説明

血液脳関門破壊の評価

被検者の血液脳関門を分析する方法が提供される。検出可能な用量のMRI造影剤が被検者に投与され、予め定められた時間にわたって被検者の脳の複数の磁気共鳴画像が取得される。磁気共鳴画像のうちの2つ以上がそれらの間で比較されて、脳内における造影剤の濃度の変動を決定し、その変動に基づいて、血液脳関門機能が評価される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幾つかの実施形態においては医学に関係し、更に特定的には、これに限定するものではないが、磁気共鳴イメージング法による血液脳関門破壊の評価に関係する。
【背景技術】
【0002】
血液脳関門(BBB)は、しっかりと結合した内皮細胞の連続的な層から成る毛細血管関門である。これらの内皮細胞は身体の他の組織で見られる内皮細胞とは異なっている。具体的には、これらの内皮細胞は、それら自身の間で複雑なしっかりとした接合を形成している。実際のBBBは、それらの細胞自身とともに、血液から脳への多くの分子の受動運動に対抗する連続的な壁を形成する上述の如きしっかりとした細胞間接合により形成される。また、これらの細胞は、それらが他の組織において見られる毛細血管壁を横断する幾分かの非選択的輸送を許容する飲小胞をほとんど有していないという点においても異なっている。これに加え、存在している場合には非抑制的な通過を許容することとなる、それらの細胞を通じて走る連続的な間隙または溝も存在しない。
【0003】
BBBの1つの機能は、血液化学の揺らぎから脳を保護することである。しかし、この血流からの脳の隔離は、栄養素および老廃物のやりとりが存在しているため、完全ではない。毛細血管の内皮細胞内における特異的輸送システムの存在により、脳が正常な成長および機能にとって必要なすべての化合物を制御された仕方で受容することが確保されている。
【0004】
BBBによってもたらされる差し障りは、脳を保護するというプロセスにおいて、多くの潜在的に有用な治療用および診断用の物質が排除されてしまうということである。従って、中枢神経系(CNS)病変を治療するための治療用物質の投与は、ほとんどの薬物のBBB横断通過特性が乏しいため、ほとんど効果がない。
【0005】
BBBの独特な生物学的性状は、中枢神経系(CNS)障害の治療との関連において言及されることが多い。BBBの細胞間における内皮間接合は、正常な状態では、潜在的に有害な物質を脳から隔離しておくことができるように設計されているが、この状態は、CNS障害を患っている患者、または脳の膿瘍、炎症もしくは腫瘍を有している患者の場合には変わり得る。例えば、多発性硬化症、アルツハイマー病、脳卒中および脳損傷を患っている患者はBBBの破壊を経験することが報告されている(例えば、Ballabhら(2004年)による「The blood−brain barrier:an overview:structure,regulation,and clinical implications」(Neurobiol Dis 16(1):1−13)を参照のこと]。
【0006】
多年にわたり、BBBに関連した広範囲の研究が行われてきた。BBBを横断することができる薬物(例えば、米国特許第4801575号、第5004697号、第6419949号および第6294520号を参照のこと)、BBB透過性を増大させる薬物(例えば、米国特許第5434137号、第5506206号および第5591715号を参照のこと)、およびBBBを横断して物質を送給するための技術(例えば、米国特許第5670477号、第5752515号および第6703381号を参照のこと)、ならびに損傷を被ったBBBを治療するための技術(例えば、米国特許第4439451号を参照のこと)およびBBBを分析するための技術(例えば、米国特許第6574501号およびWangら(2006年)による「Vascular Volume and Blood−Brain Barrier Permeability Measured by Dynamic Contrast Enhanced MRI in Hippocampus and Cerebellum of Patients with MCI and Normal Controls」(J Magn Reson Imaging 24:695−700)を参照のこと)などの様々な技術を開発すべく様々な努力が重ねられてきた。
【0007】
物質がBBBを横断する能力を試験するための技術を開発するためにも、多くの試みが行なわれてきた。この目的のために、例えば、米国特許第5266480号;Latourら(2004年)による「Early blood−brain barrier disruption in human focal brain ischemia」(Ann Neurol 56(4):468−77);Ewingら(2003年)による「Patlak plots of Gd−DTPA MRI data yield blood−brain transfer constants concordant with those of 14C−sucrose in areas of blood−brain opening」(Magn Reson Med 50(2):283−92);Taheri,S.およびR.Sood(2006年)による「Kalman filtering for reliable estimation of BBB permeability」(Magn Reson Imaging 24(8):1039−49);およびTomkinsら(2007年)による「Blood−Brain Barrier Disruption in Post−Traumatic Epilepsy」(J Neurol Neurosurg Psychiatry)を参照のこと。
【発明の概要】
【0008】
本発明の幾つかの実施形態における1つの態様によれば、検出可能な用量のMRI造影剤を有する被検者の血液脳関門を分析する方法が提供される。その方法は、予め定められた時間にわたって被検者の脳の複数の磁気共鳴画像を取得するステップ、それらの複数の磁気共鳴画像のうちの少なくとも2つの磁気共鳴画像をそれらの間で比較して、脳内における造影剤の濃度の変動を決定するステップ、前述の変動状態に基づいて、血液脳関門機能を評価するステップ、およびその血液脳関門機能に関するレポートを発行するステップを含む。
【0009】
本発明の幾つかの実施形態によれば、その方法は、更に、前述の濃度変動をマッピングするステップを含み、そこでは、前述のレポートは、血液脳関門機能に関するマップを含んでいる。
【0010】
本発明の幾つかの実施形態によれば、前述の比較ステップは、それぞれが1つの磁気共鳴画像と関連している複数の正規化強度マップを作図するステップを含み、そこでは、前述の濃度変動をマッピングするステップは、それらの濃度変動を表現する少なくとも1つの変動マップを作図するために、一対の強度マップの間での非類似性を検出するステップを含んでいる。
【0011】
本発明の幾つかの実施形態によれば、上述の変動を決定するステップは、その磁気共鳴画像内における1つまたはそれ以上の関心領域に対して代表的強度値を割り当てるステップおよびその代表的強度値の時間依存性を決定するステップを含んでいる。
【0012】
本発明の幾つかの実施形態によれば、その方法は、更に、上述の時間依存性を表現するグラフを作成するステップを含んでいる。
【0013】
本発明の幾つかの実施形態における1つの態様によれば、ある化合物が被検者の血液脳関門に及ぼす効果を判定する方法が提供され、その方法は、前述の化合物および検出可能な用量のMRI造影剤を投与するステップ、ならびに上で記述されている方法を実行するステップを含む。
【0014】
本発明の幾つかの実施形態における1つの態様によれば、ある化合物を脳へ送給した際のBBB機能をモニタリングする方法が提供され、その方法は、前述の化合物および検出可能な用量のMRI造影剤を投与して上で記述されている方法を実行し、これにより、その送給時におけるBBB機能をモニタリングすることを含む。
【0015】
本発明の幾つかの実施形態によれば、その方法は、更に、血液脳関門破壊を一時的に発生させることができる血液脳関門変性剤を投与するステップを含む。
【0016】
本発明の幾つかの実施形態によれば、その血液脳関門変性剤はイソソルビドジニトラートを含む。本発明の幾つかの実施形態によれば、その血液脳関門変性剤はヒドロキシジンを含む。本発明の幾つかの実施形態によれば、その血液脳関門変性剤は抗ヒスタミン剤を含む。本発明の幾つかの実施形態によれば、その血液脳関門変性剤はセロトニンレベルを変えることができる。本発明の幾つかの実施形態によれば、その血液脳関門変性剤は抗精神病薬である。本発明の幾つかの実施形態によれば、その血液脳関門変性剤はグルタマート受容体アゴニストまたはアンタゴニストを含む。本発明の幾つかの実施形態によれば、その血液脳関門変性剤は抗炎症薬である。本発明の幾つかの実施形態によれば、その血液脳関門変性剤は抗高血圧症薬である。本発明の幾つかの実施形態によれば、その血液脳関門変性剤は中枢神経系刺激剤を含む。
【0017】
本発明の幾つかの実施形態における1つの態様によれば、処置中における被検者の血液脳関門の破壊を防止または低減する方法が提供される。その方法は、検出可能な用量のMRI造影剤をその被検者に投与するステップ、上で記述されている方法を実行するステップ、および血液脳関門機能不全に関する予め定められている判定基準が満たされたときに検出可能な信号を発生させ、これによりその血液脳関門の破壊を防止または低減するステップを含む。
【0018】
本発明の幾つかの実施形態における1つの態様によれば、中枢神経系障害を検出する方法が提供される。その方法は、血液脳関門機能不全を判定するために上で記述されている方法を実行し、これにより、中枢神経系障害を検出することを含む。
【0019】
本発明の幾つかの実施形態によれば、その方法は、更に、その血液脳関門機能不全の状態に基づいて、中枢神経系障害をステージングするステップを含む。
【0020】
本発明の幾つかの実施形態によれば、その中枢神経系障害は統合失調症である。本発明の幾つかの実施形態によれば、その中枢神経系障害は片頭痛または頭痛障害である。本発明の幾つかの実施形態によれば、その中枢神経系障害はパーキンソン病である。
【0021】
