融雪道路の施工方法
【課題】アスファルト保護層のクラックを防止し、かつ、ヒーティングケーブルの損傷を防ぐ融雪道路の施工方法を提供する。
【解決手段】アスファルト下地2を打設した直後に、ロードヒーティング部材Hを上記アスファルト下地2上に敷設して、上記アスファルト下地2が冷却前の柔らかい状態下にてローラ3によって転圧して埋め込み、上記ロードヒーティング部材Hを埋め込んだアスファルト下地2の表面2Aに、舗装作業車両のタイヤ走行部に沿って、ゴムアスファルト系帯状シートを敷設し、上記系帯状シート以外の上記表面2Aに乳剤を散布して、その上にアスファルト保護層を敷設する。
【解決手段】アスファルト下地2を打設した直後に、ロードヒーティング部材Hを上記アスファルト下地2上に敷設して、上記アスファルト下地2が冷却前の柔らかい状態下にてローラ3によって転圧して埋め込み、上記ロードヒーティング部材Hを埋め込んだアスファルト下地2の表面2Aに、舗装作業車両のタイヤ走行部に沿って、ゴムアスファルト系帯状シートを敷設し、上記系帯状シート以外の上記表面2Aに乳剤を散布して、その上にアスファルト保護層を敷設する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融雪道路の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
融雪道路の施工に於て、ロードヒーティング部材を道路に埋設する必要があり、例えば、ロードヒーティング部材が加熱温水用パイプである場合には、路盤上に金網を敷設し、この金網上にプラスチック製の加熱用パイプを固定し、次に、このパイプを埋め込む深さにアスファルトを敷き均し、さらに上層アスファルトを敷設する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、ロードヒーティング部材がヒーティングケーブルである場合には、図12に示すような融雪道路Uの構造が一般的であって、その工法は、砕石又はコンクリートの路盤31上に、まず、アスファルト下地32を敷設して、固化した平坦面状の下地表面32Aに、ヒーティングケーブル33を敷いて、その上からアスファルト保護層34を敷設して、ケーブル33を保護層34の下面近傍位置に埋設していた。なお、表層35を、さらに、上から敷設するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2852980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来の施工方法と問題点を、図13,図14及び図15に基づいて説明すれば、従来の図12に示すような融雪道路Uの施工方法に於て、(図13に示す如く、)路盤31上に敷設して固化したアスファルト下地32の平坦状表面32A上に、ヒーティングケーブル33を敷設した後、ダンプトラック、及び、フィニッシャ,ローラ等の車両と舗装機械によって、保護層34を敷設していた(図14参照)。
【0006】
上述の保護層34のアスファルト打設作業時(敷設時)にあっては、図13のように、転圧・冷却して固くなった下地表面32A上にヒーティングケーブル33が露出した状態で存在するため、(機械引き舗装における)ダンプトラックやフィニッシャが、その上を踏みつつ走行して、露出したヒーティングケーブル33に損傷を与える虞があった。
さらに、図14に於て、同図中(イ)(ロ)(ハ)は時間が順に経過した状況を説明する図であって、まず、図14(イ)に示すように、保護層34を例えば、10TON 以上の大型のローラによって、大きな圧力Pを付与しつつ転圧するが、その際、ヒーティングケーブル33は弾性を有するため、横断面が楕円偏平状に弾性圧縮変形する。
【0007】
図14(イ)から(ロ)に示すように、その後、弾性圧縮変形したヒーティングケーブル33は、その弾性的反発力によって、矢印F33の方向に、アスファルト保護層34を局部的に押し上げるので、ついには、図14(ハ)及び図15に示すように表面34Aに達するようなクラック(亀裂)36が発生するという問題があった。舗装品質が重要視される車道に於ては、このようなクラック36を発生することは、特に重大な問題となる。
