説明

蛍光色素

【課題】簡便に合成することができ、かつ分子構造が比較的安定な、新規蛍光化合物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】チアゾロ[4,5-b]ピラジン構造を有する化合物に注目し、その蛍光性について研究し、本発明に想到するに至った。一般式1の構造を有する化合物


(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロアリール基を表す)。また、一般式1の構造を有する化合物を含有する蛍光色素。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光を有する化合物に関する。より具体的には、本発明は、チアゾロ[4,5-b]ピラジン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光色素は、種々の分野においてその応用が拡大している。たとえば、材料科学における有機ELの発光材料、医療現場の検査試薬および生命科学における分子イメージング試薬などへの応用が進んでいる。
【0003】
この中で、新しい蛍光色素骨格として環状フッ素化合物が注目されている。このような環状フッ素化合物には、たとえば、2つのピロール環をホウ素で環状に結んだ化合物「BODIPY」が1968年に初めて合成された。この化合物は、近年の蛍光色素需要の増大と共に、1990年以降その研究は飛躍的に増加している。そして、近年では、毎年200報以上の学術論文が報告されている。
【0004】
このように、蛍光色素の需要は高い。このため、新規蛍光色素の開発が世界中で進められている。このような状況において、新たな蛍光色素の開発が望まれている。蛍光を有する化合物に関して、簡便に合成することができる化合物および分子構造が安定である化合物については、その化合物の発展性が期待されており、このような性質を持つ新たな蛍光色素の開発が望まれている。
【0005】
一方、チアゾロ[4,5-b]ピラジン構造を有する化合物は、既知の化合物であり、その合成法も既知である。従来、これらの化合物は、製薬の目的で合成されてきた。
【0006】
また、チアゾロ[4,5-b]ピラジン構造を有する化合物の合成例も報告されている。たとえば、非特許文献1では、アミノピラジンチオールとエステル類との組み合わせから、チアゾロ[4,5-b]ピラジン構造を有する化合物を合成することが記載されている。しかし、非特許文献1では、この化合物が抗生物質の増強剤として作用することを記載しているものの、この化合物が蛍光性を有することは記載されていない。
【0007】
その他にも、特許文献1および特許文献2などにおいて、チアゾロ[4,5-b]ピラジン構造を有する化合物の合成例が報告されているが、いずれもこの化合物が医薬品として有用であることが記載されているものの、この化合物が蛍光性を有することは記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開公報第2009/155156号パンフレット
【特許文献2】国際公開公報第2010/013078号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Barlin, G. B., Aust. J. Chem., vol.36(5), 983-992 (1983)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の状況に鑑み、本発明は、従来の蛍光性を有する化合物とは異なる、新規蛍光化合物を提供することを目的とする。より詳細には、本発明は、簡便に合成することができ、かつ分子構造が比較的安定な、新規蛍光化合物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、チアゾロ[4,5-b]ピラジン構造を有する化合物に注目し、その蛍光性について研究し、本発明に想到するに至った。
【0012】
本発明は、一般式1の構造を有する化合物:
【0013】
【化1】

(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロアリール基を表す)
を提供する。
【0014】
また、本発明は、一般式2の構造を有する化合物:
【化2】

(式中、R1は、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロアリール基を表し、Xは、リンカー基を表す)
を提供する。
【0015】
また、本発明は、一般式3の構造を有する化合物:
【0016】
【化3】

(式中、R1は、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロアリール基を表し、Xは、リンカー基を表し、nは、任意の整数を表す)
を提供する。
【0017】
また、本発明は、R1がHまたはアニリノであり、かつR2がフェニルである、上記化合物を提供する。
【0018】
また、本発明は、一般式1の構造を有する化合物:
【0019】
【化4】

(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロアリール基を表す)
を含有する蛍光色素を提供する。
【0020】
また、本発明は、一般式2の構造を有する化合物:
【0021】
【化5】

