説明

血液検体からのDNA増幅方法及びDNA増幅キット

【課題】 DNA精製を不要とする血液検体の前処理工程からDNA増幅反応工程の一連の工程において複数の温度設定を必要としないDNA増幅方法を提供する。
【解決手段】 DNAを増幅すべき血液検体を、常温下においてアルカリ性水溶液で処理することによって、前記血液検体からの二本鎖DNAの取り出しと、前記二本鎖DNAの一本鎖化とを行い、一本鎖DNAを含む血液由来試料を得る前処理工程と、前記血液由来試料と、少なくともプライマー、dNTP、鎖置換型DNA複製酵素、マグネシウム塩、及び緩衝剤とが混合した等温増幅反応液を調製して、前記鎖置換型DNA複製酵素の至適条件を具備する等温増幅反応系を構築する工程と、前記等温増幅反応系中で前記一本鎖DNAを鋳型として増幅する等温増幅工程とを含む、血液検体からのDNA増幅方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液検体からのDNA増幅方法及びDNA増幅キットに関する。より具体的には、血液検体の前処理工程からDNA増幅反応工程の一連の工程において複数の温度設定を必要としないDNA増幅方法及びDNA増幅キットに関する。本発明は、ライフサイエンス系研究用途、及び医療診断薬関連分野において有用である。
【背景技術】
【0002】
血液検体からのDNA増幅法として、一旦ゲノムDNAの抽出及び精製を行い、その後、精製されたDNAを合成に供する方法が一般的に行われている。
一方で、近年、血液検体をDNA精製しない前処理に供し、その後、前処理された試料を、鎖置換型DNA増幅酵素を用いた等温増幅系でDNA増幅することによってSNPタイピングを行う、SMAP(SMart Amplification Process)法が開発されている。
SMAP法で行われる前処理工程においては、50mMの水酸化ナトリウム水溶液を用い、98℃で3分間、熱変性が行われる(非特許文献1:Nature Methods, 2007, Mar;4(3):257-262)。
【0003】
【非特許文献1】Yasumasa Mitani, Alexander Lezhava, Yuki Kawai, Takeshi Kikuchi, Atsuko Oguchi-Katayama, Yasushi Kogo, Masayoshi Itoh, Toru Miyagi, Hideki Takakura, Kanako Hoshi, Chiaki Kato, Takahiro Arakawa, Kazuhiro Shibata, Kenji Fukui, Ryoji Masui, Seiki Kuramitsu, Kazuma Kiyotani, Alistair Chalk, Katsuhiko Tsunekawa, Masami Murakami, Tetsuya Kamataki, Takanori Oka, Hiroshi Shimada, Paul E Cizdziel & Yoshihide Hayashizaki著、Rapid SNP diagnostics using asymmetric isothermal amplification and a new mismatch suppression technology、「ネイチャー・メソッズ(Nature Methods)」、2007年3月、第4巻、第3号、p.257−262
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鎖置換型DNA増幅酵素は60℃付近に至適温度を有する。このため、SMAP法においては、鎖置換型DNA増幅酵素を用いた増幅工程を、PCR法のように温度の上げ下げを繰り返す温度制御を行うことなく、等温(約60℃)条件下で行うことができる。
【0005】
しかしながら、SMAP法において、増幅工程に先立って行われる血液検体の前処理工程は、98℃での熱処理を伴う。
すなわち、SMAP法は、前処理工程における熱変性を生じさせる温度と、増幅工程における鎖置換型DNA増幅酵素の至適温度との2種類の温度設定を必要とする。従って、それぞれの温度を設定する2つの温調機器、或いは、温度設定を変化させることができる温調機器や、サーマルサイクラーといった機器が必要となる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、DNA精製を不要とする血液検体の前処理工程からDNA増幅反応工程の一連の工程において複数の温度設定を必要としないDNA増幅方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、血液検体の前処理工程における変性処理を常温で行うことによって、上記本発明の目的が達成されることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の発明を含む。
【0008】
(1)
DNAを増幅すべき血液検体を、常温下においてアルカリ性水溶液と混合することによって、前記血液検体からの二本鎖DNAの取り出しと、前記二本鎖DNAの一本鎖化とを行い、一本鎖DNAを含む血液由来試料を得る前処理工程と、
前記血液由来試料と、少なくともプライマー、dNTP、鎖置換型DNA複製酵素、マグネシウム塩、及び緩衝剤とが混合した等温増幅反応液を調製して、前記鎖置換型DNA複製酵素の至適条件を具備する等温増幅反応系を構築する工程と、
前記等温増幅反応系中で前記一本鎖DNAを鋳型として増幅する等温増幅工程と
を含む、血液検体からのDNA増幅方法。
【0009】
すなわち、上記(1)の方法においては、前処理として血液検体の変性処理を常温で行い、適切な等温増幅反応系を構築し、構築された等温増幅反応系でDNA増幅を行う。適切な等温増幅反応系を構築する際、特に、緩衝剤の使用により、前処理に用いられたアルカリ性水溶液を含む高pHの血液由来試料から、鎖置換型DNA複製酵素の至適条件までpHが好ましく下げられた増幅反応液を得る。
なお、本明細書においては、前記プライマー、前記dNTP、前記鎖置換型DNA複製酵素、前記マグネシウム塩、及び前記緩衝剤からなる群から選ばれる成分を、増幅反応試薬成分又は便宜的に増幅反応試薬と記載することがある。
【0010】
(2)前記血液検体と前記アルカリ性水溶液との混合液中、アルカリ濃度が50mM以上となる量で前記アルカリ性水溶液が使用される、(1)に記載のDNA増幅方法。
【0011】
アルカリ濃度とは、溶液中に存在する水酸基イオンの濃度を意味する。
アルカリ性水溶液を上述の濃度で用いることによって、血液検体の前処理を好ましく行うことができる。
【0012】
(3)
前記緩衝剤が、前記等温増幅反応液中100mM以上の濃度となるように使用される、(1)又は(2)に記載のDNA増幅方法。
【0013】
上記(3)に記載の濃度となるように緩衝剤を用いることによって、前処理工程で常温での変性処理に用いられたアルカリ性水溶液が増幅工程で鎖置換型DNA複製酵素の活性を阻害しないよう、等温増幅系を十分に緩衝し、当該酵素の至適pHをより安定的に維持することができる。
【0014】
(4)
前記プライマー、前記dNTP、前記鎖置換型DNA複製酵素、マグネシウム塩、及び前記緩衝剤が、水に含まれた状態で提供される、(1)〜(3)のいずれかに記載のDNA増幅方法。
【0015】
上記(4)の方法においては、増幅反応試薬が液体状態で提供される。
【0016】
(5)