【0008】
そこで、本発明は、このような従来の問題点を解決して、ロードヒーティング部材の損傷の危険性を低減し、さらに、クラックの発生を防止して、舗装品質を著しく改善・向上し、かつ、作業能率がほとんど変わらずに済む融雪道路の施工方法を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明に係る融雪道路の施工方法は、アスファルト下地を打設した直後に、ロードヒーティング部材を上記アスファルト下地上に敷設して、上記アスファルト下地が冷却前の柔らかい状態下にて、ローラによって転圧することで上記ロードヒーティング部材を上記アスファルト下地へ圧入状に埋め込み、その後、アスファルト保護層を敷設する方法である。
また、本発明は、アスファルト下地を打設した直後に、ロードヒーティング部材を上記アスファルト下地上に敷設して、上記アスファルト下地が冷却前の柔らかい状態下にて、ローラによって転圧することで上記ロードヒーティング部材を上記アスファルト下地へ圧入状に埋め込み、上記ロードヒーティング部材を埋め込んだアスファルト下地の表面に、舗装作業車両のタイヤ走行予定部に沿って、ゴムアスファルト系帯状シートを敷設し、該帯状シート以外の上記表面に乳剤を散布して後、上記帯状シート上を走行する上記舗装作業車両にて、アスファルト保護層を敷設する方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アスファルト保護層のクラックの発生を防ぎ、舗装品質を著しく改善・向上できる。
また、舗装機械(舗装作業車両)によって、ロードヒーティング部材が損傷を受けることを確実に防ぐことができる。
しかも、舗装作業能率を低下させることなく、前述の著大な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に使用可能なロードヒーティングケーブルの一例を示す断面図である。
【図2】本発明に使用可能なロードヒーティングユニットの一例を示す平面図である。
【図3】ロードヒーティングユニット(ロードヒーティング部材)の敷設配置の説明平面図である。
【図4】本発明に係る施工方法によって得られる舗装部位の一例を示す断面図である。
【図5】本発明に係る施工方法の実施の一形態を説明するための断面図である。
【図6】本発明に係る施工方法の実施の一形態を説明するための断面図である。
【図7】本発明に係る施工方法の実施の一形態を説明するための断面図である。
【図8】本発明に係る施工方法の実施の一形態を説明するための断面図である。
【図9】本発明の作用効果の説明を兼ねた本発明の要部構成の説明用の断面図である。
【図10】ゴムアスファルト系帯状シートを用いた本発明の他の実施の形態を示す平面図である。
【図11】図10のC−C断面図である。
【図12】従来例を示す断面図である。
【図13】従来例の施工方法の説明図である。
【図14】従来例の問題点を説明するための要部断面図である。
【図15】従来例の問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図5に示すように、砕石又はコンクリート等の路盤1上に、一層目のアスファルト―――即ち、アスファルト下地2―――を打設し、次に、図6に示すように、上記アスファルト下地2を打設した直後に、ロードヒーティング部材Hをアスファルト下地2の表面2Aに敷設する。つまり、アスファルト下地2は打設直後であって、アスファルトが完全に冷却する前の柔らかい状態下にて、ヒーティング部材Hを敷き並べる。
【0013】
次に、上記の柔らかい状態下にて、舗装用ローラ3によって、図7に示す如く転圧すると、転圧力P3 を受けて、ロードヒーティング部材Hは、下地表面2Aからアスファルト下地2に(圧入状に)埋め込まれてゆく。図7では矢印R3 方向に回動しつつローラ3が矢印A3 方向に移動して、柔らかいアスファルト下地2へ、順次、同図の左から右方向にロードヒーティング部材Hが埋め込まれてゆく。即ち、図8はこのようにロードヒーティング部材Hが埋め込まれて、下地表面2Aと同一水平面上に、ロードヒーティング部材Hの上端が存在する。
【0014】
