血圧計
【課題】被測定者が上腕に腕帯部を装着後に被測定者が開始スイッチを操作しなくても、腕帯部は血圧測定のための加圧動作を自動的に開始することができる血圧計を提供する。
【解決手段】被測定者の上腕Tに装着されて上腕Tを加圧して阻血する阻血用空気袋14を有する腕帯部2と、上腕Tを加圧する際に阻血用空気袋14に空気を送る血圧計本体10を有する血圧計1は、腕帯部2に配置されて上腕Tが腕帯部2に挿入されることを検知して腕装着検知信号TSGを発生する腕装着検知手段700と、腕装着検知手段700から腕装着検知信号TSGを受けると、血圧計本体10側から阻血用空気袋14に空気を送る指示を出して阻血用空気袋14による上腕Tの加圧を開始させる制御部120を備える。
【解決手段】被測定者の上腕Tに装着されて上腕Tを加圧して阻血する阻血用空気袋14を有する腕帯部2と、上腕Tを加圧する際に阻血用空気袋14に空気を送る血圧計本体10を有する血圧計1は、腕帯部2に配置されて上腕Tが腕帯部2に挿入されることを検知して腕装着検知信号TSGを発生する腕装着検知手段700と、腕装着検知手段700から腕装着検知信号TSGを受けると、血圧計本体10側から阻血用空気袋14に空気を送る指示を出して阻血用空気袋14による上腕Tの加圧を開始させる制御部120を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上腕に装着する腕帯部を有する血圧計に関する。特に、腕帯部を上腕に巻きつける必要がない血圧計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療機関で行われている高血圧治療向けの血圧測定において、白衣性高血圧症による擬似高血圧が問題にされている。この擬似高血圧症の原因としては、病院内での医師の前での緊張、不安等の精神面での不安定が考えられている。これに対して、精神的に安定している家庭にて測定した血圧値に注目が集まっている。このため、この家庭での血圧測定に用いる電子血圧計が注目されている。
このタイプの血圧計で測定上問題となるのが、腕帯部の腕への装着の仕方である。腕帯部内の空気袋の位置が上腕に対して適当でない場合や、上腕に対して巻き付け強さが適当でない場合に、腕帯部の空気袋の圧迫が上腕に正しく行われず、血圧が高く測定される場合がある。近年、これを解決するために、筒状の腕帯部に腕を挿入するだけで、自動的に腕帯部の阻血用の空気袋を適切な巻き付け強さにて血圧測定を行うことができるようにした血圧計本体と腕帯部を一体とした電子血圧計が提案されている(特許文献1を参照)。
【0003】
しかし、使用者が上記血圧計を使用すると、腕を挿入する腕帯部が血圧計本体と一体となっているので、血圧計本体の位置が被測定者の前方に離れていた場合には、被測定者は前かがみ状態での測定となり易い。このため、被測定者の腹部が圧迫されて腹圧が上昇し、その結果血圧が上昇する現象が見られる場合がある。この血圧上昇は、新たな擬似高血圧症の発生として指摘されている。
【0004】
そこで、腕帯部が血圧計本体とは別体に形成されているものが提案されており、腕帯部は剛体のケースを有しており、このケース内に阻血用の空気袋が配置されている。これにより、被測定者が座位にて血圧測定する場合に、血圧計本体から腕帯部を分離できるので、上腕を腕帯部に挿入するだけで測定可能となる利便性を損なわず、血圧計本体の設置場所が被測定者から前方に離れていても、測定者が正しく、背を伸ばした状態にて腹圧の掛からない状態で血圧測定をすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005―237427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、被測定者が血圧計の腕帯部を用いて血圧測定を行う場合には、右利きの被測定者は右手で腕帯部を持って左腕に対してこの腕帯部を装着した後、右手を腕帯部から離して右手で血圧計本体の開始スイッチを押すことで血圧測定を開始する。また、左利きの被測定者は左手で腕帯部を持って右腕に対してこの腕帯部を装着した後、左手を腕帯部から離して左手で血圧計本体の開始スイッチを押すことで血圧測定を開始する。被測定者がこの開始スイッチを押すこと自体の操作は簡単ではあるが血圧測定時の1つの手間には違いないので、可能であれば開始スイッチの操作が無くても血圧測定動作ができることが望ましい。特に、被測定者が高齢者の場合には、開始スイッチの操作が無い方が血圧測定動作をスムーズに行える。
【0007】
また、例えば右利きの被測定者が右手で腕帯部を持って左腕にこの腕帯部を装着した後、右手で支持していた腕帯部を放して血圧計本体の開始スイッチを右手で操作すると、せっかく上腕に装着した腕帯部がその腕帯部の自重で上腕から肘側に下がってしまうことがしばしばあり、腕帯部が肘側にかかってしまうと正しい血圧測定ができない場合が生じる。従って、右手で腕帯部を支持している間に、上腕を血圧測定のために腕帯部による加圧動作を開始したい。しかも、特に被測定者の腕が細い場合には、腕帯部が肘側にずり落ちるおそれがあり、正しい血圧測定ができないことがある。
そこで、本発明は、上記課題を解消するために、被測定者が上腕に腕帯部を装着後に被測定者が開始スイッチを操作しなくても、腕帯部は血圧測定のための加圧動作を自動的に開始することができる血圧計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の血圧計は、被測定者の上腕に装着され、阻血用空気袋を有する腕帯部と、前記阻血用空気袋に空気を送る血圧計本体と、を有する血圧計であって、前記腕帯部に配置されて前記上腕に前記腕帯部が装着されることを検知して腕装着検知信号を発生する腕装着検知手段と、前記腕装着検知手段から前記腕装着検知信号を受けると、前記血圧計本体側から前記阻血用空気袋に空気を送る指示を出して前記阻血用空気袋への加圧動作を開始させる制御部と、を備えることを特徴とする。
上記構成によれば、被測定者が上腕に腕帯部を装着すると腕装着検知手段から腕装着検知信号が制御部に送られて、この制御部は阻血用空気袋による上腕の加圧動作を開始させるので、被測定者が開始スイッチを操作しなくても、腕帯部は血圧測定のための加圧動作を自動的に開始することができる。
好ましくは、前記腕装着検知手段は、前記腕帯部が装着される前記上腕の温度を検知する温度センサであることを特徴とする。
上記構成によれば、温度センサを配置するだけで、被測定者が開始スイッチを操作しなくても、腕帯部は血圧測定のための加圧動作を開始することができる。
【0009】
好ましくは、前記腕装着検知手段は、前記腕帯部の肩側寄りの位置ではなく前記腕帯部の肘側寄りの位置に配置されていることを特徴とする。
上記構成によれば、腕帯部の肩側寄りの位置ではなく前記腕帯部の肘側寄りの位置に腕装着検知手段が配置され、この肘側寄りの位置に配置された腕装着検知手段が腕装着検知信号を発生させるので、上腕が腕帯部に完全に装着される時点に対してできるだけ遅らせた時点から阻血用空気袋による上腕の加圧動作を開始させることができる。このため、電池駆動により空気を阻血用空気袋に送るスタートのタイミングを遅らせることができ、電池駆動を用いる場合に節電が図れる。また、腕帯部が装着される途中で、腕が抜かれる動作を想定した場合、腕装着検知手段を肘側寄りに配置することにより、不要な加圧動作の開始を防止できる。
【0010】
好ましくは、前記腕装着検知手段は、前記腕帯部に挿入された前記上腕に光を当てる発光部と、前記発光部から前記光を受光する受光部とからなる感知センサであることを特徴とする。
上記構成によれば、発光部と受光部を配置するだけで、被測定者が開始スイッチを操作しなくても、腕帯部は血圧測定のための加圧動作を開始することができる。
【0011】
好ましくは、前記感知センサは、前記腕帯部の肩側寄りの位置と、前記腕帯部の肘側寄りの位置にそれぞれ配置され、前記制御部に電気的に接続されていることを特徴とする。
上記構成によれば、制御部が、腕帯部の肩側寄りの位置に配置された感知センサが発生する腕装着検知信号と、腕帯部の肘側寄りの位置に配置された感知センサが発生する腕装着検知信号とを比較して、どちらの前記腕装着検知信号が早く発生したのか判定することにより、腕が腕帯部に対して正しい方向に挿入されたのか、あるいは腕が腕帯部に対して誤った方向に挿入されたかを判定して、例えば誤った方向に挿入されている時には警告を発生することができる。
好ましくは、前記腕帯部が、前記血圧計本体から離間されたことを検出して、前記腕装着検知手段を駆動する離間検出手段を備える構成としたことを特徴とする。
上記構成によれば、前記腕装着検知手段を常時駆動する必要はなく、血圧計の使用に先だって、腕帯部を血圧計本体から離したことを、血圧計使用の予備行為と位置付けて、離間検出手段は腕帯部の離間を検出して、その際に初めて腕装着検知手段を駆動すれば、例えば、該腕装着検知手段が電力により駆動される場合に、省電力を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被測定者が上腕に腕帯部を装着後に被測定者が開始スイッチを操作しなくても、腕帯部は血圧測定のための加圧動作を自動的に開始することができる血圧計を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の血圧計の実施形態の全体を示す斜視図である。
【図2】図2(A)は、図1に示す血圧計の血圧計本体を左後ろ側から見た斜視図である。図2(B)は、図1に示す血圧計の血圧計本体を右後ろ側から見た斜視図である。
【図3】図3(A)は、腕帯部の内部構造例を示す断面図であり、図3(B)は、腕帯部を折り畳んだ状態を示す正面図であり、図3(C)は、腕帯部を折り畳んだ状態を示す斜視図である。
【図4】折り畳まれた腕帯部が筐体部の背面側に保持部を用いて着脱可能に収納される様子を示す側面図である。
【図5】血圧計本体の底部を示す図である。
【図6】図6(A)は、蓋体を開けて電池収納部内に4本の電池が収納されている状態を示し、図6(B)は、電池収納部内から4本の電池が取り除かれた状態を示す図である。
【図7】電池収納部の電池収納用凹部と傾斜部の形状例を示す断面図である。
【図8】血圧計本体の筐体部から表示面部を取り外して、筐体部の内部を露出させた状態を示す斜視図である。
【図9】血圧計本体の筐体部から表示面部を取り外して、筐体部の内部を露出させた状態を示す別の角度から見た斜視図である。
【図10】筐体部の図6に示す底部を取り除き筐体部内を示す図である。
【図11】2つの駆動ポンプと、制御バルブと排気バルブと、接続配管系と、その他の要素を示す図である。
【図12】腕帯部の阻血用空気袋と、K音信号を検出する2つのK音検出用空気袋と、コンデンサマイクロフォン等と、接続配管系の接続関係を示す図である。
【図13】被測定者が腕帯部に上腕Tを通して、阻血用空気袋にエアを供給して上腕Tを加圧して血圧測定をしている例を示す図である。
【図14】図1に示す血圧計のブロック構成図である。
【図15】本発明の実施形態を適用しない場合に、腕帯部が肩側から肘側にずり落ちる様子を説明する図である。
【図16】比較して説明するために、通常用いられている腕帯部の例と、この通常の腕帯部を用いる場合の不都合を示す図である。
【図17】本発明の血圧計の別の実施形態を示す図である。
【図18】一例として透過型光センサである感知センサを用いた場合に、一方の感知センサの受光部から感知信号KSと、他方の感知センサの受光部からの感知信号KPの具体的な信号イメージ例を示す図である。
【図19】図17に示す腕帯部を有する血圧計を示す斜視図である。
【図20】図19に示す血圧計の使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、コロトコフ音法による血圧計である本発明の血圧計の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明するが、圧脈波や光電脈波を用いた、いわゆるオシロメトリック法による血圧計にも適用できる。
図1は、本発明の血圧計の実施形態の全体を示す斜視図である。図2(A)は、図1に示す血圧計の血圧計本体を左後ろ側から見た斜視図である。図2(B)は、図1に示す血圧計の血圧計本体を右後ろ側から見た斜視図である。
図1に示す血圧計1は電子血圧計ともいい、この血圧計1では、腕帯部2と血圧計本体10は別体になっており、図1と図2に示す血圧計本体10から図1に示す腕帯部2を分離して使用する。この血圧計1は、腕帯部と本体部が一体となった一体型血圧計と違い、被測定者が座位にて測定する時に、血圧計本体10の設置場所が被測定者から前方に離れていても、腕帯部2を上腕Tに装着することで、背を伸ばして腹圧の掛からないリラックスした状態で、より正確な血圧測定が可能である。
【0015】
図1に示す腕帯部2はカフともいい、腕帯部2は一定(所定)の外周長さを有しており、円周方向で折り畳み可能な柔らかな材質で作られた切れ目の無いソフトな筒体であり、2つの開口部11P、11Rを有している。被測定者の上腕Tに腕帯部2を装着すると、開口部11Pは手指側(肘側)に位置され、反対側の開口部11Rは肩側に位置される。開口部11Rの内径は、開口部11Pの内径よりも大きい。被測定者は、開口部11R側から開口部11Pにかけて腕帯部2を装着させることで、腕帯部2は、被測定者の肘よりも上の上腕Tに保持して血圧を測定するようになっている。
【0016】
腕帯部2は、上腕Tを阻血するための阻血用空気袋14と、K音(コロトコフ音)信号を検出するための2つのK音検出用空気袋50を内蔵している。阻血用空気袋14は、血圧計本体10側からエアを供給することにより上腕Tの動脈を加圧して阻血する。阻血用空気袋14の空気収容容量は、K音検出用空気袋50の空気収容容量に比べて大きい。図1に示すように、2つのK音検出用空気袋50は、腕帯部2が上腕Tに装着された状態では、対向位置になるように配置されている。
K音検出用空気袋50はK音を検出するための空気袋であり、K音は、腕帯部2の阻血用空気袋14の内圧を最高血圧以上に上げて血管を一旦圧閉した後、内圧を徐々に下げて内圧が最高血圧以下になり、血管が開き始めると発生し、内圧が最低血圧以下になり、血管の圧閉が消失するまでの間検出できる音信号である。
圧脈波を用いたオシロメトリック法による血圧計の場合には、阻血用空気袋14からの圧力と圧脈波を検出することでK音検出用空気袋は不要となる。また、圧脈波を用いたオシロメトリック法による血圧計の場合には、阻血用空気袋14に代えて脈波を検出する脈波検出用空気袋を設けることで、S/N比が優れ、生活環境のノイズ等の影響を受けず、脈波をより正確に検出できるので、より正確な血圧測定ができる。
【0017】
図1に示すように、腕帯部2には、腕の挿入を検知する腕挿入検知センサとしての温度センサ700が配置されている。この温度センサ700は、電気配線701とエアプラグ6を介して、血圧計本体10内の破線で示す制御部120に対して電気的に接続されている。
温度センサ700は、腕帯部2の肩側の開口部11Rから手指(肘)側の開口部11Pにかけて正しい方向に腕を挿入したことを、腕の熱を感知することで検知するためのものである。温度センサ700が被測定者の上腕Tの挿入を検知すると、温度センサ700は、腕検知信号TSGを制御部120に送るようになっている。
【0018】
図1に示すように、腕帯部2と血圧計本体10は、エアチューブ4,5と上述した電気配線701とエアプラグ6を介して接続されている。電気配線701はエアチューブ4,5と一体的に配線されていることが望ましい。エアチューブ4,5は、好ましくは複胴管(複導管ともいう)を構成しているフレキシブルなエラストマチューブである。エアチューブ4,5は、全長に渡って(あるいはほぼ全長に渡って)一体的に形成されている。第1エアチューブとしてのエアチューブ4は、腕帯部2の阻血用空気袋14へのエアの給排気に用いられ、第2エアチューブとしてのエアチューブ5は、K音信号を検出する2つのK音検出用空気袋50へのエアの給排気に用いられる。エアチューブ4はエアチューブ5に比べてより太いチューブであり、エアチューブ4の内径と外径は、エアチューブ5の内径と外径に比べて大きく設定されている。
【0019】
まず、図1と図3を参照して、腕帯部2の構造例を説明する。
図3(A)は、腕帯部2の内部構造例を示す断面図であり、図3(B)は、腕帯部2を円周方向で折り畳んだ状態を示す正面図であり、図3(C)は、腕帯部2を円周方向で折り畳んだ状態を示す斜視図である。
