説明

血管内皮増殖因子融合構築物およびその使用方法

血管内皮増殖因子の121位アミノ酸イソ型(VEGF121)を、柔軟なG4S結合鎖によって毒素ゲロニンまたはグランザイムBのような細胞障害性分子に連結させて、可溶性の融合タンパク質として発現させる。VEGF121融合タンパク質は、原発腫瘍の増殖を阻害して、転移の広がりおよび転移巣の血管形成を阻害する有意な抗腫瘍性の血管削摩作用を示す。VEGF121融合タンパク質はまた、インビボで破骨前駆細胞を標的として、破骨細胞形成を阻害する可能性がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は一般的に、癌研究および標的化治療の分野に関する。より詳しく述べると、本発明は、血管内皮増殖因子の121位アミノ酸イソ型(VEGF121)を含む融合構築物およびそのような構築物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
血管内皮増殖因子(VEGF)-Aは、固形腫瘍の増殖および転移において中心的な役割を果たし、固形腫瘍における血管形成の一次刺激剤として作用する。VEGF-Aは、内皮細胞の増殖、遊走、および生存を増強して、血管形成にとって必須である。血管内皮増殖因子の他の役割には、創傷治癒、血管の透過性および血流の調節が含まれる。RNAの選択的スプライシングにより、ヒト血管内皮増殖因子は、アミノ酸121位、165位、189位、または206位の少なくとも四つのイソ型として存在する。VEGF121と呼ばれる分子量が最も小さいイソ型は、ジスルフィド結合ホモ二量体として溶液中で存在する非ヘパラン硫酸結合イソ型である。
【0003】
VEGFは、多様な腫瘍細胞によって放出される。VEGFの血管新生作用は、二つの関連する受容体チロシンキナーゼ、すなわちヒトにおけるキナーゼドメイン受容体(KDR)およびFLT-1、ならびにマウスにおけるFlk-1およびFlt-1を通して媒介される。これらはいずれも血管内皮細胞にほぼ限定される。KDR/Flk-1およびFLT-1受容体は、腫瘍血管の内皮では過剰発現されている。対照的に、これらの受容体は、隣接する正常組織の血管内皮ではほとんど検出不能である。このように、血管内皮増殖因子の受容体は、腫瘍の血管新生の阻害を通して、腫瘍の増殖および転移の広がりを阻害する治療物質を開発するための優れた標的であるように思われる。
【0004】
この目的のため、VEGF121は、毒性物質を腫瘍の血管内皮に選択的に輸送するための適した担体であろう。VEGF121は、ジスルフィド結合ホモ二量体として溶液中に存在し、ヘパリンとは無関係にKDRおよびFLT-1に結合する。これはニューロピリン-1およびニューロピリン-2には結合しない。VEGF121は、より大きい変種の完全な生物活性を含むことが示されている。
【0005】
分子工学によって、治療能を有する新規キメラ分子を合成することが可能となった。IL-2受容体、EGF受容体、およびその他の増殖因子/サイトカイン受容体を標的とするキメラ融合構築物が記述されている。同様に、血管内皮増殖因子と切断型ジフテリア毒素との化学結合体は、血管内皮増殖因子の受容体を発現する細胞株に対して強い細胞障害活性を有することが示されている。VEGF/ジフテリア毒素融合体構築物に関するさらなる試験から、Capriceの肉腫細胞よび分裂中の内皮細胞に対してインビトロおよびインビボで選択的な毒性が示された。しかし、改善された生化学的および薬理学的特性を有する、血管内皮増殖因子および他の細胞障害性分子を含む融合構築物に関する先行技術はない。本発明は、当技術分野におけるこのような長年にわたる必要および要求を満たす。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
本発明は、血管内皮増殖因子の121位アミノ酸イソ型(VEGF121)を含むキメラ融合体毒素を固形腫瘍の新生血管にターゲティングすることを開示する。一つの態様において、キメラ融合体毒素(VEGF121/rGel)は、VEGF121と、リシン-A鎖と類似の作用機序を有する低分子量一本鎖毒素である組換え型ゲロニン(rGel)とからなる。VEGF121は、柔軟なG4Sの結合鎖によって毒素ゲロニンに連結され、細菌において可溶性タンパク質として発現される。VEGF121/rGelおよびVEGF121はいずれも、細胞キナーゼドメイン受容体(KDR)の燐酸化を刺激した。VEGF121/rGel融合体構築物は、KDR/Flk-1受容体を過剰発現する内皮細胞に対して非常に細胞障害性であった。FLT-1を過剰発現する内皮細胞は、融合タンパク質に対して感受性を示さなかった。
【0007】
VEGF121の受容体、すなわちVEGFR-1(FLT-1)およびVEGFR-2(KDR/Flk-1)の双方が腫瘍血管の内皮において過剰発現されていることがいくつかの研究によって示されているが、本発明は、VEGF121/rGelがいくつかの有用な特性を有することを証明するいくつかの驚くべき結果を報告する。KDRまたはFLT-1のいずれかに対して特異的な抗体を用いる細胞のELISAから、VEGF121/rGelが双方の受容体に結合することが示されている。VEGF121/rGelはFLT-1およびKDRの双方に結合するが、VEGF121/rGelの内部移行は、KDRに限って媒介され、FLT-1によって媒介されない。
【0008】
ヒト黒色腫(A-375)またはヒト前立腺(PC-3)異種移植片を用いた実験は、インビボで腫瘍血管の標的化破壊のためにVEGF121/rGel融合構築物を用いて成功したことを証明している。本発明はまた、VEGF121/rGelの抗腫瘍性の血管削摩作用を、原発腫瘍を治療するためのみならず、転移の広がりおよび転移巣の血管形成を阻害するために利用してもよいことを示している。併せて考慮すると、これらの結果は、マウスにおいてVEGF121/rGelによって腫瘍血管の選択的破壊が得られ、強い抗腫瘍効果を示すことを示している。治療用量を処置した動物では、正常な臓器に対する肉眼的形態学的毒性を認めなかった。したがって、VEGF121/rGelは、癌患者を治療するために有用な可能性がある抗腫瘍物質である。
【0009】
本発明のもう一つの態様において、VEGF121と、カスパーゼ依存的およびカスパーゼ非依存的経路の双方を通してアポトーシスを誘導することができるセリンプロテアーゼであるグランザイムB(GrB)とからなるキメラ融合体毒素(GrB/VEGF121)が提供される。ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ媒介ニックエンド標識アッセイ法、DNAラダー形成、およびミトコンドリアからのチトクロームc放出によって評価すると、GrB/VEGF121は、FLK-1発現ブタ大動脈内皮細胞に対して特異的にアポトーシス事象を誘導した。さらに、融合構築物は、標的内皮細胞において処置後4時間以内にカスパーゼ-8、カスパーゼ-3、およびポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼの切断を媒介した。結論すると、ヒト前アポトーシス経路の酵素であるグランザイムBを腫瘍の血管内皮細胞または腫瘍細胞に輸送することは、有意な治療能を有し、独自の作用機序を有する強力な新規クラスの標的化治療物質となる可能性がある。
【0010】
本発明は、血管内皮増殖因子の121位アミノ酸イソ型(VEGF121)と細胞障害性分子とを含む結合体を含む物質の組成物に向けられる。一般的に、細胞障害性分子は、ゲロニンのような毒素またはグランザイムBのようなアポトーシスを誘導する分子である。
【0011】
本発明のもう一つの態様において、2型VEGF受容体(キナーゼドメイン受容体/Flk-1受容体)を発現する細胞を殺すために、本発明のVEGF121融合結合体を用いる方法が提供される。結合体のVEGF121成分は、1型VEGF受容体(Flt-1)および2型VEGF受容体(KDR/Flk-1)の双方に結合するが、2型VEGF受容体を発現する細胞によってのみインターナライズされる。
【0012】
本発明のさらにもう一つの態様において、動物またはヒトにおいて腫瘍の増殖を阻害する、または転移の広がりおよび転移巣の血管形成を阻害するために、本発明のVEGF121融合結合体を用いる方法が提供される。
【0013】
本発明はさらに、動物もしくはヒトにおける破骨細胞の形成を阻害するために、または骨粗鬆症を治療するために本発明のVEGF121融合結合体を用いる方法を提供する。
【0014】
本発明の他の局面、特徴、および長所は、本発明の現在の好ましい態様に関する以下の説明から明らかとなるであろう。これらの態様は開示の目的のために示される。
【0015】
発明の詳細な説明
血管内皮増殖因子およびその受容体の発現は、腫瘍の血管分布、転移、および進行に密接に関連している。いくつかの研究グループが、血管内皮増殖因子受容体のキナーゼ活性を遮断する抗血管新生薬、または血管内皮増殖因子-受容体相互作用を遮断するモノクローナル抗体を開発した。本発明は、血管内皮増殖因子の121位アミノ酸イソ型(VEGF121)と、植物毒素であるゲロニンまたはセリンプロテアーゼであるグランザイムBのような細胞障害性分子とを含むキメラ融合構築物を示す。
【0016】
腫瘍における血管新生プロセスを標的とする物質は、治療効果に関して有意な可能性を有する。VEGF/受容体複合体を標的とすることによって血管内皮細胞の増殖および発達を妨害する分子は、腫瘍の実質に浸透する必要がなく、受容体標的が腫瘍血管内皮の内腔表面上に発現されることから、さらなる長所を有する。
【0017】
血管内皮増殖因子を含む構築物が、ニューロピリン受容体に結合すると、複合体の望ましくない毒性源および誤ターゲティングとなりうる。しかし、VEGF-Aの他のイソ型とは対照的にVEGF121断片は、この受容体に結合しないように思われることが示された。
【0018】
本発明の新規融合構築物を用いて、薬学的組成物を調製してもよいと特に企図される。そのような場合、薬学的組成物は、本発明の新規融合構築物と薬学的に許容される担体とを含む。当業者は過度の実験を行うことなく、本発明のこの融合体毒素の適当な用量および投与経路を容易に決定することができるであろう。インビボで治療のために用いる場合、本発明の融合構築物の治療的有効量、すなわち腫瘍の負荷またはその他の望ましい生物作用を消失または減少させる量を患者または動物に投与する。これは通常、非経口投与、好ましくは静脈内投与されるが、その他の投与経路も適当であれば用いられるであろう。
【0019】
用量および投与計画は、疾患または癌(原発巣または転移巣)およびその集団の性質、特定の融合体毒素の特徴、例えばその治療指数、患者、患者の既往、ならびに他の要因に依存するであろう。投与される融合体毒素の量は、典型的に患者の体重1 kgあたり約0.01〜約100 mgの範囲であろう。投与スケジュールは、治療の負の効果に対してバランスをとりながら有効性を最適にするために継続されるであろう。「Remington's Pharmaceutical Science」、第17版(1990)、Mark Publishing Co.イーストン、ペンシルバニア州;および「Goodman and Gilman's:The Pharmacological Basis of Therapeutics」、第8版(1990)、Pergamon Pressを参照されたい。非経口投与の場合、融合体毒素タンパク質は最も典型的に、薬学的に許容される非経口溶媒に関連して単位用量注射剤(溶液、懸濁液、乳剤)に調製される。そのような溶媒は好ましくは非毒性であり非治療的である。そのような溶媒の例は、水、生理食塩液、リンゲル液、デキストロース溶液、および5%ヒト血清アルブミンである。固定油およびオレイン酸エチルのような非水性溶媒も同様に用いてもよい。
【0020】
リポソームを担体として用いてもよい。溶媒は、等張性および化学的安定性を増強する物質、例えば、緩衝剤および保存剤のような添加物の少量を含んでもよい。融合体毒素は典型的に、約0.01 mg/ml〜1000 mg/mlの濃度でそのような溶媒において調製されるであろう。
【0021】
本明細書において用いられるように、「被験者」は動物またはヒトを指す。
【0022】
本発明は、血管内皮増殖因子の121位アミノ酸イソ型(VEGF121)と、細胞障害性分子とを含む結合体を含む物質の組成物に向けられる。一般的に、細胞障害性分子は、ゲロニンのような毒素またはアポトーシスシグナルを生成することができるシグナル伝達タンパク質である。代表的な有用なシグナル伝達タンパク質には、グランザイムBおよびBaxが含まれる。一つの態様において、結合体は、VEGF121と細胞障害性分子とが、G4S、(G4S)2、218リンカー、(G4S)3、酵素的に切断されるリンカー、もしくはpH切断リンカー、または当業者に周知である任意の類似のリンカーのようなリンカーによって連結されている融合体タンパク質である。
【0023】
本発明のもう一つの態様において、2型VEGF受容体(キナーゼドメイン受容体/Flk-1受容体)を発現する細胞を殺すために、本発明のVEGF121融合結合体を用いる方法が提供される。結合体のVEGF121成分は、1型VEGF受容体(Flt-1)および2型VEGF受容体(KDR/Flk-1)の双方に結合するが、2型VEGF受容体を発現する細胞に限ってインターナライズされる。一般的に、結合体は、細胞あたり2000個より多くの2型VEGF受容体を発現する細胞に対して細胞障害性である。
【0024】
本発明のさらにもう一つの態様において、動物またはヒトにおいて腫瘍の増殖を阻害する、または転移の広がりおよび転移巣の血管形成を阻害するために、本発明のVEGF121融合結合体を用いる方法が提供される。方法は、腫瘍の血管に対して細胞障害作用を発揮する結合体の生物学的有効量を用いることを含む。方法はさらに、化学療法剤または放射線療法剤による治療を含んでもよい。代表的な化学療法剤および放射線療法剤は当技術分野において周知である。
【0025】
本発明はさらに、動物またはヒトにおいて、破骨細胞形成を阻害するため、または骨粗鬆症を治療するために本発明のVEGF121融合結合体を用いる方法を提供する。
【0026】
以下の実施例は、本発明の様々な態様を説明する目的で示され、本発明を制限することを意味しない。本実施例は、本明細書に記述の方法、技法、治療、および特定の化合物と共に、好ましい態様の代表である。当業者は、本発明が、目的を実行するため、言及した長所のみならず、本明細書に固有の対象、目的、および長所を得るために十分に適合されることを認識するであろう。その場合に含まれる変更、および請求の範囲によって定義される本発明の趣旨に含まれるその他の用途は、当業者に想起されるであろう。
