説明

蛍光潜像の形成方法

【課題】 転写性及び階調性に優れた蛍光潜像の形成方法を提供する。
【解決手段】 耐熱性基材フィルム2の転写面に、特定のビスベンゾオキサゾリル蛍光剤を含有し、ビニル系樹脂を主成分とする樹脂バインダーから形成された蛍光インキ層3を設けた蛍光潜像転写フィルム1を、被転写体の画像形成面に、前記蛍光潜像転写フィルム1の転写面が接するように重ね、前記蛍光潜像転写フィルム1の背面側から加熱手段によって所定のパターン状に加熱し、昇華転写方式で該パターンを前記画像形成面に転移させることを特徴とする蛍光潜像の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蛍光潜像の形成方法に関し、さらに詳しくは被転写体に、任意の図柄又は文字等の記号の蛍光潜像を形成し、改竄防止性及び意匠性に優れた画像を形成することを可能にする蛍光潜像の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、書類、金券、カード等の印刷物の偽造や改竄等を防止する為に、通常の可視光等では認識できないが、紫外線を照射したときに蛍光を発して識別可能とする蛍光潜像を設けておく手段が公知である。
【0003】
また従来から簡便な印刷手段として、熱転写方法が広く用いられている。この方法では各種の画像を簡単に形成できる為、印刷枚数の少ない印刷物、例えばIDカード等のカード類の作成に用いられている。
【0004】
蛍光潜像は、熱転写層に蛍光剤を含有させてなる熱転写フィルムを用いて、サーマルヘッドやレーザー等の加熱手段により、カード等の被転写体に記録することができる。転写方法には、昇華型熱転写記録法と、熱溶融型感熱記録法がある。昇華型熱転写記録法は、昇華性染料を用いたものであり、上記加熱手段により加熱で染料を昇華させて転移させる。また熱溶融型記録法は、ワックス等のビヒクル中に顔料等の着色剤を含有する熱溶融性インクを用いるものであり、加熱手段により熱溶融性インキ層のインクを軟化させ、軟化したインクを移行させて記録を行うものである。
【0005】
熱溶融型感熱記録法は、文字や数字等の画像を容易に且つくっきりと形成することができ、また、昇華型熱転写法は、階調表現に優れ顔写真等の画像を精密に美しく形成することができるといった、それぞれ特徴がある。
【0006】
連続階調の蛍光潜像を記録形成可能な昇華型熱転写フィルムとして、特許文献1、2、3および4等に開示されている。これらの文献には、蛍光潜像を形成するための各種の蛍光剤の化合物が記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開平2−106359号公報
【特許文献2】特開平6−316167号公報
【特許文献3】特開平7−223376号公報
【特許文献4】特開平7−117366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の公報に記載された蛍光剤の化合物を用いた転写フィルムは、蛍光潜像の転写性及び階調性が未だ不十分であるという問題があった。
【0009】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、転写性及び階調性に優れた蛍光潜像の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
(1)耐熱性基材フィルムの転写面に、下式(1)に記載の蛍光剤を含有し、ビニル系樹脂を主成分とする樹脂バインダーから形成された蛍光インキ層を設けた蛍光潜像転写フィルムを、
被転写体の画像形成面に、
前記蛍光潜像転写フィルムの転写面が接するように重ね、
前記蛍光潜像転写フィルムの背面側から加熱手段によって所定のパターン状に加熱し、
昇華転写方式で該パターンを前記画像形成面に転移させることを特徴とする蛍光潜像の形成方法;
【化1】

(2)蛍光潜像転写フィルムが、
前記耐熱性基材フィルムの転写面に、熱昇華性染料層、熱溶融性インキ層および/または保護層を、前記蛍光インキ層と面順次に設けてなることを特徴とする上記(1)記載の蛍光潜像の形成方法;
(3)耐熱性基材フィルムの転写面に、下式(1)に記載の蛍光剤を含有し、ビニル系樹脂を主成分とする樹脂バインダーから形成された蛍光インキ層と、これと面順次に形成された熱転写性中間接着層とを設けた蛍光潜像転写フィルムを、
