血液浄化装置及び血液浄化方法
【課題】血液浄化装置において、血球の破壊を防止しつつ病因物質を高効率で除去できるようにすること。
【解決手段】血液浄化装置100は体内から取り出した血液を浄化して再び体内に還流するものであり、体外に取り出した血液を循環経路3に循環させる血流ポンプ4と、循環経路3内の血液中の被分離成分を磁気力を利用して分離する磁気分離部11とを備える。
【解決手段】血液浄化装置100は体内から取り出した血液を浄化して再び体内に還流するものであり、体外に取り出した血液を循環経路3に循環させる血流ポンプ4と、循環経路3内の血液中の被分離成分を磁気力を利用して分離する磁気分離部11とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液浄化装置及び血液浄化方法に係り、特に体外に形成した血液循環流路中で除去したい被除去物質を取り除く血液浄化装置及び血液浄化方法に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
病態を引き起こす病因物質を血液中から取り除く血液浄化療法では、遠心分離や膜分離を利用した手法が実施されている。しかし、遠心分離法は血球破壊の問題から全血からの血漿や血小板の分離に主に利用されるにとどまっている。また、膜分離法では、ろ過膜の交換が必須であること、特定の病因物質を選択的に分離するには効率が低いこと等の問題を有し、さらに、遠心分離法と同様に血球破壊が問題となる場合もある。
【0003】
特定の病因物質を除去するために種々の分画方式が研究されているものの、低効率のため、結局血漿をとりだして血漿すべてを交換する単純血漿交換法が行われることが多い。しかし、単純血漿交換法では、大量の置換液を必要とするとともに、ウイルス感染の問題も有している。また、透析による種々の分離・分画法は、分離速度が小さい上、分離効率が悪いため、目標とする分離効率を達成するためには、循環経路内を何度も血液を循環させる必要があり、どうしてもかなりの治療時間が必要となる。
【0004】
さらには、従来の血液浄化装置として、非特許文献1に記載されたものがある。この血液浄化装置は、体外に取り出した血液を循環経路に循環させる血流ポンプと、循環経路内の血液中の被吸着物質を吸着材に吸着して除去する吸着カラムとを備えるものである。この吸着カラムの吸着剤として、活性炭またはポリミキシンB固定化繊維が用いられることが開示されている。この血液浄化装置による浄化方法は、体外に取り出した血液を血流ポンプにより循環経路に循環させ、吸着カラムを通る際に病因物質である非吸着部材を吸着材に吸着させて血液中から除去し、病因物質が取り除かれた血液を体内に再び還流する、という方法である。
【0005】
【非特許文献1】「クリニカルエンジニアリング別冊 実用血液浄化療法 秀潤社(1999)」(第64頁〜第71頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した非特許文献1の血液浄化装置及び浄化方法では、病因物質を吸着カラムの吸着材へ吸着させるものであるため、その吸着効率を向上することが難しい、という課題があった。
【0007】
本発明の目的は、血球の破壊を防止しつつ病因物質を高効率で除去できる血液浄化装置及び血液浄化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、体内から取り出した血液を浄化して再び体内に還流する血液浄化装置において、体外に取り出した血液を循環経路に循環させる血流ポンプと、前記循環経路内の血液中の被分離成分を磁気力を利用して分離する磁気分離手段とを備える構成にしたことにある。
【0009】
係る本発明のより好ましい具体的な構成は次の通りである。
(1)前記循環経路内の血液中の血球成分を分離する血球分離手段と、この血球分離手段で血球成分を分離された血液中の被除去成分を分離する被除去物分離手段とを備え、前記血球分離手段及び前記被除去物分離手段の少なくとも一方が磁気力を利用した磁気分離手段であること。
(2)表面に被分離成分を吸着させる作用を有する磁性粒子を前記循環経路中に添加する粒子注入手段を備え、前記磁気分離手段は、前記粒子注入手段の後流側に配置され、前記粒子注入手段から添加された磁性粒子と共にその表面に吸着された被分離成分を分離するものであること。
(3)前記粒子注入手段と前記磁気分離手段との間に前記磁性粒子と血液中の被分離成分との吸着を促進する混合部を備えること。
(4)前記磁気分離手段の後流側に前記磁性粒子のサイズより小さな目を有するフィルタを備えること。
(5)前記磁性粒子が生体の一部を利用した構造を有していること。
(6)前記磁性粒子が鉄、ニッケル、コバルト、マンガンのうちの少なくとも一つの元素を含んだ有機化合物を含有していること。
(7)前記磁気分離手段は、磁場を発生する磁場発生器と、この磁場発生器が作る磁場中に配置されて高勾配磁場分布を生じると共にこの高勾配磁場分布に起因する磁気力により血液中の被分離成分を分離する強磁性体とを備えること。
(8)前記磁気分離手段は、磁場発生源として超電導磁石を用い、この超電導磁石が発生する高磁場空間を利用して血液中の被分離成分を磁気的に分離するものであること。
(9)前記超電導磁石が高温超電導バルク体であること。
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は、体内から取り出した血液を浄化して再び体内に還流する血液浄化方法において、体外に取り出した血液を血流ポンプにより循環経路に循環させ、前記循環経路内の血液中の被分離成分を磁気分離手段の磁気力を利用して分離するようにしたことにある。
【0011】
係る本発明のより好ましい具体的な構成は次の通りである。
(1)表面に特定物質を吸着させる作用を有する磁性粒子を血管内に注射して血液中の特定被分離成分を体内で前記磁性粒子の表面に吸着させた後、体外に設けた前記循環経路にて前記磁気分離手段の磁気力により前記磁性粒子とともに吸着された被分離成分を分離除去すること。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、血球の破壊を防止しつつ病因物質を高効率で除去できる血液浄化装置及び血液浄化方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の複数の実施例について図を用いて説明する。各実施例の図における同一符号は同一物または相当物を示す。なお、それぞれの実施例を必要に応じて適宜に組み合わせることにより、より効果的なものとすることができる。
【0014】
(第1実施例)
本発明の第1実施例を図1から図4を用いて説明する。
【0015】
まず、本実施例の血液浄化装置100の全体構成に関して図1を参照しながら説明する。図1は本発明の第1実施例の血液浄化装置100の構成図である。本実施例の血液浄化装置100は、血漿成分に水溶性となって溶解している病因蛋白質、例えばLDL(低密度リポ蛋白質)を除去するためのものである。
【0016】
血液浄化装置100は、血流ポンプ4、粒子注入部8、混合部9及び磁気分離部11を備えて構成されている。血流ポンプ4、粒子注入部8、混合部9及び磁気分離部11は、この順に接続されて、体外循環経路である循環経路3を構成している。
【0017】
血流ポンプ4は、体外に取り出した血液を循環経路3に循環させるものであり、血液取出口1の後段で且つ粒子注入部8、混合部9及び磁気分離部11の前段に配置されている。
【0018】
粒子注入部8は、循環経路3の血液中に機能性磁性粒子を注入する粒子注入手段を構成し、血流ポンプ4の後段で且つ混合部9及び磁気分離部11の前段に配置されている。機能性磁性粒子は、強磁性体である、例えば四三酸化鉄の表面に抗LDL抗体を修飾したようなものであり、その粒径は0.1μm〜10μm程度である。この機能性磁性粒子は生理食塩水に分散されたものとなっており、ポンプによって血液中に添加される。この添加の時に、なるべく機能性磁性粒子が均一に分散されるように、高圧、高速で添加するのが望ましい。