その後、図9に示すように、アスファルト保護層4を打設形成(敷設)する。ところで、図9に示すように、2層目のアスファルト層としての上記アスファルト保護層4を敷設する際に、ダンプトラックやフィニッシャ等の舗装作業車両が、図8に於て、冷却固化した下地表面2A上を走行したとしても、ロードヒーティング部材Hは下地表面2Aから突出しておらず、ロードヒーティング部材Hが損傷を受けたり、異常変形を受けることが全くない。しかも、図9(A)に示すように、保護層4の敷設のために、大型のローラ等によって大きな圧力Pが付与されつつ転圧されるが、その際、前工程に於て、アスファルト下地2内に埋設状態となっているロードヒーティング部材Hは、直接的に前記圧力Pを受けずに済み、横断面が、従来の図14(イ)のように楕円偏平状に変形することを、防止できる。このように、図9(A)に示すように、ロードヒーティング部材Hの横断面が転圧の圧力Pを受けて変形することがない。
その後、図4に示すように、表層5をその上から被覆敷設することで、融雪道路Uが完成する。
【0015】
上述のように、アスファルト下地2内に、アスファルト打設直後の柔らかさを利用して、ロードヒーティング部材Hを埋め込んでしまうことにより、その上に(2層目の)アスファルト保護層4を敷設する作業にて、ヒーティング部材Hの圧縮変形を大幅に減少でき、その後、図14(ロ)(ハ)と図15にて述べた従来例のクラック36の発生を避けることができ、また、舗装作業車両によってヒーティング部材Hが傷付けられる危険性も大幅に低減される。
なお、本発明に於て、ヒーティング部材Hとしては、(以下説明する図1〜図3の)ヒーティングケーブル10以外に、温水や地下水を循環させるパイプ(温水式ロードヒーティング用パイプ)であっても良い。
【0016】
図1に、ヒーティングケーブル10の具体的断面図を例示する。断面中央部に発熱導体(抵抗線)11を有し、その外側を順次、絶縁体12、縦溝付シース13、保護シース14にて被覆された構造を例示する。なお、ヒーティングケーブル10としては、これ以外の構造のものとするも自由である。
図2に示すように、工場等にて予めヒーティングケーブル10を所定敷設ピッチP10にて蛇行させて、ガットテープ15にて保持し、かつ、接続部16を介してリードケーブル17, 17とヒーティングケーブル10とを接続した矩形平面状ヒーティングユニット20を製作しておき、施工現場に於ては、図3に示す如く、このようなヒーティングユニット20を次々と並べて敷き詰めてゆく。
【0017】
次に、図10と図11は他の実施の形態を示す。即ち、前述の実施の形態に於て、図5,図6,図7,図8と順次説明した如く、アスファルト下地2を打設した直後に、ロードヒーティング部材Hを上記アスファルト下地2上に敷設して、上記アスファルト下地2が冷却前の柔らかい状態下にて、ローラ3によって転圧することで上記ロードヒーティング部材Hを上記アスファルト下地2へ圧入状に埋め込む。次に、ロードヒーティング部材H(ヒーティングケーブル10)を埋め込んだアスファルト下地2の表面2Aに、舗装作業車両のタイヤ走行予定部Z,Z(図10の平面図に於て斜線にて示す)に沿って、ゴムアスファルト系帯状シート6,6を敷設する。そして、帯状シート6,6以外に相当する表面2Aには乳剤を散布し、次に、この帯状シート6,6上を走行する舗装作業車両にて、アスファルト保護層4を、その上から、敷設する。
【0018】
この乳剤は、上下層の接着力強化、及び、クラック防止や防水の作用をなすものであるが、粘着性があるため、舗装作業車両が走行すると、タイヤに乳剤が付着して、その粘着性によって、一旦埋め込んだヒーティング部材H(ヒーティングケーブル10)が、タイヤの回転に伴って引きずり出される虞がある。しかし、本発明では、タイヤ走行予定部Z,Zに、予めゴムアスファルト系帯状シート6,6を敷設し、かつ、乳剤を省略してあるため、タイヤの回転に伴って、一旦埋め込まれているヒーティング部材H(ヒーティングケーブル10)が引きずりだされることがない。なお、上記ゴムアスファルト系帯状シート6は、クラック防止や防水に一般に用いられる公知のものを使用できる。
