説明

血液浄化装置

【課題】計測誤差を抑制でき、且つ、構成の簡略化によりコストの低減化を図り得る血液浄化装置を提供する。
【解決手段】生体から取り出した血液の浄化を行う血液浄化装置において、体外循環回路1と、体外循環回路1に設けられた血液浄化部2と、血液浄化部2に透析液を供給するための第1の流路3と、体外循環回路1に補液を供給するための第2の流路4と、血液浄化部2からの濾液を排出するための第3の流路5と、測定部20と、流路切替部(バルブ11〜13)とを備えさせ、流路切替部によって、第1の流路3、第2の流路4及び第3の流路5の中から選択された少なくとも一つの流路を流れる液を測定部20に導き、測定部20によって、選択された流路を流れる液の流量を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液浄化療法、特には持続的腎補助療法(CRRT:Continuous Renal Replacement Therapy)に用いられる血液浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液浄化療法、特に持続的腎補助療法では、24時間以上の長時間にわたり血液浄化が施行される。また、血液浄化療法では、血液透析、血液透析濾過、及び血液濾過が主に実施されており、透析液、補液、及び濾液それぞれの流量の測定精度が非常に重要となる。
【0003】
例えば、従来においては、透析液ポンプ及び補液ポンプの流量設定値が、それぞれ透析液及び補液それぞれの流量として用いられている。また、血液浄化器から排出された排液の流量をメスシリンダで測定し、測定値から、上記の透析液流量を差し引いて得られた値が、濾液の流量として用いられている。
【0004】
但し、透析液回路、補液回路及び濾液回路を構成するチューブには、径のばらつきがある。また、透析液ポンプ及び補液ポンプとして、ローラポンプが用いられる場合は、チューブ内に生じた圧力変動によってチューブの断面積が変動する。このため、実際の流量とポンプの流量設定値との間には、10%程度の誤差が生じてしまう可能性がある。例えば、治療が24時間継続されたときであれば、数リットルの水分過負荷が生じてしまう可能性があるため、患者の状態に適応した処置が取れない恐れがある。
【0005】
このような問題を解決するため、例えば、特許文献1は、透析液回路、補液回路及び濾液回路に個別に計測装置が設置され、各計測装置によって、透析液流量、補液流量及び濾液流量を個別に独立して実測する血液浄化装置を開示している。特許文献1に開示された血液浄化装置においては、各計測装置によって実測された実測値と各ポンプの流量設定値とが合致するように、各ポンプの回転数が調整される。このため、透析液流量、補液流量、及び濾液流量それぞれの測定誤差は、1%未満に抑えられる。
【特許文献1】特許第3180309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の血液浄化装置においては、透析液回路、補液回路及び濾液回路に個別に計測装置を設置する必要がある。このため、各回路や装置の構成が複雑になり、コストが増加してしまう。
【0007】
また、計測装置それぞれにも誤差があり、更に誤差は計測装置毎に異なる。このため、各計測装置の計測値に基づいて血液浄化装置全体の制御を行う場合に、制御に狂いが生じ易いという問題がある。更に、計測装置それぞれについて誤差を補正するのは煩雑であるため、誤差を補正しようとすると、救命救急時といった緊急時において準備に時間がかかってしまう。
【0008】
本発明の目的は、上記問題を解消し、計測誤差を抑制でき、且つ、構成の簡略化によりコストの低減化を図り得る血液浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明における血液浄化装置は、生体から取り出した血液の浄化を行う血液浄化装置であって、体外循環回路と、前記体外循環回路に設けられた血液浄化部と、前記血液浄化部に透析液を供給するための第1の流路と、前記体外循環回路に補液を供給するための第2の流路と、前記血液浄化部からの濾液を排出するための第3の流路と、測定部と、流路切替部とを備え、前記流路切替部は、前記第1の流路、前記第2の流路及び前記第3の流路の中から選択された少なくとも一つの流路を流れる液を前記測定部に導き、前記測定部は、選択された流路を流れる液の流量を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明における血液浄化装置においては、透析液回路、補液回路及び濾液回路毎に測定部を設ける必要がないため、各回路や装置の構成が複雑になるのを抑制でき、更に測定部毎の誤差を考慮しなくても良い。