説明

蛍光顕微鏡の適切な評価パラメータを設定する方法およびその装置

蛍光顕微鏡(20)の適切な評価パラメータを設定するために、試料(32)中の蛍光染料粒子を励起して蛍光を発生させる。染料粒子から発せられる蛍光を検出する。光分布のグラフィカル表現を構成し、これは蛍光の光量の分布を表す。光分布のグラフィカル表現のもとになる信号を生成し、これに基づいて表示ユニット(44)を制御して、光分布のグラフィカル表現を表示する。光分布のグラフィカル表現の小区域は各々、対応する小区域の光量を表すそれぞれの比較値に関連付けられる。所定の閾値を評価パラメータとして使用する。比較値を所定の閾値と比較する。表示ユニット(44)の上で、閾値より大きい比較値を有する小区域を所定のマーク(52)によりマーキングする。使用者の入力に応じて、閾値を変更する。使用者の入力後に、比較値を変更後の閾値と比較する。マーキングされた小区域をイベント(53)と定義する。イベント(53)に基づいて、試料(32)の完全な画像を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光顕微鏡の適切な評価パラメータを設定する方法およびその装置に関する。これに関しては、試料内の蛍光染料粒子を励起して蛍光を発生させ、染料粒子から発せられる蛍光を検出する。蛍光顕微鏡の検出器上の光量分布を表す蛍光分布のグラフィカル表現を得る。光分布のグラフィカル表現の小区域の各々を、対応する小区域の光量を表すそれぞれの比較値と関連付ける。所定の閾値を評価パラメータとして使用する。比較値を所定の閾値と比較する。比較値が閾値より大きい小区域をイベントとして分類する。
【背景技術】
【0002】
蛍光顕微鏡法では、試料中の蛍光染料粒子を励起して蛍光を発生させる。試料中の染料粒子を試料の分子と結合させ、蛍光の検出によってその試料内の構造やプロセスに関する結論を導き出すことができるようにする。蛍光染料粒子はまた、マーカ物質またはマーカとも呼ばれる。蛍光染料粒子は、試料中に自然に存在するか、人工的に試料中に導入して、試料の分子と結合させる。
【0003】
従来の光学顕微鏡の回折分解能限界より小さい試料内の構造を画像化できる蛍光顕微鏡が知られている。さらに、このような蛍光顕微鏡は、従来の光学顕微鏡の回折分解能限界より小さい領域で起こっているプロセスを画像化できる。こうした蛍光顕微鏡は、染料粒子の逐次的、確率的局在解析(stochastic localization)を基本としている。染料粒子には2つの区別可能な状態がある。第1の活性状態では、染料粒子を励起して蛍光を発生させることができ、第2の不活性状態では、染料粒子を励起して蛍光を発生させることができない。さらに、染料粒子を活性状態から不活性状態へ、または不活性状態から活性状態へと移させることができる。
【0004】
回折により制限される分解能の限界を克服するために、染料粒子の大部分を不活性状態に移させるか、わずかな部分だけを活性状態に移させることによって、染料粒子の比較的わずかな部分だけが活性状態となるようにする。活性状態から不活性状態への、または不活性状態から活性状態への切り換えは、さまざまな方法で行うことができる。
【0005】
特許文献1は、活性状態から不活性状態へ、および不活性状態から活性状態への切り換え工程を開示している。特に、所定の活性化波長の光を照射することによって、不活性状態から活性状態へと移動可能な染料粒子が使用される。活性状態の染料粒子の一部は、漂白によって不活性状態に戻すことができ、染料粒子の活性化された部分集合はさらに小さくなる。その後、その部分集合の残りの活性染料粒子を励起光によって励起して蛍光を発生させる。
【0006】
非特許文献1には、所定の活性化波長の光を照射することによって不活性状態から活性状態に可逆的に移させ、また所定の不活性波長の光を照射することによって活性状態から不活性状態へと可逆的に戻すことのできる染料粒子を使用する方法が開示されている。活性染料粒子を励起光によって励起して蛍光を発生させる。
【0007】
特許文献2は、過渡的な暗状態(transient dark states)、たとえば三重項を有する染料粒子の使用を開示している。これらの染料粒子の大部分を暗状態に移させると、分子の種類ごとに異なる滞留時間が経過したところで、自動的に所定の確率で活性状態に戻る。
【0008】
