説明

蛍光粒子を安定化するための組成物及び方法

ナノ粒子の蛍光シグナルを安定化するための組成物及びその使用方法の実施態様が開示される。いくつかの実施態様において、組成物は7から10のpHを有し、ホウ酸塩、タンパク質及び/又はタンパク質加水分解物、アミン、防腐剤及び非イオン性界面活性剤を含む。特定の実施態様において、アミンはN−エタノール置換アミン(例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン又はその組み合わせ)である。いくつかの実施態様において、蛍光粒子溶液(例えば量子ドット溶液又は陽子ドットコンジュゲート溶液)は、組成物で希釈され、4℃で保存される。ある実施態様では、希釈された蛍光粒子の蛍光強度は4℃で少なくとも1ヵ月又は3ヵ月の保存後、実質的に同じままである。特定の実施態様において、希釈された量子ドットコンジュゲートは、ハイブリダイズされたプローブ又はタンパク質抗原を検出するために用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の説明
本出願は2010年2月2日に出願の米国仮特許出願第61/337,363号の利益を請求し、その全てが出典明示により本願明細書に援用される。
【0002】
技術分野
この開示は、蛍光粒子を保存するための新規な安定化バッファーの使用及び組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒト被験者の組織切片などの生体試料は、試料中のタンパク質、タンパク質断片又は他の標的に結合する抗体にコンジュゲートされた有機蛍光体を含む染色で処理することができる。染色された試料は光を照射され、蛍光体は蛍光を発する。試料の像を捕獲するために、顕微鏡に取り付けられたデジタルカメラを用いる。蛍光体/抗体の組合せが興味がある標的(例えば癌細胞によって産生されるタンパク質)に結合した領域は、試料の像において試料に適用された蛍光体の蛍光スペクトルによって影響された領域の色に着色されて見える。可視スペクトルに加えて、蛍光シグナルは、特定の蛍光体の発光スペクトルに依存して、赤外線又は紫外線領域において検出され得る。2以上の蛍光体を含む染色を試料に適用することができる。これらの方法は、疾患診断、処理に対する反応の評価及び疾患と闘うための新薬の開発を含む種々の用途を有する。
近年、量子ドットは、生物学的染色及び画像化適用のための検出材料として開発された。量子ドット(QdotTMナノクリスタル又はQdotsTM)は、ナノ結晶発光半導体である。量子ドットは、生物学的染色適用ための従来の有機蛍光体に対していくつかの利点を提供する。これらの利点は、狭い発光帯ピーク、広い吸収スペクトル、強いシグナル及び相対的な蛍光シグナル安定性を含む。しかしながら、不適合の条件下で保存される場合、溶液中の量子ドット及び量子ドットコンジュゲートの蛍光強度は歴史的に見て不安定である。
【発明の概要】
【0004】
蛍光シグナル安定化のための組成物及び量子ドット(QdotTMナノクリスタル)及びQdotTMコンジュゲートなどのナノ粒子の使用法は、開示される。開示された組成物中でナノ粒子を保存することは、例えば粒子の凝集を最小化し、蛍光に適した条件を提供する。結果として、アッセイフォーマット中のナノ粒子及び/又はナノ粒子コンジュゲートの感受性及び特異性が維持されている間に、少量を自動化されたマニュアル手法において用いることができる。
蛍光粒子(例えば量子ドット及び量子ドットコンジュゲート)を安定化するための新規な組成物及びその使用方法の実施態様は、開示される。特定の組成物の開示された実施態様は、(a)アミノ酸又はアルキル置換アルキルアミン以外の置換されたアミン、又は(b)アミン及びタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物を含み、アミン又はタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物のうちの少なくとも1つは、保存される蛍光粒子の蛍光を安定化及び/又は増加させるのに有効な濃度で組成物中に存在する。いくつかの実施態様において、組成物は、7−10の範囲のpHを有し、0.02Mから0.5Mのホウ酸塩、0.05重量%から1.5重量%のタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物、25mMから200mMのアルキルアミン、0.05重量%から0.2重量%の防腐剤及び0.005重量%から0.05重量%の界面活性剤を含む。
特定の実施態様において、アミンは化学式RNH(3−n)を有する置換アミンであって、n=1、2又は3であり、それぞれのRは独立して脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基であり、少なくとも一つのRは置換されている。いくつかの実施態様において、少なくとも一つのRは、一つ以上の−OH、−OR、−CO、−CN基又はその組合せで置換されており、ここでR1は置換又は非置換の脂肪族化合物又はアリール基である。
いくつかの実施態様において、アミンは、第1、第2又は第3アミンである。いくつかの実施態様において、アルキルアミンは、アルカノールアミンである。特定の実施態様において、アミンは、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、又はその組合せなどのN−エタノール置換アミンである。
【0005】
いくつかの実施態様において、タンパク質及び/又はタンパク質加水分解物は、植物性トリプトン、サーモンペプトン、カゼイン酸加水分解物、カゼイン塩基加水分解物、チキンアルブミン加水分解物、魚皮ゼラチン又はその組合せである。特定の実施態様において、防腐剤は、a)アジ化ナトリウム、b)9.5−9.9%の2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを含む防腐剤組成物、c)2.3%の5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、0.7%の2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、安定化剤としての2−3%アルキルカルボキシレート及び93−95%の修飾グリコールを含む防腐剤組成物又はd)その組合せである。いくつかの実施態様において、界面活性剤は、Tween(登録商標)20(ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート)、Triton(登録商標)X−100(ポリエチレングリコールパラ−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェニルエーテル)又はBrij35(ポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル)などの非イオン性界面活性剤である。
特定の実施態様では、組成物は、8から8.5のpHを有し、50mMのホウ酸塩、1.05%(w/w)のカゼイン加水分解物、50mMのトリエタノールアミン、0.08重量%のアジ化ナトリウム及び0.005重量%ポリエチレングリコールソルビタンモノラウリラウレートを含む。
【0006】
新規な組成物を用いる方法の実施態様も開示される。いくつかの実施態様において、蛍光粒子溶液(例えば量子ドット溶液又は量子ドットコンジュゲート溶液)は、希釈された蛍光粒子溶液を製造するために組成物で希釈され、希釈された蛍光粒子/組成物溶液は蛍光粒子の貯蔵寿命を増加させるために外気温度以下の温度で保存される。いくつかの実施態様において、懸濁された蛍光粒子の蛍光は、少なくとも1ヵ月、少なくとも2ヵ月、少なくとも3ヵ月又は少なくとも6ヵ月間安定化される。特定の実施態様において、開示された組成物の実施態様に懸濁された量子ドット又は量子ドットコンジュゲートの蛍光強度は、懸濁された蛍光粒子が4℃で少なくとも1ヵ月間保存された場合、実質的に同じ状態のままである。特定の実施態様において、開示された保存組成物の実施態様に懸濁された量子ドット又は量子ドットコンジュゲートの蛍光強度は、4℃において少なくとも3ヵ月間同じ状態のままである。開示された組成物以外(例えば他の又は先行技術の組成物)で保存された量子ドット又は量子ドットコンジュゲートは、4℃で1ヵ月後に蛍光強度の有意な減少を示す。
特定の実施態様において、組成物中に保存される蛍光粒子は、アルキルアミン、タンパク質、界面活性剤及び/又は防腐剤の一つ以上を欠く組成物の実施態様において保存される粒子の蛍光と比較して、特定の時点で増加した蛍光を有する。いくつかの実施態様において、初期の蛍光は増加する。他の実施態様において、蛍光は、初期の処方の後に増加する。いくつかの実施態様において、増加した蛍光は、少なくとも5時間、少なくとも25時間、少なくとも100時間、少なくとも250時間、少なくとも750時間、少なくとも1500時間、少なくとも3,000時間又は少なくとも4300時間(すなわち6ヵ月)の間持続する。具体的な実施態様において、量子ドット又は量子ドットコンジュゲートの蛍光は、開示された保存組成物の実施態様の懸濁させた場合、他の、又は先行技術の組成物に懸濁された量子ドット又は量子ドットコンジュゲートと比較して、5%から15%、5%から20%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%又は少なくとも20%増加する。特定の実施態様において、(組成物と蛍光粒子を混合した後の)蛍光強度は、(a)アミノ酸又はアルキル置換アルキルアミン以外の置換アミン、又は(b)アミン及びタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物を欠いた組成物中の蛍光粒子の蛍光強度と比較して少なくとも5%増加する。
【0007】
いくつかの実施態様において、プローブは、例えば蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)アッセイにおいて、ハイブリダイズされたプローブを提供するために、標的にハイブリダイズする。開示された保存組成物に懸濁された量子ドット−抗体コンジュゲートは、ハイブリダイズされたプローブを検出するために用いられる。いくつかの実施態様において、量子ドット−抗体コンジュゲートは、例えば蛍光免疫組織化学(IHC)アッセイにおいて、組織上のタンパク質抗原を検出するために用いられる。いくつかの実施態様において、量子ドット−抗体コンジュゲートの濃度は、開示された組成物において0.5nMから150nM、1nMから125nM、5nMから100nM、25nMから75nM、1nM、5nM、10nM、25nM、50nM、75nM又は100nMである。特定の実施態様において、量子ドット−抗体コンジュゲートの濃度は、開示された組成物において50nMである。
本発明の前述の及び他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明によってより明確となり、添付される図への言及を進める。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、pH10.5、50mMトリエタノールアミンの親和溶出勾配におけるQdotTM655−30Nナノクリスタルの655nmでの蛍光光単位対時間のグラフである。
【図2】図2は、pH10.5、100mMトリエタノールアミンの親和溶出勾配におけるQdotTM655−30Nナノクリスタルの655nmでの蛍光光単位対時間のグラフである。
【図3】図3は、pH8.5、50mMトリエタノールアミンの親和溶出勾配におけるQdotTM655−30Nナノクリスタルの655nmでの蛍光光単位対時間のグラフである。
【図4】図4は、50mMアミン添加物を加えた0.42Mホウ酸バッファー中のQdotTM655−30Nナノクリスタルの655nmにおける蛍光光単位対時間のグラフである。
【図5】図5は、様々なバッファー中のQdotTM655−30Nナノクリスタルの655nmにおける蛍光光単位対時間のグラフである。
【図6】図6は、様々な添加物を含む10mMPBSバッファー中のQdotTM655−30Nナノクリスタルの655nmにおける蛍光光単位対時間のグラフである。
【図7】図7は、様々な添加物を含む10×PBSバッファー中のQdotTM655−30Nナノクリスタルの655nmにおける蛍光光単位対時間のグラフである。
【図8】図8は、様々な添加物を含む0.32Mホウ酸バッファー中のQdotTM655−30Nナノクリスタルの655nmにおける蛍光光単位対時間のグラフである。
【図9】図9は、防腐剤及び界面活性剤添加又は非添加のブロッキングタンパク質及びトリエタノールアミンを含む3つのバッファー系におけるQdotTM655−30Nナノクリスタルの655nmにおける蛍光光単位対時間のグラフである。
【図10】図10は、様々な添加物を含む3つのバッファー中のQdotTM655−30Nナノクリスタル及びQdotTM655−30N−Ms MAbコンジュゲートの655nmにおける蛍光光単位対時間のグラフである。
【図11】図11は、pH8.3で様々な塩濃度のホウ酸バッファー中のQdotTM565−30Nナノクリスタルの565nmにおける蛍光光単位対時間のグラフである。
【図12】図12は、様々なpHの50mMホウ酸バッファー中のQdotTM565−30Nナノクリスタルの565nmにおける蛍光光単位対時間のグラフである。
【図13】図13は、pH8.3で様々なタンパク質濃度の50mMホウ酸バッファー中のQdotTM565−30Nナノクリスタルの565nmにおける蛍光光単位対時間のグラフである。
【図14】図14は、pH8.3で1.05%wtタンパク源を添加した50mMホウ酸バッファー中のQdotTM565−30Nナノクリスタルの565nmにおける蛍光光単位対時間のグラフである。
【図15】図15は、pH8.3で様々な濃度のTween(登録商標)20を添加した50mMホウ酸バッファー中のQdotTM565−30Nナノクリスタルの565nmにおける蛍光光単位対時間のグラフである。
【図16】図16は、pH8.3で様々な界面活性剤を添加した50mMホウ酸バッファー中のQdotTM565−30Nナノクリスタルの565nmにおける蛍光光単位対時間のグラフである。
【図17】図17は、様々な濃度のProClin(登録商標)300を添加したバッファー中のQdotTM565−30Nナノクリスタル及びQdotTM565−30N−Ms MAbコンジュゲートの565nmにおける蛍光光単位対時間のグラフである。
【図18】図18は、様々な濃度のProClin(登録商標)300を添加したバッファー中のQdotTM655−30Nナノクリスタル及びQdotTM655−30N−Ms MAbコンジュゲートの655nmにおける蛍光光単位対時間のグラフである。
【図19】図19は、0.08重量%のアジ化ナトリウムを添加したQdotTM安定化バッファー組成物中の様々なQdotTM−30Nナノクリスタルの蛍光光単位対時間のグラフである。
【図20】図20は、図19の下部の拡大図である。
【図21】図21は、0.05重量%のProClin(登録商標)300を添加したQdotTM安定化バッファー組成物中の様々なQdotTM−30Nナノクリスタルの蛍光光単位対時間のグラフである。
【図22】図22は、図21の下部の拡大図である。
【図23】図23は、0.05重量%のProClin(登録商標)300又は0.08重量%のアジ化ナトリウムを添加した溶液A又はQdotTM安定化バッファー組成物中の様々なQdotTM−30N−Ms MAbコンジュゲートの蛍光光単位対時間のグラフである。それぞれのQdotTMは、異なる波長で測定される。
【図24】図24は、様々な分解されたQdotTM安定化バッファー組成物中のQdotTM565−30N−Ms MAbコンジュゲートの565nmにおける蛍光光単位対時間のグラフである。
【図25】図25は、様々な分解されたQdotTM安定化バッファー組成物中のQdotTM585−30N−Ms MAbコンジュゲートの585nmにおける蛍光光単位対時間のグラフである。
【図26】図26は、様々な分解されたQdotTM安定化バッファー組成物中のQdotTM800−30N−Ms MAbコンジュゲートの800nmにおける蛍光光単位対時間のグラフである。
【図27】図27は、QdotTM565−30N Ms MAb(0日目の前立腺癌細胞についてのQdotTM安定化バッファー組成物中のコンジュゲート)でのFISH染色を例示する、複合スペクトル像(倍率40×)である。
【図28】図28は、0日目の前立腺癌細胞についての溶液A中のQdotTM565−30N Ms アンチハプテンコンジュゲートでのFISH染色を例示する、複合スペクトル像(倍率40×)である。
【図29】図29は、1ヵ月後の前立腺癌細胞についてのQdotTM安定化バッファー組成物中のQdotTM565−30N MsアンチハプテンコンジュゲートでのFISH染色を例示する、複合スペクトル像(倍率40×)である。
【図30】図30は、1ヵ月後の前立腺癌細胞についての溶液A中のQdotTM565−30N MsアンチハプテンコンジュゲートでのFISH染色を例示する、複合スペクトル像(倍率40×)である。
【図31】図31は、3ヵ月後の前立腺癌細胞についてのQdotTM安定化バッファー組成物中のQdotTM565−30N MsアンチハプテンコンジュゲートでのFISH染色を例示する、複合スペクトル像(倍率40×)である。
【図32】図32は、3ヵ月後の前立腺癌細胞についての溶液A中のQdotTM565−30N MsアンチハプテンコンジュゲートでのFISH染色を例示する、複合スペクトル像(倍率40×)である。
【図33】図33は、6ヵ月後の前立腺癌細胞についてのQdotTM安定化バッファー組成物中のQdotTM565−30N MsアンチハプテンコンジュゲートでのFISH染色を例示する、複合スペクトル像(倍率40×)である。
【図34】図34は、6ヵ月後の前立腺癌細胞についてのQdotTM安定化バッファー組成物中のQdotTM565−30N Msアンチハプテンコンジュゲートの標準的なFISH染色である。
【発明の詳細な説明】
【0009】
I.用語及び定義
特に明記しない限り、技術用語は、従前の使用法に従って用いられる。分子生物学の共通の用語の定義は、Benjamin Lewin, Genes VII, published by Oxford University Press, 2000 (ISBN 019879276X);Kendrew et al. (eds.), The Encyclopedia of Molecular Biology, published by Blackwell Publishers, 1994 (ISBN 0632021829);及びRobert A. Meyers (ed.), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, published by Wiley, John & Sons, Inc., 1995 (ISBN 0471186341);及び他の類似の文献中に見られる。
本願明細書で用いられるように、単数用語「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に示さない限り、複数の指示対象物を含む。同様に、単語「又は」は、文脈が明確に示さない限り、「及び」を含むことを意図している。また、本願明細書で用いられるように、用語「含む」は「包含する」を意味する。