よって、本発明における血液浄化装置によれば、従来に比べて、計測誤差を抑制でき、しかも、構成の簡略化によりコストの低減化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明における血液浄化装置は、生体から取り出した血液の浄化を行う血液浄化装置であって、体外循環回路と、前記体外循環回路に設けられた血液浄化部と、前記血液浄化部に透析液を供給するための第1の流路と、前記体外循環回路に補液を供給するための第2の流路と、前記血液浄化部からの濾液を排出するための第3の流路と、測定部と、流路切替部とを備え、前記流路切替部は、前記第1の流路、前記第2の流路及び前記第3の流路の中から選択された少なくとも一つの流路を流れる液を前記測定部に導き、前記測定部は、選択された流路を流れる液の流量を測定することを特徴とする。
【0012】
また、上記本発明における血液浄化装置は、時間計測部と、演算部とを更に備え、前記測定部が、前記選択された流路から導かれた液を貯留する容器を備え、前記時間計測部が、前記選択された流路から導かれた液が前記容器に一定量貯留されるまでの時間、または前記容器に貯留された液が一定量排出されるまでの時間を測定し、前記演算部が、前記容器に貯留された液の液量または前記容器から排出された液の液量を、前記時間計測部によって測定された時間で除算して、前記測定部に接続された流路を流れる液の流量を算出する態様とするのが好ましい。この態様によれば、簡単に、透析液、補液及び濾液の流量を得ることができる。
【0013】
また、上記態様においては、前記流路切替部が、前記第1の流路、前記第2の流路及び前記第3の流路のうち一つの流路を順次選択する態様とすることもできる。更に、上記態様においては、前記流路切替部が、前記第1の流路と前記第2の流路とを同時に選択する態様とすることもできる。
【0014】
更に、上記態様においては、前記第1の流路に設けられた透析液ポンプと、前記第2の流路に設けられた補液ポンプと、前記第3の流路に設けられた濾液ポンプと、制御部とを更に備え、前記制御部は、前記演算部が算出した流量に基づいて、前記選択された流路に設けられたポンプの吐出量を調整する態様とすることもできる。
【0015】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態における血液浄化装置について、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態における血液浄化装置の概略構成を示す構成図である。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態における血液浄化装置は、生体から取り出した血液の浄化を行っている。血液浄化装置は、体外循環回路1と、血液浄化部2と、第1の流路3と、第2の流路4と、第3の流路5と、測定部20と、流路切替部とを備えている。
【0017】
体外循環回路1は、患者(図示せず)から脱血した血液を血液浄化部2へと送る脱血回路1aと、血液浄化部2から出た血液を患者に返血する返血回路1bとで構成されている。血液浄化部2は、体外循環回路1に設けられており、血液脱血流路1aと血液返血流路1bとに接続されている。
【0018】
本実施の形態においては、血液浄化部2は、中空糸で透析膜が形成された中空糸型の血液浄化器で構成されている。なお、血液浄化部2は、中空糸型に限定されるものではなく、積層型、コイル型であっても良い。また、本実施の形態において、体外循環回路1には、気泡や血栓等の異物が生体に混入するのを防止するため、チャンバー23が設けられている。チャンバー23は、気泡や異物を除去するため、内部にメッシュを備えている。
【0019】
第1の流路3は、血液浄化部2に透析液を供給するための透析液回路であり、透析液が充填された容器9の供給口と血液浄化部2の透析液導入口とを接続している。第2の流路4は、体外循環回路1に補液を供給するための補液回路であり、補液が充填された容器10の供給口と体外循環回路1とを接続している。本実施の形態においては、第2の流路4は、体外循環回路1を構成するチャンバー23の接続口(図示せず)に接続されている。第3の流路5は、血液浄化部2から排出された濾液を装置外部に排出するための濾液回路であり、血液浄化部2の濾液排出口に接続されている。