図1と図3に示すように、腕帯部2は、外周方向に沿っては切れ目のない筒状の部材であり、所定(一定)の長さの外周を有していて、この腕帯部2の中に被測定者の上腕Tを通すことができるようになっている。図3(B)と図3(C)に示すように、腕帯部2は被測定者が簡単に円周方向で折り畳むことができる柔軟性を有し、図1と図3(A)に示すように、例えば外布16と、内布17と、上腕Tを阻血するための阻血用空気袋14と、K音信号を検出する2つのK音検出用空気袋50を有している。
【0020】
外布16の内側面と内布17の外側面は、阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50を包んでおり、外布16と内布17は、阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50が収納可能なド−ナツ状の空間を作るために、外布16の端部と内布17の端部は、例えば縫製により接合している。
なお、2つのK音検出用空気袋50は、好ましくは腕帯部2の長手方向(軸方向)の中間位置よりも開口部11P側寄りの位置(肩側寄りではなく、手指より側の位置)に配置するのが良い。このようにすることで、2つのK音検出用空気袋50のいずれかを上腕Tの動脈に対応する部分に当てることができる。
【0021】
外布16は、阻血用空気袋14の外面を覆う筒体でなり、円周方向及び長手方向に非伸縮性の材料で形成されており、変形可能であるが伸縮性が非常に低いかほとんど無い布部材である。これにより、外布16は、阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50内にエアを供給した際に、阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50が腕帯部2の半径方向の外側に膨れないようにすることができ、阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50は半径方向の内側である上腕T側に膨れることになる。このため、阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50の圧力は、腕帯部2の外側へは逃げずに上腕に対して加圧でき、正確な血圧測定をすることができる。
【0022】
外布16は、例えば伸びにくい生地(201BE)を採用でき、引張強度は、JIS L1096−A法で測定した値として、タテが1430N/in〜1460N/inで、ヨコが810N/in〜850N/inである。さらには、タテが1430N/in〜1460N/inで、ヨコが810N/in〜850N/inであることが好ましい。タテとヨコともに、この数値範囲よりも小さいと阻血用空気袋14の外側への膨らみの抑制が弱くなり、また、この数値範囲よりも大きいと上腕Tの挿入に影響が出る可能性がある。外布16としては、例えば、ポリエステル100%の生地を用いると、タテが1445N/inで、ヨコが827N/inである。
【0023】
内布17は、阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50の内面を覆う筒体でなり、変形可能で伸縮性を有し、上腕Tの被測定面に当接する当接布部である。内布17は、弾性を備えていてしかも伸縮性を有する布部材である例えば伸びやすい生地を採用でき、引張強度は、JIS L1096−A法で測定した値として、タテが94.9N/inで、ヨコが150.7N/inである。引張伸度は、JIS L1096−A法で測定した値として、タテが517%で、ヨコが400%である。内布としては、例えば、ナイロン80%、ポリウレタン20%の生地である。内布17は、阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50が上腕Tの被測定面に向けて膨張できるように伸縮性を持たせた素材にて、かつ、腕帯部2を被測定者の手先から挿入して、肘の上部の上腕Tまでスライドさせて装着させる必要があるので、スベリの良い材質、例えば、ジャ−ジ素材を使用している。
【0024】
図3に示すように、図1で示した腕挿入検知センサとしての温度センサ700は、肩側の開口部11R寄りの位置よりも、手指(肘)側の開口部11P寄りの位置に配置されることが望ましいが、温度センサ700の位置は特に限定されない。温度センサ700は、例えば内布17の内側であって腕に直接接触する位置か、あるいは内布17の外側であって腕には直接接触しない位置に配置されている。この温度センサ700は、例えば測温抵抗体を用いた温度センサ、熱電対を用いた温度センサ、サーミスタを用いた温度センサ等を用いることができる。
【0025】
図1と図3(A)〜図3(C)に示すように、開口閉鎖部材30は、腕帯部2の内部において、開口部11P側であってしかもエアチューブ4とエアチューブ5が導出(接続)されている側に設けられている。この開口閉鎖部材30は、例えば着脱可能な面ファスナーを用いることができ、面ファスナーのオス部材31とメス部材32を有している。オス部材31とメス部材32は、腕帯部2の内側において対面する位置に固定されており、図3(B)と図3(C)に示すように、オス部材31とメス部材32を着脱可能に連結することにより、腕帯部2の開口部11P側だけを閉じて、開口部11Rは開放した状態に維持することができる。
これにより、腕帯部2に対して開口閉鎖部材30を設けることで、被測定者が腕帯部2に対して手先を通して血圧測定をしようとする際に、閉じている開口部11P側からは手先を通すことが無く、開いている開口部11R側から迷わずに手先を通すことができる。このため、被測定者が腕帯部2に対して誤って手先を開口部11P側から逆挿入してしまうことを防止することができる。もし、被測定者が腕帯部2に対して開口部11P側から逆挿入してしまうと、K音検出用空気袋50が上腕Tの動脈に適切に当たらなくなり、正確に血圧測定ができなくなる。
また、腕帯部2に対して開口閉鎖部材30を設けることで、腕帯部2を使用しない時に折り畳むのが容易にできる。
【0026】
図1と図3に示すように、腕帯部2は、方向視認用部材であるタグ33を有している。このタグ33は、開口部11R側であって、外布16に対して例えば接着剤を用いるか、縫製により固定されている。タグ33は、腕帯部2の開口部11R側の端部からV方向に沿って突出して設けられており、例えば布部材あるいはプラスチック部材により作ることができる。図3(A)に示すように、被測定者が例えば腕帯部2に左腕を挿入して血圧測定をする際には、タグ33を右腕の指Fでつかんで腕帯部2をV方向に移動することができる。このタグ33には、好ましくは「肩側」表示33Sを表記することができる。これにより、被測定者は、このタグ33をつかんでV方向に移動するだけで上腕Tに対して腕帯部2の装着動作が容易にできるばかりでなく、腕帯部2の装着方向が明確になるので、開口部11R側から迷わずに手先を通すことができる。このため、被測定者が腕帯部2に対して誤って手先を開口部11P側から逆挿入してしまうことを防止することができる。すなわち、チューブ側の開口部を閉じることができるので、被測定者が上腕に対して誤って逆方向に装着することを容易に防止でき、被測定者が上腕に対して正しい方向に装着することができる。
【0027】
次に、血圧計本体10の構造例について説明する。
図1と図2に示すように、血圧計本体10は、筐体部60と、表示面部61と、腕帯部2の保持部62を有している。筐体部60と表示面部61と保持部62は、電気絶縁性を有する材料、例えばプラスチックにより作られている。表示面部61は、筐体部60の前面側に設けられ、被測定者が表示部63に表示される表示内容が見やすいように傾斜角度θを60度程度に傾斜されている。
図2(A)と図2(B)に示すように、筐体部60は、側面部68,69と、背面66と、破線で示す前面側開口部70と、筐体部60から突出して設けられた上面部71と、底部72を有している。
図1に示すように、表示面部61は、表示部63と、透明な例えばアクリル板のような保護板64と、枠状の保持部材65を有している。表示部63は保持部材65により保持され、保護板64は保持部材65に固定されて表示部63の表面を保護している。この保持部材65は、筐体部60の破線で示す前面側開口部70に対して着脱可能に装着されている。この保持部材65を筐体部60から取り外すことにより、筐体部60の破線で示す前面側開口部70を通じて筐体部60の内部を露出させることができる。
【0028】
図2に示すように、腕帯部の保持部62は、筐体部60の背面側に着脱可能に取り付けられている。図4には、折り畳まれた腕帯部2が筐体部60の背面66側に保持部62を用いて着脱可能に収納される様子を示している。
腕帯部の保持部62は、保持面62Aと脚部62Bを有している。筐体部60の下部側には、差込口67が形成されている。脚部62Bの先端部62Cは、この差込口67に挿入されることにより、腕帯部の保持部62は、筐体部60の背面66側に着脱可能に取り付けることができる。保持面62Aと筐体部60の背面66の間には、折り畳まれた腕帯部2を着脱可能に収納することができる。これにより、被測定者が腕帯部2を使用しない場合には、折り畳まれた腕帯部2を容易にしかも確実に収納することができる。被測定者が血圧測定しない場合に、腕帯部2が筐体部60の背部にあるので、被測定者は、腕帯部2により邪魔されることなく、表示部63の表示内容例えば時間や室温等を目視で確認できるので、血圧測定に適した温度(環境温度)であるか否か容易に確認でき、更には、血圧計1の見栄えを良くすることができる。このため、血圧計本体10は、使用しない時には例えば時計としてリビングルーム等に飾っておくことができる。
【0029】
図2(A)に示すように、筐体部60の側面部(筐体に向かって左側側面部)68の下部位置には、O−リング(不図示)を備えたエアプラグ差込口73が形成されている。このエアプラグ差込口73には、エアプラグ6が着脱可能に装着できる。エアプラグ差込口73は、エアプラグ6の形状に合わせて、上部分73Aの幅d1は、丸み形状の下部分73Bの幅d2に比べて大きく設定されている。エアプラグ差込口73の内部には、差し込み穴73G、73Hを有している。
一方、エアプラグ6の構造例は、図5に示している。図5(A)は、エアプラグ6の外観を示す斜視図であり、図5(B)は、エアプラグ6の内部構造例を示す断面図である。
【0030】
図2(B)において、筐体部60の側面部(エアプラグ差込口73が形成された側面部68とは反対側)69には、スピーカ85と、ACアダプタを接続するための接続穴86が設けられている。この接続穴86には、ACアダプタ87の接続ジャック87Aが接続されることで、血圧計本体10には商用電源から電源供給できる。接続穴86は、エアプラグ差込口73は、設けられている配置も大きさも形状も全く異なるため、エアプラグ6を間違えて差し込むことが防止できる。
図2(A)に示すように、筐体部60の上面に突出して設けられた上面部71には、筐体部60の正面に向かって、右側から、開始/停止スイッチ88、メモリ―ボタン88M、時刻設定/メモリ―消去ボタン88Tの各種の操作ボタンが配置されている。この開始/停止スイッチ88は、他のスイッチより大きく(幅広)に形成され、被測定者が押すことにより血圧計1の血圧測定動作を緊急に停止させる緊急停止スイッチ機能と、被測定者が押すことにより阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50の圧力を緊急に強制排気させる緊急排気スイッチの機能と、被測定者が押すことにより制御部の動作をリセットさせる制御部のリセット機能を兼ねている。
【0031】
図5は、筐体部60の底部72を示している。底部72はほぼ長方形状の平面部分であり、底部72には電池収納部90が配置され、この電池収納部90を開閉する蓋体91を備えている。蓋体91は、2つのヒンジ92により電池収納部90を開閉できる。
図6(A)は、蓋体91を開けて電池収納部90内に4本の単3形電池93が収納されている状態を示し、図6(B)は、電池収納部90内から4本の単3形電池93が取り除かれた状態を示している。4本の単3形電池93は、血圧計1の駆動電源であるが、乾電池(一次電池)であっても充電池(二次電池)であっても良い。電池のサイズは、単3形電池に限らず、他の大きさの電池、例えば単2形電池であっても良い。電池の本数は、4本に限らず、例えば6本以上であっても良い。
電池収納部90と蓋体91は、底部72の幅方向M及び長さ方向Nに関してそれぞれ中央部に設けられている。つまり、電池収納部90と蓋体91は、底部72のほぼ中央位置に設けられている。これにより、内蔵される複数本の単3形電池93が、筐体部60の中心位置に配置できるので、筐体部60の底部72を置いた場合に、これらの電池の重みにより、血圧計本体10は転倒しないように安定して置くことができ、血圧計本体10の安定性を得ることができ、血圧測定が安定して行える。
【0032】
図6(B)に示すように、電池収納部90の内底部分には、2本の単3形電池93を電気的の直列に配置するために、電池収納用凹部94と電池収納凹部95が並列に形成されている。これらの電池収納用凹部94と電池収納凹部95は、それぞれ2本の単3形電池93を動かないように収納するために、例えば断面半円形状の凹部であり、中央位置には長手方向に沿って仕切り部分96が形成されている。電池収納用凹部94には、電気接点90A,90Bが設けられ、電池収納用凹部95には、電気接点90C,90Dが設けられている。電気接点90A,90Cには、それぞれ単3形電池93の正極が接触し、電気接点90B,90Dには、それぞれ単3形電池93の負極が接触する。4本の単3形電池93は、2本ずつ電池収納用凹部94と電池収納凹部95にそれぞれ収納されているが、4本の単3形電池93は電気的には直列に接続されている。
【0033】
図6(B)と図7に示すように、電池収納用凹部94には、2つの傾斜部97が形成され、同様にして電池収納凹部95にも、2つの傾斜部97が形成されている。これらの傾斜部97の形状は、図7に示しており、それぞれ単3形電池93の負極側に対応して形成されている。各傾斜部97は、電池収納用凹部94からさらに斜めに落とし込まれた部分である。
これにより、図7(A)に示すように、電池収納用凹部94内に4本の単3形電池93が収納された状態で、被測定者が指で矢印H方向に単3形電池93の負極側を押すことにより、図7(B)に示すように単3形電池93の負極側が傾斜部97内に押し込まれるので、単3形電池93の正極側は電池収納用凹部94内から矢印K方向に持ち上げることができる。従って、被測定者が電池交換する時に電池の取り外しが容易に行え、電池収納部内から電池が不用意に突然飛び出して落としてしまうといったことが生じない。
なお、図6に示すように、蓋体91の内面には、傾斜部97に対応する位置に「押す」及び「矢印」表示99が配置されている。これにより、図6(A)に示すように、被測定者が電池交換する際に、電池収納用凹部94,95にそれぞれ単3形電池93が収納されていても、被測定者は電池を押すべき位置を簡単に知ることができ、電池を取り出して電池交換が容易になる。さらに、電池収納部90の長手方向に仕切りを設けて2室として単3形電池93が2個ずつ並列に収納されるようにすることで、電池交換する時に電池の取り外しが更に容易になる。
【0034】
図8と図9は、血圧計本体10の筐体部60の前面側開口部70から表示面部61を取り外して、筐体部60の内部を露出させた状態を示している。筐体部60の内部には、回路基板100と隔壁101が配置されている。回路基板100は、フレキシブル配線板102を介して、開始/停止スイッチ88(図2を参照)等の操作ボタンに対して電気的に接続されている。また、回路基板100は、フレキシブル配線板103を介して表示部63に電気的に接続されている。
隔壁101は、筐体部60内において筐体部60と一体的に形成されている。隔壁101は、後で説明する加圧手段としての2つの駆動ポンプ110と、減圧手段としての制御バルブ111と排気バルブ112とを、回路基板100の制御部120から隔離するために設けられている。この隔壁101を設けることにより、加圧手段である駆動ポンプ110と、減圧手段としての制御バルブ111と排気バルブ112とを、回路基板100の制御部120から距離的に離すことができ、例えば駆動ポンプ110が動作するときに生じる熱が、回路基板100の制御部120に伝わりにくくなり、回路基板120上に搭載されている要素は熱の影響を受けにくい。
【0035】
図10は、筐体部60の図7に示す底部72を取り除き筐体部60内を示している。筐体部60の内部には、スピーカ85と接続部86と、2つの駆動ポンプ(エアポンプ)110と、制御バルブ111と排気バルブ112等が収容されている。
