説明

蛍光読取装置および微生物計数装置

【課題】本発明は、微生物を含有するか含有する可能性のある検体に対し蛍光色素を用いて生菌および死菌を計数する微生物計数装置であり、従来から知られている手法と比較して正確性を向上させた微生物計数装置を提供すること。
【解決手段】位置補正用画像を読み込んで補正値を算出し、輝点除去部13によって輝点を除去、発光点抽出部14により画像中の発光点を特定し、異なる輝度情報を含む発光点のデータは、発光点照合部15によって照合し、結合され、出力部16によってデータファイルに出力され、保存される。発光点の数値データは、生死判断部19と微生物判断部20から構成される蛍光評価部17によって蛍光の色情報の解析が行われ、生菌群または死菌群であるかを判別することで、複数の画像間の機械的誤差による位置ズレを校正し、各波長の輝度値の検出精度を高めた小型で低コストな微生物計数装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境試料、食品検体などの微生物の迅速検出に使用される生菌および死菌の計数装置における夾雑物との識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蛍光色素を用いて微生物の生菌および死菌を検出し、判別する手法の一例として蛍光性酵素基質であるフルオレセイン系蛍光色素による方法が知られている。フルオレセイン系蛍光色素は、細胞や微生物の細胞膜を透過して取り込まれると、細胞質内のエステラーゼ酵素群により加水分解され、フルオレセイン骨格を有する蛍光物質(フルオレセインなど)に変換されて発光機能が発現する。そこで励起光を照射することで生じる光点を生きている細胞や微生物として判定することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
下記、特許文献1において、微生物の生死を判定するための蛍光色素として、エステラーゼ活性指標指示薬であるカルセイン誘導体及びヨウ化プロピジウムを用いた方法が提案されている。これは、微生物を上記2種類の色素で染色し、緑色および赤色の蛍光強度を測定し、その強度の比較を求めることで、生菌であるか死菌であるかをフローサイトメトリーにより判断するというものである。
【0004】
また、更に別の手法として、細胞の発色を測定し、フローイメージサイトメータを用いて自動的に細胞を分類することのできる手法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
これは、血液に含まれる白血球やリンパ球などの細胞が複数種含まれる検体に対してギムザ染色を施し、レンズなどで拡大画像を取得して、CCDのRGB値からLab色空間への変換を行い、色彩的特長から該細胞のもつ特徴パラメータを抽出して、自動的に細胞種ごとに分類するというものである。
【特許文献1】特開平11−146798号公報
【特許文献2】特開2004−340738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のような従来の方法では、2つの試薬の蛍光強度から生菌および死菌を検出することはできるが、必ずしも全ての細胞を検出できているとはいえない。これはエステラーゼ分解性の色素に共通の課題であるが、微生物の種類によっては酵素の発現量が異なり、全く染色されないものが存在し、またそれ以外にも微生物の置かれている環境や活性状態によって染色性に大きな差があり、一時的な測定結果だけでは正確な生菌の検出ができているとはいえないためである。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、高い染色性、標識力を持つ核酸結合性の蛍光性化合物を使用することで、微生物のもつ酵素活性などの不安定要因に影響を受けることなく、安定して高感度な微生物の検出方法を提供することを目的としている。
【0008】
また、一般的なフローサイトメータにおいて、当業者に良く知られている事実であるが、微生物を特定するために蛍光強度および前方散乱光を測定し、粒子の大きさあたりの蛍光強度から微生物に相当するかどうかを判断している。そのため、装置には蛍光を検出するための検出器の他に、散乱光を検出するための別の検出器を設ける必要が生じ、装置構成が複雑化するという課題がある。
【0009】
また、複数の染色試薬を用いる場合、フローセルを流れる細胞一つ一つに対して、複数の励起光源を使用するには、照射位置の距離をおいて高い精度で粒子を流す機構を設け、時間差で出現する発光シグナルを一致させる手段と、流速を頻繁にキャリブレーションする工程が必要となる。そのため、このようなフローサイトメータは高価であり、管理方法も複雑多岐になる。そのため、頻繁に使用される手法としては同一の励起光源で励起することが可能な染色試薬を使用し、同時に異なる蛍光を測定するというものである。しかし、このような手法では使用できる染色試薬に制限があるばかりか、染色試薬を最適な励起波長で使用できないため、感度が低下するという課題がある。
【0010】
また、フローサイトメータの別形態として、同一の照射位置に複数の励起光源を同時に照射し、得られた複雑な合成蛍光スペクトル波形と、蛍光色素の標準スペクトル波形を比較して、蛍光色素ごとのスペクトルを分離し、強度を比較することができるというものがあり、当業者に良く知られた事実である。しかし、このような手法では、装置が高価になるうえ、既知の試料のみの評価しか行うことができず、未知試料において自家蛍光の多い場合や、蛍光波長のシフトが見られるような場合には、スペクトル波形の分離が行えず、解析が困難になるという課題がある。
【0011】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、蛍光強度と粒子の大きさを同時に取得できる受像素子を使用して装置構成を簡略化することができ、微生物を固定して測定を行うことにより、異なる励起光源を切り替えることで簡便かつ容易に異なる染色試薬の画像を取得することができ、また最適波長で使用することができるため、小型でコンパクトかつ高精度である微生物計数装置を提供することを目的としている。
【0012】
また、特許文献2のような手法の場合、メチレンブルーなどの着色する染色試薬を使用しているが、これらは増感作用を持たないため、大きさが非常に小さい微生物細胞の場合には、着色する量が微量であるため、染色されているか見分けるのが難しい。このような場合、通常、露光時間を上げて感度の向上を図るが、フローセルを使用した手法では、流速によって調整するしかなく、露光時間はほとんど変えることができない。
【0013】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、増感作用を持つ蛍光色素を使用することで、微生物のような非常に小さい細胞であっても容易に検出することができ、さらに、微生物を固定して測定する事ができるため、露光時間を極端に増加させることが可能となり、微生物細胞のように非常に小さい粒子であっても十分な検出感度をもった微生物計数装置を提供することを目的としている。
【0014】
また、フローイメージサイトメータの場合、当業者に良く知られた事実であるが、フローセル内を流れる細胞をラインセンサやCCDなどの受像素子を用いて瞬間的に測定するため、強い透過光源による明視野画像の取得は可能であるが、蛍光のように感度が低いものは画像を取得することが困難である。
【0015】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、微生物を固定して画像を取得することにより、露光時間を調整し、感度を向上させることができる蛍光読取装置、微生物計数装置を提供することができる。
【0016】
また、発光点の画像が複数あってそれぞれ異なる波長を示すものであり、各画像から色彩的特性を算出する蛍光読取装置において、機械的誤差に由来する発光点の位置ズレ誤差が発生し、座標をもとにした発光点の照合ができず、色彩的特性を算出する値を求めることが困難になる。
【0017】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、各画像の発光点の座標を合わせることで、画像の位置ズレ誤差を補正し、位置を合わせることで、各画像の同じ発光物に由来する発光点の輝度を取得して色彩的特性を算出することができる蛍光読取装置を提供することを目的としている。
【0018】
また、画像の発光点から、各画像の輝度を読み取って色彩的特性を算出する方法において、ある画像で発光点が得られなかった場合に、発光点を照合して輝度を求めることが不可能となる。また、その場合に発光点を検出しようとして、検出感度を向上させると、今度はSNが低下して、発光点以外のノイズを多く含んでしまう画像が取得され、正確な検査が困難になる。
【0019】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、発光点が得られなかった場合に、各画像の発光点の座標を元に、発光点がみられなかった部分の輝度を読み取り、使用することで、正確な輝度情報を取得することができ、色彩的特性を求めることができる蛍光読取装置を提供することを目的としている。
