説明

血液成分分離収容装置

【課題】より簡易に血清を調製することのできる血液成分分離収容装置を提供すること。
【解決手段】少なくとも血液由来の凝固因子を含む液性成分と血小板とを含む流動体を貯留する血液貯留部2と、血液貯留部2に貯留された流動体のうちの少なくとも一部の成分を収容する成分収容部3と、血液貯留部2と成分収容部3とを無菌的に連結する連結部4と、を備える血液成分分離収容装置1であって、血液貯留部2は、可撓性を有する筒状の血液貯留容器21と、血液貯留容器21に流動体を導入する流動体導入路27と、血液貯留容器21から流動体のうちの少なくとも一部の成分を導出する成分導出路28とを有し、成分収容部3は、血液貯留容器21から導出された流動体のうちの少なくとも一部の成分が導入される成分導入路37を有し、連結部4は、成分導出路28と成分導入路37とを連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液成分分離収容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、再生医療分野においては、対象者から採取した幹細胞を体外で増殖又は分化させたうえで対象者に移植することで対象者の組織の再生を促進させるという研究が行われている。幹細胞は、種々の組織や器官に分化する多分化能を有し、再生医療のカギを握る細胞として注目されている。
【0003】
幹細胞の体外培養増殖では、培地に対して血清を添加すれば効果的であることが知られている。しかし、ヒトの治療を目的とする場合には、ヒト以外の動物を由来とする血清を用いることは安全上の問題から避けるべきことであり、ヒト由来、特に対象者本人から採取した血液より調製した血清を用いることが要求される。また、血液検査と比べると再生医療の分野における幹細胞の培養には、比較的多くの血清が必要となる。更に、ヒトに適用することを想定した血清を調製するためには、閉鎖系で無菌的に血清を分離、収容することが要求される。
【0004】
上記の様々な要求に対応しうるものとして、本出願人は、先に、血液を貯留する血液貯留部と、この血液貯留部に無菌的且つ気密に連結された成分収容部とを備え、前記血液貯留部は、前記血液と接触し凝固を促進させる血液凝固促進個体を備え、この血液凝固促進個体が、血清を無菌的に製造するものである血清調製装置を提示している(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3788479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の血清調製装置は、血清を高い安全性を確保しながら迅速、且つ効率的に生産することができるものである。特許文献1記載の血清調製装置においては、血液貯留部に貯留された血液を、赤血球等の血球成分を含む血餅と液性成分である血清とに分離するために、遠心分離機により分離することを要する。この際には、血清等が微生物等に汚染されるのを防ぐために、血液貯留部とそれに無菌的に連結されている成分収容部とを含む血清調製装置全体を遠心分離機にかける必要がある。
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の血清調製装置においては、血液貯留部及び成分収容部は、いずれもポリ塩化ビニル製のシートを2枚重ね合わせ、その周縁部を溶着してバッグ形状に形成された可撓性の袋体から構成されている。このような複数の袋体を有する血清調製装置全体を遠心分離機にかけるためには、これら複数の袋体の姿勢を保持して制御する専用の保護バッグを使用する必要があった。このため、血清調製装置全体が大きくなり、比較的大型の遠心分離機が必要であり、必ずしも汎用性が高いとは言えなかった。また、血液貯留部が可撓性を有する袋体からなるため血液貯留部の姿勢保持が困難であり、血液成分の分離後に、分離された血清と沈殿している血球成分との界面が乱れやすかった。更には、血液貯留部が可撓性を有する袋体からなるため、血液貯留部への内容量の確認が比較的容易ではなかった。そのため、より簡易に血清を調製することができる血液成分分離収容装置が求められていた。
【0007】
従って、本発明は、より簡易に血清を調製することのできる血液成分分離収容装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも血液由来の液性成分と血小板とを含む流動体を貯留する血液貯留部と、該血液貯留部に貯留された前記流動体のうちの少なくとも一部の成分を収容する成分収容部と、該血液貯留部と該成分収容部とを無菌的に連結する連結部と、を備える血液成分分離収容装置であって、前記血液貯留部は、可撓性を有する筒状の血液貯留容器と、該血液貯留容器に前記流動体を導入する流動体導入路と、前記血液貯留容器から前記流動体のうちの少なくとも一部の成分を導出する成分導出路とを有し、前記成分収容部は、前記血液貯留容器から導出された前記流動体のうちの少なくとも一部の成分が導入される成分導入路を有し、前記連結部は、前記成分導出路と前記成分導入路とを連結する血液成分分離収容装置を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、より簡易に血清を調製することのできる血液成分分離収容装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の血液成分分離収容装置をその好ましい実施形態である第1実施形態に基づき、図面を参照しながら説明する。
第1実施形態の血液成分分離収容装置1は、図1及び図2に示すように、少なくとも血液由来の液性成分と血小板とを含む流動体を貯留する血液貯留部2と、該血液貯留部に貯留された前記流動体のうちの少なくとも一部の成分を収容する成分収容部3と、該血液貯留部2と該成分収容部3とを無菌的に連結する連結部4とを備える。
