説明

蛍光表示管とその製造方法

【課題】同一の金属板に複数のグリッドとフィラメントの振動防止部材を同時に形成し、複数のグリッドと振動防止部材のタブを同時に成形し、それらのタブを基板に同時に取付けること。
【解決手段】図3(a)のように金属板MPに複数のグリッド2と振動防止部材3のエッチングパターンを形成し、その金属板MPをエッチングして、図3(b)のように複数のグリッド2と振動防止部材3がタイバー41によって連結された成形用展開部品を形成する。その成形用展開部品と金型を用いて、折曲線X2の部分を折り曲げて振動防止部32を成形し、折曲線X3、X4を折り曲げてグリッド2のタブ21と振動防止部材3のタブ31の立上部と固定部を成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、蛍光表示管とその製造方法に関し、特にフィラメントの振動防止部材(ダンパー)とグリッド、及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図8により、従来のフィラメントの振動防止部材を備えた蛍光表示管を説明する(例えば特許文献1参照)。
図8(a)は、平面図、図8(b)は、図8(a)のX1部分の矢印方向の断面図、図8(c)は、グリッド(メッシュ)の斜視図、図8(d)は、振動防止部材の斜視図である。なお図8は、蛍光表示管のカバーガラスを外した状態を示す。
図8において、Fは、熱電子放出用のフィラメント、61は、ガラスの基板、621,622は、フィラメントのサポートとアンカー、63は、メッシュ構造のグリッド(メッシュ)、64は、振動防止部材である。
【0003】
フィラメントFは、一端をサポート621に固定し、他端をアンカー622の弾性部6221に固定し、弾性部6221によって所定のテンションを付与してある。フィラメントFから放出された電子が、グリッド63に制御され、基板61に形成したアノード電極の蛍光体(図示せず)を励起して発光する。
グリッド63は、メッシュ部632、縁部633、タブ631を有し、タブ631をペースト(導電性ガラスペースト)により基板61に接着して取付けてある。振動防止部材64は、3個の固定部641を有し、その固定部641をペースト(導電性ガラスペースト)により基板61に接着して取付けてある。振動防止部材64は、フィラメントFが振動したとき、その振動を低減してフィラメントFがグリッド63に接触するのを防止する。
【0004】
【特許文献1】実開平6−88043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の蛍光表示管は、グリッド63と振動防止部材64を別々に作製し、別々に基板61に取付けているため、それらの作製工程や取付け工程が多くなり、かつそれらを取付けるとき、別々に位置合わせをしなければならないから、取付け工程が複雑になり、製造コストが高くなる。また振動防止部材64は、フィラメントFの張架方向と直交する方向の幅(長さ)が、グリッド63の前記方向の幅(長さ)よりも大きいため、表示に関係のないデッドスペースが大きくなり、蛍光表示管の小型化の支障になる。
【0006】
本願発明は、従来の蛍光表示管の前記問題点に鑑み、蛍光表示管とその製造方法において、グリッドと振動防止部材の作製工程数や基板への取付け工程数を少なくし、それらの取付け時の位置合わせを同時に行うこと、そのためにグリッドと振動防止部材を同じ材料、即ち同じ材質、同じ厚さのものによって構成すること、さらにグリッドと振動防止部材の幅(フィラメントFの張架方向と直交する方向の幅)を同じにして蛍光表示管のデッドスペースを小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、その目的を達成するため、請求項1に記載の蛍光表示管は、フィラメント、メッシュ構造のグリッド、アノード電極及びフィラメントの振動防止部材を備え、グリッドと振動防止部材は立上部と固定部からなるタブを備えている蛍光表示管において、グリッドと振動防止部材は、材質、材料の厚さ及びタブの立上部の高さが同じであり、振動防止部材は、タブ形成部と振動防止部を有し、振動防止部は、タブ形成部との接続部分をフィラメント側に折り曲げてあることを特徴とする。