上記の文献で開示された方法は、PALM、FPALM、(F)STORM、PALMIRA、dSTORM、GSDIMの名称で知られている。これらの方法すべてに共通しているのは、染料粒子の部分集合だけを活性状態に移させて、活性状態にある間に励起し、蛍光を発生させる点である。染料粒子の活性化される部分集合は、ごく小さくして、隣接する活性状態の染料粒子間の平均距離が画像化光学系の従来の分解能限界より大きくなるようにしなければならない。染料粒子の活性化された部分集合からの蛍光を、空間分解光検出器、たとえばCCDカメラ、特にEM−CCDカメラで画像化する。空間分解光検出器を使用することにより、さらに試料中の蛍光染料粒子の分布を表す蛍光分布のグラフィカル表現を表示することが可能となる。特に、光分布のグラフィカル表現には光スポットが示され、その大きさは画像化光学系の不鮮鋭度によって決まり、この光スポットは試料中の染料粒子を表す。光スポットの各々について、その光スポットを発生させている光量を表す比較値を、周知のアルゴリズムを使って測定する。比較値が所定の閾値より大きければ、その光スポットをイベントとして分類する。その後、別の光スポットを示す追加の画像を取り込み、少なくとも一部をイベントとして分類する。次に、すべてのイベントに基づいて、試料中の調査対象の構造またはプロセスの画像を生成する。閾値はまた、評価パラメータと呼んでもよい。比較値は、たとえば光スポットを発生させた光分布のグラフィカル表現の小区域内の光量、光強度、光エネルギーまたは輝度等であってもよい。適切な評価パラメータの選択によって最終的な画像の品質が決まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO 2006/12769 A2
【特許文献2】DE 10 2008 024 568 A1
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Appl.Phys.A,88,223−226,2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、蛍光顕微鏡の適切な評価パラメータを設定する方法と装置であって、評価パラメータを、試料内の所望の構造またはプロセスの高品質の画像を生成するように有利な方法で選択できるような方法と装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的は、特許請求の範囲の独立項の特徴によって達成される。有利な実施形態は従属項に記されている。
【0013】
本発明の特徴は、検出された蛍光に基づいて、光分布のグラフィカル表現のもとになる信号を生成することである。この信号に基づいて表示ユニットを制御し、光分布のグラフィカル表現を表示させる。比較値が閾値より大きい小区域には、表示ユニット上で、所定のマークによりマーキングする。所定の閾値を評価パラメータとして使用する。使用者の入力に応じて、閾値を変更する。使用者の入力後に、比較値を変更後の閾値と比較する。マーキングされた小区域をイベントと定義する。イベントに基づいて、試料の完全な画像を取得する。
【0014】
比較値が閾値より大きい小区域をマーキングすることにより、使用者は少なくとも1つの評価パラメータ、特に閾値を適当に調整してから、イベントを分類できる。これは、驚くほど簡単な方法で最適な閾値を選べるようにするのに役立つ。特に、ノイズによって発生した光スポットがイベントとして定義されるのを防止することができる。それゆえ、小区域内に出現したもののうち、実際に蛍光染料粒子によって発生した光スポットだけがイベントとして定義される。
【0015】
有利な実施形態において、表示ユニット上で、比較値が調整後の閾値より大きい小区域をマーキングする。それゆえ、使用者は、変更後の閾値が当初の所定の閾値より適当であるか否かについて、直接的なフィードバックを得ることができる。光分布のグラフィカル表現の表示と小区域のマーキングは、蛍光顕微鏡の動作中、特に蛍光の検出中および、それゆえ追加の部分画像の取り込み中に行うことができる。あるいは、またはこれに加えて、取り込んだ対応する光分布の部分画像を保存して、後の処理中に、特にまた、蛍光顕微鏡を使用していない時でも、マーキングし、閾値を調整することが可能である。
【0016】
試料の完全な画像を生成するために、各イベントについて、そのイベントを発生させた染料粒子の位置を表す1つの点、たとえば光分布のグラフィカル表現の、それに対応する光スポットの重心または中心点を測定する。次に、部分画像のすべてを合成し、その工程の中で、前記の点に基づいて、試料、特に試料中の所望の構造および/またはプロセスの完全な画像を取得する。