【0011】
ここで、「血液」とは、血球(赤血球、白血球、血小板)と液体成分である血漿(血清)からなる全血、及びこれらの少なくとも1種を含んだ液体(例えば成分献血で採取された血液)をいう。また、「血清」とは、採取した血液を放置すると流動性が低下し、その後に赤い凝固塊(血餅)から分離される淡黄色の液体をいう。本発明における「血清」とは、血餅から分離されない点で生成方法が一般的な血清とは異なるが、そこに含まれる凝固因子や増殖因子が実質的に一般的な血清と同等である細胞培養に有用な血液中の液性成分をいう。
【0012】
「血液由来の液性成分」とは、「血球以外の血液成分」あるいは「血球以外の血液成分に抗凝固剤等の薬剤を添加した混合液」をいう。
【0013】
血液貯留部2は、図2に示すように、血液貯留容器21と、血液貯留容器21を収容する第1収容容器22と、血液貯留容器21及び第1収容容器22に接続される第1キャップ23とを備えている。
【0014】
血液貯留容器21は、図2に示すように、縦長の円筒形状であり、側面が可撓性を有する材料から構成されている。また、血液貯留容器21の径方向の断面は、楕円形状を有している。
血液貯留容器21の側面は、血液貯留容器21内に貯留される流動体を視認可能とする観点から透明性を有する材料から構成することが好ましい。可撓性を有する材料としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、シリコーン、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、合成ゴム、各種エラストマー等の軟質合成樹脂を用いることができる。血液貯留容器21の一端である上端は開口となっており、第1キャップ23に嵌合されて密閉されている。血液貯留容器21の他端である下端部にはボトムキャップ210が嵌合されており、接着剤により接合されている。
ボトムキャップ210は、筒状の嵌合部211と、この嵌合部に連続する底部212とを備える。嵌合部211の径方向の断面は、楕円形状を有しており、その外径は、血液貯留容器21の内径と略同一である。ボトムキャップ210は、嵌合部211が血液貯留容器21の下端部に嵌合されている。底部212は、その径が下方に向けて漸減した後、底面が平坦となった形状を有している。
【0015】
第1収容容器22は、図2に示すように、血液貯留容器21と同様に縦長の円筒形状であり、その直径及び高さ共に血液貯留容器21よりも一回り大きく構成されている。第1収容容器22の一端である上端も開口となっており、第1キャップ23に嵌合されて密閉可能となされている。第1収容容器22の他端である下端部近傍においては、第1収容容器22の径が下方に向けて漸減した後、底面が平坦となった戴頭円錐形状を上下反転させた形状となっている。
第1収容容器22は、血液貯留容器21内に貯留される流動体を視認可能とする観点から透明性を有する材料から構成することが好ましく、また、比較的剛性の大きい材料から構成されることが好ましい。第1収容容器22を構成する材料としては、具体的には、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリメチルペンテン、メタクリル、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)、PET樹脂(ポリエチレンテレフタレート)、ポリ塩化ビニル等の硬質合成樹脂が挙げられる。尚、硬質合成樹脂とは、後述する流体の注入による容器の内部空間の圧力変動により容易に変形しない程度の硬さを有する合成樹脂をいう。
【0016】
第1収容容器22の上端近傍における外側面には、ねじ山が形成されており、このねじ山の形状に対応するねじ溝を有するカバーキャップ(図示せず)を螺合可能となっている。カバーキャップを第1収容容器22に螺合することにより、後述の第1キャップ23が血液分離収容操作中に第1収容容器22からはずれることを防止できる。
【0017】
第1キャップ23は、平面形状が円形であり、その直径が第1収容容器22の外径と略同一となっている(図2参照)。第1キャップ23は、その一面である下面に、第1収容容器22に接続可能な第1接続部24と、第1接続部24の内側に血液貯留容器21と接続可能な第2接続部25とを有している。第1接続部24及び第2接続部25は、下方に向けて突出した形状を有している。
第1接続部24は、その外径が第1収容容器22の開口における内径と略同一であり、第1接続部24の外周面に第1収容容器22の開口近傍が被嵌可能となされている。第2接続部25は、その外径が血液貯留容器21の開口の内径と略同一であり、第2接続部25の外周面に血液貯留容器21の開口近傍が被嵌可能となされている。
【0018】
即ち、第1実施形態においては、血液貯留容器21及びこれを収容する第1収容容器22は、両者とも第1キャップ23に嵌合されて構成されている。そして、第1収容容器22は、第1キャップ23に嵌合されることにより密閉されている。また、これにより、血液貯留容器21の外側と第1収容容器22の内側との間には血液貯留容器21の内部空間とは独立した空間である圧力調整空間26が形成されている。
第1接続部24の外周面と第1収容容器22の開口近傍における内周面との間には、圧力調整空間26の密閉性を向上させるための密閉部材(図示せず)が介在配置されている。これにより、圧力調整空間26のより確実な密閉構造を確保できる。
密閉部材としては、例えば、シリコンゴムから構成される環状の部材を用いることができる。尚、密閉部材は、第1接続部24の外周面に被冠できる構成であればよく、素材としては、上記シリコンゴムに限られず、各種ゴム、各種エラストマー等の弾性部材を用いることができる。
また、密閉部材は、第2接続部25の外周面と血液貯留容器21の開口近傍における内周面との間に配置してもよい。