請求項2に記載の蛍光表示管は、請求項1に記載の蛍光表示管において、前記振動防止部材のタブ形成部と振動防止部の接続部分に繋ぎ部を残してスリットを形成してあることを特徴とする。
請求項3に記載の蛍光表示管は、請求項2に記載の蛍光表示管において、前記接続部分の周辺部分に繋ぎ部を形成し、前記振動防止部の角部分を丸く切欠いてあることを特徴とする。
請求項4に記載の蛍光表示管は、請求項1、請求項2又は請求項3に記載の蛍光表示管において、前記振動防止部には、フィラメントを囲む開口部を形成してあることを特徴とする。
請求項5に記載の蛍光表示管は、請求項4に記載の蛍光表示管において、フィラメントは前記開口部の側面に接触していることを特徴とする。
【0008】
請求項6に記載の蛍光表示管の製造方法は、フィラメント、メッシュ構造のグリッド、アノード電極及びフィラメントの振動防止部材を備え、グリッドと振動防止部材は立上部と固定部からなるタブを備え、振動防止部材はタブ形成部と振動防止部を備えている蛍光表示管の製造方法において、同一の金属板にグリッドと振動防止部材のエッチングレジストパターンを形成し、夫々のタブの長さが同じである成形用展開部品を作製し、その成形用展開部品を用いて、振動防止部材のタブ形成部と振動防止部の接続部分を折り曲げて振動防止部を成形し、グリッドと振動防止部材のタブを同時に折り曲げてタブの立上部と固定部を成形して成形部品を作製し、その成形部品のグリッドと振動防止部材のタブの固定部を同時に基板に接着して取付けることを特徴とする。
請求項7に記載の蛍光表示管の製造方法は、請求項6に記載の蛍光表示管の製造方法において、前記振動防止部材のタブ形成部と振動防止部の接続部分に繋ぎ部を残してスリットを形成することを特徴とする。
請求項8に記載の蛍光表示管の製造方法は、請求項7に記載の蛍光表示管の製造方法において、前記接続部分の周辺部分に繋ぎ部を形成し、前記振動防止部の角部分に丸い切欠きを形成することを特徴とする。
請求項9に記載の蛍光表示管の製造方法は、請求項6、請求項7又は請求項8に記載の蛍光表示管の製造方法において、前記振動防止部には、フィラメントを囲む開口部を形成することを特徴とする。
請求項10に記載の蛍光表示管の成形用展開部品は、グリッドとフィラメントの振動防止部材は、夫々のタブを対向する一対のタイバーに連結してあり、夫々のタブの長さが同じであり、前記振動防止部材は、タブ形成部と振動防止部からなり、タブ形成部と振動防止部の接続部分に繋ぎ部を残してスリットを形成してあることを特徴とする。
請求項11に記載の蛍光表示管の成形用展開部品は、請求項10に記載の蛍光表示管の成形用展開部品において、前記振動部には、フィラメントを囲む開口部を形成してあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本願発明の蛍光表示管は、グリッドと振動防止部材のフィラメントFの張架方向と直交する方向の幅(長さ)を同じにし、グリッドと振動防止部材は、材質、材料の厚さ及びタブの高さを同じに設定してあるから、グリッドと振動防止部材を同一の金属板に同時に形成し、それらのタブを同時に成形することができ、かつ成形したグリッドと振動防止部材を基板に同時に取付けることができる。したがって本願発明の蛍光表示管は、グリッドと振動防止部材の形成工程、成形工程及び取付け工程の工程数を少なくすることができる。
本願発明の蛍光表示管は、振動防止部材の振動防止部にフィラメントを囲む開口部を形成してあるから、フィラメントの振動を、振動の方向に関係なく防止することができる。またフィラメントは、振動防止部の開口部の側面に接触しているから、フィラメントの振動は、振幅が小さい場合にも防止できる。
【0010】
