説明

血液透析装置

【解決手段】 血液透析装置1は、透析器2に新鮮な透析液を供給する供給室21aおよび透析器2から使用済みの透析液を回収する回収室21bを備えたチャンバと、上記チャンバの供給室21aに水を供給する水供給通路25と、該水供給通路25に接続されて透析液の原液を供給する透析液原液通路27と、上記供給室21aに洗浄液の原液を供給する洗浄液原液通路28とを備えている。
また上記透析液原液通路27に洗浄液廃液通路52を設けて、上記チャンバの供給室21aから排出した洗浄液を上記透析液原液通路27へと排出し、当該洗浄液を該透析液原液通路27において透析液の原液とは逆方向に流通させてから上記洗浄液廃液通路を介して排液し、透析液原液通路27を洗浄する。
【効果】 透析液原液通路27を所定の濃度に調製された洗浄液で洗浄することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血液透析装置に関し、チャンバの供給室で透析液の原液と水とによって透析液を調製し、また上記供給室で洗浄液の原液と水とによって洗浄液を調製する血液透析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透析器に新鮮な透析液を供給する供給室および透析器から使用済みの透析液を回収する回収室を備えたチャンバと、上記チャンバの供給室に水を供給する水供給通路と、該水供給通路に接続されて透析液の原液を供給する透析液原液通路と、上記チャンバの供給室に洗浄液の原液を供給する洗浄液原液通路とを備えた血液透析装置が知られている。
このような血液透析装置では、透析治療中においては透析液原液通路を介して透析液の原液を上記チャンバの供給室に向けて送液し、該供給室の内部で透析液の原液と水供給通路からの水とによって透析液を調製するようになっている。
一方透析治療の終了後には、血液透析装置を構成する各液体通路を洗浄するため、上記供給室に上記水供給通路および上記洗浄液原液通路からそれぞれ水と洗浄液の原液とを供給して、洗浄液を調製するようになっている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4182461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1の場合、この洗浄液の原液が透析液原液通路を透析液の原液と同じ方向に流通するような構成となっているため、この透析液原液通路は所定の濃度に調製された洗浄液で洗浄されたものとはなっていない。
また特許文献1では、チャンバの回収室に接続された透析液回収通路と上記水供給通路との間に配管を設けて、当該配管を介して洗浄液を水供給通路に供給し、その下流の透析液原液通路等を洗浄するようになっている。
しかしながらこのような構成とした場合、透析液回収通路を流通した血液の老廃物等が水供給通路に流入する可能性があり、該水供給通路や透析液原液通路が汚染される恐れもあった。
このような問題に鑑み、本発明は透析液原液通路を所定の濃度に調製された洗浄液で洗浄することが可能な血液透析装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、請求項1にかかる血液透析装置は、透析器に新鮮な透析液を供給する供給室および透析器から使用済みの透析液を回収する回収室を備えたチャンバと、上記チャンバの供給室に水を供給する水供給通路と、該水供給通路に接続されて透析液の原液を供給する透析液原液通路と、上記チャンバの供給室に洗浄液の原液を供給する洗浄液原液通路とを備え、
上記供給室で上記水供給通路からの水と上記透析液原液通路からの透析液の原液とによって透析液を調製し、また上記供給室で上記水供給通路からの水と上記洗浄液原液通路からの洗浄液の原液とによって洗浄液を調製する血液透析装置において、
上記透析液原液通路に接続させて洗浄液廃液通路を設け、
上記チャンバの供給室で調製した洗浄液を上記透析液原液通路へと供給し、当該洗浄液を該透析液原液通路において透析液の原液の送液方向とは逆方向に流通させてから上記洗浄液廃液通路より排出することを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
