説明

血圧情報測定装置および血圧情報測定装置用カフの装着状態判別方法

【課題】誤装着を認識することができ、これにより正しく脈波測定が行なえるように構成された血圧情報測定装置を提供する。
【解決手段】血圧情報測定装置1Aは、上腕の所定位置に巻き付けられるべき脈波測定用空気袋23と、上腕の上記所定位置よりも末梢側の部分を含む位置に巻き付けられるべき血圧値測定用空気袋24と、脈波測定用空気袋23の内圧を検出する圧力センサ33Aと、血圧値測定用空気袋24の内圧を検出する圧力センサ33Bと、制御手段としてのCPU40と、誤装着を報知する表示部42およびブザー44とを備える。CPU40は、圧力センサ33Aにて検出された圧力情報および圧力センサ33Bにて検出された圧力情報に基づいて、上腕の上記所定位置よりも末梢側の部分を含む位置に血圧値測定用空気袋24が巻き付けられていないと判断した場合に、表示部42およびブザー44を用いてこれを被験者等に報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体袋が設けられたカフを身体に装着して血圧情報を取得する血圧情報測定装置に関し、特に、血圧情報として脈波を取得することが可能に構成された血圧情報測定装置に関する。
【0002】
また、本発明は、上記血圧情報測定装置に具備されるカフの被装着部位への装着状態を判別するするための装着状態判別方法に関する。
【背景技術】
【0003】
被験者の血圧情報を取得することは、被験者の健康状態を知る上で非常に重要なことである。近年においては、従来から健康管理の代表的な指標として広くその有用性が認められている収縮期血圧値(以下、最高血圧)、拡張期血圧値(以下、最低血圧)等を取得することに限られず、被験者の脈波を取得することによって心臓負荷や動脈硬化度等を捉える試みがなされている。血圧情報測定装置は、取得した血圧情報に基づいてこれら健康管理のための指標を得るための装置であり、循環器系の疾患の早期発見や予防、治療等の分野においてさらなる活用が期待されている。なお、血圧情報には、収縮期血圧値、拡張期血圧値、平均血圧値、脈波、脈拍、動脈硬化度を示す各種指標等、循環器系の種々の情報が広く含まれる。
【0004】
一般に、血圧情報の測定には、カフが利用される。ここで、カフとは、内腔を有する流体袋を含む帯状または環状の構造物であって身体の一部に巻き付けが可能なものを意味し、気体や液体等の流体を上記内腔に注入することによって流体袋を膨張・収縮させて血圧情報の測定に利用されるもののことを指す。なお、特に腕に巻き付けられて使用されるカフは、腕帯あるいはマンシェットとも呼ばれる。
【0005】
従来、動脈硬化度を示す指標を取得することが可能に構成された血圧情報測定装置として、心臓から駆出された脈波の伝搬速度(以下、PWV:Pulse Wave Velocity)が動脈硬化が進行するほどに速くなることを利用し、測定したPWVに基づいて動脈硬化度を示す指標を取得するものが知られている。
【0006】
その一つに、四肢および頸部等から選択される2箇所以上の被測定部位にカフやセンサを装着し、装着したカフやセンサにて同時に脈波を取得し、取得された脈波の出現時間差と、被測定部位間の動脈長さとに基づいてPWVが測定され、測定されたPWVに基づいて動脈硬化度を示す指標を取得するように構成された血圧情報測定装置が知られている。
【0007】
上述した血圧情報測定装置において測定されるPWVとしては、代表的なものとして、baPWV(brachial-ankle Pulse Wave Velocity)と、cfPWV(carotid-femoral Pulse Wave Velocity)とがある。baPWVは、被測定部位として上腕および足首が選択されることで測定されたPWVであり、当該baPWVに基づいて動脈硬化度を示す指標を取得することが可能に構成された血圧情報測定装置としては、たとえば特開2000−316821号公報(特許文献1)に開示のものがある。また、cfPWVは、被測定部位として頸部および大腿部が選択されることで測定されたPWVである。
【0008】
しかしながら、上述した如くのbaPWVやcfPWVを測定してこれらに基づいて動脈硬化度を示す指標を取得する血圧情報測定装置にあっては、身体の複数の部位にカフやセンサを装着してPWVの測定を行なうことが必要であるため、装置が比較的大型になってしまうといった問題や、装置構成が比較的複雑になってしまうといった問題がある。そのため、これら血圧情報測定装置は、医療機関等において使用することはできても、一般家庭において使用できるものとは言い難いのが現状である。
【0009】
そのため、装置を小型に構成することが可能となるように、上腕の異なる位置にそれぞれカフを装着してPWVを測定し、測定したPWVに基づいて動脈硬化度を示す指標を取得するように構成された血圧情報測定装置が、特開2004−113593号公報(特許文献2)に開示されている。
【0010】
当該特許文献2に開示の血圧情報測定装置にあっては、上腕の異なる位置にカフをそれぞれ装着し、末梢側に装着されたカフに阻血用空気袋を内包させ、中枢側に装着されたカフに脈波測定用空気袋を内包させ、阻血用空気袋を用いて動脈を阻血した状態において脈波測定用空気袋を用いて脈波を検出し、検出した脈波に含まれる駆出波成分のピーク値と反射波成分のピーク値とが出現する時間差と、当該カフが装着された上腕の異なる位置の間の動脈長さとに基づいてPWVを測定し、測定されたPWVに基づいて動脈硬化度を示す指標が取得されるように構成されている。ここで、駆出波とは、脈波測定用空気袋が装着された部分の動脈に中枢側から伝播される脈波のことであり、反射波とは、上記駆出波が上記阻血用空気袋が装着された部分において反射して脈波測定用空気袋が装着された部分の動脈に末梢側から伝播される脈波のことである。
【0011】
しかしながら、上述した特許文献2に開示の血圧情報測定装置にあっても、依然として2つのカフの装着が必要となるため、十分な小型化が図られているとまでは言えず、一般家庭において使用するには、なお小型化が必要である。
【0012】
そこで、一般家庭においても使用できるように、単一のカフを上腕に装着してPWVを測定し、測定したPWVに基づいて動脈硬化度を示す指標を取得するように構成された血圧情報測定装置が、特開2007−044362号公報(特許文献3)に開示されている。
【0013】
当該特許文献3に開示の血圧情報測定装置にあっては、上腕に巻き付けられるカフに、1つの大容量の血圧値測定用空気袋と2つの小容量の脈波測定用空気袋とを内包させ、装着状態において一方の脈波測定用空気袋が血圧値測定用空気袋よりも中枢側に配置されるようにするとともに他方の脈波測定用空気袋が血圧値測定用空気袋よりも末梢側に配置されるようにし、血圧値測定用空気袋を用いて血圧値を測定するとともに、2つの脈波測定用空気袋を用いて検出される脈波の出現時間差と、これら2つの脈波測定用空気袋の間の距離とに基づいてPWVを測定し、測定されたPWVに基づいて動脈硬化度を示す指標が取得されるように構成されている。
【0014】
しかしながら、上述した特許文献3に開示の血圧情報測定装置にあっては、カフの被装着部位に含まれる動脈を阻血することなく上記2つの脈波測定用空気袋を用いて脈波を検出する構成であるため、検出される脈波に被装着部位よりも末梢側に位置する動脈からの反射波が重畳してしまうことになり、反射波を適切に分離することが困難となってPWVの測定精度が大幅に低下してしまう問題がある。そのため、上記特許文献3に開示の如くの血圧情報測定装置とした場合には、取得される動脈硬化度を示す指標の精度を高めることが困難になってしまう。
【0015】
以上において述べたすべての問題を解決し、一般家庭においても使用が可能な程度に装置の小型化が図られ、かつ高精度にPWVを測定することができ、その結果高い精度で動脈硬化度を示す指標の取得が可能に構成された血圧情報測定装置として、たとえば特開2009−284965号公報(特許文献4)や特開2009−284966号公報(特許文献5)に開示のものがある。
【0016】
上記特許文献4および5に開示の血圧情報測定装置にあっては、単一のカフが上腕に装着され、当該カフに1つの大容量の血圧値測定用空気袋と1つの小容量の脈波測定用空気袋とが内包され、装着状態において脈波測定用空気袋が被装着部位の中枢側に配置されるようにするとともに血圧値測定用空気袋が被装着部位の末梢側に配置されるようにし、血圧値測定用空気袋にて血圧値を測定するとともに、当該血圧値測定用空気袋を用いて動脈を阻血した状態を維持して脈波測定用空気袋を用いて脈波を検出し、検出した脈波に含まれる駆出波成分のピーク値と反射波成分のピーク値とが出現する時間差と、心臓(より具体的には鎖骨下動脈分岐部)から腸骨動脈分岐部までの間の動脈長さとに基づいてPWVを測定し、測定されたPWVに基づいて動脈硬化度を示す指標が取得されるように構成されている。ここで、駆出波とは、心臓から脈波測定用空気袋が装着された部分の動脈に直接伝播される脈波のことであり、反射波とは、上記駆出波が腸骨動脈分岐部において反射して脈波測定用空気袋が装着された部分の動脈に伝播される脈波のことである。
【0017】
