説明

血管内皮細胞増殖因子の製造

【課題】血管内皮細胞に対して分裂促進性があり、従って新たな血管新生(脈
管形成)および血管内表面の内皮新生を促進するのに有用な創傷治癒剤の製造方
法を提供すること、ならびに、組換えDNA技術によって血管内皮細胞増殖因子
を製造する方法および手段を提供すること。
【解決手段】哺乳動物の血管内皮細胞増殖因子をコードする単離されたDNA配列、ならびに血管内皮細胞増殖因子を製造する方法であって、(a)血管内皮細胞増殖因子のポリペプチド鎖のアミノ酸配列をコードするDNA配列を包含する発現ベクターで形質転換された細胞を該ポリペプチドが発現される条件下で培養し、(b)発現された該ポリペプチドを回収し、および(c)該ポリペプチド鎖のジスルフィド結合を形成させる工程、を包含する、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創傷治癒の分野に関する。特に本発明は、血管内皮細胞に対して分
裂促進性があり、従って新たな血管新生(脈管形成)および血管内表面の内皮新
生を促進するのに有用な創傷治癒剤の製造に関する。本発明は、組換えDNA技
術によって血管内皮細胞増殖因子を製造する方法および手段を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
脈管形成、すなわち新しい毛細血管の増殖は、多くの型の創傷の適正な治癒に
決定的に重要なプロセスである。従って、脈管形成を促進し得る因子は、創傷治
癒剤として有用である。脈管形成は複数工程のプロセスであり、毛細血管内皮細
胞の増殖、移動、および組織浸透を含む。塩基性および酸性の線維芽細胞増殖因
子、形質転換増殖因子α、および表皮増殖因子を含む、多くの公知の増殖因子は
、様々な細胞の型に対し広く分裂促進性であり、そして脈管形成性である。従っ
て、このような因子は、潜在的に組織の修復を促進するのに有用である。多くの
型の創傷治癒への適用では、広範囲の細胞分裂促進性が望ましい。しかし、より
細胞特異的な分裂促進活性を有することが望ましい特異的な型の創傷治癒への適
用もある。例えば、血管移植手術、バルーン血管形成、あるいは心筋梗塞発症後
の患者で側副血行を促進する場合、血管内皮細胞に高度に特異的な分裂促進活性
を有する、細胞分裂促進因子を導入した創傷治癒剤を用いることが望ましい。な
ぜならば内皮細胞の増殖と共に他の細胞の型が増殖すると、血流のブロックおよ
び/あるいは減少が引き起こされ得るからである。現在のところ、この型の適用
に広く利用できる非常に適切な細胞分裂促進因子はない。
【0003】
最近、明らかに血管内皮細胞に特異的な分裂促進物質が、ウシ濾胞星状細胞(
bovine folliculo stellate cells)の馴化培地から単離された。そしてその部
分的なアミノ酸配列が決定された(Gospodarowiczら、PNAS(1989) 88(19):7311-
7315:FerraraおよびHenzel、BBRC(1989) 161(2):851-858)。この因子は、2つ
の約23kDのサブユニットのホモダイマーのようである。Gospodarowiczら、およ
びFerarraらが記載の、このウシタンパク質に部分的に相同性のあるマウスの相
同物因子が、マウスAtT20細胞(ATCC CCL 89)の馴化培地から単離されており、
そのN末端側のアミノ酸配列が決定された(Plouёtら、EMBO J.(1989) 8(12):3
801-3806)。両方の因子は、血管内皮細胞に対する分裂促進活性を有しており、
そして試験された他の細胞の型に対する分裂促進活性は有さないことが示されて
いる。従って、これらの因子は、多くの型の創傷治癒への適用に有用である。残
念ながら、これらの因子をその天然原科からの精製によって商業的な量で得るこ
とは、実用的および経済的でない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、血管内皮細胞に対して分裂促進性があり、従って新たな血管
新生(脈管形成)および血管内表面の内皮新生を促進するのに有用な創傷治癒剤
の製造方法を提供することである。本発明の目的はまた、組換えDNA技術によ
って血管内皮細胞増殖因子を製造する方法および手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、哺乳動物の血管内皮細胞増殖因子をコードする単離されたD
NA配列が提供される。
【0006】
1つの実施態様において、上記DNA配列は、図3aのDNA配列と標準的な
ハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズ可能である。
【0007】
1つの実施態様において、上記DNA配列は、ウシおよびヒトの血管内皮細胞
増殖因子から選択される血管内皮細胞増殖因子をコードする。
【0008】
1つの実施態様において、上記DNA配列は、ウシ血管内皮細胞増殖因子をコ
ードする。
【0009】
1つの実施態様において、上記DNA配列は、bVEGF120およびbVEG
164から選択されるウシ血管内皮細胞増殖因子をコードする。
【0010】
1つの実施態様において、上記DNA配列は、図6に示されるヌクレオチドの
1位から492位を包含する。
【0011】
1つの実施態様において、上記DNA配列は、図6に示されるヌクレオチドの
1位から341位に続いてヌクレオチド474位から492位を包含する。
【0012】
1つの実施態様において、上記DNA配列は、ヒト血管内皮細胞増殖因子をコ
ードする。
【0013】
1つの実施態様において、上記DNA配列は、hVEGF121およびhVEG
165から選択されるヒト血管内皮細胞増殖因子をコードする。
【0014】
1つの実施態様において、上記DNA配列は、図7に示されるヌクレオチドの
1位から495位の配列を包含する。
【0015】
1つの実施態様において、上記DNA配列は、図7に示されるヌクレオチドの
1位から344位に続いてヌクレオチド477位から495位の配列を包含する。
【0016】
本発明によれば、哺乳動物の血管内皮細胞増殖因子をコードするDNA配列が
、宿主細胞中で直接に該配列を発現することができる調節配列に作動可能に連結
されて包含される複製可能な発現ベクターが提供される。
【0017】
1つの実施態様では、本発明の発現ベクターにおいて、上記DNAコード配列
は、図3aのDNA配列と標準的なハイブリダイゼーション条件下でハイブリダ
イズ可能な配列である。
【0018】
1つの実施態様では、本発明の発現ベクターにおいて、上記DNAコード配列
は、ウシおよびヒトの血管内皮細胞増殖因子から選択されるタンパク質をコード
する。
【0019】
1つの実施態様では、本発明の発現ベクターにおいて、上記DNAコード配列
は、bVEGF120およびbVEGF164から選択されるタンパク質をコードする

【0020】
1つの実施態様では、本発明の発現ベクターにおいて、上記DNAコード配列
は、図6に示されるヌクレオチドの1位から492位の配列を包含する。
【0021】
1つの実施態様では、本発明の発現ベクターにおいて、上記DNAコード配列
は、図6に示されるヌクレオチドの1位から341位に続いてヌクレオチド474位か
ら492位を包含する。
【0022】
1つの実施態様では、本発明の発現ベクターにおいて、上記DNAコード配列
は、hVEGF121およびhVEGF165から選択されるタンパク質をコードする

【0023】
1つの実施態様では、本発明の発現ベクターにおいて、上記DNAコード配列
は、図7に示されるヌクレオチドの1位から495位の配列を包含する。
【0024】
1つの実施態様では、本発明の発現ベクターにおいて、上記DNAコード配列
は、図7に示されるヌクレオチドの1位から344位に続いてヌクレオチド477位か
ら495位の配列を包含する。
【0025】
本発明によれば、上記の発現ベクターで形質転換された宿主細胞が提供される

