説明

血液浄化装置およびその方法

【課題】
血液抗凝固剤を低減可能な血液浄化装置およびその方法を提供する。
【解決手段】
本発明は、血液を抜き出して、浄化後に返血する血液浄化装置1において、血液循環回路2に、血液を透析して老廃物を低減すると共に、外部から透析液を供給する血液浄化器20と、血液循環回路2中の血液を輸送する血液ポンプ30と、血液の凝固を抑制するための血液抗凝固剤62を血液中に混入させる抗凝固剤注入装置60とを少なくとも備え、血液浄化器20を、血液ポンプ30の上流側の陰圧下に配置する血液浄化装置1に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液を浄化する血液浄化装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液透析は、腎臓の血液浄化機能を人工的に行う方法として広く知られている。2007年の世界の血液透析患者は、およそ200万人にのぼるという報告があり、年々増加傾向にある。血液透析は、動脈から取り出した血液を、中空糸の集合体を備えたダイアライザに通して、血液内の老廃物を除去し、静脈に戻す操作を連続的に行う方法である。腎機能障害を持つ患者は、週に2,3回、通院して、所定時間、血液透析の治療を受ける必要がある。
【0003】
図8は、典型的な血液浄化装置の一部の構成を示す図である。血液浄化装置200は、前腕Pの動・静脈シャント(動脈と静脈とを手術によりつなげた部位)から動脈側ブラッドアクセス210を通じて取り出した血液を、血液ポンプ220、動脈側エアトラップチャンバー230、ダイアライザ240、静脈側エアトラップチャンバー250の順路で連続的に送り、静脈側ブラッドアクセス260を通じて、前腕Pの静脈に戻す回路構成を有する。動脈側ブラッドアクセス210および静脈側ブラッドアクセス260は、それぞれ、穿刺針などによって血液を取り出しおよび戻す箇所である。血液ポンプ220は、動・静脈シャントから血液を吸引して(矢印A)、ダイアライザ240へ供給し、静脈に戻す(矢印B)ためのポンプであり、血液透析時には、矢印Cの方向にローラーを回転させる。動脈側エアトラップチャンバー230は、動脈側血液回路内の空気や血液凝固塊をダイアライザ240に入れないようにするためのものであり、静脈側エアトラップチャンバー250は、血液回路およびダイアライザ240内の空気や血液凝固塊を患者の体内に入れないようにするためのものである。ダイアライザ240は、多数の中空糸を有し、透析液を灌流させて、中空糸内部に流入する血液から老廃物を除去する機能を持つ。透析液は、注入ライン241から注入され(矢印D)、ダイアライザ240内を通って排出ライン242から出る(矢印E)。
【0004】
動脈側ブラッドアクセス210と血液ポンプ220との間には、別のラインを分岐させて生理食塩水211を入れた生理食塩水用バッグ212をつなげる他、陰圧検出用ピロー213が配置されている。生理食塩水211は、血液透析前に、血液回路内の洗浄や空気の除去を目的として使用される。血液透析中、生理食塩水211の供給ラインは、鉗子214等によって閉じられている。陰圧検出用ピロー213は、血液ポンプ220の動作中に、血液ポンプ220の上流側が陰圧になり過ぎるとつぶれ、医療スタッフによる目視で過度の陰圧であるかどうかを確認するための器具である。また、血液ポンプ220と動脈側エアトラップチャンバー230との間には、抗凝固剤注入装置225が接続されている。抗凝固剤注入装置225は、血液抗凝固剤(ヘパリン等)226を入れたシリンジ227を備えており、モータ等の駆動手段を利用してシリンジ227のピストン部分を駆動し(矢印F)、シリンジ227内の血液抗凝固剤226を血液に注入する機構を備える。血液は、通常、大気に触れると、約10分で凝固する。血液が凝固すると、ダイアライザ240内の中空糸が閉塞して透析効率が低下する。そして、凝固の波及度によっては、血液透析治療を中断しなければならない。かかる血液の凝固を有効に防止するため、血液抗凝固剤226が血液内に注入される。上述の血液浄化装置200に代表される血液透析装置は、例えば、特許文献1,2にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,042,784号公報
【特許文献2】米国特許第7,537,688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
血液抗凝固剤226は、患者に対して決して安全な薬剤ではなく、患者に、出血の増大や長期間の使用による脂質代謝異常などの合併症を誘発する。血液透析時において、血液は、一般的に、約200ml/minの流速で血液浄化装置200内を巡る。血液浄化装置200内の血液ルートの総容量は、およそ130〜300mlである。このことから、理論的には、血液は、長くても1分30秒で血液浄化装置200の血液回路を経て体内に戻る計算となり、血液が体外に存在する時間は、凝固に要する10分に比して極めて短い。
【0007】
