説明

血液成分を分離する一体型手段

分離装置は、第1の浮き20、第2の浮き22、第1のバルブ65、および、第2のバルブ67を備えている。第1の浮きは浮き案内用支柱18に取り付けられ、分離チャンバー12の内部にスライド可能に取り付けられている。第2の浮きは案内用支柱に対してスライド可能に取り付けられ、第1の位置と第2の位置との間で移動可能である。第2の浮き22は、第1の位置にあるとき、第1のバルブ65を閉鎖し、第2のバルブ67を開放する。第2の浮きは、第2の位置にあるとき、第1のバルブを開放し、第2のバルブを閉鎖する。第2の浮きは、上記装置を適切な時間スピンさせた後、組成物の第1の成分が第1の浮きと第2の浮きとの間に単離され、組成物の第2の成分が第2の浮きとポートの反対側の分離チャンバーの端部との間に単離されるような密度を有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本開示は、組成物、例えば血液の成分を分離するための無菌装置、システム、および、方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
本セクションにおける記述は、本開示に関連する背景技術情報を提供するものにすぎず、必ずしも先行技術を構成するものではない。
【0003】
全血には、多種多様な画分または成分が含まれる。例えば、ヒトの全血には、多血小板血漿(PRP; platelet rich plasma)、少血小板血漿(PPP; platelet poor plasma)、赤血球(RBC; red blood cells)、および、白血球(WBC; white blood cells)が含まれる。これらの互いに異なる血液画分には、種々の臨床上用途および実験的用途がある。一般的な血液分離装置には、提供者(例えば患者の血管)から吸入した全血を収納するシリンジを別途装着しなければならない。次に分離装置は遠心分離にかけられ、分離された各成分は、別のシリンジを使用して分離装置から吸入され、所望の領域にデリバリーされる。別途用意したシリンジを分離装置に着脱することは厄介であり、時間がかかり、対コスト効率がよくない。さらに、血液を移し変えるたびに汚染の可能性が増大する。
【0004】
したがって、血液を提供者(例えば患者)から直接吸入するために使用可能であり、遠心分離にかけて全血の各画分を密度にしたがって分離することができ、さらに、選択した画分を、対象とする領域に導入するために使用可能な、一体型分離装置および使用方法が必要とされている。
【0005】
〔発明の概要〕
本教唆は、組成物の複数の成分を密度にしたがって分離するための分離チャンバーを有する装置を提供する。本装置は、ポート、浮き案内用支柱、第1の浮き、第2の浮き、流路、第1のバルブ、および、第2のバルブを備えている。ポートは、分離チャンバーの内部と外部との間を通液させる。第1の浮きは、浮き案内用支柱に対して固定して取り付けられ、分離チャンバーの内部にスライド可能に取り付けられる。第2の浮きは、浮き案内用支柱に対してスライド可能に取り付けられ、浮き案内用支柱に沿って第1の位置と第2の位置との間で移動可能である。流路は浮き案内用支柱中において規定され、ポートと通液する。第1のバルブは浮き案内用支柱中に設けられ、流路と通液し、さらに、第1の浮きおよび第2の浮きに挟まれた分離チャンバーの一部領域とも通液する。第2のバルブは浮き案内用支柱中に設けられ、流路と通液し、さらに、第2の浮きおよびポートの反対側の分離チャンバーの端部に挟まれた分離チャンバーの一部領域とも通液する。第2の浮きは、第1の位置にあるときに第1のバルブを閉鎖し、第2のバルブを開放する。第2の浮きは、第2の位置にあるときに第1のバルブを開放し、第2のバルブを閉鎖する。第2の浮きは、装置を適切な時間スピンさせた後、組成物の第1の成分が第1の浮きと第2の浮きとの間に単離され、組成物の第2の成分が第2の浮きとポートの反対側の分離チャンバーの端部との間に単離されるような密度を有する。
【0006】
本教唆は、全血を異なる成分に分離する方法をさらに提供する。本方法は、全血を患者から分離チャンバーのポートを介して分離チャンバー内へ直接吸入し、上記分離チャンバーが浮き案内用支柱に対して固定して取り付けられた第1の浮きと、上記浮き案内用支柱に対してスライド可能に取り付けられた第2の浮きとを備え、上記浮き案内用支柱が第1のバルブと第2のバルブとを有し、第2の浮きが第1の位置にあるときには第1のバルブが閉鎖され、かつ、第2のバルブが開放され、上記全血が第2のバルブを介して分離チャンバー内へ吸入され、さらに、第2の浮きと分離チャンバーの内部にスライド可能に取り付けられたプランジャーとの間の領域へ吸入され、上記チャンバーを遠心分離機で十分な時間回転させて、第2の浮きが第1の浮きから離間して第2のバルブを閉鎖し、かつ、第1のバルブを開放する第2の位置まで第2の浮きを移動させ、さらに、赤血球が上記ポートと第1の浮きとの間に単離され、多血小板血漿が第1の浮きと第2の浮きとの間に単離され、少血小板血漿が第2の浮きとプランジャーとの間に単離されるように全血の成分を密度にしたがって分離し、上記プランジャーを分離チャンバー内において第1の距離まで押し下げて第1の浮きを第2の位置から第1の位置まで移動させて、上記多血小板血漿を強制的に第1のバルブを通過させて上記ポートを介して分離チャンバーから排出し、第1のバルブを閉鎖し、かつ、第2のバルブを開放し、上記多血小板血漿を、上記ポートに取り付けられたアプリケーターを介して対象とする領域に直接導入し、上記プランジャーを分離チャンバー内において第1の距離より長い第2の距離までさらに押し下げて、上記少血小板血漿を強制的に第2のバルブを通過させて上記ポートを介して分離チャンバーから排出し、上記少血小板血漿を、上記ポートに取り付けられたアプリケーターを介して対象とする領域に直接導入することを含む。
【0007】
本教唆は、骨髄液を異なる成分に分離する方法をさらに提供する。本方法は、骨髄液を患者から分離チャンバーのポートを介して分離チャンバー内へ直接吸入し、上記分離チャンバーが浮き案内用支柱に対して固定して取り付けられた第1の浮きと、上記案内用支柱に対してスライド可能に取り付けられた第2の浮きとを備え、上記浮き案内用支柱が第1のバルブと第2のバルブとを有し、第2の浮きが第1の位置にあるときには第1のバルブが閉鎖され、かつ、第2のバルブが開放され、上記骨髄液が第2のバルブを介して分離チャンバー内へ吸入され、さらに、第2の浮きと分離チャンバーの内部にスライド可能に取り付けられたプランジャーとの間の領域へ吸入され、上記チャンバーを遠心分離機で十分な時間回転させて、第2の浮きが第1の浮きから離間して、第2のバルブを閉鎖するとともに第1のバルブを開放する第2の位置まで、第2の浮きを移動させ、さらに、赤血球が上記ポートと第1の浮きとの間に単離され、多能性細胞が第1の浮きと第2の浮きとの間に単離され、骨髄血漿が第2の浮きとプランジャーとの間に単離されるように骨髄液の成分を密度にしたがって分離し、上記プランジャーを分離チャンバー内において第1の距離まで押し下げて第1の浮きを第2の位置から第1の位置まで移動させて、上記多能性細胞を強制的に第1のバルブを通過させて上記ポートを介して分離チャンバーから排出し、第1のバルブを閉鎖し、かつ、第2のバルブを開放し、上記多能性細胞を、上記ポートに取り付けられたアプリケーターを介して対象とする領域に直接導入し、上記プランジャーを分離チャンバー内において第1の距離より長い第2の距離までさらに押し下げて、上記骨髄血漿を強制的に第2のバルブを通過させて上記ポートを介して分離チャンバーから排出し、上記骨髄血漿を、上記ポートに取り付けられたアプリケーターを介して対象とする領域に直接導入することを含む。
