説明

血液浄化システム

【課題】長時間の血液浄化治療における浄化液バッグの交換による医師や看護師の負担を軽減し、血液浄化治療の低コスト化を実現する。
【解決手段】血液浄化システムAは、血液浄化器10を有する血液回路11と、血液浄化器10に血液の浄化液を供給し排出する浄化液回路12と有する血液浄化装置1と、浄化液を生成する浄化液生成装置2と、浄化液生成装置2で生成された浄化液を、浄化液回路12の浄化液バッグ50に補充するために、浄化液生成装置2と浄化液回路12とを接続する浄化液補充回路3と、浄化液バッグ50の浄化液の液量が所定の閾値以下になったときに、浄化液生成装置2の浄化液が浄化液補充回路3を通じて浄化液バッグ50に補充されるように、血液浄化装置1と浄化液生成装置2との間で情報の通信を行う通信手段4と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
血液浄化療法は、患者の血液を体外に取り出し、この血液を血液浄化器で浄化した後、再び体内に戻す治療方法であり、その代表例としては透析療法が挙げられる(特許文献1)。透析療法では、患者血液と透析液を血液浄化器の半透膜を介して接触させ、物質の濃度差により生じる拡散現象を利用して患者血液中から不要物質を透析液側に排出させる。拡散現象のみでは除去できない大分子量の不要物質についてはろ過により排除を行う。透析療法の他、難治性の自己免疫疾患に対して多様な血液浄化療法が保険適応対象となっている。例えば、患者血液から白血球を除去することにより、潰瘍性大腸炎、クローン病、慢性関節リウマチなどの症例を劇的に改善することができる(特許文献2)。これらの血液浄化療法に使用する多様な血液浄化器は、上述した拡散、ろ過といった物質分離の特性の他、吸着性を利用して物質分離を行うものもある。
【0003】
血液浄化療法は、患者血液を体外に取り出し、この血液を血液浄化器で浄化した後、再び体内に戻すという治療の態様上、その治療時間は少なくとも1時間以上、通常は数時間、治療によっては数十時間を要する。特に、長時間の治療を要する血液浄化療法の例として、持続緩徐式血液浄化法が挙げられる(特許文献3)。持続緩徐式血液浄化法には、持続的血液ろ過法、持続的血液透析法、または持続的血液ろ過透析法などの各種の治療態様があり、救急・集中治療領域において、重篤な循環器系の合併症を有する腎疾患や多臓器不全等の治療に適用される。いずれも、「持続緩徐式」といわれる通り、通常、一回の治療に数日から長い場合は1週間以上の時間をかけながら、徐々に血液浄化が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−268257号公報
【特許文献2】特開2010−63761号公報
【特許文献3】特開2006−025813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、血液浄化治療を行う血液浄化装置は、透析液などの浄化液が貯留された浄化液バッグを有し、浄化液バッグは、装置の支柱に吊るされ、当該浄化液バッグから血液浄化器に浄化液が供給されて、血液浄化治療が行われている。よって、血液浄化治療中に、浄化液バッグが空になると、新しい浄化液バッグに交換する必要がある。
【0006】
上述のように血液浄化治療は、患者血液を体外に取り出し、この血液を血液浄化器で浄化した後、再び体内に戻すという血液浄化療法の原理上、その治療時間は少なくとも1時間以上、通常は数時間、治療によっては数十時間を要する。このため、一回の治療中に浄化液バッグを複数回交換する必要がある。特に、上述の持続緩徐式血液浄化療法では、数日から長い場合は1週間以上の時間をかけて治療を継続するため、治療途中に多数回の浄化液バッグの交換が必要になる。この結果、医師や看護師の負担が大きく、特に、夜間等の交換では負担が増す。また、夜間でも交換が可能なように看護師を常駐配置しなければならず、人件費が高くなり、病院経営における血液浄化治療の高コスト化の原因となっている。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、長時間の血液浄化治療における浄化液バッグの交換による医師や看護師の負担を軽減し、血液浄化治療の低コスト化を実現することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明は、体内から取り出された血液を血液浄化器に供給し、当該血液浄化器で浄化された血液を体内に戻す血液回路と、前記血液浄化器に血液の浄化液を供給し排出する浄化液回路とを有し、前記浄化液回路には、前記血液浄化器に供給する浄化液の浄化液バッグが設けられている、血液浄化装置と、前記浄化液を生成する浄化液生成装置と、前記浄化液生成装置で生成された浄化液を、前記血液浄化装置の浄化液バッグに補充するために、前記浄化液生成装置と前記血液浄化装置の浄化液回路とを接続する浄化液補充回路と、前記浄化液バッグの浄化液の液量が所定の閾値以下になったときに、前記浄化液生成装置の浄化液が前記浄化液補充回路を通じて前記浄化液バッグに補充されるように、前記血液浄化装置と前記浄化液生成装置との間で情報の通信を行う通信手段と、を有する、血液浄化システムである。