【0027】
実施例1
細胞株および試薬
ウシ神経組織からの内皮細胞増殖補助物質をSigma社から得た。マウス脳内皮腫bEnd.3細胞は、Werner Risau(Max Plank Institute、ミュンヘン、ドイツ)から提供された。ヒトFLT-1受容体(PAE/FLT-1)またはKDR受容体(PAE/KDR)のいずれかをトランスフェクトしたブタ大動脈内皮細胞(PAE)は、J. Waltenberger博士から提供された。可溶性マウスFlk-1は、Warrenら(1995)によって記述されたようにSf9細胞において発現させた。ヒト黒色腫A-375 M細胞株、ヒト乳癌SKBR3-HP、およびHuT-78細胞は、アメリカンタイプカルチャーコレクションから得た。組織培養試薬は、GIBCO/BRLまたはMediatech Cellgro(ハーンドン、バージニア州)から得た。
【0028】
ウサギ抗ゲロニン抗血清は、M.D. Anderson Cancer CenterのVeterinary Medicine Core Facilityから得た。抗flt-1(sc-316)、抗flk-1(sc-504)、および抗PARP(sc-8007)抗体は、Santa Cruz Biotechnology Inc.(サンタクルズ、カリフォルニア州)から購入した。BALB/cヌードマウスは、Jackson Laboratoryから購入して、全米実験動物飼育協会の標準に従って滅菌の病原体を含まない条件で維持した。
【0029】
抗グランザイムBマウスモノクローナル抗体、および抗カスパーゼ抗体は、Santa Cruz Biotechnology Inc.(サンタクルズ、カリフォルニア州)から得た。西洋ワサビペルオキシダーゼヤギ抗マウス(HRP-GAM)または抗ウサギ結合体は、Bio-Rad(ハーキュルズ、カリフォルニア州)から購入した。FITC結合抗マウスIgGはSigma Chemical Co.(セントルイス、ミズーリ州)から得た。チトクロームc放出アポトーシスアッセイキットは、Oncogene Research Products(ボストン、マサチューセッツ州)から購入した。インサイチュー細胞死検出キット、AP[ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ媒介ニックエンド標識(TUNEL)アッセイ]、およびFast Redは、Roche Molecular Biochemicals(インジアナポリス、インジアナ州)から購入した。
【0030】
PCR試薬は、Fisher Scientificから得て、分子生物学酵素は、Roche Molecular BiochemicalsまたはNew England Biolabsから購入した。細菌株、pET細菌発現プラスミド、組換え型エンテロキナーゼは、Novagenから得た。その他の化学物質は全て、SigmaまたはFisher Scientificから得た。金属親和性樹脂(Talon)は、CLONTECHから得た。他のクロマトグラフィー樹脂および材料はAmersham Pharmaciaから購入した。
【0031】
実施例2
VEGF121/rゲロニン融合体毒素の構築
ヒトVEGF121および組換え型ゲロニンをコードするcDNAを、VEGFおよびゲロニンDNAを鋳型として用いるスプライスオーバーラップ伸長PCR法を用いて互いに融合した。用いたプライマーは:

であった。G4Sリンカーを/VEGF121とrGel配列のあいだに組み入れた。精製PCR産物を制限酵素BspHIおよびXhoIによって消化して、pET-32aにライゲーションした。融合タンパク質を発現させるために、構築物を大腸菌株AD494(DE3)pLys Sに形質転換した。
【0032】
ヒトVEGF121および組換え型ゲロニンの組み合わせは、二つの異なる方向(図1)において当初調製したが、いずれも方向も類似の細胞障害性プロフィールを示す。しかし、N末端にVEGF121が存在すると、細菌からの精製後高い収量が得られ、これをその後の実験に用いる。
【0033】
実施例3
大腸菌におけるヒトVEGF121/rゲロニンの発現および精製
VEGF121/rGelの発現および精製は、既に記述されている(Veenendaalら、2002)。VEGF121/rGelインサートを有するプラスミドによって形質転換した細菌コロニーを、200 mg/mlアンピシリン、70 mg/mlクロラムフェニコール、および15 mg/mlカナマイシンを含むLB増殖培地(Sigma)において37℃で240 rpmのシェーカーバスにおいて一晩培養した。培養物を、抗生物質を含む新鮮なLB培地によって1:20に希釈して、37℃で初期対数増殖期(A600/0.6)まで増殖させた。その後、培養物を新鮮なLB培地+抗生物質によって1:1希釈した。0.1 mMイソプロピルb-D-チオガラクトシド(IPTG)を一晩加えることによって、タンパク質合成を23℃で誘導した。細胞を遠心によって回収して、10 mMトリス/塩酸(pH 8.0)に浮遊させて凍結した。
【0034】
融合タンパク質を細菌の上清から発現および精製した。大腸菌細胞を0.1 mmガラスビーズ(BioSped Products, Inc.)100 mlによって、ビーズ攪拌機(BioSped Products, Inc.)において各3分間を8サイクルによって溶解した。溶解物を40,000 rpmで4℃で、90分間超遠心した。上清を注意深く回収して、40 mMトリス塩酸(pH 8.0)、300 mM NaClとなるように調節し、金属親和性樹脂と共に4℃でインキュベートした。樹脂を、5 mMイミダゾールを含む40 mMトリス塩酸(pH 8.0)、0.5 M NaCl緩衝液によって洗浄して、100 mMイミダゾールを含む緩衝液によって溶出した。VEGF121/rGelを含む分画をプールした後、試料を20 mMトリス(pH 8.0)、200 mM NaClに対して透析して、組換え型エンテロキナーゼによって室温で消化した。エンテロキナーゼを、アガロース結合大豆トリプシン阻害剤によって除去した。他の非対象タンパク質は、既に記述されているように26、Q-セファロースFast Flow樹脂および金属親和性樹脂によって除去した。VEGF121/rGelを濃縮して、滅菌PBSにおいて-20℃で保存した。
【0035】
IPTGによる誘導後のタンパク質発現のSDS/PAGE分析によって、62 kDaでの新規タンパク質が示され、これは融合タンパク質+21 kDa精製タグの予想分子量である。この材料をIMAC樹脂との結合および溶出によって精製した。組換え型エンテロキナーゼによる切断によってタグを除去すると、還元状態で42kDaのタンパク質が得られた。構築物は、非還元状態で84 kDaでホモ二量体として移動した。融合構築物は、VEGFおよびrGelの双方に対する抗体と免疫反応性であった。誘導された細菌培養物1 Lは当初、可溶性の融合構築物〜2,000 mgを含んだ。最初のIMAC精製によって、VEGF121/rGel産物750 mgが得られ(収率37.5%)、組換え型エンテロキナーゼによる消化によって標的タンパク質400 mg(収率20%)が得られた。その後の精製によって、VEGF121/rGel最終産物230 mgが得られた(全収率11.5%)。
【0036】
実施例4
抗VEGFおよび抗rGelウェスタンブロット分析
タンパク質試料をSDS/15%PAGEによって還元条件で分析した。ゲルを転写緩衝液(25 mMトリス/塩酸、pH 7.6/190 mMグリシン/20%HPLC等級メタノール)において4℃で一晩、電気泳動によってニトロセルロースに転写した。5%BSAのウェスタンブロッキング緩衝液[(TBS)/ツイーン]溶液を加えてメンブレンをブロックして、ウサギ抗ゲロニンポリクローナル抗体(TBS/ツイーンにおいて2 mg/ml)、またはマウス抗VEGFモノクローナル抗体2C3(TBS/ツイーンにおいて2 mg/ml)と共に1時間インキュベートした。次に、メンブレンをヤギ抗ウサギIgG西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、またはヤギ抗マウスIgG-HRP(TBS/ツイーンにおいて1:5,000希釈)と共にインキュベートした。次に、メンブレンをAmersham Pharmacia増感化学発光(ECL)検出系によって顕色して、x線フィルムに感光させた。
【0037】
実施例5
rGel成分の生物活性
rGelおよびVEGF121/rGelの機能的活性を、Amersham Pharmaciaの無細胞タンパク質翻訳阻害アッセイキットを用いて、製造元によって記述される通りにアッセイした。ウサギ網赤血球翻訳アッセイ法によって決定されるように、VEGF121/rGelおよびrGelのIC50値はそれぞれ〜47 および234 pMであり、rGelおよびVEGF121の融合体が毒素成分の活性を減少させなかったことを示している(図2)。
【0038】
実施例6
可溶性Flk-1受容体に対するVEGF121/rGelの結合
Flk-1に対する結合を、可溶性マウスFlk-1をコーティングしたマイクロタイタープレートにおいて試験した。プレートを2 mg/ml NeutrAvidin(Pierce)によって6時間処置した。精製したビオチン化Flk-1(Warrenら、1995)をNeutrAvidinコーティングウェルと共に2時間インキュベートした。2%(容積/容積)BSAを含むPBSの存在下でVEGF121またはVEGF121/rGelをウェルに様々な濃度で加えた。2時間インキュベートした後、プレートを洗浄して、非ブロックマウスモノクローナル抗VEGF抗体、2C3(Brekkenら、1998)またはウサギポリクローナル抗ゲロニンIgGと共にインキュベートした。VEGF121/rGelおよびVEGF121の競合試験に関して、VEGF121/rGel融合タンパク質の結合を、ウサギ抗ゲロニン抗体を用いて検出した。マウスおよびウサギIgGはそれぞれ、HRP標識ヤギ抗マウスおよび抗ウサギ抗体(Dako)によって検出した。クエン酸燐酸緩衝液(pH 5.5)においてO-フェニレンジアミン(0.5 mg/ml)および過酸化水素(0.03%、容積/容積)を加えてペルオキシダーゼ活性を測定した。0.18 M H2SO4 100 mlを加えて反応を停止させた。吸光度を490 nmで読み取った。競合実験において、VEGF121の10倍モル過剰量をVEGF121/rGelと予め混合してからプレートに加えた。
【0039】
図3に示すように、VEGF121/rGelおよびヒトVEGF121は、全ての濃度でFlk-1に対して等しく十分に結合し、融合タンパク質のVEGF成分がFlk-1に対して十分に結合できることを示している。Flk-1に対するVEGF121/rGelの結合の特異性は、遊離のVEGF121の10倍モル過剰量を用いて確認した(図4)。
【0040】
実施例7
KDRのVEGF121/rGelおよびVEGF121誘導燐酸化
キナーゼドメイン受容体(KDR)を過剰発現するブタ大動脈内皮細胞(PAE/KDR)を、F-12培養培地において一晩インキュベートした後、100 mM Na3 VO4と共に37℃で5分間インキュベートした。VEGFまたはVEGF121/rGelを加えて、様々な時間で、溶解緩衝液(50 mM Hepes、pH 7.4/150 mM NaCl/1 mM EGTA/10 mM ピロ燐酸ナトリウム/1.5 mM MgCl2/100 mM NaF/10%(容積/容積)グリセロール/1%トライトンX-100)を加えることによって細胞を溶解した。細胞溶解物を遠心(16,000×g)して、上清を除去し、そのタンパク質濃度を決定した。溶解物の上清を抗ホスホチロシンモノクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology)9 mgと共に4℃で2時間インキュベートした後、プロテインAセファロースビーズを4℃で2時間加えて沈殿させた。ビーズを洗浄して、SDS試料緩衝液と共に混合して、100℃で5分間加熱して、遠心し、SDS/10%PAGEによって分析した後、ニトロセルロースフィルターに転写した。メンブレンを5%脱脂粉乳によってブロックしてウサギポリクローナル抗KDR抗体(1:250;Santa Cruz Biotechnology)と共に室温で1時間インキュベートした。メンブレンを洗浄して、ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウス抗体(1:2,000)と共に室温で1時間インキュベートした後、増感化学発光試薬(Amersham Pharmacia)を用いて免疫反応性ビーズを可視化した。
【0041】
これらの実験の結果から、VEGF121/rGelまたはVEGF121を加えると、ホスホチロシン含有量が増加することが示された。二相の燐酸化が存在した;初期相(1〜10分)および後期相(4〜8時間)。このKDR燐酸化誘導の経時的変化は、VEGF121/rGelおよびVEGF121に関して同じであった。VEGF121/rGelまたはVEGF121のいずれかを処置したPAE/FLT-1細胞におけるFLT-1の燐酸化は、他の研究者によって認められたKDRと比較してFLT-1のシグナル伝達がより弱いことから予想されたように、認められなかった。
【0042】
VEGF121/rGelはKDR受容体の燐酸化を誘導するが、VEGF受容体発現細胞に及ぼす融合体毒素の増殖刺激作用は認められなかった。これらの知見は、IL-2/DTのような他の融合体毒素に関する研究と一致し、最初はIL-2自身の場合と同様に標的細胞を刺激するが、インターナライズされた毒素の作用によって最終的に標的細胞を殺す。
【0043】
実施例8
インビトロで内皮細胞に対するVEGF121/rGelの細胞障害性
成体ウシ大動脈弓に由来する内皮細胞(ABAE)に対する細胞障害性を決定するために、対数増殖期成体ウシ大動脈弓由来内皮細胞をDMEM[10%(容積/容積)FBA]において200 mlあたり細胞4,000個に希釈した。少量(200 ml)を96ウェル平底組織培養プレートに加えて、37℃、5%CO2において1〜72時間インキュベートした。精製VEGF121/rGelまたはrGelを培養培地において様々な濃度に希釈してプレートに加え、培養物を72時間インキュベートした。クリスタルバイオレット[0.5%の20%メタノール溶液]100 mlを加えて、残っている接着細胞を染色した。Sorenson緩衝液[0.1 Mクエン酸ナトリウム、pH 4.2の50%(容積/容積)エタノール溶液]100 mlを加えて、色素染色細胞を可溶化した。吸光度は595 nmで測定した。
