説明

血液浄化装置

【課題】 装置内の残留血液の回収操作が、より安全に実施され得る血液浄化装置を提供する。
【解決手段】 血液導入口13を通じて導入された浄化されるべき血液を浄化器10に供給する血液供給流路12に、ポンプ手段16をバイパスするバイパス流路28を設けると共に、バイパス流路28上に、濾過手段58と、バイパス流路28を自動的に開閉せしめる第一の開閉手段62,64とを設け、更に、第一の開閉手段62,64の開閉作動を制御して、外部からの信号入力により、ポンプ手段16の駆動状態で第一の開閉手段62,64の開作動を行う制御手段66を設けて、構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液浄化装置に係り、特に、患者の体内から取り出した血液を浄化器で浄化して、再び体内に戻すようにした血液浄化装置の改良された構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、腎不全の患者の治療や生命の維持のために、患者の血液を浄化する血液浄化装置として、所謂人工腎臓が、広く用いられるようになってきている。そして、かかる装置には、函体内に、中空繊維状のセルロース膜、キュプロアンモニウムレーヨン膜、ポリアクリロニトリル膜等の半透膜が収容されてなる浄化器が用いられ、例えば、血液透析操作を行う場合には、浄化器たるダイアライザ(透析器)内で、患者の血液が、半透膜を介して、透析液に接触せしめられることにより、患者の血液中に蓄積した尿素、尿酸、水等が透析、除去せしめられて、かかる血液が浄化されるようになっている。
【0003】
また、このようなダイアライザの如き浄化器を有する従来の血液浄化装置は、一般に、浄化器の血液の流入側に、血液導入口を有する血液供給流路が接続される一方、浄化器の血液の流出側に、血液返送流路が接続されており、更に、それらの流路のうち、血液供給流路上に、血液ポンプが設けられている。そして、血液供給流路の血液導入口と、血液返送流路の末端部とに、動脈側穿刺針と静脈側穿刺針とがそれぞれ取り付けられて、血液供給流路に取り付けられた動脈側穿刺針が、患者のシャント血管の上流側に穿刺される一方、血液返送流路に取り付けられた静脈側穿刺針が、患者のシャント血管の下流側に穿刺されることにより、血液回路を構成し得るようになっている。
【0004】
かくして、かかる血液回路を構成する血液浄化装置にあっては、動脈側穿刺針を通じて、血液供給流路内に、血液導入口から導入された、浄化されるべき血液が、血液ポンプの作用にて、浄化器内に送出せしめられて、浄化された後、この浄化された血液が、浄化器内から血液返送流路内に流出せしめられて、かかる血液返送流路の先端に設けられた静脈側穿刺針を通じて、患者に戻されるようになっている。
【0005】
また、このような従来の血液浄化装置では、通常、例えば濾過網等が内部に配設された動脈チャンバと静脈チャンバとが、血液供給流路上と血液返送流路上とにそれぞれ配設されて、血液の浄化操作が行われるときに、それら各流路内の血液が、各チャンバ内に一旦貯留されて、血液中に混入する空気が除去されると共に、内部に配設された濾過網等により、各チャンバ内の血液が濾過され、かかる血液中の血栓が捕捉されて、取り除かれることで、血液浄化操作が安全に実施され得るように構成されているのである。
【0006】
ところで、かくの如き血液浄化装置を用いた患者の血液の浄化操作の終了後には、装置の内部に残留する血液を、患者の体内に戻す血液回収操作を行う必要があるが、近年では、患者の負担の軽減や血液回収操作の効率化と安全性の確保等を図るために、血液浄化操作の終了後に、動脈側穿刺針と静脈側穿刺針とを患者から抜去することなく、患者に穿刺したままで、血液回収操作を実施するようにした装置が、例えば、下記特許文献1等において提案されている。
【0007】
すなわち、この特許文献1に開示の血液浄化装置にあっては、浄化器内での透析液側の圧力を血液側の圧力よりも相対的に高めるのことの出来る圧発生手段と、血液供給流路を連通/遮断状態に切り換える第一の遮断手段と、血液返送流路を連通/遮断状態に切り換える第二の遮断手段とを有して、構成されており、血液浄化操作の終了後に、第一及び第二遮断手段にて、血液供給流路と血液返送流路の連通/遮断状態を制御しつつ、圧発生手段を作動せしめて、浄化器内での透析液側の圧力を血液側の圧力よりも高く為すことにより、浄化器内で、透析液を半透膜を介して血液側に移行せしめる、所謂逆濾過が行われ得るようになっている。
【0008】
そして、このような血液浄化装置では、血液回収操作時に、例えば、先ず、第一及び第二遮断手段にて、血液供給流路が遮断状態とされ且つ血液返送流路が連通状態とされた状態下で、圧発生手段が作動せしめられて、逆濾過が行われることにより、浄化器内及び血液返送流路内の残留血液が、透析液に置換されて、血液返送流路を通じて患者の体内に戻された後、第一及び第二遮断手段がそれぞれ切り換えられて、血液供給流路が連通状態とされ且つ血液返送流路が遮断状態とされた状態下で、再び、圧発生手段の作動による逆濾過が行われることにより、血液供給流路内の残留血液が、浄化器側から血液導入口側に向かって逆流せしめられて、患者の体内に戻され、以て、装置内部の残留血液の全量の回収が確実に実施され得るようになっているのである。
【0009】
ところが、かかる従来の血液浄化装置においては、前述せる如く、血液浄化操作中に、血液供給流路上に設けられた動脈チャンバ内や静脈チャンバ内の濾過網にて、血液供給流路内を流通する浄化されるべき血液中の血栓が捕捉され得るようにした構成が採用される場合、血液返送流路内の残留血液の回収操作の実施時には、残留血液の流通方向が、血液浄化操作時の血液の流通方向と同じであるところから、何等問題が生じないものの、血液供給流路内の残留血液の回収操作の実施時には、残留血液が、血液供給流路内を逆流せしめられるため、血液浄化操作で動脈チャンバ内の濾過網に捕捉された血栓が、残留血液に混入して、残留血液と共に患者の体内に送り込まれる恐れがあった。
【0010】
また、従来の血液浄化装置において、血液供給流路上に動脈チャンバが設けられていない場合にあっても、血液回収操作により、血液供給流路内の残留血液が、浄化器側から血液導入口側に向かって逆流せしめられる際に、血液供給流路における浄化器との接続部付近等を始めとした様々な部位で形成された血栓が残留血液に混入し、残留血液と共に患者の体内に送り込まれる懸念があったのである。
【0011】
【特許文献1】特公平5−15464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、血液浄化操作中に、浄化されるべき血液中から除去された血栓や、血液供給流路内に形成された血栓が、血液浄化操作終了後の血液回収操作中に、残留血液と共に患者の体内に送り込まれるようなことが効果的に防止され得て、血液回収操作がより安全に実施され得るようにした血液浄化装置の改良された構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そして、本発明にあっては、かかる課題の解決のために、その要旨とするところは、函体内に半透膜を収容してなり、該半透膜を介して血液を透析液に接触せしめて浄化する浄化器と、該浄化器に接続され、血液導入口を通じて導入された浄化されるべき血液を該浄化器に供給するための血液供給流路と、該血液供給流路上に設けられた、血液を該浄化器に送出するためのポンプ手段と、該浄化器に接続され、該浄化器で浄化された血液を体内に返送するための血液返送流路とを備えた血液浄化装置において、(a)前記浄化器内において前記半透膜を介して血液に接触せしめられる透析液側の圧力を血液側の圧力よりも高くすることにより、該浄化器内で、該半透膜を通じて、透析液を血液側に移行せしめる透析液移行手段と、(b)前記ポンプ手段よりも前記血液導入口側の前記血液供給流路部位に位置する第一の接続部と前記ポンプ手段よりも前記浄化器側の該血液供給流路部位に位置する第二の接続部とを結ぶ、該ポンプ手段に対してバイパスとなるバイパス流路と、(c)前記バイパス流路上に設けられて、該バイパス流路内を流通せしめられる血液を濾過して、該血液中の血栓を除去する濾過手段と、(d)前記バイパス流路上に配設され、該バイパス流路を自動的に開閉せしめて、該バイパス流路を通じての液流通を許容乃至は阻止する第一の開閉手段と、(e)前記第一の開閉手段の開閉作動を制御して、外部からの信号入力により、該ポンプ手段の駆動状態で該第一の開閉手段の開作動を行う制御手段とを含んで構成したことを特徴とする血液浄化装置にある。
【発明の効果】
【0014】