【0017】
回折分解能限界は、活性状態と不活性状態を有する染料粒子を使用することによって有利に克服される。部分画像の取り込み中、染料粒子の部分集合だけを活性状態に移させるか、または染料粒子の大部分を不活性状態に移させて、染料粒子の活性化された部分集合を励起して蛍光を発生させる。染料粒子の活性化される部分集合は、試料中の活性染料粒子間の平均距離が蛍光顕微鏡の従来の分解能限度より小さくなるように選択される。
【0018】
本発明の例示的実施形態を、略図を参照しながら以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】蛍光顕微鏡を示す。
【図2】第1の部分画像を示す。
【図3】第2の部分画像を示す。
【図4】第3の部分画像を示す。
【図5】第4の部分画像を示す。
【図6】いくつかの部分画像と完全な画像を示す。
【図7】試料の完全な画像を取得するためのプログラムのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図全体を通して、同じ設計または機能を有する要素には、同じ参照番号が付与される。
【0021】
図1は、共焦点蛍光顕微鏡20とコンピュータ端末22を示す。蛍光顕微鏡20には、光ビーム26を生成する光源24が含まれる。光ビーム26はビームスプリッタ28に当たり、そこで光ビーム26は反射して対物レンズ30へと入り、それによって光ビーム26は試料32上に合焦される。試料32には蛍光染料粒子が含まれる。試料32から発せられた蛍光は対物レンズ30とビームスプリッタ28を通過して、カラーフィルタに到達する。カラーフィルタ34を通過した蛍光は、検出器38へと向けられる。信号線40は、検出器38をコンピュータ端末22の評価ユニット42に接続する。評価ユニット42は、表示ユニット44とキーボード46に連結されている。キーボード46には、調節ダイヤル48がある。コンピュータ端末22と蛍光顕微鏡20は、ごく簡略的に示されている。あるいは、これら2つのシステムには、蛍光顕微鏡の分野で公知である追加または代替の構成要素が含まれていてもよい。
【0022】
光源24には、第1のレーザユニット(図示せず)と第2のレーザユニット(図示せず)が含まれる。第1のレーザユニットは第1の波長の光を生成し、これを以下、「励起光」と呼ぶ。第2のレーザユニットは第2の波長の光を生成し、これを以下、「活性化光」と呼ぶ。あるいは、レーザユニットを1つのみ設けることも可能であり、そこからの光を第1のサブビームと第2のサブビームに分割し、この2つのサブビームの一方の波長をその後、変換する。変換されるサブビームと変換されないサブビームの波長は、2つのサブビームの一方が励起ビームとなり、もう一方が活性化ビームとなるように選択する。あるいは、広帯域光源、たとえば白色光レーザまたは水銀蒸気光源を設けることもでき、その光をサブビームに分割し、その後、生成された光をフィルタ処理することによって所望の波長を分離する。光ビーム26は、共線的に合成された励起光と活性化光からなる。
【0023】
試料32の染料粒子は、活性状態と不活性状態を有する粒子である。換言すれば、染料粒子は活性状態か不活性状態のいずれかにある。
【0024】
検出器38は面検出器であり、CCDカメラを含む。あるいは、面検出器は、EM−CCDカメラの形態であってもよい。
【0025】
励起ビームと活性化ビームは、光源24の中で共線的に合成される。活性化ビームは、試料32中の染料粒子のうちの部分集合を活性化する。あるいは、染料粒子を最初に活性化するか、または活性状態で提供して、その後、不活性化ビームによって不活性化してもよい。あるいは、またはこれに加えて、活性状態の染料粒子は、たとえば漂白によって不活性状態に移させてもよい。さらに、励起状態から不活性状態に自動的に移動し、その後、励起されていない活性状態へと自動的に変化する染料粒子を使用することもでき、それによって活性化ビームが不要となる。励起ビームにより活性染料粒子を励起して、蛍光を発生させる。蛍光は、励起光、活性化光および、該当する場合は不活性化光と異なる波長を有する。
【0026】
ビームスプリッタ28によって、励起ビームおよび活性化ビームとは波長の異なる蛍光がそこを通過して、カラーフィルタ34に到達できる。すると、カラーフィルタ34により、異なる波長範囲が蛍光から除去される。残りの波長の蛍光が検出器38によって検出される。それゆえ、複数の光スポットが検出器38の上に生成され、その位置は試料32の中の、その光スポットを発生させた染料粒子の位置を表す。