中間転写媒体の表面に、
前記蛍光潜像転写フィルムの転写面が接するように重ね、
前記蛍光潜像転写フィルムの背面側から加熱手段によって所定のパターン状に加熱し、
昇華転写方式で該パターンを前記中間転写媒体の表面に転移させるとともに、その上に接着層を転写形成し、さらに前記パターンを被転写体に転移することを特徴とする蛍光潜像の形成方法;
【化2】

を要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明方法に用いる蛍光潜像転写フィルムは、蛍光インキ層を有する為、蛍光潜像転写フィルムと被転写体とを重ね、蛍光インキ層をサーマルプリンター等のヘッドで加熱すると、蛍光剤のみが被転写体表面に転移して、連続階調の蛍光画像を形成することができる。この蛍光画像は、可視光では視認できないが、紫外線を照射した場合に、明瞭に確認できる為、この画像を利用して被転写媒体が真正なものであることを確認できる為、被転写媒体の複写等による偽造や改竄等を良好に防止できる。
【0012】
本発明にかかる蛍光潜像の形成方法によれば、上記の特定の蛍光化合物を含有する樹脂バインダーからなる蛍光インキ層を有する蛍光潜像転写フィルムを用いる為、蛍光潜像の転写性及び階調性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を図面を用いて詳細に説明する。本発明方法に用いる蛍光潜像転写フィルム1は、耐熱性基材フィルム2の一方の面に、蛍光剤を含有する樹脂バインダーから形成された蛍光インキ層3を設けたものである。
【0014】
耐熱性基材フィルム2は、転写の際の熱に対する耐熱性と、ある程度の強度を有し寸法安定性のあるものであればよく、例えば、紙、各種加工紙、プラスチックフィルム等が用いられる。プラスチックフィルムの材質としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンナフタレート、1,4−ポリシクロヘキシレンジメチルテレフタレート、アラミド、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セロファン等が挙げられる。耐熱性基材フィルム2の厚さは、0.5〜50μmが好ましく、より好ましくは3〜10μmである。また好ましい材質は、ポリエチレンテレフタレートフィルムである。
【0015】
耐熱性基材フィルム2は枚葉式であってもよいし、連続フィルムであってもよい。また、耐熱性基材フィルム2の表面には、該フィルム上に設けられる蛍光インキ層或いは他の層との接着性を高めるためのプライマー処理等を行ってもよい。また転写フィルムの他面側には背面層4が設けられている。
【0016】
蛍光インキ層3に用いられる蛍光剤は、式(1)に示す化合物が用いられるが、この化合物の具体例として表1に示す化合物が例示できる。上記化合物のなかでも、式(1)中のRlがチオフェン、R2及びR3がt−ブチル基である化合物が、転写性、階調性ともに更に優れた蛍光潜像を形成することができる為、特に好ましい。
【0017】
【表1】

【0018】
蛍光インキ層3に用いられるバインダー樹脂は、エチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等のアクリル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル系樹脂、これらの樹脂の混合物等が挙げられる。バインダー樹脂としては、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタールが、蛍光剤の移行性及び転写フィルムとした場合の保存安定性が良好であることから好ましい。蛍光インキ層3の厚さは0.1〜5.0g/m2に形成するのが好ましい。
【0019】
蛍光インキ層3は、蛍光剤、バインダー樹脂、その他の添加剤等を添加したインキをグラビアコート等の公知の塗工手段を用いて塗布形成するこことができる。
【0020】
背面層4は、サーマルヘッド等の加熱素子との融着を防止したり、給紙性を改良したりするために設けられる。また、背面層4により転写フィルムをロール状に巻とったり、シート状物を積み重ねたりした際に、背面が蛍光インキ層等の表面層に接着するのを防止することができる。背面層4は、耐熱滑性、離型性を有することが好ましい。背面層の材質として、硬化性シリコーンオイル、硬化性シリコーンワックス、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の剥離性を有する材料が挙げられる。背面層4の厚さは通常0.1〜3.0μmに形成される。