図11は、2つの駆動ポンプ110と、制御バルブ111と排気バルブ112と、接続配管系と、その他の要素を示している。図11に示すように、制御バルブ111と排気バルブ112は、ジャバラ管121を介してマニホールド122の第1マニホールド部122Aの一端部に接続されている。また、2つの駆動ポンプ110は、ジャバラ管121を介してマニホールド122の第1マニホールド部122Aの一端部に接続されている。第1マニホールド部122Aの他端部は、第2マニホールド部122Bの一端部に接続されている。
【0036】
図1と図2(A)に示すように、2つのK音検出用空気袋50に接続されたエアチューブ5の内径と外径は、阻血用空気袋14に接続されたエアチューブ4の内径と外径に比べて、細くしている。これは、2つのK音検出用空気袋50と、血圧計本体10側に配置された図11に示すコンデンサマイクロフォン125とを接続するために、エアチューブ5は腕帯部2が上腕Tに装着できる長さを必要とし、しかも2つのK音検出用空気袋50内で発生するK音が、エアチューブ5を通過する際に減衰もしくは拡散するのを防いで、K音がコンデンサマイクロフォン125に確実に到達できるようにするためである。
第2マニホールド部122Bの途中には、可撓性のシリコンチューブのようなチューブ123の一端部が接続されている。このチューブ123の他端部であって自由端124の途中には、コンデンサマイクロフォン125が内蔵して設けられている。コンデンサマイクロフォン125を用いることにより、圧電マイクロフォンを用いるのに比べて低い周波数の音を検出することができる。これにより、チューブ123として例えばシリコンチューブを用いることにより、例えばスピーカ85が発生する音や、開始/停止スイッチ88等の各種の操作ボタンの操作に伴い発生する音等のノイズがコンデンサマイクロフォン125に達するのを防ぐことができ、低い周波数であるコロトコフ音を確実に検出でき、正確な血圧測定が行える。
【0037】
シリコンチューブ自体がノイズを吸音でき、コンデンサマイクロフォン125は、K音を検出するために第2マニホールド部122Bの途中の位置に設けられている。このコンデンサマイクロフォン125の外径は、3.5〜4.5mm、好ましくは4.0mmである。このコンデンサマイクロフォン125の外径が、3.5mmよりも小さいとK音検出感度が悪くなり、4.5mmよりも大きいとK音だけでなく脈波も検出してしまう恐れがあり、S/N比が低下する。
なお、図11に示すように、コンデンサマイクロフォン125は、チューブ123の途中に形成された分岐部分123D内に配置しても良い。
【0038】
図11に示すように、タンク126は、2本の接続筒126Aを有しており、2本の接続筒126Aは、チューブ127とジャバラ管121に対して、それぞれ可撓性を有する抵抗チューブ129A,129Bを介して接続されている。タンク126と2本の抵抗チューブ129A,129Bは、エアフィルタ130を構成している。第1マニホールド部122Aの途中には、チューブ128が接続されており、このチューブ128は、エアチューブ5を通じてK音検出用空気袋50に接続されている。
抵抗チューブ129A,129Bの内径は、チューブ127と接続筒126Aの内径よりも小さく、抵抗チューブ129A,129Bの端部はチューブ127と接続筒126A内に挿入することで接続されている。
【0039】
なお、図11に示すように、抵抗チューブ129A,129Bの両端部内には、抵抗チューブ129A,129Bが潰れるのを防止するために、円周方向に弾性を有する金属製の割りピンのようなフィルタ部材としてのピン133が配置されている。ピン133は、長さが7mm、外径0.8mm、内径0.5mmである。これにより、抵抗チューブ129A,129Bの両端部が細いチューブであるにもかかわらず、実装時等に潰れることがなく、確実に抵抗チューブ129A,129B内にエアを通すことができ、さらにノイズ除去の効果を有する。
また、可撓性を有するチューブ123内にも、円周方向に弾性を有する金属製の割りピンのような接続管134を配置することができる。接続管134は、長さが12mm、外径4〜4.5mm、内径3〜4mmである。これにより、可撓性を有するチューブ123であるにもかかわらずつぶれることが無く、確実にコンデンサマイクロフォン125に対して、ノイズが除去されたエアを供給することができる。接続管134は、長さが12mmより長いと、実装しづらくなる。また、長さが8mmより短いと、チューブ123の揺動の影響を受ける。また、外径が4.5mmより大きいと、実装しづらくなる。
【0040】
図12(A)は、腕帯部2の阻血用空気袋14と、K音信号を検出する2つのK音検出用空気袋50と、コンデンサマイクロフォン125等と、接続配管系の接続関係を示している。図13(B)は、エアフィルタ130等を示している。
図12(A)と図12(B)に示すように、腕帯部2は、阻血用空気袋14と、K音信号を検出する2つのK音検出用空気袋50を有している。阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50は、例えば透明のプラスチックシート、一例としてポリウレタンシートにより形成されている。2つのK音検出用空気袋50は、阻血用空気袋14の内面側に例えば両面粘着テープまたは接着剤により固定されており、図1に示すように2つのK音検出用空気袋50は互いに離れている。
なお、K音検出用空気袋50が阻血用空気袋14の内側面に少なくとも2つ配置されているのは、左右のいずれの上腕においても測定可能にするためであり、K音検出用空気袋50を上腕Tの動脈位置に位置させることができる。また、このK音検出用空気袋50が動脈の位置からラジアル方向にずれて装着された場合でも、一方のK音検出用空気袋50が、上腕TのK音の伝達効率が高い上腕筋部位に配置できる。
【0041】
図12(A)と図12(B)に示すように、太いエアチューブ4が阻血用空気袋14と制御バルブ111、排気バルブ112、駆動ポンプ110に接続され、細いエアチューブ5が2つのK音検出用空気袋50とコンデンサマイクロフォン125に接続されている。太いエアチューブ4と細いエアチューブ5の間には、消音器としてのT型のエアフィルタ130が接続されている。
このエアフィルタ130の抵抗チューブ129Bが設けられているのは、次の理由からである。血圧測定時に2つのK音検出用空気袋50からのエアチューブ5を通じて得られるK音が、抵抗チューブ129Bを設けることによりエアチューブ4側に漏れないようにして、コンデンサマイクロフォン125側に小さなK音を音圧が低下しないようにきれいに導けるようにするためである。
【0042】
また、エアフィルタ130の抵抗チューブ129Aが設けられているのは、次の理由からである。図13は、図1に示すように被測定者が腕帯部2に上腕Tを通して、阻血用空気袋14にエアを供給して上腕Tを加圧して血圧測定をしている例を示すグラフである。縦軸は圧力を示し、横軸は時間である。
図13において、制御バルブ111と2つの駆動ポンプ110を作動して、図12に示す阻血用空気袋14にエアを供給して上腕を時点t1まで加圧して、その後制御バルブ111が作動して阻血用空気袋14内のエア圧を傾きが一定になるように減圧させていく。この減圧させる途中では最高血圧と最低血圧を検出して、その後排気バルブ112を作動して阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50内のエアを抜く。このように、血圧測定中に、上腕を加圧して減圧すると制御バルブ111から作動音が生じるので、この作動音がエアチューブ4を通じてコンデンサマイクロフォン125に伝わるのを抑制するために、抵抗チューブ129Aが設けられている。
【0043】
図14は、図1に示す血圧計1のブロック構成図である。
図14に示すように、腕帯部2の阻血用空気袋14は、エアチューブ4を通じて、血圧計本体10内のエアフィルタ130、圧力検出部(圧力センサ)140、2つの駆動ポンプ110、制御バルブ111、そして排気バルブ112に接続されている。K音信号を検出するK音検出用空気袋50は、エアチューブ4を通じて、血圧計本体10内のコンデンサマイクロフォン125に接続されている。
図1と図3に示したように腕帯部2に配置された温度センサ700は、腕帯部2の肩側の開口部11Rから手指(肘)側の開口部11Pにかけて上腕に装着されたことを、腕の熱を感知することで検知するためのものである。温度センサ700が被測定者の上腕Tの挿入を検知すると、温度センサ700は、腕装着検知信号TSGを制御部120に送る。これにより、制御部120は、温度センサ700から腕装着検知信号TSGを受けると、被測定者が開始/停止スイッチ88を押さなくても、2つの駆動ポンプ110は、制御部120の指令により、腕帯部2内の阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50にエアを供給して腕帯部2内の上腕Tを加圧する動作を自動的に開始させることができる。
【0044】
圧力検出部(圧力センサ)140は、腕帯部2内の圧力を検出する。K音検出用空気袋50は、図15に示すように2つ(上腕に腕帯部を装着したときに円周方向で対向位置になる)設けることで、K音を的確に検出できるが、1つでもよい。
2つの駆動ポンプ110は、腕帯部2内の阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50にエアを供給して腕帯部2内の上腕を加圧する加圧手段である。このように、2つの駆動ポンプ110を用いるのは、腕帯部2が大きい場合には、2つの駆動ポンプを駆動させ、腕帯部2が小さい場合には、1つの駆動ポンプを駆動させ、阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50にエアを供給できるようにするためである。制御バルブ111と排気バルブ112は、腕帯部2内の阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50内のエアを抜いて加圧した上腕を減圧する減圧手段である。
制御部120は、各要素の動作フローの処理、判断、制御を行う制御手段であり、駆動部150に指令を与えることにより駆動ポンプ110を駆動制御する。制御部120は、駆動部151に指令を与えることにより制御バルブ111、排気バルブ112を駆動制御する。
【0045】
図14では、制御部120は、表示部63に指令を与えて、例えば図1に示すような温度表示、時刻表示、最高血圧、最低血圧等の表示内容を表示させる。制御部120には、音声用メモリ153とデータメモリ154が接続されており、音声メモリ153には、血圧計を測定する際に被測定者に対して音声ガイダンス内容が予め記憶されている。制御部120は、音声メモリ153内の音声ガイダンス内容を、スピーカ85を通じて被測定者に報知するようになっている。データ用メモリ154には、血圧測定に必要な一連の動作を行うためのプログラムが記憶されており、制御部120はこのプログラムに従って、血圧測定動作を実施する。
【0046】
図14では、開始/停止スイッチ88が制御部120に電気的に接続されている。スピーカ85は、フィルタ164を介して制御部120に電気的に接続されている。その他に、電源コントロール部160、K音アンプ161、OSCアンプ162が、制御部120に電気的に接続されている。電源コントロール部160は、電池93とACアダプタ87に電気的に接続され、所定の直流電圧を制御部120に供給する。K音アンプ161は、コンデンサマイクロフォン125により検出したK音を増幅して制御部120に供給する。OSCアンプ162は、コンデンサマイクロフォン125により検出した脈波信号を増幅して制御部120に供給する。これにより、制御部120は、K音を認識し、脈波を認識し、電池電圧を認識し、音声ガイダンスを合成することができる。
【0047】
次に、図1と図3と図14を参照して、被測定者が腕帯部2を上腕に適切に装着し、血圧測定が自動的に開始される動作を説明する。
被測定者が、図1に示す血圧計1を用いて血圧測定を行う場合には、右利きの被測定者は右手で腕帯部2を持って左腕の上腕Tに対してこの腕帯部2を装着する。すなわち、左腕の手指を肩側の開口部11Rから肘側の開口部11Pにかけて通して、左腕の上腕Tに対してこの腕帯部2を装着する。
このように、左腕の上腕Tに対してこの腕帯部2が装着されると、温度センサ700は、腕帯部2が上腕に装着されたことを、腕の熱を感知することで検知する。温度センサ700が被測定者の上腕Tに装着されたことを検知すると、温度センサ700は、腕装着検知信号TSGを制御部120に送る。これにより、制御部120は、温度センサ700から腕装着検知信号TSGを受けると、被測定者が図2と図15に示す開始/停止スイッチ88を押さなくても、図15に示す2つの駆動ポンプ110は、腕帯部2内の阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50にエアを供給して腕帯部2内の上腕Tを加圧する動作を自動的に開始することができる。
【0048】
また、被測定者が左利きである場合には、この被測定者は左手で腕帯部2を持って右腕の上腕Tに対してこの腕帯部2を装着する。すなわち、右腕の手指を肩側の開口部11Rから肘側の開口部11Pにかけて通して、右腕の上腕Tに対してこの腕帯部2を装着する。
このように、右腕の上腕Tに対してこの腕帯部2が装着されると、温度センサ700は、腕帯部2が上腕に装着されたことを、腕の熱を感知することで検知する。温度センサ700が被測定者の上腕Tに装着されたことを検知すると、温度センサ700は、腕検知信号TSGを制御部120に送る。これにより、制御部120は、温度センサ700から腕検知信号TSGを受けると、被測定者が図2と図14に示す開始/停止スイッチ88を押さなくても、図14に示す2つの駆動ポンプ110は、腕帯部2内の阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50にエアを供給して腕帯部2内の上腕Tを加圧する動作を自動的に開始することができる。
【0049】
以上説明したように、右利きの被測定者であっても左利きの被測定者であっても、開始/停止スイッチ88を押すこと自体の操作は簡単ではあるが、血圧測定動作ではこの開始/停止スイッチ88を押す動作が1つの手間には違いないので、できれば開始/停止スイッチ88の操作をしなくても血圧測定が自動的にできることが望ましい。特に、被測定者が高齢者の場合には開始/停止スイッチ88の操作をしなくても、腕帯部2を上腕Tに装着するだけで血圧測定が自動的に開始できるので、血圧測定操作がスムーズに行える。
また、従来のように、例えば右利きの被測定者が右手で腕帯部2を持って左腕にこの腕帯部2を装着した後、右手で支持していた腕帯部2を放した状態で血圧計本体10の開始/停止スイッチ88を右手で操作すると、せっかく上腕Tの正しい位置に装着した腕帯部2がその腕帯部2の自重で上腕Tの正しい位置から肘側に下がってしまうことがある。
しかし、本発明の実施形態では、既に説明したように、被測定者は腕帯部2を支持したままでよく、腕帯部2を上腕Tに装着するだけで血圧測定が自動的に開始できるので、血圧測定動作がスムーズに行え、右手で腕帯部2を支持している間に、上腕Tを血圧測定のために加圧動作を腕帯部2により自動的に開始できる。
もし、被測定者の腕が細い場合であっても、右手で腕帯部2を支持している間に、腕帯部2が上腕Tを血圧測定のために加圧動作を自動的に開始できるので、腕帯部2がずり落ちるおそれがなく、正しい血圧測定ができる。
【0050】
ところで、図1で示した腕装着検知センサ(腕装着検知手段)としての温度センサ700は、肩側の開口部11R寄りよりも、手指(肘)側の開口部11P寄りの位置に配置されることが望ましい。
この理由としては、腕帯部の肩側寄りの位置ではなく前記腕帯部の肘側寄りの位置に腕装着検知手段が配置され、この肘側寄りの位置に配置された腕装着検知手段が腕装着検知信号を発生させるので、腕帯部に上腕を完全に挿入する時点に対してできるだけ遅らせた時点から阻血用空気袋による上腕の加圧動作を開始させることができる。このため、電池駆動により空気を阻血用空気袋に送るスタートのタイミングを遅らせることができ、電池駆動を用いる場合に節電が図れる。また、腕帯部が装着される途中で、腕が抜かれる動作を想定した場合、腕装着検知手段を肘側寄りに配置することにより、不要な加圧動作の開始を防止できる。
なお、1つの温度センサ700に代えて、1つの光透過型の光センサあるいは光反射型の光センサを用いても良い。
