説明

蠕動ポンプおよび灌注ライン

本発明は、流体を分配するために蠕動ポンプ(16)のローラー(62)と協働することを意図された、外科用途向けまたは歯科用途向けの流体の供給源に連結される灌注ライン(1)のための可撓性管部分(4)に関し、この可撓性管部分は、可撓性管部分(4)をポンプ(16)のローラー(62)の軌道のすぐ下に位置させるのを可能にする所定の外形を上記管部分の長さとの組合せで上記管部分にもたらすような可撓性管部分(4)の2つの自由端部間の距離を画定する手段を有することを特徴とする。本発明また、外科用途向けまたは歯科用途向けの流体の供給源に連結された灌注ライン(1)の可撓性管部分(4)上で回転される複数のローラー(62)を有する蠕動ポンプに関し、この蠕動ポンプは、ローラー(62)が作動する平面の前で可撓性管部分(4)を受けて次いで上記可撓性管部分(4)をローラー(62)の下に送り次いで最後に上記管部分をローラー(62)に対して押圧するための手段を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蠕動ポンプおよび灌注ラインに関する。より詳細には、本発明は、生理的食塩水バッグに連結された灌注ラインと協働することを意図された、医学的使用のための蠕動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内での外科的手技、特にインプラント歯科学の外科的手技の分野では、下顎骨内でドリリングおよびタッピングを行う必要がある。この作業を良好な条件で行うためには、生理的食塩水を手術野領域へと送る必要がある。したがって、術者は滅菌された灌注ラインを介して中身を抜き取られる生理的食塩水バッグを保持することになる。この灌注ラインは、従来、手術野へ一定量を灌注し続ける蠕動ポンプのローラーの下に配置されるものである。生理的食塩水バッグが空になった場合または二人の患者に連続して使用される場合、術者は灌注ラインを取り外して食塩水バッグと共に灌注ラインを廃棄し、満杯の食塩水バッグに連結された灌注ラインを取り付ける作業を繰り返す必要がある。
【0003】
市販されている蠕動ポンプでは灌注ラインをポンプ・ローラーの下に配置する作業が簡単ではないことが確認されている。術者は、灌注ラインを曲げてポンプ・ローラーの下に置けるような形状にするためには両手を使用しなればならない。これは、術者が器用であることを必要としさらには術者の作業負荷を増大させてしまう、困難な作業である。また、術者が最初の試みで灌注ラインを配置できないことはめずらしいことではなく、その場合、術者はこの作業を繰り返さなければならない。
【0004】
蠕動ポンプの基本作動原理は単純である。ローラーが灌注ラインを圧縮すると、一定量の流体が前方へと移動され、それと同時に減圧が起こり次の一定量の流体が流入される。ローラーは3つ存在する。ローラーが回転して連続的に灌注ラインを圧縮すると、これらのローラーにより、上記ローラーの円軌跡に接しておりかつ上記ローラーの回転方向と同じ方向に方向付けられたトラクション力が灌注ラインに作用することは明白である。したがって、蠕動ポンプ・ローラーに隣接する灌注ラインを固定する手段を用意することが必要となる。通常、市販されている蠕動ポンプでは、灌注ラインは、ポンプ・ローラーの上流側および下流側にある2つの掴み具に挟扼される。この解決策の欠点はすぐに理解できるものである。その欠点とは、灌注ラインが適切に配置されずに掴み具によって閉じられると、灌注ラインが剪断力を受けて突き破られることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、とりわけ、外科用途向けまたは歯科用途向けの蠕動ポンプと、実装するのが非常に単純であり、術者の側で移動されることのみを必要とししたがって突き破られたり切断されたりするいかなる危険性も回避できる灌注ラインとを提供することにより、上述の欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、本特許出願に添付される請求項1または請求項2に記載の灌注ラインの可撓性管部分に関する。
【0007】
本発明はまた、本特許出願に添付される請求項9に記載の蠕動ポンプに関する。
【0008】
本発明による灌注ラインの可撓性管部分および蠕動ポンプの有利な実施形態が従属請求項の主題を形成する。
