説明

血圧降下剤としてのカロテノイド

【課題】血圧を降下させるための組成物の提供。
【解決手段】リコピン、フィトフルエン、フィトエン、アスタキサンチン、およびカタキサンチンからなる群から選択されるカロテノイド、またはその混合物の有効量を含む血圧を降下させるための組成物及び血圧を降下させるための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カロテノイド含有組成物の分野および血圧降下へのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
カロテノイドは、一般に、赤色、黄色、オレンジ色、緑色の果実や野菜に含まれている。カロテノイドは、合成起源でも天然起源でも、食品に添加され、栄養補給剤として摂取されることが知られている。リコピン、ベータ−カロテン、フィトフルエン、フィトエン、アスタキサンチン、およびカタキサンチンは、ヒトの健康、特に脈管系に有益な効果をもたらすことが判明しているカロテノイドである。
【0003】
米国特許第5,705,526号(Fujiwara他)は、1成人当たり1〜25mg/日の量のリコピンをその有効成分として含有する高コレステロール血症治療薬を、それを必要とする患者に投与することを含む高コレステロール血症を治療する方法に関するものである。Lycored Natural Industries Ltd.のPCT/IL98/00286号は、ヒトの血液中のLDLが酸化されるのを抑制し、それによってアテローム性動脈硬化症の進行を効果的に抑制する、リコピンとビタミンEとの相乗混合物の使用について記載している。
【0004】
高血圧は多くの人で起こり、循環器疾患の危険性を増す。したがって、血圧降下法は極めて重要である。
【0005】
哺乳動物の血圧を降下させる方法としては、以下の少なくとも3つの分類が知られている。
【0006】
1)血液脂質プロファイル(blood lipid profile)の長期治療−血管の断面積を大きくするためのアテローム性動脈硬化症の治療。この治療法は、通常、LDL濃度を低下させ、血中のLDL/HDL比を調節し、血中のLDLの酸化を防止/抑制するものである。
【0007】
2)血液の物理的特性に対する処置(例えば、粘度を低下させ、血小板の凝集を阻害/防止する)。
【0008】
3)血管の物理的/機械的特性(例えば、動脈壁の柔軟性および血管拡張薬に対する応答)に対する処置。
【0009】
以下ではこれらの分類を、それぞれ分類1、分類2、および分類3と称する。
【0010】
患者に対する分類1の治療の効果は、通常、(例えば2週間を超える)長い治療期間の後に明らかになり、一方、分類2および3の治療は短期(例えば2日から3週間)に効果が現れる。
【0011】
高血圧を引き起こし得る高コレステロール血症やアテローム性動脈硬化症は、分類1の方法に従って治療される。
【0012】
Galley等は、Clinical Science(1997)92、361〜365で、血圧降下に有効なベータ−カロテン、ビタミンE、ビタミンC、および他の抗酸化剤を含む経口抗酸化剤の相乗的な組合せを開示している。
【0013】
分類2および3の治療方法では、アスピリンなどの薬剤、ニフェジピンなどの血管拡張剤(以下、「従来の血圧降下剤」と称する)を使用する。これらの薬剤を使用すると有害な副作用が伴う。したがって、この副作用を有し、天然物を基にした、分類2および3による血圧降下方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,705,526号
【特許文献2】国際出願第PCT/IL98/00286号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Galley等、Clinical Science(1997)92、361〜365
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の目的は、分類1以外の方法によって天然物を投与して血圧を降下させる方法を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、分類1以外の方法によって血圧を降下させる組成物を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、以下の記述から明らかになるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