上記請求項1の発明によれば、透析液原液通路に接続させて洗浄液廃液通路を設けることにより、上記チャンバの供給室で調製した洗浄液を透析液原液通路に供給し、該洗浄液を透析液の原液とは逆方向に流通させてから、該洗浄液を上記洗浄液廃液通路から廃液することが可能となるため、透析液原液通路を調製された洗浄液で洗浄することが可能であり、血液の老廃物が流入するような配管を行う必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施例にかかる血液透析装置の液回路図。
【図2】洗浄時の動作説明図であって、洗浄液の原液をチャンバの供給室に供給する際の動作説明図。
【図3】洗浄時の動作説明図であって、A液タンク通路を洗浄する際の動作説明図。
【図4】洗浄時の動作説明図であって、A液設備通路を洗浄する際の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例について説明すると、図1は透析治療を行う血液透析装置1の液回路を示し、上記血液透析装置1は図示しない制御手段によって制御されるようになっている。
上記血液透析装置1は、拡散、限外ろ過、浸透圧により血液と透析液との間で透析を行う透析器2と、該透析器2に接続された血液回路3と、透析器2に接続された透析液回路4とを備えている。
また本実施例の血液透析装置1は透析液を調製可能となっており、透析液の原液であるA液およびB液を貯溜するA液タンク5およびB液タンク6を備えるほか、病院等の施設に設けられてA液供給ポート7AおよびB液供給ポート7Bを備えた原液供給設備7に接続可能となっている。
【0009】
上記血液回路3は、患者の血管に接続されて上記透析器2に血液を供給する動脈側通路11と、透析器2から患者に血液を戻す静脈側通路12とから構成され、これら通路はシリコーン製のチューブで構成されている。
動脈側通路11および静脈側通路12の端部にはそれぞれ穿刺針11a、12aが設けられており、また動脈側通路11には血液を送液する血液ポンプ13が設けられている。
【0010】
透析液回路4は、新鮮な透析液を透析器2に供給するとともに使用済みの透析液を回収する第1透析液チャンバ21および第2透析液チャンバ22と、これら第1、第2透析液チャンバ21、22と透析器2との間に配設されて新鮮な透析液を流通させる透析液供給通路23と、透析器2と第1、第2透析液チャンバ21、22との間に配設されて使用済みの透析液を流通させる透析液回収通路24とを備え、これらの通路はシリコーン製のチューブで構成されている。
第1透析液チャンバ21および第2透析液チャンバ22は同形となっており、内部が2枚のダイアフラムによって、新鮮な透析液を供給するための供給室21a,22aと、使用済みの透析液を回収するための回収室21b、22bと、これら供給室21a,22aと回収室21b、22bとの間に形成された中間室21c、22cとに区画されている。
上記第1、第2透析液チャンバ21、22の供給室21a,22aには、図示しない浄水供給手段から浄水を供給する水供給通路25が接続され、該水供給通路25には浄水を送液する給液ポンプ26が設けられるとともに、該給液ポンプ26の下流側で2方向に分岐して供給室21a,22aに接続され、分岐した通路にはそれぞれ制御手段の制御によって開閉される給液弁V1,V2が設けられている。
また上記水供給通路25には、後に詳述するが透析液の原液を供給する透析液原液通路27が接続されており、これにより上記供給室21a,22aの内部で水と透析液の原液とを混合させて透析液を調製するようになっている。
さらに上記水供給通路25には、後に詳述するが洗浄液の原液を供給する洗浄液原液通路28が接続されており、これにより上記供給室21a,22aの内部で水と洗浄液の原液とを混合させて洗浄液を調製するようになっている。
【0011】