すなわち、本発明に従う血液浄化装置にあっては、第一の開閉手段の開閉作動が、制御手段にて制御されるようになっているところから、例えば、血液浄化操作が実施されている間は、制御手段による制御の下で、第一の開閉手段が閉作動せしめられ得る。そして、そのような第一の開閉手段の閉作動により、バイパス流路が閉鎖せしめられた状態において、ポンプ手段が駆動せしめられることで、血液導入口を通じて導入された、浄化されるべき血液が、バイパス流路内を流通せしめられることなく、血液供給流路内のみを通じて流通せしめられて、浄化器に供給されるようになる。これにより、血液浄化操作中に、浄化されるべき血液が、血液供給流路のバイパス流路上に設けられた濾過手段に接触せしめられることが確実に回避され得て、かかる濾過手段に、血液供給流路内の血液中の血栓が捕捉されるようなことや、或いはその濾過手段において血栓が形成されるようなことが、効果的に阻止され得る。
【0015】
また、かかる本発明装置では、浄化器内における透析液側の圧力を血液側の圧力よりも高くして、浄化器内で、透析液を血液側に移行せしめる透析液移行手段が設けられているところから、例えば、上記の如き血液浄化操作の終了後に、この透析液移動手段が作動せしめられることで、浄化器と血液返送流路と血液供給流路のそれぞれの内部に残留する血液が、浄化器内で血液側に移行せしめられた透析液にて置換される。これにより、特に血液供給流路内の残留血液は、血液浄化操作中の流通方向とは反対側の方向となる、浄化器から血液導入口側に向かう方向に逆流せしめられて、回収されるようになる。そして、このとき、上述の如く、血液浄化操作中におけるバイパス流路上の濾過手段での血栓の捕捉や形成が阻止されているため、そのような濾過手段に対する残留血液の接触によって、血栓が残留血液中に混入せしめられるようなことが、完全に皆無ならしめられ得る。
【0016】
しかも、本発明に係る血液浄化装置では、制御手段に対する外部からの信号入力により、制御手段の制御下において、ポンプ手段が駆動せしめられた状態で、第一の開閉手段が開作動せしめられて、血液供給流路とバイパス流路とが連通せしめられるようになっている。そのため、血液浄化操作の終了後に、上記の如き血液供給流路内の残留血液の回収操作の実施に先立って、ポンプ手段の駆動状態下で、外部からの信号が制御手段に入力せしめられると、第一の接続部と第二の接続部との間の血液供給流路部位内に残留する血液が、血液浄化操作の実施時と同様に、かかる血液供給流路部位内を、第一の接続部側から第二の接続部側に向かって流動せしめられ、そして、その残留血液は、第二の接続部を通じて、バイパス流路内に流入せしめられるようになる。
【0017】
これにより、血液浄化操作の開始前にバイパス流路内に予め収容された生理的食塩水等のプライミング液が、第二の接続部から流入せしめられる残留血液に押されて、バイパス流路内を、第二の接続部側から第一の接続部側に向かって流動せしめられる。そして、その結果、第一の接続部と第二の接続部との間の血液供給流路部位内の残留血液が、バイパス流路内の収容液と共に、血液供給流路部位内とバイパス流路内とを循環せしめられる。
【0018】
つまり、本発明装置では、制御手段により、ポンプ手段が駆動せしめられた状態で、第一の開閉手段が開作動せしめられると、第一の接続部と第二の接続部との間の血液供給流路部位とバイパス流路とにて、それらの流路内に残留乃至は収容された血液やプライミング液等が循環する循環回路が構成され、そして、そのような循環回路内での残留血液やプライミング液の循環中に、それらの液が、バイパス流路内に設けられた濾過手段にて濾過せしめられるようになる。
【0019】
それ故、かかる本発明装置にあっては、血液浄化操作中に第一の接続部や第二の接続部に形成された血栓、特に、血液供給流路内の残留血液の回収操作の実施時おける残留血液の流通方向において、バイパス流路に設けられた濾過手段よりも下流側に位置する第一の接続部に形成された血栓が、血液浄化操作の終了後に行われる上記の如き残留血液やプライミング液の循環操作中において、それらの液内に混入し、バイパス流路に設けられた濾過手段にて、かかる濾過手段におけるバイパス流路の第二の接続部側で確実に捕捉され得る。
【0020】
そして、本発明に係る血液浄化装置においては、例えば、上記の如き残留血液やプライミング液の循環回路内での循環操作の開始から所定の時間の経過後に、透析液移行手段の作動に基づいて、血液供給流路内の残留血液を逆流させて回収する操作が行われるようになると、第二の接続部よりも浄化器側の血液供給流路部位内の残留血液が、バイパス流路と第一の接続部と第二の接続部との間の血液供給流路部とから形成される循環流路を循環せしめられている血液と混合せしめられて、バイパス流路内に流入して、バイパス流路内の濾過手段にて濾過される。また、濾過手段において濾過された混合残留血液は、その一部が、第一の接続部を通じて血液導入口の方向に流出して体内に戻される一方、残りの部分は、第一の接続部と第二の接続部との間の血液供給流路部に流入し、バイパス流路と第一の接続部と第二の接続部との間の血液供給流路部とから形成される循環流路を再循環させられる。
【0021】
かくして、本発明装置では、装置内部の残留血液の回収操作の実施時に、第二の接続部よりも浄化器側の血液供給流路部位内の残留血液中に混入せしめられた血栓が、バイパス流路に設けられた濾過手段にて捕捉され得る。また、例えば、血液供給流路上に、濾過手段を内部に有する動脈チャンバが設けられて、この動脈チャンバ内の濾過手段により、血液浄化操作中に捕捉された血栓が、血液供給流路内の残留血液中に混入せしめられるようなことがあっても、かかる動脈チャンバの配設部位が、血液供給流路におけるバイパス流路よりも浄化器側の部位であるので、残留血液中の血栓は、血液回収操作中に、バイパス流路内の濾過手段にて、再度、捕捉せしめられ得る。
【0022】
従って、かくの如き本発明に従う血液浄化装置を用いれば、血液浄化操作中に、浄化されるべき血液中から除去された血栓や、血液供給流路内に形成された血栓等が、血液浄化操作終了後の血液回収操作中に、残留血液と共に患者の体内に送り込まれるようなことがより効果的に防止され得るのであり、その結果として、血液回収操作が、より一層安全に実施され得ることとなるのである。
【発明の態様】
【0023】
ところで、本発明は、少なくとも、以下に列挙する如き各種の態様において、好適に実施され得るものである。
【0024】
<1> 函体内に半透膜を収容してなり、該半透膜を介して血液を透析液に接触せしめて浄化する浄化器と、該浄化器に接続され、血液導入口を通じて導入された浄化されるべき血液を該浄化器に供給するための血液供給流路と、該血液供給流路上に設けられた、血液を該浄化器に送出するためのポンプ手段と、該浄化器に接続され、該浄化器で浄化された血液を体内に返送するための血液返送流路とを備えた血液浄化装置において、(a)前記浄化器内において前記半透膜を介して血液に接触せしめられる透析液側の圧力を血液側の圧力よりも高くすることにより、該浄化器内で、該半透膜を通じて、透析液を血液側に移行せしめる透析液移行手段と、(b)前記ポンプ手段よりも前記血液導入口側の前記血液供給流路部位に位置する第一の接続部と前記ポンプ手段よりも前記浄化器側の該血液供給流路部位に位置する第二の接続部とを結ぶ、該ポンプ手段に対してバイパスとなるバイパス流路と、(c)前記バイパス流路上に設けられて、該バイパス流路内を流通せしめられる血液を濾過して、該血液中の血栓を除去する濾過手段と、(d)前記バイパス流路上に配設され、該バイパス流路を自動的に開閉せしめて、該バイパス流路を通じての液流通を許容乃至は阻止する第一の開閉手段と、(e)前記第一の開閉手段の開閉作動を制御して、外部からの信号入力により、該ポンプ手段の駆動状態で該第一の開閉手段の開作動を行う制御手段とを含んで構成したことを特徴とする血液浄化装置。
【0025】
<2> 上記せる態様<1>において、前記ポンプ手段の駆動速度が、前記制御手段にて制御され、該制御手段による該ポンプ手段の駆動状態での前記第一の開閉手段の開作動に連動して、該ポンプ手段の駆動速度が該制御手段にて増加せしめられるようになっていること。
【0026】
このような本態様によれば、血液浄化操作の終了後に、血液供給流路内の残留血液の回収操作が実施されるのに先立って、第一の接続部と第二の接続部との間の血液供給流路部位内の残留血液が、バイパス流路内のプライミング液と共に、それら血液供給流路部位とバイパス流路からなる循環回路内を、血液浄化操作の実施時よりも大きな流速で循環せしめられるようになる。そのため、第一の接続部や第二の接続部に対して血液浄化操作中に形成された血栓が、循環せしめられる残留血液やプランミング液の流れによって、それら第一及び第二の接続部から、より確実に剥離され得て、バイパス流路内に設けられた濾過手段にて、更に効果的に捕捉せしめられ得ることとなる。
【0027】
しかも、かかる本態様においては、ポンプ手段の駆動状態での第一の開閉手段の開作動に連動して、ポンプ手段の駆動が、制御手段により増速せしめられるようになっているところから、上記の如く、第一の接続部や第二の接続部に形成された血栓がより確実に捕捉され得る残留血液とプライミング液の循環回路内での循環操作が、人手を煩わすことなく、優れた作業性をもって、有利に実現され得る。
【0028】