【0009】
本発明によれば、浄化液バッグを交換することなく自動で浄化液の補充を行うことができる。これにより、血液浄化治療における医師や看護師の負担を軽減し、血液浄化治療の低コスト化を実現できる。
【0010】
前記血液浄化システムにおいて、前記浄化液回路には、前記浄化液バッグの浄化液を前記血液浄化器に送るためのチューブポンプが設けられ、前記浄化液補充回路は、前記浄化液回路における前記浄化液バッグと前記チューブポンプとの間に接続されていてもよい。
【0011】
前記血液浄化装置は、前記浄化液バッグの浄化液の量を検出する浄化液検出部を有し、前記通信手段は、前記浄化液検出部により検出された浄化液バッグの浄化液の液量に基づいて、前記浄化液生成装置の浄化液が前記浄化液バッグに補充されるように、前記血液浄化装置と前記浄化液生成装置との間で情報の通信を行うものであってもよい。
【0012】
前記血液浄化システムは、前記浄化液回路に設けられ、前記血液浄化器から排出された浄化廃液を貯留する浄化廃液バッグと、前記浄化廃液バッグの浄化廃液を前記浄化液生成装置に回収するために、前記血液浄化装置の浄化液回路と前記浄化液生成装置とを接続する浄化廃液回収回路と、を有し、前記通信手段は、前記浄化廃液バッグの浄化廃液の液量が所定の閾値以上になったときに、前記浄化廃液バッグの浄化廃液が前記浄化廃液回収回路を通じて前記浄化液生成装置に回収されるように、前記血液浄化装置と前記浄化液生成装置との間で情報の通信を行うものであってもよい。
【0013】
前記浄化液回路には、前記血液浄化器から排出された浄化廃液を前記浄化廃液バッグに送るためのチューブポンプが設けられ、前記浄化廃液回収回路は、前記浄化液回路における前記浄化廃液バッグと前記チューブポンプとの間に接続されていてもよい。
【0014】
前記血液浄化装置は、前記浄化廃液バッグの浄化廃液の液量を検出する浄化廃液検出部を有し、前記通信手段は、前記浄化廃液検出部により検出された浄化廃液バッグの浄化廃液の液量に基づいて、前記浄化廃液バッグの浄化廃液が前記浄化液生成装置に回収されるように、前記血液浄化装置と前記浄化液生成装置との間で情報の通信を行うものであってもよい。
【0015】
前記血液浄化システムは、前記血液浄化装置に設けられ、補液バッグに貯留された補液を前記血液回路の血液中に供給するための補液回路と、前記浄化液生成装置から前記補液バッグに補液を補充するために、前記血液浄化装置の補液回路と前記浄化液生成装置とを接続する補液補充回路と、前記通信手段は、前記補液バッグの補液の液量が所定の閾値以下になったときに、前記補液補充回路を通じて前記補液バッグに補液が補充されるように、前記血液浄化装置と前記浄化液生成装置との間で情報の通信を行うものであってもよい。
【0016】
前記補液回路には、前記補液バッグの補液を前記血液回路に送るためのチューブポンプが設けられ、前記補液補充回路は、前記補液回路における前記補液バッグと前記チューブポンプとの間に接続されていてもよい。
【0017】
前記血液浄化装置は、前記補液バッグの補液の液量を検出する補液検出部を有し、前記通信手段は、前記補液検出部により検出された補液バッグの補液の液量に基づいて、前記浄化液生成装置から前記補液バッグに補液が補充されるように、前記血液浄化装置と前記浄化液生成装置との間で通信を行うものであってもよい。
【0018】
前記血液浄化装置は、前記浄化液回路の浄化液を補液として前記血液回路の血液中に供給するための補液回路をさらに有していてもよい。
【0019】
前記血液浄化装置と前記浄化液生成装置には、各々にキャスターが設けられており、
各々が独立して移動可能であってもよい。
【0020】
上述の血液浄化システムは、持続緩除式の血液浄化処理を行うものであってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、医師や看護師の負担を軽減できるので、血液浄化治療の低コスト化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】血液浄化システムの構成の概略を示す説明図である。