一方、上記回収室21b、22bには、図示しない排液タンク等に使用済み透析液を排出させる透析液廃液通路29が接続され、上記透析液廃液通路29は、その上流部分が2方向に分岐して各回収室21b、22bに接続され、当該分岐部分にはそれぞれ制御手段の制御によって開閉される排液弁V3,V4が設けられている。
上記中間室21c、22cの内部にはシリコーンオイルが充満しており、また中間室21c、22cにはこのシリコーンオイルを増減させるシリコーンオイルポンプ30A,30Bが接続されている。
上記シリコーンオイルポンプ30A,30Bがシリコーンオイルを給排すると、中間室21c、22cの容積が増減し、例えば透析治療時に上記シリコーンオイルポンプ30A,30Bを作動させて、中間室21c、22cの容積を減少させることで、透析器2において血液からの除水を行うことが可能となっている。
【0012】
上記透析液供給通路23の上流部分は、2方向に分岐してそれぞれ上記第1、第2透析液チャンバ21、22の供給室21a,22aに接続されており、各分岐部分にはそれぞれ制御手段の制御によって開閉される供給弁V5,V6が設けられている。
また透析液供給通路23の下流部分はコネクタ23aを介して上記透析器2に接続可能となっており、透析液回路4を洗浄する際には透析器2から離脱されるようになっている。
さらに透析液供給通路23には、透析液の有害成分を除去する透析液フィルタF1と、上記制御手段の制御によって開閉される第1開閉弁V7とが設けられている。
上記透析液フィルタF1の一次側には、上記透析液供給通路23と透析液回収通路24とを連通させる第1バイパス通路31が接続され、該第1バイパス通路31には上記制御手段の制御によって開閉される第2開閉弁V8が設けられている。
透析治療中、上記第1開閉弁V7は開放されるとともに上記第2開閉弁V8は閉鎖されているが、例えば図示しない濃度センサによって濃度の不良が検出された場合には、上記第1開閉弁V7を閉鎖して第2開閉弁V8を開放することにより、不良透析液を透析器2を通過させずに、第1バイパス通路31を介して透析液回収通路24へと送液することが可能となっている。
【0013】
上記透析液回収通路24の下流部分は2方向に分岐してそれぞれ上記第1、第2透析液チャンバ21、22の回収室21b、22bに接続され、この分岐部分にはそれぞれ制御手段の制御によって開閉される回収弁V9,V10が設けられている。
一方透析液回収通路24の上流部分はコネクタ24aを介して上記透析器2に接続可能となっており、透析液回路4を洗浄する際には透析器2から離脱されるとともに、上記透析液供給通路23のコネクタ23aと接続されるようになっている。
また透析液回収通路24には、透析液を送液する透析液ポンプ32が設けられており、上記第1バイパス通路31は上記透析液ポンプ32と透析器2との間に接続されている。
さらに透析液回収通路24における上記透析液ポンプ32と第1バイパス通路31との間には、該透析液回収通路24と上記水供給通路25とを接続する第2水供給通路33の一端が接続されており、この第2水供給通路33には上記制御手段の制御によって開閉される第3開閉弁V11が設けられている。
また、第2水供給通路33の他端は、上記水供給通路25における上記透析液原液通路27の接続位置よりも上流側の位置に接続されている。
【0014】
上記水供給通路25に接続される透析液原液通路27について説明すると、本実施例の透析液原液通路27は、A液タンク5に接続されたA液タンク通路41と、B液タンク6に接続されたB液タンク通路42と、原液供給設備7のA液供給ポート7Aに接続されたA液設備通路43と、B液供給ポート7Bに接続されたB液設備通路44とから構成されている。
上記A液タンク通路41の一端には上記A液タンク5に挿入されてA液を吸引するためのノズル41aが設けられるとともに、他端は上記水供給通路25に接続されており、この接続部分には上記制御手段の制御によって該A液タンク通路41を開閉する第4開閉弁V12が設けられている。
これと同様、B液タンク通路42の一端にはB液タンク6に挿入されるノズル42aが設けられるとともに、他端は上記水供給通路25に接続され、接続部分にはB液タンク通路42を開閉する第5開閉弁V13が設けられている
