説明

血漿置換剤およびその製造方法

血漿置換剤が植物タンパク質物質であるエデスチン(有利には、アサ種子からの産物)から作り上げられる。有利には、エデスチンは、5〜40重量%のエデスチン、0.5〜7重量%の無機物質、0.5〜7重量%の有機物質、ホルモン、および100重量%のコロイド溶液までの他の物質からなる溶液の成分である。血漿置換剤の製造方法によると、植物種子は、冷圧されるか、または、粉体状に圧搾され圧縮空気下に抽出され;押圧されたかまたは抽出された植物油分は分離され、一緒に押圧されたかまたは抽出された種子は脂肪が除去されかつ脱色され、有機溶媒の作用によって抽出され、脂肪が除去されかつ脱色された物質は、次いで、ろ過され、水溶液中の無機塩の作用に20〜60℃の温度でさらされ、溶液は、ろ過され、エデスチンは、最終的には、ろ液から単離される。有利には、アサ種子は、冷圧および圧搾工程およびガス支援圧力抽出工程に付される。有利には、植物種子は、圧縮二酸化炭素下に抽出されることになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血漿置換剤およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血漿は、黄色がかった色の透明な液体血液成分であり、水に加えて広範囲のタンパク質、糖、脂質およびミネラルを含有する。それは、栄養素の輸送、代謝過程および情報伝達において主要な役割を果たす。血漿は、血液容積の約55%を示す。血漿成分の絶対多数は、数時間から数日のサイクルで修復される。その総合的な構造およびその個々の成分によって果たされる役割は、正確な表現では依然として未知のままである。輸注の目的のために、血漿は、一旦ドナーから得られてから、あるいは、それ自体を取得している最中に、いわゆる血漿泳動(plasmaphoresis)によって他の血液成分から非常に迅速に分離され、次いで、それは、急速に凍結させられる。このような血漿の貯蔵期限は、約−25℃で凍結させられかつ維持された場合、最長2年であり得る。血漿の投与がヒトの体からのタンパク質の実質的な喪失(火傷、大規模な失血のような)を含み得る背景にある理由は、タンパク質によって果たされる役割の一つと同様に、血液のモル浸透圧濃度を維持することにある。血漿の代わりに、血漿と類似のまたはより簡単なイオン組成を有する輸液(生理溶液、ハートマン液(Hartman solution)、乳酸加リンゲル液(Ringer-lactate solution));さらには、デキストラン、ヒドロキシエチレンスターチ等のグリシド材料に基づくコロイド(いわゆる血漿増補液)およびアルブミンの群からの製剤を投与することが可能である場合があるが、しかしながら、これらは、それらの組成の点で、完全な価値を有する血漿置換物になり得ない。これまでに用いられてきた血漿の置換物(広範に製造されるデキストラン、ゼラチン、ヒドロキシエチルデンプン)は、血漿と共通点がない高分子の薬物であり、これらは、肝臓において迅速に生体内変換させられ、生命の脅威がある場合およびショック(例えば火傷、敗血からの)のために生物体ショック治療(organism shock treatment)が開始される場合に血液の容積を維持するためにのみ用いられ得るが、それらは、タンパク質、水および電解質を喪失した際に血漿容積を維持するために用いられるべきではなく、このような事例では直接的に血漿または大量のアルブミンを有する血漿タンパク質画分を適用しなければならない。アルブミンは、血漿タンパク質の一つであり
、血漿中に最も豊富に存在するが、生物体の免疫系を刺激することができない。免疫系をサポートするグロブリンは、血漿中のグロブリンの約3倍未満に含まれ、これは、血漿がグロブリンから製造されない理由である。血漿は、約91%の水、7%の溶解した有機物質(アルブミン、グロブリン、フィブリノーゲン等)、1%の溶解した、Na(150mmol/L)、Cl(100mmol/L)、HCO(30mmol/L)、K(5mmol/L)のイオンを有する無機物質、およびホルモンおよび輸送される他の物質の残部からなる。類似の機能的特性を特徴とする他の製剤によってこれまでに用いられたヒト血漿を置換する実際的な必要性がより一層頻繁に考慮されるべき2つの主要な理由がある。現在、同族体の輸血、すなわち、他の誰でもよいが同一または類似の抗原特性を有する者から外科その他の患者への輸血の数は低下している。