(式中、R1は、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロアリール基を表し、Xは、リンカー基を表す)
を含有する蛍光色素を提供する。
【0022】
また、本発明は、一般式3の構造を有する化合物:
【0023】
【化6】

(式中、R1は、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロアリール基を表し、Xは、リンカー基を表し、nは、任意の整数を表す)
を含有する蛍光色素を提供する。
【0024】
また、本発明は、R1がHまたはアニリノであり、かつR2がフェニルである、上記蛍光色素を提供する。
【0025】
また、本発明は、以下の構造を有する化合物:
【化7】

を提供する。
【0026】
また、本発明は、以下の構造を有する化合物:
【化8】

(式中、R1は、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロアリール基を表す)
を提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、簡便に合成することができ、かつ分子構造が安定な、新規蛍光化合物および蛍光色素を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1の化合物の蛍光スペクトルを示す図である。
【図2】実施例2の化合物の蛍光スペクトルを示す図である。
【図3】実施例3の化合物の蛍光スペクトルを示す図である。
【図4】実施例4の化合物の3つの溶媒中での蛍光スペクトルを示す図である。
【図5】実施例5の化合物の3つの溶媒中での蛍光スペクトルを示す図である。
【図6】実施例6の化合物の3つの溶媒中での蛍光スペクトルを示す図である。
【図7】実施例7の化合物の3つの溶媒中での蛍光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明のチアゾロ[4,5-b]ピラジン誘導体は、一般式1
【0030】
【化9】

の構造を有する。一般式1において、R1およびR2は、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロアリール基を表す。
【0031】
本明細書において、アルケニル基は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合をもつ直鎖または分枝の炭素鎖を意味する。アルケニル基の例には、たとえばビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基等が挙げられる。アルケニル基の置換基としては、たとえば、ハロゲン基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基およびシアノ基を含む。また、アルキニル基は、たとえば炭素数が2〜12個、特に、炭素数が2〜6個であってもよい。
【0032】
本明細書において、アルキニル基は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合をもつ直鎖または分枝の炭素鎖を意味する。アルキニル基の例には、たとえばエチニル基、プロピニル基等が挙げられる。アルキニル基の置換基としては、たとえば、アリール基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基およびシアノ基を含む。また、アルキニル基は、炭素数が2〜12個、特に、炭素数が2〜6個であってもよい。
【0033】
本明細書において、アリール基は、芳香族炭化水素から誘導された一価の基を意味する。アリール基の例には、フェニル基、ベンジル基、トリル基、o-キシリル基、ナフチルおよびビフェニル基などを含む。アリール基の置換基としては、たとえば、フルオロ基、クロロ基、ブロモ等のハロゲン基; 炭素数が1〜8の直鎖または分枝のアルキル基; 炭素数が1〜4のフルオロアルキル基; 炭素数が1〜8の直鎖または分枝のアルコキシ基等を含む。
【0034】
本明細書において、ヘテロアリール基は、芳香族複素環系における環原子として1〜4つのヘテロ原子を有し、残りの原子が炭素原子であるアリール環を意味する。適切なヘテロ原子には、たとえば酸素、硫黄および窒素を含む。ヘテロアリール基の例には、たとえばチエニル基、ピロール基、フリル基、ピラニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピリジル基、キノリル基、ピリミジル基、トリアジニル基、ベンゾチアゾリル基およびベンゾオキサゾリル基等を含む。ヘテロアリール基の置換基としては、たとえば、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基; 炭素数が1〜8の直鎖または分枝のアルキル基; 炭素数が1〜4のフルオロアルキル基; 炭素数が1〜8の直鎖または分枝のアルコキシ基等を含む。
【0035】
また、本発明のチアゾロ[4,5-b]ピラジン誘導体は、以下の一般式2で表される化合物のように、一般式1の化合物がリンカー基Xを介して複数個結合されていてもよい。たとえば、一般式1の化合物のR2の代わりに、リンカー基Xを介して複数個結合されていてもよい。
【0036】
【化10】