【0009】
これらの特徴により、本発明は、蠕動ポンプに固定するために術者が管類を曲げたりなんらかの他の方法で扱ったりすることを必要とせずに、その長さおよび2つの端部を分離しているその距離により、蠕動ポンプ・ローラーの軌道上に直接に配置されるのを可能にするような外形を有することができる、灌注ラインの可撓性管の一部分を提供する。それにより、術者は時間を節約することができ、また、術者の手技の進行に悪影響を及ぼす可能性がある余計な一切のストレスを回避することができる。また、例えば突き破ってしまうことによって灌注ラインを台無しするようなまたはポンプを損傷させるような危険性が実質的にない。
【0010】
可撓性管部分を組み立てるのに必要となる動作も可能な限り単純化される。実際、可撓性管部分を担持する手段は、この管部分をポンプに組み付けるためにわずかに曲げられるだけでよい。この操作は同一の手の2本の指を使用して行われる。
【0011】
本発明による蠕動ポンプは、ローラーが作動する平面の前で可撓性管部分を受けるための手段を有しており、これにより、ローラーの存在が邪魔にならないことで上記可撓性管部分を連結させる操作がかなり単純化されることは容易に理解されよう。ここでは、この管部分は、術者の単純な動作によってローラーの軌道の下方で移動されて最終的に上記ローラーに対して押圧され、それにより動作位置に配置される。この管部分を取り付ける操作を自動化することにより、これまでは長く退屈なものなってしまう可能性がありさらには管が不適切に位置されている場合に管が突き破られたりポンプが損傷されたりするような無視できない危険性を含んでいた作業から術者が解放される。
【0012】
本発明の他の特徴および利点は、本発明による灌注ラインおよび蠕動ポンプの一実施形態の以下の詳細な記述からより明確となり、この例は添付図面を参照した非限定的な説明のみによって与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】灌注ラインを示す斜視図である。
【図2】開位置にある空のスライドを示す斜視図である。
【図3】灌注ラインが中に積載された、開位置にあるスライドを示す斜視図である。
【図4a】灌注ラインが定位置にあり、スライドが排除された、蠕動ポンプを示す正面図である。
【図4b】灌注ラインが定位置にあり、スライドが排除された、蠕動ポンプを示す斜視図である。
【図5a】完全に開いているスライドを示す側断面図である。
【図5b】スライドが完全に開いている状態の、ポンプを示す側面図である。
【図6a】第1の中間位置にあるスライドを示す側断面図である。
【図6b】スライドが第1の中間位置にある、ポンプを示す側面図である。
【図7a】スライドが第2の中間位置にある、ポンプを示す側断面図である。
【図7b】スライドが第2の中間位置にある、ポンプを示す側面図である。
【図8】スライドが閉じられている、ポンプを示す側面図である。
【図9】閉位置にあるスライドを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、生理的食塩水を手術野へ運ぶための蠕動ポンプおよび灌注ラインの両方に関する。最初に灌注ラインを考察し、次いで蠕動ポンプを説明する。
【0015】
概して全体を1で示す灌注ラインが、管類の3つの部分(図1を参照)、すなわち、生理的食塩水バッグ(図示せず)に連結された入口管2と、入口管2を連続的に延長するポンプ・チューブ4および出口管6とを有している。入口管2および出口管6は通常PCVで作られる。ポンプ・チューブ4は好適にはシリコ−ンで作られるが、PVCまたは別の可撓性および耐久性を有する材料で作られてもよい。
【0016】
後で詳細に説明する蠕動ポンプ・ローラーはポンプ・チューブ4の上で回転される。所与の時間にローラーの1つがポンプ・チューブ4を圧搾し、それにより一定量の流体が出口管6の方に移動され、それと同時に減圧が起こりバッグからさらに一定量の流体が入口管2を介して流入される。
【0017】
ポンプ・チューブ4は入口管2の後ろおよび出口管6の前にある。
【0018】