このように、本発明の実施形態の血圧計1では、被測定者が上腕Tに腕帯部2を装着後に被測定者が開始/停止スイッチ88を操作しなくても、腕帯部2は血圧測定のための加圧を開始することができる。もし、通常通り、被測定者が腕帯部2を上腕Tに装着した後に、腕帯部2から手を放して開始/停止スイッチ88を押そうとすると、図16に示すように、腕帯部2は肩側から肘側にずり落ちてしまう。特に、被測定者の上腕Tが細い場合には、腕帯部2から手を放して開始/停止スイッチ88を手で押そうとすると、腕帯部2は肩側から肘側にずり落ちてしまう。本発明の実施形態の血圧計1は、このような不都合を防ぐことができ、血圧測定をスムーズに行うことができる。
【0051】
次に、図17から図20を参照して、本発明の別の実施形態を説明する。
まず、図16は、比較して説明するために、通常用いられている腕帯部1000と、この通常の腕帯部1000を用いる場合の不都合を示している。図16に示す通常の腕帯部1000を用いる場合の不都合は、図15に示す腕帯部が上腕Tをずり落ちることとは別の不都合である。
図16に示す通常の腕帯部1000では、上腕Tに巻く際に肘側(血管の下流側)に、コロトコフ法血圧計の場合にはK音検出部1001Aが設置され、オシロメトリック法血圧計の場合には脈波検出部1001Bが設定されている。すなわち、K音検出部1001Aもしくは脈波検出部1001Bは、圧迫した血管の下流側に位置する必要があるために、腕帯部1000を正しく装着する時には、腕帯部1000を上腕Tに対して正しい方向であるFG方向に動かして装着しなければならない。しかし、腕帯部1000を上腕Tに対して間違った方向であるGH方向に動かすと、間違った装着方向になってしまう。
上腕Tに対して間違ってGH方向に動かせて装着してしまうと、圧迫した血管の下流側で発生するK音もしくはK音成分が重畳した脈波の検出が適切に行えないために、腕帯部1000が上腕Tに対して加圧不足と判定してしまって過剰加圧をする場合がある。その結果、血圧値が高めに判定されるだけでなく、過剰な加圧により腕が痛くなったりしびれたりする等の負担を被測定者に与えることになる。
【0052】
腕帯部1000に対して上腕Tに対して間違った方向で装着することを防止するために、腕帯部に挿入方向を示す表示を単純に施すことも考えられるが、被測定者がその表示に気付かない場合が生じる。また、腕帯部1000に対して上腕Tに対して間違った方向で装着したことを脈波形もしくは脈波のエンベロープにより判断する方式も考えられるが、上腕Tに対して間違った方向で装着したことを100%検出することは不可能であり、副作用として正しく装着されているのに間違った装着方向と誤認識する可能性もある。加えて、上腕Tに対して間違った方向に装着したことを脈波形により判断したとしても、被測定者には血圧測定行為を行ってから気付かせることになるので、間違った方向に装着された際の対処としては遅い。
【0053】
図17に示す本発明の血圧計の別の実施形態では、腕帯部802は、図1〜図3に示す本発明の実施形態の腕帯部2の腕装着検知手段としての温度センサ700に代えて、上腕Tを挿入していることを検出するための腕装着検知手段810を有している。
この腕装着検知手段810は、腕帯部に対する腕の挿入方向が正しい方向であるか誤った方向であるかを検知する第1機能を有する。しかも、腕装着検知手段810は、被測定者が上腕Tに腕帯部2を装着後に、被測定者が開始/停止スイッチ88を操作しなくても、腕帯部2に対して血圧測定のための加圧動作を自動的に開始させることができる第2機能をも有している。
図17に示す筒状の腕帯部802は、図1と図3に示す腕帯部2と同様に、所定(一定)の長さの外周を有していて、この腕帯部802の中に被測定者の上腕Tを通すことができるようになっている。外布16の内側面と内布17の外側面は、阻血用空気袋14を包んでいる。
【0054】
図17に示すように、腕帯部802には、K音信号を検出する2つのK音検出用空気袋50,50が設けられており、図1の実施形態と同様に動作する。
あるいは、これに替え、コロトコフ音を検出せず、圧力センサ等を用いて、阻血用空気袋14の圧力と脈波検出用空気袋の圧脈波を検出し、この圧脈波と阻血用空気袋14の圧力から最高血圧(収縮期血圧)、最低血圧(拡張期血圧)を演算する構成としてもよい。
図17に示す腕装着検知手段810は、腕帯部802の第1の開口部11R側に配置された感知センサ808と、腕帯部802の第2の開口部11P側に配置された感知センサ809を有している。
第1の感知センサである感知センサ808は、発光部811と受光部812を有する光透過型センサであり、第2の感知センサである感知センサ809は、発光部821と受光部822を有する光透過型センサである。感知センサ808は、腕帯部802の第1の開口部11R側に配置され、感知センサ809は、腕帯部802の第2の開口部11P側に配置されている。すなわち、感知センサ808は、腕帯部802の内側であってしかも肩側に配置され、感知センサ809は、腕帯部802の内側であってしかも肘側に配置されている。感知センサ808の受光部812が発生する腕装着検知信号としての感知信号KSと、感知センサ809の受光部822が発生する腕装着検知信号としての感知信号KPは、制御部120に供給されるようになっている。
【0055】
ここで、上述した腕装着検知手段810の第1機能を説明する。この腕装着検知手段810の第1機能は、既に述べたように、腕帯部802に対する腕の挿入方向が正しい方向であるか誤った方向であるかを検知する機能である。
図17(B)に示すように、腕帯部802を上腕Tに対してV方向に正しく装着した場合には、必ず先に肩側の感知センサ808の受光部812から感知信号KSが発生し、その後肘側の感知センサ809の受光部822から感知信号KPが発生する。これに対して、腕帯部802を上腕Tに対して逆方向(逆向き)に誤って装着した場合には、必ず先に肘側の感知センサ809の受光部822から感知信号KPが発生し、その後肩側の感知センサ808の受光部812から感知信号KSが発生することになる。
このため、腕帯部802の感知センサ808の受光部812からの感知信号KSと感知センサ809の受光部822からの感知信号KPを発生する順番を、制御部120が監視することにより、制御部120は、血圧測定動作を開始する前に、上腕Tに腕帯部802が正しく装着できたか否かを判定することができる。すなわち、制御部120が、腕帯部802の肩側寄りの位置に配置された感知センサ812が発生する腕装着信号KSと、腕帯部2の肘側寄りの位置に配置された感知センサ822が発生する腕装着信号KPとを比較して、どちらの前記腕検知信号が早く発生したのか判定することにより、上腕Tに対し腕帯部802が正しい方向で装着されたのか、あるいは上腕Tに対して腕帯部802が誤った方向で装着されたかを判定する。そして、腕帯部802が上腕Tに対して誤った方向(向き)で装着されている時には、制御部120は警告を発生することができる。
【0056】
次に、上述した腕装着検知手段810の第2機能を説明する。この腕装着検知手段810の第2機能は、既に述べたように、被測定者が上腕Tに腕帯部2を装着後に、被測定者が開始/停止スイッチ88を操作しなくても、腕帯部2に対して血圧測定のための加圧動作を自動的に開始させることができる機能である。
図17(B)に示すように、感知センサ808の受光部812が発生する腕検知信号としての感知信号KSと、感知センサ809の受光部822が発生する腕装着検知信号としての感知信号KPが、制御部120に供給されると、制御部120は、被測定者が図示しない開始/停止スイッチを押さなくても、駆動ポンプを駆動して、腕帯部2内の阻血用空気袋と2つのK音検出用空気袋にエアを供給して腕帯部2内の上腕Tを加圧する動作を自動的に開始することができる。
もし、通常通り、被測定者が腕帯部2を上腕Tに装着した後に、腕帯部2から手を放して開始/停止スイッチを押そうとすると、図15に示すように、腕帯部2が肩側から肘側にずり落ちてしまう。特に、被測定者の上腕Tが細い場合には、腕帯部2から手を放して開始/停止スイッチを押そうとすると、腕帯部2は肩側から肘側にずり落ちてしまう。本発明の実施形態の血圧計は、このような不都合を防ぐことができ、血圧測定をスムーズに行うことができる。
【0057】
図18は、一例として透過型光センサである感知センサ808,809を用いた場合に、感知センサ808の受光部812から感知信号KSと、感知センサ809の受光部822からの感知信号KPの具体的な信号イメージ例を示している。図18に示す感知信号KS、KPから判るように、図17(B)に示す制御部120は、感知センサ808の発光部811の発光と感知センサ809の発光部821の発光は、間欠的に駆動する。
【0058】
図18では、手首が腕帯部802に入っていない時刻TXと、時刻TA,TBを示している。図18において、手首が腕帯部802に入っていない時刻TXでは、発光部811,821からの光がそれぞれ受光部812,822に入射しているために、受光部812の感知信号KSのレベルはHighレベルであるとともに、受光部822の感知信号KPのレベルもHighレベルである。
そして、腕帯部802を上腕Tまで移動させる途中では、腕により遮光されたり遮光されなかったりする現象が不規則に生じてチャタリングが発生する可能性がある。その後、腕帯部802が上腕Tに完全に装着されると、発光部811,821からの光が上腕により遮光されて、受光部812の感知信号KSのレベルと受光部822の感知信号KPのレベルはともにLowレベルとなる。
【0059】
図18に示す、ある一定時間(τ)だけ、受光部812の感知信号KSのレベルと受光部822の感知信号KPのレベルがLowレベルを継続していると、図17(B)の制御部120は、上腕Tが腕帯部802に装着されたと判断して、時刻TAと時刻TBを求める。
制御部120は、時刻TAと時刻TBを求めた結果、時刻TA<時刻TBの関係であれば、上腕Tに腕帯部802が正しく装着されたと判定する。そうでなければ、制御部120は、上腕Tに腕帯部802が正しく装着されていないと判定して、警告を出力する。この警告のやり方としては、ブザーを鳴らしたり、スピーカを通じて音声で警報を発したり、表示部に警告マークや文字を表示する。
なお、図17に示す腕帯部802は、柔軟性を有しており折り畳み可能なものであるが、これに限らず、腕帯部802は、外ケースとして硬質のプラスチックにより包むようにしても、勿論良い。
【0060】
ところで、家庭で用いる電子血圧計の多くは、電池で動作させるために、図17と図18に示す実施形態の腕帯部802を有する血圧計は、2組の感知センサ808,809を用いて光を発光しているので、消費電力を抑える工夫が必要である。そこで、血圧計の消費電力を抑えるために、図18と図19と図21に示すような次の工夫をしている。
図18に示すように、発光部811,821は、それぞれ光を間欠的に発光駆動させることで、発光部811,821が消費する消費電力を低減することができる。発光部811,821としては、例えば発光ダイオードを使用し、受光部812,822としては、例えばフォトダイオードを使用している。図18に示すように、発光部811,821の駆動パルスのデューティは、例えば10msecと40msecに設定でき、ディーティ比は1:4である。
【0061】
また、図19は、図17に示す腕帯部802を有する血圧計1Aを示す斜視図である。図20は、図19に示す血圧計1Aの使用例を示している。
なお、ここで使用される腕帯部802は、硬質のほぼ円筒型のプラスチック製の外ケース809Cにより包まれて保持されている。
図19に示す血圧計1Aは、本体部880と腕帯部802を有している。本体部880は、ケース881と表示部882等を有している。ケース881の窪み部分883には、腕帯部802の外ケース809Cが着脱可能に搭載できるようになっている。
図19と図20に示すように、外ケース809Cには、離間検出手段としてのトリガー用のスイッチ900と金属部材807が配置されているのに対して、本体部880の上面の窪み部分883には、永久磁石901が搭載されている。永久磁石901がこの金属部材807を磁気的に吸引することで、腕帯部802を本体部880の窪み部分883に置いている状態で、腕帯部802が本体部880から落ちにくくしている。また、トリガー用のスイッチ900は、例えば、永久磁石901の磁力によりオフ状態に保持されるリードスイッチである。このトリガー用のスイッチ900は、制御部120に電気的に接続されている。
なお、離間検出手段としてのトリガー用のスイッチは、血圧計本体側に組み込んだ電気的スイッチング手段を機械的に常開させる突起を腕帯部に設けること等により構成してもよい。
【0062】
血圧計1Aを使用する際には、図20(A)と図19に示すように、血圧測定を行わない時に腕帯部802が本体部880の窪み部分883に置かれている状態では、トリガー用のスイッチ900は、永久磁石901の磁力によりオフ状態である。
そして、被測定者が血圧測定を行う場合には、図20(B)に示すように、被測定者は腕帯部802を本体部880から離間させる。すなわち持ち上げる。これにより、トリガー用のスイッチ900は、永久磁石901から離れるので、トリガー用のスイッチ900はオン状態になる。このように、被測定者が腕帯部802を本体部880から持ち上げることで、トリガー用のスイッチ900がオン状態になると、制御部120にはトリガー用のスイッチ900からトリガー信号が入って、制御部120は感知センサ808,809の発光部811,821と受光部812,822を駆動する。
これにより、制御部120は、被測定者が腕帯部802を用いて血圧測定をしていてもしていなくても、発光部811,821が常に発光駆動されてしまう状態を防ぎ、被測定者が腕帯部802を持って腕帯部802に上腕を挿入して血圧測定を行う場合だけ、発光部811,821を間欠的に発光駆動させることができる。このため、消費する消費電力を低減することができるので、電池駆動を用いている場合に特に有利である。発光部811,821が消費する消費電力を低減することができる。
【0063】
本発明の各実施形態は、任意に組み合わせることができる。
ところで、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変形例を採用することができる。例えば、上述した図18に示す感知センサ808,809としては、透過型光センサを例に挙げているが、これに限らず、例えば反射型光センサを用いることも可能である。反射型光センサは、発光部と受光部から構成され、発光部と受光部は隣に配置されており、発光部の光は腕で反射して、その反射光は受光部で受光するようになっている。
腕挿入検知センサの配置数は、1つあるいは2つに限らない。図1に示す腕帯部2には、2つのK音検出用空気袋50を配置するのに代えて、K音を検出するマイクロフォンを配置しても良い。
上述した本発明の実施形態の血圧計においては、折り曲げ可能な腕帯部の外布のほぼ全体を、剛性を有し取っ手を備えたプラスチック製の筐体で包むようにしてもよい。こうすることで、血圧測定時に、上腕に腕帯部2が装着しやすくなる。
【符号の説明】
【0064】
1・・・血圧計、2・・・腕帯部、10・・・血圧計本体、11P、11R・・・開口部、14・・・阻血用空気袋、16・・・外布16、17・・・内布、110・・・加圧手段である2つの駆動ポンプ、120・・・制御部、700・・・腕装着検知手段、802・・・腕帯部、810・・・腕装着検知手段、TSG・・・腕検知信号、KS、KP・・・腕装着検知信号としての感知信号
【技術分野】
【0001】
本発明は、上腕に装着する腕帯部を有する血圧計に関する。特に、腕帯部を上腕に巻きつける必要がない血圧計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療機関で行われている高血圧治療向けの血圧測定において、白衣性高血圧症による擬似高血圧が問題にされている。この擬似高血圧症の原因としては、病院内での医師の前での緊張、不安等の精神面での不安定が考えられている。これに対して、精神的に安定している家庭にて測定した血圧値に注目が集まっている。このため、この家庭での血圧測定に用いる電子血圧計が注目されている。
このタイプの血圧計で測定上問題となるのが、腕帯部の腕への装着の仕方である。腕帯部内の空気袋の位置が上腕に対して適当でない場合や、上腕に対して巻き付け強さが適当でない場合に、腕帯部の空気袋の圧迫が上腕に正しく行われず、血圧が高く測定される場合がある。近年、これを解決するために、筒状の腕帯部に腕を挿入するだけで、自動的に腕帯部の阻血用の空気袋を適切な巻き付け強さにて血圧測定を行うことができるようにした血圧計本体と腕帯部を一体とした電子血圧計が提案されている(特許文献1を参照)。