【0026】
1つの実施態様では、本発明の形質転換された宿主細胞において、上記宿主細
胞は、E.coliである。
【0027】
1つの実施態様では、本発明の形質転換された宿主細胞において、上記宿主細
胞は、真核細胞である。
【0028】
1つの実施態様では、本発明の形質転換された宿主細胞において、上記宿主細
胞は、CHO細胞である。
【0029】
本発明によれば、血管内皮細胞増殖因子を製造する方法が提供される。この方
法は、(a)血管内皮細胞増殖因子のポリペプチド鎖のアミノ酸配列をコードす
るDNA配列を包含する発現ベクターで形質転換された細胞を該ポリペプチドが
発現される条件下で培養し、
(b)発現された該ポリペプチドを回収し、および
(c)該ポリペプチド鎖のジスルフィド結合を形成させる工程、を包含する。
【0030】
1つの実施態様では、本発明の製造方法において、上記DNA配列は、ウシお
よびヒトの血管内皮細胞増殖因子から選択される血管内皮細胞増殖因子をコード
する。
【0031】
1つの実施態様では、本発明の製造方法において、上記DNA配列は、bVE
GF120、bVEGF164、hVEGF121およびhVEGF165から選択されるタ
ンパク質をコードする。
【0032】
1つの実施態様では、本発明の製造方法において、上記宿主細胞は哺乳動物宿
主細胞であり、そして生じる血管内皮細胞増殖因子はグリコシル化される。
【0033】
1つの実施態様では、本発明の製造方法において、上記細胞は哺乳動物細胞で
あり、そして前記DNA配列は図8のエキソンI−VおよびVIIIによってコード
される予測されるアミノ酸配列をコードするDNA配列である。
【0034】
1つの実施態様では、本発明の製造方法において、上記発現の結果、培養培地
中に分泌された成熟型hVEGF121が得られる。
【0035】
本発明によれば、単離されたbVEGF120が提供される。
【0036】
本発明によれば、単離されたhVEGF121が提供される。
【0037】
1つの実施態様では、本発明の単離されたhVEGF121は、75位のアスパ
ラギン(Asn)残基でN-結合グリコシル化を包含する。
【0038】
1つの実施態様では、本発明の単離されたhVEGF121は、約50%のhVE
GF121がグリコシル化されている。
【0039】
本発明によれば、単離されたhVEGF165が提供される。
【0040】
本発明によれば、両方のサブユニットがどちらもグリコシル化されていないホ
モダイマーである単離されたhVEGF121が提供される。
【0041】
本発明によれば、両方のサブユニットがグリコシル化されているホモダイマー
である単離されたhVEGF121が提供される。
【0042】
本発明によれば、サブユニットの一方がグリコシル化されており、他方のサブ
ユニットがグリコシル化されていないヘテロダイマーである単離されたhVEG
121が提供される。
【0043】
本発明によれば、それぞれがhVEGF121、hVEGF165およびhVPF18
9から選択される、2つの異なるサブユニット、からなるヘテロダイマーを包含
する、脈管形成の阻害に有用なタンパク質が提供される。
【0044】
本発明によれば、血管内皮細胞増殖因子に対する中和抗体の有効量を投与する
治療を必要とする哺乳動物に投与することを包含する、哺乳動物における脈管形
成を阻害する方法が提供される。
【0045】
1つの実施態様では、本発明の阻害方法において、上記哺乳動物はヒトであり
、抗体は抗-hVEGF121である。
【0046】
本発明によれば、治療を必要とする個体に、それぞれがhVEGF121、hV
EGF165およびhVPF189から選択される2つの異なるサブユニットからなる
ヘテロダイマーを包含するタンパク質の有効量を投与することを包含する脈管形
成を阻害する方法が提供される。
【0047】
本発明によれば、116番目のシステイン残基が異なるアミノ酸残基に置換され
ているhVEGF121アナログが提供される。
【0048】
本発明によれば、160番目のシステイン残基が異なるアミノ酸残基に置換され
ているhVEGF165アナログが提供される。
発明の要旨
本発明は、創傷治癒剤として用いるための血管内皮細胞増殖因子を商業的規模
の量得るための方法および手段を提供する。特に本発明は、哺乳類動物の血管内
皮細胞増殖因子のアミノ酸配列をコードするDNA配列を提供する。これらのD
NA配列は、発現ベクターの調節エレメントの制御下に挿入される。このエレメ
ントは、適切な発現宿主の中で、コードされたアミノ酸配列の表現を行わせる。
このようにして発現させた血管内皮細胞増殖因子は、回収され、そして脈管形成
および/あるいは再内皮新生が重要な役割を果たす、様々な創傷治癒への適用に
有用な薬学的組成物中に調合され得る。
【0049】
本明細書の血管内皮細胞増殖因子をコードするDNA配列を提供する過程で、
我々はこの因子に、2つの異なった型のコーディング領域のmRNAが作られること
を発見した。これらの2つの型は、明らかに異なったメッセージスプライシング
から生じており、オープンリーディングフレームの長さが異なっている。これは
、成熟タンパク質のコーディング領域の44個のコドンの挿入の存在あるいは非存
在による。予想される高い分子量の方の因子は、ウシの場合164個のアミノ酸配
列を含み、そしてヒトの場合は165個のアミノ酸配列を含み、Gospodarowiczら(
前出)、およびFerraraおよびHenzel(前出)によって単離された約23kDのサブ
ユニットに相当すると考えられる。挿入が欠如しているコーディング領域から予
想される新規な分子量の低い方の因子は、ウシの場合では120個のアミノ酸配列
およびヒトの場合では121個のアミノ酸配列を含む。低分子量型は、アミノ酸配
列の長さが異なるだけでなく、高分子量の型には存在しない、ウシタンパク質の
114位のLys残基(ヒトタンパク質では115位)の存在において異なっている。こ
の違いは、この位置に相当するコドン内で起こっているメッセージスプライシン
グが異なるために起こる。便宜上、これらの血管内皮細胞増殖因子の2つの型を
、ウシ因子ではそれぞれbVEGF164およびbVEGF120(ヒト因子では、h
VEGF165およびhVEGF121)と呼ぶ。
【0050】
121個のアミノ酸型のhVEGFおよびこれに対応する120個のアミノ酸のウシ
タンパク質は、このタンパク質の臨床上の使用に治療的な利点を提供するという
点で、hVEGF165およびbVEGF164の性質とは異なっている。特にhVE
GF121およびbVEGF120はヘパリンに結合しないが、長い型の方は、強いヘ
パリン結合能によって特徴付けられる。ヘパリン結合親和性がないことで、その
タンパク質がより血管内皮細胞増殖因子のレセプターに結合しやすくなり、半減
期および循環系の中でのタンパク質の分布が増大される。
【0051】
驚くべきことに、N末端配列分析から推定されるアミノ酸配列および単離され
たDNA配列(図3aに示してある)は、ウシ血管内皮細胞増殖因子、およびヒ
ト血小板由来増殖因子(PDGF)のサブユニットのA鎖およびB鎖それぞれの、こ
れに対応する配列との間に有意なレベルの配列相同性があることを示す。このう
ち8個のシステイン残基が、これら3つのすべての配列の成熟型で完全に保存さ
れている。従って、第一のポリペプチド鎖および第二のポリペプチド鎖を含むハ
イブリッドのダイマータンパク質が調製され得る。ここで鎖のうちの1つは、血
小板由来増殖因子のA鎖サブユニットあるいはB鎖サブユニットのアミノ酸配列
の少なくとも一部を含み、そしてもう一方の鎖は、血管内皮細胞増殖因子のアミ
ノ酸配列の少なくとも一部を含む。このようなハイブリッドタンパク質の調製に
よって、このハイブリッドが、血管内皮細胞増殖因子および血小板由来増殖因子
の細胞分裂促進活性の間のプロフィールを持つように、分子の性質を「仕立てる
」ことができるようになる。PDGF B-Bホモダイマーは、血管平滑筋細胞に対して
分裂促進性があり、血管内皮細胞に対してはない。逆に、本発明の血管内皮細胞
増殖因子は、逆の特異性を有している。ハイブリッド因子は、両方のタイプの細
胞を刺激し得、従って、創傷治癒における、より広範囲の細胞分裂促進剤として
有用である。
【発明の効果】
【0052】
本発明により、血管内皮細胞に対して分裂促進性があり、従って新たな血管新
生(脈管形成)および血管内表面の内皮新生を促進するのに有用な創傷治癒剤の
製造方法が提供される。また、本発明により、組換えDNA技術によって血管内
皮細胞増殖因子を製造する方法および手段が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
本明細書の用語「血管内皮細胞増殖因子」は、血管内皮細胞に対する分裂促進
活性を有し、そして以下の(a)、および(b)である、哺乳類動物のタンパク
質を言う:
(a)標準的なハイブリダイゼーションの条件下で、図3aに示したDNA配
列にハイブリダイズし得るDNA配列にコードされるアミノ酸配列を有するか、
あるいは
(b)図6および図7に示された、bVEGF120、bVEGF164、hVEG
121あるいはhVEGF165のアミノ酸配列に実質的に相同である。
【0054】
本明細書では、関連のタンパク質と比較して、アミノ酸配列の相同性のレベル
が少なくとも50%であり、そして好ましくは少なくとも80%であるとき、「実質
的に相同である」と考えられる。本明細書の用語「標準的なハイブリダイゼーシ
ョン条件」とは、プレハイブリダイゼーション/ハイブリダイゼーションバッフ
ァーとして40%のホルムアミドバッファーを用い(以下に記載)、そして50℃で
1×SSC、0.1%SDS中で洗浄することを言う。
【0055】
本明細書で用いられている、血管内皮細胞増殖因子のアミノ酸配列の番号付け
システムは、タンパク質の成熟型、すなわち翻訳後のプロセシングがなされた型
に基づいている。従って、ウシあるいはヒトタンパク質中で1番とされる残基は
、アラニンであり、これらのタンパク質の単離された成熟型の第一番目の残基で
ある。
【0056】
血管内皮細胞に対する細胞分裂促進活性は、標的細胞として、副腎皮質由来の
毛細血管内皮細胞(ACE細胞)を用いるアッセイによって測定され得る。このア
ッセイは、実質的には、本明細書で参考として援用されている、Gospodarowicz
らのJ. Cell Physiol.(1986) 127:121-136)に記載されているように行われる。
一般的には、ACE細胞のストックの培養物を10%仔牛血清を補充したダルベッコ
変法イーグル培地(DMEM-21)の存在下で維持する。抗生物質のペニシリン(50I
U/ml)、ストレプトマイシン(50μg/ml)、ゲンタマイシン(50μg/ml)、お
よびファンジゾーン(0.25μg/ml)および2mMのL-グルタミンもまた培地に添
加し得る。細胞を組織細胞ディッシュに分配比1:40および1:200との間(好
ましい分配比では、T75フラスコの15mlの培地中に2.5×105の細胞が存在する)
で毎週継代していく。細胞分裂促進アッセイのために、Gospodarowiczら、Europ
. J. Cell. Biol. (1988) 46:144-151に記載のように、12ウェルクラスタープレ
ートに、1ウェルあたり10%仔牛血清および抗生物質を補充した1mlのダルベッ
コ変法イーグル培地中の5×103個の細胞密度の細胞を蒔く。あるいは、Gospoda
rowiczらJ. Cell. Physiol.(1986) 127:121-136に記載のように、ACE細胞を、35
mmディッシュあるいは6ウェルクラスタープレートに、1つのディッシュ当りあ
るいはウェル当り、2mlの培地中の5〜10×103個の密度の細胞をプレートする
。次にそれぞれのサンプルの適当な希釈物の10μlずつを、0日目および2日目
に2つあるいは3つのウェルに分注する。培養の4あるいは5日後にプレートを
トリプシン処理し、そしてコールターカウンターで細胞密度を測定する。本明細
書で記載する目的では、このアッセイの最後において、因子を添加しなかったコ
ントロールウェルの細胞密度の少なくとも1.5倍、および好ましくは少なくとも
3倍の細胞密度になる場合に、因子は血管内皮細胞に対する分裂促進活性を有す
ると考えられる。
【0057】
図3aに記載のDNA配列は、ウシ細胞cDNAライブラリーから得られ、従
って、ウシタンパク質をコードする配列を表すが、提供されているDNA配列は
、他の哺乳類の種から得られる相同物タンパク質をコードする配列の回収も可能
となる。従って、我々は示されているウシの配列をプローブとして、対応するヒ
トタンパク質をコードするDNA配列を回収するのに用いた。
【0058】
さらに本明細書の「血管内皮細胞増殖因子」の範囲には、それらの生物学的に
活性なフラグメント、およびそれらのN末端あるいはC末端を延長した形、また
は1つ以上のアミノ酸残基を置換および/あるいは欠失あるいは挿入した、質的
に本明細書に記載のタンパク質の活性を保持しているアナログも含む。好ましい
アナログには、生物学的な活性に必要ではない1つ以上のシステイン残基を異な
るアミノ酸残基、好ましくはセリンで置き換えたものが含まれる。1つ以上のシ
ステイン残基を置換することによって、分子内および分子間のジスルフィド結合
形成の機会が減少し、それによって分子がより安定になる。hVEGF121、b
VEGF120、hVEGF165およびbVEGF164中には、9個のシステイン残
基が存在する。このうち8個はPDGFにも保存されている。従って最も好ましいア
ナログは、9番目のシステイン残基がセリンで置換されているものである。この
システイン残基は、hVEGF165の160位およびhVEGF121の116位およびウ
シ型の対応する位置に存在する。アミノ酸置換は、公知の技術を用いて、本明細
書に記載のDNA配列の部位特異的変異導入によって行われ得る(例えば、Zoll
er, M.J. およびSmith,M., Nucleic Acids Research (1982)10:6487-6500)。
【0059】
本明細書のウシ血管内皮細胞増殖因子の天然の型は、明らかに糖が付加されて
いるが、現在のところ生物学的活性に糖付加が必須であるという証拠はない。従
って、本明細書に提供されている発現配列を使用して原核細胞宿主あるいは真核
細胞宿主によって産生される、生物学的に活性な糖が付加されていない型あるい
は部分的に糖が付加されている型は、「血管内皮細胞増殖因子」の範囲に含まれ
る。
【0060】
血管内皮細胞増殖因子をコードするDNA配列を、チャイニーズハムスター卵
巣細胞培養物中で本明細書の条件下で発現させると、発現するVEGFの約50%
がN結合糖付加により修飾されている。hVEGF121の75位のAsn残基に1つの
N結合糖付加部位がある(hVEGF165の75位およびbVEGF120およびbV
EGF164の74位に相当する)。さらに、hVEGF121の発現および細胞培養培
地への分泌の後、我々はダイマーのタンパク質の種を単離した。この種は、両方
のサブユニットが糖付加されているかあるいは糖付加されていない、および一方
のサブユニットが糖付加されておりもう一方のサブユニットが糖付加されていな
い、血管内皮細胞増殖因子のダイマーの分子量に相当する。
【0061】
血管内皮細胞増殖因子(Gospodarowiczら(前出)、およびFerraraおよびHenz
el(前出)によって単離された)は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で測
定すると、約45〜46kDのダイマーのタンパク質である。ウシ血管内皮細胞増殖因
子は、濾胞星状細胞の細胞培養馴化培地から均一な型で得られた。このプロセス
には、硫酸アンモニウム沈澱;ヘパリン-セファロースアフィニティークロマト
グラフィー;サイズ排除ゲルクロマトグラフィー;カチオン交換クロマトグラフ
ィー;および逆相高速液体クロマトグラフィー、の工程が含まれる。血管内皮細
胞増殖因子を産生することが知られている、例えばマウスAtT20細胞の様な他の
哺乳類動物種由来の培養細胞の馴化培地から、対応するタンパク質を精製する場
合にも、同様の手順が用いられる。我々はまた、ノーザンブロット分析によって
、ヒト胎児血管平滑筋細胞がヒト血管内皮細胞増殖因子およびこの因子をコード
するmRNAのよい供給源になるということも決定した。
【0062】
上述のようにして得られた、単離したウシ血管内皮細胞増殖因子のアミノ酸配
列を、自動気相プロテインシークエンサーでエドマン分解法によって決定した。
単一の主要な24アミノ酸のN末端配列が得られ、タンパク質がホモダイマーであ
ることが判った。タンパク質のトリプシン消化および様々なペプチドフラグメン
トのアミノ酸配列決定の後、オーバーラップしたアミノ酸配列からウシタンパク
質が以下のN末端の41アミノ酸配列*を有することが判った:
APMAEGGQKPHEVVKFMDVYQRSFCRPIETLVDIFQ
EYPDE
*アミノ酸を表す標準的な1文字略号を用いる)。
上記のウシ血管内皮細胞増殖因子のN末端のアミノ酸配列を用いて、このタンパ
ク質の全長あるいは部分的なcDNAを回収しようとする多くの不成功に終わっ
た試みがなされた。それはこのアミノ酸配列の部分をコードする縮重させたオリ
ゴヌクレオチドプローブの混合物を用いて、濾胞星状細胞のcDNAライブラリ
ーをプローブすることによってなされた。図3aのDNAセグメントは、ポリメ
ラーゼチェーンリアクションの改変法によって、アミノ酸の15位から38位(およ
びアミノ酸39位のコドンの3分の2)をコードするヌクレオチド配列を増殖させ
て作ったプローブを用いて、cDNAライブラリーから最終的に回収されたもの
である。所望のDNA配列を増幅させるためのポリメラーゼチェーンリアクショ
ン法は、米国特許第4,683,202号および第4,683,195号の中に詳細が記載されてい
る。これらは参考として本明細書に適用されている。この方法によって、多くの
配列が知られていない場合でも、増幅したい配列のどちらかの端にハイブリダイ
ズするオリゴヌクレオチドプライマーさえあれば、所望のヌクレオチド配列の増
幅が可能となる。ポリメラーゼチェーンリアクションのプロセスには、cDNA
の所望のセグメントを増幅するために、プライマーとして縮重オリゴヌクレオチ
ドが用いられる(Leeら、Science(1988) 1288-1291)。
【0063】
図3aのcDNAを回収するのに用いたDNAプローブは、図1に示す5つの
類似の配列から選択された。これらの配列は、図2に示す概略および以下に実施
例中で詳細に記載しているような手順で得られた。示されている手順によれば、
ウシ濾胞星状細胞由来のポリ(A)+RNAを、血管内皮細胞増殖因子の35位から39
位のアミノ酸配列に基づいて作製した16倍縮重の合成オリゴヌクレオチド混合物
からなるアンチセンスプライマーとハイブリダイズさせる。24塩基のオリゴヌク
レオチドプライマーは、5’末端に10塩基のEcoRIリンカーを有しており、14塩
基がアミノ酸配列を反映していた。ポリ(A)+RNAにハイブリダイズする混合物
中のオリゴヌクレオチドプライマー配列は、デオキシヌクレオチド三リン酸(dN
TPs))および逆転写酵素の存在下で、所望のmRNAの部分に相補的なDNA鎖の
合成を始めるのに用いられた。次に第一の合成された鎖に相補的な第二のDNA
鎖を以下のようにして調製した。すなわちウシ血管内皮細胞増殖因子の15位から
19位のアミノ酸配列に基づいて作製した、8倍縮重合成24塩基オリゴヌクレオチ
ド混合物からなるセンス鎖プライマーに第一の合成鎖をハイブリダイズさせて作
った。この第二の鎖のオリゴヌクレオチドプライマーは、5’末端に10塩基のHi
ndIIIリンカーを連結させており、アミノ酸配列を反映する14塩基領域を含んで
いた。第一の合成DNA鎖にハイブリダイズする、混合物中のオリゴヌクレオチ
ドプライマー配列は、dNTPおよびDNAポリメラーゼI、すなわちクレノウフラ
グメントの存在中で、第二のDNA鎖の合成を始めるのに用いられた。プライマ
ー中の10塩基リンカー配列は、第一のDNA鎖にハイブリダイズし得ないため、
第二鎖の合成は、残りの14ヌクレオチドが第一のDNA鎖にハイブリダイズした
まま残り得る28℃で行われた。DNAポリメラーゼ、すなわちクレノウフラグメ
ントは、第二の合成に用いられる。なぜならば、通常ポリメラーゼチェーンリア
クションに用いられるThermus aquaticus(Taq) DNAポリメラーゼが、この温
度でDNA合成を触媒することができないからである。第二の鎖合成によって、
ウシ血管内皮細胞増殖因子の15位から38位のアミノ酸の部分(および39位のアミ
ノ酸のコドンの三分の二)をコードするセンス鎖ができる。
【0064】
次に2つの合成DNA鎖を分離し、そして反応の連続的な繰り返しによって所
望の配列を増幅させた。この反応では、センスおよびアンチセンスの両方のオリ
ゴヌクレオチドプライマー混合物およびThermus aquaticus(Taq) DNAポリメラー
ゼの存在中で、一本鎖DNAを相補鎖の合成のための鋳型として用いた。相補鎖
のそれぞれの合成の後、反応混合物を加熱して鎖を分離し、そしてこの反応を操
り返した。
【0065】
増幅の30サイクルの後、ポリメラーゼチェーンリアクション混合物から得たD
NAを、6%ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけた。このゲル中のDNAを
臭化エチジウムで染色し、15位から38位までのアミノ酸に対するコード配列(お
よびアミノ酸39位のコドンの三分の二)およびプライミングオリゴヌクレオチド
のHindIIIおよびEcoRIリンカーを含む大きさに相当するバンドをゲルから切り出
した。臭化エチジウム染色したゲルを図5の写真に示す。ここで増幅された所望
の配列を表す主要なバンドは、視覚的にはっきりと見分け得る。主要なバンドを
含む切り出したゲル片から、DNAを電気的に溶出し、HindIIIおよびEcoRIで消
化し、HindIII-およびEcoRI-カットしたM13mp19およびM13mp18ファージベクター
中にライゲーションして入れた。E. coli JM103宿主細胞にこのライゲーション
混合物を入れて形質転換した後単離した無色のプラークのDNA配列分析によっ
て、血管内皮細胞増殖因子の15位から38位のアミノ酸(および39位のアミノ酸の
コドンの三分の二を含む)をコードするcDNAが実際に得られたことが判った
。これらの組換えファージ(pET-19A)の1つに含まれている増幅させたDNA
配列を、ウシ濾胞星状細胞cDNAライブラリーからクローン化したcDNA配
列を回収するためのプローブとして用いた。単離したクローン化配列は、ウシ血
管内皮細胞増殖因子の成熟型のうちの1つのN末端アミノ酸の14個以外の全てを
コードする797塩基対挿入部からなっていた。単離されたクローン化挿入物を、p
UC8のEcoRI部位にライゲーションしていれ、pST800と名付けられたプラスミドを
作製した。この挿入物は、図3a(図3aでは、挿入物のそれぞれの端にあるEc
oRIリンカーは示されていない;従って、配列には挿入物の7位のヌクレオチド
から番号をつけてある)に示されるようなヌクレオチド配列を含んでいた。bV
EGF120の第15位から120位のアミノ酸のコード領域は、図3aの第9位から32
6位のヌクレオチドで表されている。
【0066】
図3aに示す、単離したDNA配列から推定されるアミノ酸配列は、74位のア
ミノ酸であるアスパラギン残基の位置(ヒト型の75位のアミノ酸に対応する)に
1つのN結合糖付加の可能性のある部位を含む。この部位での約3kDのN結合糖
付加によって、コードされるタンパク質は、約17kDの全分子量であることが予想
される。これはGospodarowiczら、そしてFerraraおよびHenzelによって単離され
た血管内皮細胞増殖因子サブユニットで見られた約23kDの見かけの分子量よりか
なり小さい。このため、単離されたcDNAが、以前に観察されたものとは異な
る型の血管内皮細胞増殖因子をコードすることは明らかである。ポリメラーゼチ
ェーンリアクション実験によって、血管内皮細胞増殖因子コード領域の別の型が
存在することが判った。
【0067】
ポリメラーゼチェーンリアクションは、図6の70位から126位の塩基に相当す
るセンスオリゴヌクレオチドおよび513位から572位の塩基に相当するアンチセン
