説明

血管内膜過形成を阻害する方法

本発明は、概して、血管内膜過形成に、そして特に、E2FへのsiRNAを使用して血管内膜過形成を阻害する方法に関する。さらに本発明は、そのような方法における使用に適した化合物および組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる、仮特許出願第60/686,048号(2005年6月1日出願)への優先権を主張する。
技術分野
本発明は、概して、血管内膜過形成に、そして特に、E2FへのsiRNAを使用して血管内膜過形成を阻害する方法に関する。さらに本発明は、そのような方法における使用に適した化合物および組成物に関する。
【0002】
背景技術
遺伝子発現を特異的に阻害するための1つの方法は、短鎖干渉性RNA(siRNA)の送達による。アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)およびリボザイムが含まれる、遺伝子阻害へのアプローチの中で、siRNAは、遺伝子阻害、標的バリデーション、および療法応用のために現在最も速やかに開発されているアプローチである(1)。siRNAは、療法応用に十分適しているようである。標的遺伝子のきわめて特異的な阻害に加えて、siRNAは、低濃度で有効であるので、非特異的な活性による毒性の可能性を低減または一掃する。最近、いくつかの原理検証型の研究により、siRNAの療法可能性が実証されてきた。これらには、肝炎(2,3)、ウイルス感染症(4,5)、黄斑変性(6)、敗血症(7)、腫瘍の増殖および浸潤(8〜10)、慢性神経障害疼痛(11)、および血清コレステロール(12)の治療が含まれる。上記の研究より明白であることは、siRNAを特別な細胞種へ標的指向させること、またはそれらを局所へ送達することによって、siRNA応答の効率を高める一方で、有害な副作用の可能性がさらに抑えられることである。現在、機能性siRNAのin vivo安定性を高めるだけでなく、標的送達をさらに促進させるsiRNAの化学修飾の方法を発見することに集中した努力がある(12,13)。
【0003】
特定の遺伝子をsiRNAで沈黙させるためのこれらの標的指向法は、局在化した病理学的血管内膜過形成の治療における魅力的な療法戦略に役立つ。病理学的な血管内膜過形成は、バイパス移植または血管形成術の間に受ける損傷に続いて静脈バイパス移植片と動脈において生じ、大部分は、媒質における血管平滑筋細胞(VSMC)の増殖と治療される血管の内膜へのそれらの移動によるものである(14,15)。そのような増殖は、血管損傷により活性化されるいくつかの増殖刺激性シグナルにより誘導される(16〜18)。増殖の増加だけでなく、炎症とケモカインおよびその受容体のアップレギュレーションをもたらす媒質中の細胞のアポトーシスも、この過剰増殖応答を始動させる役割を担うことが示されてきた(19,20)。血管細胞のそのような異常な挙動は、心臓血管系疾患の治療のためのバイパス手術および血管形成術の高い長期失敗率をもたらす。実際、外科的手技の洗練化にかかわらず、静脈移植の失敗率は、依然として高い(21,22)。これらの失敗は、しばしば、手術または血管形成術による反復処置を要求して、心臓発作や虚血臓器の切断をもたらす場合がある。従って、そのような病原性の細胞プロセスを効果的に阻害する分子戦略の開発がここ20年にわたる多大な研究と多くの臨床試験の焦点になっている。
【0004】
転写因子のE2Fファミリーは、DNA複製、細胞周期進行、および細胞運命決定に関与する遺伝子の発現を制御するのに必須の役割を担っている(23−28)。今日までに、8種の遺伝子産物(E2F1〜8)がE2Fファミリーのタンパク質を構成し、E2F3およびE2F6の追加のイソ型も存在するが、それらの機能は、十分には特性決定されていない(29〜32)。配列相同性に基づいて、E2Fタンパク質は、3つの異なるカテゴリーへ分類可能である。E2F1〜3は、細胞周期の間に緊密に調節されて、大抵は転写のアクチベーターとして機能する(26)。E2F4とE2F5は、pRbファミリーメンバーのp130およびp107と協奏的に転写のリプレッサーとして機能する(33)。E2F6〜8は、pRbファミリーのタンパク質から独立した転写リプレッサーとして機能すると考えられている(30,31,34)。さらに、様々なグループからの証拠は、アクチベーターのE2F(E2F1〜3)が特異的な機能を有することを示唆する。この機能特異性は、細胞増殖の制御におけるE2F3の役割とアポトーシスの誘導におけるE2F1の役割において最も明白である(35,36)。