当該特許文献4および5に開示の血圧情報測定装置にあっては、単一のカフが上腕に装着され、かつ当該単一のカフに1つの血圧値測定用空気袋と1つの脈波測定用空気袋が内包される構成であるため、装置を従来に比して小型化することができ、また血圧値測定用空気袋を動脈を阻血するためのカフとしても利用する構成であるため、末梢側を阻血した状態で脈波の測定を行なうことができ、検出される脈波に被装着部位よりも末梢側に位置する動脈からの反射波が重畳するおそれもなく、高精度にPWVを測定することが可能になる。また、上記特許文献4および5に開示の血圧情報測定装置にあっては、血圧値測定用空気袋と脈波測定用空気袋とを同時にまたは選択的に単一の加圧ポンプを用いて加圧する構成とすることも可能であり、そのように構成すればさらなる装置の小型化および装置構成の簡素化が図られることにもなる。
【0018】
したがって、上記特許文献4および5に開示の如くの血圧情報測定装置とすれば、一般家庭においても使用が可能な程度に装置の小型化および装置構成の簡素化が図られ、かつ高精度にPWVを測定することができ、その結果高い精度で動脈硬化度を示す指標の取得が可能に構成された血圧情報測定装置とすることができる。
【0019】
なお、上記特許文献4および5には、上述したPWVに基づいて動脈硬化度を示す指標を取得する以外にも、検出した脈波に含まれる駆出波成分の振幅と反射波成分の振幅との差や比に基づいて動脈硬化度を示す指標を取得することができることが記載されている。
【0020】
また、上記特許文献4および5に加え、特開2004−195071号公報(特許文献6)や特表2007−522857号公報(特許文献7)には、動脈を圧迫する際の圧迫力が異なる場合に検出される脈波の形状に相違が生じることから、脈波を検出する際に動脈に与えられる圧迫力を最高血圧よりも高い圧力とし、当該状態で検出された脈波に基づいて各種の脈波解析を行なうことが好ましいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2000−316821号公報
【特許文献2】特開2004−113593号公報
【特許文献3】特開2007−044362号公報
【特許文献4】特開2009−284965号公報
【特許文献5】特開2009−284966号公報
【特許文献6】特開2004−195071号公報
【特許文献7】特表2007−522857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしながら、上述した特許文献4および5に開示される如くの血圧情報測定装置とした場合にも、カフの向きを誤って装着した場合(すなわち、被装着部位の末梢側に脈波測定用空気袋が巻き付けられ、被装着部位の中枢側に血圧値測定用空気袋が装着された場合)には、脈波を正しく取得することができない問題がある。この問題は、脈波測定用空気袋と血圧値測定用空気袋とを別々のカフに具備させた場合にも、これらカフの装着位置を取り違えることで生じ得る。
【0023】
ここで、通常、脈波測定のためには、数十秒から数分程度の測定時間を要する。そのため、上述した如くの誤装着があった場合には、正しく脈波が測定できていないにも拘らず、測定動作中において阻血状態が維持されることになってしまい、被験者に苦痛を与えてしまうことになる。
【0024】
したがって、本発明は、上述した問題を解決すべくなされたものであり、誤装着を認識することができ、これにより正しく脈波測定が行なえるように構成された血圧情報測定装置を提供することを目的とする。
【0025】
また、本発明は、上記血圧情報測定装置に具備されるカフが正しく被装着部位に装着されているか否かを判別することを可能にする血圧情報測定装置用カフの装着状態判別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明に基づく血圧情報測定装置は、第1流体袋と、第2流体袋と、第1圧力検出手段と、第2圧力検出手段と、加減圧手段と、制御手段と、脈波取得手段と、判断手段とを備える。上記第1流体袋は、四肢のうちから選択されたいずれかの肢体の所定位置に巻き付けられるべきものである。上記第2流体袋は、上記選択された肢体の上記所定位置よりも末梢側の部分を含む位置に巻き付けられるべきものである。上記第1圧力検出手段は、上記第1流体袋の内圧を検出する。上記第2圧力検出手段は、上記第2流体袋の内圧を検出する。上記加減圧手段は、上記第1流体袋および上記第2流体袋を加減圧する。上記制御手段は、上記加減圧手段の駆動を制御する。上記脈波取得手段は、上記第1圧力検出手段にて検出された圧力情報に基づいて脈波を取得する。上記判断手段は、上記第1圧力検出手段にて検出された圧力情報および上記第2圧力検出手段にて検出された圧力情報に基づいて、上記選択された肢体の上記所定位置よりも末梢側の部分を含む位置に上記第2流体袋が巻き付けられているか否かを判断する。
【0027】
上記本発明に基づく血圧情報測定装置にあっては、上記判断手段が、上記第1流体袋および上記第2流体袋を上記加減圧手段を用いて最高血圧以上に加圧した状態において、上記第1圧力検出手段で検出される上記第1流体袋の内圧変動の振幅を予め定めた値と比較することにより、上記選択された肢体の上記所定位置よりも末梢側の部分を含む位置に上記第2流体袋が巻き付けられているか否かを判断してもよい。
【0028】
上記本発明に基づく血圧情報測定装置にあっては、上記判断手段が、上記第1流体袋および上記第2流体袋を上記加減圧手段を用いて加圧する過程において、上記第1圧力検出手段で検出される上記第1流体袋の内圧変動に含まれる振幅成分の振幅と、上記第2圧力検出手段で検出される上記第2流体袋の内圧変動に含まれる振幅成分の振幅との比を、予め定めた値と比較することにより、上記選択された肢体の上記所定位置よりも末梢側の部分を含む位置に上記第2流体袋が巻き付けられているか否かを判断してもよい。
【0029】
上記本発明に基づく血圧情報測定装置にあっては、上記判断手段が、上記第1流体袋および上記第2流体袋を上記加減圧手段を用いて加圧する過程において、上記第1圧力検出手段で検出される上記第1流体袋の内圧変動と、上記第2圧力検出手段で検出される上記第2流体袋の内圧変動との相互相関を算出し、算出した相互相関を予め定めた値と比較することにより、上記選択された肢体の上記所定位置よりも末梢側の部分を含む位置に上記第2流体袋が巻き付けられているか否かを判断してもよい。
【0030】
上記本発明に基づく血圧情報測定装置にあっては、上記制御手段が、上記判断手段が上記選択された肢体の上記所定位置よりも末梢側の部分を含む位置に上記第2流体袋が巻き付けられていないと判断した場合に、直ちに上記第1流体袋および上記第2流体袋を減圧するように上記加減圧手段の駆動を制御することが好ましい。
【0031】
上記本発明に基づく血圧情報測定装置は、さらに、上記判断手段が上記選択された肢体の上記所定位置よりも末梢側の部分を含む位置に上記第2流体袋が巻き付けられていないと判断した場合に、これを報知する報知手段を備えていることが好ましい。
【0032】
上記本発明に基づく血圧情報測定装置は、さらに、上記第2圧力検出手段にて検出された圧力情報に基づいて血圧値を取得する血圧値取得手段を備えていることが好ましい。
【0033】
上記本発明に基づく血圧情報測定装置にあっては、上記第1流体袋および上記第2流体袋が、単一のカフに設けられていることが好ましい。その場合には、上記カフの装着状態において上記第2流体袋が被装着部位の実質的に全体にわたって巻き付けられるように、上記第2流体袋が上記第1流体袋の外側を覆っていてもよいし、上記カフの装着状態において上記第2流体袋が被装着部位の中枢側を除く部分にのみ巻き付けられるように、上記第2流体袋が上記カフの軸方向に沿って上記第1流体袋と並んで配置されていてもよい。
【0034】
上記本発明に基づく血圧情報測定装置は、さらに、上記脈波取得手段にて取得された脈波に基づいて動脈硬化度を示す指標を算出する指標算出手段を備えていることが好ましい。
【0035】
本発明に基づく血圧情報測定装置用カフの装着状態判別方法は、四肢のうちから選択されたいずれかの肢体の所定位置に巻き付けられるべき第1流体袋と、上記選択された肢体の上記所定位置よりも末梢側の部分を含む位置に巻き付けられるべき第2流体袋とを備えた血圧情報測定装置用カフの装着状態判別方法であって、上記第1流体袋の内圧および上記第2流体袋の内圧をそれぞれ検出するステップと、検出されたこれら圧力情報に基づいて、上記選択された肢体の上記所定位置よりも末梢側の部分を含む位置に前記第2流体袋が巻き付けられているか否かを判断するステップとを備えている。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、誤装着を認識することができ、これにより正しく脈波測定が行なえるように構成された血圧情報測定装置とすることができる。
【0037】
また、本発明によれば、上記血圧情報測定装置に具備されるカフが正しく被装着部位に装着されているか否かを判別することを可能にする血圧情報測定装置用カフの装着状態判別方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態1における血圧情報測定装置の外観構造を示す斜視図である。
【図2】図1に示すカフを外周面側から見た場合の展開図である。