【図2】浄化廃液回収回路を有する血液浄化システムの構成の概略を示す説明図である。
【図3】補液補充回路を有する血液浄化システムの構成の概略を示す説明図である。
【図4】補液補充回路が浄化液回路に接続されている血液浄化システムの構成の概略を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態に係る血液浄化システムAの構成の概略を示す説明図である。
【0024】
血液浄化システムAは、血液浄化処理を行う血液浄化装置1と、血液浄化処理に用いる透析液などの浄化液を生成する浄化液生成装置2と、浄化液生成装置2で生成された浄化液を血液浄化装置1に補充するための浄化液補充回路3と、血液浄化装置1と浄化液生成装置2との間で情報を通信するための通信手段4とを有している。
【0025】
血液浄化装置1は、例えば体内から取り出された血液を血液浄化器10に供給し、当該血液浄化器10で浄化された血液を体内に戻すための血液回路11と、血液浄化器10に血液の浄化液を供給しその後排出する浄化液回路12と、血液回路11の血液中に補液を供給するための補液回路13と、血液浄化装置1の各種回路や装置の動作の制御を行う制御装置14を有している。
【0026】
血液回路11は、例えばチューブ状の流路であり、採血穿刺部20から血液浄化器10の接続される採血流路21と、血液浄化器10から返血穿刺部22に接続される返血流路23を有している。採血流路21は、流路のチューブを外側から扱いて液送するチューブポンプ30が設けられている。返血流路23には、例えば気泡を排出するためのドリップチャンバ31が設けられている。
【0027】
血液浄化器10は、例えば浄化膜としての中空糸膜40を有し、中空糸膜40の一次側41に血液が流れる。中空糸膜40の二次側42には、浄化液が流れる。
【0028】
浄化液回路12は、例えば浄化液バッグ50から血液浄化器10の二次側42に接続されたチューブ状の浄化液供給流路51と、血液浄化器10の二次側42から浄化廃液バッグ52に接続されたチューブ状の浄化廃液排出流路53を有している。浄化液バッグ50、浄化廃液バッグ52は、例えば装置内の図示しない支柱に吊下げられている。
【0029】
浄化液供給流路51には、チューブポンプ60が設けられ、浄化廃液排出流路53には、チューブポンプ61が設けられている。チューブポンプ60、61の駆動により、浄化液バッグ50の浄化液が浄化液供給流路51を通じて血液浄化器10の二次側42に供給され、当該血液浄化器10で一次側41から血液中の不要物質を取り入れた浄化廃液が浄化廃液排出流路53を通じて浄化廃液バッグ52に排出される。
【0030】
補液回路13は、例えば補液バッグ70から返血流路23に接続されている。補液回路13には、チューブポンプ71が設けられている。チューブポンプ71の駆動により、補液バッグ70の補液が補液回路13を通じて返血流路23に供給される。これにより、浄化後の血液に水分等の補液を補充できる。
【0031】
浄化液バッグ50には、浄化液検出部としての重量計80が設けられ、浄化液バッグ50内の液量を検出できる。当該重量計80による液量の検出結果は、制御装置14に出力される。
【0032】
制御装置14は、チューブポンプ30、60、61、71等の動作を制御して血液浄化処理を実行できる。また、制御装置14は、重量計80により浄化液バッグ50内の液量をモニタリングすることにより、浄化液バッグ50の液量が所定の下限閾値以下になったか否かを検出できる。
【0033】
浄化液生成装置2は、例えば浄化液の原料が貯留された例えば2つの原料タンク90、91と、原料に加える水などの溶媒が貯留された溶媒タンク92と、原料と溶媒を混合する混合タンク93と、原料タンク90、91や溶媒タンク92から原料や溶媒を混合タンク93に送るための浄化液生成回路94と、浄化液生成装置2の各種回路や装置を制御する制御装置95等を有している。
【0034】
例えば浄化液生成回路94には、バルブ96、97、98が設けられており、これらのバルブ96〜98を開放することにより、原料タンク90、91から混合タンク93への原料の供給、溶媒タンク92から混合タンク93への溶媒の供給を行うことができる。
【0035】
制御装置95は、例えばバルブ96〜98の開閉による浄化液の生成や生成の停止、後述のチューブポンプ100による血液浄化装置1への浄化液の補充や補充の停止を制御できる。
【0036】