【0005】
E2F活性が細胞増殖および細胞運命決定を制御することにおいて中心的な役割を担うので、E2F活性の阻害は、病理学的な血管内膜過形成と関連した血管平滑筋細胞(VSMC)中の細胞プロセスを阻止するのに有効なやり方となる見込みがある。実際、Eckhartら(40)による最近の研究は、E2F3ノックアウトマウスでは、傷害を受けた動脈において血管内膜過形成が大いに低減されることを証明した。
【0006】
本発明は、E2FのE2F1およびE2F3へ選択的に標的指向するsiRNAがVSMCの増殖およびアポトーシスをin vitroで阻害する能力、並びに、マウスバイパス移植片モデルにおける血管内膜過形成の発達を低減するその能力について検証するために設計した研究に由来する。本発明は、例えば、バイパス移植または血管形成術より生じる損傷に続いて静脈バイパス移植片や動脈において生じる病理学的な血管内膜過形成を阻害する方法を提供する。
【0007】
発明の要約
本発明は、概して、血管内膜過形成に、そして特に、E2FへのsiRNAを使用して血管内膜過形成を阻害する方法に関する。さらに本発明は、そのような方法における使用に適した化合物および組成物に関する。
【0008】
本発明の目的および利点は、以下に続く記載より明らかになろう。
発明の詳細な説明
短鎖干渉性RNA(siRNA)が哺乳動物細胞において遺伝子発現を配列特異的なやり方で阻害可能であるという発見は、そのような遺伝子阻害剤をin vivoで使用する、多くの病理学的状態の治療法の可能性を高めている。以下に続く実施例では、E2F1およびE2F3に抗するsiRNAが培養状態の静脈一次平滑筋細胞の増殖およびアポトーシスを阻害可能であることを示す。さらに、これらsiRNAの静脈移植片への体外(ex vivo)送達は、この移植片のマウス中への外科移植に続く、内因性E2F遺伝子のサイレンシングをもたらす。重要なことに、これらの増殖促進性E2Fへ特異的なsiRNAの投与は、移植された移植片における血管内膜過形成を有意に低減した。これらの試験結果は、siRNAが動物のバイパス移植片における血管内膜過形成を制限可能であるという治療原理の検証を確定させる。このように、E2F特異的なsiRNAは、ヒトにおける末梢および冠状動脈バイパス移植手術に続くこの病理学的プロセスと移植の失敗を阻害するのに有用であることが証明され得るリード化合物の代表になる。
【0009】
本明細書に記載するのは、アクチベーターE2Fの選択阻害剤として作用するsiRNAの開発である。以下に続く実施例に提示するデータは、これらの阻害剤が療法目的のために標的部位へ効果的に送達可能であることを示す。具体的には、増殖促進性E2F(E2F1およびE2F3)へ標的指向するsiRNAの短期的な局所送達がマウスにおける静脈バイパス移植に続く血管内膜過形成の低減をもたらすことが示される。血管内膜過形成の低減は、これらのsiRNA阻害剤が培養状態の大静脈VSMCの増殖およびアポトーシスを阻止する能力と相関した。細胞増殖および細胞運命の制御におけるE2F1の二元的な役割からすれば、E2F1またはE2F3のいずれかに抗するsiRNAで細胞増殖の阻害が達成された一方で、DNA傷害誘発性アポトーシスの阻害がE2F1に抗するsiRNAに特異的であったことは、驚きではない。血管内膜過形成をもたらす病理学的な細胞の増殖およびアポトーシスをともに阻害する分子戦略の開発は、多大な研究の焦点になってきた(37,39,42,43)。実際、最近の報告は、in vivoの血管内膜過形成に関連した過剰増殖応答を始動させることに、増殖の増加に加えて、血管傷害に続く培地中の細胞のアポトーシスが関与している可能性があると示唆している(19)。E2F活性は、細胞の増殖だけでなく、増殖刺激シグナルの存在または非存在に依存するかまたはDNA傷害に応答するアポトーシスに仲介することが可能であるので、E2F活性の阻害は、VSMC中の細胞プロセスを阻止するのに有効な方法であることが期待される。