本発明による灌注ライン1は支持部分8によって完成される。この支持部分8は全体的に直線形状であり、2つの掴み具14aおよび14bを備えるU形掴持用クランプ(gripping clamp)14によって互いに弾性的に連結される段付アーム10および12を有する。掴持用クランプ14の2つの掴み具14a、14bは、2つの段付アーム10および12にやはり連結されている底壁14cによって互いに連結される。2つの段付アーム10および12の弾性力は、掴持用クランプ14の2つの掴み具14a、14bの間の16のところに見られる物体を取り外すことによって得られる。
【0019】
2つの段付アーム10および12のそれぞれは、側部バー10b、12bの前でそれらより低い位置を延在する基部プレート10aおよび12aによって形成される同じ構造を有している。ここでは、段付アーム10の側部バー10bの自由端部のところにリング10cがあり、その下に入口管2が配置される。次に、入口管2は、2つの垂直壁10d1および10d2で区切られた円弧状の誘導溝10d内に入り次いで穴10eを貫通する。穴10e内では、入口管2は滅菌可能な生体適合性接着剤によって接着されてよく、または、例えば超音波溶接などの別の任意の手法によって固定されてもよい。穴10eは基部プレート10aの底面の下方の切欠先端部10f内で開いており、ポンプ・チューブ4の一方の端部がその切欠先端部10f上に押し込まれ、ポンプ・チューブ4の上記端部を覆うように手動で移動され得る圧着リング10gによって圧着される。
【0020】
同様の形で、ポンプ・チューブ4のもう一方の自由端部が切欠先端部12f上に押し込まれ、圧着リング12gによって圧着される。切欠先端部12fは穴12e内で基部プレート12aの頂面上へと抜けており、穴12eには、出口管6の一方の自由端部が係合されており、この自由端部は場合によっては接着されるかまたは超音波溶接すらされていてもよい。次に、出口管6は、2つの垂直壁12d1および12d2によって区切られた円弧状の誘導溝12d内に入り、次いで、側部バー12bの自由端部のところに立っているリング12cの下で摺動される。
【0021】
入口管2は自由端部として残されていた端部のところで生理的流体バッグ(図示せず)に連結される。出口管6の自由端部は歯科用器具または手術器具に連結される。
【0022】
ポンプ・チューブ4が本発明による蠕動ポンプのローラーの下に摺動可能にするような形状を自動的にとるように、ポンプ・チューブ4の長さおよび2つの切欠先端部10fおよび12fを分離している距離が計算されていることを以下では理解されたい。
【0023】
2つの段付アーム10および12の各々の基部プレート10a、12a上に固定スタッド、それぞれ10h、12h、が存在することにも留意されたい。固定スタッドは、後で詳細に説明する蠕動ポンプのフレーム上で支持部分8を固定するためのものである。
【0024】
また、支持部分8が弾性であることにより、使用者が2本の指で掴持用クランプ14の掴み具14a、14bを掴んだときに、2つの固定スタッド10h、12hが共に接近するように移動される傾向があることは明らかである。さらに、図面ではAが付されている2つの矢印が、使用者にクランプ14の掴み具14a、14bに圧力を作用させるように促している。
【0025】
最後に、灌注ラインは、もちろん、完全に組み立てられた状態で使用者のところに搬送されることに留意されたい。したがって、使用者は、灌注ラインのポンプ・チューブ部分を蠕動ポンプのフレーム内に挿入して、灌注ラインを生理的流体バッグと使用者が使用する手術器具または歯科用器具との両方に連結するだけでよい。
【0026】
次に、本発明の第2の態様による蠕動ポンプを考察する。
【0027】
全体を参照符号16で示す本発明による蠕動ポンプは、基本的に、フレーム18、スライド20およびハンドル22を有する(図2を参照)。図2は、空のスライド20が開位置にある状態の蠕動ポンプ16を示している。スライド20が概して平行六面体の外形を有しており、灌注ライン1を受けるための、より詳細には支持部分8およびポンプ・チューブ4を受けるためのハウジング23を実質的に円弧状の内壁21により画定していることに留意されたい。スライド20は、スライド20の前面26に平行に延在しておりかつその前面26の後方に設置されている停止プレート24によって上方向に延びている。少なくとも1つ、好適には2つの止め28が、スライド20の小さい側部30の延長部として上記小さい側部30の頂端部のところに設けられる。止め28の各々が、スライド20の小さい側部30から止め28を部分的に分離するための垂直溝32を有すること、および、止め28が、上記スライド20が開けられるときにスライド20の遊びを制限するように機能する歯34で終端していることに留意されたい。実際には、後で分かるように、スライド20は基本的に枢動運動するものであり、そのとき、止め28がフレーム18の大きい表面38内に配置された2つ垂直スロット36内へと摺動されることで、スライド20は、完全に開いているとき、フレーム18の大きい表面38に係合された止め28の歯34によって保持される。