【0003】
しかし、使用者が上記血圧計を使用すると、腕を挿入する腕帯部が血圧計本体と一体となっているので、血圧計本体の位置が被測定者の前方に離れていた場合には、被測定者は前かがみ状態での測定となり易い。このため、被測定者の腹部が圧迫されて腹圧が上昇し、その結果血圧が上昇する現象が見られる場合がある。この血圧上昇は、新たな擬似高血圧症の発生として指摘されている。
【0004】
そこで、腕帯部が血圧計本体とは別体に形成されているものが提案されており、腕帯部は剛体のケースを有しており、このケース内に阻血用の空気袋が配置されている。これにより、被測定者が座位にて血圧測定する場合に、血圧計本体から腕帯部を分離できるので、上腕を腕帯部に挿入するだけで測定可能となる利便性を損なわず、血圧計本体の設置場所が被測定者から前方に離れていても、測定者が正しく、背を伸ばした状態にて腹圧の掛からない状態で血圧測定をすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005―237427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、被測定者が血圧計の腕帯部を用いて血圧測定を行う場合には、右利きの被測定者は右手で腕帯部を持って左腕に対してこの腕帯部を装着した後、右手を腕帯部から離して右手で血圧計本体の開始スイッチを押すことで血圧測定を開始する。また、左利きの被測定者は左手で腕帯部を持って右腕に対してこの腕帯部を装着した後、左手を腕帯部から離して左手で血圧計本体の開始スイッチを押すことで血圧測定を開始する。被測定者がこの開始スイッチを押すこと自体の操作は簡単ではあるが血圧測定時の1つの手間には違いないので、可能であれば開始スイッチの操作が無くても血圧測定動作ができることが望ましい。特に、被測定者が高齢者の場合には、開始スイッチの操作が無い方が血圧測定動作をスムーズに行える。
【0007】
また、例えば右利きの被測定者が右手で腕帯部を持って左腕にこの腕帯部を装着した後、右手で支持していた腕帯部を放して血圧計本体の開始スイッチを右手で操作すると、せっかく上腕に装着した腕帯部がその腕帯部の自重で上腕から肘側に下がってしまうことがしばしばあり、腕帯部が肘側にかかってしまうと正しい血圧測定ができない場合が生じる。従って、右手で腕帯部を支持している間に、上腕を血圧測定のために腕帯部による加圧動作を開始したい。しかも、特に被測定者の腕が細い場合には、腕帯部が肘側にずり落ちるおそれがあり、正しい血圧測定ができないことがある。
そこで、本発明は、上記課題を解消するために、被測定者が上腕に腕帯部を装着後に被測定者が開始スイッチを操作しなくても、腕帯部は血圧測定のための加圧動作を自動的に開始することができる血圧計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の血圧計は、被測定者の上腕に装着され、阻血用空気袋を有する腕帯部と、前記阻血用空気袋に空気を送る血圧計本体と、を有する血圧計であって、前記腕帯部に配置されて前記上腕に前記腕帯部が装着されることを検知して腕装着検知信号を発生する腕装着検知手段と、前記腕装着検知手段から前記腕装着検知信号を受けると、前記血圧計本体側から前記阻血用空気袋に空気を送る指示を出して前記阻血用空気袋への加圧動作を開始させる制御部と、を備えることを特徴とする。
上記構成によれば、被測定者が上腕に腕帯部を装着すると腕装着検知手段から腕装着検知信号が制御部に送られて、この制御部は阻血用空気袋による上腕の加圧動作を開始させるので、被測定者が開始スイッチを操作しなくても、腕帯部は血圧測定のための加圧動作を自動的に開始することができる。
好ましくは、前記腕装着検知手段は、前記腕帯部が装着される前記上腕の温度を検知する温度センサであることを特徴とする。
上記構成によれば、温度センサを配置するだけで、被測定者が開始スイッチを操作しなくても、腕帯部は血圧測定のための加圧動作を開始することができる。
【0009】
好ましくは、前記腕装着検知手段は、前記腕帯部の肩側寄りの位置ではなく前記腕帯部の肘側寄りの位置に配置されていることを特徴とする。
上記構成によれば、腕帯部の肩側寄りの位置ではなく前記腕帯部の肘側寄りの位置に腕装着検知手段が配置され、この肘側寄りの位置に配置された腕装着検知手段が腕装着検知信号を発生させるので、上腕が腕帯部に完全に装着される時点に対してできるだけ遅らせた時点から阻血用空気袋による上腕の加圧動作を開始させることができる。このため、電池駆動により空気を阻血用空気袋に送るスタートのタイミングを遅らせることができ、電池駆動を用いる場合に節電が図れる。また、腕帯部が装着される途中で、腕が抜かれる動作を想定した場合、腕装着検知手段を肘側寄りに配置することにより、不要な加圧動作の開始を防止できる。
【0010】
好ましくは、前記腕装着検知手段は、前記腕帯部に挿入された前記上腕に光を当てる発光部と、前記発光部から前記光を受光する受光部とからなる感知センサであることを特徴とする。
上記構成によれば、発光部と受光部を配置するだけで、被測定者が開始スイッチを操作しなくても、腕帯部は血圧測定のための加圧動作を開始することができる。
【0011】
好ましくは、前記感知センサは、前記腕帯部の肩側寄りの位置と、前記腕帯部の肘側寄りの位置にそれぞれ配置され、前記制御部に電気的に接続されていることを特徴とする。
上記構成によれば、制御部が、腕帯部の肩側寄りの位置に配置された感知センサが発生する腕装着検知信号と、腕帯部の肘側寄りの位置に配置された感知センサが発生する腕装着検知信号とを比較して、どちらの前記腕装着検知信号が早く発生したのか判定することにより、腕が腕帯部に対して正しい方向に挿入されたのか、あるいは腕が腕帯部に対して誤った方向に挿入されたかを判定して、例えば誤った方向に挿入されている時には警告を発生することができる。
好ましくは、前記腕帯部が、前記血圧計本体から離間されたことを検出して、前記腕装着検知手段を駆動する離間検出手段を備える構成としたことを特徴とする。
上記構成によれば、前記腕装着検知手段を常時駆動する必要はなく、血圧計の使用に先だって、腕帯部を血圧計本体から離したことを、血圧計使用の予備行為と位置付けて、離間検出手段は腕帯部の離間を検出して、その際に初めて腕装着検知手段を駆動すれば、例えば、該腕装着検知手段が電力により駆動される場合に、省電力を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被測定者が上腕に腕帯部を装着後に被測定者が開始スイッチを操作しなくても、腕帯部は血圧測定のための加圧動作を自動的に開始することができる血圧計を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の血圧計の実施形態の全体を示す斜視図である。
【図2】図2(A)は、図1に示す血圧計の血圧計本体を左後ろ側から見た斜視図である。図2(B)は、図1に示す血圧計の血圧計本体を右後ろ側から見た斜視図である。
【図3】図3(A)は、腕帯部の内部構造例を示す断面図であり、図3(B)は、腕帯部を折り畳んだ状態を示す正面図であり、図3(C)は、腕帯部を折り畳んだ状態を示す斜視図である。
【図4】折り畳まれた腕帯部が筐体部の背面側に保持部を用いて着脱可能に収納される様子を示す側面図である。
【図5】血圧計本体の底部を示す図である。
【図6】図6(A)は、蓋体を開けて電池収納部内に4本の電池が収納されている状態を示し、図6(B)は、電池収納部内から4本の電池が取り除かれた状態を示す図である。
【図7】電池収納部の電池収納用凹部と傾斜部の形状例を示す断面図である。
【図8】血圧計本体の筐体部から表示面部を取り外して、筐体部の内部を露出させた状態を示す斜視図である。
【図9】血圧計本体の筐体部から表示面部を取り外して、筐体部の内部を露出させた状態を示す別の角度から見た斜視図である。
【図10】筐体部の図6に示す底部を取り除き筐体部内を示す図である。
【図11】2つの駆動ポンプと、制御バルブと排気バルブと、接続配管系と、その他の要素を示す図である。
【図12】腕帯部の阻血用空気袋と、K音信号を検出する2つのK音検出用空気袋と、コンデンサマイクロフォン等と、接続配管系の接続関係を示す図である。
【図13】被測定者が腕帯部に上腕Tを通して、阻血用空気袋にエアを供給して上腕Tを加圧して血圧測定をしている例を示す図である。
【図14】図1に示す血圧計のブロック構成図である。
【図15】本発明の実施形態を適用しない場合に、腕帯部が肩側から肘側にずり落ちる様子を説明する図である。
【図16】比較して説明するために、通常用いられている腕帯部の例と、この通常の腕帯部を用いる場合の不都合を示す図である。
【図17】本発明の血圧計の別の実施形態を示す図である。
【図18】一例として透過型光センサである感知センサを用いた場合に、一方の感知センサの受光部から感知信号KSと、他方の感知センサの受光部からの感知信号KPの具体的な信号イメージ例を示す図である。
【図19】図17に示す腕帯部を有する血圧計を示す斜視図である。
【図20】図19に示す血圧計の使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、コロトコフ音法による血圧計である本発明の血圧計の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明するが、圧脈波や光電脈波を用いた、いわゆるオシロメトリック法による血圧計にも適用できる。
図1は、本発明の血圧計の実施形態の全体を示す斜視図である。図2(A)は、図1に示す血圧計の血圧計本体を左後ろ側から見た斜視図である。図2(B)は、図1に示す血圧計の血圧計本体を右後ろ側から見た斜視図である。
図1に示す血圧計1は電子血圧計ともいい、この血圧計1では、腕帯部2と血圧計本体10は別体になっており、図1と図2に示す血圧計本体10から図1に示す腕帯部2を分離して使用する。この血圧計1は、腕帯部と本体部が一体となった一体型血圧計と違い、被測定者が座位にて測定する時に、血圧計本体10の設置場所が被測定者から前方に離れていても、腕帯部2を上腕Tに装着することで、背を伸ばして腹圧の掛からないリラックスした状態で、より正確な血圧測定が可能である。
【0015】
図1に示す腕帯部2はカフともいい、腕帯部2は一定(所定)の外周長さを有しており、円周方向で折り畳み可能な柔らかな材質で作られた切れ目の無いソフトな筒体であり、2つの開口部11P、11Rを有している。被測定者の上腕Tに腕帯部2を装着すると、開口部11Pは手指側(肘側)に位置され、反対側の開口部11Rは肩側に位置される。開口部11Rの内径は、開口部11Pの内径よりも大きい。被測定者は、開口部11R側から開口部11Pにかけて腕帯部2を装着させることで、腕帯部2は、被測定者の肘よりも上の上腕Tに保持して血圧を測定するようになっている。
【0016】
腕帯部2は、上腕Tを阻血するための阻血用空気袋14と、K音(コロトコフ音)信号を検出するための2つのK音検出用空気袋50を内蔵している。阻血用空気袋14は、血圧計本体10側からエアを供給することにより上腕Tの動脈を加圧して阻血する。阻血用空気袋14の空気収容容量は、K音検出用空気袋50の空気収容容量に比べて大きい。図1に示すように、2つのK音検出用空気袋50は、腕帯部2が上腕Tに装着された状態では、対向位置になるように配置されている。
K音検出用空気袋50はK音を検出するための空気袋であり、K音は、腕帯部2の阻血用空気袋14の内圧を最高血圧以上に上げて血管を一旦圧閉した後、内圧を徐々に下げて内圧が最高血圧以下になり、血管が開き始めると発生し、内圧が最低血圧以下になり、血管の圧閉が消失するまでの間検出できる音信号である。
圧脈波を用いたオシロメトリック法による血圧計の場合には、阻血用空気袋14からの圧力と圧脈波を検出することでK音検出用空気袋は不要となる。また、圧脈波を用いたオシロメトリック法による血圧計の場合には、阻血用空気袋14に代えて脈波を検出する脈波検出用空気袋を設けることで、S/N比が優れ、生活環境のノイズ等の影響を受けず、脈波をより正確に検出できるので、より正確な血圧測定ができる。
【0017】
図1に示すように、腕帯部2には、腕の挿入を検知する腕挿入検知センサとしての温度センサ700が配置されている。この温度センサ700は、電気配線701とエアプラグ6を介して、血圧計本体10内の破線で示す制御部120に対して電気的に接続されている。
温度センサ700は、腕帯部2の肩側の開口部11Rから手指(肘)側の開口部11Pにかけて正しい方向に腕を挿入したことを、腕の熱を感知することで検知するためのものである。温度センサ700が被測定者の上腕Tの挿入を検知すると、温度センサ700は、腕検知信号TSGを制御部120に送るようになっている。
【0018】
図1に示すように、腕帯部2と血圧計本体10は、エアチューブ4,5と上述した電気配線701とエアプラグ6を介して接続されている。電気配線701はエアチューブ4,5と一体的に配線されていることが望ましい。エアチューブ4,5は、好ましくは複胴管(複導管ともいう)を構成しているフレキシブルなエラストマチューブである。エアチューブ4,5は、全長に渡って(あるいはほぼ全長に渡って)一体的に形成されている。第1エアチューブとしてのエアチューブ4は、腕帯部2の阻血用空気袋14へのエアの給排気に用いられ、第2エアチューブとしてのエアチューブ5は、K音信号を検出する2つのK音検出用空気袋50へのエアの給排気に用いられる。エアチューブ4はエアチューブ5に比べてより太いチューブであり、エアチューブ4の内径と外径は、エアチューブ5の内径と外径に比べて大きく設定されている。
【0019】
まず、図1と図3を参照して、腕帯部2の構造例を説明する。
図3(A)は、腕帯部2の内部構造例を示す断面図であり、図3(B)は、腕帯部2を円周方向で折り畳んだ状態を示す正面図であり、図3(C)は、腕帯部2を円周方向で折り畳んだ状態を示す斜視図である。
図1と図3に示すように、腕帯部2は、外周方向に沿っては切れ目のない筒状の部材であり、所定(一定)の長さの外周を有していて、この腕帯部2の中に被測定者の上腕Tを通すことができるようになっている。図3(B)と図3(C)に示すように、腕帯部2は被測定者が簡単に円周方向で折り畳むことができる柔軟性を有し、図1と図3(A)に示すように、例えば外布16と、内布17と、上腕Tを阻血するための阻血用空気袋14と、K音信号を検出する2つのK音検出用空気袋50を有している。
【0020】
外布16の内側面と内布17の外側面は、阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50を包んでおり、外布16と内布17は、阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50が収納可能なド−ナツ状の空間を作るために、外布16の端部と内布17の端部は、例えば縫製により接合している。
なお、2つのK音検出用空気袋50は、好ましくは腕帯部2の長手方向(軸方向)の中間位置よりも開口部11P側寄りの位置(肩側寄りではなく、手指より側の位置)に配置するのが良い。このようにすることで、2つのK音検出用空気袋50のいずれかを上腕Tの動脈に対応する部分に当てることができる。
【0021】
外布16は、阻血用空気袋14の外面を覆う筒体でなり、円周方向及び長手方向に非伸縮性の材料で形成されており、変形可能であるが伸縮性が非常に低いかほとんど無い布部材である。これにより、外布16は、阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50内にエアを供給した際に、阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50が腕帯部2の半径方向の外側に膨れないようにすることができ、阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50は半径方向の内側である上腕T側に膨れることになる。このため、阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50の圧力は、腕帯部2の外側へは逃げずに上腕に対して加圧でき、正確な血圧測定をすることができる。
【0022】
外布16は、例えば伸びにくい生地(201BE)を採用でき、引張強度は、JIS L1096−A法で測定した値として、タテが1430N/in〜1460N/inで、ヨコが810N/in〜850N/inである。さらには、タテが1430N/in〜1460N/inで、ヨコが810N/in〜850N/inであることが好ましい。タテとヨコともに、この数値範囲よりも小さいと阻血用空気袋14の外側への膨らみの抑制が弱くなり、また、この数値範囲よりも大きいと上腕Tの挿入に影響が出る可能性がある。外布16としては、例えば、ポリエステル100%の生地を用いると、タテが1445N/inで、ヨコが827N/inである。