【0020】
また、発光点の座標を合わせる方法において、発光点が多い場合、発光点ごとに他の画像中で一致する発光点を探すような画像処理方法を用いると、画像を合わせるための計算式が膨大になり、演算する時間が膨大にかかってしまうという課題がある。 また、発光点が非常に少なく、1、2個であった場合には、各画像の発光点を一致させることはできるが、発光点が一致するものなのかどうかの判断ができないという課題がある。
【0021】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、補正値を用いて発光点の座標を補正することにより、計算式が膨大にならず、簡便に発光点を合わせることができ、また、発光点が一致するものかどうかが、一義的に決まる。それにより画像合わせが非常に効率化された蛍光読取装置を提供することを目的としている。
【0022】
また、補正値を用いて画像を合わせる方法において、使用する補正値を簡単に求めることが必要とされている。
【0023】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、全ての波長で検出可能な発光物の画像を、実検体と同じ工程で取得し、その画像から補正値を読み取ることで、毎回画像から補正値を求めることなく、また装置が変わっても簡便に補正値を求めることができ、効率化された蛍光読取装置を提供することを目的としている。
【0024】
また、補正値を使用することなく、全ての画像において、発光点の座標の照合を、画像ごとに確実な基準と比較して求めることが要求される。
【0025】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、測定する微生物に、同時に一定の決まった大きさと発色をもつ粒子を混合させておくか、もしくは微生物を固定する表面にグリッド線などのマーカーを設けて、微生物などの発光点の座標を各画像のマーカーからの値として管理することで、画像の位置ズレ誤差が見られた場合にも、影響を受けずに発光点の照合を行うことができる蛍光読取装置を提供することができる。
【0026】
また、複数の波長が異なる画像を取得して、色彩的特性を算出する微生物計数装置において、発光点が大きい場合は、画像の位置ズレ誤差があっても重なる部分が殆どである為、各画像で発光点を一致させる手段が不要であるが、例えば微生物などの小さな細胞の発光点の場合、画像のわずかな位置ズレ誤差が大きく影響し、各画像の発光点が全く重ならなくなり、色彩的特性を算出する値を求めることが困難になる。
【0027】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、各画像の発光点の座標を合わせて位置を合わせることで、発光点が非常に小さい場合であっても各画像の同じ発光物に由来する発光点の輝度を取得して色彩的特性を算出することができる微生物計数装置を提供することを目的としている。
【0028】
また、蛍光染色を用いた微生物の検出方法において、蛍光発光が微生物由来なのか、もしくは微生物以外の夾雑物に非特異的に吸着したものに由来するのか、さらには自家蛍光に由来するものなのかが、安全性の観点から高い精度で検出することができる手法が求められている。
【0029】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、色彩的特性の値を用いることにより、生菌、死菌または微生物以外の夾雑物であることを判断する為の特徴量を簡便に算出することができ、さらに、データの取得も容易で、精度も高い微生物計数装置を提供することを目的としている。
【0030】
また、複数の画像から発光点の照合を行う場合、補正値による画像合わせの後、発光点の座標をもとに一致する発光点を検索するが、このとき全く同一に重なることは少なく、一定の範囲内で一致するものを探す。しかし照合する照合範囲を広く取りすぎてしまうと、隣接する細胞や、近くに存在する細胞などと誤って一致させてしまうだけでなく、複数の細胞が同一であると判断される恐れがあり、検出精度の低下や、プログラムエラーを起こしうる可能性があるなどの課題がある。
【0031】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、発光点毎に照合する範囲を、細胞の大きさの範囲内に限定することで、2つ繋がった細胞であっても、あやまって一致させることを防ぐことができ、精度良く生菌、死菌、夾雑物の判別を行うことができる微生物計数装置を提供することを目的としている。
【0032】
また、微生物の発光点を含む画像から色彩的特性を示すデータを取得し、解析する手法において、全画素の輝度データから、目的の発光物の輝度値を効率的に抽出し、各画像の発光物のデータから色彩的特性を効率良く算出することが求められる。
【0033】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、画像から発光点を抽出する発光点抽出部と、抽出した発光点を位置補正して各画像の発光点を照合する発光点照合部とを設け、これらを連続的に行うことで、画像の全画素データから、必要なデータのみを抜き出し、結合させて目的のデータを効率的に作成することができ、さらに処理データを必要最小限に留めることができるため、処理速度を速め、計測時間を短縮することができる微生物計数装置を提供することを目的としている。
【0034】
また、発光点を特定して抽出する際、できるだけ漏れがなく、かつある程度発光点を選別して抽出し、次の工程を効率化することが必要とされる。
【0035】
また、微生物が繋がって存在している場合、画像上の発光点は一つのオブジェクトを形成しており、色彩的特性が混合されてしまうために、発光点の判別および計数精度が悪化してしまうという課題がある。このとき発光点の中で個別の微生物の位置を特定し、細胞一つ一つを別々に検出して計数することが必要とされる。
【0036】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、発光点をあらかじめ設定した範囲にある輝度と面積のものとし、そのときの輝度値は発光点の中の最大輝度値や、輝度の重心の値を使用することで、個々の微生物の中心地を特定し、微生物の特性を最も反映させた値を使用することができるため、精度の高い色彩的特性を取得し、検出漏れも少ない微生物計数装置を実現することができる。
【0037】
また、異なる波長のデータを取得しようとする際にも、微生物が拡散していると、カラーCCDでは、それぞれの波長に色感度をもつ電化結合素子の配列の問題から、微生物の発光点における同じ位置の情報を取得することが難しく、極端には、菌と菌周辺の位置の測定となるため、正確な色彩情報を取得できないという課題がある。
【0038】
また、複数の画像を取得して、各波長の輝度値を抽出しようとする場合、微生物が拡散していると、同じ微生物が異なる位置に写ってしまうため、各画像での微生物の一致が難しく、色情報を抽出できなくなるという課題がある。
【0039】
また、画像から発光点を抽出して生菌、死菌を計数する手法において、検体中の全数を測定するために、微生物が存在する領域を全て測定することが必要であるが、測定面積が極めて広くなり、測定に膨大な時間がかかってしまうという課題がある。
【0040】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、全ての領域を測定せずに、測定した領域の面積を算出して、測定有効エリア面積とし、微生物が存在する全表面積との値から、検体中の微生物の全数を算出して、迅速に微生物数を算出することができる微生物計数装置を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0041】
本発明の蛍光読取装置は上記目的を達成するために、請求項1記載のとおり、発光点の画像が複数あってそれぞれ異なる波長を示すものであるとき、各画像の発光点の2次元座標を合わせ、各画像の発光点または発光点以外の輝度値から色彩的特性を算出することを特徴としたものであり、各画像の位置ズレ誤差を除去し、同一の発光物に由来する発光点の輝度値を求めることができ、さらにある画像では発光点が検出されなかった場合に、発光点の無い部分でも輝度値を取得して使用することで、正確に各波長の輝度値を取得する事ができ、色彩的特性を算出する事ができる蛍光読取装置を実現する事ができる。
【0042】
また、請求項2記載の蛍光読取装置は、請求項1記載の蛍光読取装置において、発光点の2次元座標を画像ごとに指定した補正値を与えて補正し、座標が重なったものを同一の発光物由来の発光点とすることを特徴としたものであり、補正値を使用することで、発光点の数が非常に多く、発光点ごとに一致する発光点を検索させるような処理時間が膨大に要してしまうような場合にも、一括で座標を補正し、それによって一致するものを同一の発光点と決めることで、短時間で処理を行うことができ、また一方では、発光点の数が極めて少ないような画像であっても、発光点が一致すべきかどうかを、補正値を基準に判断する事ができ、正確に発光点を一致させる操作を簡便に行うことができる蛍光読取装置を提供する事ができる。