【0028】
スライド20およびハンドル22は、スライド20およびハンドル22によって形成されるユニットの両側に配置される2つの共通の枢動ピンすなわち枢動シャフト40を中心に枢動可能にポンプ16のフレーム18上に装着される。スライド20、ハンドル22、ならびに、スライド20およびハンドル22がその上に装着されるポンプ16のフレーム18が、独立した、取り外し可能である構造組立体を形成することに留意されたい。したがって、ポンプ16のモータが故障した場合、例えば、欠陥のある組立体と新しい組立体との間で単純に一般的な交換を行うことができる。また、本発明による取り外し可能である構造組立体は、この目的でケース内または例えばすべての術者が所持する「ユニット」として一般に知られている電力・制御ユニット内のいずれかに配置され得る。
【0029】
各枢動シャフト40は、フレーム18の大きい表面38に対して垂直に延在するリブ43内に作られた貫通穴42の両側から延びている(図4aおよび4bを参照されたい)。枢動シャフト40は、その第1の自由端部40aのところで、ハンドル22を介してスライド20を支持する働きをする。枢動シャフト40は、その第2の自由端部40bのところで、スライド20の内壁21の外面上に配置されたカム・チャネルまたはカム・パス44の輪郭に従って動く(図5aおよび5bを参照されたい)。
【0030】
ハンドル22は、基本的に、操作バー48によって連結された互いに平行な2つの垂直壁46で形成される。ハンドル22のそれぞれの壁46がバナナ形状のカム・パス50を有しており、スライド20の小さい側部30内で任意適当な手段によって固定されたスタッド52がこのカム・パス50に従って動くことに留意されたい。
【0031】
最後に、ハンドル22が、スライド20の小さい側部30に平行に延在しておりかつそれぞれがスタッド56で終端している2つの傾斜アーム54を有することに留意されたい。後で分かるように、これら2つの傾斜アーム54は、スライド20の小さい側部30の頂端部に設けられたカム・パス58およびフレーム18の大きい表面38の側部に設けられたノッチ60と交互に協働する。カム・パス58が、水平面58bによって互いに連結された2つの平行な傾斜面58aおよび58cを有することに留意されたい。
【0032】
次に、灌注ライン1を積載してスライド20を閉じる作業を考察する。スライド20およびハンドル22をポンプ16のフレーム18から離れるように移動させる傾向にある動作を正動作と呼び、スライド20およびハンドル22をポンプ16のフレーム18に接近させるように移動させる傾向にある動作を負動作と呼ぶことにする。
【0033】
灌注ライン1を定位置に設置する作業は、ポンプ・チューブ4および支持部分8をスライド20のハウジング23内に導入することから始まる(図5aを参照されたい)。内壁21の形状はポンプ・チューブ4の外形に実質的に従っている。ポンプ・チューブ4が、上記ハウジング23の底部に設けられ、ポンプ・チューブ4を蠕動ポンプ16のローラー62の方に方向付けるガイド・カム61により、ハウジング23内に予め配置される(図5aを参照されたい)。支持部分8が、ポンプ16のローラー62の方に向けられた状態で、クランプ14の2つの掴み具14a、14bの開いている側を用いてハウジング23に挿入される。
【0034】
上で既に言及したように、支持部分8をスライドのハウジング23内で容易に組み立てるのを可能にするために、使用者は2本の指でクランプ14の2つの掴み具14a、14bを圧迫するだけでよい。それらの弾性力により、2つの段付アーム10、12が曲げられて、固定スタッド10h、12hが互いに接近するように移動され、それにより、それらの固定スタッド10h、12hを、停止プレート24の基部のところに配置された溝64(図2を参照)に面するように位置させることが可能となる。使用者がクランプ14の2つの掴み具14a、14bに作用させている圧力を解放すると、固定スタッド10h、12hがそれらの傾斜面を介して溝64内に突き出て、それにより支持部分8がスライド20内で確実に保持されるようになる。
