血中遊離DNAバイオマーカーおよびその応用方法
本発明は、全般的に、原子力事故、バイオテロ攻撃、腫瘍発生、感染症、または心血管疾患を有する個体における場合などの病態生理学的または外傷性傷害の結果としての細胞損傷を検出する方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、2009年2月25日に提出された米国特許出願第12/392,989号に対する優先権を主張し、その継続出願である。
【0002】
発明の分野
本発明は、全般的に、たとえば原子力事故、バイオテロ攻撃、腫瘍発生、放射線処置、感染症または心血管疾患により生じる傷害などの、病態生理学的傷害または外傷性傷害の結果としての細胞の損傷に関連するDNAマーカーを検出および/または測定することに関する。特に、本発明は、被験対象における細胞の損傷を検出および/または測定するために1つまたは複数の一般的バイオマーカーを用いることに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
健康な細胞におけるゲノムDNAは通常、細胞の核内に閉じこめられている。しかし、ゲノムDNAは、細胞がプログラムされた細胞死もしくはアポトーシスを経る細胞老化の際に、または初期疾患状態の際に、血液中に放出される。健康な個体では、恒常性により血液からDNAを効率よく消失させることができることから、これらの血中DNAは往々にして検出不可能である。同様に、初期腫瘍発生の際などの疾患初期段階での個体における血中DNAは、現在利用可能な核酸検出法を用いて早期検出できるほど十分に高い量の腫瘍特異的マーカーを示さない。腫瘍発達の初期段階の個体からの血中DNAは、健康な個体より高い可能性があるが、個体における腫瘍発生の結果として放出された血中DNAを正常な細胞老化の結果と識別するバイオマーカーは現在のところない。加えて、血中遊離DNAは、全てではないにしてもそのほとんどが、健康な個体と同じ細胞機序を用いて血液から消失する。
【0004】
さらに、個体が、たとえば原子力事故において高レベルの放射線に曝露されている状況、またはバイオテロ攻撃により高レベルの放射線および/または感染物質に曝露されている状況では、それに続いて大規模な細胞の損傷が起こり、それによって高レベルのゲノムDNAが血中に放出される。しかし、これらの個体を処置する目的およびこれらの個体をそのような物質に曝露されていない相互汚染個体から隔離する目的のために、これらの個体を検出するための効率がよく信頼できる安価な手段は現在のところ得られていない。
【0005】
よって、被験対象における細胞損傷レベルなどの、被験対象の状態または状況を検出および/または測定するために有用な方法および/またはバイオマーカーが必要である。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、あるポリヌクレオチド、たとえば被験対象の血中遊離ゲノムDNAを、被験対象の状態、たとえば任意の病態生理学的傷害に対する被験対象の曝露を示すためのバイオマーカーとして用いることができるという発見に一部基づいている。よって、本発明は、生理病理学的または他の傷害に関連する細胞損傷を検出するために有用な方法、キット、ならびに関連バイオマーカーおよび試薬を提供する。
【0007】
1つの局面において、本発明は、被験対象における病態生理学的傷害に関連する細胞損傷を検出する方法を提供する。方法は、被験対象の生体試料中の一般的な血中遊離バイオマーカーの有無を検出する工程を含み、ここで、一般的な血中遊離バイオマーカーの存在が、被験対象において病態生理学的傷害に関連する細胞損傷が存在することの指標となる。
【0008】
病態生理学的傷害は、たとえば、電離放射線、原子力事故、または爆弾攻撃に対する曝露などの身体的傷害であってもよい。1つの態様において、病態生理学的傷害は、自然のまたはバイオテロリズムの結果としての、ウイルス、細菌、および/または寄生虫による感染症などの、しかしこれらに限定されない感染物質により起こる。もう1つの態様において、病態生理学的傷害は、腫瘍発生などの疾患状態、または心臓、肝臓、肺、もしくは腎臓疾患の発症および進行により起こる。なおもう1つの態様において、病態生理学的傷害は、化学療法および/または他の血液毒性物質、四塩化炭素および/または他の肝毒性物質、酸化剤、酸、または他の局所適用もしくは摂取された壊死性物質などの化学物質による傷害である。もう1つの態様において、病態生理学的傷害は、事故により生じる頭部損傷または火傷などの外傷性の身体的傷害である。
【0009】
本発明の一般的な血中遊離バイオマーカーは、被験対象において血中遊離ポリヌクレオチドまたは血漿中のポリヌクレオチドとして存在し、このように血液中のいかなる細胞にも結合せず、または血液中のいかなる細胞内にも位置しないポリヌクレオチドを含む。一般的バイオマーカーの例には、Alu配列を有する配列、またはテロメアの配列もしくはテロメアに由来する配列、および18S/28SリボソームRNAをコードする遺伝子から選択される配列が含まれる。
【0010】
もう1つの局面において、本発明は、被験対象の生体試料中の一般的な血中遊離バイオマーカーのレベルを決定する工程を含む、病態生理学的傷害により生じる細胞損傷を検出する方法を提供する。1つの態様において、一般的な血中遊離バイオマーカーのレベルは、たとえば原子力事故での放射線または卑劣な爆弾攻撃に対する曝露などの、しかしこれらに限定されない身体的傷害に関連する。
【0011】
1つの態様において、一般的な血中遊離バイオマーカーレベルは、自然のまたはバイオテロリズムの結果のいずれかとしての、ウイルス、細菌、および/または寄生虫による感染症などの、しかしこれらに限定されない感染物質による病態生理学的傷害に関連する。もう1つの態様において、一般的な血中遊離バイオマーカーレベルは、腫瘍発生などの疾患状態、または心臓、肝臓、肺、もしくは腎臓疾患の発症および進行の結果としての病態生理学的傷害に関連する。
【0012】
もう1つの態様において、一般的な血中遊離バイオマーカーレベルは、化学物質の燃焼に由来するエアロゾルへの曝露および工業的毒物の曝露などの、しかしこれらに限定されない化学物質の曝露により生じる病態生理学的傷害に関連する。もう1つの態様において、一般的な血中遊離バイオマーカーレベルは、身体的損傷、たとえば事故、スポーツ関連損傷、または過度の運動により生じる頭部損傷などの外傷性身体傷害による病態生理学的傷害に関連する。
【0013】
本発明はまた、病態生理学的傷害の結果でありうる細胞損傷による血中のポリヌクレオチド、たとえば血中のDNA分子または断片を検出するキットを提供する。1つの態様において、キットは、血中遊離ポリヌクレオチドを検出するために用いられるプローブセットを含む。たとえば、プローブセットは、細胞損傷の際に血中、血漿中、または他の体液中に存在する本明細書に開示の一般的バイオマーカーとハイブリダイズするヌクレオチド配列を含んでもよい。
【0014】
ある態様において、プローブセットは、被験対象から得られた生体試料中の遊離の血中または血漿中に存在するAluヌクレオチド配列、テロメア配列、または18S/28SリボソームRNAコード配列などの、しかしこれらに限定されない一般的バイオマーカーにハイブリダイズするヌクレオチド配列を有するキャプチャーエクステンダー(capture extender)を含む。なおもう1つの態様において、プローブセットは、一般的バイオマーカーにハイブリダイズするヌクレオチド配列を有するラベルエクステンダー(label extender)をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】様々な病態生理学的プロセスによる傷害後にDNAが血液中に放出される図を示す。
【図2】本発明に関連して用いられうるポリヌクレオチドを検出するための1つの図を示す。
【図3】一般的マーカーであるAlu配列に結合したストレプトアビジンコンジュゲートフィコエリスリン標識プローブから放出された相対発光量(RLU)の相関を示す。
【図4】図4Aは、10 Gyの全身放射線照射後24時間のあいだに血液中に放出されたDNA(Alu配列)を示す。図4Bは、上記の図4Aからの試料のエチジウムブロマイド染色DNAを示す。
【図5】血液中に放出されたDNAと放射線量との相関を示す。
【図6】2 Gy(6A)および5 Gy(6B)の全身放射線照射後の21日間のあいだに血中に放出されたDNAを示す。
【図7】様々な疾患状態に関して血液中に放出されたDNAレベルを示す:正常(N)、白血病(LM)、真性糖尿病(DM)、癌(CA)、心筋梗塞(MI)、急性膵炎(AP)、HBV-関連肝炎(HBV)、およびHCV関連肝炎(HCV)。
【図8】心筋梗塞後の患者において血液中に放出されたDNAレベルとクレアチンキナーゼ2(CK-MB)レベルとの相関の推移を示す。
【図9】10 Gyの放射線照射後9時間目に存在する血漿中DNAレベルに及ぼす、放射線の効果から被験対象を保護/処置するために用いられる放射線保護剤D68の効果を示す。
【図10】悪性疾患を検出するための診断ツールとしての血液中に放出されたDNAレベルを示す。
【図11】腫瘍の進行/退縮または腫瘍の体積をモニターするための診断ツールとしての血液中に放出されたDNAレベルを示す。
【図12】放射線療法をモニターするための指標としての血液中に放出されたDNAレベルを示す。
【図13】血中DNAレベルが放射線療法の指針として用いることができることを示す。
【図14】自己免疫疾患(SLE)および妊娠の際に、DNAが血液中に放出されることを示す。
【図15】図15Aおよび15Bは、血液中へのDNA放出レベルの推移と経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の心筋梗塞の処置転帰との相関を示す。処置の転帰によらず減少するトロポニンIレベルも同様に示す。
【図16】血液中へのDNA放出レベルと再梗塞との相関を示す。
【図17】図17Aおよび17Bは、血液中へのDNA放出レベルと放射線量との相関を示す。
【図18】放射線照射後の血中遊離DNAの持続を示す。
【図19】血液中へのDNA放出レベルが、部分照射によって影響を受けることを示す。
【図20】骨髄移植前に全身放射線照射(TBI)を受ける患者をモニターするために血液中へのDNA放出を用いることを示す。
【図21】骨髄移植前の全身放射線照射(TBI)を受ける患者をモニターするために血液中へのDNA放出を用いることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
本発明は、あるポリヌクレオチド、たとえば被験対象中の血中遊離ゲノムDNAを、被験対象の状態、たとえば病態生理学的傷害に対する被験対象の曝露による細胞損傷の存在を示すためのバイオマーカーとして用いることができるという発見に一部基づいている。よって、本発明は、病態生理学的傷害に関連する細胞損傷を検出するために用いられる方法、キット、ならびに関連バイオマーカーおよび試薬を提供する。
【0017】
1つの局面において、本発明は、関心対象の被験対象から得られた生体試料中の1つまたは複数の一般的な血中遊離バイオマーカーの有無を検出することによって、たとえば病態生理学的傷害の結果としてのまたはそれに関連する被験対象における細胞損傷を検出する方法を提供する。
【0018】
本発明の一般的な血中遊離バイオマーカーは、任意の一般的バイオマーカーでありうる。たとえば、バイオマーカーは、様々な系から放出されるかまたは循環(たとえば、血液または血漿)中に存在する、体液(たとえば、血漿、血清、尿、または胸膜滲出液)中に存在する、または細胞外である、すなわち細胞の外である(細胞と結合していないまたは細胞内に位置しない)、細胞表面に結合しているかまたは結合していないDNAまたはRNAマーカーであってもよい。たとえば本明細書において用いられるように、一般的バイオマーカーを含有する血中遊離ポリヌクレオチドは、「無細胞ポリヌクレオチド」、「無細胞血中ポリヌクレオチド」、「血中遊離ポリヌクレオチド」、「血漿中ポリヌクレオチド」、または「細胞血漿ポリヌクレオチド」という用語と互換的に用いられうる。本発明に従って、たとえば一般的バイオマーカーを含有する血中遊離ポリヌクレオチドは、血液試料、血清試料、血漿試料、尿試料、もしくは胸膜滲出液試料、またはその組み合わせなどの、しかしこれらに限定されない生体試料から得ることができる。
【0019】
本明細書において用いられる「一般的バイオマーカー」という用語は、遺伝子内容物の細胞放出に関連するマーカーとして機能するポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)または他の生物学的実体である。通常、一般的バイオマーカーは、細胞外に存在するポリヌクレオチドである。ある態様において、バイオマーカーの配列、発現(またはレベル)および/または活性は、任意の特定の疾患または状況に特異的に関連しない。特に、本発明の一般的バイオマーカーは、その細胞外での存在またはバイオマーカーとして機能するためのその活性に主に依存する。
【0020】
ある態様において、一般的バイオマーカーは、細胞死またはたとえばDNAなどの遺伝子内容物の細胞放出に関連する。そのような内容物の放出は、病態生理学的傷害、癌などの新生物、外因性の傷害、処置、または被験対象に対する外傷性の影響の結果であってもよい。たとえば、バイオマーカーは、病原体の攻撃、損傷性の曝露、身体的外傷、内部外傷、心筋梗塞、自己免疫疾患等を示してもよい。そのような態様において、バイオマーカーの存在またはレベルは、被験対象における正常な生理的プロセス、たとえば老化に関連しない。
【0021】
これらのまたは他の態様において、一般的バイオマーカーは、反復配列もしくはエレメント、たとえばタンデムリピート、ハウスキーピング遺伝子もしくはエレメント、または哺乳動物、たとえばヒトのゲノムにおいて一定量で存在する他の任意の配列である。例として、一般的バイオマーカーは、ヒトゲノムの少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、または10%を構成する反復ヌクレオチド配列または任意のヌクレオチド配列エレメントであってもよい。
【0022】
1つの例示的な態様において、一般的バイオマーカーは、部分的または全てのAluヌクレオチド配列を有する。Aluヌクレオチド配列は、配列5' AG/CT 3'を認識するAlu制限エンドヌクレアーゼの作用を本来の特徴とするDNAの短い鎖である。Alu配列は、ヒトゲノムなどの哺乳動物ゲノムに存在する反復エレメントファミリーに属する。ハプロイドゲノムには、およそ300,000個のAluファミリーメンバーが存在する。Alu配列は長さが約300塩基対であり、百万個を超えるこれらの配列がヒトゲノムの中全体に散在する。ヒトゲノムの約10%がAlu配列からなると推定される。
【0023】
部分的または全体のいずれのAlu配列も一般的バイオマーカーとして用いることができる。1つの態様において、一般的バイオマーカーは、ヒトゲノムに豊富に存在する1つまたは複数のAlu配列である。もう1つの態様において、バイオマーカーは、被験対象に対するストレスまたは傷害に特有に関連する1つまたは複数のAlu配列である。
【0024】
一般的バイオマーカーとして用いることができるAlu配列の例には、SEQ ID NO: 1もしくは2に表される配列、またはその断片が含まれるがこれらに限定されるわけではない。1つの態様において、本発明の一般的バイオマーカーは、SEQ ID NO: 1または2と少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%同一である。
【0025】
ある態様において、Alu配列バイオマーカーは、たとえばQuantiGene(登録商標)法に従ってAlu配列に基づいて設計されるプローブセットを用いて検出される。そのような態様において、プローブセットには、キャプチャーエクステンダー(Capture Extender)(CE)、たとえば、各々がSEQ ID NO: 7〜19から選択される配列を含有する少なくとも2個、3個、4個、または5個のCE(以下の表1〜3を参照されたい)、ラベルエクステンダー(Label Extender)(LE)、たとえば、各々がSEQ ID NO: 32〜44から選択される配列を含有する少なくとも1個、2個、3個、4個、または5個のLE(以下の表6〜8を参照されたい)、および任意でブロッキングラベル(Blocking Label)(BL)、たとえば、各々がSEQ ID NO: 69〜71から選択される配列を含有する少なくとも1個、2個、または3個のBL(以下の表11を参照されたい)が含まれる。
【0026】
CE、LE、およびBLの長さは、長さ約10ヌクレオチド〜約20ヌクレオチド、長さ約20ヌクレオチド〜約30ヌクレオチド、または長さ約30ヌクレオチド〜50ヌクレオチドでありうる。ある態様において、プローブセットには、各々がSEQ ID NO: 7〜11の配列の1つを含有するCE、各々がSEQ ID NO: 32〜35の配列の1つを含有するLE、および任意でSEQ ID NO: 69の配列を含有するBLが含まれる。他の態様において、プローブセットには、各々がSEQ ID NO: 12〜15の配列の1つを含有するCE、各々がSEQ ID NO: 36〜38の配列の1つを含有するLEが含まれる。なお他の態様において、プローブセットには、各々がSEQ ID NO: 16〜19の配列の1つを含有するCE、各々がSEQ ID NO: 39〜44の配列の1つを含有するLE、ならびに任意で各々がSEQ ID NO: 70および71の配列の1つを含有するBLが含まれる。
【0027】
もう1つの例示的な態様において、一般的バイオマーカーは、18S/28SリボソームRNAをコードする遺伝子に由来する部分的または全ての配列を有する。リボソームRNA遺伝子は、哺乳動物ゲノムにおいてタンデムリピートに構築される。ヒトでは、約300〜400個のそのようなリピートが5個のクラスタに構築されて存在する。一般的バイオマーカーとして用いることができる18Sおよび28S配列の例には、SEQ ID NO: 3もしくは4に表される配列またはその断片が含まれるがこれらに限定されるわけではない。1つの態様において、一般的バイオマーカーは、SEQ ID NO: 3または4と少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%同一である。
【0028】
さらなる態様において、18S/28S rRNA配列バイオマーカーは、たとえばQuantiGene(登録商標)法に従って18S/28S rRNA配列に基づいて設計されるプローブセットを用いて検出される。一般的にプローブセットには、キャプチャーエクステンダー(CE)、たとえば、各々がSEQ ID NO: 20〜31から選択される配列を含有する少なくとも2個、3個、4個、または5個のCE(以下の表4および5を参照されたい)、ラベルエクステンダー(LE)、たとえば、各々がSEQ ID NO: 45〜68から選択される配列を含有する少なくとも1個、2個、3個、4個、または5個のLE(以下の表9および10を参照されたい)、および任意でブロッキングラベル(BL)、たとえば、各々がSEQ ID NO: 72〜77から選択される配列を含有する少なくとも1個、2個、3個、4個、または5個のBL(以下の表11を参照されたい)が含まれる。
【0029】
CE、LE、およびBLの長さは、長さ約10ヌクレオチド〜約20ヌクレオチド、長さ約20ヌクレオチド〜約30ヌクレオチド、または長さ約30ヌクレオチド〜50ヌクレオチドでありうる。
【0030】
ある態様において、一般的バイオマーカーは、1つまたは複数のテロメアに由来するヌクレオチド配列の部分または全体を有する。テロメアは、染色体の複製および安定性に関係している。テロメアには、染色体の端部で約6ヌクレオチド塩基の反復DNA配列の領域が含まれる。テロメア配列は、酵母での長さおよそ300〜およそ600 bpからヒトでの多くのkbまで変動しうる。配列は典型的に、TTAGGG、TTGGG、TTTTGGGG等などの約6〜約8 bp、またはそれ未満のGに富むリピートのアレイを含む。一般的バイオマーカーとして有用な配列の例には、SEQ ID NO: 5および6ならびにその断片が含まれるがこれらに限定されるわけではない。本発明の一般的バイオマーカーは、SEQ ID NO: 5または6と少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であってもよい。
【0031】
ある態様において、テロメア配列バイオマーカーは、たとえばQuantiGene(登録商標)法に従ってテロメア配列に基づいて設計されたプローブセットを用いて検出されうる。たとえば、プローブセットには、キャプチャーエクステンダー(CE)、たとえば、少なくとも2個、3個、4個、または5個のCE、ラベルエクステンダー(LE)、たとえば、少なくとも1個、2個、3個、4個、または5個のLE、および任意でブロッキングラベル(BL)、たとえば少なくとも1個、2個、3個、4個、または5個のBLが含まれてもよい。CE、LE、およびBLの長さは、長さ約10ヌクレオチド〜約20ヌクレオチド、長さ約20ヌクレオチド〜約30ヌクレオチド、または長さ約30ヌクレオチド〜50ヌクレオチドでありうる。
【0032】
本明細書において用いられる「病態生理学的傷害」という用語は、それによって細胞の損傷が起こる、外因性または内部の事象または起源に関連する任意の有意な身体的または病理的な影響または外傷を意味する。1つの態様において、病態生理学的傷害は、被験対象に対する外因性もしくは内部のストレス、影響、または処置に関連する。たとえば、これは病原体感染症、有害物質に対する曝露、身体的損傷、または被験対象の系に対して外傷性である任意の外部事象の場合でありうる。ストレスは、医療機器、たとえばステントの埋め込み;移植、たとえば骨髄、心臓、肝臓、もしくは腎臓移植のための準備;または手術などの、しかしこれらに限定されない医学的介入によって起こりうる。ストレスはまた、妊娠、薬物、化学物質、もしくはアルコールに対する中毒もしくは依存性、またはPTSDなどの身体的もしくは精神的ストレスなどの状況でありうる。他の態様において、病態生理学的傷害は、被験対象に対する内部ストレス、影響、または病理的事象に関連する。たとえば、病態生理学的傷害は、細胞死、プログラムされた細胞死、壊死、細胞の分解等に関連する任意の病理的事象でありうる。
【0033】
他の態様において、病態生理学的傷害は、放射線またはDNAもしくは細胞の損傷を引き起こす他の任意の物質もしくはエネルギー源に対する曝露である。1つの態様において、病態生理学的傷害は、原子力事故、核兵器の攻撃等に関連する放射線に対する曝露である。
【0034】
他の態様において、病態生理学的傷害は、ハロゲン化炭化水素もしくは酸、無臭の気体および/または化学物質、または体内に入って保持され、刺激および損傷を引き起こしうる微粒子化学物質などといった、工業的事故または爆発による苛性または非苛性のエアロゾルなどの、しかしこれらに限定されない化学的傷害である。化学兵器の爆発に対する曝露の重症度の評価はもう1つの例である。
