度を有しており、ウェルに充填される溶液が蛍光色素を含んでいる。
【0147】
i)前記の配列における個々の検出部位2が平面支持体4上の部位であり、これらの部位に対して蛍光色素が塗布されている。
【符号の説明】
【0148】
1 光学機器
2 検出部位
3 保持デバイス
4 平面支持体
5 光源
6 光学センサー
7 蛍光信号
8 視野レンズ
9 励起光
10 励起レンズ配列
11 結像レンズ配列
12 励起フィルターシステム
13 結像フィルターシステム
14 ビームスプリッター
15 結像ユニット
16 熱伝達カバー
17 孔
18 対物レンズアレイ
19 視野レンズアレイ
20 視野レンズアレイ素子
21 瞳レンズアレイ
22 瞳レンズアレイ素子
23 絞りアレイ
24 23における第1の絞り開口部
25 23における第2の絞り開口部
26 孔の画像
27 軸上の曲線
28 軸外の曲線
29 エンベロープ
α 入射角
θ 開口角
AL 孔(物体)の面積
ALB 孔(画像)の面積
AQ 四角形の面積
d 孔どうしの間隔
D 孔の直径
h 光線の高さ
NA 開口数
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の個々の検出部位(2)からなる配列からの蛍光信号(7)を結像するための光学機器(1)であって、
複数の個々の検出部位(2)からなる配列を有する平面支持体(4)を保持するための保持デバイス(3)と、
少なくとも1つの励起周波数を含む光を放射するための、少なくとも1つの光源(5)と、
複数の個々の検出部位(2)からなる配列から蛍光信号(7)を受光するように構成されているとともに、コンピュータによって読み取り可能な一次データを生成するように設計されている光学センサー(6)と、
複数の個々の検出部位(2)からなる配列に対して光源(5)からの励起光(9)を転送するとともに、複数の個々の検出部位(2)からなる配列から光学センサー(6)に対して蛍光信号(7)を転送するように構成されている視野レンズ(8)と、
光源(5)から視野レンズ(8)に対して励起光(9)を転送するように構成されている励起レンズ配列(10)と、
視野レンズ(8)から光学センサー(6)に対して蛍光信号(7)を転送するように構成されている結像レンズ配列(11)とを備えた光学機器(1)において、
この光学機器(1)が、瞳レンズアレイ素子(22)を有する瞳レンズアレイ(21)と、視野レンズアレイ素子(20)を有する視野レンズアレイ(19)とを備えた、対物レンズアレイ(18)を備えており、
この対物レンズアレイ(18)が、複数の個々の検出部位(2)からなる配列と視野レンズ(8)との間のビーム経路内に配置されており、
さらに、前記光学機器(1)が、励起光(9)の照明瞳と蛍光信号(7)の検出瞳とのためのマスクを形成する絞りアレイ(23)を備えており、この絞りアレイ(23)が、1つ以上の絞り開口部をそれぞれ備えた絞りアレイ素子を有しており、さらに、各絞りアレイ素子が、いずれの場合にも、1つの視野レンズアレイ素子(20)および1つの瞳レンズアレイ素子(23)に割りあてられており、それぞれの視野レンズアレイ素子(20)および瞳レンズアレイ素子(23)を通過するビーム経路のためのマスクを形成するようになっていることを特徴とする光学機器(1)。
【請求項2】
前記対物レンズアレイ(18)内で、いずれの場合にも前記視野レンズアレイ素子(20)と前記瞳レンズアレイ素子(22)とから形成されたレンズ対が、いずれの場合にも前記検出部位(2)の1つに割りあてられていることを特徴とする請求項1記載の光学機器(1)。
【請求項3】
前記瞳レンズアレイ(21)が、前記複数の検出部位(2)上に、前記視野レンズアレイ(19)の画像を形成することを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の光学機器(1)。
【請求項4】
前記視野レンズアレイ(19)が、励起光(9)に関する照明瞳と、蛍光信号(7)に関する検出瞳とを生成することを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の光学機器(1)。
【請求項5】
前記複数の検出部位(2)が、直径(D)を有しており、互いに間隔(d)をおいて配置されていること、および瞳レンズアレイ素子(22)の結像スケール(β)が、直径(D)に対する間隔(d)の比率に等しくなっていることを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の光学機器(1)。
【請求項6】
前記絞りアレイ(23)が、前記視野レンズアレイ(19)と前記瞳レンズアレイ(21)との間または前記瞳レンズアレイ(21)と前記複数の検出部位(2)からなる配列との間に配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学機器(1)。