【0010】
驚くべきことに、E2F3 siRNAは、E2F4が存在しているときだけに、VSMC増殖を阻害するのに有効であることが観察された。E2F3 siRNAは、E2F4ノックアウトマウスの大静脈に由来するVSMCにおける細胞増殖のより無効な阻害剤である(図2C)。この結果は、E2F3とE2F4がVSMC増殖において反対の役割を担うことを示唆し、E2F4(増殖阻止性のE2F)欠乏マウスが動脈傷害に続く血管内膜過形成の増加を明示する一方で、E2F3(増殖推進性のE2F)欠乏マウスは、WT対照マウスに比較して低減された血管内膜過形成を示すという最近の観察に一致している(40)。同様に、E2F1欠乏マウスはまた、これらの実験条件の下で血管内膜過形成の明確な低減を示す。まとめると、これらの試験結果は、E2Fの増殖およびアポトーシス機能だけを特異的に阻止するsiRNAのような薬剤が再狭窄を臨床において制限するのにきわめて有効であろうと示唆するのに十分な証拠を提供している。さらに、それらは、様々なE2Fファミリーメンバーを区別しない阻害剤、例えば、E2F3とE2F4の両方の機能を阻害する薬剤は、血管平滑筋細胞増殖と血管内膜過形成を臨床において制御する次善の薬剤となる可能性があることを示す。この解釈に一致した、2つの大規模な無作為化フェーズ3試験は、非選択的なE2F阻害剤、E2F DNAデコイが血管内膜過形成や移植片不全に有意には影響を及ぼさないことを最近実証した(45)。このように、すべてのE2FについてのコンセンサスE2F DNA結合部位を担うE2F DNAデコイの臨床効果の不足への1つの説明は、DNAデコイは増殖刺激性E2Fと増殖抑圧性E2Fの両方の活性を阻害可能であるので、その投与は、E2F4活性が非存在であるときにE2F3 siRNAが細胞増殖を阻害するのにあまり有効でないときに観察されるものに似た表現型をもたらす可能性がある、というものである。
【0011】
siRNAの療法応用には、特異性、合成のコスト、送達、および安定性といった技術課題が依然として関連しているが、siRNAは、遺伝子阻害のために最も速く開発されている療法アプローチである。バイパス手術の治療現場では、上記ハードルの多くが乗り越えられるように思われる。非特異的な毒性を有するsiRNAが他のmRNAに対して非特異的な効果を及ぼす可能性は、siRNAをバイパス移植片へ直接かつ一過的に体外送達する(これは、潜在的な全身毒性を大いに低減するはずである)ので、大いに低下する。その趣意で、E2Fに抗するsiRNAが標的指向されたE2Fに特異的であることを示した(図1Cおよび1D)。さらに、siRNAの移植片への体外送達は、治療に求められるsiRNAの量を実質的に減らすので、この臨床現場におけるその使用コストを抑えることになる。さらに、siRNAの安定性をさらに高めて、細胞への送達と組織バイオアベイラビリティを促進するために、精力的な研究が現在実施されている(6,10,12,13)。siRNA技術におけるこれらの改善も、心臓および血管外科の現場におけるその使用を促進するはずである。このように、siRNAの臨床有用性が近い将来に心臓血管手術の現場において評価されることが期待されている。
【0012】
本発明のいくつかの側面は、以下に続く非限定的な実施例においてより詳しく記載可能である。
実施例
実験の詳細
他に述べなければ、化学品は、いずれもシグマ・アルドリッチ社より購入し、制限酵素は、いずれもNew England BioLabs社(NEB)より入手して、細胞培養産物は、いずれもGibco BRL/Life Technologies(Invitrogen社の事業部)より購入した。
【0013】
細胞培養