【0044】
マウス脳由来内皮細胞bEnd.3に及ぼす細胞障害性を決定するために、細胞を24ウェルプレートにおいて50,000個/ウェルの密度で播種した。24時間後、VEGF121/rGelまたはrGelを単独で様々な濃度で加えた。37℃で5日間処置を行った後、残っている接着細胞をトリプシン処理によって採取して計数した。結果をウェルあたりの総細胞数として表記する。同一の実験2回を1試料あたり2回ずつ行った。全ての実験における標準誤差は平均値の5%未満であった。
【0045】
PAE/KDRおよびPAE/FLT-1細胞に及ぼす細胞障害性を決定するために、対数期PAE/KDRおよびPAE/FLT-1細胞をF-12培地[10%(容積/容積)FBS]において200 mlあたり細胞3,000個となるように希釈した。少量(200 ml)を96ウェル平底組織培養プレートに加えて、37℃、5%CO2において24時間インキュベートした。精製VEGF121/rGelまたはrGelを培養培地において様々な濃度に希釈してプレートに加え、培養物を72時間インキュベートした。接着細胞を上記のクリスタルバイオレット染色法を用いて定量した。
【0046】
VEGF121/rGelは、インビトロでKDR/Flk-1発現内皮細胞に対して特異的に毒性であった(図5および表1)。細胞あたりKDR/Flk-1受容体1〜3×105個を発現する対数増殖期PAE/KDR、ABAE、およびbEnd.3細胞に及ぼすVEGF121/rGelのIC50値は、0.06〜1 nMであった。FLT-1を発現して、KDRの内因性の発現が低い細胞(PAE/FLT-1、HUVEC)は、KDR/Flk-1発現細胞の場合よりVEGF121/rGelに対して数百倍抵抗性であった。このように、FLT-1は、VEGF121/rGelの細胞障害性を媒介しないように思われる。
【0047】
rGel対VEGF121/rGelのIC50値の比を、各細胞タイプに関して計算した。この比(ターゲティング指数)は、融合構築物のVEGF成分の内皮細胞表面および細胞内リボソーム区画への毒素輸送の媒介能を表す。表1に要約するように、bEnd.3および成体ウシ大動脈弓由来内皮細胞はそれぞれ、遊離のrGelに対する場合より、融合構築物に対して100倍および9倍感受性が高かった。
【0048】
(表1)細胞あたりのVEGF受容体の数とVEGF121/rGelに対する感受性

*ターゲティング指数は、rGel対VEGF121/rGelのIC50の比として定義される。
【0049】
実施例9
分裂中のPAE/KDR細胞に対するVEGF121/rGelの選択的細胞障害性
VEGF121/rGelは、コンフルエンスまで増殖して休止期にあるPAE/KDR細胞に対するより、対数期のPAE/KDR細胞に対して60倍毒性が強かった(表1)。細胞は、双方の増殖期において細胞あたり同じKDR受容体数を発現したことから、この作用はKDR発現の差によって引き起こされたのではなかった。対数期PAE/KDR細胞はまた、rGel自身に対してもコンフルエント細胞より感受性が高く、コンフルエント細胞の休眠状態が、標的化および非標的化rGelの双方に対するその感受性に影響を及ぼすことを示唆している。VEGF121/rGelおよびrGelの双方の流入速度または経路は、分裂細胞と非分裂細胞とでは異なる可能性がある。
【0050】
実施例10
VEGF121/rGelはKDRおよびFLT-1の双方に結合する
VEGF121は、KDRに対する場合より大きい親和性でFLT-1受容体に結合することが示されている。KDR発現細胞に対するVEGF121/rGelの細胞障害性は、FLT-1発現細胞よりほぼ600倍大きいことが判明したことから、受容体のそれぞれを発現するPAE細胞に対するVEGF121/rGelの相対的結合を調べた。
【0051】
ELISA分析を行って、受容体特異的抗体を用いて細胞表面上に双方の受容体が発現されていることを確認した(データは示していない)。VEGFR-1(FLT-1)およびVEGFR-2(KDR)の発現をウェスタンブロットによって確認した(図6A)。PAE/KDRおよびPAE/FLT-1細胞の全細胞溶解物を、プロテアーゼ阻害剤(0.5%ロイペプチン、0.5%アプロチニン、および0.1%PMSF)を添加した細胞溶解緩衝液(50 mMトリス、pH 8.0、0.1 mM EDTA、1 mM DTT、12.5 mM MgCl2、0.1 M KCl、20%グリセロール)において細胞を溶解することによって得た。タンパク質試料を還元条件でSDS-PAGEによって分離して、転写緩衝液(25 mMトリス塩酸、pH 7.6、190 mMグリシン、20%HPLC等級メタノール)において4℃で一晩PVDFメンブレンに電気泳動によって転写した。試料をウサギ抗flk-1ポリクローナル抗体によってKDRに関して、および抗flt-1ポリクローナル抗体を用いてFLT-1に関して分析した。次に、メンブレンをヤギ抗ウサギIgG西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)と共にインキュベートして、Amersham ECL検出システムを用いて顕色して、X線フィルムに感光した。
【0052】
VEGF121/rGelがヒトVEGFR-1およびVEGFR-2に結合したこと、ならびに組換え型ゲロニンの存在がVEGF121の結合特性を妨害しなかったことを確認するために、PAE細胞表面上で発現されたKDRおよびFLT-1受容体の双方に対する放射標識VEGF121/rGelの結合を調べた。VEGF121/rGel 100 μgを、比活性602 Ci/mmolのクロラミンT27を用いて1 mCi NaI125によって放射標識した。細胞を24ウェルプレートにおいて一晩増殖させた。非特異的結合部位をPBS/0.2%ゼラチンによって30分間ブロックした後、PBS/0.2%ゼラチン溶液において125I-VEGF121/rGelと共に4時間インキュベートした。競合的実験の場合、コールドVEGF121/rGelまたはゲロニンを125I-VEGF121/rGelと予め混合した。細胞をPBS/0.2%ゼラチン溶液によって4回洗浄して、剥離させ、結合したcpmを測定した。
【0053】
図6Bは、双方の細胞に対する125I-VEGF121/rGelの結合がほぼ同一であることを示している。PAE/KDRおよびPAE/FLT-1細胞の双方に対するVEGF121/rGelの結合は、非標識VEGF121/rGelによって競合されるが、非標識ゲロニンによって競合されず、VEGF121/rGelの結合がVEGF121によって媒介されることを示した。
【0054】
実施例11
PAE/KDR細胞へのVEGF121/rGelの内部移行
PAE/KDRおよびPAE/FLT-1細胞へのVEGF121/rGelの内部移行を、免疫蛍光染色を用いて調べた。PAE/KDRおよびPAE/FLT-1細胞を4 μg/ml VEGF121/rGekと共に様々な時点でインキュベートした。細胞表面から剥離させた後、細胞を3.7%ホルムアルデヒドによって固定して、0.2%トライトンX-100によって透明化した。非特異的結合部位を5%BSAのPBS溶液においてブロックした。次に、細胞をウサギ抗ゲロニンポリクローナル抗体(1:200)と共にインキュベートした後、TRITC結合抗ウサギ二次抗体(1:80)と共にインキュベートした。核は、ヨウ化プロピジウムのPBS溶液(1 μg/ml)によって染色した。スライドガラスをDABCO培地によって固定し、封入して蛍光(Nikon Eclipse TS1000)および共焦点(Zeiss LSM 510)顕微鏡下で可視化した。
【0055】
VEGF121/rGelは、処置1時間以内にPAE/KDR細胞において検出され、免疫蛍光シグナルは、24時間まで進行的に増加した(図7)。予想されたように、細胞密度も同様に24時間のあいだに減少した。融合体毒素の処置後24時間までPAE/FLT-1細胞においてVEGF121/rGelは検出されなかった。細胞を同じ濃度のrゲロニンによって処置しても、内部移行を示さず、PAE細胞へのVEGF121/rGelの流入は特異的にKDR受容体を通して行われたことを確認した。
【0056】
実施例12
内皮細胞に及ぼす露出時間の関数としてのVEGF121/rGelの細胞障害性作用
対数期PAE/KDR細胞において72時間インキュベートしたVEGF121/rGelのIC50は、約1 nMであることが示された。しかし、VEGF121/rGelは、これらの細胞に1時間以内のインキュベーションによってインターナライズされる。内皮細胞に対するこの物質の曝露時間の関数としての細胞障害作用を調べるために、細胞をVEGF121/rGelと共に1〜72時間インキュベートして、PAE/KDR細胞に及ぼすその細胞障害性を72時間終了時に評価した。
【0057】
VEGF121/rGelは、1時間インキュベーション後でも細胞障害性を保持したが、認識可能な細胞障害性が24時間後に認められ、PAE/KDR細胞に及ぼすVEGF121/rGelの最大細胞障害作用は48時間後に認められた(図8)。PAE/FLT-1細胞に及ぼすVEGF121/rGelの細胞障害作用も同様に、曝露時間の関数として影響を受けた(データは示していない)。
【0058】
実施例13
VEGF121/rGelの細胞障害性メカニズム
PAE/KDR細胞に対するVEGF121/rGelの細胞障害性のメカニズムを調べるために、24、48、および72時間目にTUNELアッセイ法を行った。対数期PAE/KDRおよびPAE/FLT-1細胞を、細胞2000個/100μlとなるように希釈した。少量(100 μl)を16ウェルチャンバースライドガラス(Nalge Nunc International)に加えて、37℃、5%CO2で一晩インキュベートした。精製VEGF121/rGelを培養培地において希釈して、最終濃度1nM(IC50の2倍)で72、48、および24時間の時点で加えた。次に細胞を処理して、試薬の製造元によって記述されるようにTUNELに関して分析した。陽性対照細胞を1 mg/ml DNアーゼと共に37℃で10分間インキュベートした。
【0059】
VEGF121/rGelを72時間まで曝露したPAE/KDR細胞に関してはTUNEL染色を認めなかった(図9)。対照的に陽性対照細胞の核は、強い染色を示し、VEGF121/rGelの細胞障害性のメカニズムがアポトーシスではないことを示した。
【0060】
PARP媒介アポトーシスに及ぼすVEGF121/rGelの作用を、PAE/KDR細胞を100 mM Na2VO4と共に37℃で5分間予めインキュベートした後、VEGF121/rGelまたはVEGF121によって5分、30分、4時間、24時間、および48時間刺激することによって調べた。細胞を洗浄して溶解した。細胞溶解物を抗PARP抗体を用いてウェスタンブロットによって分析した。これらの細胞のウェスタンブロット分析から、VEGF121/rGelがPARP媒介アポトーシスを活性化しないことが示された(図10)。
【0061】
実施例14
VEGF121/rGelによるインビボでの腫瘍増殖の阻害
ヒト黒色腫異種移植片モデルを以下のように確立した。雌性nu/nuマウスを各群5匹の群に分けた。対数期A-375Mヒト黒色腫細胞を右わき腹に皮下注射した(5×106個/マウス)。腫瘍が確立した後(〜50 mm3)、マウスの尾静脈を通してVEGF121/rGelを11日間で5回注射した。VEGF121/rGelの総用量は17または25 mg/kgであった。他のマウスにはrGel単独を全体で10 mg/kgの用量で投与した。腫瘍測定の40日後、マウスを断頭によって屠殺した。
【0062】
ヒト前立腺癌異種移植片モデルは以下のように確立した。体重〜20 gの雄性ヌードマウスを各群5匹のマウスに分けた。対数期PC-3ヒト前立腺腫瘍細胞を右わき腹に皮下注射した(5×106個/マウス)。マウスの尾静脈を通してVEGF121/rGelを2〜3日ごとに11日間注射した。VEGF121/rGelの総用量は20 mg/kgであった。他のマウスにはrGel単独を全体で10 mg/kgの用量で投与した。腫瘍の体積は以下の式に従って計算した:体積=L×W×H、式中L=長さ、W=幅、H=高さ。
【0063】
図11に示すように、生理食塩液処置ヒト黒色腫A-375M腫瘍は、30日間の観察期間において24倍の腫瘍体積の増加を示した(50 mm3〜1200 mm3)。マウスをVEGF121/rGelによって処置すると、腫瘍の増殖を強く遅らせた。全量で25 mg/kgとなるVEGF121/rGelの高用量では、腫瘍の増殖は完全に防止されたが、全てのマウスが19日目に薬物毒性のために死亡した。全量で17 mg/kgとなる低用量では、マウスは全て生存した。腫瘍の増殖は、14日間の処置期間を通して完全に防止されたが、その後腫瘍の再増殖が徐々に起こった。対照と比較すると、全量17 mg/kgの用量のVEGF121/rGelによって処置したマウスは、腫瘍体積の6倍増加を示した(1,200 mm3対200 mm3)。
【0064】
ヒト前立腺癌(PC-3)腫瘍は26日間の観察期間のあいだに体積が12倍増加した(図12)。マウスを全量20 mg/kgのVEGF121/rGel 5用量によって処置すると、腫瘍の増殖は、処置中止後も実質的に停止した。処置群における腫瘍の体積は実験期間のあいだに100〜200 mm3に増加したに過ぎなかった。対照と比較すると、VEGF121/rGelによる処置によって、腫瘍の体積は7倍減少した(1,400 mm3対200 mm3)。
【0065】
実施例15
前立腺腫瘍異種移植片における血管内皮に対するVEGF121/rGelの局在
PC-3ヒト前立腺腫瘍を有するマウス(1群3匹)に、融合タンパク質ゲロニン(2.5 mg/kg)または遊離のゲロニン(1 mg/kg)50 μgを静脈内注射した。群あたりの平均腫瘍体積は260 mm3であった。30分後、マウスを屠殺して、瀉血し、主要な全ての組織を瞬間凍結した。凍結切片を切断して、汎内皮マーカーMECA-32(5 mg/kg)によって二重染色を施した後、ウサギ抗ゲロニン抗体(10 mg/ml)を用いて局在融合タンパク質を検出した。MECA-32ラットIgGは、FITCに結合したヤギ抗ラットIgG(赤色の蛍光)によって可視化した。抗ゲロニン抗体はCy-3(緑色の蛍光)に結合したヤギ抗ウサギIgGによって検出した。双方のマーカーの同時局在は黄色で示された。抗ゲロニン抗体は、生理食塩液またはVEGF121を注射したマウスの組織切片とは反応性を示さなかった。局在した融合タンパク質を有する血管の百分率を決定するために、MECA-32(赤色)、ゲロニン(緑色)、または双方(黄色)によって染色された血管の数を、切片1枚あたり少なくとも10視野において倍率200倍で計数した。各マウスからスライドガラス2枚を分析して、陽性血管の百分率の平均値を計算した。