【0019】
血液貯留部2には、血液貯留容器21に流動体を導入する流動体導入路27と、血液貯留容器21から流動体のうちの少なくとも一部の成分を導出する成分導出路28とが設けられている。第1実施形態においては、流動体導入路27及び成分導出路28は、図2に示すように、第1キャップ23に設けられている。流動体導入路27及び成分導出路28は、第1キャップ23に、その上面から下面に貫通する貫通孔が形成されることにより設けられている。
尚、第1キャップ23の下面における血液貯留容器21の内部空間に面する部分の形状は、図2に示すように、上方向に向かって漸次縮径してなる形状であるのが好ましい。更には、その頂部に貫通孔である成分導出路28が設けられてなる構成が好ましい。上記構成であれば、血液貯留容器21内で分離された血清を成分収容容器31に導出する際に、血清を無駄なく導出することが可能となる。
【0020】
流動体導入路27には、採血チューブ5が接続されており、対象者から採取された血液は採血チューブ5及び流動体導入路27を経て、無菌的に血液貯留部2(血液貯留容器21)内に貯留される。流動体導入路27と採血チューブ5とは、第1キャップ23における流動体導入路27が形成されている部分の上面側に設けられた第1突起部231に採血チューブ5の端部を係合させることにより接続されている。
【0021】
血液貯留容器21には、流動体と接触し、該流動体の凝固を促進させる血液凝固促進個体6が収容されている。血液凝固促進個体6は、フィブリンや血小板等の血液凝固因子を活性化させることが可能な程度に含有されており、血液に対して不溶解性を有することが好ましい。血液凝固促進個体6が血液に対して不溶解性を有することにより、得られる血清に不純物が混在するという事態を回避することができる。
【0022】
また、血液から血清を調製する場合には、血小板及び血液凝固因子等の被活性化因子の活性化を図った上で、遠心分離を行うことになるが、この場合における赤血球の破壊(溶血)や血液貯留部の破損を抑制するという面から、血液凝固促進個体6の外観形状を略球状としておくことが好ましい。更に、上記被活性化因子を迅速に活性化させる観点から、血液凝固促進個体6の表面を二酸化ケイ素化合物からなる層で形成しておくことが好ましい。
【0023】
二酸化ケイ素化合物としては、ガラス、シリカ、珪藻土、カオリン等から選択される少なくとも1種以上を使用することができるが、これらに限られるものではない。第1実施形態においては、血液凝固促進個体6として略球形のガラス加工体を用いている。
【0024】
血液貯留容器21内の血液凝固促進個体6については、血液貯留容器21に貯留可能な血液量に対して、0.1〜25mm/mlの関係をもってその表面積を設定しておくことが、活性化の促進及び溶血の抑制という両方の面から好ましい。
【0025】
血液貯留部2は、図2に示すように、圧力調整空間26に流体を注入可能な注入孔29を備えている。また、注入孔29には、注入孔29に連結され、圧力調整空間26に流体を注入する注入手段(図示せず)を備えている。第1実施形態においては、注入孔29は、第1キャップ23に設けられている。詳細には、注入孔29は第1キャップ23に設けられた貫通孔であり、第1キャップ23における第2接続部の外側で且つ第1接続部の内側の領域に形成されている。
【0026】
注入孔29には、流体注入チューブ291の一端が接続され、流体注入チューブ291の他端に注入手段が接続されている。注入手段としては、ポンプやシリンジ等を用いることができる。
そして、注入手段により注入孔29から流体を注入することにより、圧力調整空間26が加圧される。この際、圧力調整空間26の外側を形成している第1収容容器22は可撓性を有さないため、可撓性を有する血液貯留容器21が圧力調整空間26の加圧の影響を受けてつぶれるように変形される。また、圧力調整空間26が加圧されることによってつぶれるように変形した血液貯留容器21は、加圧された圧力調整空間26を減圧することによって、元の形状に復元する。このように、圧力調整空間26の加圧や減圧によって血液貯留容器21を変形させることにより、後述する血清等の成分の成分収容部3への導出や採血を無菌的且つ容易に行うことができる。
【0027】
圧力調整空間26に注入される流体は、空気等の気体であってもよく、水等の液体であってもよい。また、流体としてゲル状のものを用いてもよい。流体として、水等の液体やゲル状の物質を用いた場合には、注入時の加圧により流体の体積が変化しないため、成分収容部3へ導出する血清等の量を正確に把握できる点で好ましい。
【0028】
連結部4は、図2に示すように、血液貯留部2と成分収容部3とを無菌的に連結している。第1実施形態においては、連結部4は連結チューブ41から構成されており、第1キャップ23に形成された成分導出路28と後述する第2キャップ33に形成された成分導入路37とを連結している。連結チューブ41と成分導出路28とは、第1キャップ23における成分導出路28が形成されている部分の上面側に設けられた第2突起部232に連結チューブ41の一端を係合させることにより接続されている。
【0029】
成分収容部3は、図2に示すように、成分収容容器31と、成分収容容器31を収容する第2収容容器32と、成分収容容器31及び第2収容容器32に接合される第2キャップ33とを備えている。
【0030】
成分収容容器31は、縦長の円筒形状であり、側面が可撓性を有する材料から構成されている。可撓性を有する材料としては、上述した血液貯留容器21と同様のものを用いることができる。成分収容容器31の一端である上端は開口となっており、第2キャップ33に接続されて密閉されている。成分収容容器31の他端である下端部には成分収容容器31に収容された血液成分を採取する成分採取口34が形成されている。