上記A液設備通路43の一端にはコネクタ43aが設けられており、このコネクタ43aによって上記原液供給設備7のA液供給ポート7Aに接続可能となっている。また他端は上記A液タンク通路41に接続され、接続部分には上記制御手段の制御によって該A液設備通路43を開閉する第6開閉弁V14が設けられている。
これと同様、上記B液設備通路44の一端には上記原液供給設備7のB液供給ポート7Bに接続可能なコネクタ44aが設けられており、また他端は上記B液タンク通路42に接続され、接続部分には該B液設備通路44を開閉する第7開閉弁V15が設けられている。
さらに、上記A液、B液タンク通路41、42における上記A液、B液設備通路43、44の接続部分よりも上流側には、それぞれ上記制御手段の制御によって該A液、B液タンク通路41、42を開閉する第8、第9開閉弁V16、V17が設けられている。
上記構成により、例えば上記A液、B液タンク5、6のA液、B液を用いて透析液を調製する際には、上記ノズル41a、42aをA液、B液タンク5、6に挿入し、さらに上記A液、B液設備通路43、44の第6、第7開閉弁V14、V15を閉鎖した状態で、A液、B液タンク通路41、42の第4、第5開閉弁V12、V13および第8、第9開閉弁V16、V17を開放するようになっている。
一方、上記原液供給設備7のA液、B液を用いて透析液を調製する際には、上記ノズル41a、41bをA液、B液タンク5、6から離脱させた状態で使用するようになっており、上記A液、B液設備通路43、44の第6、第7開閉弁V14、V15を開放するとともに、A液、B液タンク通路41、42の第4、第5開閉弁V12、V13を開放し、さらに第8、第9開閉弁V16、V17を閉鎖するようになっている。
【0015】
上記水供給通路25に接続される洗浄液原液通路28について説明すると、本実施例の洗浄液原液通路28の一端は洗浄液の原液を貯溜する洗浄液タンク51に接続され、他端は分岐した後一端が上記水供給通路25に接続され、他端はさらに分岐して後述する洗浄液廃液通路52を構成する、上記ノズル41a、42aを収容する収容部材としての2つのさや53a、54aにそれぞれ接続されている。
また上記洗浄液原液通路28と水供給通路25との接続部分には、上記制御手段の制御によって洗浄液原液通路28を開閉する第10開閉弁V18が設けられ、洗浄液原液通路28が上記水供給通路25と洗浄液廃液通路52とに分岐する分岐部分には第11開閉弁V19が設けられている。
【0016】
そして本実施例における血液透析装置1には、上記洗浄液の原液から調製した洗浄液を上記透析液原液通路27に流通させてこれを洗浄するようになっており、この洗浄に用いた洗浄液を排出するため、上記透析液原液通路27には洗浄液廃液通路52が接続されている。
具体的に説明すると、本実施例の洗浄液廃液通路52は、上記A液タンク通路41の洗浄液を排出するためのA液タンク通路洗浄通路53と、上記B液タンク通路42の洗浄液を排出するためのB液タンク通路洗浄通路54と、上記A液設備通路43の洗浄液を排出するためのA液設備通路洗浄通路55と、上記B液設備通路44の洗浄液を排出するためのB液設備通路洗浄通路56とから構成されている。
上記A液タンク通路洗浄通路53は、一端が上記透析液廃液通路29に接続され、他端には上記A液タンク通路41の端部に設けられたノズル41aを収容するさや53aが設けられ、さらに上記さや53aの近傍には制御手段の制御によってA液タンク通路洗浄通路53を開閉する第12開閉弁V20が設けられている。
上記さや53aは上記ノズル41aよりも大径で有底筒状を有しており、その内部に洗浄液を貯溜させることが可能となっており、上記A液タンク通路洗浄通路53はその上部に接続され、上記洗浄液原液通路28はさや53aの下方に接続されている。
これと同様、上記B液タンク通路洗浄通路54は、一端が上記A液タンク通路洗浄通路53に接続されて上記透析液廃液通路29に連通し、他端には上記B液タンク通路42のノズル42aを収容するさや54aが設けられ、上記さや54aの近傍にはB液タンク通路洗浄通路54を開閉する第13開閉弁V21が設けられている。