【0066】
図13に示すように、VEGF121/rGelは主にPC-3腫瘍の血管内皮において検出された(図13)。平均で、MECA32に関して陽性の血管の62%が同様に、抗ゲロニン抗体を用いて検出すると、VEGF121/rGelに関しても陽性であった。血管密度が増加した腫瘍領域(「ホットスポット」)において、腫瘍血管の約90%がVEGF121/rGelに結合した。正常臓器における血管は、糸球体において弱く散在性の染色が検出された腎臓を例外として染色されなかった。遊離のゲロニンは、如何なるマウスにおいても腫瘍または正常血管に存在しなかった。これらの結果は、VEGF121/rGelが静脈内注射後腫瘍血管に特異的に局在したことを示している。
【0067】
実施例16
VEGF121/rGelによる腫瘍血管の破壊および血栓形成
皮下PC-3腫瘍を有するマウスにVEGF121/rGel(2.5 mg/kg)または生理食塩液1用量を静脈内注射した。マウスを48時間後に屠殺して腫瘍および様々な臓器を摘出した。パラフィン切片を調製して、ヘマトキシリン-エオジンによって染色した。VEGF121/rGelレシピエントからの腫瘍(図14)は、損傷を受けた血管内皮、血管の血栓形成、RBC成分の腫瘍間質への漏出を示した。正常組織の血管は、損傷を受けなかった。マウスを生理食塩液によって処置すると、腫瘍または正常組織に対して影響を及ぼさなかった。画像分析によって評価すると、腫瘍の壊死領域は、生理食塩液処置マウスにおける〜4%から融合構築物による処置後の〜12%まで増加した。
【0068】
実施例17
MDA-MB-231乳腺腫瘍細胞に対するVEGF121/rGelの細胞障害性
ウェスタンブロットによって評価すると、MDA-MB-231乳癌細胞は、VEGF121に結合する受容体であるVEGFR-1またはVEGFR-2を発現しないように思われる(図15A)。対数期MDA-MB-231細胞に対するVEGF121/rGelまたはrGelの細胞障害性は以下のように決定した。細胞を96ウェル平底組織培養プレートにおいて増殖させた。精製VEGF121/rGelおよびrGelを培養培地において希釈して、5倍連続希釈してウェルに加えた。細胞を72時間インキュベートした。残っている接着細胞をクリスタルバイオレット(0.5%の20%メタノール溶液)によって染色して、Sorenson緩衝液(0.1 Mクエン酸ナトリウム、pH 4.2の50%エタノール溶液)によって可溶化した。吸光度を630 nmで測定した。図15Bに示すように、MDA-MB-231細胞に対するVEGF121/rGelの細胞障害性は、組換え型ゲロニンについて認められた場合よりわずかに高いIC50を示し、VEGF121/rGelがMDA-MB-231細胞上に特異的標的を有しないことを示した。
【0069】
実施例18
乳腺腫瘍異種移植片における血管内皮に対するVEGF121/rGelの局在
正所性のMDA-MB-231腫瘍を有するSCIDマウス(1群3匹)に、融合タンパク質50 μgまたは遊離のゲロニンの同等の量を静脈内注射した。1群あたりの平均腫瘍体積は260 mm3であった。4時間後、マウスを屠殺して瀉血した。主要な全ての臓器および腫瘍を回収して、凍結切片を調製するために瞬間凍結した。
【0070】
凍結切片を汎内皮マーカーMECA 32(5 μg/ml)によって二重染色した後、ウサギ抗ゲロニン抗体(10 μg/ml)を用いて局在融合タンパク質を検出した。MECA 32ラットIgG(カリフォルニア州、スタンフォード大学のE. Butcher博士による提供)を、FITC(緑色蛍光)に結合したヤギ抗ラットIgGによって可視化した。ウサギ抗ゲロニン抗体は、Cy-3(赤色蛍光)に結合したヤギ抗ウサギIgGによって検出した。
【0071】
双方のマーカーの同時局在は黄色で示された。抗ゲロニン抗体は、生理食塩液またはVEGF121を注射したマウスに由来する組織切片と反応性を示さなかった。局在した融合タンパク質を有する血管の割合を決定するために、MECA 32陽性ゲロニン陽性および複合色を有する血管を、切片1枚あたり少なくとも10視野において倍率200倍で計数した。各マウスからのスライドガラス2枚を分析して陽性血管の百分率を平均した。
【0072】
図16に示すように、VEGF121/rGelは、腫瘍の内皮において主に検出された。平均すると、VEGF121/rGel注射マウスの群において、MECA 32に関して陽性の血管の60%がゲロニンに関しても陽性であった。血管密度が増加した腫瘍領域(ホットスポット)において、腫瘍血管の90%までが抗ゲロニンIgGによって標識された。VEGF121/rGelが結合した血管は、腫瘍血管内に均一に分布した。正常臓器における血管は、弱く散在性の染色が糸球体に認められた腎臓を除き、染色されなかった。遊離のゲロニンは如何なるマウスにおいても腫瘍または正常血管に局在せず、標的化ゲロニンのみが腫瘍内皮に結合できることを示した。これらの結果は、VEGF121/rGelが、VEGF121/rGel結合部位の高密度かつ都合のよい分布を示す腫瘍血管に特異的に局在することを示している。
【0073】
実施例19
MDA-MB-231腫瘍の転移モデル
以下の実施例は、VEGF121/rGel融合体毒素が転移の広がりおよび転移巣の血管形成を阻害できることを確立するために乳癌の肺転移モデルを利用する。
【0074】
ヒト乳癌MDA-MB-231細胞は、無胸腺またはSCIDマウスの尾静脈に静脈内注射後、肺において一貫して留まる。微小転移は、細胞5×105個の注射後3〜7日目に初めて検出され、4〜7週間以内に注射したマウスの100%において肉眼的コロニーが形成される。死亡は10〜15週間以内に全てのマウスに起こる。この実験的乳癌転移モデルは、血液循環における腫瘍細胞の生存能、肺血管を通しての浸出能、および肺実質における増殖しつつあるコロニーの確立能を調べる。
【0075】
4〜5週齢の雌性SCIDマウスの尾静脈にMDA-MB-231細胞浮遊液(5×105個)0.1 mlを注射した。マウスを無作為に二群に分けて(1群6匹)、細胞を注射後8日目から始めてVEGF121/rGelまたはゲロニン単独のいずれかによる処置を行った(100 μgを腹腔内注射、3日間の間隔を空けて全6回)。VEGF121/rGelによる処置を2週間行うと、マウスに薬物の最大認容累積用量(600 μg/マウス)を投与することができる。これまでの研究から、そのような用量で投与したVEGF121/rGelが、正常臓器に組織病理学的変化を引き起こさないことが確立された。4週間にわたって腹腔内注射した全VEGF121/rGel融合タンパク質640〜800 μgの累積用量は、正常な臓器の形態学的評価によって判断すると、有意な毒性を誘導しなかった。治療のほとんどが終了した24時間後に、体重の一過性の減少(〜10%)を認めたがその後体重は完全に回復した。
【0076】
VEGF121/rGelがコロニーの大きさ、腫瘍細胞の増殖指数、および新生血管形成の誘導能に及ぼす長期作用を評価するために、転移性のコロニーをVEGF121/rGelによる処置3週間増殖させた。処置終了後3週間目に、動物を屠殺してその肺を摘出した。一つの葉をブアン固定液において固定して、他の葉を瞬間凍結した。ブアン固定液において固定した後、肺表面の腫瘍コロニーは白く見えるが、正常な肺組織は茶色に見える。それぞれの肺の表面上の腫瘍コロニー数を計数して、各肺の重量を測定した。VEGF121/rGelおよびrGel群における個々のマウスから得た値を群毎に平均した。
【0077】
実施例20
MDA-MB-231肺転移巣の数、大きさ、および血管密度に及ぼすVEGF121/rGelの影響
凍結した肺組織試料を切断して6 μmの切片を作製した。血管をMECA 32抗体によって可視化して、転移性病変を形態学によって、およびヒトHLA抗原に対する6w/32抗体によって同定した。マウスモノクローナル抗体6w/32抗体を産生するハイブリドーマをATCCから購入した。6w/32抗体は、プロテインA樹脂を用いてハイブリドーマ上清から精製した。
【0078】
各切片をMECA 32および6w/32抗体によって二重染色して、分析した血管が転移性病変内に存在することを確認した。スライドガラスを最初は低い倍率(対物レンズ2倍)で観察して、断面あたりの病巣の総数を決定した。各群の個々のマウスに由来するスライドガラス6枚を分析して、数を平均した。デジタルカメラ(CoolSnap)を用いて倍率40倍および100倍で各コロニーの画像を得て、最小直径および最大直径、全周(μm)および面積(mm2)を測定することができるMetaviewソフトウェアを用いて分析した。
【0079】
病変内において同定された血管内皮構造を計数して、各病変あたりの血管数を決定し、1 mm2あたりに標準化した。1 mm2あたりの平均血管数を各スライドガラスに関して計算し、VEGF121/rGelおよびrGel群に関して平均した(1群6匹)。結果を±SEMで表記する。非悪性組織における平均血管数を決定するために、同じ方法を適用した。
【0080】
VEGF121/rGelによる処置は、図17および表2に示すように、肺あたりのコロニー数と、肺に存在する転移巣の大きさをいずれも42〜58%有意に減少させたが、遊離のゲロニンは減少させなかった。
【0081】
肺コロニーの総平均血管密度は、rGel処置対照と比較して51%減少した(表3および図18)。しかし、認められた作用は、大きさが異なる腫瘍コロニーのあいだで不均一に分布した。血管形成に及ぼす最大の影響は、中等度の大きさと極めて小さい腫瘍について認められた(それぞれ、62%および69%の阻害)、大きい腫瘍は最小の効果を示した(10%阻害)。VEGF121/rGel処置マウスにおける病変の大部分(〜70%)は、無血管であったが、肺の転移巣に血管を有しないのは対照群の病変の40%に過ぎなかった。
【0082】
(表2)MDA-MB-231ヒト乳癌細胞の肺転移の数および大きさに及ぼすVEGF121/rGelの影響

a MDA-MB-231肺微小転移を有するマウスに、記述のようにVEGF121/rGelまたは遊離のゲロニンを腹腔内処置した。
b t-スチューデント検定を用いてp値を計算した。
c 肺をブアン固定液によって24時間固定した。表面の白いコロニー数を各試料に関して決定して、VEGF121/rGelまたはrGel対照群からのマウス6匹において平均した。群毎の数の平均値±SEMを示す。括弧内の数値は、各群におけるコロニーの範囲を表す。
d 凍結切片を転移肺から調製した。ヒト腫瘍細胞を認識する6w/32抗体によって、切片を染色した。茶色で同定される実質内コロニー数を各断面に関して決定して、VEGF121/rGelまたはrGel対照群からの個々のマウスの試料6個において平均した。群あたりの平均数±SEMを示す。括弧内の数値は、各群におけるコロニーの範囲を表す。
e 6w/32抗体によって同定された病巣の面積をMetaviewソフトウェアを用いて測定した。評価したコロニーの総数はrGelおよびVEGF121/rGel群に関してそれぞれ、101個および79個であった。各群について個々のスライドガラス6枚を分析した。各群におけるコロニーの平均面積±SEMを示す。
f 腫瘍細胞によって占有される全ての領域の合計および各肺の断面の総面積を決定して、全体に対する転移領域の割合を計算した。各スライドガラスから得られた値をVEGF121/rGelまたはrGel対照群からの試料6個において平均した。群あたりの総面積に対して転移が占める面積の%平均値±SEMを示す。
【0083】
(表3)MDA-MB-231乳癌細胞の肺転移の血管密度に及ぼすVEGF121/rGelの影響

a 転移した肺の各スライドガラス上で同定されたコロニーをその最大直径に従って5群に分けた。b VEGF121/rGelまたはrGel処置マウスからの凍結肺切片をMECA 32抗体によって染色した。コロニーは、少なくとも一つの血管が末梢から分岐して、病変の中心に達した場合に血管を有すると定義された。各群につき個々のマウスに由来するスライド6枚を分析して、データを合計した。c 分析したコロニーの総数は、rGelおよびVEGF121/rGel処置群に関してそれぞれ、127個および92個であった。VEGF121/rGel処置群における病巣の70%が無血管であったのに対し、対照群の病変では、転移病巣内で血管を有しなかったのは40%に過ぎなかった。
【0084】
実施例21
MDA-MB-231肺転移巣における分裂細胞数に及ぼすVEGF121/rGelの影響
正常なマウス臓器および転移した肺の凍結切片をアセトンによって5分間固定して、PBSTによって10分間再水和した。抗体の全ての希釈液は0.2%BSAを含むPBSTにおいて調製した。一次抗体を適当な抗マウス、抗ラット、または抗ウサギHRP結合体(Daco、カーピンテリア、カリフォルニア州)によって検出された。HRP活性は、DAB基質(Research Genetics)によって顕色することによって検出された。
【0085】
分裂細胞数を決定するために、組織切片をki-67抗体(Abcam, Inc.、ケンブリッジ、イギリス)によって染色した後、抗マウスIgG HRP結合体によって染色した。切片を倍率100倍で分析した。ki-67陽性細胞数を1 mm2あたりに標準化した。VEGF121/rGelまたは対照群あたりの平均数±SDを示す。各スライドガラスの分析に由来する平均数をVEGF121/rGelまたはrGel群のいずれか毎に合計して、統計学的有意性に関して分析した。
【0086】
VEGF121/rGel群の病変における分裂腫瘍細胞数は対照と比較して〜60%減少した(図19)。肺コロニーの全体的な血管密度の平均値は51%減少した(表3および図18)。これらの知見は、転移の血管密度が腫瘍細胞の増殖に直接影響を及ぼすことを示唆している。
【0087】
実施例22
MDA-MB-231肺転移巣の腫瘍血管内皮におけるflk-1発現に及ぼすVEGF121/rGelの影響