なお、本発明に於て、アスファルト下地2が柔らかい状態下にて、ローラ3の転圧によってアスファルト下地2へ圧入状にロードヒーティング部材Hを埋め込むが、その際に、図2に例示したようなヒーティングユニット20のリードケーブル17も同様にローラ3の転圧にて埋め込んで良い。また、接続部16については、舗装内に別途スペースを予め設けて、そのスペース内へ設置し、その後、アスファルト上層を敷くのが良い。
【0019】
また、本発明に於て、融雪道路Uとは、凍結防止道路をも包含しているものとする。本発明は、いわゆる機械引きロードヒーティングの工法に関連した発明であって、舗装機械を用いず人力による舗装(いわゆる手引き舗装)では問題がなかったが、作業能率向上のために、機械引きロードヒーティングの工法を適用すれば、既述のヒーティングケーブル33の損傷の問題、及び、クラック36の発生の問題(図14,図15参照)が発生する。このような問題を本発明は、作業能率を低下させずに解決したものであるといえる。さらに、舗装厚さも従来のままで済む利点もある。
【0020】
また、本発明に於て、アスファルト下地2が冷却前の柔らかい状態とは、 100℃〜 190℃を指し、 120℃〜 170℃が好ましく、 140℃〜 165℃が最も望ましい。そして、ローラ3で転圧してヒーティング部材Hがアスファルト下地2へ圧入しやすいように、通常よりも低い温度でも転圧可能な舗装材質、または添加剤を選択することも、有効な手段である。
【0021】
本発明は、上述のように、アスファルト下地2を打設した直後に、ロードヒーティング部材Hを上記アスファルト下地2上に敷設して、上記アスファルト下地2が冷却前の柔らかい状態下にて、ローラ3によって転圧することで上記ロードヒーティング部材Hを上記アスファルト下地2へ圧入状に埋め込み、その後、アスファルト保護層4を敷設する施工方法であるので、ロードヒーティング部材Hがアスファルト保護層4の内部乃至下方位置にて圧縮変形を生ずることがほとんどなくなり、図14にて述べた従来のクラック36の発生を有効防止して、舗装性能(品質)が向上でき、舗装寿命も延びる。さらに、機械引きロードヒーティングにおけるロードヒーティング部材Hの損傷の危険性が著しく低減できる。
【0022】
また、本発明は、上記ロードヒーティング部材Hを埋め込んだアスファルト下地2の表面2Aに、舗装作業車両のタイヤ走行予定部Z,Zに沿って、ゴムアスファルト系帯状シート6,6を敷設し、該帯状シート6,6以外の上記表面2Aに乳剤を散布して後、上記帯状シート6,6上を走行する上記舗装作業車両にて、アスファルト保護層4を敷設する方法であるので、舗装作業車両のタイヤ表面と、埋め込まれたヒーティング部材Hとは、直接に接触せず、しかも、タイヤ表面に乳剤が付着せず、一旦埋め込まれたヒーティング部材Hが引きずり出される虞がなくなって、ヒーティング部材Hの損傷事故を防止できる。
【符号の説明】
【0023】
1 路盤
2 アスファルト下地
2A 表面
3 ローラ
4 アスファルト保護層
6 ゴムアスファルト系帯状シート
10 ヒーティングケーブル
H ロードヒーティング部材
U 融雪道路
【技術分野】
【0001】
本発明は、融雪道路の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
融雪道路の施工に於て、ロードヒーティング部材を道路に埋設する必要があり、例えば、ロードヒーティング部材が加熱温水用パイプである場合には、路盤上に金網を敷設し、この金網上にプラスチック製の加熱用パイプを固定し、次に、このパイプを埋め込む深さにアスファルトを敷き均し、さらに上層アスファルトを敷設する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、ロードヒーティング部材がヒーティングケーブルである場合には、図12に示すような融雪道路Uの構造が一般的であって、その工法は、砕石又はコンクリートの路盤31上に、まず、アスファルト下地32を敷設して、固化した平坦面状の下地表面32Aに、ヒーティングケーブル33を敷いて、その上からアスファルト保護層34を敷設して、ケーブル33を保護層34の下面近傍位置に埋設していた。