【0008】
本教唆は、ポート、第1の浮き、および、第2の浮きを備えた、組成物の複数の成分を密度にしたがって分離するための分離チャンバーを有する装置をさらに提供する。ポートは、分離チャンバーの内部と外部との間を通液させる。第1の浮きは、分離チャンバーの内部にスライド可能に取り付けられる。第2の浮きは、分離チャンバーの内部にスライド可能に取り付けられる。第2の浮きは、装置を適切な時間スピンさせた後、組成物の第1の成分が第1の浮きと第2の浮きとの間に単離され、組成物の第2の成分が第2の浮きとポートの反対側の分離チャンバーの端部との間に単離されるような密度を有する。
【0009】
本教唆は、全血を異なる成分に分離する方法をさらに提供する。本方法は、全血を患者からポートを介して分離チャンバー内へ直接吸入し、上記分離チャンバーが分離チャンバーの内部にスライド可能に取り付けられた第1の浮きと、上記分離チャンバーの内部にスライド可能に取り付けられた第2の浮きとを備え、上記全血が分離チャンバー内へ吸入され、さらに、第2の浮きと分離チャンバーの内部にスライド可能に取り付けられたプランジャーとの間の領域へ吸入され、上記チャンバーを遠心分離機で十分な時間回転させて、第2の浮きが第1の浮きから離間する第2の位置まで第2の浮きを移動させ、さらに、赤血球が上記ポートと第1の浮きとの間に単離され、多血小板血漿が第1の浮きと第2の浮きとの間に単離され、少血小板血漿が第2の浮きとプランジャーとの間に単離されるように全血の成分を密度にしたがって分離し、上記プランジャーを分離チャンバー内において第1の距離まで押し下げて第1の浮きを第2の位置から第1の位置まで移動させて、上記多血小板血漿を強制的に上記ポートを介して分離チャンバーから排出し、上記多血小板血漿を、上記ポートに取り付けられたアプリケーターを介して対象とする領域に直接導入し、上記プランジャーを分離チャンバー内において第1の距離より長い第2の距離までさらに押し下げて、上記少血小板血漿を強制的に上記ポートを介して分離チャンバーから排出し、上記少血小板血漿を、上記ポートに取り付けられたアプリケーターを介して対象とする領域に直接導入することを含む。
【0010】
さらに別の応用分野は、本明細書の記載から自ずから理解できるはずである。本記載および具体的な例は、例示を目的とするものにすぎず、本開示の技術的範囲を限定するものではないことは理解されるべきである。
【0011】
〔図面〕
ここで記載する図面は例証を提供することを目的とするものに過ぎず、本開示の技術的範囲に対していかなる限定を加える意図もない。
【0012】
図1Aは、本教唆に係る、多成分組成物の成分を分離するための装置の斜視図である。
【0013】
図1Bは、図1Aの装置のプランジャーの分解図である。
【0014】
図2Aは、図1Aの線2A−2Aに沿った、図1Aの装置の断面斜視図である。
【0015】
図2Bは、図1Aの装置の断面図である。
【0016】
図3Aは、図1Aの装置の浮き案内用支柱の断面図である。
【0017】
図3Bは、図3Aの浮き案内用支柱の分解斜視図である。
【0018】
図3Cは、図1Aの装置とともに使用可能な別の浮き案内用支柱の分解斜視図である。
【0019】
図4は、図1Aの装置の断面図である。この装置には全血が充填され、適切な時間スピンさせて全血の異なる成分を密度にしたがって分離してある。少血小板血漿は第2の浮きとプランジャー基部との間に単離され、多血小板血漿は第2の浮きと第1の浮きとの間に単離され、赤血球は第1の浮きと吸入/排出ポートとの間に単離されている。
【0020】
図4Aは、図4の装置の最上部の斜視図である。プランジャー基部は、装置の遠位の端部においてロック用タブを用いて固定されている。
【0021】
図5は、図1Aの装置の断面図であり、プランジャーが作動して多血小板血漿が装置から排出される様子を示している。
【0022】
図6は、図1Aの装置の断面図であり、プランジャーが作動してさらに少血小板血漿が装置から排出される様子を示している。
【0023】
〔詳細な説明〕
以下の記載は本質において単なる例示にすぎず、本開示、応用例、および、各種使用を限定するものではない。
【0024】
まず図1A、図1B、図2A、および、図2Bを参照すると、本教唆に係る多成分組成物の成分を分離するための装置が、部材番号10として示されている。装置10は、多成分組成物を提供者(例えば患者)から直接抽出するために使用可能であり、遠心分離にかけて上記組成物の異なる成分を密度にしたがって分離することができ、さらに、組成物の選択した各成分を対象とする領域(例えば創傷部位)に直接導入するために使用可能な、一体型装置である。
【0025】
装置10は、一般に、分離チャンバー12、ポート14、プランジャー16、および、浮き案内用支柱18を備えている。このポート14は、多成分組成物を分離チャンバー12内へ吸入し、分離済み成分を分離チャンバー12から排出するためのものである。浮き案内用支柱18には、第1の浮き20および第2の浮き22が取り付けられている。
【0026】
分離チャンバー12は、任意の適したサイズまたは形状を有する任意の適した容器の形態を取ってかまわない。例をあげれば、図面に示すように、分離チャンバー12は、円柱状であってもよく、シリンジの本体を形成してもよい。分離チャンバー12は長手方向の軸Aを有する。
【0027】
プランジャー16は、分離チャンバー12の内部にスライド可能に取り付けられている。具体的には、プランジャー16は、プランジャー基部24およびプランジャー取っ手部26を有する。プランジャー基部24は、分離チャンバー12の内部に設置され、プランジャー取っ手部26は、プランジャー基部24および分離チャンバー12から延びる。
【0028】
プランジャー取っ手部26は、任意の適した方法で、上記基部24に対して着脱可能に取り付けてかまわない。例をあげれば、図1Bに示すように、プランジャー基部24は、基部24の上面から延びる、互いに対向する2つのロック用フランジ27を備えていてもよい。プランジャー取っ手部26はロック用タブ29を備えていてもよく、このロック用タブ29は、ロック用タブ29を両フランジ27間に置いてプランジャー取っ手部26を90°回転させ、ロック用タブ29をフランジ27の下のフランジ27と基部24の他の部分との間に配置すると、フランジ27と嵌合する。プランジャー16は、分離チャンバー12内に真空状態を生成することによって、分離チャンバー12内への多成分組成物の吸入を促進し、また、分離チャンバー12からの分離済み成分の排出を促進する(詳細については後述する)。シリンジ取っ手部23は分離チャンバー12の外面から延び、装置10の操作および取り扱いを容易にする。
【0029】