【0020】
また、本実施の形態においては、図1に示すように、第1の流路3には透析液ポンプ6が設けられ、第2の流路4には補液ポンプ7が設けられ、第3の流路5には濾液ポンプ8が設けられている。更に、本実施の形態では、透析液ポンプ6、補液ポンプ7及び濾液ポンプ8として、ローラポンプが用いられている。なお、これらポンプの種類は特に限定されるものではなく、その他、フィンガーポンプ等を用いることもできる。
【0021】
また、透析液ポンプ6、補液ポンプ7及び濾液ポンプ8それぞれには、初期流量が設定されている。更に、血液浄化治療の開始時においては、各ポンプの回転数は、それぞれに設定された初期流量での送液が行われるように設定されている。
【0022】
流路切替部は、第1の流路3、第2の流路4及び第3の流路5の中から選択された少なくとも一つの流路を流れる液を後述の測定部20へと導いている。本実施の形態においては、流路切替部は、バルブ11、バルブ12、及びバルブ13によって構成されている。
【0023】
バルブ11は、第1の流路3から分岐した第1の分岐流路17に設けられている。バルブ12は、第2の流路4から分岐した第2の分岐流路18に設けられている。バルブ13は、第3の流路5から分岐した第3の分岐流路19に設けられている。更に、第1の分岐流路17、第2の分岐流路18、及び第3の分岐流路19は、測定部20に接続されている。
【0024】
よって、例えば、第1の流路3が選択された場合は、バルブ11のみが開き、バルブ12及びバルブ13が閉じて、第1の流路3を流れる透析液のみが第1の分岐流路17によって測定部20に導かれる。同様に、第2の流路4が選択された場合は、バルブ12のみが開き、バルブ13及びバルブ11が閉じて、第2の流路4を流れる補液のみが第2の分岐流路18によって測定部20に導かれる。また、第3の流路5が選択された場合は、バルブ13のみが開き、バルブ11及びバルブ12が閉じて、第3の流路5を流れる濾液のみが第3の分岐流路19によって測定部20に導かれる。なお、流路の選択は、後述する制御部32によって行われる。
【0025】
測定部20は、第1の流路3、第2の流路4及び第3の流路5の中から選択された流路から、第1の分岐流路17、第2の分岐流路18又は第3の分岐流路19によって導かれた液の流量を測定する。本実施の形態においては、測定部20は、選択された流路から導かれた液を貯留する容器21と、液面レベルセンサ23及び24と、通気路25と、通気路25を開閉するバルブ22とを備えている。
【0026】
容器21は、透析液が充填された容器9や、補液が充填された容器10よりも低い位置に配置されている。これは、高低差を利用して、透析液や補液を容器21に導くためである。更に、容器21は、その下部で、第1の分岐流路17、第2の分岐流路18及び第3の分岐流路19に接続されている。通気路25は、容器21の上部に設けられている。
【0027】
液面レベルセンサ23は、容器21の上部に設定された液面を検知する。液面レベルセンサ24は、容器21の底部に設定された液面を検知する。液面レベルセンサ23及び24は、それぞれ設定された液面を検知すると、後述の時間計測部33に検知信号を出力する。
【0028】
また、図1に示すように、本実施の形態における血液浄化装置は、制御装置30も備えている。制御装置30は、更に、演算部31と、制御部32と、時間計測部33とを備えている。
【0029】
時間計測部33は、容器21に一定量の液が貯留するまでの時間、または容器21に貯留された液が一定量排出されるまでの時間を測定する。本実施の形態では、時間計測部33は、液面レベルセンサ23及び24に接続されている。時間計測部33は、液面レベルセンサ24が検知信号を出力してから液面レベルセンサ23が検知信号を出力するまでの時間、又は液面レベルセンサ23が検知信号を出力してから液面レベルセンサ24が検知信号を出力するまでの時間を測定する。
【0030】
例えば、第1の分岐流路17、第2の分岐流路18又は第3の分岐流路19から容器21に液が流れ込む場合において、時間計測部33は、液面レベルセンサ24が検知信号を出力してから、液面レベルセンサ23が検知信号を出力するまでの時間を計測する。逆に、予め、容器21に液が貯留されている場合においては、時間計測部33は、液面レベルセンサ23が検知信号を出力してから、液面レベルセンサ24が検知信号を出力するまでの時間を測定する。
