説明

蛍光標識生物学的成分の検出のための装置及び方法

液体試料中の生物学的成分の検出のための試料採取装置が、液体試料を受け取るための測定キャビティであって、所定の固定厚さを有する測定キャビティと、測定キャビティ内部に乾燥形態で配備される試薬とを備える。試薬は、蛍光体結合分子を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体試料中の蛍光標識生物学的成分の検出及び体積計数のための試料採取装置、方法、及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞試料などの生物学的試料を分析するとき、試料の様々な成分、例えば存在する様々なタイプの細胞を識別することができることが望ましい。これらの様々な成分は、細胞表面マーカーなどそれぞれの分子構造を示し、それによって成分を判別することができる。これらの分子構造に結合するように構成された蛍光体結合分子を使用することによって、生物学的成分は、蛍光標識付けされることがある。蛍光標識成分、主に細胞を検出及び分析するためのいくつかの技法が当技術分野で知られており、主として、フローサイトメトリー及び蛍光顕微鏡技術である。
【0003】
フローサイトメトリーでは、縣濁された蛍光標識細胞が、1つずつ、レーザ・ビームの前の流路を通され、いくつかの異なる波長の蛍光、並びに前方及び直交光散乱を測定することができる。したがって、いくつかの異なる蛍光体の標識付け、並びに細胞のサイズ及び粒度を分析することができる。フローサイトメトリー法は、例えば米国特許第3826364号、米国特許第4248412号、及び米国特許第5047321号に開示されている。
【0004】
蛍光顕微鏡は、一般に、通常は顕微鏡スライド上に塗抹された調査すべき蛍光試料を、特定のより短い波長の電磁放射で照射することによって行われ、それにより、試料中の蛍光体が前記放射を吸収し、その後、特定のより長い波長の電磁放射を放出する。放出された放射は、放出されたより長い波長の放射が通過することのみを本質的に許す色フィルタ又は等価なモノクロメータを設けられた顕微鏡を使用して検出される。
【0005】
米国特許第4125828号及び米国特許出願第2006/0017001号に、顕微鏡スライド上に塗抹された蛍光試料を検出するための蛍光顕微鏡及び方法が開示されている。
【0006】
米国特許第5932428号には、撮像器具による血液試料の蛍光染色ターゲット成分の計数のためのアッセイ及び試料混合が開示されている。米国特許第5932428号の一態様では、全血が、乾燥された蛍光標識抗体、及び両性イオン界面活性剤と混合され、その後、血液混合物が走査毛細管内に引き込まれる。充填された毛細管が、レーザ・ビームを使用して走査され、このレーザ・ビームは、毛細管に交差するガウス・ウエストの形態で狭められる。したがって、レーザは、ガウス・ウエストの直径に毛細管の内腔の深さを掛けたものに等しい毛細管の柱状領域を照明し、この領域内の任意の蛍光物質を励起する。この領域からの蛍光が、光検出器によって検出される。次いで、レーザは、毛細管の別の領域を照明し、その領域の蛍光も検出され、以下同様である。このようにして、試料の所定の体積が、蛍光に関して走査される。
【0007】
米国特許出願第2006/0024756号には、蛍光及び磁気標識細胞の計数のための装置、方法及びアルゴリズムが開示されている。開示されている方法によれば、全ての細胞が蛍光標識付けされ、しかしターゲット細胞のみは、磁気標識付けもされる。標識細胞試料が、2つの楔形磁石の間のチャンバ又はキュベット内に配備されて、磁気標識細胞をキュベットの観察面に選択的に移動させる。LEDが細胞を照明し、CCDカメラが、ターゲット細胞によって放出される蛍光の画像を取得する。細胞標識付けは、分析に使用されるキュベット又はチャンバ内で行うことができ、或いは、試料は、細胞標識付けを可能にするのに十分な時間が与えられた後に、そのようなキュベット又はチャンバに移送される。キュベットの体積は既知であり、血液試料中のターゲット細胞の絶対濃度を求めるために使用される。しかし、これは、ターゲット細胞全てが観察面に磁気的に移動されて、それらを検出及びカウントすることができるようになるまで、待機を必要とする。
【0008】
EP0422708号は、化学試験法で使用するための装置を開示する。装置は、2つの平坦であり平行な壁によって画定されたキャビティを備え、壁の一方が、共有結合で固定化された抗体を保持し、この壁又は別の壁が、乾燥されているが共有結合で固定化されていない蛍光標識抗体を保持する。目的は、固定化抗体と標識抗体との両方に結合することができる抗原のサンドイッチ・アッセイのための装置を使用することである。アッセイすべき抗原を含む液体試料が、毛細管力によって装置内に吸引され、標識抗体を溶解する。抗原が固定化抗体によって結合され、また標識抗体も抗原に結合し、それにより、蛍光標識抗体が、共有結合で固定化された抗体を保持する壁に集中される。この壁は、ガラス又は別の光伝送材料からなり、光ファイバ又は導波路と同様に光を伝達する能力を有する。液体試料中の抗原の存在は、壁の縁部での光強度、すなわち前記壁に存在する蛍光抗体から発する、壁によって誘導される光を測定することによって検出される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、液体試料の蛍光標識生物学的成分を検出するための単純な分析を提供することである。本発明の一態様によれば、目的は、液体試料の蛍光標識生物学的成分の体積計数のための単純な分析を提供することである。本発明のさらなる目的は、複雑な装置又は大量の試料調製を必要とせずに迅速な分析を提供することである。
【0010】
これらの目的は、独立クレームに記載の試料採取装置、方法、及びシステムによって部分的に又は完全に実現される。好ましい実施例は、従属クレームから明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、一態様によれば、本発明は、液体試料中の生物学的成分の検出のための試料採取装置であって、液体試料を受け取るための測定キャビティを備え、測定キャビティが所定の固定厚さを有する試料採取装置に関する。また、試料採取装置は、測定キャビティ内部に乾燥形態で配備される試薬であって、蛍光体結合分子を含む試薬を備える。
【0012】