肺に転移した乳腺腫瘍の血管におけるVEGF受容体-2の発現をRAF-1抗体を用いて評価した。VEGF121/rGelまたは遊離のゲロニンを処置したマウスからの肺の凍結切片をモノクローナルラット抗マウスVEGFR-2抗体RAFL-1(10 μg/ml)によって染色した。RAFL-1抗体はヤギ抗ラットIgG-HRPによって検出した。肺転移巣に存在する残っている少数の血管におけるKDRの発現は、対照腫瘍に存在する肺病巣と比較して有意な減少を示した(図20)。このことは、VEGF121/rGel物質が受容体を有意にダウンレギュレートすることができるか、または非常に受容体陽性の内皮細胞の外増殖を防止することができることを示唆している。
【0088】
実施例23
VEGF121/rGelの生物学的特性の概要
VEGF121/rGelは、KDR/Flk-1受容体を過剰発現する分裂内皮細胞に対して選択的に毒性であることが判明した。非分裂(コンフルエント)内皮細胞は、融合構築物に対して分裂細胞の場合よりほぼ60倍抵抗性であり、遊離のゲロニンに対するより抵抗性であった(表1)。これらの知見は、血管内皮増殖因子とジフテリア毒素との結合体が対数期細胞に対して非常に毒性が強いが、コンフルエント内皮細胞に対しては毒性を示さないことを示したこれまでの研究の知見と一致する。VEGF-毒素構築物に対する分裂内皮細胞の感受性がより高いことは、他の標的化治療物質に関して認められるように、構築物の細胞内経路または異化の差のためである可能性がある。
【0089】
細胞障害性試験から、VEGF121/rGelが細胞障害性であるためには、KDR/Flk-1受容体の発現が必要であることが示された。KDR/Flk-1を過剰発現する細胞(>1×105部位/細胞)は、VEGF121/rGel融合構築物に対して非常に感受性が高かったのに対し、0.4×105個/細胞より少ない部位を発現する細胞は、遊離のゲロニンに対する場合と同様に融合体毒素に対して感受性がなかった。この場合も、細胞障害性に関してKDR/Flk-1の閾値レベルを超えるための必要条件が、VEGF121/rGelの安全性に関与する可能性がある。腎糸球体および肺血管内皮を含む正常な臓器において、KDR/Flk-1のレベルは毒性を引き起こすために必要なレベルより低い可能性がある。正常な臓器の血管における内皮細胞上の血管内皮増殖因子受容体の数は、腫瘍血管の場合より有意に少ないことが報告されている。実際に、弱い結合を認めた腎臓以外の臓器では、正常な血管内皮に対するVEGF121/rGelの結合を検出できなかった。さらに、血管内皮に対する損傷は、腎臓を含む正常な臓器において認められなかった。
【0090】
その他のゲロニンに基づく標的化治療も同様に、結合の特定の閾値レベルを超えた場合に限って、細胞に対して毒性となることが認められた。c-erb-2/HER2/neu腫瘍遺伝子産物に対して向けられる免疫毒素に関する最近の研究において、免疫毒素は、細胞あたりHER2/neu部位約1×106個未満を発現する腫瘍細胞に対して細胞障害性ではなかった。低レベル受容体を有する細胞に感受性がないことはおそらく、細胞が毒素をほとんどインターナライズしないか、またはリボソーム区画への毒素の移動を認めない区画へそれを輸送するためである。
【0091】
VEGF121/rGel融合体は、KDRおよびFLT-1受容体の双方に結合することができるが、KDRを発現する細胞のみが構築物をインターナライズして、それによって細胞質区画に毒素成分を輸送することができた。内皮細胞上の増殖シグナルに関与するのは、血管内皮増殖因子とKDR受容体との相互作用であって、FLT-1受容体との相互作用ではないことが示唆されている。他の研究は、KDR受容体がVEGF-Aの血管透過性作用の媒介に主に関与していることを示唆している。FLT-1受容体は、KDR受容体のシグナル伝達を調節して、血管内皮増殖因子に対する単球の反応に影響を及ぼす可能性があるが、血管新生におけるその役割は十分に定義されていない。
【0092】
FLT-1の存在は、たとえ高レベルであっても、VEGF121/rGel融合体毒素の細胞障害性を媒介しないように思われる。VEGFはFLT-1受容体に結合するが、現在の研究は、リガンド結合の結果として受容体燐酸化を示すことができていない。受容体の燐酸化はKDRのシグナル伝達および内部移行にとって必要である可能性があることが示唆されている。そうであるならば、融合タンパク質が、毒素がそこからサイトゾルに逃れることができる細胞内区画に輸送されるためには、FLT-1に結合した後、受容体-融合体-毒素複合体が効率よくインターナライズされる必要はない。血管内皮増殖因子とKDR/Flk-1との相互作用を遮断するがFLT-1との相互作用は遮断しないモノクローナル抗体を用いて調べた血管内皮増殖因子の生物作用に及ぼすFLT-1およびKDR受容体の相対的関与から、KDR/Flk-1が腫瘍における血管内皮増殖因子の血管透過性誘導および血管新生作用を決定する主要な受容体であることが示されている。
【0093】
もう一つの重要な知見は、血管内皮細胞に対するVEGF121/rGel構築物の細胞障害作用がアポトーシスメカニズムを伴わない点であった。これは、少なくとも部分的にカスパーゼ活性化によって媒介されるアポトーシス作用の生成を示すリシンA鎖(RTA)およびシュードモナス(pseudomonas)外毒素(PE)のような、他の毒素に関する研究とは非常に対照的である。PE毒素はカスパーゼ依存的およびタンパク質合成阻害メカニズムの双方を通して細胞障害作用を発揮する可能性があることが示唆されている。リシンA鎖とrGelとの配列相同性およびその作用機序の類似性が知られているにもかかわらず、これらの二つの毒素はその前アポトーシス作用が異なるように思われる。リシンA鎖とrGel毒素のあいだのアポトーシス作用に関して認められた差に関して一つの可能性がある説明は、調べた細胞タイプに存在しうる。rGelに関する現在の試験において標的とされる細胞は、非形質転換内皮細胞であるが、リシンA鎖の研究における細胞は腫瘍細胞である。
【0094】
VEGF121/rGel融合体毒素に関する曝露期間の試験から、72時間後に細胞障害作用を発揮するためには、標的細胞に対する1時間もの少ない曝露が必要であるに過ぎないことが示されている。しかし、48時間まで持続的に曝露すると、細胞障害作用をほぼ10倍改善することが示された。薬物動態研究がこの物質の比較的短い血漿半減期を証明することができれば、これは薬物の血中濃度を少なくとも48時間治療濃度に維持することによって得ることができるであろうことを示唆する可能性がある。これは頻繁な間欠投与または持続的注入によって得ることができるであろうが、前臨床および臨床投与戦略の開発において重要である可能性がある。
【0095】
黒色腫およびヒト前立腺癌異種移植片の双方に対するVEGF121/rGel融合構築物の抗腫瘍効果は、その程度が強く、持続的であった。A-375MおよびPC-3培養細胞は、黒色腫細胞にKDRが存在することが報告されているにもかかわらず(PC-3細胞には存在しない)、インビトロで融合構築物に対して抵抗性であった。したがって、インビボで認められた抗腫瘍効果は、腫瘍細胞自身に対するVEGF121/rGelの直接の細胞障害作用によって引き起こされたのではないように思われる。抗腫瘍効果は、腫瘍血管に対する特異的損傷を通して腫瘍細胞に対して間接的に発揮されるように思われる。VEGF121融合体毒素は、静脈内注射後、腫瘍血管に局在した。腫瘍血管の血管損傷および血栓は、PC-3マウスにVEGF121/rGelを投与した48時間以内に認められ、これは腫瘍血管内皮に発揮される構築物の一次作用と一致した。
【0096】
VEGF121/rGelはまた、腫瘍の転移に対して印象的な阻害作用を有する。VEGF121/rGel構築物を、MDA-MB-231ヒト乳腺腫瘍細胞を予め注射した(静脈内)マウスに投与すると、肺において認められる腫瘍コロニー数、その大きさ、およびその血管密度が劇的に減少した。さらに、肺転移病巣内の分裂乳腺腫瘍細胞数は、平均で60%減少することが判明した。処置マウスの肺転移に存在する血管数の減少の他に、存在する少数の血管もVEGFR-2の発現が大きく減少した。したがって、VEGF121/rGelは、肺において認められる乳腺腫瘍転移病巣の増殖および発達に対して強く長期的な影響を示した。
【0097】
VEGF121/rGel構築物の作用に関する顕著な知見は、この融合体毒素がVEGFに関するKDR受容体を過剰発現する細胞に対して特に細胞障害性である点である。しかし、上記の転移試験のために用いられたヒト乳癌MDA-MB-231細胞は、この受容体を発現せず、したがってこの物質によって直接影響を受けなかった。このように、MDA-MB-231転移に関して認められたVEGF121/rGelの抗腫瘍効果は、単に腫瘍血管を標的とした結果であるように思われる。
【0098】
血管新生は、乳腺腫瘍の増殖および転移の広がりに関する特に重要な特徴である。増殖因子VEGF-Aおよび受容体KDRはいずれも転移性の高い乳腺に関係している。VEGF121/rGelの投与によって、肺に存在する転移巣におけるKi-67標識(分裂)細胞数の3倍減少が起こったことに注目することは重要である(図19)。臨床試験から、腫瘍細胞の分裂は転移性乳癌における無病生存に関する重要な予後的マーカーである可能性があること、しかしKi-67標識指数、腫瘍微小血管密度(MVD)、および血管新生は独立して調節されるプロセス(Honkoopら、1998;Vartanian and Weidner、1994)であるように思われることが示唆された。これは、血管標的物質によって産生される腫瘍標識指数の重要な減少に関する最初の報告である。
【0099】
VEGF121/rGel融合構築物単独の血管削摩作用は肺転移を部分的に根絶することができた。肺組織内の小さい無血管の転移性病巣の発達が認められたが、より大きい肺転移の増殖は、VEGF121/rGel融合体毒素による処置によって完全に阻害された。VEGF121/rGel融合体構築物と、腫瘍細胞それ自身に直接損傷を与える化学療法剤または放射線療法剤との併用は、より大きい治療効果を提供する可能性があると考えられる。いくつかの血管ターゲティング物質と化学療法剤との併用に関する研究から、マウスにおける実験的腫瘍に対するこの併用治療の明確なインビボ抗腫瘍長所が既に証明されている(Siemannら、2002)。Pedleyら(2002)による研究はまた、血管のターゲティングと放射免疫療法との併用も強力な抗腫瘍併用となる可能性があることを示唆した。最後に、温熱療法および放射線療法を血管ターゲティング物質と併用する研究により、マウスにおける乳癌腫瘍に対する活性の増強が示されている(Murataら、2001)。
【0100】
実施例24
VEGF121/rGelによる破骨前駆細胞のターゲティング
本実施例は、VEGF121/rGelが、マウスにおける骨微小環境に留置された前立腺癌細胞PC-3の増殖を強く阻害することを示す。腫瘍増殖の阻害は、単にVEGF121/rGelによる腫瘍内皮のターゲティングによるのではなくて、破骨前駆細胞のターゲティングによる可能性がある。VEGF121/rGelは、骨微小環境において腫瘍血管を標的とするのみならず、破骨細胞の成熟を防止すると仮説されている。
【0101】
前立腺癌骨転移モデルにおいて、VEGF121/rGelは、その大腿骨にPC-3前立腺癌細胞を移植したマウスにおいて有意な強い生存長所を付与する(図21)。対照マウスは全て、大きい骨溶解病変または骨溶解のために67日までに屠殺された。対照的に、VEGF121/rGel処置マウスの50%が骨溶解の兆候なく140日まで生存した。
【0102】
骨微小環境におけるVEGF121/rGelの影響をさらに調べるために、VEGF121/rGelの作用を、破骨前駆細胞であるマウス骨髄細胞株Raw 264.7において調べた。Raw 264.7細胞をVEGF121/rGelによって処置すると、RANKL-媒介破骨細胞形成が阻害された(図22)。認められた作用は単独ではVEGF121またはゲロニンのいずれによっても媒介されず、複合融合タンパク質に対して独自の特徴であった。上記のデータは、内皮細胞に対するVEGF121/rGelの細胞障害性は、Flk-1/KDRによって媒介されるのであって、Flt-1によって媒介されないことを示していることから、Flk-1/KDRは、RANKL媒介破骨細胞形成において重要であるがまだわかっていない役割を有するという仮説がなされている。同様に、VEGF受容体の生物学は内皮細胞と比較して破骨細胞では異なり、VEGF121/rGelはFlt-1を通して破骨細胞形成を阻害することができる可能性がある。
【0103】
このように、VEGF121/rGelは、インビボでの破骨前駆細胞と同様に、腫瘍の新生血管を標的とする可能性がある。このことは、VEGF121/rGelが破骨細胞形成阻害の結果として、骨における前立腺癌骨芽細胞病変を阻害する可能性があることから重要である。
【0104】
実施例25
破骨細胞分化およびインビボ活性化に及ぼすVEGF121/rGelの作用を決定する
破骨前駆細胞の分化に及ぼすVEGF121/rGelの作用は、二つのインビトロモデル系において調べることができる:(1)RANKLによる刺激によって成熟破骨細胞へと分化するマウス破骨前駆細胞Raw 264.7、および(2)破骨細胞に分化させるために、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)の後にRANKLによる刺激を必要とする骨髄由来マクロファージ。双方のモデル系において、細胞を、RANKL(または骨髄由来マクロファージの場合にはMCSF)と同時に、VEGF121/rGel、rGel、VEGF121、または溶媒によって処置することができる。細胞を4〜5日間分化させた後、酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRAP)に関する染色を行う。各タンパク質の用量依存的な作用は、ウェルあたりのTRAP-陽性破骨細胞を計数することによって定量することができる。VEGF121/rGelの特異性は、VEGF121の用量を増加させて細胞を最初に1時間処置した後、VEGF121/rGelまたはrGelを加えて、破骨細胞形成に関してモニターすることによってさらに調べることができる。
【0105】
破骨細胞形成に及ぼすVEGF121/rGelの作用が機能的に重要であるか否かを調べるために、骨吸収に及ぼすVEGF121/rGelの作用を、細胞を象牙質上に播種したことを除き、先に概要したような実験条件を用いて調べることができる。破骨細胞の分化を開始した6日後、象牙質を骨吸収の特徴である穴に関して調べる。破骨細胞はTRAP染色によって同定することができる。骨吸収性の破骨細胞の存在はまた、インビボでも観察することができる。相対的吸収領域は、反射光学顕微鏡によって定量することができる。
【0106】