スを用いて、濾胞星状ポリ(A)+RNAから始められた。できた産物をBstNI(そ
れぞれのプライマーの中を切断する)消化したのちにポリアクリルアミドゲル分
析したところ、約300bpおよび約450bpの2つの主要な種類があることが判った。
これらの産物の両方は、M13ベクター中にサブクローンされ、そして塩基配列の
決定が行われた。小さい方の産物(311bp)のDNA配列は、PCRでpST800中のc
DNAが増幅された場合に予想されるものに相当した。大きい方のフラグメント
の配列は、132bpの挿入物(図6の四角で囲んだ配列)以外は、311bpの産物と同
一であった。以下に示されるように得られた、ヒト血管内皮細胞増殖因子のゲノ
ムのクローンの分析によって、この挿入物がエクソンとイントロンのつなぎ目に
あることがわかった。これによって、2つのコード領域の型は、別々のエクソン
スプライシングによってできたことが示唆される。
【0068】
図1あるいは図3aに示してあるDNA配列は、全長のウシ血管内皮細胞増殖
因子、あるいは対応するヒトのタンパク質を含む、他の種の血管内皮細胞増殖因
子、あるいは血管内皮細胞増殖因子としての同じ遺伝子ファミリー中の関連タン
パク質、をコードするDNAを回収するのに有用である。
【0069】
pST800の配列の上流の配列情報を有する、ウシ血管内皮細胞増殖因子のcDN
Aクローン(図3a)を得るために、Frohman, M.A.ら、PNAS(USA)(1988) 85, 8
998-9002に記載の"RACE"ポリメラーゼチェーン反応法の変法を用いた。リンカー
を血管内皮細胞増殖因子のmRNAのプライマー伸長で得た2本鎖の5’末端にライ
ゲートした。その後、この元来のプライマー伸長オリゴヌクレオチドおよびリン
カーに相補的なオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いてポリメラーゼチェ
ーン反応を行った。プライマーをHindIIIで消化し、M13ベクターにサブクローニ
ング後、得られたポリメラーゼチェーン反応生成物の配列分折を行い、血管内皮
細胞増殖因子の成熟アミノ末端をコードする配列(図6)を得た。得られた最も
長いcDNAクローンは、成熟タンパク質のコード領域(AGTGGTCCCAGGCTGCACCC
...)の始まりから14bp、5’末端側に延長しており、血管内皮細胞増殖因子の
前駆体の4つの付加アミノ酸(WSQAAPMA...)を明らかにした。
【0070】
ヒト型の血管内皮細胞増殖因子のDNA配列を回収するために、図1、図3a
、あるいは図6の配列、好ましくは図3aあるいは図6の配列、あるいはそれら
のセグメントを、cDNAライブラリーあるいはゲノムライブラリーから所望の
配列を回収するためのプローブとして用いた。ゲノムライブラリーは、公知の技
術によって調製され得るし、今では商業的に入手可能である。ヒト血管内皮細胞
増殖因子をコードするゲノムDNA配列が単離され得る適切なゲノムDNAライ
ブラリーは、ヒト腺維芽細胞のゲノムライブラリーである(Stratagene Inc. La
Jolla, CA)。W138細胞株から得たこのライブラリーは、λ FIX(登録商標)ベク
ター中に>15kbのDNA挿入物を有する。あるいは、ゲノムライブラリーは、Fr
ischauf,A.M.の、Methods in Enzymology、Berger,S.L. およびKimmel,A.R.
編,Vol.152,pp.190-199(1987)Academic Press,N.Y.に記載の方法によって
調製され得る。cDNAライブラリーを調製する方法は、また当業者にはよく知
られている(例えば、Kimmel,A.R.およびBerger,S.L.,同誌、pp、307-316を参
照)。好ましくは、cDNAライブラリーは、活発に血管内皮細胞増殖因子を生
産している細胞株あるいは組織から調製される。ヒトタンパク質をコードするc
DNA配列の単離のためには、胎児ヒト血管平滑筋細胞から調製されたcDNA
ライブラリーを用いるのが好ましい。前記のようにして得られた血管内皮細胞増
殖因子をコードするDNA配列は、所望の宿主中でDNA配列の発現を指令し得
る調節配列の制御下に、適切な発現ベクターに挿入される。回収されるDNA配
列がイントロンを含むゲノム配列である場合には、次に、真核宿主に適した発現
ベクターにその配列を挿入することが望ましい。原核宿主における血管内皮細胞
増殖因子をコードするゲノムDNAの発現は、イントロン配列を除くためのコー
ドされたRNAの正確なスプライシングを伴う。このことによって所望のタンパク
質をコードするmRNAの鋳型を生産する。あるいは、合成DNA配列が、ゲノム配
列中のイントロン配列を除去した後に得られるコード配列を提示する合成オリゴ
ヌクレオチドから構築され得る。血管内皮細胞増殖因子をコードする、この合成
配列あるいはcDNA配列を含有する発現ベクターは、原核あるいは真核宿主で
タンパク質を発現するために使用され得る。例示的な制御配列のDNAおよび宿
主は下記の標準工程の項に記載されている。
【0071】
生物学的に活性な血管内皮細胞増殖因子は、本発明の方法に従って、ホモダイ
マー分子として生産される。これに関連して、用語「ホモダイマーの」は、2個
のサブユニットが同じアミノ酸の一次構造を有するダイマーである。前に示した
ように、サブユニットの1個あるいは両方が、N-結合のグリコシル化によって
修飾され得るか、あるいはサブユニットの両方とも修飾され得ない。完全に活性
なタンパク質は、ダイマーを形成するジスルフィド結合を形成させる条件下で、
本発明のDNA配列によってコードされるポリペプチド配列の発現および/また
は回収により産生される。
【0072】
本発明は、さらに、アミノ酸の一次構造の一部が、血小板由来の増殖因子のA
鎖サブユニットあるいはB鎖サブユニットのいずれかの部分、あるいは血管内皮
細胞増殖因子の部分に対応するアミノ酸の一次構造の部分に対応する、キメラの
ダイマータンパク質の生産法を提供する。特に、第1のポリペプチド鎖および第
2のポリペプチド鎖を有するキメラ増殖因子が提供されていて、該鎖間はジスル
フィド結合されており、第1のポリペプチド鎖は、少なくとも血小板由来の増殖
因子のA鎖サブユニットあるいはB鎖サブユニットのいずれかのアミノ酸配列の
一部分を有し、そして第2の鎖は、少なくとも血管内皮細胞増殖因子のアミノ酸
配列の一部分を有する。
【0073】
血小板由来の増殖因子は、約30kDのダイマーであって、ホモダイマーおよびヘ
テロダイマー型で単離されている。血小板由来の増殖因子のヘテロダイマーは、
A鎖およびB鎖と呼ばれる2つのポリペプチド鎖を有している。成熟A鎖および
B鎖は、約40%のアミノ酸配列の相同性を示し、8個のシステイン残基が完全に
保存されている。血小板由来の増殖因子は、インビボでA-AあるいはB-Bホモ
ダイマーのいずれか、あるいはA-Bヘテロダイマーとして存在する。
【0074】
血小板由来の増殖因子のA鎖およびB鎖サブユニットをコードするDNA配列
は、単離され配列分析されている(A鎖cDNA(ヒト)は、Betsholtz,C.ら
Nature(1986)320に記載されている;A鎖ゲノムDNA(ヒト)は、Bonthron,
D.T.ら、PNAS(1988)85:1496に記載されている;B鎖cDNA(ヒト)は、Coll
ins, T. ら、Nature(1985)316:748に記載されている;およびB鎖ゲノムDNA
(ヒト)は、Chin,I. -M.ら、Cell (1984) 37:123に記載されている)。図4は
、ヒト血小板由来の増殖因子の、5’末端にBamHIリンカー結合のおよび3’末
端にEcoRVリンカー結合の、それぞれのA鎖およびB鎖サブユニットの単離され
たcDNA配列および推定される前駆体のアミノ酸配列を示している。これらの
配列のそれぞれは、適切な調節エレメントの制御の下に、適当な発現ベクターに
挿入し、適当な宿主、例えば、E. coli あるいはチャイニーズハムスター卵巣(C
HO)細胞あるいは酵母などの原核宿主において発現され得る。
【0075】
本発明が意図するキメラ増殖因子タンパク質の例には、ジスルフィド結合によ
って、血管内皮細胞増殖因子のポリペプチド鎖の全長に結合された血小板由来の
増殖因子のA鎖サブユニットの全長を有するダイマータンパク質;およびジスル
フィド結合によって、血管内皮細胞増殖因子のポリペプチド鎖の全長に結合され
た血小板由来の増殖因子のB鎖サブユニットの全長を有するダイマータンパク質
が含まれる。他の上記よりは望ましくない実施態様において、ダイマータンパク
質は、ジスルフィド結合された2つのポリペプチド鎖で、片方の鎖あるいは両方
の鎖が、血小板由来の増殖因子あるいは血管内皮細胞増殖因子のA鎖あるいはB
鎖サブユニットのいずれかのN末端部分に対応するアミノ酸配列を有するN末端
セグメントであり、そして選択されなかった他の2つの鎖の1つから選ばれたC
末端配列に対応するC末端セグメントからなり得る。例えば、血小板由来の増殖
因子のA鎖のN末端の1/2が、血管内皮細胞増殖因子のC末端の1/2にペプ
チド結合された1つのポリペプチド鎖;および血管内皮細胞増殖因子の全アミノ
酸配列からなるもう一方のペプチド鎖であるダイマーが調製され得る。逆に、1
つのポリペプチド鎖は、血小板由来の増殖因子のA鎖あるいはB鎖サブユニット
のC末端セグメントに結合された血管内皮細胞増殖因子のN末端部分からなり得
、そして、もう一方のポリペプチド鎖は、血管内皮細胞増殖因子のアミノ酸配列
を有し得る。容易に明らかになるように、多くの異なるハイブリッドの組み合せ
が調製される。
【0076】
本発明のキメラ増殖因子を調製するために、各々の所望の鎖をコードするDN
A配列は、プラスミドなどの適当な発現ベクター内に、宿主細胞でその発現を指
令し得る調節配列の制御下に挿入される。次に、宿主細胞は発現ベクターによっ
て形質転換される。所望であれば、1つの宿主を、2つの鎖用の各発現ベクター
で同時形質転換し得る。あるいは、別の宿主細胞を、2つのポリペプチド鎖を同
時にコードするベクターで形質転換し得る。次に、このポリペプチド鎖を、従来
の方法によって発現させ、そして回収する。そのペプチド鎖が、宿主細胞から分
泌されるように分泌シグナル配列と共に発現されるときには、それらは、合成お
よび分泌の間に自然に正確なダイマー構造を形成し得る。次に、そのダイマーは
、Gospodarowiczら、PNAS(1989)86(19):7311-7316、およびFerraraおよびHenzel
BBRC(1989)161(2):851-858に記載の方法を用いて精製し得る。この経路で正確
なダイマー構造が得られない場合には、あるいは、キメラの2つの鎖が異なる宿
主で合成される場合には、次に、鎖の再折り畳みおよびダイマー化の手段の1つ
の例は、下記の実施例により詳細に記載されているように、グアニジン-HCl、Na
2SO3およびNa2S4O6で部分的に精製された鎖あるいは精製された鎖を処理するこ
とである。次に、得られたS-スルホン化され、変性されたタンパク質は、最終精
製の前に、5mMのグルタチオン、0.5mMのグルタチオンジスルフィド、および尿
素の存在下に再折り畳みおよびダイマー化の両方がなされる。
組成物および使用
本発明によって提供される血管内皮細胞増殖因子(bVEGF120、bVEG
164、hVEGF121、あるいはhVEGF165)は、創傷治癒剤として有用で
あり、特に、血管組織に内皮を再形成したい部位あるいは新しい毛細血管床(脈
管形成)の増殖が重要である場所に塗布するのに有用である。
【0077】
従って、血管内皮細胞増殖因子は、床ずれ、静脈潰瘍、および糖尿病性の潰瘍
の種類を含む皮膚潰瘍などの、十分に深い創傷の処置に用いられ得る。さらに、
血管内皮細胞増殖因子は、火傷あるいは外傷の部位に皮膚移植あるいは皮弁を調
製するために脈管形成が必要とされる十分に深い火傷あるいは外傷の処置に用い
られ得る。この場合には、血管内皮細胞増殖因子は、部位に直接に塗布されるか
、移植する前に移植される皮膚あるいは皮弁を浸すのに用いられる。同様に、血
管内皮細胞増殖因子は、火傷、他の外傷後、あるいは化粧の目的に、再成形が必
要とされる成形外科に用いられ得る。
【0078】
脈管形成はさらに、傷を清潔に感染しないように保つのに重要である。従って
、血管内皮細胞増殖因子は、外科全般および切口および裂傷の修復に関して使用
し得る。特に、感染の危険性の高い腹の傷の処置に有用である。さらに、新生血
管の形成は、骨折の修復に重要である。なぜなら、骨の損傷部位に血管が成長発
達するからである。従って、血管内皮細胞増殖因子の骨折部位への投与は、もう
一つの使用法である。
【0079】
血管内皮細胞増殖因子が、上記のように局部の創傷治癒に用いられる場合には
、脈管組織の内皮再形成のために、下記に示すいずれかの経路、あるいは、より
好ましくは、局所的な方法によって投与され得る。これらの場合には、溶液、ス
プレー、ゲル、クリーム、軟膏あるいは乾燥粉末のいずれかとして直接に損傷部
位に投与される。血管内皮細胞増殖因子を損傷部分にゆっくりと放出するように
制御する素子もまた用いられる。局部塗布では、血管内皮細胞増殖因子は、1回
投与、あるいは1週間から数週間の期間毎日あるいは数日毎の投与処方のいずれ
かで、50から1000μg/mlの濃度範囲で塗布される。一般的に、投与される局所調
合の量は、創傷の表面積に基づいて約0.1から100μg/cm2の血管内皮細胞増殖因
子の塗布で十分である。
【0080】
血管内皮細胞増殖因子は、その工程で血管内皮細胞が除去あるいは破壊され、
アテロームプラークの圧縮を伴うバルーン血管形成術後の創傷治癒剤として使用
され得る。血管内皮細胞増殖因子は、全身的にあるいは局所的に静脈内に、静脈
内ボーラス注入あるいは点滴のいずれかで、血管内部表面に塗布され得る。所望
であれば、血管内皮細胞増殖因子は、長時間にわたり、マイクロメータリングポ
ンプを用いて投与され得る。血管内投与に適した組成物は、内皮細胞の増殖を促
進するのに効果的な量の血管内皮細胞増殖因子、および非経口用のキャリアー物
質を含有する。血管内皮細胞増殖因子は、広い濃度範囲の組成物として存在し得
る。例えば、単回あるいは複数回の塗布処方で投与される、患者当り3から10ml
の注射を用いる場合には約50μg/mlから約1,000μg/mlの濃度である。通常の生
理食塩水あるいは5から10%のデキストロースなどの、公知のあらゆる非経口キ
ャリアー溶液が使用され得る。
【0081】
血管内皮細胞増殖因子は、血管移植手術での内皮の形成を促進するために使用
され得る。移植血管あるいは合成物質のいずれかを用いる血管移植の場合に、例
えば、血管内皮細胞増殖因子は、血管内皮細胞の増殖を促進するために、移植片
の表面に塗布され得るか、および/または、移植片およびそこにある血管とのつ
なぎ目に塗布され得る。このような塗布の場合、血管内皮細胞増殖因子は、前記
のバルーン脈管形成用のように静脈内に、あるいは手術前あるいは手術中のいず
れかに、移植片および/またはそこのある血管の表面に直接塗布され得る。この
ような場合には、病巣の表面に付着され、肉厚のキャリアー物質中にいれた血管
内皮細胞増殖因子を塗布するのが望ましい。適切なキャリアー物質には、例えば
、1−5%のカルボポール(carbopol)が含まれる。血管内皮細胞増殖因子は、
キャリアー中には広い濃度範囲、例えば約50μg/mgから約1,000μg/mgで含まれ
得る。あるいは、血管内皮細胞増殖因子は、非経口溶液として、部位にマイクロ
メータリングポンブで送られ得る。
【0082】
血管内皮細胞増殖因子は、さらに、側副循環の血管の内皮細胞の増殖を促進す
ることによって、心筋梗塞形成後の血管破壊の修復のために、および冠状動脈の
バイパス手術用の包囲に使用され得る。血管内皮細胞増殖因子はこの目的に、静
脈内に個々の注射によって、または前述のようにある期間マイクロメータリング
ポンプによって、あるいは直接注入によって、あるいは心臓の損傷した筋肉の部
位への注射によって投与される。
【0083】
血管内皮細胞増殖因子は、さらにインビトロでの血管細胞培養用の増殖因子と
して使用され得る。このような使用には、血管内皮細胞増殖因子は、約10pg/ml
から約10ng/mlの濃度で細胞培養培地に添加され得る。
【0084】
本発明のハイブリッド増殖因子分子は、血小板由来の増殖因子と血管内皮細胞
増殖因子との中間の有糸分裂促進活性を示すと予想され、あるいは、ある場合に
は、脈管形成のインヒビターとして用いられ得る。2つの因子の活性の間の最も
大きな違いは、血小板由来の増殖因子は、実質的な有糸分裂活性を平滑筋細胞お
よび腺維芽細胞には示すが、内皮細胞には示さないことである。一方、血管内皮
細胞増殖因子は逆の特性を示す。PDGF A鎖および/またはB鎖の平滑筋細胞お
よび腺維芽細胞に対する有糸分裂活性は、創傷治癒のための張力を与える。従っ
て、血小板由来の増殖因子と血管内皮細胞増殖因子とのハイブリッドであるその
増殖因子は、新生血管の形成の誘導、および治癒の間および治癒後に創傷部分に
張力を与えるために塗布され得る。このハイブリッド増殖因子は、前記の血管内
皮細胞増殖因子と基本的には同様の様式で、同様の投与量で付与される。
【0085】
種々の型の血管内皮細胞増殖因子をコードするDNA配列、およびそれらの推
定アミノ酸配列の解明は、さらに血管内皮細胞増殖因子活性のインヒビターを生
産する方法を提供する。血管内皮細胞増殖因子の脈管形成活性の阻害は、増殖中
の癌に必要な血液供給を提供するには新生血管の形成が必要とされるので、例え
ば癌の増殖を遅らせたり阻むのに有用である。血管内皮細胞増殖因子に対する抗
体、あるいは血管内皮細胞増殖因子のレセプターには結合し得るが、全長の血管
内皮細胞増殖因子の脈管形成活性は示さない血管内皮細胞増殖因子のフラグメン
トが投与され得る。
【0086】
発現され単離された血管内皮細胞増殖因子タンパク質に対する抗体は、公知の
技術で生産され得る。治療用抗体はポリクローナル抗体あるいはモノクローナル
抗体であり得る。抗体は、ウサギ、マウスあるいは他の適当な動物で、標準的な
免疫のプロトコールを用い、そして抗血清を回収することにより調製される。さ
らに、免疫された動物の抗体分泌細胞は、血管内皮細胞増殖因子と免疫反応する
抗体によりスクリーニングされ得るハイブリドーマを生産する細胞融合法を用い
て、株化され得る(例えば、"Antibodies: A Laboratory Manual",E. Harlow,
およびD.Lane著、Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor,N.Y.
を参照)。適切な処置の処方(すなわち、投与量、投与頻度、全身的投与あるい
は局所的投与など)の決定は、当分野の技術範囲内である。投与には、抗体は、
薬学的に受容可能な非経口溶液と共に、単位投与量の注射用形態(溶液、懸濁液
、乳液など)に調合される。このような溶液は、通常無毒性および非治療性であ
る。このような溶液には、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、
およびハンク液がある。不揮発油およびエチルオレイン酸などの非水溶液もまた
使用され得る。好ましい溶媒は、5%(w/w)のヒトアルブミン生理食塩水溶液
である。溶媒は、等張性および化学安定性を増大する物質のような少量の添加剤
、例えばバッファーおよび保存剤を含有し得る。抗体は、このような溶媒中に、
典型的には、約20μg/mlから約20mg/mlの濃度に調合される。
【0087】
さらに、本明細書には、例えば、腫瘍の増殖を遅らせるかあるいは阻むための
脈管形成を阻害する方法が提供される。この方法には、2つの異なるサブユニッ
トを有するヘテロダイマーのタンパク質の投与が含まれ、この各々のサブユニッ
トは、hVEGF121、hVEGF165、およびhVPF189の成熟アミノ酸配列
から選択される。用語hVPF189とは、図8に示されている転写されたゲノム
DNA配列の現在では分化メッセージのスプライシングから生じることが見い出
されている、189個のアミノ酸のタンパク質である。hVPF189のホモダイマー
型は、血管透過性因子と呼ばれている。hVPFのアミノ酸配列は、hVEGF
121およびhVEGF165の両者と、成熟タンパク質のN末端の114個のアミノ酸
およびC末端の5個のアミノ酸が相同である。しかし、hVPF189は、hVE
GF121には存在しない、115位から始まる68個のアミノ酸の配列を有する。hV
PF189の全cDNAコード配列および推定アミノ酸配列は、Keck, P. ら、Scie
nce(1989)246:1309-1312に記載されている。この記載は、本明細書に参考として
援用されている。特定の理論あるいは作用の機構に束縛されることを望んではい
ないが、ダイマーPDGF様の増殖因子は、そのダイマーの各々のサブユニットが、
細胞表面の別々のレセプターサブユニットに結合する機構、すなわちレセプター
活性を誘起するのに必要な2つの隣接したレセプターサブユニットに結合して生
物学的活性を誘発すると考えられる。血管内皮細胞増殖因子ファミリーの異なる
サブユニットからなるヘテロダイマーの投与によって、サブユニットの各々は、
各々のサブユニットは特定のレセプターのサブタイプに結合し得る。そのことに
よって、結合レセプターを、外来のホモダイマー血管内皮細胞増殖因子との相互
作用から効果的に阻害する。しかし、投与されたホモダイマーの他のサブユニッ
トは、異なる血管内皮細胞増殖因子のサブタイプであるので、そのダイマーは、
同じサブタイプの第2のレセプターサブユニットに結合してレセプターの生物学
的活性を誘発することができない。
【0088】
脈管形成を阻害するためにこのような方法に用いられるヘテロダイマータンパ
ク質は、hVEGF121、hVEGF165あるいはhVPF189の所望のアミノ酸
配列を、別々の宿主で発現させることによって、あるいは同じ宿主で同時発現さ
せることによって生産し得る。次に、ダイマー化を、本明細書の他のところに記
載した方法でなし得る。所望のヘテロダイマーは、タンパク質のサイズ分離に都
合のよい任意の方法によってホモダイマー型と分け得る。ヘテロダイマーは、血
管内皮細胞増殖因子を脈管形成賦剤として投与する同じ様式で、抗脈管形成処置
が必要な宿主、例えば、癌にかかっている患者に投与される。正確な投与処方お
よび投与量の決定は、当分野の技術範囲内である。
【0089】
脈管形成を阻害する他の方法は、1つのサブユニットが、hVEGF121、h
VEGF165あるいはhVPF189から選択され;他のサブユニットが生物学的に
不活性なフラグメント、あるいは、1つあるいはそれ以上のアミノ酸が、そのサ
ブユニットを不活性にする異なるアミノ酸で置換されている、hVEGF121
hVEGF165あるいはhVPF189のアナログである;ヘテロダイマーの投与で
ある。
【0090】
血管内皮細胞増殖因子は癌細胞中では高いレベルで産生されるので、従来の免
疫アッセイで、抗血管内皮細胞増殖因子抗体を用い、患者の腫瘍の存在を検出す
るのに用いられ得る。血管内皮細胞増殖因子に対する抗体、好ましくはhVEG
121あるいはhVEGF165などのヒト血管内皮細胞増殖因子に対する抗体は、
公知の技術によって生産し得る。抗体はポリクローナル抗体あるいはモノクロー
ナル抗体であり得る。血管内皮細胞増殖因子のレベルは、液体サンプル、好まし
くは、腫瘍を有すると思われる患者の血清サンプル中で、測定される物質に対す
る抗体を用いて、任意の従来の免疫アッセイ法を用いて定量される。好ましいア
ッセイは、サンドイッチタイプの酵素免疫アッセイあるいは放射免疫アッセイな
どの、サンドイッチタイプの免疫アッセイである。血管内皮細胞増殖因子の循環
レベルは、これらの方法によって、1−1000pg/mlレベルが、よい信頼性測定さ
れ得る。血管内皮細胞増殖因子の測定されたレベルを、正常人、すなわち腫瘍を
有さないヒトから得たコントロールレベルと比較する。血管内皮細胞増殖因子の
増加した循環レベルは、腫瘍と判断される。
標準的な方法
細胞の形質転換、ベクターの構築、メッセンジャーRNAの抽出、cDNAライ
ブラリーの調製などに用いられるほとんどの手順は、当分野では広く行われてい
て、ほとんどの専門家には、特定の条件および手順が記載されている標準的な資
材はよく知られている。しかし、便宜上、以下の項にガイドラインとして掲げた