したがって、「A又はBを含む」ことは、A、B、又はA及びBを含むことを意味する。
説明されない限り、本願明細書において用いられる全ての技術的及び科学的な用語は、この開示が属する当業者に通常理解されるのと同じ意味を有する。本願明細書に記載のものに類似又は均等な方法及び材料は、本開示の実施又は試験に用いられ得るにもかかわらず、適切な方法及び材料は以下に記載される。材料、方法及び実施例は、一例にすぎず、限定することを意図していない。開示における他の特徴は、以下の詳細な説明及び請求項から明白である。
特に明記しない限り、成分、分子量、割合、温度、時間等の量を表す数は、明細書又は請求項で用いられるように、用語「約」によって修飾されているかのように理解される。
したがって、黙示的又は明確に示されない限り、記載されるパラメーターは、所望の性質及び/又は標準試験条件/方法下の検出限界に依存した近似値である。検討された先行技術の実施態様を直接及び明確に区別する場合、実施態様の数値は、単語「約」が記載されていない限り、近似されていない。核酸又はポリペプチド又は他の化合物に与えられた、全てのヌクレオチドの大きさ又はアミノ酸の大きさ及び全ての分子量又は分子質量値は近似値であり、記載のために提供されたものであることはよく理解されるところである。 本願明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許及び他の文献は、その全てが出典明示により援用される。矛盾する場合には、用語の説明を含み、本願明細書が統制する。さらに、材料、方法及び実施例は、単に例示であり、限定する意図はない。
【0010】
この開示の様々な実施例の検討を容易にするために、以下の具体的な用語の説明が提供される:
用語脂肪族化合物は、分岐又は非分岐の炭素鎖を有することを意味する。鎖は、飽和(全て一重結合を有する)又は不飽和(一つ以上の二重又は三重結合を有する)であってもよい。鎖は、直鎖状又は環状(すなわち脂環式)であってもよい。
アルキル:飽和した炭素鎖を有する炭化水素基。鎖は、分枝又は非分岐でもよく、直鎖状又は環状(すなわちシクロアルキル)でもよい。用語低級アルキルは、鎖が1−10の炭素原子を含むことを意味する。
抗体:「抗体」は、他の分子に結合するものを実質的に除いて、総称して免疫グロブリン又は免疫グロブリン様分子(例示の目的で限定されることなく、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM、その組合せ、及び例えば哺乳動物(例えばヒト、ヤギ、ウサギ及びマウス)などの脊椎動物のようなあらゆる脊索動物の免疫応答において産生される類似の分子を含む)、及び対象の分子に特異的に結合するその断片(又は対象の分子に高度に類似した群)を意味する。「抗体」は、一般的に、抗原のエピトープを特異的に認識及び結合する、少なくとも軽鎖又は重鎖免疫グロブリン可変領域を有するポリペプチドリガンドである。免疫グロブリンは、重鎖及び軽鎖から構成され、それぞれ可変重鎖(VH)領域及び可変軽鎖(VL)領域と呼ばれる可変領域を有する。同時に、VH領域及びVL領域は、免疫グロブリンによって認識される抗原への結合に関与する。例示的な免疫グロブリンフラグメントとしては、これに限定されるものではないが、タンパク分解性免疫グロブリンフラグメント[例えば公知技術であるF(ab’)断片、Fab’断片、Fab’−SH断片及びFabフラグメント]、組換え免疫グロブリンフラグメント(例えばsFv断片、dsFv断片、二重特異性sFv断片、二重特異性dsFv断片、F(ab)’2断片、単鎖Fvタンパク質(「scFv」)及びジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)を含む。抗体の他の例は、ダイアボディ及びトライボディ(当該技術分野で公知)及びラクダ科動物抗体を含む。「抗体」は、キメラ抗体(例えばヒト化ミューリン抗体)及びヘテロコンジュゲート抗体(例えば二重特異性抗体)などの遺伝子操作された分子を含む。Pierce Catalog and Handbook, 1994-1995 (Pierce Chemical Co., Rockford, IL); Kuby, J., Immunology, 3rd Ed., W.H. Freeman & Co., New York, 1997を参照のこと。
【0011】
芳香族又はアリール化合物は、一般的に不飽和な、一重及び二重結合が交互に並んだ環状炭化水素である。ベンゼン(3つの二重結合を含む6炭素環)は、典型的な芳香族化合物である。
バイオコンジュゲート又はコンジュゲート:量子ドットなどのナノ粒子を有する化合物及び生体分子は、あらゆる適した手段によって、ナノ粒子に効果的に、直接的又は間接的に結合する。例えば、生体分子は、ナノ粒子に、共有結合的、又は非共有結合的に(例えば静電的に)結合することができる。リンカーが量子ドットの発光又は生体分子の機能に悪影響を与えない限り、例えば「リンカー」分子を用いることにより、生体分子のナノ粒子への間接的な給合はも起こり得る。リンカーは、好ましくは生体適合性である。公知技術の分子リンカーは、一級アミン、チオール、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、ビオチン又は類似化合物を含む。
生体分子:生物システムに含まれ得るあらゆる分子は、これに限られるものではないが、合成又は自然発生的なタンパク質又はその断片、グリコプロテイン、リポタンパク質、アミノ酸、ヌクレオシド、ヌクレオチド、核酸、オリゴヌクレオチド、DNA、RNA、炭水化物、糖、脂質、脂肪酸、ハプテン、抗体などが含まれる。
ブロッキングタンパク質:タンパク質又はタンパク質加水分解物組成物は、ハイブリダイゼーション及び検出反応における背景の非特異的結合(すなわち非特異性プローブの付着又はタンパク質結合)を減少させるために用いられる。ブロッキングタンパク質の例は、カゼイン、カゼイン加水分解物、植物性トリプトン、植物性タンパク質加水分解物、大豆タンパク質加水分解物、ペプトン、カゼインペプトン、サーモンペプトン、ゼラチン、ゼラチン加水分解物、ヤギグロブリンタンパク質、チキンアルブミン及びウシ血清アルブミンを含むが、これに限定されるものではない。
【0012】
コンジュゲート、接続、結合又は連結:第一の単位の第二の単位への結合。これは、ある分子の他の分子への共有結合、ある分子の他の分子への非共有結合(例えば静電的な結合)(静電コンジュゲートの方法を開示する米国特許番号6,921,496を参照)、ある分子の他の分子への水素結合による非共有結合、ある分子の他の分子へのファンデルワールス力による非共有結合、及びそのような結合のあらゆる全ての組合せを含むが、これに限定されるものではない。
検出可能な標識:その分子の検出を容易にするために、他の分子(例えば抗体又はタンパク質)に直接又は間接的に付着した検出可能な化合物又は組成物。ナノ粒子は、検出可能な標識のクラスの非限定的な例である。
デタージェント又は界面活性剤:デタージェント又は界面活性剤は、非極性液体−極性液体境界面(例えば油−水)を集結させ、乳化作用を行う表面活性剤である。化学作用の形態に依存して、デタージェントは、アニオン性、カチオン性又は非イオン性に分類される。非イオン性デタージェントは、水素結合メカニズムを介して機能する。さらに、界面活性剤又はデタージェントは、二つの液体間の界面張力を減少させる。界面活性剤分子は、一般的に極性又はイオン性「頭部」及び非極性炭化水素「尾部」を有する。
水への溶解により、界面活性剤分子は凝集し、ミセルを形成して、非極性尾部が内側を向き、極性又はイオン性頭部が外側の水性環境を向く。非極性尾部は、ミセル中で非極性「ポケット」を作り出す。溶液中の非極性化合物は界面活性剤分子によって形成されるポケットに隔離され、したがって、無極性化合物が水溶液中で混合されたままになる。
蛍光:高い電子状態からより低い電子状態に移行するように、原子又は分子がエネルギーを吸収し、可視光を発する一種の発光。用語「蛍光」は、エネルギーの吸収及び放出間の時間的間隔が例えば109から10−7秒と極めて短い現象に限定される。
蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH):FISHは、特異的核酸配列(例えば染色体上のDNA配列)の有無を検出、局所化するために用いられる技術である。FISHは、定義された反応条件下で高度な配列類似性を示す染色体の一部に結合する蛍光性標識プローブを用いる。FISHは、組織試料中の特定のmRNA配列を検出するためにも用いることができる。
蛍光体:励起源に暴露された場合に分子に蛍光を発させる分子の官能基又は一部。用語「蛍光体」は、蛍光標識を伴うタンパク質をマークするために用いられる蛍光化合物を意味するためにも用いられる。
ヘテロ脂肪族化合物は、少なくとも一つの異種原子を有する脂肪族化合物であり、すなわち一つ以上の炭素原子は他の原子、一般的には窒素、酸素又は硫黄によって置換されている。
【0013】
ヘテロアリール化合物は、少なくとも一つの異種原子を有する芳香族化合物であり、すなわち環における一つ以上の炭素原子が少なくとも一つの孤立電子対を有する原子、一般的には窒素、酸素又は硫黄で置換されている。
ナノ粒子又はナノクリスタル:例えば少なくとも一つの約100nm未満の寸法を有するナノスケールの粒子などの、ナノメートルで測定される大きさを有するナノスケール粒子。ナノ粒子の例は、正磁性ナノ粒子、超常磁性ナノ粒子、金属ナノ粒子、フラーレン様物質、無機ナノチューブ、デンドリマー(例えば共有結合で結合した金属キレートを有するもの)、ナノファイバー、ナノホーン、ナノオニオン、ナノロッド、ナノロープ及び量子ドットを含む。ナノ粒子は、例えば光子(高周波及び可視光子を含む)及びプラスモン反響の吸収及び/又は放出を介して、検出可能なシグナルを産生することができる。
フォトルミネセンス:原子又は分子が光子を吸収し、より高いエネルギー状態へと励起するプロセス。原子又は分子は、光子を発することによって、より低いエネルギー状態へと戻る。フォトルミネセンスの2つの型は、蛍光及びリン光である。蛍光は、吸収と放出間の極めて短い時間(例えば10−8から10−3秒)により特徴づけられる。励起が終わった後、リン光はより低いエネルギー状態へ移行するゆっくりとしたプロセスであり、数分又は数時間続くことがある。量子ドットに関して本願明細書に用いられるように、フォトルミネセンスは蛍光を意味する。
量子ドット:量子閉込めによる大きさに依存した電子及び光学特性を示すナノスケール粒子。量子ドットは、例えば、半導体材料(例えばセレン化カドミウム及び硫化鉛)で構成され、結晶子(分子線エピタキシアル成長を経て成長する)等から構成される。様々な界面化学及び蛍光特性を有する種々の量子ドットは、Life Technologies, Inc.(Carlsbad, CA)のInvitrogenから商業的に入手可能である(米国特許番号6,815,064、6,682596及び6,649,138(それぞれ本願明細書に出典明示により引用したものとする))。量子ドットは、例えばEvident Technologies (Troy, NY)及びOcean NanoTech, LLC (Springdale, AR)からも商業的に入手可能である。他の量子ドットは、ZnSSe、ZnSeTe、ZnSTe、CdSSe、CdSeTe、ScSTe、HgSSe、HgSeTe、HgSTe、ZnCdS、ZnCdSe、ZnCdTe、ZnHgS、ZnHgSe、ZnHgTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、ZnCdSSe、ZnHgSSe、ZnCdSeTe、ZnHgSeTe、CdHgSSe、CdHgSeTe、InGaAs、GaAlAs、InGaN量子ドットなどの合金量子ドットを含む(合金量子ドット及び製造方法は、例えば米国特許公開第2005/0012182号及びPCT公報WO2005/001889に開示される)。
【0014】
安定した/安定化した:蛍光粒子に関して本願明細書で用いられるように、用語「安定した」は、一定の期間(例えば1時間以上、1日以上、1週間以上又は1ヵ月以上)にわたって蛍光強度の損失が実質的にないことを意味する。蛍光粒子を安定化することは、組成物の非存在下での蛍光粒子の蛍光強度と比較して、一定期間にわたって蛍光粒子の蛍光強度減少を予防又は減少させる、又は蛍光粒子の蛍光強度を増加さえする組成物中に蛍光粒子を入れることを意味する。
置換された:一つ以上の原子が官能基、水素以外の原子又は遊離基によって置換された分子又は基についての言及。例えば、アミンは、一般式RNH(3−n)を有する(n=1、2又は3、それぞれのRは独立して脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基である)。置換アミンは、R基の少なくとも一つの水素が官能基、水素以外の原子又は遊離基によって置換されたアミンを意味する。例えば、置換されたアルキルアミンは、アルキル鎖の一つ以上水素が他の原子又は官能基によって置換されたアルキルアミンを意味する。エタノールアミンは、置換されたアルキルアミンの一つの例であり、エチル鎖の水素原子が−OHにより置換されている。
【0015】
II.量子ドット
発色性及び/又は蛍光半導体ナノクリスタル(よく量子ドットと称される)は、検出可能な標識として用いることができる。ナノクリスタル結晶量子ドットは、半導体ナノクリスタル粒子であり、特定サイズの粒子発光体を用いる本発明を限定することなく、一般的に2から10nmの大きさである。
量子ドットは、一般的に安定した蛍光体であって、多くの場合写真漂白に耐性であり、狭い発光スペクトルの広範囲にわたる励起波長を有する。複数の異なる放出特性を有する複数の異なる量子ドットが複数の異なる標的を同定するために用いられ得るように、特定の放出特性(例えば特定の波長の放出)を有する量子ドットを選択することができる。量子ドットバイオコンジュゲートは、利用可能な従来の最も明るい蛍光染料と同等の量子収量によって特徴づけられる。さらに、これらの量子ドットに基づく蛍光体は、従来の蛍光染料より10−1000倍の光を吸収する。量子ドットからの発光は狭く、対称的であり、それは他の色との重なりが最小化されることを意味しており、隣接した検出チャネル及び減衰クロストークに最小のブリードを生じさせ、検出目的の量子ドットを差次的に放出する同時多重化に導くことができる。対称的及び調整可能な発光スペクトルは粒子の大きさ及び材料組成物により変化し、実質的にスペクトルが重なることなく異なる量子ドットのフレキシブルかつ狭いスペーシングを可能とする。さらに、それらの吸収スペクトルは広く、単一の励起波長を用いて全ての量子ドットの色彩変異を同時に励起することを可能にし、これにより試料の自己蛍光を最小化させる。
さらにまた、ペグ化(量子ドットコンジット上へのポリエチレングリコール基の導入)が非特異的タンパク質を実質的に減少させることができることが明らかとなっている:量子ドット相互作用。特定の量子ドットは、Life Technologies, Inc.などから商業的に入手可能である。いくつかの有効な実施態様はQdotTM565及びQdotTM800ナノクリスタルなどの量子ドットナノ粒子を利用し、そのような用語体系で用いられる数値はナノ粒子の発光最大波長の近似値を意味する。例えば、QdotTM565ナノクリスタルは、565nmの波長を有する光を発し、縁色光を産生する。したがって、量子ドットは、特定の波長で検出可能なシグナルを提供するのに選択され得る。検出は、特定の使用法に従い、種々の手段(例えば蛍光顕微鏡、蛍光光度計、蛍光スキャナ等)によって行われる。
【0016】
III.量子ドットコンジュゲート
量子ドット使用は、生体親和性のそれらの欠如によって限られた。表面被覆化学の新しい進歩は、しかしながら、これらの問題を解決するのに役立った。例えばWu, X. et al. Immunofluorescent labeling of cancer marker Her2 and other cellular targets with semiconductor quantum dots, Nature Biotechnol. 21, 41-46 (2003);Jaiswal, J. K., Mattoussi, H., Mauro, J. M. & Simon, S. M. Long-term multiple color imaging of live cells using quantum dot bioconjugates, Nature Biotechnol. 21, 47-51 (2003);及びDubertret, B. et al. In vivo imaging of quantum dots encapsulated in phospholipid micelles. Science 298, 1759-1762 (2002)を参照のこと。
量子ドットは、ストレプトアビジンなどのバイオ認識分子(同上)にコンジュゲートされる。これらのコンジュゲートは、固定細胞及び組織切片上の標的検出のために用いられた。さらに、生細胞の細胞表面タンパク質及び細胞内区画は、量子ドットバイオコンジュゲートを用いて検出された。
量子ドットは、生体分子(例えばアミノ酸、ペプチド/タンパク質又はヌクレオシド/ヌクレオチド/核酸)にコンジュゲートすることができる。バイオ・コンジュゲートを製作するために有用な特定の例示的な生体分子は、これに限定されるものではないが:モノクローナル又はポリクローナル抗体(例えばIgA、IgD、IgE、IgG、IgM);他の分子に結合するものを実質的に除外するが、興味がある分子(又は興味がある高度に類似する分子群)に特異的に結合する抗体断片(これに限定されるものではないが、タンパク分解性抗体断片(例えば公知技術であるF(ab’)断片、Fab’断片、Fab’−SH断片及びFab断片)、組換え抗体断片(例えばsFv断片、dsFv断片、二重特異性sFv断片、二重特異性dsFv断片、F(ab)’断片、単鎖Fvタンパク質(「scFv」)及びジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)を含む。他の有用な生体分子は、ダイアボディ、トライアボディ及びラクダ科動物抗体;キメラ抗体などの遺伝子操作された抗体(例えばヒト化ミューリン抗体);ヘテロコンジュゲート抗体(例えば二重特異性抗体);ストレプトアビジン;受容体;酵素;BSA;ポリペプチド;アプタマー;及びその組合せを含む。
量子ドット及び生体分子を含むバイオコンジュゲートは、商業的に入手可能である。あるいは、量子ドットバイオコンジュゲートは、合成することができる。生体分子/量子ドットコンジュゲートの製造方法は、従来技術において一般に公知であり、有用なバイオコンジュゲートはあらゆる適切な方法によって製作することができる。
例えば、免疫グロブリンはCdSe/ZnS量子ドット・シェルに組み込むことができる:1)ジチオトレイトール(DTT)での処理により天然ジスルフィドを還元する;2)適切なヘテロ二官能性NHSエステル(スペーサー)−マレイミド(x=4,8,12)でアミン終端量子ドットキャッピング基を官能化する;3)これらのチオール化された免疫グロブリンでマレイミド終端量子ドットを誘導体化すること;及び4)適切な技術(例えばサイズ排除クロマトグラフィ)を用いてコンジュゲートを精製する。プロセスは、スキーム1に表される:
【0017】
スキーム1