分離する多成分組成物は、ポート14を介して分離チャンバー12へ吸入され、ポート14を介して分離チャンバー12から排出される。ポート14は、例えば、分離する多成分組成物(例えば全血)の通過を可能にする任意の適したスルーポートであればよい。例えば、ポート14は、ルアーロック15を備えていてもよい。ポート14は、種々の装置、例えば延長ノズル21(図1)と協同することもできる。
【0030】
延長ノズル21は、例えば、任意の適したコネクタ(例えば図示したルアーの延長部)であればよい。ノズル21は、第1の端部に第1のルアーロックコネクタ31を有し、第2の端部に第2のルアーロックコネクタ33を有する。第1のルアーロック31は、ポート14のルアーロック15と協同する。第2のルアーロック33は、針先端部25(図1)またはスプレー先端部(図示せず)と協同する。第2のルアーロック33は、例えば、針先端部25が取り外されると閉鎖する、ルアーによって始動するタイプのバルブであればよい。後述するように、ノズル21は、装置10を無菌状態に維持しながら、ポート14を吸入ポートおよび排出ポートのいずれに使用する場合であっても、その使用を容易にする。
【0031】
針先端部25は、上記組成物を分離チャンバー12内へ吸入するために使用される。針先端部25およびスプレー先端部はどちらも、デリバリー先の部位(例えば創傷部位)へ組成物の各種成分を導入することを容易にする。
【0032】
さらに図3Aおよび図3Bを参照すると、浮き案内用支柱18は、第1の端部28と、第1の端部28の反対側の第2の端部30とを有する。浮き案内用支柱18は全体的に円柱状の形状を有する。案内用支柱18は、中央流路またはチャンネル32を規定する。チャンネル32は、第1の端部28から案内用支柱18の長手方向の軸Bに沿って延びる。図面に示すように、チャンネル32は第1の端部28から延びて、第2の端部30に達する直前に途切れる。
【0033】
さらに図3Cを参照すると、本教唆に係る別の浮き案内用支柱が、部材番号18’として示されている。案内用支柱18の部類に入る浮き案内用支柱18’の特徴点は、ダッシュ記号(’)を添えた同じ部材番号を付して示す。共通する特徴点についての説明はここでは案内用支柱18に関して記載するが、案内用支柱18’にも当てはまる。案内用支柱18と案内用支柱18’との間の主な違いは、チャンネル32’が第2の端部30’まで延びて、第1の端部28’から第2の端部30’まで浮き案内用支柱18’を通って途切れずに延びる導管を形成する点にある。
【0034】
案内用支柱18は、少なくとも1つの第1の開口部34および少なくとも1つの第2の開口部36をさらに有する。第1の開口部34は第1の端部28の直近に位置し、第2の開口部36は第2の端部30の直近に位置している。図面に示すように、案内用支柱18は、2つの第1の開口部34および2つの第2の開口部36を有する。2つの第1の開口部34および2つの第2の開口部36は、案内用支柱18の外周の周りに180°の間隔で配置されている。各第1の開口部34の孔および各第2の開口部36の孔は、それぞれ環状窪み部37Aおよび37Bに配置されている。
【0035】
第1の開口部34および第2の開口部36は、それぞれが、チャンネル32と分離チャンバー12との間を通液させる。図3Cに示すように、上記案内用支柱18’は、第2の端部30’に第3の開口部39を有する。この第3の開口部39は、チャンネル32’と分離チャンバー12’との間の通液を促進する。
【0036】
第2の開口部36の対向する両側において、その直近に、環状窪み部38Aおよび38Bがそれぞれ案内用支柱18の内部に設けられている。環状窪み部38Aおよび38Bは、それぞれO型リング40Aおよび40Bを収納する。後述するように、O型リング40Aおよび40Bは、第1の端部28と第2の端部30との間において浮き案内用支柱18の長手方向の軸Bに沿った第2の浮き22の運動を容易にし、O型リング40Aおよび40Bにおいて組成物の通過を制限する。O型リング40Aおよび40Bは、例えば、任意の適した素材(例えばポリマー性物質)で形成されればよい。浮き案内用支柱18は、案内用支柱18の長手方向の軸Bが分離チャンバー12の長手方向の軸Aに沿って延びるように、分離チャンバー12の内部に配置されている。
【0037】
第1の浮き20は、全体的に直円柱形状を有する。さらに図4を参照すると、第1の浮き20は、下面(つまり第1の表面)42と、下面42の反対側の上面(つまり第2の表面)44とを有する。下面42の外周と上面44の外周との間には、円形の側壁46が延びている。上面44は半球状の形状を有し、第1の浮き20の他の部分に対して凹状である。下面42は半球状の形状を有し、第1の浮き20の他の部分に対して凸状である。
【0038】
スルーボア48は、第1の浮き20の軸の中央部を通って延びる。浮き案内用支柱18はスルーボア48の内部に配置され、任意の適した方法で(例えば図示するような押し込み機構、または、適切な接着剤を用いて)スルーボア48に固定して取り付けられている。浮き案内用支柱18は、案内用支柱18の第1の端部28が第1の浮き20の内部の下面42の直近に設置され、第1の開口部34が上面44に位置するように、第1の浮き20に取り付けられている。具体的には、案内用支柱18は、第1の開口部34の大部分が第1の浮き20のスルーボア48の内部において窪み、第1の開口部34のごく一部だけが第1の浮き20の中央部において上面44のわずかに上方に位置するように配置される。さらに、第1の開口部34は、窪み部37Aの内部に配置された結果として、第1の浮き20から離間している。したがって、第1の開口部34と第2の浮き22との間にわずかな隙間が存在し、上記多成分組成物はこの隙間を通り、第1の開口部と第1の浮き20および第2の浮き22に挟まれた領域との間が通液している。上面44が凹状であるから、第1の開口部34は下方に向かって窪んでいて、上面44を完全に横切って延びる、側壁46に対して垂直な平面を横切ることがない。
【0039】
第1の浮き20は、下面42がポート14に対向し、上面44がプランジャー16に対向するように、分離チャンバー12の内部に配置されている。第1の浮き20の円形の側壁46は、分離チャンバー12の内側の側壁50に対向する。装置10が回転またはスピンしていないときは、側壁46は分離チャンバー12の内側の側壁50に接触して、分離作業途中の多成分組成物が側壁46と内側の側壁50との間を通過することを制限する。
【0040】
第2の浮き22は全体的に直錐形状を有する。第2の浮き22は、下面(つまり第1の表面)52と、下面52の反対側の上面(つまり第2の表面)54とを有する。下面52と上面54との間では、第2の浮き22の外側よりの周縁部の周囲に、円柱状の側壁56が延びている。上面54は下向きに側壁56に向かって傾斜している。下面52は半球状の形状を有し、第2の浮き22の他の部分に対して凸状である。側壁56は、側壁56の周囲に延びる環状窪み部58を有する。環状窪み部58は、第2の浮き22の円柱状の側壁56の周囲に延びるO型リング60を収納する。装置10が回転またはスピンしていないときは、側壁56は分離チャンバー12の内側の側壁50に接触して、分離作業途中の多成分組成物が側壁56と内側の側壁50との間を通過することを制限する。O型リング60は、分離チャンバー12の内部における第2の浮き22の運動を容易にし、組成物が側壁56と内側の側壁50との間を通過することを制限する、任意の適した素材で形成されればよい。例えば、O型リング60は、適切なポリマー性物質で形成されればよい。