別の態様によれば、本発明は、液体試料中の蛍光体標識生物学的成分の検出のための方法に関する。この方法は、蛍光体結合分子が液体試料中の生物学的成分の特定の分子構造に結合するように、蛍光体結合分子を含む試薬を液体試料と混合する段階と、試料採取装置の測定キャビティ内に液体試料を導入する段階であって、前記測定キャビティが所定の固定厚さを有する段階と、測定キャビティ内の試料の領域を、蛍光体の励起波長に対応する波長の電磁放射で照射する段階と、測定キャビティの厚さ全体中の蛍光体標識生物学的成分を検出する段階であって、測定キャビティ内の照射された領域のデジタル画像を取得することを含む段階とを含む。
【0013】
試料採取装置は、全血の試料を測定キャビティ内に直接得て、分析のために試料を提供することができる可能性を提供する。試料調製の必要はない。実際、血液試料は、患者の穿刺された指から測定キャビティ内に直接吸引されることがある。試料採取装置に試薬を設けることが、試料採取装置内部での反応を可能にし、この反応は、試料を分析の準備が整った状態にする。反応は、血液試料が試薬と接触するときに開始される。したがって、試料を手作業で調製する必要はなく、これは、分析を、患者が待機している間に検査室ですぐに行うのに特に適したものにする。
【0014】
試薬が乾燥形態で提供されるので、試料採取装置の有用性に影響を及ぼすことなく、試料採取装置を輸送して、長期にわたって保管することができる。したがって、試薬を含む試料採取装置は、血液試料の分析を行うかなり前に製造されて準備されてよい。
【0015】
したがって、本発明の試料採取装置は、訓練を受けていない人でさえ、必ずしも決まった標準化された実験室環境でなくても、容易に且つ再現性をもって使用することができる。この理由は、この試料採取装置が、即応キットを形成することができ、分析の準備が整った状態で試料を提供するために、試料採取装置の試料入口を試料と接触するように移動させるだけでよいからである。
【0016】
さらに、測定キャビティの固定厚さが、液体試料の単位体積当たりの生物学的成分の数を求めることができる可能性を提供する。この方法は、測定キャビティの厚さ全体中の蛍光体標識生物学的成分を検出するように企図されるので、液体試料の分析を迅速に行うことが可能である。対象の生物学的成分が測定キャビティ内部で沈降する、又は測定面に引き寄せられるのを待つ必要はない。
【0017】
液体試料の生物学的成分は、例えば、哺乳動物細胞(例えば、白血球及び血小板)などの真核細胞、細菌、ウィルス、及びDNAなどの高分子であってよい。
【0018】
液体試料は、例えば、無希釈の全血、尿、又は髄液などの体液、或いは哺乳動物細胞培養物又は細菌培養物などの細胞培養物であってよい。液体試料は、何ら前処理を受けていない無希釈の生物学的流体であってよい。希釈、遠心分離、及び溶解など生物学的試料の前処理は、計数されたターゲット細胞を分析された体積に関係付けるときに、より低い精度をもたらす。前処理段階が多ければそれだけ、計数の精度が低くなる。即応の試料採取装置内に試料を入れる前にいかなる種類の前処理も採用しないことによって、この方法はさらに単純化される。
【0019】
したがって、例えば、血液試料中の特定の細胞タイプの存在又は量を検出することが可能である。
【0020】
試料採取装置は、前記測定キャビティを画定するために2つの平坦な面を有する本体部材を備えることがある。平坦な面は、光学的測定のための試料厚さを決定するために互いから所定の距離に配置されることがある。これは、試料採取装置が、よく定義された厚さを光学的測定に提供することを示唆し、これは、液体試料の単位体積当たりの蛍光体標識生物学的成分の数を正確に求めるために使用することができる。分析される液体試料の体積は、測定キャビティの厚さと、撮像される試料の面積とによってよく定義される。したがって、よく定義された体積は、蛍光体標識生物学的成分の体積カウントが求められるように、蛍光体標識生物学的成分の数を試料の体積に関連付けるために使用することができる。
【0021】
測定キャビティは、好ましくは、50〜170マイクロメートルの均一な厚さを有する。少なくとも50マイクロメートルの厚さは、測定キャビティが、細胞試料などの液体試料を単層に塗抹せず、小さな断面積にわたってより大きな体積の液体試料を分析できるようにすることを示唆する。したがって、細胞試料の比較的小さな画像を使用して、蛍光体標識生物学的成分の数の信頼できる値を与えるために十分に大きな体積の液体試料を分析することができる。厚さは、より好ましくは、少なくとも100マイクロメートルであり、これは、さらに小さな断面積を分析できるようにし、又はより大きな試料体積を分析できるようにする。さらにまた、少なくとも50マイクロメートル、より好ましくは100マイクロメートルの厚さは、2つの平坦な面の間でよく定義された厚さを有する測定キャビティの製造を容易にする。
【0022】
170マイクロメートル以下の厚さを有するキャビティ内に配備されるほとんどの試料、例えば血液試料に関して、血液試料の細胞など蛍光体標識生物学的成分の数は非常に小さく、したがって成分が互いに重なって位置されることによる偏差はごく小さい。しかし、そのような偏差の影響は、蛍光体標識生物学的成分の数に関係付けられ、そのため、少なくとも蛍光体標識生物学的成分の数の大きな値に関して結果を統計的に補正することによって、少なくともある程度は対処されることがある。この統計的補正は、測定装置の較正に基づくことがある。偏差は、150マイクロメートル以下の厚さを有する測定キャビティに関してはさらに小さく、より単純な較正が使用されてもよい。この厚さは、重なり合う生物学的成分に関する較正を何ら必要としないことさえある。
【0023】
さらに、測定キャビティの厚さは十分に小さく、測定キャビティの深さ全体を同時に分析することができるように測定装置がデジタル画像を得ることができるようにする。拡大システムが測定装置で使用されることになる場合、大きな被写界深度を得ることは簡単でない。したがって、測定キャビティの厚さは、厚さ全体がデジタル画像内で同時に分析されるように、150マイクロメートルを超えないことが好ましい。被写界深度は、170マイクロメートルの測定キャビティの厚さに対処するように設定されることがある。
【0024】
デジタル画像は、少なくとも測定キャビティの厚さに対応する被写界深度で取得されることがある。これは、測定キャビティの厚さ全体を試料のデジタル画像内で同時に分析することができるように、試料厚さ全体の十分な合焦が得られることを示唆する。したがって、例えば細胞が測定キャビティ内で沈降するのを待機する必要はなく、分析を行うための時間が短縮される。試料の特定の部分で非常に鮮明に合焦することがないように選択することによって、試料厚さ全体の十分な合焦が得られて、試料中の蛍光体標識生物学的成分の数の識別を可能にする。これは、蛍光成分が幾分ぼやけ、それでも、被写界深度の合焦範囲内にあるものとみなされることがあることを示唆する。