【0018】
ストレプトアビジンコンジュゲートは、例えばストレプトアビジン分子を2−イミノチオランで処理するプロセスにおいて、チオール化されたストレプトアビジンをチオール化された免疫グロブリンと置換することによって製造することができる。
上記実施例において用いられる量子ドットは、水溶性を誘導するために、トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)の静電的に結合した有機シェル及び挿入両親媒性ポリマーによって保護されている。このポリマーは、更なる官能基化のための約30の末端アミン基を有する。E.W. Williams, et. al., "Surface-Modified Semiconductive and Metallic Nanoparticles Having Enhanced Dispersibility in Aqueous Media"、米国特許番号6,649,138(本願明細書に出典明示により援用したものとする)を参照のこと。高度に感受性の量子ドットコンジュゲートを形成するために、抗体は様々な割合で量子ドットに付着させることができる。化学は米国特許公報第2006/0246523号及び第2009/0176253号に記載されたものと類似しており、その全てが本願明細書に出典明示により援用されたものとする。
【0019】
IV.量子ドット検出
標準の蛍光顕微鏡は、量子ドット及び量子ドットバイオコンジュゲートを検出するための道具である。量子ドットバイオコンジュゲートが実質的に光安定性なので、興味がある領域を見出したり、適切に試料上に焦点を合わせるために顕微鏡に時間をかけることができる。量子ドットバイオコンジュゲートは、一つだけの励起源/フィルターのみが利用可能で、色の間で最小のクロストークが必要な場合に、鮮明な光安定性発光が求められるあらゆる時間において有用であり、特に多色適用において有用である。例えば、量子ドットは細胞表面マーカー及び核抗原を標識化し、微小管及びアクチンを染色するためのストレプトアビジン及びIgGのコンジュゲートを形成するために用いられた(Wu, X. et al. (2003), Nature Biotech, 21, 41-46)。
例として、蛍光はマルチスペクトルイメージングシステムNuanceTMで測定することができる(Cambridge Research & Instrumentation, Woburn, MA)。他の例として、蛍光はスペクトルイメージングシステムSpectraViewTMで測定することができる(Applied Spectral Imaging, Vista, CA)。マルチスペクトルイメージングは、イメージのそれぞれのピクセルの分光学的情報を集め、スペクトル画像処理ソフトウェアを用いて結果データを解析する技術である。例えば、NuanceTMシステムは、電子的及び連続的に選択可能な異なる波長での一連の像を撮影することができ、そのようなデータを扱うために設計された分析プログラムを用いてイメージを利用することができる。染料のスペクトルが高度に重複する場合、又はそれらが試料において共存又は同じ場所で発生している場合、スペクトル曲線が異なると仮定するならば、NuanceTM系は同時に複数の染料の定量的情報を得ることができる。多くの生物物質は自発蛍光するか、高−エネルギー光によって励起される場合は低−エネルギー光を発する。このシグナルは、低−コントラストイメージ及びデータをもたらし得る。マルチスペクトル画像化能力のない高感度カメラは、蛍光シグナルとともに自己蛍光シグナルを増加させる。マルチスペクトル画像化は、組織の自己蛍光を純粋化及び取り出すことができ、達成可能な信号対ノイズ比を増加させる。
【0020】
V.蛍光粒子の保存
保存された蛍光粒子(例えば溶液中の量子ドット及び量子ドットコンジュゲート)の蛍光強度は、時間とともに減少する。例えば、しばらくの間商業的に入手可能なバッファにおいて保存されたQdotTM−抗体コンジュゲートは、新たに調製されたQdotTM−抗体コンジュゲート溶液と比較して、FISHアッセイにおける減少した蛍光シグナル強度を有する。動作理論に限定されることなく、信号強度の損失は、潜在的にコンジュゲートの凝集及び/又はナノ材料の量子収量の損失によるものである。
溶液中の蛍光粒子の相対的な蛍光損失を安定化及び減少させる新規な組成物の実施態様が本願明細書に開示される。いくつかの実施態様において、量子ドット又は量子ドットコンジュゲートが外気温度未満の温度(例えば4℃)で組成物中に保存される場合、組成物は量子ドット又は量子ドットコンジュゲートの蛍光強度を少なくとも1ヵ月間以上安定化することができる。この保存の特定の温度は、特定の温度で保存する方法に限定することなく引用され、安定化対非安定化組成物を比較するための基礎を提供する。いくつかの実施態様において、蛍光粒子が4℃で数週間又は数ヶ月間開示された組成物の実施態様中で保存された場合、蛍光強度は実質的に同じままである。特定の実施態様では、蛍光粒子が組成物の開示された実施態様において4℃で少なくとも1日間、少なくとも1週間、少なくとも1ヵ月間、少なくとも2ヵ月間、少なくとも3ヵ月間又は6ヵ月間保存される場合、蛍光粒子の保存とは相対的な蛍光強度が50%未満の損失、30%未満の損失、20%未満の損失、10%未満の損失、5%未満の損失、1%未満の損失、5%から30%の損失、5%から20%の損失、1%から10%の損失、1%から5%の損失又は0%の損失であることを意味する。例えば、ある実施態様において、組成物中において4℃で1ヵ月間の保存後、相対的な蛍光強度は実質的に同じままである。特定の実施態様では、量子ドット−抗体コンジュゲートが4℃で組成物中に保存される場合、組成物は少なくとも3ヵ月間蛍光強度を安定化することができる。有効な実施例において、量子ドット−抗体コンジュゲートの相対的な蛍光強度は、4℃での3ヵ月間の保存後、実質的に同じままであった。したがって、いくつかの実施態様において、懸濁された蛍光粒子の蛍光は、少なくとも1ヵ月間、少なくとも2ヵ月間、少なくとも3ヵ月間又は少なくとも6ヵ月間安定化される。比較のために、開示された組成物なしで(例えば他の又は先行技術の組成物中で)保存した同一の量子ドット又は量子ドットコンジュゲートは、4℃で1ヵ月後、蛍光強度の有意な減少を示し、2、3ヵ月後(例えば3ヵ月後)に完全な蛍光の損失を示すであろう。本願明細書に開示される安定化組成物もプラットフォーム上での希釈様式のオートメーション化法を可能とする。
【0021】
ある実施態様では、組成物は、一又は複数のアミン、タンパク質、界面活性剤及び/又は防腐剤を欠く組成物と比較して、蛍光粒子の蛍光強度を増加させることができる。いくつかの実施態様において、初期の蛍光は増加する。他の実施態様において、増加した蛍光は、初期調合後に見られる。いくつかの実施態様において、蛍光は、少なくとも5時間、少なくとも25時間、少なくとも100時間、少なくとも250時間、少なくとも750時間、少なくとも1500時間、少なくとも3,000時間又は少なくとも4300時間(すなわち6ヵ月)増強された状態を維持する。特定の実施態様において、量子ドット又は量子ドットコンジュゲートの蛍光は、組成物中に分散された同一のコンジュゲートと比較して、一般的に少なくとも5%(例えば5%から20%、5%から15%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%又は少なくとも20%)増加する。
QdotTMコンジュゲートの潜在的なアフィニティークロマトグラフィ溶出条件を調査すると、まず最初に、エタノール置換基を含む三級アルキルアミンを含む溶出バッファーは溶液中のQdotTMナノ粒子の蛍光の相対的な損失を安定化するということが発見された。この影響は、多種多様なバッファーにおいて示された。様々な官能性を有するいくつかの異なるアミン(1°、2°及び3°)は、調査され、類似の効果がもたらされた。しかしながら、初期の結果に基づいて、トリアルカノールアミン(例えばトリエタノールアミン)は、37℃及び45℃の高温で最も大きな蛍光安定化がもたらされた。高塩濃度(例えば2M NaCl、2.25MKI又は2.5MMgCl)、高い有機濃度(例えば25%水性ポリエチレングリコール)、又は高度に酸性の条件(例えば50mMクエン酸、pH=3.0)を含むクロマトグラフィ溶出剤は、QdotTMフォトルミネセンスを大幅に減少させることが示された。
組成物は、QdotTM蛍光を安定化する能力を測定するために試験された。特定の開示された実施態様は、アミン、バッファー、ブロッキングタンパク質、防腐剤及び界面活性剤を含んでいた。初期のQdotTM安定化バッファー(QSB)組成物は、調製された。
この初期のQSB組成物は、0.32Mホウ酸塩(pH8.3)、1.05重量%カゼイン塩基加水分解物、50mMトリエタノールアミン、0.08重量%アジ化ナトリウム防腐剤(Sigma-Aldrich, St. Louis, MOから入手可能)及び0.005重量%Tween(登録商標)20界面活性剤(Sigma-Aldrich, St. Louis, MOから入手可能)を含む。それぞれのQSB成分は、QdotTM安定性に対するその効果を測定するために評価された。さらに、QSBは、蛍光インシチューハイブリダイゼイション(FISH)における染色効率に対する効果を測定するために評価された。
【0022】
A.アミン
QdotTM安定化バッファー組成物へのアミンの添加は、時間とともにQdotTMナノクリスタル又はQdotTMコンジュゲートの蛍光を安定化することができる。動作理論にとらわれることなく、アミンは量子ドット表面欠陥を不動態化し得、したがって量子ドットの発光量子収量を増加させる。アミンは、一級、二級又は三級アミン(例えば脂肪族アミン、ヘテロ脂肪族アミン、アリールアミン、ヘテロアリールアミン、アルキルアリールアミン、アリールアルキルアミン又はシクロヘキシルアミン、ピリジンなどの環状アミン)であってもよい。アミンは一般式RNH(3−n)(n=1、2又は3、及びそれぞれのRは独立して脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、アリール基、ヘテロアリール群、アルキルアリール基、又は、アリールアルキル基である)を有する。それぞれのRは、置換又は非置換であってもよい。いくつかの実施態様において、少なくとも一つのRは、例えば一つ以上−OH、−OR、−CO、−CN基、又はその組合せで置換されている(R1は置換又は非置換の脂肪族化合物又はアリール基である)。アミンは、置換又は非置換の環状アミン(例えばシクロヘキシルアミン)であってもよい。一般的に、アミンは、置換アミン、特にアミノ酸又はアルキル置換アルキルアミン以外の置換されたアルキルアミンである。いくつかの実施態様において、アミンは、非置換のより低級のアルキルアミン、又はアミノ酸又はアルキル置換低級アルキルアミン(例えば1−メチルブチルアミン)以外の置換されたより低級のアルキルアミンである。ある実施態様では、置換されたアルキル基は、低級アルキルアルコール又は低級アルキルニトリルである。例えば、置換されたアルキル基は、エタノール又はプロピオニトリルであってもよい。二級又は三級アミンは、アルキル及び/又は置換されたアルキル基の組み合わせを含めることができる。特定の実施態様において、アミンは、アルカノール基(例えばN−エタノール基)を含む。N−エタノール基を有する例示的なアミンは、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン及びビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ−トリス(ヒドロキシメチル)−メタンを含む。
開示された実施態様として、Nエタノール置換基(例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、Nメチルジエタノールアミン、又は、N,N−ジメチルエタノールアミン)を含むアミンが最も大きな蛍光安定化をもたらしたことが結論づけられた。したがって、ヒドロキシ基を含む官能基及び−OR1及び−CNなどの類似の基は、蛍光安定性を促進する。エタノール−置換アミンが4℃及び室温(例えば25℃)で類似の効果をもたらしたにもかかわらず、トリエタノールアミンは開示された実施態様において37℃及び45℃の高温で最も大きな蛍光安定化をもたらした。
アミンは、0以上、少なくとも200mM、一般的に25mMから200mMまで、少なくとも38mMから75mMまでなどの有効量でQdotTM安定化バッファー組成物において用いられ得る。。いくつかの実施態様において、アミンは、200mM(例えば25−200mM、50−100mM又は38−75mM)以下の濃度で存在する。ある実施態様において、QSB組成物は25−200mMのエタノール−置換アミンを含む。例えば、組成物は、50mMエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン又はその組合せを含んでもよい。特定の実施態様では、組成物は50mMトリエタノールアミンを含む。
ある実施態様において、アミンを含むQSB組成物は、QSB組成物中で保存される量子ドット又は量子ドットコンジュゲートの蛍光を増加させる。いくつかの実施態様において、アミンを含まないQSB組成物と比較して、蛍光の初期の増加(例えばスペクトルスキャニングマルチモードプレートリーダーで測定される)が見られる。ある実施態様において、増加した蛍光は、初期の調合後、少なくとも25時間持続する。
【0023】
B.バッファー塩、濃度及びpH
様々なバッファー系が量子ドットとの互換性を測定するために調査された。バッファーpHの影響も評価された。
高いpH値(例えばpH7以上)で適度な塩濃度(例えば0.02Mから0.5M)を有するバッファーは、少なくともいくつかのQdotTMナノクリスタル及びQdotTM−抗体コンジュゲートを安定化することが見いだされた。一定時間蛍光を安定化し、画像化結果を干渉しないあらゆるバッファーを用いることができる。量子ドットを保存するための例示的なバッファーは、ホウ酸バッファー、リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)、トリス−緩衝生理食塩水(TBS)及びその組合せを含む。適切な、商業的に入手可能なバッファーは、ForteBio Kinetics Buffer添加物(10×PBSに添加された、pH7.4、ForteBio, Inc., Menlo Park, CA)及びPierce SEA BLOCK(0.1%アジ化ナトリウムを含むスチールヘッドサーモン血清を基にしたPBSバッファーのブロッキング製剤)を含んでもよい。ある実施態様において、約0.4Mの濃度のホウ酸バッファー(例えば0.42Mホウ酸塩、pH8.3)、10×PBS(pH7.5、100mMリン酸塩、150mM塩化ナトリウム)、ForteBio Kinetics Buffer添加物(10×PBSに添加、pH7.4)、溶液A及びPierce SEA BLOCKは、QdotTM蛍光を安定化することが見いだされた。
いくつかの実施態様において、バッファー及びアミンを含む組成物はさらに、QdotTM蛍光と適合する。特定の実施態様において、アミンは、N−エタノール置換アミン(例えばトリエタノールアミン)である。例えば、50mMTEAを含む0.4Mホウ酸塩(pH8.6)及び50mMTEAを含む10×PBS(pH 8.3)は、0.4Mホウ酸塩又は10×PBS単独と比較して、改良されたQdotTM安定性を示す。