RANKL媒介破骨細胞形成の阻害は、標的化VEGF121受容体によって細胞に入るゲロニンの細胞障害性が原因であるという仮説が立てられる。この仮説は、既に記述されているようにクリスタルバイオレット染色を用いて、VEGF121/rGelおよびrGelによるRaw 264.7および骨髄由来マクロファージに関する細胞障害性アッセイ法を行って、各薬物に関するIC50を決定することによって調べることができる。VEGF121/rGelのIC50がrGel単独より低いことは、VEGF121がこれらの細胞の特異的ターゲティングにおいて重要であることを確認するであろう。Raw 264.7細胞に対するVEGF121/rGelの細胞障害作用が認められる場合、細胞死のメカニズムをTUNELアッセイ法によって、およびカスパーゼ-3切断、PARP切断と共にチトクロームc、Bax、Bcl、およびBcl-xlレベルを調べることによって調べることができる。
【0107】
実施例26
ヒトグランザイムB遺伝子のクローニングとグランザイムB/VEGF121融合遺伝子の構築
以下の実施例は、腫瘍の新生血管に特異的に輸送されるようにデザインされた、VEGF121と前アポトーシス酵素であるグランザイムB(GrB)との融合構築物について記述する。ヒトグランザイムB遺伝子を、ヒト皮膚T-細胞リンパ腫(HuT-78)細胞からクローニングした後、PCRに基づく構築法を用いて短い柔軟な結合鎖によってVEGF121に融合した。融合タンパク質は、大腸菌において発現され、ニッケル-NTA金属アフィニティクロマトグラフィーによって精製した。融合タンパク質GrB/VEGF121の特徴を調べて、生物活性およびメカニズムを決定した。
【0108】
HuT-78細胞からのRNAを単離して、標的未成熟ヒトグランザイムB cDNAを以下のプライマー:

を用いて逆転写PCRによって増幅した。シグナル配列を含むヒトグランザイムB配列は未成熟グランザイムB(〜800 bp)を表す(図23)。次に、PCR産物を、gbTAと表されるPCR2.1 TAベクターにクローニングした。gbTAをINVaFコンピテント細胞に形質転換して、陽性クローンをPCRによってスクリーニングした。陽性クローンからのDNAを単離してシークエンシングした。正確なクローンをgbTA-2と表した。
【0109】
細胞障害細胞において、活性なグランザイムBは、二つの残基(Gly-Glu)プロペプチドを除去してILe21を露出するジペプチジルペプチダーゼI媒介タンパク質分解によってチモーゲンから生成された。グランザイムBのアミノ末端Ile-Ile-Gly-Gly配列は、成熟した活性なグランザイムBにとって必要である。
【0110】
GrB/VEGF121融合体遺伝子を構築するために、グランザイムBのコード配列をIle21からPCRによって増幅し、シグナル配列およびGly-Gluドメインを有効に除去した。同時に、EKの切断部位(DDDDK、配列番号:7)をIle21の上流に隣接して挿入した。成熟グランザイムBを、柔軟な結合鎖(G4S)を通して組換え型VEGF121担体に結合させた。融合遺伝子断片を、pET32a(+)のXbaIおよびXhoI部位に導入して、発現ベクターpET32GrB/VEGF121を形成した(図24)。このベクターは、高レベル発現のためのT7プロモーターの後に、Trxタグ、Hisタグ、トロンビン切断部位、およびタンパク質精製タグを最終的に除去するためのEK切断部位をを含む。タンパク質タグがrEK消化によって除去されると、成熟グランザイムBの最初の残基(イソロイシン)が露出され、それによってGrB/VEGF121構築物のグランザイムB部分を活性化する。
【0111】
GrB/VEGF121融合遺伝子を、オーバーラップPCR法によって構築した。簡単に説明すると、以下のプライマー:

を用いてグランザイムBコード配列をgbTA-2から増幅した。これらは成熟グランザイムBのシグナル配列を欠失させるように、アミノ末端にEK切断部位を挿入するように、およびVEGF121遺伝子に対するリンクとして作用するためにカルボキシル末端にG4Sリンカー配列を加えるように設計された。VEGF121配列は、以下のプライマー:

を用いてプラスミドpET22-VEGF121(テキサス南西部メディカルセンター、ダラス、テキサス州のPhilip Thorpe博士から)から増幅した。融合遺伝子をグランザイムBのアミノ末端でEK部位と共にpET32a(+)ベクターにクローニングするために、pET32a(+)からの断片を以下のプライマー:

を用いて増幅した。プライマーは、融合遺伝子のアミノ末端と重なり合うカルボキシル末端でEK部位を有する。オーバーラップPCRを用いて、融合遺伝子(EK-GrB/VEGF121)を、プライマーとしてT7プロモーターおよびCxhoIタグを用いて構築した。増幅された断片を精製して、XbaIおよびXhoIによって消化して、pET32GrB/VEGF121と呼ばれるpET32a(+)ベクターにクローニングした。正確なクローンを、さらなる誘導および発現のためにAD494(DE3)pLysS-コンピテント細胞への形質転換に関して選択した。
【0112】
実施例27
グランザイムB/VEGF121融合タンパク質の発現および精製
構築されたプラスミドによって形質転換された細菌コロニーを,Luriaブロス培地(400 mg/mlカルベニシリン、70 mg/mlクロラムフェニコール、および15 mg/mlカナマイシンを含む)において240 rpmの振とうインキュベータにおいて37℃で一晩増殖させた。次に、培養物を新鮮なLuriaブロス+抗生物質(200 mg/mlアンピシリン、70 mg/mlクロラムフェニコール、および15 mg/mlカナマイシン)において1:100希釈して、A600nm=0.6となるまで37℃で増殖させた;その後、イソプロピル-1-チオ-b-D-ガラクトピラノシドを最終濃度100 mMとなるように加えて、細胞を37℃で2時間インキュベートして、融合タンパク質の発現を誘導した。細胞を回収して10 mMトリス(pH 8.0)に浮遊させて、その後精製するために-80℃で凍結保存した。
【0113】
融解して浮遊させた細胞を、ライソザイムを最終濃度100 mg/mlとなるように攪拌しながら4℃で30分間加えた後、超音波処理を行うことによって溶解した。抽出物を186,000×gで1時間遠心した。可溶性タンパク質のみを含む上清を40 mMトリス、300 mM NaCl、および5 mMイミダゾール(pH 8.0)に調節して、同じ緩衝液によって平衡にしたニッケル-NTAアガロース樹脂に適用した。ニッケル-NTAアガロースを300 mM NaClおよび20 mMイミダゾールによって洗浄して、結合したタンパク質を500 mM NaClおよび500 mMイミダゾールによって溶出した。吸光度(280 nm)およびSDS-PAGE分析を行って、ポリヒスチジンタグタンパク質の有無を決定し、これをPro-GrB/VEGF121と表した。溶出したPro-GrB/VEGF121を20 mMトリス塩酸(pH 7.4)および150 mM NaClに対して透析した。製造元の説明書に従って、ウシrEKを加えることによってPro-GrB/VEGF121のGrB部分を活性化し、ポリヒスチジンタグを除去した(タンパク質50 mgを切断するためにrEK 1単位を室温で16時間インキュベートした)。rEKは、EK捕獲アガロースによって除去した。タンパク質溶液をQ-セファロースを含むカラムに通過させて、非rEK消化構築物および非特異的タンパク質を除去した。産物をSDS-PAGEによって分析して、純度を決定し、Bio-Radタンパク質アッセイ法を用いてタンパク質濃度を決定した。次に、試料を少量に分けて、4℃で保存した。
【0114】
培養物1 Lは典型的に最終精製Pro-GrB/VEGF121産物〜100 mgを生成した。SDS-PAGE分析によって、最終精製Pro-GrB/VEGF121融合構築物が、還元条件で予想分子量38 kDaのバンドとして移動することが示された(図25A)。切断された融合タンパク質の特異性は、VEGF121マウスモノクローナル抗体またはGrBマウスモノクローナル抗体のいずれかを用いるウェスタンブロットによって確認した(図25B)。
【0115】
実施例28
グランザイムB/VEGF121融合タンパク質の結合活性
GrB/VEGF121の結合活性をELISAによって決定した。PAE/FLK-1、PAE/FLT-1、ヒト黒色腫A375Mまたはヒト乳癌SKBR3-HP細胞50,000個/ウェルをコーティングした96ウェルプレートを5%BSAによってブロックした後、様々な濃度の精製GrB/VEGF121によって処置した。洗浄後、プレートをGrB抗体またはVEGF121抗体と共にインキュベートした後、HRP-ヤギ抗マウスIgGと共にインキュベートした。次に、1 ml/ml 30%H2O2と共に基質2,2'-アジノ-ビス-3-エチルベンズチアゾリン-6-硫酸(ABTS)溶液をウェルに加えた。405 nmでの吸光度を30分後に測定した。
【0116】
GrB/VEGF121はPAE/FLK-1細胞に特異的に結合した。しかし、タンパク質は、抗GrBマウスモノクローナル抗体(図26A)または抗VEGF121マウスモノクローナル抗体(図26B)のいずれかによって検出すると、PAE/FLT-1細胞、黒色腫A375Mまたはヒト乳癌SKBR3-HP細胞には結合しなかった。
【0117】
実施例29
免疫蛍光顕微鏡によって評価したグランザイムB/VEGF121融合タンパク質の内部移行
細胞を16ウェルチャンバースライドガラス(Nunc、Nalge Nunc International、ネイパービル、イリノイ州)に1×104個/ウェルで播種して、5%CO2大気中で37℃で一晩インキュベートした。細胞を100 nM GrB/VEGF121によって4時間処置した後PBSによって軽く洗浄した。グリシン緩衝液(500 mM NaCl、0.1 Mグリシン[pH 2.5])と共にインキュベートすることによって細胞表面を剥離して、0.5 Mトリス(pH 7.4)によって2分間中和した後PBSによって洗浄した。細胞を3.7%ホルムアルデヒドにおいて室温で15分間固定して、0.2%トライトンX-100を含むPBSにおいて10分間透明化して、PBSによって3回洗浄した。試料を3%BSAと共に室温で1時間インキュベートして、非特異的結合部位をブロックしてから抗GrBマウスモノクローナル抗体(1:100希釈)と共に室温で1時間インキュベートした後、FITC結合抗マウスIgG(1:100希釈)と共に室温で1時間インキュベートした。チャンバースライドガラスの壁およびガスケットを注意深く除去した。空気乾燥させた後、スライドガラスをNikon Eclipse TS-100蛍光顕微鏡に載せて分析した。顕微鏡に付属のカメラによって写真を撮影した。
【0118】
免疫蛍光染色から、GrB/VEGF121による4時間の処置後、GrB/VEGF121のGrB部分がPAE/FLK-1のサイトゾルに輸送されたが、PAE/FLT-1細胞のサイトゾルには輸送されなかったことが示された(図27)。24および48時間処置したPAE/FLK-1細胞の分析では、4時間で認められた場合に対して免疫蛍光染色のさらなる増加を示さなかった。
【0119】
実施例30
グランザイムB/VEGF121の融合タンパク質の細胞障害性
GrB/VEGF121の細胞障害性を、対数期PAE/FLK-1およびPAE/FLT-1培養細胞に対して評価した。10%ウシ胎児血清を含むハムF-12培地において、PAE細胞を96ウェルプレートに2.5×103個/ウェルの密度で播種して、5%CO2において37℃で24時間接着させた。24時間後、培地を、異なる濃度のGrB/VEGF121またはVEGF121/rGelを含む培地に交換した。72時間後、培養細胞の増殖に及ぼすGrB/VEGF121またはVEGF121/rGelの影響を、2,3-ビス[2-メトキシ-4-ニトロ-5-スルホフェニル]-2H-テトラゾリウム-5-カルボキサニリド分子内錯塩(XTT)を用いて決定した。プレートをマイクロプレートELISAリーダーにおいて540 nmで読み取った。
【0120】
IC50作用は、PAE/FLK-1細胞において〜10 nMの濃度で認められた。しかし、PAE/FLT-1細胞では200 nMまでの用量で細胞障害作用を認めなかった(図28A)。比較すると、もう一つの融合体毒素であるVEGF121/rGelの細胞障害作用は、培養標的細胞に対して比較的大きく(モル濃度で)、〜1 nMのIC50でPAE/FLK-1細胞に対して特異的細胞障害性を示した。
【0121】
PAE細胞の増殖に及ぼすGrB/VEGF121の増殖阻害作用を、クローン原性アッセイ法によって評価した。簡単に説明すると、PAE細胞5×105個/mlを、異なる濃度のGrB/VEGF121または100 nMの無関係な融合タンパク質GrB/scFvMELと共に37℃、5%CO2において72時間インキュベートした。次に、細胞をPBSによって洗浄して、トリプシン処理を行い、血球計算盤によって計数して連続希釈した。連続細胞浮遊液を1試料あたり3個ずつ播種して、6ウェルプレートにおいて5〜7日間培養した。細胞をクリスタルバイオレットによって染色して細胞>20個からなるコロニーを倒立光学顕微鏡を用いて計数した。増殖阻害は、無処置対照試料と比較した処置試料における細胞増殖/コロニー数の百分率として定義した。
【0122】
クローン原性アッセイ法(図28B)において、コロニーの増殖を50%抑制するGrB/VEGF121の濃度(IC50)は、PAE/FLK-細胞において〜20 nMであると決定された。対照的に、GrB/VEGF121は100 nMまでの濃度で、PAE/FLT-1細胞のコロニーの増殖に対して作用を示さなかった。同様に、ヒト黒色腫細胞を標的とする無関係な融合タンパク質GrB/scFvMELは、濃度100 nMでPAE細胞のコロニー増殖に対して作用を示さなかった。
【0123】
実施例31
インサイチュー細胞死検出(TUNELアッセイ法)
アポトーシスの際のゲノムDNAの切断は、二本鎖の低分子量DNA断片と共に高分子量DNAにおいて一本鎖切断(ニック)を生じる可能性がある。DNA鎖の切断は、酵素反応において改変ヌクレオチドによって遊離の3'ヒドロキシル末端を標識することによって同定することができる。細胞(1×104個/ウェル)をIC50濃度のGrB/VEGF121によって異なる期間(24および48時間)処置して、PBSによって簡単に洗浄した。細胞を3.7%ホルムアルデヒドによって室温で20分間固定して、PBSによってすすぎ、0.1%トライトンX-100、0.2%クエン酸ナトリウムによって氷中で2分間透明化して、PBSによって2回洗浄した。細胞をTUNEL反応混合物と共に37℃で60分インキュベートした後、Converter-APと共に37℃で30分間インキュベートして、最終的にFast Red基質溶液によって室温で10分間処置した。最終的な洗浄段階の後、スライドガラスを光学顕微鏡に載せて、アポトーシス細胞の核染色に関して倍率400倍で分析した。