一次マウス胚線維芽細胞(MEF)を、10%加熱不活性化胎仔ウシ血清を補充したダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)において、37℃および5% COで維持した。胸大動脈由来マウスVSMCの一次培養物を入手して、既報(47,48)のように培養した。野生型およびE2F4−/−マウスの大動脈からのVSMCを4−10 Mediumに維持した。
【0014】
ルシフェラーゼアッセイ
NIH/3T3細胞を、10%胎仔ウシ血清(Gibco)を補充したDMEMに維持した。トランスフェクションに先立つ16時間前に、5x10細胞/ウェルを24ウェルプレートに播いた。既報(49)のように、Superfect(キアジェン)を製造業者のプロトコールに従って使用して、siRNAとレポータープラスミドの同時トランスフェクションを行った。各ウェルで1μgのE2F1−Lucまたはp68−Luc、1ng pRL−TK(プロメガ)、および、示す場合は、4ngのHA−E2F1またはHA−E2F3と50ピコモルsiRNA二重鎖を360μlの最終容量で使用した。トランスフェクションから24時間後の細胞について、ルシフェラーゼおよびレニラ(Renilla)の発現を検定した。各実験は同一3検体で実施した。
【0015】
核抽出物とウェスタンブロット
野生型マウスの大静脈に由来する一次、継代3のVSMCを60mmディッシュに50%集密度で播き、1μMのスクランブルsiRNA(対照)、E2F3(F3−2単独、F3−5単独、F3−6単独、またはF3−1、F3−5、F3−6の組合せ(siE2F3プール))に対する1μM siRNA、またはE2F1(F1−5単独、F1−4単独、F1−3単独、F1−2単独、またはF1−5、−4、−3、−2の組合せ(siE2F1プール))に抗する1μM siRNAのいずれかとともにSuperfect Reagent(Qiagen)を使用して2回トランスフェクトした。1回目のトランスフェクションは細胞を播いてから24時間後に実施したが、2回目のトランスフェクションは、細胞を播いてから48時間後に実施した。このトランスフェクションプロトコールは、上記の条件下でトランスフェクション効率を高めることを可能にする。2回目のトランスフェクション後24時間の間に細胞をそのまま回復させてから、E2F1またはE2F3タンパク質の発現レベルを検定した。大静脈VSMCの核抽出物を既報(49)のように調製した。この抽出物をSDS−PAGEで分割し、続いてタンパク質をイムノブロッティングのためにPVDF膜上へ移した。イムノブロッティングには以下の一次抗体を利用した:抗E2F3a(SantaCruz,SC−879)、抗E2F1(SantaCruz,SC−251)、抗E2F2(SantaCruz,SC−633)、および抗E2F4(SantaCruz,SC−1082)。
【0016】
レスキュー実験に使用の突然変異E2F構築体の産生
siRNA標的配列は、以下の通りである:F1−3,AAGAUCUCCCUUAAGAGCAAA、およびF3−6,AAGACUUCAUGUGUAGUUGAU。
【0017】
標準的な分子生物学の技術を使用して、E2Fの突然変異体(pCDNA3−HAE2F1mutおよびpCDNA3−HAE2F3amut)を産生した。簡潔に言えば、突然変異誘発に使用したプライマーは、以下の通りである:
【0018】
【化1】

【0019】
E2F1mutは、siRNA F1−3の効果に対してそれを非感受性にするサイレント点突然変異を収容する。E2F3amutは、siRNA F3−6による標的指向を排除するように設計したサイレント点突然変異を収容する。
【0020】
トランスフェクションアッセイ
野生型またはE2F4−/−マウスの大静脈に由来する一次、継代3のVSMCを60mmディッシュに50%集密度で播き、1μMのスクランブルsiRNA(対照)、E2F1(F1−3、F1−4、またはF1−5)に抗する1μM siRNA、E2F3(F3−2、F3−5、またはF3−6)に抗する1μM siRNA、または1μMのF1−3+4μgのpCDNA3−HAE2F1、またはF3−6+4μgのpCDNA3−HAE2F3amut(Rescue)のいずれかとともにSuperfectトランスフェクション試薬(Qiagen)を24時間使用して2回トランスフェクトした。また、E2F6に抗するsiRNAを対照(siE2F6)として細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションに続いて細胞をトリプシン処理して、12ウェルプレートに約20,000細胞/ウェルで播いた。