<3> 上記せる態様<1>又は態様<2>において、前記血液返送流路上に、該血液返送流路を自動的に開閉せしめて、該血液返送流路を通じての液流通を許容乃至は阻止する第二の開閉手段が設けられると共に、該第二の開閉手段の開閉作動が前記制御手段にて制御されて、該制御手段による前記ポンプ手段の駆動状態での前記第一の開閉手段の開作動に連動して、該第二の開閉手段が、該制御手段にて閉作動せしめられるようになっていること。
【0029】
この本態様によれば、第二の開閉手段にて、血液返送流路が閉塞された状態で、血液浄化操作の終了後に、第一の接続部と第二の接続部との間の血液供給流路部位内の残留血液が、バイパス流路内のプライミング液と共に、循環回路内を循環せしめられるようになる。そのため、そのような残留血液とプライミング液の循環操作中における、血液供給流路と浄化器との間の液流通、更には第二の接続部と浄化器との間の血液供給流路部位での液流通が効果的に阻止されて、循環回路から浄化器側への残留血液とプライミング液の流出が有利に防止され得る。そして、その結果として、第一の接続部や第二の接続部に形成されて、残留血液やプライミング液に混入した血栓の全量が、バイパス流路内に設けられた濾過手段にて、より一層確実に捕捉され得ることとなる。
【0030】
しかも、かかる本態様においては、ポンプ手段の駆動状態での第一の開閉手段の開作動に連動して、第二の開閉手段が、制御手段にて閉作動せしめられるようになっているところから、上記の如く、第一の接続部や第二の接続部に形成された血栓がより確実に捕捉され得る残留血液とプライミング液の循環操作が、人手を煩わすことなく、優れた作業性をもって、有利に実現され得る。
【0031】
<4> 上記せる態様<3>において、前記透析液移行手段の作動/停止が、前記制御手段にて制御されると共に、該制御手段が、前記ポンプ手段の駆動状態で前記第一の開閉手段を開作動せしめてからの経過時間を計測する第一のタイマ機構を有して構成され、かかる第一のタイマ機構による計測時間が予め設定された時間に達したときに、該制御手段にて、該透析液移行手段が作動せしめられるようになっていること。
【0032】
この本態様によれば、第一の接続部と第二の接続部との間の血液供給流路部位内の残留血液やプライミング液の前記循環回路内での循環操作の開始から予め設定された時間の経過後に、透析液移行手段の作動に基づいて、血液供給流路内の残留血液を逆流させて回収する操作が行われ得る。このため、第一の接続部や第二の接続部にて形成されて、循環回路内を循環せしめられる残留血液やプライミング液に混入した血栓が、予め設定された時間をかけて、バイパス流路内に設置された濾過手段にて補足された後に、浄化器内および第二の接続部よりも浄化器側の血液供給流路部内に残留していた血液がバイパス流路上に設けられた濾過手段を経て回収されるようになる。その結果、第一の接続部や第二の接続部にて形成されて、残留血液やプライミング液に混入した血栓の全量が、バイパス流路内に設置された濾過手段にて、更に一層確実に補足され得ることとなる。
【0033】
しかも、本態様においては、制御手段のタイマ機構によって計測された、ポンプ手段の駆動状態での第一の開閉手段の開作動からの経過時間が、予め設定された時間に達したときに、透析液移行手段の作動が開始せしめられるようになっているところから、第一の接続部と第二の接続部との間の血液供給流路部位内の残留血液やプライミング液の前記循環回路内での循環操作の開始から所定時間の経過後に、血液供給流路内の残留血液の回収操作が、人手を煩わすことなく、自動的に開始され得るのであり、それによって、かかる回収操作における作業性が、効果的に高められ得る。
【0034】
<5> 上記せる態様<1>又は態様<2>において、前記第一の接続部と前記血液導入口との間の前記血液供給流路部位と、前記第二の接続部と前記浄化器との間の前記血液供給流路部位のうちの少なくとも何れか一方の血液供給流路部位上に、該血液供給流路部位を自動的に開閉せしめて、該血液供給流路部位を通じての液流通を許容乃至は阻止する第三の開閉手段が設けられると共に、該第三の開閉手段の開閉作動と前記透析液移行手段の作動/停止とが、前記制御手段にて制御されて、該制御手段による前記ポンプ手段の駆動状態での前記第一の開閉手段の開作動に連動して、該第三の開閉手段が閉作動せしめられる一方、該透析液移動手段が作動せしめられるようになっていること。
【0035】
この本態様によれば、血液浄化操作の終了後に、ポンプ手段の駆動状態での第一の開閉手段の開作動に連動して、第三の開閉手段にて、前記せる循環回路よりも血液導入口側と浄化器側とにそれぞれ位置する血液供給流路部位の少なくとも何れか一方が閉塞されて、第一の接続部と第二の接続部との間の血液供給流路部位内の残留血液が、バイパス流路内のプライミング液と共に、循環回路内を循環せしめられるようになる。そのため、そのような循環操作中に、循環回路よりも血液導入口側の血液供給流路部位内の残留血液の流入等によって、残留血液とプライミング液が、循環回路から、浄化器側の血液供給流路部位に流出することが有利に防止され得る。そして、その結果として、第一の接続部や第二の接続部に形成されて、残留血液やプライミング液に混入した血栓の全量が、バイパス流路内に設けられた濾過手段にて、より一層確実に捕捉され得ることとなる。
【0036】
しかも、かかる本態様においては、ポンプ手段の駆動状態での第一の開閉手段の開作動に連動して、制御手段により、透析液移行手段が作動せしめられて、浄化器内で、透析液が半透膜を介して透析液側から血液側に移行せしめられるようになる。このとき、第三の開閉手段が閉作動せしめられているため、浄化器内で血液側に移行せしめられた透析液は、浄化器内から血液返送流路側に向かって流通せしめられ、これによって、浄化器内の残留血液と血液返送流路内の残留血液が、浄化器内で血液側に移行せしめられた透析液にて置換されて、患者の体内に押し戻されていくようになる。
【0037】
従って、このような本態様においては、第一の接続部と第二の接続部との間の血液供給流路部位内の残留血液とバイパス流路内のプライミング液の循環回路内での循環操作による、第一の接続部や第二の接続部に形成された血栓の濾過手段での捕捉と、浄化器内及び血液返送流路内の残留血液の回収操作が同時に行われ得るのであり、その結果、血栓の体内への侵入を確実に防止することが可能な血液回収操作の所要時間の短縮化が、有利に実現され得ることとなるのである。
【0038】
<6> 上記せる態様<5>において、前記透析液移行手段の作動により、前記浄化器内で、前記半透膜を通じて血液側に移行せしめられた透析液の移行量を検出する透析液移行量検出手段が設けられると共に、前記血液返送流路上に、前記制御手段による制御に基づいて、該血液返送流路を自動的に開閉せしめて、該血液返送流路を通じての液流通を許容乃至は阻止する第二の開閉手段が設けられて、該透析液移行量検出手段により検出された前記透析液の移行量が予め設定された量に達したときに、該制御手段により、前記第三の開閉手段が開作動せしめられる一方、前記第二の開閉手段が閉作動せしめられるようになっていること。
【0039】
この本態様にあっては、例えば、透析液移行量検出手段にて検出される透析液移行量が、浄化器内における血液流路内の容積と血液返送流路内の容積の合計量に達したときに、制御手段により、第三の開閉手段が開作動せしめられる一方、第二の開閉手段が閉作動せしめられるように為せば、浄化器内と血液返送流路内の残留血液の略全量が、浄化器内で血液側に移行せしめられた透析液にて置換されて、体内に戻された時点で、透析液移行手段の作動状態のままで、制御手段により、第三の開閉手段が開作動せしめられると共に、第二の開閉手段が閉作動せしめられるようになる。そして、その時点からは、浄化器内で血液側に移行せしめられた透析液が、血液供給流路内に向かって流通せしめられて、血液供給流路内の残留血液が、かかる透析液にて置換され、以て、特に、第一の接続部と第二の接続部の間の血液供給流路部分内の残留血液と、第二の接続部よりも浄化器側の血液供給流路部分内の残留血液とが、上述せるように、バイパス流路及びその内部に設けられた濾過手段を経て、体内に戻される得るようになる。
【0040】
従って、かくの如き本態様によれば、浄化器内の残留血液と血液返送流路内の残留血液の回収操作に引き続いて、血液供給流路内の残留血液の回収操作が、自動的に且つスムーズに実施され得ることとなる。
【0041】
<7> 上記せる態様<1>乃至態様<6>のうちの何れか一つにおいて、前記血液供給流路上に、前記第一の接続部を振動させる振動手段が設けられると共に、該振動手段の作動/停止が前記制御手段にて制御されて、該制御手段による前記ポンプ手段の駆動状態での前記第一の開閉手段の開作動に連動して、該振動手段の作動が開始せしめられるように構成され、更に、該制御手段が、該振動手段の作動開始からの経過時間を計測する第二のタイマ機構を有し、該第二のタイマ機構による計測時間が予め設定された時間に達したときに、該制御手段にて、該振動手段が停止せしめられるようになっていること。
【0042】