【0025】
測定キャビティの固定厚さが、試料のよく定義された体積の分析を可能にする。特に、測定キャビティの領域は、試料のよく定義された体積の分析を提供するために撮像されるように適合され、試料中の生物学的成分の体積計数を得ることができる。撮像される面積は、測定キャビティの厚さと共に、試料のよく定義された体積を提供する。この静的体積内部での標識生物学的成分の数をカウントすることによって、試料中の生物学的成分の体積カウントを容易に得ることができる。体積カウントは、その体積のデジタル画像を解析することによって得ることができる。したがって、体積カウントは、フローサイトメトリー原理に従って行われるように分析器の前に試料を通すことを必要とせずに実現することができる。
【0026】
試料採取装置は、試薬を乾燥形態で残すように蒸発する揮発性液体中に溶解されて、表面に塗布された試薬を提供されることがある。
【0027】
試薬が、測定キャビティ内に挿入される前に揮発性液体中に溶解されると有利であることが認識されている。これは、液体を、試料採取装置の製造及び準備中に測定キャビティの狭い空間から効果的に蒸発させることができることを示唆する。
【0028】
試薬は、好ましくは有機溶媒中に溶解され、より好ましくはメタノール中に溶解されることがある。そのような溶媒は、揮発性であり、測定キャビティの表面上に試薬を乾燥させるために適切に使用することができる。
【0029】
全ての成分を含む本発明の試薬は、好ましくは、分析すべき液体試料中に溶解可能及び/又は縣濁可能であり、好ましくは、分析を通じて溶液/縣濁液中に留まるように意図されている。上述したように、方法は、測定キャビティの厚さ全体中の蛍光体標識生物学的成分を検出するように企図され、対象の生物学的成分を観察面に引き寄せる又は固定化する必要がないので、試薬又は試薬の任意の成分の固定化、或いは任意の他の方法での溶解/縣濁の回避も必要ない。逆に、溶解可能/縣濁可能な試薬、好ましくは容易に溶解可能/縣濁可能な試薬を使用することが、試薬と液体試料との混合を容易にし、試薬と、測定すべき生物学的成分を含む液体試料との任意の反応を加速させる。
【0030】
本発明の試薬は、蛍光体結合分子を含む。蛍光体又は蛍光色素は、本明細書では、分子を蛍光性にさせる分子の部分と定義される。分子は、別の波長の放射を受けたのに応じて特定の波長の電磁放射を放出する場合に、蛍光性になる。
【0031】
一般に使用されている蛍光体又は蛍光色素は、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリスリン(PE)、ペリジニンクロロフィルタンパク質(PerCP)、アロフィコシアニン(APC)、及びシアニン5.5(Cy5.5)を含む。
【0032】
蛍光体結合分子は、好ましくは、生物学的成分の特定の分子構造に結合するように構成される。そのような分子の例は、リガンド、受容体、抗原、抗体、及び抗体フラグメントを含み、しかしそれらに限定されない。抗体フラグメントの例は、例えば、抗原結合部位(Fab)と一本鎖抗体(scFv)とである。抗体及び抗体フラグメントは、全ての種類の分子構造に対して親和性を有して比較的容易に得られるので好ましく、それらを様々な種類の蛍光体と結合するための多くの方式が知られている。
【0033】
分子構造は、生物学的成分の任意の特定の分子構造、例えばCD4やCD8など細胞表面マーカー、又はDNAなど細胞内構造であってよい。細胞表面マーカーは、本明細書では、抗原やエピトープなど細胞の外部からアクセス可能な、細胞の任意の分子特性の原形質膜と定義される。これは、HIV感染を監視するためのCD4+細胞の検出及び計数など、任意の目的のために任意のタイプの細胞を検出することができることを示唆する。
【0034】
蛍光体結合分子の量は、好ましくは、生物学的成分に結合するのに十分な量が存在するように選択される。本質的に全ての標的生物学的分子が妥当な時間内に蛍光体結合分子によって適切に標識付けされることを保証するために、蛍光体結合分子は余剰に存在する必要がある。しかしやはり、混合された試料中に、結合されなかった蛍光体結合分子が存在し、この未結合の濃度は、試料が分析されるときにバックグラウンド蛍光を低く保つために十分に低く保たれることが望まれる。したがって、蛍光体結合分子は、あまりに過剰であるべきではない。結合された蛍光体結合分子と結合されない蛍光体結合分子との比は、蛍光体結合分子と生物学的成分との親和性、及び蛍光体結合分子を生物学的成分と混合するために割り当てられる時間に依存する。
【0035】
さらに、試料採取装置は、測定キャビティを試料採取装置の外部と連絡する試料入口を備え、前記入口は、液体試料を採取するように構成される。試料入口は、毛細管力によって液体試料を引き上げるように構成することができ、測定キャビティは、入口からキャビティ内に液体をさらに引き込むことができる。その結果、単に液体と接触するように試料入口を移動させることによって、液体試料を測定キャビティ内に容易に採取することができる。次いで、試料入口及び測定キャビティの毛細管力が、よく定義された量の液体を測定キャビティ内に引き上げる。別法として、液体試料は、試料採取装置に外部ポンピング力を加えることによって測定キャビティ内に吸引される又は引き込まれることもある。別の代替形態によれば、液体試料は、ピペット内に採取され、次いでピペットによって測定キャビティ内に導入されることがある。
【0036】
試料採取装置は使い捨てであってよく、すなわち、1回のみ使用されるように構成される。試料採取装置は、液体試料を受け取ることができ、カウントするために試料を呈示するのに必要とされる全ての試薬を保持するので、蛍光体標識生物学的成分のカウントを行うためのキットを提供する。これは、試料採取装置が、1回のみの使用に適合され、試料採取装置を洗浄して試薬を再び塗布することができる可能性を考慮せずに形成されてよいので、特に使用可能にされる。また、試料採取装置は、プラスチック材料で成形され、それにより低コストで製造することができる。したがって、使い捨ての試料採取装置を使用することは、やはりコスト効果が高いことがある。
【0037】
液体試料中の蛍光体標識生物学的成分の検出のための方法の一実施例によれば、試料採取装置は、測定キャビティ内部に乾燥形態で配備される試薬を備え、試薬は、蛍光体結合分子を含む。このとき、試薬と接触するように液体試料を測定キャビティ内に導入することによって、混合が実現される。これは、試料調製が必要ないことを示唆する。血液試料が試薬と接触するときに反応が開始されることがある。したがって、試料を手作業で調製する必要はなく、これは、分析を、患者が待機している間に検査室ですぐに行うのに特に適したものにする。