【0021】
VSMC増殖(DNA合成)アッセイ
野生型および/またはE2F4−/−マウスの大静脈からのトランスフェクトされたVSMCを
トリプシン処理して、12ウェルプレートに約20,000細胞/ウェルで播いた。次いで、0.5μM HUの添加により、細胞を強制的にG1/Sへ阻止した。21時間後、HUを欠く培地の添加により細胞をHUブロックより解放し、H−チミジン(培地1mLにつき1μCi)を含有する培地とともにインキュベートして、DNA合成をモニタリングした。H−チミジン含有培地の存在下で24時間のインキュベーションの後で、細胞をPBSで2回洗浄し、5%(w/v)トリクロロ酢酸(TCA)(VWR cat# VW3926−2)で1回洗浄し、0.5mLの0.5N NaOH(VWR cat# VW3221−1)に採取して、H−チミジン取込みの測定のためにシンチレーションバイアルへ入れた。データは、細胞増殖(%)としてプロットした(ここで100%細胞増殖は、H−チミジン取込み(%)により定義する)。ゲル対照のH−チミジン取込みを100%へ設定した。
【0022】
VSMCアポトーシスアッセイ
野生型マウスの大静脈からのトランスフェクトされたVSMCを4−10培地単独(WT、シスプラチン無し)または100μMシスプラチンを含有する4−10培地で30時間処理した。次いで、細胞を固定して、切断カスパーゼ3に特異的なPE共役抗体を使用して、活性カスパーゼ3を染色した(製造業者のプロトコールに特定される通り)(Pharmingen)。フローサイトメトリー分析を使用して、PE陽性細胞(%)をアポトーシスの尺度として定量した。アポトーシス(%)は、フローサイトメトリー分析により測定されるPE陽性細胞(%)により定義する。
【0023】
in vivo siRNA取込みアッセイ
各条件につき3匹のマウスから大静脈を下記のように摘出して、摘出血管を、全部で1μMのスクランブルsiRNAと微量(100,000cpm)の末端標識32P−スクランブルsiRNAを含有するDMEMにおいて、室温または氷上のいずれかで30分間インキュベートした。次いで、この血管をDMEMで3回、PBMで2回灌流で洗浄した後で、32P−スクランブルsiRNAの血管への取込みを定量した。32P−スクランブルsiRNAの取込みは、血管をシンチレーション液に入れて、シンチレーションカウンターを使用して32Pを測定することによって定量した。血管内の32Pの量をインプット(100,000cpm)32P−スクランブルsiRNAで割って100倍することによって取込み(%)を測定した。さらに、25℃で30分のインキュベーションに続いて、フェノール:クロロホルムを使用して、血管の1つから32P−スクランブルsiRNAを抽出して、非変性アクリルアミドゲル上で分割した。このsiRNAのin vivo活性を評価するために、スクランブルsiRNA(SCR)またはE2F1およびE2F3へのsiRNA(siE2F)のいずれかと一緒にすでにインキュベートした静脈移植片の抽出物をSDS−PAGE上で分割して、その後タンパク質をイムノブロッティングのためにPVDF膜へ移した。イムノブロッティングには以下の一次抗体を利用した:抗E2F3a(SantaCruz,SC−879)、抗E2F1(SantaCruz,SC−251)、抗E2F2(SantaCruz,SC−633)、および抗E2F4(SantaCruz,SC−1082)。
【0024】
マウスin vivo静脈バイパス移植片モデル