前記プライマー、前記dNTP、前記鎖置換型DNA複製酵素、マグネシウム塩、及び前記緩衝剤が、乾燥状態で提供される、(1)〜(3)のいずれかに記載のDNA増幅方法。
【0017】
上記(5)の方法においては、増幅反応試薬が乾燥状態で提供される。この乾燥試薬は、上記(4)の方法における液体試薬の凍結乾燥物であってよい。
【0018】
(6)
前記等温増幅反応系を構築する工程において、前記血液由来試料と、緩衝剤水溶液とを予め混合させ、さらに、乾燥状態である少なくともプライマー、dNTP、鎖置換型DNA複製酵素、マグネシウム塩、及び緩衝剤を混合させて、前記等温増幅反応液を調製する、(5)に記載のDNA増幅方法。
【0019】
上記(6)の方法は、増幅反応試薬が乾燥状態で提供される場合の一態様である。この方法において、予め血液由来試料と混合された緩衝剤水溶液(すなわち緩衝液)中の緩衝剤と、その後に加えられる緩衝剤とを足し合わせた量が、増幅反応液中において上記(3)に記載の100mM以上となるようにすることが好ましい。
【0020】
(7)
前記緩衝剤がトリスヒドロキシメチルアミノメタン塩である、(1)〜(6)のいずれかに記載のDNA増幅方法。
【0021】
(8)
前記アルカリ性水溶液が水酸化ナトリウム水溶液である、(1)〜(7)のいずれかに記載のDNA増幅方法。
【0022】
(9)
(1)〜(8)のいずれかに記載のDNA増幅方法を行うためのキットであって、
少なくとも前記プライマー、前記dNTP、前記鎖置換型DNA複製酵素、マグネシウム塩及び前記緩衝剤を含むキット。
【0023】
(10)
少なくとも前記プライマー、前記dNTP、前記鎖置換型DNA複製酵素、マグネシウム塩及び前記緩衝剤が、乾燥状態で提供される、(9)に記載のキット。
上記(10)のキットにおいては、上記(5)及び(6)の方法における乾燥試薬をアイテムとして含むことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、DNA精製を不要とする血液検体の前処理工程からDNA増幅反応工程の一連の工程において複数の温度設定を必要としないDNA増幅方法が可能になる。
すなわち、本発明によると、前処理工程から増幅反応工程の一連の工程において、温度設定は、一度、増幅工程を開始する際に、鎖置換型DNA複製酵素の至適温度に設定するのみでよい。従って、当該一連の工程を自動制御した装置によって本発明の方法を行う場合、当該装置の温調手段は、特定の温度に設定し維持することができる機構のみを有していればよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の方法は、血液検体の前処理を常温で行う工程(すなわち前処理工程:下記項目1)と、得られた当該処理液から等温増幅反応系を構築する工程(すなわち等温増幅反応系構築工程:下記項目2)し、増幅反応を行う工程(すなわち等温増幅工程:下記項目3)とを含む。
【0026】
[1.前処理工程]
前処理工程においては、血液検体がアルカリ性水溶液と混合され、常温で静置又は撹拌されることによって、血液由来試料を得る。当該血液由来試料は、DNAの精製を行うことなく、後述の増幅工程に供される対象となり得る。
本発明において、血液検体の前処理とは、核酸増幅反応を行うために予め行われる処理であり、具体的には、血液検体に含まれるDNA包含体からゲノムDNAを取り出すことにより、当該包含体の外へゲノムDNAを遊離させること、及び、ゲノムDNAの二本鎖構造を一本鎖構造に解離することを含む。
血液検体に含まれ得るDNA包含体としては、特に限定されず、血液中に先天的又は後天的に含まれているもの、及び外部から感染などにより血液中に混入したものを問わない。例えば、白血球、細菌、真菌、ウイルスなどが挙げられる。
【0027】
[1−1.血液検体]
血液検体には、通常全血が用いられる。全血は、抗凝血剤による処理の如何を問わない。また、血液検体は、DNAが含まれていれば、新鮮血、保存血液及び乾燥血液のいずれであっても良い。さらに、保存血液としては、冷蔵保存、冷凍保存を問わない。
血液検体の由来元となる個体としては、ヒト、及びその他の動物を含む。
【0028】
[1−2.アルカリ性水溶液]
本発明においては、血液検体の前処理をアルカリ性水溶液中で行う。アルカリ性水溶液としては、水溶液状態でアルカリ性を呈する物質を溶質とするものであれば得に限定されないが、アルカリ金属水酸化物の水溶液やアルカリ土類金属水酸化物の水溶液などの、強アルカリ性を呈するものが好ましい。
本発明では、アルカリ金属水酸化物を用いることが好ましく、特に、水酸化ナトリウムを用いることが好ましい。しかしながら、これに限定されることなく、他のアルカリ金属水酸化物(例えば水酸化カリウム等)やアルカリ土類金属水酸化物等を用いることもできる。さらに、これら溶質は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0029】
本発明で用いられるアルカリ性水溶液は、血液検体の常温での前処理が可能な濃度で用いられる。血液検体の常温での前処理が可能な濃度は、従来広く行われてきた、加熱条件下での血液検体の前処理において用いられる濃度よりも高いものである。
或いは、本発明で用いられるアルカリ性水溶液の濃度は、仮に本発明の前処理工程によって得られる前処理混合液を従来の等温増幅反応液と混合した場合に、当該従来の等温増幅反応液における鎖置換型DNA複製酵素の活性を阻害する程度の高濃度であるともいえる。
さらに言い換えれば、本発明で用いられるアルカリ性水溶液の濃度は、仮に本発明の前処理工程によって得られる前処理混合液を従来の等温増幅反応液と混合した場合に、当該従来の等温増幅反応液に含まれている緩衝剤(鎖置換型DNA複製酵素の至適条件を構築する濃度として、通常10〜20mMの濃度で含まれている)の緩衝効果を発揮させない程度の高濃度である、ともいえる。
【0030】
使用するアルカリ性水溶液のより具体的な濃度は、常温での前処理を可能にする比較的高い濃度であれば特に限定されないが、例えば100mM以上、好ましくは125mM以上、更に好ましくは150mM以上のアルカリ濃度であることが好ましい。当該濃度が100mMを下回ると、常温での前処理が困難になりやすい傾向となる。ここで、アルカリ濃度とは、溶液中に存在する水酸基イオンの濃度を意味する。
アルカリ性水溶液濃度の上限は特に限定されないが、例えば500mM程度のアルカリ濃度であることが好ましい。当該濃度が500mMを上回ると、後述の等温増幅反応系の構築が困難になりやすい傾向となる。
【0031】
また、アルカリ性水溶液の使用量としては、血液検体とアルカリ性水溶液との混合液におけるアルカリ濃度が、常温での前処理を可能にする比較的高い濃度となるように使用されば特に限定されるものではないが、例えば50mM以上、好ましくは62.5mM以上、更に好ましくは75mM以上;或いは例えば90mM以上、好ましくは112.5mM以上、更に好ましくは135mM以上となる量で用いることができる。当該範囲を下回ると、常温での前処理が困難になりやすい傾向となる。
上記範囲の上限は特に限定されないが、例えば450mM、或いは250mMとすることができる。当該範囲を上回ると、後述の等温増幅反応系の構築が困難になりやすい傾向となる。
一例としてアルカリ濃度が150mMの水酸化ナトリウム水溶液を用いる場合を挙げると、血液検体1μlに対し、例えば1〜9μlとなる量の当該水酸化ナトリウム水溶液を用いることができる。