なお、表層35を、さらに、上から敷設するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2852980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来の施工方法と問題点を、図13,図14及び図15に基づいて説明すれば、従来の図12に示すような融雪道路Uの施工方法に於て、(図13に示す如く、)路盤31上に敷設して固化したアスファルト下地32の平坦状表面32A上に、ヒーティングケーブル33を敷設した後、ダンプトラック、及び、フィニッシャ,ローラ等の車両と舗装機械によって、保護層34を敷設していた(図14参照)。
【0006】
上述の保護層34のアスファルト打設作業時(敷設時)にあっては、図13のように、転圧・冷却して固くなった下地表面32A上にヒーティングケーブル33が露出した状態で存在するため、(機械引き舗装における)ダンプトラックやフィニッシャが、その上を踏みつつ走行して、露出したヒーティングケーブル33に損傷を与える虞があった。
さらに、図14に於て、同図中(イ)(ロ)(ハ)は時間が順に経過した状況を説明する図であって、まず、図14(イ)に示すように、保護層34を例えば、10TON 以上の大型のローラによって、大きな圧力Pを付与しつつ転圧するが、その際、ヒーティングケーブル33は弾性を有するため、横断面が楕円偏平状に弾性圧縮変形する。
【0007】
図14(イ)から(ロ)に示すように、その後、弾性圧縮変形したヒーティングケーブル33は、その弾性的反発力によって、矢印F33の方向に、アスファルト保護層34を局部的に押し上げるので、ついには、図14(ハ)及び図15に示すように表面34Aに達するようなクラック(亀裂)36が発生するという問題があった。舗装品質が重要視される車道に於ては、このようなクラック36を発生することは、特に重大な問題となる。
【0008】
そこで、本発明は、このような従来の問題点を解決して、ロードヒーティング部材の損傷の危険性を低減し、さらに、クラックの発生を防止して、舗装品質を著しく改善・向上し、かつ、作業能率がほとんど変わらずに済む融雪道路の施工方法を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明に係る融雪道路の施工方法は、アスファルト下地を打設した直後に、ロードヒーティング部材を上記アスファルト下地上に敷設して、上記アスファルト下地が冷却前の柔らかい状態下にて、ローラによって転圧することで上記ロードヒーティング部材を上記アスファルト下地へ圧入状に埋め込み、その後、アスファルト保護層を敷設する方法である。
また、本発明は、アスファルト下地を打設した直後に、ロードヒーティング部材を上記アスファルト下地上に敷設して、上記アスファルト下地が冷却前の柔らかい状態下にて、ローラによって転圧することで上記ロードヒーティング部材を上記アスファルト下地へ圧入状に埋め込み、上記ロードヒーティング部材を埋め込んだアスファルト下地の表面に、舗装作業車両のタイヤ走行予定部に沿って、ゴムアスファルト系帯状シートを敷設し、該帯状シート以外の上記表面に乳剤を散布して後、上記帯状シート上を走行する上記舗装作業車両にて、アスファルト保護層を敷設する方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アスファルト保護層のクラックの発生を防ぎ、舗装品質を著しく改善・向上できる。
また、舗装機械(舗装作業車両)によって、ロードヒーティング部材が損傷を受けることを確実に防ぐことができる。
しかも、舗装作業能率を低下させることなく、前述の著大な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に使用可能なロードヒーティングケーブルの一例を示す断面図である。
【図2】本発明に使用可能なロードヒーティングユニットの一例を示す平面図である。
【図3】ロードヒーティングユニット(ロードヒーティング部材)の敷設配置の説明平面図である。
【図4】本発明に係る施工方法によって得られる舗装部位の一例を示す断面図である。
【図5】本発明に係る施工方法の実施の一形態を説明するための断面図である。