しかし、血液浄化装置200の血液輸送経路には、血液が偏流あるいは滞留する多くの箇所が存在する。最も血液の偏流あるいは滞留が起きやすい箇所は、ダイアライザ240である。ダイアライザ240は、その内部に、内径約200ミクロンの中空糸を多数備えており、その中に流入してくる血液にとって大きな抵抗となる箇所である。また、動脈側エアトラップチャンバー230および静脈側エアトラップチャンバー250は、血液と空気が接触する箇所であることから、血液の凝固が発生しやすい箇所である。血液の凝固塊をダイアライザ240あるいは患者の体内に流入するのを防止するため、動脈側エアトラップチャンバー230および静脈側エアトラップチャンバー250は、通常、図8に示すように、各下流底部にメッシュ231およびメッシュ251を備える。これらメッシュ231,251は、大きな血液凝固塊をトラップするには適しているものの、同時に、血液の流れを淀ませる一因にもなっている。この結果、動脈側エアトラップチャンバー230および静脈側エアトラップチャンバー250は、ダイアライザ240に次いで、血液の凝固が起きやすい箇所となっており、メッシュ231,251を通過した微細な血液凝固塊が、ダイアライザ240内および患者の体内に運ばれる危険性がある。加えて、陰圧検出用ピロー213内の内壁、血液ポンプ220によって扱かれるチューブの内壁などでも、血液の偏流あるいは滞留が生じやすい。このように、血液浄化装置200内には、血液が偏流あるいは滞留する多くの箇所が潜在している。かかる理由から、たとえ短時間であっても、血液が血液浄化装置200内にて凝固する環境が整っており、血液凝固を確実に防止するためには、患者の健康に悪影響を及ぼすリスクがあっても、過剰な血液抗凝固剤226を血液に混入させているのが現状である。
【0008】
腎機能障害を持つ患者に対して血液透析を始めた当初は、患者の余命を精々1〜2年程度長くできるに留まっていたが、現在では、血液透析をはじめとする医療技術の進歩により、血液透析を行うことによって、10年、20年あるいはそれ以上の長期間にわたって患者を延命できるようになってきた。このような状況下では、血液抗凝固剤226を長年使用することによる合併症の発生リスクを無視できなくなり、血液抗凝固剤226を極力減らす必要性が生じてきた。その一方で、血液抗凝固剤226を減らすと、血液凝固の抑制が難しくなり、ダイアライザ240の透析効率が低下するという本質的な問題が生じる。したがって、現在使用されている上述のような血液浄化装置200の構成では、合併症のリスクを抱えながらも、血液抗凝固剤226を減らすことができないのが現状である。
【0009】
本発明は、かかる問題を解消すべくなされたものであって、血液抗凝固剤を低減可能な血液浄化装置およびその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の血液浄化装置の一実施形態は、血液を抜き出して、浄化後に返血する血液浄化装置において、血液循環回路に、血液を透析して老廃物を低減すると共に、外部から透析液を供給する血液浄化器と、血液循環回路中の血液を輸送する血液ポンプと、血液の凝固を抑制するための血液抗凝固剤を血液中に混入させる抗凝固剤注入装置とを少なくとも備え、血液浄化器を、血液ポンプの上流側の陰圧下に配置した構成を有する。
【0011】
本発明の血液浄化装置の別の実施形態は、血液浄化器における透析液の供給ライン若しくは排出ラインから分岐した位置に、血液浄化器内に流入する血液量を変動させる血液量変動装置を、さらに備え、当該血液量変動装置により、その内部から前記血液浄化器に液体を流入させる流入動作と、血液浄化器から当該血液量変動装置の内部に液体を引き込む引込動作とを繰り返し行うこともできる。
【0012】
本発明の血液浄化装置の別の実施形態は、さらに、上述の引込動作によって血液浄化器から液体を引き込む引込速度を、流入動作によって血液浄化器に液体を流入させる流入速度よりも小さくすることもできる。
【0013】
本発明の血液浄化装置の別の実施形態は、さらに、血液浄化器に液体を流入させる流入速度を、血液ポンプによって血液を送る速度以下とすることもできる。
【0014】
本発明の血液浄化装置の別の実施形態は、血液浄化器に液体を流入させる流入速度を、血液ポンプによって血液を送る速度より30ml/min以下の範囲で大きくすることもできる。
【0015】
本発明の血液浄化方法の一実施形態は、血液循環回路に、血液を透析して老廃物を低減すると共に、外部から透析液を供給する血液浄化器と、血液循環回路中の血液を輸送する血液ポンプと、血液の凝固を抑制するための血液抗凝固剤を血液中に混入させる抗凝固剤注入装置とを少なくとも備えて血液を浄化する方法において、血液浄化器を、血液ポンプの上流側の陰圧下に配置して使用する血液浄化方法である。
【0016】
本発明の血液浄化方法の別の実施形態は、血液浄化器における透析液の供給ライン若しくは排出ラインから分岐した位置に、血液浄化器内に流入する血液量を変動させる血液量変動装置をさらに備えて血液を浄化する方法において、当該血液量変動装置により、その内部から前記血液浄化器に液体を流入させる流入動作と、血液浄化器から当該血液量変動装置の内部に液体を引き込む引込動作とを繰り返し行いながら、血液の浄化を行うこともできる。
【0017】
本発明の血液浄化方法の別の実施形態は、さらに、上述の引込動作によって血液浄化器から液体を引き込む引込速度を、流入動作によって血液浄化器に液体を流入させる流入速度よりも小さくすることもできる。
【0018】