本発明の幾つかの実施形態における1つの態様によれば、予め定められた時間にわたって取得された被検者の脳の複数の磁気共鳴画像からその被検者の血液脳関門を分析するための装置が提供される。その被検者は、検出可能な用量のMRI造影剤を有している。その装置は、それぞれの磁気共鳴画像に対して強度マップを作図するための強度マップ作成装置、一対の強度マップの間での非類似性を検出することにより、その脳内における造影剤の濃度の変動を表現する少なくとも1つの変動マップを作図するための変動マップ作成装置、およびそれらの変動に基づいて血液脳関門機能を評価し、かつ、その血液脳関門機能に関するレポートを発行することができるように構成されている血液脳関門機能評価ユニットを含む。
【0022】
本発明の幾つかの実施形態によれば、その評価ユニットは、磁気共鳴画像内における関心領域に対して代表的強度値を割り当て、かつ、その代表的強度値の時間依存性を決定することができるように構成されている。
【0023】
本発明の幾つかの実施形態によれば、その評価ユニットは、上述の時間依存性を表現するグラフを作成することができるように構成されている。
【0024】
本発明の幾つかの実施形態によれば、それぞれの代表的強度値は、個々の磁気共鳴画像における種々の強度を平均することにより割り当てられる。
【0025】
本発明の幾つかの実施形態によれば、被検者は、磁気共鳴画像が取得されている間、不動化される。
【0026】
本発明の幾つかの実施形態によれば、それぞれの磁気共鳴画像はスライスされた磁気共鳴画像を含んでおり、ここでは、上述の比較ステップがスライスごとに実施される。
【0027】
本発明の幾つかの実施形態によれば、上述の1つまたは複数の変動マップは減算マップを含んでいる。
【0028】
本発明の幾つかの実施形態によれば、1つまたは複数の変動マップは勾配マップを含んでいる。
【0029】
本発明の幾つかの実施形態によれば、1つまたは複数の変動マップは比率マップを含んでいる。
【0030】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施形態の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0031】
本発明の実施形態の方法および/またはシステムを実行することは、選択されたタスクを、手動操作で、自動的にまたはそれらを組み合わせて実行または完了することを含んでいる。さらに、本発明の装置、方法および/またはシステムの実施形態の実際の機器や装置によって、いくつもの選択されたステップを、ハードウェア、ソフトウェア、またはファームウェア、あるいはオペレーティングシステムを用いるそれらの組合せによって実行できる。
【0032】
例えば、本発明の実施形態による選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップまたは回路として実施されることができる。ソフトウェアとして、本発明の実施形態により選択されたタスクは、コンピュータが適切なオペレーティングシステムを使って実行する複数のソフトウェアの命令のようなソフトウェアとして実施されることができる。本発明の例示的な実施形態において、本明細書に記載される方法および/またはシステムの例示的な実施形態による1つ以上のタスクは、データプロセッサー、例えば複数の命令を実行する計算プラットフォームで実行される。任意選択的に、データプロセッサーは、命令および/またはデータを格納するための揮発性メモリ、および/または、命令および/またはデータを格納するための不揮発性記憶装置(例えば、磁気ハードディスク、および/または取り外し可能な記録媒体)を含む。任意選択的に、ネットワーク接続もさらに提供される。ディスプレーおよび/またはユーザ入力装置(例えば、キーボードまたはマウス)も、任意選択的にさらに提供される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し添付の図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【図1】図1は、本発明の幾つかの実施形態によって被検者の血液脳関門を分析するのに適した方法を表現しているフローチャート式ダイアグラムである。
【図2】図2は、本発明の幾つかの実施形態による比較手順のフローチャート式ダイアグラムである。
【図3】図3は、本発明の幾つかの実施形態によって被検者の血液脳関門を分析するための装置の概略図である。
【図4】図4は、本発明の幾つかの実施形態によって身体を画像化するための磁気共鳴イメージングシステムの概略図である。
【図5】図5a−5bは、本発明の幾つかの実施形態によって行われた実験中に死亡したマウスの強度マップ(図5a)および強度プロット(図5b)を示しており、図5cは、本発明の幾つかの実施形態によって行われた実験の間中ずっと生き続けたマウスの強度プロットを示している。
【図6】図6a−6dは、本発明の幾つかの実施形態によって行われた実験中に得られた、対照ラット(図6a−6b)およびSNPで処置されたラット(図6c−6d)の強度プロット(分表示の時間の関数としての無次元単位における平均正規化強度)を示している。
【図7】図7a−7fは、本発明の幾つかの実施形態によって行われた実験中に得られた、処置されたラット(図7a−7c)および対照ラット(図7d−7f)の減算マップである。
【図8】図8は、本発明の幾つかの実施形態によって行われた実験中に得られた、処置されたラット(青色の菱形)および対照ラット(ピンク色の正方形)の平均減算値を示すグラフである。
【図9】図9a−9dは、本発明の幾つかの実施形態によって行われた実験中に得られた、2匹の処置されたラット(図9a−9b)および2匹の対照ラット(図9c−9d)の蛍光画像である。
【図10a−b】図10a−10bは、造影剤を注入してから1分後(図10a)および10分後(図10−b)における健常な被検者からの、本発明の幾つかの実施形態によって行われた実験中に取得されたT1加重MR画像である。
【図10c】図10cは、図10bに示されているMR画像に対応する減算マップである。
【図11】図11a−11eは、造影剤を注入してから1分後、7分後、13分後、19分後および23分後における急性の精神病的状態にある統合失調症患者からの、本発明の幾つかの実施形態によって行われた実験中に取得されたT加重MR画像である。
【図12】図12a−12eは、それぞれが図11a−11eに示されているMR画像に対応している強度マップであり、図12fは図12a−12eに対するカラースケールを示している。
【図13】図13a−13dは、それぞれが図12b−12eに示されている強度マップに対応している減算マップであり、図13eは図13a−13dに対するカラースケールを示している。
【図14a−b】図14a−14bは、造影剤を注入してから1分後(図14a)および7分後(図14b)における、髄膜腫を患っている被検者からの、本発明の幾つかの実施形態によって行われた実験中に取得されたT加重MR画像である。
【図14c】図14cは、図14a−14bに示されているMR画像に対応する減算マップである。
【図15a−b】図15a−15bは、造影剤を注入してから1分後(図15a)および10分後(図15b)における、毛細血管腫を患っている被検者からの、本発明の幾つかの実施形態によって行われた実験中に取得されたT加重MR画像である。
【図15c−d】図15c−15dは、図15a−15bに示されているMR画像に対応する減算マップ(図15c)および比率マップ(図15d)である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、幾つかの実施形態においては医学に関係し、更に特定的には、これに限定するものではないが、磁気共鳴イメージング法(MRI)による血液脳関門破壊の評価に関係する。
【0035】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示されるか、および/または図面および/または実施例において例示される構成要素および/または方法の組み立ておよび構成の細部に必ずしも限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行されることが可能である。
【0036】
MRIは、磁場に置かれたある系を成すスピンが特定の周波数で適用されたときに共鳴的にエネルギーを吸収する核磁気共鳴(NMR)と呼ばれる量子力学的現象を利用することにより、材料の化学的および物理的な微視的性質を表す画像を得るための方法である。
【0037】
磁場に置かれると、スピンIを有する核は離散的な一組のエネルギー準位にあることが許容され、それらのエネルギー準位の数はIによって決まり、また、それらの分離はその核の磁気回転比gおよび磁場によって決まる。高周波磁場が一次静磁場の方向のまわりで回転するときに現れる微小摂動の影響下において、その核は、1つのエネルギー準位から別のエネルギー準位への遷移が生じる時間依存性の確率を有している。その回転磁場が特定の周波数の場合、前述の遷移確率は単一の値に達し得る。従って、回転磁場の大きさが一次磁場と比較して相対的に小さなものであったとしても、特定の時間でその核に遷移が強いられる。スピンIの核のアンサンブルに対して、それらの遷移は全体的な磁化の変化を通じて実現される。
【0038】
一旦磁化の変化が起こると、ある系を成しているスピンは、熱力学的な最小エネルギーの原理に従って、それの磁化縦方向均衡値を復元する傾向がある。その系が上述の均衡値に復帰するのに要する経過時間を制御する時定数は「スピン−格子緩和時間」と呼ばれ、Tと記される。「スピン−スピン緩和時間」と呼ばれる1つの付加的な時定数、T(≦T)は、熱力学的な最小エネルギーの原理に従って、横方向磁化が減衰するのに要する経過時間を制御する。しかし、分子間相互作用および静磁場の値の局所的な変動がTの値をTと記される実効値に変える。
【0039】
MRIでは、予め定められた勾配を有する静磁場が目標物体に印加され、これにより、その目標物体のそれぞれの領域において、固有磁場が創出される。NMR信号を検出し、磁場勾配を知ることにより、その目標物体のそれぞれの領域の位置を画像化することができる。
【0040】