【0019】
混合部9は、血液成分中に添加された機能性磁性粒子と血液中のLDLと吸着反応を促進する混合手段を構成し、粒子注入部8の後段で且つ磁気分離部11の前段に配置されている。混合部9は、例えばらせん状やジグザグ状の流路から形成されており、血液成分中に均一に分散された機能性磁性粒子の表面に修飾されている抗LDL抗体と血液中のLDLとが抗原抗体反応を生じて磁性粒子の表面にLDLが吸着されるようにするものである。
【0020】
磁気分離部11は、循環経路3内の血液中の被分離成分(本実施例ではLDL)を磁気力を利用して分離する磁気分離手段を構成し、混合部9の後段に配置されている。
【0021】
係る血液浄化装置100における血液浄化方法を説明する。血液浄化装置100が患者に接続し、血流ポンプ4の運転を開始することにより、患者の体内から血液取出口1を通して循環経路3に血液が取り出される。体外にある循環経路3に取り出された血液に、粒子注入部8から所定量の機能性磁性粒子を継続的に注入する。機能性磁性粒子が注入された血液は、混合部9に至り、ここで機能性磁性粒子の表面の抗LDL抗体と血液中のLDLとが抗原抗体反応を生じて機能性磁性粒子の表面にLDLが吸着される。LDLが吸着された機能性磁性粒子を含む血液10は、磁気分離部11に至り、ここで血液中からLDLが吸着された機能性磁性粒子が磁気力により分離され取り除かれる。機能性磁性粒子が取り除かれた血液12は、正常な血液として血液還流口2を通して患者の体内に環流される。
【0022】
ここで、機能性磁性粒子として、四三酸化鉄のような強磁性体を考えたが、磁気分離部11の磁場発生源として超電導磁石を利用すれば、強磁性体でなくても十分磁気分離が可能である。例えば、合成樹脂でできた機能性磁性粒子でも良いし、患者の生体を利用したものでも良い。患者の生体を利用して作成したものであれば、漏洩しても体内で悪影響を及ぼすことが無い。例えば、磁気分離の効果をあげるために、有機鉄を含んだ粒子の利用が考えられる。有機鉄は弱い常磁性を示すことから、他の蛋白が負の磁性を示すのと比較して磁気分離の効率を向上させやすい。例えば、脂質で構成したカプセル内に鉄化合物等の磁性体を挿入したものなどが考えられる。
【0023】
本実施例の構成によれば、体外に取り出した血液を血流ポンプ5により循環経路3に循環させ、循環経路3内の血液中の病因物質である被分離成分を磁気分離部11の磁気力を利用して分離するようにしているので、血球の破壊を防止しつつ病因物質を高効率で除去できる。
【0024】
磁気分離部11の具体的構成に関して図2から図4を参照しながら説明する。図2は図1の血液浄化装置100の磁場発生器22の断面図、図3は図1の血液浄化装置100の磁気分離要素27の説明図、図4は図3の磁場発生器22に磁場を発生する装置の断面図である。
【0025】
図2に示すように、磁気分離部11を構成する磁場発生器22は、超電導磁石として、高温超電導バルク体21を用いている。高温超電導バルク体21はピン止め効果と呼ばれる特性があるため、超電導になったときの周囲磁場を保持する性質がある。例えば、イットリウム系超電導体は、臨界温度である約100K以下で超電導状態を示すが、磁場空間中で冷却をしていくと冷却終了時に臨界磁場以下の周囲磁場を保持することが可能である。また、高温超電導バルク体21は断熱容器24の内部空間23内に配置されている。なお、磁場発生器22は可搬型であり、容易に任意の場所に移動させることが可能である。
【0026】
この高温超電導バルク体21を有する磁場発生器22は、断熱容器24の内部空間23内に液体窒素を保持できる構造となっている。内部空間23に液体窒素を注入すると、液体窒素が蒸発して無くなるまで、高温超電導バルク体21を液体窒素温度(77K)近辺に保持できる。外壁はステンレスあるいはFRPや発泡スチロール等の断熱材で構成され、外界からの熱侵入を極力減らし、液体窒素の蒸発量を極力抑えた構造となっている。また、上部にも蒸発した窒素ガスを抜く孔のある断熱材25が嵌め込まれている。この断熱材25は液体窒素を注入した後に嵌め込むことができるようになっていても良い。この断熱材25により、磁場発生器22内への侵入熱量が抑えられている。さらに、内部に真空空間を設けて真空断熱すれば、より断熱性能は向上する。
【0027】
断熱容器24の下部には磁気分離要素設置用穴26が空いており、この穴26は高温超電導バルク体21に薄い壁面を介して設けられている。この穴26には、磁気分離部11の血流路となる磁気分離要素27が挿入されている。従って、磁気分離要素27と高温超電導バルク体21とは近接して配置されることとなり、高温超電導バルク体21の磁場が磁気分離要素27にかかるようになっている。
【0028】
図3に示すように、磁気分離要素27は、入口28と出口29とを有し、内部にステンレススチール等の強磁性材料でできた金網やスチールウールなどの強磁性細線を有している。この磁気分離要素27は、外部接続電極磁場をかけられたときに、強磁性体である強磁性細線の近傍に大きな磁場勾配が生じ、この磁気勾配に起因する大きな磁気力により機能性磁性粒子を吸引することが可能である。ここで、磁気分離要素27を構成する強磁性細線の表面は、合成樹脂等によりコーティングされ、血液と強磁性細線の金属部分とが直接触れない構造となっており、血液中に金属成分が流出することを防止している。
【0029】
磁気分離要素27は、図3(a)に示すように、折り返し流路とすると共に、入口28と出口29とを隣接して配置するように構成されている。これにより、図2に示す断熱容器24にある磁気分離要素設置用穴26を貫通穴でなく片側にのみ開口した穴とし、その開口から穴26の奥まで磁気分離要素27を単に挿入すればよく、磁気分離要素27を簡単に設置することができる。また、血液浄化時には図3(a)に示すように磁気分離要素27にコネクタ31Aを介してチューブ30を繋いで使用されるが、浄化終了後に磁気分離要素27を磁場発生器22から取り外す際、チューブ30を外さずに使用状態のまま一方向からの取り外しが可能である。さらに、図3(a)に示すように入口28と出口29とを並置させると共にコネクタ31Aを介して接続することにより、患者と繋げる際のチューブ30をワンタッチで取り付けることが可能である。
【0030】
また、血液浄化時にはコネクタ31Bの先に、図3(b)に示す循環経路チューブ32を取り付けて使用されるが、浄化終了後にコネクタ31から循環経路チューブ32を外して図3(c)に示す栓33を取り付けることにより、病因物質が蓄積された磁気分離要素27は使い捨て可能な構造となり、他患者への二次感染を防止できる。また、循環経路チューブ32は同一形状ではなく、先端部32aの形状を着脱可能の雄と雌との構造にしておけば、チューブ32同士を繋いで磁気分離要素27を取り外した後に洗浄することが可能である。
【0031】
図4に示すように、超電導着磁装置38は、超電導電磁石(コイル)34、ヘリウム冷凍機35及びヘリウム冷凍機35を備えて構成されている。超電導着磁装置38は、血液を浄化する施設内あるいは施設外に配置される。超電導電磁石34は、超電導体からなり、真空断熱容器37に入れられ、極低温のヘリウム冷凍機35等で4K付近まで冷却されて超電導状態を保っている。超電導電磁石34の線材としては低コスト、高信頼性のNbTiが考えられる。
【0032】
このような超電導電磁石34は、強磁場を発生することができるものの、装置が大掛かりで容易に持ち運びをすることができず、また漏洩磁場も無視できないため、取り扱いに大きな制限がある。そのため、超電導着磁装置38は血液浄化装置100の循環経路3から離れた場所に設置され、磁場発生器22が超電導着磁装置38に着脱可能とされている。
【0033】