【0091】
宿主および制御配列
原核および真核系の両者が、血管内皮細胞増殖因子のコード配列を発現するた
めに使用され得る。もちろん原核宿主は、クローニングの方法に最も都合がよい
。最も頻用される原核宿主は、種々のE. coli株に代表される;しかし、他の微
生物株もまた使用され得る。宿主微生物に適した種由来の、複製部位、選択マー
カーおよび制御配列を有するプラスミドベクターが使用され得る;例えば、E. c
oliは、典型的には、Salmonellaから得た2つ、およびBolivarら、Gene(1977)2:
95に記載のE. coliから単離された1つの、3つの天然に存在するプラスミドの
部分から構築されたプラスミドであるpBR322の誘導体を用いて形質転換される。
pBR322は、アンピシリンおよびテトラサイクリン耐性の遺伝子を含有し、所望の
ベクターの構築で保存あるいは破壊し得る、複数の選択マーカーを提供する。一
般的に用いられる原核制御配列(または、本明細書では「調節エレメント」とも
呼ばれる)は、本明細書では転写開始プロモーター、必要に応じてオペレーター
を伴って、リボソーム結合部位配列を含むと定義されていて、この制御配列には
、β-ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)およびラクトース(lac)プロモーター系
(Changら、Nature(1977)198:1056)、およびトリブトファン(trp)プロモータ
ー系(Goeddelら、Nucleic Acids Res. (1980) 8:4057)およびλ由来PLプロモ
ーターおよびN-遺伝子リボソーム結合部位(Shimatakeら、Nature (1981) 292:
128)などの一般に用いられているプロモーターが含まれる。
【0092】
細菌に加えて、酵母などの真核微生物も宿主として用い得る。多くの他の菌株
や種が一般に入手可能であるが、Saccharomyces cerevisiae、パン酵母の研究用
菌株が最も用いられる。例えば、Broach, J.R., Meth. Enz.(1983)101:307の2
μの複製起点、あるいは酵母適合の他の複製起点(例えば、Stinchcombら、Natu
re (1979) 282:39,Tschumper, G. ら、Gene(1980) 10:157およびClarke, L.ら
Meth. Enz.(1983)101:300を参照)を含んだベクターが使用し得る。酵母ベク
ターの制御配列には、解糖系酵素の合成のプロモーターが含まれる(Hessら、J.
Adv. Enzyme Reg.(1968)7:149:Hollandら、Biochemistry(1978)17:4900)。当
分野に公知の他のプロモーターには、3-ホスホグリセレートキナーゼのプロモ
ーターが含まれる(Hitzemanら、J. Biol. Chem.(1980)255:2073)。さらに、増
殖条件および/または遺伝的背景によって制御される転写の利点を有する他のプ
ロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロームC、酸性ホス
ファターゼ、窒素代謝関連の分解酵素、αファクター系、およびマルトースおよ
びガラクトースの利用に関する酵素のプロモーター領域である。ターミネーター
配列は、コード配列の3’末端にあることが望ましい。このようなターミネータ
ーは、酵母由来の遺伝子のコード配列の後の3’非翻訳領域に見い出される。
【0093】
もちろん、多細胞生物由来の真核宿主細胞培養物中のポリペプチドをコードす
る遺伝子を発現させることもまた、可能である。例えば、Axelら、4,399,216を
参照されたい。これらのシステムは、イントロンをスプライスして除く能力とい
う付加的な利点があるため、ゲノムフラグメントを直接発現させるのに用いられ
得る。これらのシステムにおいてはまた、ある種の天然のタンパク質において生
じるのと類似した翻訳後修飾が行われ得る。有用な宿主細胞系にはVEROおよびHe
La細胞、およびチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が包含される。そのよ
うな細胞の発現ベクターは、通常、哺乳類細胞に適合するプロモーターおよび制
御配列を有する。それらには、例えば、一般に使用されているシミアンウイルス
40(SV40)由来の初期および後期プロモーター(Fiersら、Nature(1978)273:1
13)あるいは例えばポリオーマ、アデノウイルス2、ウシパピローマウイルス、
またはトリ肉腫ウイルス由来の他のウイルスプロモーターがある。制御可能なプ
ロモーターであるhMT-IIA(Karin, M. ら、Nature(1982) 299:797-802)もまた
使用され得る。哺乳類細胞宿主システムの形質転換の一般的な状況はAxel(前出
)に記載されている。「エンハンサー」領域もまた、発現を最適化するのに重要
であることは明らかである。これは一般に非コードDNA領域においてプロモー
ター領域の上流または下流に見出される配列である。必要に応じて、ウイルス源
から複製の起点が得られうる。しかし、真核生物でのDNA複製においては、染
色体への組み込みは一般的なメカニズムである。
形質転換
使用する宿主細胞に依存して、そのような細胞に適切な標準的手法を用い、形
質転換が行われる。原核生物あるいは実質的に細胞壁バリアーを有する他の細胞
には、塩化カルシウムを用いたカルシウム処理[Cohen, S. N., PNAS (1972) 69:
2110に記載]あるいはRbCl2法[Maniatisら、Molecular Cloning: ALaboratory M
anual (1982)Cold Spring Harbor Press,p. 254およびHanahan, D., J. Mol.
Biol. (1983)166:577-580に記載]が使用され得る。そのような細胞壁を持たない
哺乳類細胞については、リン酸カルシクム沈澱法[Grahamおよびvan der Eb, Vir
ology (1978)52:546;必要に応じてWigler,M. ら、Cell(1979)16:777-785のよ
うに改変される]が用いられ得る。酵母への形質転換は、Beggs, J. D., Nature(
1978) 275:104-109またはHinnen, A. ら、PNAS(1978)75:1929の方法により行わ
れ得る。
ベクターの構築
ここで提供されるDNA配列の発現のための所望のコードエレメントおよび制
御エレメントを含む適切なベクターの構築には、当該技術分野で充分に理解され
ている標準的な連結および制御酵素による手法が採用される。単離されたプラス
ミド、DNA配列または合成されたオリゴヌクレオチドを、開裂させ、整え、そ
して所望の形に再連結させる。
【0094】
ベクターを形成するDNA配列は、多くのソースから入手可能である。バック
ボーンのベクターおよび制御システムは、通常、構築における配列の大部分とし
て用いられる利用可能な「宿主」ベクターに見い出される。典型的な配列は上記
宿主および制御配列に述べられている。適切なコード配列については、構築の
最初の工程は、cDNAまたはゲノムDNAライブラリーから適切な配列を回収
することであり得、通常そうである。しかし、ひとたびその配列が開示されれば
、遺伝子配列の全体を、個々のヌクレオチド誘導体からインビトロで合成するこ
とが可能である。かなり長い遺伝子の全体の配列、例えば500-1000bpは、オーバ
ーラップする相補的な個々のヌクレオチドを合成し、そして、デオキシリボヌク
レオチド三リン酸の存在下でDNAポリメラーゼを用いて一本鎖のオーバーラッ
プしない部分を埋めることにより、調製され得る。このアプローチは、既知の配
列のいくつかの遺伝子の構築に成功裏に用いられている。例えば、Edge, M.D.,
Nature(1981)292:756;Nambair, K.P.ら、Science(1984)223:1299;Jay, Ernest
J. Biol. Chem.(1984)259:6311を参照されたい。
【0095】
合成オリゴヌクレオチドは、ホスホトリエステル法[Edgeら、Nature(前出)
およびDuckworthら、Nucleic Acids Res.(1981) 9:1691に記載]またはホスホル
アミダイト法[Beaucage, S. L., およびCaruthers, M.H. Tet. Letts. (1981)22
:1859およびMatteucci, M.D., およびCaruthers, M. H., J. Am. Chem. Soc.(19
81) 103:3185に記載]により調製され、そして、市販の自動オリゴヌクレオチド
合成装置により調製され得る。アニーリングに先立つ一本鎖のリン酸化または標
識のためのリン酸化は、1ナノモルの基質に対して過剰量(例えば約10ユニット
)のポリヌクレオチドキナーゼを用い、50mM Tris、pH7.6、10mM MgCl2、5mMジ
チオスレイトール、1-2mM ATP、1.7ピコモル γ-32P-ATP(2.9mCi/mmole)、0.
1mMスペルミジン、0.1mM EDTAの存在下で達成される。
【0096】
所望のベクターの成分がひとたびこのようにして利用可能となれば、それらは
、標準的な制限切断および連結の方法を用いて切断および連結され得る。
【0097】
部位特異的なDNAの切断は、当該技術分野で一般に理解されている条件下で
、適当な制限酵素(または酵素)で処理することにより達成され、そして、その
詳細は、これらの市販の制限酵素の製造者により規定されている。例えば、New
England Biolabsの製品カタログを参照されたい。通常、約1μgのプラスミドま
たはDNA配列は、バッファー溶液約20μ中の1ユニットの酵素で切断される。
ここでの実施例においては、典型的には、DNA基質の消化を完全にするために
過剰の制限酵素が用いられる。実施可能なインキュベートの時間は約37℃におい
て約1時間から2時間であるが、それは変更され得る。インキュベートの後、タ
ンパク質は、フェノール/クロロホルムによる抽出によって除去され、そしてそ
の後にエーテル抽出し得、そして核酸は、エタノール沈澱により水性フラクショ
ンから回収される。必要であれば、標準法を用いたポリアクリルアミドゲルまた
はアガロースゲル電気泳動による、切断されたフラグメントのサイズ分離がなさ
れ得る。サイズ分離の一般的な記載は、Methods in Enzymology(1980) 65:499-5
60に見い出される。
【0098】
制限切断フラグメントは、次の条件で平滑末端とされ得る。つまり、4種のデ
オキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)の存在下でE. coli DNAポリメラーゼIの
ラージフラグメント(クレノウ)で、50mM Tris pH7.6, 50mM NaCl, 6mM MgCl2,
6mM DTTおよび0.1-1.0mM dNTP中において20から25℃で約15から25分間インキュ
ベートして処理することにより、平滑末端とされ得る。。クレノウフラグメント
は、5’の一本鎖のオーバーハングを埋めるが、4種のdNTPが存在しているとき
にも突出している3’の一本鎖を削っていく。必要に応じて、オーバーハングの
性質により指示される制限の範囲内において、dNTPのうちのただ1種、または選
択されたdNTPを供給することにより、選択的修復がなされ得る。クレノウ処理し
た後、混合物をフェノール/クロロホルムで抽出し、エタノール沈澱させる。S
1ヌクレアーゼまたはBAL-31を用いた適当な条件での処理により、一本鎖部分の
いずれもが加水分解される。
【0099】
連結は、次の標準条件および温度で、15-50μlの容量でなされ得る。例えば、
60mM Tris-Cl pH7.5、16mM MgCl2、10mM DTT、33μg/mlBSA、および0℃にて40
μMATP 0.01-0.02(Weiss)ユニットのT4 DNAリガーゼ(「粘着末端」の連結用)
、または14℃にて1mM ATP, 0.3-0.6(Weiss)ユニットのT4 DNAリガーゼ(「平滑
末端」の連結用)の条件および温度でなされ得る。分子間の「粘着末端」の連結
は、通常、DNAの総濃度が33-100μg/ml(最終総濃度5-100nM)で、達成され
る。分子間の平滑末端の連結は、最終総濃度1μMにて達成される。
【0100】
「ベクターフラグメント」を用いるベクターの構築においては、該ベクターフ
ラグメントは、5’リン酸を除去し該ベクターの自己連結を阻止するために通常
、細菌アルカリホスファターゼ(BAP)または仔ウシ腸アルカリホスファターゼ
(CIP)により処理される。消化は、1μgのベクターあたり1ユニットのBAPを
用い、pH8で約10mM Tris-HCl, 1mM EDTA中、60℃にて約1時間;あるいは、50mM
Tris-HCl (pH9.0)、1mM MgCl2、0.1mM ZnCl2、1mMスペルミジン、1ユニット
のCIP中、37℃にて60分間(5’末端突出用)または、37℃にて15分間、次いで5
6℃にて15分間(平滑末端または凹部5’末端用)、なされる。核酸フラグメン
トを回収するために、調製物は、フェノール/クロロホルムで抽出され、エタノ
ール沈澱がなされる。あるいは、2回消化されたベクターにおいて、さらに制限
酵素による消化を行い、所望でないフラグメントを分離することにより、該ベク
ターの再結合が阻止され得る。
【0101】
配列の改変を必要とする、ベクターのcDNAあるいはゲノムDNA由来の部
分には、部位特異的プライマー変異導入が用いられる(Zoller, M.J.およびSmit
h, M. のNucleic Acids Res. (1982) 10:6487-6500およびAdelman, J.P.らの
NA(1983)2:183-193)。これは、所望の変異を表す限局された変異以外は変異
させる一本鎖ファージDNAに相補的な、合成オリゴヌクレオチドプライマーを
用いて行った。簡単に説明すると、合成オリゴヌクレオチドはファージに相補的
なDNA鎖の合成を開始させるプライマーとして使用され、得られた部分的ある
いは全長の二本鎖DNAでファージを養っている宿主細菌を形質転換する。形質
転換された細菌の培養物を上部寒天に蒔き、ファージを有する単一の細胞からプ
ラークを形成させる。
【0102】
理論的には、新しいプラークの50%は、変異した一本鎖を有するファージを持
ち、50%は元の配列を有する。得られたプラークのニトロセルロース上のプラー
クリフトを、キナーゼ処理した合成プライマーとハイブリダイズさせた後、正確
にマッチするものは結合させるが、元のストランドとマッチしないものは結合さ
せないのに充分な洗浄温度で洗浄する。次に、プローブとハイブリダイズするプ
ラークを取り出し、培養し、そしてDNAを回収する。
構築の確認
以下に述べる構築では、プラスミド構築のためのライゲーションが正しく行わ
れていることを、M. Casadaban博士より得たE. coli株MC1061(Casadaban, M.ら
J. Mol. Biol.(1980)138:179-207)、あるいは他の適切な宿主を先ずライゲー
ション反応混合物で形質転換することによって確認する。成功した形質転換体を
、当該分野で知られているように、プラスミド構築の形態によって、アンピシリ
ン、テトラサイクリン、あるいは他の抗生物質への耐性によって、あるいは他の
マーカーを用いて選択する。次に、Clewell, D.B.ら、PNAS(1969)62:1159の方法
に準じて、必要に応じてクロラムフェニコールでの増幅(Clewell, D.B., J.Bact
erial.(1972)110:667)後、形質転換体からプラスミドを調製する。通常、例えば
、Holmes,D.S.ら、Anal.Biochem. (1981)114:193-197およびBirnboim, H.C.ら
Nucleic Acids Res. (1979) 7:1513-1523のようにいくつかのミニDNAプレ
ップが使用される。単離されたDNAを制限酵素によって分析し、および/ある
いは、Sanger, F. ら、PNAS(1977) 74:5463の方法であり、さらにMessingらのNu
cleic Acids Res.(1981)9:309に記載のジデオキシヌクレオチド法、あるいはMax
amらのMethods in Enzymology(1980)65:499の方法により配列決定される。
実施例の宿主
本明細書中のクローニングおよび原核細胞での発現に使用される宿主は次のも
のである:
クローニングおよびシーケンシング、およびほとんどの細菌のプロモーター制
御下での構築物の発現には、B、MC1061、DH1、RR1、C600hfl-、K803、HB101、J
A221、JM101およびJM103のようなE. coliの株を使用した。
方法の説明
次の実施例は、本発明をより良く理解するために説明することを目的とする。
しかし、実施例は、本発明の範囲をいかなる場合にも限定することを意図しない
。血管内皮細胞増殖因子をコードするDNAは、濾胞星状細胞ポリ(A)*RNAの
調製物中の所望の配列を増幅して、重要なプローブを先ず取ることから最初は得
られる。しかし、この方法を繰り返すことは必ずしも必要ではない。なぜならば
、重要なプローブの配列は、現在では知られており、化学的にインビトロで構築
し得るからである。さらに、図3aに示す配列を有するプラスミドが、アメリカ
ンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)、Rock
ville, MDに寄託されている。
【0103】
次の実施例では、以下に記載のバッファーは、示されている組成物を含有する