【0035】
もう1つの例示的な態様において、病態生理学的傷害は、感染物質に対する自然の曝露またはバイオテロリズムの結果のいずれかによる、ウイルス、細菌、およびまたは寄生虫による感染症などの、しかしこれらに限定されない感染物質によって起こる。
【0036】
細胞において病態生理学的損傷が起こりうるウイルス科の例には;パラミクソウイルス科(たとえば、パラインフルエンザウイルス、ムンプス、麻疹);オルトミクソウイルス科(たとえば、インフルエンザ);ヘプドナウイルス科(たとえば、肝炎);アデノウイルス科(たとえば、急性呼吸器疾患);ポックスウイルス科(たとえば、痘瘡);ヘルペスウイルス科(たとえば、ヘルペス、カポジ肉腫);乳頭腫ウイルス科(たとえば、HPV);ポリオーマウイルス科(たとえば、膀胱炎、または軽度もしくは急性の呼吸器疾患);パルボウイルス科;ラブドウイルス科(たとえば、狂犬病);フィロウイルス科(たとえば、エボラウイルスおよびマールブルグウイルスによって引き起こされる出血熱);ブンヤウイルス科(たとえば、脳炎、ハンタウイルス呼吸症候群、リフトバレー熱);アレナウイルス科(たとえば、無菌性髄膜炎、脳炎、髄膜脳炎、ラッサ熱);コロナウイルス科(たとえば、重症急性呼吸器症候群、またはSARS);フラビウイルス科(たとえば、デング出血熱);トガウイルス科;ピコルナウイルス科(たとえば、);カリシウイルス科(たとえば、冬季嘔吐病);アストロウイルス科(たとえば、胃腸炎);レトロウイルス科(たとえば、HIV、HTLV);およびレオウイルス科(たとえば、コロラドダニ熱)が含まれる。
【0037】
感染細胞において病態生理学的損傷を引き起こしうる細菌の非限定的な例は:百日咳菌(B. pertussis);レプトスピラ・ポモナ(Leptospira Pomona);パラチフス菌AおよびB(S. paratyphi AおよびB);ジフテリア菌(C. diphtheriae)、破傷風菌(C. tetani)、ボツリヌス菌(C. botulinum)、ウェルシュ菌(C. perfringens)、C.フェセリ(C. feseri)、および他のガス壊疽菌;炭疽菌(B. anthracis);ペスト菌(P. pestis);P.ムルトシダ(P. multocida);髄膜炎菌(Neisseria meningitides);淋菌(N. gonorrheae);インフルエンザ菌(Hemophilus influenzae);放線菌属(Actinomyces)(たとえば、ノカルジア(Norcardia));アシネトバクター属(Acinetobacter);バチルス科(Bacillaceae(たとえば、炭疽菌(Bacillus anthrasis));バクテロイデス属(Bacteroides)(たとえば、バクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis));ブラストミセス症;ボルデテラ属(Bordetella)(たとえば、百日咳菌(Bordetella pertusi));ボレリア属(Borrelia)(たとえば、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi));ブルセラ属(Brucella);カンピロバクター属(Campylobacter);クラミジア属(Chlamydia);コクシジオイデス属(Coccidioides);コリネバクテリウム属(Corynebacterium)(たとえば、ジフテリア菌(Corynebacterium diptheriae));大腸菌( E. coli)(たとえば、腸毒素性大腸菌(Enterotoxigenic E. coli)および腸管出血性大腸菌(Enterohemorrhagic E. coli));エンテロバクター属(Enterobacter)(たとえば、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes));腸内細菌科(Enterobacteriaceae)(クレブシエラ属(Klebsiella)、サルモネラ属(Salmonella)(たとえば、腸チフス菌(Salmonella typhi)、腸炎菌(Salmonella enteritidis))、セラチア属(Serratia)、エルシニア属(Yersinia)、赤痢菌属(Shigella));エリジペロスリックス属(Erysipelothrix);ヘモフィルス属(Haemophilus)(たとえば、B型インフルエンザ菌(Haemophilus influenza type B));ヘリコバクター属(Helicobacter);レジオネラ属(Legionella)(たとえば、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila));レプトスピラ属(Leptospira);リステリア属(Listeria)(たとえば、リステリア菌(Listeria monocytogenes));マイコプラスマ属(Mycoplasma);マイコバクテリウム属(Mycobacterium)(たとえば、らい菌(Mycobacterium leprae)、ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、およびウシ型結核菌(Mycobacterium bovis));ビブリオ属(Vibrio)(たとえば、ビブリオコレラ(Vibrio cholerae));パスツレラ科(Pasteurellacea)(パスツレラ・ヘモリチカ(Pasteurella haemolytica));プロテウス属(Proteus);シュードモナス属(Pseudomonas)(たとえば、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa));リケッチア科(Rickettsiaceae);スピロヘータ(Spirochetes)(たとえば、トレポネーマ種(Treponema spp.)、レプトスピラ種(Leptospira spp.)、ボレリア種(Borrelia spp.));赤痢菌種(Shigella spp.);髄膜炎球菌(Meningiococcus);肺炎球菌(Pneumococcus)および連鎖球菌(Streptococcus)(たとえば、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、ならびにA、B、およびC群連鎖球菌(Groups A, B, and C Streptococci));ウレアプラスマ属(Ureaplasmas);梅毒トレポネーマ(Treponema pollidum);およびブドウ球菌属(Staphylococcus)(黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)および表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis))である。
【0038】
感染細胞において病態生理学的損傷を引き起こしうる寄生虫または原虫の非限定的な例には:リーシュマニア症(メキシコリーシュマニア(Leishmania tropica mexicana)、熱帯リーシュマニア(Leishmania tropica)、森林型熱帯リーシュマニア(Leishmania major)、エチオピアリーシュマニア(Leishmania aethiopica)、ブラジルリーシュマニア(Leishmania braziliensis)、ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani)、小児リーシュマニア(Leishmania infantum)、シャーガスリーシュマニア(Leishmania chagasi));トリパノソーマ症(ガンビアトリパノソーマ(Trypanosoma brucei gambiense)、ローデシアトリパノソーマ(Trypanosoma brucei rhodesiense));トキソプラスマ症(トキソプラスマ(Toxoplasma gondii));住血吸虫症(ビルハルツ住血吸虫(Schistosoma haematobium)、日本住血吸虫(Schistosoma japonicum)、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)、メコン住血吸虫(Schistosoma mekongi)、ビルハルツ住血吸虫(Schistosoma intercalatum));マラリア(三日熱マラリア原虫(Plasmodium virax)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparium)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)および卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale));アメーバ症(赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica));バベシア症(バベシア・ミクロチ(Babesiosis microti));クリプトスポリジウム症(クリプトスポリジウム・パルブム(Cryptosporidium parvum));二核アメーバ症(二核アメーバ(Dientamoeba fragilis));ジアルジア鞭毛虫症(ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia));ぜん虫症(Helminthiasis)およびトリコモナス(膣トリコモナス(Trichomonas(Trichomonas vaginalis))が含まれる。上記の一覧は、例示的であることを意味し、決して、本発明をそれらの特定の細菌、ウイルス、または寄生虫生物に限定することを意味しない。
【0039】
他の態様において、病態生理学的傷害は、たとえば細胞死(プログラムされた細胞死)、細胞損傷、壊死等に関連する疾患状態の発症および進行によって起こりうる。1つの態様において、病態生理学的傷害は、被験対象における腫瘍発生または新生物形成である。もう1つの態様において、病態生理学的傷害は、被験対象における複数の場所での実質的な腫瘍発生または新生物形成、たとえばリンパ節での転移等である。腫瘍発生または新生物形成により生じる疾患の例には、白血病、乳癌、前立腺癌、肝臓癌、胃癌、結腸癌、黒色腫、リンパ腫、肺癌、膵臓癌、脳腫瘍、口腔癌等が含まれる。
【0040】
他の態様において、病態生理学的傷害は、自己免疫疾患である。自己免疫疾患の例には、尋常性白斑、強皮症、リウマチ性関節炎、シャーガス病、1型真性糖尿病、橋本病、強直性脊椎炎、グレーヴス病、ギヤン・バレー症候群、全身性紅斑性狼瘡(SLE)等が含まれる。
【0041】
なおもう1つの態様において、病態生理学的傷害は、妊娠、薬物またはアルコールなどの化学物質に対する中毒または依存性などの非疾患である。
【0042】
なお他の態様において、病態生理学的傷害は、心血管疾患である。心血管疾患の例には、肺動脈塞栓症および心細胞のアポトーシスによって生じる心筋梗塞などの急性の血管閉塞が含まれ、それによって無細胞ポリヌクレオチド、たとえばDNAの血液中への放出を引き起こす。1つの態様において、病態生理学的傷害は、肺動脈塞栓または心筋梗塞後の1つまたは複数の続発事象によって起こりうる。続発事象には、経皮的心臓インターベンションもしくは血管形成術、経皮経管冠動脈形成術(PTCA)、バルーン血管形成術、冠動脈バイパス手術などの心血管疾患を処置するための医学技法、または二次肺動脈塞栓もしくは心筋梗塞が含まれるがこれらに限定されるわけではない。なおもう1つの態様において、病態生理学的傷害は、肝疾患、肺疾患、または腎臓疾患等、特に細胞死および壊死に関連する状況である。
【0043】
なおもう1つの態様において、病態生理学的傷害は、事故により生じる頭部損傷などの外傷性の身体傷害である。たとえば、病態生理学的傷害は、ボクシング、フットボール、または激しい運動などのスポーツ損傷により起こりうる。
【0044】
本発明に従って、被験対象における病態生理学的傷害に関連する細胞損傷を検出する方法には、細胞損傷の定性的および/または定量的検出が含まれうる。ある態様において、本発明の方法には、病態生理学的傷害に曝露されたまたは曝露されたことが疑われる被験対象から得られた生体試料中で、1つまたは複数の一般的な血中遊離バイオマーカーの有無を検出する工程が含まれる。他の態様において、本発明の方法には、病態生理学的傷害の進行、その程度もしくはレベル、または処置の効果をモニターするために、被験対象から得られた生体試料中で、1つまたは複数の一般的な血中遊離バイオマーカーレベルを検出する工程が含まれる。もう1つの態様において、生体試料中の1つまたは複数の一般的な血中遊離バイオマーカーを検出する方法を用いて、疾患を有すると診断された個体における処置の経過または有効性をモニターすることができる。たとえば、一般的な血中遊離バイオマーカーレベルを、癌患者における放射線療法もしくは化学療法の有効性、または骨髄移植を受ける患者における免疫応答を決定するためのマーカーとして用いることができる。1つまたは複数の一般的な血中遊離バイオマーカーレベルの増加または減少を、心筋梗塞後の経皮的心臓インターベンションなどの、しかしこれらに限定されない医学的介入の成否を評価するために用いることができる。
【0045】
本発明の検出方法は、一般的な血中遊離バイオマーカーの増幅を行ってまたは行わずに実行することができる。検出方法は、リアルタイムPCR、定量的PCR、蛍光PCR、RT-MSP(RTメチル化特異的ポリメラーゼ連鎖反応)、DNAのPicoGreen(商標)(Molecular Probes, Eugene, OR)検出、ラジオイムノアッセイ、DNAの直接放射標識等であってもよい。もう1つの態様において、検出方法は、増幅に頼ることなく、たとえば標的配列のいかなるコピーまたは複製も生成することなく、いかなるポリメラーゼも伴うことなく、またはいかなるサーマルサイクリングも必要とすることなく行うことができる。たとえば、検出方法を、参照により本明細書に組み入れられる、2006年6月19日に提出された米国特許出願第11/471,025号に記載されるQuantiGene(登録商標)法に記載される原理を用いて行ってもよい。
【0046】
QuantiGene(登録商標)法は、シグナルを増幅するためにサーマルサイクリングを必要とすることなく、一連のハイブリダイゼーション反応において分岐DNA技術を用いる。原理としては、これは標的配列にハイブリダイズするために一次プローブセットを用い、そのようなハイブリダイゼーションの存在を、これらの一次プローブの一部にハイブリダイズする追加のプローブによって強化する。言い換えれば、方法は、任意の実際のヌクレオチド配列増幅の代わりに複数のプローブハイブリダイゼーション層によってハイブリダイゼーションのシグナルを強化する。
【0047】
分岐DNA技術の1つの例示的な態様において、約30個またはそれより多くの異なるオリゴヌクレオチドプローブを用いて標的DNAまたはRNAに特異的に結合させる。簡単に説明すると、血中遊離DNA(直線状または環状)などの核酸は、プローブセット、たとえばキャプチャーエクステンダー(CE)にハイブリダイズすることによって固相支持体上に捕捉され、次にこれは固相支持体、たとえばビーズ等に付着させたプローブセット、たとえばキャプチャープローブ(Capture Probe)(CP)にハイブリダイズする。次いで、もう1つのプローブセット、たとえばラベルエクステンダー(LE)を用いて、固相支持体上に捕捉された標的ヌクレオチドにさらにハイブリダイズさせることができる。そのようなハイブリダイゼーションのシグナルを、固相支持体上の標的ヌクレオチドに対するLEの複数のハイブリダイゼーションを直接検出することによって、またはハイブリダイズしたLEに対する1つもしくは複数のプローブセット、たとえばプレ-アンプリファイア(pre-Amplifier)プローブ、アンプリファイア(Amplifier)プローブ等のさらなるハイブリダイゼーションによって、またはその双方によって、強化することができる。1つの特定の態様において、そのようなハイブリダイゼーションの検出は、対応するプローブをビオチン化した上で、ストレプトアビジンにコンジュゲートさせた検出部分を用いて行われる(図2を参照されたい)。
【0048】
1つの態様において、プローブセットは、Alu配列を認識して結合する配列を有するキャプチャーエクステンダーおよびラベルエクステンダーを含む。ある態様において、キャプチャーエクステンダーおよびラベルエクステンダーは、テロメア配列を認識して結合するように設計される。もう1つの態様において、キャプチャーエクステンダーおよびラベルエクステンダーは、18Sまたは28SリボソームRNA配列を認識して結合するように設計される。
【0049】
本発明のもう1つの局面において、病態生理学的傷害により生じる細胞損傷を検出する方法は、被験対象の生体試料中で一般的な血中遊離バイオマーカーの発現プロファイルを決定する工程を含む。一般的に、本発明の一般的な血中遊離バイオマーカーの発現プロファイルには、一般的な血中遊離バイオマーカーの有無に関連する任意のパラメータもしくはデータ、または定性的もしくは定量的記述が含まれる。
【0050】
1つの態様において、一般的な血中遊離バイオマーカーの発現プロファイルには、1つまたは複数の一般的な血中遊離バイオマーカーのレベルまたは濃度が含まれる。もう1つの態様において、一般的な血中遊離バイオマーカーの発現プロファイルには、一般的な血中遊離バイオマーカーの群または組み合わせの有無が含まれる。なおもう1つの態様において、一般的な血中遊離バイオマーカーの発現プロファイルには、既定のタイムラインまたは病態生理学的傷害の発生に関連するタイムラインに関連する1つまたは複数の一般的な血中遊離バイオマーカーのレベルまたは濃度が含まれる。なおもう1つの態様において、一般的な血中遊離バイオマーカーの発現プロファイルには、パラメータの組み合わせ、たとえば濃度、既定のタイムラインに関連した有無、細胞損傷の程度、核酸放出速度、遺伝子の産生/断片化と体のクリアランス速度とのバランス等が含まれる。なおもう1つの態様において、一般的な血中遊離バイオマーカーの発現プロファイルには、濃度、タイムライン、増加速度、ベースラインへの消散速度、ピークレベル、異なる一般的マーカーの示差的発現、および異なる一般的マーカーの示差的発現の時間依存的変化などの1つまたは複数の要因が含まれる。
【0051】
本発明のもう1つの局面に従って、本発明は、被験対象における病態生理学的傷害の結果としての細胞損傷による一般的な血中遊離バイオマーカーを検出するキットを提供する。1つの態様において、キットは、一般的な血中遊離バイオマーカーを検出するために有用なプローブセットを含む。1つの態様において、プローブセットは、一般的な血中遊離バイオマーカーにハイブリダイズする配列を含む。
【0052】
1つの例示的な態様において、プローブセットは、一般的バイオマーカーにハイブリダイズする配列を有するキャプチャーエクステンダー(CE)を含む。1つの態様において、プローブセットは、SEQ ID NO: 1のAlu配列に由来するプローブセット1のキャプチャーエクステンダーを含む。SEQ ID NO: 1に由来するキャプチャーエクステンダーの例には、SEQ ID NO: 7、8、9、10、および11が含まれる(表1を参照されたい)。
【0053】
(表1)SEQ ID NO: 1のAlu配列に由来するプローブセット1のキャプチャーエクステンダー
【0054】
もう1つの態様において、プローブセットは、SEQ ID NO: 1のAlu配列に由来するプローブセット2のキャプチャーエクステンダーを含む。SEQ ID NO: 1に由来するキャプチャーエクステンダーの例には、SEQ ID NO: 12、13、14、15が含まれる(表2を参照されたい)。
【0055】
(表2)SEQ ID NO: 1のAlu配列に由来するプローブセット2のキャプチャーエクステンダー
【0056】
もう1つの態様において、プローブセットは、SEQ ID NO: 2のAlu配列に由来するキャプチャーエクステンダーを含む。SEQ ID NO: 2に由来するキャプチャーエクステンダーの例には、SEQ ID NO: 16、17、18、および19が含まれる(表3を参照されたい)。
【0057】
(表3)SEQ ID NO: 2のAlu配列に由来するプローブセットのキャプチャーエクステンダー
【0058】
もう1つの態様において、プローブセットは、SEQ ID NO: 3の18S配列に基づいて設計されるキャプチャーエクステンダーを含む。SEQ ID NO: 3の18Sに基づくキャプチャーエクステンダーの例には、SEQ ID NO: 20、21、22、23、24、および25が含まれる(表4を参照されたい)。
【0059】
(表4)SEQ ID NO: 3の18S配列に由来するプローブセットのキャプチャーエクステンダー
【0060】
もう1つの態様において、プローブセットは、SEQ ID NO: 4の28S配列に基づいて設計されるキャプチャーエクステンダーを含む。SEQ ID NO: 4の28Sに基づくキャプチャーエクステンダーの例には、SEQ ID NO: 26、27、28、29、30、および31が含まれる(表5を参照されたい)。
【0061】
(表5)SEQ ID NO: 4の28S配列に由来するプローブセットのキャプチャーエクステンダー
【0062】
もう1つの態様において、プローブセットは、一般的バイオマーカーにハイブリダイズする配列を有するラベルエクステンダーをさらに含む。1つの態様において、プローブセットは、SEQ ID NO: 1のAlu配列に由来するプローブセット1のラベルエクステンダーを含む。SEQ ID NO: 1に由来するラベルエクステンダーの例には、SEQ ID NO: 32、33、35および35が含まれる(表6を参照されたい)。
【0063】
(表6)SEQ ID NO: 1のAlu配列に由来するプローブセット1のラベルエクステンダー
【0064】
もう1つの態様において、プローブセットは、SEQ ID NO: 1のAlu配列に由来するプローブセット2のラベルエクステンダーを含む。SEQ ID NO: 1に由来するプローブセット2のラベルエクステンダーの例には、SEQ ID NO: 36、37、および38が含まれる(表7を参照されたい)。
【0065】
(表7)SEQ ID NO: 1のAlu配列に由来するプローブセット2のラベルエクステンダー
【0066】
もう1つの態様において、プローブセットは、SEQ ID NO: 2のAlu配列に由来するラベルエクステンダーを含む。SEQ ID NO: 2に由来するラベルエクステンダーの例には、SEQ ID NO: 39、40、41、42、43、および44が含まれる(表8を参照されたい)。