【請求項7】
前記絞りアレイ(23)に、検出部位(2)の1つにそれぞれ割りあてられている絞り開口部(24、25)の対が設けられており、これらの絞り開口部対が、いずれの場合にも、絞り開口部対における第1の絞り開口部(24)が検出部位(2)に関する励起光(9)を通過させるように、および絞り開口部対における第2の絞り開口部(25)が検出部位(2)からの蛍光信号(7)を通過させるように構成されていることを特徴とする請求項6〜7のいずれか1項に記載の光学機器(1)。
【請求項8】
前記励起光(9)のビーム経路および前記検出部位(2)からの蛍光信号(7)のビーム経路が、前記視野レンズ(8)の物体側において、すなわち前記視野レンズ(8)と前記視野レンズアレイ(19)との間において、テレセントリックであることを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の光学機器(1)。
【請求項9】
前記視野レンズアレイ素子(20)が、円形または四角形であることを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の光学機器(1)。
【請求項10】
前記視野レンズアレイ素子(20)が四角形であり、前記複数の検出部位(2)が直径(D)を有しているとともに、互いに間隔(d)をおいて配置されており、前記視野レンズアレイ素子(20)における4つのエッジが複数の個々の検出部位(2)における円形の境界線上、またはこの境界線内に結像されること、および前記瞳レンズアレイ素子(22)の結像スケール(βQ)が四角形の視野レンズアレイ素子(20)の対角線(√2・d)における前記直径(D)に対する比率と等しいか、またはこれより大きくなっていることを特徴とする請求項9記載の光学機器。
【請求項11】
前記光源がLEDである請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学機器。
【請求項12】
複数の個々の検出部位(2)からなる配列からの化学発光または生物発光の信号を結像するための光学機器(1)であって、
複数の個々の検出部位(2)からなる配列を有する平面支持体(4)を保持するための保持デバイス(3)と、
複数の個々の検出部位(2)からなる配列から、化学発光または生物発光の信号を受光するように構成されているとともに、コンピュータによって読み取り可能な一次データを生成するように設計されている光学センサー(6)と、
複数の個々の検出部位(2)からなる配列から光学センサー(6)に対して、化学発光または生物発光の信号を転送するように構成されている視野レンズ(8)と、
視野レンズ(8)から光学センサー(6)に対して、化学発光または生物発光の信号を転送するように構成されている結像レンズ配列(11)とを備えた光学機器(1)において、
この光学機器(1)が対物レンズアレイ(18)を備えており、
この対物レンズアレイ(18)が視野レンズアレイ素子(20)を有する視野レンズアレイ(19)と、瞳レンズアレイ素子(22)を有する瞳レンズアレイ(21)とを備えており、
この対物レンズアレイ(18)が複数の個々の検出部位(2)からなる配列と視野レンズ(8)との間のビーム経路内に配置されていることを特徴とする光学機器(1)。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の光学機器(1)と、
PCR反応を実行することの可能な反応混合物をそれぞれ含んだ1つ以上のウェルを有する支持体(4)を、加熱および冷却するための手段と、
を備えたリアルタイムPCR機器。
【請求項14】
複数のPCR反応をリアルタイムに同時に実行およびモニターするための分析システムであって、
PCR反応を実行することが可能な反応混合物をそれぞれ含んでいる複数の個々の検出部位(2)からなる配列としてのマルチウェルプレートと、
蛍光DNA結合実体と、
マルチウェルプレートにおける複数の個々の検出部位(2)を光によって照明するとともに、マルチウェルプレートの各ウェルからの蛍光信号を、コンピュータによって読み取り可能な一次データを生成するために、対応する蛍光信号(7)を受光することができるように構成された光学センサー(6)によって検出するための、請求項1〜12のいずれか1項に記載の光学機器(1)を備えた、請求項13記載のリアルタイムPCR機器とを有する分析システム。
【請求項15】
複数のDNAターゲット配列を増幅、検出および/または定量するための方法において、
PCR反応を実行することの可能な組成物または反応混合物を提供すること、
複数のDNAターゲット配列の増幅が起こり得るように、熱サイクリックプロトコルにしたがって反応混合物を処理すること、および
蛍光DNA結合実体および請求項13に記載のリアルタイムPCR機器を用いた複数の増幅サイクルの後に、各DNA配列の存在および数量を、少なくとも1回は測定することを含む方法。