【0104】
【表1】

【実施例1】
【0105】
実施例1
濾胞星状細胞mRNAからのプローブの増幅
図2を参照して、ウシ濾胞星状細胞(細胞は、Ferrara, N.らのMethods in En
zymology,Conn,P.M.編、 Vol.124, pp 245-253,Academic Press, N.Y.(1986)
:Ferrara, N.ら、(1987) PNAS, 84:5773-5777に記載のように単離した)の5μg
のポリ(A)+RNAを、ウシ血管内皮細胞増殖因子の既知のアミノ酸35位から39位
の配列に基づく1μgのアンチセンスプライマーオリゴヌクレオチドとともに、
エタノール沈澱した。#4296と命名したこのオリゴヌクレオチドは、16倍の縮重
(degeneracy)を有する24-merである。縮重は、アミノ酸35位から39位をコード
するアンチセンスストランドに相当する14塩基の領域に限定された。14塩基の5
’側末端に、EcoRI制限部位を有する10塩基のリンカーを加えた。オリゴヌクレ
オチドプライマーの配列は以下の通りである:
【0106】
【化1】

【0107】
mRNAおよびオリゴヌクレオチドを、55μlの36mM KCl、9mM MgCl2、45mM Tris p
H 7.5、12単位のRNasinおよび各々0.5mMの4つのdNTPに溶解した。サンプルを70
℃まで2分間加熱し、次いで室温に戻した。プライマーのハイブリダイゼーショ
ン部位に隣接するmRNAの一部に相補的なDNAアンチセンスストランドの合成の
ために、60単位のトリ骨髄芽球症ウイルス(avian myeloblastosis virus)の逆
転写酵素を加え、次いで室温で2分間反応させ、そして42℃に45分間置いた。次
にサンプルをフェノールおよびクロロホルムで抽出し、エタノールで沈澱させて
乾燥させた。
【0108】
次に、最初に合成したストランドの全てを鋳型として使用して、第二のDNA
ストランドを合成した。第二のストランドの合成のために、乾燥したペレットを
50μlの50mMNaCl、7mM MgCl2、7mM Tris pH 7.5および各々1mMの4つのdNTP
に溶解した。さらに、ウシ血管内皮細胞増殖因子の既知のアミノ酸の15位から19
位の配列に基づく、センスストランドオリゴヌクレオチドプライマー1μgを加
えた。#4295と命名されたオリゴヌクレオチドは、8倍の縮重を有する24-merで
あった。縮重は、アミノ酸の15位から19位のコード領域のセンスストランドに相
当する14塩基の領域に限定された。これらの14塩基の5’側末端に、HindIII制
限部位を有する10塩基のリンカーを加えた。オリゴヌクレオチドプライマーの配
列は以下の通りである:
【0109】
【化2】

【0110】
サンプルを100℃に2分間加熱し、次いで28℃に戻した。第二ストランドの合成
は、10単位のDNAポリメラーゼ、すなわちクレノウフラグメントを加えて、28
℃で10分間行われた。その後、ポリメラーゼ酵素を100℃で2分間加熱して不活
化した。
【0111】
2つのプライマーのハイブリダイゼーション部位の間にわたるDNA配列を、
自動サーマルサイクラー(Perkin Elmer Cetus DNA Thermal Cycler)での酵素
触媒による重合反応の一連の繰り返しにより増幅した。チェーン反応には、5μ
lの上述の反応物を、1×の反応混合物に、10μlの10×Taq混合バッファー(Cet
us Corp.のポリメラーゼチェーンリアクションキット中に供給されている)、52
μldH2Oおよび4つのdNTPすべてを1.25mMずつ含有する16μlを加えて100μlと
した。さらに、10%(最終濃度)のDMSO、および上述の1μgの各センスオリゴヌ
クレオチドおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドを、Cetus kitに入っているT
aqポリメラーゼ2μlとともに加えた。反応混合物に200μlのミネラルオイルを
重層し、そしてサーマルサイクラーに入れた。サイクラーを次のサイクルを繰り
返すようにプログラムした:
1.94℃で1分間、変性
2.55℃で2分間、アニール
3.72℃で3.5分間、DNA合成。
増幅反応は、30サイクル行った。
【0112】
増幅反応物のDNAの一部(20μl)を、HaeIIIで消化したpUC8 DNAをサイズ
マーカーに用いて、6%のポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけた。ゲルを臭
化エチジウムで染色した。染色したゲルを図5に示す。主要なバンド(図5で、
矢印で指す)は、80と100塩基対との間の塩基対であり、2つのオリゴヌクレオ
チドプライマーおよび2つのプライマーに囲まれたアミノ酸コード領域のセグメ
ントをコードするのに適切な長さのDNA(94塩基対)に相当した。このバンド
をゲルから切り出し、ゲル片からDNAを、0.5×Tris-ホウ酸 EDTAバッファー
(0.045MTris base、0.045Mホウ酸、0.001M EDTA)中で30ボルトで電気溶出し
た。得られたDNAをエタノールで沈澱させた。
実施例2
増幅したプローブのサブクローニングおよび配列決定
実施例1に記載のようにゲルから電気溶出したDNAを、バクテリオファージ
M13mp18およびM13mp19中にサブクローニングした。ゲルから得られたDNAの半
分を、20μlの水に溶解し、HindIII消化の標準的バッファー中で、HindIIIで90
分間、37℃で消化した。反応液のTris-HCl(pH 7.5)の濃度を85mMに上げてEcoRI
を加え、反応液をさらに37℃で90分間インキュベートした。別の反応では、次に
反応当り約10分の1の消化した調製物を、T4 DNAリガーゼの存在下で、HindIII
およびEcoRIで消化したM13mp18ファージおよびM13mp19ファージの2本鎖DNA
(Yanisch-Perronら、Gene(1985) 33:103)とライゲートした。次に、標準の方
法を用いて各々のライゲーション反応混合物でE. coli JM103をトランスフェク
トし、そして5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド(
X-gal)およびイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)を含有する
Lプレート上に蒔いた。M13mp19との反応の場合には、プレートにプラークが形
成された後、プラークの一部をニトロセルロースフィルターペーパーに移し、標
準の方法でNaOHで処理して溶菌し、そして80℃で2時間、バキュームオーブン中
で焼き付けた。所望の挿入配列の存在をスクリーニングするために、プラークリ
フトを放射標識したオリゴヌクレオチドプライマー#4296のサンプルでプローブ
した。プローブ#4296は、プラークリフトの多くのプラークとハイブリダイズし
、そのうちの4つをさらなる分析のために選んだ。M13mp18との反応の場合には
、白いプラークが、挿入フラグメントがファージベクターのEcoRIおよびHindIII
部位との間にライゲートされたことを示すことに基づいて、さらなる分析のため
に4つのプラークを拾い上げた。
【0113】
M13mp18およびM13mp19で感染させたプレートの各々から拾い上げた4つのプラ
ークをJM103に感染させ、標準の方法を用いて感染した培養物から複製型(RF)
DNAを調製した。次に、各感染物からRF DNAを、HaeIIIで切断し、ポリアクリ
ルアミドゲルに流した。電気泳動は、サイズマーカーにHaeIIIで切断したpUC8お
よびHaeIIIで切断したM13mp18 RFを用いて、行った。臭化エチジウムで染色後、
8つのサンプルのレーン全てのDNAは、ポリメラーゼチェーンリアクションで
用いるプライマーの設計に使用されたアミノ酸配列を含む、その2つのアミノ酸
配列の間にあるアミノ配列をコードする正しいサイズの挿入物を有することが示
された。
【0114】
正しい長さの挿入配列を有することを示したM13mp19プラークの1つ、および
4つのM13mp18プラークをさらなる分析のために、拾い上げた。次に一本鎖DN
Aを、配列決定のために、標準の方法(Messing, J., Methods in Enzymology (
1983)101:20-78)で調製した。5つの単離したクローン中の挿入配列を図1に示
す。4つのM13mp18クローンのシーケンシングゲルの1つの領域(図1のヌクレ
オチド32-35)は、明確に解読し得なかった。M13mp18の配列の解読できない領域
を除いて、5つの配列決定したクローンのうちの4つは、ポリメラーゼチェーン
リアクションで使用した2つのプライマー配列がハイブリダイズする部位および
その間にあるmRNAの領域にコードされる、ウシ血管内皮細胞増殖因子のその部分
に相当する同じアミノ酸配列をコードしていた。5つ目の配列決定したクローン
は、コードするアミノ酸の1つが異なり、それは、ウシ血管内皮細胞増殖因子の
アミノ酸27位に相当し、Pro(CCC)ではなくHis(CAC)をコードする。図1は、5つ
のクローンの挿入物のDNA配列および、M13mp19クローン挿入物のコンセンサ
スDNA配列および推定アミノ酸配列を示す。5つの単離された配列のほとんど
の非相同ヌクレオチドは、ポリメラーゼチェーンリアクションに使用したプライ
マー配列にあり、これは、場合によっては、ヌクレオチドミスマッチを1つ有す
るプライマーの縮重オリゴヌクレオチドが、血管内皮細胞mRNA中のタンパク質を
コードする配列にハイブリダイズして、そして増幅されたことを示すことがわか
る。他の配列の違いは、たぶん、ポリメラーゼのエラーか、あるいは血管内皮細
胞増殖因子mRNAの多型性であろう。これらの配列は、天然のDNA配列に正確に
は対応しないが、それにもかかわらず、5つのうちの4つは血管内皮細胞増殖因
子の正しいアミノ酸配列(M13mp18クローンの解読できない領域を除いて)をコ
ードする。さらに、それらは、ウシ血管内皮細胞増殖因子の全長DNA配列の単
離あるいはウシ以外の種のこれに相当するタンパク質をコードするDNAの単離
のためのプローブとして使用し得る。増幅されたDNAが、M13mp19にライゲー
トされている、拾い上げたファージを、pET-19Aと命名しなおした;以下の実施
例3に述べるように、このファージに挿入されたフラグメントを、濾胞星状細胞
cDNAライブラリーをスクリーニングするプローブとして使用した。
実施例3
ウシ血管内皮細胞増殖因子(120個のアミノ酸の形態)をコードするcDNAの
回収
Huynhら、DNA Cloning, D.M. Glover編、Vol.I, p.49, IRL Press,Washingto
n, D.C.(1985)の方法の改変法でウシ濾胞星状細胞cDNAライブラリーを、λg
t10バクテリオファージ中に調製した。ライブラリーのcDNAを作るのに使用
するポリ(A)+RNAは、公表されている方法(Ferraraら、PNAS(1987) 84:5773-
5777)によって、Denis Gospodarowicz博士によりウシ下垂体から単離され、増
殖された濾胞星状細胞から得た。λgt10中のcDNAライブラリー(約1.5×106
ファージ)をC600hfl-細胞に蒔いた(プレート30枚、5×104ファージ/プレー
ト)。各々のプレートのプラークリフトを2つ、ニトロセルロースフィルターペ
ーパー上に取った。フィルターを変性溶液(0.2M NaOH、1.5M NaCl)に3分間浸
した後、中和溶液(2×SSC、0.4M Tris pH 7.5)に3分間浸し、そして洗浄溶
液(2×SSC)に3分間浸した。次にフィルターを風乾し、そしてバキュームオ
ーブン中80℃で2時間焼き付けた。1セットのフィルターを200mlの40%ホルム
アミドバッファー中42℃で、プレハイブリダイズさせた。
【0115】
フィルターのスクリーニング用プローブを調製するために、一本鎖調製物を、
上述の実施例2に記載のM13mp19由来のファージpET-19Aから、標準法(Messing,
J., Methods Enzymol. (1983) 101:20-78)を用いて作製した。この調製物を、
「ユニバーサル」プライマー(Messing, J., Methods Enzymol. (1983) 101:20-
78)とハイブリダイズさせ、そしてpET-19Aに相補的なストランドを、クレノウ
フラグメントポリメラーゼおよびα32P-dNTPsを用いてプライマーを伸長させる
ことにより、合成した。
【0116】
プラークリフトの1セットを、この放射標識したプローブでスクリーニングし
た。プローブを100℃で2分間加熱して2本鎖DNAを融解させ、そして氷上に
放置した。次にこのプローブ(1ml;5×108cpm)を、プレハイブリダイゼーシ
ョンに使用した40%ホルムアミドバッファー200mlに加え、完全に混合した。プ
レハイブリダイズさせたフィルターを加え、そして42℃の湯浴中揺らしながら一
晩インキュベートした。次にフィルターを、0.1% SDSを含む1×SSC(20×SSCは
、3M NaCl、0.3M クエン酸ナトリウムに相当する)で、50℃で数時間洗浄し
た。洗浄後、フィルターを-70℃から-80℃でX線フィルムに一晩露出した。
【0117】
約32個のポジティブと推定されるクローンを、最初のpET-19A由来の、プライ
マーから伸長させたプローブとのスクリーニングで同定した。1c-10cと同定され
た10個のクローンをさらなるスクリーニングのために選んだ。
【0118】
プラークリフトの2つ目のセットを、図1に示すpET-19Aの増幅したDNA挿
入物の配列に基づいてデザインした、合成オリゴヌクレオチド放射標識プローブ
でスクリーニングした。プローブ#4340と同定されたオリゴヌクレオチドは、ア
ンチセンスストランドに相当し、次のヌクレオチド配列:
5'-CACCAG GGT CTC GAT GGG ACG GCA GAA GCT GCG CTG GTA-3'
を有する39-merのオリゴヌクレオチドであった。フィルターを、100mlのLong Ol
igoプレハイブリダイゼーションバッファーで約6時間、43℃でプレハイブリダ
イズさせた。次に、プレハイブリダイゼーションバッファー中のフィルターを湯
浴中65℃で10分間加熱した。γ-32P-ATPおよびポリヌクレオチドキナーゼを用
いて放射標識したプローブ(5×108cpm)を65℃のバッファーに加え、水浴の加
熱を止めて温度をゆっくりと室温まで下げた。翌日、フィルターをハイブリダイ
ゼーションバッファーから取り出し、45℃で2時間洗浄(3×SSC、0.1% SDS中
で6)した。洗浄液は1時間目で交換した。フィルターを乾燥させ、そして-7
0℃から-80℃でX線フィルムに一晩露出した。
【0119】
プローブ#4340にハイブリダイズするクローンのうち、1つのクローンのみが
、pET-19Aにハイブリダイズした最初のセットのフィルターからの32クローンの
うちの1つに相当するようであった。このクローンは、さらなる分析のために拾
い上げた元の10個のうちの1つではなかった。従って、このクローンを拾い上げ
、クローン11cと命名した。#4340にプロービングさせたフィルターを、よりスト
リンジェントな条件(1×SSC、0.1% SDS、65℃)で再度洗浄した。それにより
、ポジティブと推定されるクローンの数は、pET-19Aにハイブリダイズしたクロ
ーン11cを含めて約6個に減った。
【0120】
拾い上げたクローン2c-11cを第二ラウンドのスクリーニング用に平板培養した
。クローンを「捨い上げる」ために、寒天プレートの適当な部分から各々のクロ
ーン寒天片を取り出した。すなわちファルコンの12×75mm滅菌チューブの口を、
プレートから移されたフィルター上のポジティブシグナルに相当する、プレート
の所望の部分に当てて、寒天をつきぬけるように押し下げ、切り取られた寒天片
を滅菌したへらで拾い上げて取った。次に各々の寒天片を1mlのSMバッファー(
100mM NaCl;8mM MgSO4;50mM Tris pH 7.5; 0.01% ゼラチン)中に入れ、ボル
テックスで混ぜ、そして約20分間室温において、ファージを寒天から浸出させた
。拾い上げたクローンから得られた懸濁液各々の1μlを1mlのSMバッファー(
1:1000希釈)に懸濁させた。次に、ファージの1:1000希釈物各々の10μlを
、590-600μlの培養用細胞(C600hfl-)が入っているファルコンの75×100mmチ
ューブに移し、次いで、10μlをこのチューブから、590-600μlの培養用細胞が
入っている第二のチューブに移し、さらに第二のチューブから第三のチューブに
移して段階希釈した。ファージを37℃で20分間吸着させ、そして各チューブのフ
ァージ/C600hfl-混合物を、150mmの平板寒天培地に約10mlの上層アガロースと
ともに蒔いた。この平板培地を一晩、37℃でインキュベートした。1平板培地当
り約5000個のファージを有する平板培地を、ニトロセルロースフィルターぺーパ
ー上にプラークリフトを取るのに使用した。次に、フィルター上のDNAを、上
述の最初のcDNAライブラリーの一次スクリーニングでのプラークリフトと同
じ様式でフィルターをNaOHで処理することにより、変性させた。焼き付けた後、
フィルターを、42℃の湯浴中で揺らしながら2時間、密封できるプラスチックバ
ッグ(1つのバッグ当り3個のフィルター)中の10mlの50%ホルムアミドバッフ
ァーに浸してプレハイブリダイズさせた。
【0121】
これらのフィルターをスクリーニングするためのプローブを調製するために、
二本鎖(複製型)の調製物をM13mp19由来のファージpET-19Aから作製した。この
調製物をEcoRIおよびHindIIIで消化し、そして増幅されたDNAセグメントを示
す82塩基対の挿入フラグメントをゲル電気泳動により単離し、次いでクレノーフ
ラグメントポリメラーゼおよびα32P-dNTPで一本鎖の末端を満たすことにより
標識した。このプローブを2分間煮沸し、二本鎖DNAを融解し、氷上で冷却し
、次いでフィルターを浸漬するプレハイブリダイゼーションバッファーに加えた
。このフィルターを振盪水槽中で42℃で一晩インキュベートし、そして50℃で1
〜1/2時間、0.1×SSC、0.1% SDS洗浄バッファー中で2回バッファー交換するこ
とにより洗浄した。このフィルターを−70℃から−80℃で一晩、X線フィルムに
曝した。
【0122】
クローン11cの再プレートを示すプレート上の3個のポジティブクローンは、p
ET-19A由来の82塩基対の挿入フラグメントにハイブリダイズした。さらに、クロ
ーン7cの再プレートを示すプレート上に1個の問題となるポジティブクローンが
あると考えられた。これら4個のポジティブクローンをパスツールピペットの広
い方の末端部を用いて寒天プレートから切取り、プレートする細胞中に希釈し、
そして前記のものと同様の方法で3回目のスクリーニングのために再びプレート
した。2回目のスクリーニングにおいてクローン11cを示すプレート上で3個の
ポジティブクローンの3回目のスクリーニングのために製造された3個のプレー
トを11A、11Bおよび11Cと名付けた。上記のように、2つのプラークリフトをニ
トロセルロースフィルターぺーパー上に各プレートから調製した。このフィルタ
ー上のDNAを、上記と同様の方法を用いて、変性し、そして焼き付けた。プラ
ークリフトの第一のセットを放射標識されたプローブ#4340(前に記載された)
でスクリーニングし、そしてプラークリフトの第二のセットをpET-19Aの82塩基
対挿入物から調製された前述のプローブでスクリーニングした。
【0123】
フィルターの第一のセットを、室温で、ショートオリゴプレハイブリダイゼー
ションバッファー7mlを含有するプラスチックバッグ中に浸漬することによりプ
レハイブリダイズした。放射標識されたプローブ#4340をこれらのフィルターを
含有するプレハイブリダイゼーションバッファーに加えた。このバッグを数分間
65℃の振盪水槽セット中に据えることにより温度を65℃にした。次いで、この水
浴の加熱を止め、温度を緩やかに室温まで戻した。インキュベーションを室温で
約2〜1/2日間続けた。
【0124】
このフィルターの第二のセットを50%ホルムアミドバッファー10mlを含有する
プラスチックバッグ中に浸漬し、そして42℃でインキュベーションして、プレハ
イブリダイズした。pET-19Aの82塩基対挿入物から調製されたプローブを煮沸し
、そしてフィルターの第二のセットを含有するプレハイブリダイゼーションバッ
ファーに直接加えた。このハイブリダイゼーション反応液を約2〜1/2日間42℃
で振盪水槽中でインキュベートした。
【0125】
プローブ#4340とハイブリダイズしたフィルターのセットを55℃で1×SSC、0.
1% SDS中で洗浄した。pET-19A由来のプローブでハイブリダイズされたフィルタ
ーのセットを55℃で0.1×SSC、0.1% SDS中で洗浄した。フィルターの両セット
を3〜1/2時間X線フィルムに曝した。プレート11A、11Bおよび11C上の数個のプ
ラークは、プローブ#4340およびpET-19A由来の塩基対挿入物の両方に強くハイブ
リダイズした。いずれかのプローブとハイブリダイズする2回目のスクリーニン
グのプレート7cから取り出して希釈したものは、このプレート上でプラークを表
さなかった。プレート11Aからの2個の強くハイブリダイズしたプラークをパス
ツールピペットの細い方の末端を用いて取り出した。11A'および11B'と名付けら
れたこれらのクローンをプレート細胞中で希釈し、前記のように、4回目のスク
リーニングとして再プレートした。
【0126】
ポジティブクローン11A'および11B'から調製されたプレートのそれぞれから2
個のプラークリフトをニトロセルロースフィルターぺーパー上に調製した。この
フィルター上のDNAを上記のものと同様の方法を用いて変性し、そして焼き付
けた。フィルターの各セットをショートオリゴプレハイブリダイゼーションバッ
ファー10mlを含有するプラスチックバッグ中に浸漬することによりプレハイブリ
ダイズし、そして室温でインキュベートした。プレート11A'および11B'のそれぞ
れ由来の第一のプラークリフトを放射標識したプローブ#4340(前で記載された
)でスクリーニングした。このプローブをこのフィルターおよびプレハイブリダ
イゼーションバッファーを含有するプラスチックバッグに加え、初めに65℃でイ
ンキュベートし、次いで、上記のように緩やかに冷却した。プレート11A'および
11B'のそれぞれ由来の第二のプラークリフトを、放射標識が48倍に縮重された混
合オリゴヌクレオチドプローブでスクリーニングした。プローブはプローブ#425
5と名付けたが、それはウシの血管内皮細胞増殖因子の内因性のトリプシン消化
フラグメント由来のアミノ酸に基づいており、そしてそれは以下の配列を有する