【0035】
このようにして係合された支持部分8は、そのアーム10および12の基部プレート10a、12aを介してスライド20の縁部66(図2を参照)上で静止される。したがって、使用者は、支持部分8をスライド20内に位置させる際に、灌注ライン1のポンプ・チューブ部分4をスライド20のハウジング23内に摺動させてクランプ14の掴み具14a、14b上にわずかな圧力を作用させるだけでよい。これは、非常に単純で、ほぼ直感的な作業であり、使用する必要があるのは一方の手のみである。また、使用者はいかなるときも、本発明によるポンプ16のローラー62の軌道形状に適合させるためにポンプ・チューブ4の輪郭を調整する必要がない。したがって、使用者は貴重な時間を節約して余計な一切のストレスを回避することができ、ポンプ・チューブを上記ポンプ・ローラーに対して不適切に位置させることにより灌注ラインまたはポンプ自体を損傷させることが減る。
【0036】
ポンプ・チューブ4およびその支持部分8がスライド20のハウジング23内で定位置にある場合、スライドを閉じるのを開始することができる(図5aおよび5bを参照されたい)。その場合、負方向の、すなわちポンプ16のフレーム18の方向への推力がハンドル22の操作バー48に作用される。このとき、ハンドル22が枢動シャフト40を中心に枢動し始めて、それにより、ハンドル22と共にスライド20が上記シャフト40を中心に同様の旋回動作を行うように駆動される。実際には、この動作段階では、スライド20およびハンドル20はハンドル22の2つの傾斜アーム54を介して結合されており、それらの2つの傾斜アーム54はそれらのスタッド56を介してカム・パス58の傾斜面58aに当接されている。また、スライドは、溝36内を摺動する止め28により、上方へ移動するのを防止されている。
【0037】
このように、ハンドル22により、スライド20が、スライド20の停止プレート24がフレーム18の頂部分に当接されるまでシャフト40を中心にポンプ16のフレーム18に向かって負方向に旋回される。このとき(図7aおよび7bを参照)、傾斜アーム54のスタッド56がカム・パス58の傾斜面58cから抜け出て、ハンドル22およびスライド20は摺動可能に互いに結合されなくなる。
【0038】
ハンドル22が操作バー48の作用によりポンプ16のフレーム18に向かって押し続けられた場合、上記ハンドル22はシャフト40を中心に旋回され続け、一方スライド20は旋回と上方への並進移動とを組み合わせた動作を行う。ハンドル22とスライド20との結合が解除される瞬間、スライド20は、その基部68がポンプ16のフレーム18から離間された状態の傾斜位置にあることに留意されたい(図6aおよび6bを参照されたい)。スライド20の基部68がハウジング23の底部のところにあるポンプ・チューブ4と実質的に同じ高さにあることを理解されたい。したがって、スライド20が傾斜しているこの位置では、ポンプ・チューブ4は依然としてポンプ16のローラー62の軌道から離れており、それによりスライド20を閉じることが容易になる。
【0039】
しかし、ポンプ・チューブ4はこのときにローラー62の軌道の下を移動できなければならず、それにより上記ローラー62に対して押圧されなければならない。これは、スライド20の旋回と上方への並進移動との二重性の動作の結果として達成される。実際には、ハンドル22の旋回動作の間に、スライド20も旋回されてさらにその動作中に枢動シャフト40の第2の自由端部40bに対して動くカム・パス44によって誘導される。このカム・パス44は、湾曲部分44bによって互いに連結される2つの直線部分44aおよび44cを有する。スライド20の旋回動作の開始時では(図5a)、枢動シャフト40はカム・パス44の第1の直線部分44aの底部にある。スライド20の旋回動作の終了時では(図8)、枢動シャフト40はカム・パス44の第2の直線部分44cの底部にある。