浄化液補充回路3は、例えばチューブ状に形成され、浄化液生成装置2の混合タンク93から血液浄化装置1の浄化液供給流路51に接続されている。浄化液補充回路3は、例えば浄化液供給流路51のチューブポンプ60と浄化液バッグ50との間に接続されている。浄化液補充回路3には、チューブポンプ100が設けられている。チューブポンプ100は、例えば浄化液生成装置2に設けられている。血液浄化装置1と浄化液生成装置2が連結、離脱可能になるように、浄化液補充回路3は、いずれかの部分で接続、分離可能に構成されている。
【0037】
通信手段4は、例えば血液浄化装置1と浄化液生成装置2にそれぞれ、情報通信のインターフェイスとなる通信部110、111を有している。通信部110、111は、互いに有線、或いは無線により通信できる。有線の場合には、血液浄化装置1と浄化液生成装置2が連結、離脱可能になるように、情報線が通信部110、111間で連結、離脱できるようになっている。通信手段4は、浄化液バッグ50の浄化液の液量が所定の下限閾値以下になったときに、浄化液生成装置2の浄化液が浄化液補充回路3を通じて浄化液バッグ50に補充されるように、血液浄化装置1と浄化液生成装置2との間で信号のやり取りを行う。
【0038】
具体的には、血液浄化装置1の制御装置14が、重量計80による浄化液バッグ50の重量をモニタリングし、浄化液バッグ50の浄化液の液量が所定の下限閾値以下になったときに、当該浄化液の液量低下情報が制御装置14から通信部110に出力される。通信部110は、当該液量低下情報を浄化液生成装置2側の通信部111に送信し、通信部111は、当該情報を制御装置95に出力する。制御装置95は、当該液量低下情報に基づいて、チューブポンプ100を駆動させ、浄化液生成装置2から浄化液バッグ50への浄化液の補充を行う。また、浄化液バッグ50の浄化液の液量が所定の上限閾値になったときには、当該浄化液の液量上限情報が制御装置14から通信部110に出力される。通信部110は、当該液量上限情報を浄化液生成装置2側の通信部111に送信し、通信部111は、当該情報を制御装置95に出力する。制御装置95は、当該液量上限情報に基づいて、チューブポンプ100を停止させ、浄化液生成装置2から浄化液バッグ50への浄化液の補充を停止する。
【0039】
例えば血液浄化装置1と浄化液生成装置2には、各々にキャスター115が設けられ、各々が独立して移動できる。
【0040】
次に、以上のように構成された血液浄化システムAの動作の一例を説明する。持続緩除式の血液浄化処理において、チューブポンプ30、60、61、71が稼働する。これにより、患者の血液が、採血穿刺部20から採血流路21を通って血液浄化器10の一次側41に送られる。また、透析液である浄化液が浄化液バッグ50から浄化液供給流路51を通って血液浄化器10の二次側42に送られる。血液浄化器10では、浸透圧により、一次側41の血液中の不要物質が中空糸膜40を通過し、二次側42に流入して血液が浄化される。浄化された血液は、返血流路23を通って返血穿刺部22から患者に戻される。また、血液浄化器10の二次側42において不要物質を取り込んだ浄化廃液は、浄化廃液排出回路53を通って浄化廃液バッグ52に収容される。また、補液バッグ70からは、補液が補液回路13を通じて返血回路23の血液中に供給され、血液浄化器10で減少した分の血中の水分が補充される。
【0041】
血液浄化処理中、重量計80により浄化液バッグ50内に浄化液の液量がモニタリングされる。そして、浄化液バッグ50内の浄化液の液量が所定の下限閾値以下になると、その液量低下情報が通信部110から通信部111に送られる。浄化液の液量低下情報を受信した浄化液生成装置2では、チューブポンプ100が駆動し、混合タンク93の浄化液が浄化液供給流路51に送られる。浄化液供給流路51では、チューブポンプ60により血液浄化器10側への流れが制限されているため、浄化液供給流路51に流入した浄化液は、浄化液バッグ50内に流入する。なお、このとき、例えばチューブポンプ60は稼働し続けており、血液浄化処理が中断されない。そして、浄化液バッグ50内の浄化液の液量が所定の上限閾値になったときに、当該液量上限情報が通信部110から通信部111に送られ、チューブポンプ100が停止される。これにより、浄化液生成装置2から血液浄化装置1への浄化液の供給が停止され、浄化液バッグ50への浄化液の補充が終了する。
【0042】
本実施の形態によれば、血液浄化装置1に浄化液生成装置2を接続して、浄化液バッグ50を交換せずに自動で浄化液の補充を行うことができる。これにより、血液浄化治療中に人が浄化液バッグ50を交換する必要がなく、長時間の血液浄化治療における医師や看護師の負担を軽減し、血液浄化治療の低コスト化を実現できる。
【0043】