【0043】
また、請求項3記載の蛍光読取装置は、請求項2記載の蛍光読取装置において、2次元座標を補正する為の位置補正用画像をあらかじめ読み込むことを特徴としたものであり、測定ごとに補正値を算出することなく、全ての波長の画像に写りこむような蛍光ビーズなどの発光物を用いた画像をあらかじめ取得し、画像を読み込んでおくことで最適な補正値を算出し、使用することができ、画像あわせの工程を効率化した蛍光読取装置を提供する事ができる。
【0044】
また、請求項4記載の蛍光読取装置は、請求項1記載の蛍光読取装置において、画像内にあるマーカーを使用して複数の画像上にある発光点の2次元座標を合わせることを特徴としたものであり、最適な補正値が機械的誤差によりわずかに変化する可能性があるため、装置によっては画像あわせ精度に影響する場合があるが、画像内に同時に特徴的な粒子や、固定部表面にあるグリッド線などのマーカーを基準に発光点の座標を決める事で、画像の位置ズレ誤差にばらつきがあった場合にも、影響を受けることなく発光点の位置あわせを行うことができ、高精度な蛍光読取装置を実現する事ができる。
【0045】
また、請求項5記載の微生物計数装置は、発光点の画像が複数あってそれぞれ異なる波長を示すものであり、各画像の発光点または発光点以外の輝度値から発光点の色彩的特性を算出し、位置補正用画像を読み込んで補正値を算出する補正値算出工程と、その後段に画像ごとに算出された補正値を与えて座標を補正する座標補正工程と、その更に後段に各画像の2次元座標を合わせる座標照合工程を設けたことを特徴としたものであり、微生物を画像の発光点として取得した場合、非常に小さくなるため、大きなスポットでは影響しなかったようなわずかな位置ズレ誤差があった場合にも、微生物では発光点が全く一致しなくなってしまう場合があり、画像の座標を合わせることで、小さな発光点も一致させる事ができ、色彩的特性を算出する事ができる微生物計数装置を提供する事ができる。
【0046】
また、請求項6記載の微生物計数装置は、請求項5記載の微生物計数装置において、発光点の色彩的特性から微生物の生菌、死菌または微生物以外の夾雑物であること判断する蛍光評価部を設けたことを特徴としたものであり、色彩的特性を用いる事で、画像の取得が限られた構成要件でも比較的簡便に行うことができ、また解析も容易で、かつ生菌、死菌、もしくは微生物以外の夾雑物であることを判断する事ができる微生物計数装置を提供する事を目的としている。
【0047】
また、請求項7記載の微生物計数装置は、請求項5または6記載の微生物計数装置において、同一の発光点とするものが微生物1個の発光点の面積を越えない範囲に存在するものとすることを特徴としたものであり、2つの細胞がつながったようなものであっても、一致させる範囲を細胞の面積範囲内とすることで、あやまって隣接する細胞の輝度値と照合してしまうことを防ぎ、より精度の高い微生物計数装置を実現する事ができる。
【0048】
また、請求項8記載の微生物計数装置は、請求項6または7に記載の微生物計数装置において、撮像エリアごとに波長の異なる画像を連続的に取得し、蛍光評価部において各画像の輝度から色彩的特性を示す値を算出することを特徴としたものであり、色彩的特性を示す画像を各撮像位置で連続して取得することで、サンプルの変化の影響を受けず、精度の高い画像を取得することができる微生物計数装置を実現できる。
【0049】
また、請求項9記載の微生物計数装置は、請求項5から8のいずれかに記載の微生物計数装置において、取得した各画像に含まれる発光点の座標を抽出する発光点抽出部と、画像ごとに抽出した発光点の座標に補正値を与え、発光点を照合する発光点照合部を備えることを特徴としたものであり、画像の全画素数の膨大なデータから、必要なデータのみ抽出して以降の解析操作を行うことができるため、迅速に計数を行える。また発光点の照合も画像をそのまま行うのではなく、画像から発光点の情報を抜き出した後に行うことで、画像処理時に膨大なデータをメモリに保存して繰返し読みに行く画像処理の負荷が軽減され、迅速な微生物計数装置を実現することができる。
【0050】
また、請求項10記載の微生物計数装置は、請求項9記載の微生物計数装置において、発光点抽出部において、あらかじめ設定された面積および輝度の範囲内のものを発光点とし、発光点の輝度値を、抽出した対象物の最大輝度値とし、座標を最大輝度値のピクセルの座標とすることを特徴としたものであり、抽出する発光点を輝度と面積で範囲を限定することにより、画像中のゴミやノイズなどをあらかじめ除去し、それらを解析するのにかかる時間等の負荷を軽減し、迅速な微生物計数装置を実現できる。
【0051】
また、請求項11記載の微生物計数装置は、請求項10記載の微生物計数装置において、座標の補正値から算出された画像の計数有効面積と、固定部の全表面積とから検体中の微生物の全数を算出することを特徴としたものであり、微生物の固定部の全表面をスキャンすることによる膨大な検査時間を短縮するために、固定部の一部を測定し、測定した有効エリア面積を算出して全面積から割り返して微生物の全数を求めることにより、大幅に検査時間を短縮することができ、迅速な微生物計数装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0052】
本発明の微生物計数装置によれば、位置ズレ誤差を削除し、各画像の発光点について座標をもとに比較することができるようになり、微生物の判定処理を効率化することができる。
【0053】
また、発光点が一方の画像で検出されない場合があっても、発光点のない部分の輝度値を利用することで、より正確性を高めることができる。
【0054】
また、補正値を用いることで、発光点が多い場合に、画像あわせ処理を簡略化し、時間を短縮することができる。
【0055】
また、補正値を使用することで、発光点が非常に少ない場合にも、発光点が一致しているかどうかを判断する事ができる。
【0056】
また、補正値により画像を補正することで、画像処理工程を簡略化し、迅速かつ低コストな画像処理方法とすることができる。
【0057】
また、補正用画像をあらかじめ読み込んで補正値を求めておく事で、補正値を正確に求めることができ、さらに、画像ごとに補正値を算出することがなくなり、全体として効率化することができる。
【0058】
また、画像中のマーカーを使用することで、機械的誤差のばらつきが大きい場合にも、位置ズレの影響を受けることなく、画像あわせ精度を向上させることができる。
【0059】
また、蛍光染色試薬の蛍光発光を精度良く評価することにより、より確実に微生物だけを検出することができる。
【0060】
また、微生物だけを検出することにより、検査結果の確実性が向上し、安全性の高い食品や化成品、水などの製品を提供することができる。
【0061】
また、微生物だけを検出することにより、より確実に微生物の発酵工程を管理することができ、品質の安定した製品を提供することができる。
【0062】
また、微生物だけを検出することにより、廃水や土壌などの汚染処理の工程管理が迅速に行えるようになり、効率化された処理技術が実現できる。
【0063】
また、色度、色相角、彩度、明度などの色彩的特性を使用することで、複数の画像の輝度から判別精度の高い蛍光発光の特徴量を示す値を簡便に求めることができる。
【0064】
また、画像あわせにより位置ズレを補正することで、微生物のような非常に小さい発光点であっても、正確に一致させることができる。
【0065】
また、各画像から輝度を抽出し、色彩的特性を判別する工程を実行することができる。
【0066】
また、同一の発光点の範囲を細胞の大きさ程度とすることで、走査時間を最小限に抑えることができる。
【0067】
また、同一の発光点の範囲を細胞の大きさ程度とすることで、つながった細胞でも、それぞれで輝度値を求め、生菌、死菌の判断をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
本発明の請求項1記載の発明は、発光点の画像が複数あってそれぞれ異なる波長を示すものであるとき、各画像の発光点の2次元座標を合わせ、各画像の発光点または発光点以外の輝度値から色彩的特性を算出することを特徴としたものであり、各画像の位置ズレ誤差を除去し、同一の発光物に由来する発光点の輝度値を求めることができ、さらにある画像では発光点が検出されなかった場合に、発光点の無い部分でも輝度値を取得して使用することで、正確に各波長の輝度値を取得する事ができ、色彩的特性を算出する事ができるという作用を有する。
【0069】
また、請求項2記載の発明は、発光点の2次元座標を画像ごとに指定した補正値を与えて補正し、座標が重なったものを同一の発光物由来の発光点とすることを特徴としたものであり、補正値を使用することで、発光点の数が非常に多く、発光点ごとに一致する発光点を検索させるような処理時間が膨大に要してしまうような場合にも、一括で座標を補正し、それによって一致するものを同一の発光点と決めることで、短時間で処理を行うことができ、また一方では、発光点の数が極めて少ないような画像であっても、発光点が一致すべきかどうかを、補正値を基準に判断する事ができ、正確に発光点を一致させる操作を簡便に行うことができるという作用を有する。