本発明の血液浄化方法の別の実施形態は、さらに、血液浄化器に液体を流入させる流入速度を、血液ポンプによって血液を送る速度以下とすることもできる。
【0019】
本発明の血液浄化方法の別の実施形態は、血液浄化器に液体を流入させる流入速度を、血液ポンプによって血液を送る速度より30ml/min以下の範囲で大きくすることもできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、血液抗凝固剤を低減しても血液浄化機能を高く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る血液浄化装置の主要部の構成を示す。
【図2】図2は、図1に示すダイアライザの内部に配置される中空糸の膜内外の物質の交換状況を模式的に示す。
【図3】図3は、図1に示すダイアライザと、それと接続される透析液供給装置とを示す。
【図4】図4は、第二の実施の形態に係る血液浄化装置に接続する血液量変動装置の必要性を説明するための図である。
【図5】図5は、第二の実施の形態に係る血液浄化装置の主要部の構成を示す。
【図6】図6は、図5に示す血液浄化装置の血液量変動装置とダイアライザとの間の液体の入出流速の経時変化の一例を示すグラフである。
【図7】図7は、図6に示す入出流速の経時変化を実行したときに、ダイアライザに流入する血液流速の経時変化の一例を示すグラフである。
【図8】図8は、従来の血液浄化装置の主要部の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の血液浄化装置および血液浄化方法の各実施の形態について説明する。
【0023】
(1.第一の実施の形態)
【0024】
図1は、本発明の第一の実施の形態に係る血液浄化装置の主要部の構成を示す。
【0025】
本発明の第一の実施の形態に係る血液浄化装置1は、抜血口となる動脈側ブラッドアクセス10から矢印A方向に血液を抜いた後、浄化を行い、返血口となる静脈側ブラッドアクセス50に対して矢印B方向に浄化後の血液を戻す血液循環回路2を備える。血液浄化装置1の血液循環回路2は、血液の透析を行う血液浄化器の一例であるダイアライザ20と、血液を輸送するための血液ポンプの一例であるローラーポンプ30と、血液の凝固を抑制するための血液抗凝固剤62を血液中に混入させる抗凝固剤注入装置60とを少なくとも備え、好適には、血液中の空気や血液凝固塊を除去するための空気除去装置40を、さらに備える。ダイアライザ20は、ローラーポンプ30の上流側にあって、陰圧下にて血液の透析動作を行うように、配置される。
【0026】
血液浄化装置1のさらなる詳細な構成は、次の通りである。血液浄化装置1は、動脈側ブラッドアクセス10から静脈側ブラッドアクセス50に向かって、順に、ダイアライザ20、ローラーポンプ30、空気除去装置40を接続し、動脈側ブラッドアクセス10とダイアライザ20との間に分岐管16を介して、抗凝固剤注入装置60を配置する。動脈側ブラッドアクセス10と分岐管16との間の流路15、分岐管16とダイアライザ20の血液流入口との間の流路17、ダイアライザ20の血液排出口と空気除去装置40との間の流路35および空気除去装置40と静脈側ブラッドアクセス50との間の流路45は、塩化ビニル製の軟質チューブにて、好適に構成される。ローラーポンプ30は、流路35の途中にて、流路35の周囲を挟持するように配置される。
【0027】
次に、血液循環回路2に配置される各装置について説明する。
【0028】
1.ブラッドアクセス
動脈側ブラッドアクセス10は、患者の体の一部(好ましくは、前腕)Pの動脈と静脈とを手術にてつなげた動・静脈シャントと称する部分に穿刺針を刺して形成される抜血口である。静脈側ブラッドアクセス50は、前腕Pの静脈に穿刺針を刺して形成される返血口である。
【0029】
2.ダイアライザ
図2は、図1に示すダイアライザの内部に配置される中空糸の膜内外の物質の交換状況を模式的に示す。図3は、図1に示すダイアライザと、それと接続される透析液供給装置とを示す。
【0030】
ダイアライザ20は、その中心部分に多くの中空糸70を集積させて形成される血液流路と、血液流路の外側に形成される透析液流路とを備える。図2に拡大して示す1本の中空糸70は、内径約200μm、膜厚15〜45μmの透析膜であり、その透析膜に多くの細孔71を有する。ダイアライザ20内に流入した血液中の老廃物82は、中空糸70の内部から透析膜の細孔71を通じて透析液流路に排出される。一方、細孔71より大きな血球80やタンパク質81等は、細孔71から排出されない。透析液流路には、透析液が存在し、老廃物82は、透析液によってダイアライザ20の外に排出される。ダイアライザ20の透析液流路は、図1に示すように、透析液流入路21と透析液排出路22とを接続している。
【0031】
図3に示すように、ダイアライザ20の外部に配置される透析液供給装置90から供給される透析液は、矢印Dで示すように透析液流入路21からダイアライザ20の透析液流路に入り、矢印Eで示すように透析液排出路22から排出される。この実施の形態では、図2に示すように、透析液流路における透析液の流れる方向(矢印Iの方向)は、血液流路の血液の流れる方向(矢印Hの方向)と逆方向であるが、同方向とすることもできる。このように、ダイアライザ20およびこれに接続される透析液供給装置90により、血液中の老廃物82を除去して血液の浄化を行うことができる。なお、透析液の流路の所定箇所(この実施の形態では、透析液排出路22)には、圧力計91が接続されている。圧力計91により、透析液流入路21、透析液排出路22、透析液供給装置90内の透析液流路内、あるいはダイアライザ20内の圧力をモニタすることができる。