【0038】
しかし、代替実施例によれば、試薬と液体試料との混合は、液体試料が測定キャビティ内に導入される前に行われてもよい。別の代替形態によれば、混合は、少なくとも2つの段階で行われることがあり、第1の段階は、試料が測定キャビティ内に導入される前に行われ、第2の段階は、測定キャビティ内で行われる。これは、試料調製が、試料採取装置の外部と試料採取装置とで少なくとも部分的に行われることを示唆する。しかし、固定厚さを有する測定キャビティを有する試料採取装置を使用する利点は、それでも保たれる。したがって、この方法は、液体試料の単位体積当たりの生物学的成分の数を求めることができる可能性を提供する。さらに、対象の生物学的成分が、測定キャビティ内部で沈降する又は観察面に引き寄せられるのを待つ必要がない。
【0039】
調査すべき試料の照射のために、試料の蛍光体によって放出される波長に対応する、又はその波長に近い波長の放射が試料に達するのを許さないように構成された放射源を使用することが好ましい。この理由は、これが、放出される放射の検出に干渉するからである。この制限された波長の放射を得るために、好ましくは、放射源が色フィルタと関連して使用される。別法として、蛍光体によって吸収される特定の波長で放射するレーザが使用されることもある。また、放射源から試料に特定の波長の放射のみを向けるために、プリズム又はラスタ(グリッド)が使用されることもある。放射源は、好ましくは発光ダイオード(LED)であり、しかしレーザ又は通常の電球など任意の放射源を使用することができる。LEDは、比較的安価であり信頼できるので好ましい。
【0040】
蛍光体標識生物学的成分の検出は、好ましくは、測定キャビティ内の照射された試料のデジタル画像を取得することを含み、蛍光体を示す生物学的成分は、蛍光体の放出波長に対応する波長の電磁放射を放出する蛍光ドットとして判別される。デジタル画像は、簡便には蛍光顕微鏡内に組み込まれたCCDカメラの使用によって取得され、顕微鏡は、簡便には色フィルタの使用によって、蛍光体によって放出される電磁放射の波長がカメラに達することのみを本質的に許すように適合されることが好ましい。
【0041】
さらに、蛍光体標識生物学的成分の検出は、好ましくは、蛍光体を示す生物学的成分を識別して、試料中の蛍光体を示す生物学的成分の数を求めるために、デジタル画像をデジタル解析することを含む。これは、生物学的成分の検出及び/又はカウントを、コンピュータベースの画像解析によって容易に得ることができることを示唆する。したがって、信頼でき再現性のある結果を得ることができる。
【0042】
液体試料は、好ましくは、毛細管力によって、毛細管試料入口を通して試料採取装置の測定キャビティ内に導入される。
【0043】
デジタル画像は、3〜50倍、より好ましくは3〜10倍の倍率を使用して取得されることがある。これらの倍率範囲内で、本発明の方法によって標的とされる哺乳動物細胞などほとんどの生物学的成分が、検出のために十分に拡大され、それと共に、被写界深度は、試料厚さに及ぶように設定することができる。低い倍率は、大きな被写界深度を得ることができることを示唆する。しかし、低い倍率が使用される場合、生物学的成分を検出するのが難しいことがある。取得された画像内の画素の数を増やすことによって、すなわちデジタル画像の解像度を改善することによって、より低い倍率を使用することができる。このようにすると、3〜4倍の倍率を使用し、それでも哺乳動物細胞など生物学的成分を検出できるようにすることが可能となる。
【0044】
分析は、デジタル画像内で、生物学的成分に標識付けする蛍光体の放出波長に対応する特定の波長の電磁放射の高放出領域を識別することを含むことがある。さらに、分析は、特定の放出される電磁放射によって生じるデジタル画像内の明るいドットを識別することを含むことがある。蛍光体結合分子は、標的生物学的成分の周りに蓄積されることがあるので、特定の蛍光の放出は、離散する点でピークを有することがある。これらの点は、デジタル画像内に明るいドットを生成し、これは、標的生物学的成分に対応するものとして検出されることがある。
【0045】
分析は、さらに、取得されたデジタル画像を電子的に拡大することを含む。試料の拡大されたデジタル画像を取得するために試料が拡大されると共に、取得されたデジタル画像自体が、取得されたデジタル画像内で互いに非常に近接して撮像された物体の判別を容易にするために電子的に拡大されることもある。
【0046】
それぞれ異なる蛍光体に結合され、それぞれ異なる波長で電磁放射を放出し、それぞれ異なる分子構造に結合するように構成された2つ以上の異なる蛍光体結合分子が試薬中に含まれる場合、試料の放射の各放出波長の画像が取得されることがある。このとき、これらの画像が重畳されることがあり、それにより分析は、1つの分子構造を呈するいくつかの生物学的成分と、別の分子構造を呈するいくつかの生物学的成分と、それら両方を呈するいくつかの生物学的成分とを示すことがある。3つ以上の異なる蛍光体結合分子が使用される場合も、推論は同様である。
【0047】
さらに別の実施例では、本発明は、液体試料中の蛍光体標識生物学的成分の体積計数のためのシステムであって、上に定義された試料採取装置と、測定装置とを備え、測定装置が、液体試料を含む試料採取装置を測定キャビティ内に受け取るように構成された試料採取装置ホルダと、所定の波長の電磁放射で液体試料を照射するように構成された光源と、測定キャビティ内の照射された試料のデジタル画像を取得するためのデジタル画像取得手段を備える撮像システムであって、蛍光体結合生物学的成分が、選択的電磁波長撮像によってデジタル画像内で判別される撮像システムと、蛍光体結合生物学的成分を識別して、液体試料中の蛍光体結合生物学的成分の数を求めるために、取得されたデジタル画像を解析するように構成された画像解析器とを備えるシステムに関する。
【0048】
測定装置は、測定キャビティ内に直接採取された液体試料の分析を行うために上述した試料採取装置の性質を利用することがある。測定装置は、試料中の生物学的成分の体積計数を行うために、決定された体積の試料を撮像することがある。
【0049】
次に、本発明を、添付図面を参照しながら例としてさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0050】
ここで図1を参照して、本発明の実施例による試料採取装置10を説明する。試料採取装置10は、使い捨てであり、分析に使用された後に捨てられることになる。これは、試料採取装置10が複雑な取扱いを必要としないことを示唆する。試料採取装置10は、プラスチック材料で形成され、射出成形によって製造される。これは、試料採取装置10の製造を単純且つ安価にし、それにより試料採取装置10のコストを低く保つ。