本願発明の振動防止部材は、グリッドの配列パターン(即ち表示パターン)によってその配置位置が変わるが、グリッドの配列パターンに組込んでその配列パターンの一部として形成するから、振動防止部材を基板に取付けるとき、その取付け位置は、グリッドの取付け位置によって必然的に決まる。したがって本願発明は、振動防止部材独自の位置決めを要しない。また本願発明の振動防止部材は、そのフィラメントの張架方向と直交する方向の幅(長さ)が、グリッドの前記方向の最大幅(長さ)と同じであるから、振動防止部材を設けたために前記方向のデッドスペースが大きくなることはない。
【0011】
本願発明の振動防止部材は、タブ形成部と振動防止部の接続部分を折り曲げて成形するから、タブの高さをグリッドと同じに設定しても、振動防止部の折曲角度や振動防止部のフィィラメントの張架方向の幅(長さ)を調整することによりフィラメントと振動防止部の距離を所定の範囲に設定することができる。また振動防止部は、その折曲角度を変えることにより、その占有スペースを調整することができる。
【0012】
本願発明の振動防止部材は、振動防止部とタブ形成部の接続部分にスリットを形成してあるから、振動防止部の成形が容易になり、振動防止部とタブ形成部のフィラメントの張架方向の幅(長さ)を狭くしても容易に成形することができる。また本願発明の振動防止部材は、振動防止部とタブ形成部の接続部分の周辺に繋ぎ部を形成し、振動防止部の角部分を丸く切欠いてあるから、フィラメントを張架する際、フィラメントが振動防止部に引っ掛ったり、引っ掛って切断したりすることがないため、フィラメントの張架作業を円滑に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1〜図7により本願発明の実施例を説明する。なお各図に共通な部分は、同じ符号を使用している。
【実施例1】
【0014】
図1により本願発明の実施例1の蛍光表示管を説明する。
図1(a)は、平面図、図1(b)は、図1(a)のX1部分の矢印方向の断面図、図1(c)は、グリッド(メッシュ)の斜視図、図1(d)は、フィラメントの振動防止部材の斜視図である。なお図1は、蛍光表示管のカバーガラスを外した状態を示す。
図1は、4個のグリッド(メッシュ)、2個の振動防止部材、2本のフィラメントを設けた例である。
図1において、Fは、熱電子放出用のフィラメント、1は、ガラスの基板、121,122は、フィラメントのサポートとアンカー、2は、メッシュ構造のグリッド(メッシュ)、3は、フィラメントの振動防止部材である。
【0015】
フィラメントFは、一端をサポート121に固定し、他端をアンカー122の弾性部1221に固定し、弾性部1221によって所定のテンションを付与してある。フィラメントFから放出された電子が、グリッド2に制御され、そのメッシュ部22を通って基板1に形成したアノード電極の蛍光体(図示せず)を励起して発光する。
【0016】
グリッド2は、メッシュ部22、縁部23、複数のタブ21を有し、タブ21は、立上部(或いは立下部)211、固定部212を有する。グリッド2は、タブ21の固定部212をペースト(導電ガラス)により基板1に接着して取付けてある。グリッド2の高さは、タブ21の立上部211によって規定する。
なおグリッド2は、メッシュ構造に限らず、例えばすだれ構造等、電子が通過する開口部を有する構造のものであればよい。したがって電子が通過する開口部を有する構造のものをメッシュ構造と呼ぶ。
【0017】
振動防止部材3は、振動防止部32、タブ形成部33、2個のタブ31を有し、タブ31は、立上部(或いは立下部)311、固定部312を有する。振動防止部材3は、その固定部312をペースト(導電ガラス)により基板1に接着して取付けてある。タブ31の立上部311は、グリッド2のタブ21の立上部211の高さと同じに設定してある。振動防止部32は、フィラメントF側へ折曲げ(折返し)てあり、その先端(フィラメントF側端部)は、フィラメントFから所定の距離だけ離してある。
振動防止部材3は、フィラメントFが振動したとき、その振動を低減してフィラメントFがグリッド2に接触するのを防止する。したがって振動防止部材3は、フィラメントFが静止しているとき(振動していないとき)、フィラメントFと接触しないように設定してある。