成分採取口34は、成分収容容器31の底面の一部に、薄膜状の厚みの薄い領域を設けることにより形成されている。また、成分採取口34の形成された領域には、成分収容容器31の底面から下方に突出する中空の円筒部341が形成されている。成分収容容器31内に収容された血液成分は、成分採取口34を注射針等の穿刺具にて破断穿刺することにより、採取することができる。この際に、成分採取口34の形成された領域には中空の円筒部341が形成されているため、穿刺具を確実に成分採取口34に穿刺することができる。
【0031】
尚、成分収容容器31の底面形状は、図2に示すように、下方向に向かって漸次縮径してなる形状が好ましい。更には、その頂部に成分採取口34が設けられてなるのが好ましい。上記構成であれば、成分収容容器31内の血清を採取する際に、採取する血清を無駄なく採取することが可能となる。
更に、成分収容容器31の底部に設けられた成分採取口34の位置と、第2収容容器32の内面底部の位置との間の距離が、前記穿刺具が収容可能な距離に設定されているのが好ましい。上記構成であれば、穿刺具を成分収容容器31の成分採取口34に穿刺した状態で、第2収容容器32内部に収容させることができる。穿刺具に適宜連通可能な開閉機構を有していれば、成分収容容器31内の血清を所望に応じて採取・保存が可能になる。
【0032】
第2収容容器32は、縦長の円筒形状であり、その直径及び高さ共に成分収容容器31よりも一回り大きく構成されている。第2収容容器32の一端である上端も開口となっており、第2キャップ33に嵌合されて密閉可能となされている。第2収容容器32の他端である下端部近傍においては、第1収容容器22の径が下方に向けて漸減した後、底面が平らとなる戴頭円錐形状を上下反転させた形状となっている。
第1実施形態においては、第2収容容器32は、上述した第1収容容器22と同一の材料から構成され、また、その形状及び大きさも第1収容容器22と同一である。
第2収容容器32の上端近傍における外側面にも、第1収容容器22と同様にねじ山が形成されており、このねじ山の形状に対応するねじ溝を有するカバーキャップ(図示せず)を螺合可能となっている。
【0033】
第2キャップ33は、第1キャップ23と同様に、平面形状が円形であり、その直径が第2収容容器32の外径と略同一となっている。第2キャップ33は、その一面である下面に、第2収容容器32に接続可能な第3接続部35と、第3接続部35の内側に成分収容容器31と接続可能な第4接続部36とを有している。第3接続部35及び第4接続部36は、下方に向けて突出した形状を有している。
第3接続部35は、その外径が第2収容容器32の開口における内径と略同一であり、第3接続部35の外周面に第2収容容器32の開口近傍が被嵌可能となされている。第4接続部36は、その外径が成分収容容器31の開口の内径と略同一であり、第4接続部36の外周面に成分収容容器31の開口近傍が被嵌可能となされている。
尚、図2に示すように、第2キャップ33には、貫通孔29aが設けられているが、この貫通孔29aは設けなくてもよい。
【0034】
即ち、第1実施形態においては、成分収容容器31及びこれを収容する第2収容容器32は、両者とも第2キャップ33に嵌合されて構成されている。そして、成分収容容器31は第2キャップ33に嵌合されることにより密閉されており、第2収容容器32も第2キャップ33に嵌合されることにより密閉されている。
【0035】
成分収容部3は、血液貯留容器21から導出された流動体のうちの少なくとも一部の成分が導入される成分導入路37を有している。第1実施形態においては、成分導入路37は、図2に示すように、第2キャップ33に設けられている。成分導入路37は、第2キャップ33に、その上面から下面に貫通する貫通孔が形成されることにより設けられている。
【0036】
成分導入路37には、連結チューブ41が接続されており、血液貯留容器21から導出された血清等は、無菌的に成分収容部3(成分収容容器31)内に収容される。成分導入路37と連結チューブ41とは、第2キャップ33における成分導入路37が形成されている部分の上面側に設けられた第3突起部331に連結チューブ41の端部を係合させることにより接続されている。
【0037】
成分収容部3には、成分収容容器31内に空気を出入りさせる通気路38が設けられており、通気路38には、通気フィルタ71を備えた通気チューブ7が更に連結されている。第1実施形態においては、通気路38は、第2キャップ33に設けられている。詳細には、通気路38は第2キャップ33に設けられた貫通孔であり、第2キャップ33における第4接続部36の内側の領域に形成されている。
通気路38には、通気チューブ7の一端が接続され、通気チューブ7の他端には、通気フィルタ71が接続されている。通気フィルタ71とは、気体は通過させるが液体は通過させず、また、細菌等も通過させない性質を有するフィルタである。即ち、通気フィルタ71が連結された通気路38からは、成分収容容器31内に無菌的に空気を出し入れさせることができる。通気路38と通気チューブ7とは、第2キャップ33における通気路38が形成されている部分の上面側に設けられた第4突起部332に通気チューブ7の端部を係合させることにより接続されている。
【0038】
上述した構成を有する第1実施形態の血液成分分離収容装置1においては、血液貯留部2(血液貯留容器21)、連結部4(連結チューブ41)、及び成分収容部3(成分収容容器31)が無菌的に連結されており、血液貯留容器21、連結チューブ41、及び成分収容容器31それぞれにおける内部空間も無菌状態が保たれている。そのため、通気路38から無菌的に空気を出し入れすることにより、第1実施形態の血液成分分離収容装置1は、血液貯留容器21、連結チューブ41、及び成分収容容器31それぞれにおける内部空間の圧力を、無菌状態を保ちながら任意の圧力に調整することができる。
【0039】