また、本実施の形態によれば、浄化液補充回路3が浄化液回路12における浄化液バッグ50とチューブポンプ60との間に接続されている。これにより、チューブポンプ60が浄化液回路12の血液浄化器10側への流れを制限するので、例えば浄化液補充回路3を浄化液バッグ50に直接接続しなくても浄化液回路12に接続して、浄化液を好適に補充できる。この結果、従来から用いられていた構造の浄化液バッグ50をそのまま使用できる。また、チューブポンプ60と浄化液バッグ50との間が閉鎖系になっているので、チューブポンプ60を稼働させ、所定量の浄化液を血液浄化器10に供給しながら、浄化液バッグ50に浄化液を補充することができる。したがって、血液浄化処理を中断せずに浄化液の補充を行うことができるので、血液浄化治療の時間を短縮し、患者への負担も低減できる。なお、浄化液補充回路3は、必ずしも浄化液回路12における浄化液バッグ50とチューブポンプ60との間に接続されている必要はなく、浄化液バッグ50に直接接続されていてもよい。また、血液浄化処理を一旦中断して浄化液の補充を行ってもよい。
【0044】
本実施の形態によれば、浄化液バッグ50に重量計80を設け、通信手段4が、重量計80により検出された浄化液バッグ50の浄化液の液量に基づいて、浄化液生成装置2の浄化液が浄化液バッグ50に補充されるように、血液浄化装置1と浄化液生成装置2との間で情報の通信を行うので、浄化液バッグ50への浄化液の補充を適切なタイミングで好適に行うことができる。
【0045】
血液浄化装置1と浄化液生成装置2には、各々にキャスター115が設けられており、各々が独立して移動可能であるので、血液浄化装置1と浄化液生成装置2を切り離して個別に移動させることができる。これにより、必要に応じて血液浄化装置1と浄化液生成装置2を着脱することができる。
【0046】
なお、浄化液生成装置2における浄化液の生成は、例えば混合タンク93の液量が低下したときに適宜行われてもよいし、浄化液バッグ80に浄化液を補充するときに行われてもよし、その両方であってもよい。
【0047】
以上の実施の形態において、図2に示すように血液浄化システムAが、浄化廃液バッグ52の浄化廃液を浄化液生成装置2に回収するために、血液浄化装置1の浄化液回路12と浄化液生成装置2とを接続する浄化廃液回収回路120をさらに有していてもよい。浄化廃液回収回路120は、例えば浄化液生成装置2に設けられた浄化廃液タンク121から浄化廃液排出流路53に接続されている。浄化廃液回収回路120は、浄化廃液バッグ52とチューブポンプ61との間に接続されている。浄化廃液回収回路120には、チューブポンプ122が設けられている。浄化廃液バッグ52には、バッグ内の浄化廃液の液量を検出する浄化廃液検出部としての重量計123が設けられている。重量計123による計測結果は、制御装置14に出力される。
【0048】
そして、血液浄化処理中、重量計123により浄化廃液バッグ52内の浄化廃液の液量がモニタリングされる。浄化廃液バッグ52内の浄化廃液の液量が所定の上限閾値以上になると、その液量増加情報が、通信部110から通信部111に送られる。浄化廃液の液量増加情報を受信した浄化液生成装置2では、チューブポンプ122が稼働され、浄化廃液バッグ52の浄化廃液が浄化廃液排出流路53、浄化廃液回収回路120を通じて浄化廃液タンク121に送られる。なお、このとき、チューブポンプ61は稼働し続けており、例えば血液浄化処理が中断されない。そして、浄化廃液バッグ52内の浄化廃液の液量が所定の下限閾値になったときに、当該液量下限情報が通信部110から通信部111に送られ、チューブポンプ122が停止される。これにより、血液浄化装置1から浄化液生成装置2への浄化廃液の回収が停止される。
【0049】
かかる例によれば、浄化廃液バッグ52の浄化廃液の回収を自動で行うことができるので、浄化廃液バッグ50を交換する必要がなく、長時間の血液浄化治療における医師や看護師の負担を軽減できる。
【0050】
また、浄化廃液回収回路120が、浄化液回路12における浄化廃液バッグ52とチューブポンプ61との間に接続されている。これにより、チューブポンプ61が浄化廃液排出回路53の浄化廃液バッグ52側への流れを規制するので、浄化廃液回収回路120を浄化廃液バッグ52に直接接続しなくても浄化廃液排出回路53に接続して、浄化廃液を好適に回収できる。この結果、従来から用いられていた構造の浄化廃液バッグ52をそのまま使用できる。また、チューブポンプ61と浄化廃液バッグ52との間が閉鎖系になっているので、チューブポンプ61を稼働させ、浄化廃液を血液浄化器10から排出しながら、浄化廃液バッグ52から浄化廃液を回収できる。したがって、血液浄化処理を中断せずに洗浄廃液の回収を行うことができるので、血液浄化治療の時間を短縮し、患者への負担も低減できる。なお、浄化廃液回収回路120は、必ずしも浄化液回路12における浄化廃液バッグ52とチューブポンプ61との間に接続されている必要はなく、浄化廃液バッグ52に直接接続されていてもよい。また、血液浄化処理を一旦中断して浄化廃液の回収を行ってもよい。