励磁された超電導電磁石34のボア36の中に磁気分離要素27をあらかじめ挿入した磁場発生器22を入れ、磁場発生器22の高温超電導バルク体21部分が超電導磁石34のおおむね中央付近となるように設置する。磁場発生器22に液体窒素が注入されると、高温超電導バルク体21は臨界温度以下に低下するため超電導状態となり、周囲の磁場を保持する。高温超電導バルク体21の磁場が一旦保持されると、超電導電磁石34の磁場を落としても高温超電導バルク体21が臨界温度以下に冷却されつづける限り、高温超電導バルク体21の磁場は保持され続ける。取り出した磁場発生器22は例えば7Tといった高磁場を保持したままどこにでも持ち運ぶことが可能であり、臨床機器として非常に優れている。
【0034】
なお、高温バルク体21の冷却源は、液体窒素の代わりに小形の冷凍機を設置してもかまわない。小形冷凍機であれば、液体窒素冷却と比較して、液体窒素の蒸発による高温超電導バルク体の磁場消失の危険性が無い。さらに、液体窒素温度以下に冷却することが可能であるため、臨界磁場が大きくなることから、より大きな磁場強度を得られる可能性がある。一方、液体窒素冷却方式を用いるほうが、冷却時間や昇温時間及び装置の小型化に関して優れている。
【0035】
磁場発生器22は非常に小さな装置でありながら非常に大きな磁場を発生することができるため、取り扱いが容易であり、まわりに磁気的悪影響を与えずに高磁場を利用することができる。
【0036】
本実施例によれば、磁場発生器22及びこれを含む血液浄化装置100全体の大きさを小さいものとしても、大きな磁場を利用することができる。また、磁場発生器22中の高温超電導バルク体21は永久磁石と異なり、温度が上がると磁場が消滅するため、内部の磁気分離要素27を容易に交換することができる。
【0037】
なお、着磁用の超電導電磁石34は、複数の血液浄化装置用磁場発生器22に対して一機のみ存在すればよく、例えば汎用の冷凍機冷却式7T磁石を病院内のどこか一部に設置しておけばよい。設置場所は特に限定されないので、なるべく他の機器や患者等と接触しない場所に設置するのが良い。
【0038】
(第2実施例)
次に、本発明の第2実施例を図5を参照しながら説明する。図5は本発明の第2実施例の血液浄化装置の構成図である。この第2実施例は、次に述べる点で第1実施例と相違するものであり、その他の点については第1実施例と基本的には同一である。
【0039】
この第2実施例では、機能性磁性粒子を添加する前に、血球成分のみを先に分離する前段分離部5を有している。この前段分離部5は、遠心分離器やサイクロン等が用いられる。循環経路3において、まず前段分離部5等を用いて血球成分と血漿成分とに分離し、血漿成分を血漿成分流路6に、血球成分を血球成分流路7に通す。ここで、血漿成分と血球成分という表現を便宜上用いているが、血漿成分は血漿成分の濃度が比較的多く存在する血液のことを示し、血球成分は血球成分の濃度が比較的多く存在する血液のことを示している。血漿成分が通る血漿成分流路6側の循環経路3には、第1実施例と同様に粒子注入部8、混合部9及び磁気分離部11が設置され、機能性磁性粒子が粒子注入部8より添加される。なお、血球成分流路7の循環経路3は、血漿成分流路6側の循環経路3と磁気分離部11の後段で合流されている。
【0040】
係る構成とすることにより、血球成分等の比較的大きなサイズの粒子は、前段階で遠心分離器5等により取り除かれているため、混合部9では血球にダメージを与えることが無い上、大きなサイズの粒子が流れの妨げを生じさせる危険性も無い。
【0041】
また、この第2実施例では、磁気分離部11の後段に機能性磁性粒子の粒径より小さなメッシュのフィルタ15を設置している。これにより、機能性粒子の漏洩や体内への流入を防止することができる。
【0042】
また、例えば、患者の血液中から赤血球を取り出し、その赤血球の表面に抗LDL抗体等の修飾をして、その表面修飾された赤血球を機能性磁性粒子として利用する方法が考えられる。赤血球にはヘモグロビンが含まれており、ヘモグロビンは有機鉄を有しているため、容易に超電導磁石の磁気力で分離することが可能である。赤血球自体は患者体内に侵入しても体内に悪影響を及ぼすこともなく、有機鉄を有しているため磁性が存在し、上述したような高勾配の磁場分布を利用した高勾配磁気分離器、さらには超電導磁石を磁場発生源として利用した超電導高勾配磁気分離器により、磁気的に分離除去することが可能である。ここで、磁気分離部11において機能性磁性粒子として添加した赤血球は取り除かれるが、遠心分離器5等で血液中から取り除かれた赤血球を含む血球成分は、正常な血漿成分12と混合されて体内に環流される。もちろん、機能性磁性粒子として、第1実施例で記載したような脂質のカプセル等を利用したものを用いた場合でも効果は同様である。
【0043】
(第3実施例)
次に、本発明の第3実施例を図6を参照しながら説明する。図6は本発明の第3実施例の血液浄化装置の構成図である。この第3実施例は、次に述べる点で第1実施例と相違するものであり、その他の点については第1実施例と基本的には同一である。
【0044】
この第3実施例では、血球分離部である前段分離部5が高温超電導バルク体21Aを備え、この高温超電導バルク体21Aの磁気の力を利用して血球成分を分離するものである。血球分離部5においては、分離した血球成分を再び正常な血漿成分と合流させるため、連続的に流れながら分離させる構造の方が適している。この場合も高温超電導バルク体21A等の超電導磁石を利用することにより、例えば赤血球はそのまま磁石側に引き寄せられるため、分離可能である。
【0045】
(第4実施例)
次に、本発明の第4実施例を図7〜図9を参照しながら説明する。図7は本発明の第4実施例の血液浄化装置の構成図、図8は図7の磁気分離部11の磁気分離要素27の概要断面図、図9は図8の磁気分離要素27の斜視図である。この第4実施例は、次に述べる点で第2実施例と相違するものであり、その他の点については第2実施例と基本的には同一である。
【0046】
この第4実施例では、磁気分離部11の出口側を分岐し、高温超電導バルク体21の磁気力を利用して分岐された一方の流路から磁性粒子42を含む連続的に取り出すようになっている。なお、この第4実施例において、前段分離部5を第3実施例と同じ構造としても良い。
【0047】
この第4実施例では、磁気分離部11の流路中に磁性体を用いる必要がなくなるため、構造を簡素にすることができる。また、磁気分離部11において連続的に分離される磁性粒子は、返送流路18により粒子注入部8の磁性粒子タンクまで戻され再利用されるため、患者あたりに使用される磁性粒子量を必要最小限にすることができる。
【0048】
高温超電導バルク体21に隣接した分離部流路41内に流れる磁性粒子42は、図8に示すように、高温超電導バルク体21の磁気力によって高温超電導バルク体21側に引き寄せられ、出口43から連続的に排出される。残りの血液は出口44から流出される。具体的には、図9に示すような構造で流路を循環させることにより、磁気分離有効距離を長くすることができるため、効率よく磁性粒子を分離し、磁性出口43a〜43fから連続的に排出することが可能である。
【0049】
なお、係る磁気分離部11の構造は、図6の前段分離部5に適用することができる。
【0050】
(第5実施例)
次に、本発明の第5実施例を図10を参照しながら説明する。図10は本発明の第5実施例の血液浄化装置の構成図である。この第5実施例は、次に述べる点で第4実施例と相違するものであり、その他の点については第4実施例と基本的には同一である。
【0051】
この第5実施例では、磁気分離部11を2段階に分けて、前段を連続式磁気分離部11a(図7の磁気分離部11と基本的に同じ構造)、後段を磁性線フィルタによる磁気分離手段11b(図1の磁気分離部11と基本的に同じ構造)としている。
【0052】