ホウ酸バッファーは、適切な例示的QdotTM安定化バッファーとして選択され、塩濃度及びpHの影響が評価された。フォトルミネセンスは、高塩濃度(例えば2Mを超える)を有するいくつかのバッファーにおいて減少することが知られている。あらゆる動作理論に限定されることなく、高塩濃度は、ポリマーコーティングした量子ドットのホスホリピド外層による小分子の拡散を促進し、フォトルミネセンス又は量子収量の減少又は完全な損失を生じる。したがって、適度な塩濃度(0より大きく約2Mまで)は、QdotTM安定化のためにより適切であり得る。
いくつかの実施態様において、例えば、0.02Mから0.5M、又は0.05Mから0.32Mのホウ酸塩濃度は、QdotTM蛍光と適合する。ある種の実施形態では、下限の塩濃度は量子ドット及び関連するタンパク質と適合し、凝集は最小化される。特定の実施態様において、QdotTM蛍光は、ホウ酸塩濃度が0.32Mであった場合、他のバッファー製剤と比較して、より適合していた。
酸性のpHを有するバッファー組成物は、中性又は塩基性pHを有する組成物と比較して、QdotTMフォトルミネセンスを減少することが見いだされた。例えば、50mMクエン酸溶液(pH3.0)は、大幅にフォトルミネセンスを減少させることが示された。したがって、7以上のpHは、QdotTMナノクリスタル及びQdotTM−抗体コンジュゲートを保存するために、選択的に適切である。10.5を超えるpHは、しかしながら、抗体の長期安定性に不適切であり得る。したがって、いくつかの実施態様において、組成物は、7〜10、例えば7〜9.5、7〜9、7.5〜9.5、8〜9又は8〜8.5のpHを有する。
【0024】
C.タンパク質
非特異性タンパク質、タンパク質加水分解物又はペプチド、つまり「ブロッキングタンパク質」の蛍光インシチューハイブリダイゼイションアッセイへの添加は、バックグラウンドシグナルを減少させ、ハイブリダイズされたプローブ又は抗体コンジュゲートの検出を改善することが示された。いくつかの商業的に入手可能なバッファーは、ブロッキングタンパク質を含む。例えば、ForteBio Kinetics Buffer添加物は、0.1mg/mLのBSA(ウシ血清アルブミン)を含む。溶液Aは、1.5重量%のカゼイン塩基加水分解物を含む。蛍光を安定化するためにタンパク質、タンパク質加水分解物又はペプチドをQdotTM保存組成物に含むことは有利である。
QdotTM安定性を促進し、画像化と干渉しないあらゆるタンパク質濃度を用いることができる。しかしながら、タンパク質濃度があまりに高い場合、タンパク質凝集が起こり得、QdotTMナノクリスタル又はQdotTM−抗体コンジュゲートの蛍光強度を減少させ得る。したがって、適切な組成物は、凝集を最小化するタンパク質濃度を維持しつつ、蛍光強度を安定化し、後のアッセイにおいてバックグラウンドシグナルを減少させるのに充分なタンパク質を含む。いくつかの実施態様において、QSB組成物は、タンパク質、タンパク質加水分解物又はペプチドを、0より多く2重量%まで(0.05重量部から1.5重量%、1.0重量%から1.1重量%、又は0.06重量%から0.60重量%)含む。さらに、当業者は、凝集されたタンパク質をシステムに導入しないようにフィルター処理されたタンパク源を利用することの重要性を認識している。
タンパク質、タンパク質加水分解物及びペプチドの多数の供給源は、商業的に利用可能である。適切な供給源は、植物性トリプトン、カゼイン加水分解物、ゼラチン、サーモンペプトン、ヤギグロブリンタンパク質、チキンアルブミン加水分解物又はその組合せを含んでもよい。いくつかの実施態様において、植物性トリプトン、カゼイン酸加水分解物、カゼイン塩基加水分解物、魚皮ゼラチン又はその組合せを用い得る。したがって、ある実施態様においてQSB組成物は、植物性トリプトン、カゼイン酸加水分解物、カゼイン塩基加水分解物、魚皮ゼラチン又はその組合せを、0より多く少なくとも2重量%まで(0.5重量%から1.5重量%(例えば0.05重量%から1.1重量%、1.0重量%から1.1重量%、0.06重量%から0.6重量%又は0.25重量%から0.55重量%))の濃度で含む。
ある実施態様では、QSB組成物中にタンパク質を含むことは、QSB組成物中の量子ドット又は量子ドットコンジュゲートの蛍光を安定化する。どんな特定の理論によっても限定されることなく、タンパク質、タンパク質加水分解物又はペプチドは、量子ドット又は量子ドットコンジュゲートの周囲でミセルを形成し、それによって凝集を最小化して量子ドット又はコンジュゲートの溶解性を維持することによって、量子ドット又は量子ドットコンジュゲートの蛍光を安定化させる。
【0025】
D.界面活性剤
QSB組成物への界面活性剤の添加は、タンパク質及びQdotTM−抗体コンジュゲートの凝集を減少させ得る。界面活性剤は、水溶液中でQdotTM−抗体コンジュゲートを囲むミセルを形成し、凝集プロセスを妨げて、QdotTM蛍光を安定化する。
いくつかのイオン性デタージェント(例えばドデシル硫酸ナトリウム)は、QdotTMナノ粒子の相対的な量子収量に弊害をもたらした。いくつかの実施態様において、非イオン性デタージェントは、QdotTM蛍光を安定化することが見いだされた。適切な非イオン性デタージェントは、例えば、脂肪族グリコール、特にアルキレングリコール(例えばTween(登録商標)20(ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート)及びTriton(登録商標)X−100(ポリエチレングリコールパラ−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェニルエーテル))、含酸素アルキレングリコール(例えばBrij 35(ポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル))及びアルコールエトキシレート(例えばTergitolTM15−S−9、二級アルコールエトキシレート(Dow Chemical Companyから入手可能))を含む。ある実施態様において、0.05重量%のBrij35を含む50mMホウ酸バッファー(pH8.3)は、QdotTMナノクリスタル又はQdotTMコンジュゲートの蛍光強度を安定化することが示された。
界面活性剤濃度の影響を測定するために、Tween(登録商標)20は、50mMホウ酸バッファー(pH8.3)中0.0025重量%から0.20重量%の範囲で評価された。0.005重量%から0.050重量%までの濃度は、より低い濃度又はより高い濃度よりも大きな蛍光安定性を示した。Triton(登録商標)X−100は、同様の濃度において有効だった。したがって、いくつかの実施態様においては、QSB組成物は、0より大きく0.05重量%までの濃度(例えば0.005重量%から0.05の重量%又は0.005重量%から0.01重量%)で、非イオン性デタージェントを含んでもよい。
ある実施態様において、QSB組成物中に界面活性剤を含むことにより、QSB組成物において保存された量子ドット又は量子ドットコンジュゲートの蛍光安定性が増加する。
【0026】
E.防腐剤
いくつかの実施態様において、QSB組成物は、防腐剤(例えば抗菌剤)を含む。適切な防腐剤は、例えば、イソチアゾリノン、グリコール、アジ化物及びその組合せを含む。例示的な防腐剤は、ProClin(登録商標)300(2.30%5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、0.70%2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−3%アルキルカルボン酸塩(安定化剤)及び93−95%修飾グリコール;Sigma-Aldrich, St. Louis, MOから入手可能)、ProClin(登録商標)950(9.5−9.9%2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(Sigma-Aldrich))及びアジ化ナトリウムを含む。他の市販のバッファー組成物に基づいて、0.01重量%ProClin(登録商標)300は最初に選択され、評価された。しかしながら、低濃度では、QdotTM安定化バッファーにおいて十分な抗菌保護をもたらさなかった。0.05重量%の濃度は、効果的な防腐剤であることが見いだされたが、QdotTMナノクリスタルの蛍光が減少した。
アジ化ナトリウムもまた潜在的な防腐剤として評価され、ProClin(登録商標)300と比較された。0.05重量%のProClin(登録商標)300又は0.08重量%のアジ化ナトリウムを含む組成物は、8つの異なるQdotTMナノクリスタルと共に評価された。蛍光の相対的な変化はQdotTMナノクリスタル間で異なり、組成物がアジ化ナトリウムを含む場合は、ProClin(登録商標)300を含む場合と比較して、総合的な蛍光の損失はより少なかった。同様の結果が、QdotTM−抗体コンジュゲートでも得られた。
したがって、いくつかの実施態様においては、QSB組成物は防腐剤を含む。ある実施態様において、QSB組成物は、有効量のアジ化ナトリウム(例えば0より大きく0.2重量%まで(例えば0.05重量%から0.2重量%又は0.05重量%から0.1重量%の濃度))を含む。特定の実施態様において、QSB組成物は0.08重量%のアジ化ナトリウムを含む。
【0027】
F.QdotTM安定化バッファー
QdotTM安定化バッファー組成物の特定の開示された実施態様は、塩(0.02Mから0.5M)、アミン(25−200mM)、タンパク質(0.05重量%から1.5の重量%)、界面活性剤(0.005重量%から0.05の重量%)及び防腐剤(0.05重量%から0.1重量%)を含む。QSB組成物は、7〜9の範囲のpHを有する。いくつかの実施態様において、塩はホウ酸塩(0.02Mから0.5M)であり、アミンはN−エタノール置換アミン(50−100mM)であり、pHは8〜9の範囲内である。具体例において、QSB組成物は、0.32Mホウ酸塩、50mMトリエタノールアミン、1.1重量%のタンパク質(例えばカゼイン酸加水分解物、カゼイン塩基加水分解物、チキンアルブミン加水分解物、植物性トリプトン、サーモンペプトン、魚皮のゼラチン又はその組合せ)、0.08重量%のアジ化ナトリウム及び0.005重量%の界面活性剤(例えばTween(登録商標)20、Triton(登録商標)X−100又はBrij35)を含み、8−8.5のpHを有する。
分解されたQSB組成物(すなわちある成分が取り除かれた組成物)中のいくつかのQdotTM−抗体コンジュゲートの研究は、完全なQSB組成物(0.32Mホウ酸バッファー(pH=8.3)、50mMTEA、1.05重量%カゼイン塩基加水分解物、0.08重量%アジ化ナトリウム及び0.005重量%Tween(登録商標)20)がコンジュゲートの最良の蛍光安定性をもたらすことを証明した。バッファー中のタンパク質の存在は、蛍光安定性に対して最も効果があった。(実施例9、表22を参照。)
しかしながら、少なくともいくつかの成分は、併用して用いられる場合、相乗効果を有し得る。例えば、10mM PBSバッファにおいて、50mMトリエタノールアミン(バッファーpH=9.3)又は1.05重量%のカゼイン塩基加水分解物(バッファーpH=7.8)の添加は、10mMPBSバッファー(pH=7.4)のみと比較して、QdotTM655−30Nナノクリスタルの蛍光安定性に対してほとんど影響しなかった。(実施例3、表6を参照。)
しかしながら、50mMトリエタノールアミン及び1.05重量%カゼイン塩基加水分解物がバッファー(pH=9.1)に添加された場合、10mM PBSのみにおける16.1%の相対的な蛍光減少と比較して、2.6%のみの相対的な蛍光減少が50時間後に見られた。0.32Mホウ酸バッファー(pH=8.3)において、QdotTM655−30Nナノクリスタルは、23.6%の蛍光減少を示した。50mM TEA(最終的なバッファーpH=8.8)の添加は14.1%の蛍光減少を引き起こし、1.05重量%カゼイン塩基加水分解物(バッファーpH=8.5)の添加は6.4%のみの減少を引き起こした。しかしながら、TEA及びカゼイン塩基加水分解物の0.32Mホウ酸バッファー(pH=9.0)への添加は、有意に安定性の増加を生じさせ、50時間後に0.3%のみの相対的な蛍光減少を伴った。実際、ナノクリスタルの量子収量の変化は、4ヵ月後でさえ最小限だった。凝集が最小化され、ナノクリスタル蛍光が保存されるように、組み合わされたバッファー成分の相乗効果がナノクリスタルに適合した環境をもたらす。
【0028】
G.適用
商業的に入手可能なバッファーのQdotTM−抗体コンジュゲートの蛍光は、時間とともに減少する。例えば、溶液Aに希釈され、蛍光インシチューハイブリダイゼイションアッセイで用いられるQdotTM−抗体コンジュゲート(QdotTMM565−30N−MsAntiHapten)は、4℃で1ヵ月間の保存後に蛍光強度の顕著な損失が示される。(実施例11Bを参照。)しかしながら、開示されたQSB組成物の実施態様に希釈されたQdotTM−抗体コンジュゲートは、3ヵ月間の保存後では蛍光の損失を示さず、4ヵ月の保存後に蛍光のわずかな損失を示した。したがって、QdotTM安定化組成物のいくつかの実施態様は、4°Cで少なくとも1ヵ月、少なくとも2ヵ月、少なくとも3ヵ月又は少なくとも4ヵ月間、QdotTM−抗体コンジュゲートの蛍光強度を安定化する。
開示されたQSB組成物の実施態様は、コンジュゲートが組織にハイブリダイズされた標識プローブを検出するために用いられる蛍光インシチューハイブリダイゼイション(FISH)及び/又はコンジュゲートが組織上のタンパク質抗原を検出するために用いられる蛍光免疫組織化学(IHC)への適用において用いられるQdotTM−抗体コンジュゲートを保存するために適している。いくつかの実施態様において、量子ドット−抗体コンジュゲートの濃度は、開示されたQSB組成物中に、0.5nMから150nM、1nMから125nM、5nMから100nM、25nMから75nM、1nM、5nM、10nM、25nM、50nM、75nM又は100nMの濃度で保存される。ある実施態様では、量子ドット−抗体コンジュゲートの濃度は、開示されたQSB組成物中に50nMの濃度で保存される。
【実施例】
【0029】
VI.実施例
実施例1 QdotTM安定性へのトリエタノールアミンの影響
QdotTM655−30Nナノクリスタル及びそれらの抗体バイオコンジュゲートの相対的な蛍光安定性は、室温で、様々なクロマトグラフィ溶出液条件の溶液中で試験された。親和性結合用バッファー(10mMPBS、150mMNaCl、10mMEDTA、pH=7.0)中のQdotTMナノクリスタルの50nM溶液の50μLのアリコートは、水性トリエタノールアミン(TEA、pH=10.5)溶液及び親和性結合用バッファーの混合物の150Lのアリコートに懸濁された。
QdotTM溶液の相対的な蛍光は、Thermo Varioskanスペクトルスキャニングマルチモードプレートリーダー(Thermo Fisher Scientific, Waltham, MAから入手可能)を用いて、時間の関数として、λex=400nm及び525nm、λem=655nmでモニターされた。50nMのQdotTM655−30Nナノクリスタル溶液中の4つの200μLの複製物は、低結合プレート(すなわち細胞付着性、タンパク質吸収、酵素活性化及び細胞活性化を最小化する表面を含んでいるプレート)においてモニターされた。割合が設定された時点で変化するように(表1)、蛍光は対時間でグラフ化され(図1−2)、報告された。表1の値は、18時間後の655nmでの蛍光損失の割合である。溶出バッファーは、pH10.5でTEA(表1において見いだされるように)の様々な濃度を含む。
【表1】