【0067】
(表8)SEQ ID NO: 2のAlu配列に由来するプローブセット2のラベルエクステンダー
【0068】
もう1つの態様において、プローブセットは、SEQ ID NO: 3の18S配列に基づいて設計されるラベルエクステンダーを含む。SEQ ID NO: 3の18Sに基づくラベルエクステンダーの例には、SEQ ID NO: 45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55および56が含まれる(表9を参照されたい)。
【0069】
(表9)SEQ ID NO: 3の18S配列に由来するプローブセットのラベルエクステンダー
【0070】
もう1つの態様において、プローブセットは、SEQ ID NO: 4の28S配列に基づいて設計されるラベルエクステンダーを含む。SEQ ID NO: 4の28Sに基づくラベルエクステンダーの例には、SEQ ID NOS: 57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、および68が含まれる(表10を参照されたい)。
【0071】
(表10)SEQ ID NO: 4の28S配列に由来するプローブセットのラベルエクステンダー
【0072】
もう1つの態様において、プローブセットはさらに、一般的バイオマーカーにハイブリダイズする配列を有するブロッキングラベルを含む。SEQ ID NO: 1に由来するブロッキングラベルの例には、SEQ ID NO: 69が含まれる。SEQ ID NO: 2のAlu配列に由来するプローブセット2のブロッキングラベルの例には、SEQ ID NO: 70および71が含まれる。もう1つの態様において、プローブセットは、SEQ ID NO: 3の18S配列に基づいて設計されるブロッキングラベルを含む。SEQ ID NO: 3の18Sに基づくブロッキングラベルの例には、SEQ ID NO: 72および73が含まれる。もう1つの態様において、プローブセットは、SEQ ID NO: 4の28S配列に基づいて設計されるブロッキングラベルを含む。SEQ ID NO: 4の28Sに基づくブロッキングラベルの例には、SEQ ID NO: 74、75、76および77が含まれる。
【0073】
(表11)SEQ ID NO: 1および2のAlu配列、18Sおよび28S配列のブロッキングラベル配列
【実施例】
【0074】
実施例1
図1に示されるように、フロー図は、化学物質、放射線照射、または核、生物学的および爆発による曝露により生じる病態生理学的傷害の結果として血漿中にDNAを放出させる様々な機序を示す。
【0075】
実施例2:そこからプローブセットが設計されるヌクレオチド配列
プローブセット設計のために用いられるAlu配列(SEQ ID NO: 1)
【0076】
プローブセット設計のために用いられるAlu配列(SEQ ID NO: 2)
【0077】
プローブセット設計のために用いられる18S配列(SEQ ID NO: 3)
【0078】
プローブセット設計のために用いられる28S配列(SEQ ID NO: 4)
【0079】
プローブセット設計のために用いられるテロメア配列
TTAGGG(SEQ ID NO: 5)
TTTTGGGG(SEQ ID NO: 6)
【0080】
実施例3:QuantiGene(登録商標)検出法のプロトコール
図2の図面は、QuantiGene(登録商標)法を用いて行われる検出法を示す。簡単に説明すると、方法は、キャプチャーエクステンダーとラベルエクステンダーの双方を含むプローブセットを、3×SSC、10%硫酸デキストラン、0.2%カゼイン、10μg/mlポリAおよび100μg/ml変性サケ精子DNA中で55℃で30分間のハイブリダイズ条件下で血漿試料と混合することによって、血漿試料からの標的血中DNAを捕捉する工程を伴う。次に、3×SSC、10%硫酸デキストラン、0.2%カゼイン、10μg/mlポリAおよび100μg/ml変性サケ精子DNA中で、ならびに洗浄緩衝液:20 mmmol/L Tris-HCl、400 mmol/L塩化リチウム、1 mL/L Tween 20中でプレ-アンプリファイア、アンプリファイア、およびラベルプローブ(Label Probe)をそれぞれ55℃、55℃、および50℃で各10分間連続的にハイブリダイズさせることによって、シグナルの増幅を行う。ラベルプローブを、ビオチン化してもよい。
【0081】
実施例4:相対発光量(RLU)とAlu配列濃度との相関
Alu配列の様々な濃度を含有する試料を、Alu特異的キャプチャーエクステンダー(CE)、ラベルエクステンダー(LE)、およびブロッキングラベル(BL)と共にキャプチャープローブコーティングプレートと共に1、2、3、4時間および終夜インキュベートした。
【0082】
実施例5:全身放射線照射後24時間での血漿中DNAの検出
図4に示されるように、マウスにおける全身放射線照射後の血漿中DNAの検出を示す例示的な実験である。マウスにCe137照射装置によって1.83 Gy/分の線量率で10 Gyの放射線を照射した。照射後0、3、6、9、12および24時間目に血漿試料をマウスから採取して、蒸留水で1:10に希釈した。希釈した試料2、5、10および20μlを上記実施例2に記載したプロトコールに従う分析のために採取した。放射線曝露による損傷の結果として細胞から放出された血漿中DNAを、Alu配列を含有するプローブを用いて測定した。
マウスプローブセット:
マウス配列:
【0083】
図4Aの結果は、本発明において記載される方法を用いた、1:10希釈試料5μlからの血漿中DNAの経時的な増加を示す。血漿中DNA量は照射の9時間後にピークに達した。
【0084】
図4Bは、試料を2%アガロースゲル中で泳動させた後にエチジウムブロミドによる染色によって得られた結果を確認する。
【0085】
実施例6:血漿中に放出された遊離DNAは照射線量と共に増加する
放射線量に対する応答を、マウスにおけるAlu様配列(B1配列)および適切な配列プローブセットを用いて、一般的な血中遊離バイオマーカーの量を測定することによって決定した。Cs137線源によって生成された0、2、4、6、8、および10 Gyのγ線の全身照射の9時間後にマウスから血漿試料を得た。血漿から放出された血中遊離Aluバイオマーカーの量を、以下のAlu配列プローブセットと共に上記実施例2に記載されるQuantiGene(登録商標)検出法を用いて測定した。
マウスプローブセット:
マウス配列:
【0086】
図5の結果は、Alu配列を用いて測定され、血中に放出された血漿中DNAの量が照射線量が増加すると増加することを示している。統計分析により、2、4および6 Gyの低い線量であっても、様々な照射線量と非照射マウス(健康なマウス)におけるバックグラウンドDNAレベルとのあいだに有意差(P<0.05)を検出することができることが示される。結果は、一般的DNAバイオマーカーレベルを用いて、照射した被験対象と非照射被験対象とを識別することができることを示している。結果はまた、このアッセイにおいて用いられた一般的バイオマーカーが、曝露9時間以内での放射線曝露の検出において十分に感度があることも示している。
【0087】
実施例7:亜急性および潜在性効果は照射線量に依存する
マウスの全身照射(Cs137線源からのγ線照射を用いて2および5 Gy)後に経時的に測定した2つの異なる照射線量の亜急性および潜在性効果を例示するために、血中の血漿中DNAの推移を図6に示す。血漿中DNAを、以下に提供されるプローブセットを用いて実施例2に記載されるQuantiGene(登録商標)検出法を用いて測定した。
マウスプローブセット:
マウス配列:
【0088】
図6Aに示されるように、2 Gy放射線に曝露されたマウスは、照射後21日目に、血中で検出された遊離DNA量の2倍減少を示す。一方、図6Bにおいて、5 Gy放射線に曝露されたマウスは、照射の21日後に、血中の血漿中DNAの量の増加を示し続ける。この結果は、血漿中DNAレベルを用いて放射線曝露後の細胞に対する損傷レベルを予測することができることを示している。この結果はまた、本発明において記載される方法を用いて、放射線によって引き起こされた傷害などの病態生理学的傷害により生じる損傷の推移をモニターすることができることを示している。
【0089】
実施例8:様々な疾患状態において検出される血漿中DNAレベルの増加
様々な疾患状況であると診断された患者からのヒト血漿を、以下に記載されるプローブセットを用いてヒトAluキットによって試験した。各試験に関して血漿10μlを用いた。
【0090】
図7に示されるように、白血病(LM)、真性糖尿病(DM)、癌(CA)、心筋梗塞(M)、急性膵炎(AP)、HBV(B型肝炎)、およびHCV(C型肝炎)を有するヒト被験者から得られた試料では、血漿中DNAレベルが、健康な個体(N)からの試料中の血漿中DNAレベルと比較して高い。この結果は、非疾患(健常)患者と比較して様々な疾患を有すると診断された患者とのあいだに密接な相関があることを示している。
【0091】
実施例9:血漿中DNAレベルは心筋梗塞患者におけるクレアチニンキナーゼ2(CK-MB)レベルと相関する
血漿CK-MBレベルの上昇に基づいてMIと診断された患者から採取した血漿を、以下に記載されるプローブセットを用いてヒトAluキットによって試験した。各試験に関して血漿10μlを用いた。
【0092】
図8の結果は、血液中に放出された血漿中DNAの量が、心筋梗塞患者におけるクレアチニンキナーゼ2(CK-MB)の存在と相関することを示している。さらに、この結果はまた、本アッセイが、心筋梗塞を検出するためにCK-MBを用いて十分に確立されたアッセイと同程度に信頼できることを示している。
【0093】
実施例10:放射線保護剤D68による処置は、放射線照射マウスの血中の血漿中DNAを減少させる
10 Gy(Cs137線源からのγ線照射)の全身放射線照射に曝露したBALB/cマウス(1群5匹)を、生理食塩液(対照)および350 mg/kg の放射線保護剤D68(University of Rochester, NY, Department of Radiation Oncology)によって処置した。米国特許仮出願第60/940,396号に基づく国際特許出願PCT/US2008/064872は、参照により本明細書に組み入れられる。マウスの血漿試料を照射の9時間後に採取して、血中に存在する血漿中DNA量を、ヒトAlu配列に由来するAlu様B1配列プローブセットを用いて、実施例2に記載されるQuantiGene(登録商標)検出法を用いて測定した。
【0094】
図9は、生理食塩液処置対照マウス(NS)と比較してD68によって処置した放射線照射マウスの血中の血漿中DNAレベルに及ぼす放射線保護剤D68の効果を示す。D68を処置した放射線照射マウスでは、生理食塩液を処置した放射線照射マウスと比較して血中の血漿中Alu DNAレベルが低減したが、これはD68による照射に対する感度の低下と一致する。
【0095】
実施例11:腫瘍検出のための診断ツールとしての血漿中DNA
血漿試料を、リンパ腫、ALL、AML、CLL、および肝臓癌を有する患者が含まれる様々な型の悪性疾患と診断された患者から得た。上記実施例8に記載したプローブセットを用いて、採取した血漿試料10μLを血漿中DNAに関して試験した。血漿中DNAを、実施例3に記載されたQuantiDNA(商標)法を用いて定量した。
【0096】
図10は、QuantiDNA(商標)によって検出された血漿中DNAレベルが、様々な悪性疾患の診断と相関することを示している。結果は、血漿中DNAの検出を、疾患段階初期の個体における腫瘍を検出するための診断ツールとして用いることができることを示している。初期段階であると診断され、感染症、自己免疫疾患等などの他の医学的合併症を伴わない癌患者において、一貫して高レベルの血漿中DNAが連続的に経時的に検出される。血漿中DNAの一貫した高レベルは、悪性疾患の予後を示し、ゆえに悪性疾患のタイプおよび病期を決定するためにより包括的な医学的検査が必要であることを医師に注意喚起するために役立つ。
【0097】
実施例12:血漿中DNAレベルは腫瘍の進行と相関する
マウスに異種移植片腫瘍を移植した。移植後およそ15日目に、血漿試料をマウスから得て、腫瘍の成長をモニターした、血漿中DNAを、実施例5に記載されるAlu配列含有プローブセットおよび上記実施例3に記載されるプロトコールを用いて測定した。腫瘍の体積を、当技術分野において周知の方法を用いて腫瘍の大きさの測定に基づいて計算した。
【0098】
図11は、異種移植片腫瘍を移植したが放射線照射によって処置しなかったマウスにおいて腫瘍体積が増加する(腫瘍の成長)と、血漿中DNAが増加することを示している。この結果は、血漿中DNAを用いて、癌の進行または腫瘍の成長をモニターすることができることを示している。
【0099】
実施例13:血漿中DNAレベルは放射線療法の有効性と相関する
腫瘍移植の15日後に、マウスに、線量率1.83 Gy/分で放射線源Ce137を用いて1.83 Gy/分の線量率で16 Gyを照射した。総線量32 Gyの2回の照射線量を、移植の15および20日後に腫瘍部位に与えた。血漿中DNAを、実施例5に記載されるAlu配列含有プローブセットおよび上記実施例3に記載されるプロトコールを用いて測定した。腫瘍の体積を、当技術分野において周知の方法を用いて腫瘍サイズの測定に基づいて算出した。
【0100】
図12は、局所腫瘍部位で各放射線照射後に血漿中DNAレベルが増加した後、減少することを示している。腫瘍の体積は、2回目の照射後に徐々に減少する。減少した腫瘍の体積は、血漿中DNAレベルの減少に相関する。この試験は、血漿中DNAを、放射線療法などの、しかしこれらに限定されない癌の処置における有効性をモニターするための指標として用いることができることを示している。
【0101】
実施例14:血漿中DNAレベルは癌の処置における放射線療法の有効性と相関する
胸腺腫と診断されたヒト癌患者に、Ce137放射線源によって線量率1.83 Gy/分で6 Gyを照射した。11回の放射線量を腫瘍部位に局所的に与えた。血漿試料を、30分後、9時間後、およびIR 2の前で照射線処置1(IR 1)の24時間後;IR 2の9時間後およびIR 3の前でIR 2の24時間後;IR 3の9時間後およびIR 4の前でIR 3の24時間後;IR 4の9時間後;IR 6の前でIR 5 の24時間後;IR 7の9時間後;およびIR 11の9時間後および24時間後に患者から得た。
【0102】
図13は、癌と診断されたヒトにおける放射線療法後の様々な時間での血漿中DNAレベルを示す。結果は、血漿中Alu DNAレベルが、最初の3回の放射線照射後に増加した後、4回目の照射から11回目の照射後では減少することを示している。血漿中DNAレベルは、初回放射線照射後に腫瘍細胞のほとんどを殺すことに関する電離放射線の有効性および感度を示している。
【0103】
実施例15:自己免疫疾患などの他の疾患状況および妊娠などの非疾患状況を診断するための診断ツールとしての血漿中DNA
血漿試料を、妊娠期間が2ヶ月より長い人および結合組織に罹患する自己免疫疾患である全身性紅斑性狼瘡(SLE)と診断された人から得た。対照血漿試料を、いずれの状況も有しない健常な人から得た。これらの試料からの血漿中DNAレベルを、上記実施例11に記載されるプローブセットおよびプロトコールを用いて分析した。
【0104】
図14は、妊娠していない、または自己免疫疾患に罹っていない対照者と比較して、妊娠中の人およびSLEと診断された人において血漿中DNAが高レベルであることを示す。
【0105】
実施例16:心筋梗塞事象後の処置転帰を決定するための診断ツールとしての血漿中DNA
血漿試料を、初回急性心筋梗塞(AMI)事象後、入院17日目での経皮的冠動脈インターベンション(PCI)(t0)後の心疾患患者から様々な時点で採取した。採取した血漿試料10μLを、上記実施例9に記載したプローブセットを用いて血漿中DNAに関して、およびトロポニンI(TnI)に関して試験した。
【0106】
図15Aは、AMI事象後、TnIおよび血漿中DNAレベルが、初回AMI事象の発症6時間後に増加して、AMIの4日後にPCI後に正常レベルまで減少することを示している。この結果は、血中の遊離血漿中DNAレベルの減少がPCI転帰の成功に相関することを示している。
【0107】
図15Bは、TnIレベルがピークレベルに達した後6時間のあいだに徐々に減少するが、血漿中DNAレベルは高いままであることを示している。TnIレベルは、PCI後に二次AMIが起こっても低いままである。しかし、血漿中DNAレベルは比較的高いままであり、このことはPCI処置が成功しなかったことを示している。この試験の結果は、血漿中DNAレベルを用いて、心筋梗塞後のPCI処置の有効性をモニターすることができることを示している。
【0108】
実施例17:急性ステント血栓症の結果としての再梗塞のマーカーとしての血漿中DNAレベルの増加
血漿試料を、初回急性心筋梗塞(AMI)を有する心疾患患者から、初回AMI事象後からステント埋め込みおよび二次AMIまでの過程において得た。採取した血漿試料10μLを、上記実施例9に記載されるプローブセットを用いて血漿中DNAに関して、およびトロポニンI(TnI)に関して試験した。図16は、血漿中DNAレベルが、初回AMIのおよそ6日後およびステント埋め込みのあいだ正常レベルまで減少することを示している。ステント血栓症のために二次AMIの90分後に、血漿中DNAレベルの有意な増加が観察された。対照的に、TnIレベルは、初回AMI後に徐々に減少して、二次AMIの発生後のいかなる時点でもTnIレベルは増加しない。この結果は、血漿中DNAが、TnIより二次AMI事象を検出するための感度のよいマーカーであることを示している。この知見は、血漿中DNAが、ステント埋め込み後の再梗塞または二次AMIの可能性をモニターするためにより信頼できる診断ツールでありうることを示している。
【0109】
実施例18:血漿中に放出された遊離DNAは放射線量と共に増加する
図17Aおよび17Bは、非ヒト霊長類(サル)の全身照射後の血漿中DNAを検出するためのもう1つの例示的な実験を示す。実験群(サル6匹/群)に、電離放射線源を用いて1 Gy(図17Aおよび17B)および3.5 Gy(図17B)を照射した。対照群では、サルに放射線を照射しなかった(0 Gy)。血漿試料を、放射線照射の6.5時間後に対照および実験群から採取した。採取した血漿試料10μLを、実施例9に記載されるプローブセットおよび実施例3に記載されるプロトコールを用いて血漿中DNAに関して試験した。
【0110】
図17Aは、1 Gyの放射線照射の6.5時間後に血漿中DNAが検出されることを示している。この結果はまた、放射線を照射したサルから得られた血漿中の遊離DNAレベルが、放射線を照射しなかったサル(対照群)より有意に高かったことを示している。この実験は、放射線に曝露された個体と曝露されていない個体とを区別することが可能であることを示している。
【0111】
図17Bは、放射線量が増加すると血漿中DNAレベルが増加することを示している。電離放射線3.5 Gyを照射したサルは、1 Gyを照射したサルより有意に高い血漿中DNAレベルを示す。より高い放射線量に曝露された個体をより低い放射線量に曝露された個体と区別できる能力は、放射線照射事象などの病態生理学的傷害後の個体のトリアージおよび処置の指針としての方法/システムとして用いることができる。
【0112】
実施例19:血中の遊離血漿中DNAの持続はより高い放射線量によって増加する
非ヒト霊長類(サル6匹/群)に電離放射線源から1、3.5、および6.5 Gyを照射した。対照群のサルには放射線を照射しなかった(0 Gy)。血漿試料を、照射後6.5、24、48、72時間または7日目に実験群および対照群から採取した。採取した血漿試料10μLを、実施例9に記載されたプローブセットおよび実施例3に記載されたプロトコールを用いて血漿中DNAに関して試験した。
【0113】
図18は、より高い放射線量によって血漿中DNAレベルが増加することを示す。より高い血漿中DNAレベルは、より低い放射線量に曝露されたサルと比較して、より高い放射線量に曝露されたサルにおいて、少なくとも72時間まで持続する。
【0114】
実施例20:血漿中DNAレベルは体の部分照射−上半身照射対下半身照射によって影響を受けない
血漿試料を非ヒト霊長類(サル)から放射線照射前に得た。非霊長類被験対象の上半身または下半身のいずれかに、Ce137放射線源を用いて1.83 Gy/分で10 Gyを照射した。放射線照射の9時間後に、上半身または下半身のいずれかに放射線を照射された霊長類被験対象から、血漿試料を採取した。採取した血漿試料10 μLを上記実施例9に記載されるプローブセットを用いて血漿中DNAに関して試験した。
【0115】
図19は、上半身領域または下半身領域のどちらに放射線を照射された霊長類からの血漿中DNAレベルにも差がないことを示している。
【0116】
実施例21:骨髄移植における全身放射線照射後のバイオ線量計としての血漿中DNA
骨髄移植(BMT)患者2人に、電離放射線源を用いて1.65 Gyの全身放射線照射(TBI)を行った。放射線処置は、サイトキサンによる処置の前に1日2回4日間行った。サイトキサン処置後、初回放射線処置後約10〜11日目にBMTを行った。放射線照射の前および後、サイトキサン処置のあいだ、およびBMTを通して、様々な時点で全体で15日間のあいだに、BMT患者から血漿を得た。採取した血漿試料10μLを上記実施例9に記載のプローブセットを用いて、実施例3に記載のプロトコールを用いて血漿中DNAに関して試験した。
【0117】
図20および図21は、放射線照射時に、血漿中DNAレベルが増加したが、4回目の放射線処置後に減少したことを示している。血漿中DNAレベルは、サイトキサン処置のあいだおよびBMT後に減少し続ける。この試験は、血漿中DNAレベルが、放射線事象後の被害者のトリアージおよび処置の指針として、または骨髄移植を必要とする患者における免疫応答もしくはその欠如をモニターするために用いることができることを示している。
【0118】
本明細書における刊行物、特許、および特許出願は全て、各々の個々の刊行物または特許出願が具体的および個々に参照により本明細書に組み入れられることが示されるのと同じ程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
【0119】
前述の詳細な説明は、理解を明快にするために限って提供され、当業者には改変が明らかであるから、本発明を不必要に限定するものと理解すべきではない。本明細書において提供される情報のいずれも、先行技術であるもしくは本願発明に関連すると認めるものではなく、または具体的もしくは暗黙に参照されるいかなる刊行物も先行技術であると認めるものではない。
【0120】
そうでないことを特記する場合を除き、本明細書において用いられる科学技術用語は全て、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0121】