かかる構成により、前段磁気分離部11aで粗く磁性粒子を回収して返送流路18により粒子注入部8を通して循環経路3に戻して再利用すると共に、細かい磁性粒子を経路17を通して後段磁気分離部11bに送り、ここで細かい磁性粒子の分離を行う。これにより、磁性粒子の添加量を必要最低限に抑えると共に、体内への磁性粒子の漏洩を防止することができる。
【0053】
(第6実施例)
次に、本発明の第6実施例を図11を参照しながら説明する。図11は本発明の第6実施例の血液浄化装置の構成図である。この第6実施例は、次に述べる点で第2実施例と相違するものであり、その他の点については第2実施例と基本的には同一である。
【0054】
この第6実施例では、体内に機能性磁性粒子を直接注入している。注射器により機能性粒子を血液に注入する。この際の磁性粒子は、例えば脂質でできたカプセルにマグネタイト等の磁性体、あるいはヘモグロビン等の生理磁性体を含有したものである。体内血管中において、機能性磁性粒子表面にLDL等の被除去物質が吸着する。注射後、一定時間が経過してから、体外血液循環流路により、体内に注入され表面に被除去物質を吸着した機能性磁性粒子を除去する。
【0055】
この第6実施例によれば、血液浄化装置100として図5の第2実施例と比較して混合部9が不要となるので、装置が簡単でコンパクトとなる。この第6実施例において、図1の第1実施例に示した例のように血球分離手段5を省いて直接血液全体を磁気分離することも可能である。
【0056】
(第7実施例)
次に、本発明の第7実施例を図12を参照しながら説明する。図12は本発明の第7実施例の血液浄化装置の構成図である。この第7実施例は、次に述べる点で第1実施例と相違するものであり、その他の点については第1実施例と基本的には同一である。
【0057】
この第7実施例は、膜51により血液中の成分52を透析液流路6A側に移行させ、透析液流路6A側に移行された成分のうちの被除去対象物質を第1実施例と同様の方法により磁気分離している。この第7実施例では、磁気分離部11として磁気フィルタの例を示したが、連続処理方式にしても良い。磁気分離手段11による被除去物質の除去後は、再び膜54により必要な物質のみ血液に戻す。この時圧力等を制御することにより、効率的に膜浸透が進行する。本構造により、磁性粒子が血液53側に漏洩することなく被除去物質を効率的に除去できるとともに、必要な物質が同時に除去されてしまうこと防ぐことができる。
【0058】
第1実施例〜第7実施例の被除去物質として、LDLを取り上げて説明したが、アンモニア、免疫疾患における異常抗体、癌細胞などの血液中から取り除くべき病因物質に関し、本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施例の血液浄化装置の構成図である。
【図2】図1の血液浄化装置の磁場発生器の断面図である。
【図3】図1の血液浄化装置の磁気分離要素の説明図である。
【図4】図3の磁場発生器に磁場を発生する装置の断面図である。
【図5】本発明の第2実施例の血液浄化装置の構成図である。
【図6】本発明の第3実施例の血液浄化装置の構成図である。
【図7】本発明の第4実施例の血液浄化装置の構成図である。
【図8】図7の磁気分離部の磁気分離要素の概要断面図である。
【図9】図8の磁気分離要素の斜視図である。
【図10】本発明の第5実施例の血液浄化装置の構成図である。
【図11】本発明の第6実施例の血液浄化装置の構成図である。
【図12】本発明の第7実施例の血液浄化装置の構成図である。
【符号の説明】
【0060】
1…血液取出口、2…血液還流口、3…循環経路、4…血流ポンプ、5…前段分離部、8…粒子注入部、9…混合部、10…機能性磁性粒子を含む血液、11…磁気分離部、18…返送流路、12…機能性磁性粒子が取り除かれた血液、21…高温超電導バルク体、22…磁場発生器、23…内部空間、24…断熱容器、25…断熱材、26…穴、27…磁気分離要素、28…入口、29…出口、30…チューブ、31A、31B…コネクタ、32…循環経路チューブ、32a…先端部、33…栓、34…超電導電磁石(コイル)、35…ヘリウム冷凍機、36…ボア、37…真空断熱容器、38…超電導着磁装置、41…分離部流路、42…磁性粒子、43、44…出口、51…膜、52…成分、100…血液浄化装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液浄化装置及び血液浄化方法に係り、特に体外に形成した血液循環流路中で除去したい被除去物質を取り除く血液浄化装置及び血液浄化方法に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
病態を引き起こす病因物質を血液中から取り除く血液浄化療法では、遠心分離や膜分離を利用した手法が実施されている。しかし、遠心分離法は血球破壊の問題から全血からの血漿や血小板の分離に主に利用されるにとどまっている。また、膜分離法では、ろ過膜の交換が必須であること、特定の病因物質を選択的に分離するには効率が低いこと等の問題を有し、さらに、遠心分離法と同様に血球破壊が問題となる場合もある。
【0003】
特定の病因物質を除去するために種々の分画方式が研究されているものの、低効率のため、結局血漿をとりだして血漿すべてを交換する単純血漿交換法が行われることが多い。しかし、単純血漿交換法では、大量の置換液を必要とするとともに、ウイルス感染の問題も有している。また、透析による種々の分離・分画法は、分離速度が小さい上、分離効率が悪いため、目標とする分離効率を達成するためには、循環経路内を何度も血液を循環させる必要があり、どうしてもかなりの治療時間が必要となる。
【0004】
さらには、従来の血液浄化装置として、非特許文献1に記載されたものがある。この血液浄化装置は、体外に取り出した血液を循環経路に循環させる血流ポンプと、循環経路内の血液中の被吸着物質を吸着材に吸着して除去する吸着カラムとを備えるものである。この吸着カラムの吸着剤として、活性炭またはポリミキシンB固定化繊維が用いられることが開示されている。この血液浄化装置による浄化方法は、体外に取り出した血液を血流ポンプにより循環経路に循環させ、吸着カラムを通る際に病因物質である非吸着部材を吸着材に吸着させて血液中から除去し、病因物質が取り除かれた血液を体内に再び還流する、という方法である。
【0005】
【非特許文献1】「クリニカルエンジニアリング別冊 実用血液浄化療法 秀潤社(1999)」(第64頁〜第71頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した非特許文献1の血液浄化装置及び浄化方法では、病因物質を吸着カラムの吸着材へ吸着させるものであるため、その吸着効率を向上することが難しい、という課題があった。
【0007】
本発明の目的は、血球の破壊を防止しつつ病因物質を高効率で除去できる血液浄化装置及び血液浄化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、体内から取り出した血液を浄化して再び体内に還流する血液浄化装置において、体外に取り出した血液を循環経路に循環させる血流ポンプと、前記循環経路内の血液中の被分離成分を磁気力を利用して分離する磁気分離手段とを備える構成にしたことにある。
【0009】
係る本発明のより好ましい具体的な構成は次の通りである。
(1)前記循環経路内の血液中の血球成分を分離する血球分離手段と、この血球分離手段で血球成分を分離された血液中の被除去成分を分離する被除去物分離手段とを備え、前記血球分離手段及び前記被除去物分離手段の少なくとも一方が磁気力を利用した磁気分離手段であること。
(2)表面に被分離成分を吸着させる作用を有する磁性粒子を前記循環経路中に添加する粒子注入手段を備え、前記磁気分離手段は、前記粒子注入手段の後流側に配置され、前記粒子注入手段から添加された磁性粒子と共にその表面に吸着された被分離成分を分離するものであること。