【0032】
3.ローラーポンプ
ローラーポンプ30は、流路35の途中に配置され、流路35の一部を挟持して矢印C方向に回転部を回転することにより、流路35を扱く動作を行う。この結果、ローラーポンプ30を基準としてダイアライザ20の側を陰圧に、空気除去装置40の側を陽圧にして、血液を動脈側ブラッドアクセス10から静脈側ブラッドアクセス50に向かって強制的に輸送することができる。
【0033】
4.空気除去装置
空気除去装置40は、血液中の空気および血液凝固塊を除去する機能を有し、血液循環回路2のいずれかの箇所で血液中に空気および血液凝固塊が混入した場合でも、患者に返血する前に、それらを確実に取り除くことができる。血管内に空気が混入すると患者の生命が脅かされるため、安全上の措置をとる必要からである。空気除去装置40は、その内部の下層に血液を、上層に空気層を有する。空気除去装置40は、当該空気層の上方に、シリンジ(図示省略)と連接される接続管41を備える。このため、空気除去装置40の内部に入った血液に空気が含まれていても、その空気は、空気層によりトラップされ、血液と分離される。また、空気除去装置40の下方は、メッシュ42を経由して流路45に接続している。メッシュ42は、血液凝固塊を除去するためのフィルタに相当する部分である。血液循環回路2中のいずれかの箇所、特に空気と血液とが接触する機会にもなる空気除去装置40で形成される血液凝固塊を、流路45以後の下流側に輸送するのを抑制する必要からである。
【0034】
5.抗凝固剤注入装置
抗凝固剤注入装置60は、血液抗凝固剤(好適には、ヘパリン)62を入れたシリンジ61と、シリンジ61のピストン側を駆動する駆動装置(例えば、モータ)とを備える。駆動装置は、シリンジ61のピストンを矢印Fの方向に駆動して、血液抗凝固剤62を血液循環回路2内に注入することができる。血液抗凝固剤62は、血液循環回路2内(特に、ダイアライザ20内)での血液凝固を抑制し、血液浄化を効果的に行うために必要な薬剤である一方、長期間の血液浄化治療を行う患者に対して合併症等のリスクをもたらす。このため、血液抗凝固剤62は、できるだけ少なくするのが好ましい。この実施の形態では、血液抗凝固剤62の使用量は、通常よりも20〜30%程度少なくすることができる。
【0035】
次に、ダイアライザ20をローラーポンプ30の上流側であって陰圧下に配置することにより奏する特有の効果について説明する。
【0036】
A.血液抗凝固剤の低減
図1に示すように、ダイアライザ20よりも上流側には、分岐管16から先に抗凝固剤注入装置60を接続するのみで、他の器具あるいは装置を接続していない。このため、ダイアライザ20の上流側で血液の偏流あるいは淀みが極めて生じにくい。この結果、特にダイアライザ20の上流側で血液凝固が生じにくく、ダイアライザ20の中空糸70での閉塞が起きにくい。また、ダイアライザ20の下流側には、ローラーポンプ30と、空気除去装置40とを接続しているだけなので、図1に示す血液浄化装置1は、図8に示す従来の血液浄化装置200に比べ、シンプルな構成である。このため、ダイアライザ20の下流側でも血液凝固が生じにくくなっている。したがって、血液抗凝固剤62は、従来よりも少なくて済む。具体的には、血液抗凝固剤62の使用量は、従来よりも20〜30%少なくて済む。
【0037】
B.ファウリング現象の抑制
ファウリング現象とは、中空糸70の透析膜に分布する細孔71が、血液中のたんぱく質成分によって目詰まりを起こす現象をいう。ファウリング現象が生じると、血液中の老廃物82や水分の除去が効果的に行われなくなり、血液浄化機能の低下につながる。図1に示すように、ダイアライザ20の下流側にローラーポンプ30を配置して、陰圧下でダイアライザ20を使用すると、従来と異なり、血液は、上流側からダイアライザ20内に吐出されるのではなく、下流側から吸引される。この結果、血液が中空糸70の内部から細孔71を介して外部に流れる力が抑制され、ファウリング現象を軽減でき、細孔71の目詰まりが生じにくくなる。よって、血液浄化効率を高く維持できる。
【0038】
C.老廃物の効果的な除去作用
血液中には、アルブミンというたんぱく質が存在している。アルブミンは、生体内のような陽圧下では、血液中の老廃物82の一部と吸着している。このため、中空糸70の細孔71から老廃物82を除去しにくい。しかし、陰圧下では、老廃物82はアルブミンと分離しやすいため、老廃物82を効果的に除去することが期待できる。
【0039】
D.圧力異常の検出と自動停止の容易化
図8に示す従来の血液浄化装置200には、陰圧検出用ピロー213が接続されている。血液ポンプ220によって上流側が過陰圧になると、血液の輸送が困難となる。かかる状況を防止するため、陰圧検出用ピロー213を血液循環回路中に配置し、過陰圧になっているかどうかを、陰圧検出用ピロー213のつぶれ具合で目視できるようにしている。過陰圧時の対応は、医療スタッフが手動で行っているのが現状である。
【0040】