次に上記A液設備通路洗浄通路55の一端には上記A液設備通路43のコネクタ43aと接続可能なコネクタ55aが設けられるとともに、他端は上記洗浄液原液通路28に接続されており、上記B液設備通路洗浄通路56の一端には上記B液設備通路44のコネクタ44aと接続可能なコネクタ56aが設けられるとともに、他端は上記洗浄液原液通路28に接続されている。
このような構成により、上記A液、B液設備通路洗浄通路55,56は、上記洗浄液原液通路28および上記さや53a、54aを介して上記A液タンク通路洗浄通路53またはB液タンク通路洗浄通路54に連通しており、さらにはこのA液、B液タンク通路洗浄通路53,54を介して上記透析液廃液通路29に連通するようになっている。
つまり、上記A液、B液設備通路洗浄通路55,56に洗浄液を流通させることで、この洗浄液を上記透析液廃液通路29より排液することが可能となっている。
【0017】
以下、上記構成を有する血液透析装置1の動作について説明する。最初に上記A液タンク5およびB液タンク6のA液、B液を用いて透析液を調製し、透析治療を行う際の動作について説明する。
このとき、A液、B液タンク通路41、42のノズル41a、42aは、上記A液、B液タンク通路洗浄通路53,54のさや53a、54aから取り外されるとともに、それぞれA液、B液タンク5、6に挿入されている。
一方、上記A液、B液設備通路43、44は原液供給設備7のA液、B液供給ポート7A、7Bには接続されておらず、また上記洗浄液原液通路28の第8、第9開閉弁V16、V17はそれぞれ閉鎖されている。
さらに、A液、B液タンク通路41、42の第4、第5開閉弁V12、V13を閉鎖し、さらに第1透析液チャンバ21に隣接する給液弁V1と排液弁V3とを開放するとともに供給弁V5と回収弁V9とを閉鎖する。
一方、上記水供給通路25の給液ポンプ26を作動させて第1透析液チャンバ21の供給室21aに所定量の浄水を供給し、その後給液ポンプ26を停止させる。
続いてA液タンク通路41の第4開閉弁V12を開放し、上記第1透析液チャンバ21のシリコーンオイルポンプ30Aを作動させて中間室21cの容積を減少させ、これによりA液タンク通路41を介してA液タンク5から所定量のA液を供給室21aに供給する。
さらに、上記第4開閉弁V12を閉鎖するとともにB液タンク通路42の第5開閉弁V13を開放し、上記シリコーンオイルポンプ30Aにより中間室21cの容積を減少させることで、B液タンク通路42を介してB液タンク6から所定量のB液を供給室21aに供給する。
そして、上記第4、第5開閉弁V12、V13を閉鎖してから、再び上記給液ポンプにより供給室21aに浄水を供給することで、該供給室21aの内部には所定の割合で浄水、A液、B液が貯留され、これらが混合されることにより透析液が調製される。
このようにして供給室21aで透析液が調製されると、回収室21bからは同量の使用済み透析液が透析液廃液通路29へと排出され、このときシリコーンオイルポンプ30Aを作動させなければ、供給室21aで調製される透析液と、回収室21bから排出される透析液の量とが同量となる。
このとき、上記シリコーンオイルポンプ30Aを作動させて中間室21cの容積を減少させると、回収室21b内に回収される透析液の量が増大し、負圧により透析器2において血液から除水することが可能となっている。
さらに他方、上記第2透析液チャンバ22では、隣接する供給弁V6と回収弁V10とを開放するとともに給液弁V2と排液弁V4とを閉鎖することで、回収室22bには上記透析液ポンプ32によって送液された使用済みの透析液が流入し、同時に供給室22aからは同量の新鮮な透析液が透析液供給通路23を介して透析器2に供給される。