(3)前記粒子注入手段と前記磁気分離手段との間に前記磁性粒子と血液中の被分離成分との吸着を促進する混合部を備えること。
(4)前記磁気分離手段の後流側に前記磁性粒子のサイズより小さな目を有するフィルタを備えること。
(5)前記磁性粒子が生体の一部を利用した構造を有していること。
(6)前記磁性粒子が鉄、ニッケル、コバルト、マンガンのうちの少なくとも一つの元素を含んだ有機化合物を含有していること。
(7)前記磁気分離手段は、磁場を発生する磁場発生器と、この磁場発生器が作る磁場中に配置されて高勾配磁場分布を生じると共にこの高勾配磁場分布に起因する磁気力により血液中の被分離成分を分離する強磁性体とを備えること。
(8)前記磁気分離手段は、磁場発生源として超電導磁石を用い、この超電導磁石が発生する高磁場空間を利用して血液中の被分離成分を磁気的に分離するものであること。
(9)前記超電導磁石が高温超電導バルク体であること。
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は、体内から取り出した血液を浄化して再び体内に還流する血液浄化方法において、体外に取り出した血液を血流ポンプにより循環経路に循環させ、前記循環経路内の血液中の被分離成分を磁気分離手段の磁気力を利用して分離するようにしたことにある。
【0011】
係る本発明のより好ましい具体的な構成は次の通りである。
(1)表面に特定物質を吸着させる作用を有する磁性粒子を血管内に注射して血液中の特定被分離成分を体内で前記磁性粒子の表面に吸着させた後、体外に設けた前記循環経路にて前記磁気分離手段の磁気力により前記磁性粒子とともに吸着された被分離成分を分離除去すること。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、血球の破壊を防止しつつ病因物質を高効率で除去できる血液浄化装置及び血液浄化方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の複数の実施例について図を用いて説明する。各実施例の図における同一符号は同一物または相当物を示す。なお、それぞれの実施例を必要に応じて適宜に組み合わせることにより、より効果的なものとすることができる。
【0014】
(第1実施例)
本発明の第1実施例を図1から図4を用いて説明する。
【0015】
まず、本実施例の血液浄化装置100の全体構成に関して図1を参照しながら説明する。図1は本発明の第1実施例の血液浄化装置100の構成図である。本実施例の血液浄化装置100は、血漿成分に水溶性となって溶解している病因蛋白質、例えばLDL(低密度リポ蛋白質)を除去するためのものである。
【0016】
血液浄化装置100は、血流ポンプ4、粒子注入部8、混合部9及び磁気分離部11を備えて構成されている。血流ポンプ4、粒子注入部8、混合部9及び磁気分離部11は、この順に接続されて、体外循環経路である循環経路3を構成している。
【0017】
血流ポンプ4は、体外に取り出した血液を循環経路3に循環させるものであり、血液取出口1の後段で且つ粒子注入部8、混合部9及び磁気分離部11の前段に配置されている。
【0018】
粒子注入部8は、循環経路3の血液中に機能性磁性粒子を注入する粒子注入手段を構成し、血流ポンプ4の後段で且つ混合部9及び磁気分離部11の前段に配置されている。機能性磁性粒子は、強磁性体である、例えば四三酸化鉄の表面に抗LDL抗体を修飾したようなものであり、その粒径は0.1μm〜10μm程度である。この機能性磁性粒子は生理食塩水に分散されたものとなっており、ポンプによって血液中に添加される。この添加の時に、なるべく機能性磁性粒子が均一に分散されるように、高圧、高速で添加するのが望ましい。
【0019】
混合部9は、血液成分中に添加された機能性磁性粒子と血液中のLDLと吸着反応を促進する混合手段を構成し、粒子注入部8の後段で且つ磁気分離部11の前段に配置されている。混合部9は、例えばらせん状やジグザグ状の流路から形成されており、血液成分中に均一に分散された機能性磁性粒子の表面に修飾されている抗LDL抗体と血液中のLDLとが抗原抗体反応を生じて磁性粒子の表面にLDLが吸着されるようにするものである。
【0020】
磁気分離部11は、循環経路3内の血液中の被分離成分(本実施例ではLDL)を磁気力を利用して分離する磁気分離手段を構成し、混合部9の後段に配置されている。
【0021】
係る血液浄化装置100における血液浄化方法を説明する。血液浄化装置100が患者に接続し、血流ポンプ4の運転を開始することにより、患者の体内から血液取出口1を通して循環経路3に血液が取り出される。体外にある循環経路3に取り出された血液に、粒子注入部8から所定量の機能性磁性粒子を継続的に注入する。機能性磁性粒子が注入された血液は、混合部9に至り、ここで機能性磁性粒子の表面の抗LDL抗体と血液中のLDLとが抗原抗体反応を生じて機能性磁性粒子の表面にLDLが吸着される。LDLが吸着された機能性磁性粒子を含む血液10は、磁気分離部11に至り、ここで血液中からLDLが吸着された機能性磁性粒子が磁気力により分離され取り除かれる。機能性磁性粒子が取り除かれた血液12は、正常な血液として血液還流口2を通して患者の体内に環流される。
【0022】
ここで、機能性磁性粒子として、四三酸化鉄のような強磁性体を考えたが、磁気分離部11の磁場発生源として超電導磁石を利用すれば、強磁性体でなくても十分磁気分離が可能である。例えば、合成樹脂でできた機能性磁性粒子でも良いし、患者の生体を利用したものでも良い。患者の生体を利用して作成したものであれば、漏洩しても体内で悪影響を及ぼすことが無い。例えば、磁気分離の効果をあげるために、有機鉄を含んだ粒子の利用が考えられる。有機鉄は弱い常磁性を示すことから、他の蛋白が負の磁性を示すのと比較して磁気分離の効率を向上させやすい。例えば、脂質で構成したカプセル内に鉄化合物等の磁性体を挿入したものなどが考えられる。
【0023】
本実施例の構成によれば、体外に取り出した血液を血流ポンプ5により循環経路3に循環させ、循環経路3内の血液中の病因物質である被分離成分を磁気分離部11の磁気力を利用して分離するようにしているので、血球の破壊を防止しつつ病因物質を高効率で除去できる。
【0024】
磁気分離部11の具体的構成に関して図2から図4を参照しながら説明する。図2は図1の血液浄化装置100の磁場発生器22の断面図、図3は図1の血液浄化装置100の磁気分離要素27の説明図、図4は図3の磁場発生器22に磁場を発生する装置の断面図である。
【0025】
図2に示すように、磁気分離部11を構成する磁場発生器22は、超電導磁石として、高温超電導バルク体21を用いている。高温超電導バルク体21はピン止め効果と呼ばれる特性があるため、超電導になったときの周囲磁場を保持する性質がある。例えば、イットリウム系超電導体は、臨界温度である約100K以下で超電導状態を示すが、磁場空間中で冷却をしていくと冷却終了時に臨界磁場以下の周囲磁場を保持することが可能である。また、高温超電導バルク体21は断熱容器24の内部空間23内に配置されている。なお、磁場発生器22は可搬型であり、容易に任意の場所に移動させることが可能である。
【0026】
この高温超電導バルク体21を有する磁場発生器22は、断熱容器24の内部空間23内に液体窒素を保持できる構造となっている。内部空間23に液体窒素を注入すると、液体窒素が蒸発して無くなるまで、高温超電導バルク体21を液体窒素温度(77K)近辺に保持できる。外壁はステンレスあるいはFRPや発泡スチロール等の断熱材で構成され、外界からの熱侵入を極力減らし、液体窒素の蒸発量を極力抑えた構造となっている。また、上部にも蒸発した窒素ガスを抜く孔のある断熱材25が嵌め込まれている。この断熱材25は液体窒素を注入した後に嵌め込むことができるようになっていても良い。この断熱材25により、磁場発生器22内への侵入熱量が抑えられている。さらに、内部に真空空間を設けて真空断熱すれば、より断熱性能は向上する。