【0032】
常温での前処理を可能にするアルカリ濃度は、ターゲットとなる配列によって異なり得るため、上記に例示した量を目安とし、ターゲットとなる配列を考慮して適宜増減させる調整をすることができる。当該調整の際には、通常ターゲットとなる核酸配列固有の性質であって増幅効率に影響し得る要素、例えばGC含量、塩基長、特定の特異的配列等の要素が当業者によって考慮される。
【0033】
[1−3.前処理条件]
前処理の温度は、常温である。本発明において常温とは、血液検体において熱変性が起こらない温度であればよく、具体的には、約15℃〜約40℃、好ましくは、20℃〜35℃、より好ましくは23℃〜30℃である。通常、25℃程度の温度である。
常温で行うことにより、血液検体の前処理工程からDNA増幅反応工程の一連の工程において複数の温度設定を必要としないDNA増幅方法が可能になる。
【0034】
前処理の時間としては特に限定されない。例えば、1〜15分、好ましくは3〜5分とすることができる。上記範囲を下回ると、常温での前処理が困難になりやすい傾向となる。上記範囲を上回ると、後述の等温増幅反応系の構築が困難になりやすい傾向となる。
【0035】
[2.等温増幅反応系構築工程]
等温増幅反応系構築工程においては、前記の前処理工程で得られた血液由来試料から、当該試料のDNA精製処理を経ずに適切な等温増幅反応系を構築する。
【0036】
適切な等温増幅反応系とは、鎖置換型DNA複製酵素の活性が阻害されることなく等温増幅反応が開始・進行可能な系をいう。等温増幅反応系を構築するとは、適切な等温増幅反応系の構築のために、鎖置換型DNA複製酵素の至適条件を具備するように、等温増幅反応系に含まれるべき各成分を当業者が質的及び量的観点に基づいて適宜決定し、等温増幅反応の開始・進行が可能な状態の等温増幅反応液を調製することをいう。
等温増幅反応液とは、血液由来試料と等温増幅反応試薬との混合物をいう。
【0037】
至適条件には、少なくともpH及び温度の要素が含まれる。必要に応じ、さらに塩濃度、及びその他の公知の要素を含んでも良い。
【0038】
また、質的及び量的観点に基づくとは、pH、温度、塩濃度、緩衝剤の種類、塩の種類、ターゲットの配列、その他共存し得る成分(例えば界面活性剤、夾雑物等)の存在等を考慮することをいう。特に本発明においては、前処理工程において用いられた高濃度のアルカリ性水溶液の存在を考慮しなければならない。このことを考慮することによって、当該高濃度のアルカリ性水溶液によるpHの影響を受けることなく、増幅反応液が鎖置換型DNA複製酵素の至適pHを維持することが可能な緩衝作用を十分発揮できる程度の緩衝剤の量(項目2−2−3に詳述)を決定しなければならない。
【0039】
[2−1.等温増幅反応試薬の形態]
等温増幅反応試薬は、後述する成分、すなわち、少なくとも、鎖置換型DNA複製酵素、プライマー、緩衝剤、dNTP、及びマグネシウム塩から選択される成分を含む液体試薬であっても良いし、乾燥試薬であっても良い。
【0040】
[2−1−1.液体試薬]
液体試薬は、当該選択された成分を含む水溶液の状態で提供され得る。液体試薬は、すべての必要な成分を含む1種類の水溶液として調製されても良いし、適宜選択された成分をそれぞれ含む2種類以上の水溶液として調製され、それら水溶液が最終的に混合されることにより、必要な成分をすべて増幅反応液中に共存させるようにしても良い。2種類以上の水溶液として調製する場合、それぞれの水溶液にどのような成分を含ませるかは、水溶液における各成分の安定性、保存性、その他の物性、及び操作性の違い等を考慮して、当業者が適宜決定することができる。
【0041】
[2−1−2.乾燥試薬]
乾燥試薬は、上記の成分が乾燥された状態で提供されるものである。例えば、上記の液体試薬にさらに凍結乾燥製剤を含むものを凍結乾燥して調製され得る。乾燥試薬であることは、各成分の保存性及び操作性に優れる点で好ましい。凍結乾燥製剤としては、トレハロース等の糖アルコールが挙げられる。乾燥試薬も、すべての必要な成分を含む1種類の凍結乾燥物として調製されても良いし、適宜選択された成分をそれぞれ含む2種類以上の凍結乾燥物として調製され、それら凍結乾燥物が最終的に混合されることにより、必要な成分をすべて増幅反応液中に共存させるようにしても良い。2種類以上の凍結乾燥物として調製される場合、それぞれの凍結乾燥物にどのような成分を含ませるかは、凍結乾燥工程及び凍結乾燥物における各成分の安定性、保存性、その他の物性、及び操作性の違い等を考慮して、当業者が適宜決定することができる。
【0042】
乾燥試薬を用いる場合、乾燥状態で用いても良いし、適宜、水又は緩衝液(この場合、当該緩衝液中の緩衝剤は、本発明で用いられる緩衝剤の一部を成す)に溶解して、液体試薬に変換して用いても良い。
【0043】
[2−2.等温増幅反応試薬の成分]
等温増幅反応試薬の成分は、前記の血液由来試料と共存させることで等温増幅反応系を構築するものであり、具体的には、少なくとも、鎖置換型DNA複製酵素、プライマー、緩衝剤、dNTP、及びマグネシウム塩が挙げられる。
【0044】
[2−2−1.鎖置換型DNA複製酵素]
鎖置換型DNA複製酵素は、鎖置換活性を有する酵素、すなわち鋳型のDNAに相補的なDNA鎖を合成していく過程で、伸張方向に二本鎖DNAがあった場合に、当該二本鎖を解離しながら相補鎖合成を継続することができる酵素をいう。
【0045】
鎖置換型DNA複製酵素としては特に限定されないが、例えば、Bacillus stearothermophilus由来のBst大断片DNAポリメラーゼ(Exo(-)Bst(Aliotta et al., Genet. Anal., 12:185-195(1996)、www.nebj.jp/jp/products/M0275.html)、Bacillus pallidus由来のBpa DNAポリメラーゼ(US5,736,373)、Bacillus acidocaldarius 由来のDNAポリメラーゼ(特開2003-274962号公報)、バクテリオファージ由来φ29DNAポリメラーゼ(US5,198,543、US5,001,050、Blanco et al.)、Exo(-)BcaDNAポリメラーゼ(Walker and Linn, Clinical Chemistry42:1604-1608(1996))、ファージM2DNAポリメラーゼ(Matsumoto et al., Gene 84:247 (1989))、ファージφPRD1 DNAポリメラーゼ(Jung et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:8287 (1987))、VENT(登録商標)DNAポリメラーゼ(Kong et al., J. Biol. Chem. 268:1965-1975 (1993))、DNAポリメラーゼIのクレノー断片(Jacobsen et al., Eur. J. Biochem. 45:623-627 (1974))、T5 DNA ポリメラーゼ(Chatterjee et al., Gene 97:13-19 (1991))、シーケナーゼ(登録商標)(米国バイオケミカルズ社製)、PRD1 DNAポリメラーゼ(Zhu and Ito, Biochem. Biophys. Acta. 1219:267-276 (1994))、及びT4 DNAポリメラーゼホロ酵素(Kaboord and Benkovic, Curr. Biol. 5:149-157 (1995))等が挙げられる。さらに、これら酵素は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0046】