【図3】図1に示すカフを軸方向と直交する平面に沿って切断した場合の断面図である。
【図4】図1に示すカフを軸方向と平行な平面に沿って切断した場合の断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1における血圧情報測定装置の機能ブロックの構成を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1における血圧情報測定装置の測定動作を示すフローチャートである。
【図7】図1に示すカフを正しく上腕に装着した装着状態を示す模式図である。
【図8】本発明の実施の形態1における血圧情報測定装置において、カフを正しく装着した場合の測定動作中における脈波測定用空気袋および血圧値測定用空気袋の圧力変化を示すグラフである。
【図9】本発明の実施の形態1における血圧情報測定装置において、カフを誤装着した場合の測定動作中における脈波測定用空気袋および血圧値測定用空気袋の圧力変化を示すグラフである。
【図10】本発明の実施の形態1に基づいた第1変形例に係る血圧情報測定装置の機能ブロックの構成を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態1に基づいた第2変形例に係る血圧情報測定装置の機能ブロックの構成を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態1に基づいた第3変形例に係る血圧情報測定装置のカフを外周面側から見た場合の展開図である。
【図13】本発明の実施の形態2における血圧情報測定装置の測定動作を示すフローチャートである。
【図14】本発明の実施の形態2における血圧情報測定装置において、カフを正しく装着した場合の測定動作中における脈波測定用空気袋および血圧値測定用空気袋の圧力変化の振幅の変動を示すグラフである。
【図15】本発明の実施の形態2における血圧情報測定装置において、カフを誤装着した場合の測定動作中における脈波測定用空気袋および血圧値測定用空気袋の圧力変化の振幅の変動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態においては、血圧情報測定装置として、最高血圧および最低血圧等の血圧値を取得してこれを表示する機能と、脈波を検出して動脈硬化度を示す指標を取得してこれを表示する機能とを兼ね備えた血圧情報測定装置を例示して説明を行なう。なお、以下に示す各実施の形態においては、同一または相当する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0040】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における血圧情報測定装置の外観構造を示す斜視図であり、図2は、図1に示すカフを外周面側から見た場合の展開図である。また、図3は、図1に示すカフを軸方向と直交する平面に沿って切断した場合の断面図であり、図4は、図1に示すカフを軸方向と平行な平面に沿って切断した場合の断面図である。ここで、図3に示す断面は、後述する脈波測定用空気袋を含まない部分における断面である。まず、これら図1ないし図4を参照して、本実施の形態における血圧情報測定装置1Aの構成について説明する。
【0041】
図1に示すように、本実施の形態における血圧情報測定装置1Aは、本体10と、カフ20と、エア管70とを備えている。本体10は、箱状のケーシング11を有しており、その上面に表示部42および操作部43が設けられている。本体10は、測定時においてテーブル等の載置面に載置されて使用される。カフ20は、被装着部位としての上腕に巻き付けが可能な帯状の形態を有しており、外装体としての外装カバー21によって覆われている。カフ20は、測定時において上腕に巻き付けられることで装着されて使用される。なお、エア管70は、分離されて構成された本体10とカフ20とを接続しており、内部に2つの空気流路を含んだ可撓性を有するマルチチューブにて構成されている。
【0042】
図2ないし図4に示すように、カフ20は、上述した外装カバー21と、第1流体袋としての小容量の脈波測定用空気袋23と、第2流体袋としての大容量の血圧値測定用空気袋24と、湾曲弾性板としてのカーラ26と、振動遮断部材としてのクッション材28とを主として備えている。
【0043】
図1、図3および図4に示すように、外装カバー21は、装着状態において上腕の表面に接触することとなる内側カバー21aと、装着状態において最も外側に位置することとなる外側カバー21bとを重ね合わせてその周縁を接合(たとえば縫合や溶着等)することによって袋状に形成されている。外装カバー21の内部空間には、脈波測定用空気袋23、クッション材28、血圧値測定用空気袋24およびカーラ26がこの順番で内側から順に積層されて収容されている。
【0044】
図1ないし図3に示すように、外装カバー21の長手方向の一方端寄りの外周面および他方端寄りの内周面には、それぞれ面ファスナ29A,29Bが設けられている。ここで、面ファスナ29Aは、たとえばフックファスナからなり、面ファスナ29Bは、たとえばループファスナからなる。これら面ファスナ29A,29Bは、外装カバー21が上腕に巻き付けられて当該外装カバー21の上記一方端寄りの部分と上記他方端寄りの部分とが上腕の表面上において重ね合わされることにより係止する。これにより、カフ20が、上腕に対して固定されて装着されることになる。すなわち、上記面ファスナ29A,29Bは、カフ20を上腕に装着する際の係止部に相当する。
【0045】
外装カバー21のうち、内側カバー21aとしては、脈波測定用空気袋23および血圧値測定用空気袋24の膨張によって上腕に加えられる圧迫力が当該内側カバー21aによって阻害されないように、十分に伸縮性に富んだ部材が好適に利用される。一方、外装カバー21のうち、外側カバー21bとしては、内側カバー21aに比して伸縮性に乏しい部材が利用される。このような観点から、外装カバー21としては、伸縮性の大小を比較的容易に調整することができるポリアミド(PA)、ポリエステル等の合成繊維からなる布地等が利用される。
【0046】
図4に示すように、脈波測定用空気袋23は、好適には樹脂シートを用いて形成された袋状の部材からなり、装着状態において内側に位置することとなる内周部23aと、装着状態において外側に位置することとなる外周部23bと、これら内周部23aおよび外周部23bによって規定される内腔23cとを有している。脈波測定用空気袋23としては、たとえば2枚の樹脂シートを重ね合わせ、その周縁を溶着することによって袋状に形成されたものが利用できる。脈波測定用空気袋23の内腔23cは、上述したエア管70の一方の空気流路を介して後述する加圧ポンプ31Aおよび排気弁32A(図5参照)に接続されており、これら加圧ポンプ31Aおよび排気弁32Aよってその加減圧が行なわれる。なお、上腕に加えられる圧迫力を適正化するために、脈波測定用空気袋23としては、その幅方向の側部に襠が形成されてなるものを使用してもよい。
【0047】
図3および図4に示すように、血圧値測定用空気袋24は、好適には樹脂シートを用いて形成された袋状の部材からなり、装着状態において内側に位置することとなる内周部24aと、装着状態において外側に位置することとなる外周部24bと、これら内周部24aおよび外周部24bによって規定される内腔24cとを有している。血圧値測定用空気袋24としては、たとえば2枚の樹脂シートを重ね合わせ、その周縁を溶着することによって袋状に形成されたものが利用できる。血圧値測定用空気袋24の内腔24cは、上述したエア管70の他方の空気流路を介して後述する加圧ポンプ31Bおよび排気弁32B(図5参照)に接続されており、これら加圧ポンプ31Bおよび排気弁32Bよってその加減圧が行なわれる。なお、上腕に加えられる圧迫力を適正化するために、血圧値測定用空気袋24としては、その幅方向の側部に襠が形成されてなるものを使用してもよい。
【0048】
なお、脈波測定用空気袋23および血圧値測定用空気袋24を構成する樹脂シートの材質としては、伸縮性に富んでおり溶着後において内腔からの漏気がないものであればどのようなものでも利用可能である。このような観点から、樹脂シートの好適な材質としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、軟質塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、ポリアミド(PA)、生ゴム等が挙げられる。
【0049】
図2および図4に示すように、血圧値測定用空気袋24は、カフ20の幅方向において実質的に全体にわたって位置するように配置されている。一方、脈波測定用空気袋23は、カフ20の幅方向における一端部側のみに位置するように配置されている。ここで、脈波測定用空気袋23が配置された側のカフ20の幅方向の上記一端部は、装着状態において中枢側に配置される端部であり、そのため脈波測定用空気袋23は、装着状態において被装着部位である上腕の中枢側のみに巻き付けられることになる。一方、血圧値測定用空気袋24は、装着状態において被装着部位である上腕の中枢側および末梢側を含む全体にわたって巻き付けられることになる。ここで、脈波測定用空気袋23は、装着状態において血圧値測定用空気袋24の内側に位置するように当該血圧値測定用空気袋24に重ね合わせて配置されているため、血圧値測定用空気袋24は、カフ20の幅方向の上記一端部側において脈波測定用空気袋23の外側を覆うことにもなる。