この輸血の低下の背後にある第一の原因は、健康な血および血液誘導物のための価格であり、例えば、米国では、費用は、1回の輸血当たり最高500ドルに上った。健康なドナー不足および輸血自体または血漿の適用によって引き起こされる合併症をより一層の頻度で治療する必要性のため輸血薬剤費のさらなる増大が予想され得る。血液の1以上の機能の置換のために努力して行われる研究所、前臨床、および臨床研究の発展を強化する別の理由は、輸血および血漿適用に続いて起こる傾向がある合併症にある。輸血に起因する最も広範囲の病気の中に、慢性肝炎、肝硬変、腫瘍に対する弱められた抵抗性および他の感染(主として、HIV、BSE、SARS、LYME、ボレリア(borreliosis)、レトロウイルス、プリオンその他)がある。米国疾患モニタリングセンター(American disease monitoring center)によって概算されるように、70年台後半に年間に3,500人が輸血または血漿輸注を介してうつされた肝炎によって死んでいるが、他の計算は、数倍高くに達している。より奥深い試験およびドナーの注意深い選択のおかげで、B型肝炎ウイルスに起因する汚染の事例数は減少したが、新たな形態のC型肝炎ウイルスが出現し、これは、400万人超の米国人を攻撃し、輸血または血漿投与により数10万人の人が病気にかかった。さらなる厳密な試験を行うことによって、輸注後
C型肝炎発生の数を減少させることが可能になった。G型肝炎は、最近記載されたRNAウイルスであり、感染の危険性が一般に知られていないものの明らかに輸注を介した接触伝染性である。したがって、一握りの血液被提供者が感染した場合にのみ認識可能な新しい感染性の危険が現れるかもしれないという懸念がある。サイトメガロウイルスが惹起する感染(CMV)は、大部分の血液被提供者の事例において外面的に明示する必要がないが、CMV抗体を何ら持たない免疫抑制患者(低出生児体重を有する新生児、移植患者)にとって深刻であり不吉でさえあり得る。多数の国において、子供および成人の両方が感染するので、HIVウイルスによる血液/血漿汚染に特別の注意が払われている(例えばフランスでは、輸血および血漿投与後にHIVに感染した人が1982〜1985年の期間内に6〜8千人いる)。アフリカでは、性的乱交に起因するHIVが増加しているだけではなく、感染の数10%は、輸血および血漿輸注の結果から生じている。パキスタンでは、割合は一層より高く、今や、AIDS発生全体の半分に近い。間違いなく、開発国ではドナーの血液試験の不適切な調整に密接に関連する。上記の所見は、現在、世界的に深刻な問題を提起する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、タンパク質タイプの有益な血漿置換物であって、ヒトのグロブリンと類似の物理的および化学的特徴を有し、ヒトのグロブリンと置き換わることが可能であり、適切な浸透圧応答および粘性を有し、ウイルスに対して不活性であり、身体の免疫をサポートし、免疫グロブリンに生体内変化することができることを特徴とするものを提供することである。
【0004】
さらに、本発明の目的は、血漿置換物の適切な初期産物および信頼性が高くかつ効率的なその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
主要な範囲で、既存の技術状態の不利益点は無効になっており、本発明の目的は、植物タンパク質物質であるエデスチン(edestin)によって形成された血漿置換剤によって達成される。エデスチンは、有利には、アサの種子(hemp seed)から生じさせられる。有利なことに、エデスチンは、5〜40重量%のエデスチン、0.5〜7重量%の無機物質、0.5〜7重量%の有機物質、100重量%のコロイド溶液までのホルモンおよび他の物質からなる溶液の成分である。血漿置換剤の製造方法によると、植物種子は、冷圧するか、または、粉体に圧搾されかつ圧縮ガス下に抽出され;押圧または抽出された油分が分離され、一緒に押圧されたかまたは抽出された種子は、脂肪が取り除かれかつ脱色された後、有機溶媒の作用によって抽出され、脂肪が除去されかつ脱色された物質は、次いで、ろ過され、20〜60℃で水溶液中の無機塩の作用にさらされ、溶液はろ過され、エデスチンは、最終的に、ろ液から単離される。