目標物体(例えば患者)に印加される磁気共鳴(MR)パルスシーケンスが、それらのスピンと相互作用することにより、磁気共鳴を誘導し、磁気共鳴を再焦点化しおよび/または磁気共鳴を制御する。NMR信号は、情報を得るために発生され、かつ、使用され、その目標物体の画像を再構成する。上で述べられているそれらの核スピンの緩和時間および密度分布は、個々の正常な組織によって様々に異なり、かつ、個々の疾患を被った組織によっても様々に異なる特性である。従って、これらの量は、様々なイメージング技術における組織間のコントラストに関与しており、それ故、画像のセグメンテーションを可能に成している。
【0041】
多くのMRシーケンスが知られている。大まかに言えば、それらのMRシーケンスの様々な時定数は、空間情報、流動情報および拡散情報などをもたらすべくその磁気共鳴をエンコードすることができるように選択される。
【0042】
拡散加重MRIでは、例えば、それらの磁場勾配は、選定された方向における流体分子の動きに敏感な動作関連コントラストをもたらすことができるように選択される。拡散加重MRIは、結果として生じる信号損失を伴うスピンの位相分散を引き起こす分子のランダム運動を利用する。
【0043】
加重MRIでは、そのMRシーケンスは、T緩和プロセスを制御し、かつ、T1の影響を最小化することができるように選択される。そのような制御を行うための1つの方法はスピンエコー法と呼ばれており、そこでは、磁化が最初に横方向平面にあるべく強いられ、予め定められた時間間隔の後、180°のフリップで再焦点化される。結果として生じる信号のピークは、時定数Tによって特徴付けられる減衰曲線により表現される。
【0044】
本発明の種々の実施形態は、BBB破壊を評価する際にMRIのこれらの利点を利用する。
【0045】
次に、添付図面を参照しながら説明すると、図1は、被検者の血液脳関門を分析するのに適した方法を表現しているフローチャート式ダイアグラムである。
【0046】
この方法はステップ「10」から始まり、場合によってはステップ「11」へと続き、そのステップ「11」は、検出可能な用量のMRI造影剤が被検者に投与されるプロセスを表している。代替的に、この方法は、被検者が既に血管系に造影剤を有している状態から始めることもできる。
【0047】
「検出可能な用量」という用語は、MRIシステムにおける造影剤の検出を可能にする用量を表す。例えば、MRI造影剤がGd−DTPAであるときには、検出可能な用量は約0.2ml/kgから約0.6ml/kgまでであり得る。しかし、幾つかの実施形態では、別のタイプの造影剤および/または別の用量を使用し得るため、実情は必ずしもこれに限定されるものではない。
【0048】
本MRI造影剤は陽性MRI造影剤または陰性MRI造影剤のどちらであってもよい。陽性MRI造影剤は周辺の組織または流体と比較して相対的にNMR信号を増大させる造影剤であり、陰性MRI造影剤は周辺の組織または流体と比較して相対的にNMR信号を減少させる造影剤である。いずれにしても、そのMRI造影剤は、増強されたNMR信号または低減されたNMR信号のどちらかによって周囲のものから区別されるため、検出可能である。
【0049】
本発明の様々な例証的実施形態においては、その造影剤の優性効果がT緩和時間を短縮することであるようにして、陽性MRI造影剤が使用される。幾つかの実施形態においては、そのMRI造影剤はT緩和時間を短縮する。
【0050】
そのMRI造影剤の磁気特性はどのようなタイプのものであってもよい。より特定的には、本MRI造影剤は磁性材料を含み、その磁性材料は常磁性、超常磁性または強磁性の材料であってよい。
【0051】
MRI造影剤(および、事実上、すべての他の材料)の磁気特性は、その材料の亜原子構造に由来する。磁場に置かれたときにその材料に作用する磁気力の方向ならびに大きさは、種々の異なる材料によって様々に異なる。その力の方向は材料の内部構造にのみ依存するのに対し、力の大きさはその材料の内部構造ならびにサイズ(質量)の両方に依存する。強磁性材料は、常磁性材料または超常磁性材料に比べ、最も大きな磁化率を有している。超常磁性材料は、ばらで強磁性を有するエレメントの個別的なドメインから成っている。それらの磁化率は、常磁性材料の磁化率よりも大きいが、強磁性材料の磁化率よりは小さい。
【0052】
大まかに言えば、強磁性および超常磁性のMRI造影剤は陰性MRI造影剤であり、常磁性のMRI造影剤は、陰性MRI造影剤または陽性MRI造影剤のどちらかであり得る。磁気共鳴信号に及ぼす常磁性材料の影響は、その常磁性材料のタイプおよび濃度に依存し、更には外部的な要因、例えば印加される磁場の強さなどに依存する。本発明の様々な例証的な実施形態においては、常磁性材料を含むそれらのMRI造影剤は陽性造影剤である。
【0053】
本明細書で使用する場合、常磁性材料という用語は、1つまたはそれ以上の不対電子のせいで常磁性である金属原子または金属イオンを表し、但し、一般的に放射性核種と呼ばれる放射性の金属原子または金属イオンを除外する。代表的な例は、これらに限定するものではないが、常磁性遷移金属、ならびに1b族、2b族、3a族、3b族、4a族、4b族、5b族、6b族、7b族および8族のランタニドを含み、より好適には原子番号21−31、39−50、57−71および72−82のもの、更に一層好適にはガドリニウム(Gd)、ジスプロシウム(Dy)、クロム(Cr)、鉄(Fe)およびマンガン(Mn)、尚も一層好適にはGd、MnおよびFe、最も好適にはGdを含む。
【0054】
Gdをベースとした造影剤の使用は、それらの造影剤が一般的に入手しやすく、安全性が認められており、かつ、高価でないため、特に有利である。そのような造影剤はT加重MRIで明確に表現し、BBB機能の種々の異なる様相を表現するために異なる分子サイズにおいて見いだすことができる。
【0055】
本発明の様々な例証的実施形態においては、そのMRI造影剤は、その磁性材料とキレート錯体を形成することができるキレート化部分を含んでいる。これらのキレート化部分は、例えば、これらに限定するものではないが、ポリアミノポリエチレンポリ酢酸[例えば、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸(TTHA)およびテトラエチレンペンタアミンヘプタ酢酸]などの直鎖状のキレート化部分;または、例えば、これらに限定するものではないが、ポリアザ大環状化合物[例えば、1,4,7,10−テトラ−アザシクロドデカン−1,4,7,10−テトラ酢酸(DOTA)など]などの環状のキレート化部分であってよい。
【0056】
DTPAの使用は、DTPAが、一般的に利用しやすい、小さくて安定した分子であるため、特に有利である。
【0057】
本発明の様々な例証的実施形態においては、そのMRI造影剤は、Gd−DTPAを含む陽性MRI造影剤である。Gd−DTPAは、T加重MRIで観測したときには陽性造影剤であり、T加重MRIで観測したときには陰性造影剤である。Tの方がGd−DTPAに対して一層敏感であるため、造影剤がGd−DTPAであるときには、T加重MRIの方が好適なMRI技法である。
【0058】
再び図1を参照しながら説明すると、ステップ「13」において、予め定められた時間にわたって被検者の脳の複数のMR画像が取得される。それらのMR画像は、好適には、その時間にわたって実質的に連続的に取得され、または少なくとも反復的に取得される。必ずということではないが、典型的には、その時間の長さは、遅発性のBBB破壊の評価だけでなく早発性のBBB破壊の評価をも可能にするだけの充分な長さである。本発明の様々な例証的実施形態においては、それらのMR画像は、少なくとも10分間の期間、より好適には少なくとも20分間、更に好適には少なくとも30分間、例えば約35分間または約40分間もしくはそれ以上の期間にわたって取得される。
【0059】
MR画像を取得するステップはスライシング技術を含み、そのケースにおいては、それらのうちの1つまたはそれ以上のMR画像(例えば、それぞれのMR画像)は1つのセットになったMR画像を含むスライスされたMR画像であり、ここで、上述のセットにおける各エレメントがその脳の異なるスライスに対応している。各スライスの厚みは、その画像の信号対雑音比(SNR)および/またはコントラスト対雑音比(CNR)を改善すべく選択することができる。必ずということではないが、典型的には、1つのセットに約20−25個の画像スライスが存在する。
【0060】
1つのセットになったスライスの取得時間は、一般的に、使用されるパルスシーケンスに依存する。本発明のこれらの実施形態に適した典型的な取得時間は、これらに限定するものではないが、約1分から約5分までである。従って、本方法が例えば40分間の期間にわたってMR画像を取得するときには、それらのセットの個数は約8セットから約40セットまでである。本発明の幾つかの実施形態においては、T加重高速スピンエコーMR画像が、1つのセット当たり約2分の取得時間で取得される。
【0061】
被検者の脳の傍らで、キャリブレーションを目的として、ファントムサンプルもMRIによってスキャニングすることができる。そのファントムサンプルは、好適には、使用される特定のMRIシステムでのヒト組織の場合と類似した緩和時間TおよびTを有するMRIに適した材料で作成される。例えば、そのファントムは、セッケン水またはカラギーナンゲルなどで満たされたチューブであってよい。そのファントムサンプルは、信号の取得中にNMR信号が脳とファントムとの両方から収集されるように、被検者の頭部の近くに配置することができる。
【0062】
本発明の様々な例証的実施形態においては、MR画像の取得に先行して、被検者を不動化する手順(ステップ「12」参照)が行われる。これは、物理的に、例えば頭部不動化装置などの保持装置によりおよび/または化学的に、例えば鎮静剤の使用もしくは全身麻酔により為されてよい。この実施形態は、被検者が静かに横たわっていることを妨げるCNS障害に罹患しているときに特に有用である。このケースにおいては、不動化は、MRIシステムとの関係における被検者の体位が経時的に変わらないため、一層良好な質のMR画像を促進し、かつ、それらの取得されたMR画像の間での比較を可能にする。
【0063】
ステップ「14」では、脳内における造影剤の濃度の変動を決定することができるように、それらのMR画像のうちの少なくとも数個のMR画像が比較される。本発明の様々な例証的実施形態においては、その比較は2つ一組で実施され、そこでは、その都度、2つのMR画像が比較される。それらの画像が複数個のスライスのセットから成っているときには、その比較は、好適には、スライスごとに実施される。本発明の幾つかの実施形態による比較手順が、図2を参照しながら以降で与えられている。