一態様によれば、本発明は、リコピン、フィトフルエン、フィトエン、アスタキサンチン、およびカタキサンチンからなる群から選択されるカロテノイド、またはそれらの混合物を、分類1によらない血圧降下法によって哺乳動物の血圧を降下させるための使用を提供するものである。
【0020】
別の一態様によれば、本発明は、リコピン、フィトフルエン、フィトエン、アスタキサンチン、およびカタキサンチンからなる群から選択されるカロテノイド、またはそれらの混合物を血圧降下に有効な量含む、分類1によらない血圧降下法によって哺乳動物の血圧を降下させるための組成物を提供する。
【0021】
さらに別の一態様によれば、本発明は、リコピン、フィトフルエン、フィトエン、アスタキサンチン、およびカタキサンチンからなる群から選択されるカロテノイド、またはそれらの混合物の有効量を哺乳動物に投与することを含み、哺乳動物の血圧を降下させる、分類1に属さない方法に関する。
【0022】
別の一態様によれば、本発明は、リコピン、フィトフルエン、フィトエン、アスタキサンチン、およびカタキサンチンからなる群から選択されるカロテノイド、またはそれらの混合物を、分類1によらない血圧降下法によってヒトの血圧を降下させるための医薬品の調製に使用することに関する。
【0023】
別の一態様によれば、本発明は、リコピン、フィトフルエン、フィトエン、アスタキサンチン、およびカタキサンチンからなる群から選択されるカロテノイド、またはそれらの混合物の有効量を含み、分類1によらない血圧降下法によってヒトの血圧を降下させるのに有用な薬剤組成物に関する。
【0024】
別の一態様によれば、本発明は、リコピン、フィトフルエン、フィトエン、アスタキサンチン、およびカタキサンチンからなる群から選択されるカロテノイド、またはそれらの混合物の有効量を含み、分類1に属さない方法によってヒトの血圧を降下させるのに有用な固形の剤形に関する。
【0025】
本発明のさらに別の一態様では、リコピン、フィトフルエン、フィトエン、アスタキサンチン、およびカタキサンチンからなる群から選択されるカロテノイド、またはそれらの混合物を、分類1によらない血圧降下法によって血圧を降下させるために、機能性食品、栄養補助食品、または栄養補助飲料に添加する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の記述は、本発明の例示的な実施形態である。以下の記述は限定的なものと解釈すべきではなく、当業者が本発明の自明な変形形態を多数実施できることを理解されたい。
【0027】
ある種のカロテノイドを投与すると、(2日から2週間の)比較的迅速な血圧降下応答をもたらすことを予期せず見出した。
【0028】
カロテノイドという用語は、本明細書を通して天然、人工、および合成起源のカロテノイドを指す。
【0029】
本発明の以下の実施形態は、分類1によらない血圧降下法に関するものである。
【0030】
本発明による方法の特定の一実施形態によれば、リコピン、フィトフルエン、フィトエン、アスタキサンチン、およびカタキサンチンからなる群から選択されるカロテノイド、またはそれらの混合物約0.1〜50mg/日を、血圧降下を要する患者に投与する。この投与は経口投与が好ましいが、血液降下に有効なカロテノイド血中濃度、例えばリコピン約0.3〜0.8μMをもたらす投与形式はすべて本発明の目的に適うものである。投与は、毎日の単回投与でも複数回投与でもよい。
【0031】
本発明の方法のさらに別の一実施形態によれば、リコピン約1〜50mg/日をそれを要する患者に投与する。本発明の特定の一態様によれば、1日当たり5〜20mgを患者に投与する。
【0032】
本発明の方法のさらに好ましい一実施形態によれば、リコピン約1〜25mgを1日に2回経口投与する。
【0033】
本発明の方法のさらに別の一実施形態では、リコピン(3%〜15%)、フィトエン(0.3%〜1%)、フィトフルエン(0.3%〜1%)を含むカロテノイド混合物約3〜50mgを、それを必要とする患者に血圧を降下させるために投与する。この混合物は、さらに、ベータ−カロテン(0.1%〜0.3%)およびビタミンE(0.5%〜3%)を含むことができる。
【0034】
本発明による組成物は、リコピン、フィトフルエン、フィトエン、アスタキサンチン、およびカタキサンチンからなる群から選択されるカロテノイド、またはそれらの混合物約0.1〜50mgを含む。この組成物は、さらに、薬剤として許容されるアジュバント、賦形剤、および添加剤を含むことができる。この組成物は、錠剤、カプセル剤、硬カプセル剤、ゲルカプセル剤、ソフトゲル、または前記投与方法に適した別の形の剤形とすることができる。
【0035】
この組成物の好ましい一実施形態によれば、この組成物はリコピン1〜5mgを含む。
【0036】