【0027】
断熱容器24の下部には磁気分離要素設置用穴26が空いており、この穴26は高温超電導バルク体21に薄い壁面を介して設けられている。この穴26には、磁気分離部11の血流路となる磁気分離要素27が挿入されている。従って、磁気分離要素27と高温超電導バルク体21とは近接して配置されることとなり、高温超電導バルク体21の磁場が磁気分離要素27にかかるようになっている。
【0028】
図3に示すように、磁気分離要素27は、入口28と出口29とを有し、内部にステンレススチール等の強磁性材料でできた金網やスチールウールなどの強磁性細線を有している。この磁気分離要素27は、外部接続電極磁場をかけられたときに、強磁性体である強磁性細線の近傍に大きな磁場勾配が生じ、この磁気勾配に起因する大きな磁気力により機能性磁性粒子を吸引することが可能である。ここで、磁気分離要素27を構成する強磁性細線の表面は、合成樹脂等によりコーティングされ、血液と強磁性細線の金属部分とが直接触れない構造となっており、血液中に金属成分が流出することを防止している。
【0029】
磁気分離要素27は、図3(a)に示すように、折り返し流路とすると共に、入口28と出口29とを隣接して配置するように構成されている。これにより、図2に示す断熱容器24にある磁気分離要素設置用穴26を貫通穴でなく片側にのみ開口した穴とし、その開口から穴26の奥まで磁気分離要素27を単に挿入すればよく、磁気分離要素27を簡単に設置することができる。また、血液浄化時には図3(a)に示すように磁気分離要素27にコネクタ31Aを介してチューブ30を繋いで使用されるが、浄化終了後に磁気分離要素27を磁場発生器22から取り外す際、チューブ30を外さずに使用状態のまま一方向からの取り外しが可能である。さらに、図3(a)に示すように入口28と出口29とを並置させると共にコネクタ31Aを介して接続することにより、患者と繋げる際のチューブ30をワンタッチで取り付けることが可能である。
【0030】
また、血液浄化時にはコネクタ31Bの先に、図3(b)に示す循環経路チューブ32を取り付けて使用されるが、浄化終了後にコネクタ31から循環経路チューブ32を外して図3(c)に示す栓33を取り付けることにより、病因物質が蓄積された磁気分離要素27は使い捨て可能な構造となり、他患者への二次感染を防止できる。また、循環経路チューブ32は同一形状ではなく、先端部32aの形状を着脱可能の雄と雌との構造にしておけば、チューブ32同士を繋いで磁気分離要素27を取り外した後に洗浄することが可能である。
【0031】
図4に示すように、超電導着磁装置38は、超電導電磁石(コイル)34、ヘリウム冷凍機35及びヘリウム冷凍機35を備えて構成されている。超電導着磁装置38は、血液を浄化する施設内あるいは施設外に配置される。超電導電磁石34は、超電導体からなり、真空断熱容器37に入れられ、極低温のヘリウム冷凍機35等で4K付近まで冷却されて超電導状態を保っている。超電導電磁石34の線材としては低コスト、高信頼性のNbTiが考えられる。
【0032】
このような超電導電磁石34は、強磁場を発生することができるものの、装置が大掛かりで容易に持ち運びをすることができず、また漏洩磁場も無視できないため、取り扱いに大きな制限がある。そのため、超電導着磁装置38は血液浄化装置100の循環経路3から離れた場所に設置され、磁場発生器22が超電導着磁装置38に着脱可能とされている。
【0033】
励磁された超電導電磁石34のボア36の中に磁気分離要素27をあらかじめ挿入した磁場発生器22を入れ、磁場発生器22の高温超電導バルク体21部分が超電導磁石34のおおむね中央付近となるように設置する。磁場発生器22に液体窒素が注入されると、高温超電導バルク体21は臨界温度以下に低下するため超電導状態となり、周囲の磁場を保持する。高温超電導バルク体21の磁場が一旦保持されると、超電導電磁石34の磁場を落としても高温超電導バルク体21が臨界温度以下に冷却されつづける限り、高温超電導バルク体21の磁場は保持され続ける。取り出した磁場発生器22は例えば7Tといった高磁場を保持したままどこにでも持ち運ぶことが可能であり、臨床機器として非常に優れている。
【0034】
なお、高温バルク体21の冷却源は、液体窒素の代わりに小形の冷凍機を設置してもかまわない。小形冷凍機であれば、液体窒素冷却と比較して、液体窒素の蒸発による高温超電導バルク体の磁場消失の危険性が無い。さらに、液体窒素温度以下に冷却することが可能であるため、臨界磁場が大きくなることから、より大きな磁場強度を得られる可能性がある。一方、液体窒素冷却方式を用いるほうが、冷却時間や昇温時間及び装置の小型化に関して優れている。
【0035】
磁場発生器22は非常に小さな装置でありながら非常に大きな磁場を発生することができるため、取り扱いが容易であり、まわりに磁気的悪影響を与えずに高磁場を利用することができる。
【0036】
本実施例によれば、磁場発生器22及びこれを含む血液浄化装置100全体の大きさを小さいものとしても、大きな磁場を利用することができる。また、磁場発生器22中の高温超電導バルク体21は永久磁石と異なり、温度が上がると磁場が消滅するため、内部の磁気分離要素27を容易に交換することができる。
【0037】
なお、着磁用の超電導電磁石34は、複数の血液浄化装置用磁場発生器22に対して一機のみ存在すればよく、例えば汎用の冷凍機冷却式7T磁石を病院内のどこか一部に設置しておけばよい。設置場所は特に限定されないので、なるべく他の機器や患者等と接触しない場所に設置するのが良い。
【0038】
(第2実施例)
次に、本発明の第2実施例を図5を参照しながら説明する。図5は本発明の第2実施例の血液浄化装置の構成図である。この第2実施例は、次に述べる点で第1実施例と相違するものであり、その他の点については第1実施例と基本的には同一である。
【0039】
この第2実施例では、機能性磁性粒子を添加する前に、血球成分のみを先に分離する前段分離部5を有している。この前段分離部5は、遠心分離器やサイクロン等が用いられる。循環経路3において、まず前段分離部5等を用いて血球成分と血漿成分とに分離し、血漿成分を血漿成分流路6に、血球成分を血球成分流路7に通す。ここで、血漿成分と血球成分という表現を便宜上用いているが、血漿成分は血漿成分の濃度が比較的多く存在する血液のことを示し、血球成分は血球成分の濃度が比較的多く存在する血液のことを示している。血漿成分が通る血漿成分流路6側の循環経路3には、第1実施例と同様に粒子注入部8、混合部9及び磁気分離部11が設置され、機能性磁性粒子が粒子注入部8より添加される。なお、血球成分流路7の循環経路3は、血漿成分流路6側の循環経路3と磁気分離部11の後段で合流されている。
【0040】
係る構成とすることにより、血球成分等の比較的大きなサイズの粒子は、前段階で遠心分離器5等により取り除かれているため、混合部9では血球にダメージを与えることが無い上、大きなサイズの粒子が流れの妨げを生じさせる危険性も無い。
【0041】
また、この第2実施例では、磁気分離部11の後段に機能性磁性粒子の粒径より小さなメッシュのフィルタ15を設置している。これにより、機能性粒子の漏洩や体内への流入を防止することができる。
【0042】
また、例えば、患者の血液中から赤血球を取り出し、その赤血球の表面に抗LDL抗体等の修飾をして、その表面修飾された赤血球を機能性磁性粒子として利用する方法が考えられる。赤血球にはヘモグロビンが含まれており、ヘモグロビンは有機鉄を有しているため、容易に超電導磁石の磁気力で分離することが可能である。赤血球自体は患者体内に侵入しても体内に悪影響を及ぼすこともなく、有機鉄を有しているため磁性が存在し、上述したような高勾配の磁場分布を利用した高勾配磁気分離器、さらには超電導磁石を磁場発生源として利用した超電導高勾配磁気分離器により、磁気的に分離除去することが可能である。ここで、磁気分離部11において機能性磁性粒子として添加した赤血球は取り除かれるが、遠心分離器5等で血液中から取り除かれた赤血球を含む血球成分は、正常な血漿成分12と混合されて体内に環流される。もちろん、機能性磁性粒子として、第1実施例で記載したような脂質のカプセル等を利用したものを用いた場合でも効果は同様である。