【0018】
振動防止部材3は、振動防止部32のフィラメントFの張架方向(長手方向)の幅(長さ)が同じ場合、振動防止部32の折曲角度を調整することにより、フィラメントFとの距離を調整することができる。また折曲角度が同じ場合、振動防止部32のラメントFの張架方向の幅を調整することにより、フィラメントFとの距離を調整することができる。したがって後述するようにグリッド2のタブ21と振動防止部材3のタブ31の高さを同じに設定しても、振動防止部32の折曲角度やフィララメントFの張架方向の幅を所定値に設定或いは調整することにより、フィラメントFと振動防止部32の距離を所定範囲に設定することができる。また振動防止部32の折曲角度を大きくする(傾斜を急にする)とフィラメントFの張架方向のスペースを小さくすることができる。
【0019】
グリッド2と振動防止部材3は、フィラメントFの張架方向と直交する方向の幅(長さ)を同じにし、それらのタブの立上部211,312の高さを同じに設定してあるから、後述するように、同一の金属板に同時に形成し、両者のタブを同時に成形して立上部211,311や固定部212,312を成形することができる。かつ振動防止部材3の前記方向の幅は、グリッド2の縁部23の前記方向の幅よりも大きくならないから、振動防止部材3のためにデッドスペースが大きくなることはない。また図1(a)のようにグリッド2のタブ21と振動防止部材3のタブ31が一列に並んでいると(又は上下方向のタブの位置が揃っていると)、タブの曲げ加工と曲げ用の金型の加工が容易になる。
グリッド2の大きさや形は、表示する文字や図柄のパターン(表示パターン)によって変わり、同様に複数のグリッド2の配列も、表示パターンによって変わる。一方振動防止部材3は、グリッド2とグリッド2の間に配置するから、その配置位置は、グリッド2の配列パターンによって変わる。図1の振動防止部材3の配置位置は、一例である。
【0020】
振動防止部材3の配置位置は、グリッド2の配列パターンによって変わるが、振動防止部材3は、グリッド2の配列パターンの一部として同一の金属板にグリッド2と同時に一体的に形成するから、振動防止部材3を基板1に取付けるとき、振動防止部材3の独自の位置決めを要しない。したがって本願発明は、振動防止部材3の形成作業や基板1への取付け作業が簡略化し容易になる。
図1(a)において、第1列、第2列(上下段2列)のグリッド2と振動防止部材3は、2列分同時に形成することもできる。その場合第1列、第2列のグリッドパターンが同じときは、振動防止部材3は、2列分を一体に形成することもできる。
【実施例2】
【0021】
図2は、本願発明の振動防止部材の実施例を示す。
図2(a)〜(d)は、夫々振動防止部材の成形前の展開図を示す。また折曲線等の符号は、最初の図にのみ記載し、他の図は省略してある。
図2(a)の例は、振動防止部32とタブ形成部33の接続部分を折曲線X2に沿って折り曲げて振動防止部32を成形し、折曲線X3,X4の部分を折り曲げてタブ31の立上部311、固定部312を成形する。その際、振動防止部32のフィラメントの張架方向の幅(長さ)W1とタブ形成部33の幅W2を、W1<W2(少なくともW1=W2)に設定すると、折曲線X2の部分の折り曲げが容易になる。本実施例は、板厚約0.05mmの金属板を用い、幅W1を約0.45mm、幅W2を約1.5mmに設定した。
【0022】
図2(b)の例は、折曲線X2の部分(振動防止部32とタブ形成部33の接続部分)に繋ぎ部351を残してスリットS11、S12を形成し、折曲線X3の部分にスリットS21、折曲線X4の部分にスリットS22を形成してある。また振動防止部32の角部分は、丸い切欠き34を形成してある。図(b)の場合には、スリットS11,S12を形成したことにより、振動防止部32とタブ形成部33の接続部分の繋ぎ部分が小さくなるから、折曲線X2部分の折り曲げが容易になり、かつ振動防止部32の幅とタブ形成部33の幅を、図2(a)より小さくしても容易に折り曲げることができる。またスリットS21,S22を形成したことによりタブ31部分の折り曲げが容易になる。そして振動防止部32の角部分には、丸い切欠き34を形成してあるから、フィラメントをサポートとアンカーに所定のテンションを付与して取付けるとき、即ちフィラメントの張架作業のとき、フィラメントが振動防止部32の角部分に引っ掛ったり、引っ掛って切断したりすることがない。したがってフィラメントの張架作業が円滑になり容易になる。