【図6】本発明に係る施工方法の実施の一形態を説明するための断面図である。
【図7】本発明に係る施工方法の実施の一形態を説明するための断面図である。
【図8】本発明に係る施工方法の実施の一形態を説明するための断面図である。
【図9】本発明の作用効果の説明を兼ねた本発明の要部構成の説明用の断面図である。
【図10】ゴムアスファルト系帯状シートを用いた本発明の他の実施の形態を示す平面図である。
【図11】図10のC−C断面図である。
【図12】従来例を示す断面図である。
【図13】従来例の施工方法の説明図である。
【図14】従来例の問題点を説明するための要部断面図である。
【図15】従来例の問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図5に示すように、砕石又はコンクリート等の路盤1上に、一層目のアスファルト―――即ち、アスファルト下地2―――を打設し、次に、図6に示すように、上記アスファルト下地2を打設した直後に、ロードヒーティング部材Hをアスファルト下地2の表面2Aに敷設する。つまり、アスファルト下地2は打設直後であって、アスファルトが完全に冷却する前の柔らかい状態下にて、ヒーティング部材Hを敷き並べる。
【0013】
次に、上記の柔らかい状態下にて、舗装用ローラ3によって、図7に示す如く転圧すると、転圧力P3 を受けて、ロードヒーティング部材Hは、下地表面2Aからアスファルト下地2に(圧入状に)埋め込まれてゆく。図7では矢印R3 方向に回動しつつローラ3が矢印A3 方向に移動して、柔らかいアスファルト下地2へ、順次、同図の左から右方向にロードヒーティング部材Hが埋め込まれてゆく。即ち、図8はこのようにロードヒーティング部材Hが埋め込まれて、下地表面2Aと同一水平面上に、ロードヒーティング部材Hの上端が存在する。
【0014】
その後、図9に示すように、アスファルト保護層4を打設形成(敷設)する。ところで、図9に示すように、2層目のアスファルト層としての上記アスファルト保護層4を敷設する際に、ダンプトラックやフィニッシャ等の舗装作業車両が、図8に於て、冷却固化した下地表面2A上を走行したとしても、ロードヒーティング部材Hは下地表面2Aから突出しておらず、ロードヒーティング部材Hが損傷を受けたり、異常変形を受けることが全くない。しかも、図9(A)に示すように、保護層4の敷設のために、大型のローラ等によって大きな圧力Pが付与されつつ転圧されるが、その際、前工程に於て、アスファルト下地2内に埋設状態となっているロードヒーティング部材Hは、直接的に前記圧力Pを受けずに済み、横断面が、従来の図14(イ)のように楕円偏平状に変形することを、防止できる。このように、図9(A)に示すように、ロードヒーティング部材Hの横断面が転圧の圧力Pを受けて変形することがない。
その後、図4に示すように、表層5をその上から被覆敷設することで、融雪道路Uが完成する。
【0015】
上述のように、アスファルト下地2内に、アスファルト打設直後の柔らかさを利用して、ロードヒーティング部材Hを埋め込んでしまうことにより、その上に(2層目の)アスファルト保護層4を敷設する作業にて、ヒーティング部材Hの圧縮変形を大幅に減少でき、その後、図14(ロ)(ハ)と図15にて述べた従来例のクラック36の発生を避けることができ、また、舗装作業車両によってヒーティング部材Hが傷付けられる危険性も大幅に低減される。
なお、本発明に於て、ヒーティング部材Hとしては、(以下説明する図1〜図3の)ヒーティングケーブル10以外に、温水や地下水を循環させるパイプ(温水式ロードヒーティング用パイプ)であっても良い。
【0016】
図1に、ヒーティングケーブル10の具体的断面図を例示する。断面中央部に発熱導体(抵抗線)11を有し、その外側を順次、絶縁体12、縦溝付シース13、保護シース14にて被覆された構造を例示する。なお、ヒーティングケーブル10としては、これ以外の構造のものとするも自由である。
図2に示すように、工場等にて予めヒーティングケーブル10を所定敷設ピッチP10にて蛇行させて、ガットテープ15にて保持し、かつ、接続部16を介してリードケーブル17, 17とヒーティングケーブル10とを接続した矩形平面状ヒーティングユニット20を製作しておき、施工現場に於ては、図3に示す如く、このようなヒーティングユニット20を次々と並べて敷き詰めてゆく。