【0070】
また、請求項3記載の発明は、2次元座標を補正する為の位置補正用画像をあらかじめ読み込むことを特徴としたものであり、測定ごとに補正値を算出することなく、全ての波長の画像に写りこむような発光物を用いた画像をあらかじめ取得し、画像を読み込んでおくことで毎回最適な補正値を算出し、使用することができ、画像あわせの工程を効率化することができるという作用を有する。
【0071】
また、請求項4記載の発明は、画像内にあるマーカーを使用して複数の画像上にある発光点の2次元座標を合わせることを特徴としたものであり、最適な補正値が機械的誤差によりわずかに変化する可能性があるため、装置によっては画像あわせ精度に影響する場合があるが、画像内に同時に特徴的な粒子や、固定部表面にあるグリッド線などのマーカーを基準に発光点の座標を決める事で、画像の位置ズレ誤差にばらつきがあった場合にも、影響を受けることなく発光点の位置あわせを行うことができるという作用を有する。
【0072】
また、請求項5記載の発明は、発光点の画像が複数あってそれぞれ異なる波長を示すものであり、各画像の発光点または発光点以外の輝度値から発光点の色彩的特性を算出し、位置補正用画像を読み込んで補正値を算出する補正値算出工程と、その後段に画像ごとに算出された補正値を与えて座標を補正する座標補正工程と、その更に後段に各画像の2次元座標を合わせる座標照合工程を設けたことを特徴としたものであり、微生物を画像の発光点として取得した場合、発光点の大きさは非常に小さくなるため、大きなスポットでは影響しなかったようなわずかな位置ズレ誤差があった場合にも、微生物では発光点が全く一致しなくなってしまう場合があるが、画像の座標を合わせることで、小さな発光点も一致させる事ができ、色彩的特性を算出する事ができるという作用を有する。
【0073】
また、請求項6記載の発明は、発光点の色彩的特性から微生物の生菌、死菌または微生物以外の夾雑物であること判断する蛍光評価部を設けたことを特徴としたものであり、色彩的特性を用いる事で、画像の取得を、限られた構成要件にて比較的簡便に行うことができ、また解析も容易になるという作用を有する。
【0074】
また、請求項7記載の発明は、同一の発光点とするものが微生物1個の発光点の面積を越えない範囲に存在するものとすることを特徴としたものであり、2つの細胞がつながったようなものであっても、一致させる範囲を細胞の面積範囲内とすることで、あやまって隣接する細胞の輝度値と照合してしまうことを防ぎ、精度を高めることができるという作用を有する。
【0075】
また、請求項8記載の発明は、撮像エリアごとに波長の異なる画像を連続的に取得し、蛍光評価部において各画像の輝度から色彩的特性を示す値を算出することを特徴としたものであり、色彩的特性を示す画像を各撮像位置で連続して取得することで、サンプルの経時変化の影響を受けず、安定性を高めることができるという作用を有する。
【0076】
また、請求項9記載の発明は、取得した各画像に含まれる発光点の座標を抽出する発光点抽出部と、画像ごとに抽出した発光点の座標に補正値を与え、発光点を照合する発光点照合部を備えることを特徴としたものであり、画像の全画素数の膨大なデータから、必要なデータのみ抽出して以降の解析操作を行うことで、画像処理時に膨大なデータをメモリに保存して繰返し読みに行く画像処理の負荷が軽減され、迅速化できるという作用を有する。
【0077】
また、請求項10記載の発明は、あらかじめ設定された面積および輝度の範囲内のものを発光点とし、発光点の輝度値を、抽出した対象物の最大輝度値とし、座標を最大輝度値のピクセルの座標とすることを特徴としたものであり、抽出する発光点を輝度と面積で範囲を限定することにより、画像中のゴミやノイズなどをあらかじめ除去し、それらを解析するのにかかる時間等の負荷を軽減することができるという作用を有する。
【0078】
また、請求項11記載の発明は、座標の補正値から算出された画像の計数有効面積と、固定部の全表面積とから検体中の微生物の全数を算出することを特徴としたものであり、微生物の固定部の全表面をスキャンすることによる膨大な検査時間を短縮するために、固定部の一部を測定し、測定した有効エリア面積を算出して全面積から割り返して微生物の全数を求めることにより、大幅に検査時間を短縮することができるという作用を有する。
【0079】
(実施の形態1)
まず、微生物を含む試料を測定するために、固定部となるスライドグラスや、培養ディッシュ、マルチウェルプレート、またはろ過膜や、測定に適した形状を持つセルの観察面表面の表側、もしくは裏側の一方に微生物を固定する。固定は、ポリ−L−リジンのような試薬や、ゼラチンなどの粘着性、付着性をもった高分子材料を表面に薄く塗布し、微生物を含んだ試料を滴下し、表面に吸着させる。またメンブランフィルタのようなろ過膜の場合、上方から液体試料を吸引してろ過し、メンブランフィルタ表面に微生物を平面状に捕捉し、固定する。本発明において、最も好適に実施するものとしては、このようなろ過膜を使用することで、以下の染色や洗浄などの操作が簡便かつ微生物を流失することなく扱うことができるのでよい。また、メンブランフィルタは、薄く、小さいため、そのままでは取り扱いが容易でない。そのため、専用の支持台、吸引口付きのホルダーを使用したり、もしくは膜に保持部を結合するか、一体化させたデバイスとすることで容易に膜を取り扱うことができる。
【0080】
また本発明において微生物を含有するか含有する可能性のある検体は液状検体であるが、検査対象が飲料水などの液状サンプルの場合は、それ自体が液状検体となる。検査対象が野菜や肉をはじめとする食材などの固体サンプルの場合は、それをホモジナイズして液状検体としたり、その表面から綿棒などを用いて細胞および微生物を採取し、これを生理食塩水や燐酸緩衝液などに遊離させて液状検体としたりする。また、まな板などの調理器具などが検査対象となる場合、その表面から綿棒などを用いて微生物を採取し、これを生理食塩水などに遊離させて液状検体とする。こうした液状検体をメンブランフィルタで吸引および加圧濾過、また場合によっては超音波を利用して加振ろ過することでメンブランフィルタ上に細胞および微生物を捕捉することができる。
【0081】
また、固定部としては、メンブランフィルタ以外にも、プレパラート表面や、可視光の透過性が高く、平面性の高いプレートの表面や、プレート間の間隙に固定し、もしくは粘着性を持ったシート状、ディスク状のチップデバイス表面、平板培地表面、もしくはシャーレやディッシュ、マルチウェルプレートなどの表面、電極材料や吸着材料の表面などに行う。このとき、固定は、遠心力や、静電気力、誘電泳動力、疎水力などの物理吸着力以外にも、ゼラチンなどの接着成分によるものや、抗原・抗体反応、リガンド・レセプターの反応などの生物的な結合力を用いることができる。
【0082】
また、蛍光染色試薬の浸透を調整するために、必要に応じて、適当な濃度の2価金属錯体や、カチオン性界面活性剤を混合した水溶液などを液体試料に混合させるか、もしくは細胞および微生物が固定部の上方から接触、またはろ過するか、または下方から接触させるなどの手法により、細胞および微生物の細胞膜透過性を一定に保たせることができる。
【0083】
なお、2価金属錯体としては、エチレンジアミン四酢酸などを0.5から100mM程度の濃度範囲にて使用する。
【0084】
なお、カチオン性界面活性剤としては、Tween20やTween60、Tween80、TritonX−100などの細胞に対して侵襲性が低いものが使用でき、これらを0.01から1%程度の濃度範囲にて使用する。
【0085】
次に蛍光染色手段として、乾燥防止成分を混合し、生死菌染色試薬または死菌染色試薬のいずれか、または両方を一定濃度含む染色試薬を固定表面に一定量滴下する。
【0086】
蛍光色素は、核酸結合性の構造をもつが好ましく、生死菌染色試薬として使用するものは、紫外励起で青色蛍光を発するものであれば、1,4−ジアミジノ―2−フェニルインドール、青色励起で緑色蛍光または黄緑色、黄色蛍光を発するもので、例えばアクリジンオレンジ、オキサゾールイエロー、チアゾールオレンジや、SYTO9、SYTO13、SYTO16、SYTO21、SYTO24、SYBR Green I、SYBR Green II、SYBR Goldなどのポリメチン架橋非対称シアニン色素系化合物が使用できる。また、用途によってはグラム陽性菌を染色し、グラム陰性菌は染色されないヨウ化ヘキシジウムなどの生死菌染色試薬を使用することも有効である。
【0087】
また、死菌染色試薬としては、緑色蛍光を発するもので、例えばアクリジン2量体、チアゾールオレンジ2量体、オキサゾールイエロー2量体などのモノメチン架橋非対称シアニン色素2量体や、SYTOX Green、TO−PRO−1などのモノメチン架橋非対称シアニン色素系化合物、赤色蛍光を発するものであれば、ヨウ化プロピジウム、臭化ヘキシジウム、臭化エチジウム、LDS−751、SYTOX Orangeなどのポリメチン架橋非対称シアニン色素などが使用できる。