【0023】
図2(c)の例は、図2(b)の繋ぎ部351に、繋ぎ部3511,3512を残してスリットS13を形成してある。図2(c)の場合には、スリットS13を形成したことにより、折曲線X2部分の折り曲げが図2(b)の場合よりもさらに容易になる。
【0024】
図2(d)の例は、折曲線X2の部分にスリットS11に代えてスリットS14を形成し、繋ぎ部352を形成してある。図2(d)の場合には、繋ぎ部352を形成してあるから、フィラメントを張架するとき、フィラメントが振動防止部32の周辺部分に引っ掛ることがなく、フィラメントの張架作業が円滑になり容易になる。即ち図2(c)の場合には、繋ぎ部352がないため、フィラメントを張架するとき、フィラメントがスリットS11の開口部に引っ掛ったり、引っ掛って切断したりするためフィラメントの張架作業の妨げになるが、図2(d)の場合には、振動防止部32の周辺部分に開口部(切欠き部)がないから、フィラメントの張架作業が円滑になり容易になる。
【実施例3】
【0025】
図3、図4は、本願発明のグリッドと振動防止部材の形成工程と成形工程を示す。
まず図3によりグリッドと振動防止部材の形成工程を説明する。
図3(a)のように、金属板MP(例えば、SUS304(ステンレス鋼)、板厚0.05mm)に、グリッド2、振動防止部材3のエッチングレジストパターンを破線のように形成する(一点鎖線の内側はメッシュパターン状に形成する)。即ち複数のグリッド2と振動防止部材3を同一の金属板MPに同時にパターニングする。このパターニングにより振動防止部材3の取付け位置も決まる。エッチングレジストパターンを形成した金属板MPは、エッチングして、図3(b)のように複数のグリッド2と振動防止部材3が展開された状態で、対向する一対のタイバー41に連結されている成形用展開部品4を作製する。グリッド2と振動防止部材3は、同一の金属板MPにより一つの成形用展開部品4として一体的に形成される。図3(b)において、グリッド2と振動防止部材3のタイバー41と直交する(或いはフィラメントの張架方向と直交する)方向の幅、及びグリッド2のタブ21と振動防止部材3のタブ31の長さは、同じに設定してある。
【0026】
図3(b)の成形用展開部品4は、金型を用いて図4のように成形する。
図4において、図4(a)は、図3(b)のX5部分の矢印方向の断面を示す。
まず図3(b)の成形用展開部品4は、図4(b)のように、図3(b)の折曲線X2の部分を折り曲げて振動防止部32を成形し、次に図4(c)のように、図3(b)の折曲線X3の部分を折り曲げてタブ31(タブ21)を成形し、さらに図4(d)のように、図3(b)の折曲線X4の部分を折り曲げてタブ31の立上部311、固定部312(タブ21の立上部211、固定部212)を成形する。折曲線X3,X4の部分を折り曲げるときは、図4(c),(d)のように、グリッド2のタブ21と振動防止部材3のタブ31を同時に成形する。
図4(d)の成形部品のグリッド2と振動防止部材3のタブ21,31の固定部212,312を基板1に接着して取付け、その取付け後タイバー41を切断する。
【0027】
図3、図4の工程を経て作製した振動防止部材3は、グリッド2と同じ金属板を用いるから、板厚は、0.05mmとなり、極めて薄くなるが、振動防止部材3は、フィラメントが振動したときフィラメントが接触するだけで、フィラメントのサポートやアンカーのようにフィラメントを支持する部材と異なり、大きな強度を要しないから、薄くても支障はない。したがって振動防止部材3は、グリッド2と同じ金属板で作製することができる。