【0030】
親和性結合用バッファーへのトリエタノールアミンの添加は、QdotTM655 30Nナノクリスタルの蛍光安定性の増加を示し、時間に伴う蛍光のより少ない変化の割合を有した。親和性結合用バッファーへのトリエタノールアミンの割合の増加は、一般にこの観測蛍光安定性を増加させた。pH=10.5における様々なトリエタノールアミン濃度の初期試験は、50又は100mMのトリエタノールアミン溶液で最も大きな効果が達成されることを示し、50mMは非常に類似した、又はわずかに100mMより効果的であった。
さらなる実験は、様々な溶出バッファーpHにおいて、50mMのトリエタノールアミンで行われた(図3、表2)。表2の値は、655nmでの18時間後の時間に伴う蛍光損失の割合である。
【表2】

【0031】
親和性結合用バッファーのQdotTMナノ粒子溶液へのpH=10.5の50mM水性トリエタノールアミンの添加は、添加していない親和性結合用バッファー中のナノ粒子と比較して、QdotTM試料の観測蛍光のより減少が少なかった。トリエタノールアミン溶液のpHの初期試験は、pH=10.5で最も大きな利益が達成されることが示された。しかしながら、pH10.5は、長期間の抗体安定性に適していない。蛍光安定性の適度な増加がpH=8.5で見られた。この増加した蛍光安定性は、0.42Mホウ酸バッファー(pH=8.3)のQdotTM655−30Nナノクリスタルの50nM溶液へ添加された50mMトリエタノールアミンでも観察された。
【0032】
実施例2 QdotTM安定性へのアミンの影響
量子ドットは表面欠陥を含み得、それは発光に影響を及ぼす。いくつかのリガンドはこれらの表面欠陥を不動態化し、量子ドットの発光量子収量を増加させ得る。Bullen及びMulvaneyは、発光強度へのアミンの影響を調査し、「C2からC18にわたるアルキル鎖のルミネセンス強度へのアルキルアミンリガンド鎖長の明確な影響はない。より重要なのは、発光が明確にこの傾向に沿うことである:一級>>二級>三級アミン。」と結論付けた。(Langmuir, 2006, 22:3007-3013, at p. 3009。)
その影響は、少なくとも部分的には、リガンドの大きさが予測される最大の表面リガンド付着量に与える影響に因るものであった:「これは、リガンドの疎水性の増加が表面親和性を増加させるのに対して、それがより大きい吸着フットプリントを相殺しないことを示唆する。飽和時に、より多くの一次リガンドが吸着する。」(Bullen, p. 3012.)
様々な官能基を有する様々な1°、2°及び3°アミンは、pH=8.3において0.42Mホウ酸バッファーのQdotTM655−30Nナノクリスタル50nM溶液への他のアミン添加物として調査された。トリエタノールアミン、Nメチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリス(2(2メトキシエトキシ)エチル)アミン、N,N,N,N−シクロブタンジアミン、N,Nジメチルグリシン、3−ジメチルアミノプロピオニトリル、ビシン(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン)及びビス−トリス(ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ−トリス(ヒドロキシメチル)−メタン)は、評価された。それぞれのアミンは、50mMの最終濃度まで添加された。QdotTM655−30Nナノ粒子溶液の相対的な蛍光変化は、Thermofisher Varioskanスペクトルスキャニングマルチモードプレートリーダーを用いて測定された。結果は、図4及び表3に示される。表3のデータ値は、溶液のQdotTM蛍光の経時的な減少割合として表される。
【表3】

【0033】
Bullen及びMulvaneyによって得られた結果とは全く対照的に、蛍光強度の最も大きな安定性はトリエタノールアミン(三級アミン)で得られた。トリエタノールアミンと同様の蛍光安定性への影響は、他の2°及び3°アミン添加物で観察された。しかしながら、トリエタノールアミンは、開示された実施態様において最大の蛍光安定化をもたらした。N−エタノール置換基(主にN−メチルジエタノールアミン及びN,Nジメチルエタノールアミン)を含む他のN−アルキル化アミンは、同等の安定性をもたらした。
N−エタノール官能化されたアミノ酸(すなわち、ビシン又はN,N−Bis(2−ヒドロキシエチル)グリシン)がQdotTM溶液の蛍光安定性を増加させることが判明した。N,N−ジメチルグリシンにおけるビシンのN−エタノール置換基のメチル置換は、全体的に蛍光安定化を減少させたが、QdotTM溶液の蛍光を減少させなかった。
トリス(2−(2−メトキシエトキシ)エチル)アミンにおいて見いだされるように、2つのメトキシエトキシエーテルでのN−エタノール置換基における水酸基のキャッピングは、ホウ酸バッファーのみと同じ結果をもたらした。トリス(ヒドロキシメチル)メタン基でのNエタノール基の置換は、ビス−TRIS、ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ−トリス(ヒドロキシメチル)メタンにおいて見いだされるように、ホウ酸バッファーのみと比較して、全体的に蛍光安定性を増加させた。したがって、官能基「−OH」は蛍光安定性を促進するようである。
【0034】
実施例3 QdotTM安定性へのバッファー塩の影響
様々なバッファー組成物中の50nMQdotTM655−30Nナノクリスタルの蛍光安定性が評価された。バッファー組成物には、0.42Mホウ酸(pH8.3)、50mMトリエタノールアミン(TEA)(pH8.6)を含む0.42Mホウ酸、10×PBS(100mMリン酸塩、150mMNaCl、pH7.5)、50mMTEA(pH8.3)を含む10×PBS、ForteBio Kineticsバッファー添加物(10×PBS中)、Pierce Starting Block(pH7.5、Thermo Fisher Scientific, Rockford, ILから入手可能)、Pierce SEA BLOCK(pH7.5)及びPierce Super Block(pH7.5)が含まれた。結果は、図5及び表4に示される。蛍光データは、Thermofisher Varioskanスペクトルスキャニングマルチモードプレートリーダーを用いて得られた。19.0時間及び91.0時間でのデータ値は、QdotTM溶液の蛍光の減少割合として経時的に表される。0時間での値は、初期蛍光表示である。
【表4】

【0035】
ForteBio Kinetics Buffer添加物は、ブロッキングタンパク質として0.1mg/mLのBSA、界面活性剤として〜0.002重量%のTween(登録商標)20、及び抗菌剤として〜0.005重量%のアジ化ナトリウムを含む。溶液Aは1.5重量%のカゼイン塩基加水分解物及び0.08重量%のアジ化ナトリウムを含む水溶液であり、QdotTM−抗体コンジュゲートを用いた効率的なFISH染色のために必要とされることが前もって決められていた。これらの添加物の事前評価は、1.05重量%のカゼイン塩基加水分解物、50mMのトリエタノールアミン、0.005重量%のTween(登録商標)20及び0.008重量%のProClin(登録商標)300を含む3つのバッファー系(10mMPBS、10×PBS及び0.42Mホウ酸)の変形型を調製することによって、pHを調製することなく行われた。潜在的なタンパク質凝集を回避するために、カゼイン塩基加水分解物の重量%濃度は、溶液A中のカゼイン濃度と比較すると、まず最初に低下させた。界面活性剤の濃度を、臨界ミセル濃度(CMC)レベル(すなわちミセルが自発的に形成させる濃度)より高くするために増加させた。さらに、溶液A、SEA BLOCK及びMAXblockTM(pH7.4、0.09%アジ化ナトリウムを含むPBS中の非哺乳動物ブロッキング剤、Active Motif(登録商標)、Carlsbad, CAから入手可能)が評価された。
蛍光データは、Thermofisher Varioskanスペクトルスキャニングマルチモードプレートリーダーを用いて得られた。結果は、図6−8及び表5−6に示される。表5は、表6で用いられるバッファーの配合組成を提供する。表6のデータ値は、QdotTM溶液の蛍光の減少割合として経時的に表される。
【表5】

【表6】

【0036】
初期の結果は、QdotTM溶液の最も大きな蛍光安定性が50mMのトリエタノールアミン及び1.05重量%のカゼイン塩基加水分解物の添加により見られたことを示した。蛍光安定性は、0.32Mホウ酸バッファーにおいて最も明白であった。ProClin(登録商標)300及びTween(登録商標)20の添加は、蛍光安定性の観測された増加の価値を低下させるように見えた。
これらの知見がpHの変化に関連していなかったことを確認するために、QdotTM655−30Nナノ粒子の50nM溶液の蛍光は、0.005%Tween(登録商標)20及び0.008% ProClin(登録商標)300を含まない、1.05%カゼイン塩基加水分解物及び50mMトリエタノールアミンを含む3つのバッファー系(0.1×PBS−pH7.4、1×PBS−pH7.5及び0.32Mホウ酸塩−pH8.3)においてモニターされた。いずれの場合においても、pHは「親」バッファーのpHに調整された。データは、Thermofisher Varioskanスペクトルスキャニングマルチモードプレートリーダーを用いて得られた。結果は表7及び図9に示される。表7の値は、蛍光の経時的な減少割合である。負の値は、相対的な蛍光の増加を表す。
【0037】
【表7】

A=1.05%カゼイン塩基加水分解物及び50mM TEA
B=A+0.008%ProClin(登録商標)300及び0.005%Tween(登録商標)20
【0038】
最も大きなQdotTMフォトルミネセンス安定性は、0.32Mホウ酸バッファーへの50mMトリエタノールアミン及び1.05重量%カゼイン塩基加水分解物の添加により生じた。
QdotTM−抗体コンジュゲートへのこれらの希釈液の影響についてさらに試験された。添加物(1.05%カゼイン、50mMTEA、0.008%ProClin(登録商標)300及び0.005%Tween(登録商標)20)の様々な組合せを含む様々なバッファー(溶液A、10mMPBS及び0.32Mホウ酸)中のQdotTM655−30Nナノ粒子及びQdotTM655−30N−Ms MAbコンジュゲートの相対的な蛍光の変化が評価された。蛍光データは、Thermofisher Varioskanスペクトルスキャニングマルチモードプレートリーダーを用いて得られた。結果は、図10及び表8−9に示される。表8は、図10及び表9において評価されるバッファー製剤を提供する。表9のデータ値は、蛍光の経時的な減少割合として表される。
【表8】