これに対して、図1に示す血液浄化装置1には、陰圧検出用ピロー213を接続しなくても、ダイアライザ20の透析液の流路に取り付けている圧力計91によって、ローラーポンプ30の上流側の過陰圧をモニタすることができる。加えて、所定の圧力以下になると、警報あるいはローラーポンプ30の停止等の自動処置を行うようにすることもできる。
【0041】
(2.第二の実施の形態)
【0042】
次に、先に説明した第一の実施の形態に係る血液浄化装置に、血液浄化器内に流入する血液量を変動させる機能を有する血液量変動装置を接続した第二の実施の形態に係る血液浄化装置について説明する。なお、第二の実施の形態に係る血液浄化装置は、第一の実施の形態に係る血液浄化装置と多くの共通部分を備えているため、当該共通部分には同じ符号を付し、その重複説明を適宜省略する。
【0043】
図4は、第二の実施の形態に係る血液浄化装置に接続する血液量変動装置の必要性を説明するための図である。
【0044】
図4に、第二の実施の形態に係る血液浄化装置の一構成部材であるダイアライザ20の血液流入側の内部Xを拡大して示す。ダイアライザ20は、血液流入側および血液排出側の両端部に、中空糸70の束を覆うブラッドポート110を備える。血液流入側を例に説明すると、ブラッドポート110は、血液流入側を小径に、中空糸70の束の側を大径にそれぞれ開口する漏斗形状を有する。流路17からダイアライザ20に入った血液は、ブラッドポート110内部で広がり、中空糸70の束に入る(矢印Hの方向)。中空糸70の束の外側は、筒形状の容器(図示省略)に覆われ、その筒形状の容器の外壁とブラッドポート110の内壁との間にはOリング等によりシールされている。このようなシール構造を採る必要から、ブラッドポート110の開口部は、中空糸70の束よりも少し大きく構成されている。
【0045】
図4に示すように、ブラッドポート110の内部から中空糸70の束に向かう血液は、主に、点線で示す境界111よりも内部の領域112において、層流を形成する傾向にある。一方、境界111よりも外側の領域113では、血液は、当該領域113に流れ込むものの、スムーズに中空糸70の束へと流れにくく、そこで滞留しやすい。滞留した血液は、特に、領域113の下流末端部分で凝固しやすい。凝固し若しくは凝固しかけた塊状血液114は、中空糸70の束の方に延出し、中空糸70の開口部分に付着する。この結果、中空糸70の一部が閉塞し、血液浄化機能が低下する。これを回避するためには、ブラッドポート110の開口部が中空糸70の束から飛び出した部分(図4のJ)をできる限り小さくするのが好ましい。しかし、当該部分を完全に除くことは難しいのが現状である。第二の実施の形態に係る血液浄化装置は、かかる問題を解決するものであり、ダイアライザ20の血液浄化機能を、良好に維持することができる。
【0046】
図5は、第二の実施の形態に係る血液浄化装置の主要部の構成を示す。
【0047】
第二の実施の形態に係る血液浄化装置100は、先に説明した第一の実施の形態に係る血液浄化装置1に、血液量変動装置120を加えた装置である。血液量変動装置120は、ダイアライザ20への血液流入量を変動させる機能を有し、好適には、透析液の供給ラインである透析液流入路21に接続される分岐管119を介して取り付けられる。血液量変動装置120は、シリンジ121と、シリンジ121のピストン122を駆動する駆動装置(例えば、モータ)とを備える。駆動装置は、シリンジ121のピストン122を矢印Kで示す双方向に往復駆動可能に制御されている。当該往復駆動により、血液量変動装置120を構成するシリンジ121と、ダイアライザ20内における透析液の存在する領域(各中空糸70の外側領域)との間で、透析液、水等を含む液体123を、矢印Lで示す双方向に送ることができる。液体123は、中空糸70の透過膜を介して中空糸70の内外双方向に移動可能である。このため、血液量変動装置120による液体123の引込動作と流入動作により、中空糸70を流れる血液流速を変動させることができる。
【0048】
ここで、透析液供給装置90(図3参照)から400ml/minの流速にて透析液がダイアライザ20に供給され、ダイアライザ20から同流速にて透析液が排出されるケースにより、血液量変動装置120の動作を説明する。ローラーポンプ30は、200ml/minの流速にて血液を送っているものとする。この状態で、駆動装置によって50ml/minの引込速度でシリンジ121内に液体123を引き込むようにピストン122を引くと、ダイアライザ20内の血液には、中空糸70の内部から外側に向かって50ml/minの引込速度に相当する圧力が加わる。ローラーポンプ30の血液を送る流速は200ml/minに維持されているため、ダイアライザ20に流入する血液の流速は、血液量変動装置120によって液体123を引き込む引込速度50ml/minと、ローラーポンプ30によって血液を送る流速200ml/minと、を加えた250ml/minになる。
【0049】
次に、駆動装置によって200ml/minの流入速度でシリンジ121側からダイアライザ20に向けて液体123を流入させるようにピストン122を押し込むと、ダイアライザ20内の血液には、中空糸70の外側から内部に向かって200ml/minの流入速度に相当する圧力が加わる。ローラーポンプ30の血液を送る流速は200ml/minに維持されているため、ダイアライザ20に流入する血液の流速は、ローラーポンプ30によって血液を送る流速200ml/minから、血液量変動装置120から液体123を流入する流入速度200ml/minを差し引いた0ml/minになる。すなわち、動脈側ブラッドアクセス10からダイアライザ20内への血液の流入が停止する。