【0023】
内布17は、阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50の内面を覆う筒体でなり、変形可能で伸縮性を有し、上腕Tの被測定面に当接する当接布部である。内布17は、弾性を備えていてしかも伸縮性を有する布部材である例えば伸びやすい生地を採用でき、引張強度は、JIS L1096−A法で測定した値として、タテが94.9N/inで、ヨコが150.7N/inである。引張伸度は、JIS L1096−A法で測定した値として、タテが517%で、ヨコが400%である。内布としては、例えば、ナイロン80%、ポリウレタン20%の生地である。内布17は、阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50が上腕Tの被測定面に向けて膨張できるように伸縮性を持たせた素材にて、かつ、腕帯部2を被測定者の手先から挿入して、肘の上部の上腕Tまでスライドさせて装着させる必要があるので、スベリの良い材質、例えば、ジャ−ジ素材を使用している。
【0024】
図3に示すように、図1で示した腕挿入検知センサとしての温度センサ700は、肩側の開口部11R寄りの位置よりも、手指(肘)側の開口部11P寄りの位置に配置されることが望ましいが、温度センサ700の位置は特に限定されない。温度センサ700は、例えば内布17の内側であって腕に直接接触する位置か、あるいは内布17の外側であって腕には直接接触しない位置に配置されている。この温度センサ700は、例えば測温抵抗体を用いた温度センサ、熱電対を用いた温度センサ、サーミスタを用いた温度センサ等を用いることができる。
【0025】
図1と図3(A)〜図3(C)に示すように、開口閉鎖部材30は、腕帯部2の内部において、開口部11P側であってしかもエアチューブ4とエアチューブ5が導出(接続)されている側に設けられている。この開口閉鎖部材30は、例えば着脱可能な面ファスナーを用いることができ、面ファスナーのオス部材31とメス部材32を有している。オス部材31とメス部材32は、腕帯部2の内側において対面する位置に固定されており、図3(B)と図3(C)に示すように、オス部材31とメス部材32を着脱可能に連結することにより、腕帯部2の開口部11P側だけを閉じて、開口部11Rは開放した状態に維持することができる。
これにより、腕帯部2に対して開口閉鎖部材30を設けることで、被測定者が腕帯部2に対して手先を通して血圧測定をしようとする際に、閉じている開口部11P側からは手先を通すことが無く、開いている開口部11R側から迷わずに手先を通すことができる。このため、被測定者が腕帯部2に対して誤って手先を開口部11P側から逆挿入してしまうことを防止することができる。もし、被測定者が腕帯部2に対して開口部11P側から逆挿入してしまうと、K音検出用空気袋50が上腕Tの動脈に適切に当たらなくなり、正確に血圧測定ができなくなる。
また、腕帯部2に対して開口閉鎖部材30を設けることで、腕帯部2を使用しない時に折り畳むのが容易にできる。
【0026】
図1と図3に示すように、腕帯部2は、方向視認用部材であるタグ33を有している。このタグ33は、開口部11R側であって、外布16に対して例えば接着剤を用いるか、縫製により固定されている。タグ33は、腕帯部2の開口部11R側の端部からV方向に沿って突出して設けられており、例えば布部材あるいはプラスチック部材により作ることができる。図3(A)に示すように、被測定者が例えば腕帯部2に左腕を挿入して血圧測定をする際には、タグ33を右腕の指Fでつかんで腕帯部2をV方向に移動することができる。このタグ33には、好ましくは「肩側」表示33Sを表記することができる。これにより、被測定者は、このタグ33をつかんでV方向に移動するだけで上腕Tに対して腕帯部2の装着動作が容易にできるばかりでなく、腕帯部2の装着方向が明確になるので、開口部11R側から迷わずに手先を通すことができる。このため、被測定者が腕帯部2に対して誤って手先を開口部11P側から逆挿入してしまうことを防止することができる。すなわち、チューブ側の開口部を閉じることができるので、被測定者が上腕に対して誤って逆方向に装着することを容易に防止でき、被測定者が上腕に対して正しい方向に装着することができる。
【0027】
次に、血圧計本体10の構造例について説明する。
図1と図2に示すように、血圧計本体10は、筐体部60と、表示面部61と、腕帯部2の保持部62を有している。筐体部60と表示面部61と保持部62は、電気絶縁性を有する材料、例えばプラスチックにより作られている。表示面部61は、筐体部60の前面側に設けられ、被測定者が表示部63に表示される表示内容が見やすいように傾斜角度θを60度程度に傾斜されている。
図2(A)と図2(B)に示すように、筐体部60は、側面部68,69と、背面66と、破線で示す前面側開口部70と、筐体部60から突出して設けられた上面部71と、底部72を有している。
図1に示すように、表示面部61は、表示部63と、透明な例えばアクリル板のような保護板64と、枠状の保持部材65を有している。表示部63は保持部材65により保持され、保護板64は保持部材65に固定されて表示部63の表面を保護している。この保持部材65は、筐体部60の破線で示す前面側開口部70に対して着脱可能に装着されている。この保持部材65を筐体部60から取り外すことにより、筐体部60の破線で示す前面側開口部70を通じて筐体部60の内部を露出させることができる。
【0028】
図2に示すように、腕帯部の保持部62は、筐体部60の背面側に着脱可能に取り付けられている。図4には、折り畳まれた腕帯部2が筐体部60の背面66側に保持部62を用いて着脱可能に収納される様子を示している。
腕帯部の保持部62は、保持面62Aと脚部62Bを有している。筐体部60の下部側には、差込口67が形成されている。脚部62Bの先端部62Cは、この差込口67に挿入されることにより、腕帯部の保持部62は、筐体部60の背面66側に着脱可能に取り付けることができる。保持面62Aと筐体部60の背面66の間には、折り畳まれた腕帯部2を着脱可能に収納することができる。これにより、被測定者が腕帯部2を使用しない場合には、折り畳まれた腕帯部2を容易にしかも確実に収納することができる。被測定者が血圧測定しない場合に、腕帯部2が筐体部60の背部にあるので、被測定者は、腕帯部2により邪魔されることなく、表示部63の表示内容例えば時間や室温等を目視で確認できるので、血圧測定に適した温度(環境温度)であるか否か容易に確認でき、更には、血圧計1の見栄えを良くすることができる。このため、血圧計本体10は、使用しない時には例えば時計としてリビングルーム等に飾っておくことができる。
【0029】
図2(A)に示すように、筐体部60の側面部(筐体に向かって左側側面部)68の下部位置には、O−リング(不図示)を備えたエアプラグ差込口73が形成されている。このエアプラグ差込口73には、エアプラグ6が着脱可能に装着できる。エアプラグ差込口73は、エアプラグ6の形状に合わせて、上部分73Aの幅d1は、丸み形状の下部分73Bの幅d2に比べて大きく設定されている。エアプラグ差込口73の内部には、差し込み穴73G、73Hを有している。
一方、エアプラグ6の構造例は、図5に示している。図5(A)は、エアプラグ6の外観を示す斜視図であり、図5(B)は、エアプラグ6の内部構造例を示す断面図である。
【0030】
図2(B)において、筐体部60の側面部(エアプラグ差込口73が形成された側面部68とは反対側)69には、スピーカ85と、ACアダプタを接続するための接続穴86が設けられている。この接続穴86には、ACアダプタ87の接続ジャック87Aが接続されることで、血圧計本体10には商用電源から電源供給できる。接続穴86は、エアプラグ差込口73は、設けられている配置も大きさも形状も全く異なるため、エアプラグ6を間違えて差し込むことが防止できる。
図2(A)に示すように、筐体部60の上面に突出して設けられた上面部71には、筐体部60の正面に向かって、右側から、開始/停止スイッチ88、メモリ―ボタン88M、時刻設定/メモリ―消去ボタン88Tの各種の操作ボタンが配置されている。この開始/停止スイッチ88は、他のスイッチより大きく(幅広)に形成され、被測定者が押すことにより血圧計1の血圧測定動作を緊急に停止させる緊急停止スイッチ機能と、被測定者が押すことにより阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50の圧力を緊急に強制排気させる緊急排気スイッチの機能と、被測定者が押すことにより制御部の動作をリセットさせる制御部のリセット機能を兼ねている。
【0031】
図5は、筐体部60の底部72を示している。底部72はほぼ長方形状の平面部分であり、底部72には電池収納部90が配置され、この電池収納部90を開閉する蓋体91を備えている。蓋体91は、2つのヒンジ92により電池収納部90を開閉できる。
図6(A)は、蓋体91を開けて電池収納部90内に4本の単3形電池93が収納されている状態を示し、図6(B)は、電池収納部90内から4本の単3形電池93が取り除かれた状態を示している。4本の単3形電池93は、血圧計1の駆動電源であるが、乾電池(一次電池)であっても充電池(二次電池)であっても良い。電池のサイズは、単3形電池に限らず、他の大きさの電池、例えば単2形電池であっても良い。電池の本数は、4本に限らず、例えば6本以上であっても良い。
電池収納部90と蓋体91は、底部72の幅方向M及び長さ方向Nに関してそれぞれ中央部に設けられている。つまり、電池収納部90と蓋体91は、底部72のほぼ中央位置に設けられている。これにより、内蔵される複数本の単3形電池93が、筐体部60の中心位置に配置できるので、筐体部60の底部72を置いた場合に、これらの電池の重みにより、血圧計本体10は転倒しないように安定して置くことができ、血圧計本体10の安定性を得ることができ、血圧測定が安定して行える。
【0032】
図6(B)に示すように、電池収納部90の内底部分には、2本の単3形電池93を電気的の直列に配置するために、電池収納用凹部94と電池収納凹部95が並列に形成されている。これらの電池収納用凹部94と電池収納凹部95は、それぞれ2本の単3形電池93を動かないように収納するために、例えば断面半円形状の凹部であり、中央位置には長手方向に沿って仕切り部分96が形成されている。電池収納用凹部94には、電気接点90A,90Bが設けられ、電池収納用凹部95には、電気接点90C,90Dが設けられている。電気接点90A,90Cには、それぞれ単3形電池93の正極が接触し、電気接点90B,90Dには、それぞれ単3形電池93の負極が接触する。4本の単3形電池93は、2本ずつ電池収納用凹部94と電池収納凹部95にそれぞれ収納されているが、4本の単3形電池93は電気的には直列に接続されている。
【0033】
図6(B)と図7に示すように、電池収納用凹部94には、2つの傾斜部97が形成され、同様にして電池収納凹部95にも、2つの傾斜部97が形成されている。これらの傾斜部97の形状は、図7に示しており、それぞれ単3形電池93の負極側に対応して形成されている。各傾斜部97は、電池収納用凹部94からさらに斜めに落とし込まれた部分である。
これにより、図7(A)に示すように、電池収納用凹部94内に4本の単3形電池93が収納された状態で、被測定者が指で矢印H方向に単3形電池93の負極側を押すことにより、図7(B)に示すように単3形電池93の負極側が傾斜部97内に押し込まれるので、単3形電池93の正極側は電池収納用凹部94内から矢印K方向に持ち上げることができる。従って、被測定者が電池交換する時に電池の取り外しが容易に行え、電池収納部内から電池が不用意に突然飛び出して落としてしまうといったことが生じない。
なお、図6に示すように、蓋体91の内面には、傾斜部97に対応する位置に「押す」及び「矢印」表示99が配置されている。これにより、図6(A)に示すように、被測定者が電池交換する際に、電池収納用凹部94,95にそれぞれ単3形電池93が収納されていても、被測定者は電池を押すべき位置を簡単に知ることができ、電池を取り出して電池交換が容易になる。さらに、電池収納部90の長手方向に仕切りを設けて2室として単3形電池93が2個ずつ並列に収納されるようにすることで、電池交換する時に電池の取り外しが更に容易になる。
【0034】
図8と図9は、血圧計本体10の筐体部60の前面側開口部70から表示面部61を取り外して、筐体部60の内部を露出させた状態を示している。筐体部60の内部には、回路基板100と隔壁101が配置されている。回路基板100は、フレキシブル配線板102を介して、開始/停止スイッチ88(図2を参照)等の操作ボタンに対して電気的に接続されている。また、回路基板100は、フレキシブル配線板103を介して表示部63に電気的に接続されている。
隔壁101は、筐体部60内において筐体部60と一体的に形成されている。隔壁101は、後で説明する加圧手段としての2つの駆動ポンプ110と、減圧手段としての制御バルブ111と排気バルブ112とを、回路基板100の制御部120から隔離するために設けられている。この隔壁101を設けることにより、加圧手段である駆動ポンプ110と、減圧手段としての制御バルブ111と排気バルブ112とを、回路基板100の制御部120から距離的に離すことができ、例えば駆動ポンプ110が動作するときに生じる熱が、回路基板100の制御部120に伝わりにくくなり、回路基板120上に搭載されている要素は熱の影響を受けにくい。
【0035】
図10は、筐体部60の図7に示す底部72を取り除き筐体部60内を示している。筐体部60の内部には、スピーカ85と接続部86と、2つの駆動ポンプ(エアポンプ)110と、制御バルブ111と排気バルブ112等が収容されている。
図11は、2つの駆動ポンプ110と、制御バルブ111と排気バルブ112と、接続配管系と、その他の要素を示している。図11に示すように、制御バルブ111と排気バルブ112は、ジャバラ管121を介してマニホールド122の第1マニホールド部122Aの一端部に接続されている。また、2つの駆動ポンプ110は、ジャバラ管121を介してマニホールド122の第1マニホールド部122Aの一端部に接続されている。第1マニホールド部122Aの他端部は、第2マニホールド部122Bの一端部に接続されている。
【0036】
図1と図2(A)に示すように、2つのK音検出用空気袋50に接続されたエアチューブ5の内径と外径は、阻血用空気袋14に接続されたエアチューブ4の内径と外径に比べて、細くしている。これは、2つのK音検出用空気袋50と、血圧計本体10側に配置された図11に示すコンデンサマイクロフォン125とを接続するために、エアチューブ5は腕帯部2が上腕Tに装着できる長さを必要とし、しかも2つのK音検出用空気袋50内で発生するK音が、エアチューブ5を通過する際に減衰もしくは拡散するのを防いで、K音がコンデンサマイクロフォン125に確実に到達できるようにするためである。
第2マニホールド部122Bの途中には、可撓性のシリコンチューブのようなチューブ123の一端部が接続されている。このチューブ123の他端部であって自由端124の途中には、コンデンサマイクロフォン125が内蔵して設けられている。コンデンサマイクロフォン125を用いることにより、圧電マイクロフォンを用いるのに比べて低い周波数の音を検出することができる。これにより、チューブ123として例えばシリコンチューブを用いることにより、例えばスピーカ85が発生する音や、開始/停止スイッチ88等の各種の操作ボタンの操作に伴い発生する音等のノイズがコンデンサマイクロフォン125に達するのを防ぐことができ、低い周波数であるコロトコフ音を確実に検出でき、正確な血圧測定が行える。
【0037】
シリコンチューブ自体がノイズを吸音でき、コンデンサマイクロフォン125は、K音を検出するために第2マニホールド部122Bの途中の位置に設けられている。このコンデンサマイクロフォン125の外径は、3.5〜4.5mm、好ましくは4.0mmである。このコンデンサマイクロフォン125の外径が、3.5mmよりも小さいとK音検出感度が悪くなり、4.5mmよりも大きいとK音だけでなく脈波も検出してしまう恐れがあり、S/N比が低下する。
なお、図11に示すように、コンデンサマイクロフォン125は、チューブ123の途中に形成された分岐部分123D内に配置しても良い。