特定の態様に関連して本発明を記載してきたが、さらなる改変を行うことができ、本出願は概して、本発明の原理に従う本発明の任意の変更、使用、または適合を含み、ならびに本発明が関連する技術分野の公知のまたは慣例的な実践の範囲内に入る、本明細書において上述した本質的な特色に適用される可能性がある、および添付の特許請求の範囲に従うような、本開示からの発展も含まれると意図されると理解される。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、2009年2月25日に提出された米国特許出願第12/392,989号に対する優先権を主張し、その継続出願である。
【0002】
発明の分野
本発明は、全般的に、たとえば原子力事故、バイオテロ攻撃、腫瘍発生、放射線処置、感染症または心血管疾患により生じる傷害などの、病態生理学的傷害または外傷性傷害の結果としての細胞の損傷に関連するDNAマーカーを検出および/または測定することに関する。特に、本発明は、被験対象における細胞の損傷を検出および/または測定するために1つまたは複数の一般的バイオマーカーを用いることに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
健康な細胞におけるゲノムDNAは通常、細胞の核内に閉じこめられている。しかし、ゲノムDNAは、細胞がプログラムされた細胞死もしくはアポトーシスを経る細胞老化の際に、または初期疾患状態の際に、血液中に放出される。健康な個体では、恒常性により血液からDNAを効率よく消失させることができることから、これらの血中DNAは往々にして検出不可能である。同様に、初期腫瘍発生の際などの疾患初期段階での個体における血中DNAは、現在利用可能な核酸検出法を用いて早期検出できるほど十分に高い量の腫瘍特異的マーカーを示さない。腫瘍発達の初期段階の個体からの血中DNAは、健康な個体より高い可能性があるが、個体における腫瘍発生の結果として放出された血中DNAを正常な細胞老化の結果と識別するバイオマーカーは現在のところない。加えて、血中遊離DNAは、全てではないにしてもそのほとんどが、健康な個体と同じ細胞機序を用いて血液から消失する。
【0004】
さらに、個体が、たとえば原子力事故において高レベルの放射線に曝露されている状況、またはバイオテロ攻撃により高レベルの放射線および/または感染物質に曝露されている状況では、それに続いて大規模な細胞の損傷が起こり、それによって高レベルのゲノムDNAが血中に放出される。しかし、これらの個体を処置する目的およびこれらの個体をそのような物質に曝露されていない相互汚染個体から隔離する目的のために、これらの個体を検出するための効率がよく信頼できる安価な手段は現在のところ得られていない。
【0005】
よって、被験対象における細胞損傷レベルなどの、被験対象の状態または状況を検出および/または測定するために有用な方法および/またはバイオマーカーが必要である。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、あるポリヌクレオチド、たとえば被験対象の血中遊離ゲノムDNAを、被験対象の状態、たとえば任意の病態生理学的傷害に対する被験対象の曝露を示すためのバイオマーカーとして用いることができるという発見に一部基づいている。よって、本発明は、生理病理学的または他の傷害に関連する細胞損傷を検出するために有用な方法、キット、ならびに関連バイオマーカーおよび試薬を提供する。
【0007】
1つの局面において、本発明は、被験対象における病態生理学的傷害に関連する細胞損傷を検出する方法を提供する。方法は、被験対象の生体試料中の一般的な血中遊離バイオマーカーの有無を検出する工程を含み、ここで、一般的な血中遊離バイオマーカーの存在が、被験対象において病態生理学的傷害に関連する細胞損傷が存在することの指標となる。
【0008】
病態生理学的傷害は、たとえば、電離放射線、原子力事故、または爆弾攻撃に対する曝露などの身体的傷害であってもよい。1つの態様において、病態生理学的傷害は、自然のまたはバイオテロリズムの結果としての、ウイルス、細菌、および/または寄生虫による感染症などの、しかしこれらに限定されない感染物質により起こる。もう1つの態様において、病態生理学的傷害は、腫瘍発生などの疾患状態、または心臓、肝臓、肺、もしくは腎臓疾患の発症および進行により起こる。なおもう1つの態様において、病態生理学的傷害は、化学療法および/または他の血液毒性物質、四塩化炭素および/または他の肝毒性物質、酸化剤、酸、または他の局所適用もしくは摂取された壊死性物質などの化学物質による傷害である。もう1つの態様において、病態生理学的傷害は、事故により生じる頭部損傷または火傷などの外傷性の身体的傷害である。
【0009】
本発明の一般的な血中遊離バイオマーカーは、被験対象において血中遊離ポリヌクレオチドまたは血漿中のポリヌクレオチドとして存在し、このように血液中のいかなる細胞にも結合せず、または血液中のいかなる細胞内にも位置しないポリヌクレオチドを含む。一般的バイオマーカーの例には、Alu配列を有する配列、またはテロメアの配列もしくはテロメアに由来する配列、および18S/28SリボソームRNAをコードする遺伝子から選択される配列が含まれる。
【0010】
もう1つの局面において、本発明は、被験対象の生体試料中の一般的な血中遊離バイオマーカーのレベルを決定する工程を含む、病態生理学的傷害により生じる細胞損傷を検出する方法を提供する。1つの態様において、一般的な血中遊離バイオマーカーのレベルは、たとえば原子力事故での放射線または卑劣な爆弾攻撃に対する曝露などの、しかしこれらに限定されない身体的傷害に関連する。
【0011】
1つの態様において、一般的な血中遊離バイオマーカーレベルは、自然のまたはバイオテロリズムの結果のいずれかとしての、ウイルス、細菌、および/または寄生虫による感染症などの、しかしこれらに限定されない感染物質による病態生理学的傷害に関連する。もう1つの態様において、一般的な血中遊離バイオマーカーレベルは、腫瘍発生などの疾患状態、または心臓、肝臓、肺、もしくは腎臓疾患の発症および進行の結果としての病態生理学的傷害に関連する。
【0012】
もう1つの態様において、一般的な血中遊離バイオマーカーレベルは、化学物質の燃焼に由来するエアロゾルへの曝露および工業的毒物の曝露などの、しかしこれらに限定されない化学物質の曝露により生じる病態生理学的傷害に関連する。もう1つの態様において、一般的な血中遊離バイオマーカーレベルは、身体的損傷、たとえば事故、スポーツ関連損傷、または過度の運動により生じる頭部損傷などの外傷性身体傷害による病態生理学的傷害に関連する。
【0013】
本発明はまた、病態生理学的傷害の結果でありうる細胞損傷による血中のポリヌクレオチド、たとえば血中のDNA分子または断片を検出するキットを提供する。1つの態様において、キットは、血中遊離ポリヌクレオチドを検出するために用いられるプローブセットを含む。たとえば、プローブセットは、細胞損傷の際に血中、血漿中、または他の体液中に存在する本明細書に開示の一般的バイオマーカーとハイブリダイズするヌクレオチド配列を含んでもよい。
【0014】
ある態様において、プローブセットは、被験対象から得られた生体試料中の遊離の血中または血漿中に存在するAluヌクレオチド配列、テロメア配列、または18S/28SリボソームRNAコード配列などの、しかしこれらに限定されない一般的バイオマーカーにハイブリダイズするヌクレオチド配列を有するキャプチャーエクステンダー(capture extender)を含む。なおもう1つの態様において、プローブセットは、一般的バイオマーカーにハイブリダイズするヌクレオチド配列を有するラベルエクステンダー(label extender)をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】様々な病態生理学的プロセスによる傷害後にDNAが血液中に放出される図を示す。
【図2】本発明に関連して用いられうるポリヌクレオチドを検出するための1つの図を示す。
【図3】一般的マーカーであるAlu配列に結合したストレプトアビジンコンジュゲートフィコエリスリン標識プローブから放出された相対発光量(RLU)の相関を示す。
【図4】図4Aは、10 Gyの全身放射線照射後24時間のあいだに血液中に放出されたDNA(Alu配列)を示す。図4Bは、上記の図4Aからの試料のエチジウムブロマイド染色DNAを示す。
【図5】血液中に放出されたDNAと放射線量との相関を示す。
【図6】2 Gy(6A)および5 Gy(6B)の全身放射線照射後の21日間のあいだに血中に放出されたDNAを示す。
【図7】様々な疾患状態に関して血液中に放出されたDNAレベルを示す:正常(N)、白血病(LM)、真性糖尿病(DM)、癌(CA)、心筋梗塞(MI)、急性膵炎(AP)、HBV-関連肝炎(HBV)、およびHCV関連肝炎(HCV)。
【図8】心筋梗塞後の患者において血液中に放出されたDNAレベルとクレアチンキナーゼ2(CK-MB)レベルとの相関の推移を示す。
【図9】10 Gyの放射線照射後9時間目に存在する血漿中DNAレベルに及ぼす、放射線の効果から被験対象を保護/処置するために用いられる放射線保護剤D68の効果を示す。
【図10】悪性疾患を検出するための診断ツールとしての血液中に放出されたDNAレベルを示す。
【図11】腫瘍の進行/退縮または腫瘍の体積をモニターするための診断ツールとしての血液中に放出されたDNAレベルを示す。
【図12】放射線療法をモニターするための指標としての血液中に放出されたDNAレベルを示す。
【図13】血中DNAレベルが放射線療法の指針として用いることができることを示す。
【図14】自己免疫疾患(SLE)および妊娠の際に、DNAが血液中に放出されることを示す。
【図15】図15Aおよび15Bは、血液中へのDNA放出レベルの推移と経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の心筋梗塞の処置転帰との相関を示す。処置の転帰によらず減少するトロポニンIレベルも同様に示す。
【図16】血液中へのDNA放出レベルと再梗塞との相関を示す。
【図17】図17Aおよび17Bは、血液中へのDNA放出レベルと放射線量との相関を示す。
【図18】放射線照射後の血中遊離DNAの持続を示す。
【図19】血液中へのDNA放出レベルが、部分照射によって影響を受けることを示す。
【図20】骨髄移植前に全身放射線照射(TBI)を受ける患者をモニターするために血液中へのDNA放出を用いることを示す。
【図21】骨髄移植前の全身放射線照射(TBI)を受ける患者をモニターするために血液中へのDNA放出を用いることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
本発明は、あるポリヌクレオチド、たとえば被験対象中の血中遊離ゲノムDNAを、被験対象の状態、たとえば病態生理学的傷害に対する被験対象の曝露による細胞損傷の存在を示すためのバイオマーカーとして用いることができるという発見に一部基づいている。よって、本発明は、病態生理学的傷害に関連する細胞損傷を検出するために用いられる方法、キット、ならびに関連バイオマーカーおよび試薬を提供する。
【0017】
1つの局面において、本発明は、関心対象の被験対象から得られた生体試料中の1つまたは複数の一般的な血中遊離バイオマーカーの有無を検出することによって、たとえば病態生理学的傷害の結果としてのまたはそれに関連する被験対象における細胞損傷を検出する方法を提供する。
【0018】
本発明の一般的な血中遊離バイオマーカーは、任意の一般的バイオマーカーでありうる。たとえば、バイオマーカーは、様々な系から放出されるかまたは循環(たとえば、血液または血漿)中に存在する、体液(たとえば、血漿、血清、尿、または胸膜滲出液)中に存在する、または細胞外である、すなわち細胞の外である(細胞と結合していないまたは細胞内に位置しない)、細胞表面に結合しているかまたは結合していないDNAまたはRNAマーカーであってもよい。たとえば本明細書において用いられるように、一般的バイオマーカーを含有する血中遊離ポリヌクレオチドは、「無細胞ポリヌクレオチド」、「無細胞血中ポリヌクレオチド」、「血中遊離ポリヌクレオチド」、「血漿中ポリヌクレオチド」、または「細胞血漿ポリヌクレオチド」という用語と互換的に用いられうる。本発明に従って、たとえば一般的バイオマーカーを含有する血中遊離ポリヌクレオチドは、血液試料、血清試料、血漿試料、尿試料、もしくは胸膜滲出液試料、またはその組み合わせなどの、しかしこれらに限定されない生体試料から得ることができる。
【0019】
本明細書において用いられる「一般的バイオマーカー」という用語は、遺伝子内容物の細胞放出に関連するマーカーとして機能するポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)または他の生物学的実体である。通常、一般的バイオマーカーは、細胞外に存在するポリヌクレオチドである。ある態様において、バイオマーカーの配列、発現(またはレベル)および/または活性は、任意の特定の疾患または状況に特異的に関連しない。特に、本発明の一般的バイオマーカーは、その細胞外での存在またはバイオマーカーとして機能するためのその活性に主に依存する。
【0020】
ある態様において、一般的バイオマーカーは、細胞死またはたとえばDNAなどの遺伝子内容物の細胞放出に関連する。そのような内容物の放出は、病態生理学的傷害、癌などの新生物、外因性の傷害、処置、または被験対象に対する外傷性の影響の結果であってもよい。たとえば、バイオマーカーは、病原体の攻撃、損傷性の曝露、身体的外傷、内部外傷、心筋梗塞、自己免疫疾患等を示してもよい。そのような態様において、バイオマーカーの存在またはレベルは、被験対象における正常な生理的プロセス、たとえば老化に関連しない。
【0021】
これらのまたは他の態様において、一般的バイオマーカーは、反復配列もしくはエレメント、たとえばタンデムリピート、ハウスキーピング遺伝子もしくはエレメント、または哺乳動物、たとえばヒトのゲノムにおいて一定量で存在する他の任意の配列である。例として、一般的バイオマーカーは、ヒトゲノムの少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、または10%を構成する反復ヌクレオチド配列または任意のヌクレオチド配列エレメントであってもよい。
【0022】
1つの例示的な態様において、一般的バイオマーカーは、部分的または全てのAluヌクレオチド配列を有する。Aluヌクレオチド配列は、配列5' AG/CT 3'を認識するAlu制限エンドヌクレアーゼの作用を本来の特徴とするDNAの短い鎖である。Alu配列は、ヒトゲノムなどの哺乳動物ゲノムに存在する反復エレメントファミリーに属する。ハプロイドゲノムには、およそ300,000個のAluファミリーメンバーが存在する。Alu配列は長さが約300塩基対であり、百万個を超えるこれらの配列がヒトゲノムの中全体に散在する。ヒトゲノムの約10%がAlu配列からなると推定される。
【0023】
部分的または全体のいずれのAlu配列も一般的バイオマーカーとして用いることができる。1つの態様において、一般的バイオマーカーは、ヒトゲノムに豊富に存在する1つまたは複数のAlu配列である。もう1つの態様において、バイオマーカーは、被験対象に対するストレスまたは傷害に特有に関連する1つまたは複数のAlu配列である。
【0024】
一般的バイオマーカーとして用いることができるAlu配列の例には、SEQ ID NO: 1もしくは2に表される配列、またはその断片が含まれるがこれらに限定されるわけではない。1つの態様において、本発明の一般的バイオマーカーは、SEQ ID NO: 1または2と少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%同一である。
【0025】
ある態様において、Alu配列バイオマーカーは、たとえばQuantiGene(登録商標)法に従ってAlu配列に基づいて設計されるプローブセットを用いて検出される。そのような態様において、プローブセットには、キャプチャーエクステンダー(Capture Extender)(CE)、たとえば、各々がSEQ ID NO: 7〜19から選択される配列を含有する少なくとも2個、3個、4個、または5個のCE(以下の表1〜3を参照されたい)、ラベルエクステンダー(Label Extender)(LE)、たとえば、各々がSEQ ID NO: 32〜44から選択される配列を含有する少なくとも1個、2個、3個、4個、または5個のLE(以下の表6〜8を参照されたい)、および任意でブロッキングラベル(Blocking Label)(BL)、たとえば、各々がSEQ ID NO: 69〜71から選択される配列を含有する少なくとも1個、2個、または3個のBL(以下の表11を参照されたい)が含まれる。
【0026】
CE、LE、およびBLの長さは、長さ約10ヌクレオチド〜約20ヌクレオチド、長さ約20ヌクレオチド〜約30ヌクレオチド、または長さ約30ヌクレオチド〜50ヌクレオチドでありうる。ある態様において、プローブセットには、各々がSEQ ID NO: 7〜11の配列の1つを含有するCE、各々がSEQ ID NO: 32〜35の配列の1つを含有するLE、および任意でSEQ ID NO: 69の配列を含有するBLが含まれる。他の態様において、プローブセットには、各々がSEQ ID NO: 12〜15の配列の1つを含有するCE、各々がSEQ ID NO: 36〜38の配列の1つを含有するLEが含まれる。なお他の態様において、プローブセットには、各々がSEQ ID NO: 16〜19の配列の1つを含有するCE、各々がSEQ ID NO: 39〜44の配列の1つを含有するLE、ならびに任意で各々がSEQ ID NO: 70および71の配列の1つを含有するBLが含まれる。
【0027】
もう1つの例示的な態様において、一般的バイオマーカーは、18S/28SリボソームRNAをコードする遺伝子に由来する部分的または全ての配列を有する。リボソームRNA遺伝子は、哺乳動物ゲノムにおいてタンデムリピートに構築される。ヒトでは、約300〜400個のそのようなリピートが5個のクラスタに構築されて存在する。一般的バイオマーカーとして用いることができる18Sおよび28S配列の例には、SEQ ID NO: 3もしくは4に表される配列またはその断片が含まれるがこれらに限定されるわけではない。1つの態様において、一般的バイオマーカーは、SEQ ID NO: 3または4と少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%同一である。
【0028】
さらなる態様において、18S/28S rRNA配列バイオマーカーは、たとえばQuantiGene(登録商標)法に従って18S/28S rRNA配列に基づいて設計されるプローブセットを用いて検出される。一般的にプローブセットには、キャプチャーエクステンダー(CE)、たとえば、各々がSEQ ID NO: 20〜31から選択される配列を含有する少なくとも2個、3個、4個、または5個のCE(以下の表4および5を参照されたい)、ラベルエクステンダー(LE)、たとえば、各々がSEQ ID NO: 45〜68から選択される配列を含有する少なくとも1個、2個、3個、4個、または5個のLE(以下の表9および10を参照されたい)、および任意でブロッキングラベル(BL)、たとえば、各々がSEQ ID NO: 72〜77から選択される配列を含有する少なくとも1個、2個、3個、4個、または5個のBL(以下の表11を参照されたい)が含まれる。
【0029】
CE、LE、およびBLの長さは、長さ約10ヌクレオチド〜約20ヌクレオチド、長さ約20ヌクレオチド〜約30ヌクレオチド、または長さ約30ヌクレオチド〜50ヌクレオチドでありうる。
【0030】
ある態様において、一般的バイオマーカーは、1つまたは複数のテロメアに由来するヌクレオチド配列の部分または全体を有する。テロメアは、染色体の複製および安定性に関係している。テロメアには、染色体の端部で約6ヌクレオチド塩基の反復DNA配列の領域が含まれる。テロメア配列は、酵母での長さおよそ300〜およそ600 bpからヒトでの多くのkbまで変動しうる。配列は典型的に、TTAGGG、TTGGG、TTTTGGGG等などの約6〜約8 bp、またはそれ未満のGに富むリピートのアレイを含む。一般的バイオマーカーとして有用な配列の例には、SEQ ID NO: 5および6ならびにその断片が含まれるがこれらに限定されるわけではない。本発明の一般的バイオマーカーは、SEQ ID NO: 5または6と少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であってもよい。
【0031】
ある態様において、テロメア配列バイオマーカーは、たとえばQuantiGene(登録商標)法に従ってテロメア配列に基づいて設計されたプローブセットを用いて検出されうる。たとえば、プローブセットには、キャプチャーエクステンダー(CE)、たとえば、少なくとも2個、3個、4個、または5個のCE、ラベルエクステンダー(LE)、たとえば、少なくとも1個、2個、3個、4個、または5個のLE、および任意でブロッキングラベル(BL)、たとえば少なくとも1個、2個、3個、4個、または5個のBLが含まれてもよい。CE、LE、およびBLの長さは、長さ約10ヌクレオチド〜約20ヌクレオチド、長さ約20ヌクレオチド〜約30ヌクレオチド、または長さ約30ヌクレオチド〜50ヌクレオチドでありうる。
【0032】
本明細書において用いられる「病態生理学的傷害」という用語は、それによって細胞の損傷が起こる、外因性または内部の事象または起源に関連する任意の有意な身体的または病理的な影響または外傷を意味する。1つの態様において、病態生理学的傷害は、被験対象に対する外因性もしくは内部のストレス、影響、または処置に関連する。たとえば、これは病原体感染症、有害物質に対する曝露、身体的損傷、または被験対象の系に対して外傷性である任意の外部事象の場合でありうる。ストレスは、医療機器、たとえばステントの埋め込み;移植、たとえば骨髄、心臓、肝臓、もしくは腎臓移植のための準備;または手術などの、しかしこれらに限定されない医学的介入によって起こりうる。ストレスはまた、妊娠、薬物、化学物質、もしくはアルコールに対する中毒もしくは依存性、またはPTSDなどの身体的もしくは精神的ストレスなどの状況でありうる。他の態様において、病態生理学的傷害は、被験対象に対する内部ストレス、影響、または病理的事象に関連する。たとえば、病態生理学的傷害は、細胞死、プログラムされた細胞死、壊死、細胞の分解等に関連する任意の病理的事象でありうる。
【0033】
他の態様において、病態生理学的傷害は、放射線またはDNAもしくは細胞の損傷を引き起こす他の任意の物質もしくはエネルギー源に対する曝露である。1つの態様において、病態生理学的傷害は、原子力事故、核兵器の攻撃等に関連する放射線に対する曝露である。
【0034】