【0017】
次に、図10と図11は他の実施の形態を示す。即ち、前述の実施の形態に於て、図5,図6,図7,図8と順次説明した如く、アスファルト下地2を打設した直後に、ロードヒーティング部材Hを上記アスファルト下地2上に敷設して、上記アスファルト下地2が冷却前の柔らかい状態下にて、ローラ3によって転圧することで上記ロードヒーティング部材Hを上記アスファルト下地2へ圧入状に埋め込む。次に、ロードヒーティング部材H(ヒーティングケーブル10)を埋め込んだアスファルト下地2の表面2Aに、舗装作業車両のタイヤ走行予定部Z,Z(図10の平面図に於て斜線にて示す)に沿って、ゴムアスファルト系帯状シート6,6を敷設する。そして、帯状シート6,6以外に相当する表面2Aには乳剤を散布し、次に、この帯状シート6,6上を走行する舗装作業車両にて、アスファルト保護層4を、その上から、敷設する。
【0018】
この乳剤は、上下層の接着力強化、及び、クラック防止や防水の作用をなすものであるが、粘着性があるため、舗装作業車両が走行すると、タイヤに乳剤が付着して、その粘着性によって、一旦埋め込んだヒーティング部材H(ヒーティングケーブル10)が、タイヤの回転に伴って引きずり出される虞がある。しかし、本発明では、タイヤ走行予定部Z,Zに、予めゴムアスファルト系帯状シート6,6を敷設し、かつ、乳剤を省略してあるため、タイヤの回転に伴って、一旦埋め込まれているヒーティング部材H(ヒーティングケーブル10)が引きずりだされることがない。なお、上記ゴムアスファルト系帯状シート6は、クラック防止や防水に一般に用いられる公知のものを使用できる。
なお、本発明に於て、アスファルト下地2が柔らかい状態下にて、ローラ3の転圧によってアスファルト下地2へ圧入状にロードヒーティング部材Hを埋め込むが、その際に、図2に例示したようなヒーティングユニット20のリードケーブル17も同様にローラ3の転圧にて埋め込んで良い。また、接続部16については、舗装内に別途スペースを予め設けて、そのスペース内へ設置し、その後、アスファルト上層を敷くのが良い。
【0019】
また、本発明に於て、融雪道路Uとは、凍結防止道路をも包含しているものとする。本発明は、いわゆる機械引きロードヒーティングの工法に関連した発明であって、舗装機械を用いず人力による舗装(いわゆる手引き舗装)では問題がなかったが、作業能率向上のために、機械引きロードヒーティングの工法を適用すれば、既述のヒーティングケーブル33の損傷の問題、及び、クラック36の発生の問題(図14,図15参照)が発生する。このような問題を本発明は、作業能率を低下させずに解決したものであるといえる。さらに、舗装厚さも従来のままで済む利点もある。
【0020】
また、本発明に於て、アスファルト下地2が冷却前の柔らかい状態とは、 100℃〜 190℃を指し、 120℃〜 170℃が好ましく、 140℃〜 165℃が最も望ましい。そして、ローラ3で転圧してヒーティング部材Hがアスファルト下地2へ圧入しやすいように、通常よりも低い温度でも転圧可能な舗装材質、または添加剤を選択することも、有効な手段である。
【0021】
本発明は、上述のように、アスファルト下地2を打設した直後に、ロードヒーティング部材Hを上記アスファルト下地2上に敷設して、上記アスファルト下地2が冷却前の柔らかい状態下にて、ローラ3によって転圧することで上記ロードヒーティング部材Hを上記アスファルト下地2へ圧入状に埋め込み、その後、アスファルト保護層4を敷設する施工方法であるので、ロードヒーティング部材Hがアスファルト保護層4の内部乃至下方位置にて圧縮変形を生ずることがほとんどなくなり、図14にて述べた従来のクラック36の発生を有効防止して、舗装性能(品質)が向上でき、舗装寿命も延びる。さらに、機械引きロードヒーティングにおけるロードヒーティング部材Hの損傷の危険性が著しく低減できる。
【0022】