【表9】

【0039】
これらの結果は、蛍光安定性がQdotTM−抗体コンジュゲートと同程度であることを示した。QdotTM655−30N−Ms MAbコンジュゲートの場合、1.05%カゼイン塩基加水分解物及び50mMトリエタノールアミン、0.005%Tween(登録商標)20及び0.008% ProClin(登録商標)300を含む0.32Mホウ酸バッファー(図10、表9)は、他のバッファーより大きな安定性をもたらし、QdotTM安定化バッファー(QSB)を開発するための基礎バッファーに選択された。
【0040】
実施例4 QdotTM安定性へのホウ酸バッファーpH及びモル濃度の影響
QdotTM565−30Nナノクリスタルの50nM溶液の蛍光安定性は、様々なホウ酸塩モル濃度を有するホウ酸バッファーを用いて探究された。pH=8.3を維持しながら、ホウ酸塩モル濃度を0.025Mから0.42Mまで変化させた。蛍光データは、Thermofisher Varioskanスペクトルスキャニングマルチモードプレートリーダーを用いて得られた。励起は400nmで行われ、結果を確認するために475nmで繰り返した。結果は、以下の表10及び図11に示される。表10の0時間での値は、初期の蛍光表示である。他の時点でのデータ値は、蛍光の経時的な減少割合として表される。
【表10】

【0041】
ホウ酸塩モル濃度は、経時的なQdotTM565−30Nナノクリスタル蛍光安定性に対してごくわずかな影響しか有しなかったようである。QdotTM蛍光の変化は急速であり、主に最初の3時間以内に発生した。より低い塩濃度は、タンパク質を安定化し、凝集を最小化するのに役立ち得る。50mMのホウ酸塩濃度は、他の変数を調べるために選択された。
次に、QdotTM565−30Nナノクリスタルの50nM溶液の蛍光安定性は、様々なpHで50mMホウ酸バッファー中でさらに探究された。ホウ酸バッファーのpHは、QdotTMフォトルミネセンスの安定性を最適化するために、pH=7.0から9.5の間で変化させた。ホウ酸塩濃度は、前の表10の結果に関連して、50mMに維持された。蛍光データは、Thermofisher Varioskanスペクトルスキャニングマルチモードプレートリーダーを用いて得られた。実験結果は、以下の表11及び図12に示される。表11の0時間での値は、初期の蛍光表示である。他の時点のデータ値は、蛍光の減少割合として表される。
【表11】

【0042】
バッファーのpHの低下と共に、蛍光安定性の減少が時間とともに観測された。pHが低下した場合、QdotTM蛍光は継続して減少したが、より許容できるpHではフォトルミネセンスは安定していた。最適pH安定性は、pH=8.0で観測された。QdotTM−抗体コンジュゲートの適切な範囲は、8から9までである。
【0043】
実施例5 QdotTM安定性へのタンパク質濃度及びタンパク源の影響
以前の安定性についての研究は、タンパク質の凝集が溶液のQdotTM−抗体コンジュゲートの減少の原因となることを示した。したがって、実験は、カゼインが蛍光安定性に対する影響を有する最も低い濃度を決定するために設計された。QdotTM565−30Nナノクリスタルの50nM溶液の蛍光安定性は、0.066重量%から1.05重量%まで変化させたカゼイン塩基加水分解物の濃度で、pH=8.3の50mMホウ酸バッファーを用いて探究された。蛍光データは、Thermofisher Varioskanスペクトルスキャニングマルチモードプレートリーダーを用いて得られた。結果は、以下の表12及び図13に示される。表12の0時間での値は、初期の蛍光表示である。他の時点のデータ値は、蛍光の経時的な減少割合として表される。
【表12】

A:50mMホウ酸バッファー;B:0.42Mホウ酸バッファー
【0044】
カゼイン塩基加水分解物の濃度を変化させることは、QdotTM565−30Nナノクリスタル蛍光安定性に対して影響した。少ないカゼインを含む組成物は、より大きな蛍光安定性をもたらした。
潜在的なカゼイン塩基加水分解物の置換成分として、pH=8.3の50mMホウ酸バッファー中のいくつかの他の1.05重量%タンパク源を試験した。タンパク源は、表13に記載されている。蛍光データは、Thermofisher Varioskanスペクトルスキャニングマルチモードプレートリーダーを用いて得られた。結果を表14及び図14に示す。表14のデータ値は、蛍光の経時的な減少割合として表される。
【表13】

【表14】

1.05重量%タンパク質濃度で、カゼイン塩基加水分解物の置換成分として最も高い潜在力を有するタンパク源は、植物性トリプトン、カゼイン酸加水分解物及び魚皮のゼラチンであった。
【0045】
実施例6 QdotTM安定性への界面活性剤の影響
タンパク質及びQdotTM−抗体コンジュゲートの潜在的な凝集に関する懸念により、凝集を阻止し、さらにQdotTMナノクリスタルを安定化するための界面活性剤の使用が調査された。QdotTM565−30Nナノクリスタルの50nM溶液の蛍光安定性は、様々な濃度のTween(登録商標)20を含むpH=8.3の50mMホウ酸バッファーを用いて探究された。Tween(登録商標)20は、0.0025重量%から0.20重量%まで変更された。蛍光データは、Thermofisher Varioskanスペクトルスキャニングマルチモードプレートリーダーを用いて得られた。結果は、以下の表15及び図15に示される。表15の0時間での値は、初期の蛍光表示である。他の時点のデータ値は、蛍光の経時的な減少割合として表される。
【表15】

【0046】
Tween(登録商標)20の濃度は、QdotTM565−30Nナノクリスタル蛍光安定性に対してある程度の影響を与えた。pH=8.3の50mMホウ酸バッファー溶液にどれだけの量のTween(登録商標)20を添加しても、ホウ酸バッファーのみと比較して、相対的な蛍光安定性を減少させた。濃度が0.05と0.005重量%との間で維持される場合、Tween(登録商標)20は最も許容できるようである。0.05重量%のTween(登録商標)20濃度は、0.005重量%よりも潜在的にQdotTM−抗体コンジュゲートにさらなる蛍光安定性をもたらし得る。界面活性剤はタンパク質を安定化し、それによりQdotTMの凝集を回避することが意図される。
Tween(登録商標)20がpH 8.3で50mMホウ酸バッファー中のQdotTM565−30Nナノクリスタルの蛍光安定性にネガティブな影響を与えるようなので、他の界面活性剤は潜在的な変形例として試験された。先の実験において、QdotTMナノクリスタルが非イオン性界面活性剤で最も安定しているということが見出された。種々の非イオン性界面活性剤は、pH8.3の50mMホウ酸バッファーに0.05重量%の濃度で調製された。界面活性剤は、表16に記載される。蛍光データは、Thermofisher Varioskanスペクトルスキャニングマルチモードプレートリーダーを用いて得られた。結果を表17及び図16に示す。表17の0時間での値は、初期の蛍光表示である。他の時点のデータ値は、蛍光の経時的な減少割合として表される。
【表16】

【表17】

Brij35(ポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル)(0.05重量%)は、Tween(登録商標)20より良い蛍光安定性をもたらし、50mMホウ酸バッファーよりもナノクリスタルを安定化した。Triton(登録商標)X−100(ポリエチレングリコールパラ−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェニルエーテル)は、Tween(登録商標)20と同等の蛍光への影響をもたらした。
【0047】
実施例7 QdotTM安定化バッファー(QSB)の初期製剤
図10(表8)に示されるQ655−抗体コンジュゲートの安定に用いられる活性成分を利用して、QSBの以下の初期製剤は、pH=8.3で0.42Mホウ酸バッファーを基に用いられた。100mLのバッファー配合組成は、下記に記載される:
75mLの0.42Mホウ酸バッファー、pH=8.3(最終的に〜0.32Mホウ酸塩)
25mLのカゼイン塩基加水分解物(42mg/mLカゼイン、最終的に〜1.05重量%カゼイン)
664μLのトリエタノールアミン(〜50mM)
8μLのProClin(登録商標)300(〜0.01重量%)
5μLのTween(登録商標)20(〜0.005重量%)
以下の実施例に記載されるように、後続の変形例が調製され、評価された。
【0048】
実施例8 QdotTM安定性への抗菌剤の影響
A.0.05%又は0.01%のProClin(登録商標)300を含むQSB中のQdotTM−30Nナノ粒子及びそれらのコンジュゲートの安定性。
最初に、0.01重量%のProClin(登録商標)300が選択されたが、それは十分な抗菌保護をもたらさなかった。研究により、0.05重量%が十分な保護をもたらすことが示された。その後、0.007%及び0.05%を含むQSB製剤は調製され、QdotTM蛍光へのProClin(登録商標)300濃度の影響が評価された。
3つのバッファーが調製された:
A:溶液A(1.5重量%カゼイン塩基加水分解物、0.08重量%アジ化ナトリウム)
B:0.007%ProClin(登録商標)300を含むQSB(「部分的なホウ酸」)
C:0.05%ProClin(登録商標)300を含むQBS(「完全なホウ酸」)
データは、Varioskanスペクトルスキャニングマルチモードプレートリーダーを用いて得られた。結果は、以下の表18−19及び図17−18に示される。表18及び19のデータ値は、蛍光の経時的な減少割合として表される。負の値は蛍光の増加を示す。
【表18】

【表19】

室温の溶液中のQdotTMナノ粒子及びそれらのコンジュゲートの蛍光シグナルの解析は、QBS中のProClin(登録商標)300レベルの0.01重量%から0.05重量%への増加は、全てのQdotTM材料の観測蛍光安定性の減少を引き起こした。両方のQSB組成物は、QdotTM565ナノクリスタルに対して、溶液Aより少ない観測蛍光変化をもたらした。しかしながら、QdotTM655ナノクリスタルについて、0.05重量%のProClin(登録商標)300を含むQSBは、溶液Aより大きな蛍光損失が生じさせた。QdotTM655−30N−Ms MAbコンジュゲートの場合、QBS中のProClin(登録商標)300の0.01重量%から0.05重量%への増加は、ごくわずかな蛍光安定性の減少を引き起こした。しかしながら、QdotTM565−30N−Ms MAbコンジュゲートについて、0.05重量% ProClin(登録商標)300を含むQSBは、溶液Aと同等だった。
【0049】
B.0.05% ProClin(登録商標)300又は0.08%アジ化ナトリウムを含むQSB中のQdotTM−30Nナノ粒子の安定性
ProClin(登録商標)300についての有効な文献のpH安定域は、pH=3.0から8.5である(例えばSigma-Aldrichによって提供される)。pH=8.5に近いかそれより高いpHにおいて、ProClin(登録商標)300の有効抗細菌性は減少する。0.05重量% ProClin(登録商標)300を含むQSB中のQdotTMナノクリスタルの観測蛍光安定性のさらなる減少は、置換成分としての0.08重量%アジ化ナトリウムの調査を促した。ProClin(登録商標)300を含むQdotTM565及びQdotTM655−30Nナノクリスタルの観測蛍光安定性に相違があったので、これらの試薬の影響は、さらなるQdotTMナノクリスタルについて室温で試験された。QdotTM30Nナノ粒子は、いずれの0.05重量% ProClin(登録商標)300又は0.08重量%アジ化ナトリウムを含むQSB中で評価された。蛍光データは、Varioskanスペクトルスキャニングマルチモードプレートリーダーを用いて得られた。データは、以下の表20A−B及び図19−22に示される。表20A−Bのデータ値は、蛍光の経時的な減少割合として表される。負の値は、蛍光の増加を示す。
【表20A】

【表20B】

QdotTMナノクリスタルの相対的なフォトルミネセンスのより少ない変化は、0.05重量% ProClin(登録商標)300を含むQSBよりも0.08重量%アジ化ナトリウムを含むQSBにおいて観測された。さらに、相対的な変化率は、それぞれのQdotTMナノクリスタルに対して変化した。観測蛍光における最大の損失は、QdotTM585−30Nナノクリスタルであった。QdotTM800−30Nナノクリスタルの相対的な蛍光の純増加があった。
【0050】
C.0.05%ProClin(登録商標)300又は0.08%アジ化ナトリウムを含むQSB中のQdotTM−30N−Ms MAbコンジュゲートの安定性
3つのQdotTM−30N−抗体コンジュゲートの相対的な蛍光は、溶液A又は0.08重量%アジ化ナトリウム又は0.05重量%ProClin(登録商標)300を含むQSBにおいて室温で試験された。観測蛍光に最も幅広い影響を与えるために、QdotTM800及びQdotTM585−30N−Ms MAbコンジュゲートがこの実験のために選択された。これらのコンジュゲートは、先のデータセットとのデータセットの整合性のために、QdotTM565−30N−Ms MAbコンジュゲートと比較された。励起は400nmで行われた。蛍光データは、Varioskanスペクトルスキャニングマルチモードプレートリーダーを用いて得られた。データは、以下の表21及び図23に示される。表21のデータ値は、蛍光の経時的な減少割合として表される。3つのコンジュゲートの蛍光の読取りは、それぞれ565nm、585nm及び800nmで行われた。負の値は、蛍光の増加を示す。
【表21】

同様の蛍光の変化は、表19のナノクリスタルのデータに関連してQdotTM−抗体コンジュゲートについて観測された。観測蛍光の最大の損失は、QdotTM585−30N−Ms MAb抗体コンジュゲートであった。QdotTM800−30N−Ms MAbコンジュゲートの蛍光の相対的な増加が観測された。それぞれのQdotTM−抗体コンジュゲートに対して、蛍光の減少が最少となるバッファーは異なった。さらに、いくつかのコンジュゲートについては、正味の材料の沈澱が観察された。QdotTM585及びQdotTM800のコンジュゲートの場合、混合することで試料の相対的な蛍光が増加した。明らかに、これらのコンジュゲートの凝集及び沈澱は、希釈条件下で溶液中に発生している。
【0051】
実施例9 分解されたQdotTM安定化バッファー中のQdotTM565−30N−30N−MsAntiNPコンジュゲートの安定性
0.08重量%アジ化ナトリウムを含むQSBの分解された型におけるQdotTM−抗体コンジュゲートの観測蛍光の相対的な変化を試験するための研究が行われた。いずれの場合においても、QBSバッファーはバッファーの一成分を取り除くことで調製され、実施例8Cの同一のQdotTM−30N−Ms MAbコンジュゲートについて試験した。蛍光データは、Varioskanスペクトルスキャニングマルチモードプレートリーダーを用いて得られた。結果は、以下の表22−23及び図24−26に示される。図24において、λex=400nm、λem=565nm;図25において、λex=400nm、λem=585nm;図26において、λex=400nm、λem=655nm。表22のデータ値は、蛍光の経時的な減少割合として表される。負の値は、蛍光の増加を示す。
【表22】