【0031】
また、液面レベルセンサ23が検知する液面と液面レベルセンサ24が検知する液面との間に貯留される液の液量は予め測定されており、測定値は演算部31に格納されている。つまり、液面レベルセンサ24が液面を検知してから液面レベルセンサ23が液面を検知するまでの間に容器21に貯留される液の貯留量と、液面レベルセンサ23が液面を検知してから液面レベルセンサ24が液面を検知するまでの間に容器21から流れ出る液の排出量は予め測定され、演算部31に格納されている。
【0032】
また、演算部31は、選択された流路を流れる液の流量を算出している。具体的には、容器21に液が流れ込む場合は、演算部31は、液面レベルセンサ24が液面を検知してから液面レベルセンサ23が液面を検知するまでの間に容器21に貯留した液の貯留量を、時間計測部33によって測定された時間で除して、流量を算出する。一方、容器21に液が貯留されている場合は、演算部31は、液面レベルセンサ23が液面を検知してから液面レベルセンサ24が液面を検知するまでの間に容器21から流れ出た液の排出量を、時間計測部33によって測定された時間で除して、流量を算出する。
【0033】
このように、本実施の形態では、演算部31は、時間計測部33が測定した時間に基づいて流量を算出する。このことから、本実施の形態においては、演算部31は、時間計測部33と共に、測定部20の一部として機能している。
【0034】
また、制御部32は、流路切替部を構成するバルブ11〜13の開閉と、容器21の上部の通気路25に設けられたバルブ25の開閉とを行っている。更に、本実施の形態では、図1に示すように、第1の流路3の分岐点の上流側、第2の流路4の分岐点の上流側、及び第3の流路5の分岐点の下流側それぞれにも、バルブ14、バルブ15及びバルブ16が設けられている。制御部32は、このバルブ14〜バルブ16の開閉も行っている。更に、制御部32は、透析液ポンプ6、補液ポンプ7、及び濾液ポンプ8の運転、停止、回転数の調整も行っている。
【0035】
ここで、本実施の形態における血液浄化装置で行われる流量測定について、以下に説明する。先ず、制御部32は、血液浄化治療を開始するため、バルブ14〜バルブ16を開状態とし、バルブ11〜バルブ13を閉状態とする。
【0036】
次に、流量測定が必要となると、制御部32は、第1の流路3〜第3の流路5のうちの少なくとも一つの流路を選択する。具体的には、制御部32は、バルブ11〜バルブ13のうち、選択された流路の分岐流路に設けられたバルブを開状態とし、選択されていない二つの流路の各分岐流路に設けられた各バルブを閉状態のままとする。なお、流路の選択は、予め操作者によって制御装置30に入力された内容に応じて行われる。また、本実施の形態においては、流路の選択(バルブ11〜バルブ13の開閉)は、操作者が手動によって行うこともできる。
【0037】
例えば、第3の流路5が選択された場合は、制御部32は、第3の流路5の分岐流路に設けられたバルブ13を開状態とし、バルブ11及びバルブ12を閉状態のままとする。また、このとき、制御部32は、バルブ25を開状態とし、バルブ16を閉状態とする。これにより、選択された第3の流路5から、その分岐流路19を介して、容器21の内部に濾液が導かれる。
【0038】
次に、第3の流路5から容器21の内部に濾液が導かれ、液面レベルセンサ24が検知する液面に達すると、液面レベルセンサ24が検知信号を出力し、時間計測部33が時間の計測を開始する。更に、容器21の内部の液面レベルが上昇し、液面レベルセンサ23が検知信号を出力すると、時間計測部33は時間の計測を終了し、測定した時間を演算部31に通知する。
【0039】
次に、演算部31は、予め測定されている貯留量を、時間計測部33が測定した時間で除算する。これにより、選択された第3の流路5を流れる濾液の流量が求められる。なお、図示していないが、演算部31は算出した流量を表示装置に表示することもできる。
【0040】
次に、演算部31は、流量の算出が終了したことを制御部32に通知する。演算部31からの通知を受けると、制御部32は、第3の流路5の分岐点の下流側のバルブ16を開状態にする。これにより、容器21に貯留された濾液は、分岐流路19を介して、第3の流路5へと逆流する。なお、制御部32によるこのバルブ操作は、液面レベルセンサ23による検知信号の出力と同時に行うこともできる。