【0088】
なお、これらの蛍光色素は、細胞および微生物を含む試料に対して、あらかじめ0.1から100μMとなるようを混合しておき、同時に作用させるか、もしくは別々に、時間を置かず、もしくは適当な時間間隔を開けて所定の濃度で作用させることとする。
【0089】
なお、メンブランフィルタ上に捕捉した細胞および微生物を含む物質表面が、測定中に乾燥し、発光強度が変化することを防ぐための手段として、染色試薬には10から60%w/vのグリセロールや、10から90%v/vのD(−)−マンニトールやD(−)−ソルビトールなどの糖アルコール類のいずれかを1種類以上混合させておく。
【0090】
なお、乾燥固化して保存する目的として、ポリビニルアルコールを10から80%程度の適当な濃度にて混合、もしくは後から表面を覆うことで、蛍光発光を比較的安定に保存することができる。
【0091】
なお、固定部として適しているメンブランフィルタとしては、例えば、孔径が0.2μm〜1μmのポリカーボネート製など公知のものを用いることができる。
【0092】
また、画像検出には、蛍光色素に対して特定の波長を照射するための励起光源、分光フィルタ、励起光を直径3mm程度に集光する為の集光レンズ、励起光の成分を除去する為のハイパスフィルタ、試料から発せられる蛍光から特定の波長成分を取り出すための受光フィルタ、拡大する為のレンズユニット、蛍光像を画像の電気信号に変換するためのCCDやCMOSなどの受像素子により構成される。
【0093】
蛍光染色試薬として使用する蛍光色素の主な発光波長であるが、例えば、青色励起の場合には波長が470nmから510nm付近の波長成分を含む励起光を照射した場合、波長が510nmから540nm付近の蛍光を発する。緑色励起の場合には、510nmから550nm付近の波長成分を含む励起光を照射し、波長が560から620nm付近の蛍光を発する。オレンジ色励起の場合には、波長が540nmから610nm付近の波長成分を含む励起光を照射した場合、波長が560nmから630nm付近の蛍光を発する。
【0094】
そのため、検出手段である励起光源として、発光ダイオードを使用する場合、青色のものでは、好ましくは480nm付近の波長を発することができるもの、緑色のものでは、好ましくは535nm付近の波長を発することができるもの、黄色からオレンジ色のものでは、好ましくは560nm付近の波長を発することができるものを使用する。
【0095】
なお、発光ダイオードを使用する場合、励起光の成分が広帯域に渡る場合が多く、蛍光画像のバックグラウンドの増加の要因となりうるため、適切な干渉フィルタを使用して、特定の波長成分を切り出して使用する。
【0096】
また、励起光源としてレーザーを用いる場合には、青色のものでは、好ましくは475nm付近の波長を発することができるもの、緑色のものでは、好ましくは535nm付近の波長を発することができるものを使用する。
【0097】
また、励起光源としてハロゲンランプや水銀ランプを使用する場合には、適当な分光フィルタとして、染色試薬の励起波長に合わせて最適な干渉フィルタを使用することができる。また、0.1から10nmの波長分解能を有する反射型や透過型の回折格子により、最適な角度を与え、任意の波長を含む励起光を取り出すことができる。
【0098】
集光レンズは、蛍光染色された細胞および微生物が展開されているメンブレンフィルタに対し、照射範囲が、例えば直径が3mm程度の一定面積となるよう励起光を照射することができる。さらに光を散乱させるための拡散板などを上流側に組み合わせることでより均一な励起光を照射することもできる。
【0099】
サンプルに照射された励起光により発生した蛍光は、ハイパスフィルタを通過することで、色彩的特性は損なわれず、効果的に励起光由来の光成分がカットされる。
【0100】
当該蛍光はレンズユニットを通し、受光部として単板カラーCCDや、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3原色を取得できるRGB3種類の蛍光フィルタを含む3CCDなどの電荷結合素子ユニットを用いて露光時間0.1秒から10秒程度の露光時間でRGB3色からなる画像撮影することにより取得される。
【0101】
取得する色の輝度情報は、蛍光染色試薬である蛍光色素の蛍光波長範囲であれば、使用可能である。例えばシアニン色素であるSYBR Greenの場合、極大蛍光波長は521nmであるが、蛍光スペクトルは620nm付近まで広がっており、生死菌染色試薬として使用した場合、530nm付近の緑色(G)を画像(a)、610nm付近の赤色(R)を画像(b)として取得することができ、(a)、(b)を使用して微生物と夾雑物との判別が行える。
【0102】
また、単板モノクロCCDやCMOSを使用した場合、適切な受光フィルタを切り替えて使用することで、必要な波長の輝度情報を含む画像を取得することができる。このとき、別の利点として、同一のCCDを使用することで、異なるCCDによる感度特性の差の影響は全く受けずに測定を行うことが可能となり、感度補正を行う工程を省略することができる。
【0103】
これらの操作により取得された複数の蛍光画像は、演算部であるマイコンや外部端末上のプログラムによって処理される。
【0104】
演算部には、画像からドット欠けなどの輝点を除去するための輝点除去部と、画像から発光点を抽出するための発光点抽出部、複数の画像の座標を補正する座標補正工程と発光点を照合して一致させる座標照合工程を行う発光点照合部、照合されて数値が結合されたデータを出力する出力部、蛍光発光を評価する蛍光評価部、染色試薬の輝度より微生物の生死を判別する生死判断部、そして色彩的特性を表す変数によって発光点が微生物もしくは夾雑物であることを判別する微生物判断部、そして測定した画像の有効面積を算出する有効エリア算出部により構成される。
【0105】
まず、輝点除去部であるが、これはCCDなどの受像素子に見られる画素ピクセルの感度ムラや、感度消失した部分によるドット欠けと呼ばれる現象があるが、このドット欠けの輝点が画像上に現れると、微生物の発光点と間違える恐れがあるか、または微生物の発光点を取得できない原因となり、誤差の要因となりうる。そのためこのような輝点は除去する必要があるが、輝点除去用の画像として、光源を照射しない暗視野画像を、露光時間をサンプル測定と同程度かもしくは長めに設定して取得し、輝点のみが写っている画像を得る。そして発光点を写した各画像から輝点画像を減算することにより、輝点のみを削除することが可能となる。そのようにして輝点を除去した画像を以下において使用する。
【0106】
発光点抽出部について、画像中に含まれる発光点のうち、設定された面積、輝度の範囲に該当するものを抽出する。例えば、面積を2から15、輝度を15から255とすると、面積が16以上であるような大きい夾雑物はあらかじめカウントから除外することができ、また輝度が14以下のバックグラウンドノイズ(暗ノイズ)を除去することができる。このしきい値は、レンズの倍率や、励起光源の強度、露光時間などにより最適な値が変化するため、微生物を最適に抽出できる値は、あらかじめ検証して確認することが必用である。
【0107】
なお、最大輝度を示した座標の(x、y)の値、RGBの値を含む場合、それぞれの輝度も数値として同時に抽出される。この処理は、汎用的な画像処理ソフトウェアであるImage Pro Plusなどを使用して実行できる。また、同様の処理を組み込んだプログラムとすることもできる。
【0108】
次に発光点照合部によって、抽出された発光点の数値データと、異なる輝度情報を含む同位置の発光点の数値データとを、座標をもとに比較、照合され、結合される。
【0109】
このとき、異なる輝度情報を含む画像とは、異なる受光フィルタで取得された画像のことを指すが、画像間では受光フィルタの特性や、機械的誤差に起因する座標ズレがわずかに生じる為、そのまま画像のピクセル座標を照合した場合、一致しないことがある。そこで、一方の座標に画像ズレを補正する座標補正値を補って照合させるのだが、特に機械的誤差については温湿度などの使用環境の影響により、使用するごとに座標ズレの値が変化してしまう場合がある。そのため、座標補正値を測定毎に更新して使用することで、測定ごとに最適な値を使用することが有効である。
【0110】
座標を補正するための補正値は、あらかじめ取得した位置補正用画像から補正値を読み取ることにより取得する。位置補正用画像は、取得する全ての波長域において写りこむ蛍光体を使用して撮像する。取得する波長が緑色と赤色であれば、長波長側の赤色の蛍光粒子が使用でき、同程度の発光強度が得られるように励起光源の強度と露光時間を調節して行う。また、蛍光体により補正値を自動で算出させるような処理の場合には、個数が多くなると演算する数も多くなり、時間がかかってしまうため、画面あたり5から50個の範囲内であれば、1から数分程度と比較的短時間で求めることができる。このような濃度になるように調整し、確認された蛍光粒子の懸濁液を一定量メンブランフィルタにろ過したり、固定部と反応させることにより、位置補正用画像を取得するための位置補正用サンプルを作成する。また、これを校正用チップとして長期的に繰返し使用したい場合には、ビーズを高分子などで固定するか、金属蒸着で金属薄膜を覆ってしまうことにより固定しておくことで繰返し使用しても外れずに位置が一定になる。また、校正用サンプルとしては、その他にも、蛍光性の樹脂をマスキングして微小パターンやスポットを形成させるなどにより作成することも有効である。