【0050】
脈波測定用空気袋23は、血圧値測定用空気袋24よりも小容量であることが好ましく、より好適には、脈波測定用空気袋23の空気容量は、血圧値測定用空気袋24の空気容量の1/5以下とされる。一例として、脈波測定用空気袋23の大きさは、20mm×200mm程度であり、血圧値測定用空気袋24の大きさは、90mm〜105mm×200mm程度である。
【0051】
図4に示すように、クッション材28は、重ね合わされて配置された脈波測定用空気袋23と血圧値測定用空気袋24との間に配置されている。当該クッション材28は、これら脈波測定用空気袋23および血圧値測定用空気袋24に生じる振動が相互に伝わないようにするためのものであり、たとえばウレタンシート等のスポンジ部材が好適に利用される。このクッション材28の大きさは、脈波測定用空気袋23と同じ大きさかあるいは脈波測定用空気袋23よりも僅かに大きい大きさとされる。
【0052】
図3および図4に示すように、カーラ26は、環状に巻き回されることによって径方向に弾性変形可能に構成された可撓性の部材からなり、周方向の所定位置に軸方向に沿って延びる切れ目を有している。この切れ目により、カーラ26は、外力が加えられることによって径方向に伸縮自在に弾性変形する。すなわち、外力が作用することによってカーラ26は径方向に変形するが、外力の作用がなくなった場合には元の状態へと復元する。これにより、カーラ26は、自身の環状形態を維持することによって上腕に沿うように構成されている。また、血圧値測定用空気袋24は、カーラ26の内周面に図示しない両面テープ等の接着部材を介して接着されて固定されている。このカーラ26は、被験者自身によってカフ20を上腕に装着し易くするためのものであるとともに、カフ20の上腕への装着状態において血圧値測定用空気袋24および脈波測定用空気袋23を上腕側に向けて付勢するためのものである。なお、カーラ26は、十分な弾性力を発現するように、たとえばポリプロピレン(PP)等の樹脂部材にて形成される。
【0053】
図5は、本実施の形態における血圧情報測定装置の機能ブロックの構成を示す図である。次に、この図5を参照して、本実施の形態における血圧情報測定装置1Aの機能ブロックの構成について説明する。
【0054】
図5に示すように、本実施の形態における血圧情報測定装置1Aは、上述した脈波測定用空気袋23、血圧値測定用空気袋24、表示部42および操作部43に加え、第1圧力検出手段としての圧力センサ33A、第2圧力検出手段としての圧力センサ33B、加減圧手段30A,30Bとしての加圧ポンプ31A,31Bおよび排気弁32A,32B、制御手段としてのCPU40、記憶手段としてのメモリ部41、および、ブザー44を主として有している。
【0055】
加減圧手段30Aとしての加圧ポンプ31Aおよび排気弁32Aは、脈波測定用空気袋23を加減圧するためのものである。加圧ポンプ31Aは、CPU40からの指令を受けた加圧ポンプ駆動回路36Aによってその駆動が制御され、脈波測定用空気袋23に圧縮空気を導入することで脈波測定用空気袋23を加圧する。排気弁32Aは、CPU40からの指令を受けた排気弁駆動回路37Aによってその駆動が制御され、閉状態において脈波測定用空気袋23の内圧を維持し、開状態において脈波測定用空気袋23内の空気を排出することで脈波測定用空気袋23を減圧する。
【0056】
圧力センサ33Aは、脈波測定用空気袋23の内圧を検出するためのものである。圧力センサ33Aは、脈波測定用空気袋23の内圧を検出し、検出した内圧に応じた信号を増幅器38Aに対して出力する。増幅器38Aは、圧力センサ33Aから入力された信号を増幅し、増幅後の信号をA/D(Analog/Digital)変換器39Aに対して出力する。A/D変換器39Aは、増幅器38Aから入力された増幅後の信号をアナログ信号からデジタル信号に変換し、変換後のデジタル信号をCPU40に対して出力する。
【0057】
加減圧手段30Bとしての加圧ポンプ31Bおよび排気弁32Bは、血圧値測定用空気袋24を加減圧するためのものである。加圧ポンプ31Bは、CPU40からの指令を受けた加圧ポンプ駆動回路36Bによってその駆動が制御され、血圧値測定用空気袋24に圧縮空気を導入することで血圧値測定用空気袋24を加圧する。排気弁32Bは、CPU40からの指令を受けた排気弁駆動回路37Bによってその駆動が制御され、閉状態において血圧値測定用空気袋24の内圧を維持し、開状態において血圧値測定用空気袋24内の空気を排出することで血圧値測定用空気袋24を減圧する。
【0058】
圧力センサ33Bは、血圧値測定用空気袋24の内圧を検出するためのものである。圧力センサ33Bは、血圧値測定用空気袋24の内圧を検出し、検出した内圧に応じた信号を増幅器38Bに対して出力する。増幅器38Bは、圧力センサ33Bから入力された信号を増幅し、増幅後の信号をA/D変換器39Bに対して出力する。A/D変換器39Bは、増幅器38Bから入力された増幅後の信号をアナログ信号からデジタル信号に変換し、変換後のデジタル信号をCPU40に対して出力する。
【0059】
操作部43は、使用者の操作を受け付けてこれをCPU40に対して出力するためのものであり、たとえば押しボタン等によって構成される。表示部42は、血圧情報測定装置1Aの動作状態を表示したり、測定後においてCPU40から出力される血圧値の測定結果および動脈硬化度を示す指標の測定結果等の情報を表示したりするためのものであり、たとえばLCD(Liquid Crystal Display)にて構成される。また、表示部42は、カフ20が上腕に正しく装着されていない場合に、警告マーク等を表示することでこれを報知する報知手段としても機能する。
【0060】
メモリ部41は、CPU40で実行されるプログラムを記憶したり、上記測定結果等の情報を記憶したりするためのものであり、たとえばRAM(Random-Access Memory)やROM(Read-Only Memory)等によって構成される。ブザー44は、カフ20が上腕に正しく装着されていない場合に、警告音等を発することでこれを報知する報知手段として機能する。
【0061】
CPU40は、血圧情報測定装置1Aの全体の動作を制御するものであり、操作部43およびメモリ部41からの入力を受け付けたり、表示部42およびメモリ部41に対して各種情報を出力したりする。また、CPU40は、圧力センサ33A,33Bにて検出された圧力情報の入力を受け付けたり、加圧ポンプ31A,31Bおよび排気弁32A,32Bを駆動するための信号を生成してこれを出力したりする。
【0062】
また、CPU40は、圧力センサ33Bから入力された圧力の情報に基づいて血圧値を算出して取得する血圧値取得手段として機能するとともに、圧力センサ33Aから入力された圧力情報に基づいて脈波を検出して取得する脈波取得手段として機能する。加えて、CPU40は、取得した脈波に基づいて動脈硬化度を示す指標を算出する指標算出手段としても機能する。
【0063】
ここで、CPU40にて血圧値を算出する具体的な手法については、既知のオシロメトリック方式の血圧値算出手法等が適用できるため、その説明はここでは省略する。また、CPU40にて動脈硬化度を示す指標を算出する具体的な手法としては、得られた脈波波形のTr(traveling time to reflected wave:ΔTpとも表わされる)に基づいて算出する手法、得られた脈波波形のAI(Augmentation Index)に基づいて算出する手法等、既知の手法が適用できるため、その説明はここでは省略する。
【0064】
さらに、CPU40は、圧力センサ33A,33Bから入力された圧力情報に基づいてカフが正しく装着されているか否かを判断する判断手段としても機能する。加えて、CPU40は、カフ20が正しく装着されていない場合に、これを被験者等に対して報知する上述した報知手段としての表示部42およびブザー44の動作を制御する機能も合わせ備えている。
【0065】
図6は、本実施の形態における血圧情報測定装置の測定動作を示すフローチャートである。このフローチャートに示す測定動作を実行するためのプログラムは、図5に示したメモリ部41に予め記憶されているものであり、CPU40がメモリ部41からこのプログラムを読み出して実行することにより当該フローチャートに示す測定動作が実現される。また、図7は、図1に示すカフを正しく上腕に装着した装着状態を示す模式図である。さらに、図8および図9は、本実施の形態における血圧情報測定装置の測定動作中における脈波測定用空気袋および血圧値測定用空気袋の圧力変化を示すグラフであり、図8は、カフが正しく装着された場合を示しており、図9は、カフが誤装着された場合を示している。ここで、図8(A)および図9(A)は、脈波測定用空気袋23の内腔23cの圧力(内圧P1)の経時的な変化を示しており、図8(B)および図9(B)は、血圧値測定用空気袋24の内腔24cの圧力(内圧P2)の経時的な変化を示している。次に、これら図6ないし図9を参照して、本実施の形態における血圧情報測定装置1Aの測定動作、カフ20の装着状態、脈波測定用空気袋23および血圧値測定用空気袋24の測定動作中における圧力変化、本実施の形態における血圧情報測定装置用カフの装着状態判別方法等について説明する。