その後、上記制御手段が上記給液弁V1,V2、排液弁V3,V4、供給弁V5,V6、回収弁V9,V10を交互に開閉することで、第1、第2透析液チャンバ21、22からの新鮮な透析液を透析液供給通路23を介して透析器2へと供給し、透析器2を通過した使用済みの透析液は上記透析液回収通路24を介して第1、第2透析液チャンバ21、22に回収され、透析治療が行なわれる。
【0018】
このようにして透析治療が終了した後、本実施例の血液透析装置1では、透析器2から透析液供給通路23と透析液回収通路24とを離脱させて、これらをコネクタ23a、24aによって相互に接続し、上記透析液回路4および上記透析液原液通路27を以下のように洗浄する。
まず上記A液、B液タンク通路41、42の端部に設けたノズル41a、42aをそれぞれA液、B液タンク5、6より取り外し、これを上記A液、B液タンク通路洗浄通路53,54のさや53a、54aに挿入する(図2)。
また上記A液、B液タンク通路41、42の第4、第5開閉弁V12、V13を閉鎖し、さらに上記A液、B液設備通路43、44の第6、第7開閉弁V14、V15を閉鎖する。
さらに、第1透析液チャンバ21に隣接する給液弁V1と排液弁V3を開放するとともに供給弁V5と回収弁V9を閉鎖する。
そして、上記洗浄液原液通路28の第10、第11開閉弁V18、V19を開放する。
この状態で第1透析液チャンバ21のシリコーンオイルポンプ30Aを作動させて中間室21cの容積を減少させることにより、洗浄液タンク51内の洗浄液の原液が上記供給室21aに供給される。
このように第1透析液チャンバ21の供給室21aに所定量の洗浄液の原液が供給されると、続いて上記洗浄液原液通路28の第10、第11開閉弁V18、V19を閉鎖し、上記水供給通路25の給液ポンプ26を作動させる。
これにより、浄水が供給室21aに供給され、該供給室21aの内部で洗浄液の原液と浄水とが混合され、所定の濃度の洗浄液が調製される。
【0019】
このようにして第1透析液チャンバ21の供給室21aで洗浄液が調製されると、次にこの調製された洗浄液によってA液タンク通路41およびB液タンク通路42の洗浄を順次行う(図3)。
具体的には、最初に上記A液タンク通路41の第4開閉弁V12および第8開閉弁V16と、A液タンク通路洗浄通路53の第12開閉弁V20とを開放し、B液タンク通路洗浄通路54の第13開閉弁V21を閉鎖する。
また第1透析液チャンバ21では、隣接する給液弁V1および回収弁V9を開放するとともに、廃液弁V3および供給弁V5を閉鎖し、さらに透析液回収通路24に接続した上記第2水供給通路33の第3開閉弁V11を開放するとともに、上記透析液ポンプ32を作動させる。
すると、第2水供給通路33を介して浄水が第1透析液チャンバ21の回収室21bに流入し、これにより上記供給室21aで調製された洗浄液は上記水供給通路25へと流出する。
その後、この洗浄液は上記A液タンク通路41へと流入し、このとき洗浄液はA液タンク通路41を透析治療時におけるA液の流通方向とは逆方向に流通することで、上記ノズル41aまで到達する。
上記ノズル41aはA液タンク通路洗浄通路53のさや53aに収容されているため、洗浄液はノズル41aから流出して、さや53aに流入する。
さや53aでは、洗浄液の液面が徐々に上昇して、該洗浄液の液面が上記A液タンク通路洗浄通路53の接続位置に到達すると、洗浄液はその後当該A液タンク通路洗浄通路53を流通して上記透析液廃液通路29に流入し、排液される。
この操作により、上記A液タンク通路41は所定の濃度に調製された洗浄液を流通させることで洗浄され、また上記ノズル41aでは当該ノズル41aから洗浄液が流通するため、ノズル41aを確実に洗浄することが可能となっている。
そして、A液タンク通路41の洗浄が終了したら、引き続きB液タンク通路42の洗浄を行うが、その動作は上記A液タンク通路41の洗浄と同様の動作となるため詳細な説明は省略する。
【0020】
このようにしてA液タンク通路41およびB液タンク通路42の洗浄が終了すると、上記A液、B液タンク通路41、42の第4、第5開閉弁V12、V13が閉鎖されるとともに、上記第2水供給通路33の第3開閉弁V11が閉鎖される。