スライド20の枢動シャフト40に対してのカム・パス44のこの相対移動により、スライドの基部68がポンプ16のフレーム18に再び当接される位置に戻される。同時に、スライド20に固定されたスタッド52が、ハンドル22内に配置されたカム・パス50内で底部から上方へと移動される。この動作により、底部から上方へと垂直に並進移動させるためにスライド20を押し込むことによってスライド20を閉じる段階が終了する。したがって、スライド20を最初に上昇させる段階でスライド20の基部68をポンプ16のフレーム18に当接される位置に戻すことにより、ポンプ・チューブ4が、スライド20の上方への垂直並進移動動作によりローラー62に対し押圧されている間にローラー62の軌道の下方に送られる。
【0040】
スライド20は、最後に、ポンプ16のフレーム18上に配置されたノッチ60内へと移動される傾斜アーム54のスタッド56によって固定され(図8を参照されたい)、それにより、ローラー62によって引き起こされる振動の影響下でスライド20が開かれることが防止される。また、図示されるように、ハンドル22は、ハンドル22が閉位置にあるときにスライド20を高い位置で保持してローラー62の径方向応力に耐えられるようにするためにカム・パス58の平坦面58bの下で移動されるショルダー70を有する。最終的に、フレーム18の大きい表面38が止め28の垂直溝32内に突き出て、スライド20およびハンドル22が摺動可能に確実に固定される。
【0041】
図9では、ポンプは、閉位置にあり、キャップ72がこの組立体を覆っている状態で示されている。
【0042】
スライド20は、スライド20を閉じるための上述したステップを逆の順序で行うことにより開放される。最初に、正方向の推力がハンドル22の操作バー48に作用される。このとき、ハンドル22がそのシャフト40を中心に枢動し始めて、それにより、スタッド56がノッチ60から離れて、カム・パス58の平坦面58bの下にあるショルダー70が引き抜かれる。同時に、スライド20に固定されたスタッド52が、ハンドル22内に配置されたカム・パス50内を頂部から下方へと移動され、それにより、スライド20が頂部から下方へと垂直に並進移動するように押し込まれる。この動作により、ポンプ・チューブ4が、最初にローラー62の高さを基準に下げられることでローラー62の軌道から離れるように移動される。同時に、カム・パス44が枢動シャフト40の第2の自由端部40bに対して移動される。スライド20の旋回動作の開始時では、枢動シャフト40はカム・パス44の第2の直線部分44cの底部にある。スライド20の旋回動作の終了時では、枢動シャフト40は上記カム・パス44の第1の直線部分44aの底部にある。スライド20の枢動シャフト40に対してのカム・パス44のこの相対移動により、スライド20の基部68が正方向に枢動され、それにより、基部68はポンプ16のフレーム18から離れるように移動され、ポンプ・チューブ4がローラー62の軌道から離れように移動される。
【0043】
スライド20がその旋回動作のある点に到達すると、ハンドル22が、カム・パス58の傾斜面58cに噛合される傾斜アーム54のスタッド56を介して、スライド20に結合される。このとき、ハンドル22によりスライド20が枢動シャフト40を中心に正方向に旋回され、それによりスライド20はポンプ16のフレーム18から離れるようにさらに移動され、その結果、ポンプ・チューブ4および支持部分8が上記フレーム18から完全に解放される。止め28の歯34がフレーム18の大きい表面38に噛合されるときにスライド20の旋回が停止されることに留意されたい。スライド20が垂直下方向に移動される間に垂直溝32がフレーム18の大きい表面38の保持から解放されることに留意されたい。次いで、固定スタッド10h、12hを溝64から解放して、ポンプ・チューブ4およびその支持部分8をスライド20から取り外すのを可能にするには、単純に掴み具14a、14bすなわちクランプ14に圧力を加えるだけで十分である。
【0044】