【0066】
本実施の形態における血圧情報測定装置1Aを使用して各種血圧情報を測定するに際しては、まず、図7に示すように、カフ20を被験者の左手100の上腕101に装着する。なお、図7においては、カフ20が正しく上腕に装着された場合を示しており、この場合には、脈波測定用空気袋23がカフ20の被装着部位の中枢側に位置し、血圧値測定用空気袋24が脈波測定用空気袋23が装着された位置よりも末梢側を含む部分に装着されている。一方、カフ20が誤装着された場合には、脈波測定用空気袋23がカフ20の被装着部位の末梢側に位置し、血圧値測定用空気袋24が脈波測定用空気袋23が装着された位置よりも末梢側を含む部分に装着されない(すなわち、血圧値測定用空気袋24が脈波測定用空気袋23が装着された位置よりも中枢側を含む部分に装着される)ことになる。
【0067】
次に、本体10の操作部43を被験者等が操作することにより、血圧情報測定装置1Aが測定動作を開始する。
【0068】
図6に示すように、測定動作の開始の指令をCPU40が受け付けると、CPU40は、各部の初期化を行なう(ステップS101)。具体的には、CPU40は、排気弁32Aおよび排気弁32Bを閉塞する。
【0069】
次に、CPU40は、加圧ポンプ31Bを駆動することにより、血圧値測定用空気袋24の加圧を開始する(ステップS102)。これにより、図8(B)に示すように、血圧値測定用空気袋24の内圧P2は、加圧ポンプ31Bを駆動させた時刻t1において上昇を始めることになる。なお、図8(A)に示すように、当該時刻t1の経過後においても、脈波測定用空気袋23の内圧P1は変化しない。この血圧値測定用空気袋24の加圧過程において、CPU40は、最高血圧(SYS)および最低血圧(DIA)等の血圧値を算出するための圧力情報を取得する。具体的には、CPU40は、圧力センサ33Bから入力される圧力信号に基づいて当該圧力情報を取得する。
【0070】
次に、図6に示すように、CPU40は、血圧値の測定が終了したか否かを判断し(ステップS103)、血圧値の測定が終了したと判断した場合(ステップS103においてYESの場合)に、脈波測定用空気袋23の加圧を開始する(ステップS104)。具体的には、CPU40は、加圧ポンプ31Bの駆動を停止し、加圧ポンプ31Aを駆動する。これにより、図8(B)に示すように、脈波測定用空気袋23の内圧P1は、加圧ポンプ31Aを駆動させた時刻t2において上昇を始める。なお、図8(B)に示すように、血圧値測定用空気袋24の内圧P2は、時刻t2以降においても最高血圧よりも高い圧力に維持されているため、当該血圧値測定用空気袋24が巻き付けられた上腕の被装着部位において動脈が阻血された状態が維持されることになる。
【0071】
次に、図6に示すように、CPU40は、脈波測定用空気袋23の加圧が終了したか否かを判断し(ステップS105)、加圧が終了したと判断した場合(ステップS105においてYESの場合)に、脈波の測定を開始する(ステップS106)。具体的には、CPU40は、圧力センサ33Aから入力される圧力信号に基づいて脈波測定用空気袋23の内圧P1が最高血圧よりも高い圧力になった場合に当該脈波測定用空気袋23の加圧を完了し、加圧ポンプ31Aの駆動を停止する。これにより、図8(A)および図8(B)に示すように、脈波測定用空気袋23の内圧P1および血圧値測定用空気袋24の内圧P2は、加圧ポンプ31Aの駆動を停止した時刻t3においてそれぞれ最高血圧よりも高い圧力に維持され、当該時刻t3以降において、阻血された動脈の中枢側端部に隣接する部分の動脈から皮下組織を介して伝播された脈波が、小容量の脈波測定用空気袋23において鋭敏に観察されるようになる。この時刻t3以降において、CPU40は、圧力センサ33Aから入力される圧力情報に基づいて脈波を取得する。
【0072】
次に、図6に示すように、CPU40は、所定時間経過後(たとえば数秒〜十数秒程度経過後、すなわち図8および図9に示す時刻t4)、圧力センサ33Aから入力される圧力情報に基づいて脈波測定用空気袋23の内圧P1の変動の振幅を予め定めた値と比較する(ステップS107)。より詳細には、たとえば図6に示すように、CPU40は、当該振幅が予め定めた所定値以上であるか否かを判断する。ここで、圧力センサ33Aから入力される圧力情報に基づいて脈波測定用空気袋23の内圧P1の変動の振幅が予め定めた所定値以上であるか否かを判断する上記ステップS107は、脈波測定用空気袋23がカフ20の被装着部位の中枢側に位置し、血圧値測定用空気袋24が脈波測定用空気袋23が装着された位置よりも末梢側を含む部分に装着されているか否か(すなわち、カフ20が正しく上腕に装着されているか否か)を判断するステップに相当する。なお、上記判断ステップにおいては、血圧値測定用空気袋24の内圧P2が最高血圧よりも高い圧力に維持されていることが前提条件として必要であり、CPU40は、当該前提条件が充足されているかを圧力センサ33Bから入力される圧力情報に基づいて監視する。
【0073】
これは、カフ20が正しく上腕に装着されている場合には、血圧値測定用空気袋24によって阻血された動脈の中枢側端部近傍に脈波測定用空気袋23が位置していることになり、脈波が、阻血された動脈の中枢側端部に隣接する部分の動脈から皮下組織を介して脈波測定用空気袋23に伝播されて、脈波測定用空気袋23の内圧P1の変動として感度よく観察され(図8(A)に示す時刻t3から時刻t4までの区間参照)、その結果、当該内圧P1の振幅が脈波測定に適した大きな振幅を有するものとなるためである。
【0074】
これに対し、カフ20が誤装着されている場合には、血圧値測定用空気袋24によって阻血された動脈の末梢側端部近傍に脈波測定用空気袋23が位置していることになり、当該脈波測定用空気袋23が位置する部分近傍の動脈にて脈波が生じず、そのため脈波測定用空気袋23の内圧P1の変動として脈波が感度よく観察されず(図9(A)に示す時刻t3から時刻t4までの区間参照)、その結果、当該内圧P1の振幅が脈波測定に適した大きな振幅を有するものとはならないためである。
【0075】
図6に示すように、上記内圧P1の変動の振幅が予め定めた所定値以上であると判断した場合(ステップS107においてYESの場合)には、CPU40は、脈波の測定を継続して行なう。その後、CPU40は、脈波の測定が終了したか否かを判断し(ステップS108)、脈波の測定が終了したと判断した場合(ステップS108においてYESの場合)に、血圧値の算出および脈波解析を行なう(ステップS109)。具体的には、CPU40は、取得した上記圧力情報および上記脈波に基づいて、最高血圧(SYS)、最低血圧(DIA)および動脈硬化度を示す指標をそれぞれ算出する。
【0076】
次に、CPU40は、結果の表示を行なう(ステップS110)。具体的には、CPU40は、算出した最高血圧、最低血圧および動脈硬化度を示す指標をメモリ部41および表示部42に対して出力し、メモリ部41はこれを記憶し、表示部42はこれに基づいて測定結果を表示する。
【0077】
次に、CPU40は、停止動作に移行する(ステップS111)。具体的には、CPU40は、排気弁32Aおよび排気弁32Bを開放する。これにより、図8(A)および図8(B)に示すように、脈波測定用空気袋23の内圧P1および血圧値測定用空気袋24の内圧P2は、排気弁32Bを開放した時刻t5においてそれぞれ下降を始め、大気圧に復帰する。当該動作の後、被験者は、カフ20から上腕を引き抜く。以上により、一連の測定動作は終了し、本実施の形態における血圧情報測定装置1Aを使用しての各種血圧情報の測定が完了する。
【0078】
一方、図6に示すように、上記内圧P1の変動の振幅が予め定めた所定値未満であると判断した場合(ステップS107においてNOの場合)には、CPU40は、エラー報知を行なう(ステップS112)。具体的には、CPU40は、表示部42に対して警告マーク等の表示を指令する信号を出力するとともに、ブザー44に対して警告音等の発生を指令する信号を出力する。これに基づき、ブザー44が鳴動することによって警告音等が発せられるとともに、表示部42において警告マーク等が表示されることになり、カフ20が誤装着されていることが被験者等に報知される。なお、エラー報知を行なった後は、CPU40は、直ちに上記ステップS111に移行し、一連の動作を終了する。
【0079】
以上において説明した本実施の形態における血圧情報測定装置1Aとすることにより、また本実施の形態における血圧情報測定装置用カフの装着状態判別方法を採用することにより、カフ20の向きを誤って装着した場合にこれが当該装置よって認識できるようになる。したがって、カフ20が誤装着されていることを被験者等に報知することが可能になり、カフ20が正しく装着されるように促すことができる。また、カフ20が誤装着されている場合に、その後の測定動作を直ちに中止することも可能になり、必要以上に動脈を阻血した状態が維持されることがなくなるため、被験者に苦痛を与えることも回避できる。したがって、本実施の形態の如くの血圧情報測定装置1Aとすることにより、また本実施の形態における血圧情報測定装置用カフの装着状態判別方法を採用することにより、正しく脈波測定が行なえるようになる。