【0043】
(第3実施例)
次に、本発明の第3実施例を図6を参照しながら説明する。図6は本発明の第3実施例の血液浄化装置の構成図である。この第3実施例は、次に述べる点で第1実施例と相違するものであり、その他の点については第1実施例と基本的には同一である。
【0044】
この第3実施例では、血球分離部である前段分離部5が高温超電導バルク体21Aを備え、この高温超電導バルク体21Aの磁気の力を利用して血球成分を分離するものである。血球分離部5においては、分離した血球成分を再び正常な血漿成分と合流させるため、連続的に流れながら分離させる構造の方が適している。この場合も高温超電導バルク体21A等の超電導磁石を利用することにより、例えば赤血球はそのまま磁石側に引き寄せられるため、分離可能である。
【0045】
(第4実施例)
次に、本発明の第4実施例を図7〜図9を参照しながら説明する。図7は本発明の第4実施例の血液浄化装置の構成図、図8は図7の磁気分離部11の磁気分離要素27の概要断面図、図9は図8の磁気分離要素27の斜視図である。この第4実施例は、次に述べる点で第2実施例と相違するものであり、その他の点については第2実施例と基本的には同一である。
【0046】
この第4実施例では、磁気分離部11の出口側を分岐し、高温超電導バルク体21の磁気力を利用して分岐された一方の流路から磁性粒子42を含む連続的に取り出すようになっている。なお、この第4実施例において、前段分離部5を第3実施例と同じ構造としても良い。
【0047】
この第4実施例では、磁気分離部11の流路中に磁性体を用いる必要がなくなるため、構造を簡素にすることができる。また、磁気分離部11において連続的に分離される磁性粒子は、返送流路18により粒子注入部8の磁性粒子タンクまで戻され再利用されるため、患者あたりに使用される磁性粒子量を必要最小限にすることができる。
【0048】
高温超電導バルク体21に隣接した分離部流路41内に流れる磁性粒子42は、図8に示すように、高温超電導バルク体21の磁気力によって高温超電導バルク体21側に引き寄せられ、出口43から連続的に排出される。残りの血液は出口44から流出される。具体的には、図9に示すような構造で流路を循環させることにより、磁気分離有効距離を長くすることができるため、効率よく磁性粒子を分離し、磁性出口43a〜43fから連続的に排出することが可能である。
【0049】
なお、係る磁気分離部11の構造は、図6の前段分離部5に適用することができる。
【0050】
(第5実施例)
次に、本発明の第5実施例を図10を参照しながら説明する。図10は本発明の第5実施例の血液浄化装置の構成図である。この第5実施例は、次に述べる点で第4実施例と相違するものであり、その他の点については第4実施例と基本的には同一である。
【0051】
この第5実施例では、磁気分離部11を2段階に分けて、前段を連続式磁気分離部11a(図7の磁気分離部11と基本的に同じ構造)、後段を磁性線フィルタによる磁気分離手段11b(図1の磁気分離部11と基本的に同じ構造)としている。
【0052】
かかる構成により、前段磁気分離部11aで粗く磁性粒子を回収して返送流路18により粒子注入部8を通して循環経路3に戻して再利用すると共に、細かい磁性粒子を経路17を通して後段磁気分離部11bに送り、ここで細かい磁性粒子の分離を行う。これにより、磁性粒子の添加量を必要最低限に抑えると共に、体内への磁性粒子の漏洩を防止することができる。
【0053】
(第6実施例)
次に、本発明の第6実施例を図11を参照しながら説明する。図11は本発明の第6実施例の血液浄化装置の構成図である。この第6実施例は、次に述べる点で第2実施例と相違するものであり、その他の点については第2実施例と基本的には同一である。
【0054】
この第6実施例では、体内に機能性磁性粒子を直接注入している。注射器により機能性粒子を血液に注入する。この際の磁性粒子は、例えば脂質でできたカプセルにマグネタイト等の磁性体、あるいはヘモグロビン等の生理磁性体を含有したものである。体内血管中において、機能性磁性粒子表面にLDL等の被除去物質が吸着する。注射後、一定時間が経過してから、体外血液循環流路により、体内に注入され表面に被除去物質を吸着した機能性磁性粒子を除去する。
【0055】
この第6実施例によれば、血液浄化装置100として図5の第2実施例と比較して混合部9が不要となるので、装置が簡単でコンパクトとなる。この第6実施例において、図1の第1実施例に示した例のように血球分離手段5を省いて直接血液全体を磁気分離することも可能である。
【0056】
(第7実施例)
次に、本発明の第7実施例を図12を参照しながら説明する。図12は本発明の第7実施例の血液浄化装置の構成図である。この第7実施例は、次に述べる点で第1実施例と相違するものであり、その他の点については第1実施例と基本的には同一である。
【0057】
この第7実施例は、膜51により血液中の成分52を透析液流路6A側に移行させ、透析液流路6A側に移行された成分のうちの被除去対象物質を第1実施例と同様の方法により磁気分離している。この第7実施例では、磁気分離部11として磁気フィルタの例を示したが、連続処理方式にしても良い。磁気分離手段11による被除去物質の除去後は、再び膜54により必要な物質のみ血液に戻す。この時圧力等を制御することにより、効率的に膜浸透が進行する。本構造により、磁性粒子が血液53側に漏洩することなく被除去物質を効率的に除去できるとともに、必要な物質が同時に除去されてしまうこと防ぐことができる。
【0058】
第1実施例〜第7実施例の被除去物質として、LDLを取り上げて説明したが、アンモニア、免疫疾患における異常抗体、癌細胞などの血液中から取り除くべき病因物質に関し、本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施例の血液浄化装置の構成図である。
【図2】図1の血液浄化装置の磁場発生器の断面図である。
【図3】図1の血液浄化装置の磁気分離要素の説明図である。
【図4】図3の磁場発生器に磁場を発生する装置の断面図である。
【図5】本発明の第2実施例の血液浄化装置の構成図である。
【図6】本発明の第3実施例の血液浄化装置の構成図である。
【図7】本発明の第4実施例の血液浄化装置の構成図である。
【図8】図7の磁気分離部の磁気分離要素の概要断面図である。
【図9】図8の磁気分離要素の斜視図である。
【図10】本発明の第5実施例の血液浄化装置の構成図である。
【図11】本発明の第6実施例の血液浄化装置の構成図である。
【図12】本発明の第7実施例の血液浄化装置の構成図である。
【符号の説明】
【0060】
1…血液取出口、2…血液還流口、3…循環経路、4…血流ポンプ、5…前段分離部、8…粒子注入部、9…混合部、10…機能性磁性粒子を含む血液、11…磁気分離部、18…返送流路、12…機能性磁性粒子が取り除かれた血液、21…高温超電導バルク体、22…磁場発生器、23…内部空間、24…断熱容器、25…断熱材、26…穴、27…磁気分離要素、28…入口、29…出口、30…チューブ、31A、31B…コネクタ、32…循環経路チューブ、32a…先端部、33…栓、34…超電導電磁石(コイル)、35…ヘリウム冷凍機、36…ボア、37…真空断熱容器、38…超電導着磁装置、41…分離部流路、42…磁性粒子、43、44…出口、51…膜、52…成分、100…血液浄化装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体外に取り出した血液を浄化して再び体内に還流する血液浄化装置において、