【0037】
一般式2において、Xは、リンカー基を表す。リンカー基Xは、たとえば単結合であってもよく、または置換基を有してもよいアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基もしくはヘテロアリーレン基であってもよい。
【0038】
リンカー基Xのアルキレン基の例には、たとえばメチレン基およびエチレン基などを含む。また、このような置換基を有してもよいアルキレン基は、酸素原子および窒素原子などのヘテロ原子をさらに有してもよく、たとえば、2-オキシプロピレン基および2-アザプロピレン基等を含む。
【0039】
リンカー基Xのアルケニレン基の例には、たとえばビニレン基および1, 4-ブタジエニレン基などを含むが、簡便に導入できることから、ビニレン基が好ましい。
【0040】
リンカー基Xのアルキニレン基の例には、たとえばエチニレン基、1, 4-ブタジイニレン基等が挙げられるが、簡便に導入できることから、エチニレン基が好ましい。
【0041】
リンカー基Xのアリーレン基の例には、たとえばフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基およびテルフェニレン基などを含むが、簡便に導入できることから、フェニレン基、ビフェニレン基およびトリフェニレン基が好ましい。
【0042】
リンカー基Xのヘテロアリーレン基の例には、たとえばチエニレン基、フラニレン基、ビチエニレン基、テルチエニレン基、ビフラニレン基およびテルフラニレン基などを含むが、簡便に導入できることから、チエニレン基およびフラニレン基が好ましい。
【0043】
また、リンカー基Xの置換基の例には、たとえばフルオロ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基; 炭素数が1〜8の直鎖または分枝のアルキル基; 炭素数が1〜4のハロゲン化アルキル基; 炭素数が6〜14のアリール基; 炭素数が1〜8の直鎖または分枝のアルコキシ基; 炭素数が1〜4のハロゲン化アルコキシ基; 炭素数が6〜14のアリールオキシ基等を含む。
【0044】
また、一般式2の化合物では、一般式1の化合物の構造単位が、必ずしも同一である必要はなく、リンカーXを介して異なる一般式1の化合物の構造単位が結合されていてもよい。一般式1の化合物の構造単位が同一である場合は、以下の一般式3として表すことができる。
【0045】
【化11】

【0046】
また、一般式2の化合物では、リンカー基Xを介して任意の数の化合物1の構造単位を結合することができる。たとえば、以下に示すように、2〜4個の化合物1の構造単位を結合することができる
【0047】
【化12】

【0048】
一般式2の化合物は、複数個の化合物を結合されているため、一般式1の化合物と比較して、1分子当たりの蛍光の強度を大きくすることができる。さらに、分子内で励起二量体(エキシマー)が生成すると、励起二量体からの蛍光性が発現することにより、単量体とは異なる蛍光性に変化する。
【0049】
チアゾロ[4,5-b]ピラジン構造を含む化合物の合成例は、下記のとおりFruitの文献[Fruit, C. ; Turck, A. ; Ple, N. ; Queguiner, G. J. Heterocyclic Chem., vol.39(5), 1077-1082 (2002)]においてすでに報告されている。
【0050】
【化13】

【0051】
本発明の一般式1の化合物は、この反応を応用して、合成することができる。たとえば、下記の一般式4および一般式5のアミドピラジン化合物を出発材料として使用して、クロロベンゼン中で還流下においてローソン試薬で処理することによって、一般式1および一般式2の化合物を得ることができる。
【0052】
【化14】