【0064】
ステップ「15」において、本方法は、造影剤濃度の上述の変動に基づいてBBB機能を評価する。具体的に言えば、脳組織内における造影剤の濃度が時間の経過につれて増大しているときには、本方法はBBB破壊を同定することができる。この評価は全体的および/または局所的に行うことができる。
【0065】
全体的な評価においては、本方法は脳内における造影剤の全体的な量の増加が存在するか否かを判定し、これにより、時間の関数としてのそのような増加をBBB破壊として同定することができる。これは、そのシーケンスの各MR画像(または、複数のMR画像から成る各セット)に対して代表的な強度値を割り当て、そのシーケンスにわたってそれらの代表的強度値の時間依存性を決定することにより果たすことができる。上述の代表的強度値は、その画像にわたって、または複数の画像から成るそのセットにわたって、強度を積分することにより、または平均することにより、算出することができる。また、その積分または平均が何らかの予め定められた加重スキームに従って加重されてもよい。代表的強度値が平均することによって得られるときには、これらに限定するものではないが、算術平均や質量中心などを含め、あらゆる平均技法を使用することができる。
【0066】
上述の如くにして割り当てられた代表的強度値、および場合によってはそれらの時間依存性は、コンピュータの記憶媒体に保存することができる。また、それらの代表的強度値は、例えば時間の関数として代表的強度値のグラフを作図することにより、視覚化することもできる。そのようなグラフの1つの例が以降の実施例のセクションで与えられている。代表的強度値の時間依存性を利用してBBB機能を評価することができ、そこでは、例えば時間の経過に伴う代表的強度値の増加がBBB破壊を指示し、不変または減少が無傷のBBBを指示することができる。
【0067】
局所的な評価を行う場合には、本方法は、造影剤濃度の増加が存在している脳内の場所を判定するステップを含む。例えば、本方法は、以降でもっと詳しく説明されているように、脳全体にわたって、または脳内の関心領域にわたって、造影剤濃度の変動をマッピングすることができる。
【0068】
ステップ「16」において、本方法はBBB機能に関するレポートを発行する。そのレポートは、BBB破壊が同定されたか否かについての指示および/またはBBB破壊の程度(例えば、ある与えられた化合物に対するBBB横断率)に関する指示を含むことができる。そのレポートは、脳全体または脳内の関心領域でのBBB破壊に関する指示を提供するという意味において全体的であってよく、および/またはそのレポートがBBB破壊の局在性に関する情報も含み得るという意味において局所的であってよい。例えば、そのレポートは、脳全体または脳内の関心領域にわたる複数の場所でのBBB機能またはBBB機能不全を表現するBBB機能マップであってよい。
【0069】
本方法はステップ「17」で終了する。
【0070】
次に、本発明の幾つかの実施形態による比較手順のフローチャート式ダイアグラムである図2を参照する。この手順は、図1のフローチャート式ダイアグラムで説明されている方法(ステップ「14」参照)によって用いられてよい。
【0071】
この比較手順への入力データは、これまでの箇所でもっと詳しく説明されている(ステップ「13」参照)如き複数のMR画像または複数のセットを成すMR画像を含む。それらのMR画像またはセットを成すMR画像は時間順であり、従って、MR画像のシーケンスまたはセットを成すMR画像のシーケンスを形成している。
【0072】
ステップ「20」において、本手順は複数の強度マップを作図する。それぞれの強度マップが1つのMR画像または1つのセットを成すMR画像と関係している。その強度マップは、その画像またはその画像内の関心領域における複数の場所(例えばピクセル)に対する強度値を含む。強度マップが1つのセットを成す画像と関係しているときには、それらの強度値は、そのセットにわたって平均をとることにより得られてよい。これらに限定するものではないが、算術平均や質量中心などを含め、あらゆる平均技法を用いることができる。その平均値の取得は、好適には、場所の観点において果たされる。例えば、特定の強度マップのi番目の強度値は、第1スライスのi番目の場所から得られた強度値、第2スライスのi番目の場所から得られた強度値等々を平均することにより得ることができる。また、その平均値の取得は、特定の脳の細胞小器官にわたって、または例えばセグメンテーション法によって決定され得る白質もしくは灰白質にわたって行うこともできる。
【0073】
それぞれの強度マップが1つのMR画像(または1つのセットを成す複数のMR画像)とかかわり合っているため、それらの強度マップも時間順のシーケンスを形成している。それらの強度マップシーケンスは、好適には、更なる処理のため、コンピュータの内部記憶装置に保存される。また、それらのうちの1つまたはそれ以上の強度マップを、例えば表示装置上で、視覚化することもできる。
【0074】
本発明の様々な例証的実施形態においては、それらの強度マップは正規化されている(ステップ「21」参照)。この正規化は、典型的には、そのシーケンスにわたって実質的に一定のままである参照強度値に関するものである。そのような参照強度値は、例えば脳とともにMRIによってスキャニングされ得るファントムサンプルから得ることができる。強度マップの正規化が行われているときには、正規化された強度値をもたらすべく、そのマップの各強度値が上述の参照強度値によって割り算される。
【0075】
ステップ「22」において、本手順は、これらの強度マップのうちの2つまたはそれ以上の強度マップ間での非類似性を検出する。先述の正規化が用いられるときには、本手順は、正規化の後に非類似性を検出する。幾つかの実施形態においては、非類似性は対にして検出される。これらの実施形態においては、非類似性はn番目の強度マップとm番目の強度マップとの間で検出され、ここで、mおよびn(m≠n)は、上述の時間順のシーケンス内における個々の強度マップの位置を表す正の整数である。本発明の様々な例証的実施形態においては、n=1であり、かつ、m>1である。言い換えれば、これらの実施形態においては、非類似性は第1の強度マップ(造影剤が投与された後に取得された第1のMR画像または第1のセットを成す複数のMR画像とかかわり合っている)に関して検出される。従って、この手順は、第1強度マップの強度値と第2強度マップの強度値との間での非類似性、次いで、第1強度マップの強度値と第3強度マップの強度値との間での非類似性等々を検出することができる。強度マップの他の対(m、n≠1)の間での非類似性の検出も想定されており、特に、必ずということではないが、遅発性のBBB破壊の同定に関連がある場合にはこれが該当する。
【0076】
非類似性は、減算、除算またはそれらの組み合わせにより検出することができる。従って、本手順が例えば第1強度マップと第2強度マップとの間での非類似性を検出するときには、その手順は、第2強度マップの個々の強度値から第1強度マップの強度値を引き算して減算値を与えることができ、またはその手順は、第2強度マップの強度値を第1強度マップの個々の強度値で割り算して比率値を与えることができる。更に、この手順は、上述の減算値または比率値をそれら2つのマップの間での時間差で割り算することにより、勾配値を得ることもできる。また、非類似性は別の操作によって検出されてもよく、例えば対数の減算などによって検出することもできる。
【0077】
ステップ「23」において、本手順は、上述の検出された非類似性を用いて1つまたはそれ以上の変動マップを作図する。各変動マップは、好適には、一対の強度マップの間での非類似性を表現し、それぞれがその画像上の場所に対応する複数の変動値を含む。変動マップの個数は、典型的には少なくともN−1個であり、ここで、Nは強度マップの個数である。変動マップの個数は、それらの強度マップのシーケンスにおける対の数と同じくらいに多数であってよい。1つの変動マップの複数の変動値は、例えば減算値(この場合、そのマップは減算マップと呼ばれる)、比率値(この場合、そのマップは比率マップと呼ばれる)または勾配値(この場合、そのマップは勾配マップと呼ばれる)であってよい。
【0078】
それらの変動マップは、好適にはコンピュータの記憶媒体に保存される。また、それらのうちの1つまたはそれ以上の変動マップを例えば表示装置上で視覚化することもできる。それらの変動マップの変動値(減算値、比率値、勾配値、など)は、脳内におけるMRI造影剤の濃度の変動に対応している。従って、それらの変動マップが保存されている上述の記憶媒体から、変動マップを読み出して検索し、それらのマップ上での1つまたはそれ以上の場所におけるBBB機能を評価することができる(ステップ「15」参照)。例えば、脳組織においては、個々の場所において、大きな変動はBBB破壊を指示することができ、また、変動の程度が低い状態や変動がない状態は無傷のBBBを指示することができる。高い血液容量からなる血管または構造物においては、変動の程度が低い状態や変動がない状態は、典型的には、その血液からの造影剤のクリアランスによるものであることが期待される。脳脊髄液(CSF)においては、大きな変動は、BBB破壊または血液CSF関門破壊を指示することができる。
【0079】
次に図3を参照すると、図3は、本発明の様々な例証的実施形態により被検者の血液脳関門を分析するための装置30の概略図である。装置30は、上で記述されている方法のうちの選定されたステップを実行するために利用することができる。
【0080】
装置30は、これまでの箇所でもっと詳しく説明されている如き複数のMR画像または複数の一連のMR画像を入力するための入力ユニット32を含んでいる。装置30は、更に、これまでの箇所でもっと詳しく説明されている如き、それぞれが1つのMR画像または1つのセットを成す複数のMR画像とかかわり合っている複数の強度マップを作図するための強度マップ作成装置34を含んでいる。装置30は、更に、これまでの箇所でもっと詳しく説明されている如き、一対の強度マップの間での非類似性を検出することによって脳内における造影剤の濃度の変動を表現する1つまたはそれ以上の変動マップを作図するための変動マップ作成装置36を含んでいる。装置30は、更に、これまでの箇所でもっと詳しく説明されている如くそれらの変動に基づいてBBB機能を評価することができるように構成されたBBB機能評価ユニット38を含んでいる。ユニット38はBBB機能に関するレポートを発行することができる。