【0127】
【化3】

【0128】
このハイブリダイゼーションの条件は、プローブ#4340に対して記載されたもの
と同一であった。プレート11A'および11B'由来のプラークリフトをl×SSC、0.1
%SDSで55℃で(#4340)または3×SSC、0.1% SDSで30℃で、次いで3Mテト
ラメチルアンモニウムクロライド(TMACl)、0.05M トリス-塩酸、pH8.0、0.1
%SDS、0.002M EDTAで45℃で(#4255)洗浄し、そしてフィルムに曝した。両プ
レート由来のプラークは、プローブ#4340およびプローブ#4255の両方にハイブリ
ダイズするとともに、それぞれのフィルター上の全てのプラークとハイブリダイ
ズすることを見い出した。それにより、クローン11A'および11B'が一本鎖の、純
粋なクローンを構成するという結論が下された。
【0129】
クローン11B'のDNA挿入物の配列決定は、まずEcoRIでファージDNAを消
化し、6%ポリアクリルアミドゲル上でその消化物を分画し、約800塩基対の挿
入フラグメントを電気溶出し、そしてEcoRI切断のM13mp18中にこのフラグメント
を連結することによって行い、次いで、標準的な方法を用いて、ジデオシヌクレ
オチド法によってこの挿入物の配列を決定した。このヌクレオチド配列、および
コードされたアミノ酸配列は図3aにおいて示されている(この図には、797個
のヌクレオチド挿入物の配列のうちの7番目から795番目のヌクレオチドのみが
示されており;各末端のEcoRIリンカー配列は、省略している)。797個のヌクレ
オチドからなる挿入配列は、ウシ血管内皮細胞増殖因子の既知のタンパク質配列
のアミノ酸番号15から始まる、既知のアミノ酸配列をコードする。オープンリー
ディングフレームはヌクレオチド327位のフレーム内の転写終止コドンまで伸び
る。クローン11B'の挿入配列をプラスミドpUC8のEcoRI部位に連結した。得られ
たpST800と呼ばれるプラスミドは、E.coli JM83宿主に入れてAmerican Type Cu
lture Collection, Rockville, MDに受託番号68060で寄託されている。
【0130】
成熟型のウシ血管内皮細胞増殖因子をコードする全長コード配列を、図3bの
配列と共に図3aに示す。図3bの二本鎖DNA配列は、5’末端近くに転写開
始コドンATGを有し、ヒト細胞の遺伝子発現で好ましく選択されるコドンに基づ
き選ばれる配列を表しており、ウシタンパク質のN末端表示部(開始メチオニン
残基で先行される)をコードし、図3aに示されたコード配列と重複している。
成熟型のウシ血管内皮細胞増殖因子をコードする全長コード配列を作るために、
図3bのDNA配列はオリゴヌクレオチド合成の周知の方法を用いて合成し得、
そしてATCCに寄託されたプラスミドから好都合に得られる図3aの配列の部分に
、酵素的に結合し得る。図3aおよび3bの配列を結合する前に、図3aの配列
をEcoRIを用いてプラスミドpST800から切り出し、単離した挿入物をNlaIVで消化
する。NlaIVはこの挿入物を5回、全て3'非翻訳領域内において切断する。次に
、好都合な制限部位、例えばHindIIIをコードするリンカーを、ブラントエンド
連結を介して最も5’末端側のNlaIV部位に結合させる。得られたライゲーショ
ン反応混合物を、次にAccIおよびリンカー酵素(例えばHindIII)で消化し、3
’末端(NlaIV部位に)連結されたリンカーの消化物の付いた、pST800挿入物の3
25塩基対フラグメント(AccI-NlaIV)を遊離させる。フラグメントを精製し、図
3bに示す合成フラグメントに連結する。ライゲーション混合物をNcoIおよびリ
ンカー切断制限酵素(例えばHindIIIリンカーを用いた場合にはHindIII)で消化
すると、5’側には消化されたNcoI部位が隣接し、また3’側にはフラグメント
の発現ベクターへの挿入に有用な、消化された制限酵素部位が隣接した、成熟型
のウシ血管内皮細胞増殖因子をコードする所望のコード配列が得られる。
【0131】
この混成配列は適切な発現ベクターの、原核または真核宿主内で発現を指示し
得る調節エレメントの制御下に挿入される。E.coliでの発現に好適なベクター
には、pKK233-2(AmmanおよびBrosius, Gene (1985) 40:183-190)があり、これ
はPharmacia,Inc.から市販されている。このベクターのNcoIとHindIII部位の間
に混成配列を挿入すると、コード配列はtrcプロモーターの制御下に置かれる。
次に発現ベクターはE.coliのような好適な宿主の形質転換に用いられ、形質転
換体はコードされたDNAが発現される条件下で培養される。次に、発現された
タンパク質を当該分野に慣例の方法で回収する。
【0132】
もちろん、他の配列が図3aの配列に結合可能である。例えば、図3bの配列
は、5’末端がNcoI部位ではなくNdeI部位を表すように改変し得る。哺乳動物で
の発現に対しては、図3bのコード配列を5’方向に延ばして、随意に分泌シグ
ナル配列、例えばヒト成長ホルモンのシグナル配列に結合した、ウシ血管内皮細
胞増殖因子のアミノ末端配列をコードするようにし得る。
【0133】
あるいは、図3aに示されたコード配列は、DNAハイブリダイゼーションの
標準的条件下でプローブとして使用し、ウシ血管内皮細胞増殖因子またはヒトを
含む他の哺乳動物種の相当するタンパク質をコードする、天然の全長DNA配列
を回収することができる。図3aの配列はcDNAまたはゲノムDNAライブラ
リーから所望の配列を回収するためのプローブとして使用し得る。
【0134】
ウシ血管内皮細胞増殖因子mRNAの5’末端方向に伸長されたクローンは、アン
チセンスオリゴヌクレオチド4338(5'-GCCAAGCTTGCACCAGGGTCTCGATGGGACGGCAGAA
-3')をプライマーとして用いて、実施例1に記載のように第一鎖cDNA合成
をプライムし、次に得られた二重鎖の5’末端に、オリゴヌクレオチド4537およ
び4514(それぞれ5'-GATCGCGG-3'および5'-CCGCGATCAAGCTTCCCGGGAATTCGGC-3')
からなる部分二本鎖リンカー分子を連結して作製した。最後に、生成物をオリゴ
ヌクレオチド4338および4315(5'-GCCGAATTCCCGGGAAGCTTGATCGCGG;4514に相補的
)をプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応で増幅した。ジデオキシヌク
レオチド法で配列決定したところ、得られたクローンから図5に示す5’配列を
得た。
実施例4
ウシ血管内皮細胞増殖因子(bVEGF164)をコードするcDNAの回収
bVEGF120(図3a)以外のVEGF型を単離するために、卵胞星状体(folic
ulo stellate)ポリ(A)+RNAを鋳型として用い、アンチセンスオリゴヌクレオ
チド4456(5'-GTAGTTCTGTGTCAGTCTTTCCTGGTGAGACGTCTGGTTCCCGAAACCCTGAGGGAGGC
T-3')をプライマーとして用いて、第一鎖cDNA合成を行った。得られた生成
物を次に、アンチセンスオリゴヌクレオチド4456およびセンスオリゴヌクレオチ
ド4414(5'-TTCTGCCGTCCCATCGAGACCCTGGTGGACATCTTCCAGGAGTACCCAGATGAGATT-3'
)をプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応で30回増幅した。生成物のポ
リアクリルアミドゲル分析およびDNA配列決定により、図6に示すように2種
類の血管内皮細胞増殖因子をコードするcDNAが明らかになった。図6に示さ
れた、四角く囲った132bpの挿入を含むオープンリーディングフレームは、bV
EGF164をコードする。
実施例5
ヒト血管内皮細胞増殖因子をコードするゲノムDNAの回収
血管内皮細胞増殖因子のアミノ酸配列をコードするDNAを含有する、ヒトゲ
ノムのクローンは、市販のヒト肺線維芽細胞ゲノムライブラリー(Stratagene I
nc., La Jolla, CA)から単離した。1μlのストックファージ(約3×1010ファ
ージ/ml)を1ml SMバッファーに希釈し、20μlのCHCl3を加えた。LE392細胞(
hsdR514(r-,m-)、supE44、supF58、lacY1またはΔ(lacIZY)6、galK2、galT22、
metB1、trpR55、λ-)はNZYM培地でO.D.600が0.5になるまで増殖させ、細胞を回
収し、10mM MgSO4に再懸濁した。30個の試験管の各々の中で、2μlの希釈した
ファージストックを0.6mlの細胞に混合し、37℃で15分間インキュベートした。1
0mlのNZYMトップアガーを各試験管に加え、各試験管の内容物を150mm NZXYMプレ
ートに撒き、37℃で16時間インキュベートした後温度を4℃に下げた。30個のプ
レートの各々から、ニトロセルロースフィルター上に2枚のプラークリフトを移
した。フィルター上のDNAを変性させ、実施例3に記載のように焼き付けた。
次にフィルターを、37℃で6時間、40%ホルムアミド緩衝液中でプレハイブリダ
イズさせた。
【0135】
フィルターは、前述の実施例3で作製したプラスミドであるプラスミドpST800
からのゲル精製されたEcoRI挿入フラグメントをニックトランスレーションして
調製した、放射標識プローブでプロービングした。pST800の797塩基対のEcoRI挿
入は、ウシ血管内皮細胞増殖因子の一部分をコードするcDNAフラグメントを
含有する。プローブは100℃で2分間煮沸して二本鎖DNAを融解した後、氷冷
した。プローブはフィルターを含むプレハイブリダイゼーション用バッファーに
直接、106cpm/mlとなるように加え、フィルターを37℃で一晩、ハイブリダイズ
させた。フィルターを50℃にて1×SSC、0.1% SDSで、洗浄バッファーを3回替
えて洗浄し、次に吸い取りにより乾燥させ、X線フィルムに−70℃から−80℃で
一晩さらした。曝されたフィルムはプレート当り約200個の陽性クローンを示し
、そのうち19個のクローンは強い陽性であることを特徴とした。
【0136】
19個の強い陽性クローンのうち、12個を釣り上げ、前述の実施例3に記載のよ
うに希釈し、再度プレートに撒いて第二回目のスクリーニングを行った。再プレ
ートしたファージから、前述のように各々2枚のプラークリフトを調製した。フ
ィルターを37℃で6時間、40%ホルムアミドバッファーでプレハイブリダイズさ
せた。このフィルターの1枚を第一回目のスクリーニングに用いたのと同じプロ
ーブを用いて37℃で一晩、ハイブリダイズさせた。もう一枚のフィルターは、第
一回目の釣り上げた陽性クローンがプローブ配列のサブクローニングに用いたベ
クター由来の配列とはハイブリダイズしないことを確実にするために、ニックト
ランスレーション放射標識pUC8とハイブリダイズさせた。フィルターを50℃にて
1×SSC、0.1% SDSで洗浄し、フィルムにさらした。この第二回目のスクリーニ
ングで、12個の再プレートしたクローンのうち6個が、pST800由来のプローブに
対してまだ陽性であり、pUC8プローブに対しては陽性ではなかった。
【0137】
第二回目のスクリーニングで陽性の6個のクローンの各々から、陽性プラーク
を釣り上げた。6個の釣り上げたプラークを前述のように希釈し、再プレートし
て第三回目のスクリーニングを行った。さらに、第一回目のスクリーニングで強
い陽性であったが再スクリーニングしなかった、7個のクローンを釣り上げ、再
プレートして第二回目のスクリーニングを行った。再プレートしたクローンの各
々から、前述のように2枚のプラークリフトを調製した。これらのフィルターを
40%ホルムアミドバッファー中で、37℃にて5時間、プレハイブリダイズさせた