(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロアリール基を表す)。
【0053】
【化15】

(式中、R1は、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロアリール基を表し、Xは、リンカー基を表す)。
【0054】
アミドピラジン誘導体の合成方法としては、特に限定されないが、アミノピラジン誘導体を常法に従い、アミド化(アシル化)する方法などが挙げられる。たとえば、特開2010-077040に開示された方法を使用して、所望のアミドピラジン誘導体を合成することができる。また、アミノピラジン誘導体の合成方法としては、特に限定されないが、公知のピラジン環構築反応を用いて、アミノピラジン誘導体を合成する方法、市販品のアミノピラジン(東京化成工業社製、和光純薬工業など)を化学修飾する方法等が挙げられる。アミノピラジンを化学修飾する方法としては、特に限定されないが、アミノピラジンをハロゲン化した後、鈴木カップリング、薗頭カップリング等のカップリング反応や、有機金属化合物を経由した反応を適用する方法等が挙げられる。なお、アミノピラジン誘導体の市販品としては、5-フェニルアミノピラジン(東京化成工業社製)等が挙げられる。
【0055】
特に、一般式2で表される化合物のうち、アミノピラジン由来の構成単位を2個有するアミノピラジン誘導体を、常法に従い、アミド化(アシル化)した化合物を用いる以外は、一般式1で表される化合物と同様にして合成することができる。
【0056】
さらに、チアゾロ[4,5-b]ピラジン構造を含む化合物の合成例は、下記のとおりBarlinの文献[Barlin, G. B., Aust. J. Chem., vol.36 (5), 983-992 (1983)]においてすでに報告されている。
【0057】
【化16】

【0058】
上記反応では、原料として、アミノピラジンチオールとエステル類の組み合わせでチアゾロ[4,5-b]ピラジン構造の化合物を得ている。したがって、本発明の一般式1の化合物は、この反応を応用して、合成することもできる。
【0059】
本発明の化合物は、溶液及び結晶状態において、蛍光性を示すことに加え、電子受容性を有する。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0061】
実施例1
2-tert-ブチルチアゾロ[4,5-b]ピラジン
【化17】

【0062】
2-ピバロイルアミノピラジン100mg(0.56mmol)のクロロベンゼン溶液0.5mLに、アルゴン雰囲気下、ローソン試薬135mg(0.33mmol)を加え、一晩加熱還流した。この反応溶液にローソン試薬135mg(0.33mmol)を追加し、さらに一晩加熱還流した。反応溶液を室温に戻したのち、シリカゲル薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルムと酢酸エチルの8:1混合溶媒)により分離、精製を行い、2-tert-ブチルチアゾロ[4,5-b]ピラジン(表1の実施例1)の黄色結晶 22mg(0.12mmol, 収率21%)を得た。
【0063】
1H-NMR(500MHz, CDCl3)δ[ppm]=1.56(s, 9H), 8.48(d, J=2.3Hz, 1H), 8.64(d, J=2.3Hz, 1H); MS(EI)m/z=193(39%, M+), 178(100%)
2-フェニルチアゾロ[4,5-b]ピラジン
【化18】

【0064】
2-ベンゾイルアミノピラジン275mg(1.38mmol)のクロロベンゼン溶液2mLに、アルゴン雰囲気下、ローソン試薬335mg(0.83mmol)を加え、一晩加熱還流した。この反応溶液にローソン試薬112mg(0.28mmol)を追加し、さらに8時間加熱還流した。反応溶液を室温に戻したのち、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(流出溶媒:クロロホルムと酢酸エチルの1:3混合溶媒)およびシリカゲル薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルムと酢酸エチルの4:1混合溶媒)により分離、精製を行い、得られた結晶をヘキサンで洗浄して2-フェニルチアゾロ[4,5-b]ピラジン(表1の実施例2)の黄色結晶 81mg(0.38mmol, 収率28%)を得た。
【0065】
1H-NMR(500MHz, CDCl3)δ[ppm]=7.55(m, 2H), 7.59(m, 1H), 8.21(m, 2H), 8.51(d, J=2.8Hz, 1H), 8.69(d, J=2.3Hz, 1H); MS(ESI)m/z=214([M+1]+)
【0066】
2-(4-シアノフェニル)チアゾロ[4,5-b]ピラジン
【化19】