【0051】
試料採取装置10は、ベース14を有する本体部材12を備え、ベース14は、分析結果に何ら干渉を引き起こすことなく操作者が触れることができる。また、ベース14は、分析装置にあるホルダに嵌合する突出部16を有する。突出部16は、試料採取装置10が分析装置内で正確に位置決めされるように構成される。
【0052】
さらに、試料採取装置10は、試料入口18を備える。試料入口18は、試料採取装置10内部の対向する壁の間に画定され、それらの壁は、試料入口18で毛細管力が生成されるように互いに近くに配置される。試料入口18は、試料採取装置10の外部と連絡して、血液を試料採取装置10内に引き込むことができるようにする。さらに、試料採取装置10は、試料採取装置10内部の対向する壁の間に構成された測定キャビティ20の形態で、細胞など蛍光体標識生物学的成分をカウントするためのチャンバを備える。測定キャビティ20は、試料入口18と連絡して構成される。測定キャビティ20を画定する壁は、毛細管力が試料入口18から測定キャビティ20内に血液を引き込むことができるように、試料入口18の壁よりも互いに近くに配置される。
【0053】
測定キャビティ20の壁は、互いから140マイクロメートルの距離で配置される。この距離は、測定キャビティ20全体にわたって均一である。測定キャビティ20の厚さが、検査される血液の体積を定義する。分析結果が、検査される血液試料の体積と比較されることになるので、測定キャビティ20の厚さは、非常に正確である必要があり、すなわち、測定キャビティ20内部で、且つ異なる試料採取装置10の測定キャビティ20の間で、厚さの非常に小さな変化のみが許される。厚さは、キャビティの小さな領域内で比較的大きな試料体積を分析できるようにする。厚さは、理論上は、測定キャビティ20内部で細胞が互いに重なって位置されるのを許す。しかし、血液試料など試料中の細胞の量は非常に少なく、これが生じる可能性は非常に低い。
【0054】
試料採取装置10は、血液1リットル当たり0.5×10細胞を超える蛍光体標識細胞数を測定するように適合される。より低い細胞数では、統計的に有意な量の細胞をカウントできるようにするには試料体積が小さすぎる。さらに、蛍光体標識細胞数が血液1リットル当たり12×10細胞を超えるとき、互いに重なり合って位置される細胞の影響が、測定される細胞数に関して意味を持ち始める。この蛍光体標識細胞数で、標識細胞は、測定キャビティの厚さが140マイクロメートルであるとき、照射される試料の断面の約8%に及ぶ。したがって、正確な蛍光体標識細胞数を得るためには、この影響を考慮する必要がある。したがって、血液1リットル当たり12×10標識細胞を超える標識細胞数の値の統計的補正が使用されることがある。重なり合う標識細胞の影響は、細胞数が多くなるにつれてより大きくなるので、この統計的補正は、蛍光体標識細胞の数の増加につれて増す。統計的補正は、測定装置の較正によって決定されることがある。代替形態として、統計的補正は、試料採取装置10に関連して使用されることになる測定装置をセットアップするための一般的なレベルに決定されることがある。試料採取装置10は、血液1リットル当たり50×10標識細胞程度の大きさの蛍光体標識細胞の数を分析するために使用することができるように企図されている。
【0055】
代替実施例によれば、蛍光体標識生物学的成分の検出は、特定の生物学的成分が試料中に存在するかどうか判定するために使用される。この実施例では、体積カウントを行う必要はなく、したがって、生物学的成分の存在は、試料中の非常に少量の成分に関してさえ検出することができる。
【0056】
測定キャビティ20の壁の表面は、試薬22で少なくとも部分的に被覆される。試薬22は、測定キャビティ20の表面に対して、凍結乾燥、加熱乾燥、又は真空乾燥されてよく、且つ塗布されてもよい。試料は、測定キャビティ20内に採取されると、乾燥された試薬22と接触し、試薬22と試料成分との結合反応を開始する。
【0057】
試薬22は、ピペット又は分注器を使用して測定キャビティ20内に試薬22を投入することによって塗布される。試薬22は、測定キャビティ20内に投入されるとき、メタノール中に溶解される。試薬22を含む溶媒が、測定キャビティ20を充填する。次いで乾燥が行われ、それにより溶媒が蒸発され、試薬22が測定キャビティ20の表面に付着される。
【0058】
試薬が狭い空間の表面上に乾燥されることになるので、液体は、周囲雰囲気と接触する表面が非常に小さく、液体の蒸発はより困難になる。したがって、メタノールなど揮発性液体を使用することが有利であり、これは、測定キャビティの狭い空間から液体を効果的に蒸発させることができるようにする。
【0059】
代替の製造方法によれば、試料採取装置10は、2つの部片を互いに取り付けることによって形成され、一方の部片が、測定キャビティ20の底壁を形成し、他方の部片が、測定キャビティ20の上壁を形成する。これにより、2つの部片が互いに取り付けられる前に、露出している表面上に試薬22を乾燥させることができる。したがって、溶媒が揮発性である必要はないので、試薬22は水中に溶解されてもよい。
【0060】
試薬22は、1つ又は複数の蛍光体結合抗体を含むことがある。抗体は、細胞など標的生物学的成分の特定の分子構造特性に結合するように適合される。この構造は、CD4やCD8など細胞表面マーカーであってよい。血液試料が試薬22と接触するとき、抗体は、標的血液細胞の特定の分子構造に結合するように作用し、したがって細胞に蓄積する。試薬22は、好ましくは、本質的に全細胞にわたって標的細胞の一部分に明確に標識付けするのに十分な量の抗体を含むべきである。これは、本質的に標識細胞全てが蛍光性になり、したがって試料のデジタル画像内で容易に検出することができることを示唆する。さらに、しばしば蛍光体結合抗体の残渣が存在し、これは血漿中に混合される。抗体の残渣は、血漿中で、均質であり低いバックグラウンド・レベルの蛍光を与える。標的細胞での蓄積された抗体は、バックグラウンド・レベルの蛍光を超えて判別可能である。
【0061】
また、試薬22は、他の構成成分を含むこともあり、これらの成分は、活性であってよく、すなわち例えば血液試料の細胞への化学結合に関与し、或いは不活性であってよく、すなわち結合に関与しない。活性構成成分は、例えば、抗体がそれぞれのターゲット分子構造に結合するのを容易にするように構成されてよい。不活性構成成分は、例えば、測定キャビティ20の壁の表面への試薬22の付着を改善するように構成されてよい。
【0062】
数分以内に、血液試料が試薬22と反応し、それにより蛍光体標識抗体が標的細胞に結合する。