有利には、アサの種子は、冷圧および圧搾工程およびガス支援型圧力抽出(gas-assited pressure extraction)工程に付される。圧縮二酸化炭素下に植物種子は抽出されることになる。有利には、20〜60℃(有利には20℃)の温度での無機塩の飽和溶液が、脂肪が除去されかつ脱色された物質に加えられ;結果として生じた混合物は、次いで、0.01〜2.5時間(有利には0.5時間)にわたり20〜60℃(有利には20℃)の温度で攪拌され;次いで、0.1〜30重量%の無機塩が加えられ;結果として生じた混合物は、次いで、0.6〜60分(有利には30分)にわたり20〜60℃の温度で攪拌され;薬液用フィルタによりろ過され;ろ液は、エデスチンを結晶化させるために−50〜+15℃に急速冷却され;エデスチンの粗結晶は、蒸留水に注がれ、圧力ろ過によって分離され;結果として生じたろ液は、エデスチンまたは脂肪が除去されかつ脱色された物質を含有する水溶液を作るために用いられ、一度に水が加えられ、20〜60℃(有利には5℃)の温度で水溶液を作るために用いられ;1〜20%溶液(有利には5%溶液)を与えるように無機塩(有利には塩化ナトリウム等)が水溶液に加えられ;混合物は、次いで、1〜60分(有利には30分)にわたり激しく攪拌され;次いで、それは、タンパク質沈殿物分離のために沈殿物が沈殿するまで放置され;タンパク質沈殿物はろ過され;ろ液中に、エデスチンは、塩(有利には硫酸アンモニウム)の作用により溶液の形態で単離され、いずれの場合においても、エデスチンは、透析またはカラムクロマトグラフィーによって95%(有利には99.9%)より高い精製レベルまでさらに精製される。
【0006】
まさにその性質において、エデスチンは、植物起源のグロブリン(中間サイズのタンパク質)であり、特定のアミノ酸の一次配列からなり、その組成およびアミノ酸ベースの構造において天然のヒトグロブリンに非常に類似しており、近い。グロブリンはタンパク質であり、アルブミンと共に、血漿の単純タンパク質の最も大きな部分をなす。大部分の抗体(免疫グロブリンタイプ)は、ヒトの血漿のグロブリン画分中に含まれる。エデスチンは、アミノ酸(それらの基本ビルディングブロックとしてC、O、Hを有する)からなる。タンパク質の一つとして、本発明によるエデスチンは、ヒト起源のタンパク質としてのグロブリンと置き換わる。植物エデスチンは、免疫グロブリン合成の都合のよい前駆体(先行体)であるようである(植物エデスチンは、この合成の手筈を整え;このため、生物体は、半終了済みのヒトの特異的な免疫グロブリンを得ることとなり、複雑かつエネルギーを消費する過程においてそれ自体を作る必要がない)。ヒトの血漿は、3タイプの血漿タンパク質:グロブリン系、アルブミン系および1タイプのフィブリノーゲンを含む。エデスチンは、グロブリンの代わりに用いられ得る。血漿タンパク質は、大部分は、肝臓において生じ、ヒトの身体は、それ自体で、肝臓においてグロブリンを、リンパ球(白血球)において免疫グロブリン(抗体)を生じさせる。本発明によると、溶液は、グロブリンベースの物質に最も近い、植物起源の天然の物質を生物体に提供し、生物体(主として、疾患にかかっているかまたは弱っている時の)は、グロブリン自体を生じさせる必要がなく、その供給源を確保している。その物理的および化学的特徴において、エデスチンは、ヒトのグロブリンに似ており、このため、ヒトグロブリンと置き換わる(あるタンパク質が別のものによって置換される)ことを可能にする。それはヒトの血漿の物理的な置換のために用いられ得、そのための初期産物である。それは同じ必要な粘度および浸透圧応答を有し、さらに、ヒトの身体に影響を及ぼすウイルスとの接触に不活性であり、例えばHIVによって付着されないからである。分割された時に、エデスチンは、完全に有益なヒト免疫グロブリンの形態にそれ自体を変化させ、免疫をサポートする。エデスチン溶液の浸透圧および粘性のパラメータは、血漿増補剤(イミテーション)の構築にとって最適である。その分子量のために、エデスチンは、腎臓での糸球体ろ過によって直ちに取り除かれるわけではない(他の同時期に起こる置換−デキストラン、グルコースおよび他の親溶液とは異なる)が、主として肝臓において起こる身体の代謝過程の作用によって免疫グロブリンに徐々に生体内変換させられる。上記の生体内変換、特定の免疫グロブリンの形態への変換は、エデスチンの免疫賦活作用に対して有益である。