【0111】
このようにして作成された校正用チップは、装置に設置されて実際の計測と同じ動きを与えて画像を撮像する。これにより、モーターの位置制御誤差やバックラッシュなどの機械的誤差、フィルタやレンズの製造誤差、装置を組み上げる際の製造誤差に由来する光軸のズレなどで発生する画像の座標ズレを再現した画像を取得し、その補正値を求めて実際の計測で使用することで、位置精度が高められる。
【0112】
画像中に見られる微生物の発光点を示すオブジェクトは、拡大レンズ系の合計が200から300倍程度のときは、オブジェクトの面積は受像素子上で1から20ピクセル程度になる。これは微生物の細胞1個の直径が0.6から5μm程度であるときに撮像された値である。一方、微生物細胞が2から複数個繋がっていた場合、発光点のオブジェクトの面積は大きくなり、20ピクセルを越えるものも見られる。このような大きな発光点のオブジェクトは、共焦点光学系などの特殊な光学系を使用しない限りは、殆どの場合一つのオブジェクトとして検出され、二つのオブジェクトを分離して検出することが難しい。このとき問題となるのは、二つのオブジェクトが異なる発光特性をもつ場合に、各画像を比較して発光点を照合して輝度を結合したときに、同一のオブジェクトとして検出される、隣り合った微生物の発光輝度を誤って結合してしまうと、本来の微生物の発光特性とは全く異なる不正確なデータが形成されてしまうという恐れがある。そのような事例を防止するためには、発光点の座標をオブジェクトの最大輝度値を示す座標とし、画像間の発光点を照合するときは、その座標から非常に近傍に限定された誤差範囲エリア内にあるもう一方の画像の座標をもつ発光点とのみ結合されるようにすることが必要である。
【0113】
そのため、同一の発光点のオブジェクトとして抽出されているものであっても、照合した場合に一致しないことがありうる。そのとき結合する輝度データが存在しなくなってしまうことを防止するために、照合するもう一方の画像に一致する発光点が検出されなかった場合に、もう一方の画像中の同じ座標のピクセルの輝度値を抽出し、この値を結合させることが有効である。これにより、発光点が一方の画像でしか抽出されなかった場合でも、輝度情報を欠如させることなく、精度よく照合データを作成することができることになる。
【0114】
また、最終菌数の検出精度にも関連するが、生菌と死菌が繋がって存在している場合、上記のような工程を持たせなければ、オブジェクトを死菌として検出してしまう可能性があるが、これにより生菌と死菌が繋がったものとして検出することができるようになり、培養法などとの相関性が向上することに繋がる。
【0115】
照合されて結合されたデータは、出力部によりデータファイルとして出力される。この時点でデータファイルとして保存することで、この後の工程を一度にまとめて処理することも可能となるため、作業が効率化される。
【0116】
発光点の輝度情報をもつデータファイルに対して、生死判断部によって発光点が生菌群であるか、もしくは死菌群であるかいずれかに分類される。このとき、生菌群、もしくは死菌群であることを示すパラメータを与えることで、以降の処理が行いやすくなり、処理を効率化することができる。尚、パラメータとは生菌群であれば1、死菌群であれば2であるというように、発光点のデータの変数を与えることにより行うこととする。
【0117】
生菌群または死菌群であるかを判断する為には、以下のようにグラフを使用することが望ましい。まず、発光点のデータのうち、生死菌染色試薬の輝度と、死菌染色試薬の輝度を用いて、この二つの値よりドットプロットを作成し、表示させる。これは、横軸に生死菌染色試薬の輝度値、縦軸に死菌染色試薬の輝度値をとり、検出された発光点毎にプロットしていく。尚、ドットプロットの表示は、画像処理を行うプログラムのインターフェース上に行うことが良く、発光点のデータファイルを読み出した場合に表示させるようにするとよい。
【0118】
次に、表示されたドットプロットに対して、カーソルを使用して境界線を作成する。境界線は、1本ないし複数本の直線や曲線、多角線などで自由に作成することができるものとし、プロットを見ながら、プロットの集団を分類しやすいように、作成する。なお、境界線の作成工程は、簡単に行えるようにグリッドなどを使用したり、輪郭やプロットにトラップさせるような機能を持たせると、作成が容易であり、かつ正確に行うことができる。
【0119】
また、多角線の場合には、線が交差しないように、一方の方向のみに作成可能とすると確実である。
【0120】
作成した境界線は、取り消すことや、保存することができるようにし、繰り返し使用することができるようにする。
【0121】
次に、作成した境界線をもとに、境界線に相当するしきい値を算出する。算出されたしきい値に対して、グラフの上・左側にあるものが死菌群、反対が生菌群として分類し、パラメータを与えて処理する。
【0122】
生菌群、死菌群が判断された後、微生物判断部によって夾雑物を分離除外する場合は、以下の処理を行う。微生物と夾雑物の判別は、色彩的特性の値を算出することによってなされる。
【0123】
色彩的特性とは、RGBの輝度値より演算されて与えられた色度、色相角などの色彩的特長を示す値のことである。色彩的特長を示す表色系は、Lab表色系や、LCh表色系、XYZ表色系などの表色系が使用される。ここではXYZ表色系に基づいた色度を用いる。取得される輝度はRGBの色空間のものであるため、このRGBそれぞれの輝度値から、XYZ表色系への変換が行われる。
【0124】
(数式1)
X=0.3933×R/255+0.3651×G/255+0.1903×B/255
Y=0.2123×R/255+0.7010×G/255+0.0858×B/255
Z=0.0182×R/255+0.1117×G/255+0.9570×B/255
さらに、
x=X/(X+Y+Z)
y=Y/(X+Y+Z)
式中のR、G、BはそれぞれR輝度値、G輝度値、B輝度値であることを示す。これにより細胞および微生物または夾雑物かの判断に必要な値として、最終的にx、yの値が算出される。
【0125】
発光点毎に算出された色度の値であるが、発光点はそれぞれ生菌群、死菌群であるかを判別するためのパラメータが与えられており、生菌群であった場合には、生菌群に対して設定された色度しきい値と比較し、死菌群であった場合には、死菌群に対して設定された色度しきい値と比較して、それぞれに夾雑物が除外される。夾雑物が除外され、生菌、死菌として判断されたものは、積算され、カウントされる。
【0126】
次に、このカウント値に対して、実際に使用した検体に含まれる単位量あたり(たとえば1mLや1グラムなど)の菌数の総数を算出する。そのためには、測定した画像のうち、画像処理して使用した有効エリア面積を有効エリア算出部にて求める。測定に使用した有効エリアは、画像の補正値を変数とした関数で求められる。
【0127】
画像の縦の長さをP、横の長さをQ、縦方向の座標補正値をα、横方向の座標補正値をβとすると、1画面あたりの有効エリア画素数Mは数式2のように表される。
【0128】
(数式2)
M =(P−α)×(Q−β)
また、有効エリア面積は、レンズ系の倍率などから、画素あたりの面積を求め、画素あたりの面積をsとするとし、測定視野数をNとして、1画面あたりの有効エリア面積Sと全有効面積は、
(数式3)
S = Ms
全有効面積:S×N
となる。
【0129】
得られた面積に対して、微生物の固定部の固定部分の表面積(例えば、メンブランフィルタの全面積)の値を割り返す。これにより得られた数値を、カウント菌数に掛け合わせることで、最終的な、微生物の生菌または死菌の総数を算出し、菌数を求めることができる。
【0130】
以上の手法を用いて、試料中や細胞培養液に含まれていた微生物の生死を判別し夾雑物と分離して、数を計量することができるのである。
【0131】
図1は、本発明を好適に実施するための微生物計数装置1の一態様を示す概念図である。この微生物計数装置1は、検出手段として励起光源2、干渉フィルタ3、集光レンズ4、ハイパスフィルタ5、受光フィルタ6、レンズユニット7、受光素子8を含む。励起光源2から発せられた励起光から目的の波長を取り出すために干渉フィルタ3で分光する。分光された励起光は集光レンズ4を経て検査台9にセットされたメンブランフィルタ10(別途の操作によりメンブランフィルタ10上に核酸結合性の蛍光色素で染色された微生物を捕捉してあるもの)上に集光される。励起光源2から発せられた励起光は、集光レンズ4によって集光されるが、その際、集光レンズ4によって励起光を照射する範囲は直径3mm程度の微小な一定面積に集光される。励起光により発する蛍光は、励起光成分を除去するためにハイパスフィルタ5を経て、受光フィルタ6、レンズユニット7により拡大され、受像素子であるCCDユニット11に到達し、電気信号化される。これにより得られた信号は画像化され、演算部12によって画像処理される。
