説明

蛍光表示装置

【課題】蛍光表示管のデットスペースを有効に活用することができると共に、多色発光性に優れる。
【解決手段】表示面側に、この表示面より大きい面積の透光性導光板が配置されてなる蛍光表示装置であって、上記透光性導光板の端部は、表示面の端面より該表示面の縦または横方向に突出しており、蛍光表示管の表示面側に対向する導光板面と30〜60度の角度を有するテーパ面となっており、該テーパ面の背面にLED光源が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蛍光表示装置に関し、特に蛍光表示管の表示部のデットスペースを有効に活用できると共に、多色発光性に優れる蛍光表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電卓、オーディオ、家電製品、計測器、医療機器などの表示部に所定のパターンあるいはグラフィックを表示する表示素子として蛍光表示管が多用されている。
従来の蛍光表示管の一例を図4により説明する。図4は従来の蛍光表示管の断面図である。蛍光表示管2は、ガラス基板10上に絶縁層11を設け、この絶縁層11を介して形成された陽極12と、この陽極上に形成された蛍光体層8とから構成される陽極基板13上方にグリット7とフィラメント状の陰極6とを設け、フェースガラス2aおよびスペーサガラス14を用いて封着して真空引きして形成されている。
また、蛍光表示管2は、グリット7およびフィラメント状の陰極6を蛍光体層8上方に支持して固定するための固定部材15が蛍光表示管内の表示部周縁に設けられている。また、この表示部周縁には配線の引き回しスペースや駆動素子16を収納する領域が設けられている。表示部周縁に設けられている固定部材15および素子収納領域等は蛍光表示管において必須の領域であるが、この領域2bは表示面において、何の情報も提示できないデッドスペースとなっている。
【0003】
蛍光表示管は、液晶表示素子などと異なり、蛍光体を発光させて表示を行なう自発光形の素子であるため、バックライトなしでも視認性に優れた表示素子である。さらに、多色表示と高精細表示を図るために、バックライトを備えた蛍光表示管が知られている(特許文献1)。また、絶縁層を透光性誘電体とするバックライトを備えた蛍光表示管が知られている(特許文献2)。
一方、導光板の側端面に光源を配したエッジライト方式の表示装置(特許文献3)、導光板のコーナ部にLED(Light Emitting Diode;発光ダイオード)光源を配したエッジライト方式の面状光源ユニット装置(特許文献4)、光入射面である一端面に対向する導光板端面等が光射出面に対向する裏側の面となす角度が90°より大きいエッジライト型面光源および液晶表示装置が知られている(特許文献5)。
【0004】
しかしながら、蛍光表示管の用途が拡大すると、汎用されている単色青緑色発光の蛍光表示管であっても、デットスペースを有効に活用することが望まれ、また、インパクトのある鮮やかな色彩感覚に優れた視認性を要求されるという問題がある。
【特許文献1】特開2001−93452号公報
【特許文献2】特開2002−25480号公報
【特許文献3】特開2007−163663号公報
【特許文献4】特開平11−306831号公報
【特許文献5】特開2006−351354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、蛍光表示管のデットスペースを有効に活用することができると共に、多色発光性に優れる蛍光表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の蛍光表示装置は、表示面側に、この表示面より大きい面積の透光性導光板が配置されてなる蛍光表示装置であって、上記透光性導光板の端部は、表示面の端面より該表示面の縦または横方向に突出しており、蛍光表示管の表示面側に対向する導光板面と30〜60度の角度を有するテーパ面となっており、該テーパ面の背面にLED光源が配置されていることを特徴とする。
また、上記透光性導光板の端部に形成されるテーパ面は、LED光源からの光を反射する反射材が形成されていることを特徴とする。上記透光性導光板は、蛍光表示管の表示面に対向する導光板面上に文字、図形、または記号が形成されていることを特徴とする。
本発明の蛍光表示装置は、上記透光性導光板と蛍光表示管の表示面との間に半透鏡膜が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の蛍光表示装置は、表示面より大きい面積の透光性導光板が配置されているので、透光性導光板が蛍光表示管の表示面のみならず、デッドスペースとなっている非表示領域を覆うことになる。そのため、透光性導光板がLED光源で各色に発光できることにより、非表示領域を表示面に使用することができ、有効表示面を大きくできる。
また、透光性導光板の端部が導光板面と30〜60度の角度を有するテーパ面となっており、該テーパ面の背面にLED光源が配置されるので、LED光源の発光光が導光板面全面を発光させることができる。その結果、単色青緑色の蛍光表示管であっても、多色発光が可能になる。
さらに、LED光源からの光を反射する反射材が上記透光性導光板のテーパ面に形成され、該透光性導光板面上に文字、図形、または記号が形成されているので、LED光源からの光は、導光板端部のテーパ面で反射されて導光板面上に形成された文字、図形、または記号で反射されて発光し、蛍光表示管本来の表示面に追加する表示が可能となる。文字、図形、または記号をデッドスペースとなっている非表示領域に形成すれば、表示領域を拡大して多色発光の表示面が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の一実施例を図1ないし図3により説明する。図1は蛍光表示装置の断面配置図であり、図2は基台を除いた図1の平面図であり、図3は図1における端部拡大断面図である。