図示されない本発明による代替の実施形態によると、所定の長さの可撓性管部分4が、管部分4の2つ端部間の距離を画定するために、ポンプ16の相補的手段と協働する手段を有してよい。2つの端部間のこの距離は、管部分4をポンプ16のローラー62の軌道のすぐ下に位置させるのを可能にする所定の外形を上記管部分4の長さとの組合せで管部分4にもたらす。それにより、可撓性管部分4のそれぞれの端部に、基部プレート10a、12aと同様の形状の結合部分を設けることが想定可能となる。これら2つの連結部分は、互いには接合されず、各々が、入口管2および出口管6をそれぞれ組み立てるための穴10e、12eを有する。これらの穴10e、12eは切欠端部分10f、12f内に開いており、ポンプ・チューブ4の自由端部がこれらの切欠端部分10f、12f上に押し込まれて圧着される。さらに、基部プレート10a、12aを受けるために、2つの穴がスライド20の例えば縁部66に設けられてよい。
【符号の説明】
【0045】
1 灌注ライン; 2 入口管; 4 ポンプ・チューブ; 6 出口管;
16 蠕動ポンプ; 62 ローラー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用途向けまたは歯科用途向けの流体の供給源に連結される灌注ライン(1)のための、前記流体を分配するために蠕動ポンプ(16)のローラー(62)と協働することを意図された可撓性管部分であって、
両端部間の距離を定める手段を有し、その手段は前記ポンプ(16)の対応する手段と協働するものであり、前記可撓性管部分の長さが、前記ポンプ(16)の前記ローラー(62)の軌道のすぐ下に沿って位置させ得る外形を構成し得るものである、
ことを特徴とする、可撓性管部分。
【請求項2】
外科用途向けまたは歯科用途向けの流体の供給源に連結される灌注ライン(1)のための、前記流体を分配するために蠕動ポンプ(16)のローラー(62)と協働することを意図された可撓性管部分であって、
両自由端部間の距離を定める手段(8、10f、12f)を有し、当該距離ににより、前記可撓性管部分の長さと相まって、前記ポンプ(16)の前記ローラー(62)の軌道のすぐ下に沿って位置させ得る外形を前記可撓性管部分が有し得る、
ことを特徴とする、可撓性管部分。
【請求項3】
前記支持部分(8)が、前記可撓性管部分の前記自由端部が係合される2つの先端部(10f、12f)を備える、ことを特徴とする、請求項2に記載の可撓性管部分。
項2に記載の可撓性管部分。
【請求項4】
前記可撓性管部分(4)が前記蠕動ポンプ(16)の前記ローラー(62)の下で摺動可能にするような形状を自動的にとるように、前記可撓性管部分(4)の長さおよび前記2つの先端部(10fおよび12f)を分離している距離が計算される、ことを特徴とする、請求項3に記載の可撓性管部分。
【請求項5】
前記支持部分(8)が、前記ポンプ(16)の前記フレーム(18)上で前記支持部分(8)を保持するための手段(10h、12h、64)を有する、ことを特徴とする、請求項3または4のいずれか一項に記載の可撓性管部分。
【請求項6】
前記支持部分(8)が可撓性であることを特徴とする、請求項5に記載の可撓性管部分。
【請求項7】
前記支持部分(8)が、前記支持部分(8)を曲げる際に押圧される必要がある2つの掴み具(14a、14b)を含む掴持用クランプ(14)を備える、ことを特徴とする、請求項6に記載の可撓性管部分。
【請求項8】
前記支持部分(8)が、そこを通して前記流体が届けられる入口管(2)と、そこを通して前記流体が前記ポンプ(16)によって排出される出口管(6)との両方に前記可撓性管部分(4)を連結させるための手段を有する、ことを特徴とする、請求項3から7のいずれか一項に記載の可撓性管部分。
【請求項9】
外科用途向けまたは歯科用途向けの流体の供給源に連結された灌注ライン(1)の可撓性管(4)の一部分上で回転される複数のローラー(62)を有する蠕動ポンプであって、前記蠕動ポンプが、ローラー(62)が作動する平面の前で前記可撓性管部分(4)を受け、次いで前記可撓性管部分(4)を前記ローラー(62)の下に送り、次いで最後に前記部分を前記ローラー(62)に対して押圧するための手段を有する、ことを特徴とする、蠕動ポンプ。
【請求項10】
前記蠕動ポンプが、前記可撓性管部分(4)を受けるためのハウジング(23)を画定しかつその動作がハンドル(22)によって制御されるスライド(20)を有することを特徴とする、請求項9に記載の蠕動ポンプ。
【請求項11】
前記スライド(20)および前記ハンドル(22)の両方が、前記ポンプ(16)のフレーム(18)と一体である共通のシャフト(40)を中心に枢動可能に設置される、ことを特徴とする、請求項10に記載の蠕動ポンプ。