【0063】
図2を参照しながら、試料採取装置の別の実施例を説明する。試料採取装置110は、測定キャビティを形成するチャンバ120を備える。試料採取装置110は、チャンバ120内に血液を輸送するためのチャンバ120内への入口118を有する。チャンバ120は、吸引管121を介してポンプ(図示せず)に接続される。ポンプは、吸引管121を介してチャンバ120内への吸引力を印加することができ、それにより試料が入口118を通ってチャンバ120内に吸引される。試料採取装置110は、測定が行われる前にポンプから切断されることがある。第1の実施例による試料採取装置10の測定キャビティ20と同様に、チャンバ120は、検査すべき試料の厚さを定義するよく定義された厚さを有する。さらに、試薬122が、試料と反応するようにチャンバ120の壁に塗布される。
【0064】
次に図3を参照しながら、蛍光体標識生物学的成分の検出及び体積計数のためのシステムを説明する。システム30は、血液試料を含む試料採取装置10を受け取るための試料ホルダ32を備える。試料ホルダ32は、試料採取装置10の測定キャビティ20がシステム30内部に正確に位置決めされるように試料採取装置10を受け取るように構成される。システム30は、試料採取装置10内部の試料を照明するための光源34を備える。光源34はLEDであってよく、これは、色フィルタと関連して、試料と共に使用される蛍光体の励起波長に対応する光48を照射する。さらに、波長は、蛍光体標識成分以外の試料の蛍光化合物の吸収が比較的低くなるように選択すべきである。さらに、試料採取装置10の壁は、その波長に対して本質的に透明であるべきである。色フィルタを通過した後、光は、ダイクロイック・ミラー35の使用によって試料に向けられる。細胞など試料の標識生物学的成分の周り(又は内部)に蓄積された蛍光体は、特定の波長のこの光48を吸収し、特定のより長い波長の光50を放出する。より長い波長のこの放出光50は、ダイクロイック・ミラーを通過して撮像システム36に達することを許され、したがって成分は、試料のデジタル画像内で明るい領域又はドットとして現れる。カラー画像が取得される場合、標識細胞は、特定の色の付いたドットとして現れる。白黒画像が取得される場合、標識細胞は、より暗いバックグラウンドに対する明るいドットとして現れる。
【0065】
光源34は、別法として、色フィルタと関連する白熱ランプ、又はレーザであってもよい。
【0066】
別法として、光48は、ダイクロイック・ミラーを使用せずに、ある角度で試料に直接向けられることもある。
【0067】
システム30は、さらに、試料ホルダ32の上に構成された撮像システム36を備える。したがって、撮像システム36は、血液試料によって放出された放射50を受け取るように構成される。撮像システム36は、光学的拡大システム38と、画像取得手段40とを備えることがある。試料の蛍光体によって放出されたものでない光が画像取得手段40に達するのを防止するために、色フィルタが使用されることがある。拡大システム38は、3〜50倍、より好ましくは3〜100倍、最も好ましくは3〜4倍の倍率を提供するように構成されることがある。これらの倍率範囲内で、標識細胞を判別することが可能である。より低い倍率を使用できるようにするために、改善された解像度で画像が取得されることもある。さらに、拡大システム38の被写界深度は、やはり、少なくとも測定キャビティ20の厚さに対応するように設定することができる。
【0068】
拡大システム38は、試料ホルダ32に近接して配置される対物レンズ又はレンズ系42と、対物レンズ42からある距離に配置される接眼レンズ又はレンズ系44とを備えることがある。対物レンズ42は、試料の第1の拡大を提供し、これがさらに接眼レンズ44によって拡大される。対物レンズ42は、ダイクロイック・ミラー35と試料ホルダ32との間に配置されることもある。拡大システム38は、試料の適切な拡大及び撮像を達成するためのさらなるレンズを備えることもある。拡大システム38は、試料ホルダ32内に配置されたときの測定キャビティ20内の試料が画像取得手段40の撮像面上に合焦されるように構成される。
【0069】
画像取得手段40は、試料のデジタル画像を取得するように構成される。画像取得手段40は、CCDカメラなど任意の種類のデジタル・カメラであってよい。デジタル・カメラの画素サイズは、撮像システム36に対する制限を設定し、撮像面での錯乱円が被写界深度内で画素サイズを超えないことがある。しかし、標識細胞は、それらが幾分ぼやける場合でさえ依然として検出され、したがって錯乱円は、被写界深度内で考慮されながら画素サイズを超えるのを可能にされることがある。デジタル・カメラ40は、測定キャビティ20内の試料のデジタル画像を取得し、試料厚さ全体が、標識血液細胞をカウントするのに十分にデジタル画像内に合焦される。撮像システム36は、測定キャビティ20の領域を画定し、この領域が、デジタル画像内に撮像される。撮像される面積は、測定キャビティ20の厚さと共に、撮像される試料の体積を定義する。撮像システム36は、試料採取装置10内の血液試料を撮像するのに適合するようにセットアップされる。撮像システム36のセットアップを変更する必要はない。好ましくは、撮像システム36は、セットアップが不慮に変えられないようにハウジング内部に配置される。
【0070】
別法として、システム30は、複数の撮像システム36を備えることがあり、その際、放出される異なる波長の蛍光が、それぞれ異なる撮像システムに向けられることがある。異なる撮像システム36に異なる波長の光を向けることは、例えば1つ又は複数のダイクロイック・ミラー又はグリッドを使用することによって実現されることがある。
【0071】
また、複数の光源34が使用されることがあり、その際、試料は、同時に又は順次にいくつかの異なる特定の波長の光で照射されることがある。これは、複数のLEDをそれぞれ少なくとも1つの色フィルタに関連して使用することによって実現されることがある。簡便には、システム30内部で使用される全ての色フィルタがホイール上に配置されることがあり、そのホイール上には、最も一般的に必要とされる全ての色フィルタが配置されることがあり、それにより、特定の検出のために必要とされる特定のフィルタを活動位置に容易に割り送ることができる。フィルタは、フィルタが励起光に関して使用される場合には、LEDからの光が試料に達する前にその光に交差するときに、或いはフィルタが放出光に関して使用される場合には、試料からの蛍光が画像取得手段40に達する前にその蛍光に交差するときに、活動位置にある。
【0072】