【0028】
図3、図4の場合には、一枚の同一金属板を用いて複数のグリッドと振動防止部材がタイバーによって連結された状態の成形用展開部品を作製し、その成形用展開部品を用いて複数のグリッドと振動防止部材のタブを同時に成形し、それらのタブの固定部を同時に基板に接着して取付けるから、グリッドと振動防止部材の形成工程、成形工程、取付け工程の工程数を少なくすることができる。また振動防止部材を基板に取付ける位置は、グリッドの取付け位置が決まれは必然的に決まるから、振動防止部材独自の位置決めを要しない。
【実施例4】
【0029】
図5〜図7は、本願発明の実施例4に係る振動防止部材、及びその振動防止部材とグリッドの形成工程と成形工程を示す。
まず図5により振動防止部材を説明する。
図5(a)は、側面図、図5(b)は、平面図であり、図5(c)、図5(d)、図5(e1)、図5(e2)は、フィラメントの位置関係を説明する図である。
図5(a)、図5(b)において、振動防止部材3の振動防止部32には、フィラメントFを通す開口部(くびれ部)321を形成してある。開口部321は、U字状、V字状、半楕円状等のようにフィラメントFを3方向から囲む形状に形成してある。
【0030】
実施例1から実施例3の振動防止部32は、フィラメントFが接触する面を平らに形成して、フィラメントFが上下方向(図1の基板1と直交する方向)に振動したとき、グリッド等に接触するのを防止しているが、フィラメントFは、横方向(図1の基板1と平行する方向)にも、それらの中間の方向にも振動する。即ちフィラメントFは、フィラメントFの周囲360度の方向に振動する。またフィラメントFの振動は、蛍光表示管の外部から加わる振動が原因で生じる外、フィラメントFの振動周波数と蛍光表示管の駆動周波数とが干渉して生じる場合もある。後者の場合には、振動の振幅はそれほど大きくないが、フリッカが生じて表示がちらつき、表示品質が低下する。
【0031】
本実施例の振動防止部32は、フィラメントFを3方向から囲むように開口部321を形成してあるから、フィラメントFが上下方向、横方向等いずれの方向に振動しても、フィラメントFは、開口部321の底面或いは側面に接触するから、フィラメントの振動を確実に低減することができる。また図5(c)のように、常時フィラメントFを開口部321の側面に接触させておくことにより、フリッカの原因になる小さな振幅の振動も低減することができる。したがってフリッカの原因になるような比較的振幅の小さい振動が生じる恐れのある場合には、図5(c)のように、フィラメントFと開口321の側面を常時接触させておくと、その振動防止に有効である。
なおフィラメントFは、振動防止部32に接触するとその接触部分の温度が低下し電子放出量も低下するが、例えば図1の場合、その接触部分は、隣接するグリッドの中間に位置し表示領域外に位置するから、表示に支障はない。
【0032】
蛍光表示管は、通常フィラメントを多数本張架してあるが、全てのフィラメントを同じ高さに張架することは難しく、高さは、フィラメントによって多少相違する場合がある。フィラメントの高さが異なると、フィラメントによって振動防止効果が異なる場合がある。例えば図5(d)のように、2本のフィラメントF1,F2の高さH1,H2が異なる場合についてみると、振動防止部32に開口部3211,3212を形成せずに、それらの開口部の底面の高さH3と同じ高さの平らな面のみの場合、フィラメントF1、F2が上下に振動したとき、フィラメントF1は、振動防止部32に接触するが、フィラメントF2は、接触しない場合がある。
そのような場合、図5(d)のように開口部3211,3212を設けると、フィラントF1,F2は、振動したとき開口部3211,3212の側面に接触するから、振動が低減する。したがって開口部3211,3212は、複数のフィラメントの高さが相違している場合にもフィラメントの振動防止手段として有効である。
【0033】