【0041】
スルーボア62は、第2の浮き22の中央部を通って延びる。浮き案内用支柱18はスルーボア62の内部に配置されている。第2の浮き22は案内用支柱18に対してスライド可能に取り付けられ、その結果、第2の浮き22は、分離チャンバー12の長手方向の軸Aおよびスルーボア48の長手方向の軸Bに沿ってスライド可能に運動する。第2の浮き22はO型リング40Aおよび40B上に設置されている。このO型リング40Aおよび40Bは、第2の浮き22の運動を容易にし、O型リング40Aおよび40Bを通過する多成分組成物の流量を制限する。第2の浮き22は、O型リング40Aおよび40Bが存在するので、浮き案内用支柱18の外表面41からわずかに離間している。
【0042】
第2の浮き22は、第2の浮き22が第1の浮き20に接触する第1の位置(図2Aおよび図2B)と、第2の浮き22が第1の浮き20から離間する第2の位置(図4)との間でスライド可能に運動してもよい。第1の位置では、第2の浮き22の下面52は第1の浮き20の上面44と同一面を形成して、多成分組成物が第1の開口部34を通って分離チャンバー12内へ流れ込むことを制限する。第2の浮き22が第1の位置にあるときは、第2の開口部36と分離チャンバー12との間に通路が存在し、案内用支柱18のチャンネル32と、第2の浮き22およびプランジャー16に挟まれた分離チャンバー12の一部との間が通液している。この通路は、第2の浮き22と第2の開口部36およびO型リング40Bとの間の隙間が原因となって形成される。
【0043】
第2の位置では、第2の浮き22が第1の浮き20から離間し、案内用支柱18の第2の端部30の直近に位置している。案内用支柱18は、第2の浮き22が案内用支柱18から外れることを防止するために、第2の端部30に環状タブ64(図3A)を有する。第2の浮き22が第1の浮き20から離間している状態では、第1の開口部34と第1の浮き20との間の隙間によって、案内用支柱18のチャンネル32と、第1の浮き20および第2の浮き22に挟まれた分離チャンバー12の一部との間が通液している。第2の位置では、第2の浮き22がO型リング40Bと嵌合して、第2の開口部36と分離チャンバー12との間の通路を遮断し、第2の開口部36と、第2の浮き22の上方に位置する分離チャンバー12の一部領域との間の通液を制限する。
【0044】
このようにして、分離チャンバー12と、ポート14と最終的に通液する浮き案内用支柱18のチャンネル32との間に、第1の開口部34が第1のバルブ65を形成し、第2の開口部36が第2のバルブ67を形成する。第1の開口部および第2の開口部34および36を通る組成物の流れは、第2の浮き22の位置によって制御される。第2の浮き22が第1の位置にあるとき、第2の浮き22は、第2の開口部36を通る組成物の流れを遮断せず、こうすることによって、チャンネル32と、第2の浮き22の上方に位置する分離チャンバー12の一部領域との間で、第2のバルブ67を開放する。第1の位置では、第2の浮き22は、第1の開口部34を通って分離チャンバー12内へ流れ込む組成物の流れを制限し、こうすることによって、チャンネル32と、第1の浮き20および第2の浮き22に挟まれた分離チャンバー12の一部領域との間で、第1のバルブ65を閉鎖する。
【0045】
第2の浮き22が第2の位置にあるとき、第2の浮き22は、第2の開口部36を通る組成物の流れを遮断し、こうすることによって、チャンネル32と、第2の浮き22の上方に位置する分離チャンバー12の一部領域との間で、第2のバルブ67を閉鎖する。第2の位置では、第2の浮き22は、第1の開口部34を通る組成物の流れを制限せず、こうすることによって、チャンネル32と、第1の浮き20および第2の浮き22に挟まれた分離チャンバー12の一部領域との間で、第1のバルブ65を開放する。
【0046】
第1の浮き20および第2の浮き22は、装置10を遠心分離機で適切な時間の回転またはスピンにかけると、浮き20および22が分離チャンバー12の内部で運動し、単離する多成分組成物の異なる成分間に挟まれて静止することのできる、任意の適した素材で形成されればよい。例えば、装置10を使用して全血の成分を分離する場合、浮き20および22は、適切なHDPE(high−density polyethylene material; 高密度ポリエチレン物質)で形成されればよい。浮き20および22を形成するHDPEは、赤血球(RBC)をポート14と第1の浮き20との間へ移動させ、多血小板血漿、軟膜、または、多細胞画分(まとめて「PRP」と称する)を、第2の浮き22が第2の位置にあるときに第1の浮き20と第2の浮き22との間へ移動させ、少血小板血漿(PPP)を第2の浮き22とプランジャー基部24との間へ移動させるような、全血の分離を可能にする密度を有する。
【0047】
第1の浮き20は、第2の浮き22より大きな密度を有する。具体的には、第1の浮き20は、約1.070g/ml〜約1.095g/ml(例えば1.075g/ml)の密度を有していればよい。第2の浮き22は、約0.93g/ml〜約0.955g/ml(例えば0.945g/ml)の密度を有していればよい。第1の浮き20、第2の浮き22、および、浮き案内用支柱18を含むアッセンブリーは、全体で約1.02g/ml〜約1.09g/ml(例えば1.045g/ml)の密度を有していればよい。
【0048】
第1の浮き20の下面42には、第1のコネクタ66が取り付けられている。第1のコネクタ66はチャンネル32と通液し、第1の浮き20の下面42越えて延びている。ポート14には第2のコネクタ68が取り付けられている。第2のコネクタ68は、ポート14から分離チャンバー12の内部へ延びている。可撓管または可撓導管70が第1のコネクタ66および第2のコネクタ68に接続されて、ポート14と浮き案内用支柱18との間を通液させる。
【0049】
装置10を使用すれば、ほぼ任意の液体組成物を密度にしたがって各構成成分に分離することができる。以下においては、特に図2および図4〜図6を参照しながら、全血からRBC、PPP、および、PRPを分離する装置10の動作について記載する。
【0050】
図2Aおよび図2Bに示すように、第1の浮き20をポート14の直近に配置し、第2の浮き22を第1の位置に配置した状態で、全血を、装置10の分離チャンバー12内へ充填する。第1の位置では、第2の浮き22が第1の浮き20に接触して、血液が第1の開口部34を通って分離チャンバー12内へ流れることを遮断し、こうすることによって、第1の開口部34によって規定される第1のバルブ65が閉鎖される。また、この接触によって、血液は第2の開口部36を通って分離チャンバー12内へ流れ込むことができるようになり、こうすることによって、第2の開口部36によって規定される第2のバルブ67が開放される。充填の前に、プランジャー16は、プランジャー基部24が分離チャンバー12の内部の深い場所に位置し、かつ、ポート14の反対側の分離チャンバー12の端部72(図1)に対して遠位に位置するように配置される。