【0050】
血液量変動装置120により、液体123の引込動作と流入動作とを交互に繰り返すと、動脈側ブラッドアクセス10からダイアライザ20内への血液の流速は、250ml/minと0ml/minとを交互に繰り返す。
【0051】
図6は、図5に示す血液浄化装置の血液量変動装置とダイアライザとの間の液体の入出流速の経時変化の一例を示すグラフである。図6では、液体をダイアライザ側に送る方向の流入速度をプラスとし、その逆方向の引込速度をマイナスで縦軸に示している。図7は、図6に示す入出流速の経時変化を実行したときに、ダイアライザに流入する血液流速の経時変化の一例を示すグラフである。図6および図7では、縦軸をV(ml/min)で、横軸をT(sec)で、それぞれ示している。
【0052】
図6に示すように、液体123の引込速度が50ml/minになるようにピストン122を時間T1(sec)だけ引き、続いてダイアライザ20内への液体123の流入速度が200ml/minになるようにピストン122を時間T2(sec)だけ押し込み、これを交互に繰り返す。すると、動脈側ブラッドアクセス10からダイアライザ20に流入する血液の流速は、図7に示すように、250ml/minを時間T1(sec)、続いて0ml/minを時間T2(sec)とする一種のパルス変動を生じる。もし、ダイアライザ20内への液体123の流入速度を150ml/minにすると、ダイアライザ20に流入する血液の流速は、0ml/minではなく、50ml/minにすることができる。このように、血液量変動装置120による液体123の引込動作および流入動作を交互に行うことにより、ダイアライザ20内に流入する血液の流速をパルス変動させることができる。ここで、引込動作と流入動作の具体例を挙げる。いま、ローラーポンプ30による血液流速を200ml/min、ピストン122の1ストローク当たりの変動容積を100mlとする。流入速度を200ml/minとし、引込速度を60ml/minに設定する場合(引込速度は血液流速の30%に相当)、流入動作は、ピストン122を、30秒間(T2=30sec)、定速にてシリンジ121内に向けて押し込み、液体123をダイアライザ20内に流入させる動作となる。また、引込動作は、ピストン122を、100秒間(T1=100sec)、定速にてシリンジ121から引き、液体123をシリンジ121内に引き込む動作となる。ピストン122の1ストローク当たりの変動容積およびピストン122の動作の1回当たりの時間(頻度)は、種々変更可能であるが、好適な変動容積は30〜100ml/ストローク、好適な頻度は0.5〜3min/回である。
【0053】
ダイアライザ20内に流入する血液の流速変動は、ダイアライザ20の血液流入側のブラッドポート110内部の血液に乱流を生じさせ、これによって、ブラッドポート110内の外側の領域113に滞留していた血液を拡散させ、血液凝固を抑制する効果が得られる。
【0054】
血液量変動装置120の引込動作によってダイアライザ20から液体123を引き込む引込速度は、その逆方向の流入動作によってダイアライザ20に液体123を流入させる流入速度よりも小さいのが好ましい。液体123の引込速度を小さくし、かつ液体123のダイアライザ20への流入速度をより大きくすると、ダイアライザ20内の血液の粘度を過度に上げず、かつブラッドポート110内の血液を乱す効果をより高めることができるからである。ダイアライザ20内の血液の粘度を過度に上げないようにするには、液体123の引込速度を、ローラーポンプ30によって血液を送る速度の30%以下にするのが好ましい。これに対して、ダイアライザ20内への液体123の流入速度は、ローラーポンプ30によって血液を送る速度を超えない範囲で、引込速度よりも比較的大きくすることが可能である。ただし、ダイアライザ20内の血液を過度に増粘させず、かつブラッドポート110内の血液を乱すことができる条件下で、引込速度と流入速度を同速度、あるいは引込速度の方を大きくすることも可能である。
【0055】
なお、血液量変動装置120は、透析液の供給ラインである透析液流入路21ではなく、透析液の排出ラインである透析液排出路22に接続しても同一の効果を得ることができる。
【0056】
図8に示す従来の血液浄化装置200において、液体123の入出動作を採用することも考えられる。血液浄化装置200は、ダイアライザ240の上流側に血液ポンプ220を備え、血液流速を一定に維持している。このため、ダイアライザ240の血液流入口近傍で、液体123の流入動作と引込動作を交互に繰り返しても、血液流入口のブラッドポート部分での血液流速は変化しない。また、液体123の流入速度が大きいと、静脈側ブラッドアクセス260に返血される速度が大きくなり過ぎ、静脈破裂等の危険性がある。
【0057】