次に、第1実施形態の血液成分分離収容装置1における各構成部材の好ましい大きさ等について説明する。
血液貯留容器21における血液の収容量は、好ましくは5〜200mlであり、より好ましくは5〜50mlである。血液貯留容器21は、具体的には、その内径が好ましくは10〜30mmであり、その高さは好ましくは50〜150mmである。
成分収容容器31における血液成分の収容量は、血液貯留容器21に収容された血液から分離された液性成分を確実に収容する観点から、血液貯留容器21における血液収容量の40〜100%であることが好ましい。
【0040】
第1収容容器22及び第2収容容器32は、それぞれ血液貯留容器21及び成分収容容器31を収容できる大きさであれば、特にその大きさに制限はないが、好ましくはその直径が10〜30mmであり、その高さは、好ましくは50〜150mmである。
また、第1収容容器22及び第2収容容器32として、公知の遠心分離管を用いることも好ましい。第1収容容器22及び第2収容容器32として公知の遠心分離管を用いることにより、後述する血液成分分離操作における遠心分離工程において、当該遠心分離管を使用可能な通常の遠心分離機を用いて簡易に分離操作を行うことができる。
第1収容容器22及び第2収容容器32として公知の遠心分離管を用いる場合、遠心分離管の容量は、遠心分離工程における汎用性を高める観点から、好ましくは5〜50mlのものである。
【0041】
次に、上記構成を有する第1実施形態の血液成分分離収容装置1を用いた血液成分分離収容操作の好ましい一実施態様について、図3〜図8を用いて説明する。
【0042】
本実施態様の血液成分分離収容操作は、図3に示すように、大別して7つの工程(S1〜S7)から構成されている。
【0043】
まず、貯留工程S1においては、図1に示すように、採血針80を対象者(患者)に刺し、血液を採取する。この際、採血針80から採取された血液は、採血チューブ5を介して、血液貯留部2(血液貯留容器21)内に貯留される(図4参照)。尚、採血の際には、成分収容部3に設けられた通気チューブ7の先端に位置する通気フィルタ71から空気を吸引することにより、成分収容容器31内及びそれに連通する血液貯留容器21内に陰圧を負荷し、血液貯留部2への血液の導入を容易に行うことができる。また、採血チューブ5には、採血中の血液が対象者に逆流することを防ぐ逆流防止弁(図示せず)を設けてもよい。
また、貯留工程S1後においては、血液貯留部2に採取された血液が成分収容部3の方に流れ込まないように、連結チューブ41の経路がクランプ(図示せず)等を用いて血液貯留部2の根元側で閉鎖されている。貯留工程S1は、採血時における患者の体調等を考慮して、所要量を採取し終了される。ここでいう所要量は、患者の体格や体調に問題がない場合には5〜50ml程度である。
【0044】
貯留工程S1後、採血対象から採血針80を抜針し、採血針80と血液貯留部2とを連結している採血チューブ5の一部を溶断し、且つ、同時にその溶断端を溶着する(溶断工程S2)。採血チューブ5の溶断には、所謂シーラーといわれる溶断機(図示せず)を用いることができる。
【0045】
次に、図3及び図5に示すように、貯留工程S1を終了後、血液貯留部2を振盪させる(活性化促進工程S3)。活性化促進工程S3においては、採取された血液を貯留した血液貯留部2は、振盪装置100により緩やかに攪拌され、血液貯留容器21の内部に収納された血液凝固促進個体6と接触することになる。そして、血液中に含まれる血小板及び凝固因子が血液凝固促進個体6の表面で活性化し、活性化された血小板から、これらを由来とする増殖因子が放出される。
【0046】
一方、活性化促進工程S3を経て採血対象から分離された血液貯留部2は、成分収容部3、連結チューブ41及び通気チューブ7等と共に遠心分離機にかけられる(遠心分離工程S4)。この際に、血液貯留部2(第1収容容器22)及び成分収容部3(第2収容容器32)として、公知の遠心分離管を用いた場合には、図6に示すように、血液貯留部2及び成分収容部3を、遠心分離機に用いられる遠心ホルダー110に挿入して、容易に遠心分離を行うことができる。尚、連結チューブ41は、貯留工程S1の際と同様にクランプ等(図示せず)により経路が閉鎖された状態に保たれている。
【0047】
血液貯留部2に対する遠心分離の条件は、貯留された血液の量及び分離する成分の種類によって設定されるものであるが、例えば、2250g×10min、4℃に設定される。
【0048】
活性化促進工程S3を経た後に遠心分離された血液は、図7に示すように、血液貯留部2(血液貯留容器21)内では、大別して血清81、白血球82、赤血球83の3つの層に分離分画される。また、血液貯留容器21の底には、血液凝固促進個体6がその表面に血小板及び凝固因子の凝固体が付着した状態で沈んでいる。
【0049】
活性化促進工程S3及び遠心分離工程S4を経て得られた血清は、上述のように、活性化促進工程S3において十分に血小板及び凝固因子から放出されたこれら由来の増殖因子を含むものである。
【0050】
活性化促進工程S3及び遠心分離工程S4で活性化された血小板や凝固因子等の被活性化因子は血液凝固促進個体6の表面に付着し、塊状になって血液から分離される(分離工程S5)。
【0051】
ついで、図8に示すように、導出工程S6では、分離工程S5において血液貯留容器21内で分離された血清81を成分収容部3における成分収容容器31に導出する。
【0052】
血液貯留容器21内で分離された血清81を成分収容容器31に導出する際には、図8に示すように、まず、血液貯留部2における血液貯留容器21と第1収容容器22との間に形成された圧力調整空間26に、注入孔29から流体を注入することにより、圧力調整空間26を加圧する。流体を注入する注入手段としては、ポンプやシリンジ等を用いることができ、流体としては、空気等の気体、水等の液体やゲル状の物質等を用いることができる。ここで、圧力調整空間26の外側を形成している第1収容容器22は比較的剛性を有するため、可撓性を有する血液貯留容器21が圧力調整空間26の加圧の影響を受けてつぶれるように変形され、分離された上清部分である血清81が成分導出路28から連結チューブ41を介して導出され、成分収容部3(成分収容容器31)内に導入される。