本発明による組成物の別の一実施形態では、この組成物はリコピン(3%〜15%)、フィトエン(0.3%〜1%)、フィトフルエン(0.3%〜1%)を含むカロテノイド混合物約3〜50mgを含む。この混合物は、さらに、ベータ−カロテン(0.1%〜0.3%)およびビタミンE(0.5%〜3%)を含むことができる。
【0037】
本発明による方法の別の一実施形態では、前記用量のカロテノイドを、他の従来の血圧降下剤と併用して投与することができる。したがって、従来の血圧降下剤と、リコピン、フィトフルエン、フィトエン、アスタキサンチン、およびカタキサンチンからなる群から選択されるカロテノイド、またはその混合物とを含有する薬剤組成物は、本発明の別の一実施形態である。
【0038】
本発明の別の一実施形態によれば、リコピン、フィトフルエン、フィトエン、アスタキサンチン、およびカタキサンチンからなる群から選択されるカロテノイド、またはその混合物を、血液を降下させるために、食材、機能性食品、栄養補助食品、および栄養補助飲料に添加することができる。
【実施例】
【0039】
(実施例1)
設計と方法:40〜65歳で付随する疾患がなく、血圧および/または脂質を低下させる薬物治療を必要としない35人のグレードIのHT患者を、初期治療クリニックから採用した。治験参加者は、HT(高血圧)診断を確定し、ベースラインを評価するための2週間の試験、次いで4週間のプラセボ、最後に8週間の治療期間に入った。
【0040】
結果:本発明者らの結果は、収縮期BP(血圧)が144から135へ平均9mmHg、拡張期BPが91から84へ平均7mmHgと、ともに有意な降下を示している。
【0041】
(実施例2)
16人の健康な若い個体におけるリコピン消費の二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験。各対象個体をベースラインで評価し、次いでリコピンまたはプラセボ15mgを2週間投与し再評価した。リコピンを投与しない1カ月のウォッシュアウト期間後、別のリコピン投与を行ってから最終評価した。それに伴う各評価では、他のパラメータのうち心拍数および血圧も測定した。患者は、リコピン投与中、プラセボ投与よりも拡張期血圧が有意に降下した(p<0.05)。表1にこの試験の結果をまとめて示す。
【0042】
【表1】

【0043】
本発明の実施形態を例示により説明したが、本発明の精神から逸脱することなく、あるいは特許請求の範囲を超えることなく、本発明を様々に改変し、変形し、手直しできることは明白であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リコピン、フィトフルエン、フィトエン、アスタキサンチン、およびカタキサンチンからなる群から選択されるカロテノイド、またはその混合物の血圧降下に有効な量を哺乳動物に投与することを含み、分類1に属さない、哺乳動物の血圧を降下させる方法。
【請求項2】
前記哺乳動物がヒトである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
カロテノイドがリコピンである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
カロテノイドまたはカロテノイド混合物約0.1〜50mgを投与する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
1日当たりカロテノイドまたはカロテノイド混合物約5〜20mgを投与する請求項4に記載の方法。
【請求項6】
1日当たりリコピン約1〜25mgを投与する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
カロテノイドまたはカロテノイド混合物を従来の血圧降下剤と併用して投与する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
リコピンを従来の血圧降下剤と併用して投与する請求項7に記載の方法。
【請求項9】
カロテノイド混合物を投与する請求項1に記載の方法。
【請求項10】
カロテノイド混合物がリコピン、フィトエン、およびフィトフルエンを含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
カロテノイド混合物がリコピン約3%〜15%、フィトエン約0.3%〜1%、およびフィトフルエン約0.3%〜1%を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
1日当たり混合物約3〜30mgを投与する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