【請求項1】
複数の個々の検出部位(2)からなる配列からの蛍光信号(7)を結像するための光学機器(1)であって、
複数の個々の検出部位(2)からなる配列を有する平面支持体(4)を保持するための保持デバイス(3)と、
少なくとも1つの励起周波数を含む光を放射するための、少なくとも1つの光源(5)と、
複数の個々の検出部位(2)からなる配列から蛍光信号(7)を受光するように構成されているとともに、コンピュータによって読み取り可能な一次データを生成するように設計されている光学センサー(6)と、
複数の個々の検出部位(2)からなる配列に対して光源(5)からの励起光(9)を転送するとともに、複数の個々の検出部位(2)からなる配列から光学センサー(6)に対して蛍光信号(7)を転送するように構成されている視野レンズ(8)と、
光源(5)から視野レンズ(8)に対して励起光(9)を転送するように構成されている励起レンズ配列(10)と、
視野レンズ(8)から光学センサー(6)に対して蛍光信号(7)を転送するように構成されている結像レンズ配列(11)とを備えた光学機器(1)において、
この光学機器(1)が、瞳レンズアレイ素子(22)を有する瞳レンズアレイ(21)と、視野レンズアレイ素子(20)を有する視野レンズアレイ(19)とを備えた、対物レンズアレイ(18)を備えており、
この対物レンズアレイ(18)が、複数の個々の検出部位(2)からなる配列と視野レンズ(8)との間のビーム経路内に配置されており、
さらに、前記光学機器(1)が、励起光(9)の照明瞳と蛍光信号(7)の検出瞳とのためのマスクを形成する絞りアレイ(23)を備えており、この絞りアレイ(23)が、1つ以上の絞り開口部をそれぞれ備えた絞りアレイ素子を有しており、さらに、各絞りアレイ素子が、いずれの場合にも、1つの視野レンズアレイ素子(20)および1つの瞳レンズアレイ素子(23)に割りあてられており、それぞれの視野レンズアレイ素子(20)および瞳レンズアレイ素子(23)を通過するビーム経路のためのマスクを形成するようになっていることを特徴とする光学機器(1)。
【請求項2】
前記対物レンズアレイ(18)内で、いずれの場合にも前記視野レンズアレイ素子(20)と前記瞳レンズアレイ素子(22)とから形成されたレンズ対が、いずれの場合にも前記検出部位(2)の1つに割りあてられていることを特徴とする請求項1記載の光学機器(1)。
【請求項3】
前記瞳レンズアレイ(21)が、前記複数の検出部位(2)上に、前記視野レンズアレイ(19)の画像を形成することを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の光学機器(1)。
【請求項4】
前記視野レンズアレイ(19)が、励起光(9)に関する照明瞳と、蛍光信号(7)に関する検出瞳とを生成することを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の光学機器(1)。
【請求項5】
前記複数の検出部位(2)が、直径(D)を有しており、互いに間隔(d)をおいて配置されていること、および瞳レンズアレイ素子(22)の結像スケール(β)が、直径(D)に対する間隔(d)の比率に等しくなっていることを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の光学機器(1)。
【請求項6】
前記絞りアレイ(23)が、前記視野レンズアレイ(19)と前記瞳レンズアレイ(21)との間または前記瞳レンズアレイ(21)と前記複数の検出部位(2)からなる配列との間に配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学機器(1)。
【請求項7】
前記絞りアレイ(23)に、検出部位(2)の1つにそれぞれ割りあてられている絞り開口部(24、25)の対が設けられており、これらの絞り開口部対が、いずれの場合にも、絞り開口部対における第1の絞り開口部(24)が検出部位(2)に関する励起光(9)を通過させるように、および絞り開口部対における第2の絞り開口部(25)が検出部位(2)からの蛍光信号(7)を通過させるように構成されていることを特徴とする請求項6〜7のいずれか1項に記載の光学機器(1)。
【請求項8】
前記励起光(9)のビーム経路および前記検出部位(2)からの蛍光信号(7)のビーム経路が、前記視野レンズ(8)の物体側において、すなわち前記視野レンズ(8)と前記視野レンズアレイ(19)との間において、テレセントリックであることを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の光学機器(1)。
【請求項9】
前記視野レンズアレイ素子(20)が、円形または四角形であることを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の光学機器(1)。