これに対して、第二の実施の形態に係る血液浄化装置100では、ローラーポンプ30をダイアライザ20の下流側に配置しているので、血液量変動装置120によって引込動作と流入動作とを交互に行っても、ローラーポンプ30より下流側の血液流速は、その影響を受けずに一定に保たれる。このため、液体123の入出動作による血液流速の変動幅を大きくとっても、患者に対して静脈破裂などのリスクを負わせなくて済む。ただし、血液量変動装置120からダイアライザ20内への液体123の流入速度が大きすぎると、抜血量が減少し、老廃物82の除去に支障が生じる。このような可能性を確実に排除するためには、先に述べたように、血液量変動装置120によるダイアライザ20内への液体123の流入を、ローラーポンプ30により血液を送る速度を超えない範囲で行うのが好ましい。かかる範囲で液体123をダイアライザ20内に流入させている限り、動脈側ブラッドアクセス10からダイアライザ20への血液の流入に支障は生じない。
【0058】
その一方で、ダイアライザ20に液体123を流入させる流入速度は、ローラーポンプ30によって血液を送る速度より30ml/min以下の範囲で大きくすることも可能である。前述のように、ダイアライザ20への液体123の流入速度を大きくすることは抜血量の減少を招く可能性があるので、通常、好ましくない。しかし、抜血量の大幅な減少を招かないように、流入速度をローラーポンプ30による血液流速よりも30ml/min以下の範囲で大きくすることにより、ブラッドポート110内の血液をダイアライザ20の入口方向に少し戻し、血液凝固を有効に防止することも可能である。
【0059】
次に、血液量変動装置120を接続することにより得られる特有の効果について説明する。
【0060】
A.血液凝固の抑止
既述のように、ダイアライザ20の血液流入側のブラッドポート110内にて血液の滞留が生じにくくなるため、血液凝固によるダイアライザ20内の中空糸70の閉塞も生じにくくなる。
【0061】
B.血液浄化機能の維持
各中空糸70の透析膜に対して、その外側から内部、内部から外側へと交互に圧力が加えられることにより、各中空糸70の透析膜に存在する細孔71の目詰まり(ファウリング現象)が生じにくくなる。この結果、ダイアライザ20の血液浄化機能を、長期間、良好に維持することが可能となる。
【0062】
C.ダイアライザの再使用の容易化
ダイアライザ20内の中空糸70のファウリング現象を抑制できると、同一患者の使用を前提とするダイアライザ20の再使用処理(洗浄、滅菌、一部の交換等)も容易になる。この結果、再使用コストの低減、加えて医療従事者の感染リスク等も低減可能になる。
【0063】
(3.その他の実施の形態)
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は、その目的を達成する趣旨に逸脱しない範囲で、種々変形を施して実施可能である。
【0064】
例えば、ローラーポンプ30以外の血液ポンプを用いることもできる。血液抗凝固剤62には、ヘパリン以外の薬剤を用いることもできる。抗凝固剤注入装置60は、シリンジ61を備えるタイプではなく、輸液バッグのような形態であって、血液抗凝固剤62の注入量を調整できるものとしても良い。空気除去装置40以外の形態を有する手段にて、血液中に混在する空気を除去しても良い。例えば、流路35よりも径を大きくし、かつ上方に空気を貯留できる風船のような形態を有する部材を、血液循環回路2中に接続しても良い。
【0065】
血液量変動装置120の形態は、シリンジ121を備えるものに限定されず、液体123をダイアライザ20側に流入させ、そしてダイアライザ20側から液体123を引き込むことができる限り、如何なる形態であっても良い。
【実施例】
【0066】
次に、本発明の血液浄化装置を用いた好適な実施例について、比較例との比較を行いながら説明する。
【0067】
<実施例1>
前述の実施の形態において説明した図1に示す血液浄化装置1の構成と同様の構成になるように、ダイアライザ20としての旭化成クラレメディカル株式会社製の透析器(品名: APS−25SA、透析膜面積:2.5m)と、東レ・メディカル株式会社製の血液回路H−702FBXを利用し組み直したものとを連結した。ダイアライザ20の上流側には、ニプロ株式会社製の血液抗凝固剤ヘパリンNa透析用500単位/mlを入れたシリンジ20mlを接続した。また、東レ・メディカル株式会社製の透析患者監視装置(品名: TR−3000)を用いた。体重123.7kgの被検者を対象とし、血液流量(流量の設定値):160ml/min、透析液流量:400ml/min、透析時間:8時間、ヘパリンNaの注入量:初回量:500単位、持続量:1400単位/hr(=2.8ml/hr)の条件にて、血液透析を行った。
【0068】
<比較例1>
前述の図8に示す血液浄化装置200の構成と同様の構成になるように、ダイアライザ240としての旭化成クラレメディカル株式会社製の透析器(品名: APS−25SA、透析膜面積:2.5m)と、東レ・メディカル株式会社製の血液回路H−702FBXとを連結し、ダイアライザ240と、血液ポンプ220との間に、ニプロ株式会社製の血液抗凝固剤ヘパリンNa透析用500単位/mlを入れたシリンジ20mlを接続した。また、透析患者監視装置には、実施例1と同じ装置を用いた。透析条件は、ヘパリンNaの注入量を、初回量:500単位、持続量:1800単位/hr(=3.6ml/hr)の条件とし、持続量のみを実施例1に比較して約22%多くした以外、実施例1と同じ条件とした。