【0021】
図1に示す蛍光潜像転写フィルムは、蛍光インキ層3が転写層の全面にベタ印刷されて形成されているものであるが、本発明方法に用いる蛍光潜像転写フィルムは、上記蛍光インキ層3以外に、熱昇華性染料層5、熱溶融性インキ層6等の領域をシートの流れ方向に沿って面順次に形成してもよい。以下、本発明方法に用いる蛍光潜像転写フィルムの他の態様について説明する。
【0022】
図2に示す蛍光潜像転写フィルム1は、耐熱性基材フィルム2の蛍光インキ層3が設けられている同じ転写面に、イエロー染料層5Y、マゼンタ染料層5M、シアン染料層5C、ブラック染料層5B等の熱昇華性染料層5、蛍光インキ層3、ブラック色の熱溶融性インキ層6Bの各領域が面順次に形成され、この構成単位の領域がフィルムの流れ方向に繰り返し形成されている。また、耐熱性基材フィルム2の他面側には、背面層4が設けられている。この態様では蛍光インキ層3以外の転写層としては、イエロー染料層5Y、マゼンタ染料層5M、シアン染料層5C、ブラック染料層5B、ブラック色の熱溶融性インキ層6(熱溶融性ブラックインキ層6B)のうちの少なくとも1層以上が、蛍光インキ層3と同一の転写面上に設けられていればよい。
【0023】
図3(a)〜(h)は本発明方法に用いる蛍光潜像転写フィルムの蛍光インキ層以外の層として熱昇華性染料層5、熱溶融性インキ層6を設けた場合の態様を示す平面図である。同図に示すように、蛍光インキ層3、熱昇華性染料層5(5Y、5M、5C、5B)、熱溶融性インキ層6等の領域は任意の順序に形成することができる。また、各領域の長さも、特に限定されず任意の長さの領域として形成することができる。図3(a)〜(h)の態様は、各領域の面方向の配列順を以下の通りの構成としたものであり、この領域の構成を基本単位として流れ方向に繰り返し形成されている。
【0024】
(a)蛍光インキ層3のみ。
(b)イエロー染料層5Y、マゼンタ染料層5M、シアン染料層5C、蛍光インキ層3。
(c)イエロー染料層5Y、マゼンタ染料層5M、シアン染料層5C、ブラック染料層5B、蛍光インキ層3。
(d)イエロー染料層5Y、マゼンタ染料層5M、シアン染料層5C、蛍光インキ層3、熱溶融性ブラックインキ層6B。
(e)ブラック染料層5B、蛍光インキ層3。
(f)蛍光インキ層3、熱溶融性ブラックインキ層6B。
(g)イエロー染料層5Y、マゼンタ染料層5M、シアン染料層5C、ブラック染料層5B、蛍光インキ層3、熱溶融性ブラックインキ層6B。
(h)上記(g)と同じ領域の順序であるが、イエロー染料層5Y、マゼンタ染料層5M、シアン染料層5Cの領域の合計した専有面積を、ブラック染料層5B、蛍光インキ層3、熱溶融性ブラックインキ層6Bの領域の専有面積よりも小さく形成した。
【0025】
熱昇華性染料層5は、イエロー、マゼンタ、シアン又はブラック色のいずれかの昇華性染料、バインダー樹脂、離型剤、その他の添加剤を溶媒に溶かし、染料層用塗布液を調整し、耐熱性基材フィルム上の所定領域に各色の塗布液をそれぞれ塗工して乾燥することで形成できる。
【0026】
イエロー昇華性染料は、フォロンブリリアントイエロー−S−6GL(サンド社製ディスパースイエロー231の商品名)、マクロレックスイエロー6G(バイエル社製ディスパースイエロー201の商品名)等が挙げられる。マゼンタ昇華性染料は、MS−REDG(バイエル社製ディスパースバイオレット26の商品名)等が挙げられる。シアン昇華性染料としては、カヤセットブルー714(日本化薬社製ソルベントブルー63の商品名)、フォロンブリリアントブルーS−R(サンド社製ディスパースブルー354の商品名)、ワクソリンAP−FW(ICI社製ソルベントブルー36の商品名)、ブラック色の昇華性染料としては、上記イエロー、マゼンタ、シアン染料の混合物等が挙げられる。
【0027】
熱昇華性染料層5のバインダー樹脂としては、エチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等のアクリル系樹脂〔上記(メタ)はメタアクリレートを意味する〕、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル系樹脂、これらの樹脂の混合物等が挙げられる。バインダー樹脂としては、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタールが、染料移行性及び転写フィルムとした場合の保存安定性が良好であることから好ましい。