尚、導出工程S6においては、上記圧力調整空間26の加圧に併せて、成分収容部3に設けられた通気チューブ7の先端に位置する通気フィルタ71から空気を吸引してもよい。通気フィルタ71から空気を吸引することにより、成分収容容器31内及びそれに連通する連結チューブ41内に陰圧を負荷し、血液貯留容器21から成分収容容器31への血清81の導入をより容易に行うことができる。
【0053】
成分収容容器31に所要量の血清が充填された後、連結チューブ41及び通気チューブ7を溶断及び溶着する(溶断工程S7)。この溶断及び溶着については、遠心分離工程S4の前に採血チューブを溶断及び溶着したのと同様の方法を用いることができる。尚、溶断工程S7終了後、血清が収容された成分収容容器31を所謂非働化処理(56℃で30分間加温)することによって、血清中の補体を失活させることもできる。また血清が成分収容容器31内に充填された成分収容部3は、冷凍保存等の保存処置が施される。ここで、成分収容容器31を収容している第2収容容器32は硬質合成樹脂から構成されているため、収容された血清を移送、保存する際に成分収容部3に外力がかかっても成分収容容器31が破損することを防止できる。また、成分収容部3を保存する際には、収容された内容物についての情報を記載したラベル等の添付を容易に行うこともできる。
【0054】
上述した構成を有する第1実施形態の血液成分分離収容装置1によれば、血液貯留部2が可撓性を有する筒状の血液貯留容器21を有しているため、より簡易に血液成分の分離を行うことができる。また、血液貯留部2、成分収容部3及びこれらを連結する連結部4が無菌的に接続されているため、血液あるいは血清が外部環境に晒されることがなく、調製した血清が微生物等によって汚染される危険性も低くなり、安全性の高い血清を調製することができる。
また、血液貯留容器21を縦長の筒状としたことにより、採取した血液が比較的少量であった場合にも、血液成分を容易に分離することができ、また分離した成分を血液貯留容器21から容易に導出することができる。このように比較的少量の血液でも血液成分の分離及び収容が容易に行えることは、採取可能な血液量が制限されているような対象者の血液から血清を調製する際に特に有効である。尚、ここで比較的少量の血液とは、具体的には5〜50ml程度の血液量を指す。
【0055】
また、血液貯留部2における血液貯留容器21と第1収容容器22との間に圧力調整空間及び該圧力調整空間に流体を注入する注入孔29を形成することにより、該圧力調整空間26を加圧して、血液貯留容器21をつぶれるように変形させることができる。このように、圧力調整空間26の加圧によって血液貯留容器21を変形させることにより、血清等の成分の成分収容部3への導出を無菌的且つ容易に行うことができる。
また、圧力調整空間26の加圧によってつぶれるように変形した血液貯留容器21は、加圧された圧力調整空間26を減圧することによって、元の形状に復元する。従って、血液の採取前に、血液貯留容器21を圧力調整空間26の加圧によりつぶれるように変形させておき、採血時に、圧力調整空間26を減圧することによって血液貯留容器21を元の形状に復元させ、血液貯留容器21内を陰圧として採血を容易に行うこともできる。
【0056】
また、血液貯留容器21の径方向の断面を、楕円形状とした。これにより、血液貯留容器21は、楕円形状の短軸方向に変形しやすくなり、血清等の成分の成分収容部3への導出をより容易に行うことができる。
【0057】
また、血液貯留部2における第1収容容器22及び成分収容部3における第2収容容器32が縦長の筒状の形状となされていることにより、血液貯留部2及び成分収容部3を含む血液成分分離収容装置1全体の姿勢保持が容易となり、血液成分分離収容の操作性が向上する。また、第1収容容器22と第2収容容器32とを同形状とし、且つ所定の形状とすることにより、専用の補助具を用いず、通常用いられる遠心ホルダーに収容して遠心分離機に適用することができ、血液成分分離収容装置1の汎用性が向上する。更に、血液貯留部2及び成分収容部3を遠心ホルダーに収容することにより、血液成分分離収容装置1の姿勢を保持できるため、遠心ホルダーを血液貯留工程S1から溶断工程S7に亘る一連の工程において共通して使用可能な操作用の補助具として用いることもできる。尚、所定の形状とは、例えば、50mlの市販品の遠心沈殿管と同形状の場合等をいう。
【0058】
また、血液貯留容器21に、血液凝固促進個体6が収容されているため、血清調製時に血餅が血液凝固促進個体6の表面に付着し、血清を分取する際の血清中へのフィブリンや血餅の混入が防止される。
【0059】
次に、本発明の血液成分分離収容装置1の第2実施形態について説明する。第2実施形態については、上述した第1実施形態と異なる点を主に説明し、同様の点は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない点は、第1実施形態についての説明が適宜適用される。
【0060】
第2実施形態の血液成分分離収容装置1は、血液貯留部2に設けられた注入孔29に加えて成分収容部3に第2注入孔29aが設けられている点において第1実施形態と異なる。