振動防止部に開口部を設けると、フィラメントと開口部の位置を一致させる必要があるから、フィラメントは、所定の位置に正確に取付ける必要がある。そこで図5(e1),(e2)により、フィラメントと開口部の位置がずれた場合の対処手段について説明する。なお図5(e1)は、側面図、図5(e2)は、平面図である。
図5(e1),(e2)は、開口部321を一箇所に複数個(図は3個)設けてある。図5(e1),(e2)において、フィラメントの位置がフィラメントの張架方向と平行な方向へずれた場合、例えばフィラメントFaの位置が、フィラメントFbの位置へずれた場合、フィラメントFbは、隣の開口部321と係合する。したがって図5(e1),(e2)の場合には、フィラメントの張架位置が多少ずれても、開口部321にフィラメントを通す(嵌め込む)ことができる。
図5のように振動防止部材の振動防止部に開口部を設けるか否か、及びその開口部の側面にフィラメントを常時接触させるか否かは、蛍光表示管を設置する場所や環境、蛍光表示管の駆動条件等を考慮し、発生する振動の大きさや種類を勘案して選定すればよい。
【0034】
次に図6により振動防止部に開口部を有する振動防止部材とグリッドの形成工程を説明する。
図6の形成工程は、基本的には、図3の形成工程と同じであり、振動防止部に開口部を有する振動防止部材も図3と同じ工程で形成することができる。
図6(a)のように、金属板MPにグリッド2と振動防止部材3のエッチングレジストパターンを破線のように形成する。そのエッチングレジストパターンには、開口部321も形成する。
図6(a)のエッチングレジストパターンを形成した金属板MPは、エッチングして、図6(b)のようにグリッド2と振動防止部材3が展開された状態で、一対のタイバー41に連結されている成形用展開部品4を作製する。
【0035】
次に図7により振動防止部に開口部を有する振動防止部材とグリッドの成形工程を説明する。
図7の成形工程は、基本的には、図4の成形工程と同じであり、振動防止部に開口部を有する振動防止部材も図4と同じ工程で成形することができる。
図6(b)の成形用展開部品4は、金型を用いて図7のように成形する。
図7において、図7(a)は、図6(b)のX5部分の矢印方向の断面を示す。
まず図6(b)の成形用展開部品4は、図7(b)のように、図6(b)の折曲線X2の部分を折り曲げて振動防止部32を成形し、次に図7(c)のように、図6(b)の折曲線X3の部分を折り曲げてタブ31(タブ21)を成形し、さらに図7(d)のように、図6(b)の折曲線X4の部分を折り曲げてタブ31の立上部311、固定部312(タブ21の立上部211、固定部212)を成形する。折曲線X3,X4の部分を折り曲げるときは、図7(c),(d)のように、グリッド2のタブ21と振動防止部材3のタブ31を同時に成形する。
図7(d)の成形部品のグリッド2と振動防止部材3のタブ21,31の固定部212,312を基板1に接着して取付け、その取付け後タイバー41を切断する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本願発明の実施例1に係る蛍光表示管の構成を示す。
【図2】本願発明の実施例2に係る振動防止部材を示す。
【図3】本願発明の実施例3に係るグリッドと振動防止部材の形成工程を示す。
【図4】本願発明の実施例3に係るグリッドと振動防止部材の成形工程を示す。
【図5】本願発明の実施例4に係る振動防止部材を示す。
【図6】本願発明の実施例4に係るグリッドと振動防止部材の形成工程を示す。
【図7】本願発明の実施例4に係るグリッドと振動防止部材の成形工程を示す。
【図8】従来の蛍光表示管の構成を示す。
【符号の説明】
【0037】
1 基板
121,122 フィラメントのサポート、アンカー
2 グリッド(メッシュ)
21 タブ
22 メッシュ部
23 縁部
3 フィラメントの振動防止部材
31 タブ
32 振動防止部
321,3211,3212 開口部
33 タブ形成部
4 成形用展開部品
41 タイバー
F,F1,F2,Fa,Fb フィラメント
MP 金属板
S11、S12、S13、S21、S22 スリット