【0067】
2-(4-シアノフェニル)カルボニルアミノピラジン200mg(0.89mmol)のクロロベンゼン溶液1.2mLに、アルゴン雰囲気下、ローソン試薬217mg(0.54mmol)を加え、一晩加熱還流した。反応溶液を室温に戻したのち、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(流出溶媒:クロロホルムと酢酸エチルの5:1混合溶媒)およびシリカゲル薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルムと酢酸エチルの3:1混合溶媒)により分離、精製を行い、得られた結晶をヘキサンで洗浄して2-(4-シアノフェニル)チアゾロ[4,5-b]ピラジン(表1の実施例3)の黄色結晶 52mg(0.22mmol, 収率24%)を得た。
【0068】
1H-NMR(500MHz, CDCl3)δ[ppm]=7.85(AA'BB', 2H), 8.32(AA'BB', 2H), 8.59(d, J=2.9Hz, 1H), 8.76(d, J=2.8Hz, 1H); MS(ESI)m/z=239([M+1]+)
【0069】
2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]チアゾロ[4,5-b]ピラジン
【化20】

【0070】
2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]カルボニルアミノピラジン120mg(0.50mmol)のクロロベンゼン溶液1mLに、アルゴン雰囲気下、ローソン試薬121mg(0.30mmol)を加え、一晩加熱還流した。この反応溶液にローソン試薬121mg(0.30mmol)を追加し、さらに3時間加熱還流した。反応溶液を室温に戻したのち、シリカゲル薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルムと酢酸エチルの5:1混合溶媒)により分離、精製を行い、2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]チアゾロ[4,5-b]ピラジン(表1の実施例4)の黄色結晶 70m (0.27mmol, 収率 54%)を得た。
【0071】
1H-NMR(500MHz, CDCl3)δ[ppm]=3.10(s, 6H), 6.75(AA'BB', 2H), 8.06(AA'BB', 2H), 8.36(d, J=2.9Hz, 1H), 8.56(d, J=2.3Hz, 1H); MS(ESI)m/z=257([M+1]+)
【0072】
6-(4-メトキシフェニル)-2-フェニルチアゾロ[4,5-b]ピラジン
【化21】

【0073】
2-ベンゾイルアミノ-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン90mg(0.30mmol)のクロロベンゼン溶液1mLに、アルゴン雰囲気下、ローソン試薬72mg(0.18mmol)を加え、一晩加熱還流した。この反応溶液にローソン試薬72mg(0.18mmol)を追加し、さらに4時間加熱還流した。反応溶液を室温に戻したのち、シリカゲル薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルムと酢酸エチルの15:1混合溶媒)により分離、精製を行い、得られた結晶をヘキサンで洗浄して6-(4-メトキシフェニル)-2-フェニルチアゾロ[4,5-b]ピラジン(表1の実施例5)の黄色結晶 35mg(0.11mmol, 収率 37%)を得た。
【0074】
1H-NMR(500MHz, CDCl3)δ[ppm]=3.90(s, 3H), 7.06(AA'BB', 2H), 7.53-7.59(m, 3H), 8.08(AA'BB', 2H), 8.21(m, 2H), 9.08(s, 1H); MS(ESI)m/z=320([M+1]+)
【0075】
6-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-2-フェニルチアゾロ[4,5-b]ピラジン
【化22】

【0076】
2-ベンゾイルアミノ-5-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]ピラジン60mg(0.19mmol)のクロロベンゼン溶液1.5mLに、アルゴン雰囲気下、ローソン試薬46mg(0.11mmol)を加え、一晩加熱還流した。この反応溶液にローソン試薬16mg(0.04mmol)を追加し、さらに3日間加熱還流した。反応溶液を室温に戻したのち、2回のシリカゲル薄層クロマトグラフィー(1回目、展開溶媒:クロロホルムと酢酸エチルの30:1混合溶媒; 2回目、展開溶媒:クロロホルム)により分離、精製を行い、得られた結晶をヘキサンで洗浄して6-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-2-フェニルチアゾロ[4,5-b]ピラジン(表1の実施例6)の橙色結晶
13mg(0.039mmol, 収率20%)を得た。
【0077】
1H-NMR(500MHz, CDCl3)δ[ppm]=3.07(s, 6H), 6.82(AA'BB', 2H), 7.52-7.56(m, 3H), 8.03(AA'BB', 2H), 8.19(m, 2H), 9.05(s, 1H); MS(ESI)m/z=333([M+1]+)
【0078】
6-[4-(ジフェニルアミノ)フェニル]-2-フェニルチアゾロ[4,5-b]ピラジン
【化23】