第2実施形態の血液成分分離収容装置1においては、成分収容部3は、図9に示すように、成分収容容器31の外面と第2収容容器32の内面との間に形成されている空間に流体を注入可能な第2注入孔29aを備えている。第2実施形態においては、第2注入孔29aは、第2キャップ33に設けられている。詳細には、第2注入孔29aは、第2キャップ33に設けられた貫通孔であり、第2キャップ33における第4接続部36の外側で且つ第3接続部35の内側の領域に形成されている。そして、第2注入孔29aには、第2流体注入チューブ291aの一端が接続されている。第2流体注入チューブ291aの他端は、一端が注入孔29に接続され、他端が流体注入手段(図示せず)に接続された流体注入チューブ291の両端部間における所定の部位に連結されている。
【0061】
第2実施形態の血液成分分離収容装置1によれば、成分収容部3における成分収容容器31の外面と第2収容容器32の内面との間に形成されている空間に流体を注入することにより、血液貯留部2における圧力調整空間26のみならず成分収容容器31の外面と第2収容容器32の内面との間に形成されている空間内の圧力を調整することもできる。従って、例えば、血液貯留工程S1における採血時に、通気フィルタ71から空気を吸引して成分収容容器31内及びそれに連通する血液貯留容器21内に陰圧を負荷する際に、通気フィルタ71からの吸引に併せて流体注入手段により注入孔29及び第2注入孔29aから流体を吸引することにより、成分収容容器31の外面と第2収容容器32の内面との間に形成されている空間及び血液貯留部2における圧力調整空間26にも陰圧を付加することができる。このように、通気フィルタ91からの空気の吸引に併せて成分収容容器31の外面と第2収容容器32の内面との間に形成されている空間及び圧力調整空間26の両者にも陰圧を負荷することにより、通気フィルタ71からの空気の吸引によって成分収容容器31及び血液貯留容器21がつぶれるのを防止でき、血液貯留部2への血液の導入効果が低減するのを防ぐことができる。
【0062】
以上、本発明をその好ましい実施形態及び実施態様に基づき説明したが、本発明は上記実施形態及び実施態様には制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
例えば、第1キャップ23と血液貯留容器21又は第1収容容器22との接続、及び第2キャップ33と成分収容容器31又は第2収容容器32との接続は、第1実施形態及び第2実施形態においては、嵌合により接続されていたが、これらの接続は、例えば螺合であってもよい。
【0063】
また、密閉部材は、第1実施形態及び第2実施形態においては、第1キャップ23と第1収容容器22との間に介在配置されていたが、これに限らず、密閉部材を第2キャップ33と成分収容容器31との間に介在配置させてもよい。
【0064】
また、血液貯留容器21の下端部は、第1実施形態及び第2実施形態においてはボトムキャップ210により構成されていたが、血液貯留容器21の下端部は、側面を構成する可撓性を有する部材を下端部にて溶着、封止して形成してもよい。
また、ボトムキャップ210を、側面を構成する可撓性を有する部材にて構成してもよい。
このように、ボトムキャップ210を、可撓性を有する部材で構成することにより、血液貯留容器21は、圧力調整空間26の加圧により下端部においても変形しやすくなり、血清等の成分の成分収容部3への導出をより容易に行うことができる。
【0065】
また、第2実施形態においては、流体注入チューブ291と第2流体注入チューブ291aとは互いに連結されていたが、両者は連結されていなくてもよい。また、流体注入チューブ291、第2流体注入チューブ291a及び通気チューブ7の3者が連結されていてもよい。
【0066】
また、血液凝固促進個体6は、第1実施形態及び第2実施形態においてはガラス加工体であったが、ガラス加工体に代えて空気を用いてもよく、また、ガラス加工体及び空気を併用してもよい。
また、血液貯留容器21から成分収容容器31への血清の移送は、第1実施形態及び第2実施形態においては、圧力調整空間を加圧することによって血液貯留容器21を変形させて行ったが、通気路から空気を吸引して成分収容容器31内及びそれに連通する血液貯留容器21内に陰圧を負荷することによって血液貯留容器21を変形させて行ってもよい。
【0067】
また、注入孔29は、第1実施形態及び第2実施形態においては第1キャップ23に設けられていたが、第1収容容器22の側面に設けられていてもよい。
【0068】
また、血液貯留容器21、成分収容容器31の下端部は、第1実施形態及び第2実施形態においては、第1収容容器22、第2収容容器32のそれぞれの内側と離間するよう構成されていたが、両者が当接あるいは嵌合等の手段により固定されるような構成であってもよい。
また、血液貯留容器21の下端部と第1収容容器22の底部との間、及び成分収容容器31の下端部と第2収容容器32の底部との間にスペーサー(図示せず)を配置するような構成であってもよい。
上記構成であれば、本装置の血液成分分離操作における遠心分離工程の際に、血液貯留容器21、成分収容容器31のそれぞれに負荷される荷重を軽減することが可能となる。
【0069】
また、第2キャップ33の下面における成分収容容器31の内部空間に面する部分の形状は、第1実施形態及び第2実施形態においては、図2及び図9に示すように、上方向に向かって漸次縮径してなる形状で、その頂部に貫通孔である成分導入路37が設けられてなる構成とした。
しかしながら、本構成は、第2キャップ33の頂部に貫通孔である通気路38が設けられてなる構成としてもよい(図10参照)。
これにより、通気路38から吸気を行って成分収容容器31内の減圧操作を行う場合に、成分収容容器31内に収容された成分(例えば血清)を吸引することなく、減圧操作を行うことができる。
【0070】