このような本態様によれば、前記せる循環回路内での残留血液とプライミング液の循環操作の開始と同時に、第一の接続部が、予め定められた一定の時間の間だけ自動的に振動せしめられて、第一の接続部に形成された血栓が、第一の接続部の振動により、第一の接続部から効果的に剥離され得るようになる。その結果、循環回路内での残留血液とプライミング液の循環操作中に、第一の接続部から剥離された血栓が、バイパス流路内に設けられた濾過手段にて、より確実に捕捉され得る。
【0043】
<8> 上記せる態様<1>乃至態様<7>のうちの何れか一つにおいて、前記血液供給流路における前記第一の接続部が、柔軟性乃至は弾性を有するチューブにて構成されると共に、かかる第一の接続部に対して、外部から押圧力を断続的に繰り返し作用せしめる押圧手段が設けられ、更に、該押圧手段の作動/停止が前記制御手段にて制御されて、該制御手段による前記ポンプ手段の駆動状態での前記第一の開閉手段の開作動に連動して、該押圧手段の作動が開始せしめられるように構成される一方、該制御手段が、該押圧手段の作動開始からの経過時間を計測する第三のタイマ機構を有し、該第三のタイマ機構による計測時間が予め設定された時間に達したときに、該制御手段にて、該押圧手段が停止せしめられるようになっていること。
【0044】
この本態様によれば、前記せる循環回路内での残留血液とプライミング液の循環操作の開始と同時に、第一の接続部が、予め定められた一定の時間の間だけ自動的に揉まれるような状態とされて、第一の接続部に形成された血栓が、そこから効果的に剥離され得るようになる。それによって、循環回路内での残留血液とプライミング液の循環操作中に、第一の接続部から剥離された血栓が、バイパス流路内に設けられた濾過手段にて、より確実に捕捉され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0046】
先ず、図1には、本発明に従う血液浄化装置の一実施形態を示す系統図が、概略的に示されている。かかる図1において、10は、血液浄化器の一種であるダイアライザ(血液透析器)であって、従来と同様な構造を有しており、円筒形状の函体内部に、中空繊維状の半透膜が収容されると共に、かかる半透膜を介して、血液流路と透析液流路(共に図示せず)が設けられて、構成されている。また、このダイアライザ10の軸方向の一端側には、患者の体内から血液を導くための血液供給流路12が接続されている一方、その他端側には、ダイアライザ10内で浄化された血液を患者の体内に返送するための血液返送流路14が接続されている。なお、それら血液供給流路12や血液返送流路14は、従来と同様に、例えば、樹脂材料等を用いて形成された、柔軟性乃至は弾性を有するチューブにて構成されている。
【0047】
また、血液供給流路12においては、ダイアライザ10の接続側とは反対側の先端開口部が、血液導入口13とされて、そこに、図示しない公知の動脈側穿刺針が取り付けられるようになっている。一方、血液返送流路14も、ダイアライザ10の接続側とは反対側の先端開口部が、血液返送口15とされて、そこに、図示しない公知の静脈側穿刺針が取り付けられるようになっている。
【0048】
そして、そのような血液供給流路12上には、公知の構造を有するポンプ手段としての血液ポンプ16が設けられており、この血液ポンプ16の駆動によって、血液導入口13から血液供給流路12内に導入された血液が、ダイアライザ10内に送出されて、ダイアライザ10内を流通せしめられた後、ダイアライザ10内から血液返送流路14内に流出せしめられるようになっている。そしてまた、この血液返送流路14内に流出せしめられた血液が、血液返送口15から患者の体内に返送されるようになっている。
【0049】
このように、本実施形態においては、血液導入口13と血液返送口15にそれぞれ取り付けられた両穿刺針と血液供給流路12と血液返送流路14とダイアライザ10内の血液流路とにて、患者の血液が体外循環せしめられる血液回路が構成されているのである。なお、以下からは、本実施形態の血液浄化装置の構造の理解を容易と為すために、血液流通方向の上流側とは、かかる血液回路での血液導入口13側を言い、また、血液流通方向の下流側とは、かかる血液回路での血液返送口15側を言うこととする。
【0050】
そして、かくの如き血液回路を構成する血液供給流路12においては、ダイアライザ10との接続部の近傍に、第三の開閉手段としての第三電磁弁18が設けられている。また、血液返送流路14におけるダイアライザ10との接続部の近傍にも、第二の開閉手段としての第二電磁弁19が配設されている。そして、それらの第三及び第二電磁弁18,19の開閉作動に応じて、各血液流路12,14が自動的に開閉せしめられて、各血液流路12,14を通じての血液の流通が許容乃至は阻止され得るようになっている。
【0051】
また、血液供給流路12上における血液ポンプ16と第三電磁弁18との間の部位と、血液返送流路14上における第二電磁弁19よりも血液返送口15側の部位とには、動脈チャンバ20と静脈チャンバ22とが、それぞれ一つずつ配設されている。これら動脈及び静脈チャンバ20,22は、血液供給流路12内と血液返送流路14内とをそれぞれ流通せしめられる血液を一旦貯留して、それらの血液中の空気を除去する、従来と同様な構造を有している。また、それら各チャンバ20,22内には、血液は通過させるが、血液中の血栓は通過させない大きさの網目を有する公知の濾過網(図示せず)がそれぞれ配設されており、それら各濾過網にて、導入される血液を濾過し、かかる血液中の血栓を捕捉、除去し得るようになっている。
【0052】
一方、ダイアライザ10には、新鮮な透析液を、その貯槽(図示せず)よりダイアライザ10の透析液流路内に導くための透析液供給流路24が接続されていると共に、ダイアライザ10内で、血液供給流路12を通じてダイアライザ10内に供給された血液に対して、前記半透膜を介して接触せしめられて、半透膜の透析及び濾過作用により血液から取り出された不要物質乃至は有害物質を含むようになった透析液を排出するための透析液排出流路26が接続されている。
【0053】
また、ここでは、それら透析液供給流路24と透析液排出流路26の流路上に、ダイアライザ10に対する透析液の供給量と排出量とを調節することによって、透析液圧を調節、変化せしめる、公知の透析液供給、除水調節装置27が設けられている。そして、この透析液供給、除水調節装置27にて、ダイアライザ10内における半透膜を介しての血液流路側と透析液流路側との間の膜間圧が調節され、また、かくして調節された膜間圧に応じて、体内からの除水が行われるようになっている。
【0054】
さらに、透析液排出流路26における透析液供給、除水調節装置27とダイアライザ10との間の部位には、透析液添加流路29が接続されており、また、この透析液添加流路29は、別途設けられた透析液収容タンク31に対して、透析液排出流路26への接続側とは反対側の端部において接続されている。更にまた、かかる透析液添加流路29の中間部には、透析液添加ポンプ33が配設されている。なお、図示されてはいないものの、透析液収容タンク31には、収容されている透析液の量を検出するための公知の収容量検出センサが、設置されている。
【0055】
かくして、透析液添加ポンプ33の作動に基づいて、透析液収容タンク31内の透析液が、透析液添加流路29を通じて、透析液供給、除水調節装置27を経ることなく、透析液排出流路26内に直接に且つ強制的に導かれるように構成されている。なお、透析液添加ポンプ33の停止状態下では、そのような透析液添加流路29における透析液の流通が阻止されるようになっている。
【0056】
これにより、本実施形態では、透析液供給、除水調節装置27による透析液の供給量と排出量の調節下において、透析液添加ポンプ33が作動せしめられることで、透析液排出流路26を通じてのダイアライザ10からの透析液の排出量が減少せしめられて、ダイアライザ10内での透析液側の圧力が、血液側の圧力よりも高められるようになっており、以て、透析液供給流路24を通じてダイアライザ10内の透析液流路に導かれた透析液が、半透膜を介して血液流路内に移行せしめられるように構成されている。
【0057】
それ故、血液浄化操作の終了後に、例えば、第二電磁弁19の開作動状態で、第三電磁弁18が閉作動せしめられると共に、透析液添加ポンプ33が作動せしめられると、ダイアライザ10内の血液側に移行せしめられた透析液が、ダイアライザ10内から血液返送流路14内に向かって流通せしめられる一方、第三電磁弁18の開作動状態で、第二電磁弁19が閉作動せしめられると共に、透析液添加ポンプ33が作動せしめられると、ダイアライザ10内の血液側に移行せしめられた透析液が、ダイアライザ10内から血液供給流路12内に向かって流通せしめられるようになっているのである。このことから明らかなように、ここでは、透析液添加流路29と透析液添加ポンプ33と透析液収容タンク31とにて、透析液移行手段が、構成されている。
【0058】