その後、上記洗浄液原液通路28における第10、第11開閉弁V18、V19が開放され、上記第1、第2透析液チャンバ21、22に隣接する上記給液弁V1,V2、排液弁V3,V4、供給弁V5,V6、回収弁V9,V10が交互に開閉される。
これにより、第1、第2透析液チャンバ21、22の供給室21a,22aで交互に洗浄液が調製されるとともに、この洗浄液は透析液供給通路23および透析液回収通路24を流通してこれらを洗浄し、さらに第1、第2透析液チャンバ21、22の回収室21b、22bに交互に回収された後に上記透析液廃液通路29から排出されるようになっている。
【0021】
次に、図4は原液供給設備7のA液、B液を用いて透析液を調製した場合における、上記A液、B液設備通路43、44の洗浄を行う場合の動作を説明する図となっている。なお図4ではすでに図2で示したように上記第1透析液チャンバ21の供給室21aの内部で所定の濃度の洗浄液が調製されているものとする。
A液、B液設備通路43、44の洗浄を行う場合、それまで原液供給設備7のA液、B液供給ポート7A、7Bに接続されていた上記A液、B液設備通路43、44を離脱させ、それぞれコネクタ43a、44aを上記A液、B液設備通路洗浄通路55,56のコネクタ55a、56aにそれぞれ接続する。
さらに、上記A液、B液タンク通路洗浄通路53,54のさや53a、54aはA液、B液タンク通路41、42のノズル41a、42aに装着しておく。
最初にA液設備通路43の洗浄を行う場合、A液タンク通路41の第4開閉弁V12を開放するとともに上記第8開閉弁V16を閉鎖し、A液タンク通路洗浄通路53の第12開閉弁V20を開放し、上記洗浄液原液通路28の第10、第11開閉弁V18、V19を閉鎖し、上記A液設備通路洗浄通路55の第6開閉弁V14を開放する。
また第1透析液チャンバ21では、隣接する給液弁V1および回収弁V9を開放するとともに、廃液弁V3および供給弁V5を閉鎖し、さらに透析液回収通路24に接続した上記第2水供給通路33の第3開閉弁V11を開放する。
その状態で透析液回収通路24の透析液ポンプ32を作動させると、第1透析液チャンバ21の回収室21bに水が流入して供給室21aの洗浄液は水供給通路25からA液タンク通路41に流入する。
その後、この洗浄液は上記A液タンク通路41からA液設備通路43へと流入し、このとき洗浄液はA液設備通路43を透析治療時におけるA液の流通方向とは逆方向に流通し、その後上記A液設備通路洗浄通路55を流通する。
そして、A液設備通路洗浄通路55を流通した洗浄液は上記洗浄液原液通路28に流入した後、上記A液タンク通路洗浄通路53のさや53aまで流通し、その後上記A液タンク通路洗浄通路53から透析液廃液通路29を介して排液される。
このようにしてA液設備通路43の洗浄が終了したら、引き続きB液設備通路44の洗浄を行うが、その動作は上記A液設備通路43の洗浄と同様の動作となるため詳細な説明は省略する。
【0022】
以上のように、本実施例における血液透析装置1によれば、透析治療後におけるA液およびB液が流通する透析液原液通路27を、所定濃度に調製された洗浄液によって洗浄することができる。
このとき、調製された洗浄液を、上記A液、B液タンク通路41、42、A液、B液設備通路43、44の内部を透析治療時におけるA液、B液の流通方向とは逆方向に流通させることで、上記実施例のような複雑な配管を有する血液透析装置1であっても、これを洗浄することが可能となっている。
これに対し上記特許文献1では、透析液原液通路を調製されていない洗浄液を流通させて洗浄しており、確実な洗浄が行われておらず、また調製した洗浄液を透析液回収通路および水供給通路を流通させた後に透析液原液通路に流通させる必要がないことから、血液中の老廃物が水供給通路25や原液供給通路に流入することはなく、これらの通路が汚染されることはない。
【0023】
なお、上記実施例はA液、B液タンク5、6を備えるとともに原液供給設備7にも接続可能な血液透析装置1について説明したが、いずれか一方からA液、B液を供給する血液透析装置1であっても、同様の方法により原液供給通路を洗浄することが可能である。