体外に取り出した血液を循環経路に循環させる血流ポンプと、前記循環経路内の血液中の被分離成分を磁気力を利用して分離する磁気分離手段とを備える
ことを特徴とする血液浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の血液浄化装置において、前記循環経路内の血液中の血球成分を分離する血球分離手段と、この血球分離手段で血球成分を分離された血液中の被除去成分を分離する被除去物分離手段とを備え、前記血球分離手段及び前記被除去物分離手段の少なくとも一方が磁気力を利用した磁気分離手段であることを特徴とする血液浄化装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の血液浄化装置において、表面に被分離成分を吸着させる作用を有する磁性粒子を前記循環経路中に添加する粒子注入手段を備え、前記磁気分離手段は、前記粒子注入手段の後流側に配置され、前記粒子注入手段から添加された磁性粒子と共にその表面に吸着された被分離成分を分離するものであることを特徴とする血液浄化装置。
【請求項4】
請求項3に記載の血液浄化装置において、前記粒子注入手段と前記磁気分離手段との間に前記磁性粒子と血液中の被分離成分との吸着を促進する混合部を備えることを特徴とする血液浄化装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の血液浄化装置において、前記磁気分離手段の後流側に前記磁性粒子のサイズより小さな目を有するフィルタを備えることを特徴とする血液浄化装置。
【請求項6】
請求項3から5の何れかに記載の血液浄化装置において、前記磁性粒子が生体の一部を利用した構造を有していることを特徴とする血液浄化装置。
【請求項7】
請求項3から6の何れかに記載の血液浄化装置において、前記磁性粒子が鉄、ニッケル、コバルト、マンガンのうちの少なくとも一つの元素を含んだ有機化合物を含有していることを特徴とする血液浄化装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れかに記載の血液浄化装置において、前記磁気分離手段は、磁場を発生する磁場発生器と、この磁場発生器が作る磁場中に配置されて高勾配磁場分布を生じると共にこの高勾配磁場分布に起因する磁気力により血液中の被分離成分を分離する強磁性体とを備えることを特徴とする血液浄化装置。
【請求項9】
請求項1から8の何れかに記載の血液浄化装置において、前記磁気分離手段は、磁場発生源として超電導磁石を用い、この超電導磁石が発生する高磁場空間を利用して血液中の被分離成分を磁気的に分離するものであることを特徴とする血液浄化装置。
【請求項10】
請求項9に記載の血液浄化装置において、前記超電導磁石が高温超電導バルク体であることを特徴とする血液浄化装置。
【請求項11】
体内から取り出した血液を浄化して再び体内に還流する血液浄化方法において、
体外に取り出した血液を血流ポンプにより循環経路に循環させ、
前記循環経路内の血液中の被分離成分を磁気分離手段の磁気力を利用して分離する
ことを特徴とする血液浄化方法。
【請求項12】
請求項11に記載の血液浄化方法において、表面に特定物質を吸着させる作用を有する磁性粒子を血管内に注射して血液中の特定被分離成分を体内で前記磁性粒子の表面に吸着させた後、体外に設けた前記循環経路にて前記磁気分離手段の磁気力により前記磁性粒子とともに吸着された被分離成分を分離除去することを特徴とする血液浄化方法。
【請求項1】
体外に取り出した血液を浄化して再び体内に還流する血液浄化装置において、
体外に取り出した血液を循環経路に循環させる血流ポンプと、前記循環経路内の血液中の被分離成分を磁気力を利用して分離する磁気分離手段とを備える
ことを特徴とする血液浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の血液浄化装置において、前記循環経路内の血液中の血球成分を分離する血球分離手段と、この血球分離手段で血球成分を分離された血液中の被除去成分を分離する被除去物分離手段とを備え、前記血球分離手段及び前記被除去物分離手段の少なくとも一方が磁気力を利用した磁気分離手段であることを特徴とする血液浄化装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の血液浄化装置において、表面に被分離成分を吸着させる作用を有する磁性粒子を前記循環経路中に添加する粒子注入手段を備え、前記磁気分離手段は、前記粒子注入手段の後流側に配置され、前記粒子注入手段から添加された磁性粒子と共にその表面に吸着された被分離成分を分離するものであることを特徴とする血液浄化装置。
【請求項4】
請求項3に記載の血液浄化装置において、前記粒子注入手段と前記磁気分離手段との間に前記磁性粒子と血液中の被分離成分との吸着を促進する混合部を備えることを特徴とする血液浄化装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の血液浄化装置において、前記磁気分離手段の後流側に前記磁性粒子のサイズより小さな目を有するフィルタを備えることを特徴とする血液浄化装置。
【請求項6】
請求項3から5の何れかに記載の血液浄化装置において、前記磁性粒子が生体の一部を利用した構造を有していることを特徴とする血液浄化装置。
【請求項7】
請求項3から6の何れかに記載の血液浄化装置において、前記磁性粒子が鉄、ニッケル、コバルト、マンガンのうちの少なくとも一つの元素を含んだ有機化合物を含有していることを特徴とする血液浄化装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れかに記載の血液浄化装置において、前記磁気分離手段は、磁場を発生する磁場発生器と、この磁場発生器が作る磁場中に配置されて高勾配磁場分布を生じると共にこの高勾配磁場分布に起因する磁気力により血液中の被分離成分を分離する強磁性体とを備えることを特徴とする血液浄化装置。
【請求項9】
請求項1から8の何れかに記載の血液浄化装置において、前記磁気分離手段は、磁場発生源として超電導磁石を用い、この超電導磁石が発生する高磁場空間を利用して血液中の被分離成分を磁気的に分離するものであることを特徴とする血液浄化装置。
【請求項10】
請求項9に記載の血液浄化装置において、前記超電導磁石が高温超電導バルク体であることを特徴とする血液浄化装置。
【請求項11】
体内から取り出した血液を浄化して再び体内に還流する血液浄化方法において、
体外に取り出した血液を血流ポンプにより循環経路に循環させ、
前記循環経路内の血液中の被分離成分を磁気分離手段の磁気力を利用して分離する
ことを特徴とする血液浄化方法。
【請求項12】
請求項11に記載の血液浄化方法において、表面に特定物質を吸着させる作用を有する磁性粒子を血管内に注射して血液中の特定被分離成分を体内で前記磁性粒子の表面に吸着させた後、体外に設けた前記循環経路にて前記磁気分離手段の磁気力により前記磁性粒子とともに吸着された被分離成分を分離除去することを特徴とする血液浄化方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−223723(P2006−223723A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−43785(P2005−43785)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(505064600)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(505064600)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]