また、成分導出路28、連結チューブ41又は成分導入路37のいずれかにおける中空部分に、血球除去フィルタ(図示せず)を介在配置させてもよい。これにより、血液貯留容器21中の血球成分を血球除去フィルタで捕捉でき、成分収容容器31への血球成分の混入を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、本発明の血液成分分離収容装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】図2は、図1の部分拡大図である。
【図3】図3は、第1実施形態の血液成分分離収容装置を用いて血液成分の分離収容を行う手順を示す図である。
【図4】図4は、第1実施形態の血液成分分離収容装置を用いた血液成分分離収容操作における貯留工程を示す図である。
【図5】図5は、第1実施形態の血液成分分離収容装置を用いた血液成分分離収容操作における活性化促進工程を示す図である。
【図6】図6は、第1実施形態の血液成分分離収容装置を用いた血液成分分離収容操作における遠心工程において、血液成分分離収容容器を遠心ホルダーに収容した状態を示す図である。
【図7】図7は、第1実施形態の血液成分分離収容装置を用いた血液成分分離収容操作における血液成分の分離工程において、圧力調整空間を加圧する前の状態を示す図である。
【図8】図8は、第1実施形態の血液成分分離収容装置を用いた血液成分分離収容操作における血液成分の分離工程において、圧力調整空間を加圧した状態を示す図である。
【図9】図9は、本発明の血液成分分離収容装置の第2実施形態を示す部分拡大図である。
【図10】図10は、第1実施形態の血液成分分離収容装置の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1 血液成分分離収容装置
2 血液貯留部
21 血液貯留容器
22 第1収容容器
23 第1キャップ
24 第1接続部
25 第2接続部
26 圧力調整空間
27 流動体導入路
28 成分導出路
29 注入孔
3 成分収容部
31 成分収容容器
32 第2収容容器
33 第2キャップ
34 成分採取口
35 第3接続部
36 第4接続部
37 成分導入路
38 通気路
4 連結部
41 連結チューブ
5 採血チューブ
6 血液凝固促進個体
7 通気チューブ
71 通気フィルタ
80 採血針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも血液由来の液性成分と血小板とを含む流動体を貯留する血液貯留部と、該血液貯留部に貯留された前記流動体のうちの少なくとも一部の成分を収容する成分収容部と、該血液貯留部と該成分収容部とを無菌的に連結する連結部と、を備える血液成分分離収容装置であって、
前記血液貯留部は、可撓性を有する筒状の血液貯留容器と、該血液貯留容器に前記流動体を導入する流動体導入路と、前記血液貯留容器から前記流動体のうちの少なくとも一部の成分を導出する成分導出路とを有し、
前記成分収容部は、前記血液貯留容器から導出された前記流動体のうちの少なくとも一部の成分が導入される成分導入路を有し、
前記連結部は、前記成分導出路と前記成分導入路とを連結する血液成分分離収容装置。
【請求項2】
前記血液貯留容器の一端側には、開口が形成されており、
前記血液貯留部は、前記血液貯留容器の開口に嵌合され該血液貯留容器を密閉する第1キャップを更に備え、
前記流動体導入路及び前記成分導出路は、前記第1キャップに設けられている請求項1記載の血液成分分離収容装置。
【請求項3】
前記血液貯留部は、前記血液貯留容器を収容し一端に開口が形成された筒状の第1収容容器を更に備え、
前記第1収容容器の開口は、前記第1キャップに嵌合されて密閉され、
前記血液貯留容器の外側と前記第1収容容器の内側との間には、前記血液貯留容器の内部空間とは独立した空間である圧力調整空間が形成される請求項2記載の血液成分分離収容装置。
【請求項4】
前記血液貯留部は、前記圧力調整空間に流体を注入可能な注入孔を備える請求項3記載の血液成分分離収容装置。
【請求項5】
前記注入孔に連結され、前記圧力調整空間に流体を注入する注入手段を更に備え、前記血液貯留容器は、注入された前記流体により変形される請求項4記載の血液成分分離収容装置。
【請求項6】
前記注入孔は、前記第1キャップに設けられている請求項4又は5記載の血液成分分離収容装置。
【請求項7】
前記血液貯留容器には、前記流動体と接触し、該流動体の凝固を促進させる血液凝固促進個体が収容されている請求項1〜6のいずれかに記載の血液成分分離収容装置。
【請求項8】
前記成分収容部は、一端に開口を有し可撓性で筒状の成分収容容器と、該成分収容容器を収容し一端に開口を有する筒状の第2収容容器と、前記成分収容容器における開口に接続されると共に前記第2収容容器における開口に嵌合される第2キャップと、を備える請求項1〜7のいずれかに記載の血液成分分離収容装置。
【請求項9】
前記成分収容部は、前記成分収容容器内に空気を出入りさせる通気路を有し、該通気路には、通気フィルタを備えた通気管が更に連結されている請求項8記載の血液成分分離収容装置。
【請求項10】
前記成分収容容器は、該成分収容容器における開口が設けられた一端と異なる端部である底面部に成分採取口を備える請求項8又は9記載の血液成分分離収容装置。
【請求項11】
前記第1収容容器と前記第2収容容器とは、略同形状である請求項8〜10のいずれかに記載の血液成分分離収容装置。
【請求項12】
前記血液貯留部及び前記成分収容部は自立可能な形状を有している請求項1〜11のいずれかに記載の血液成分分離収容装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−50696(P2009−50696A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191685(P2008−191685)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【Fターム(参考)】