当業者は、鎖置換型DNA複製酵素に向けられた上述の文献(或いはそれらの関連文献)に記載の至適条件に基づいて、本発明の等温増幅系を構築することができる。
例えば、本発明において好ましい鎖置換型DNA複製酵素の一つであるBst大断片DNAポリメラーゼの至適条件を与える反応液の一例として、次の組成[:20mM Tris−HCl(pH8.8、25℃)、10mM KCl、10mM (NHSO、2mM MgSO、及び0.1%Triton X−100(www.nebj.jp/jp/products/M0275.html)]と60〜65℃付近の温度とを具備する反応液が知られている。本発明においては、前述のとおり、前処理において従来とは異なる濃度のアルカリ性水溶液を用いているため、本発明の前処理工程によって得られる前処理混合液に上記公知の組成を有する反応液を混合すると、鎖置換型DNA複製酵素の活性は阻害され、等温増幅系を構築することはできない。このため、本発明において等温増幅系を構築する際には、前処理に用いたアルカリ性水溶液の存在下であっても鎖置換型DNA複製酵素が至適条件を具備することができるように、増幅試薬の各成分の量を適宜決定する。例えば、増幅試薬の成分のうち、マグネシウム塩、カリウム塩、或いは界面活性剤等については、従来の等温増幅反応液における量と同程度或いは同オーダーの量に設定することができる。一方、増幅試薬の成分のうち、緩衝剤については、本発明の前処理に用いたアルカリ性水溶液の存在を考慮して、等温増幅系を構築可能な量を適宜決定する(項目2−2−3に詳述)。
従って、Bst大断片DNAポリメラーゼを用いる例の場合は、KClやMgSO、或いはTriton X−100については上記公知の量と同程度・同オーダーの量に設定し、一方、Tris−HClの量は、上記公知の量とは大きく異なり、反応系が当該酵素の至適pHを維持できる量(項目2−2−3に詳述)に設定することによって、Bst大断片DNAポリメラーゼの等温増幅系を構築することができる。
【0047】
従って、鎖置換型DNA複製酵素の使用量は、特に限定されるものではなく、適切な等温増幅反応系を構築する量が適宜用いられる。例えば、等温増幅反応液中200〜1000U/mL、好ましくは400〜800U/mLとなる量で用いることができる。上記範囲を下回ると、後述の等温増幅反応系の構築が困難になりやすい傾向となる。また、上記範囲を上回っても、後述の等温増幅反応系の構築が困難になりやすい傾向となる。
【0048】
鎖置換型DNA複製酵素の使用量は、ターゲットとなる配列によって異なり得るため、上記に例示した量を目安とし、ターゲットとなる配列を考慮して適宜増減させる調整をすることができる。当該調整の際には、通常ターゲットとなる核酸配列固有の性質であって増幅効率に影響し得る要素、例えばGC含量、塩基長、特定の特異的配列等の要素が当業者によって考慮される。より具体的な例を挙げると、例えばターゲットとなる配列のGC含量が高い(当業者によって適宜判断されるが例えば70%以上)場合、GC量が高くなるほど、上記に例示した範囲の上限を高濃度側にシフトさせる調整を行うことができる。
【0049】
[2−2−2.プライマー]
プライマー設計は、当業者が適宜行うことができるものであるため、特に限定されるものではない。当業者がプライマー設計するにあたっては、公知の等温増幅法において用いられるプライマーに基づくことができる。公知の等温増幅法としては、例えば、SMAP(SMart Amplification Process)法、SDA(Standard Displacement Amplification)法、LAMP(Loop-mediated Isothermal Amplification)法などが挙げられる。
【0050】
なお、公知の等温増幅法において用いられるプライマーに基づいて当業者がプライマー設計する際、公知の等温増幅法において用いられるプライマーと同じプライマーを採用することができる。さらに、当該等温増幅法のプライマーの使用に付随して必要となる成分があれば、そのような成分も当業者が適宜選択することができる。
【0051】
使用するプライマーの量としては特に限定されない。一つの反応でプライマーは複数用いられ得るが、個々の役割によってプライマーそれぞれの濃度は異なるため、所望する等温増幅反応系に応じ、当業者が適切な量を決定することができる。例えば、等温増幅反応液中0.1〜5μM、好ましくは0.25〜2μMとなる量で用いることができる。上記範囲を下回ると、後述の等温増幅反応系の構築が困難になりやすい傾向となる。また、上記範囲を上回っても、後述の等温増幅反応系の構築が困難になりやすい傾向となる。
【0052】
[2−2−3.緩衝剤]
緩衝剤の種類としては特に限定されず、分子生物学、核酸関連化学分野において許容されるあらゆる緩衝剤を用いることができる。
例えば、クエン酸、コハク酸、リン酸、炭酸、乳酸、ホウ酸、カコジル酸、酢酸、ベロナール酢酸、コリジン、塩酸、グルタル酸、及びリンゴ酸からなる群から選ばれる酸の塩;HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)の塩基付加塩;及びTris(トリスヒドロキシメチルアミノメタン)やMOPSの酸付加塩等が挙げられる。本発明においては、Tris(トリスヒドロキシメチルアミノメタン)の酸付加塩を用いることが好ましい。
【0053】
上記酸の塩の場合、具体的には、上記例示した酸と強塩基との塩(例えばナトリウム塩やカリウム塩等)が挙げられる。
上記塩基付加塩の場合、具体的には、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)に強塩基(例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等)が付加したものが挙げられる。より具体的には、HEPES−KOHなどが挙げられる。
上記酸付加塩の場合、具体的には、Tris(トリスヒドロキシメチルアミノメタン)に強酸(例えば塩酸等)及びまたは弱酸(例えば酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ホウ酸、リン酸等)が付加した酸付加塩、より具体的には、Tris−HCl(トリスヒドロキシメチルアミノメタン塩酸塩)、TE(トリス−EDTA緩衝液)、TNE(トリス−塩化ナトリウム−EDTA)等が挙げられる。
さらに、これら緩衝剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0054】
前述のように、本発明の反応試薬は、液体試薬の形態であっても良いし、乾燥試薬の形態であっても良い。液体試薬の場合は、上記緩衝剤は、当該緩衝剤を成分とする緩衝液として提供され得る。上記緩衝剤を成分とする緩衝液は、鎖置換型DNA複製酵素の至適条件から当業者が適宜決定したpHに調整したものを用いることができる。例えば、8〜9のpHに調整したものを用いることができる。
【0055】