【0028】
熱溶融性インキ層6は、着色剤、ビヒクル、及びその他の添加剤等を含有する熱溶融性インクをホットメルトコート、ホットラッカーコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコートのような公知の塗工手段を用いて形成できる。熱溶融性インキ層6の厚さは、通常0.2〜10μmに形成される。熱溶融性インキ層は、高濃度で明瞭な文字、記号等の記録に最適な黒色(ブラック)の着色剤を用いるのが好ましい。
【0029】
熱溶融性インキ層6のビヒクルとしては、例えば、ワックス、ワックスと乾性油、樹脂、鉱油、セルロース、ゴムの誘導体等との混合物が挙げられる。上記ワックスは、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、低分子ポリエチレン、木ロウ、ミツロウ、鯨ロウ、イボタロウ、羊毛ロウ、セラックワックス、キャンデリラワックス、ペトロラタム、一部変性ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等が挙げられる。
【0030】
本発明方法に用いる蛍光潜像転写フィルムは図4(a)〜(i)に示すように、蛍光インキ層3以外の層として保護層7を蛍光インキ層3と同じ転写面に面順次に形成してもよい。具体的に図4(a)〜(i)の態様は、各領域の面方向の配列順を以下の通りの構成としたものであり、この領域の構成を基本単位として流れ方向に繰り返し形成されている。
(a)蛍光インキ層3、保護層7。
(b)イエロー染料層5Y、マゼンタ染料層5M、シアン染料層5C、蛍光インキ層3、保護層7。
(c)イエロー染料層5Y、マゼンタ染料層5M、シアン染料層5C、ブラック染料層5B、蛍光インキ層3、保護層7。
(d)イエロー染料層5Y、マゼンタ染料層5M、シアン染料層5C、蛍光インキ層3、熱溶融性ブラックインキ層6B、保護層7。
(e)ブラック染料層5B、蛍光インキ層3、保護層7。
(f)蛍光インキ層3、熱溶融性ブラックインキ層6B、保護層7。
(g)イエロー染料層5Y、マゼンタ染料層5M、シアン染料層5C、ブラック染料層5B、蛍光インキ層3、熱溶融性ブラックインキ層6B、保護層7。
(h)上記(g)と同じ領域の順序であるが、イエロー染料層5Y、マゼンタ染料層5M、シアン染料層5Cの領域の合計した専有面積を、ブラック染料層5B、蛍光インキ層3、熱溶融性ブラックインキ層6B、保護層7の領域の専有面積よりも小さく形成した。
(i)熱溶融性ブラックインキ層6B、保護層7、イエロー染料層5Y、マゼンタ染料層5M、シアン染料層5C、蛍光インキ層3、熱溶融性ブラックインキ層6B、保護層7。
【0031】
保護層7は、転写フィルムから被転写体に直接転写を行う場合、転写後の画像の最表面に位置させて画像を良好に保護する為には、図4(a)〜(i)に示す通り、一般的には面順次に設けた領域の一構成単位の中の最後の位置に設けるのが好ましい。また、保護層7は、図4(i)に示す如く、例えば熱溶融性ブラックインキ層6Bの後と領域単位の最後の位置との2箇所に設けたように、一つの面順次の構成単位の中で、2箇所以上の領域に設けてもよい。
【0032】
保護層7は、この種転写フィルムの保護層形成用樹脂を含む塗工組成物を公知の塗工手段でフィルム基材の表面に塗布して形成することができる。保護層形成用樹脂として例えば、ポリエステル、ポリスチレン、アクリル、ポリウレタン、アクリルウレタン等の樹脂の単体又は混合物、これらの樹脂をシリコーン変性させた樹脂、これらの変性樹脂の混合物、電離放射線硬化性樹脂、紫外線遮断性樹脂等が挙げられる。保護層7の厚さは、通常は0.5〜10μm程度に形成される。
【0033】
電離放射線硬化性樹脂を含有する保護層は、耐可塑剤性や耐擦過性が特に優れている。電離放射線硬化性樹脂としては公知のものを使用することができ、例えば、ラジカル重合性のポリマー又はオリゴマーを電離放射線により架橋、硬化させ、必要に応じて光重合開始剤を添加し、電子線や紫外線によって重合架橋させたものを使用できる。
【0034】