他の態様において、病態生理学的傷害は、ハロゲン化炭化水素もしくは酸、無臭の気体および/または化学物質、または体内に入って保持され、刺激および損傷を引き起こしうる微粒子化学物質などといった、工業的事故または爆発による苛性または非苛性のエアロゾルなどの、しかしこれらに限定されない化学的傷害である。化学兵器の爆発に対する曝露の重症度の評価はもう1つの例である。
【0035】
もう1つの例示的な態様において、病態生理学的傷害は、感染物質に対する自然の曝露またはバイオテロリズムの結果のいずれかによる、ウイルス、細菌、およびまたは寄生虫による感染症などの、しかしこれらに限定されない感染物質によって起こる。
【0036】
細胞において病態生理学的損傷が起こりうるウイルス科の例には;パラミクソウイルス科(たとえば、パラインフルエンザウイルス、ムンプス、麻疹);オルトミクソウイルス科(たとえば、インフルエンザ);ヘプドナウイルス科(たとえば、肝炎);アデノウイルス科(たとえば、急性呼吸器疾患);ポックスウイルス科(たとえば、痘瘡);ヘルペスウイルス科(たとえば、ヘルペス、カポジ肉腫);乳頭腫ウイルス科(たとえば、HPV);ポリオーマウイルス科(たとえば、膀胱炎、または軽度もしくは急性の呼吸器疾患);パルボウイルス科;ラブドウイルス科(たとえば、狂犬病);フィロウイルス科(たとえば、エボラウイルスおよびマールブルグウイルスによって引き起こされる出血熱);ブンヤウイルス科(たとえば、脳炎、ハンタウイルス呼吸症候群、リフトバレー熱);アレナウイルス科(たとえば、無菌性髄膜炎、脳炎、髄膜脳炎、ラッサ熱);コロナウイルス科(たとえば、重症急性呼吸器症候群、またはSARS);フラビウイルス科(たとえば、デング出血熱);トガウイルス科;ピコルナウイルス科(たとえば、);カリシウイルス科(たとえば、冬季嘔吐病);アストロウイルス科(たとえば、胃腸炎);レトロウイルス科(たとえば、HIV、HTLV);およびレオウイルス科(たとえば、コロラドダニ熱)が含まれる。
【0037】
感染細胞において病態生理学的損傷を引き起こしうる細菌の非限定的な例は:百日咳菌(B. pertussis);レプトスピラ・ポモナ(Leptospira Pomona);パラチフス菌AおよびB(S. paratyphi AおよびB);ジフテリア菌(C. diphtheriae)、破傷風菌(C. tetani)、ボツリヌス菌(C. botulinum)、ウェルシュ菌(C. perfringens)、C.フェセリ(C. feseri)、および他のガス壊疽菌;炭疽菌(B. anthracis);ペスト菌(P. pestis);P.ムルトシダ(P. multocida);髄膜炎菌(Neisseria meningitides);淋菌(N. gonorrheae);インフルエンザ菌(Hemophilus influenzae);放線菌属(Actinomyces)(たとえば、ノカルジア(Norcardia));アシネトバクター属(Acinetobacter);バチルス科(Bacillaceae(たとえば、炭疽菌(Bacillus anthrasis));バクテロイデス属(Bacteroides)(たとえば、バクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis));ブラストミセス症;ボルデテラ属(Bordetella)(たとえば、百日咳菌(Bordetella pertusi));ボレリア属(Borrelia)(たとえば、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi));ブルセラ属(Brucella);カンピロバクター属(Campylobacter);クラミジア属(Chlamydia);コクシジオイデス属(Coccidioides);コリネバクテリウム属(Corynebacterium)(たとえば、ジフテリア菌(Corynebacterium diptheriae));大腸菌( E. coli)(たとえば、腸毒素性大腸菌(Enterotoxigenic E. coli)および腸管出血性大腸菌(Enterohemorrhagic E. coli));エンテロバクター属(Enterobacter)(たとえば、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes));腸内細菌科(Enterobacteriaceae)(クレブシエラ属(Klebsiella)、サルモネラ属(Salmonella)(たとえば、腸チフス菌(Salmonella typhi)、腸炎菌(Salmonella enteritidis))、セラチア属(Serratia)、エルシニア属(Yersinia)、赤痢菌属(Shigella));エリジペロスリックス属(Erysipelothrix);ヘモフィルス属(Haemophilus)(たとえば、B型インフルエンザ菌(Haemophilus influenza type B));ヘリコバクター属(Helicobacter);レジオネラ属(Legionella)(たとえば、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila));レプトスピラ属(Leptospira);リステリア属(Listeria)(たとえば、リステリア菌(Listeria monocytogenes));マイコプラスマ属(Mycoplasma);マイコバクテリウム属(Mycobacterium)(たとえば、らい菌(Mycobacterium leprae)、ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、およびウシ型結核菌(Mycobacterium bovis));ビブリオ属(Vibrio)(たとえば、ビブリオコレラ(Vibrio cholerae));パスツレラ科(Pasteurellacea)(パスツレラ・ヘモリチカ(Pasteurella haemolytica));プロテウス属(Proteus);シュードモナス属(Pseudomonas)(たとえば、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa));リケッチア科(Rickettsiaceae);スピロヘータ(Spirochetes)(たとえば、トレポネーマ種(Treponema spp.)、レプトスピラ種(Leptospira spp.)、ボレリア種(Borrelia spp.));赤痢菌種(Shigella spp.);髄膜炎球菌(Meningiococcus);肺炎球菌(Pneumococcus)および連鎖球菌(Streptococcus)(たとえば、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、ならびにA、B、およびC群連鎖球菌(Groups A, B, and C Streptococci));ウレアプラスマ属(Ureaplasmas);梅毒トレポネーマ(Treponema pollidum);およびブドウ球菌属(Staphylococcus)(黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)および表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis))である。
【0038】
感染細胞において病態生理学的損傷を引き起こしうる寄生虫または原虫の非限定的な例には:リーシュマニア症(メキシコリーシュマニア(Leishmania tropica mexicana)、熱帯リーシュマニア(Leishmania tropica)、森林型熱帯リーシュマニア(Leishmania major)、エチオピアリーシュマニア(Leishmania aethiopica)、ブラジルリーシュマニア(Leishmania braziliensis)、ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani)、小児リーシュマニア(Leishmania infantum)、シャーガスリーシュマニア(Leishmania chagasi));トリパノソーマ症(ガンビアトリパノソーマ(Trypanosoma brucei gambiense)、ローデシアトリパノソーマ(Trypanosoma brucei rhodesiense));トキソプラスマ症(トキソプラスマ(Toxoplasma gondii));住血吸虫症(ビルハルツ住血吸虫(Schistosoma haematobium)、日本住血吸虫(Schistosoma japonicum)、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)、メコン住血吸虫(Schistosoma mekongi)、ビルハルツ住血吸虫(Schistosoma intercalatum));マラリア(三日熱マラリア原虫(Plasmodium virax)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparium)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)および卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale));アメーバ症(赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica));バベシア症(バベシア・ミクロチ(Babesiosis microti));クリプトスポリジウム症(クリプトスポリジウム・パルブム(Cryptosporidium parvum));二核アメーバ症(二核アメーバ(Dientamoeba fragilis));ジアルジア鞭毛虫症(ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia));ぜん虫症(Helminthiasis)およびトリコモナス(膣トリコモナス(Trichomonas(Trichomonas vaginalis))が含まれる。上記の一覧は、例示的であることを意味し、決して、本発明をそれらの特定の細菌、ウイルス、または寄生虫生物に限定することを意味しない。
【0039】
他の態様において、病態生理学的傷害は、たとえば細胞死(プログラムされた細胞死)、細胞損傷、壊死等に関連する疾患状態の発症および進行によって起こりうる。1つの態様において、病態生理学的傷害は、被験対象における腫瘍発生または新生物形成である。もう1つの態様において、病態生理学的傷害は、被験対象における複数の場所での実質的な腫瘍発生または新生物形成、たとえばリンパ節での転移等である。腫瘍発生または新生物形成により生じる疾患の例には、白血病、乳癌、前立腺癌、肝臓癌、胃癌、結腸癌、黒色腫、リンパ腫、肺癌、膵臓癌、脳腫瘍、口腔癌等が含まれる。
【0040】
他の態様において、病態生理学的傷害は、自己免疫疾患である。自己免疫疾患の例には、尋常性白斑、強皮症、リウマチ性関節炎、シャーガス病、1型真性糖尿病、橋本病、強直性脊椎炎、グレーヴス病、ギヤン・バレー症候群、全身性紅斑性狼瘡(SLE)等が含まれる。
【0041】
なおもう1つの態様において、病態生理学的傷害は、妊娠、薬物またはアルコールなどの化学物質に対する中毒または依存性などの非疾患である。
【0042】
なお他の態様において、病態生理学的傷害は、心血管疾患である。心血管疾患の例には、肺動脈塞栓症および心細胞のアポトーシスによって生じる心筋梗塞などの急性の血管閉塞が含まれ、それによって無細胞ポリヌクレオチド、たとえばDNAの血液中への放出を引き起こす。1つの態様において、病態生理学的傷害は、肺動脈塞栓または心筋梗塞後の1つまたは複数の続発事象によって起こりうる。続発事象には、経皮的心臓インターベンションもしくは血管形成術、経皮経管冠動脈形成術(PTCA)、バルーン血管形成術、冠動脈バイパス手術などの心血管疾患を処置するための医学技法、または二次肺動脈塞栓もしくは心筋梗塞が含まれるがこれらに限定されるわけではない。なおもう1つの態様において、病態生理学的傷害は、肝疾患、肺疾患、または腎臓疾患等、特に細胞死および壊死に関連する状況である。
【0043】
なおもう1つの態様において、病態生理学的傷害は、事故により生じる頭部損傷などの外傷性の身体傷害である。たとえば、病態生理学的傷害は、ボクシング、フットボール、または激しい運動などのスポーツ損傷により起こりうる。
【0044】
本発明に従って、被験対象における病態生理学的傷害に関連する細胞損傷を検出する方法には、細胞損傷の定性的および/または定量的検出が含まれうる。ある態様において、本発明の方法には、病態生理学的傷害に曝露されたまたは曝露されたことが疑われる被験対象から得られた生体試料中で、1つまたは複数の一般的な血中遊離バイオマーカーの有無を検出する工程が含まれる。他の態様において、本発明の方法には、病態生理学的傷害の進行、その程度もしくはレベル、または処置の効果をモニターするために、被験対象から得られた生体試料中で、1つまたは複数の一般的な血中遊離バイオマーカーレベルを検出する工程が含まれる。もう1つの態様において、生体試料中の1つまたは複数の一般的な血中遊離バイオマーカーを検出する方法を用いて、疾患を有すると診断された個体における処置の経過または有効性をモニターすることができる。たとえば、一般的な血中遊離バイオマーカーレベルを、癌患者における放射線療法もしくは化学療法の有効性、または骨髄移植を受ける患者における免疫応答を決定するためのマーカーとして用いることができる。1つまたは複数の一般的な血中遊離バイオマーカーレベルの増加または減少を、心筋梗塞後の経皮的心臓インターベンションなどの、しかしこれらに限定されない医学的介入の成否を評価するために用いることができる。
【0045】
本発明の検出方法は、一般的な血中遊離バイオマーカーの増幅を行ってまたは行わずに実行することができる。検出方法は、リアルタイムPCR、定量的PCR、蛍光PCR、RT-MSP(RTメチル化特異的ポリメラーゼ連鎖反応)、DNAのPicoGreen(商標)(Molecular Probes, Eugene, OR)検出、ラジオイムノアッセイ、DNAの直接放射標識等であってもよい。もう1つの態様において、検出方法は、増幅に頼ることなく、たとえば標的配列のいかなるコピーまたは複製も生成することなく、いかなるポリメラーゼも伴うことなく、またはいかなるサーマルサイクリングも必要とすることなく行うことができる。たとえば、検出方法を、参照により本明細書に組み入れられる、2006年6月19日に提出された米国特許出願第11/471,025号に記載されるQuantiGene(登録商標)法に記載される原理を用いて行ってもよい。
【0046】
QuantiGene(登録商標)法は、シグナルを増幅するためにサーマルサイクリングを必要とすることなく、一連のハイブリダイゼーション反応において分岐DNA技術を用いる。原理としては、これは標的配列にハイブリダイズするために一次プローブセットを用い、そのようなハイブリダイゼーションの存在を、これらの一次プローブの一部にハイブリダイズする追加のプローブによって強化する。言い換えれば、方法は、任意の実際のヌクレオチド配列増幅の代わりに複数のプローブハイブリダイゼーション層によってハイブリダイゼーションのシグナルを強化する。
【0047】
分岐DNA技術の1つの例示的な態様において、約30個またはそれより多くの異なるオリゴヌクレオチドプローブを用いて標的DNAまたはRNAに特異的に結合させる。簡単に説明すると、血中遊離DNA(直線状または環状)などの核酸は、プローブセット、たとえばキャプチャーエクステンダー(CE)にハイブリダイズすることによって固相支持体上に捕捉され、次にこれは固相支持体、たとえばビーズ等に付着させたプローブセット、たとえばキャプチャープローブ(Capture Probe)(CP)にハイブリダイズする。次いで、もう1つのプローブセット、たとえばラベルエクステンダー(LE)を用いて、固相支持体上に捕捉された標的ヌクレオチドにさらにハイブリダイズさせることができる。そのようなハイブリダイゼーションのシグナルを、固相支持体上の標的ヌクレオチドに対するLEの複数のハイブリダイゼーションを直接検出することによって、またはハイブリダイズしたLEに対する1つもしくは複数のプローブセット、たとえばプレ-アンプリファイア(pre-Amplifier)プローブ、アンプリファイア(Amplifier)プローブ等のさらなるハイブリダイゼーションによって、またはその双方によって、強化することができる。1つの特定の態様において、そのようなハイブリダイゼーションの検出は、対応するプローブをビオチン化した上で、ストレプトアビジンにコンジュゲートさせた検出部分を用いて行われる(図2を参照されたい)。
【0048】
1つの態様において、プローブセットは、Alu配列を認識して結合する配列を有するキャプチャーエクステンダーおよびラベルエクステンダーを含む。ある態様において、キャプチャーエクステンダーおよびラベルエクステンダーは、テロメア配列を認識して結合するように設計される。もう1つの態様において、キャプチャーエクステンダーおよびラベルエクステンダーは、18Sまたは28SリボソームRNA配列を認識して結合するように設計される。
【0049】
本発明のもう1つの局面において、病態生理学的傷害により生じる細胞損傷を検出する方法は、被験対象の生体試料中で一般的な血中遊離バイオマーカーの発現プロファイルを決定する工程を含む。一般的に、本発明の一般的な血中遊離バイオマーカーの発現プロファイルには、一般的な血中遊離バイオマーカーの有無に関連する任意のパラメータもしくはデータ、または定性的もしくは定量的記述が含まれる。
【0050】
1つの態様において、一般的な血中遊離バイオマーカーの発現プロファイルには、1つまたは複数の一般的な血中遊離バイオマーカーのレベルまたは濃度が含まれる。もう1つの態様において、一般的な血中遊離バイオマーカーの発現プロファイルには、一般的な血中遊離バイオマーカーの群または組み合わせの有無が含まれる。なおもう1つの態様において、一般的な血中遊離バイオマーカーの発現プロファイルには、既定のタイムラインまたは病態生理学的傷害の発生に関連するタイムラインに関連する1つまたは複数の一般的な血中遊離バイオマーカーのレベルまたは濃度が含まれる。なおもう1つの態様において、一般的な血中遊離バイオマーカーの発現プロファイルには、パラメータの組み合わせ、たとえば濃度、既定のタイムラインに関連した有無、細胞損傷の程度、核酸放出速度、遺伝子の産生/断片化と体のクリアランス速度とのバランス等が含まれる。なおもう1つの態様において、一般的な血中遊離バイオマーカーの発現プロファイルには、濃度、タイムライン、増加速度、ベースラインへの消散速度、ピークレベル、異なる一般的マーカーの示差的発現、および異なる一般的マーカーの示差的発現の時間依存的変化などの1つまたは複数の要因が含まれる。
【0051】
本発明のもう1つの局面に従って、本発明は、被験対象における病態生理学的傷害の結果としての細胞損傷による一般的な血中遊離バイオマーカーを検出するキットを提供する。1つの態様において、キットは、一般的な血中遊離バイオマーカーを検出するために有用なプローブセットを含む。1つの態様において、プローブセットは、一般的な血中遊離バイオマーカーにハイブリダイズする配列を含む。
【0052】
1つの例示的な態様において、プローブセットは、一般的バイオマーカーにハイブリダイズする配列を有するキャプチャーエクステンダー(CE)を含む。1つの態様において、プローブセットは、SEQ ID NO: 1のAlu配列に由来するプローブセット1のキャプチャーエクステンダーを含む。SEQ ID NO: 1に由来するキャプチャーエクステンダーの例には、SEQ ID NO: 7、8、9、10、および11が含まれる(表1を参照されたい)。
【0053】
(表1)SEQ ID NO: 1のAlu配列に由来するプローブセット1のキャプチャーエクステンダー
【0054】
もう1つの態様において、プローブセットは、SEQ ID NO: 1のAlu配列に由来するプローブセット2のキャプチャーエクステンダーを含む。SEQ ID NO: 1に由来するキャプチャーエクステンダーの例には、SEQ ID NO: 12、13、14、15が含まれる(表2を参照されたい)。
【0055】
(表2)SEQ ID NO: 1のAlu配列に由来するプローブセット2のキャプチャーエクステンダー
【0056】
もう1つの態様において、プローブセットは、SEQ ID NO: 2のAlu配列に由来するキャプチャーエクステンダーを含む。SEQ ID NO: 2に由来するキャプチャーエクステンダーの例には、SEQ ID NO: 16、17、18、および19が含まれる(表3を参照されたい)。
【0057】
(表3)SEQ ID NO: 2のAlu配列に由来するプローブセットのキャプチャーエクステンダー
【0058】
もう1つの態様において、プローブセットは、SEQ ID NO: 3の18S配列に基づいて設計されるキャプチャーエクステンダーを含む。SEQ ID NO: 3の18Sに基づくキャプチャーエクステンダーの例には、SEQ ID NO: 20、21、22、23、24、および25が含まれる(表4を参照されたい)。
【0059】
(表4)SEQ ID NO: 3の18S配列に由来するプローブセットのキャプチャーエクステンダー
【0060】
もう1つの態様において、プローブセットは、SEQ ID NO: 4の28S配列に基づいて設計されるキャプチャーエクステンダーを含む。SEQ ID NO: 4の28Sに基づくキャプチャーエクステンダーの例には、SEQ ID NO: 26、27、28、29、30、および31が含まれる(表5を参照されたい)。
【0061】
(表5)SEQ ID NO: 4の28S配列に由来するプローブセットのキャプチャーエクステンダー
【0062】
もう1つの態様において、プローブセットは、一般的バイオマーカーにハイブリダイズする配列を有するラベルエクステンダーをさらに含む。1つの態様において、プローブセットは、SEQ ID NO: 1のAlu配列に由来するプローブセット1のラベルエクステンダーを含む。SEQ ID NO: 1に由来するラベルエクステンダーの例には、SEQ ID NO: 32、33、35および35が含まれる(表6を参照されたい)。
【0063】
(表6)SEQ ID NO: 1のAlu配列に由来するプローブセット1のラベルエクステンダー
【0064】
もう1つの態様において、プローブセットは、SEQ ID NO: 1のAlu配列に由来するプローブセット2のラベルエクステンダーを含む。SEQ ID NO: 1に由来するプローブセット2のラベルエクステンダーの例には、SEQ ID NO: 36、37、および38が含まれる(表7を参照されたい)。
【0065】
(表7)SEQ ID NO: 1のAlu配列に由来するプローブセット2のラベルエクステンダー
【0066】