【0051】
延長ノズル21の第1のルアーロック31をポート14のルアーロック15に結合し、針先端部25を延長ノズル21の第2のルアーロック33に結合した状態で、全血の提供者(例えば患者の血管)に針先端部25を挿入する。次に、プランジャー16を外向きに引いて、プランジャー基部24をチャンバー12の端部72に向かって移動させる。図2Bに示すように、プランジャー16を引くことによって、分離チャンバー12内に真空状態が生成されて、全血がポート14、管70、案内用支柱18のチャンネル32、第2の開口部36を介して、第2の浮き22とプランジャー基部24との間の分離チャンバー12内へ吸入される。
【0052】
全血は任意の適した量(例えば30mlまたは60ml)を吸入すればよい。分離チャンバーのサイズは、分離する全血の量に応じて異なる。例えば、30mlの全血を分離するのであれば、分離チャンバー12は約51mlの流体を保持できるサイズであればよい。60mlの全血を分離するのであれば、分離チャンバー12は約94mlの流体を保持できるサイズであればよい。第1の浮き20および第2の浮き22の直径は、異なる直径を有する各種チャンバー12に合うように調整すればよい。浮き20および22の密度は、第1の浮きおよび第2の浮きの直径に関わらず一定である。
【0053】
血液を分離チャンバー12に充填した後、プランジャー取っ手部26を90°回転させて、ロック用タブ29がフランジ27との嵌合から外れて、針先端部25をノズル21の第2のルアーロックコネクタ33から取り外せるようにすることによって、プランジャー取っ手部26をプランジャー基部24から取り外してもかまわない。上記ルアーロックコネクタ33がルアーバルブであれば、ルアーロックコネクタ33は針先端部25を取り外すと閉鎖する。ルアーロックコネクタ33を、適切な無菌カバー74(図4)を用いて閉鎖してもよい。
【0054】
装置10にスピンをかける際に、プランジャー基部24が移動してチャンバー12内の全血に圧力を印加することを防止するために、プランジャー基部24が血液より小さい密度を有していてもよい。適切なロック装置を使用して、プランジャー基部24を固定してもかまわない。例をあげれば、図4および図4Aに示すように、プランジャー基部24をシリンジ取っ手部23とほぼ同一平面上に配置した状態で、ロック用タブ76がシリンジ取っ手部23上に載り、プランジャー基部24の運動を制限できるように、ロック用タブ76をロック用フランジ27の下に挿入すればよい。
【0055】
全血が第2の浮き22とプランジャー基部24との間に配置された状態であれば、装置10はスピンにかけて全血の成分を密度にしたがって分離する用意が出来ている。装置10は、適切な回転装置(例えば遠心分離機)を用いてスピンにかけられる。
【0056】
装置10を任意の適切な時間のスピンにかけて、血液の異なる成分を分離すればよい。例えば、装置10を約3,200rpmで約12分間〜約15分間のスピンにかければよい。装置10がスピンすると、分離チャンバー12の内側の側壁50は、分離チャンバー12の長手方向の軸Aから外向きに屈曲または膨張して、第1の浮き20の側壁46と内側の側壁50との間、および、第2の浮き22の側壁56と内側の側壁50との間に隙間を形成して、第1の浮き20および第2の浮き22が分離チャンバー12の内部で移動できるようにし、また、全血が第1の浮き20および第2の浮き22を超えて移動できるようにする。
【0057】
装置10を回転させると、各血液成分が密度にしたがって分離する。さらに、第1の浮き20および第2の浮き22は、各浮き20および22の密度が周囲の血液成分の密度とほぼ等しいまたは一致する位置に両浮きが達するまで、分離チャンバー12の長手方向の軸Aに沿ってスライド可能に移動する。具体的には、図4に示すように、第1の浮き20がポート14から離れる方向に、RBCとPRPとの間の位置まで移動する。第2の浮き22は第2の位置まで移動し、その結果、第2の浮き22は、PRPが第1の浮き20と第2の浮き22との間に位置する状態で、第1の浮き20から離間する。PPPは第2の浮き22とプランジャー基部24との間で沈殿する。第2の位置では、第2の浮き22が、分離チャンバー12と、第1の開口部34によって規定されるチャンネル32との間の第1のバルブ65を開放し、第2の開口部36によって規定される第2のバルブ67を閉鎖する。
【0058】
各血液成分を分離チャンバー12から搬出するためには、装置10を回転装置から取り外し、プランジャー取っ手部26をプランジャー基部24に再び取り付け、延長ノズル21を取り外し、適切なアプリケーター(例えばスプレー先端部または新しい無菌針先端部25A)をポート14のルアーロック15に直接結合する。このように、ポート14は吸入ポートにも、排出ポートにもなる。
【0059】
ポート14を無菌状態で維持するために、装置は、ポート14に取り付けられた延長ノズル21とともに包装される。ポート14は、遠心分離が終わって延長ノズル21を取り外すまで環境から遮蔽される。こうすることによって、ポート14は1回だけしか環境に曝露されることがなく、これがポート14の無菌状態を強化する。
【0060】
図5に示すように、プランジャー16は分離チャンバー12内へ押し込まれて、PPPおよび第2の浮き22に圧力を印加する。第2の浮き22は、第1の浮き20に向かって第1の位置まで押し戻される。O型リング60が存在することによって、圧力がプランジャー16によってPPPに印加される際に、PPPが第2の浮き22の周囲を通過することが防止される。さらに、O型リング60は、プランジャー16の作動に応じて、第2の浮き22が移動することを容易にする。
【0061】
第2の浮き22と第1の浮き20との間の隙間が閉鎖されると、第1の浮き20と第2の浮き22との間のPRPが、第1の開口部34によって規定される第1のバルブ65を、強制的に通過させられる。このPRPは、第1の開口部34、チャンネル32、および、可撓管70を通ってポート14まで移動する。PRPは、ポート14から針先端部25Aを通って装置10から押し出されて、所望の領域に達する。
【0062】
単離されたPRPは、一般的な創傷治癒に使用することができ、また、これを使用すれば、ほぼどんな整形外科施術であっても、その完了手順が簡便に実施できる。さらに具体的には、PRPは、骨折、非結合、骨欠損、腱炎、および、足底筋膜炎を治療するために使用可能である。PRPを、全体関節置換術、胃バイパス術、および、骨移植などの施術に関連して使用してもかまわない。
【0063】
第2の浮き22が第1の位置にある状態で、案内用支柱18内で第2の開口部36によって規定される第2のバルブ67が開放される。図6に示すように、プランジャー16によって継続的に印加される圧力によって、第2の浮き22とプランジャー基部24との間のPPPが第2の開口部36を通過する。PPPは、第2の開口部36、チャンネル32、および、可撓管70を通ってポート14まで移動する。PPPは、ポート14からポート14に取り付けられた任意の適したアプリケーターを通って装置10から押し出されて、所望の領域に導入される。