紫外線遮断性樹脂を含有する保護層は、印画物に耐光性を付与することを主目的とする。紫外線遮断性樹脂としては、例えば、反応性紫外線吸収剤を熱可塑性樹脂又は上記の電離放射線硬化性樹脂に反応、結合させて得た樹脂を使用することができる。反応性紫外線吸収剤は、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、ニッケル−キレート系、ヒンダードアミン系のような非反応性の有機系紫外線吸収剤に、付加重合性二重結合(例えばビニル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基など)、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基のような反応性基を導入したものである。
【0035】
本発明方法に用いる蛍光潜像転写フィルムは図5(a)〜(h)に示すように、蛍光インキ層3以外の層として熱転写性中間接着層8を蛍光インキ層3と同じ転写面に面順次に形成してもよい。熱転写性中間接着層8は、蛍光インキ層3を含む転写層からの画像を一度他の基材(中間転写媒体)の表面に形成しておいて、この画像を被転写体の表面に転移させる場合、該被転写体に接着させる為に用いられる。そのため熱転写性中間接着層8は、中間転写媒体の表面に画像を転写形成した際の最表面に位置するように、構成単位の最後の領域に形成される。具体的に図5(a)〜(h)の態様は、各領域の面方向の配列順を以下の通りの構成としたものであり、この領域の構成を基本単位として流れ方向に繰り返し形成されている。
(a)蛍光インキ層3、熱転写性中間接着層8。
(b)イエロー染料層5Y、マゼンタ染料層5M、シアン染料層5C、蛍光インキ層3、熱転写性中間接着層8。
(c)イエロー染料層5Y、マゼンタ染料層5M、シアン染料層5C、ブラック染料層5B、蛍光インキ層3、熱転写性中間接着層8。
(d)イエロー染料層5Y、マゼンタ染料層5M、シアン染料層5C、熱溶融性ブラックインキ層6B、蛍光インキ層3、熱転写性中間接着層8。
(e)ブラック染料層5B、蛍光インキ層3、熱転写性中間接着層8。
(f)蛍光インキ層3、熱溶融性ブラックインキ層6B、熱転写性中間接着層8。
(g)イエロー染料層5Y、マゼンタ染料層5M、シアン染料層5C、ブラック染料層5B、蛍光インキ層3、熱溶融性ブラックインキ層6B、熱転写性中間接着層8。
(h)上記(g)と同じ領域の順序であるが、イエロー染料層5Y、マゼンタ染料層5M、シアン染料層5Cの領域の合計した専有面積が、ブラック染料層5B、蛍光インキ層3、熱溶融性ブラックインキ層6B、熱転写性中間接着層8の領域の専有面積よりも小さく形成した。
【0036】
熱転写性中間接着層8は、アクリル樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等の、加熱時の接着性が良好な熱可塑性樹脂が用いられる。熱転写性中間接着層8の厚さは通常0.1〜5μmに形成される。
【0037】
転写層として蛍光インキ層3以外の層を面順次に設け複数の層の領域を設けた蛍光潜像転写フィルムにおいて、各領域の長さ(又は領域の面積)は、同じ長さに形成して各層の領域が同じ面積となるように転写フィルムを形成してもよいが、図3(h)、図4(h)、図5(h)の態様に示すように、イエロー、マゼンタ、シアン色の熱昇華性染料層5(5Y、5M、5C)の領域の長さを小さくして該染料層5の専有面積が、該染料層以外の層(蛍光インキ層3、熱昇華性ブラック染料層5B、熱溶融性ブラックインキ層6、保護層7、転写性中間接着層8等)を合計した領域の専有面積よりも小さくなるように形成することもできる。
【0038】
蛍光潜像転写フィルム1を用いて本発明にかかる蛍光潜像の転写記録を行う場合には、カード基材等の被転写体の画像形成面に、蛍光潜像転写フィルムを転写面が接するように重ね、該転写フィルムの背面側からサーマルヘッドやレーザー光等の加熱手段によって所定のパターン状の加熱を行い、所望の画像を被転写体表面に転移させて、蛍光潜像を形成できる。また、蛍光インキ層3以外の転写層が設けられた蛍光潜像転写フィルムを用いた場合には、蛍光潜像に加え、昇華性染料層による印画や、保護層、接着層等を同時に形成することができる。
【実施例】
【0039】
実施例1
厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名ルミラー:東レ社製)を基材フィルムとし、その一方の面に耐熱スリップ層(背面層)として、シリコーン樹脂を厚さ1μmとなるようにグラビアコート方式により形成し、もう一方の面に下記組成の蛍光インキ層用塗布液をグラビアコート方式で乾燥時の塗布量が0.6g/m2となるように塗布、乾燥して蛍光潜像転写フィルムを形成した。尚、実施例の蛍光化合物のNo.は前記表1に示すものである。
〔蛍光インキ層用塗布液1〕
・ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業社製) 5重量部
・蛍光化合物No.1 3重量部
・メチルエチルケトン 60重量部
・トルエン 22重量部
・イソプロパノール 10重量部
【0040】
実施例2
実施例1において、蛍光インキ層用塗布液1の代わりに下記組成の蛍光インキ層用塗布液2を塗布した以外は実施例1と同様にして蛍光潜像転写フィルムを得た。
〔蛍光インキ層用塗布液2〕
・ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業社製) 5重量部
・蛍光化合物No.2 3重量部
・メチルエチルケトン 60重量部
・トルエン 22重量部
・イソプロパノール 10重量部
【0041】
実施例3
実施例1において、蛍光インキ層用塗布液1の代わりに下記組成の蛍光インキ層用塗布液3を塗布した以外は実施例1と同様にして蛍光潜像転写フィルムを得た。
〔蛍光インキ層用塗布液3〕
・ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業社製) 5重量部
・蛍光化合物No.3 3重量部
・メチルエチルケトン 60重量部
・トルエン 22重量部
・イソプロパノール 10重量部
【0042】
実施例4
実施例1において、蛍光インキ層用塗布液1の代わりに下記組成の蛍光インキ層用塗布液4を塗布した以外は実施例1と同様にして蛍光潜像転写フィルムを得た。
〔蛍光インキ層用塗布液4〕
・ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業社製) 5重量部
・蛍光化合物No.4 3重量部
・メチルエチルケトン 60重量部
・トルエン 22重量部
・イソプロパノール 10重量部
【0043】
実施例5
実施例1において、蛍光インキ層用塗布液1の代わりに下記組成の蛍光インキ層用塗布液5を塗布した以外は実施例1と同様にして蛍光潜像転写フィルムを得た。
〔蛍光インキ層用塗布液5〕
・ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業社製) 5重量部
・蛍光化合物No.5 3重量部
・メチルエチルケトン 60重量部
・トルエン 22重量部
・イソプロパノール 10重量部
【0044】
実施例6
実施例1において、蛍光インキ層用塗布液1の代わりに下記組成の蛍光インキ層用塗布液6を塗布した以外は実施例1と同様にして蛍光潜像転写フィルムを得た。
〔蛍光インキ層用塗布液6〕
・ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業社製) 5重量部
・蛍光化合物No.6 3重量部
・メチルエチルケトン 60重量部
・トルエン 22重量部
・イソプロパノール 10重量部
【0045】
実施例7
実施例1において、蛍光インキ層用塗布液1の代わりに下記組成の蛍光インキ層用塗布液7を塗布した以外は実施例1と同様にして蛍光潜像転写フィルムを得た。
〔蛍光インキ層用塗布液7〕
・ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業社製) 5重量部
・蛍光化合物No.7 3重量部
・メチルエチルケトン 60重量部
・トルエン 22重量部
・イソプロパノール 10重量部
【0046】
実施例8
実施例1において、蛍光インキ層用塗布液1の代わりに下記組成の蛍光インキ層用塗布液8を塗布した以外は実施例1と同様にして蛍光潜像転写フィルムを得た。
〔蛍光インキ層用塗布液8〕
・ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業社製) 5重量部
・蛍光化合物No.8 3重量部
・メチルエチルケトン 60重量部
・トルエン 22重量部
・イソプロパノール 10重量部
【0047】
実施例9