システム30は、さらに、画像解析器46を備える。画像解析器46は、デジタル・カメラ40に接続されて、デジタル・カメラ40によって取得されたデジタル画像を受け取る。画像解析器46は、標識細胞に対応するデジタル画像内のパターンを識別するように構成されて、デジタル画像内に存在する標識細胞の数をカウントする。したがって、画像解析器46は、より暗いバックグラウンドに対する明るいドットを識別するように構成されることがある。画像解析器46は、デジタル画像を解析する前に最初にデジタル画像を電子的に拡大するように構成されることがある。これは、デジタル画像の電子的な拡大がデジタル画像を幾分ぼかすとしても、画像解析器46が、互いに近接して撮像された標識細胞をより容易に判別することができることがあることを示唆する。
【0073】
画像解析器46は、デジタル画像内で識別される標識血液細胞の数を、上述したようによく定義された血液試料の体積で割ることによって、血液の体積当たりの標識血液細胞の数を計算することができる。体積当たりの標識血液細胞数は、装置30のディスプレイに提示されることがある。
【0074】
画像解析器46は、画像解析を行うためのコードを含む処理装置として実現されることがある。
【0075】
図4を参照しながら、蛍光標識生物学的成分の方法を説明する。標識Tリンパ球の検出及び体積計数のための方法を参照しながら、この方法を具体的に説明する。しかし、この方法が、他の生物学的成分の検出及び体積計数のために変更されてもよいことを当業者には理解されたい。当業者によって理解されるように、対象の生物学的成分に標識付けするのに適切な試薬を使用する必要があり、照射及び検出は、選択される蛍光体の励起及び放出波長に適合させる必要がある。
【0076】
Tリンパ球の検出及び体積計数のための方法は、140μmの固定厚さを有する試料採取装置内に血液試料を採取する段階(ステップ102)を含む。ヒト全血の無希釈試料が、試料採取装置内に採取される。試料は、毛細血管又は静脈血管から採取されることがある。毛細血管の試料は、患者の穿刺された指から測定キャビティ内に直接引き込まれることがある。血液試料は、試料採取装置内で試薬22と接触し、結合反応を開始する。試薬は、1つのFitc標識抗CD4抗体と、1つのAPC標識抗CD8抗体とを含む。数分以内に、血液試料が試薬22と反応し、それにより、蛍光体標識抗体が、それぞれ血液試料のTヘルパー・リンパ球のCD4マーカー及びTキラー・リンパ球のCD8マーカーに結合し、ここで試料は分析の準備が整う。試料採取装置が、分析装置内に配置される(ステップ104)。分析は、分析装置のボタンを押すことによって開始することができる。別法として、分析は、試料採取装置の存在を検出する装置によって自動的に開始される。
【0077】
試料は、約450nmの光のみが通過するのを許すように構成された色フィルタと関連してLEDを使用して照射される(ステップ106)。通過を許された光は、試料採取装置の上面に対してわずかに角度をもって試料に直接向けられる。LED光は、CD4+リンパ球に標識付けするFitc蛍光体によって吸収され、その際、Fitcが約500nmで光を放出する。CCDカメラが使用されて、光学的拡大を何ら伴わずに蛍光試料の画像を取得する(ステップ108)。カメラは、約500nmの波長の光のみがカメラ内に入るのを許すように構成された色フィルタと関連する。これは、デジタル画像が、標識Tヘルパー細胞の位置で明るいドット/領域を含むことを示唆する。
【0078】
試料は、次いで再び、上述したのと同様に、ここでは約590nmの光のみが試料を通過できるようにする色フィルタに関連したLEDで照射され、それによりCD8+Tキラー細胞に標識付けするAPC蛍光体を励起する。Fitc標識細胞の検出と同様に、約640nmの光のみがCCDカメラに達することができるようにする色フィルタが使用され、それにより第2のデジタル画像が得られ、ここでは、試料中に存在する標識Tキラー細胞の位置で明るいドット/領域を含む。
【0079】
取得されたデジタル画像は、画像解析器に転送され、電子的拡大画像解析を行い(ステップ110)、それぞれのデジタル画像内の明るいドットの数をカウントする。したがって、画像解析器は、血液試料中のそれぞれTヘルパー細胞及びTキラー細胞の濃度を求めることが可能である。また、画像解析器は、予想に反してCD4とCD8との両方を表示する任意の細胞が存在するかどうか求めるために、2つの画像を重畳することも可能である。
【0080】
別法として、液体試料、この場合には全血が、試料採取装置10の外部で試薬22(抗体)と反応させられる又は部分的に反応させられることがあり、その後、反応させられた又は部分的に反応させられた試料が、試料採取装置10内に採取されることがある。
【0081】
一実施例では、試薬22は、一次抗体に親和性を有する蛍光体標識二次抗体を含み、この二次抗体は、試料採取装置10の測定キャビティ20内に乾燥形態で存在する。したがって、液体試料は、最初に、試料採取装置10の外部で一次抗体で処理され、この抗体が、試料の標的生物学的成分の特定の所定の分子構造に結合する。次いで、一次抗体を含む試料が、二次抗体を保持する試料採取装置10内に採取される。したがって、二次抗体は、試料と混合され、一次抗体に結合し、一次抗体はさらに標的生物学的成分に結合され、それにより標的生物学的成分が蛍光体で標識付けされる。この実施例は、生物学的成分がそれらに親和性を有する一次抗体で前処理されている限り、多くの異なる種類の生物学的成分に標識付けするために、乾燥された蛍光体結合抗体を使用することができることを示唆する。したがって、試料の前処理は、試料採取装置10を多くの異なる用途で使用できるようにし、ただ1つの生物学的成分の検出に使用するように試料採取装置10を適合させる必要がない。
【0082】
本明細書で説明した好ましい実施例は、何ら限定するものではなく、頭記の特許請求の範囲によって定義される保護の範囲内で多くの代替実施例が可能であることを強調すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施例による試料採取装置の概略図である。
【図2】本発明の別の実施例による試料採取装置の概略図である。
【図3】本発明の実施例による測定システムの概略図である。
【図4】本発明の実施例による方法の流れ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料中の生物学的成分の検出のための試料採取装置であって、
液体試料を受け取るための測定キャビティであって、所定の固定厚さを有する測定キャビティと、
前記測定キャビティ内部に乾燥形態で配備される試薬であって、蛍光体結合分子を含む試薬とを備える試料採取装置。