【0081】
幾つかの実施形態においては、ユニット38は、それぞれのMR画像またはそれぞれのセットを成す複数のMR画像に対して代表的強度値を割り当て、これまでの箇所でもっと詳しく説明されている如く、その代表的強度値の時間依存性を判定する。また、ユニット38は、その時間依存性を表現するグラフを作成することもできる。
【0082】
次に図4を参照すると、図4は、本発明の様々な例証的実施形態によって脳42を画像化するための磁気共鳴イメージングシステム40の概略図である。システム40は、縦方向における実質的に均一な定常磁場Bを発生させる静的マグネットシステム44、一様でない重畳磁場を形成するための瞬時的な磁場勾配パルスを発生させる勾配アセンブリ46、および高周波パルスを発生させ、かつ、その高周波パルスを脳42へ送信する高周波トランスミッターシステム48を含んでいる。
【0083】
システム40は、更に、脳から磁気共鳴信号を取得する取得システム50および様々なパルスシーケンスを実行することができるように構成された制御システム52を含んでいる。制御システム52は、取得システム50を制御することができるようにも構成されている。
【0084】
本発明の様々な例証的実施形態においては、システム40は、更に、各取得ステップの信号から磁気共鳴画像を生成する画像生成システム54も含んでいる。画像生成システム54は、典型的には、そのデータを一連の画像データに変換するためにフーリエ変換を実行する。
【0085】
システム40の運転は、好適には、オペレーターコンソール60から制御され、そのオペレーターコンソール60は、キーボード、コントロールパネル、ディスプレーなどを含むことができる。コンソール60は、データプロセッサー62を含むことができ、またはデータプロセッサー62と通信することができる。データプロセッサー62は装置30を含んでいてよく、それ故、本発明の幾つかの実施形態によってBBBを分析するために使用することができる。
【0086】
勾配パルスおよび/または全身パルスは、典型的には制御システム52の一部であるジェネレーターモジュール64によって発生させることができる。ジェネレーターモジュール64は、生成されるべき高周波パルスのタイミング、強度および形状、ならびにデータ取得ウィンドウのタイミングおよび長さを指示するデータを生成する。
【0087】
勾配アセンブリ46は、典型的には、それぞれが取得された信号の位置情報をエンコードするために使用される磁場勾配を生成するGコイル、GコイルおよびGコイルを含んでいる。高周波トランスミッターシステム48は、典型的には、高周波信号を送信することと脳42内の励起された核により発せられる結果として生じた信号を感知することとの両方の目的で使用される共鳴装置である。それらの感知された磁気共鳴信号は、取得システム50または制御システム52において、復調、フィルタリング、デジタル化などの処理を加えることができる。
【0088】
本発明のこれらの実施形態における方法および装置は、多くの医学的な用途に有用である。
【0089】
幾つかの実施形態における1つの態様においては、ある化合物が被検者のBBBに及ぼす効果を判定するための方法が提供される。この態様においては、その化合物および検出可能な用量のMRI造影剤が被検者に投与され、MR画像が取得され、上で記述されている如きBBB分析法が実行される。その化合物の効果は、例えば化合物の投与を伴った場合のBBB機能の評価と化合物の投与を伴わない場合のBBB機能の評価とを比較することにより判定することができる。例えば、もし化合物の投与を伴わない場合のBBBが無傷であり、化合物の投与後にBBB破壊が確認されたならば、本方法は、その化合物がBBB破壊を誘発するものと判定することができる。
【0090】
幾つかの実施形態における1つの態様においては、ある化合物、例えば、これに限定するものではないが、治療用の薬剤組成物などを脳へ送給している間にBBB破壊をモニタリングするための方法が提供される。この態様においては、その化合物および検出可能な用量のMRI造影剤が被検者に投与され、上で記述されている如きBBB分析法が実行される。その方法は、一時的にBBB破壊を発生させることができるBBB変性剤の投与を先行して行うことができる。化合物の送給は、化合物の投与に先立って、または化合物の投与中に、BBB破壊をモニタリングすることにより管理することができる。
【0091】
上述のBBB変性剤は、ヒドロキシジンなどの抗ヒスタミン剤であってよい。また、そのBBB変性剤は、例えば抗鬱剤(例えば、これらに限定するものではないが、フルオキセチンおよびセルトラリンを含めた、あらゆるタイプのセロトニン特異的再取り込み阻害剤;あらゆるタイプのセロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害剤;あらゆるタイプのモノアミンオキシダーゼ阻害剤;および他の抗鬱剤)、抗精神病薬(例えば、セロトニン受容体をブロックする能力を有している抗精神病薬)、および片頭痛を治療するための様々な物質(例えばトリプタン)などであって、セロトニンに作用することもできる。更に、そのBBB変性剤は、グルタマート受容体アゴニスト、アンタゴニスト、またはグルタマートに作用するあらゆる他の物質であってよい。また、CNS刺激剤(例えばメチルフェニダート)、アルコール、幻覚剤、アヘン剤および吸入薬、ならびに抗不安薬、気分安定剤、抗痙攣薬、麻酔薬などの如く生体アミンおよび/またはグルタマートに対して一次もしくは二次効果を有し得る他の向精神薬、更にはそれ以上のものも想定されている。付加的な化合物は、抗炎症薬(例えば、ステロイド系および非ステロイド系の抗炎症薬)、抗高血圧症薬(例えば、ニトラート、ベータ遮断薬、ACE阻害剤)、抗血小板薬(例えばアスピリン)、抗凝血剤(例えばワルファリン)、線維素溶解薬(例えば、一般的にtPAとして知られている組織プラスミノーゲン活性化因子)および凝血促進剤(例えばヘキサカプロン)を含む。種々のBBB変性剤が、2006年1月に発行されたNature Reviews,Neuroscience 7:41−53の「Astrocyte−endothelial interactions at the blood−brain barrier」と題するAbbottらによるレビューに記載されている。
【0092】
幾つかの実施形態における1つの態様においては、処置中に被検者のBBB破壊を防止または低減するための方法が提供される。上述の処置は、これらに限定するものではないが、集束超音波/音波治療、高周波治療、レーザーおよび他の温熱治療、脳深部刺激、迷走神経脳刺激、SPG刺激、経頭蓋磁気刺激、放射線療法および放射線外科を含め、潜在的にBBB破壊を引き起こし得るあらゆるタイプの処置であってよい。この態様においては、検出可能な用量のMRI造影剤が被検者に投与され、上で記述されている如きBBB分析が実行される。血液脳関門機能不全に関する予め定められている判定基準が確認されているときには、本方法は検出可能な信号(例えば警報)を発生させることができる。そのような信号を受信したときには、更なるBBB破壊を防止するため、その処置を終結させ、一時的に中止し、または変更することができる。
【0093】
処置中にBBB破壊を評価することができる能力は、医療機器の開発および安全性の認定にとっても有用である。例えば、その装置がある特定の運転モードにおいてBBB破壊を引き起こすか否か、またはどの程度までBBB破壊を引き起こすかについて、開発中の装置を試験することができる。BBB破壊が望まれていないときには、BBB破壊が存在する運転モードを好適性に劣る運転モードまたは有害な運転モードとして同定することができる。一方、BBB破壊が望まれているときには、BBBを改変する能力によってそれらの運転モードを分類することができる。例えば、BBBに及ぼす影響が小さい運転モードまたはBBBへの影響がない運転モードを決定すべく、経頭蓋磁気刺激装置または高強度超音波装置を試験することができる。そのような運転モードにおいては、患者は一層長い期間にわたって処置を受けることができる。逆に、BBB破壊を引き起こす運転モードを決定すべく、その装置を試験することもできる。患者は、(例えば薬剤の送給を目的として)短期間BBB破壊を誘発することが望まれているときに、そのような運転モードで処置を受けることができる。
【0094】
また、本発明のこれらの実施形態の方法は、1つまたはそれ以上の上述の医学的処置が実施されている間にBBB機能をモニタリングするために使用することもできる。
【0095】
更に、本発明のこれらの実施形態の方法は、脳卒中を診断するため、または脳卒中の予後を策定するために利用することもできる。BBBの開口は、脳卒中のよく見られる副作用であることが知られている。患者が脳卒中を起こしたとき、または脳卒中を起こした後に、上で記述されている如きBBB分析法を実行することにより、その患者のBBBが破壊されたか否か、どこで破壊が起こったか、および/またはどの程度まで破壊されたかを判定することができる。そのような判定は、医師が予後を策定する際および/または適切な処置を決める際に役立ち得る。例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)を用いる治療は出血のリスクを増大させ得ることが知られている。本発明のこれらの実施形態の方法がその患者のBBBが破壊されなかったことを確定しているときには、医師は、その患者はtPA治療後に出血を被る可能性が低いと断定することができる。そのような情報は治療のための時間窓を増大させ得る。
【0096】
tPAの典型的な注入は、ボーラス投与から始まり、60分かそれ以上の時間にわたって行われる。本発明の幾つかの実施形態によれば、ボーラス投与時に造影剤を注入することができ、上で記述されている如きBBB分析法を実行することができる。BBB破壊が確認されるときには、tPAの注入を終結または滴定することができる。また、BBB機能を評価するために上で記述されている如きBBB分析法をtPA治療に先立って実行する手順も想定されており、BBB破壊が検出されない場合に、tPA治療をボーラス投与によって開始することができる。本BBB分析法は、BBB機能を評価するために、tPAを注入している間継続されてよい。BBB破壊が確認されるときには、tPAの注入を終結または滴定することができる。
【0097】