分類1によらない血圧降下法によって哺乳動物の血圧を降下させる組成物の調製における、リコピン、フィトフルエン、フィトエン、アスタキサンチン、およびカタキサンチンからなる群から選択されるカロテノイドの使用。
【請求項14】
前記哺乳動物がヒトである請求項13に記載の使用。
【請求項15】
カロテノイドがリコピンである請求項13に記載の使用。
【請求項16】
カロテノイドまたはカロテノイド混合物約0.1〜50mgを使用する請求項13に記載の使用。
【請求項17】
リコピン約1〜25mgを使用する請求項13に記載の使用。
【請求項18】
カロテノイドまたはカロテノイド混合物を従来の血圧降下剤と併用する請求項13に記載の使用。
【請求項19】
リコピンを従来の血圧降下剤と併用する請求項13に記載の使用。
【請求項20】
リコピン、フィトフルエン、フィトエン、アスタキサンチン、およびカタキサンチンからなる群から選択されるカロテノイド、またはそれらの混合物の有効量を含む、分類1に属さない方法によりヒトの血圧を降下させるための組成物。
【請求項21】
有効量のリコピンを含む請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
カロテノイドまたはカロテノイド混合物約0.1〜50mg、および薬剤として許容されるアジュバント、賦形剤、または添加剤を含む請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
カロテノイド混合物を含む請求項20に記載の組成物。
【請求項24】
カロテノイド混合物がリコピン、フィトエン、およびフィトフルエンを含む請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
リコピン約3%〜15%、フィトエン約0.3%〜1%、およびフィトフルエン約0.3%〜1%を含む請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
カロテノイド混合物約3〜30mgを含む請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物が経口投与用である請求項20に記載の組成物。
【請求項28】
錠剤、カプセル剤、硬カプセル剤、ゲルカプセル剤、またはソフトゲルの剤形の請求項20に記載の組成物。
【請求項29】
従来の血圧降下剤をさらに含む請求項20に記載の組成物。
【請求項30】
分類1に属さない方法によってヒトの血圧を降下させるのに有用な、有効量のリコピンを含む固形の剤形。
【請求項31】
食材、機能性食品、栄養補助食品、および栄養補助飲料に対する添加剤としての請求項20に記載の組成物の使用。
【請求項32】
リコピン、フィトフルエン、フィトエン、アスタキサンチン、およびカタキサンチンからなる群から選択されるカロテノイド、またはそれらの混合物の有効量を含み、分類1の方法によらずに哺乳動物の血圧を降下させるための薬剤組成物。
【請求項33】
カロテノイドがリコピンである請求項32に記載の薬剤組成物。
【請求項34】
カロテノイドまたはカロテノイド混合物約0.1〜50mgを含む請求項32に記載の薬剤組成物。
【請求項35】
従来の血圧降下剤をさらに含む請求項32に記載の薬剤組成物。
【請求項36】
カロテノイド混合物を含む請求項32に記載の薬剤組成物。
【請求項37】
カロテノイド混合物がリコピン、フィトエン、およびフィトフルエンを含む請求項36に記載の薬剤組成物。
【請求項38】
カロテノイド混合物がリコピン約3%〜15%、フィトエン約0.3%〜1%、およびフィトフルエン約0.3%〜1%を含む請求項37に記載の薬剤組成物。
【請求項39】
カロテノイド混合物約3〜30mgを含む請求項36に記載の薬剤組成物。
【請求項40】
実質的に記載し例示する方法。
【請求項41】
実質的に記載し例示する使用。
【請求項42】
実質的に記載し例示する組成物。

【公開番号】特開2010−180220(P2010−180220A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−52856(P2010−52856)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【分割の表示】特願2002−559017(P2002−559017)の分割
【原出願日】平成14年1月21日(2002.1.21)
【出願人】(500350427)ライコード・ナチユラル・プロダクツ・インダストリーズ・リミテツド (5)
【Fターム(参考)】