【0080】
図10は、本実施の形態に基づいた第1変形例に係る血圧情報測定装置の機能ブロックの構成を示す図である。次に、この図10を参照して、本変形例に係る血圧情報測定装置1Bについて説明する。
【0081】
図10に示すように、本変形例に係る血圧情報測定装置1Bは、脈波測定用空気袋23および血圧値測定用空気袋24を加減圧する加減圧手段を1つの加減圧手段30Bに共通化させたものである。すなわち、上述した本実施の形態における血圧情報測定装置1Aにあっては、脈波測定用空気袋23を加減圧する加減圧手段30Aとして加圧ポンプ31Aおよび排気弁32Aを設けるとともに、血圧値測定用空気袋24を加減圧する加減圧手段30Bとして加圧ポンプ31Bおよび排気弁32Bを設け、これら加減圧手段30Aおよび加減圧手段30Bをそれぞれ独立してCPU40にて制御するように構成していたが、本変形例に係る血圧情報測定装置1Bにあっては、このうちの加減圧手段30Aを廃止し、代わりに加減圧手段30Bに血圧値測定用空気袋24に加えて脈波測定用空気袋23をも接続し、CPU40にてこの1つの加減圧手段30Bを制御することにより、脈波測定用空気袋23および血圧値測定用空気袋24両方の加減圧を行なうように構成している。
【0082】
具体的には、本変形例に係る血圧情報測定装置1Bにあっては、血圧値測定用空気袋24と加減圧手段30Bとを接続するエア管71に、当該エア管71から分岐する分岐エア管72が設けられ、当該分岐エア管72に脈波測定用空気袋23および圧力センサ33Aが接続されている。また、当該分岐エア管72の所定位置には、2ポート弁50が設けられている。また、本変形例に係る血圧情報測定装置1Bにあっては、上記2ポート弁50の動作を制御する2ポート弁駆動回路51が別途設けられている。
【0083】
ここで、2ポート弁50は、CPU40からの指令を受けた2ポート弁駆動回路51によってその駆動が制御され、開状態においてエア管71と脈波測定用空気袋23とを連通させ、閉状態においてエア管71と脈波測定用空気袋23とを非連通にして脈波測定用空気袋23の内圧を維持する。なお、本変形例に係る血圧情報測定装置1Bにあっては、加減圧手段30Aが廃止されたことに伴い、加圧ポンプ駆動回路36Aおよび排気弁駆動回路37Aも設けられていない。
【0084】
当該血圧情報測定装置1Bにあっては、2ポート弁50を上記開状態に切り換えて脈波測定用空気袋23および血圧値測定用空気袋24の加圧が行なわれ、当該加圧過程において血圧値の測定を行ない、その後2ポート弁50を上記閉状態に切り換えて脈波測定が行なわれる。この脈波測定の際に、上述したカフ20が正しく装着されているか否かの判断が行なわれる。
【0085】
以上において説明した本変形例に係る血圧情報測定装置1Bとした場合には、上述した本実施の形態における血圧情報測定装置1Aとした場合に得られる効果と同様の効果が得られるばかりでなく、装置構成が簡素化でき、これにより低コストにかつ小型に構成できる血圧情報測定装置とすることができる。
【0086】
図11は、本実施の形態に基づいた第2変形例に係る血圧情報測定装置の機能ブロックの構成を示す図である。次に、この図11を参照して、本変形例に係る血圧情報測定装置1Cについて説明する。
【0087】
図11に示すように、本変形例に係る血圧情報測定装置1Cは、上述した第1変形例に係る血圧情報測定装置1Bにおいて分岐エア管72に設けられていた2ポート弁50を、3ポート弁52に変更したものである。その場合、3ポート弁52の配置位置は、エア管71と分岐エア管72の接続点とされる。3ポート弁52は、CPU40からの指令を受けた3ポート弁駆動回路53によってその駆動が制御される。
【0088】
ここで、3ポート弁52は、第1状態において、エア管71の3ポート弁52が設けられた位置よりも加減圧手段30B側の部分と分岐エア管72とのみを接続して加減圧手段30Bと脈波測定用空気袋23とを連通させ、第2状態において、エア管71の3ポート弁52が設けられた位置よりも加減圧手段30B側の部分とエア管71の3ポート弁52が設けられた位置よりも血圧値測定用空気袋24側の部分とのみを接続して加減圧手段30Bと血圧値測定用空気袋24とを連通させて、エア管71と脈波測定用空気袋23とを非連通にして脈波測定用空気袋23の内圧を維持するように構成されてもよい。その場合には、3ポート弁52を上記第2状態に切り換えて血圧測定を行い、血圧測定の終了後において3ポート弁52を上記第1状態に切り換えて加減圧手段30Bを用いて脈波測定用空気袋23の加圧を行い、その後3ポート弁52を上記第2状態に再び切り換えて脈波測定を行なう。この脈波測定の際に、上述したカフ20が正しく装着されているか否かの判断が行なわれる。
【0089】
また、上記に代えて、3ポート弁52は、第1状態において、エア管71の3ポート弁52が設けられた位置よりも血圧値測定用空気袋24側の部分と分岐エア管72とのみを接続して脈波測定用空気袋23と血圧値測定用空気袋24とを連通させ、第2状態において、エア管71の3ポート弁52が設けられた位置よりも加減圧手段30B側の部分とエア管71の3ポート弁52が設けられた位置よりも血圧値測定用空気袋24側の部分とのみを接続して加減圧手段30Bと血圧値測定用空気袋24とを連通させて、エア管71と脈波測定用空気袋23とを非連通にして脈波測定用空気袋23の内圧を維持するように構成されてもよい。その場合には、3ポート弁52を上記第2状態に切り換えて血圧測定を行い、血圧測定の終了後において3ポート弁52を上記第1状態に切り換えて血圧値測定用空気袋24内の空気を脈波測定用空気袋23に移動させて圧平衡を図ることで脈波測定用空気袋23の加圧を行い、その後3ポート弁52を上記第2状態に再び切り換えて脈波測定を行なう。この脈波測定の際に、上述したカフ20が正しく装着されているか否かの判断が行なわれる。
【0090】
以上において説明した本変形例に係る血圧情報測定装置1Cとした場合にも、上述した第1変形例に係る血圧情報測定装置1Bとした場合と同様の効果を得ることができる。
【0091】
図12は、本発明の実施の形態1に基づいた第3変形例に係る血圧情報測定装置のカフを外周面側から見た場合の展開図である。次に、この図12を参照して、本変形例に係る血圧情報測定装置について説明する。
【0092】
図12に示すように、本変形例に係る血圧情報測定装置は、カフ20に内包される脈波測定用空気袋23および血圧値測定用空気袋24の配置位置において、上述した本実施の形態における血圧情報測定装置1Aのそれと相違している。具体的には、本変形例に係る血圧情報測定装置にあっては、脈波測定用空気袋23は、カフ20の幅方向における一端部側のみに位置するように配置されており、血圧値測定用空気袋24は、カフ20の幅方向における他端部側のみに位置するように配置されている。すなわち、脈波測定用空気袋23および血圧値測定用空気袋24は、カフ20の幅方向(装着状態における軸方向に相当)に沿って並んで配置されている。
【0093】
ここで、脈波測定用空気袋23が配置された側のカフ20の幅方向の上記一端部は、装着状態において中枢側に配置される端部であり、そのため脈波測定用空気袋23は、装着状態において被装着部位である上腕の中枢側のみに巻き付けられることになる。一方、血圧値測定用空気袋24が配置された側のカフ20の幅方向の上記他端部は、装着状態において末梢側に配置される端部であり、そのため血圧値測定用空気袋24は、装着状態において被装着部位である上腕の末梢側のみに巻き付けられることになる。
【0094】
これにより、本変形例に係る血圧情報測定装置にあっては、血圧値測定用空気袋24のみならず脈波測定用空気袋23も、装着状態においてその外側に位置することとなるカーラ26に接着固定される。なお、本変形例に係る血圧情報測定装置にあっては、上述した本実施の形態における血圧情報測定装置1Aにおいて具備されていた振動遮断部材としてのクッション材28は不要である。
【0095】
以上において説明した本変形例に係る血圧情報測定装置とした場合にも、上述した本実施の形態における血圧情報測定装置1Aとした場合と同様の効果を得ることができる。
【0096】
(実施の形態2)
図13は、本発明の実施の形態2における血圧情報測定装置の測定動作を示すフローチャートである。また、図14は、本実施の形態における血圧情報測定装置において、カフを正しく装着した場合の測定動作中における脈波測定用空気袋および血圧値測定用空気袋の圧力変化の振幅の変動を示すグラフであり、図15は、誤装着した場合の測定動作中における脈波測定用空気袋および血圧値測定用空気袋の圧力変化の振幅の変動を示すグラフである。ここで、図14(A)および図15(A)は、脈波測定用空気袋23の内腔23cの圧力(内圧P1)の経時的な変化を示しており、図14(B)および図15(B)は、血圧値測定用空気袋24の内腔24cの圧力(内圧P2)の経時的な変化を示している。以下においては、これら図13ないし図15を参照して、本実施の形態における血圧情報測定装置の測定動作、脈波測定用空気袋23および血圧値測定用空気袋24の測定動作中における圧力変化、本実施の形態における血圧情報測定装置用カフの装着状態判別方法等について説明する。