図1において、蛍光表示装置1は従来の蛍光表示管2の表示面2a側に透光性導光板3が、端部にLED光源4がそれぞれ配置されている。5は蛍光表示管2を固定するための基台である。
従来の蛍光表示管2は、表示面を前面に有する蛍光表示管であれば使用することができ、例えば図4に断面を示す蛍光表示管が例示できる。従来の蛍光表示管2は、図4に示すように、グリット7およびフィラメント状陰極6を支持して固定するための固定部材等を設ける領域がデットスペース2bとして存在する。
本発明に係る蛍光表示装置1は、従来の蛍光表示管2において表示に寄与しないデットスペース2b領域を覆って透光性導光板3が配置される。透光性導光板3はLED光源4により発光するので、有効表示面が拡大する。
また、従来の蛍光表示管2は、単色発光または多色発光の蛍光表示管でも使用できる。単色発光でも多色発光が可能となるので、本発明においては、発光が安定しており、工業的に利用しやすいZnO:Zn系蛍光体を用いる単色青緑色の蛍光表示管が好ましい。
【0009】
透光性導光板3は、蛍光表示管2の表示面2a側に配置される。その大きさは、図2に示すように、平面視で表示面2a全面およびLED光源4を覆うことができる大きさである。蛍光表示管2の表示面2a周縁に配線の引き回しスペースや駆動素子を収納する領域がある場合は、その領域を覆う大きさであることが好ましい。
平面視の形状は、蛍光表示管2の表示面2aおよびデットスペース2bを覆うことができればよく、例えば方形、円形、任意の形状が挙げられる。本発明においては、表示面2aと協同して表示効果を高めることができる長方形が好ましい。
透光性導光板3は蛍光表示管2の表示面2aに接して配置することが好ましい。表示面2aに接して配置することにより、蛍光表示管からの光が散乱されることなく視認者に観察される。
【0010】
また、透光性導光板3と蛍光表示管2の表示面2aとの間に半透鏡膜9を設けることが好ましい。半透鏡膜9を設けることにより、導光板全体を発光させることができる。半透鏡膜としては、アクリル板にAlスパッタ膜を形成する等、導光板を半透明加工することにより形成できる。
【0011】
透光性導光板3の厚さt(図1参照)は、2.0mm〜3.0mmの範囲が好ましい。2.0mm未満であると、透光性導光板3の導光特性が発揮できず、3.0mmをこえると透光性導光板3の厚み分蛍光表示管2が奥に配置されるため、蛍光表示管2の表示が奥に入り、収容するケースの開口との兼ね合いにより視野が狭くなる。
【0012】
図2のA−A方向における透光性導光板3の断面は、図1および図3に示すように、蛍光表示管の表示面2aに接する導光板面3aと30〜60度の角度θを有するテーパ面3bを有している。角度θを30〜60度の範囲とすることにより、LED光源からの光4dをテーパ面3bで反射させて、導光板面3a表面に形成される文字、図形等3dを発光させることができる。発光光4dと陽極基板に形成された蛍光体層8からの発光光2cとが混在することで多色発光ができる。なお、テーパ面3bはA−A方向と垂直方向の断面に設けてもよい。
テーパ面3bの反射効率を高めるために、反射材3eをテーパ面3bに形成することが好ましい。反射材3eとしては、白色塗料を塗布することで形成される白色不透明塗膜、光を反射できる鏡面を有する反射膜等が挙げられる。
【0013】
蛍光表示管2の表示面2aに対向して接する導光板面3a上に文字、図形、または記号を形成することが好ましい。本発明においては、特に表示に寄与しないデットスペース2bを覆う導光板面3aの領域上に、図2に3dで示す、文字、図形、または記号を形成することが、デットスペース2b領域を表示面とできるので好ましい。
また、文字、図形、または記号は、図2に3d’で示すように、表示領域に設けることができる。この場合、表示領域の表示と関連付けで形成することが好ましい。例えば、「1月1日」の表示をする場合、「月」および「日」のみを導光板面3a上に形成することができる。この場合、「月」および「日」の発光色を多色に変化させることができ、よりインパクトの強い表示が可能となる。
文字等の形成方法は特に制限がないが、例えば、スクリーン印刷を用いて形成することができる。この印刷面にLED光源からの光が反射して表示面が形成できる。
【0014】
透光性導光板3は、表示面の表示内容に適合するパターン形状、蛍光表示管が設置される箇所等に応じて取替えができるように、基台5に取り付け、取り外し自在に固定される。
また、蛍光表示管2を収める容器を透光性導光板と同一の材料として、その一部(表示用窓周辺)を使用することもできる。
【0015】
透光性導光板3の材質としては、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、非晶性ポリエステル樹脂等の透光性の光学材料が適用できる。これらの中でメタクリル樹脂が好ましい。
メタクリル樹脂はメタクリル酸メチルあるいはメタクリル酸エチルを主成分とする共重合である。また、メタクリル樹脂には必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、離型剤、界面活性剤、分散剤、滑剤、アンチブロッキング剤、架橋剤、可塑剤、有機架橋体等を含有させることができる。
【0016】