もう1つの態様において、プローブセットは、SEQ ID NO: 2のAlu配列に由来するラベルエクステンダーを含む。SEQ ID NO: 2に由来するラベルエクステンダーの例には、SEQ ID NO: 39、40、41、42、43、および44が含まれる(表8を参照されたい)。
【0067】
(表8)SEQ ID NO: 2のAlu配列に由来するプローブセット2のラベルエクステンダー
【0068】
もう1つの態様において、プローブセットは、SEQ ID NO: 3の18S配列に基づいて設計されるラベルエクステンダーを含む。SEQ ID NO: 3の18Sに基づくラベルエクステンダーの例には、SEQ ID NO: 45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55および56が含まれる(表9を参照されたい)。
【0069】
(表9)SEQ ID NO: 3の18S配列に由来するプローブセットのラベルエクステンダー
【0070】
もう1つの態様において、プローブセットは、SEQ ID NO: 4の28S配列に基づいて設計されるラベルエクステンダーを含む。SEQ ID NO: 4の28Sに基づくラベルエクステンダーの例には、SEQ ID NOS: 57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、および68が含まれる(表10を参照されたい)。
【0071】
(表10)SEQ ID NO: 4の28S配列に由来するプローブセットのラベルエクステンダー
【0072】
もう1つの態様において、プローブセットはさらに、一般的バイオマーカーにハイブリダイズする配列を有するブロッキングラベルを含む。SEQ ID NO: 1に由来するブロッキングラベルの例には、SEQ ID NO: 69が含まれる。SEQ ID NO: 2のAlu配列に由来するプローブセット2のブロッキングラベルの例には、SEQ ID NO: 70および71が含まれる。もう1つの態様において、プローブセットは、SEQ ID NO: 3の18S配列に基づいて設計されるブロッキングラベルを含む。SEQ ID NO: 3の18Sに基づくブロッキングラベルの例には、SEQ ID NO: 72および73が含まれる。もう1つの態様において、プローブセットは、SEQ ID NO: 4の28S配列に基づいて設計されるブロッキングラベルを含む。SEQ ID NO: 4の28Sに基づくブロッキングラベルの例には、SEQ ID NO: 74、75、76および77が含まれる。
【0073】
(表11)SEQ ID NO: 1および2のAlu配列、18Sおよび28S配列のブロッキングラベル配列
【実施例】
【0074】
実施例1
図1に示されるように、フロー図は、化学物質、放射線照射、または核、生物学的および爆発による曝露により生じる病態生理学的傷害の結果として血漿中にDNAを放出させる様々な機序を示す。
【0075】
実施例2:そこからプローブセットが設計されるヌクレオチド配列
プローブセット設計のために用いられるAlu配列(SEQ ID NO: 1)
【0076】
プローブセット設計のために用いられるAlu配列(SEQ ID NO: 2)
【0077】
プローブセット設計のために用いられる18S配列(SEQ ID NO: 3)
【0078】
プローブセット設計のために用いられる28S配列(SEQ ID NO: 4)
【0079】
プローブセット設計のために用いられるテロメア配列
TTAGGG(SEQ ID NO: 5)
TTTTGGGG(SEQ ID NO: 6)
【0080】
実施例3:QuantiGene(登録商標)検出法のプロトコール
図2の図面は、QuantiGene(登録商標)法を用いて行われる検出法を示す。簡単に説明すると、方法は、キャプチャーエクステンダーとラベルエクステンダーの双方を含むプローブセットを、3×SSC、10%硫酸デキストラン、0.2%カゼイン、10μg/mlポリAおよび100μg/ml変性サケ精子DNA中で55℃で30分間のハイブリダイズ条件下で血漿試料と混合することによって、血漿試料からの標的血中DNAを捕捉する工程を伴う。次に、3×SSC、10%硫酸デキストラン、0.2%カゼイン、10μg/mlポリAおよび100μg/ml変性サケ精子DNA中で、ならびに洗浄緩衝液:20 mmmol/L Tris-HCl、400 mmol/L塩化リチウム、1 mL/L Tween 20中でプレ-アンプリファイア、アンプリファイア、およびラベルプローブ(Label Probe)をそれぞれ55℃、55℃、および50℃で各10分間連続的にハイブリダイズさせることによって、シグナルの増幅を行う。ラベルプローブを、ビオチン化してもよい。
【0081】
実施例4:相対発光量(RLU)とAlu配列濃度との相関
Alu配列の様々な濃度を含有する試料を、Alu特異的キャプチャーエクステンダー(CE)、ラベルエクステンダー(LE)、およびブロッキングラベル(BL)と共にキャプチャープローブコーティングプレートと共に1、2、3、4時間および終夜インキュベートした。
【0082】
実施例5:全身放射線照射後24時間での血漿中DNAの検出
図4に示されるように、マウスにおける全身放射線照射後の血漿中DNAの検出を示す例示的な実験である。マウスにCe137照射装置によって1.83 Gy/分の線量率で10 Gyの放射線を照射した。照射後0、3、6、9、12および24時間目に血漿試料をマウスから採取して、蒸留水で1:10に希釈した。希釈した試料2、5、10および20μlを上記実施例2に記載したプロトコールに従う分析のために採取した。放射線曝露による損傷の結果として細胞から放出された血漿中DNAを、Alu配列を含有するプローブを用いて測定した。
マウスプローブセット:
マウス配列:
【0083】
図4Aの結果は、本発明において記載される方法を用いた、1:10希釈試料5μlからの血漿中DNAの経時的な増加を示す。血漿中DNA量は照射の9時間後にピークに達した。
【0084】
図4Bは、試料を2%アガロースゲル中で泳動させた後にエチジウムブロミドによる染色によって得られた結果を確認する。
【0085】
実施例6:血漿中に放出された遊離DNAは照射線量と共に増加する
放射線量に対する応答を、マウスにおけるAlu様配列(B1配列)および適切な配列プローブセットを用いて、一般的な血中遊離バイオマーカーの量を測定することによって決定した。Cs137線源によって生成された0、2、4、6、8、および10 Gyのγ線の全身照射の9時間後にマウスから血漿試料を得た。血漿から放出された血中遊離Aluバイオマーカーの量を、以下のAlu配列プローブセットと共に上記実施例2に記載されるQuantiGene(登録商標)検出法を用いて測定した。
マウスプローブセット:
マウス配列:
【0086】
図5の結果は、Alu配列を用いて測定され、血中に放出された血漿中DNAの量が照射線量が増加すると増加することを示している。統計分析により、2、4および6 Gyの低い線量であっても、様々な照射線量と非照射マウス(健康なマウス)におけるバックグラウンドDNAレベルとのあいだに有意差(P<0.05)を検出することができることが示される。結果は、一般的DNAバイオマーカーレベルを用いて、照射した被験対象と非照射被験対象とを識別することができることを示している。結果はまた、このアッセイにおいて用いられた一般的バイオマーカーが、曝露9時間以内での放射線曝露の検出において十分に感度があることも示している。
【0087】
実施例7:亜急性および潜在性効果は照射線量に依存する
マウスの全身照射(Cs137線源からのγ線照射を用いて2および5 Gy)後に経時的に測定した2つの異なる照射線量の亜急性および潜在性効果を例示するために、血中の血漿中DNAの推移を図6に示す。血漿中DNAを、以下に提供されるプローブセットを用いて実施例2に記載されるQuantiGene(登録商標)検出法を用いて測定した。
マウスプローブセット:
マウス配列:
【0088】
図6Aに示されるように、2 Gy放射線に曝露されたマウスは、照射後21日目に、血中で検出された遊離DNA量の2倍減少を示す。一方、図6Bにおいて、5 Gy放射線に曝露されたマウスは、照射の21日後に、血中の血漿中DNAの量の増加を示し続ける。この結果は、血漿中DNAレベルを用いて放射線曝露後の細胞に対する損傷レベルを予測することができることを示している。この結果はまた、本発明において記載される方法を用いて、放射線によって引き起こされた傷害などの病態生理学的傷害により生じる損傷の推移をモニターすることができることを示している。
【0089】
実施例8:様々な疾患状態において検出される血漿中DNAレベルの増加
様々な疾患状況であると診断された患者からのヒト血漿を、以下に記載されるプローブセットを用いてヒトAluキットによって試験した。各試験に関して血漿10μlを用いた。
【0090】
図7に示されるように、白血病(LM)、真性糖尿病(DM)、癌(CA)、心筋梗塞(M)、急性膵炎(AP)、HBV(B型肝炎)、およびHCV(C型肝炎)を有するヒト被験者から得られた試料では、血漿中DNAレベルが、健康な個体(N)からの試料中の血漿中DNAレベルと比較して高い。この結果は、非疾患(健常)患者と比較して様々な疾患を有すると診断された患者とのあいだに密接な相関があることを示している。
【0091】
実施例9:血漿中DNAレベルは心筋梗塞患者におけるクレアチニンキナーゼ2(CK-MB)レベルと相関する
血漿CK-MBレベルの上昇に基づいてMIと診断された患者から採取した血漿を、以下に記載されるプローブセットを用いてヒトAluキットによって試験した。各試験に関して血漿10μlを用いた。
【0092】
図8の結果は、血液中に放出された血漿中DNAの量が、心筋梗塞患者におけるクレアチニンキナーゼ2(CK-MB)の存在と相関することを示している。さらに、この結果はまた、本アッセイが、心筋梗塞を検出するためにCK-MBを用いて十分に確立されたアッセイと同程度に信頼できることを示している。
【0093】
実施例10:放射線保護剤D68による処置は、放射線照射マウスの血中の血漿中DNAを減少させる
10 Gy(Cs137線源からのγ線照射)の全身放射線照射に曝露したBALB/cマウス(1群5匹)を、生理食塩液(対照)および350 mg/kg の放射線保護剤D68(University of Rochester, NY, Department of Radiation Oncology)によって処置した。米国特許仮出願第60/940,396号に基づく国際特許出願PCT/US2008/064872は、参照により本明細書に組み入れられる。マウスの血漿試料を照射の9時間後に採取して、血中に存在する血漿中DNA量を、ヒトAlu配列に由来するAlu様B1配列プローブセットを用いて、実施例2に記載されるQuantiGene(登録商標)検出法を用いて測定した。
【0094】
図9は、生理食塩液処置対照マウス(NS)と比較してD68によって処置した放射線照射マウスの血中の血漿中DNAレベルに及ぼす放射線保護剤D68の効果を示す。D68を処置した放射線照射マウスでは、生理食塩液を処置した放射線照射マウスと比較して血中の血漿中Alu DNAレベルが低減したが、これはD68による照射に対する感度の低下と一致する。
【0095】
実施例11:腫瘍検出のための診断ツールとしての血漿中DNA
血漿試料を、リンパ腫、ALL、AML、CLL、および肝臓癌を有する患者が含まれる様々な型の悪性疾患と診断された患者から得た。上記実施例8に記載したプローブセットを用いて、採取した血漿試料10μLを血漿中DNAに関して試験した。血漿中DNAを、実施例3に記載されたQuantiDNA(商標)法を用いて定量した。
【0096】
図10は、QuantiDNA(商標)によって検出された血漿中DNAレベルが、様々な悪性疾患の診断と相関することを示している。結果は、血漿中DNAの検出を、疾患段階初期の個体における腫瘍を検出するための診断ツールとして用いることができることを示している。初期段階であると診断され、感染症、自己免疫疾患等などの他の医学的合併症を伴わない癌患者において、一貫して高レベルの血漿中DNAが連続的に経時的に検出される。血漿中DNAの一貫した高レベルは、悪性疾患の予後を示し、ゆえに悪性疾患のタイプおよび病期を決定するためにより包括的な医学的検査が必要であることを医師に注意喚起するために役立つ。
【0097】
実施例12:血漿中DNAレベルは腫瘍の進行と相関する
マウスに異種移植片腫瘍を移植した。移植後およそ15日目に、血漿試料をマウスから得て、腫瘍の成長をモニターした、血漿中DNAを、実施例5に記載されるAlu配列含有プローブセットおよび上記実施例3に記載されるプロトコールを用いて測定した。腫瘍の体積を、当技術分野において周知の方法を用いて腫瘍の大きさの測定に基づいて計算した。
【0098】
図11は、異種移植片腫瘍を移植したが放射線照射によって処置しなかったマウスにおいて腫瘍体積が増加する(腫瘍の成長)と、血漿中DNAが増加することを示している。この結果は、血漿中DNAを用いて、癌の進行または腫瘍の成長をモニターすることができることを示している。
【0099】
実施例13:血漿中DNAレベルは放射線療法の有効性と相関する
腫瘍移植の15日後に、マウスに、線量率1.83 Gy/分で放射線源Ce137を用いて1.83 Gy/分の線量率で16 Gyを照射した。総線量32 Gyの2回の照射線量を、移植の15および20日後に腫瘍部位に与えた。血漿中DNAを、実施例5に記載されるAlu配列含有プローブセットおよび上記実施例3に記載されるプロトコールを用いて測定した。腫瘍の体積を、当技術分野において周知の方法を用いて腫瘍サイズの測定に基づいて算出した。
【0100】
図12は、局所腫瘍部位で各放射線照射後に血漿中DNAレベルが増加した後、減少することを示している。腫瘍の体積は、2回目の照射後に徐々に減少する。減少した腫瘍の体積は、血漿中DNAレベルの減少に相関する。この試験は、血漿中DNAを、放射線療法などの、しかしこれらに限定されない癌の処置における有効性をモニターするための指標として用いることができることを示している。
【0101】
実施例14:血漿中DNAレベルは癌の処置における放射線療法の有効性と相関する
胸腺腫と診断されたヒト癌患者に、Ce137放射線源によって線量率1.83 Gy/分で6 Gyを照射した。11回の放射線量を腫瘍部位に局所的に与えた。血漿試料を、30分後、9時間後、およびIR 2の前で照射線処置1(IR 1)の24時間後;IR 2の9時間後およびIR 3の前でIR 2の24時間後;IR 3の9時間後およびIR 4の前でIR 3の24時間後;IR 4の9時間後;IR 6の前でIR 5 の24時間後;IR 7の9時間後;およびIR 11の9時間後および24時間後に患者から得た。
【0102】
図13は、癌と診断されたヒトにおける放射線療法後の様々な時間での血漿中DNAレベルを示す。結果は、血漿中Alu DNAレベルが、最初の3回の放射線照射後に増加した後、4回目の照射から11回目の照射後では減少することを示している。血漿中DNAレベルは、初回放射線照射後に腫瘍細胞のほとんどを殺すことに関する電離放射線の有効性および感度を示している。
【0103】
実施例15:自己免疫疾患などの他の疾患状況および妊娠などの非疾患状況を診断するための診断ツールとしての血漿中DNA
血漿試料を、妊娠期間が2ヶ月より長い人および結合組織に罹患する自己免疫疾患である全身性紅斑性狼瘡(SLE)と診断された人から得た。対照血漿試料を、いずれの状況も有しない健常な人から得た。これらの試料からの血漿中DNAレベルを、上記実施例11に記載されるプローブセットおよびプロトコールを用いて分析した。
【0104】
図14は、妊娠していない、または自己免疫疾患に罹っていない対照者と比較して、妊娠中の人およびSLEと診断された人において血漿中DNAが高レベルであることを示す。
【0105】
実施例16:心筋梗塞事象後の処置転帰を決定するための診断ツールとしての血漿中DNA
血漿試料を、初回急性心筋梗塞(AMI)事象後、入院17日目での経皮的冠動脈インターベンション(PCI)(t0)後の心疾患患者から様々な時点で採取した。採取した血漿試料10μLを、上記実施例9に記載したプローブセットを用いて血漿中DNAに関して、およびトロポニンI(TnI)に関して試験した。
【0106】
図15Aは、AMI事象後、TnIおよび血漿中DNAレベルが、初回AMI事象の発症6時間後に増加して、AMIの4日後にPCI後に正常レベルまで減少することを示している。この結果は、血中の遊離血漿中DNAレベルの減少がPCI転帰の成功に相関することを示している。
【0107】
図15Bは、TnIレベルがピークレベルに達した後6時間のあいだに徐々に減少するが、血漿中DNAレベルは高いままであることを示している。TnIレベルは、PCI後に二次AMIが起こっても低いままである。しかし、血漿中DNAレベルは比較的高いままであり、このことはPCI処置が成功しなかったことを示している。この試験の結果は、血漿中DNAレベルを用いて、心筋梗塞後のPCI処置の有効性をモニターすることができることを示している。
【0108】
実施例17:急性ステント血栓症の結果としての再梗塞のマーカーとしての血漿中DNAレベルの増加
血漿試料を、初回急性心筋梗塞(AMI)を有する心疾患患者から、初回AMI事象後からステント埋め込みおよび二次AMIまでの過程において得た。採取した血漿試料10μLを、上記実施例9に記載されるプローブセットを用いて血漿中DNAに関して、およびトロポニンI(TnI)に関して試験した。図16は、血漿中DNAレベルが、初回AMIのおよそ6日後およびステント埋め込みのあいだ正常レベルまで減少することを示している。ステント血栓症のために二次AMIの90分後に、血漿中DNAレベルの有意な増加が観察された。対照的に、TnIレベルは、初回AMI後に徐々に減少して、二次AMIの発生後のいかなる時点でもTnIレベルは増加しない。この結果は、血漿中DNAが、TnIより二次AMI事象を検出するための感度のよいマーカーであることを示している。この知見は、血漿中DNAが、ステント埋め込み後の再梗塞または二次AMIの可能性をモニターするためにより信頼できる診断ツールでありうることを示している。
【0109】
実施例18:血漿中に放出された遊離DNAは放射線量と共に増加する
図17Aおよび17Bは、非ヒト霊長類(サル)の全身照射後の血漿中DNAを検出するためのもう1つの例示的な実験を示す。実験群(サル6匹/群)に、電離放射線源を用いて1 Gy(図17Aおよび17B)および3.5 Gy(図17B)を照射した。対照群では、サルに放射線を照射しなかった(0 Gy)。血漿試料を、放射線照射の6.5時間後に対照および実験群から採取した。採取した血漿試料10μLを、実施例9に記載されるプローブセットおよび実施例3に記載されるプロトコールを用いて血漿中DNAに関して試験した。
【0110】
図17Aは、1 Gyの放射線照射の6.5時間後に血漿中DNAが検出されることを示している。この結果はまた、放射線を照射したサルから得られた血漿中の遊離DNAレベルが、放射線を照射しなかったサル(対照群)より有意に高かったことを示している。この実験は、放射線に曝露された個体と曝露されていない個体とを区別することが可能であることを示している。
【0111】
図17Bは、放射線量が増加すると血漿中DNAレベルが増加することを示している。電離放射線3.5 Gyを照射したサルは、1 Gyを照射したサルより有意に高い血漿中DNAレベルを示す。より高い放射線量に曝露された個体をより低い放射線量に曝露された個体と区別できる能力は、放射線照射事象などの病態生理学的傷害後の個体のトリアージおよび処置の指針としての方法/システムとして用いることができる。
【0112】
実施例19:血中の遊離血漿中DNAの持続はより高い放射線量によって増加する
非ヒト霊長類(サル6匹/群)に電離放射線源から1、3.5、および6.5 Gyを照射した。対照群のサルには放射線を照射しなかった(0 Gy)。血漿試料を、照射後6.5、24、48、72時間または7日目に実験群および対照群から採取した。採取した血漿試料10μLを、実施例9に記載されたプローブセットおよび実施例3に記載されたプロトコールを用いて血漿中DNAに関して試験した。
【0113】
図18は、より高い放射線量によって血漿中DNAレベルが増加することを示す。より高い血漿中DNAレベルは、より低い放射線量に曝露されたサルと比較して、より高い放射線量に曝露されたサルにおいて、少なくとも72時間まで持続する。
【0114】
実施例20:血漿中DNAレベルは体の部分照射−上半身照射対下半身照射によって影響を受けない
血漿試料を非ヒト霊長類(サル)から放射線照射前に得た。非霊長類被験対象の上半身または下半身のいずれかに、Ce137放射線源を用いて1.83 Gy/分で10 Gyを照射した。放射線照射の9時間後に、上半身または下半身のいずれかに放射線を照射された霊長類被験対象から、血漿試料を採取した。採取した血漿試料10 μLを上記実施例9に記載されるプローブセットを用いて血漿中DNAに関して試験した。
【0115】
図19は、上半身領域または下半身領域のどちらに放射線を照射された霊長類からの血漿中DNAレベルにも差がないことを示している。
【0116】
実施例21:骨髄移植における全身放射線照射後のバイオ線量計としての血漿中DNA
骨髄移植(BMT)患者2人に、電離放射線源を用いて1.65 Gyの全身放射線照射(TBI)を行った。放射線処置は、サイトキサンによる処置の前に1日2回4日間行った。サイトキサン処置後、初回放射線処置後約10〜11日目にBMTを行った。放射線照射の前および後、サイトキサン処置のあいだ、およびBMTを通して、様々な時点で全体で15日間のあいだに、BMT患者から血漿を得た。採取した血漿試料10μLを上記実施例9に記載のプローブセットを用いて、実施例3に記載のプロトコールを用いて血漿中DNAに関して試験した。
【0117】
図20および図21は、放射線照射時に、血漿中DNAレベルが増加したが、4回目の放射線処置後に減少したことを示している。血漿中DNAレベルは、サイトキサン処置のあいだおよびBMT後に減少し続ける。この試験は、血漿中DNAレベルが、放射線事象後の被害者のトリアージおよび処置の指針として、または骨髄移植を必要とする患者における免疫応答もしくはその欠如をモニターするために用いることができることを示している。
【0118】
本明細書における刊行物、特許、および特許出願は全て、各々の個々の刊行物または特許出願が具体的および個々に参照により本明細書に組み入れられることが示されるのと同じ程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
【0119】
前述の詳細な説明は、理解を明快にするために限って提供され、当業者には改変が明らかであるから、本発明を不必要に限定するものと理解すべきではない。本明細書において提供される情報のいずれも、先行技術であるもしくは本願発明に関連すると認めるものではなく、または具体的もしくは暗黙に参照されるいかなる刊行物も先行技術であると認めるものではない。
【0120】