【0051】
また、本実施の形態によれば、浄化廃液バッグ52に重量計123を設け、通信手段4が、重量計123により検出された浄化廃液バッグ52の浄化廃液の液量に基づいて、浄化廃液バッグ52の浄化廃液が浄化液生成装置2に回収されるように、血液浄化装置1と浄化液生成装置2との間で情報の通信を行うので、浄化廃液液バッグ52からの浄化廃液の回収を適切なタイミングで好適に行うことができる。
【0052】
なお、浄化液生成装置2は、浄化廃液タンク121を必ずしも備えている必要はなく、浄化廃液回収回路120から外部の排液ラインに接続できるようになっていてもよい。かかる場合、浄化液生成装置2に回収された浄化廃液は、外部の排液ラインに送られて排液される。
【0053】
以上の実施の形態において、例えば図3に示すように血液浄化システムAが、浄化液生成装置2から血液浄化装置1の補液バッグ70に補液を補充するために、補液回路13と浄化液生成装置2とを接続する補液補充回路130を有していてもよい。補液補充回路130は、例えば浄化液生成装置2に設けられた補液タンク131から補液回路13に接続されている。補液補充回路130は、補液バッグ70とチューブポンプ71との間に接続されている。補液補充回路130には、チューブポンプ132が設けられている。補液バッグ71には、バッグ内の補液の液量を検出する補液検出部としての重量計133が設けられている。重量計133による計測結果は、制御装置14に出力される。
【0054】
そして、血液浄化処理中、重量計133により補液バッグ70内の補液の液量がモニタリングされる。補液バッグ70内の補液の液量が所定の下限閾値以下になると、その液量低下情報が、通信部110から通信部111側に送られる。補液の液量低下情報を受信した浄化液生成装置2では、チューブポンプ132が稼働され、補液タンク131の補液が補液補充回路130及び補液回路13を通じて補液バッグ70に送られる。なお、このとき、例えばチューブポンプ71は稼働し続けており、血液浄化処理が中断されない。そして、補液バッグ70内の補液の液量が所定の上限閾値になったときに、当該液量上限情報が通信部110から通信部111に送られ、チューブポンプ132が停止される。これにより、浄化液生成装置2から血液浄化装置1への補液の供給が停止され、補液バッグ70への補液の補充が停止する。
【0055】
かかる例によれば、補液バッグ70の補液の補充を自動で行うことができるので、補液バッグ70を交換する必要がなく、長時間の血液浄化治療における医師や看護師の負担を軽減できる。
【0056】
また、補液補充回路130は、補液回路13における補液バッグ70とチューブポンプ71との間に接続されている。これにより、チューブポンプ71が補液回路13の血液回路11側の流れを制限するので、補液補充回路130を補液バッグ70に直接接続しなくても補液回路13に接続して、補液を好適に補充できる。この結果、従来から用いられていた構造の補液バッグ70をそのまま使用できる。また、チューブポンプ71と補液バッグ70との間が閉鎖系になっているので、チューブポンプ71を稼働させ、補液を血液回路11に供給しながら、補液バッグ70に補液を補充できる。したがって、血液浄化処理を中断せずに補液を補充することができるので、血液浄化治療の時間を短縮し、患者への負担も低減できる。なお、補液補充回路130は、必ずしも補液回路13における補液バッグ70とチューブポンプ71との間に接続されている必要はなく、補液バッグ70に直接接続されていてもよい。また、血液浄化処理を一旦中断して補液の補充を行ってもよい。
【0057】
本実施の形態によれば、補液バッグ70に重量計133を設け、通信手段4が、重量計133により検出された補液バッグ70の補液の液量に基づいて、浄化液生成装置2から補液バッグ70に補液が補充されるように、血液浄化装置1と浄化液生成装置2との間で通信を行うので、補液バッグ70への補液の補充を適切なタイミングで好適に行うことができる。
【0058】
なお、浄化液生成装置2は、補液タンク131を必ずしも備えている必要はなく、例えば浄化液を補液として用いることができる場合には、補液補充回路130が混合タンク93に接続されていてもよい。
【0059】