【0132】
図2は、演算部12における演算工程フローを示した図である。輝点除去部13、発光点抽出部14、発光点照合部15、出力部16、蛍光評価部17、そして有効エリア算出部18から構成されている。
【0133】
まず座標補正用画像を読み込んで座標補正値を算出する。次にしきい値などの変数を入力し、輝点除去部13によって輝点を除去した画像を作成する。続いて、発光点抽出部14により画像中の発光点を特定し、数値データを抽出する。画像によっては座標補正値により座標を補正する。異なる輝度情報を含む発光点のデータは、発光点照合部15によって照合し、結合される。これにより集合された数値データは、出力部16によってデータファイルに出力され、保存される。発光点の数値データは蛍光評価部17によって蛍光の色情報の解析が行われる。蛍光評価部17は生死判断部19と微生物判断部20から構成される。生死判断部19はデータファイルに対して生菌群または死菌群であるかを判別し、発光点毎に生菌もしくは死菌のフラグを立てる。微生物判断部20により、フラグを検出して生菌群か死菌群かを判断した後、各群ごとに設定した微生物もしくは夾雑物であるかをしきい値と照合して判別する。また有効エリア算出部18では、取得した画像から有効エリアを求め、全面積に対して割り返すことで最終の菌数を算出、出力する。これらは画像処理をプログラミングされたマイコン等であり、外部接続した端末などによって操作されるソフトウェアと通信して使用されるものも該当する。
【0134】
図3(a)は、微生物判断部20の詳細を示す。E.coliを含む水検体をメンブレンフィルタ10にろ過し、生死細胞用蛍光色素であるSYTO9と、死細胞用蛍光色素であるヨウ化プロピジウムを用いて染色したものを、単板モノクロCCDと、青色励起光照射におけるG輝度画像とR輝度画像を取得したデータの一例を示す表である。このとき、B輝度画像は、励起光の波長と重なるために取得できず、数値を代入して使用している。この変数は、最適な値に調整することができる。
【0135】
図3(b)に示される工程は、RGBの輝度から、XYZ表色系の(x、y)の値への変換を示す。この工程はまず、RGBの輝度を測定する手段によって取得されたRGBそれぞれの輝度値から、リニアRGBへの変換、ガンマ補正がなされる。これにさらに視覚的特性を重み付けし、微生物または夾雑物かの判断に必要な値として、最終的にx、yの値が求められる。このとき、例えば光学フィルタによって青色(B)をカットし、緑色(G)および赤色(R)のみが取得されるような条件の場合には、青色の感度は得られないものとして、あらかじめ実験によって最適化された固定値を代入して使用することや、またはRまたはGの輝度値による関数を設定して使用することもできる。これにより得られた色度の値に対してしきい値と比較することで、微生物か夾雑物であるかを判別する。なお、このときのしきい値は実験により決定する。
【実施例】
【0136】
(実施例1)
E.coliを含む菌液と、水道水(塩素除去済み)の中の菌数を測定する。これらの液体試料を、孔径が0.45μm、直径9mmの黒色メンブランフィルタ10に表面を金属蒸着したものの上方からピペットにて滴下し、吸引ろ過した。メンブランフィルタ10は、そのままでは表面に触れてしまう恐れがあり、扱いにくいため、周囲を樹脂枠で覆い、一体化させたものを使用した。吸引ろ過圧は、あまり高すぎるとろ過できず、低すぎると微生物へのダメージとなってしまうばかりか、メンブランフィルタ10が破損することがあるため、100から400Torr付近のポンプ圧に設定して行った。メンブランフィルタ10上にろ過するとき、計数しやすさや、逆算する精度の問題から、微生物などの発光物はできるだけ均一に分散させる必要がある。そのため、メンブランフィルタ10のろ過性能を均一にするために、メンブランフィルタ10下方の吸引口にはろ紙などを挟み、吸引圧を拡散して、メンブラン全体に均一にかかるようにして行った。また、それとは別に、メンブランフィルタ10のポアの通過抵抗を減少させるため、液体試料をろ過する前に、少量の界面活性剤希釈液(Tween20 0.1%)をろ過した。液体試料は、E.coli菌液の場合は0.1mL、水道水の場合は20mLろ過した。
【0137】
続いてメンブランフィルタ10上に捕集された微生物に対して、蛍光染色を行った。染色試薬は、生死菌染色試薬であるSYTO24と、死菌染色試薬であるSYTOX Orange(いずれも商品名)を使用した。これらの染色試薬は、空気中で光を吸収して分解しやすいため、ジメチルスルホキシドにて500μMに調整し、少量ずつマイクロチューブに分注してストック液とし、保管した。保管は、マイクロチューブ内に窒素を封入し、マイナス20度のフリーザーにて暗所保管した。必要本数を解凍し、それぞれの試薬10μLに対して希釈液を全量が1mLになるように加え、混合した。この希釈液は、試薬の溶解性と、保存性、細胞への浸透性、乾燥防止性、低自家蛍光性である必要があるが、このような条件を満たすものとして、D−ソルビトールを蒸留水で50%程度に希釈しTris−HClと少量の界面活性剤(Tween20)を混合したものを使用した。
【0138】
終濃度5μMに調整した試薬は、1種類ずつ微生物が捕集されたメンブランフィルタ10上方から滴下し、常温にて数分間染色し、余剰の試薬は吸引ろ過にて除去した。染色順序は限定されず、生死菌染色試薬、死菌染色試薬いずれから行っても同様に染色することができる。
【0139】
染色したのち、余剰試薬を吸引によってできる限り除去した後、メンブランフィルタ10を微生物計数装置1に設置し、計測を行った。
【0140】
微生物計数装置1は、図1に記載されたものであるが、今回、青色LED(約470nm)と、黄色LED(約560nm)を使用し、受光フィルタ6として緑色は530から550nmに透過性をもつものと、赤色は590から610nmに透過性を持つものを使用した。なお、光源には、光束を撮像範囲に照射しやすいよう集光レンズ4を設けている。
【0141】
また、メンブランフィルタ10の設置ステージには着脱可能な機構を設け、さらにステージ部材がメンブランフィルタ10を裏側から平面かつピントが合う高さに固定できるようにし、ピント調節を不要とした。メンブランフィルタ10を固定したステージは、モーター駆動のXYステージにより移動可能であり、プログラムによってあらかじめ指定した位置への移動を連続的に行うことができるものとした。
【0142】
メンブランフィルタ10表面の蛍光画像の取得は、メンブランフィルタ10の上方に設置された赤外カットフィルタを施した単板モノクロCCDカメラと、拡大レンズ系にて行った。画像を取得する際には、励起光となるLEDが点灯して照射され、受光フィルタ6を切り替えて目的の波長の画像を取得できるものとし、これらのカメラ、光源、フィルタ、およびステージは、動作をプログラムされたマイコンを使用して制御されるものとした。
【0143】
画像の取得は、同一の位置で(a)青色励起,緑色蛍光、(b)青色励起、赤色蛍光、(c)黄色励起、赤色蛍光、の3種類の画像を、露光時間が0.1から3秒程度で連続的に取得し、ステージによって次の撮像領域に移動し、同様に画像を取得するものとした。また、測定の最初には、LEDを点灯させずに画像を取得し、ドット欠けのみを含む画像を取得しておいた。
【0144】
画像を全て取得した後、演算部によりドット欠けの除去、発光点の抽出、照合が行われ、発光点ごとに輝度値を求めたデータを作成した。
【0145】
図4の(a)はE.coliと水道水中にみられる発光点のプロットを生死菌染色試薬であるSYTO24の蛍光波長である青励起、緑蛍光での輝度と、死菌染色試薬であるSYTOX Orangeの蛍光波長である黄色励起、赤蛍光での輝度を2軸におき、ドットプロットを作成したものである。
【0146】
このとき、任意に設定できる境界線として、cがy=100、dがx=yのような直線を設定し、cより小さく、かつdより小さい領域を生菌群、それ以外の領域を死菌群として指定し、該当する領域の発光点に対してフラグを立て、発光点の分類を行った。
【0147】
次に、生菌群として分類された発光点の集団を、XYZ表色系における色度データのうち、xとyの値をグラフ上にプロットした(図4の(b))。このとき、E.coli生菌がx<0.37、y>0.54の領域に分布していたのに対し、水道水中の発光物はxが0.3から0.6、yが0.3から0.6と幅広い領域に分布していることが確認された。このとき、しきい値は、E.coliの値を参考に設定し、xはe=0.37、yはf=0.54として、x<e、y>fの領域に分類された集団を微生物として判別し、水道水中に含まれる発光物のような夾雑物を判別した。その結果、検出された発光点のうち夾雑物の大半を分離することができ、水道水では図4の(a)のとおり生死判断部によって100個の点から32個の点が抽出されたが、さらに図4の(b)によってそのうちの8個が微生物の生菌であると判別することができた。