而して、このような本実施形態の血液浄化装置においては、特に、血液供給流路12に対して、バイパス流路28が、血液供給流路12における血液ポンプ16を挟んで血液流通方向の上流側(血液導入口13側)に位置する第一の接続部30と、その下流側(ダイアライザ10側)に位置する第二の接続部32とを連結して、配設されている。即ち、ここでは、血液供給流路12が、第一の接続部30よりも血液流通方向上流側の血液供給流路上流側部位34と、第二の接続部32よりも血液流通方向下流側の血液供給流路下流側部位36と、それら第一の接続部30と第二の接続部32との間に、それら両接続部30,32を含んで位置する、中間部に血液ポンプ16が配設された血液供給流路中間部位38と、かかる血液ポンプ16に対してバイパスとなるバイパス流路28の合計4個の流路にて、構成されているのである。
【0059】
そして、かかる血液供給流路上流側部位34と血液供給流路中間部位38と血液供給流路下流側部位36とが、例えば、柔軟性乃至は弾性を有する1本の連続した樹脂チューブからなり、血液供給流路中間部位38の上流側部分と下流側部分とに、第一の接続部30と第二の接続部32とが、それぞれ設けられ、また、血液供給流路上流側部位34の上流側開口部と、血液供給流路下流側部位36の下流側開口部とによって、血液供給流路12に対して、血液導入口13とダイアライザ10との接続口がそれぞれ与えられるようになっている。
【0060】
また、血液供給流路上流側部位34における第一の接続部30の近傍には、振動手段としての振動装置42が、配設されている。この振動装置42は、血液供給流路上流側部位34のうちの第一の接続部30の近傍部分を把持する把持部44と、かかる把持部44を上下方向(図1中、矢印方向)に振動させる振動機構を内蔵した装置本体46を有している。そして、このような振動装置42にあっては、把持部44にて、血液供給流路上流側部位34を把持させた状態で、把持部44を装置本体46にて振動させることにより、第一の接続部30を、血液供給流路上流側部位34と共に振動させ得るように構成されている。
【0061】
一方、バイパス流路28は、第一接続流路48と第二接続流路50と補助チャンバ52とを、更に有している。第一接続流路48と第二接続流路50は、何れも、例えば血液供給流路12の上流、中間、及び下流側部位34,38,36と同じ柔軟性乃至は弾性を有する樹脂チューブにて構成されている。そして、第一接続流路48が、第一の接続部30に連通状態で接続されて、血液供給流路中間部位38の上流側部分から分岐して、上方に向かって一体的に延びるように配設されており、また、第二接続流路50は、第二の接続部32に連通状態で接続されて、血液供給流路中間部位38の下流側部分から分岐して、上方に向かって一体的に延びるように配設されている。
【0062】
補助チャンバ52は、所定の容積を有する両側有底の筒体からなり、第一接続流路48と第二接続流路50とが接続せしめられる血液供給流路中間部位38の第一の接続部30と第二の接続部32の上方に位置せしめられている。そして、かかる補助チャンバ52にあっては、その下側底部に、それを貫通する二つの接続孔54,56が、所定距離を隔てて形成されており、第一接続流路48と第二接続流路50の各上端部が、それら二つの接続孔54,56を通じて、補助チャンバ52内にそれぞれ挿入されて、固定されている。これによって、補助チャンバ52が、第一接続流路48と第一の接続部30とを通じて、血液供給流路中間部位38の上流側部分に対して、血液が流通可能に接続されていると共に、第二接続流路50と第二の接続部32とを通じて、血液供給流路中間部位38の下流側部分に対して、血液が流通可能に接続されている。
【0063】
また、このような補助チャンバ52内には、前記動脈チャンバ20内に配設される濾過網と同様な構成を有する袋状の濾過網58が、プライミング液たる生理的食塩水60と共に収容されている。そして、この補助チャンバ52内の濾過網58は、接続孔54を通じて挿入された第一接続流路48の上端部に対して、その上端開口部を覆うように、換言すれば、第一接続流路48の上端開口部を、濾過網58を介して補助チャンバ52内に開口させるように、取り付けられており、また、そのような取付状態下で、濾過網58の全体が、生理的食塩水60中に浸漬せしめられている。
【0064】
さらに、かかる補助チャンバ52と血液供給流路中間部位38とを接続する第一接続流路48と第二接続流路50のそれぞれの長さ方向中間部には、第一の開閉手段としての第一電磁弁62,64が、それぞれ取り付けられている。また、それら各第一電磁弁62,64は、血液返送流路14や血液供給流路下流側部位36に取り付けられた第二電磁弁19や第三電磁弁18と同様な構造を有している。つまり、ここでは、各第一電磁弁62,64の開閉作動によって、第一接続流路48と第二接続流路50とが任意に開閉せしめられて、補助チャンバ52と血液供給流路中間部位38との間での血液の流通が許容乃至は阻止され得るようになっている。
【0065】
なお、第一接続流路48と第二接続流路50とにそれぞれ設けられた第一電磁弁62,64は、後述する如き血液浄化操作中には閉作動状態とされているところから、それら第一及び第二接続流路48,50における各第一電磁弁62,64よりも上部側の内部には、補助チャンバ52内と同じ生理的食塩水60が充填されている。また、各電磁弁62,64よりも下部側の内部には、血液供給流路12内に導入された、浄化されるべき血液の侵入が許容されるようになっている。
【0066】
そして、本実施形態の血液浄化装置においては、上述せる構成を備えた血液供給流路12や血液返送流路14やダイアライザ10等とは別に、制御手段としてのコントローラ66と、このコントローラ66に対して電気的に接続された入力装置68とが設けられている。また、コントローラ66は、制御部70とタイマ機構部72と検出部73とを更に備えており、血液ポンプ16と、第一乃至第三電磁弁62,64,19,18と、振動装置42と、前記透析液添加ポンプ33と、前記透析液収容タンク31内の透析液の収容量を検出する収容量検出センサ(図示せず)とに対しても、それぞれ電気的に接続されている。
【0067】
かくして、かかる血液浄化装置では、入力装置68に対する所定の入力操作が行われることで、血液ポンプ16の駆動速度と、第一乃至第三電磁弁62,64,19,18の開閉作動と、振動装置42の作動/停止と、透析液添加ポンプ33の作動/停止とが、コントローラ66にて、それぞれ独立して制御されて、血液浄化操作や装置内部の残留血液の回収操作等が、自動的に行われるようになっている。また、そのような残留血液の回収操作の実施時において、収容量検出センサにて検出される透析液の収容量に基づいて、コントローラ66の検出部73において、ダイアライザ10内への透析液の移行量が、逐次検出されるようになっている。
【0068】
而して、かくの如き構造とされた本実施形態の血液浄化装置を用いて、血液浄化操作を実施するには、それに先立って、プライミング処理が、例えば生理的食塩水をプライミング液として用いて、公知の方法により実施される。そして、それには、先ず、入力装置68に対する所定の入力操作が行われて、コントローラ66により、第一乃至第三電磁弁62,64,19,18の全てが開作動せしめられて、血液供給流路12とダイアライザ10と血液返送流路14とを通じての液流通が許容された状態(連通状態)とされる。そして、その状態で、公知のプライミング処理が行われて、装置内部の全体に、生理的食塩水が充填せしめられる。
【0069】
なお、このプライミング処理の実施に際しては、プライミング液として、生理的食塩水以外に、従来から用いられる電解質液等も、適宜に用いられ得る。また、上記のプライミング処理では、その処理中に、プライミング液が、補助チャンバ52内に収容されるようになるため、生理的食塩水以外の電解質液等がプライミング液として用いられる場合には、かかるプライミング液と同じ電解質液が、補助チャンバ52内に収容されることとなる。更に、例えば、予め、補助チャンバ52内に、生理的食塩水等の電解質液を収容しておき、第一電磁弁62,64を閉作動させて、バイパス流路28の第一及び第二の接続流路48,50を閉塞せしめた状態で、プライミング処理を行うようにしても良い。
【0070】
次いで、血液供給流路12の血液導入口13と血液返送流路14の血液返送口15とに、動脈側穿刺針と静脈側穿刺針とがそれぞれ取り付けられ、動脈側穿刺針が、図示しない患者のシャント血管に穿刺される一方、静脈側穿刺針が患者のシャント血管の血液流通方向下流側に穿刺される。これによって、それら両穿刺針と血液供給流路12と血液返送流路14とダイアライザ10とにて、患者の血液が体外循環せしめられる血液回路が構成される。
【0071】
その後、入力装置68に対する所定の入力操作が行われ、コントローラ66にて、第二及び第三電磁弁19,18が開作動されたままで、第一電磁弁62,64のみが閉作動せしめられることにより、バイパス流路28の第一及び第二の接続流路48,50が閉塞(遮断)せしめられて、血液供給流路中間部位38とバイパス流路28との液流通が阻止された状態とされる。また、その一方で、上記の入力装置68に対する入力操作に基づいて、血液ポンプ16が、コントローラ66にて、所定の回転速度で駆動せしめられる。