幾つかの実施形態における1つの態様においては、脳内の腫瘍を検出するための方法が提供される。この態様においては、検出可能な用量のMRI造影剤が被検者に投与され、上で記述されている如きBBB分析法が実行される。局所的なBBB破壊を検出したときに、本方法は、そのBBB破壊が生じている場所に腫瘍が存在している可能性が高いと判定することができる。この態様は、小さ過ぎて従来のMRIでは確認することができない腫瘍に特に有用である。従って、本発明のこれらの実施形態は、脳腫瘍を早期に発見するためのツールまたは腫瘍の境界を判定するための一層正確なツールを提供する。
【0098】
幾つかの実施形態における1つの態様においては、CNS障害、例えば統合失調症、パーキンソン病、片頭痛または頭痛障害などを検出するための方法が提供される。この態様においては、検出可能な用量のMRI造影剤が被検者に投与され、上で記述されている如きBBB分析法が実行される。特定のパターンのBBB破壊を検出したときに、本方法は、種々のBBB破壊パターンエントリーとそれらのパターンエントリーに対応するCNS障害とを含んでいるデータベースにアクセスすることができる。そのようなエントリーがそのデータベースに存在しているときには、本方法は、その対応するCNS障害を抽出し、その被検者がこの障害を被っている可能性が高いと判定することができる。
【0099】
本発明の幾つかの実施形態においては、本方法はCNS障害の病期を判定するために利用することができる。これは、BBB破壊の程度を判定することにより、またはBBB破壊パターンにおける変容を分析することにより為すことができる。
【0100】
本明細書で使用する場合、用語「約」は±10%を示す。
【0101】
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。
【0102】
用語「からなる(consisting of)」は、「含み、それらに限定される(including and limited to)」ことを意味する。
【0103】
表現「から本質的になる(consisting essentially of)」は、さらなる成分、工程および/または部分が、主張される組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物、方法または構造がさらなる成分、工程および/または部分を含み得ることを意味する。
【0104】
本明細書で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0105】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0106】
数値範囲が本明細書で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0107】
本明細書で使用される場合、用語「方法」は、与えられたタスクを達成するための様式、手段、技術および手順を意味し、限定されないが、化学、薬理学、生物学、生物化学、および医学の分野の当業者に知られているかまたはその当業者が既知の様式、手段、技術および手順から容易に開発する方式、手段、技術および手順を含んでいる。
【0108】
本明細書で使用される場合、用語「治療する/処置する」には、状態の進行を取り消すこと、実質的に阻害すること、遅くすること、または、逆向きにすること、状態の臨床的症状または審美的症状を実質的に改善すること、あるいは、状態の臨床的症状または審美的症状の出現を実質的に防止することが含まれる。
【0109】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0110】
本明細書中上記に描かれるような、および、下記の請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
【実施例】
【0111】
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
【0112】
実施例1
動物実験
以下は、本発明の幾つかの実施形態によって行われた動物実験の説明である。この動物実験は、追跡可能な物質およびニトロプルシドナトリウム(SNP)を注入するステップ、続いて、MRIまたは蛍光イメージングによりデータを取得するステップを含んでいた。
【0113】
材料および方法
この研究は、MRIでの実験に使用された2匹の正常なマウスと、28匹のオスのSprague−Dawleyラット(200−250グラム)とを含み、それらのラットのうちの24匹のラットはMRIでの実験に使用され、4匹のラットは蛍光イメージングでの実験に使用された。
【0114】
MRIでの実験
MRIによる実験では、実験動物は麻酔をかけられ、特別に設計された動物用MRコイル内に置かれた。前述の24匹のラット(11匹は処置グループ、13匹は対照グループ)に対しては0.5TインターベンショナルGE MRシステムを使用し、一方、前述のマウスに対しては3T臨床用MRシステムを使用した。これらの実験動物は、セッケン水を含有した特殊なファントムとともにMRコイルの内部に置かれた。そのファントムは生体細胞を何ら含んでいないため、そのファントムのコントラストは時間が経っても一般的に一定である。そのファントムの平均信号を、後に、データを正規化するために使用した。実験動物がMRコイル内にいる間に造影剤を注入することができるように、MRシステム内に配置する前に、Venflonをその実験動物の尾静脈内に固定した。
【0115】
その軸平面内において、T加重高速スピンエコーMR画像が取得された。0.5Tデータは、3mmのスライス、ギャップ無し、14×10.5cmの視野、および256×256のマトリックスで取得された。3Tデータは、1mmのスライス、ギャップ無し、10×7.5cmの視野、および256×224のマトリックスで取得された。
【0116】
上述のマウスに対しては、以下のプロトコルが使用された。1つのセットを成す複数のMR画像がベースラインセット(そのセットにおけるそれぞれの画像がその脳の異なるスライスに対応している)として取得された。ベースラインの取得後、それらのマウスは、高用量のGd−DTPA(0.6ml/kg)MR造影剤が静脈内に注射された。上で記述されている如きMR画像が反復的に取得された。それらのうちの1匹のマウスは、MRIシステムによってスキャニングされている間に、注射してから約15分後に死亡した。このマウスに対しては、注射してから約40分後までMR画像の取得が続けられた。もう1匹のマウスは、この実験の間中ずっと生き続けた。このマウスに対しては、注射してから約80分後までMR画像の取得が続けられた。
【0117】
上述のラットに対しては、以下のプロトコルが使用された。各ラットに対して、1つのセットを成す複数のMR画像がベースラインセット(そのセットにおけるそれぞれの画像がその脳の異なるスライスに対応している)として取得された。ベースラインの取得後、それらのラットは、高用量のGd−DTPA(0.6ml/kg)MR造影剤が静脈内に注射された。その後、それらのラットは腹腔内注射を受け、そこでは、処置グループのラットは3mg/kgのニトロプルシドナトリウム(SNP)が腹腔内に注射され、対照グループのラットは生理食塩水が腹腔内に注射された。注入されている間、これらのラットは静止した状態に保たれ、上で記述されている如きMR画像が、複数のセットを成すMR画像をもたらすべく、それぞれのラットに対して40分間にわたって反復的に取得された。
【0118】
MR画像が得られた後、それらのMR画像は、各スライスにおけるファントムの平均強度に対して正規化された。その脳全体が関心領域(ROI)として定められた。その脳の正規化強度マップがそれぞれのセットに対して算出され、特定の変化を描くことができるようにカラースケールが調節された。また、各セットに対して減算マップも算出され、そこでは、注射後における第1セットの正規化強度マップが個々のセットの正規化強度マップから差し引かれた。
【0119】
それぞれのセットにおいて、ROIの正規化された強度が平均され、その平均強度の時間依存性が、時間の関数として上述の平均強度をプロットすることにより視覚化された。そのラットの筋肉領域において定められたROIに対しても同様な手順が用いられた。
【0120】
蛍光イメージングでの実験
蛍光イメージングによる実験では、それらのラットは麻酔をかけられ、フルオレセインナトリウム(4%、200グラム当たり0.5ml)が静脈内に注射された。その後、これらのラットは腹腔内注射を受け、そこでは、2匹の治療グループのラットは3mg/kgのSNPが腹腔内に注射され、一方、2匹の対照グループのラットには生理食塩水が腹腔内に注射された。腹腔内注射の40分後、それらのラットは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2分間潅流され、その後、パラホルムアルデヒド(PFA)およびPBSから成る組成物(2.5%のPFAおよび97.5%のPBS)で10分間潅流された。その潅流は、右心耳を切り開き、下行大動脈をクランプした状態で、そのラットの左心室を通じて行われた。この後、それらの脳を抽出し、PBS中における2.5%のPFA中に入れた。インビボ・イメージング・システム(Xenogen Corporation,Alameda,California)におけるIVISの465nmの励起フィルターおよび540nmの放射フィルターを用いて蛍光を読み取った。
【0121】
結果
MRIでの実験
図5a−5bは、実験中に死亡したマウスの強度マップ(図5a)および強度プロット(図5b)を示している。図5cは、実験中ずっと生き続けた健常な麻酔されたマウスの強度プロットを示している。図5aには、注射の2分後、3分後、9分後、15分後、21分後および27分後に取得されたMR画像、ならびにそれらのMR画像から作成された正規化強度マップが示されている。図5b−5cには、分表示の時間の関数としての無次元単位における平均正規化強度が示されている。それらの強度プロットのそれぞれの点は、脳全体にわたって平均したときの強度を表している。各点に付随している時刻は、そのセットが取得された(取得開始)時間に対応している。死亡した時点は図5bで黒色の矢印により示されている。
【0122】
図5cに示されているように、健常なラットに対する平均強度は時間の経過とともに実質的に単調に減少しており、注射後の最初の時点での平均強度が最も高い値になっている。この単調減少は、その血液系からの造影剤のクリアランスを示している。