【0064】
PPPは種々の適切な目的のために、例えば創傷閉鎖を容易にするために使用可能である。PPPを、フィブリン組織接着剤として、フィブリン糊として、および、顔面再生のために使用することもできる。
【0065】
RBCは通常分離装置10から抽出されない。ただし、当業者であれば、装置10がポート14と第1の浮き20との間に第3のバルブを備え、この第3のバルブを介してRBCを装置10から搬出してもかまわないことが理解できるであろう。
【0066】
このように、装置10は一体型血液分離装置を提供する。装置10は、無菌パッケージに包装して無菌室に導入してもかまわない。装置10を無菌室に持ち込んで無菌パッケージから取り出した後、無菌作業者が装置10を上述のように使用して、血液を提供者(例えば患者の血管)から直接吸入し、遠心分離を実施する間にRBC、PPP、および、PRPの各血液画分を分離し、その画分を創傷部位に直接デリバリーして、治癒を促進してもよい。装置10によって、全血を患者から吸入し、吸入した血液を遠心分離にかけるために適切な装置に移し変え、分離済み血液画分を創傷部位に導入するために、シリンジなどの用具を別途用意する必要がなくなる。したがって、装置10によって、シリンジ間、装置間、または、無菌室から非無菌室へ移し変える間に、血液が汚染される可能性が一切なくなる。
【0067】
装置10を、骨髄液の成分を分離するために使用してもかまわない。例えば、骨髄液は、任意の適した骨髄穿刺装置を用いて得られる。骨髄穿刺装置の一例としては、米国特許出願第12/210,372号明細書(Biomet Biologics, LLC社、発明の名称:「Bone Marrow Aspiration Needle」、出願日:2008年9月15日)に記載の装置があげられる。なお、上記特許出願の内容は全て参照によってここに引用されるものとする。具体的には、装置10を、上記米国特許出願第12/210,372号明細書に記載の内側吸引用針に、ルアーロック15と内側吸引用針のルアーロックとを協同させて、直接取り付ければよい。
【0068】
分離にかける骨髄液を得るために、上記内側吸引用針を備える骨髄穿刺装置は、骨の皮質まで、さらに最終的には骨髄腔まで進められ、ここから骨髄液が採取される。骨髄液は、上述のように、全血と同じ方法で装置10に吸入される。骨髄液は任意の適した量(例えば約300cc、約60cc、または、60cc未満)を使用すればよい。適切な量の適切な抗凝固材を、骨髄腔から採取後の骨髄液に添加する。
【0069】
装置10は、全血の分離について上述したのと同じ方法で遠心分離にかけられる。遠心分離によって骨髄液が分離し、骨髄血漿は第2の浮き22とプランジャー基部24との間に単離される。骨髄液の重い成分(例えばRBC)は、第1の浮き20とポート14との間に単離される。多能性細胞は、第2の浮き22が第2の位置にあるとき、第1の浮き20と第2の浮き22との間で、第1の浮き20および第2の浮き22の間に形成される隙間に単離される。多能性細胞および骨髄血漿は、PRPおよびPPPについて上述したのと同じ方法で装置10から取り出すことができる。
【0070】
装置10を用いて骨髄液から多能性細胞を単離する場合に、第1の浮き20は、第2の浮き22より大きな密度を有する。装置10を使用して骨髄液の成分を分離する場合の第1の浮き20の密度および第2の浮き22の密度は、一般に、装置10を使用して全血を分離する場合の浮き20および22の密度と同じである。
【0071】
ほぼどんな液体組成物であっても、これを密度にしたがって構成成分に単離するために、装置10を使用してもよい。異なる成分を分離できるように装置10を構成するためには、第1の浮き20の密度および第2の浮き22の密度を、単離する特定の成分の密度に近似するように調整すればよい。こうすることによって、単離する第1の成分および第2の成分が第2の浮き22によって分離されて、第1の成分は第1の浮き20と第2の浮き22との間に単離され、第2の成分は第2の浮き22とプランジャー基部24との間に単離される。
【0072】
本発明の記載は本質において単なる例示にすぎず、したがって、本発明の特徴点から逸脱しない変形は、本発明の技術的範囲に含められるものである。このような変形は本発明の精神および技術的範囲から逸脱するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1A】図1Aは、本教唆に係る、多成分組成物の成分を分離するための装置の斜視図である。
【図1B】図1Bは、図1Aの装置のプランジャーの分解図である。
【図2A】図2Aは、図1Aの線2A−2Aに沿った、図1Aの装置の断面斜視図である。
【図2B】図2Bは、図1Aの装置の断面図である。
【図3A】図3Aは、図1Aの装置の浮き案内用支柱の断面図である。
【図3B】図3Bは、図3Aの浮き案内用支柱の分解斜視図である。
【図3C】図3Cは、図1Aの装置とともに使用可能な別の浮き案内用支柱の分解斜視図である。
【図4】図4は、図1Aの装置の断面図である。この装置には全血が充填され、適切な時間スピンさせて全血の異なる成分を密度にしたがって分離してある。少血小板血漿は第2の浮きとプランジャー基部との間に単離され、多血小板血漿は第2の浮きと第1の浮きとの間に単離され、赤血球は第1の浮きと吸入/排出ポートとの間に単離されている。
【図4A】図4Aは、図4の装置の最上部の斜視図である。プランジャー基部は、装置の遠位の端部においてロック用タブを用いて固定されている。
【図5】図5は、図1Aの装置の断面図であり、プランジャーが作動して多血小板血漿が装置から排出される様子を示している。
【図6】図6は、図1Aの装置の断面図であり、プランジャーが作動してさらに少血小板血漿が装置から排出される様子を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の複数の成分を密度にしたがって分離するための分離チャンバーを有する装置であって、
上記分離チャンバーの内部と外部との間を通液させるポートと、
浮き案内用支柱と、
上記浮き案内用支柱に対して固定して取り付けられ、上記分離チャンバーの内部にスライド可能に取り付けられた第1の浮きと、
上記浮き案内用支柱に対してスライド可能に取り付けられ、上記浮き案内用支柱に沿って第1の位置と第2の位置との間で移動可能である第2の浮きと、
上記浮き案内用支柱中において規定された、上記ポートと通液する流路と、
上記浮き案内用支柱中に設けられ、上記流路と通液し、さらに、上記第1の浮きおよび上記第2の浮きに挟まれた上記分離チャンバーの一部領域とも通液する第1のバルブと、
上記浮き案内用支柱中に設けられ、上記流路と通液し、さらに、上記第2の浮きおよび上記ポートの反対側の上記分離チャンバーの端部に挟まれた上記分離チャンバーの一部領域とも通液する第2のバルブとを備え、
上記第2の浮きは、上記第1の位置にあるときに上記第1のバルブを閉鎖し、かつ、上記第2のバルブを開放し、
上記第2の浮きは、上記第2の位置にあるときに上記第1のバルブを開放し、かつ、上記第2のバルブを閉鎖し、