【表23】

【0052】
いずれの場合においても、バッファーは、コンジュゲートの全体的な蛍光の変化により、1(最良)から6(最低)までのランクを付けた。総計は、3つ全てのコンジュゲートの順位を合わせることによりつくられた。最終的な順位の概要は表23に示される。全てのQdotTM−30N−Ms MAbコンジュゲートについて、相対的な蛍光の変化の類似の傾向は、順位のわずかな変化を伴ってそれぞれのバッファーについて観察された。全体的に見て、最良のバッファーは、0.08重量%アジ化ナトリウムを含むQdotTM安定化バッファーであった。二、三のケースにおいて、前述のように、ある成分を欠失するQSBバッファーは、それぞれのQdotTMナノクリスタルの個々の安定特性により、完全なQSBより望ましい結果をもたらした。いずれの場合においても、完全なQSBは、二番目に良い結果をもたらした。QdotTM−抗体コンジュゲートの安定性に最も大きな影響を有するように見える主成分は、カゼイン塩基加水分解物である。表6において、いくつかのバッファーにおいて、QdotTM蛍光シグナル強度は、カゼイン塩基加水分解物の添加によって溶液中で安定化されることが証明された。これは、コントロールpH希釈液においてさらに示された。
いくつかの成分(トリエタノールアミン、カゼイン塩基加水分解物、Tween(登録商標)20及びアジ化ナトリウムを含む)は、少なくともいくつかのQdotTM及びQdotTMコンジュゲートの蛍光を増加させるように見えた。例えば、50mMトリエタノールアミンを含むQSB組成物は、トリエタノールアミンの欠如以外の同じ組成を有するQSB組成物と比較して、QdotTM800−30N−MS−Mabコンジュゲートの初期蛍光を6%増加させた。25時間後、トリエタノールアミンを含むQSB組成物中でのQdotTM800−30N−MS−Mabコンジュゲートの蛍光は、トリエタノールアミンのないQSB組成物中の蛍光より10%大きかった。
25時間の1.05重量%カゼイン塩基加水分解物を含むQSB組成物中で保存されたQdotTM565−30N−MS−Mabコンジュゲートは、カゼイン塩基加水分解物の欠如以外の同じ組成を有するQSB組成物中で保存されたQdotTM565−30N−MS−Mabコンジュゲートの蛍光より14%大きな蛍光を有した。同様に、カゼイン塩基加水分解物を含むQSB組成物中に25時間保存されたQdotTM800−30N−MS−Mabコンジュゲートは、カゼイン塩基加水分解物を含まないQSB組成物の蛍光より20%大きい蛍光を有し、QdotTM585−30N−MS−Mabコンジュゲートはカゼイン塩基加水分解物を含まないQSB組成物の蛍光より大27%大きい蛍光を有した。カゼイン塩基加水分解物の存在は、量子ドットの凝集を最小化し、溶液中での量子ドットの溶解性を維持することによって、蛍光を安定化する。
0.005重量%のTween(登録商標)20を含むQSB組成物中で保存されたQdotTM800−30N−MS−Mabコンジュゲートは、Tween(登録商標)20の欠如以外の同じ組成を有するQSB組成物中で保存されたQdotTM800−30N−MS−Mabコンジュゲートの蛍光より6%大きい初期蛍光を有した。0.005重量%のTween(登録商標)20を含むQSB組成物中に25時間保存されたQdotTM800−30N−MS−Mabコンジュゲートは、Tween(登録商標)20を含まないQSB組成物の蛍光より6%大きい蛍光を有した。0.005重量%のTween(登録商標)20を含むQSB組成物中に25時間保存されたQdotTM565−30N−MS−Mabコンジュゲートは、Tween(登録商標)20を含まないQSB組成物中に保存されたQdotTM565−30N−MS−Mabコンジュゲートの蛍光より6%大きい蛍光を有した。0.005重量%のTween(登録商標)20を含むQSB組成物中に25時間保存されたQdotTM585−30N−MS−Mabコンジュゲートは、Tween(登録商標)20を含まないQSB組成物中に保存されたQdotTM585−30N−MS−Mabコンジュゲートの蛍光より5%大きい蛍光を有した。
0.08重量%のアジ化ナトリウムを含むQSB組成物中に保存されたQdotTM800−30N−MS−Mabコンジュゲートは、アジ化ナトリウムを含まないQSB組成物の蛍光より6%大きい初期蛍光を有した。0.08重量%のアジ化ナトリウムを含むQSB組成物中に25時間保存されたQdotTM800−30N−MS−Mabコンジュゲートは、アジ化ナトリウムを含まないQSB組成物の蛍光より14%大きい蛍光を有した。0.08重量%のアジ化ナトリウムを含むQSB組成物中に25時間保存されたQdotTM565−30N−MS−Mabコンジュゲートは、アジ化ナトリウムの欠如以外同じ組成を有するQSB組成物中に保存されたQdotTM565−30N−MS−Mabコンジュゲートの蛍光より14%大きい蛍光を有した。
【0053】
実施例10 QdotTM安定化バッファーの最終的な調製
QSBの最終的な製剤は、0.08重量%アジ化ナトリウムを含むQSBの100mLのアリコートとして以下に示される。最終的なpHは、pH=8.3に調整された。
0.42Mホウ酸バッファー75mL、pH=8.3(最終的に〜0.32mMホウ酸塩)
カゼイン塩基加水分解物25mL(42mg/mLカゼインストック、最終的に〜1.05重量%)
トリエタノールアミン664μL(〜50mM)
アジ化ナトリウム80mg(〜0.08重量%)
Tween(登録商標)20 5μL(〜0.005重量%)
【0054】
実施例11 QdotTM−抗体コンジュゲート染色
A.QdotTM565−30N−MsAntiHaptenコンジュゲートでの染色を評価するためのパラメータ
QdotTM565−30N−SMCC−MsAntiHaptenコンジュゲートの機能的性能は、QdotTM安定化バッファー(QSB)又は溶液Aに希釈されたFISHアッセイにおいて評価された。FISHアッセイは、Benchmark XT Instrument上で完全に自動化された方法で行われた。
試験試料:4μm厚(FFPET(ホルマリン固定パラフィンで包埋された組織))、前立腺癌と相関するゲノムトランスロケーションを示すことが決定された異種移植片切片が用いられた。前立腺癌細胞株は、前立腺癌の脊椎骨への転移のケースに由来した。細胞は、多染色体性、3’−ERG−5’−ERGの分断及び3’−ERG増幅を示す。
FISHアッセイ:ハイブリダイゼーションは52℃で8時間行われ、ストリンジェントな洗浄は2×SSCにおいて72℃で行われた(3×8分)。
プローブ:反複枯渇5’−ERG−Haptenプローブは、40μg/mlの濃度で用いられた。
検出:QdotTM565−30N−MSAntiHaptenコンジュゲート溶液は、QSB(実施例10の製剤)又は溶液Aのいずれかで50nMの濃度に希釈された。調製後、希釈されたコンジュゲート溶液は、4℃で保存された。試料は、BenchMark XT Instrument上で自動化FISHアッセイで毎月試験された。40×倍率の複合スペクトル像が得られた。
【0055】
B.QdotTM安定化バッファー(QSB)中のQdotTM565−30N−MsAntiHaptenコンジュゲートの染色結果
QdotTM565−30N−MsAntiHaptenコンジュゲートは、観測された6ヵ月を通して、QSB中でより鮮明なFISHシグナルを産生した。FISH組織染色の表現は、図27−33に見いだされる。図27−33は、40×倍率での複合スペクトル像(CSI)である。図34は、標準的なFISH像である。(FISH像は狭帯域ミクロンフィルターによって得られる連続した像である。CSI像は、規則的な抽出間隔での完全な可視スペクトルの獲得から成るスペクトル像である。)
QSB及び溶液Aの結果は、0日(図27−28)、1ヵ月(図29−30)及び3ヵ月(図31−32)で評価された。図33−34は、6ヵ月でのQSBの結果を図示する。1ヵ月の時点で、FISHシグナル強度は、溶液A中のコンジュゲートで顕著に減少し始めた。QSBは、3ヵ月の時点を超えて本来のシグナル強度を維持した。シグナル強度の穏やかな減少は、6ヵ月目に検出された。
染色は、病理学的スコア基準を用いて評価された。陽性シグナルは、細胞の核において、鮮明な環状の点(直径〜0.1μm−0.5μm)として見られる。点は、暗視野に現れ、単一、二重又は複数の構成で発生する。表24で概説されるように、暗視野における明るさの強度は0−3のスケールで記録された。結果の概要は、表25に提供される。
【表24】