本発明で用いられる緩衝剤の濃度は、前処理工程において用いられた高濃度のアルカリ性水溶液の存在を考慮し、当該高濃度のアルカリ性水溶液によるpHの影響を受けることなく、増幅反応液が鎖置換型DNA複製酵素の至適pHを維持することが可能な緩衝作用を十分発揮できる程度の十分な濃度でなくてはならない。すなわち、前処理に用いられたアルカリ性水溶液を含む血液由来試料は高pHであるが、この血液由来試料と増幅反応試薬の混合によって得られる増幅反応液においては、鎖置換型DNA複製酵素の至適条件までpHが十分に下げられてなければならない。本発明においては、このような増幅反応液を得るための十分な濃度の緩衝剤が用いられる。当該十分な濃度は、従来の増幅反応系で広く用いられてきた濃度よりも高いものである。
【0056】
緩衝剤の具体的な量は特に限定されるものではなく、適切な等温増幅反応系を構築する量となるように当業者によって適宜決定される。例えば、上記の鎖置換型DNA複製酵素を等温増幅反応液中400〜600U/mL使用すること、及び/又は、上記のアルカリ性水溶液を100mM以上の濃度で使用することを前提とした場合、緩衝剤の使用量は、等温増幅反応液中、100mM以上、好ましくは150mM以上、より好ましくは200mM以上となる量を目安にすることができる。上記範囲の上限値は特に限定されるものではないが、例えば、400mM或いは500mM程度とすることができる。
上記範囲を下回ると、緩衝作用を発揮しにくい傾向となり、従って増幅反応液の条件が酵素の至適条件から逸脱しやすい傾向となる。また、上記範囲を上回っても、後述の等温増幅反応系の構築が困難になりやすい傾向となる。
【0057】
上記項目2−2−1で記載したように、鎖置換型DNA複製酵素の使用量は、ターゲットとなる配列によって異なるため、上記の前提はいかようにも変動し得る。従って、緩衝剤の使用量も、上記例示した範囲から変動し得る。例えば、上記鎖置換型DNA複製酵素の使用量が、上記前提とした範囲より少ない濃度で用いられる場合、緩衝剤の使用量は、前処理工程で使用したアルカリ性水溶液の濃度を考慮した上で、100mMより少ない量としても良い。
【0058】
[2−2−4.dNTP]
dNTPは、4種類のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)を総称したものである。また、デオキシリボヌクレオシド三リン酸は、本発明の使用の目的により、当業者によって適宜行われる標識や修飾などの変更がされているものであっても良く、そのような変更されたデオキシリボヌクレオシド三リン酸も、本発明ではdNTPに含むものとする。
それぞれのデオキシリボヌクレオチド三リン酸は、等量用いても良いし、例えば核酸配列等に応じて異なる量のデオキシリボヌクレオチド三リン酸を用いても良い。
【0059】
dNTPの使用量は、特に限定されるものではなく、適切な等温増幅反応系を構築する量が適宜用いられる。例えば、等温増幅反応液中1〜3mM、好ましくは1〜2mMとなる量で用いることができる。上記範囲を下回ると、後述の等温増幅反応系の構築が困難になりやすい傾向となる。また、上記範囲を上回っても、後述の等温増幅反応系の構築が困難になりやすい傾向となる。
【0060】
[2−2−5.マグネシウム塩]
マグネシウム塩は、プライマーとDNAテンプレートとの二重鎖の安定性に資するものであり、そのような目的で従前より用いられているものを特に限定することなく用いることができる。例えば、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウムなどを用いることができる。さらに、これら塩は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0061】
マグネシウム塩の使用量は、特に限定されるものではなく、適切な等温増幅反応系を構築する量が適宜用いられる。例えば、等温増幅反応液中6〜10mM、好ましくは7.5〜8.5mMとなる量で用いることができる。上記範囲を下回ると、プライマーがアニールしにくく増幅効率が下がる傾向となる。上記範囲を上回ると、ミスマッチの安定性もあがるため非特異増幅が起こりやすくなる傾向となる。
【0062】
[2−2−6.その他の成分]
カリウム塩 − 等温増幅反応試薬に含まれてよいその他の成分として、カリウム塩が挙げられる。カリウム塩は、反応系の塩濃度調整等に用いることができ、このような目的で従前より用いられるものを特に限定することなく用いることができる。例えば、塩化カリウム、硫酸カリウムなどを用いることができる。さらに、これら塩は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0063】
カリウム塩の使用量は、特に限定されるものではなく、適切な等温増幅反応系を阻害しない量で適宜用いられる。例えば、等温増幅反応液中5〜20mM、好ましくは10〜12mMとなる量で用いることができる。
【0064】
検出用標識 − また、検出用の標識を等温増幅反応試薬に含ませることができる。この標識は、上述の増幅反応試薬のいずれか(例えばプライマー)に結合させたものとして含ませても良いし、上記の増幅反応試薬の成分とは別個の成分として含ませても良い。
標識としては、シグナルの検出によって核酸又は特定の配列の存在を確認する核酸検出方法において従前より用いられるものを、特に限定することなく用いることができ、RI標識及び非RI標識を問わない。
【0065】
RI標識においては、プライマー標識法、及び増幅産物へのRIヌクレオチドの取り込みによる標識法を問わない。
非RI標識においては、蛍光標識及び酵素標識を問わない。本発明においては、蛍光標識を用いることが好ましい。蛍光標識としては、例えばフルオレセイン系色素、シアニン系色素、ローダミン系色素などが挙げられる。
さらに、これら標識は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0066】
界面活性剤 − さらに、界面活性剤を等温増幅反応試薬に含ませることもできる。界面活性剤は、反応液の可溶化及び安定化のために用いることができ、このような目的で従前より用いられるものを特に限定することなく用いることができる。また、イオン性及び非イオン性を問わない。例えば、Tween20やTriton−X100などを用いることができる。さらに、これら界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0067】
界面活性剤の使用量は、特に限定されるものではなく、適切な等温増幅反応系を阻害しない量で適宜用いられる。例えば、等温増幅反応液中0.01〜0.5%(v/v)、好ましくは0.05〜0.2%(v/v)となる量で用いることができる。
【0068】
凍結乾燥製剤 − さらに、等温増幅反応試薬が乾燥試薬として提供される場合、当該試薬には、凍結乾燥製剤が含まれる。凍結乾燥製剤としては、従前より用いられるものを特に限定することなく用いることができる。例えば、トレハロースなどの糖アルコールが挙げられる。さらに、凍結乾燥製剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0069】
凍結乾燥製剤の使用量は、特に限定されるものではなく、増幅反応試薬の凍結乾燥を行うことができ、且つ増幅反応液中に共存した場合に適切な等温増幅反応系を阻害しない量で、適宜用いられる。例えば、等温増幅反応液中1〜5%(v/v)、好ましくは2〜3%(v/v)となる量が許容される。
【0070】
[2−3.等温増幅反応液の調製]