【0123】
図5bに示されているように、その平均強度は、ラットが死亡した時点である、注射の約15分後まで減少している。t=2分の時点における低い強度は、造影剤を注射する前に取得されたベースラインセットの平均強度である。死亡後、その強度は時間の関数として急峻な増大を呈し、約10分後にプラトーに達している。この強度の急峻な増大は、死亡時におけるBBB破壊を示している。上述のプラトーは、その組織内の造影剤の濃度が血液中の造影剤の濃度に達している状況と整合性が取れている。それらの強度マップ(図5a)は、死亡した時点において、血液プール増強は一定のままであるにもかかわらず、死亡時に脳組織増強の急峻な増大が存在することを示している。
【0124】
図6a−6dは、対照ラット(図6a−6b)およびSNPで処置されたラット(図6c−6d)の強度プロット(分表示の時間の関数としての無次元単位における平均正規化強度)を示している。図6aおよび6cは脳ROIの強度プロットを示しており、図6bおよび6dは筋肉ROIの強度プロットを示している。
【0125】
図6bおよび6dに示されているように、筋肉ROIの強度は、どちらのラットの場合にも、時間の関数として減少している。これは、その血液からの造影剤のクリアランスを示している。図6aに示されているように、対照ラットの脳ROIにおける強度も時間の関数として減少しており、脳組織からの造影剤のクリアランスを示している。
【0126】
図6cに示されているように、処置されたラットの脳における強度は、注射後18分まで時間とともに増大している。これは、SNPがBBB破壊を誘発し、結果として、脳内における造影剤の蓄積をもたらすことを示している。
【0127】
図7a−7fは、処置されたラット(図7a−7c)および対照ラット(図7d−7f)の減算マップである。第2(図7aおよび7d)、第3(図7bおよび7e)および第4(図7cおよび7f)の正規化強度マップからの注射後の第1正規化強度マップの減算が示されている。また、カラースケールも示されており、そこでは、例えば、青色は約−0.1の値を表し、赤色は約0.1の値を表している。図7fには脳組織および筋肉組織がマーク付けされている。当業者であれば、図7a−7eにおける脳組織および筋肉組織を如何にして同定するのかを理解することができよう。
【0128】
図7a−7fで実証されているように、どちらのラットの場合にも、時間の関数としての筋肉組織における強度の減少が存在する(ROIの色が時間とともに青色へシフトしている)。処置されたラット(図7a−7c)の場合には、時間の関数としての脳組織の強度における漸増的な増大が存在する(ROIの色が時間とともに赤色へシフトしている)が、一方の対照ラットの場合には、脳組織の強度における漸減的な減少が存在する(ROIの色が時間とともに青色へシフトしている)。これは、SNPがBBB破壊を誘発し、結果として脳内における造影剤の蓄積をもたらしたことを示している。
【0129】
図8は、0.5TのMRIシステムでスキャニングされた処置グループのラット(青色の菱形)および対照グループのラット(ピンク色の正方形)の平均減算値を示しているグラフである。図8は、処置されたラットでの減算値が対照ラットでの減算値よりも有意に高いことを実証している。これは、SNPがBBB破壊を誘発し、結果として脳内における造影剤の蓄積をもたらすことを示している。
【0130】
蛍光イメージングでの実験
図9a−9dは、2匹の処置されたラット(図9a−9b)および2匹の対照ラット(図9c−9d)の蛍光画像である。矢状断面における脳切断部が示されている。蛍光信号は紫色(最も低い信号)から赤色(最も高い信号)までのカラーコードで表されている。蛍光放射カウント数の単位におけるカラースケールが図9a−9dの右のペインに示されており、ここでは、例えば、紫色が約400カウントを表しており、赤色が約8800カウントを表している。図9a−9b(処置グループのラット)は、一般的に、非常に高い信号(約6000カウント以上)を有する幾つかのスポットを伴った状態で、ほとんどの矢状断面上で高い信号(3000カウントかそれ以上のカウント数)を呈している。図5c−5d(対照グループのラット)は、一般的に、低めの信号(2000カウントかそれ以下のカウント数)を呈する。これは、SNPがBBB破壊を誘発し、結果として脳内におけるフルオレセインナトリウムの蓄積をもたらすことを示している。対照グループのラットにおいては、BBBがフルオレセインナトリウムの脳への侵入を低減している。
【0131】
実施例2
人体での研究
以下は、本発明の幾つかの実施形態によって行われた人体による研究の説明である。この人体研究は、MRI造影剤の注入と、それに続いて行われるMRIによるデータ取得を含んだ。
【0132】
材料および方法
本研究は4人の志願者(3人の女性と1人の男性)を含み、そのうちの1人は健常な被検者(30歳の男性)であり、1人は統合失調症の被検者(19歳の女性)であり、1人の被検者(43歳の女性)は髄膜腫を患っており、1人の被検者(23歳の女性)は毛細血管腫を患っていた。
【0133】
これらの志願者は、造影剤の注入に先立ってMRIを受けた。セッケン水を含有した特殊なファントムが志願者の頭部に隣接して配置された。その後、これらの志願者には0.2ml/kgのGd−DTPAが注射され、続いて、注射後の40分間にわたって実質的に連続的なMRI(セッケン水ファントムとともに)が行われた。
【0134】
そのMRIは、複数のセットから成る複数のMR画像をもたらすべく、スピンエコー(SE)TMR画像の反復的な取得を含んだ。すべての取得が、5mmのスライス、0.5mmのギャップ、26×19cmの視野、および384×192のマトリックスでの3T GE MRシステムを用いて行われた。
【0135】
本発明の幾つかの実施形態によるMR画像の分析は、広範なBBB異常だけでなく、局所的なBBB異常にも敏感であるように設計された。それぞれのスライスにおいて、データはファントムの平均強度に対して正規化された。この後、時間の関数としての脳の強度マップがそれらの正規化された強度を用いて算出された(MR画像毎に1つのマップ)。それらのマップは、特定の変化を描くべく調節されたカラースケールを使用して視覚化された。
【0136】
その後、次に説明される減算マップおよび比率マップを算出するために、それらの算出された強度マップが使用された。
【0137】
それぞれの減算マップは1つのセットに対応し、典型的には個々のセットの正規化強度マップから注射後における第1セットの正規化強度を引き算することにより得られる複数の減算値を含んでいた。幾つかの減算マップは、n番目のセットの正規化強度をm番目(m>n>1)のセットの正規化強度マップから差し引くことにより得られる複数の減算値を含んでいた。これらの減算マップは遅発性BBB破壊を評価するのに有用であった。
【0138】
また、それぞれの比率マップは1つのセットに対応し、典型的には個々のセットの正規化強度を注射後における第1セットの正規化強度マップによって割り算することにより得られる複数の比率値を含んでいた。幾つかの比率マップは、m番目のセットの正規化強度をn番目(m>n>1)のセットの正規化強度マップで割り算することにより得られる複数の比率値を含んでいた。これらの比率マップは遅発性BBB破壊を評価するのに有用であった。
【0139】
これらの減算マップおよび比率マップは、その組織および脳脊髄液(CSF)中における造影剤蓄積の空間分布の視覚化を可能にした。大まかに言うと、無傷のBBB(第1セットの後に造影剤の蓄積の増大が期待されないケース)は、それらの減算マップにより明らかになった減算値が負のときおよび/またはそれらの比率マップにより明らかになった比率値が1以下のときに同定することができる。逆に、BBB破壊(第1セット後における造影剤の蓄積が増大することが期待されるケース)は、それらの減算マップにより明らかになった減算値が正のときおよび/またはそれらの勾配マップにより明らかになった比率値が1以上のときに同定することができる。
【0140】
比率マップは、一般的に減算マップよりも雑音が多いが、原信号が低い領域での情報をより多く含むことができる。
【0141】
結果
図10a−10bは、造影剤を注射してから1分後(図10a)および10分後(図10b)に健常な被検者から取得されたT1加重MR画像である。図10cは、図10bに示されているMR画像に対応する減算マップである。図10cを参照すると、この組織の平均減算値は1以下であり、その血液系からの造影剤の幾分かのクリアランスの存在を示している。また、その脳室系における減算値も低く、そこへの造影剤の通過が少ないか、または通過が無いことを示している。血管自体(側脳室においてみられる脈絡叢など)は紺青色を呈していることに注意が必要である。これは、その血液系からの急激なクリアランスを暗示している。従って、その減算マップは無傷のBBBとの整合性を有している。
【0142】
図11a−11eは、それぞれ、造影剤を注射してから1分後、7分後、13分後、19分後および23分後に、急性の精神病的状態にある統合失調症患者から取得されたT1加重MR画像であり;図12a−12eは、それぞれ、図11a−11eに示されているMR画像に対応する強度マップであり;図13a−13dは、それぞれ、図12b−12eに示されている強度マップに対応する減算マップである。図12a−12eに対するカラースケールは図12fに示されており、図13a−13dに対するカラースケールは図13eに示されている。
【0143】
図13aにおける全体的な減算値は0を僅かに上回っており、時間とともに0以下の値へと減少している。脳室内における増強は時間とともに増大しており、BBB破壊が生じていることを示している。側脳室においてみられる脈絡叢などの血管は紺青色を呈していることに注意が必要である。既に述べられているように、これは、その血液系からの急激なクリアランスにより説明付けることができる。
【0144】
図14a−14bは、造影剤を注射してから1分後(図14a)および7分後(図14b)に、髄膜腫を患っている被検者から取得されたT1加重MR画像である。図14cは、図14bに示されているMR画像に対応する減算マップである。その腫瘍は、図14a−14cにおいて矢印でマーク付けされている。図14cを参照すると、その組織の全体的な減算値は0付近であり、これは、その血液系からの造影剤のクリアランスは極めて僅かであるが、その組織内における造影剤の蓄積は存在しないことを示している。従って、この減算マップは、全体的に無傷のBBBと整合性を有している。それにもかかわらず、上述の腫瘍の領域はその減算マップにおいて増強を呈しており、これは、局所的なBBB破壊と整合性を有している。