例えば原液供給設備7のみからA液、B液の供給を受ける場合、上記実施例からA液、B液タンク通路41、42、A液、B液タンク通路洗浄通路53,54を省略することができ、このとき上記A液、B液設備通路洗浄通路55,56については、上記実施例と異なり、これを直接上記透析液廃液通路29に接続するような構成とすればよい。
【符号の説明】
【0024】
1 血液透析装置 2 透析器
5 A液タンク 6 B液タンク
7 原液供給設備 21 第1透析液チャンバ
22 第2透析液チャンバ 25 水供給通路
27 透析液原液通路 28 洗浄液原液通路
33 第2水供給通路 41 A液タンク通路
42 B液タンク通路 43 A液設備通路
44 B液設備通路 51 洗浄液タンク
52 洗浄液廃液通路 53 A液タンク通路洗浄通路
54 B液タンク通路洗浄通路 55 A液設備通路洗浄通路
56 B液設備通路洗浄通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析器に新鮮な透析液を供給する供給室および透析器から使用済みの透析液を回収する回収室を備えたチャンバと、上記チャンバの供給室に水を供給する水供給通路と、該水供給通路に接続されて透析液の原液を供給する透析液原液通路と、上記チャンバの供給室に洗浄液の原液を供給する洗浄液原液通路とを備え、
上記供給室で上記水供給通路からの水と上記透析液原液通路からの透析液の原液とによって透析液を調製し、また上記供給室で上記水供給通路からの水と上記洗浄液原液通路からの洗浄液の原液とによって洗浄液を調製する血液透析装置において、
上記透析液原液通路に接続させて洗浄液廃液通路を設け、
上記チャンバの供給室で調製した洗浄液を上記透析液原液通路へと供給し、当該洗浄液を該透析液原液通路において透析液の原液の送液方向とは逆方向に流通させてから上記洗浄液廃液通路より排出することを特徴とする血液透析装置。
【請求項2】
上記チャンバの回収室から使用済みの透析液を排出させる透析液排液通路を設け、
上記洗浄液廃液通路を、上記透析液原液通路と上記透析液排液通路との間に設けたことを特徴とする請求項1に記載の血液透析装置。
【請求項3】
上記チャンバの上記供給室および回収室を可撓性を有するダイアフラムによって区画するとともに、
上記チャンバの回収室と透析器との間に設けた透析液回収通路と、上記水供給通路における上記透析液原液通路の接続位置よりも上流側の位置との間に、第2水供給通路を設け、
上記チャンバの供給室で洗浄液が調製されると、上記水供給通路および上記第2水供給通路を介して水を上記チャンバの回収室に供給して、ダイアフラムを変形させることにより供給室の洗浄液を上記透析液原液通路へと供給することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の血液透析装置。
【請求項4】
上記透析液原液通路の一端に透析液の原液を貯溜する原液タンクへと挿入するノズルを設けるとともに、上記洗浄液廃液通路に上記ノズルを収容する収容部材を設け、
透析液原液通路を洗浄する際、上記収容部材にノズルを収容させて、上記洗浄液をノズルの内部から上記収容部材へと排出させることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の血液透析装置。
【請求項5】
上記透析液原液通路に透析液原液供給設備から透析液の原液を供給するようにし、
さらに上記透析液原液通路の端部にコネクタを設けて上記透析液原液供給設備に接続可能とするとともに、該コネクタを上記洗浄液廃液通路に接続可能として、
透析液原液通路を洗浄する際には、上記コネクタにより透析液原液通路と洗浄液廃液通路とを連通させることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の血液透析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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