増幅反応試薬の成分は、血液由来試料と混合され、等温増幅反応液となる。等温増幅反応試薬の成分は、当該等温増幅反応液において反応を開始する時点で、反応系に含まれるべき成分がすべて共存するように混合されればよい。従って、高濃度のアルカリ性水溶液を含む血液由来試料と、鎖置換型DNA複製酵素とが、緩衝剤の不存在下で混合されないようにすれば、等温増幅反応試薬の各成分を混合する順番は限定されることなく、当業者が適宜決定することができる。
なお、等温増幅反応液中における増幅反応試薬の成分の具体的な量は、上述のとおりである。一方、血液由来試料の混合量としては、使用した血液検体1μLに対して増幅反応液全体が10〜100μL、好ましくは10〜50μLとなる量とすることができる。
【0071】
[2−3−1.液体試薬の使用]
増幅反応試薬が液体試薬である場合、等温増幅反応液中における血液由来試料の量及び増幅反応試薬の成分の量が上述の量となるように、血液由来試料と増幅反応試薬とを混合すればよい。
【0072】
[2−3−2.乾燥試薬の使用]
増幅反応試薬が乾燥試薬である場合、例えば、当該乾燥試薬を水又は緩衝液(この場合、当該緩衝液中の緩衝剤は、増幅反応液中に存在すべき緩衝剤の一部を成す)に溶解して、上述の組成を有する液体試薬に変換して使用することができる。
【0073】
或いは、例えば、血液由来試料と、緩衝剤水溶液とを予め混合させ、さらに乾燥試薬を混合させて、等温増幅反応液を調製することもできる。
この態様においては、予め血液由来試料と混合された緩衝剤水溶液(すなわち緩衝液)中の緩衝剤は、増幅反応液中に存在すべき緩衝剤の一部を成す。従って、予め血液由来試料と混合された緩衝剤水溶液中の緩衝剤と、その後に加えられる緩衝剤とを足し合わせた量が、上述の項目2−2−3に記載の濃度、例えば100mM以上となるようにすることが好ましい。
また、この態様において、予め血液由来試料と混合される緩衝液の量は、血液由来試料のpHを予めある程度のpH(鎖置換型DNA複製酵素の至適pHに基づく)まで十分に下げることができる程度の量で用いることができる。例えば、予め混合される緩衝液と血液由来試料との混合物において、緩衝剤の濃度が100〜300mM、好ましくは1500〜200mMとなる量で使用することができる。
【0074】
[3.等温増幅工程]
等温増幅工程においては、上述のように構築された反応系にて、等温増幅反応によりDNA増幅を行う。
【0075】
等温増幅反応とは、ほぼ一定温度で増幅反応を行うことをいい、PCR法のようにDNA変性工程、プライマーアニール工程及びDNA鎖伸張工程の各工程で温度を変化させる増幅反応とは、複数の温度設定と温度制御とを必要としない点で異なる。
【0076】
[3−1.反応温度]
増幅反応を行う温度は、適用する鎖置換型DNA複製酵素特有の至適温度に依存するものであるため、特に限定されるものではない。増幅反応を行う温度は、適用する鎖置換型DNA複製酵素に応じて当業者が適宜決定する。
鎖置換型DNA複製酵素は、例えば約30℃を下回ると活性を有さず、約70℃を超えると失活するものが多い。すなわち、30〜70℃、或いは35〜65℃の範囲に至適温度を有するものが多い。
例えば、本発明において好ましい鎖置換型DNA複製酵素の一つであるBst大断片DNAポリメラーゼは、60〜65℃付近に至適温度を有する。
【0077】
等温増幅反応工程においては、鎖置換型DNA複製酵素の至適温度に保って等温で反応を行う。等温反応においては、温度変化させるための積極的な温度制御を行わなければ、至適温度範囲内での温度変化を許容する。
【0078】
[3−2.反応時間]
増幅反応を行う時間としては特に限定されず、当業者が適宜決定することができる。例えば、0.25〜3時間、好ましくは0.5〜1時間とすることができる。
【0079】
[4.増幅反応試薬キット]
本発明のキットは、上記項目2で述べた成分を含む。上記項目2−1−1で述べた液体試薬を含ませても良いし、上記項目2−1−2で述べた乾燥試薬を含ませても良い。それらはすでに述べたように、2種以上の液体試薬として、或いは2種以上の乾燥試薬としてキットに含ませて良い。乾燥試薬をキットに含ませる場合、さらに上記項目2−3−2で述べたような、予め血液由来試料と混合させる緩衝液を別途含ませても良い。
さらに、キットには、特定の増幅反応試薬成分については液体試薬の状態で、他の増幅反応試薬成分については乾燥試薬の状態で含ませても良い。
【実施例】
【0080】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0081】
[参考例1]
参考例1では、血液検体を、加熱条件下、50mM NaOH水溶液(血液とNaOH水溶液との混合液中のNaOH濃度は33.3mM)を用いた前処理、及び200mM Tris・Clを含む反応液中での増幅反応に供した。
【0082】
市販のEDTA採血管に採取され、凍結保存されていた血液を5μLと、50mMのNaOH水溶液を10μLとを混合し、前処理として、98℃、5分間の加熱処理を行った。加熱処理の後、処理液を氷水中に浸すことによって冷却した。
【0083】
上記のように前処理された血液検体1μLに、増幅試薬4μLを加え、増幅反応液を得た。
増幅試薬の組成は、次のとおりである。
0.4μL プライマーセット
2.5μL 反応バッファー
0.2μL Bst DNAポリメラーゼ(12,000U/mL)
0.9μL 水
【0084】
上記増幅試薬におけるプライマーセットは、SmartAmp Warfarin Dosage Test Kit((株)ダナフォーム)に含まれるCYP2C9*3(A)、CYP2C9*3(C)、VKORC1-1639(G)、及びVKORC1-1639(A)を用いた。
【0085】
上記増幅試薬における反応バッファーは、次の組成を有するものを調製して用いた。(SmartAmp Warfarin Dosage Test Kitの反応バッファーは用いていない。)
400mM Tris・Cl(pH8.8)
2.4mM dNTPs
16mM MgSO
20mM KCl
0.005%(v/v)SYBR Green I
なお、増幅反応液全体におけるTris・Clの濃度は200mMである。
【0086】
上記増幅試薬におけるBst DNAポリメラーゼは、ニュー・イングランド・バイオラボ社のものを水で10倍希釈して調製したものである。
【0087】
増幅反応液を、定量PCR用サイクラー(Mx3000P、ストラータジーン社)にセットし、60℃にて1分間隔で40回の蛍光量を測定した。蛍光量の測定値の経時変化を示したグラフを図1に示す。図1においては、横軸に時間(分)、縦軸に蛍光量(実測値から、反応開始後1分における蛍光量を減じた量)を示す(以下のすべての図において同じ)。
図1より、この血液検体が、CYP2C9に関してはAのホモ型、VKORC1に関してはAのホモ型の遺伝子型を持つことが分かる。
【0088】
[比較例1]
比較例1では、血液検体を、加熱条件下、50mM NaOH水溶液(血液とNaOH水溶液との混合液中のNaOH濃度は33.3mM)を用いた前処理、及び20mM Tris・Clを含む反応液中での増幅反応に供した。
すなわち、増幅反応液全体におけるTris・Clの濃度が20mMとなるように反応バッファーを調製した以外は、上記参考例1と同様の操作を行った。得られた結果を、図2に示す。
図2に示すように、遺伝子型の検出を行うことができなかった。従って、比較例1の条件では適切な増幅反応系を構築することができないことが分かる。