【0138】
第二回目のスクリーニングからの6個の陽性クローンのうちの一枚のプラーク
リフトには、前述のpST800由来の797塩基対挿入をニックトランスレーションし
た106cpm/mlを加えた。フィルターおよびプローブはプレハイブリダイゼーショ
ン用バッファー中で37℃で一晩、ハイブリダイズさせた。この6個の陽性クロー
ンのうちのもう1枚のプラークリフトには、前述のpST800の797塩基対挿入のEco
RI-HpaII断片をニックトランスレーション法で調製したプローブを加えた。EcoR
I-HpaII断片は797塩基対の挿入の5’末端の331塩基対からなっており、従って
AおよびTのヌクレオチドに富んだ挿入の3’末端を失っていて、これが初期の
回のスクリーニングでの間違ったハイブリダイズ陽性の原因であったかもしれな
い。
【0139】
第一回目の陽性クローンからの7個の再プレートされたプラークリフトの2枚
には、797塩基対のプローブをニックトランスレーションした106cpm/mlを加えた
。プローブはプレハイブリダイゼーション用バッファー中で37℃で一晩ハイブリ
ダイズさせた。
【0140】
全てのフィルターは50℃にて2時間、1×SSC、0.1% SDSで、バッファーを2
回替えて洗浄した。フィルターを乾燥させ、X線フィルムに−70℃から−80℃で
3時間さらした。第一回目の7個の陽性クローンのうち、第二回目のスクリーニ
ングで797塩基対プローブを用いて、4個の陽性シグナルを得た。第二回目の6
個の陽性クローンのうち、第三回目のスクリーニングで797塩基対プローブおよ
び331塩基対プローブを用いて、4個の陽性シグナルを得た。
【0141】
4個の第二回目の陽性クローンを釣り上げて、第三回目のスクリーニングを行
った。プラークリフトの一つは放射標識した797塩基対のプローブでスクリーニ
ングし、もう一つのプラークリフトは前述のように放射標識された331塩基対の
プローブにハイブリダイズさせた。4個の全てが両方のプローブにハイブリダイ
ズすることが見出された。
【0142】
第三回目のスクリーニングで797塩基対および331塩基対のプローブの両方にハ
イブリダイズした8個のクローンを全て、単一のプラークとして釣り上げた。フ
ァージDNA沈澱を標準法に従い調製した。次に、ファージのゲノムDNAの挿
入フラグメントを、配列決定のためにM13mp18およびM13mp19ファージに移入し、
これらがヒト血管内皮細胞増殖因子をコードしていることを確かめた。ヒト血管
内皮細胞増殖因子をコードしているゲノムクローンを含有する、バクテリオファ
ージの一つは、American Type Culture CollectionにATCC番号40636で寄託され
ている。
【0143】
このクローンの配列解析から、成熟型のヒト血管内皮細胞増殖因子をコードす
る配列、および成熟型タンパク質の最初のアミノ酸からすぐ上流のシグナル配列
のうち4個のアミノ酸をコードする配列が判明した。このクローンに5’末端で
重複する第二のゲノムクローンは、ヒト血管内皮細胞増殖因子の残りの26個のア
ミノ酸のシグナル配列をコードする、さらに上流の配列を与えた。シグナル配列
および5’非翻訳領域を含有する、第二のゲノムクローンを得るために、オリゴ
ヌクレオチド5'-CTCTCTTGGGTACATTGGAGCCTTGCCTTGCTGCTCTACCTTCACCATGCCAAGを
用いてゲノムライブラリー(前述に同じ)をスクリーニングした。このオリゴヌ
クレオチド配列は、PCRにより生じたウシcDNAに由来する。約1.2×106個の
ファージをスクリーニングした。各2枚のニトロセルロースフィルター上のプラ
ークリフトをNaOH、中和、および6×SSCバッファーでそれぞれ4分間処理した
。空気乾燥の後、バキュームオーブンで2時間、80℃で焼き付けた。プレハイブ
リダイゼーションは短いオリゴのプレハイブリダイゼーション用バッファーを用
いて、室温で6時間行った。[32P]-標識したオリゴヌクレオチドの2×106cpm/
mlをフィルターに添加し、同じバッファー中で一晩、室温でハイブリダイズさせ
た。フィルターを1×SSC、0.1% SDSで、バッファーを2回替えて、50℃で2時
間、洗浄した。第一回目のスクリーニングで陽性クローンについて、プラーク精
製および再スクリーニングを行った。1つの陽性クローンが得られた。
【0144】
これらの2個のクローンから得られた混成ゲノム配列を図8に示す。図は8個
のエキソン(ローマ数字で示す)を表し、これらは本来のシグナル配列と、異な
るメッセージのスプライシングの結果生じ得るヒト血管内皮細胞増殖因子の全て
の型とをコードする。完全なイントロン配列は示されておらず、各々のエキソン
に隣接する「結合部の」配列のみが呈示されている。エキソンが図8に描かれて
いるように、成熟型hVEGF121はエキソンII-VおよびVIIIにコードされ;成
熟型hVEGF165はエキソンI-V、VIIおよびVIIIにコードされ;成熟型hVE
GF189はエキソンII-VIIIにコードされている。
実施例6
ヒト血管内皮細胞増殖因子をコードするcDNAの回収
血管内皮細胞増殖因子mRNAの細胞源
血管平滑筋細胞は、血管内皮細胞増殖因子タンパク質をコードするmRNAを高レ
ベルで産生し、そのために、血管内皮細胞増殖因子配列に富んだcDNAライブ
ラリー用のmRNAの良い調製源である。ヒト胎児血管平滑筋(fhVSM)細胞を、10
%(v/v)ウシ胎児血清(HYCLONE)、2mMのL-グルタミン、ml当り各100Uのペニ
シリンおよびストレプトマイシン、および組換え血管内皮細胞増殖因子(1ng/ml
の濃度で48時間毎に加える)、を補った、低グルコースのダルベッコ改変イーグ
ルス培地(DMEM-16、GIBCO)中で培養した。細胞をコンフルエンスまで継代し、
典型的には25%コンフルエンスで蒔き、再培養した。
ポリ(A)+RNAの単離
血管平滑筋細胞mRNAを単離するために、典型的には、細胞をコンフルエンスま
で生育させ、次いで血管内皮細胞増殖因子mRNAの合成をさらに刺激するための、
フォルボールミリステートアセテート(PMA)処理を、行う、あるいは行わなか
った。細胞のモノレイヤーを、5から20mlのダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水
(D-PBS)で2回洗浄し、残存する培地を除去し、次いで、RNAをChirgwinらの、
Biochemistry(1979) 18:5294-5299の方法で単離した。この方法では、溶解バッ
ファー(4.0Mのグアニジンチオシアネート、0.1%のアンチフォームA、25mMの
クエン酸ナトリウム、0.5%のN-ラウロイルサルコシン、および100mMのβ-メル
カプトエタノール)の直接添加により、モノレイヤー中の細胞を溶解する。注射
針を通過させDNAを切断した後、酢酸およびエタノールの添加により、RNAを
直接沈澱させる。沈澱したRNAを、次にジエチルピロカーボネート(DEP)-処理し
た脱イオン水(D-H2O、典型的には約400μl)に再懸濁し、2.6mlのグアニジン-H
Clバッファー(7.5Mのグアニジン、25mMのクエン酸ナトリウム、5mMのジチオ
スレイトール)を添加し、そして酢酸およびエタノールの添加により、RNAを沈
澱させる。沈澱させたRNAを、再び400μlのDEP-処理したd-H2Oに再懸濁し、そ
して酢酸ナトリウムおよびエタノールの添加によりRNAを沈澱させた。
【0145】
グアニジン-チオシアネート法(上述)で単離した全細胞RNAを、さらに、確立
した方法(Edmonds, M. らの、PNAS(1971)68:1336、Aviv, H.およびLeder, P
.のPNAS(1972)69:1408)によりオリゴd(T)-セルロースクロマトグラフィ
ーで分画し、ポリ(A)+RNAを単離した。
【0146】
cDNA合成、および血管内皮細胞増殖因子cDNAのλZAPIIへのクローニ
ング
cDNA合成を、GublerおよびHoffmannの、方法(Gene, 25:263-269)に従い
、Boehringer-MannheimBiochemicalsから購入したcDNA合成キットを用い行
った。この方法を簡単に記載すると以下のようになる:第一鎖cDNA合成を先
ず、オリゴd(T)15をプライマーとして、5から20μgのfhVSMポリ(A)+RN
Aの3’末端から逆転写酵素による合成を開始した。得られたRNA-DNAハイブリッ
ドをRNaseHで制限消化し、E.coli DNAポリメラーゼIを用いた第二鎖DNA
の合成用の3’-OHプライマーを得た。次にT4 DNAポリメラーゼを用いて、残っ
ている全ての突出3'-末端を除去し、平滑末端cDNA生成物を得た。
【0147】
λZAPII(Stratagene, Inc., LaJolla, CA)のような、λクローニングベク
ターに挿入する前に、標準的な方法で平滑末端化したcDNAをメチル化し(例
えば、EcoRIメチラーゼで)、cDNA中に存在する特定のサブセットの制限酵
素部位の開裂をブロックする(即ち、EcoRIメチラーゼでメチル化するとEcoRIに
よるcDNAの開裂がブロックされる)。次にこのcDNAをオリゴヌクレオチ
ドリンカーにライゲーションし(例えば、EcoRIリンカーGGAATTCC)、リンカー
を適切な制限エンドヌクレアーゼで開裂し(例えば、EcoRI)、そして過剰のリ
ンカーを除去した後に、cDNAをλベクターの適切なクローニング部位に最終
的にライゲーションする(例えば、λZAPIIのEcoRI部位)。cDNAをベクター
の腕にライゲーションした後に、クローニングしたcDNAをGigapack II Gold
(Stratagene,Inc., La Jolla, CA)のような、λパッケージング抽出物と「パ
ッケージング」する。
【0148】
パッケージングの後、λファージを適切な宿主株(例えばλZAPIIベクターに
対してはXL1-Blue、Stratagene, Inc., La Jolla, CA)にタイターした後、10,0
00と50,000pfu/プレートの間のタイターで、NZYMアガーの150mmプレートに撒い
た。37℃で6-8時間生育させた後、プレートを4℃まで冷やし、ニトロセルロ
ース膜(BA85, SCHLEICHER AND SCHUELL)またはハイボンド-N膜(AMERSHAM)
上にプラークリフトを、標準法(Benton, W.D.およびDavis, R.W., Science(197
7) 196:180)に従い調製した。血管内皮細胞増殖因子の配列に相同であるか、ま
たは一部相同な配列を含むクローンは、pST800(前述の実施例3)のcDNA挿
入に由来するウシ血管内皮細胞増殖因子の、32P-標識体、または図3aの配列
に基づいた、血管内皮細胞増殖因子の配列に特異的なオリゴヌクレオチドに対し
て、ハイブリダイゼーションを行って検出する。ハイブリダイゼーションは、20
%と50%との間のホルムアミドおよび0%と10%との間の硫酸デキストランを含
有する標準的なハイブリダイゼーション用バッファー中で、37℃と42℃との間で
行う。血管内皮細胞増殖因子プローブにハイブリダイズするクローンについて、
続いて単一プラークに精製し、DNA配列解析のために、関連の配列をバクテリ
オファージM13ベクター、例えばM13mp18およびM13mp19にサブクローンした。
【0149】
血管内皮細胞増殖因子のヒトのcDNA配列は、ヒト血管内皮細胞増殖因子の
遺伝子産物の、対応するアミノ酸配列の予測に用い得る。cDNAはまた、E.c
oliのような細菌、またはイーストまたは哺乳類細胞でヒト血管内皮細胞増殖因
子のタンパク質産物を発現するように設計された構築物の、転写制御エレメント
に連結し得る。
実施例7
ヒト血管内皮細胞増殖因子(hVEGF121およびhVEGF165)のDNA配列
およびアミノ酸配列
実施例6に記載した方法に従い、ヒト血管内皮細胞増殖因子をコードするcD
NAクローンを調製および単離した。多数のクローンの配列決定により、多様性
情報スプライシングがウシの場合と同様に起こることが確認された。従って、b
VEGF120およびbVEGF164に相当するヒトタンパク質の発現型が存在する
(しかし、ヒトタンパク質にはウシ型の血管内皮細胞増殖因子にない付加された
アミノ酸を7位に含有するため、ヒト型の血管内皮細胞増殖因子は各々、121お
よび165残基を含有する)。λH3と命名した、hVEGF121のコード領域の一
部を含有するcDNAクローンは、寄託番号40728としてAmerican Type Culture
Collectionに寄託されている。λH2と命名した、hVEGF165のコード領域の
一部を含有するcDNAクローンも、寄託番号40727として寄託されている。さ
らに、hVEGF121およびhVEGF165の一次翻訳物全体をコードする別のク
ローンも、類似の方法によって得られ得る。
【0150】
実施例5の寄託ヒトゲノムクローンから、および実施例6に記載の方法によっ
て得られた多数のcDNAクローンの配列情報に基づき、hVEGF121および
hVEGF165をコードする天然DNA配列を決定した。そのDNA配列を図7
に示す。囲まれた132ヌクレオチド配列は、情報により多様性にスプライシング
される部分に相当するDNA配列を包含する。翻訳された情報の中にこの配列が
存在している時、コードされたタンパク貿はhVEGF165であり、そのアミノ
酸配列は図7のオリゴヌクレオチド配列の上に直接示されている。この配列が翻
訳された情報に存在しない時、コードされたタンパク質はhVEGF121である
。この型のタンパク質は、114位のアミノ酸までhVEGF165と同じアミノ酸配
列を有する。112位から始まるhVEGF121のカルボキシル末端配列は、図7の
ヌクレオチド配列の下にイタリック体で表されている。hVEGF121およびh
VEGF165をコードする連続のcDNA配列は、合成オリゴヌクレオチドから
、あるいは実施例4に記載の方法に類似した方法を用い、ヒト胎児血管平滑筋の
poly(A)+RNAからポリメラーゼチェーンリアクションを用いて、作製し得る。
実施例8
ヒト型の血管内皮細胞増殖因子のアミノ酸配列を有するポリペプチドの発現
上記の標準的な方法に従って、ヒト血管内皮細胞増殖因子(hVEGF121
るいはhVEGF165)の一次翻訳物をコードする全領域を含有するcDNAク
ローンは、完全型あるいは切断(改変)型が最も便利に、種々の宿主内で組換え
タンパク質を生産するのに使用される。しかし、哺乳類系での発現が好ましい。
なぜなら、宿主が天然で作られるタンパク質に見られるような翻訳後のプロセッ
シングが可能であり、そして宿主がイントロンのプロセッシングも可能であるた
めに、cDNAあるいはゲノム配列のいずれかを使用し得るためである。
【0151】
従って、宿主ベクターへの挿入のために、ヒト血管内皮細胞増殖因子のいずれ
かの型をコードする全領域を含有するcDNAあるいはゲノムクローンは、以下
に説明される通り調製される、しかしこれに限定されない。
【0152】
ベクターを構築するために、クローン化されたcDNAあるいはゲノム挿入物
を、それが単離されるクローニングベクターから切り出す。この挿入物を、NcoI
、BamHI、EcoRIあるいは必要ならば他の適切なリンカーにより得られ、そして次
にpHS1あるいはその誘導体のような適切な宿主ベクター中に、以下の通りに挿入
する。あるいは、挿入物の切断および適切なベクターへの挿入の前に、都合のよ
い制限酵素部位あるいは別のコード配列をクローン化される挿入部に導入するた
めに、インビトロ変異誘発を用い得る。
宿主ベクターの構築
pHS1
プラスミドpHS1は、哺乳類宿主中で挿入DNAを発現させるのに適する。この
プラスミドは、p84H(Karin, M. ら、Nature(1982) 299:797-802)由来のヒトメ
タロチオネイン-IIA(hMT-IIA)配列の、hMT-IIA遺伝子の-765位のHindIII部位
から+70位塩基のBamHI開裂部位に至る約840塩基対を含有する。pHS1を構築する
ために、プラスミドp84HをBamHIで完全消化し、エキソヌクレアーゼBAL-31で処
理して末端ヌクレオチドを除去し、そして次にHindIIIで消化した。所望の約840
塩基対のフラグメントをHindIIIおよびHindII消化で開環したpUC8(Vieira, J.ら
Gene(1982) 19:259-268)に連結した。このライゲーション反応混合物をE.col
i HB101をAmpRとするように形質転換するために用いて、そしてpHS1と命名した
、一つの候補プラスミドを単離し、そしてジデオキシシーケンシングにより配列
決定した。pHS1はhMT-IIA制御配列を、都合のよい制限部位(BamHI、SmaI、およ
びEcoRI)を含有するポリリンカーの上流に含有する。
【0153】
機能する宿主プラスミドpHS1を、メタロチオネインプロモーター以外の別の制
御因子を含有させるように、さらに改変し得る。特に、SV40のようなウイルス系
のエンハンサーエレメント、およびヒト成長ホルモン(hGH)のような他のタン
パク質の3’非翻訳領域に関連する終止シグナルを加え得る。
【0154】
ウイルスのエンハンサー
1118塩基対のSV40のDNAフラグメントをpHS1のMT-IIAプロモーター配列の前
のHindIII部位に挿入して、MT-IIAプロモーターに作動可能に連結させたSV40エ
ンハンサーを含有する、一対の宿主発現ベクターを構築した。SV40のDNAフラ
グメントは、SV40の複製起点を含み、ヌクレオチド5172位からヌクレオチド5243
位(起点の部位)に至る配列、ヌクレオチド107-250由来の重複した72塩基対の
反復を含有し、後期ウイルス遺伝子の5’末端を含有する起点の横のヌクレオチ
ド1046位を含めて続く。このHindIIIの1118塩基対フラグメントは、SV40 DNA(Bu
chman, A.R.ら、DNA Tumor Viruses, 2nd ed (J. Tooze編), Cold Spring Harbo
r Laboratory, New York (1981), pp. 799-841)のHindIII消化によって得られ、
そして増幅のためにpBR322にクローン化される。このSV40フラグメントを含有す
るpBR322べクターをHindIIIで切断して、そして1118塩基対のSV40 DNAフラグメ
ントをゲル電気泳動により単離して、そしてHindIII消化し、CIP処理したpHS1に
連結した。pHS1-SV(9)およびpHS1-SV(10)と命名した、得られたベクターは、MT-
IIAプロモーターの前にSV40フラグメントを逆方向で含有する。pHS1-SV(9)にお
いて、エンハンサーは、MT-IIAプロモーターの5’mRNA開始部位からの約1600塩
基対であり、逆方向ではこれは5’mRNA開始部位からの約980塩基対である。両
方の方向が作動可能であるが、エンハンサー配列が開始部位に近い方の方向がよ
り高い発現レベルを与える。転写開始部位の250から400塩基対上流にエンハンサ
ーを位置させるような削除が最適であると考えられている。
【0155】
SV40エンハンサーの3’末端の190塩基対、250塩基対、および360塩基対のそ
れぞれをMT-IIAプロモーターTATAボックスの5’末端の上流に位置させたベクタ
ーをさらに構築した。これらの構築物は、Karin, M.ら、Nature (1984) 308:513
-519に記載されているヒトMT-IIAプロモーターの上流調節領域のマッピングに基
づいている。全ての構築物は、重金属による調節のための重複部位を含有する配
列を保持しているが、190塩基対および250塩基対分離物からの構築物は、これら
の重金属調節部位のさらに上流にあるグルココルチコイド調節配列を保持してい
ない。
【0156】
pHS'-SV190、pHS'-SV250、およびpHS'-SV360と命名した、これらのベクターは
以下の概略に従って調製した。メタロチオネインプロモーターを含有する配列の
長さおよびpHS1から切り出されたフラグメントとして供給される上流領域の長さ
以外は、全ての構築物は同じである。
【0157】
pHS'-SV190の場合、pHS1をSacIIで消化して、末端を平滑化し、そしてKpnIリ
ンカーに連結する。次に、このDNAをEcoRIおよびKpnIで消化し、MT-IIA制御
配列の適切な部分を切り出す。同様に、pHS'-SV250の場合、pHS1をHgaIで消化し
て、末端を平滑化し、KpnIリンカーに連結し、そしてEcoRIおよびKpnIで消化す
る;pHS'-SV360では、最初の消化にDdeIを用いる。
【0158】
SV40エンハンサーを含有する中間体ベクターを以下のように調製する。SV40の
HindIII/KpnIフラグメント(5172位から298位までに伸長し、KpnI部位から50塩
基対のところにエンハンサーエレメントを含有する)を、KpnI/HindIIIで消化し
たpUC19に挿入してpUC-SVを得る(pUC19はポリリンカー領域に3つの都合のよい
制限部位を、HindIII、KpnIおよびEcoRIの順で含有する)。上記の記載通りに調
製したKpnI/EcoRIフラグメントを、KnpI/EcoRIで消化したpUC-SVに挿入して、完
成ベクターを得る。
【0159】
従って、全ての前述の改変ベクターは、SV40エンハンサーエレメントの利点を
有する。他のウイルスのエンハンサーも、当然類似の方法で用いられ得る。
【0160】
転写終止配列
転写終止制御配列を得るために、コード配列を有するDNAおよびヒト増殖ホ
ルモンの3’非翻訳領域を、pHS1につないだ。hGHコード領域の換わりに、hGH
3’非翻訳領域からコード配列までを順にベクター中につないだ中間的なベクタ
ーを得た。
【0161】
hGHをコードするゲノム配列は、p2.6-3(DeNotoら、Nucleic Acids Res.(198
1)19:3719)から、最初のエキソンの5’末端で切断するBamHI、および機能遺
伝子の3’を切断するEcoRIで消化し、次いでポリアクリルアミドゲル精製を行
い、単離した。単離したフラグメントをBamHI/EcoRI消化したpHS1にライゲーシ
ョンし、そしてこのライゲーション反応混合物をE.coli MC1061中に形質転換し
、AmpRとした。成功した形質転換体を制限酵素分析でスクリーニングし、目的の
プラスミドを含んだ株pMT-hGHgを、大量のプラスミドDNAを調製するためにさ
らに増殖した。
【0162】
上述のpHS1-SV(9)あるいはpHS1-SV(10)の構築で記載した方法と類似の、
ただしpHS1をpMT-hGHgに変えた方法で、MT-IIAプロモーターの制御下に、そして
SV40エンハンサーに機能するように結合されたhGH遺伝子を有する、各々phGHg-S
V(9)およびphGHg-SV(10)と名付けた、2つのベクターを得た。このライゲ
ーション反応混合物をE.coli MC1061をAmpRに形質転換するのに用い、そして正
しい構築物であることを確認した。
【0163】
発現ベクターの構築
phGHg-SV(10)を、ヒト血管内皮細胞増殖因子の宿主ベクターとして用いた。ph
GHg-SV(10)を、BamHIおよびSmaIで消化し、クレノウ断片で平滑末端とし、そし
てCIPで処理してhGHコード配列を切り出した。この開環したベクターを、血管内
皮細胞増殖因子の全長をコードした、cDNAあるいはゲノムクローンからのフ
ラグメントにライゲーションし、発現ベクターpVEGF-SV(10)を得た。
【0164】
図8に示すように、血管内皮細胞増殖因子遺伝子の最初の全長翻訳産物は、26
アミノ酸の分泌シグナル配列を有している。この配列は、成熟血管内皮細胞増殖
因子の哺乳類細胞培養培地への分泌に効果を示し得る。望むならば、合成オリゴ
ヌクレオチドを、成熟血管内皮細胞増殖因子のコード配列に加え得、(例えば、
hGHからの)外来の分泌シグナル配列を、最初の全長翻訳産物中に作製された血
管内皮細胞増殖因子遺伝子に機能するように結合させ得る。どちらの場合にも、
産生物の分泌が起こらねばならない。
【0165】
加えて、血管内皮細胞増殖因子遺伝子あるいはcDNA配列を発現させるため
に、他の宿主ベクターも使用し得る。例えば、上述のようにSV40エンハンサーの
種々の立体構造を含むように改変した、pHS1およびpHS1が使用し得る。最後に、
宿主ベクターは、血管内皮細胞増殖因子遺伝子のみならず、ネオマイシン耐性遺
伝子(pSV2:NEOから得られる)および/あるいはヒトメタロチオネイン-IIAタン
パク質までも(pMT-VEGF-NEOあるいはpMT-VEGF-NEO-MTと呼ばれる)、コードす
るように、さらに改変し得る。
【0166】
これらのベクターは、以下の検討を目的にpMT-VEGFと総称的に命名した。
哺乳類組換え体による血管内皮細胞増殖因子の産生
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)-K1細胞を、F12培地および12%の仔ウシ
胎児血清を加えたDMEの1:1の混合培地中で生育した。構成細胞をpMT-VEGFお
よびpSV2:NEOと同時形質転換(Southern, P.らの、J. Mol. Appl. Genet.(1982)
1:327-341)した;pSV2:NEOは、ネオマイシン類似体G418に対する耐性を付与す
る機能の遺伝子を含んでいる。形質転換は、1μgのpSV2:NEOおよび10μgのpM
T-VEGFを、リン酸カルシウム-DNA共沈澱物中の細胞へ、Wigler, W.らの、Cel
l(1979)16:777-785のプロトコールに従って加え、4時間DNAに曝した後に
、2分間15%のグリセリン”ショック”を与えた。あるいは細胞を、10μgのpM
T-VEGF-NEOあるいはpMT-VEGF-NEO-MTと、同じリン酸カルシウムプロトコールを
用いて形質転換した。1日後、1mg/mlのG418に細胞を曝し、G418-耐性コロニー
のプールを得た。耐性コロニーのプールが充分生育した後、このプールを、細胞
付着型あるいは分泌型の血管内皮細胞増殖因子の産生に関してアッセイした。
【0167】
安定なpMT-VEGFの形質も有する、成功したG418-耐性形質転換体、あるいは他
の血管内皮細胞増殖因子発現プラスミドを、低密度で蒔き、株化単離体を精製し
た。少量のこれらの単離体を、2×10-4Mの塩化亜鉛に曝した後に、マルチウェ
ルプレートに蒔き、血管内皮細胞増殖因子の簡易アッセイとした。血管内皮細胞
増殖因子は、内皮細胞のマイトジェン活性を、細胞中で、および/あるいは調整
培地中で調べるマイトジェンアッセイで、あるいは標準的な方法を用いて、標準
的なELISA、あるいは適切な血管内皮細胞増殖因子タンパク質あるいはペプチド
に対して調製した抗血清に対してのラジオイムノアッセイ、を用いて確認した。
大量の、好ましくは分泌型の、目的の血管内皮細胞増殖因子を産生している株化
単離体を選択した。
【0168】
この細胞を1/10コンフルエンシーで10%のウシ胎児血清を補った基本培地(F1
2およびDMEの1:1混合物)中に蒔き、一晩インキュベートし、そして次に、1
×10-4Mから3×10-4Mの濃度範囲の塩化亜鉛の添加により血管内皮細胞増殖因
子の産生を誘起した。
【0169】
血管内皮細胞増殖因子産生細胞を確立する別の方法では、CHO細胞をpMT-VEGF
、pSV:NEO、およびヒトMT-IIA挿入物を含んだpHS1(pHS1-MT)、あるいはpMT-VEGF
-NEO-MTと同時形質転換した。G418選択の後、プールした耐性コロニーを100μM
のZnCl2をインデューサーとし、10μMのCdCl2の存在下で、カドミウム耐性に関
して選択した(MT-IIAタンパク質の発現に基づく)。次に耐性コロニーのプール
を、上述のようにアッセイし、血管内皮細胞増殖因子の産生レベルを測定した。
【0170】
天然の血管内皮細胞増殖因子シグナルあるいはhGH由来のシグナルの様な、血
管内皮細胞増殖因子用の機能する分泌シグナル配列を、発現ベクターの構築に含
めることにより、CHOあるいは他の哺乳類細胞宿主を用いた正常な本質的経路を
用いた分泌に効果がある。分泌を変化させると、タンパク質精製工程がより単純
になり、そしてタンパク質の折畳み構造がより自然の立体構造に近づき、再折畳
み工程の必要をなくすため、当然いくつかの利点が生じる。次に、分泌された血
管内皮細胞増殖因子の精製を、実施例9に記載の方法に従い、あるいは、イオン
交換クロマトグラフィー、分子量排除型クロマトグラフィー、および、例えば、
逆相HPLCおよび既知の方法に従い製造した抗血管内皮細胞増殖因子抗体を用いた
抗体親和性クロマトグラフィーのような、疎水性による分離のような工程を含み
得る、当分野で既知の標準的な他の方法に従って、行う。
実施例9
ポリペプチドの回収および血管内皮細胞増殖因子ダイマーの形成
上述のように哺乳類発現ベクター中で発現させ、産生された増殖因子の分泌型
を得たならば、この増殖因子hVEGF165は、Gospodarowiczらの、PNAS(1989)
86(19):7311-7315の方法で精製し得る。増殖因子を発現している宿主細胞で調整
された培地を、10000gで15分から30分間遠心分離する。1N HClで上清溶液をpH
5から6に調整し、1Lに付き少なくとも500gの硫酸アンモニウムを加える。
この溶液を4℃で2時間から6時間攪拌し、そして次に30分から60分間10000g
で遠心分離した。この上清を捨て、そしてペレットをさらに精製するために残し
た。
【0171】
このペレットを、25から100mMのNaClを含んだ5から25mMのTris、pH6.5から8.
0に再溶解した。この溶液を、同じバッファーで一晩透析した。沈澱した物質全
てを遠心分離で溶液から析出させ、そして捨てた(10000gで、30分から60分間
)。この溶液を、透析に用いたのと同じバッファーで平衡化しておいたヘパリン
-セファロースのカラムにかけた。タンパク質溶液の全てをかけた後、カラムを
、溶出物の吸光度がべースラインレベルに戻るまで平衡化バッファーで洗浄した
。タンパク質を、0.1Mから2.5Mの間のNaClを含んだ平衡化バッファーでカラム
から段階溶出した。活性フラクションを集め、Amicon stirred cell中で10,000M
Wのカットオフメンブレンで濃縮した。
【0172】
ヘパリン-セファロースのカラムから集められたこの濃縮した生理活性物質を
、リン酸緩衝食塩水で平衡化したBio-Gel P-60カラムにかけた。カラムを同じバ
ッファーで溶出し、そして生理活性のあるフラクションを集めた。この物質を3
倍容量の20mMのHEPES、pH 8.3で希釈し、Mono-Sカラムにかけた。このカラムを
、同じバッファー中の0.0Mから1.0MのNaCl濃度勾配で溶出した。構造調査用に
は、最終の精製を、0.1%のトリフルオロ酢酸を含んだ水中の10%から60%への
アセトニトリルの濃度勾配を用い、Vydac C4逆相カラム(RP-HPLC)で行った。
【0173】
封入体中にタンパク質を産生させるために細菌発現システムを用いた場合、Ho
ppeらの、Biochemistry (1989) 28:2956-2960に類似の方法で産生物を精製し得
る。細胞を、5から25mMのTris、pH 6.5から8.0、1mMのEDTAに懸濁し、microfl
uidizerを通して破砕した。この溶液を10000gで15分から30分間、遠心分離し、
そしてペレットを5から25mMのTris、pH 6.5から8.0、1mMのEDTAおよび1%か
ら2%のTriton X-100で洗浄した。
【0174】
ペレットを、20mMのTris、pH7.5、1mMのEDTA、6Mのグアニジン-HCl、0.1M
のNa2SO3、および0.01mMのNa2S4O6中に再懸濁し、そしてこの溶液を室温で4時
間から12時間放置した。この工程で、分子がモノマー型に変換される。不溶性の
物質は遠心分離で除去した。
【0175】
得られたS-スルフォン酸化タンパク質を、10から50mMのTris、pH6.5から8.0
、1mMのEDTA、3から6Mのグアニジン-HCl、で平衡化したセファクリルS-200
のクロマトグラフィーにかけた。タンパク質を含んだ画分をプールし、水で透析
した。S-スルフォン酸化タンパク質の最終精製は、RP-HPLC C4クロマトグラフ
ィーで行った。タンパク質を、アセトニトリルの0%から100%の直線的な濃度
勾配で溶出した(濃度勾配を作るためのチャンバーAは、0.1%のトリフルオロ
酢酸を含んだ水で、そしてチャンバーBは、0.1%のトリフルオロ酢酸を含んだ
アセトニトリルである)。
【0176】
このタンパク質を最終濃度が0.1から0.5mg/mlとなるように、50mMのTris、pH
8.0、1mMのEDTA、5mMのグルタチオン、およびタンパク質の溶解性を保つのに
充分な尿素を含んだ0.5mMのグルタチオンジスルフィド中に溶解した。この工程
で、タンパク質は天然のホモダイマー構造の血管内皮細胞増殖因子の型に折畳ま
れる。2日後、このタンパク質を、上述の同じRP-HPLCシステムで、あるいは、
ヘパリン-セファロースあるいはMono-Sのようなアフィニティークロマトグラフ
ィー工程で精製した。モノマーのダイマーからの分離は、20mMのTris-HCl、pH7.
5中でS-セファロースのクロマトグラフィーで行った;ダイマーは、0.7MのNaC
lを含んだ20mMのTris、pH7.5でカラムから溶出した。hVEGF121(bVEG
120に相当する)は、hVEGF165およびhVPF189のヘパリン結合特性を
欠いていることを見いだしたので、hVEGF121およびbVEGF120の精製は
、ヘパリン-セファロースクロマトグラフィー以外の方法で行った。
実施例10
血管内皮細胞増殖因子を含んだ創傷治癒調合物
カテーテル経由で創傷部位に静脈投与するのに適した非経口的溶液は、血管内
皮細胞増殖因子(例えば、bVEGF120、bVEGF164、hVEGF121、あ
るいはhVEGF165)を、5.0から7.0の範囲の安定なpHに保つための適切な量
のバッファー、および等張の浸透圧にするための適切な量の塩化ナトリウムと共
に注射用の水に溶解することで調製し得る。典型的な組成を以下に示す:
【0177】
【表2】