【0027】
検出器38の信号は、信号線40を通じて検出器38から評価ユニット42へと伝送される。評価ユニット42は、検出器38の光分布および、それゆえ染料粒子の分布のグラフィカル表現のもとになる信号を生成する。ディスプレイユニット44がこの信号によって制御されて、光分布のグラフィカル表現を表示する。
【0028】
図2は、検出器38により捕捉され、表示ユニット44に表示された第1の部分画像50を示す。第1の部分画像50が示すグラフィカル表現に表されている光分布には、実際のイベントによるものの、それとして特定されなかった光スポットを含む第1の小区域51と、さらに、実際のイベントにより、かつ、それとして特定された光スポットを含み、また、マーキングされておらず、実際のイベントではなく検出器38のノイズによるマーキングなしの多数の小さなドットと光スポットを含む第2の小区域53がある。この例示的実施形態において、光量の違いはドットの大きさの違いとドット間の距離の違いにより表されている。あるいは、またはこれに加えて、光量の違いをドットの明るさの違いで表してもよい。評価ユニット42では、周知のアルゴリズムを使って検出器38の信号が解析され、より大きな光スポット、特に表示されているその光分布のグラフィカル表現の中の、光量が所定の閾値より大きい小区域が特定される。光量はまた、比較値と呼んでもよい。それゆえ、評価ユニット42では、光分布のグラフィカル表現の各小区域または光スポットが、それぞれの比較値と関連付けられる。その小区域内の光量の代わりに、それぞれの小区域内の光強度、輝度、光度エネルギーまたは光エネルギーもまた、比較値として使用できる。
【0029】
比較値が所定の閾値より大きい小区域はすべて、第2の小区域53として分類され、所定のマーク52によりマーキングされる。所定のマーク52は各々、円を含む。あるいは、マークは他の幾何学形状としても、または異なる色で表してもよい。比較値が所定の閾値より小さい小区域はすべて、第1の小区域51として、すなわちノイズとして分類されて、所定のマーク52によるマーキングが行われない。しかしながら、マーキングのない光スポットが実際のイベントによっており、試料32の中の染料粒子の位置に対応することが、完全にありうる。特に、第1の小区域51の光スポットは、実際のイベントにより発生している。
【0030】
図3は、比較値と比較するための評価アルゴリズムで使用した閾値を下げた後の第1の部分画像50を示す。図2に示される第1の部分画像50と比較すると、今度はより大きな光スポットのすべてがマーキングされている。特に、ノイズが原因ではなく、染料粒子の位置を表す第2の小区域53のほか、ノイズが原因であり、試料32の中の染料粒子の位置を表すものではない2つの小領域にもマーキングされている。このことから、閾値が低くなりすぎたことになる。
【0031】
図4は、最適に選択された閾値を用いた第1の部分画像50を示す。ここでは、ノイズによらず、試料32中の染料粒子の蛍光発光による、および、それゆえ実際のイベントによる光量を有する第2の小区域のみにもれなくマーキングされている。
【0032】
図5は、マーキングされた小区域53の外のすべての信号を除去した後の部分画像50を示す。光分布のグラフィカル表現の、第2の小区域53の中に残っている光スポットは、その後、イベント55として分類される。図5は、例示のためにすぎない。部分画像の実際の処理では、ノイズは除去されないものの、容易に評価から除外される。
【0033】
図6は、第2の部分画像54、第3の部分画像56および第4の部分画像58を示し、その中にはイベント55のみが示されている。これらに加え、もっと多くの部分画像を取り込む。試料32に、長い期間にわたり照明を当てる。その後、この期間中に取り込んだ部分画像50、54、56、58を合成して、完全な画像60を形成する。完全な画像60は、試料32の中の構造62を示す。試料32の中の構造の細部は、蛍光顕微鏡20の回折分解能限界より小さい。
【0034】
図7は、コンピュータ端末22と蛍光顕微鏡20を動作させるため、特に適切な評価パラメータ、とりわけ閾値を設定するためのプログラムのフローチャートを示す。このプログラムは、ステップS2で、たとえば蛍光顕微鏡20を起動した時から開始する。
【0035】