マウスの静脈バイパス移植片モデルは、ZhangとHagenら(50)による既報のように実施した。簡潔に言えば、下大静脈(IVC)の0.8cm切片をドナーマウスより採取して、同系レシピエントの頚動脈へ吻合した。レシピエントマウスにおける移植に先立って、5ナノモルのSCR siRNA、またはE2F1およびE2F3に抗する各2.5ナノモルのsiRNAの混合物のいずれかを含有するDMEM溶液にIVCを室温で30分間入れた。この間、移植片レシピエントマウスにおいて、左総頚動脈の10mm切片を周囲の組織より単離した。この切片を近位および遠位に8−0ナイロン縫合で閉鎖し、2つの動脈切開部を近位と遠位に約0.8cm離して創出してから、血管を生理食塩水で満たした。2つの固定縫合を各動脈切開部の近位および遠位角で、そして2つの可動縫合を動脈周囲の各180°(4〜6の咬合/180°)で使用する、IVCと頚動脈の間の端−側吻合を実施した。IVC吻合の間の頚動脈切片を両端で結紮して切断して、それによりIVC移植片を広げた。次いで、8−0ナイロン結紮を取り出して、飽和した移植片の壁を通る血流を評価することによって、移植片の開存性を決定した。siRNAを含有する残りのDMEM溶液を30%プルロニックゲル(BASF)と氷上で混合し、移植の部位へ移して、ここでゲルを重合化させた。次いで、切開部を閉じて、次の2〜3日にわたり、残る核酸をそのままゲルの外から静脈中へ拡散させた。この手順全体は、非外傷性の技術を用いて、96%の成功率で厳密に実施した。手術時間は、平均して、IVC採取について10分、頚動脈間置移植術について40分であった。すべての手術手順は、手術顕微鏡(WECK Model 029001,ズーム3.6−18,J.K.Hoppl Corporation)を使用し、ペントバルビタールナトリウム(50mg/kg体重、腹腔内)麻酔を用いて無菌的に実施した。
【0025】
移植から4週後に移植片を採取した。先の切開部を通して移植片を曝露し、胸腔を開いた。右心房に切込みを入れて、左心室を通すPBSで移植片を灌流した。次いで、100mmHgの一定圧で20分間、移植片を10%緩衝化ホルマリンでin situ灌流−固定した。この移植片を摘出して、10%中性緩衝化ホルマリン中に24時間入れてから、70%エタノールへ移した後で、パラフィンに包埋した。移植片の中央から5ミクロンの連続切片を0.5mmごとに取って各移植片につき全部で4つの切片とし、Mikat(改良マッソントリクロームおよびベルヘーフエラスチン組織染色液)で染色した。この染色は、コラーゲンを緑色、エラスチンを黒色、細胞質を赤色、核を黒色で同定することを可能にした。
【0026】
Nikonカメラを使用して撮影した40倍原図拡大像を使用して、組織切片の形態計測分析を実施した。内腔、新生血管内膜(neointima)、および媒質の周界および領域の測定は、ImageTool(Version3.0,UTHSCSA)を使用するplainimetryによって実施した。新生血管内膜は、平滑筋細胞の交差したランダムに出現する配向性と、VSMC細胞質の遍在とコラーゲンの相対的な不在により付与される主に赤い色によって同定した。媒質は、VSMCの環状配向性と、コラーゲンにより付与される主に緑の色により認めた。この測定を使用して、切片から測定したものと同等な領域および周界の同心円を作成し、これらの円の半径を使用して、各移植片の層の平均厚を計算した。
【0027】
統計分析
上記の結果は平均±SEとして示す。統計分析は、片側ANOVAを使用して行った。0.05以下のP値を有意差を示すものとみなした。片側ANOVAに加えて、両側不対t検定を行って、各処置群を互いに比較した。siE2F群は、SCRおよびゲル対照群と有意に異なっていた(P<0.0001)。SCR群は、ゲル対照群と有意に異なってはいなかった(P>0.05)。
【0028】
結果
E2F1およびE2F3に抗するsiRNAを設計して評価すること
ヒトおよびマウスの増殖促進性E2F(E2F1およびE2F3)のより強力かつ選択的な阻害剤をsiRNA技術の使用を介して開発するために、マウスとヒトの配列をはじめに並置して、同一性の領域をsiRNA標的指向のために考慮した。次いで、選択した配列をBLAST処理して、E2F標的−特異性および独自性をヒトおよびマウスのゲノムの内部で確認して、各E2F標的につき約6種のsiRNAを分析用に選択した。
【0029】