【0145】
図15a−15bは、耐え難い月経のため、2gr/日のヘキサカプロンによる治療を受けた、毛細血管腫を患っている被検者から取得されたT1加重MR画像である。図15aは造影剤を注射してから1分後に取得され、図15bは造影剤を注射してから10分後に取得された。
【0146】
図15cは図15bに示されているMR画像に対応する減算マップであり、図15dは図15bに示されているMR画像に対応する比率マップである。
【0147】
毛細血管腫は、動脈瘤によって拡張された毛細血管の網状構造として具現化される血管奇形である。この血管腫が図15a−15dにおいて矢印でマーク付けされている。これらのMR画像(図15a−15b)において、その血管腫は、他の腫瘍と同様に、増強領域として描かれている。減算マップ(図15c)および勾配マップ(図15d)においては、その血管腫は、血液信号の急激な減少(これらの値は飽和する)のため、紺青色(−0.1以下の減算値、および0.8以下の比率値)を呈している。これは、無傷の血管であって、異常なBBBを随伴する腫瘍(例えば図14cに示されている腫瘍など)を伴っていないことと整合性を有している。
【0148】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
【0149】
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出可能な用量のMRI造影剤を有する被検者の血液脳関門を分析する方法であって、
予め定められた時間にわたって被検者の脳の複数の磁気共鳴画像を取得するステップ、
前記複数の磁気共鳴画像のうちの少なくとも2つの磁気共鳴画像をそれらの間で比較して、前記脳内における造影剤の濃度の変動を決定するステップ、
前記変動に基づいて、血液脳関門機能を評価するステップ、および
血液脳関門機能に関するレポートを発行するステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記濃度変動をマッピングするステップをさらに含み、前記レポートは、血液脳関門機能マップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記比較は、それぞれが1つの磁気共鳴画像と関連している複数の正規化強度マップを作図するステップを含み、前記濃度変動をマッピングするステップは、前記濃度変動を表現する少なくとも1つの変動マップを作図するために、一対の強度マップの間での非類似性を検出するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記変動を決定するステップは、磁気共鳴画像内における関心領域に対して代表的強度値を割り当てるステップ、および前記代表的強度値の時間依存性を決定するステップを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記時間依存性を表現するグラフを作成するステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ある化合物が被検者の血液脳関門に及ぼす効果を判定する方法であって、前記化合物および検出可能な用量のMRI造影剤を投与するステップ、および請求項1に記載の方法を実行するステップを含む方法。
【請求項7】
ある化合物を脳へ送給した際のBBB破壊をモニタリングする方法であって、前記化合物および検出可能な用量のMRI造影剤を投与するステップ、および請求項1に記載の方法を実行するステップを含み、それによって、送給した際のBBB破壊をモニタリングする方法。
【請求項8】
血液脳関門破壊を一時的に発生させることができる血液脳関門変性剤を投与するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記血液脳関門変性剤はイソソルビドジニトラートを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記血液脳関門変性剤はヒドロキシジンを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記血液脳関門変性剤は抗ヒスタミン剤を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記血液脳関門変性剤はセロトニンレベルを変えることができる、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記血液脳関門変性剤は抗精神病薬である、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記血液脳関門変性剤はグルタマート受容体アゴニストまたはアンタゴニストを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記血液脳関門変性剤は抗炎症薬である、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
前記血液脳関門変性剤は抗高血圧症薬である、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
前記血液脳関門変性剤は中枢神経系刺激剤を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項18】
処置の際に被検者の血液脳関門の破壊を防止または低減する方法であって、
検出可能な用量のMRI造影剤を被検者に投与するステップ、
請求項1に記載の方法を実行するステップ、および
血液脳関門機能不全に関する予め定められている判定基準が満たされたときに検出可能な信号を発生させるステップ
を含み、それによって血液脳関門の破壊を防止または低減する方法。
【請求項19】
中枢神経系障害を検出する方法であって、血液脳関門機能不全を判定するために請求項1に記載の方法を実行するステップを含み、それによって中枢神経系障害を検出する方法。
【請求項20】
前記血液脳関門機能不全に基づいて、中枢神経系障害をステージングするステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
中枢神経系障害は統合失調症である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
中枢神経系障害は片頭痛または頭痛障害である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
中枢神経系障害はパーキンソン病である、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記磁気共鳴画像を取得する間、被検者を不動化するステップをさらに含む、請求項1〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
予め定められた時間にわたって取得された被検者の脳の複数の磁気共鳴画像から被検者の血液脳関門を分析するための装置であって、被検者は、検出可能な用量のMRI造影剤を有しており、装置は、
それぞれの磁気共鳴画像に対して強度マップを作図するための強度マップ作成装置、
一対の強度マップの間での非類似性を検出することにより、前記脳内における造影剤の濃度の変動を表現する少なくとも1つの変動マップを作図するための変動マップ作成装置、および
前記変動に基づいて血液脳関門機能を評価し、かつ、その血液脳関門機能に関するレポートを発行するように構成される血液脳関門機能評価ユニット
を含む装置。
【請求項26】
前記評価ユニットは、それぞれの磁気共鳴画像に対して代表的強度値を割り当て、かつ、前記代表的強度値の時間依存性を決定するように構成される、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記評価ユニットは、前記時間依存性を表現するグラフを作成するように構成される、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
それぞれの代表的強度値は、個々の磁気共鳴画像における強度を平均することにより割り当てられる、請求項4または26に記載の方法または装置。
【請求項29】
それぞれの磁気共鳴画像はスライスされた磁気共鳴画像を含んでおり、前記比較ステップがスライスごとに実施される、請求項1〜23のいずれかに記載の方法または装置。
【請求項30】
前記少なくとも1つの変動マップは減算マップを含む、請求項1〜29のいずれかに記載の方法または装置。
【請求項31】
前記少なくとも1つの変動マップは勾配マップを含む、請求項1〜29のいずれかに記載の方法または装置。
【請求項32】
前記少なくとも1つの変動マップは比率マップを含む、請求項1〜29のいずれかに記載の方法または装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10a−b】
image rotate

【図10c】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14a−b】
image rotate

【図14c】
image rotate

【図15a−b】
image rotate

【図15c−d】
image rotate


【公表番号】特表2010−526636(P2010−526636A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508031(P2010−508031)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際出願番号】PCT/IL2008/000673
【国際公開番号】WO2008/139480
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(502379147)イェダ リサーチ アンド デベロップメント カンパニー リミテッド (14)
【出願人】(509316512)テル ハショマー メディカル リサーチ インフラストラクチャー アンド サーヴィシーズ リミテッド (3)
【Fターム(参考)】