そうでないことを特記する場合を除き、本明細書において用いられる科学技術用語は全て、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0121】
特定の態様に関連して本発明を記載してきたが、さらなる改変を行うことができ、本出願は概して、本発明の原理に従う本発明の任意の変更、使用、または適合を含み、ならびに本発明が関連する技術分野の公知のまたは慣例的な実践の範囲内に入る、本明細書において上述した本質的な特色に適用される可能性がある、および添付の特許請求の範囲に従うような、本開示からの発展も含まれると意図されると理解される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験対象の生体試料中の一般的な血中遊離バイオマーカーの有無を検出する工程を含む、被験対象における病態生理学的傷害に関連する細胞損傷を検出する方法であって、検出する工程が、核酸の増幅を伴うかまたは伴わず、かつ一般的な血中遊離バイオマーカーの存在が、被験対象における病態生理学的傷害に関連する細胞損傷の指標となる、方法。
【請求項2】
バイオマーカーがAlu、18S/28S、およびテロメアから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
検出が、QuantiGene(登録商標)法、リアルタイムPCR、定量的PCR、蛍光PCR、RT-MSP(RT-メチル化特異的ポリメラーゼ連鎖反応)、DNAのPicoGreen(商標)検出、ラジオイムノアッセイ、およびDNAの直接放射標識から選択される方法を用いて行われる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
生体試料が、血液試料、血清試料、または血漿試料である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
細胞損傷が壊死またはプログラムされた細胞死に関連する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
細胞損傷が、癌、放射線照射、自己免疫疾患、感染症、心筋梗塞、または骨髄移植に関連する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
バイオマーカーがAluであり、検出がSEQ ID NO: 1またはSEQ ID NO: 2に示されるAluの領域に従って設計されたプローブセットを用いて行われる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
バイオマーカーがAluであり、検出がQuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットを用いて行われ、かつ該プローブセットが、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、および19から選択される少なくとも2つのキャプチャーエクステンダー(capture extender)と、SEQ ID NO: 32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、および44から選択される少なくとも1つのラベルエクステンダー(label extender)とを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
バイオマーカーがAluであり、検出が、QuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットを用いて行われ、かつ該プローブセットがキャプチャーエクステンダー、ラベルエクステンダー、およびブロッキングラベル(blocking label)を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
被験対象の生体試料中の一般的な血中遊離バイオマーカーの有無を検出する工程を含む、被験対象における病態生理学的傷害に関連する細胞損傷を検出する方法であって、一般的な血中遊離バイオマーカーの存在が、被験対象における病態生理学的傷害に関連する細胞損傷の指標となり、かつ該病態生理学的傷害が癌ではない、方法。
【請求項11】
病態生理学的傷害が、放射線照射、自己免疫疾患、感染症、心筋梗塞、妊娠、および骨髄移植から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
病態生理学的傷害が壊死または細胞死である、請求項10記載の方法。
【請求項13】
バイオマーカーがAlu、18S/28S、およびテロメアから選択される、請求項10記載の方法。
【請求項14】
検出が核酸増幅を伴うかまたは伴わない、請求項10記載の方法。
【請求項15】
検出が、QuantiGene(登録商標)法、リアルタイムPCR、定量的PCR、蛍光PCR、RT-MSP(RTメチル化特異的ポリメラーゼ連鎖反応)、PicoGreen(商標)、ラジオイムノアッセイ、およびDNAの直接放射標識から選択される方法を用いて行われる、請求項10記載の方法。
【請求項16】
生体試料が、血液試料、血清試料、または血漿試料である、請求項10記載の方法。
【請求項17】
バイオマーカーがAluであり、検出が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、かつQuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、SEQ ID NO: 1およびSEQ ID NO: 2に示されるAluの領域に従って設計される、請求項10記載の方法。
【請求項18】
バイオマーカーがAluであり、検出が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、QuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、キャプチャーエクステンダーとラベルエクステンダーとを含み、キャプチャーエクステンダーがSEQ ID NO: 7、8、9、10、および11から選択され、かつラベルエクステンダーがSEQ ID NO: 32、33、34、および35から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項19】
バイオマーカーがAluであり、検出が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、QuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、キャプチャーエクステンダーとラベルエクステンダーとを含み、キャプチャーエクステンダーがSEQ ID NO: 12、13、14、15、16、17、18、および19から選択され、かつラベルエクステンダーがSEQ ID NO: 36、37、38、39、40、41、42、43、および44から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項20】
バイオマーカーがAluであり、検出が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、QuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、キャプチャーエクステンダーとラベルエクステンダーとを含み、キャプチャーエクステンダーがSEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、および19から選択され、かつラベルエクステンダーがSEQ ID NO: 32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、および44から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項21】
バイオマーカーがAluであり、検出が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、かつQuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、キャプチャーエクステンダー、ラベルエクステンダー、およびブロッキングラベルを含む、請求項10記載の方法。
【請求項22】
バイオマーカーが18SリボソームRNAであり、検出が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、かつQuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、SEQ ID NO: 3に示される18SリボソームRNAのプローブ設計領域に従って設計される、請求項10記載の方法。
【請求項23】
バイオマーカーが18SリボソームRNAであり、検出が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、かつQuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、キャプチャーエクステンダーとラベルエクステンダーとを含み、キャプチャーエクステンダーがSEQ ID NO: 20、21、22、23、24、および25から選択され、かつラベルエクステンダーがSEQ ID NO: 45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、および56から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項24】
バイオマーカーが28SリボソームRNAであり、検出が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、かつQuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、SEQ ID NO: 4に示される28SリボソームRNAのプローブ設計領域に従って設計される、請求項10記載の方法。
【請求項25】
バイオマーカーが28SリボソームRNAであり、検出が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、かつQuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、キャプチャーエクステンダーとラベルエクステンダーとを含み、キャプチャーエクステンダーがSEQ ID NO: 26、27、28、29、30、および31から選択され、かつラベルエクステンダーがSEQ ID NO: 57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、および68から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項26】
被験対象の生体試料中の一般的な血中遊離バイオマーカーのプロファイルを決定する工程を含む、被験対象における病態生理学的傷害に関連する細胞損傷を検出する方法であって、該プロファイルが、癌、放射線照射、自己免疫疾患、感染症、および心筋梗塞からなる起こりうる病態生理学的傷害の群のうちで、被験対象における特定の病態生理学的傷害に関連する細胞損傷の指標となる、方法。
【請求項27】
プロファイルが、濃度、タイムライン、増加速度、ベースラインへの消散速度、ピークレベル、異なる一般的マーカーの示差的発現、および異なる一般的マーカーの示差的発現の時間依存的変化から選択される少なくとも1つの特徴を含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
バイオマーカーがAlu、18S/28S、およびテロメアから選択される、請求項26記載の方法。
【請求項29】
プロファイルの決定が核酸増幅を伴わない、請求項26記載の方法。
【請求項30】
決定が、QuantiGene(登録商標)法を用いて行われる、請求項26記載の方法。1つの態様において、検出方法は、リアルタイムPCR、定量的PCR、蛍光PCR、RT-MSP(RT-メチル化特異的ポリメラーゼ連鎖反応)、DNAのPicoGreen(商標)(Molecular Probes, Eugene, OR)検出、ラジオイムノアッセイ、およびDNAの直接放射標識等でありうるが、これらに限定されない。
【請求項31】
生体試料が、血液試料、血清試料、または血漿試料である、請求項26記載の方法。
【請求項32】
バイオマーカーがAluであり、決定が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、かつQuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、SEQ ID NO: 1およびSEQ ID NO: 2に示されるAluのプローブ設計領域に従って設計される、請求項26記載の方法。
【請求項33】
バイオマーカーがAluであり、検出が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、QuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、キャプチャーエクステンダーとラベルエクステンダーとを含み、キャプチャーエクステンダーがSEQ ID NO: 7、8、9、10、および11から選択され、かつラベルエクステンダーがSEQ ID NO: 32、33、34、および35から選択される、請求項26記載の方法。
【請求項34】
バイオマーカーがAluであり、検出が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、QuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、キャプチャーエクステンダーとラベルエクステンダーとを含み、キャプチャーエクステンダーがSEQ ID NO: 12、13、14、15、16、17、18、および19から選択され、かつラベルエクステンダーがSEQ ID NO: 36、37、38、39、40、41、42、43、および44から選択される、請求項26記載の方法。
【請求項35】
バイオマーカーがAluであり、決定が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、QuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、キャプチャーエクステンダーとラベルエクステンダーとを含み、キャプチャーエクステンダーがSEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、および19から選択され、かつラベルエクステンダーがSEQ ID NO: 32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、および44から選択される、請求項26記載の方法。
【請求項36】
バイオマーカーがAluであり、決定が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、かつQuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、キャプチャーエクステンダー、ラベルエクステンダー、およびブロッキングラベルを含む、請求項26記載の方法。
【請求項37】
バイオマーカーが18SリボソームRNAであり、検出が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、かつQuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、SEQ ID NO: 3に示される18SリボソームRNAのプローブ設計領域に従って設計される、請求項26記載の方法。
【請求項38】
バイオマーカーが18SリボソームRNAであり、検出が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、QuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、キャプチャーエクステンダーとラベルエクステンダーとを含み、キャプチャーエクステンダーがSEQ ID NO: 20、21、22、23、24、および25から選択され、かつラベルエクステンダーがSEQ ID NO: 45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、および56から選択される、請求項26記載の方法。
【請求項39】
バイオマーカーが28SリボソームRNAであり、検出が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、かつQuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、SEQ ID NO: 4に示される28SリボソームRNAのプローブ設計領域に従って設計される、請求項26記載の方法。
【請求項40】
バイオマーカーが28SリボソームRNAであり、検出が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、QuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、キャプチャーエクステンダーとラベルエクステンダーとを含み、キャプチャーエクステンダーがSEQ ID NO: 26、27、28、29、30、および31から選択され、かつラベルエクステンダーがSEQ ID NO: 57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、および68から選択される、請求項26記載の方法。
【請求項41】
QuantiGene(登録商標)法を用いてAluバイオマーカーを検出するために有用なプローブセットを含むキットであって、プローブセットがSEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、および19から選択されるキャプチャーエクステンダーを含み、かつラベルエクステンダーがSEQ ID NO: 32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、および44から選択される、キット。
【請求項42】
プローブセットが、SEQ ID NO: 7、8、9、10、および11から選択されるキャプチャーエクステンダーを含み、かつラベルエクステンダーがSEQ ID NO: 32、33、34、および35から選択される、請求項41記載のキット。
【請求項43】
プローブセットが、SEQ ID NO: 12、13、14、15、16、17、18、および19から選択されるキャプチャーエクステンダーを含み、かつラベルエクステンダーがSEQ ID NO: 36、37、38、39、40、41、42、43、および44から選択される、請求項41記載のキット。
【請求項44】
SEQ ID NO: 69、70、および71の配列を有するブロッキングラベルをさらに含む、請求項41記載のキット。
【請求項45】
QuantiGene(登録商標)法を用いて18SリボソームRNAバイオマーカーを検出するために有用なプローブセットを含むキットであって、プローブセットが、SEQ ID NO: 20、21、22、23、24、および25から選択されるキャプチャーエクステンダーを含み、かつラベルエクステンダーがSEQ ID NO: 45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、および56から選択される、キット。
【請求項46】
SEQ ID NO: 72および73の配列を有するブロッキングラベルをさらに含む、請求項45記載のキット。
【請求項47】
QuantiGene(登録商標)法を用いて28SリボソームRNAバイオマーカーを検出するために有用なプローブセットを含むキットであって、プローブセットが、SEQ ID NO: 26、27、28、29、30、および31から選択されるキャプチャーエクステンダーを含み、かつラベルエクステンダーがSEQ ID NO: 57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、および68から選択される、キット。
【請求項48】
SEQ ID NO: 74、75、76、および77の配列を有するブロッキングラベルをさらに含む、請求項47記載のキット。
【請求項49】
細胞損傷が生命を変化させる状況である、請求項1記載の方法。
【請求項50】
生命を変化させる状況が妊娠である、請求項49記載の方法。
【請求項51】
被験対象の生体試料中の一般的な血中遊離バイオマーカーレベルを検出する工程を含む、被験対象における病態生理学的傷害に関連する細胞損傷を検出する方法であって、
検出が、核酸増幅を伴うかまたは伴わず、かつ
一般的な血中遊離バイオマーカーのレベルが、被験対象における病態生理学的傷害に関連する疾患の進行の指標となる、
方法。
【請求項52】
被験対象の生体試料中の一般的な血中遊離バイオマーカーレベルを検出する工程を含む、被験対象における放射線曝露をモニターする方法であって、
検出が、核酸増幅を伴うかまたは伴わず、かつ
一般的な血中遊離バイオマーカーレベルが、放射線療法を受けている被験対象における処置の有効性の指標となる、
方法。
【請求項53】
放射線療法を受けている被験対象が、癌患者または骨髄移植患者である、請求項52記載の方法。
【請求項54】
一般的な血中遊離バイオマーカーレベルが放射線曝露量の指標となる、請求項52記載の方法。
【請求項55】
一般的な血中遊離バイオマーカーレベルが、放射線曝露後のトリアージおよび処置を導くために用いられる、請求項54記載の方法。
【請求項56】
被験対象の生体試料中の一般的な血中遊離バイオマーカーレベルを検出する工程を含む、被験対象における急性心筋梗塞の処置転帰をモニターする方法であって、
検出が、核酸増幅を伴うかまたは伴わず、かつ
一般的な血中遊離バイオマーカーレベルが、冠動脈インターベンションの有効性の指標となる、
方法。
【請求項57】
冠動脈インターベンションが、経皮的心臓インターベンション(PCI)、血管形成術、経皮経管冠動脈形成術(PTCA)、バルーン血管形成術、および冠動脈バイパス手術から選択される、請求項54記載の方法。
【請求項58】
被験対象の生体試料中の一般的な血中遊離バイオマーカーレベルを検出する工程を含む、被験対象における腫瘍の進行をモニターする方法であって、
検出が、核酸増幅を伴うかまたは伴わず、かつ
一般的な血中遊離バイオマーカーレベルが、腫瘍成長の進行の指標となる、
方法。
【請求項1】
被験対象の生体試料中の一般的な血中遊離バイオマーカーの有無を検出する工程を含む、被験対象における病態生理学的傷害に関連する細胞損傷を検出する方法であって、検出する工程が、核酸の増幅を伴うかまたは伴わず、かつ一般的な血中遊離バイオマーカーの存在が、被験対象における病態生理学的傷害に関連する細胞損傷の指標となる、方法。