【0041】
その後、制御部32は、バルブ13を閉状態とする。また、本実施の形態においては、演算部31は、第3の流路5に設けられた濾液ポンプ8の初期流量と算出した濾液の流量との差を算出することができ、制御部32が、算出された差に応じて、濾液ポンプ8の回転数(吐出量)を調整することもできる。この場合は、血液浄化装置の自動運転が可能となる。
【0042】
また、例えば、第1の流路3(又は第2の流路4)が選択された場合は、制御部32は、第1の流路3(又は第2の流路4)の分岐流路に設けられたバルブ11(又はバルブ12)とバルブ25とを開状態とし、バルブ12及びバルブ13(又はバルブ11及びバルブ13)を閉状態のままとする。これにより、第1の流路3(又は第2の流路4)から、その分岐流路17(又は分岐流路18)を介して、容器21の内部に透析液(又は補液)が導かれる。
【0043】
次に、制御部32は、容器21の液面が上昇し、容器21の上部に設けられた液面レベルセンサ23が検知信号を出力すると、第1の流路3(又は第2の流路4)の分岐点の上流側のバルブ14(又はバルブ15)を閉状態にする。その状態で、透析液ポンプ6(又は補液ポンプ7)が駆動されると、容器21に貯留された透析液(又は補液)は、分岐流路17(又は分岐流路18)を介して、第1の流路3(又は第2の流路4)へと逆流する。
【0044】
また、液面レベルセンサ23が検知信号を出力すると同時に、時間計測部33は、時間の計測を開始する。更に、透析液(又は補液)の逆流により、容器21の液面レベルが低下し、液面レベルセンサ24が検知信号を出力すると、時間計測部33は時間の計測を終了し、測定した時間を演算部31に通知する。
【0045】
なお、容器21への透析液(又は補液)の導入により、容器21の液面が、液面レベルセンサ23が検知する液面を越えてしまった場合は、時間計測部33は、透析液(又は補液)の逆流によって液面レベルセンサ23が再度検知信号を出力したときから、時間の計測を開始することができる。
【0046】
次に、演算部31は、予め測定されている排出量を、時間計測部33が測定した時間で除算する。これにより、選択された第1の流路3(又は第2の流路4)を流れる透析液(又は補液)の流量が求められる。なお、この場合も、演算部31は算出した流量を表示装置に表示することもできる。
【0047】
次に、演算部31は、流量の算出が終了したことを制御部32に通知する。演算部31の通知を受けると、制御部32は、第1の流路3(又は第2の流路4)の分岐流路17(又は分岐流路18)に設けられたバルブ11(又はバルブ12)を閉状態にする。また、制御部32は、第1の流路3(又は第2の流路4)の分岐点の上流側のバルブ14(又はバルブ15)を開状態にする。なお、制御部32によるこのバルブ操作は、液面レベルセンサ24による検知信号の出力と同時に行うこともできる。
【0048】
更に、上述の第3の流路5が選択された場合と同様に、第1の流路3(又は第2の流路4)が選択された場合も、演算部31は、第1の流路3(又は第2の流路4)に設けられた透析液ポンプ6(又は補液ポンプ7)の初期流量と算出した透析液(又は補液)の流量との差を算出することができる。更に、制御部32は、算出された差に応じて、透析液ポンプ6(又は補液ポンプ7)の回転数(吐出量)を調整することもできる。この場合も、血液浄化装置の自動運転が可能となる。
【0049】
以上のように、本実施の形態においては、透析液回路(第1の流路3)、補液回路(第2の流路4)及び濾液回路(第3の流路5)のそれぞれに測定部20を設けることなく、各回路の流量を測定できる。よって、従来に比べて、各回路や装置の構成が複雑になるのを抑制でき、更に、測定部毎の誤差を考慮しなくても良い。このため、本実施の形態における血液浄化装置によれば、従来に比べて、計測誤差を抑制でき、しかも、構成の簡略化によりコストの低減化を図ることができる。
【0050】
また、上述の例では、第1の流路3、第2の流路4、及び第3の流路5のうちの一つの流路が順次選択されているが、本実施の形態はこの例に限定されるものではない。例えば、本実施の形態は、第1の流路3と第2の流路4とが同時に選択される態様であっても良い。この態様について、以下に説明する。
【0051】
上記態様においては、演算部31は、第1の流路3を流れる透析液の流量と、第2の流路4を流れる補液の流量との合計流量を算出する。また、演算部31は、第3の流路5を流れる濾液については、それ単独の流量を算出する。