ステップS4で、染料粒子を励起光によって励起し、蛍光を発生させる。特に、試料32の活性染料粒子を励起して、蛍光を発生させる。蛍光顕微鏡20で蛍光顕微鏡20の回折分解能限界より小さな構造を画像化できるようにするために、染料粒子のうちの部分集合だけを活性状態に移させる。これを実行するために、たとえばほとんどすべての染料粒子を不活性状態に移させて、染料粒子のうち活性状態にある部分集合だけが残るようにしてもよい。そして、この部分集合を励起ビームによって励起することができる。この部分集合は非常に小さく、この部分集合の染料粒子間の平均距離は蛍光顕微鏡20の回折分解能限界より大きい。
【0036】
ステップS6で、蛍光を検出する。
【0037】
ステップS8で、光分布のグラフィカル表現を表示ユニット44に表示する。
【0038】
ステップS10で、表示されている光分布のグラフィカル表現の個々の小区域の光スポットについて比較値を測定し、所定の閾値と比較する。たとえば、基準値を所定の閾値として使用してもよい。閾値はまた、評価パラメータと呼んでもよい。
【0039】
ステップS12で、光量が所定の閾値より大きい光スポットと小区域に所定のマーク52によりマーキングする。
【0040】
ステップS14で、コンピュータ端末22の使用者は、相応の入力で閾値を調整することができる。使用者が閾値を変更したら、処理はS10に戻る。閾値が使用者により変更されなければ、処理はステップS16へと進む。
【0041】
ステップ16で、マーキングされた小区域の中の光スポットをイベント55と定義し、対応するイベント55の部分画像を保存する。その後、十分な画像が取り込まれて試料の完全な画像が得られるまで、新しい部分画像に対してステップS8を実行する。この工程の中で、ステップS4とS6は永久的にバックグラウンドで実行される。
【0042】
ステップS18で、イベント55の各々について、特定のイベント55の原因となった染料粒子の位置を表す地点を測定する。たとえば、イベント55として分類される光スポットの中心点または重心を測定することが可能である。次に、これらの点に基づいて試料32の完全な画像を取得するために、すべての部分画像の点を合成して完全な画像60を形成する。
【0043】
ステップS20で、プログラムを終了してもよい。しかしながら、好ましくは、蛍光顕微鏡20の動作中にこのプログラムを継続的に実行する。あるいは、蛍光顕微鏡20の動作中にステップS2とS4を実行して、得られた生データを保存することも可能である。ステップS8〜S20によるデータの評価は、必要に応じていつでも、特に蛍光顕微鏡20を使用していない時、および/または蛍光顕微鏡のある場所とは異なる場所でも実行できる。
【0044】
本発明は、本明細書に記載された例示的実施形態に限定されない。たとえば、染料粒子の活性化される部分集合は、染料粒子の部分集合のみを不活性状態から活性状態に移させることによって生成してもよい。あるいは、所定の確率で自動的に活性状態に戻る染料粒子を使用することも可能である。この場合、はじめに試料中のすべての染料粒子を不活性状態に移させ、染料粒子の不活性化から少なくとも1回分の時間周期、または複数回分の時間周期が経過した後で、画像を取得する。さらに、光量の代わりに、光分布のグラフィカル表現はまた、光エネルギー、光度エネルギー、輝度または光強度を空間分解的に表示することによって構成してもよく、この場合、比較値はそれぞれ、光量、光エネルギー、光度エネルギー、輝度または光強度となる。
【符号の説明】
【0045】
20 共焦点蛍光顕微鏡
22 コンピュータ端末
24 光源
26 光ビーム
28 ビームスプリッタ
30 対物レンズ
32 試料
34 カラーフィルタ
38 検出器
40 信号線
42 評価ユニット
44 表示ユニット
46 キーボード
48 調整ダイヤル
50 第1の部分画像
51 マーキングされていない小区域
52 マーク
53 マーキングされた小区域
54 第2の部分画像
55 イベント
56 第3の部分画像
58 第4の部分画像
60 完全な画像
62 構造
S2〜S20 ステップ2〜20
y 閾値を調整する。
n 閾値を調整しない。
START プログラム開始
ENDE プログラム終了

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光顕微鏡(20)の適切な評価パラメータを設定する方法であって、
試料(32)中の蛍光染料粒子が励起されて蛍光を発生し、
前記染料粒子から発せられた蛍光が検出され、
前記蛍光顕微鏡の検出器上の光量分布を表す、前記蛍光の光分布のグラフィカル表現が求められ、
前記光分布のグラフィカル表現のもとになる信号が生成され、これに基づいて表示ユニット(44)が制御されて、前記光分布のグラフィカル表現が表示され、