上記第2の浮きは、上記装置を適切な時間スピンさせた後、上記組成物の第1の成分が上記第1の浮きと上記第2の浮きとの間に単離されるとともに、上記組成物の第2の成分が上記第2の浮きと上記ポートの反対側の上記分離チャンバーの端部との間に単離されるような密度を有する、装置。
【請求項2】
上記ポートが、上記組成物を上記分離チャンバー内に注入し、分離された各成分を上記分離チャンバーから搬出するための、上記分離チャンバーに通じる通路を形成する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
上記分離チャンバーの内部にスライド可能に移動できるプランジャーをさらに備え、
上記プランジャーが、プランジャー取っ手部に着脱可能に取り付けられたプランジャー基部を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
上記プランジャーの移動を制限するプランジャー停止部をさらに備えた、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
上記第1の浮きが約1.070g/ml〜約1.095g/mlの密度を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
上記第1の浮きが上記第2の浮きより大きな密度を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
上記第2の浮きが約0.93g/ml〜約0.955g/mlの密度を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
上記第1の浮きが、上記第2の浮きに対向する凹状の最上面を有し、
上記第1の浮きが、上記最上面の反対側に凸状の底面を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
上記装置がシリンジを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
上記シリンジが、延長ノズルによって上記ポートに接続されている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
上記シリンジが、上記ポートに直接接続されている、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
上記組成物が、全血、血漿、単核細胞、骨髄液、髄液、および、脂肪のうちの1つを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
上記第1の浮きおよび上記第2の浮きが、多血小板血漿を上記第1の浮きと上記第2の浮きとの間に単離し、赤血球を上記第1の浮きの上記第2の浮きとは反対の側に単離し、少血小板血漿を上記第2の浮きの上記第1の浮きとは反対の側に単離することを可能にする密度を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
上記第1の浮きおよび上記第2の浮きが、多能性細胞を上記第1の浮きと上記第2の浮きとの間に単離し、赤血球を上記第1の浮きの上記第2の浮きとは反対の側に単離し、骨髄血漿を上記第2の浮きの上記第1の浮きとは反対の側に単離することを可能にする密度を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
上記浮き案内用支柱の上記流路を上記ポートに接続する、可撓導管をさらに備えた、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
上記第2の浮きの円柱状の側壁の周囲に延びるポリマー製リングをさらに備えた、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
上記浮き案内用支柱の外径の周囲に延びる、第1のポリマー製リングおよび第2のポリマー製リングをさらに備え、
上記第1のポリマー製リングおよび上記第2のポリマー製リングが、それぞれ上記第2のバルブの互いに対向する両側に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
全血を患者から分離チャンバーのポートを介して分離チャンバー内へ直接吸入し、上記分離チャンバーが浮き案内用支柱に対して固定して取り付けられた第1の浮きと、上記浮き案内用支柱に対してスライド可能に取り付けられた第2の浮きとを備え、上記浮き案内用支柱が第1のバルブと第2のバルブとを有し、上記第2の浮きが第1の位置にあるときには上記第1のバルブが閉鎖され、かつ、上記第2のバルブが開放され、上記全血が上記第2のバルブを介して上記分離チャンバー内へ吸入され、さらに、上記第2の浮きと上記分離チャンバーの内部にスライド可能に取り付けられたプランジャーとの間の領域へ吸入され、
上記チャンバーを遠心分離機で十分な時間回転させて、上記第2の浮きが上記第1の浮きから離間して、上記第2のバルブを閉鎖するとともに上記第1のバルブを開放する第2の位置まで、上記第2の浮きを移動させ、さらに、赤血球が上記ポートと上記第1の浮きとの間に単離され、多血小板血漿が上記第1の浮きと上記第2の浮きとの間に単離され、少血小板血漿が上記第2の浮きとプランジャーとの間に単離されるように上記全血の成分を密度にしたがって分離し、
上記プランジャーを上記分離チャンバー内において第1の距離まで押し下げて上記第1の浮きを上記第2の位置から上記第1の位置まで移動させて、上記多血小板血漿を強制的に上記第1のバルブを通過させて上記ポートを介して上記分離チャンバーから排出し、上記第1のバルブを閉鎖し、かつ、上記第2のバルブを開放し、
上記多血小板血漿を、上記ポートに取り付けられたアプリケーターを介して対象とする領域に直接導入し、
上記プランジャーを上記分離チャンバー内において上記第1の距離より長い第2の距離までさらに押し下げて、上記少血小板血漿を強制的に上記第2のバルブを通過させて上記ポートを介して上記分離チャンバーから排出し、
上記少血小板血漿を、上記ポートに取り付けられたアプリケーターを介して対象とする領域に直接導入することを含む、全血を異なる成分に分離する方法。
【請求項19】
上記全血が、延長ノズルによって上記ポートに接続された針先端部を用いて、上記ポートを介して上記分離チャンバー内へ吸入される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
上記少血小板血漿が、上記ポートに直接取り付けられたアプリケーターを介して導入される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
上記全血を、上記分離チャンバーを有するシリンジに吸入することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
上記分離チャンバーを回転させて、上記第1の浮きおよび上記第2の浮きがどちらも上記分離チャンバーの長手方向の軸に沿って移動することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