【0124】
TUNELアッセイ法は、24時間(75%)および48時間(85%)でGrB/VEGF121処置PAE/FLK-1細胞に対して陽性結果を示したが、GrB/VEGF121処置PAE/FLT-1細胞には作用を示さず(10%)(図29)、GrB/VEGF121がPAE/FLK-1細胞においてアポトーシスを誘導することを示した。
【0125】
実施例32
チトクロームc放出アッセイ法およびBax転移
PAE細胞(5×107個)を濃度0.1および20 nMのGrB/VEGF121によって24時間処置した。細胞を氷冷PBS 10 mlによって洗浄した後、細胞を、DTTおよびプロテアーゼ阻害剤を含む1×サイトゾル抽出緩衝液ミクス0.5 mlに浮遊させて、氷中で10分間インキュベートした。細胞を氷冷ガラスホモジナイザーにおいてホモジナイズした。ホモジネートを700×gで4℃で10分間遠心した。上清を新しい1.5 ml試験管に移して、10,000×gで4℃で30分間遠心した。上清を回収して、サイトゾル分画とした。沈殿物を、DTTおよびプロテアーゼ阻害剤を含むミトコンドリア抽出緩衝液ミクス0.1 mlに浮遊させて、10秒間攪拌し、ミトコンドリア分画のために残しておいた。タンパク質濃度は、Bio-Rad Bradfordタンパク質アッセイ法を用いて決定した。無処置および処置細胞から単離した各サイトゾルおよびミトコンドリア分画からの少量30 mgを15%SDS-PAGEにローディングした。標準的なウェスタンブロット技法を行って、ブロットをマウス抗チトクロームc抗体(1 mg/ml)またはマウス抗Bax抗体(1 mg/ml)によってプロービングした。
【0126】
ウェスタンブロット試験から、PAE/FLK-1細胞を20 nM GrB/VEGF121によって処置すると、チトクロームcがミトコンドリアからサイトゾルに放出されたが、この作用はPAE/FLT-1細胞では認められなかったことが示された(図30)。Baxは、無処置PAE細胞のサイトゾルおよびミトコンドリアの双方に通常存在することが判明した。しかし、PAE/FLK-1細胞を20 nM GrB/VEGF121によって処置すると、Baxレベルはサイトゾルでは減少し、ミトコンドリアでは増加した。この作用はPAE/FLT-1細胞では認められなかった(図30)。
【0127】
実施例33
グランザイムB/VEGF121はDNAラダリングを誘導する
PAE細胞を6ウェルプレート(2×105個/ウェル)に播種した。24時間後、細胞を、20 nM GrB/VEGF121を含む新鮮な培養培地(1.5 ml/ウェル)に交換した。37℃で24時間インキュベートした後、DNAを抽出してDNAラダーキット(Roche)によって精製し、1.5%アガロースゲルにおいて分画した。
【0128】
PAE/FLK-1細胞においてGrB/VEGF121の24時間の暴露後に、アポトーシスを示すDNAラダリングが認められた。予測されるように、融合構築物による処置後にPAE/FLT-1細胞においてDNAラダリングは検出されなかった(図31)。
【0129】
実施例34
グランザイムB/VEGF121はブタ大動脈内皮細胞上でカスパーゼを活性化する
PAE細胞をGrB/VEGF121によって処置して、総細胞溶解物を12%SDS-PAGEにローディングして標準的なウェスタンブロッティングを行った。GrB/VEGF121による処置によって、PAE/FLK-1細胞においてカスパーゼ-8、カスパーゼ-3、およびPARPが切断されたが、PAE/FLT-1細胞では切断されなかった(図32)。これらのデータは、GrB/VEGF121構築物がアポトーシス経路に関与するカスパーゼを活性化したことを示している。
【0130】
以下の参考文献を本明細書において引用した。

【0131】
本明細書において言及した全ての特許または出版物は、本発明が属する当業者のレベルを示している。さらに、これらの特許および出版物は、それぞれの個々の出版物が参照により特異的および個々に示される程度と同じ程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】VEGF121/rGelのデザインおよび構築を示す。細胞障害性物質(ゲロニン)に対するターゲティング分子(VEGF121)の構築物は、二つの方向で発現され、すなわちN末端にVEGF121またはゲロニンのいずれかが存在する。G4S結合鎖を用いてVEGF121とゲロニンとを融合させて、立体障害を減少させた。
【図2】無細胞系においてVEGF121/rGelおよびrGelの翻訳阻害能を決定するために用いられるウサギ網赤血球アッセイ法を示す。VEGF121および組換え型ゲロニンは、毒素成分の活性を減少させない。
【図3】VEGF121/rGelが受容体に結合することを示すELISAを示す。VEGF121/rGel、VEGF121、およびrGelを、NeutrAvidinコーティングプレートに結合させたビオチン化マウスflk-1受容体と共にインキュベートした。結合は、抗ゲロニンおよび抗VEGF抗体を用いて評価した。
【図4】flk-1受容体に対する結合がVEGF121/rGelに対して特異的であることを示す。VEGF121/rGelまたはVEGF121をflk-1受容体と共にインキュベートした。VEGF121/rGelの結合はVEGF121と競合し、ウサギ抗ゲロニン抗体を検出のために用いた。VEGF121はflk-1に対するVEGF121/rGelの結合を特異的に減少させた。VEGF121は、抗ゲロニン抗体によって検出されなかった(データは示していない)。
【図5】KDR発現ブタ大動脈内皮細胞(PAE)に対するVEGF121/rGelの細胞障害性を示す。FLT-1またはKDR受容体のいずれかをトランスフェクトした細胞を、様々な用量のVEGF121/rGelまたはrGelによって72時間処置した。FLT-1受容体を発現する細胞は、VEGF121/rGelおよびrGelに対して等しく感受性が低かった(IC50/300 nM)。対照的に、KDRを発現する細胞は、rGelに対する場合より融合構築物に対して約200倍感受性が高かった(IC50は0.5 nM)。
【図6】KDRおよびFLT-1の発現を示す。図6A:PAE/KDRおよびPAE/FLT-1の全細胞溶解物(30 μg)をSDS-PAGEゲルにおいて泳動させて、PVDFメンブレンに転写して、適当な抗体を用いてイムノブロットを行った。そのそれぞれの細胞株において双方の受容体が発現されていることを確認した。図6B:放射標識VEGF121/rGelが受容体特異的に結合することを、これらの受容体を発現する細胞において証明する。結合は、非標識VEGF121/rGelによって減少したが、非標識ゲロニンによって減少しなかった。
【図7】PAE/KDRおよびPAE/FLT-1細胞へのVEGF121/rGelの内部移行を示す。PAE/KDR細胞を表記の時点で4 μg/ml VEGF121/rGelと共にインキュベートした。次に、細胞を抗ゲロニンポリクローナル抗体(1:200)の後にFITC結合二次抗体(1:80)と共にインキュベートした。核をヨウ化プロピジウムによって染色した。VEGF121/rGelは処置1時間以内にPAE/KDR細胞に入った。しかし、PAE/FLT-1細胞は、VEGF121/rGelと共に24時間インキュベートした後でもVEGF121/rGelをインターナライズしなかった。
【図8】PAE/KDR細胞の細胞障害性に及ぼすVEGF121/rGelの曝露時間の影響を示す。VEGF121/rGelをPAE/KDR細胞と共に様々な期間インキュベートした。VEGF121/rGelは、1時間の曝露時間によってもPAE/KDR細胞に対する細胞障害性を保持したが、この融合体毒素の細胞障害性は48時間の曝露によって顕著に増強された。
【図9】PAE/KDR細胞に対するVEGF121/rGelの細胞障害性によってアポトーシスは起こらないことを示す。PAE/KDR細胞を一晩増殖させた。1 nM VEGF121/rGel(IC50の2倍)を加えて、24、48、および72時間インキュベートした。細胞をTUNELによって分析した。陽性対照細胞を1 mg/ml DNアーゼと共に37℃で10分間インキュベートした。
【図10】VEGF121/rGelによるPAE/KDR細胞の処置によってPARP切断は起こらないことを示す。PAE/KDR細胞を表記の時間VEGF121/rGelまたはVEGF121によって刺激した。細胞を洗浄して溶解し、抗PARP抗体を用いるウェスタン分析によって細胞溶解物を分析した。PARP切断を認めなかった。
【図11】VEGF121/rGelによるマウスにおけるヒト黒色腫の増殖阻害を示す。A-375M腫瘍を有するヌードマウスの群に、生理食塩液、rGel、または融合構築物を2〜3日毎に11日間処置した。rGelを投与しても、腫瘍の増殖に影響を及ぼさなかった。総用量17 mg/kgまたは25 mg/kgのVEGF121/rGelによる処置は、腫瘍の増殖を有意に抑制した。しかし、用量レベル25 mg/kgの処置によって19日までに死亡を認めた。17 mg/kgを投与した動物はいずれも肉眼的な毒性の証拠を示さなかった。
【図12】VEGF/rGelによるマウスにおけるヒト前立腺癌の増殖の阻害を示す。PC-3腫瘍を有するヌードマウスの群に、生理食塩液、rGel、またはVEGF121/rGel融合構築物(総用量20 mg/kg)を2〜3日毎に11日間処置した。rGel(10 mg/kg)を投与しても、腫瘍の増殖に影響を及ぼさなかった。対照的に、融合構築物による処置によって、26日間で腫瘍の増殖が完全に阻害され、生理食塩液処置またはrGel処置対照と比較すると腫瘍体積は7倍減少した。
【図13】PC3腫瘍の腫瘍血管におけるVEGF/rGelの特異的局在を示す。ヒト前立腺PC-3腫瘍を有するヌードマウスに、VEGF121/rGelまたはrGel(2.5 mg/kg)を静脈内注射した。投与の30分後、組織を採取して瞬間凍結した。マウス血管を検出するために、切片を免疫蛍光試薬(MECA-32、赤色)および抗rGel(緑色)によって染色した。両方の試薬によって染色された血管は黄色に見える。VEGF/rGelは腫瘍血管に局在したが、rGelはそうではなかった。腎臓(糸球体)以外の全ての正常臓器における血管は、VEGF/rGelによって染色されなかった。
【図14】VEGF/rGelによる腫瘍血管の破壊および血栓形成を示す。ヒト前立腺PC-3腫瘍を有するヌードマウスに、VEGF121/rGelの一つの用量(2.5 mg/kg)を静脈内投与によって処置した。投与の48時間後、組織を瞬間凍結して切片を作製し、ヘマトキシリン-エオジンによって染色した。この代表的な画像に示されるように、融合構築物を処置したマウスからの腫瘍の血管内皮は損傷していた。より大きい腫瘍血管には凝固を認めて、赤血球が腫瘍の間質に認められ、このことは血管の完全性が失われていることを示した。対照的に、処置マウスの腎臓を含む如何なる正常臓器にも組織学的損傷を認めなかった。
【図15】VEGF121/rGelは、MDA-MB-231細胞に対して細胞障害性でないことを示す。対数増殖期のMDA-MB-231細胞を、様々な用量のVEGF121/rGelまたはrGelによって72時間処置した。双方の物質の細胞障害作用は類似であり、これらの細胞に及ぼす遊離の毒素と比較して、融合構築物には特異的細胞障害性がないことを示している(図15B)。ウェスタン分析により、R2受容体をトランスフェクトした内皮細胞(PAE/KDR細胞)にはVEGFR-2が存在するが、FLT-1受容体を発現する細胞(PAE/FLT-1、陰性対照)には存在しないことが示された。MDA-MB-231細胞は、検出可能な量のVEGFR-2を発現しなかった(図15A)。
【図16】VEGF121/rGelがMDA-MB-231腫瘍の血管に局在することを示す。正所に存在するMDA-MB-231腫瘍を有するマウスにVEGF121/rGelの一用量(尾静脈から静脈内注射)を投与した。4時間後、マウスを屠殺して、腫瘍を摘出して固定した。Meca 32抗体(赤色)を用いて組織切片を血管に関して染色し、抗ゲロニン抗体(緑色)を用いて切片を対比染色した。染色が同時局在(黄色)すれば、VEGF121/rGel融合構築物が血管に特異的に存在するが、腫瘍細胞には存在しないことを示している。
【図17】VEGF121/rGelが、肺における大きい転移コロニーの数を減少させることを示す。腫瘍コロニーの大きさを、ヒトHLA抗原を特異的に認識する6w/32抗体によって染色したスライドガラスにおいて分析した。抗体は、ヒト腫瘍細胞のコロニーの輪郭を示し、転移性病変とマウス肺実質との境界を定める。VEGF121/rGelと対照群との最大の大きさの差は、直径50 μm未満または1000 μmより大きいコロニーの群において認められた。VEGF121/rGel処置マウスでは、全病巣の40%より多い病巣が極めて小さかった(<50 μm)のに対し、対照群では18%であった。対照マウスは、極めて大きいコロニー(>1000 μm)を約8%有したのに対し、VEGF121/rGel処置マウスはこの大きさのコロニーを有しなかった。
【図18】VEGF121/rGelがMDA-MB-231肺転移の血管形成を阻害することを示す。VEGF121/rGelおよびrGel処置マウスに由来する肺をMECA 32抗体によって染色して、転移巣における1 mm2あたりの血管数を決定した(図18A)。VEGF121/rGel処置マウスの肺転移における1 mm2あたりの平均血管数は、rGel処置マウスの数と比較して約50%減少した。図18Bは、rGel(左)およびVEGF121/rGel融合タンパク質(右)を処置したマウスにおいて、同等の大きさの病巣における血管密度が減少したことを示す代表的な画像を示す。
【図19】VEGF121/rGelが肺における転移性MDA-MB-231細胞の増殖を阻害することを示す。VEGF121/rGelまたはrGel処置マウスに由来する肺の凍結切片をKi-67抗体によって染色した。染色した切片を40倍の対物レンズ下で調べて、陽性核(分裂細胞)を有する腫瘍細胞数を決定した。陽性細胞を、各処置群につき個々のマウスに由来する切片6個に関してスライドガラス1枚あたりコロニー10個において計数した。1群の平均値±SEMを示す。VEGF121/rGel処置によって、転移巣における分裂細胞数の平均値は約60%減少した。