【0097】
本実施の形態における血圧情報測定装置は、上述した本発明の実施の形態1における血圧情報測定装置1Aとその構成において共通しており、測定動作においてのみ異なっている。図13に表したフローチャートに示す測定動作を実行するためのプログラムは、メモリ部41に予め記憶されているものであり、CPU40がメモリ部41からこのプログラムを読み出して実行することにより当該フローチャートに示す測定動作が実現される。なお、上述した本発明の実施の形態1における血圧情報測定装置1Aにおいては、血圧測定が終了した後に脈波測定用空気袋23を加圧するようにその測定動作が制御されていたが、本実施の形態における血圧情報測定装置にあっては、血圧値測定用空気袋24の加圧と同時に脈波測定用空気袋23の加圧が行なわれるようにその測定動作が制御され、かつ当該加圧過程においてカフ20が正しく装着されているか否かの判断を行なう。
【0098】
本実施の形態における血圧情報測定装置を使用して各種血圧情報を測定するに際しては、まず、カフ20を被験者の左手100の上腕101に装着する。次に、本体10の操作部43を被験者等が操作することにより、血圧情報測定装置が測定動作を開始する。
【0099】
図13に示すように、測定動作の開始の指令をCPU40が受け付けると、CPU40は、各部の初期化を行なう(ステップS201)。具体的には、CPU40は、排気弁32Aおよび排気弁32Bを閉塞する。
【0100】
次に、CPU40は、加圧ポンプ31Aおよび加圧ポンプ31Bを駆動することにより、脈波測定用空気袋23および血圧値測定用空気袋24の加圧を開始する(ステップS202)。これにより、図14および図15に示すように、脈波測定用空気袋23の内圧P1および血圧値測定用空気袋24の内圧P2は、加圧ポンプ31Aおよび加圧ポンプ31Bを駆動させた時刻t11においてそれぞれ上昇を始めることになる。
【0101】
次に、図13に示すように、CPU40は、圧力センサ33Aから入力される圧力情報と圧力センサ33Bから入力される圧力情報とに基づいて脈波測定用空気袋23の内圧P1の変動と血圧値測定用空気袋24の内圧P2の変動との相互相関を算出し、算出した相互相関を予め定めた値と比較する(ステップS203)。より詳細には、たとえば図13に示すように、CPU40は、当該相互相関が予め定めた所定値以上であるか否かを判断する。さらに具体的には、図14および図15に示すように、CPU40は、上記ステップS203において、圧力センサ33Aから入力される圧力情報に基づいて脈波測定用空気袋23の内圧P1の振幅成分を抽出してその包絡線A1を取得するとともに、圧力センサ33Bから入力される圧力情報に基づいて血圧値測定用空気袋24の内圧P2の振幅成分を抽出してその包絡線A2を取得し、これら取得した包絡線A1および包絡線A2の相互相関を算出し、算出した相互相関が予め定めた値以上であるか否かを判断する。
【0102】
ここで、圧力センサ33Aおよび圧力センサ33Bから入力される圧力情報に基づいて脈波測定用空気袋23の内圧P1の変動と血圧値測定用空気袋24の内圧P2の変動との相互相関を算出し、算出した相互相関が予め定めた値以上であるか否かを判断する上記ステップS203は、脈波測定用空気袋23がカフ20の被装着部位の中枢側に位置し、血圧値測定用空気袋24が脈波測定用空気袋23が装着された位置よりも末梢側を含む部分に装着されているか否か(すなわち、カフ20が正しく上腕に装着されているか否か)を判断するステップに相当する。
【0103】
これは、カフ20が正しく上腕に装着されている場合には、脈波測定用空気袋23と血圧値測定用空気袋24とが一体となってカフ20が装着された部分の動脈が徐々に阻血されていくため、上記包絡線A1および包絡線A2がほぼ相似形となり高い相互相関が得られるのに対し、カフ20が誤装着されている場合には、脈波測定用空気袋23よりも中枢側に位置する血圧値測定用空気袋24によって先に動脈が阻血されて当該阻血後において脈波測定用空気袋23に脈波が伝播しなくなるため、上記包絡線A1および包絡線A2が非相似形となり低い相互相関しか得られないためである。すなわち、カフ20を誤装着している場合には、図15に示すように、血圧値測定用空気袋24によって動脈が阻血される時刻t12において脈波測定用空気袋23の内圧P1の変動の振幅成分はその上昇率が大きく減衰しはじめ、その後下降に転じ、ほぼ振幅成分がなくなった状態となるため、相互相関が大幅に低下する。したがって、当該相互相関に基づき、カフ20が正しく装着されているか否かを判断することが可能になる。ここで、上述した相互相関の閾値としては、たとえば0.5〜0.8程度の値を採用することが好ましい。
【0104】
なお、上述したステップS203の処理と並行して、CPU40は、この脈波測定用空気袋23および血圧値測定用空気袋24の加圧過程において、最高血圧および最低血圧等の血圧値を算出するための圧力情報を取得する。具体的には、CPU40は、圧力センサ33Bから入力される圧力信号に基づいて当該圧力情報を取得する。
【0105】
図13に示すように、上記算出した相互相関が予め定めた値以上であると判断した場合(ステップS203においてYESの場合)には、CPU40は、血圧値の測定が終了したか否かを判断し(ステップS204)、血圧値の測定が終了したと判断した場合(ステップS204においてYESの場合)に、脈波の測定を開始する(ステップS205)。具体的には、CPU40は、加圧ポンプ31Aおよび加圧ポンプ31Bの駆動を停止し、圧力センサ33Aから入力される圧力情報に基づいて脈波を取得する。当該状態においては、脈波測定用空気袋23の内圧P1および血圧値測定用空気袋24の内圧P2がそれぞれ最高血圧よりも高い圧力に維持されており、阻血された動脈の中枢側端部に隣接する部分の動脈から皮下組織を介して伝播された脈波が、小容量の脈波測定用空気袋23において鋭敏に観察されるようになる。
【0106】
次に、CPU40は、脈波の測定が終了したか否かを判断し(ステップS206)、脈波の測定が終了したと判断した場合(ステップS206においてYESの場合)に、血圧値の算出および脈波解析を行なう(ステップS207)。具体的には、CPU40は、取得した上記圧力情報および上記脈波に基づいて、最高血圧、最低血圧および動脈硬化度を示す指標をそれぞれ算出する。
【0107】
次に、CPU40は、結果の表示を行なう(ステップS208)。具体的には、CPU40は、算出した最高血圧、最低血圧および動脈硬化度を示す指標をメモリ部41および表示部42に対して出力し、メモリ部41はこれを記憶し、表示部42はこれに基づいて測定結果を表示する。
【0108】
次に、CPU40は、停止動作に移行する(ステップS209)。具体的には、CPU40は、排気弁32Aおよび排気弁32Bを開放する。これにより、脈波測定用空気袋23および血圧値測定用空気袋24は、大気圧に復帰する。当該動作の後、被験者は、カフ20から上腕を引き抜く。以上により、一連の測定動作は終了し、本実施の形態における血圧情報測定装置を使用しての各種血圧情報の測定が完了する。
【0109】
一方、上記算出した相互相関が予め定めた値未満であると判断した場合(ステップS203においてNOの場合)には、CPU40は、エラー報知を行なう(ステップS210)。具体的には、CPU40は、表示部42に対して警告マーク等の表示を指令する信号を出力するとともに、ブザー44に対して警告音等の発生を指令する信号を出力する。これに基づき、ブザー44が鳴動することによって警告音等が発せられるとともに、表示部42において警告マーク等が表示されることになり、カフ20が誤装着されていることが被験者等に報知される。なお、エラー報知を行なった後は、CPU40は、直ちに上記ステップS211に移行し、一連の動作を終了する。
【0110】
以上において説明した本実施の形態における血圧情報測定装置とすることにより、また本実施の形態における血圧情報測定装置用カフの装着状態判別方法を採用することにより、上述した本発明の実施の形態1の場合と同様の効果が得られるばかりでなく、誤装着があった場合にさらに迅速に(測定開始からより早期に)これを被験者に報知することが可能になる。したがって、本実施の形態における血圧情報測定装置とすることにより、また本実施の形態における血圧情報測定装置用カフの装着状態判別方法を採用することにより、さらに使い勝手を向上させることができる。
【0111】
なお、以上において説明した本実施の形態における血圧情報測定装置およびこれに具備されるカフの装着状態判別方法にあっては、上記ステップS203において、脈波測定用空気袋23の内圧P1の振幅成分の包絡線A1と、血圧値測定用空気袋24の内圧P2の振幅成分の包絡線A2とを取得して、これらの相互相関を算出することでカフ20が正しく上腕に装着されているか否かを判断することとしていた。しかしながら、これに代えて、上記ステップS203において、脈波測定用空気袋23の内圧P1の振幅成分の振幅と、血圧値測定用空気袋24の内圧P2の振幅成分の振幅との比を算出し、算出した比を予め定めた値と比較することでカフ20が正しく上腕に装着されているか否かを判断することも可能である。そのように構成した場合には、たとえば、当該比が予め定めた値以上であると判断した場合にカフ20が正しく装着されていると判断し、当該比が予め定めた値未満であると判断した場合にカフ20が誤装着されていると判断すればよい。