【0089】
[比較例2]
比較例2では、血液検体を、室温条件下、150mM NaOH水溶液(血液とNaOH水溶液との混合液中のNaOH濃度は100mM)を用いた前処理、及び20mM Tris・Clを含む反応液中での増幅反応に供した。
すなわち、前処理を、以下の方法に換えた以外は、参考例1と同様の操作を行った。
市販のEDTA採血管に採取され、凍結保存されていた血液を5μLと、150mMのNaOH水溶液を10μLとを混合し、前処理として、室温で、5分間静置した。
得られた結果を、図3に示す。
図3に示すように、遺伝子型の検出を行うことができなかった。従って、比較例2の条件では適切な増幅反応系を構築することができないことが分かる。
【0090】
[比較例3]
比較例3では、血液検体を、常温条件下、50mM NaOH水溶液(血液とNaOH水溶液との混合液中のNaOH濃度は33.3mM)を用いた前処理、及び200mM Tris・Clを含む反応液中での増幅反応に供した。
すなわち、前処理を、以下の方法に換えた以外は、参考例1と同様の操作を行った。
市販のEDTA採血管に採取され、凍結保存されていた血液を5μLと、50mMのNaOH水溶液を10μLとを混合し、前処理として、室温で、5分間静置した。
得られた結果を、図4に示す。
図4に示すように、遺伝子型の検出を行うことができなかった。従って、比較例3の条件では適切な増幅反応系を構築することができないことが分かる。
【0091】
[実施例1]
実施例1では、血液検体を、常温条件下、100mM NaOH水溶液(血液とNaOH水溶液との混合液中のNaOH濃度は66.7mM)を用いた前処理、及び200mM Tris・Clを含む反応液中での増幅反応に供した。
【0092】
市販のEDTA採血管に採取され、凍結保存されていた血液を5μLと、100mMのNaOH水溶液を10μLとを混合し、室温(25℃)で、5分間静置することにより前処理を行った。
【0093】
上記のように前処理された血液検体1μLに、増幅試薬4μLを加え、増幅反応液を得た。
増幅試薬の組成は、次のとおりである。
0.4μL プライマーセット
2.5μL 反応バッファー
0.2μL Bst DNAポリメラーゼ(12,000U/mL)
0.9μL 水
【0094】
上記増幅試薬におけるプライマーセットは、SmartAmp Warfarin Dosage Test Kit((株)ダナフォーム)に含まれるCYP2C9*3(A)(:参考用)、CYP2C9*3(C)(:参考用)、VKORC1-1639(G)、及びVKORC1-1639(A)を用いた。
【0095】
上記増幅試薬における反応バッファーは、次の組成を有するものを調製して用いた。(SmartAmp Warfarin Dosage Test Kitの反応バッファーは用いていない。)
400mM Tris・Cl(pH8.8)
2.4mM dNTPs
16mM MgSO
20mM KCl
0.005%(v/v)SYBR Green I
なお、増幅反応液全体におけるTris・Clの濃度は200mMである。
【0096】
上記増幅試薬におけるBst DNAポリメラーゼは、ニュー・イングランド・バイオラボ社のものを水で10倍希釈して調製したものである。
【0097】
増幅反応液を、定量PCR用サイクラー(Mx3000P、ストラータジーン社)にセットし、60℃にて1分間隔で40回の蛍光量を測定した。蛍光量の測定値の経時変化を示したグラフを図5に示す。図5においては、横軸に時間(分)、縦軸に蛍光量(実測値から、反応開始後1分における蛍光量を減じた量)を示す(以下のすべての図において同じ)。
図5より、この血液検体について、VKORC1に関してAのホモ型の遺伝子型が検出された。一方、CYP2C9に関しては遺伝子型は検出されなかった。なお、後述の実施例により、NaOHの濃度を上げると、CYP2C9の遺伝子型が検出可能であることが示されている。
すなわち、本実施例において採用された条件は、VKORC1の遺伝子型のみの検出を行うには十分であるが、CYP2C9の遺伝子型の検出を行うには後述の実施例程度のNaOH濃度設定(混合液中66.7mMを上回る濃度、例えば100mM)が必要であることがわかる。また、NaOH濃度が混合液中66.7mMであっても、その他の条件(例えば酵素濃度等)の設定を調整することにより、CYP2C9の検出が可能となる場合もある。
すなわち、図5は、遺伝子或いは標的領域の塩基配列によって、好ましい条件(一例としてNaOHの濃度条件)が異なり得ることも示している。
【0098】
[実施例2]
実施例2では、血液検体を、常温条件下、150mM NaOH水溶液(血液とNaOH水溶液との混合液中のNaOH濃度は100mM)を用いた前処理、及び200mM Tris・Clを含む反応液中での増幅反応に供した。
【0099】
市販のEDTA採血管に採取され、凍結保存されていた血液を5μLと、150mMのNaOH水溶液を10μLとを混合し、室温(25℃)で、5分間静置することにより前処理を行った。
【0100】
上記のように前処理された血液検体1μLに、増幅試薬4μLを加え、増幅反応液を得た。
増幅試薬の組成は、次のとおりである。
0.4μL プライマーセット
2.5μL 反応バッファー
0.2μL Bst DNAポリメラーゼ(12,000U/mL)
0.9μL 水
【0101】
上記増幅試薬におけるプライマーセットは、SmartAmp Warfarin Dosage Test Kit((株)ダナフォーム)に含まれるCYP2C9*3(A)、CYP2C9*3(C)、VKORC1-1639(G)、及びVKORC1-1639(A)を用いた。
【0102】
上記増幅試薬における反応バッファーは、次の組成を有するものを調製して用いた。(SmartAmp Warfarin Dosage Test Kitの反応バッファーは用いていない。)
400mM Tris・Cl(pH8.8)
2.4mM dNTPs
16mM MgSO
20mM KCl
0.005%(v/v)SYBR Green I
なお、増幅反応液全体におけるTris・Clの濃度は200mMである。
【0103】
上記増幅試薬におけるBst DNAポリメラーゼは、ニュー・イングランド・バイオラボ社のものを水で10倍希釈して調製したものである。
【0104】
増幅反応液を、定量PCR用サイクラー(Mx3000P、ストラータジーン社)にセットし、60℃にて1分間隔で40回の蛍光量を測定した。蛍光量の測定値の経時変化を示したグラフを図6に示す。図6においては、横軸に時間(分)、縦軸に蛍光量(実測値から、反応開始後1分における蛍光量を減じた量)を示す。
図6が示すように、CYP2C9に関してはAのホモ型が検出され、VKORC1に関しては図5の結果と同様に、Aのホモ型の遺伝子型が検出された。
【0105】
[実施例3]
実施例3では、血液検体を、常温条件下、150mM NaOH水溶液(血液とNaOH水溶液との混合液中のNaOH濃度は100mM)を用いた前処理、及び乾燥試薬を用いて調製された反応液中での増幅反応に供した。
【0106】
市販のEDTA採血管に採取され、凍結保存されていた血液を5μLと、150mMのNaOH水溶液を10μLとを混合し、室温(25℃)で、5分間静置することにより前処理を行った。
【0107】
上記のように前処理された血液検体に、200mM Tris・Cl(pH8.8)60μLを添加して混合した。