適正な濃度である場合、エデスチンはコロイド状の浸透圧性血漿圧の限度を満たしている。本発明による形態において、エデスチンは、次の条件で、周囲環境の気候または大気の凝結湿度を吸収する薬物と共に保存され得る:乾燥、暗所、および冷所(約+5℃温度での)。血漿のイミテーションとして、本発明は価値があり、その成分(本発明による)は、ヒトのグロブリンと類似の物理的および化学的性質を有し、それと置き換わる能力を有し、必要な浸透圧応答および粘性を特徴とし、ウイルスに対して不活性であり、身体の免疫をサポートし、免疫グロブリンに生体内変化することが可能である。血漿置換物の初期産物は、広く利用可能であり、凍らせる必要なく容易にかつ長期にわたり確実に調製および収容され得る。
【0007】
(実行の実施例)
本発明による血漿置換剤は、汚染された血漿の投与に関連する前述の合併症および危険の全体的な除去という意味を含み、新たに着想された適切な血漿置換物に基づき、ヒトの血漿に含まれるタンパク質の構造および特徴の既存の知識に依存している。植物相の世界において、その組成において独特であり、かつ、グロブリンと呼ばれるヒトのタンパク質と新たな同一のタンパク質、すなわち、エデスチンがある。3タイプの血漿タンパク質:グロブリン系列、アルブミン系列、およびフィブリノーゲンがヒトの血漿中に存在する。本発明によると、植物タンパク質であるエデスチンはヒトグロブリンと置き換わり、それ自体の資力によりヒトグロブリンを生じさせ、そうでなければそれを行う際に身体がそのエネルギーを消耗するような(特に疾患または生理的虚弱を受けている場合)義務からヒトの身体を解放することができる。血漿タンパク質は、大部分、肝臓においてつくられており、免疫グロブリン(抗体)は、リンパ球(白血球)においてつくられている。エデスチンは、グロブリンタイプのヘキサメトリックなタンパク質であり、分子量300,000D(ダルトン)を有し、6個の同一のタンパク質サブユニットからなり、高度に安定であり(pH5.8〜7.8において)、ヒトの血漿中に含まれる類似のグロブリンとほぼ同一である。その一次構造において、エデスチンは、種々の必須アミノ酸(主として、アルギニンおよびトリプトファン)を含む。ヒト血漿と比較すると、それは、80%超のこれらの必須物質を含む。一旦、NaCl生理溶液または注射および静脈内適用用の水中に溶解させられると、塩酸エデスチンは、実験動物の場合に最低限ないしゼロの抗原応答を有する。エデスチンがなんらの不都合な免疫応答も惹起せず、逆に、それらの効率において免疫応答を強化することが試験的実験知識から明らかであり、これは、抗体(特に、ガンマ−グロブリン系列のタンパク質)の合成のための迅速な有用性によって説明され得る。細胞性免疫の場合、構造においてガンマ−グロブリンに似ているエデスチン代謝産物が各リンパ球集団の表面レセプタ上に結合されることになることが基礎として理解され得、これが、エデスチンまたはそのフラグメントを免疫増強製剤として使用することが明らかであると認められる理由である。その分子量に関する限りでは、エデスチンは、腎臓におけるあらゆる直接的な糸球体ろ過によって身体から放出されず、肝臓組織において非常にうまく根本的なアミノ酸にまで代謝される(分子レベルの分割を介して分解される)。安定なエデスチン溶液は、基本的には、血漿適用の広く知られる不利益な点(アナフィラキシーショックの危険、ヒトHIVウイルス、肝炎、BSE、SERS、ライム病(Lyme borreliosis)、レトロウイルス、プリオン等による攻撃)および現在広く用いられている、デキストラン、ゼラチンポリマーまたはデンプン誘導物をベースとする血漿置換物の不利益な点の全てを排除することとなり、腎臓を介した迅速な排出に付される。これまでに用いられてきた置換物(広く製造されるデキストラン、ゼラチン、ヒドロキシエチルデンプン)は、巨大分子薬品であり、これは、血漿との共通点を有しておらず、容易に生体内変化させられるエデスチンとは対照的に、生命が危険な状況において血液容積を維持するための努力の範囲内または患者が例えば火傷、敗血症を蒙った後の身体のショック療法の開始の範囲内においてのみ適用され得る。タンパク質、水および電解質の喪失の際に血液容積を維持するための努力においてそれらを用いることは良いことではない;これらの事例では、多量のアルブミンを有するが全ての使用に関連する危険を有する血漿または血漿タンパク質フラクションを直接的に用いなければならない。