【請求項10】
前記視野レンズアレイ素子(20)が四角形であり、前記複数の検出部位(2)が直径(D)を有しているとともに、互いに間隔(d)をおいて配置されており、前記視野レンズアレイ素子(20)における4つのエッジが複数の個々の検出部位(2)における円形の境界線上、またはこの境界線内に結像されること、および前記瞳レンズアレイ素子(22)の結像スケール(βQ)が四角形の視野レンズアレイ素子(20)の対角線(√2・d)における前記直径(D)に対する比率と等しいか、またはこれより大きくなっていることを特徴とする請求項9記載の光学機器。
【請求項11】
前記光源がLEDである請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学機器。
【請求項12】
複数の個々の検出部位(2)からなる配列からの化学発光または生物発光の信号を結像するための光学機器(1)であって、
複数の個々の検出部位(2)からなる配列を有する平面支持体(4)を保持するための保持デバイス(3)と、
複数の個々の検出部位(2)からなる配列から、化学発光または生物発光の信号を受光するように構成されているとともに、コンピュータによって読み取り可能な一次データを生成するように設計されている光学センサー(6)と、
複数の個々の検出部位(2)からなる配列から光学センサー(6)に対して、化学発光または生物発光の信号を転送するように構成されている視野レンズ(8)と、
視野レンズ(8)から光学センサー(6)に対して、化学発光または生物発光の信号を転送するように構成されている結像レンズ配列(11)とを備えた光学機器(1)において、
この光学機器(1)が対物レンズアレイ(18)を備えており、
この対物レンズアレイ(18)が視野レンズアレイ素子(20)を有する視野レンズアレイ(19)と、瞳レンズアレイ素子(22)を有する瞳レンズアレイ(21)とを備えており、
この対物レンズアレイ(18)が複数の個々の検出部位(2)からなる配列と視野レンズ(8)との間のビーム経路内に配置されていることを特徴とする光学機器(1)。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の光学機器(1)と、
PCR反応を実行することの可能な反応混合物をそれぞれ含んだ1つ以上のウェルを有する支持体(4)を、加熱および冷却するための手段と、
を備えたリアルタイムPCR機器。
【請求項14】
複数のPCR反応をリアルタイムに同時に実行およびモニターするための分析システムであって、
PCR反応を実行することが可能な反応混合物をそれぞれ含んでいる複数の個々の検出部位(2)からなる配列としてのマルチウェルプレートと、
蛍光DNA結合実体と、
マルチウェルプレートにおける複数の個々の検出部位(2)を光によって照明するとともに、マルチウェルプレートの各ウェルからの蛍光信号を、コンピュータによって読み取り可能な一次データを生成するために、対応する蛍光信号(7)を受光することができるように構成された光学センサー(6)によって検出するための、請求項1〜12のいずれか1項に記載の光学機器(1)を備えた、請求項13記載のリアルタイムPCR機器とを有する分析システム。
【請求項15】
複数のDNAターゲット配列を増幅、検出および/または定量するための方法において、
PCR反応を実行することの可能な組成物または反応混合物を提供すること、
複数のDNAターゲット配列の増幅が起こり得るように、熱サイクリックプロトコルにしたがって反応混合物を処理すること、および
蛍光DNA結合実体および請求項13に記載のリアルタイムPCR機器を用いた複数の増幅サイクルの後に、各DNA配列の存在および数量を、少なくとも1回は測定することを含む方法。
【図1】
【図2】
【図8】
【図9】
【図13】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図2】
【図8】
【図9】
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【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−32513(P2010−32513A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−171569(P2009−171569)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171569(P2009−171569)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【Fターム(参考)】
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