【0038】
図11に示すように、タンク126は、2本の接続筒126Aを有しており、2本の接続筒126Aは、チューブ127とジャバラ管121に対して、それぞれ可撓性を有する抵抗チューブ129A,129Bを介して接続されている。タンク126と2本の抵抗チューブ129A,129Bは、エアフィルタ130を構成している。第1マニホールド部122Aの途中には、チューブ128が接続されており、このチューブ128は、エアチューブ5を通じてK音検出用空気袋50に接続されている。
抵抗チューブ129A,129Bの内径は、チューブ127と接続筒126Aの内径よりも小さく、抵抗チューブ129A,129Bの端部はチューブ127と接続筒126A内に挿入することで接続されている。
【0039】
なお、図11に示すように、抵抗チューブ129A,129Bの両端部内には、抵抗チューブ129A,129Bが潰れるのを防止するために、円周方向に弾性を有する金属製の割りピンのようなフィルタ部材としてのピン133が配置されている。ピン133は、長さが7mm、外径0.8mm、内径0.5mmである。これにより、抵抗チューブ129A,129Bの両端部が細いチューブであるにもかかわらず、実装時等に潰れることがなく、確実に抵抗チューブ129A,129B内にエアを通すことができ、さらにノイズ除去の効果を有する。
また、可撓性を有するチューブ123内にも、円周方向に弾性を有する金属製の割りピンのような接続管134を配置することができる。接続管134は、長さが12mm、外径4〜4.5mm、内径3〜4mmである。これにより、可撓性を有するチューブ123であるにもかかわらずつぶれることが無く、確実にコンデンサマイクロフォン125に対して、ノイズが除去されたエアを供給することができる。接続管134は、長さが12mmより長いと、実装しづらくなる。また、長さが8mmより短いと、チューブ123の揺動の影響を受ける。また、外径が4.5mmより大きいと、実装しづらくなる。
【0040】
図12(A)は、腕帯部2の阻血用空気袋14と、K音信号を検出する2つのK音検出用空気袋50と、コンデンサマイクロフォン125等と、接続配管系の接続関係を示している。図13(B)は、エアフィルタ130等を示している。
図12(A)と図12(B)に示すように、腕帯部2は、阻血用空気袋14と、K音信号を検出する2つのK音検出用空気袋50を有している。阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50は、例えば透明のプラスチックシート、一例としてポリウレタンシートにより形成されている。2つのK音検出用空気袋50は、阻血用空気袋14の内面側に例えば両面粘着テープまたは接着剤により固定されており、図1に示すように2つのK音検出用空気袋50は互いに離れている。
なお、K音検出用空気袋50が阻血用空気袋14の内側面に少なくとも2つ配置されているのは、左右のいずれの上腕においても測定可能にするためであり、K音検出用空気袋50を上腕Tの動脈位置に位置させることができる。また、このK音検出用空気袋50が動脈の位置からラジアル方向にずれて装着された場合でも、一方のK音検出用空気袋50が、上腕TのK音の伝達効率が高い上腕筋部位に配置できる。
【0041】
図12(A)と図12(B)に示すように、太いエアチューブ4が阻血用空気袋14と制御バルブ111、排気バルブ112、駆動ポンプ110に接続され、細いエアチューブ5が2つのK音検出用空気袋50とコンデンサマイクロフォン125に接続されている。太いエアチューブ4と細いエアチューブ5の間には、消音器としてのT型のエアフィルタ130が接続されている。
このエアフィルタ130の抵抗チューブ129Bが設けられているのは、次の理由からである。血圧測定時に2つのK音検出用空気袋50からのエアチューブ5を通じて得られるK音が、抵抗チューブ129Bを設けることによりエアチューブ4側に漏れないようにして、コンデンサマイクロフォン125側に小さなK音を音圧が低下しないようにきれいに導けるようにするためである。
【0042】
また、エアフィルタ130の抵抗チューブ129Aが設けられているのは、次の理由からである。図13は、図1に示すように被測定者が腕帯部2に上腕Tを通して、阻血用空気袋14にエアを供給して上腕Tを加圧して血圧測定をしている例を示すグラフである。縦軸は圧力を示し、横軸は時間である。
図13において、制御バルブ111と2つの駆動ポンプ110を作動して、図12に示す阻血用空気袋14にエアを供給して上腕を時点t1まで加圧して、その後制御バルブ111が作動して阻血用空気袋14内のエア圧を傾きが一定になるように減圧させていく。この減圧させる途中では最高血圧と最低血圧を検出して、その後排気バルブ112を作動して阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50内のエアを抜く。このように、血圧測定中に、上腕を加圧して減圧すると制御バルブ111から作動音が生じるので、この作動音がエアチューブ4を通じてコンデンサマイクロフォン125に伝わるのを抑制するために、抵抗チューブ129Aが設けられている。
【0043】
図14は、図1に示す血圧計1のブロック構成図である。
図14に示すように、腕帯部2の阻血用空気袋14は、エアチューブ4を通じて、血圧計本体10内のエアフィルタ130、圧力検出部(圧力センサ)140、2つの駆動ポンプ110、制御バルブ111、そして排気バルブ112に接続されている。K音信号を検出するK音検出用空気袋50は、エアチューブ4を通じて、血圧計本体10内のコンデンサマイクロフォン125に接続されている。
図1と図3に示したように腕帯部2に配置された温度センサ700は、腕帯部2の肩側の開口部11Rから手指(肘)側の開口部11Pにかけて上腕に装着されたことを、腕の熱を感知することで検知するためのものである。温度センサ700が被測定者の上腕Tの挿入を検知すると、温度センサ700は、腕装着検知信号TSGを制御部120に送る。これにより、制御部120は、温度センサ700から腕装着検知信号TSGを受けると、被測定者が開始/停止スイッチ88を押さなくても、2つの駆動ポンプ110は、制御部120の指令により、腕帯部2内の阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50にエアを供給して腕帯部2内の上腕Tを加圧する動作を自動的に開始させることができる。
【0044】
圧力検出部(圧力センサ)140は、腕帯部2内の圧力を検出する。K音検出用空気袋50は、図15に示すように2つ(上腕に腕帯部を装着したときに円周方向で対向位置になる)設けることで、K音を的確に検出できるが、1つでもよい。
2つの駆動ポンプ110は、腕帯部2内の阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50にエアを供給して腕帯部2内の上腕を加圧する加圧手段である。このように、2つの駆動ポンプ110を用いるのは、腕帯部2が大きい場合には、2つの駆動ポンプを駆動させ、腕帯部2が小さい場合には、1つの駆動ポンプを駆動させ、阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50にエアを供給できるようにするためである。制御バルブ111と排気バルブ112は、腕帯部2内の阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50内のエアを抜いて加圧した上腕を減圧する減圧手段である。
制御部120は、各要素の動作フローの処理、判断、制御を行う制御手段であり、駆動部150に指令を与えることにより駆動ポンプ110を駆動制御する。制御部120は、駆動部151に指令を与えることにより制御バルブ111、排気バルブ112を駆動制御する。
【0045】
図14では、制御部120は、表示部63に指令を与えて、例えば図1に示すような温度表示、時刻表示、最高血圧、最低血圧等の表示内容を表示させる。制御部120には、音声用メモリ153とデータメモリ154が接続されており、音声メモリ153には、血圧計を測定する際に被測定者に対して音声ガイダンス内容が予め記憶されている。制御部120は、音声メモリ153内の音声ガイダンス内容を、スピーカ85を通じて被測定者に報知するようになっている。データ用メモリ154には、血圧測定に必要な一連の動作を行うためのプログラムが記憶されており、制御部120はこのプログラムに従って、血圧測定動作を実施する。
【0046】
図14では、開始/停止スイッチ88が制御部120に電気的に接続されている。スピーカ85は、フィルタ164を介して制御部120に電気的に接続されている。その他に、電源コントロール部160、K音アンプ161、OSCアンプ162が、制御部120に電気的に接続されている。電源コントロール部160は、電池93とACアダプタ87に電気的に接続され、所定の直流電圧を制御部120に供給する。K音アンプ161は、コンデンサマイクロフォン125により検出したK音を増幅して制御部120に供給する。OSCアンプ162は、コンデンサマイクロフォン125により検出した脈波信号を増幅して制御部120に供給する。これにより、制御部120は、K音を認識し、脈波を認識し、電池電圧を認識し、音声ガイダンスを合成することができる。
【0047】
次に、図1と図3と図14を参照して、被測定者が腕帯部2を上腕に適切に装着し、血圧測定が自動的に開始される動作を説明する。
被測定者が、図1に示す血圧計1を用いて血圧測定を行う場合には、右利きの被測定者は右手で腕帯部2を持って左腕の上腕Tに対してこの腕帯部2を装着する。すなわち、左腕の手指を肩側の開口部11Rから肘側の開口部11Pにかけて通して、左腕の上腕Tに対してこの腕帯部2を装着する。
このように、左腕の上腕Tに対してこの腕帯部2が装着されると、温度センサ700は、腕帯部2が上腕に装着されたことを、腕の熱を感知することで検知する。温度センサ700が被測定者の上腕Tに装着されたことを検知すると、温度センサ700は、腕装着検知信号TSGを制御部120に送る。これにより、制御部120は、温度センサ700から腕装着検知信号TSGを受けると、被測定者が図2と図15に示す開始/停止スイッチ88を押さなくても、図15に示す2つの駆動ポンプ110は、腕帯部2内の阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50にエアを供給して腕帯部2内の上腕Tを加圧する動作を自動的に開始することができる。
【0048】
また、被測定者が左利きである場合には、この被測定者は左手で腕帯部2を持って右腕の上腕Tに対してこの腕帯部2を装着する。すなわち、右腕の手指を肩側の開口部11Rから肘側の開口部11Pにかけて通して、右腕の上腕Tに対してこの腕帯部2を装着する。
このように、右腕の上腕Tに対してこの腕帯部2が装着されると、温度センサ700は、腕帯部2が上腕に装着されたことを、腕の熱を感知することで検知する。温度センサ700が被測定者の上腕Tに装着されたことを検知すると、温度センサ700は、腕検知信号TSGを制御部120に送る。これにより、制御部120は、温度センサ700から腕検知信号TSGを受けると、被測定者が図2と図14に示す開始/停止スイッチ88を押さなくても、図14に示す2つの駆動ポンプ110は、腕帯部2内の阻血用空気袋14と2つのK音検出用空気袋50にエアを供給して腕帯部2内の上腕Tを加圧する動作を自動的に開始することができる。
【0049】
以上説明したように、右利きの被測定者であっても左利きの被測定者であっても、開始/停止スイッチ88を押すこと自体の操作は簡単ではあるが、血圧測定動作ではこの開始/停止スイッチ88を押す動作が1つの手間には違いないので、できれば開始/停止スイッチ88の操作をしなくても血圧測定が自動的にできることが望ましい。特に、被測定者が高齢者の場合には開始/停止スイッチ88の操作をしなくても、腕帯部2を上腕Tに装着するだけで血圧測定が自動的に開始できるので、血圧測定操作がスムーズに行える。
また、従来のように、例えば右利きの被測定者が右手で腕帯部2を持って左腕にこの腕帯部2を装着した後、右手で支持していた腕帯部2を放した状態で血圧計本体10の開始/停止スイッチ88を右手で操作すると、せっかく上腕Tの正しい位置に装着した腕帯部2がその腕帯部2の自重で上腕Tの正しい位置から肘側に下がってしまうことがある。
しかし、本発明の実施形態では、既に説明したように、被測定者は腕帯部2を支持したままでよく、腕帯部2を上腕Tに装着するだけで血圧測定が自動的に開始できるので、血圧測定動作がスムーズに行え、右手で腕帯部2を支持している間に、上腕Tを血圧測定のために加圧動作を腕帯部2により自動的に開始できる。
もし、被測定者の腕が細い場合であっても、右手で腕帯部2を支持している間に、腕帯部2が上腕Tを血圧測定のために加圧動作を自動的に開始できるので、腕帯部2がずり落ちるおそれがなく、正しい血圧測定ができる。
【0050】
ところで、図1で示した腕装着検知センサ(腕装着検知手段)としての温度センサ700は、肩側の開口部11R寄りよりも、手指(肘)側の開口部11P寄りの位置に配置されることが望ましい。
この理由としては、腕帯部の肩側寄りの位置ではなく前記腕帯部の肘側寄りの位置に腕装着検知手段が配置され、この肘側寄りの位置に配置された腕装着検知手段が腕装着検知信号を発生させるので、腕帯部に上腕を完全に挿入する時点に対してできるだけ遅らせた時点から阻血用空気袋による上腕の加圧動作を開始させることができる。このため、電池駆動により空気を阻血用空気袋に送るスタートのタイミングを遅らせることができ、電池駆動を用いる場合に節電が図れる。また、腕帯部が装着される途中で、腕が抜かれる動作を想定した場合、腕装着検知手段を肘側寄りに配置することにより、不要な加圧動作の開始を防止できる。
なお、1つの温度センサ700に代えて、1つの光透過型の光センサあるいは光反射型の光センサを用いても良い。
このように、本発明の実施形態の血圧計1では、被測定者が上腕Tに腕帯部2を装着後に被測定者が開始/停止スイッチ88を操作しなくても、腕帯部2は血圧測定のための加圧を開始することができる。もし、通常通り、被測定者が腕帯部2を上腕Tに装着した後に、腕帯部2から手を放して開始/停止スイッチ88を押そうとすると、図16に示すように、腕帯部2は肩側から肘側にずり落ちてしまう。特に、被測定者の上腕Tが細い場合には、腕帯部2から手を放して開始/停止スイッチ88を手で押そうとすると、腕帯部2は肩側から肘側にずり落ちてしまう。本発明の実施形態の血圧計1は、このような不都合を防ぐことができ、血圧測定をスムーズに行うことができる。
【0051】
次に、図17から図20を参照して、本発明の別の実施形態を説明する。
まず、図16は、比較して説明するために、通常用いられている腕帯部1000と、この通常の腕帯部1000を用いる場合の不都合を示している。図16に示す通常の腕帯部1000を用いる場合の不都合は、図15に示す腕帯部が上腕Tをずり落ちることとは別の不都合である。
図16に示す通常の腕帯部1000では、上腕Tに巻く際に肘側(血管の下流側)に、コロトコフ法血圧計の場合にはK音検出部1001Aが設置され、オシロメトリック法血圧計の場合には脈波検出部1001Bが設定されている。すなわち、K音検出部1001Aもしくは脈波検出部1001Bは、圧迫した血管の下流側に位置する必要があるために、腕帯部1000を正しく装着する時には、腕帯部1000を上腕Tに対して正しい方向であるFG方向に動かして装着しなければならない。しかし、腕帯部1000を上腕Tに対して間違った方向であるGH方向に動かすと、間違った装着方向になってしまう。
上腕Tに対して間違ってGH方向に動かせて装着してしまうと、圧迫した血管の下流側で発生するK音もしくはK音成分が重畳した脈波の検出が適切に行えないために、腕帯部1000が上腕Tに対して加圧不足と判定してしまって過剰加圧をする場合がある。その結果、血圧値が高めに判定されるだけでなく、過剰な加圧により腕が痛くなったりしびれたりする等の負担を被測定者に与えることになる。
【0052】
腕帯部1000に対して上腕Tに対して間違った方向で装着することを防止するために、腕帯部に挿入方向を示す表示を単純に施すことも考えられるが、被測定者がその表示に気付かない場合が生じる。また、腕帯部1000に対して上腕Tに対して間違った方向で装着したことを脈波形もしくは脈波のエンベロープにより判断する方式も考えられるが、上腕Tに対して間違った方向で装着したことを100%検出することは不可能であり、副作用として正しく装着されているのに間違った装着方向と誤認識する可能性もある。加えて、上腕Tに対して間違った方向に装着したことを脈波形により判断したとしても、被測定者には血圧測定行為を行ってから気付かせることになるので、間違った方向に装着された際の対処としては遅い。