前記光分布のグラフィカル表現の小区域の各々が、対応する小区域の光量を表すそれぞれの比較値に関連付けられ、
所定の閾値が評価パラメータとして使用され、
前記比較値が前記閾値と比較され、
前記閾値より大きい比較値を有する前記小区域が前記表示ユニット(44)上で、所定のマーク(52)によってマーキングされ、
使用者の入力に応じて、前記閾値が変更され、
使用者の入力後に、前記比較値が変更後の閾値と比較され、
マーキングされた小区域がイベント(53)と定義され、前記イベント(53)に基づいて前記試料(32)の完全な画像が得られる、方法。
【請求項2】
前記イベント(53)を定義する前に、設定された閾値より大きい比較値を有する前記小区域が前記表示ユニット(44)上で、所定のマーク(52)によりマーキングされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光分布のグラフィカル表現の表示と前記小区域のマーキングが、前記蛍光の検出中に行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記光分布のグラフィカル表現の表示と前記小区域のマーキングが、前記蛍光の検出後に行われる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記完全な画像が、前記イベント(53)の原因となった前記染料粒子の位置を表す前記イベント(53)の点を求めることによって得られ、前記試料(32)の完全な画像がこれらの点に基づいて取得される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記試料のすべての蛍光染料粒子の中の部分集合が不活性状態から活性状態へと移され、活性状態の前記染料粒子が励起されて蛍光を発生し、前記部分集合に含まれる染料粒子の数が、それらの間の平均距離が前記蛍光顕微鏡の回折分解能限界より大きくなるような数である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記試料(32)のすべての蛍光染料粒子の中の部分集合が活性状態から不活性状態へと移され、残りの前記活性状態の染料粒子の部分集合が励起されて蛍光を発生し、前記部分集合に含まれる蛍光染料の数が、それらの間の平均距離が前記蛍光顕微鏡の回折分解能より大きくなるような数である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記試料(32)のすべての蛍光染料粒子の前記部分集合が、前記試料(32)に漂白工程を実行することによって前記活性状態から前記不活性状態へと移される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
不活性状態から活性状態に所定の確率で自動的に変化する蛍光染料粒子が前記試料(32)中に導入され、前記試料(32)のすべての蛍光染料粒子が前記不活性状態へと移され、この確率に応じて選択された所定の期間後に、前記活性状態の染料粒子が励起され、蛍光を発生する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記比較値が、前記比較値が関連付けられる前記光分布のグラフィカル表現の前記小区域の中の全体の光量、光エネルギー、光度エネルギー、輝度または光強度である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
蛍光顕微鏡(20)の適切な評価パラメータを設定する装置であって、請求項1〜10のいずれか一項に
記載の方法を実行する装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2013−519868(P2013−519868A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552321(P2012−552321)
【出願日】平成23年1月3日(2011.1.3)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050011
【国際公開番号】WO2011/098304
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(500178876)ライカ マイクロシステムス ツェーエムエス ゲーエムベーハー (80)
【Fターム(参考)】