【0069】
<実施例1と比較例1の評価結果>
実施例1および比較例1の透析評価は、透析前後のα1マイクロGLB(分子量:33000)の下降率(%)を基準に行った。
【0070】
その結果、実施例1では、透析前のα1マイクロGLBが133.7mg/dl、透析後のα1−マイクロGLBが121.7mg/dlであり、透析前後の下降率は、約9.0%であった。これに対して、比較例1では、透析前のα1マイクロGLBが138.7mg/dl、透析後のα1−マイクロGLBが128.0mg/dlであり、透析前後の下降率は、約7.7%であった。この結果は、実施例1の方が比較例1よりも少ないヘパリンNa注入量であっても、血液透析におけるα1マイクロGLBの除去効率が高いことを意味している。したがって、実施例1の血液浄化装置の場合には、支障なく血液抗凝固剤を低減することができると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、血液を浄化する装置として、例えば、血液透析、血漿交換の各処理を行う装置として利用できる。
【符号の説明】
【0072】
1 血液浄化装置
2 血液循環回路
20 ダイアライザ(血液浄化器)
21 透析液流入路(透析液の供給ライン)
22 透析液排出路(透析液の排出ライン)
30 ローラーポンプ(血液ポンプ)
40 空気除去装置
60 抗凝固剤注入装置
62 血液抗凝固剤
120 血液量変動装置
123 液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液を抜き出して、浄化後に返血する血液浄化装置において、
血液循環回路に、
血液を透析して老廃物を低減すると共に、外部から透析液を供給する血液浄化器と、
上記血液循環回路中の血液を輸送する血液ポンプと、
血液の凝固を抑制するための血液抗凝固剤を血液中に混入させる抗凝固剤注入装置と、
を少なくとも備え、
上記血液浄化器を、上記血液ポンプの上流側の陰圧下に配置することを特徴とする血液浄化装置。
【請求項2】
前記血液浄化器における前記透析液の供給ライン若しくは排出ラインから分岐した位置に、前記血液浄化器内に流入する血液量を変動させる血液量変動装置を、さらに備え、
当該血液量変動装置は、その内部から前記血液浄化器に液体を流入させる流入動作と、前記血液浄化器から当該血液量変動装置の内部に液体を引き込む引込動作とを繰り返し行うことを特徴とする請求項1に記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記引込動作によって前記血液浄化器から液体を引き込む引込速度は、前記流入動作によって前記血液浄化器に液体を流入させる流入速度よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の血液浄化装置。
【請求項4】
前記血液浄化器に液体を流入させる流入速度は、前記血液ポンプによって血液を送る速度以下であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の血液浄化装置。
【請求項5】
前記血液浄化器に液体を流入させる流入速度は、前記血液ポンプによって血液を送る速度より30ml/min以下の範囲で大きいことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の血液浄化装置。
【請求項6】
血液循環回路に、
血液を透析して老廃物を低減すると共に、外部から透析液を供給する血液浄化器と、
上記血液循環回路中の血液を輸送する血液ポンプと、
血液の凝固を抑制するための血液抗凝固剤を血液中に混入させる抗凝固剤注入装置と、
を少なくとも備えて血液を浄化する方法において、
上記血液浄化器を、上記血液ポンプの上流側の陰圧下に配置して使用することを特徴とする血液浄化方法。
【請求項7】
前記血液浄化器における前記透析液の供給ライン若しくは排出ラインから分岐した位置に、前記血液浄化器内に流入する血液量を変動させる血液量変動装置をさらに備えて、血液を浄化する方法において、
当該血液量変動装置により、その内部から前記血液浄化器に液体を流入させる流入動作と、前記血液浄化器から当該血液量変動装置の内部に液体を引き込む引込動作とを繰り返し行いながら、血液の浄化を行うことを特徴とする請求項6に記載の血液浄化方法。
【請求項8】
前記引込動作によって前記血液浄化器から液体を引き込む引込速度を、前記流入動作によって前記血液浄化器に液体を流入させる流入速度よりも小さくすることを特徴とする請求項7に記載の血液浄化方法。
【請求項9】
前記血液浄化器に液体を流入させる流入速度を、前記血液ポンプによって血液を送る速度以下とすることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の血液浄化方法。
【請求項10】
前記血液浄化器に液体を流入させる流入速度は、前記血液ポンプによって血液を送る速度より30ml/min以下の範囲で大きいことを特徴とする請求項7または請求項8に記載の血液浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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