【0079】
2-ベンゾイルアミノ-5-[4-(ジフェニルアミノ)フェニル]ピラジン120mg(0.27mmol)のクロロベンゼン溶液1.5mLに、アルゴン雰囲気下、ローソン試薬66mg(0.16mmol)を加え、一晩加熱還流した。この反応溶液にローソン試薬66mg(0.16mmol)を追加し、さらに2日間加熱還流した。反応溶液を室温に戻したのち、2回のシリカゲル薄層クロマトグラフィー(1回目、展開溶媒:ヘキサンと酢酸エチルの4:1混合溶媒; 2回目、展開溶媒:ヘキサンとクロロホルムと酢酸エチルの4:2:1混合溶媒)により分離、精製を行い、6-[4-(ジフェニルアミノ)フェニル]-2-フェニルチアゾロ[4,5-b]ピラジン(表1の実施例7)の黄色結晶
33mg(0.071mmol, 収率26%)を得た。
【0080】
1H-NMR(500MHz, CDCl3)δ[ppm]=7.10(m, 2H), 7.17(m, 6H), 7.31(m, 4H), 7.52-7.59(m, 3H), 7.96(m, 2H), 8.20(m, 2H), 9.07(s, 1H); MS(ESI)m/z=457([M+1]+)
【0081】
蛍光測定
蛍光分光計FP-6500(日本分光社製)を用いて、実施例1〜7の化合物の1×10-6〜1×10-4Mベンゼンまたはアセトニトリル、クロロホルム、塩化メチレン、2-プロパノール、メタノール溶液の蛍光スペクトルを測定した(図1〜7を参照されたい)。具体的には、石英セルを使用して、蛍光励起側バンドパスを3nmまたは10nm、蛍光発光側バンドパスを10nm、感度をLow、レスポンスを1秒、走引速度を500nm/分に設定して測定した。その結果、実施例1〜7の化合物の蛍光極大波長が表2に示す値であることがわかった。また、実施例1〜7の化合物の蛍光色は、肉眼で紫色から黄色の領域に認められた。さらに、図1〜7の蛍光スペクトルの面積から、硫酸キニーネを基準化合物に用いて、蛍光量子収率を求めた。

【0082】
【表1】

【0083】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式1の構造を有する化合物
【化1】

(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロアリール基を表す)。
【請求項2】
一般式2の構造を有する化合物
【化2】

(式中、R1は、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロアリール基を表し、Xは、リンカー基を表す)。
【請求項3】
一般式3の構造を有する化合物:
【化3】

(式中、R1は、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロアリール基を表し、Xは、リンカー基を表し、nは、任意の整数を表す)
【請求項4】
一般式1の構造を有する化合物
【化4】

(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロアリール基を表す)
を含有する蛍光色素。
【請求項5】
一般式2の構造を有する化合物
【化5】

(式中、R1は、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロアリール基を表し、Xは、リンカー基を表す)
を含有する蛍光色素。
【請求項6】
一般式3の構造を有する化合物:
【化6】

(式中、R1は、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロアリール基を表し、Xは、リンカー基を表し、nは、任意の整数を表す)
を含有する蛍光色素。
【請求項7】
R1がHまたはアニリノ基であり、かつR2がフェニル基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
以下の構造を有する化合物:
【化7】

(式中、R1は、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくはヘテロアリール基を表す)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−241014(P2012−241014A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108654(P2011−108654)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(504133110)国立大学法人電気通信大学 (383)
【Fターム(参考)】