【0072】
これにより、血液導入口13を通じて血液供給流路上流側部位34内に導入された、患者の浄化されるべき血液が、血液供給流路12の上流側、中間、及び下流側の各部位34,38,36内からダイアライザ10に送り出され、ダイアライザ10内で、半透膜を介して透析液に接触せしめられて浄化された後、ダイアライザ10から血液返送流路14内に流出せしめられる。そして、この浄化された血液が、血液返送流路14を経て、血液返送口15から患者の体内に返送される。かくして、患者の血液の浄化操作が実施されるのである。なお、このとき、ダイアライザ10内への透析液の供給量と排出量とが、透析液供給、除水調節装置27により調節される一方、透析液添加ポンプ33は停止状態とされて、透析液添加流路29における透析液の流通が阻止された状態とされる。
【0073】
そして、ここでは、特に、上記の如き血液浄化操作中において、浄化されるべき血液中に血栓が混入されても、そのような血栓が、動脈チャンバ20内や静脈チャンバ22内に設けられた濾過網(図示せず)に捕捉される。また、血液供給流路中間部位38とバイパス流路28との液流通が阻止されているため、バイパス流路28内への血液の流入も阻止される。それによって、バイパス流路28における補助チャンバ52内に配設された濾過網の内面に、血液中に混入された血栓が付着乃至は捕捉されるようなことや、かかる濾過網の内面に血栓が形成されるようなことが、有利に回避され得る。
【0074】
なお、本実施形態においては、第一乃至第三電磁弁62,64,19,18の開作動状態において、血液ポンプ16が駆動せしめられると、それと同時に、第一電磁弁62,64が自動的に閉作動せしめられるように、コントローラ66にて制御されている。それによって、血液浄化操作中における血液のバイパス流路28内への流入が、より確実に阻止され得るようになっている。
【0075】
そして、上述の如き血液浄化操作が終了したら、装置内部に残留する血液の回収操作が行われるのであるが、本実施形態では、それが、血液返送流路14内とダイアライザ10内の残留血液を回収する操作と、血液供給流路12内の残留血液を回収する操作と、それに加えて、血液供給流路中間部位38内の残留血液とバイパス流路28内の生理的食塩水60とを、それらの流路38,28内で循環させる操作の三つの操作によって実施されるようになっている。
【0076】
すなわち、ここでは、血液浄化操作の終了後に、先ず、入力装置68に対する所定の入力操作が行われ、血液ポンプ16が駆動せしめられたままで、バイパス流路28の第一及び第二の接続流路48,50上にそれぞれ設けられた第一電磁弁62,64が、コントローラ66にて、各々開作動せしめられる。
【0077】
かくして、血液浄化操作の終了後における入力装置68に対する所定の入力操作に基づいて、血液供給流路中間部位38とバイパス流路28との間での液流通が許容される状態とされ、それにより、血液ポンプ16の駆動に伴って、血液供給流路中間部位38内に残留する血液が、第二の接続部32からバイパス流路28の第二の接続流路50内に流入せしめられる一方、かかる第二の接続流路50内や補助チャンバ52内、第一の接続流路48内、つまりバイパス流路28内に収容された生理的食塩水60が、第二の接続流路50内に流入せしめられる残留血液に押されて、第一の接続流路48を通じて、第一の接続部30から血液供給流路中間部位38内に流入せしめられる。その結果、血液供給流路中間部位38内の残留血液が、バイパス流路28内の生理的食塩水60と共に、それら血液供給流路中間部位38内とバイパス流路28内とを、血液ポンプ16の液送出方向において循環せしめられる。
【0078】
また、このとき、第一電磁弁62,64の開作動に連動して、血液ポンプ16の駆動速度が、コントローラ66にて増大せしめられるようになっている。これにより、血液ポンプ16の駆動に伴って循環せしめられる残留血液や生理的食塩水60の流速が、血液浄化操作中における血液供給流路12内での血液の流速よりも十分に大きくされる。
【0079】
そのため、血液供給流路中間部位38における第一の接続部30や第二の接続部32のそれぞれの内側角部等に、血栓が、先に実施された血液浄化操作中に形成されていても、そのような血栓が、血液ポンプ16の駆動により循環せしめられる残留血液や生理的食塩水60の十分に速い流れによって各内側角部等から効果的に剥がされて、残留血液や生理的食塩水60に混入せしめられるようになる。そして、そのような残留血液や生理的食塩水60の循環中に、それらに混入された血栓が、バイパス流路28の補助チャンバ52内に設けられた濾過網58にて、その外面上に捕捉されるようになっている。
【0080】
さらに、ここでは、第一電磁弁62,64が開作動せしめられると、それに連動して、前記振動装置42の装置本体46による把持部44の振動が、コントローラ66にて開始される。また、この振動装置42の把持部44の振動開始と同時に、コントローラ66に内臓されたタイマ機構部72による計時が開始される。そして、タイマ機構部72による計測時間が予め設定された時間となったら、振動装置42の把持部44の振動が、コントローラ66にて、停止せしめられる。これによって、血液供給流路中間部位38内とバイパス流路28内での残留血液と生理的食塩水60の循環中に、第一の接続部30が、振動装置42にて振動せしめられ、以て、第一の接続部30に形成された血栓が、そこから、より確実に剥がされて、補助チャンバ52内の濾過網58で、更に効果的に捕捉され得るようになっている。
【0081】
また、第一電磁弁62,64が開作動せしめられると、それに連動して、血液供給流路下流側部位36上に設けられた第三電磁弁18が閉作動されると共に、透析液添加ポンプ33が作動せしめられるように、コントローラ66にて制御されるようになっている。これにより、血液供給流路12とダイアライザ10との液流通が阻止された状態で、ダイアライザ10内で透析液流路側の圧力が血液流路側の圧力よりも高められて、ダイアライザ10内の透析液が、半透膜を通じて血液流路側に移行せしめられる逆濾過が行われる。その結果、ダイアライザ10内と血液返送流路14内に残留する血液が透析液に置換され、以て、それらダイアライザ10内と血液返送流路14内の残留血液が、血液返送流路14を通じて、血液返送口15から患者の体内に戻される。このとき、ダイアライザ10内と血液返送流路14内の残留血液中に血栓が混入せしめられていても、そのような血栓は、静脈チャンバ22内の濾過網(図示せず)にて補足されて、患者の体内に侵入せしめられることはない。
【0082】
かくして、本実施形態においては、血液浄化操作の終了後に、入力装置68に対する所定の入力操作により、第一電磁弁62,64が開作動せしめられることによって、血液供給流路中間部位38内の残留血液とバイパス流路28内の生理的食塩水60の循環操作と、血液返送流路14内の残留血液の回収操作とが、同時に開始されるのである。
【0083】
また、ここでは、図示しない収容量検出センサによる透析液収容タンク31内の透析液の収容量の検出値に基づいて、第三電磁弁18の閉作動に連動して作動せしめられる透析液添加ポンプ33の作動開始時点から、透析液添加ポンプ33により、透析液排出流路26内に添加される透析液の添加量が、ダイアライザ10内での透析液の血液側への移行量として、コントローラ66の検出部73にて、逐次検出される一方、この検出部73にて検出される透析液移行量が、コントローラ66の制御部70において、ダイアライザ10内の血液流路の容積と血液返送流路14内の容積との合計量と比較されるようになっている。そして、それらの量が一致したときに、第二電磁弁19が閉作動せしめられると共に、第三電磁弁18が開作動せしめられるように、それら第二及び第三電磁弁19,18の開閉作動が、コントローラ66にて制御されている。
【0084】
これにより、ダイアライザ10内の残留血液と血液返送流路14内の残留血液とが、全て透析液に置換され、それらの残留血液の全量が患者の体内に返送された時点で、第二電磁弁19が閉作動せしめられて、血液返送流路14における液流通が停止せしめられ、以て、血液返送流路14内の残留血液の回収操作が終了せしめられるようになっている。
【0085】
また、その一方で、血液返送流路14内の残留血液の回収操作の終了と同時に、第三電磁弁18の開作動によって、ダイアライザ10と血液供給流路12との液流通が許容されるようになり、以て、ダイアライザ10内の血液側に移行せしめられた透析液が、血液供給流路12内に向かって流通せしめられるようになっている。そして、これによって、血液供給流路12内の残留血液の透析液による置換が開始され、血液供給流路12内の残留血液が、血液供給流路12内を逆流せしめられて、かかる残留血液の回収操作が開始されるようになっているのである。