【0148】
このしきい値は一例であるが、染色に使用する蛍光色素の種類や、濃度、希釈する溶液の極性などによっても変化することから、使用が想定される環境に最も適した値をあらかじめ設定しておくことが好ましい。
【0149】
なお、最終菌数の妥当性については、培養困難である菌も存在する為、適切な培養方法、培地の種類を複数組み合わせて使用し、評価することが望ましい。
【0150】
(実施例2)
実施例1に示された微生物計数装置1において、E.coliを含む菌液と、水道水(塩素除去済み)をそれぞれ一定量メンブレンフィルタ10にろ過し、値を測定した。
【0151】
図5はE.coliにおいて、生死判断部19における生菌と死菌を判別するしきい値の設定結果である。照合されて結合された発光点の輝度情報のうち、第1と第2の染色試薬の輝度をx軸とy軸にとり、データを対応させたドットプロット21をプログラムのウィンドウ上に表示し、さらにこのドットプロット21上において、カーソル22を操作してプロットを分離するしきい値となる多角線の始点23、頂点a24、頂点b25、終点26を設定した。設定した多角線27は、プログラム上で演算され、しきい値が求められた。判別を行い、計数した結果、生菌群120個、死菌群80個として簡便に検出することができた。
【0152】
(実施例3)
実施例1に示された微生物計数装置において、E.coliを含む菌液と、水道水(塩素除去済み)をそれぞれ一定量メンブレンフィルタ10にろ過し、値を測定した。
【0153】
図6は、生死判断手段における生菌と死菌を判別するしきい値の設定方法の設定結果である。表示したドットプロット21に対して、カーソル22を操作して、選択したい領域の多角形の始点28と頂点29から32を連続的に設定し、頂点の最後は、始点上で選択することで一致させるように多角形を設定した。設定された多角形33に対して、しきい値が自動的に算出され、領域をチェックボックスで死菌として指定したところ、死菌数は78個として検出できた。
【0154】
(実施例4)
実施例1に示された微生物計数装置1において、E.coliを含む菌液と、水道水(塩素除去済み)をそれぞれ一定量メンブレンフィルタ10にろ過し、値を測定した。
【0155】
図7は、生死判断部19における生菌と死菌を判別するしきい値の設定結果である。表示したドットプロット21に対して、カーソル22を操作して、選択したい領域の楕円形の中心34と長軸35または短軸36と、長軸の長さ37、長軸の角度38を設定した。楕円形39、40はそれぞれ死菌、損傷菌として設定したところ、死菌数が72個、損傷菌が9個であると検出された。
【0156】
この集団ごとに楕円の中心座標と長軸の角度、長さの数値を抽出し、微生物の集団の特性を示す特徴パラメータとして集団を定義できる。それぞれの値は、様々な菌種や、活性状態のものを示すものであり、比較することによって、例えば同じ死菌であっても、損傷度合いや、損傷しやすさを比較することが可能となる。図7の場合、楕円の長軸の傾きが大きく、死菌染色試薬で強く染色された39の領域の方が損傷度が高いものであると推定することができた。
【0157】
(実施例5)
実施例1に示された微生物計数装置において、E.coliを含む菌液と、水道水(塩素除去済み)をそれぞれ一定量メンブレンフィルタにろ過し、値を測定した。
【0158】
図8は、生死判断手段における生菌と死菌を判別するしきい値の設定結果である。表示したドットプロット21に対して、あらかじめ縦横をN=5、M=5、合計25領域として輝度が51ずつになるようあらかじめ各領域に番地を設け、それぞれに番号(A〜Y)を定めた。次に、プロット結果から、死菌領域をA、F、K、Pとして設定して、領域内の菌数を算出した。その菌数は97個として検出された。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明は、細胞および微生物を含んだ検体から蛍光染色を用いて微生物の生菌および死菌を検出する方法であって、従来から知られている方法と比較してより正確性を持たせた検出を行うことができる判別方法を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】本発明の実施の形態1の微生物検出装置を示す概念図
【図2】本発明の実施の形態1の演算部による演算工程フローを示す図
【図3】本発明の実施例1のE.coliの輝度と色度の演算結果と色度の演算工程フローを示す図((a)E.coliの輝度と色度の演算結果を示す図、(b)色度の演算工程フローを示す図)
【図4】本発明の実施例1のE.coliと水道水中の発光物の輝度のドットプロット及び生死判断部による分類方法と生菌群の色度図と微生物判断部による判断方法を示す図((a)本発明の実施例1のE.coliと水道水中の発光物の輝度のドットプロット及び生死判断部による分類方法を示す図、(b)本発明の実施例1の生菌群の色度図と微生物判断部による判断方法を示す図)
【図5】本発明の実施例2の微生物判断部におけるドットプロットの多角線による境界線作成を示す図
【図6】本発明の実施例3の微生物判断部におけるドットプロットの多角形による境界線作成を示す図
【図7】本発明の実施例4の微生物判断部におけるドットプロットの楕円による境界線作成を示す図
【図8】本発明の実施例5の微生物判断部におけるドットプロットの領域指定による分類方法を示す図
【符号の説明】
【0161】
1 微生物計数装置
2 励起光源
3 干渉フィルタ
4 集光レンズ
5 ハイパスフィルタ
6 受光フィルタ
7 レンズユニット
8 受光素子
9 検査台
10 メンブランフィルタ
11 CCDユニット
12 演算部
13 輝点除去部
14 発光点抽出部
15 発光点照合部
16 出力部
17 蛍光評価部
18 有効エリア算出部
19 生死判断部
20 微生物判断部
21 ドットプロット
22 カーソル
23 始点
24 頂点a
25 頂点b
26 終点
27 多角線
28 始点
29 頂点
30 頂点
31 頂点
32 頂点
33 多角形
34 中心
35 長軸
36 短軸
37 長軸の長さ
38 長軸の角度
39 楕円形
40 楕円形

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光点の画像が複数あってそれぞれ異なる波長を示すものであり、前記各画像の発光点の2次元座標を合わせ、各画像の発光点または発光点以外の輝度値から色彩的特性を算出することを特徴とした蛍光読取装置。
【請求項2】
発光点の2次元座標を画像ごとに指定した補正値を与えて補正し、座標が重なったものを同一の発光物由来の発光点とすることを特徴とする請求項1記載の蛍光読取装置。
【請求項3】
2次元座標を補正する為の位置補正用画像をあらかじめ読み込むことを特徴とする請求項2記載の蛍光読取装置。
【請求項4】
画像内にあるマーカーを使用して複数の画像上にある発光点の2次元座標を合わせることを特徴とする請求項1記載の蛍光読取装置。
【請求項5】
発光点の画像が複数あってそれぞれ異なる波長を示すものであり、各画像の発光点または発光点以外の輝度値から発光点の色彩的特性を算出し、位置補正用画像を読み込んで補正値を算出する補正値算出工程と、その後段に画像ごとに算出された補正値を与えて座標を補正する座標補正工程と、その更に後段に各画像の2次元座標を合わせる座標照合工程を設けたことを特徴とする微生物計数装置。
【請求項6】
発光点の色彩的特性から微生物の生菌、死菌または微生物以外の夾雑物であること判断する蛍光評価部を設けたことを特徴とする請求項5記載の微生物計数装置。
【請求項7】
同一の発光点とするものが微生物1個の発光点の面積を越えない範囲に存在するものとすることを特徴とする請求項5または6記載の微生物計数装置。
【請求項8】
撮像エリアごとに波長の異なる画像を連続的に取得し、蛍光評価部において各画像の輝度から色彩的特性を示す値を算出することを特徴とする請求項6または7記載の微生物計数装置。
【請求項9】
取得した各画像に含まれる発光点の座標を抽出する発光点抽出部と、画像ごとに抽出した発光点の座標に補正値を与え、発光点を照合する発光点照合部を備えることを特徴とする請求項5から8のいずれかに記載の微生物計数装置。
【請求項10】
発光点抽出部において、あらかじめ設定された面積および輝度の範囲内のものを発光点とし、発光点の輝度値を、抽出した対象物の最大輝度値とし、座標を最大輝度値のピクセルの座標とすることを特徴とする請求項9記載の微生物計数装置。
【請求項11】
座標の補正値から算出された画像の計数有効面積と、固定部の全表面積とから検体中の微生物の全数を算出することを特徴とする請求項10記載の微生物計数装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−71742(P2007−71742A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260132(P2005−260132)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】