【0053】
図17に示す本発明の血圧計の別の実施形態では、腕帯部802は、図1〜図3に示す本発明の実施形態の腕帯部2の腕装着検知手段としての温度センサ700に代えて、上腕Tを挿入していることを検出するための腕装着検知手段810を有している。
この腕装着検知手段810は、腕帯部に対する腕の挿入方向が正しい方向であるか誤った方向であるかを検知する第1機能を有する。しかも、腕装着検知手段810は、被測定者が上腕Tに腕帯部2を装着後に、被測定者が開始/停止スイッチ88を操作しなくても、腕帯部2に対して血圧測定のための加圧動作を自動的に開始させることができる第2機能をも有している。
図17に示す筒状の腕帯部802は、図1と図3に示す腕帯部2と同様に、所定(一定)の長さの外周を有していて、この腕帯部802の中に被測定者の上腕Tを通すことができるようになっている。外布16の内側面と内布17の外側面は、阻血用空気袋14を包んでいる。
【0054】
図17に示すように、腕帯部802には、K音信号を検出する2つのK音検出用空気袋50,50が設けられており、図1の実施形態と同様に動作する。
あるいは、これに替え、コロトコフ音を検出せず、圧力センサ等を用いて、阻血用空気袋14の圧力と脈波検出用空気袋の圧脈波を検出し、この圧脈波と阻血用空気袋14の圧力から最高血圧(収縮期血圧)、最低血圧(拡張期血圧)を演算する構成としてもよい。
図17に示す腕装着検知手段810は、腕帯部802の第1の開口部11R側に配置された感知センサ808と、腕帯部802の第2の開口部11P側に配置された感知センサ809を有している。
第1の感知センサである感知センサ808は、発光部811と受光部812を有する光透過型センサであり、第2の感知センサである感知センサ809は、発光部821と受光部822を有する光透過型センサである。感知センサ808は、腕帯部802の第1の開口部11R側に配置され、感知センサ809は、腕帯部802の第2の開口部11P側に配置されている。すなわち、感知センサ808は、腕帯部802の内側であってしかも肩側に配置され、感知センサ809は、腕帯部802の内側であってしかも肘側に配置されている。感知センサ808の受光部812が発生する腕装着検知信号としての感知信号KSと、感知センサ809の受光部822が発生する腕装着検知信号としての感知信号KPは、制御部120に供給されるようになっている。
【0055】
ここで、上述した腕装着検知手段810の第1機能を説明する。この腕装着検知手段810の第1機能は、既に述べたように、腕帯部802に対する腕の挿入方向が正しい方向であるか誤った方向であるかを検知する機能である。
図17(B)に示すように、腕帯部802を上腕Tに対してV方向に正しく装着した場合には、必ず先に肩側の感知センサ808の受光部812から感知信号KSが発生し、その後肘側の感知センサ809の受光部822から感知信号KPが発生する。これに対して、腕帯部802を上腕Tに対して逆方向(逆向き)に誤って装着した場合には、必ず先に肘側の感知センサ809の受光部822から感知信号KPが発生し、その後肩側の感知センサ808の受光部812から感知信号KSが発生することになる。
このため、腕帯部802の感知センサ808の受光部812からの感知信号KSと感知センサ809の受光部822からの感知信号KPを発生する順番を、制御部120が監視することにより、制御部120は、血圧測定動作を開始する前に、上腕Tに腕帯部802が正しく装着できたか否かを判定することができる。すなわち、制御部120が、腕帯部802の肩側寄りの位置に配置された感知センサ812が発生する腕装着信号KSと、腕帯部2の肘側寄りの位置に配置された感知センサ822が発生する腕装着信号KPとを比較して、どちらの前記腕検知信号が早く発生したのか判定することにより、上腕Tに対し腕帯部802が正しい方向で装着されたのか、あるいは上腕Tに対して腕帯部802が誤った方向で装着されたかを判定する。そして、腕帯部802が上腕Tに対して誤った方向(向き)で装着されている時には、制御部120は警告を発生することができる。
【0056】
次に、上述した腕装着検知手段810の第2機能を説明する。この腕装着検知手段810の第2機能は、既に述べたように、被測定者が上腕Tに腕帯部2を装着後に、被測定者が開始/停止スイッチ88を操作しなくても、腕帯部2に対して血圧測定のための加圧動作を自動的に開始させることができる機能である。
図17(B)に示すように、感知センサ808の受光部812が発生する腕検知信号としての感知信号KSと、感知センサ809の受光部822が発生する腕装着検知信号としての感知信号KPが、制御部120に供給されると、制御部120は、被測定者が図示しない開始/停止スイッチを押さなくても、駆動ポンプを駆動して、腕帯部2内の阻血用空気袋と2つのK音検出用空気袋にエアを供給して腕帯部2内の上腕Tを加圧する動作を自動的に開始することができる。
もし、通常通り、被測定者が腕帯部2を上腕Tに装着した後に、腕帯部2から手を放して開始/停止スイッチを押そうとすると、図15に示すように、腕帯部2が肩側から肘側にずり落ちてしまう。特に、被測定者の上腕Tが細い場合には、腕帯部2から手を放して開始/停止スイッチを押そうとすると、腕帯部2は肩側から肘側にずり落ちてしまう。本発明の実施形態の血圧計は、このような不都合を防ぐことができ、血圧測定をスムーズに行うことができる。
【0057】
図18は、一例として透過型光センサである感知センサ808,809を用いた場合に、感知センサ808の受光部812から感知信号KSと、感知センサ809の受光部822からの感知信号KPの具体的な信号イメージ例を示している。図18に示す感知信号KS、KPから判るように、図17(B)に示す制御部120は、感知センサ808の発光部811の発光と感知センサ809の発光部821の発光は、間欠的に駆動する。
【0058】
図18では、手首が腕帯部802に入っていない時刻TXと、時刻TA,TBを示している。図18において、手首が腕帯部802に入っていない時刻TXでは、発光部811,821からの光がそれぞれ受光部812,822に入射しているために、受光部812の感知信号KSのレベルはHighレベルであるとともに、受光部822の感知信号KPのレベルもHighレベルである。
そして、腕帯部802を上腕Tまで移動させる途中では、腕により遮光されたり遮光されなかったりする現象が不規則に生じてチャタリングが発生する可能性がある。その後、腕帯部802が上腕Tに完全に装着されると、発光部811,821からの光が上腕により遮光されて、受光部812の感知信号KSのレベルと受光部822の感知信号KPのレベルはともにLowレベルとなる。
【0059】
図18に示す、ある一定時間(τ)だけ、受光部812の感知信号KSのレベルと受光部822の感知信号KPのレベルがLowレベルを継続していると、図17(B)の制御部120は、上腕Tが腕帯部802に装着されたと判断して、時刻TAと時刻TBを求める。
制御部120は、時刻TAと時刻TBを求めた結果、時刻TA<時刻TBの関係であれば、上腕Tに腕帯部802が正しく装着されたと判定する。そうでなければ、制御部120は、上腕Tに腕帯部802が正しく装着されていないと判定して、警告を出力する。この警告のやり方としては、ブザーを鳴らしたり、スピーカを通じて音声で警報を発したり、表示部に警告マークや文字を表示する。
なお、図17に示す腕帯部802は、柔軟性を有しており折り畳み可能なものであるが、これに限らず、腕帯部802は、外ケースとして硬質のプラスチックにより包むようにしても、勿論良い。
【0060】
ところで、家庭で用いる電子血圧計の多くは、電池で動作させるために、図17と図18に示す実施形態の腕帯部802を有する血圧計は、2組の感知センサ808,809を用いて光を発光しているので、消費電力を抑える工夫が必要である。そこで、血圧計の消費電力を抑えるために、図18と図19と図21に示すような次の工夫をしている。
図18に示すように、発光部811,821は、それぞれ光を間欠的に発光駆動させることで、発光部811,821が消費する消費電力を低減することができる。発光部811,821としては、例えば発光ダイオードを使用し、受光部812,822としては、例えばフォトダイオードを使用している。図18に示すように、発光部811,821の駆動パルスのデューティは、例えば10msecと40msecに設定でき、ディーティ比は1:4である。
【0061】
また、図19は、図17に示す腕帯部802を有する血圧計1Aを示す斜視図である。図20は、図19に示す血圧計1Aの使用例を示している。
なお、ここで使用される腕帯部802は、硬質のほぼ円筒型のプラスチック製の外ケース809Cにより包まれて保持されている。
図19に示す血圧計1Aは、本体部880と腕帯部802を有している。本体部880は、ケース881と表示部882等を有している。ケース881の窪み部分883には、腕帯部802の外ケース809Cが着脱可能に搭載できるようになっている。
図19と図20に示すように、外ケース809Cには、離間検出手段としてのトリガー用のスイッチ900と金属部材807が配置されているのに対して、本体部880の上面の窪み部分883には、永久磁石901が搭載されている。永久磁石901がこの金属部材807を磁気的に吸引することで、腕帯部802を本体部880の窪み部分883に置いている状態で、腕帯部802が本体部880から落ちにくくしている。また、トリガー用のスイッチ900は、例えば、永久磁石901の磁力によりオフ状態に保持されるリードスイッチである。このトリガー用のスイッチ900は、制御部120に電気的に接続されている。
なお、離間検出手段としてのトリガー用のスイッチは、血圧計本体側に組み込んだ電気的スイッチング手段を機械的に常開させる突起を腕帯部に設けること等により構成してもよい。
【0062】
血圧計1Aを使用する際には、図20(A)と図19に示すように、血圧測定を行わない時に腕帯部802が本体部880の窪み部分883に置かれている状態では、トリガー用のスイッチ900は、永久磁石901の磁力によりオフ状態である。
そして、被測定者が血圧測定を行う場合には、図20(B)に示すように、被測定者は腕帯部802を本体部880から離間させる。すなわち持ち上げる。これにより、トリガー用のスイッチ900は、永久磁石901から離れるので、トリガー用のスイッチ900はオン状態になる。このように、被測定者が腕帯部802を本体部880から持ち上げることで、トリガー用のスイッチ900がオン状態になると、制御部120にはトリガー用のスイッチ900からトリガー信号が入って、制御部120は感知センサ808,809の発光部811,821と受光部812,822を駆動する。
これにより、制御部120は、被測定者が腕帯部802を用いて血圧測定をしていてもしていなくても、発光部811,821が常に発光駆動されてしまう状態を防ぎ、被測定者が腕帯部802を持って腕帯部802に上腕を挿入して血圧測定を行う場合だけ、発光部811,821を間欠的に発光駆動させることができる。このため、消費する消費電力を低減することができるので、電池駆動を用いている場合に特に有利である。発光部811,821が消費する消費電力を低減することができる。
【0063】
本発明の各実施形態は、任意に組み合わせることができる。
ところで、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変形例を採用することができる。例えば、上述した図18に示す感知センサ808,809としては、透過型光センサを例に挙げているが、これに限らず、例えば反射型光センサを用いることも可能である。反射型光センサは、発光部と受光部から構成され、発光部と受光部は隣に配置されており、発光部の光は腕で反射して、その反射光は受光部で受光するようになっている。
腕挿入検知センサの配置数は、1つあるいは2つに限らない。図1に示す腕帯部2には、2つのK音検出用空気袋50を配置するのに代えて、K音を検出するマイクロフォンを配置しても良い。
上述した本発明の実施形態の血圧計においては、折り曲げ可能な腕帯部の外布のほぼ全体を、剛性を有し取っ手を備えたプラスチック製の筐体で包むようにしてもよい。こうすることで、血圧測定時に、上腕に腕帯部2が装着しやすくなる。
【符号の説明】
【0064】
1・・・血圧計、2・・・腕帯部、10・・・血圧計本体、11P、11R・・・開口部、14・・・阻血用空気袋、16・・・外布16、17・・・内布、110・・・加圧手段である2つの駆動ポンプ、120・・・制御部、700・・・腕装着検知手段、802・・・腕帯部、810・・・腕装着検知手段、TSG・・・腕検知信号、KS、KP・・・腕装着検知信号としての感知信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の上腕に装着され、阻血用空気袋を有する腕帯部と、前記阻血用空気袋に空気を送る血圧計本体と、を有する血圧計であって、
前記腕帯部に配置され、前記上腕に前記腕帯部が装着されることを検知して腕装着検知信号を発生する腕装着検知手段と、
前記腕装着検知手段から前記腕装着検知信号を受けると、前記血圧計本体側から前記阻血用空気袋に空気を送る指示を出して前記阻血用空気袋への加圧動作を開始させる制御部と、を備えることを特徴とする血圧計。
【請求項2】
前記腕装着検知手段は、前記腕帯部が装着される前記上腕の温度を検知する温度センサであることを特徴とする請求項1に記載の血圧計。
【請求項3】
前記腕装着検知手段は、前記腕帯部の肩側寄りの位置ではなく前記腕帯部の肘側寄りの位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の血圧計。
【請求項4】
前記腕装着検知手段は、前記腕帯部に挿入された前記上腕に光を当てる発光部と、前記発光部から前記光を受光する受光部とからなる感知センサであることを特徴とする請求項1に記載の血圧計。
【請求項5】
前記感知センサは、前記腕帯部の肩側寄りの位置と、前記腕帯部の肘側寄りの位置にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項4に記載の血圧計。
【請求項6】
前記腕帯部が、前記血圧計本体から離間されたことを検出して、前記腕装着検知手段を駆動する離間検出手段を備える構成としたことを特徴とする請求項1に記載の血圧計。
【請求項1】
被測定者の上腕に装着され、阻血用空気袋を有する腕帯部と、前記阻血用空気袋に空気を送る血圧計本体と、を有する血圧計であって、
前記腕帯部に配置され、前記上腕に前記腕帯部が装着されることを検知して腕装着検知信号を発生する腕装着検知手段と、
前記腕装着検知手段から前記腕装着検知信号を受けると、前記血圧計本体側から前記阻血用空気袋に空気を送る指示を出して前記阻血用空気袋への加圧動作を開始させる制御部と、を備えることを特徴とする血圧計。
【請求項2】
前記腕装着検知手段は、前記腕帯部が装着される前記上腕の温度を検知する温度センサであることを特徴とする請求項1に記載の血圧計。
【請求項3】
前記腕装着検知手段は、前記腕帯部の肩側寄りの位置ではなく前記腕帯部の肘側寄りの位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の血圧計。
【請求項4】
前記腕装着検知手段は、前記腕帯部に挿入された前記上腕に光を当てる発光部と、前記発光部から前記光を受光する受光部とからなる感知センサであることを特徴とする請求項1に記載の血圧計。
【請求項5】
前記感知センサは、前記腕帯部の肩側寄りの位置と、前記腕帯部の肘側寄りの位置にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項4に記載の血圧計。
【請求項6】
前記腕帯部が、前記血圧計本体から離間されたことを検出して、前記腕装着検知手段を駆動する離間検出手段を備える構成としたことを特徴とする請求項1に記載の血圧計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−152345(P2012−152345A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13311(P2011−13311)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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