【0112】
また、上述した本発明の実施の形態1,2およびその変形例においては、脈波測定用空気袋23および血圧値測定用空気袋24が単一のカフに具備されてなる血圧情報測定装置に本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、脈波測定用空気袋23および血圧値測定用空気袋24が別々のカフに具備されてなる血圧情報測定装置に本発明を適用することも当然に可能である。
【0113】
また、上述した本発明の実施の形態1,2およびその変形例においては、本体10とカフ20とが別体にて構成され、これら本体10とカフ20とが可撓性のエア管70等を介して接続された血圧情報測定装置に本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、本体10とカフ20とが別体にて構成され、これらが移動可能に連結された血圧情報測定装置(いわゆる自動巻き付け式の血圧情報測定装置)に本発明を適用することも当然に可能である。
【0114】
また、上述した本発明の実施の形態1,2およびその変形例においては、カフ20の被装着部位として上腕が企図された血圧情報測定装置に本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、身体の四肢のうちから選択されるいずれかの肢体に装着されて使用されることが企図された血圧情報測定装置であれば、どのようなものにも本発明を適用することができる。
【0115】
また、上述した本発明の実施の形態1,2およびその変形例においては、脈波測定用空気袋23および血圧値測定用空気袋24として内部に圧縮空気が注入される空気袋を採用した場合を例示して説明を行なったが、特に空気袋に限定されるものではなく、他の気体が注入される気体袋や液体が注入される液体袋にてこれらを構成することも当然に可能である。
【0116】
また、上述した本発明の実施の形態1,2およびその変形例においては、検出または算出した値が予め定めた閾値以上であるか閾値未満であるかを判断することでカフ20が正しく装着されているか否かを判別するようにした場合を例示したが、特にこの方法に限定されるものではなく、当然に検出または算出した値が予め定めた閾値よりも大きいか閾値以下であるかを判断することでカフ20が正しく装着されているか否かを判別するようにようにしてもよい。
【0117】
さらには、上述した本発明の実施の形態1,2およびその変形例においては、最高血圧、最低血圧および動脈硬化度を示す指標が取得可能な血圧情報測定装置に本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、少なくとも脈波を取得する機能を備えた血圧情報測定装置であれば、上記以外の血圧情報を取得するものであっても本発明を適用することが可能である。
【0118】
このように、今回開示した上記各実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0119】
1A〜1C 血圧情報測定装置、10 本体、11 ケーシング、20 カフ、21 外装カバー、21a 内側カバー、21b 外側カバー、23 脈波測定用空気袋、23a 内周部、23b 外周部、23c 内腔、24 血圧値測定用空気袋、24a 内周部、24b 外周部、24c 内腔、26 カーラ、28 クッション材、29A,29B 面ファスナ、30A,30B 加減圧手段、31A,31B 加圧ポンプ、32A,32B 排気弁、33A,33B 圧力センサ、36A,36B 加圧ポンプ駆動回路、37A,37B 排気弁駆動回路、38A,38B 増幅器、39A,39B A/D変換器、40 CPU、41 メモリ部、42 表示部、43 操作部、44 ブザー、50 2ポート弁、51 2ポート弁駆動回路、52 3ポート弁、53 3ポート弁駆動回路、70,71 エア管、72 分岐エア管、100 左手、101 上腕。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四肢のうちから選択されたいずれかの肢体の所定位置に巻き付けられるべき第1流体袋と、
前記選択された肢体の前記所定位置よりも末梢側の部分を含む位置に巻き付けられるべき第2流体袋と、
前記第1流体袋の内圧を検出する第1圧力検出手段と、
前記第2流体袋の内圧を検出する第2圧力検出手段と、
前記第1流体袋および前記第2流体袋を加減圧する加減圧手段と、
前記加減圧手段の駆動を制御する制御手段と、
前記第1圧力検出手段にて検出された圧力情報に基づいて脈波を取得する脈波取得手段と、
前記第1圧力検出手段にて検出された圧力情報および前記第2圧力検出手段にて検出された圧力情報に基づいて、前記選択された肢体の前記所定位置よりも末梢側の部分を含む位置に前記第2流体袋が巻き付けられているか否かを判断する判断手段とを備えた、血圧情報測定装置。
【請求項2】
前記判断手段は、前記第1流体袋および前記第2流体袋を前記加減圧手段を用いて最高血圧以上に加圧した状態において、前記第1圧力検出手段で検出される前記第1流体袋の内圧変動の振幅を予め定めた値と比較することにより、前記選択された肢体の前記所定位置よりも末梢側の部分を含む位置に前記第2流体袋が巻き付けられているか否かを判断する、請求項1に記載の血圧情報測定装置。
【請求項3】
前記判断手段は、前記第1流体袋および前記第2流体袋を前記加減圧手段を用いて加圧する過程において、前記第1圧力検出手段で検出される前記第1流体袋の内圧変動に含まれる振幅成分の振幅と、前記第2圧力検出手段で検出される前記第2流体袋の内圧変動に含まれる振幅成分の振幅との比を、予め定めた値と比較することにより、前記選択された肢体の前記所定位置よりも末梢側の部分を含む位置に前記第2流体袋が巻き付けられているか否かを判断する、請求項1に記載の血圧情報測定装置。
【請求項4】
前記判断手段は、前記第1流体袋および前記第2流体袋を前記加減圧手段を用いて加圧する過程において、前記第1圧力検出手段で検出される前記第1流体袋の内圧変動と、前記第2圧力検出手段で検出される前記第2流体袋の内圧変動との相互相関を算出し、算出した相互相関を予め定めた値と比較することにより、前記選択された肢体の前記所定位置よりも末梢側の部分を含む位置に前記第2流体袋が巻き付けられているか否かを判断する、請求項1に記載の血圧情報測定装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記判断手段が前記選択された肢体の前記所定位置よりも末梢側の部分を含む位置に前記第2流体袋が巻き付けられていないと判断した場合に、直ちに前記第1流体袋および前記第2流体袋を減圧するように前記加減圧手段の駆動を制御する、請求項1から4のいずれかに記載の血圧情報測定装置。
【請求項6】
前記判断手段が前記選択された肢体の前記所定位置よりも末梢側の部分を含む位置に前記第2流体袋が巻き付けられていないと判断した場合に、これを報知する報知手段をさらに備えた、請求項1から5のいずれかに記載の血圧情報測定装置。
【請求項7】
前記第2圧力検出手段にて検出された圧力情報に基づいて血圧値を取得する血圧値取得手段をさらに備えた、請求項1から6のいずれかに記載の血圧情報測定装置。
【請求項8】
前記第1流体袋および前記第2流体袋が、単一のカフに設けられている、請求項1から7のいずれかに記載の血圧情報測定装置。
【請求項9】
前記カフの装着状態において前記第2流体袋が被装着部位の実質的に全体にわたって巻き付けられるように、前記第2流体袋が前記第1流体袋の外側を覆っている、請求項8に記載の血圧情報測定装置。
【請求項10】
前記カフの装着状態において前記第2流体袋が被装着部位の中枢側を除く部分にのみ巻き付けられるように、前記第2流体袋が前記カフの軸方向に沿って前記第1流体袋と並んで配置されている、請求項8に記載の血圧情報測定装置。
【請求項11】
前記脈波取得手段にて取得された脈波に基づいて動脈硬化度を示す指標を算出する指標算出手段をさらに備えた、請求項1から10のいずれかに記載の血圧情報測定装置。
【請求項12】
四肢のうちから選択されたいずれかの肢体の所定位置に巻き付けられるべき第1流体袋と、前記選択された肢体の前記所定位置よりも末梢側の部分を含む位置に巻き付けられるべき第2流体袋とを備えた血圧情報測定装置用カフの装着状態判別方法であって、
前記第1流体袋の内圧および前記第2流体袋の内圧をそれぞれ検出するステップと、
検出されたこれら圧力情報に基づいて、前記選択された肢体の前記所定位置よりも末梢側の部分を含む位置に前記第2流体袋が巻き付けられているか否かを判断するステップとを備える、血圧情報測定装置用カフの装着状態判別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−177249(P2011−177249A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42775(P2010−42775)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【Fターム(参考)】