図4に示すように補液回路13が、浄化液回路12の浄化液を補液として血液回路11の血液中に供給するようにしてもよい。かかる場合、補液回路13は、浄化液回路12のチューブポンプ61と浄化液バッグ50との間の浄化液供給流路51から、血液回路11の返血流路23に接続されている。なおこの場合、補液回路13には、個別の補液バッグが必要ない。血液浄化処理時には、チューブポンプ71の駆動により、補液としての浄化液が浄化液バッグ50から浄化液供給流路51、補液回路13を通じて返血流路23に送られて、血液中に補液が供給される。また、上述のように浄化液バッグ50の浄化液が減った場合に、浄化液生成装置2から浄化液バッグ50に浄化液を補充することにより、補液の補充を行うことができる。したがって、補液の補充を自動で行うことができる。
【0060】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0061】
例えば上記実施の形態では、浄化液検出部、浄化廃液検出部、補液検出部として重量計が用いられていたが、これに限られず、空検出器、液面のレベルセンサなど他の検出器を用いてもよい。また、上記実施の形態において、浄化液検出部や浄化廃液検出部として個別の重量計を用いていたが、同じ重量計を用いてもよい。かかる場合、例えば浄化液バッグが空になったことを検出する空検出器や、浄化液バッグの液量がある値まで減少したことを検出する液面のレベルセンサ等の検出器を併用する。そして、この検出器により浄化液バッグの液量を把握し、この浄化液バッグの液量と、重量計による総重量から浄化廃液バッグの液量を算出する。或いは、浄化廃液バッグが一杯になったことをポンプ回転数から換算して算出する算出手段や、浄化廃液バッグの液量がある値まで増加したことを検出する液面レベルセンサの検出器を併用する。そして、算出手段や検出器により浄化廃液バッグの液量を把握し、この浄化廃液バッグの液量と、重量計による総重量から浄化液バッグの液量を算出する。
【0062】
以上の実施の形態で記載したポンプ100、122、132は、チューブポンプに限られず、プランジャーポンプ(ピストン方式)などの他の定量ポンプであってもよい。また、チューブポンプ100、122は、二本のチューブを扱いて送液するダブルチューブポンプであってもよい。また、上記実施の形態における血液浄化装置1、浄化液生成装置2の回路構成は、これらに限られない。また、通信手段4の構成も上記実施の形態のものに限られず、血液浄化装置1と浄化液生成装置2との間で通信できるものであれば他の構成のものであってもよい。また、以上の実施の形態は、持続的血液透析法を行う血液浄化システム1であったが、浄化液を用いるものであれば、持続的血液ろ過法、持続的血液ろ過透析法等の各種持続緩徐式血液浄化法を行うものに本発明は適用できる。また、持続緩除式血液浄化法以外の血液浄化処理にも本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0063】
A 血液浄化システム
1 血液浄化装置
2 浄化液生成装置
3 浄化液補充回路
4 通信手段
10 血液浄化器
11 血液回路
12 浄化液回路
13 補液回路
14 制御装置
20 採血穿刺部
21 採血流路
22 返血穿刺部
23 返血流路
30 チューブポンプ
31 ドリップチャンバ
40 中空糸膜
41 一次側
42 二次側
50 浄化液バッグ
51 浄化液供給流路
52 浄化廃液バッグ
53 浄化廃液排出流路
60 チューブポンプ
61 チューブポンプ
70 補液バッグ
71 チューブポンプ
80 重量計
90、91 原料タンク
92 溶媒タンク
93 混合タンク
94 浄化液生成回路
95 制御装置
96、97、98 バルブ
100 チューブポンプ
110、111 通信部
115 キャスター
120 浄化廃液回収回路
121 浄化廃液タンク
122 チューブポンプ
123 重量計
130 補液補充回路
131 補液タンク
132 チューブポンプ
133 重量計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内から取り出された血液を血液浄化器に供給し、当該血液浄化器で浄化された血液を体内に戻す血液回路と、前記血液浄化器に血液の浄化液を供給し排出する浄化液回路とを有し、前記浄化液回路には、前記血液浄化器に供給する浄化液の浄化液バッグが設けられている、血液浄化装置と、
前記浄化液を生成する浄化液生成装置と、
前記浄化液生成装置で生成された浄化液を、前記血液浄化装置の浄化液バッグに補充するために、前記浄化液生成装置と前記血液浄化装置の浄化液回路とを接続する浄化液補充回路と、