【0086】
そして、このような血液供給流路12内の残留血液の回収時には、血液供給流路下流側部位36内の残留血液が、バイパス流路28内と血液供給流路中間部位38内とを循環せしめられている残留血液や生理的食塩水60と混合せしめられ、バイパス流路28内に流入せしめられて、補助チャンバ52内の濾過網58で濾過されるようになる。このとき、先に実施された血液浄化操作中に、血液供給流路下流側部位36上における動脈チャンバ20内の濾過網(図示せず)にて捕捉された血栓が、血液供給流路下流側部位36内を逆流せしめられる残留血液に混入せしめられていても、かかる残留血液が、バイパス流路28の補助チャンバ52内に設けられた濾過網58にて濾過されて、残留血液中の血栓が、濾過網58の外面上において、再度、捕捉される。
【0087】
また、濾過網58にて濾過された、血液供給流路下流部位36内の残留血液は、その一部が、第一の接続部30を通じて、血液供給流路上流側部位34内に流入せしめられ、更に、血液導入口13を通じて、患者の体内に送り込まれる一方、残りの部分は、血液供給流路中間部位38内に流入し、かかる血液供給流路中間部位38内とバイパス流路28内とを再循環させられる。更に、そのようにして血液供給流路中間部位38内とバイパス流路28内とを再循環せしめられる残留血液は、その一部が、ダイアライザ10内で血液側に移行せしめられた透析液に押されて、その再循環中に、第一の接続部30を通じて、血液供給流路上流側部位34内に流入せしめられて、患者の体内に送り込まれる。そして、このような再循環が繰り返されるうちに、混合液中の残留血液の大部分が、患者の体内に戻されるようになる。
【0088】
なお、このように、血液供給流路12内の血液回収操作では、血液供給流路下流側部位36内の残留血液が、かかる流路36内を血液導入口13側に向かって逆流せしめられるものの、血液ポンプ16の駆動に伴って、血液供給流路中間部位38内とバイパス流路28内とを残留血液や生理的食塩水60が循環せしめられているため、血液供給流路下流側部位36内の残留血液は、血液供給流路中間部位38内を血液導入口13側に向かって逆流せしめられることなく、その全量が、バイパス流路28内に流入せしめられて、補助チャンバ52内の濾過網58にて濾過されるようになる。
【0089】
かくして、ここでは、血液ポンプ16の駆動により、血液供給流路中間部位38内での血液導入口13側からダイアライザ10側への液流通は許容されるものの、血液供給流路中間部位38内でのダイアライザ10側から血液導入口13側への液流通は阻止されるようになっている。そのため、血液供給流路下流側部位36内を血液導入口13側に向かって逆流せしめられる残留血液は、その全量が、バイパス流路28内に流入せしめられるのである。
【0090】
そして、血液供給流路12内の血液回収操作が上述のようにして行われ、バイパス流路28を含む血液供給流路12内が透析液にて満たされて、かかる血液供給流路12内の残留血液の全量が、生理的食塩水60と共に、患者の体内に戻されたら、入力装置68に対する所定の入力操作が行われ、コントローラ66にて、血液ポンプ16と透析液添加ポンプ33とが停止せしめられる。以て、血液供給流路12内の残留血液の回収操作、更には装置内部の残留血液の回収操作の全工程が終了せしめられるのである。
【0091】
このように、本実施形態の血液浄化装置では、血液浄化操作中に、血液供給流路12内を流動せしめられる血液中の血栓が、バイパス流路28内の濾過網58の内面に捕捉乃至は付着するようなことが、有利に回避され得る。そして、血液浄化操作の終了後に実施される血液回収操作においては、先ず、ダイアライザ10内と血液返送流路14内の残留血液の回収操作で、かかる残留血液中の血栓が、静脈チャンバ22内の濾過網にて捕捉される。また、それと同時に行われる血液供給流路中間部位38内とバイパス流路28内での残留血液と生理的食塩水60の循環操作で、バイパス流路28の分岐部位たる第一及び第二の接続部30,32のうち、特に、バイパス流路28内に配設された濾過網58よりも血液導入口13側に位置する第一の接続部30に形成された血栓が、かかる濾過網58の外面上に捕捉される。更に、ダイアライザ10内と血液返送流路14内の残留血液の回収操作の後に実施される血液供給流路12内の残留血液の回収操作で、かかる残留血液中に混入された血栓、例えば、動脈チャンバ20内の濾過網にて、血液浄化操作中に一度は捕捉された血栓が、バイパス流路28内に配設された濾過網58の外面上に捕捉されるようになる。
【0092】
従って、かくの如き本実施形態に係る血液浄化装置にあっては、血液浄化操作中に、動脈チャンバ20内で形成された血栓や、第一の接続部30や第二の接続部32等の血栓が形成され易い血液供給流路12部分に形成された血栓等が、血液浄化操作終了後の血液回収操作中に、残留血液と共に患者の体内に送り込まれるようなことが、より効果的に防止され得るのであり、その結果として、血液回収操作が、更に一段と安全に実施され得ることとなるのである。
【0093】
また、かかる血液浄化装置においては、血液導入口13と血液返送口15とに穿刺針を取り付けて、それらの穿刺針を患者のシャント血管に穿刺した状態で、入力装置68に対する入力操作を行うだけで、血液浄化操作と血液回収操作とが自動的に実施され得るのであり、それによって、そのような血液浄化操作と血液回収操作とが、優れた作業性をもって、しかも可及的に少ない人手で、極めて容易に且つスムーズに行われ得るのである。
【0094】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約を受けるものではない。
【0095】
例えば、バイパス流路28上と血液返送流路14上と血液供給流路12上とにそれぞれ配設される第一乃至第三の開閉手段は、例示の電磁弁62,64,19,18に、何等限定されるものではなく、それらの各流路28,14,12を自動的に開閉せしめて、各流路28,14,12を通じての液流通を許容乃至は阻止し得る構造を有しておれば良い。
【0096】
また、バイパス流路28上に設けられる濾過手段も、前記実施形態に示される濾過網58に、特に限定されるものではなく、血液を濾過して、血液中の血栓を除去し得るものであれば、従来から公知のものが、濾過網58に代えて、適宜に採用され得る。
【0097】
さらに、そのような濾過手段のバイパス流路28上への配設構造も、特に限定されるものではない。従って、例えば、バイパス流路28を1本の管体にて構成すると共に、かかる管体からなるバイパス流路28の長さ方向の中間部に、濾過手段を、バイパス流路28を長さ方向において二つに仕切るように配設することで、濾過手段をバイパス流路28上に配設するようにしても良い。
【0098】
さらに、前記実施形態では、血液供給流路上流側部位34における第一の接続部30の近傍に、第一の接続部30を、血液供給流路上流側部位34と共に振動させて、第一の接続部30に形成された血栓を剥離するための振動装置42が配設されていたが、この振動装置42に代えて、或いはそれに加えて、第一の接続部30に形成された血栓を剥離するための別の装置を配設しても良い。
【0099】
すなわち、例えば、図2に示されるように、第一の接続部30に対して、外部から押圧力を断続的に繰り返し作用せしめる押圧手段としての押圧装置74を、振動装置42に代えて、或いはそれに加えて、第一の接続部30に配設しても良い。この押圧装置74は、第一の接続部30を上下両側から挟んで対向位置せしめられた二つの挟持部76a,76bと、それら二つの挟持部76a,76bを上下方向(図2中、矢印方向)において、所定の距離の範囲内で互いに接近/離隔移動させることにより、二つの挟持部76a,76bの相互の対向面にて、第一の接続部30に対して、外部から押圧力(圧迫力)断続的に繰り返し作用せしめる装置本体78とを有して、構成されている。
【0100】
また、この押圧装置74も、前記実施形態における振動装置42と同様に、血液供給流路中間部位38内とバイパス流路28内での残留血液と生理的食塩水60の循環操作が行われるに際して、入力装置68に対する入力操作により、第一電磁弁62,64が開作動せしめられるのに連動して、装置本体78による挟持部76a,76bの接近/離隔移動が開始されるように、コントローラ66にて制御されるようになっており、また、そのような挟持部76a,76bの接近/離隔移動の開始から、コントローラ66のタイマ機構部72による計時が開始されて、その計測時間が予め設定された時間となった時点で、挟持部76a,76b接近/離隔移動が停止せしめられるように、コントローラ66にて制御されている。
【0101】
これによって、血液供給流路中間部位38内とバイパス流路28内での残留血液と生理的食塩水60の循環操作中に、押圧装置74にて、第一の接続部30が、自動的に揉まれるような状態とされて、第一の接続部30に形成された血栓が、そこから効果的に剥離され得るようになる。
【0102】