【表25】

病理学的スコアは0−3のスケールであり、3は最も大きなシグナル強度を表していてる。
【0056】
先に示された染色結果に加えて、十分な染色の提供に失敗した全ての試料は、それらの蛍光、抗体運動活性及び凝集の潜在的な変化について解析された。失敗したそれぞれのケースにおいて、どのバッファーにおける相対的な蛍光又は蛍光発光の波長における有意な変化は観測されなかった。さらに、BioLayer Interferometry(BLI)による試料の解析は、ハプテンプローブ標識の抗体結合活性の有意な損失を示さなかった。
2つのコンジュゲートは、ストレス条件下で溶液Aにおいて評価された。ストレス条件のコンジュゲートのアリコートは、分配され、スライド上でカバーグラスにより覆われた。試料は、37℃で10日間ストレスを加えられ、4℃で保存された。試料中でコンジュゲートの別々の凝集体が形成され、染色が減少したことが分かった。凝集は、溶液中の試薬の量を限定し、細胞に入るには大き過ぎるコンジュゲートを製作することによって、染色を阻害しやすい。対照的に、QSBバッファー中のQdotTMコンジュゲートが同じ条件下で評価された場合、コンジュゲートの凝集はより少なかった。
【0057】
以下の特許及び出願は、本出願の開示の一部であると考慮され、出典明示により本願明細書に援用されたものとする:米国特許出願第11/800,360号(米国公開第2008/0274463号)(2007年5月4日出願)、米国特許出願第11/849,060号(米国公開第2008/0057513号)(2007年8月31日出願)、米国特許出願第11/982,627号(米国公開第2008/0268562号)(2007年11月1日出願)、米国特許出願第11/999,914号(米国公開第2008/0212866号)(2007年12月6日出願)、米国特許出願第12/154,472号(米国公開第2008/0305497号)(2008年5月22日出願)、PCT出願第PCT/US2009/045841号(国際公開公報第2009/149013号)(2009年6月1日出願)、PCT出願第PCT/US2009/054614号(2009年8月21日出願)及び米国仮出願第61/288,226号(2009年12月18日出願)。
【0058】
蛍光粒子を安定化するための組成物の実施態様は、(a)アミノ酸又はアルキル置換アルキルアミン以外の置換アミン、又は(b)アミン及びタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物を含み、少なくとも1つのアミン又はタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物は、(a)アミノ酸又はアルキル置換アルキルアミン以外の置換アミン又は(b)アミン及びタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物を欠く組成物中で保存される蛍光粒子の蛍光強度と比較して、組成物中に保存される蛍光粒子の蛍光強度を安定化及び/又は増加させるのに有効な濃度で存在する。いくつかの実施態様において、組成物はホウ酸バッファーを更に含み、組成物は7以上のpHを有する。上記の何れか又は全ての実施態様において、組成物は防腐剤及び界面活性剤を更に含んでもよい。
上記の何れか又は全ての実施態様において、組成物は、0.02Mから0.5Mのホウ酸塩、0.05重量%から1.5重量%のタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物、25mMから200mMのアミン、0.05重量%から0.2重量%の防腐剤及び0.005重量%から0.05重量%の界面活性剤を含んでもよい。
上記の何れか又は全ての実施態様において、アミンは化学式RNH(3−n)を有する置換アミンであってもよい(ここでn=1、2又は3であり、それぞれのRは独立して脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基であり、少なくとも一つのRは置換されている)。いくつかの実施態様において、少なくとも一つのRは、一つ以上の−OH、−OR、−CO、−CN基又はその組合せで置換されている(R1は置換又は非置換の脂肪族基又はアリール基である)。
上記の何れか又は全ての実施態様において、アミンはアルカノールアミンであってもよい。上記の何れか又は全ての実施態様において、アミンは、N−エタノール置換アミン(例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン又はその組合せ)であってもよい。上記の何れか又は全ての実施態様において、アミンは、50mMから100mMの濃度のN−エタノール置換アミンであってもよい。
上記の何れか又は全ての実施態様において、アミンは、置換された三級アルキルアミンであってもよい。
【0059】
上記の何れか又は全ての実施態様において、タンパク質及び/又はタンパク質加水分解物は、植物性トリプトン、サーモンペプトン、カゼイン加水分解物、チキンアルブミン加水分解物、魚皮のゼラチン又はその組合せであってもよい。上記の何れか又は全ての実施態様において、防腐剤は、a)アジ化ナトリウム、b)9.5−9.9%の2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを含む防腐剤組成物、c)2.3%の5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、0.7%の2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−3%のアルキルカルボキシレート及び93−95%の修飾グリコールを含む防腐剤組成物、又はd)その組合せであってもよい。
上記の何れか又は全ての実施態様において、界面活性剤は非イオン性界面活性剤であってもよい。いくつかの実施態様において、界面活性剤は、アルキレングリコール又は含酸素アルキレングリコール(例えばポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート、ポリエチレングリコールパラ−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェニルエーテル)又はポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル)であってもよい。
上記の何れか又は全ての実施態様において、組成物は7〜9又は8〜9のpHを有してもよい。
上記の何れか又は全ての実施態様において、組成物は蛍光粒子を更に含んでもよく、蛍光粒子の蛍光強度は、(a)アミノ酸又はアルキル置換アルキルアミン以外の置換アミン、又は(b)アミン及びタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物を欠く組成物中の蛍光粒子の蛍光強度と比較して増加している。いくつかの実施態様において、蛍光粒子を組成物と混合した後の蛍光強度は、(a)アミノ酸又はアルキル置換アルキルアミン以外の置換アミン、又は(b)アミン及びタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物を欠く組成物中の蛍光粒子の蛍光強度と比較して、少なくとも5%増加している。
いくつかの実施態様において、蛍光粒子は量子ドット又は量子ドットコンジュゲートであり、組成物は0.32Mホウ酸塩、1.05重量%カゼイン加水分解物、50mMトリエタノールアミン、0.08重量%アジ化ナトリウム及び0.005重量%ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレートを含み、組成物は8〜8.5のpHを有する。
蛍光粒子を安定化するための方法の実施態様は、少なくとも一つの蛍光粒子を含む蛍光粒子溶液を提供すること、希釈された蛍光粒子溶液を提供するために組成物の蛍光粒子溶液を希釈することを含み、組成物は(a)アミノ酸又はアルキル置換アルキルアミン以外の置換アミン、又は(b)アミン及びタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物を含み、少なくとも1つのアミン及びタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物は蛍光粒子の蛍光を安定化及び/又は増加させるのに有効な濃度で存在する。
【0060】
いくつかの実施態様において、組成物に蛍光粒子溶液を希釈することは、(a)アミノ酸又はアルキル置換アルキルアミン以外の置換アミン、又は(b)アミン及びタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物を欠く組成物に蛍光粒子溶液を希釈することによって形成される希釈された蛍光粒子溶液の蛍光強度と比較して、希釈された蛍光粒子溶液の蛍光強度を増加させる。特定の実施態様において、希釈された蛍光粒子溶液(組成物に蛍光粒子溶液を希釈した後)の蛍光強度は、(a)アミノ酸又はアルキル置換アルキルアミン以外の置換アミン、又は(b)アミン及びタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物を欠く組成物に蛍光粒子溶液を希釈することによって形成される希釈された蛍光粒子溶液の蛍光強度と比較して、少なくとも5%増加する。
上記の何れか又は全ての実施態様において、組成物はホウ酸バッファー、防腐剤及び界面活性剤を更に含んでもよく、組成物は7以上のpHを有してもよい。上記の何れか又は全ての実施態様において、組成物は、0.05Mから0.5Mのホウ酸塩、0.05重量%から1.1重量%のタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物、50mMから100mMのアミン、0.05重量%から0.2重量%の防腐剤及び0.005重量%から0.05重量%の非イオン性界面活性剤を含んでもよい。上記の何れか又は全ての実施態様において、アミンは、N−エタノール置換アミンであってもよい。
上記の何れか又は全ての実施態様において、方法は、希釈された蛍光粒子溶液を4℃で保存することを更に含む。いくつかの実施態様において、希釈された蛍光粒子溶液の蛍光強度は、4℃で1ヵ月の保存後、実質的に同じままである。特定の実施態様において、希釈された蛍光粒子溶液の蛍光強度は、4℃で3ヵ月の保存後、実質的に同じままである。
上記の何れか又は全ての実施態様において、蛍光粒子溶液は少なくとも一つの量子ドットコンジュゲートを含む量子ドットコンジュゲート溶液であってもよく、量子ドットコンジュゲート溶液は希釈された量子ドットコンジュゲート溶液を提供するために0.5nMから150nMの濃度に希釈される。
いくつかの実施態様において、希釈された量子ドットコンジュゲート溶液は、標的にハイブリダイズされたプローブを検出するために用いられる。ある実施態様において、量子ドットコンジュゲートは量子ドット−抗体コンジュゲートであり、方法はハイブリダイズされたプローブを提供するために標的にプローブをハイブリダイズさせること;希釈された量子ドット−抗体コンジュゲート溶液を提供すること(ここで、量子ドット−抗体コンジュゲート溶液は、5nMから100nMの量子ドット−抗体コンジュゲート、0.05Mから0.5Mのホウ酸塩、0.05重量%から1.1重量%のタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物、50mMから100mMのN−エタノール置換アミン、0.05重量%から0.1重量%のアジ化ナトリウム及び0.005重量%から0.05重量%の非イオン性界面活性剤を含み、8−9のpHを有し、量子ドット−抗体コンジュゲートはプローブに結合可能である);ハイブリダイズされたプローブと希釈された量子ドット−抗体コンジュゲート溶液を組み合わせること;及び量子ドット−抗体コンジュゲートの蛍光を検出することをさらに含む。
【0061】
いくつかの実施態様において、希釈された量子ドットコンジュゲート溶液は、組織試料上のタンパク質抗原を検出するために用いられる。ある実施態様において、量子ドットコンジュゲートは量子ドット−抗体コンジュゲートであり、方法は希釈された量子ドット−抗体コンジュゲート溶液を提供すること(ここで、量子ドット−抗体コンジュゲート溶液は、5nMから100nMの量子ドット−抗体コンジュゲート、0.05Mから0.5Mのホウ酸塩、0.05重量%から1.1重量%のタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物、50mMから100mMのN−エタノール置換アミン、0.05重量%から0.1重量%のアジ化ナトリウム及び0.005重量%から0.05重量%の非イオン性界面活性剤を含み、8−9のpHを有し、量子ドット−抗体コンジュゲートはタンパク質抗原に結合可能である);組織試料と希釈された量子ドット−抗体コンジュゲート溶液を組み合わせること;及び量子ドット−抗体コンジュゲートの蛍光を検出することをさらに含む。
いくつかの実施態様において、希釈された量子ドット−抗体コンジュゲート溶液は、8から8.5のpHを有し、5nMから100nMの量子ドット−抗体コンジュゲート、0.32Mのホウ酸塩、1.0重量%のカゼイン加水分解物、50mMのトリエタノールアミン、0.08重量%のアジ化ナトリウム及び0.005重量%のポリエチレングリコールソルビタンモノラウレートを含む。いくつかの実施態様において、希釈された量子ドット−抗体コンジュゲート溶液は、使用前に4℃で保存される。いくつかの実施態様において、希釈された量子ドット−抗体コンジュゲート溶液の蛍光強度は、4℃で1ヵ月の保存後、実質的に同じままである。いくつかの実施態様において、希釈された量子ドット−抗体コンジュゲート溶液の蛍光強度は、4℃で3ヵ月の保存後、実質的に同じままである。
開示された発明の原理が適用される多くの考えられる実施態様を考慮すると、例示の実施態様は発明の好ましい例にすぎず、発明の範囲を限定するように受け取られるべきでないことは認識されるべきである。それよりも、発明の範囲は、以下の請求項によって定義される。我々は、したがって、これらの請求項の範囲および趣旨の範囲内の全てが本発明であると主張する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光粒子を安定化させるための組成物であって、(a)アミノ酸又はアルキル置換アルキルアミン以外の置換アミン、又は(b)アミン及びタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物を含み、少なくとも1つのアミン又はタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物は、(a)アミノ酸又はアルキル置換アルキルアミン以外の置換アミン、又は(b)アミン及びタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物を欠く組成物中で保存された蛍光粒子の蛍光強度と比較して、組成物中で保存された蛍光粒子の蛍光強度を安定化及び/又は増加させるのに有効な濃度で存在する、組成物。
【請求項2】
さらにホウ酸バッファーを含み、7以上のpHを有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
防腐剤;及び
界面活性剤
をさらに含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
0.02Mから0.5Mのホウ酸塩;
0.05重量%から1.5重量%のタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物;
25mMから200mMのアミン;
0.05重量%から0.2重量%の防腐剤;及び
0.005重量%から0.05重量%の界面活性剤
を含む、請求項1ないし3の何れか一項に記載の組成物。
【請求項5】
アミンが化学式RNH()(ここで、n=1、2又は3であり、それぞれのRは独立して脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基であり、少なくとも1つのRは置換されている)を有するアミンである、請求項1ないし4の何れか一項に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1つのRが一又は複数の−OH、−OR、−CO、−CN基又はその組み合わせで置換されており、R1は置換又は非置換の脂肪族基又はアリール基である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
アミンがアルカノールアミンを含む、請求項1ないし6の何れか一項に記載の組成物。
【請求項8】
アミンがN−エタノール置換アミンを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
N−エタノール置換アミンが50mMから100mMまでの濃度を有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
アミンがエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン又はその組み合わせである、請求項7ないし9の何れか一項に記載の組成物。
【請求項11】
アミンが置換された三級アルキルアミンである、請求項1ないし10の何れか一項に記載の組成物。
【請求項12】
タンパク質及び/又はタンパク質加水分解物が植物性トリプトン、サーモンペプトン、チキンアルブミン加水分解物、カゼイン加水分解物、魚皮のゼラチン又はその組合せである、請求項1ないし11の何れか一項に記載の組成物。
【請求項13】
防腐剤がアジ化ナトリウム、9.5−9.9%の2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを含む防腐剤組成物、2.3%の5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、0.7%の2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−3%アルキルカルボキシレート、93−95%の修飾グリコールを含む防腐剤組成物、又はその組合せである、請求項3ないし12の何れか一項に記載の組成物。
【請求項14】
界面活性剤が非イオン性界面活性剤である、請求項3ないし13の何れか一項に記載の組成物。
【請求項15】
界面活性剤がアルキレングリコール又は含酸素アルキレングリコールである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
界面活性剤がポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート、ポリエチレングリコールパラ−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェニルエーテル)又はポリオキシエチレングリコールドデシルエーテルである、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
組成物が7から9のpHを有する、請求項1ないし16の何れか一項に記載の組成物。
【請求項18】
組成物が8から9のpHを有する、請求項1ないし16の何れか一項に記載の組成物。
【請求項19】
(a)アミノ酸又はアルキル置換アルキルアミン以外の置換アミン、又は(b)アミン及びタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物を欠く組成物中の蛍光粒子の蛍光強度と比較して、蛍光粒子の蛍光強度が増加された、蛍光粒子をさらに含む、請求項1ないし18の何れか一項に記載の組成物。
【請求項20】
(a)アミノ酸又はアルキル置換アルキルアミン以外の置換アミン、又は(b)アミン及びタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物を欠く組成物中の蛍光粒子の蛍光強度と比較して、蛍光粒子を組成物と混合した後の蛍光強度が、少なくとも5%増加された、蛍光粒子をさらに含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
量子ドット蛍光粒子又は量子ドットコンジュゲート蛍光粒子;
0.32Mのホウ酸塩;
1.05重量%のカゼイン加水分解物;
50mMのトリエタノールアミン;
0.08重量%のアジ化ナトリウム
0.005重量%のポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート
を含み、8から8.5のpHを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
蛍光粒子を安定化する方法であって、
少なくとも一つの蛍光粒子を含む蛍光粒子溶液を提供すること;及び
希釈された蛍光粒子溶液を提供するために組成物に蛍光粒子溶液を希釈すること
を含み、組成物は(a)アミノ酸又はアルキル置換アルキルアミン以外の置換アミン、又は(b)アミン及びタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物を含み、少なくとも1つのアミン及びタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物は蛍光粒子の蛍光を安定化及び/又は増加させるのに有効な濃度で存在する、方法。
【請求項23】
組成物に蛍光粒子溶液を希釈することが、(a)アミノ酸又はアルキル置換アルキルアミン以外の置換アミン、又は(b)アミン及びタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物を欠く組成物に蛍光粒子溶液を希釈することによって形成される希釈された蛍光粒子溶液の蛍光強度と比較して、希釈された蛍光粒子溶液の蛍光強度を増加させる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
蛍光粒子溶液を組成物に希釈した後の希釈された蛍光粒子溶液の蛍光強度が、(a)アミノ酸又はアルキル置換アルキルアミン以外の置換アミン、又は(b)アミン及びタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物を欠く組成物に蛍光粒子溶液を希釈することによって形成される希釈された蛍光粒子溶液の蛍光強度と比較して、少なくとも5%増加する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
組成物がホウ酸バッファー、防腐剤及び界面活性剤をさらに含み、7以上のpHを有する、請求項22ないし24の何れか一項に記載の方法。
【請求項26】
組成物が0.05Mから0.5Mのホウ酸塩、0.05重量%から1.1重量%のタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物、50mMから100mMのアミン、0.05重量%から0.2重量%の防腐剤及び0.005重量%から0.05重量%の非イオン性界面活性剤を含む、請求項22ないし25の何れか一項に記載の方法。
【請求項27】
アミンがN−エタノール置換アミンである、請求項22ないし26の何れか一項に記載の方法。
【請求項28】
希釈された蛍光粒子溶液を4℃で保存することをさらに含む、請求項22ないし27の何れか一項に記載の方法。
【請求項29】
希釈された蛍光粒子溶液の蛍光強度が、4℃で1ヵ月の保存後、実質的に同じままである請求項28に記載の方法。
【請求項30】
希釈された蛍光粒子溶液の蛍光強度が、4℃で3ヵ月の保存後、実質的に同じままである請求項28に記載の方法。
【請求項31】
蛍光粒子溶液が少なくとも一つの量子ドットコンジュゲートを含む量子ドットコンジュゲート溶液であり、量子ドットコンジュゲート溶液は希釈された量子ドットコンジュゲート溶液を提供するために0.5nMから150nMの濃度に希釈される、請求項22ないし30の何れか一項に記載の方法。
【請求項32】
希釈された量子ドットコンジュゲート溶液を、標的にハイブリダイズされたプローブを検出するために用いることをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
量子ドットコンジュゲートが量子ドット−抗体コンジュゲートであり、方法が
ハイブリダイズされたプローブを提供するために標的にプローブをハイブリダイズさせること;
5nMから100nMの量子ドット−抗体コンジュゲート、0.05Mから0.5Mのホウ酸塩、0.05重量%から1.1重量%のタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物、50mMから100mMのN−エタノール置換アミン、0.05重量%から0.1重量%のアジ化ナトリウム及び0.005重量%から0.05重量%の非イオン性界面活性剤を含み、8−9のpHを有し、量子ドット−抗体コンジュゲートがプローブに結合可能である、希釈された量子ドット−抗体コンジュゲート溶液を提供すること;
ハイブリダイズされたプローブと希釈された量子ドット−抗体コンジュゲート溶液を組み合わせること;及び
量子ドット−抗体コンジュゲートの蛍光を検出すること
をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
組織試料上のタンパク質抗原を検出するために希釈された量子ドットコンジュゲート溶液を用いることをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
量子ドットコンジュゲートが量子ドット−抗体コンジュゲートであり、方法が
5nMから100nMの量子ドット−抗体コンジュゲート、0.05Mから0.5Mのホウ酸塩、0.05重量%から1.1重量%のタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物、50mMから100mMのN−エタノール置換アミン、0.05重量%から0.1重量%のアジ化ナトリウム及び0.005重量%から0.05重量%の非イオン性界面活性剤を含み、8−9のpHを有し、量子ドット−抗体コンジュゲートはタンパク質抗原に結合可能である、希釈された量子ドット−抗体コンジュゲート溶液を提供すること;
組織試料と希釈された量子ドット−抗体コンジュゲート溶液を組み合わせること;及び
量子ドット−抗体コンジュゲートの蛍光を検出すること
をさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
希釈された量子ドット−抗体コンジュゲート溶液が8から8.5のpHを有し、5nMから100nMの量子ドット−抗体コンジュゲート、0.32Mのホウ酸塩、1.0重量%のカゼイン加水分解物、50mMのトリエタノールアミン、0.08重量%のアジ化ナトリウム及び0.005重量%のポリエチレングリコールソルビタンモノラウレートを含む、請求項33又は35に記載の方法。
【請求項37】
希釈された量子ドット−抗体コンジュゲート溶液が使用前に4℃で保存される、請求項33、35又は36に記載の方法。
【請求項38】
希釈された量子ドット−抗体コンジュゲート溶液の蛍光強度が、4℃で1ヵ月の保存後、実質的に同じままである請求項37に記載の方法。
【請求項39】
希釈された量子ドット−抗体コンジュゲート溶液の蛍光強度が、4℃で3ヵ月の保存後、実質的に同じままである請求項37に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公表番号】特表2013−503951(P2013−503951A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528133(P2012−528133)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【国際出願番号】PCT/US2011/023383
【国際公開番号】WO2011/097248
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(511286517)ヴェンタナ メディカル システムズ, インク. (6)
【Fターム(参考)】