また、本発明は、上記ロードヒーティング部材Hを埋め込んだアスファルト下地2の表面2Aに、舗装作業車両のタイヤ走行予定部Z,Zに沿って、ゴムアスファルト系帯状シート6,6を敷設し、該帯状シート6,6以外の上記表面2Aに乳剤を散布して後、上記帯状シート6,6上を走行する上記舗装作業車両にて、アスファルト保護層4を敷設する方法であるので、舗装作業車両のタイヤ表面と、埋め込まれたヒーティング部材Hとは、直接に接触せず、しかも、タイヤ表面に乳剤が付着せず、一旦埋め込まれたヒーティング部材Hが引きずり出される虞がなくなって、ヒーティング部材Hの損傷事故を防止できる。
【符号の説明】
【0023】
1 路盤
2 アスファルト下地
2A 表面
3 ローラ
4 アスファルト保護層
6 ゴムアスファルト系帯状シート
10 ヒーティングケーブル
H ロードヒーティング部材
U 融雪道路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト下地(2)を打設した直後に、ロードヒーティング部材(H)を上記アスファルト下地(2)上に敷設して、上記アスファルト下地(2)が冷却前の柔らかい状態下にて、ローラ(3)によって転圧することで上記ロードヒーティング部材(H)を上記アスファルト下地(2)へ圧入状に埋め込み、その後、アスファルト保護層(4)を敷設することを特徴とする融雪道路の施工方法。
【請求項2】
アスファルト下地(2)を打設した直後に、ロードヒーティング部材(H)を上記アスファルト下地(2)上に敷設して、上記アスファルト下地(2)が冷却前の柔らかい状態下にて、ローラ(3)によって転圧することで上記ロードヒーティング部材(H)を上記アスファルト下地(2)へ圧入状に埋め込み、上記ロードヒーティング部材(H)を埋め込んだアスファルト下地(2)の表面(2A)に、舗装作業車両のタイヤ走行予定部(Z)(Z)に沿って、ゴムアスファルト系帯状シート(6)(6)を敷設し、該帯状シート(6)(6)以外の上記表面(2A)に乳剤を散布して後、上記帯状シート(6)(6)上を走行する上記舗装作業車両にて、アスファルト保護層(4)を敷設することを特徴とする融雪道路の施工方法。
【請求項1】
アスファルト下地(2)を打設した直後に、ロードヒーティング部材(H)を上記アスファルト下地(2)上に敷設して、上記アスファルト下地(2)が冷却前の柔らかい状態下にて、ローラ(3)によって転圧することで上記ロードヒーティング部材(H)を上記アスファルト下地(2)へ圧入状に埋め込み、その後、アスファルト保護層(4)を敷設することを特徴とする融雪道路の施工方法。
【請求項2】
アスファルト下地(2)を打設した直後に、ロードヒーティング部材(H)を上記アスファルト下地(2)上に敷設して、上記アスファルト下地(2)が冷却前の柔らかい状態下にて、ローラ(3)によって転圧することで上記ロードヒーティング部材(H)を上記アスファルト下地(2)へ圧入状に埋め込み、上記ロードヒーティング部材(H)を埋め込んだアスファルト下地(2)の表面(2A)に、舗装作業車両のタイヤ走行予定部(Z)(Z)に沿って、ゴムアスファルト系帯状シート(6)(6)を敷設し、該帯状シート(6)(6)以外の上記表面(2A)に乳剤を散布して後、上記帯状シート(6)(6)上を走行する上記舗装作業車両にて、アスファルト保護層(4)を敷設することを特徴とする融雪道路の施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−47227(P2011−47227A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197767(P2009−197767)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【出願人】(594022633)北川ヒューテック株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【出願人】(594022633)北川ヒューテック株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
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