【0052】
更に、演算部31は、透析液及び補液の合計流量と濾液の流量とを比較し、例えば、合計流量と濾液の流量とが一致するように、制御部32に、透析液ポンプ6、補液ポンプ7及び濾液ポンプ8の回転数を調整させることができる。この場合は、除水や患者への注液を行うことなく、溶質拡散のみで透析を行うことができる。また、患者の体内に注液した量だけ除水することで、体重変化無しに老廃物を除去することも可能となる。
【0053】
また、操作者が患者の体液の増加(注液)を指示している場合は、演算部31は、透析液及び補液の合計流量が濾液の流量よりも大きくなるように、制御部32に、透析液ポンプ6、補液ポンプ7及び濾液ポンプ8の回転数を調整させる。更に、操作者が患者に対して除水を行うことを指示している場合は、演算部31は、透析液及び補液の合計流量が濾液の流量よりも小さくなるように、制御部32に、透析液ポンプ6、補液ポンプ7及び濾液ポンプ8の回転数を調整させる。
【0054】
このように、上記態様によれば、正確に測定された流量に基づいて、患者の体液の一定量の保持、患者への注液、更には除水を行うことができる。よって、血液浄化療法の実施時における患者の安全性の確保の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、血液浄化装置の回路や装置構成を単純化でき、計測誤差の抑制やコストの低減に貢献できる。よって、本発明の血液浄化装置は、産業上の利用可能性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、本発明の実施の形態における血液浄化装置の概略構成を示す構成図である。
【符号の説明】
【0057】
1 体外循環回路
1a 脱血回路
1b 返血回路
2 血液浄化部(ダイアライザ)
3 第1の流路(透析液回路)
4 第2の流路(補液回路)
5 第3の流路(濾液回路)
6 透析液ポンプ
7 補液ポンプ
8 濾液ポンプ
9 透析液用容器
10 補液用容器
11、12、13 バルブ(流路切替部)
14、15、16、22 バルブ
17 第1の分岐流路
18 第2の分岐流路
19 第3の分岐流路
20 測定部
21 容器
23、24 液面レベルセンサ
30 制御装置
31 演算部
32 制御部
33 時間計測部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体から取り出した血液の浄化を行う血液浄化装置であって、
体外循環回路と、前記体外循環回路に設けられた血液浄化部と、前記血液浄化部に透析液を供給するための第1の流路と、前記体外循環回路に補液を供給するための第2の流路と、前記血液浄化部からの濾液を排出するための第3の流路と、測定部と、流路切替部とを備え、
前記流路切替部は、前記第1の流路、前記第2の流路及び前記第3の流路の中から選択された少なくとも一つの流路を流れる液を前記測定部に導き、
前記測定部は、選択された流路を流れる液の流量を測定することを特徴とする血液浄化装置。
【請求項2】
時間計測部と、演算部とを更に備え、
前記測定部が、前記選択された流路から導かれた液を貯留する容器を備え、
前記時間計測部が、前記選択された流路から導かれた液が前記容器に一定量貯留されるまでの時間、または前記容器に貯留された液が一定量排出されるまでの時間を測定し、
前記演算部が、前記容器に貯留された液の液量または前記容器から排出された液の液量を、前記時間計測部によって測定された時間で除算して、前記測定部に接続された流路を流れる液の流量を算出する請求項1に記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記流路切替部が、前記第1の流路、前記第2の流路及び前記第3の流路のうち一つの流路を順次選択する請求項1または2に記載の血液浄化装置。
【請求項4】
前記流路切替部が、前記第1の流路と前記第2の流路とを同時に選択する請求項1または2に記載の血液浄化装置。
【請求項5】
前記第1の流路に設けられた透析液ポンプと、前記第2の流路に設けられた補液ポンプと、前記第3の流路に設けられた濾液ポンプと、制御部とを更に備え、
前記制御部は、前記演算部が算出した流量に基づいて、前記選択された流路に設けられたポンプの吐出量を調整する請求項2に記載の血液浄化装置。

【図1】
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