【図20】抗VEGFR-2抗体RAFL-1による転移病変の血管におけるVEGFR-2の検出を示す。VEGF121/rGelまたは遊離のゲロニンを処置したマウスの肺の凍結切片をモノクローナルラット抗マウスVEGFR-2抗体RAFL-1(10 μg/ml)によって染色した。RAFL-1抗体は、ヤギ抗ラットIgG-HRPによって検出した。切片をDABによって顕色して、ヘマトキシリンによって対比染色した。各処置群について同等の大きさ(最大の直径が700〜800 μm)の肺転移の代表的な画像を示す。画像は20倍の対物レンズによって得た。VEGF121/rGel処置群の肺転移は、対照病変と比較して血管密度の減少と抗VEGFR-2染色強度の減少の双方を示すことに注意されたい。
【図21】VEGF121/rGelが、マウスにおける骨微小環境に配置された前立腺癌細胞PC-3の増殖を強く阻害することを示す。動物を麻酔した後、PC-3細胞50,000個を右大腿骨の遠位epipysisに注射した。腫瘍の定着後1週間目に、VEGF121/rGelまたは生理食塩液(対照)による処置を開始した。VEGF121/rGelの最大認容量を用いて、図に示すように静脈内投与した。腫瘍の増殖をX線によってモニターして、大きい破骨病変または骨溶解を示す動物を屠殺した。対照動物は全て、67日目に屠殺した。対照的に、VEGF121/rGel処置マウスの50%が骨溶解の兆候を見せることなく140日まで生存した。
【図22】RANKL媒介破骨細胞形成に及ぼすVEGF121/rGelおよびrGelの影響を示す。Raw 264.7細胞を24ウェルプレートにおいて一晩培養した。破骨細胞の形成は、VEGF121/rGelまたはrGelの増加濃度と共に100 ng/ml RANKLを加えることによって誘導された。細胞を96時間分化させた後、ウェルあたりの破骨細胞数を決定した。各実験は1試料あたり3回ずつ行った。示したデータは、異なる3回の実験の代表である。RANKLまたはRANKL+rGel処置Raw 264.7細胞は、大きい多核TRAP陽性破骨細胞へと分化する。対照的に、RANKL+VEGF121/rGel処置細胞は、分化せず、TRAPに関して染色されない。
【図23】HuT-78細胞からのヒトグランザイムB(GrB)遺伝子のクローニングを示す。HuT-78 RNAを単離して、未成熟GrB cDNA(〜800 bp)を逆転写PCRによって増幅して、PCR 2.1 TAベクターにクローニングした。アミノ酸20個のシグナル配列を有するヒトグランザイムB配列を確認して、これを未成熟グランザイムBと呼んだ。シグナルペプチドを除去した後、グランザイムBの成熟アミノ末端Ile-Ile-Gly-Gly配列が生成された。
【図24】PCRによるGrB/VEGF121融合体毒素の構築およびpET32a(+)ベクターへの挿入を示す。成熟グランザイムBを柔軟な結合鎖(G4S)によって組換え型VEGF121担体に結合させた。EK切断部位(DDDDK)を、グランザイムBの第一のアミノ酸であるイソロイシンの上流に隣接して挿入した。次に、融合遺伝子断片をpET32a(+)ベクターのXbaIおよびXhoI部位に導入して、発現ベクターpET32GrB/VEGF121を形成した。
【図25】GrB/VEGF121融合体毒素の細菌での発現、精製、およびウェスタンブロット分析を示す。図25A:還元条件での8.5%SDS-PAGEおよびクーマシーブルー染色から、GrB/VEGF121がタグを有する55〜kDaの分子として発現され、最終的な精製GrB/VEGF121の大きさは〜38 kDaであることが示された。図25B:ウェスタンブロッティングにより、融合タンパク質がマウス抗VEGFまたはマウス抗GrB抗体と反応することが確認された。
【図26】GrB/VEGF121がPAE/FLK-1細胞に結合するが、PAE/FLT-1細胞、A375M、またはSKBR3細胞には結合しないことを示す。細胞に対するGrB/VEGF121の結合は、PAE/FLK-1、PAE/FLT-1、A375M、またはSKBR3細胞50,000個/ウェルをコーティングした96ウェルELISAプレートによって評価した。ウェルを5%BSAによってブロックした後、様々な濃度の精製GrB/VEGF121によって処置した。次に、ウェルを抗GrB抗体(図26A)または抗VEGF抗体(図26B)のいずれかと共にインキュベートした後、HRPヤギ抗マウスIgGと共にインキュベートした。30%H2O2 1 ml/mlと共にABTS溶液をウェルに加えて、405 nmでの吸光度を30分後に測定した。
【図27】ブタ大動脈内皮(PAE)細胞へのGrB/VEGF121の内部移行を示す。PAE細胞を16ウェルチャンバースライドガラス(1×104個/ウェル)に播種して、100 nM GrB/VEGF121によって4時間処置した後、PBSによって手短に洗浄した。細胞表面をグリシン緩衝液(pH 2.5)によって剥離させて、細胞を3.7%ホルムアルデヒド中で固定し、0.2%トライトンX-100を含むPBSにおいて透過性にした。ブロッキングの後、試料を抗グランザイムB抗体と共にインキュベートして、FITC結合抗マウスIgGによって処置した。スライドガラスを蛍光顕微鏡下で分析した。GrB/VEGF121のグランザイムB部分は、4時間の処置後、PAE/FLK-1のサイトゾルに輸送されたが、PAE/FLT-1細胞のサイトゾルには輸送されなかった。
【図28】図28Aは、トランスフェクトした内皮細胞に及ぼすGrB/VEGF121融合体毒素の細胞障害性を示す。対数増殖期PAE細胞を96ウェルプレートに2.5×103個/ウェルの密度で播種して、24時間接着させた。培地を、異なる濃度のGrB/VEGF121を含む培地に交換した。72時間後、培養物における細胞の増殖に及ぼす融合体毒素の作用を、XTTを用いて決定した。プレートをマイクロプレートELISAリーダーにおいて540 nmで読み取った。GrB/VEGF121のIC50は、PAE/FLK-1細胞に関して〜10 nMであったが、PAE/FLT-1細胞に対しては細胞障害性ではなかった。図28Bは、コロニー形成アッセイ法によって決定したGrB/VEGF121の増殖阻害作用を示す。PAE細胞(5×105個/ml)を、様々な濃度のGrB/VEGF121および100 nMの無関係な融合タンパク質GrB/scFvMELと共に37℃、5%CO2で72時間インキュベートした。次に細胞をPBSによって洗浄して、トリプシン処理して計数し、連続希釈した。次に、連続細胞浮遊液を1試料あたり3個ずつ播種して、6ウェルプレートにおいて5〜7日間培養した。細胞をクリスタルバイオレットによって染色して、細胞>20個からなるコロニーを計数した。結果を、無処置細胞によって形成されたコロニー数に対するコロニーの百分率として示す。
【図29】GrB/VEGF121がPAE/FLK-1細胞に対してアポトーシスを誘導することを示す。細胞(1×104個/ウェル)を、IC50濃度のGrB/VEGF121によって異なる時間(0、24、および48時間)処置して、PBSによって洗浄した。細胞を3.7%ホルムアルデヒドによって固定して、0.1%トライトンX-100および0.1%クエン酸ナトリウムによって透過性にした。細胞をTUNEL反応混合物と共にインキュベートして、Converter-APと共にインキュベートし、最終的にFast Red基質溶液によって処置した。スライドガラスを光学顕微鏡下で分析した。アポトーシス細胞は赤く染色された(400倍)(図29A)。図29Bは、無作為に選択した視野(200倍)における総計数細胞(>200個)の百分率としてのアポトーシス細胞を示す;バー、SD。
【図30】グランザイムB/VEGF121がミトコンドリアからサイトゾルへのチトクロームc放出、およびサイトゾルからミトコンドリアへのBax転移を誘導することを示す。PAE細胞(5×107個)を濃度0、0.1、および20 nMのグランザイムB/VEGF121によって24時間処置した。細胞を回収して、サイトゾルおよびミトコンドリア分画を下記のように単離した。無処置および処置細胞からそれぞれ30 mgの分画を15%SDS-PAGEゲルにローディングして、標準的なウェスタンブロット技法を行った。ブロットを抗チトクロームc抗体または抗Bax抗体によってプロービングした。
【図31】GrB/VEGF121がPAE/FLK-1細胞においてDNAラダリングを誘導することを示す。細胞を6ウェルプレートに2×105細胞/ウェルの密度で播種して、20 nM GrB/VEGF121融合体に24時間曝露した。DNAを細胞溶解物から単離して、1.5%アガロースゲルにおいて分画した。
【図32】GrB/VEGF121によって処置したPAE/FLK-1細胞におけるカスパーゼ-3、カスパーゼ-8、およびPARPの切断および活性化を示す。PAE細胞を6ウェルプレートに2×105個/ウェルの密度で播種して20 nM GrB/VEGF121によって4時間処置した。総細胞溶解物を12%SDS-PAGEにローディングして、適当な一次抗体を用いてウェスタンブロットを行った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内皮増殖因子の121位アミノ酸イソ型(VEGF121)と細胞障害性分子とを含む結合体。
【請求項2】
結合体がVEGF121と細胞障害性分子との融合タンパク質である、請求項1記載の結合体。
【請求項3】
細胞障害性分子が、毒素またはアポトーシスシグナルを産生することができるシグナル伝達タンパク質である、請求項1記載の結合体。
【請求項4】
毒素がゲロニンである、請求項3記載の結合体。
【請求項5】
アポトーシスシグナルを産生することができるシグナル伝達タンパク質がグランザイムBまたはBaxである、請求項3記載の結合体。
【請求項6】
VEGF121および細胞障害性分子がG4S、(G4S)2、218リンカー、(G4S)3、酵素的に切断されるリンカーおよびpH切断リンカーからなる群より選択されるリンカーによって連結される、請求項1記載の結合体。
【請求項7】
請求項1記載の結合体を含む薬学的組成物。
【請求項8】
以下の段階を含む、2型血管内皮増殖因子受容体(キナーゼドメイン受容体/Flk-1受容体)を発現する細胞を殺す方法:
血管内皮増殖因子の121位アミノ酸イソ型(VEGF121)と細胞障害性分子とを含む結合体の薬学的有効量を該細胞に接触させる段階。
【請求項9】
細胞障害性分子が、毒素またはアポトーシスシグナルを産生することができるシグナル伝達タンパク質である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
結合体がVEGF121とゲロニンとを含む融合タンパク質、またはVEGF121とグランザイムBもしくはBaxとを含む融合タンパク質である、請求項8記載の方法。
【請求項11】
VEGF121および細胞障害性分子がG4S、(G4S)2、218リンカー、(G4S)3、酵素的に切断されるリンカーおよびpH切断リンカーからなる群より選択されるリンカーによって連結される、請求項8記載の方法。
【請求項12】
結合体が、細胞あたり2000個より多くの2型VEGF受容体を発現する細胞に対して細胞障害性である、請求項8記載の方法。
【請求項13】
VEGF121が1型VEGF受容体(Flt-1)および2型VEGF受容体(キナーゼドメイン受容体/Flk-1)の双方に結合するが、2型VEGF受容体を発現する細胞に限ってインターナライズされる、結合体が血管内皮増殖因子の121位アミノ酸イソ型(VEGF121)と細胞障害性分子とを含む、腫瘍血管に対して細胞障害作用を発揮することができる結合体の生物学的有効量を被験者に投与する段階を含む、被験者における腫瘍の増殖または転移の広がり、および転移の血管形成を阻害する方法。
【請求項14】
細胞障害性分子が毒素、またはアポトーシスシグナルを産生することができるシグナル伝達タンパク質である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
結合体がVEGF121とゲロニンとを含む融合タンパク質、またはVEGF121とグランザイムBもしくはBaxとを含む融合タンパク質である、請求項13記載の方法。
【請求項16】
VEGF121および細胞障害性分子がG4S、(G4S)3、(G4S)2、218リンカー、酵素的に切断されるリンカーおよびpH切断リンカーからなる群より選択されるリンカーによって連結される、請求項13記載の方法。
【請求項17】
結合体が、細胞あたり2000個より多くの2型VEGF受容体を発現する細胞に対して細胞障害性である、請求項13記載の方法。
【請求項18】
化学療法剤または放射線療法剤による処置をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項19】
血管内皮増殖因子の121位アミノ酸イソ型(VEGF121)と細胞障害性分子とを含む結合体の生物学的有効量を被験者に投与する段階を含む、該被験者における破骨細胞形成を阻害または骨粗鬆症を治療する方法。
【請求項20】
細胞障害性分子が、毒素、またはアポトーシスシグナルを産生することができるシグナル伝達タンパク質である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
結合体がVEGF121とゲロニンとを含む融合タンパク質、またはVEGF121とグランザイムBもしくはBaxとを含む融合タンパク質である、請求項19記載の方法。
【請求項22】
VEGF121および細胞障害性分子がG4S、(G4S)2、218リンカー、(G4S)3、酵素的に切断されるリンカーおよびpH切断リンカーからなる群より選択されるリンカーによって連結される、請求項19記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公表番号】特表2006−527192(P2006−527192A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−514872(P2006−514872)
【出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/015244
【国際公開番号】WO2004/108074
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(505098937)リサーチ ディベロップメント ファウンデーション (16)
【Fターム(参考)】