【請求項2】
バイオマーカーがAlu、18S/28S、およびテロメアから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
検出が、QuantiGene(登録商標)法、リアルタイムPCR、定量的PCR、蛍光PCR、RT-MSP(RT-メチル化特異的ポリメラーゼ連鎖反応)、DNAのPicoGreen(商標)検出、ラジオイムノアッセイ、およびDNAの直接放射標識から選択される方法を用いて行われる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
生体試料が、血液試料、血清試料、または血漿試料である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
細胞損傷が壊死またはプログラムされた細胞死に関連する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
細胞損傷が、癌、放射線照射、自己免疫疾患、感染症、心筋梗塞、または骨髄移植に関連する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
バイオマーカーがAluであり、検出がSEQ ID NO: 1またはSEQ ID NO: 2に示されるAluの領域に従って設計されたプローブセットを用いて行われる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
バイオマーカーがAluであり、検出がQuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットを用いて行われ、かつ該プローブセットが、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、および19から選択される少なくとも2つのキャプチャーエクステンダー(capture extender)と、SEQ ID NO: 32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、および44から選択される少なくとも1つのラベルエクステンダー(label extender)とを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
バイオマーカーがAluであり、検出が、QuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットを用いて行われ、かつ該プローブセットがキャプチャーエクステンダー、ラベルエクステンダー、およびブロッキングラベル(blocking label)を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
被験対象の生体試料中の一般的な血中遊離バイオマーカーの有無を検出する工程を含む、被験対象における病態生理学的傷害に関連する細胞損傷を検出する方法であって、一般的な血中遊離バイオマーカーの存在が、被験対象における病態生理学的傷害に関連する細胞損傷の指標となり、かつ該病態生理学的傷害が癌ではない、方法。
【請求項11】
病態生理学的傷害が、放射線照射、自己免疫疾患、感染症、心筋梗塞、妊娠、および骨髄移植から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
病態生理学的傷害が壊死または細胞死である、請求項10記載の方法。
【請求項13】
バイオマーカーがAlu、18S/28S、およびテロメアから選択される、請求項10記載の方法。
【請求項14】
検出が核酸増幅を伴うかまたは伴わない、請求項10記載の方法。
【請求項15】
検出が、QuantiGene(登録商標)法、リアルタイムPCR、定量的PCR、蛍光PCR、RT-MSP(RTメチル化特異的ポリメラーゼ連鎖反応)、PicoGreen(商標)、ラジオイムノアッセイ、およびDNAの直接放射標識から選択される方法を用いて行われる、請求項10記載の方法。
【請求項16】
生体試料が、血液試料、血清試料、または血漿試料である、請求項10記載の方法。
【請求項17】
バイオマーカーがAluであり、検出が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、かつQuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、SEQ ID NO: 1およびSEQ ID NO: 2に示されるAluの領域に従って設計される、請求項10記載の方法。
【請求項18】
バイオマーカーがAluであり、検出が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、QuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、キャプチャーエクステンダーとラベルエクステンダーとを含み、キャプチャーエクステンダーがSEQ ID NO: 7、8、9、10、および11から選択され、かつラベルエクステンダーがSEQ ID NO: 32、33、34、および35から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項19】
バイオマーカーがAluであり、検出が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、QuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、キャプチャーエクステンダーとラベルエクステンダーとを含み、キャプチャーエクステンダーがSEQ ID NO: 12、13、14、15、16、17、18、および19から選択され、かつラベルエクステンダーがSEQ ID NO: 36、37、38、39、40、41、42、43、および44から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項20】
バイオマーカーがAluであり、検出が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、QuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、キャプチャーエクステンダーとラベルエクステンダーとを含み、キャプチャーエクステンダーがSEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、および19から選択され、かつラベルエクステンダーがSEQ ID NO: 32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、および44から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項21】
バイオマーカーがAluであり、検出が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、かつQuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、キャプチャーエクステンダー、ラベルエクステンダー、およびブロッキングラベルを含む、請求項10記載の方法。
【請求項22】
バイオマーカーが18SリボソームRNAであり、検出が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、かつQuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、SEQ ID NO: 3に示される18SリボソームRNAのプローブ設計領域に従って設計される、請求項10記載の方法。
【請求項23】
バイオマーカーが18SリボソームRNAであり、検出が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、かつQuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、キャプチャーエクステンダーとラベルエクステンダーとを含み、キャプチャーエクステンダーがSEQ ID NO: 20、21、22、23、24、および25から選択され、かつラベルエクステンダーがSEQ ID NO: 45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、および56から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項24】
バイオマーカーが28SリボソームRNAであり、検出が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、かつQuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、SEQ ID NO: 4に示される28SリボソームRNAのプローブ設計領域に従って設計される、請求項10記載の方法。
【請求項25】
バイオマーカーが28SリボソームRNAであり、検出が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、かつQuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、キャプチャーエクステンダーとラベルエクステンダーとを含み、キャプチャーエクステンダーがSEQ ID NO: 26、27、28、29、30、および31から選択され、かつラベルエクステンダーがSEQ ID NO: 57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、および68から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項26】
被験対象の生体試料中の一般的な血中遊離バイオマーカーのプロファイルを決定する工程を含む、被験対象における病態生理学的傷害に関連する細胞損傷を検出する方法であって、該プロファイルが、癌、放射線照射、自己免疫疾患、感染症、および心筋梗塞からなる起こりうる病態生理学的傷害の群のうちで、被験対象における特定の病態生理学的傷害に関連する細胞損傷の指標となる、方法。
【請求項27】
プロファイルが、濃度、タイムライン、増加速度、ベースラインへの消散速度、ピークレベル、異なる一般的マーカーの示差的発現、および異なる一般的マーカーの示差的発現の時間依存的変化から選択される少なくとも1つの特徴を含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
バイオマーカーがAlu、18S/28S、およびテロメアから選択される、請求項26記載の方法。
【請求項29】
プロファイルの決定が核酸増幅を伴わない、請求項26記載の方法。
【請求項30】
決定が、QuantiGene(登録商標)法を用いて行われる、請求項26記載の方法。1つの態様において、検出方法は、リアルタイムPCR、定量的PCR、蛍光PCR、RT-MSP(RT-メチル化特異的ポリメラーゼ連鎖反応)、DNAのPicoGreen(商標)(Molecular Probes, Eugene, OR)検出、ラジオイムノアッセイ、およびDNAの直接放射標識等でありうるが、これらに限定されない。
【請求項31】
生体試料が、血液試料、血清試料、または血漿試料である、請求項26記載の方法。
【請求項32】
バイオマーカーがAluであり、決定が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、かつQuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、SEQ ID NO: 1およびSEQ ID NO: 2に示されるAluのプローブ設計領域に従って設計される、請求項26記載の方法。
【請求項33】
バイオマーカーがAluであり、検出が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、QuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、キャプチャーエクステンダーとラベルエクステンダーとを含み、キャプチャーエクステンダーがSEQ ID NO: 7、8、9、10、および11から選択され、かつラベルエクステンダーがSEQ ID NO: 32、33、34、および35から選択される、請求項26記載の方法。
【請求項34】
バイオマーカーがAluであり、検出が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、QuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、キャプチャーエクステンダーとラベルエクステンダーとを含み、キャプチャーエクステンダーがSEQ ID NO: 12、13、14、15、16、17、18、および19から選択され、かつラベルエクステンダーがSEQ ID NO: 36、37、38、39、40、41、42、43、および44から選択される、請求項26記載の方法。
【請求項35】
バイオマーカーがAluであり、決定が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、QuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、キャプチャーエクステンダーとラベルエクステンダーとを含み、キャプチャーエクステンダーがSEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、および19から選択され、かつラベルエクステンダーがSEQ ID NO: 32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、および44から選択される、請求項26記載の方法。
【請求項36】
バイオマーカーがAluであり、決定が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、かつQuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、キャプチャーエクステンダー、ラベルエクステンダー、およびブロッキングラベルを含む、請求項26記載の方法。
【請求項37】
バイオマーカーが18SリボソームRNAであり、検出が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、かつQuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、SEQ ID NO: 3に示される18SリボソームRNAのプローブ設計領域に従って設計される、請求項26記載の方法。
【請求項38】
バイオマーカーが18SリボソームRNAであり、検出が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、QuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、キャプチャーエクステンダーとラベルエクステンダーとを含み、キャプチャーエクステンダーがSEQ ID NO: 20、21、22、23、24、および25から選択され、かつラベルエクステンダーがSEQ ID NO: 45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、および56から選択される、請求項26記載の方法。
【請求項39】
バイオマーカーが28SリボソームRNAであり、検出が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、かつQuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、SEQ ID NO: 4に示される28SリボソームRNAのプローブ設計領域に従って設計される、請求項26記載の方法。
【請求項40】
バイオマーカーが28SリボソームRNAであり、検出が、QuantiGene(登録商標)を用いて行われ、QuantiGene(登録商標)検出のためのプローブセットが、キャプチャーエクステンダーとラベルエクステンダーとを含み、キャプチャーエクステンダーがSEQ ID NO: 26、27、28、29、30、および31から選択され、かつラベルエクステンダーがSEQ ID NO: 57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、および68から選択される、請求項26記載の方法。
【請求項41】
QuantiGene(登録商標)法を用いてAluバイオマーカーを検出するために有用なプローブセットを含むキットであって、プローブセットがSEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、および19から選択されるキャプチャーエクステンダーを含み、かつラベルエクステンダーがSEQ ID NO: 32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、および44から選択される、キット。
【請求項42】
プローブセットが、SEQ ID NO: 7、8、9、10、および11から選択されるキャプチャーエクステンダーを含み、かつラベルエクステンダーがSEQ ID NO: 32、33、34、および35から選択される、請求項41記載のキット。
【請求項43】
プローブセットが、SEQ ID NO: 12、13、14、15、16、17、18、および19から選択されるキャプチャーエクステンダーを含み、かつラベルエクステンダーがSEQ ID NO: 36、37、38、39、40、41、42、43、および44から選択される、請求項41記載のキット。
【請求項44】
SEQ ID NO: 69、70、および71の配列を有するブロッキングラベルをさらに含む、請求項41記載のキット。
【請求項45】
QuantiGene(登録商標)法を用いて18SリボソームRNAバイオマーカーを検出するために有用なプローブセットを含むキットであって、プローブセットが、SEQ ID NO: 20、21、22、23、24、および25から選択されるキャプチャーエクステンダーを含み、かつラベルエクステンダーがSEQ ID NO: 45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、および56から選択される、キット。
【請求項46】
SEQ ID NO: 72および73の配列を有するブロッキングラベルをさらに含む、請求項45記載のキット。
【請求項47】
QuantiGene(登録商標)法を用いて28SリボソームRNAバイオマーカーを検出するために有用なプローブセットを含むキットであって、プローブセットが、SEQ ID NO: 26、27、28、29、30、および31から選択されるキャプチャーエクステンダーを含み、かつラベルエクステンダーがSEQ ID NO: 57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、および68から選択される、キット。
【請求項48】
SEQ ID NO: 74、75、76、および77の配列を有するブロッキングラベルをさらに含む、請求項47記載のキット。
【請求項49】
細胞損傷が生命を変化させる状況である、請求項1記載の方法。
【請求項50】
生命を変化させる状況が妊娠である、請求項49記載の方法。
【請求項51】
被験対象の生体試料中の一般的な血中遊離バイオマーカーレベルを検出する工程を含む、被験対象における病態生理学的傷害に関連する細胞損傷を検出する方法であって、
検出が、核酸増幅を伴うかまたは伴わず、かつ
一般的な血中遊離バイオマーカーのレベルが、被験対象における病態生理学的傷害に関連する疾患の進行の指標となる、
方法。
【請求項52】
被験対象の生体試料中の一般的な血中遊離バイオマーカーレベルを検出する工程を含む、被験対象における放射線曝露をモニターする方法であって、
検出が、核酸増幅を伴うかまたは伴わず、かつ
一般的な血中遊離バイオマーカーレベルが、放射線療法を受けている被験対象における処置の有効性の指標となる、
方法。
【請求項53】
放射線療法を受けている被験対象が、癌患者または骨髄移植患者である、請求項52記載の方法。
【請求項54】
一般的な血中遊離バイオマーカーレベルが放射線曝露量の指標となる、請求項52記載の方法。
【請求項55】
一般的な血中遊離バイオマーカーレベルが、放射線曝露後のトリアージおよび処置を導くために用いられる、請求項54記載の方法。
【請求項56】
被験対象の生体試料中の一般的な血中遊離バイオマーカーレベルを検出する工程を含む、被験対象における急性心筋梗塞の処置転帰をモニターする方法であって、
検出が、核酸増幅を伴うかまたは伴わず、かつ
一般的な血中遊離バイオマーカーレベルが、冠動脈インターベンションの有効性の指標となる、
方法。
【請求項57】
冠動脈インターベンションが、経皮的心臓インターベンション(PCI)、血管形成術、経皮経管冠動脈形成術(PTCA)、バルーン血管形成術、および冠動脈バイパス手術から選択される、請求項54記載の方法。
【請求項58】
被験対象の生体試料中の一般的な血中遊離バイオマーカーレベルを検出する工程を含む、被験対象における腫瘍の進行をモニターする方法であって、
検出が、核酸増幅を伴うかまたは伴わず、かつ
一般的な血中遊離バイオマーカーレベルが、腫瘍成長の進行の指標となる、
方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2012−518435(P2012−518435A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552085(P2011−552085)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/025114
【国際公開番号】WO2010/099127
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(511206386)ダイアカルタ リミテッド ライアビリティ カンパニー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/025114
【国際公開番号】WO2010/099127
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(511206386)ダイアカルタ リミテッド ライアビリティ カンパニー (1)
【Fターム(参考)】
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