上記分離チャンバーを上記遠心分離機で回転させる前に、プランジャー取っ手部を上記プランジャーのプランジャー本体から取り外し、上記チャンバーを上記遠心分離機で回転させた後に、上記プランジャー取っ手部を上記プランジャー本体に再び取り付けることをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
上記多血小板血漿および上記少血小板血漿を、上記ポートに取り付けられたスプレー先端部を介して創傷部位に直接導入することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
上記チャンバーを回転させる前に、上記プランジャーの移動を制限することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
骨髄液を患者から分離チャンバーのポートを介して上記分離チャンバー内へ直接吸入し、上記分離チャンバーが浮き案内用支柱に対して固定して取り付けられた第1の浮きと、上記案内用支柱に対してスライド可能に取り付けられた第2の浮きとを備え、上記浮き案内用支柱が第1のバルブと第2のバルブとを有し、上記第2の浮きが第1の位置にあるときには上記第1のバルブが閉鎖され、かつ、上記第2のバルブが開放され、上記骨髄液が上記第2のバルブを介して上記分離チャンバー内へ吸入され、さらに、上記第2の浮きと上記分離チャンバーの内部にスライド可能に取り付けられたプランジャーとの間の領域へ吸入され、
上記チャンバーを遠心分離機で十分な時間回転させて、上記第2の浮きが上記第1の浮きから離間して、上記第2のバルブを閉鎖するとともに上記第1のバルブを開放する第2の位置まで、上記第2の浮きを移動させ、さらに、赤血球が上記ポートと上記第1の浮きとの間に単離され、多能性細胞が上記第1の浮きと上記第2の浮きとの間に単離され、骨髄血漿が上記第2の浮きと上記プランジャーとの間に単離されるように上記骨髄液の成分を密度にしたがって分離し、
上記プランジャーを上記分離チャンバー内において第1の距離まで押し下げて上記第1の浮きを上記第2の位置から上記第1の位置まで移動させて、上記多能性細胞を強制的に上記第1のバルブを通過させて上記ポートを介して上記分離チャンバーから排出し、上記第1のバルブを閉鎖し、かつ、上記第2のバルブを開放し、
上記多能性細胞を、上記ポートに取り付けられたアプリケーターを介して対象とする領域に直接導入し、
上記プランジャーを分離チャンバー内において上記第1の距離より長い第2の距離までさらに押し下げて、上記骨髄血漿を強制的に上記第2のバルブを通過させて上記ポートを介して上記分離チャンバーから排出し、
上記骨髄血漿を、上記ポートに取り付けられたアプリケーターを介して対象とする領域に直接導入することを含む、骨髄液を異なる成分に分離する方法。
【請求項27】
組成物の複数の成分を密度にしたがって分離するための分離チャンバーを有する装置であって、
上記組成物を上記チャンバーの外部から上記チャンバーの内部へ通液させるポートと、
上記分離チャンバーの内部にスライド可能に取り付けられた第1の浮きと、
上記分離チャンバーの内部にスライド可能に取り付けられた第2の浮きとを備え、
上記第2の浮きは、上記装置を適切な時間スピンさせた後、上記組成物の第1の成分が上記第1の浮きと上記第2の浮きとの間に単離されるとともに、上記組成物の第2の成分が上記第2の浮きと上記ポートの反対側の上記分離チャンバーの端部との間に単離されるような密度を有し、
上記ポートが、上記第1の成分および上記第2の成分を上記チャンバーの内部から上記チャンバーの外部へ通液させる、装置。
【請求項28】
上記第1の浮きが上記第2の浮きに接続されている、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
上記第1の浮きおよび上記第2の浮きが、上記分離チャンバーの長手方向の軸に沿って延びている浮き案内用支柱に対してそれぞれスライド可能に取り付けられている、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
上記第1の浮きが上記第2の浮きに接続されていない、請求項27に記載の装置。
【請求項31】
全血を患者からポートを介して分離チャンバー内へ直接吸入し、上記分離チャンバーが上記分離チャンバーの内部にスライド可能に取り付けられた第1の浮きと、上記分離チャンバーの内部にスライド可能に取り付けられた第2の浮きとを備え、上記全血が上記分離チャンバー内へ吸入され、さらに、上記第2の浮きと上記分離チャンバーの内部にスライド可能に取り付けられたプランジャーとの間の領域へ吸入され、
上記チャンバーを遠心分離機で十分な時間回転させて、上記第2の浮きが上記第1の浮きから離間する第2の位置まで上記第2の浮きを移動させ、さらに、赤血球が上記ポートと上記第1の浮きとの間に単離され、多血小板血漿が上記第1の浮きと上記第2の浮きとの間に単離され、少血小板血漿が上記第2の浮きと上記プランジャーとの間に単離されるように上記全血の成分を密度にしたがって分離し、
上記プランジャーを上記分離チャンバー内において第1の距離まで押し下げて上記第1の浮きを上記第2の位置から上記第1の位置まで移動させて、上記多血小板血漿を強制的に上記ポートを介して上記分離チャンバーから排出し、
上記多血小板血漿を、上記ポートに取り付けられたアプリケーターを介して対象とする領域に直接導入し、
上記プランジャーを上記分離チャンバー内において上記第1の距離より長い第2の距離までさらに押し下げて、上記少血小板血漿を強制的に上記ポートを介して上記分離チャンバーから排出し、
上記少血小板血漿を、上記ポートに取り付けられた上記アプリケーターを介して対象とする領域に直接導入することを含む、全血を異なる成分に分離する方法。
【請求項32】
上記全血を、延長ノズルによって上記ポートに取り付けられた針先端部を介して上記分離チャンバー内へ吸入することをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
上記少血小板血漿が、上記ポートに直接取り付けられた上記アプリケーターを用いて上記対象とする領域に導入される、請求項31に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図4A】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−522610(P2012−522610A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503768(P2012−503768)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/029957
【国際公開番号】WO2010/115190
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(509031224)バイオメット バイオロジックス,リミテッド ライアビリティ カンパニー (2)
【氏名又は名称原語表記】Biomet Biologics,LLC
【住所又は居所原語表記】56 East Bell Drive,Warsaw,Indiana 46582,United States of America
【Fターム(参考)】