実施例1において、蛍光インキ層用塗布液1の代わりに下記組成の蛍光インキ層用塗布液9を塗布した以外は実施例1と同様にして蛍光潜像転写フィルムを得た。
〔蛍光インキ層用塗布液9〕
・ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製) 5重量部
・蛍光化合物No.8 3重量部
・メチルエチルケトン 60重量部
・トルエン 22重量部
・イソプロパノール 10重量部
【0048】
比較例1
実施例1において、蛍光インキ層用塗布液1中の蛍光化合物No.1を除いた以外は、実施例1と同様にして転写フィルムを形成した。
【0049】
実施例及び比較例の転写フィルムについて転写特性を比較評価した。その結果を表2に示す。
【0050】
(表2)

【0051】
〔評価方法〕
市販の昇華転写用受像シート及びカードと、実施例1〜9及び比較例の転写フィルムを重ね合わせ、サーマルプリンターを用いて16階調の印画エネルギーのグラデーションパターンを印画した。
蛍光剤転写性:300〜400nmの波長の紫外線を照射し、印画したグラデーションパターンがどの様に認識できるかを観察し、下記の基準で○、×で評価した。
○:蛍光発色が鮮明に確認できた。
×:印画パターンが確認できなかった。
階調性:グラデーションパターンの印画エネルギーが高くなるに従って、蛍光発色の強度が滑らかに高くなるものを○、それ以外を×とした。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明方法に用いる蛍光潜像転写フィルムの1例を示す要部縦断面図である。
【図2】本発明方法に用いる蛍光潜像転写フィルムの他の例を示す要部縦断面図である。
【図3】(a)〜(h)は本発明方法に用いる蛍光潜像転写フィルムの態様を示す平面図である。
【図4】(a)〜(i)は本発明方法に用いる蛍光潜像転写フィルムの態様を示す平面図である。
【図5】(a)〜(h)は本発明方法に用いる蛍光潜像転写フィルムの態様を示す平面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 蛍光潜像転写フィルム
2 耐熱性基材フィルム
3 蛍光インキ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性基材フィルムの転写面に、下式(1)に記載の蛍光剤を含有し、ビニル系樹脂を主成分とする樹脂バインダーから形成された蛍光インキ層を設けた蛍光潜像転写フィルムを、
被転写体の画像形成面に、
前記蛍光潜像転写フィルムの転写面が接するように重ね、
前記蛍光潜像転写フィルムの背面側から加熱手段によって所定のパターン状に加熱し、
昇華転写方式で該パターンを前記画像形成面に転移させることを特徴とする蛍光潜像の形成方法。
【化1】

【請求項2】
蛍光潜像転写フィルムが、
前記耐熱性基材フィルムの転写面に、熱昇華性染料層、熱溶融性インキ層および/または保護層を、前記蛍光インキ層と面順次に設けてなることを特徴とする請求項1記載の蛍光潜像の形成方法。
【請求項3】
耐熱性基材フィルムの転写面に、下式(1)に記載の蛍光剤を含有し、ビニル系樹脂を主成分とする樹脂バインダーから形成された蛍光インキ層と、これと面順次に形成された熱転写性中間接着層とを設けた蛍光潜像転写フィルムを、
中間転写媒体の表面に、
前記蛍光潜像転写フィルムの転写面が接するように重ね、
前記蛍光潜像転写フィルムの背面側から加熱手段によって所定のパターン状に加熱し、
昇華転写方式で該パターンを前記中間転写媒体の表面に転移させるとともに、その上に接着層を転写形成し、さらに前記パターンを被転写体に転移することを特徴とする蛍光潜像の形成方法。
【化2】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−96045(P2006−96045A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−278604(P2005−278604)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【分割の表示】特願平10−259456の分割
【原出願日】平成10年8月28日(1998.8.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】