本発明の対象は、はるかに良好なもの(グロブリンタイプ)により低品位のタンパク質にとってかわり、これらの未解決の危険なしでそのように行う。植物グロブリンとしてのエデスチンは、血漿を通じて伝達される全ての既知ウイルスと接触しても不活性であるからである。我々の既存の研究によると、高含有エデスチンをベースとする置換物は、圧倒的大多数の臨床上のニーズの点で血漿に勝るだろう。エデスチンの理想的な供給源は、Cannabis sativaと呼ばれるアサの種子において利用可能であり、これは、最も大量にエデスチンを含む。粗エデスチンは、これらの種子から抽出され、高いレベルの純度に結晶および懸濁液の形態で精製され得る。エデスチンをベースとする血漿置換物は、本発明の対象である血漿置換物の初期産物を得るために用いられる方法にしたがって、最高99.9%の純度に調製され得、ここで、それは、ほぼ無制限の貯蔵期限を特徴とする。本発明の対象は、主としてアルブミンおよびミネラルからなるドナーからの血漿の欠点(HIV、肝炎、BSE、SARS、ライム病、レトロウイルス、プリオン等の全ての感染伝達リスクを備えた)を除去し、これをタンパク質タイプおよび植物起源の実質的により良好な製剤と置き換える。そのグロブリンの性質に起因して、エデスチンをベースとする製剤は、(浸透圧性の血圧を維持するだけであり、免疫系を維持する能力をなんら有しない低分子アルブミンから主としてなるヒトの血漿とは対照的に)血液の浸透圧性の応答を強化するだけではなく、エデスチンをベースとするグロブリンは、分割された時に、身体の免疫系をさらに刺激する。エデスチンの抗原性の作用が低いかまたはゼロであることおよび必須アミノ酸の含有量が高いことが、ヒト血漿置換物が作られ得るベースとしてのエデスチンを運命付けるようである。
【0008】
完全に価値のある血漿置換物を作り出すために、5〜40重量%(有利には、7.2重量%)のエデスチン、0.5〜7重量%の無機物質、0.5〜7重量%の有機物質、ホルモン、およびコロイド溶液を100%に埋め合わせる他の物質を必要とするが、それらの成分は、コロイド溶液の浸透圧値(osmotic-colloid value)が血漿の平衡値と合致するようにバランスがとられるようにしなければならない。例えば、コロイド溶液は、100重量%コロイド溶液に対して7.2重量%のエデスチン、4重量%の無機物質、4重量%の有機材料を含む。別の例は、100重量%コロイド溶液に対して40重量%のエデスチン、7重量%の無機物質および7重量%の有機材料およびバランスとしてのホルモンを有するコロイド溶液である。必要に応じてあらゆる濃度がつくりだされ得る。
【0009】
製造方法によると、本発明によるヒト血漿の置換物のための最初の産物であるアサの種子は、粉砕されるか、冷圧している間に広く利用可能な技術設備によって圧搾されるか、または、CO抽出を経た液体COの不活性雰囲気中の超臨界流体抽出によって粉砕かつ抽出される。エデスチンの結晶体からのヒト血漿置換物の調製は、CO法に基づくアサ油の押圧または抽出によって達成される一方で、圧搾された粉体物形態の廃物は、脂肪除去および脱色が、エーテル、クロロホルム等のいくつかの有機溶媒の作用による抽出を介して行われる方法で残油およびクロロフィル天然染料から取り除かれる。エデスチンの結晶体への凝固に基づく製造方法を前提とすると、10〜30%の生理溶液中でエデスチン結晶を激しく攪拌することによりエデスチン懸濁液を調製しなければならない。激しく攪拌されている間に、溶液が完全に消耗させられる(白色液になる)まで、この懸濁液に濃塩酸が加えられる。溶液の凍結乾燥(−80℃での真空蒸発または氷結)の結果、塩酸エデスチンのほぐれた物質が溶解可能な形態で生じる。これは、再度、注射液または生理溶液に溶解させられ場合に、透明な溶液を与え、静脈内適用に有用である。エデスチンのほどけた物質の貯蔵期限は、最高数年に達し、その安定した状態が保たれる。塩の作用によるろ液からの単離によるエデスチン製造の方法を前提とすると、エデスチンを分割し得るプロテアーゼの活性を抑えるために、脂肪が除去されかつ脱色された物質に水または水溶液が加えられる間に、溶液のより低い温度で用いることが望ましい。タンパク質の沈殿物のろ液は着色された白色および灰色である。フィルタの等級は、ろ液に移ってはいけない多糖凝集物、すなわち、デンプンに対して選択されなければならない。