【請求項12】
前記スライド(20)および前記ハンドル(22)が、前記スライドおよび前記ハンドルが固定される前記ポンプ(16)の前記フレーム(18)と共に、取り外し可能な組立体を形成する、ことを特徴とする、請求項11に記載の蠕動ポンプ。
【請求項13】
前記ローラー(62)が作動する平面に平行な、前記フレーム(18)の大きい表面(38)を含む蠕動ポンプであって、前記スライド(20)を閉じる動作の間は、最初に前記ハンドル(22)および前記スライド(20)が枢動可能に結合され、それらの両方が、前記スライド(20)がその先端部を介して前記ポンプ(16)の前記フレーム(18)の前記大きい表面(38)に当接されるまでそれらの前記共通のシャフト(40)を中心に枢動され、前記スライド(20)の基部(68)が前記フレーム(18)の前記大きい表面(38)から一定距離のところに置かれ、次いで、前記ハンドル(22)が前記スライド(20)との結合を解除されてその前記シャフト(40)を中心に枢動され続け、前記スライド(20)が、前記ポンプ(16)の前記フレーム(18)の前記大きい表面(38)に接するように前記基部(68)を戻す傾向にある旋回動作と、前記スライドが前記ポンプ(16)の前記フレーム(18)の前記大きい表面(38)に平行に延在するような位置に来るための上方への垂直並進移動動作とを複合して行うように押し込まれる、ことを特徴とする、請求項11または12に記載の蠕動ポンプ。
【請求項14】
前記スライド(20)と一体であるスタッド(52)が前記ハンドル(22)に設けられたカム・パス(50)に従って動くこと、および、前記スライド(20)および前記ハンドル(22)の前記共通の枢動シャフト(40)が前記スライド(20)に設けられたカム・パス(44)内に突き出ており、前記カム・パス(44)が前記共通の枢動シャフト(40)に対して移動されること、を特徴とする、請求項13に記載の蠕動ポンプ。
【請求項15】
前記ハンドル(22)が、前記スライド(20)と前記ハンドル(22)とを枢動可能に一時的に結合させるための、前記スライド(20)に設けられたカム輪郭(58)と協働する少なくとも1つのアーム(54)を備えており、前記スライド(20)および前記ハンドル(22)によって形成される前記組立体が閉位置にあるときに、前記アーム(54)が、その自由端部(56)を介して、前記ポンプ(16)の前記フレーム(18)に設けられたノッチ(60)内へと移動される、ことを特徴とする、請求項13または14に記載の蠕動ポンプ。
【請求項16】
前記ハンドル(22)が、前記ハンドル(22)が閉位置にあるときに前記カム・パス(58)の平らな面(58b)の下で移動されるショルダー(17)を有する、ことを特徴とする、請求項15に記載の蠕動ポンプ。
【請求項17】
前記スライド(20)が、前記スライドが開けられたり閉じられたりするときに前記スライド(20)の遊びを制限するように機能にする、垂直溝(32)によって前記スライド(20)から部分的に分離されており歯(34)のところで終端する少なくとも1つの止め(28)を有し、前記止め(28)が、前記ポンプ(16)の前記フレーム(18)の前記大きい表面(38)内に配置された垂直スロット(36)内へと摺動され、前記フレーム(18)の前記大きい表面(38)が、前記スライド(20)が閉位置にあるときに前記溝(32)内に突き出る、ことを特徴とする、請求項13から16のいずれか一項に記載の蠕動ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−500653(P2012−500653A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515412(P2011−515412)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058120
【国際公開番号】WO2010/000702
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(508078606)ビエン−エアー ホールディング エスアー (9)
【氏名又は名称原語表記】Bien−Air Holding SA
【Fターム(参考)】