なお、かくの如き押圧装置74や振動装置42は、本発明において、何等必須のものではない。
【0103】
また、前記実施形態では、第一電磁弁62,64の開作動に連動して、第三電磁弁18が閉作動されると共に、透析液添加ポンプ33の作動が開始されることにより、血液供給流路中間部位38内とバイパス流路28内での残留血液と生理的食塩水60の循環操作と、ダイアライザ10内と血液返送流路14内の残留血液の回収操作が同時に行われるようになっていたが、例えば、第一電磁弁62,64の開作動に連動して、第二電磁弁19を閉作動させると共に、第一電磁弁62,64が開作動せしめられた時点から、コントローラ66のタイマ機構部72による計時が開始されて、その計測時間が予め設定された時間となったときに、透析液添加ポンプ33の作動が開始されるように、第一及び第二電磁弁62,64,19の開閉作動と透析液添加ポンプ33の駆動/停止とが、コントローラ66にて制御されるように構成しても良い。
【0104】
このようにすれば、血液供給流路中間部位38内とバイパス流路28内での残留血液と生理的食塩水60の循環操作が、予め設定された時間の間実施された後に、血液供給流路12内の残留血液の回収操作が自動的に開始され得る。これによって、血液供給流路12内の残留血液の回収作業における作業性が有利に高められ得ることとなる。
【0105】
さらに、透析液移行手段の構造も、前記実施形態に示されるものに、何等限定されるものではなく、例えば、特公平5−15464号公報に記載される構造等も、適宜に採用され得る。
【0106】
また、前記実施形態では、第三の開閉手段としての第三電磁弁18が、血液供給流路下流側部位36上に設けられていたが、この第三の開閉手段は、かかる血液供給流路下流側部位36に代えて、或いはそれに加えて、血液供給流路上流側部位34上に設けても良い。
【0107】
加えて、前記実施形態では、ダイアライザ(透析器)を用いた透析装置が、本発明の対象とする血液浄化装置として例示されていたが、本発明は、そのような透析装置のみならず、公知の透析濾過装置、濾過装置等にも適用可能であることは、勿論である。
【0108】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、そして、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明に従う血液浄化装置の一例を示す系統図である。
【図2】本発明に従う血液浄化装置の別の例を示す図1に対応する図である。
【符号の説明】
【0110】
10 ダイアライザ 12 血液供給流路
13 血液導入口 14 血液返送流路
16 血液ポンプ 18 第三電磁弁
19 第二電磁弁 27 透析液供給、除水調節装置
28 バイパス流路 29 透析液添加流路
30 第一の接続部 31 透析液収容タンク
32 第二の接続部 33 透析液添加ポンプ
34 血液供給流路上流側部位 36血液供給流路下流側部位
38 血液供給流路中間部位 42 振動装置
48 第一の接続流路 50 第二の接続流路
52 補助チャンバ 58 濾過網
60 生理的食塩水 62,64 第一電磁弁
66 コントローラ 68 入力装置
74 押圧装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
函体内に半透膜が収容されてなり、該半透膜を介して血液を透析液に接触せしめて浄化する浄化器と、該浄化器に接続され、血液導入口を通じて導入された浄化されるべき血液を該浄化器に供給するための血液供給流路と、該血液供給流路上に設けられた、血液を該浄化器に送出するためのポンプ手段と、該浄化器に接続され、該浄化器で浄化された血液を体内に返送するための血液返送流路とを備えた血液浄化装置において、
前記浄化器内において前記半透膜を介して血液に接触せしめられる透析液側の圧力を血液側の圧力よりも高くすることにより、該浄化器内で、該半透膜を通じて、透析液を血液側に移行せしめる透析液移行手段と、
前記ポンプ手段よりも前記血液導入口側の前記血液供給流路部位に位置する第一の接続部と前記ポンプ手段よりも前記浄化器側の該血液供給流路部位に位置する第二の接続部とを結ぶ、該ポンプ手段に対してバイパスとなるバイパス流路と、
前記バイパス流路上に設けられて、該バイパス流路内を流通せしめられる血液を濾過して、該血液中の血栓を除去する濾過手段と、
前記バイパス流路上に配設され、該バイパス流路を自動的に開閉せしめて、該バイパス流路を通じての液流通を許容乃至は阻止する第一の開閉手段と、
前記第一の開閉手段の開閉作動を制御して、外部からの信号入力により、該ポンプ手段の駆動状態で該第一の開閉手段の開作動を行う制御手段と、
を含んで構成したことを特徴とする血液浄化装置。
【請求項2】
前記ポンプ手段の駆動速度が、前記制御手段にて制御され、該制御手段による該ポンプ手段の駆動状態での前記第一の開閉手段の開作動に連動して、該ポンプ手段の駆動速度が該制御手段にて増加せしめられるようになっている請求項1に記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記血液返送流路上に、該血液返送流路を自動的に開閉せしめて、該血液返送流路を通じての液流通を許容乃至は阻止する第二の開閉手段が設けられると共に、該第二の開閉手段の開閉作動が前記制御手段にて制御されて、該制御手段による前記ポンプ手段の駆動状態での前記第一の開閉手段の開作動に連動して、該第二の開閉手段が、該制御手段にて閉作動せしめられるようになっている請求項1又は請求項2に記載の血液浄化装置。
【請求項4】
前記透析液移行手段の作動/停止が、前記制御手段にて制御されると共に、該制御手段が、前記ポンプ手段の駆動状態で前記第一の開閉手段を開作動せしめてからの経過時間を計測する第一のタイマ機構を有して構成され、かかる第一のタイマ機構による計測時間が予め設定された時間に達したときに、該制御手段にて、該透析液移行手段が作動せしめられるようになっている請求項3に記載の血液浄化装置。
【請求項5】
前記第一の接続部と前記血液導入口との間の前記血液供給流路部位と、前記第二の接続部と前記浄化器との間の前記血液供給流路部位のうちの少なくとも何れか一方の血液供給流路部位上に、該血液供給流路部位を自動的に開閉せしめて、該血液供給流路部位を通じての液流通を許容乃至は阻止する第三の開閉手段が設けられると共に、該第三の開閉手段の開閉作動と前記透析液移行手段の作動/停止とが、前記制御手段にて制御されて、該制御手段による前記ポンプ手段の駆動状態での前記第一の開閉手段の開作動に連動して、該第三の開閉手段が閉作動せしめられる一方、該透析液移動手段が作動せしめられるようになっている請求項1又は請求項2に記載の血液浄化装置。
【請求項6】
前記透析液移行手段の作動により、前記浄化器内で、前記半透膜を通じて血液側に移行せしめられた透析液の移行量を検出する透析液移行量検出手段が設けられると共に、前記血液返送流路上に、前記制御手段による制御に基づいて、該血液返送流路を自動的に開閉せしめて、該血液返送流路を通じての液流通を許容乃至は阻止する第二の開閉手段が設けられて、該透析液移行量検出手段により検出された前記透析液の移行量が予め設定された量に達したときに、該制御手段により、前記第三の開閉手段が開作動せしめられる一方、前記第二の開閉手段が閉作動せしめられるようになっている請求項5に記載の血液浄化装置。
【請求項7】
前記血液供給流路上に、前記第一の接続部を振動させる振動手段が設けられると共に、該振動手段の作動/停止が前記制御手段にて制御されて、該制御手段による前記ポンプ手段の駆動状態での前記第一の開閉手段の開作動に連動して、該振動手段の作動が開始せしめられるように構成され、更に、該制御手段が、該振動手段の作動開始からの経過時間を計測する第二のタイマ機構を有し、該第二のタイマ機構による計測時間が予め設定された時間に達したときに、該制御手段にて、該振動手段が停止せしめられるようになっている請求項1乃至請求項6のうちの何れか1項に記載の血液浄化装置。
【請求項8】
前記血液供給流路における前記第一の接続部が、柔軟性乃至は弾性を有するチューブにて構成されると共に、かかる第一の接続部に対して、外部から押圧力を断続的に繰り返し作用せしめる押圧手段が設けられ、更に、該押圧手段の作動/停止が前記制御手段にて制御されて、該制御手段による前記ポンプ手段の駆動状態での前記第一の開閉手段の開作動に連動して、該押圧手段の作動が開始せしめられるように構成される一方、該制御手段が、該押圧手段の作動開始からの経過時間を計測する第三のタイマ機構を有し、該第三のタイマ機構による計測時間が予め設定された時間に達したときに、該制御手段にて、該押圧手段が停止せしめられるようになっている請求項1乃至請求項7のうちの何れか1項に記載の血液浄化装置。


【図1】
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【図2】
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