実際に懸濁形態で血漿の置換剤としてエデスチンが用いられることになる場合、激しく攪拌されている間に、溶液が完全に浄化される(透明溶液)までエデスチン懸濁液に濃塩酸を加えることによってエデスチンのほどけた物質を塩酸塩の形態で調製しなければならない。溶液の凍結乾燥(−80℃での真空蒸発および/または氷結)の結果、塩酸エデスチンのほどけた物質が溶解可能な形態で生じる。これは、注射液または生理溶液に再度溶解させられた時に、透明溶液を与えることになり、これは、静脈内適用に有用である。エデスチンのほどけた物質の貯蔵期限は、その安定した状態が保持されつつ最高で数年に達する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物タンパク質物質であるエデスチンによって形成されることを特徴とする血漿置換剤。
【請求項2】
アサ種子の産物であることを特徴とする請求項1に記載の血漿置換剤。
【請求項3】
5〜40重量%のエデスチン、0.5〜7重量%の無機物質、0.5〜7重量%の有機物質、100重量%のコロイド溶液までのホルモンおよび他の物質を含む溶液の成分であることを特徴とする請求項1または2に記載の血漿置換剤。
【請求項4】
請求項1による血漿置換剤の製造方法であって、
植物種子が粉体に冷圧されるか、または、圧縮ガス下に粉体状に圧搾されかつ抽出され;押圧されたまたは抽出された油分が分離され、一緒に押圧されたかまたは抽出された種子は、脂肪および着色の除去のために有機溶媒の作用によって抽出され、脂肪が除去されかつ脱色された物質は、次いで、ろ過され、かつ、20〜60℃で水溶液中の無機塩の作用にさらされ、溶液はろ過され、エデスチンは、最終的に、ろ液から単離されることを特徴とする方法。
【請求項5】
アサ種子は、冷圧および圧搾工程およびガス支援圧力抽出工程に付されることを特徴とする請求項4に記載の血漿置換剤の製造方法。
【請求項6】
植物種子は、圧縮二酸化炭素下に抽出されることになることを特徴とする請求項4または5に記載の血漿置換剤の製造方法。
【請求項7】
・20〜60℃(有利には20℃)の温度で無機塩の飽和溶液が、脂肪が除去されかつ脱色された物質に加えられ;
・結果として生じた混合物は、次いで、0.01〜2.5時間(有利には0.5時間)にわたり20〜60℃(有利には20℃)の温度で攪拌され;
・0.1〜30重量%の無機塩が加えられ;
・結果として生じた混合物は、次いで、0.6〜60分(有利には30分)にわたり20〜60℃の温度で攪拌され;
・薬液用フィルタによってろ過され;
・エデスチンが結晶体に凝固するように、ろ液が−50〜+15℃まで急速冷却され;
・エデスチンの粗結晶が蒸留水に注がれ、圧力ろ過によって分離され;
結果として生じるろ液が、エデスチンまたは脂肪が除去されかつ脱色された物質を含有する水溶液をつくるために用いられるか、
または、
・脂肪が除去されかつ脱色された物質に水を加え、20〜60℃(有利には5℃)の温度の水溶液が形成され;
・1〜20%の溶液(有利には5%溶液)を与えるように無機塩(有利には塩化ナトリウム等)が水溶液に加えられ;
・混合物は、1〜60分(有利には30分)にわたり激しく攪拌され;
・タンパク質沈殿物分離のために沈殿が生じるまで放置され;
・タンパク質沈殿物がろ過され;
・ろ液において、溶液の形態のエデスチンが、塩(有利には硫酸アンモニウム)の作用によって単離される
ことによって製造され、両方の場合において、95%(有利には99.9%)より高い精製レベルまで透析またはカラムクロマトグラフィーによってエデスチンはさらに精製されることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1つに記載の血漿置換剤の製造方法。

【公表番号】特表2007−515414(P2007−515414A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544200(P2006−544200)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【国際出願番号】PCT/CZ2004/000087
【国際公開番号】WO2005/058332
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(506207820)
【Fターム(参考)】