【請求項2】
前記蛍光体結合分子が、生物学的成分の特定の分子構造に結合するように構成される請求項1に記載の試料採取装置。
【請求項3】
前記測定キャビティを画定する2つの平坦な面を有する本体部材を備える請求項1又は2に記載の試料採取装置。
【請求項4】
前記平坦な面が、光学的測定のための試料厚さを決定するために互いから所定の距離に配置される請求項3に記載の試料採取装置。
【請求項5】
前記測定キャビティが、50〜170マイクロメートルの均一な厚さを有する請求項1から4までのいずれか一項に記載の試料採取装置。
【請求項6】
前記測定キャビティが、少なくとも100マイクロメートルの均一な厚さを有する請求項5に記載の試料採取装置。
【請求項7】
前記測定キャビティが、150マイクロメートル以下の均一な厚さを有する請求項5又は5に記載の試料採取装置。
【請求項8】
前記測定キャビティの領域が、前記試料のよく定義された体積の分析を提供するために撮像されるように適合され、前記試料中の生物学的成分の体積計数を得ることができる請求項1から7までのいずれか一項に記載の試料採取装置。
【請求項9】
さらに、前記測定キャビティを試料採取装置の外部と連絡する試料入口を備え、前記入口が、液体試料を採取するように構成される請求項1から8までのいずれか一項に記載の試料採取装置。
【請求項10】
前記入口が、毛細管力によって液体試料を採取するように構成される請求項9に記載の試料採取装置。
【請求項11】
前記試薬が、前記試薬を乾燥形態で残すように蒸発する揮発性液体中に溶解されて、表面に塗布される請求項1から10までのいずれか一項に記載の試料採取装置。
【請求項12】
前記蛍光体結合分子が、抗体又は抗体フラグメントである請求項1から11までのいずれか一項に記載の試料採取装置。
【請求項13】
使い捨てである請求項1から12までのいずれか一項に記載の試料採取装置。
【請求項14】
前記試薬が、前記液体試料中に溶解可能及び/又は縣濁可能である請求項1に記載の試料採取装置。
【請求項15】
液体試料中の蛍光体標識生物学的成分の検出のための方法であって、
蛍光体結合分子が液体試料中の生物学的成分の特定の分子構造に結合するように、蛍光体結合分子を含む試薬を液体試料と混合する段階と、
試料採取装置の測定キャビティ内に前記液体試料を導入する段階であって、前記測定キャビティが所定の固定厚さを有する段階と、
前記測定キャビティ内の前記試料の領域を、前記蛍光体の励起波長に対応する波長の電磁放射で照射する段階と、
前記測定キャビティの厚さ全体中の蛍光体標識生物学的成分を検出する段階であって、前記測定キャビティ内の前記照射された領域のデジタル画像を取得することを含む段階とを含む方法。
【請求項16】
前記試料採取装置が、前記測定キャビティ内部に乾燥形態で配備された試薬を含み、前記試薬が、蛍光体結合分子を含み、前記混合が、前記試薬に接触するように前記液体試料を前記測定キャビティ内に導入することによって実現される請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記蛍光体を示す生物学的成分が、前記デジタル画像内で、前記蛍光体の放出波長に対応する波長の電磁放射を放出する蛍光ドットとして判別される請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記デジタル画像が、3〜50倍、より好ましくは3〜10倍の光学倍率を使用して取得される請求項17に記載の方法。
【請求項19】
さらに、
前記蛍光体を示す生物学的成分を識別して、前記試料中の前記蛍光体を示す生物学的成分の数を求めるために、前記デジタル画像をデジタル解析する段階
を含む請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記解析する段階が、放出される電磁放射によって生じる前記デジタル画像の領域を識別する段階を含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記解析する段階が、放出される電磁放射によって生じる前記デジタル画像内のドットを識別する段階を含む請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記解析する段階が、2つ以上の得られた画像を重ね合わせる段階を含み、各画像が、それぞれ特定の放出波長を表す請求項19から21までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記解析する段階が、前記取得されたデジタル画像を電子的に拡大する段階を含む請求項19から22までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記液体試料が、毛細管力によって、毛細管試料入口を通して前記試料採取装置の前記測定キャビティ内に導入される請求項15から23までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記デジタル画像が、少なくとも前記測定キャビティの厚さに対応する被写界深度で取得される請求項15から24までのいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記分析される液体試料の体積が、前記測定キャビティの厚さと、撮像される前記試料の面積とによってよく定義される請求項15から25までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記照射が、発光ダイオードを備える光源によって行われる請求項15から26までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
励起波長に対応する前記波長が、色フィルタと組み合わせて発光ダイオードを使用することによって実現される請求項15から27までのいずれか一項に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−527734(P2009−527734A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555193(P2008−555193)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【国際出願番号】PCT/SE2007/000283
【国際公開番号】WO2007/111555
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(500154353)ヘモク アクチボラゲット (11)
【Fターム(参考)】