【0178】
上記の溶液は、機械的なスプレーポンプの補助で、創傷部位に局所的に塗布も
し得る。
【0179】
創傷部位に局所的に塗布するために好適な水性のゲルは、肥厚剤ヒドロキシエ
チルセルロース(250Hグレード)を、バッファー、防腐剤、浸透圧調節剤を含ん
だ水性溶液に懸濁させることで調製できる。肥厚剤が完全に溶解したら、血管内
皮細胞増殖因子の濃厚溶液を加え、そして生成物が均一になるまで混合する。以
下の薬学的組成物は、このようなゲルの典型例である:
【0180】
【表3】

【0181】
創傷部位に振りかけるのに適した乾燥粉末は、血管内皮細胞増殖因子を水溶性
のキャリアーと共に凍結乾燥し、そして凍結乾燥物を細かく砕き、均一な大きさ
の粉末を得ることで調製し得る。この粉末は創傷部位に、直接あるいはエアロゾ
ル発生用ガスを用いて塗布し得る。典型的な粉末組成物は以下のように調製され
る:
【0182】
【表4】

【0183】
この溶液は凍結乾燥し、そして得られる乾燥物をボールミルで約75μmの中程
度の粒子径に砕く。この粉末はシェイカーにより塗布し得る。大きな表面面積を
被覆する必要がある場合には、フルオロカーボン(Freon(登録商標))、炭化水
素(イソブタン)、あるいは圧縮ガス(二酸化炭素)を発生用ガスとして含んだ
エアロゾル発生容器により、この粉末を塗布し得る。
実施例11
キメラ増殖因子の調製
血管内皮細胞増殖因子の鎖を一本と血小板由来の増殖因子のA鎖を一本とを含
むキメラ分子は、まずこれら2分子の組換え発現用ベクターを構築することによ
り調製される。ヒト血管内皮細胞増殖因子を哺乳動物で合成させる発現ベクター
は実施例8に記載している。好ましいベクターは、合成血管内皮細胞増殖因子が
宿主細胞から分泌されるように構築されているものである(たとえば、天然の血
管内皮細胞増殖因子の分泌シグナルを含む、血管内皮細胞増殖因子の全長の一次
翻訳産物をコードする領域が、親のベクターのBamHI部位とSmaI部位との間に作
動可能なように挿入されるように変更されているphGHg-SV(10))。同様のベクタ
ーが血小板由来増殖因子の発現用に構成され、それは図4a(A鎖の一次翻訳産
物の全長をコードする)に示される配列を有する合成または部分的に合成された
配列をとり、BamHIおよびEcoRVで消化し、得られたコード領域フラグメントphGH
g-SV(10)のBamHI部位とSmaI部位との間に挿入して構築される。
【0184】
増殖因子鎖の産生には発現プラスミドを哺乳動物宿主細胞、たとえばCHO細胞
に、実施例8で記載したリン酸カルシウム沈澱法で導入する。CHO細胞へは2つ
の異なった方法が使用される。一つの形質転換は、細胞に導入されるDNAは同
時形質転換で行われ、血管内皮細胞増殖因子発現プラスミドとpSV2:NEOとを10:
1重量比で行う;他の形質転換は血小板由来増殖因子A鎖の発現ベクターとpSV2
:NEOとを10:1重量比で行う。それぞれの形質転換体から形質転換体のG418耐性プ
ールを選択し、個々の増殖因子産生クローンは、高レベルの増殖因子産生につい
てスクリーニングされ、アッセイは馴化培地の(血管内皮細胞増殖因子産生細胞
の場合は)血管内皮細胞に対する、あるいは(血小板由来増殖因子A鎖産生細胞
の場合は)ATCCから入手可能なマウスNIH 3T3細胞(#ATCC CRL 1658)に対する
分裂誘起活性、あるいは当該分野に標準的な方法で作製された、この2つの増殖
因子のELISAまたはラジオイムノアッセイで行った。
【0185】
別のアプローチとして、形質転換は3つのプラスミドを細胞上にリン酸カルシ
ウムで共沈澱させる方法である;血管内皮細胞増殖因子発現ベクター、血小板由
来増殖因子A鎖発現ベクターおよびpSV2:NEOで(重量比で10:10:1)行う。ク
ローンのG418耐性プールは形質転換細胞から選択され、次にそれぞれのクローン
について両方の増殖因子鎖を同時に分泌するクローンをELISAあるいは他の抗体
を基本とするアッセイで選択する。
【0186】
馴化培地からの血管内皮細胞増殖因子鎖の精製は実施例9に記載された方法で
行う。血小板由来増殖因子A鎖の精製は以下の当該分野に公知のプロトコール、
たとえば、ヘルディン(Heldin)らのプロトコール、Nature(1986) 319:511-514
に従って行われる。
【0187】
この後者のプロトコールでは、分泌された増殖因子を含有する馴化培地はスル
ファデックス(Sulphadex)ビーズヘの吸着により分画され、次に血小板由来増
殖因子A鎖物質は1.5M NaClを含有する0.01Mリン酸バッファー、pH7.4で溶出す
る。硫酸アンモニウム沈澱法で溶出した蛋白を濃縮した後、サンプルは1M NaCl
、0.01Mリン酸バッファー、pH7.4に再懸濁し、このバッファーに対して透析し
た。サンプルは、次に、セファクリルS-200カラムで分画(1M NaCl、0.01Mリン
酸バッファー、pH7.4で溶出)し、1M酢酸で透析し、凍結乾燥して、1M酢酸
に溶解後、バイオゲル(BioGel)P-150カラムにかけた(lM酢酸で溶出)。A
鎖物質を含有する画分を凍結乾燥した後、サンプルは1M酢酸に再溶解し、逆相
HPLCで分画した(1M酢酸、2Mグアニジン-塩酸中、0-50%プロパノールの濃
度勾配で溶出)。
【0188】
血管内皮細胞増殖因子鎖の一本と血小板由来の増殖因子A鎖の一本とを含むキ
メラダイマーは、上述のように調製したこれらのタンパク質の2つの精製サンプ
ルを混合することにより製造される。混合物は次に、実施例9記載のように変性
し再構成した。簡単に述べると、まず、混合物は変性され、20mMトリス、pH7.5
、1mMEDTA、6Mグアニジン-塩酸、0.1M Na2SO3、0.01mM Na2S4O6で4から12
時間室温で処理してS-スルホン化した。セファクリルS-200で分画し、逆相HPL
Cで精製した後(実施例9参照)、S-スルホン化された鎖を凍結乾燥し、次にタ
ンパク質鎖が溶解性を維持できるように充分な量の尿素を含む50mMトリス-塩酸
、pH8.0、1mM EDTA、5mMグルタチオン、0.5mMグルタチオンジサルファイドの
溶液に最終濃度0.1から0.5mg/mlとなるように溶解した。モノマーはS-セファロ
ースのクロマトグラフィーを用いてダイマーから20mMトリス-塩酸、pH 7.5中で
、NaClの濃度を増加させながら分離した。キメラダイマーは、次に、個々のホモ
ダイマーを精製するステップを組み合わせてホモダイマーから分離した後、変性
と再度折り畳みとを行った。さらに、キメラ分子は抗血管内皮細胞増殖因子抗体
カラムを通過させ、次に抗血小板由来増殖因子A鎖抗体カラムを通過させ、精製
され得、後の手順は公知である。
実施例12
ヒト血管内皮細胞増殖因子(hVEGF121)をコードする全長cDNA配列の
回収
血管内皮細胞増殖因子mRNAの細胞源
ヒトU937前単球白血病細胞は血管内皮細胞増殖因子タンパク質をコードするmR
NAを高レベルで生産する。それ故、ヒト血管内皮細胞増殖因子cDNAの調製に
良好なmRNAの供給源である。American Type Culture Collectionから入手したU9
37細胞はRPMI-1640培地(GIBCO)に10%ウシ胎児血清(FBS)、1%L-グルタミ
ン酸、それぞれ100ユニット/mlのペニシリンとストレプトマイシンとを加えた培
地で維持した。細胞は典型的には3から4日ごとに継代培養し、典型的には培地
1mlあたり5×105細胞の濃度で移植した。
ポリ(A)+RNAの単離
U937細胞のmRNAの単離のために、細胞を1mlあたり約5×106細胞の濃度まで
増殖した。細胞は500×gで5分の緩やかな遠心分離を行いペレットを集めた。細
胞ペレットは、チャーグイン(Chirgwin)の方法、Biochemistry(1979)18:529
4-5299、に従って、mRNA単離の前に50mlの氷冷したダルベッコのリン酸緩衝化し
た生理食塩水(D-PBS)で一回洗浄し、残余の培地を洗浄した。この方法で、洗
浄した細胞ペレットは溶解バッファー(4.0M グアニジンチオシアネート、0.1
%アンチフォームA、25mMクエン酸ナトリウム、0.5% N-ラウロイルサルコシ
ン、100mMβ-メルカプトエタノール)を直接加えて溶解した。DNAを注射針
で通して切断した後、RNAは酢酸とエタノールの添加により直接沈澱させた。沈
澱したRNAは、次に、ジエチルピロカーボネート(DEP)処理した脱イオン水(D-
H2O、典型的には約400μl)に溶解し、2.6mlのグアニジン-塩酸バッファー(7.5
Mグアニジン塩酸、25mMクエン酸ナトリウム、5mMジチオスレイトール)を加え
た。酢酸とエタノールを添加してRNAを沈澱させた。沈澱したRNAは再びDEP-H2O
に溶解し、酢酸ナトリウムとエタノールで沈澱させた。
【0189】
グアニジンチオシアネート法(上記)で単離した全細胞のRNAは、以下の確立
された方法によって(Edmonds, M., et al., PNAS (1971)68:1336;Aviv. H. and
Leder, P., PNAS(1972)69:1408)、オリゴd(T)セルロースクロマトグラフ
ィーでさらに分画し、ポリ(A)+RNAを単離した。
逆転写酵素とポリメラーゼチェーン反応(PCR)増幅とによる血管内皮細胞増殖
因子cDNAの合成と増幅
hVEGF121発現カセットを作製するため、U937ポリ(A)+RNA(上記参照
)から得られたオリゴヌクレオチドプライマー(図9)がPCRの開始に用いられ
、それぞれの末端にBamHIのクローニング部位を有し、3’末端のすべてのリー
ディングフレームに終止コドンを有する血管内皮細胞増殖因子フラグメントが生
じた。第一鎖のcDNAの合成は1μgのアンチセンスオリゴヌクレオチド(プ
ライマー4738、図9)を5μgのU937ポリ(A)+RNAとアニールさせた後、cD
NA合成キット(ベーリンガーマンハイム)を用いてAMV逆転写酵素で42℃、2
時間反応させて行った。第一鎖のcDNAの合成の後、反応液をフェノールとク
ロロホルムで処理してエタノールで沈澱させた。次に、1/10のcDNAをパー
キンエルマーシータスDNAサーマルサイクラーを用いて、アンチセンスオリゴ
ヌクレオチド4738とセンス鎖オリゴヌクレオチド(プライマー4741、図9)をプ
ライマーとして、30ラウンドのPCR(Saiki, P.K.et al., Science(1988)239:487
-491)で増幅した。PCR反応の生成物は、次に5%のポリアクリルアミドゲルで
分画し、hVEGF121発現カセットに対応するバンドが溶出され、BamHIで消化
し、M13mp18につなぎ入れた。配列はサンガーらの方法、J.Mol. Biol.(1980)14
3:161-178で確認した。
実施例13
CHO細胞でのhVEGF121の発現と分泌
配列確認の後、血管内皮細胞増殖因子発現カセットを含有するBamHIフラグメ
ントは、哺乳動物の発現プラスミドpLENのBamHI部位にセンスおよびアンチセン
スの両方向に連結した(図10a)。同様に、pMTNベクターにセンス方向に連結
した(図10b)。ベクターpLENの構築のために、上記phGHg-SV(10)をSmaIで
消化し、BamHIリンカーをSmaI部位に連結した。ベクターは次にBamHIで消化し(
これは成長ホルモン遺伝子を除去する)、再結合して、pLENを生じた。pLENはSV
40エンハンサー、MT-IIプロモーターおよびポリアデニル化部位を含む約600bpの
成長ホルモンの3’非翻訳領域を包含する。このベクターの構築とヒトエストロ
ゲン受容体をコードするcDNAの発現への使用はグリーン(Greene)ら、Scie
nce(1986)231:1150に詳しく記載されている。
【0190】
pMTNはpLENプラスミド(pMTNSV40 polyA Bam)の誘導体であり、ネオマイシン
耐性マーカーとSV40初期プロモーター配列をプラスミドpSV2neoから取り込んだ
ものである。ネオマイシン耐性マーカーはアミノグリコシドホスホトランスフェ
ラーゼをコードし、この酵素はそのマーカーを有する細胞にG418耐性を賦与する
。pMTNを構築するために、ネオマイシン耐性マーカー(図10bでneoR)はpSV2
neoをBamHIとHindIIIで消化してpSV2neoから切り離された。pSV2neoのSV40初期
プロモーター配列は、pSV2neoをpvuIIとHindIIIで消化して切り離され、neoR
ーカーを有するHindIII-BamHIフラグメントにつないだ。このカセットは、neoR
マーカーに接続したSV40初期プロモーターを包含し、SV40エンハンサーとpLENの
pUC8配列の間にあるHindIII部位に挿入した。
【0191】
pLEN121とpMTN121の構築では、hVEGF121発現カセットをプラスミドベク
ターpLENおよびpMTNの、ヒトメタロチオネインプロモーターとヒト成長ホルモン
の3’非翻訳配列との間にあるBamHI部位に挿入した。
pLEN121とpMTN121発現プラスミドのCHO細胞への形質転換
CHO-K1細胞はATCCから入手し(ロックビル、MD)、10%FBS、1%L-グルタミ
ン酸、それぞれ100ユニット/mlのペニシリンおよびストレプトマイシンを追加
したダルベッコの変法イーグル培地(DMEM)21:クーンのF-12培地の1:1混合
物(vol/vol)で維持した。
【0192】
CHO-K1細胞はリン酸カルシウム沈澱法(Graham andvan der Eb, Virology(19
73)52:456およびWigler et al., Cell(1979)16:777)によりプラスミドDNAで
形質転換した。血管内皮細胞増殖因子-pLEN121プラスミドは、選択マーカーを有
する2つのプラスミド;完全なメタロチオネインを有するpUC9MT18およびネオマ
イシン耐性の主な選択マーカーを有するpSVneo、と同時形質転換した。3つのプ
ラスミドは、重量比でそれぞれ10:5:1で混合した。pMTNプラスミドはアミノ
グリコシドホスホトランスフェラーゼをコードする遺伝子(ネオマイシンとG418
の耐性マーカー)を包含する。従って、pMTNプラスミドは単独で直接CHO-K1細胞
を形質転換した。形質転換から24時間経過後、pSV2neo(pLENで同時形質転換し
た場合)あるいはpMTNが有するG418耐性マーカーを発現する細胞は、ネオマイシ
ンアナログであるゲネテシン(Geneticin)(G418)を培地中に600μg/mlの濃度
で含む培地での生育で選択した。G418選択で生存したpLEN構築物で形質転換され
た細胞のコロニーは継代培養され、5μMのCdCl2を含む培地でさらに選択を行っ
た。生存していたコロニーは増殖させて細胞のプールとして、血管内皮細胞増殖
因子の発現と解析に使用した。
CHO細胞からのhVEGF121の発現および分泌を確認するための放射能ラベルと
パルスチェイス
pLEN121で形質転換したCHO-K1細胞によるhVEGF121の発現と培地への分泌
は、細胞タンパク質を代謝的にラベルし、次に細胞溶解物あるいは馴化培地から
の血管内皮細胞増殖因子を免疫沈降で確認した。細胞溶解物あるいは馴化培地サ
ンプルは形質転換したCHO細胞を、放射能ラベル期間が始まる前に、50μMZnSO4
を含む無血清のDMEM-21/クーンのF12培地(誘導培地)で24時間培養してメタロ
チオネインプロモーターの誘導を行って調製した。[35S]-L-メチオニンの添加
前に、細胞を洗浄し、メチオニンを含まないDMEM-21/クーンのF12培地で30分間
、37℃で前培養した。ラベル期間を始めるために、コンフルエントになった6cm
の組織培養ディッシュに最終濃度100μCi/mlとなるように[35S]-L-メチオニン
を添加した。パルスチェイス解析においては、”チェイス”期間は30分のラベル
期間の後に開始した。まず、ラベル用培地を取り除き、細胞を一度、L-メチオ
ニンを含む無血清のDMEM-21/クーンのF12培地(”チェイス培地”)で洗浄し、
チェイス期間の間チェイス培地を再度供給した。
細胞溶解物および馴化培地からの[35S]-L-メチオニン-ラベルされたhVEG
121の免疫沈降法による検出
すべての免疫沈降操作は、特にことわらない限り、4℃で行い、1mlの培地を
有する6cmの組織培養ディッシュでコンフルエントになるまで培養した細胞を用
いた。培地を集め、PMSFを1mMとし、細胞溶解物サンプルを調製する間中、氷冷
しておいた。細胞溶解物を調製するため、細胞を氷冷したリン酸緩衝化生理食塩
水(PBS)で一回洗い、次に、0.4mlの、100mMトリス-塩酸(pH8.0)、100mM NaC
l、0.5% NP-40、1mM PMSF(細胞溶解バッファー)で溶解した。馴化培地と細
胞溶解物は4℃、13,000×gで30分間の遠心分離で清澄にした。清澄にした後、
血管内皮細胞増殖因子に対する抗血清あるいは免疫前のウサギ血清(ギブコ)を
細胞溶解物あるいは馴化培地に最終濃度2%(vol/vol)となるように加え、4
℃で一夜インキュベートした後、プロテインAセファロースCL-4Bのスラリー(1
00mg/ml)50μlを加えた。4℃で1時間インキュベートした後、サンプルを1ml
の50mMトリス-塩酸(pH8.0)、0.5M NaCl、5mM EDTA、0.5% NP-40、1mg/ml卵
白アルブミン(シグマ)で順次4回;50mMトリス-塩酸(pH 7.5)、150mM NaCl
、5mMEDTA、0.5% NP-40で2回;および10mM トリス-塩酸(pH7.5)で1回洗
浄した。サンプルは、次に、50μlのサンプルバッファーに懸濁し、3分間沸騰
して、13,000×gで1分間遠心分離した後、12.5%のSDS-ポリアクリルアミドゲ
ルに溶解した。放射能ラベルされたタンパク質を可視化するために、電気泳動し
たゲルをEN 3HANCE(NEN)に30分間、次にd-H2Oに30分間浸した後、乾燥し、フ
ルオログラフィーにかけた。
【0193】
pLEN121で形質転換されたCHO細胞により合成されたhVEGF121の免疫沈降
とパルスチェイスの解析結果は、免疫沈降法では、CHO細胞により合成されたh
VEGF121は、2-メルカプトエタノールでタンパク質を還元すると、約15kDと
約20kDの2つのサイズクラスとして検出された。未修飾の還元したhVEGF12
1のサイズは約15kDと予測されている。グリコシル化で修飾された場合、モノマ
ータンパク質は分子量が18kD以上に移動することが推定される。パルスチェイス
解析は、両方の形態とも60分よりも少ない分泌のハーフタイムで分泌されること
を示す。
CHO細胞により発現される血管内皮細胞増殖因子のグリコシル化とダイマー化の
程度の決定
血管内皮細胞増殖因子の20kD型がN-結合したグリコシル化の結果によること
を確認するために、pLEN21で形質転換されたCHO細胞を、抗生物質ツニカマイシ
ン(典型的には1から10μg/ml)の非存在または存在下、無血清培地で4時間
生育した。ツニカマイシンを含有する培地で4時間生育した後、メチオニンを含
まないがツニカマイシンを前の4時間の培養に存在したと同量含むDMEM-21/ク
ーンのF12培地で、30分間細胞をメチオニン飢餓の状態にした。次に形質転換さ
れたCHO細胞はツニカマイシンを含有しないか含有するラベル用培地で4時間、
(上述のように)[35S]-L-メチオニンでラベルした。ツニカマイシン存在下の
生育ではhVEGF121の20kDの還元型の合成が阻害され、血管内皮細胞増殖因
子の20kDのモノマー型はN-結合グリコシル化の修飾によることを示した。
【0194】
グリコシル化された、またはグリコシル化されていないhVEGF121がダイ
マー形成できるかどうかを決定するために、ツニカマイシン非存在あるいは存在
下生育したpLEN121-形質転換CHO細胞により馴化された培地から免疫沈降物を調
製した。免疫沈降後、サンプルは100mMのβ-メルカプトエタノールを含有するか
含有しないSDSサンプルバッファー中で沸騰することによりプロテインAセファ
ロースビーズから溶出した。ツニカマイシンが存在しない培地で生育した細胞か
ら調製したサンプルは通常の型(15kDと20kD)の血管内皮細胞増殖因子を有して
いたが、これはβ-メルカプトエタノール存在下に沸騰してジスルフィド結合を
還元した後、SDS-PAGEにより分画したときである。しかし、サンプルをβ-メル
カプトエタノール非存在下で調製したときは、SDS-ポリアクリルアミドゲル上で
、約15kD、20kD、28kD、32kDおよび36kDの血管内皮細胞増殖因子種を含む5本の
バンドが検出され、hVEGF121がジスルフィド結合のダイマーを形成できる
ことが示された。ツニカマイシンの存在下に生育した細胞から調製され、β-メ
ルカプトエタノール中で予め還元したあるいは還元していないサンプルの解析の
結果、hVEGF121の32kDおよび36kD型は一方のサブユニットがグリコシル化
されており他方がそうでない(32kD型)ヘテロダイマーを形成するか、あるいは
、両方のサブユニットがグリコシル化された(36kD型)ホモダイマーであること
が明らかになった。28kD型はhVEGF121の2つのグリコシル化されていない
サブユニット間のホモダイマーの形成による。上述の条件下、CHO細胞で生産さ
れたhVEGF121の約50%はN-結合グリコシル化されている。
hVEGF121はヘパリン-セファロースに結合しない
hVEGF121のヘパリン-セファロースに対する結合親和力を決定するために
、ヘパリン-セファロースの1ml(ベッドボリューム)カラムを調製し、10mMト
リス-塩酸、pH 7.5、50mM NaCl(HS平衡バッファー)で、4℃にて、0.4ml/分
の流速で平衡化した。pLEN121-形質転換CHO細胞により馴化された培地200mlを集
め、硫酸アンモニウム(最終濃度80%w/v)で10倍に濃縮し、大量のHS平衡バッ
ファーに対して透析した。10倍に濃縮し、透析した培地の20mlを(上述の)ラベ
ル用培地で4時間生育させた細胞から調製した2mlの培地と混合し、1mlのヘパ
リン-セファロースカラムに負荷した。結合せずに通過した液を集め、SDS-PAGE
解析にかけた。次にカラムをカラム体積の7倍の平衡バッファーで洗浄し、順次
、カラム体積の14倍の10mM トリス-塩酸、pH 7.5、150mM NaClで洗浄し、ついで
カラム体積の6倍の10mM トリス、pH7.5、2M NaClで洗浄しながら画分を集め
た。カラム画分をSDS-PAGEおよびフルオログラフィーで解析したところ、hVE
GF121はヘパリン-セファロースに結合しないことが明らかになった。
【0195】
hVEGF121、hVEGF165およびhVPF189の比較から、血管内皮細胞
増殖因子の121アミノ酸型のものはヘパリン結合能を欠くという独特なものであ
ることが示された。
亜鉛-セファロースによるhVEGF121の精製
亜鉛-セファロースクロマトグラフィーによってhVEGF121が更に精製され
る。金属キレートセファロース(ファルマシア)の2ml(ベッドボリューム)カ
ラムを調製し、脱イオン水で洗浄してから、24mlの塩化亜鉛(ZnCl2)溶液(1m
g/ml水溶液)を”チャージ”した。カラムを再度脱イオン水で洗浄し、10mlの50
mM NaH2PO4、pH 7.0、0.5M NaCl、10mM イミダゾールで”活性化”した。次にカ
ラムを50mM NaH2PO4、pH 7.0、0.5M NaCl、0.5mMイミダゾール(亜鉛平衡用バッ
ファー)で再び平衡化した。10mM トリス-塩酸、pH7.5、50mM NaCl中にhVEG
121を含むサンプル(ヘパリン-セファロースクロマトグラフィーからの非結合
物質)の24mlを亜鉛-セファロースカラムにチャージした。カラムは次に亜鉛平
衡用バッファーで洗浄し、そして最終濃度が5mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30
mM、60mMおよび100mMとなるようにイミダゾールを添加した亜鉛平衡用バッファ
ーで分画した。この分画の結果、hVEGF121は亜鉛平衡用バッファー中で亜
鉛-セファロースに結合し、カラムから最終濃度が15から25mMとなるようにイミ
ダゾールを添加した亜鉛平行用バッファーで溶出することを示す。
分泌されたhVEGF121はシグナルペプチダーゼ開裂部位で正確に開裂される
亜鉛-セファロース(上述)によるクロマトグラフィーで精製されたhVEGF1
21は100mMのβ-メルカプトエタノールを含む負荷用バッファーで還元し、SDS-ポ
リアクリルアミドゲル電気泳動で分画し、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF
)膜に移し、自動気相蛋白質配列決定機(アプライドバイオシステムズ)で連続
エドマン分解してN末端配列解析を行った。血管内皮細胞増殖因子の15kDおよび
20kD型の両方とも、それぞれの型の90%がAPMAEGGGQNHHEVの配列
から始まったが、これに対し、それぞれの型の10%が1-3位欠損型でAEGG
GQNHHEVであった。これらの結果はCHO細胞で発現し、分泌されたhVE
GF121の15kDと20kD型の大部分は、天然に単離された型の血管内皮細胞増殖因
子のN末端に一致した、正確なN末端アミノ酸配列を有することを確かにした。
モノ-QクロマトグラフィーによるhVEGF121の精製
15から25mMのイミダゾールを含むバッファーで亜鉛-セファロースから溶出し
たhVEGF121を脱塩し、平衡用バッファー(10mMトリス-塩酸、pH7.5)中で
モノ-Q(ファルマシア)カラムにかけた。結合したタンパク質は、0mMから300
mMの範囲のNaClを含む平衡用バッファーで濃度勾配(カラム体積の30倍)にかけ
て溶出し、約80mMから140mMの間のNaClで血管内皮細胞増殖因子が溶出した。
【図面の簡単な説明】
【0196】
【図1】図1は、ポリメラーゼチェーンリアクションのプロセスの改変によって作製した5つのDNA配列を示している。5つの内の1つ(pET-19A;クローン番号5)は、ウシ血管内皮細胞増殖因子の配列決定された成熟型の第15位から第38位のアミノ酸をコードする。この図にはまた、5つのDNA配列由来のDNAコンセンサス配列およびpET-19Aの翻訳が含まれている。それぞれの配列は、EcoRI制限部位およびHindIII制限部位を示すDNAリンカーをどちらかの端に含む。
【図2】図2は、ウシ濾胞星状細胞mRNAから、図1の5つのDNAが作製され、そして増殖される方法を示す概略図である。
【図3a】図3aは、11B'と命名されたクローン由来のDNA配列およびその推定アミノ酸配列を示している。示された配列は、ウシ血管内皮細胞増殖因子(bVEGF120)の15位から120位までのアミノ酸をコードする。
【図3b】図3bは、ヒト細胞での好ましいコドンを使用した場合に基づいた合成DNA配列を表しており、これはbVEGF120の1位から19位までのアミノ酸をコードし、そして図3aのDNA配列の5’末端と重複する。この合成DNAは、図3aのDNA配列を制限酵素AccIで消化した後に図3aの単離されたDNA配列と酵素によって連結され、全長の成熟bVEGF120タンパク質をコードするDNA配列が製造される。
【図4】図4は、ヒト血小板由来増殖因子のA鎖サブユニットおよびB鎖サブユニットをコードする単離されたDNA配列、およびDNA配列から推定されるこれら2つのタンパク質の前駆体のアミノ酸配列を示す。
【図5】図5は、ウシ血管内皮細胞増殖因子をコードするmRNAの一部を増幅させて作ったDNAを含む、臭化エチジウムで染色したポリアクリルアミドゲルの写真である。
【図6】図6は、bVEGF120およびbVEGF164をコードする単離されたcDNA配列を示す。四角で囲んだ、塩基342位からのDNA配列は、bVEGF164をコードする、もう一方の様式でスプライスされたcDNA中に存在する挿入配列を示している。ヌクレオチド配列のすぐ下に示すアミノ酸配列は、bVEGF164の推定アミノ酸を示している。bVEGF120の推定アミノ酸は、113位(Glu)までbVEGF164と一致している。図6では、111位(Arg)から始まるbVEGF120のカルボキシル末端の配列をイタリックでbVEGF164の配列の下に示している。
【図7】図7は、ヒト血管内皮細胞増殖因子の成熟した型(hVEGF121およびhVEGF165)をコードする天然のヒトDNA配列を示している。この示されているDNA配列は、ヒトゲノムおよびヒトcDNAクローンから得られた配列の構成を示している。コドン7にコードされる括弧内のアミノ酸(Gly)は、bVEGF120およびbVEGF164の配列と比較したときの挿入アミノ酸を示す。
【図8】図8は、2つのバクテリオファージのオーバーラップしたゲノム挿入物のDNA配列の一部を示す。これらは共に、hVEGFの様々な型をコードする8つのエクソンおよび隣接するスプライスジャンクションを含む。
【図9】図9は、U937細胞のmRNAからのhVEGF121の全長のcDNA配列を増幅するために用いる2つのオリゴヌクレオチドプライマーを示している。
【図10a】図10aは、チャイニーズハムスター卵巣細胞培養物中でhVEGF121を発現するのに用いられる発現ベクター、pLENの概略を示している。
【図10b】図10bは、チャイニーズハムスター卵巣細胞培養物中でhVEGF121を発現するのに用いられる他の発現ベクター、pMTNの概略を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の血管内皮細胞増殖因子をコードする単離されたDNA配列。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【公開番号】特開2007−68545(P2007−68545A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330035(P2006−330035)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【分割の表示】特願2003−272098(P2003−272098)の分割
【原出願日】平成2年7月27日(1990.7.27)
【出願人】(593215117)サイオス インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】