LED光源4は、上記テーパ面3bの背面であって、蛍光表示管2の端部に配置する。テーパ面3bの背面に配置することでLED光源4からの発光光を有効に利用できる。
LED光源4としては、赤色のLEDチップ、緑色のLEDチップ、青色のLEDチップを単独で、あるいは複数組み合わせて使用できる。例えば、図2に示すように、赤色のLEDチップ4a、緑色のLEDチップ4b、青色のLEDチップ4cを蛍光表示管2の端部に一列に配置することができる。複数組み合わせることにより、導光板面3a上に形成された文字、図形、または記号を多色発光させることができる。
【0017】
LED光源4は、トランジスタや、LEDドライバICなどにより駆動され、パルスまたは電流により明るさのコントロールを行なうことができる。例えば、LED光源4のON/OFFは、発振回路を含むロジック回路の組み合わせ、または蛍光表示管駆動用CPU、または独立したCPUにより制御することができる。
【実施例】
【0018】
実施例1
ガラス基板上に絶縁層および陽極層を順に形成し、絶縁層に設けたスルーホールを介してガラス基板上の配線層と接続した。陽極層上にZnO:Znからなる青緑色に発光する蛍光体を形成して陽極基板とした。公知の方法により、グリットと陰極とを設け、フェースガラスおよびスペーサガラスを用いて封着して真空引きをして蛍光表示管を得た。この蛍光表示管の大きさは縦×横×高さが527.0mm×76.0mm×13.2mm(表示468.21mm×50.28mm)の直方体であり、グリットおよび陰極の固定部分を格納する両側それぞれ29.395mmと、上側13.1mmと、下側12.62mmがデッドスペースとなっている。
厚さ2.0mmのアクリル導光板を533.0mm×76.0mmの大きさに切断して、その長さ方向両端を図1における角度θが45度となるテーパ面を形成した。このテーパ面に光反射フィルム(レフホワイト(株)きもと社製)を取り付け反射材とした。また、アクリル導光板のテーパ面を形成する裏面であって、上記デッドスペースを形成する領域にスクリーン印刷により、表示画面を取り囲む図形模様を形成した。
基台上に上記蛍光表示管を固定し、その長さ方向の両側にそれぞれ赤色、緑色、青色のLED光源を固定し、さらにテーパ面を上面にして上記アクリル導光板を積層して導光板付蛍光表示装置を得た。
LED光源は蛍光表示管駆動用CPUによりそのON/OFFを制御した。
得られた導光板付蛍光表示装置は、表示画面にデッドスペースがなくなり、表示画面の中心で青緑色に発光する表示領域と、その周囲で多色発光する発光領域が得られ、表示領域が拡大し、かつよりインパクトのある表示が実現できた。
【0019】
実施例2
実施例1で用いたアクリル導光板に図形模様と共に、Alのスパッタ膜による半透鏡膜を形成した。このアクリル導光板を用いて、実施例1と同様に導光板付蛍光表示装置を組み立てた。
得られた導光板付蛍光表示装置は、導光板全体が表示画面となり、インパクトのある表示が実現できた。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、表示面より大きい面積の透光性導光板およびLED光源を用いることで、非表示領域を表示面に使用することができ、有効表示面を大きくできるので、簡易な手段で鮮やかな多色発光に優れた視認性を有する蛍光表示装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る蛍光表示装置の断面配置図である。
【図2】基台を除いた図1の平面図である。
【図3】図1における端部拡大断面図である。
【図4】従来の蛍光表示管の断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 蛍光表示装置
2 従来の蛍光表示管
3 透光性導光板
3b テーパ面
3e 反射材
4 LED光源
5 基台
6 フィラメント状陰極
7 グリット
8 蛍光体層
9 半透鏡膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光表示管の表示面側に、この表示面より大きい面積の透光性導光板が配置されてなる蛍光表示装置であって、
前記透光性導光板の端部は、前記表示面の端面より該表示面の縦または横方向に突出しており、前記蛍光表示管の表示面側に対向する導光板面と30〜60度の角度を有するテーパ面となっており、該テーパ面の背面にLED光源が配置されていることを特徴とする蛍光表示装置。
【請求項2】
前記テーパ面は、前記LED光源からの光を反射する反射材が形成されていることを特徴とする請求項1記載の蛍光表示装置。
【請求項3】
前記透光性導光板は、前記蛍光表示管の表示面に対向する導光板面上に文字、図形、または記号が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の蛍光表示装置。
【請求項4】
前記透光性導光板と前記蛍光表示管の表示面との間に半透鏡膜が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の蛍光表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−80398(P2009−80398A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250937(P2007−250937)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000117940)ノリタケ伊勢電子株式会社 (38)
【出願人】(000004293)株式会社ノリタケカンパニーリミテド (449)
【Fターム(参考)】