351,3511,3512,352 繋ぎ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラメント、メッシュ構造のグリッド、アノード電極及びフィラメントの振動防止部材を備え、グリッドと振動防止部材は立上部と固定部からなるタブを備えている蛍光表示管において、グリッドと振動防止部材は、材質、材料の厚さ及びタブの立上部の高さが同じであり、振動防止部材は、タブ形成部と振動防止部を有し、振動防止部は、タブ形成部との接続部分をフィラメント側に折り曲げてあることを特徴とする蛍光表示管。
【請求項2】
請求項1に記載の蛍光表示管において、前記振動防止部材のタブ形成部と振動防止部の接続部分に繋ぎ部を残してスリットを形成してあることを特徴とする蛍光表示管。
【請求項3】
請求項2に記載の蛍光表示管において、前記接続部分の周辺部分に繋ぎ部を形成し、前記振動防止部の角部分を丸く切欠いてあることを特徴とする蛍光表示管。
【請求項4】
請求項1、請求項2又は請求項3に記載の蛍光表示管において、前記振動防止部には、フィラメントを囲む開口部を形成してあることを特徴とする蛍光表示管。
【請求項5】
請求項4に記載の蛍光表示管において、フィラメントは前記開口部の側面に接触していることを特徴とする蛍光表示管。
【請求項6】
フィラメント、メッシュ構造のグリッド、アノード電極及びフィラメントの振動防止部材を備え、グリッドと振動防止部材は立上部と固定部からなるタブを備え、振動防止部材はタブ形成部と振動防止部を備えている蛍光表示管の製造方法において、同一の金属板にグリッドと振動防止部材のエッチングレジストパターンを形成し、夫々のタブの長さが同じである成形用展開部品を作製し、その成形用展開部品を用いて、振動防止部材のタブ形成部と振動防止部の接続部分を折り曲げて振動防止部を成形し、グリッドと振動防止部材のタブを同時に折り曲げてタブの立上部と固定部を成形して成形部品を作製し、その成形部品のグリッドと振動防止部材のタブの固定部を同時に基板に接着して取付けることを特徴とする蛍光表示管の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の蛍光表示管の製造方法において、前記振動防止部材のタブ形成部と振動防止部の接続部分に繋ぎ部を残してスリットを形成することを特徴とする蛍光表示管の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の蛍光表示管の製造方法において、前記接続部分の周辺部分に繋ぎ部を形成し、前記振動防止部の角部分に丸い切欠きを形成することを特徴とする蛍光表示管の製造方法。
【請求項9】
請求項6、請求項7又は請求項8に記載の蛍光表示管の製造方法において、前記振動防止部には、フィラメントを囲む開口部を形成することを特徴とする蛍光表示管の製造方法。
【請求項10】
グリッドとフィラメントの振動防止部材は、夫々のタブを対向する一対のタイバーに連結してあり、夫々のタブの長さが同じであり、前記振動防止部材は、タブ形成部と振動防止部からなり、タブ形成部と振動防止部の接続部分に繋ぎ部を残してスリットを形成してあることを特徴とする蛍光表示管の成形用展開部品。
【請求項11】
請求項10に記載の蛍光表示管の成形用展開部品において、前記振動部には、フィラメントを囲む開口部を形成してあることを特徴とする蛍光表示管の成形用展開部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−173209(P2007−173209A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−258138(P2006−258138)
【出願日】平成18年9月23日(2006.9.23)
【出願人】(000201814)双葉電子工業株式会社 (201)
【出願人】(505436106)台湾双葉電子股▲ふん▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】