得られた処理液2.5μLを下記の乾燥試薬に加え、増幅反応液を得た。
【0108】
乾燥試薬は、次の組成を有する溶液2μLを反応チューブ内で凍結乾燥させることにより調製した。
0.2μL プライマーセット
1.25μL 反応バッファー
0.1μL Bst DNAポリメラーゼ(12,000U/mL)
0.45μL 水
【0109】
上記溶液におけるプライマーセットは、SmartAmp Warfarin Dosage Test Kit((株)ダナフォーム)に含まれるCYP2C9*3(A)、CYP2C9*3(C)、VKORC1-1639(G)、及びVKORC1-1639(A)を用いた。
【0110】
上記溶液における反応バッファーは、次の組成を有するものを調製して用いた。(SmartAmp Warfarin Dosage Test Kitの反応バッファーは用いていない。)
40mM Tris・Cl(pH8.8)
2.4mM dNTPs
16mM MgSO
20mM KCl
40%(W/V) トレハロース
0.005%(v/v)SYBR Green I
なお、増幅反応液全体におけるTris・Clの濃度は200mMである。
【0111】
上記溶液におけるBst DNAポリメラーゼは、ニュー・イングランド・バイオラボ社のものを水で10倍希釈して調製したものである。
【0112】
増幅反応液を、定量PCR用サイクラー(Mx3000P、ストラータジーン社)にセットし、60℃にて1分間隔で40回の蛍光量を測定した。蛍光量の測定値の経時変化を示したグラフを図7に示す。図7において、蛍光量は、実測値から、反応開始後1分における蛍光量を減じた値として示している。
図7が示すように、図6の結果と同様に、CYP2C9に関してはAのホモ型が検出され、VKORC1に関しては図5及び図6の結果と同様に、Aのホモ型の遺伝子型が検出された。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】参考例1において、血液検体を、加熱条件下、50mM NaOH水溶液(血液とNaOH水溶液との混合液中のNaOH濃度は33.3mM)を用いた前処理、及び200mM Tris・Clを含む反応液中での増幅反応に供することによって得られた、遺伝子型の検出結果である。
【図2】比較例1において、血液検体を、加熱条件下、50mM NaOH水溶液(血液とNaOH水溶液との混合液中のNaOH濃度は33.3mM)を用いた前処理、及び20mM Tris・Clを含む反応液中での増幅反応に供することによって得られた、遺伝子型の検出結果である。
【図3】比較例2において、血液検体を、室温条件下、150mM NaOH水溶液(血液とNaOH水溶液との混合液中のNaOH濃度は100mM)を用いた前処理、及び20mM Tris・Clを含む反応液中での増幅反応に供することによって得られた、遺伝子型の検出結果である。
【図4】比較例3において、血液検体を、常温条件下、50mM NaOH水溶液(血液とNaOH水溶液との混合液中のNaOH濃度は33.3mM)を用いた前処理、及び200mM Tris・Clを含む反応液中での増幅反応に供することによって得られた、遺伝子型の検出結果である。
【図5】実施例1において、血液検体を、常温条件下、100mM NaOH水溶液(血液とNaOH水溶液との混合液中のNaOH濃度は66.7mM)を用いた前処理、及び200mM Tris・Clを含む反応液中での増幅反応に供することによって得られた、遺伝子型の検出結果である。
【図6】実施例2において、血液検体を、常温条件下、150mM NaOH水溶液(血液とNaOH水溶液との混合液中のNaOH濃度は100mM)を用いた前処理、及び200mM Tris・Clを含む反応液中での増幅反応に供することによって得られた、遺伝子型の検出結果である。
【図7】実施例3において、血液検体を、常温条件下、150mM NaOH水溶液(血液とNaOH水溶液との混合液中のNaOH濃度は100mM)を用いた前処理、及び乾燥試薬を用いて調製された反応液中での増幅反応に供することによって得られた、遺伝子型の検出結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DNAを増幅すべき血液検体を、常温下においてアルカリ性水溶液と混合することによって、前記血液検体からの二本鎖DNAの取り出しと、前記二本鎖DNAの一本鎖化とを行い、一本鎖DNAを含む血液由来試料を得る前処理工程と、
前記血液由来試料と、少なくともプライマー、dNTP、鎖置換型DNA複製酵素、マグネシウム塩、及び緩衝剤とが混合した等温増幅反応液を調製して、前記鎖置換型DNA複製酵素の至適条件を具備する等温増幅反応系を構築する工程と、
前記等温増幅反応系中で前記一本鎖DNAを鋳型として増幅する等温増幅工程と
を含む、血液検体からのDNA増幅方法。
【請求項2】
前記血液検体と前記アルカリ性水溶液との混合液中、アルカリ濃度が50mM以上となる量で前記アルカリ性水溶液が使用される、請求項1に記載のDNA増幅方法。
【請求項3】
前記緩衝剤が、前記等温増幅反応液中100mM以上の濃度となる量で使用される、請求項1又は2に記載のDNA増幅方法。
【請求項4】
前記プライマー、前記dNTP、前記鎖置換型DNA複製酵素、マグネシウム塩、及び前記緩衝剤が、水に含まれた状態で提供される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のDNA増幅方法。
【請求項5】
前記プライマー、前記dNTP、前記鎖置換型DNA複製酵素、マグネシウム塩、及び前記緩衝剤が、乾燥状態で提供される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のDNA増幅方法。
【請求項6】
前記等温増幅反応系を構築する工程において、前記血液由来試料と、緩衝剤水溶液とを予め混合させ、さらに、乾燥状態である少なくともプライマー、dNTP、鎖置換型DNA複製酵素、マグネシウム塩、及び緩衝剤を混合させて、前記等温増幅反応液を調製する、請求項5に記載のDNA増幅方法。
【請求項7】
前記緩衝剤がトリスヒドロキシメチルアミノメタン塩である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のDNA増幅方法。
【請求項8】
前記アルカリ性水溶液が水酸化ナトリウム水溶液である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のDNA増幅方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のDNA増幅方法を行うためのキットであって、
少なくとも前記プライマー、前記dNTP、前記鎖置換型DNA複製酵素、マグネシウム塩及び前記緩衝剤を含むキット。
【請求項10】
少なくとも前記プライマー、前記dNTP、前記鎖置換型DNA複製酵素、マグネシウム塩及び前記緩衝剤が、乾燥状態で提供される、請求項9に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−142140(P2010−142140A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320748(P2008−320748)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】