前記浄化液バッグの浄化液の液量が所定の閾値以下になったときに、前記浄化液生成装置の浄化液が前記浄化液補充回路を通じて前記浄化液バッグに補充されるように、前記血液浄化装置と前記浄化液生成装置との間で情報の通信を行う通信手段と、を有する、血液浄化システム。
【請求項2】
前記浄化液回路には、前記浄化液バッグの浄化液を前記血液浄化器に送るためのチューブポンプが設けられ、
前記浄化液補充回路は、前記浄化液回路における前記浄化液バッグと前記チューブポンプとの間に接続されている、請求項1に記載の血液浄化システム。
【請求項3】
前記血液浄化装置は、前記浄化液バッグの浄化液の量を検出する浄化液検出部を有し、
前記通信手段は、前記浄化液検出部により検出された浄化液バッグの浄化液の液量に基づいて、前記浄化液生成装置の浄化液が前記浄化液バッグに補充されるように、前記血液浄化装置と前記浄化液生成装置との間で情報の通信を行う、請求項1又は2に記載の血液浄化システム。
【請求項4】
前記浄化液回路に設けられ、前記血液浄化器から排出された浄化廃液を貯留する浄化廃液バッグと、
前記浄化廃液バッグの浄化廃液を前記浄化液生成装置に回収するために、前記血液浄化装置の浄化液回路と前記浄化液生成装置とを接続する浄化廃液回収回路と、を有し、
前記通信手段は、前記浄化廃液バッグの浄化廃液の液量が所定の閾値以上になったときに、前記浄化廃液バッグの浄化廃液が前記浄化廃液回収回路を通じて前記浄化液生成装置に回収されるように、前記血液浄化装置と前記浄化液生成装置との間で情報の通信を行う、請求項1〜3のいずれかに記載の血液浄化システム。
【請求項5】
前記浄化液回路には、前記血液浄化器から排出された浄化廃液を前記浄化廃液バッグに送るためのチューブポンプが設けられ、
前記浄化廃液回収回路は、前記浄化液回路における前記浄化廃液バッグと前記チューブポンプとの間に接続されている、請求項4に記載の血液浄化システム。
【請求項6】
前記血液浄化装置は、前記浄化廃液バッグの浄化廃液の液量を検出する浄化廃液検出部を有し、
前記通信手段は、前記浄化廃液検出部により検出された浄化廃液バッグの浄化廃液の液量に基づいて、前記浄化廃液バッグの浄化廃液が前記浄化液生成装置に回収されるように、前記血液浄化装置と前記浄化液生成装置との間で情報の通信を行う、請求項4又は5に記載の血液浄化システム。
【請求項7】
前記血液浄化装置に設けられ、補液バッグに貯留された補液を前記血液回路の血液中に供給するための補液回路と、
前記浄化液生成装置から前記補液バッグに補液を補充するために、前記血液浄化装置の補液回路と前記浄化液生成装置とを接続する補液補充回路と、
前記通信手段は、前記補液バッグの補液の液量が所定の閾値以下になったときに、前記補液補充回路を通じて前記補液バッグに補液が補充されるように、前記血液浄化装置と前記浄化液生成装置との間で情報の通信を行う、請求項1〜6のいずれかに記載の血液浄化システム。
【請求項8】
前記補液回路には、前記補液バッグの補液を前記血液回路に送るためのチューブポンプが設けられ、
前記補液補充回路は、前記補液回路における前記補液バッグと前記チューブポンプとの間に接続されている、請求項1に記載の血液浄化システム。
【請求項9】
前記血液浄化装置は、前記補液バッグの補液の液量を検出する補液検出部を有し、
前記通信手段は、前記補液検出部により検出された補液バッグの補液の液量に基づいて、前記浄化液生成装置から前記補液バッグに補液が補充されるように、前記血液浄化装置と前記浄化液生成装置との間で通信を行う、請求項7又は8に記載の血液浄化システム。
【請求項10】
前記血液浄化装置は、前記浄化液回路の浄化液を補液として前記血液回路の血液中に供給するための補液回路をさらに有する、請求項1〜6のいずれかに記載の血液浄化システム。
【請求項11】
前記血液浄化装置と前記浄化液生成装置には、各々にキャスターが設けられており、
各々が独立して移動可能である、請求項1〜10のいずれかに記載の血液浄化システム。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の血液浄化システムであって、
持続緩除式の血液浄化処理を行う血液浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−200275(P2012−200275A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64609(P2011−64609)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(507365204)旭化成メディカル株式会社 (65)
【Fターム(参考)】