これらE2F特異的siRNAの培養状態のマウス線維芽細胞における阻害効果を評価するために、脂質ベースのトランスフェクション試薬を使用する一過性トランスフェクションアッセイを実施して、E2F仲介性の転写活性化を測定した。具体的には、E2F1またはp68プロモーターのいずれかの制御下にルシフェラーゼ遺伝子を含有するレポーター構築体を、E2F1またはE2F3に抗するsiRNAの存在または非存在下に、それぞれE2F1(HA−E2F1)またはE2F3(HA−E2F3)発現カセットとともに同時トランスフェクトした(図1)。様々なE2F特異的siRNAのE2F仲介性トランス活性化(transactivation)に対する阻害効果を、siRNAのそのE2F相対物およびレポーター構築体との同時トランスフェクションに続くレポーター活性化を測定することによってスコア化した。次に、ウェスタンブロット分析により、E2F1(F1−2、F1−3、F1−4、F1−5)(図1C)またはE2F3(F3−2、F3−5、F3−6)(図1D)に抗するsiRNAの大静脈VSMC細胞中への一過性の送達がE2F3およびE2F1の発現を特異的に低減することを実証した。重要にも、E2F3に抗するsiRNAは、E2F1タンパク質レベルに効果がなく、E2F1に抗するsiRNAは、E2F3タンパク質レベルに効果がなかった。siRNAトランスファーの効率を非特異的な蛍光標識siRNAの同時トランスフェクションにより評価して、>75%であることを定量した(データ示さず)。さらに、E2F1またはE2F3のいずれかのタンパク質のレベルが低下した、siRNAでトランスフェクトしたVSMCの分析は、培養状態のVSMCの有意に減少した増殖(H−チミジン取込みにより測定する)を生じた(図2AおよびB)。この効果は、E2Fへの標的指向に特異的であり、標的siRNAにより分解されない修飾E2F1または修飾E2F3転写物(それぞれF1−3およびF1−6)(Rescue)のいずれかをコードする遺伝子の同時トランスフェクションにより一部逆転可能であった。この一部逆転の理由は、一次VSMC中のsiRNAに対してプラスミドDNAのトランスフェクション効率がより低いためである(データ示さず)。重要にも、siRNAの効果は、E2F4−/−同腹子より派生した大静脈VSMCに比較してE2F4+/+大静脈VSMCにおいて大きかった(それぞれ、約90%と約20%の増殖低下)(図2C)。この観察事実は、in vivoでの動脈傷害に続く再狭窄の発症におけるE2F3およびE2F4の反対する役割を明らかにした最近の知見(40)と一致している。具体的には、E2F4の損失が動脈傷害に続く血管内膜過形成の進行を速めるのに対して、E2F3の損失は血管内膜過形成の発達を妨げることが示された。まとめると、上記の知見は、増殖促進性のE2FであるE2F1およびE2F3に抗するsiRNAのような「選択的」E2Fアンタゴニストが、in vitroおよびin vivoでの哺乳動物の増殖を阻害するのに、E2Fタンパク質のファミリー全体の非選択的阻害剤より効果的であることが証明可能であるという考えを支援する。
【0030】
E2F1タンパク質のアポトーシスにおける役割があるとして、E2F1発現の阻害の、VSMC中のシスプラチン誘発性アポトーシスに対する効果を評価した。E2F1(F1−3)のレベルが低下した、siRNAトランスフェクトした大静脈VSMCの分析は、培養中のVSMCの有意に減少したアポトーシス(フローサイトメトリー分析を使用する、切断活性カスパーゼ3の蓄積により測定する)をもたらした(図3)。この効果は、E2F1 siRNAに特異的であり、その標的siRNAにより分解されない突然変異E2F1転写物の同時トランスフェクションにより一部逆転可能であった。さらに、E2F3(F3−2およびF3−6)へのsiRNAは、スクランブル対照(SCR)siRNAに比較して減少したアポトーシスをもたらさなかった。
【0031】
siRNAの静脈移植片におけるin vivo取込み
RNAi技術によるin vivo遺伝子サイレンシングを達成することへの主要な障害は、送達である。はじめに、静脈移植片におけるsiRNAの安定性を評価するために、3匹のマウスより大静脈を摘出して、放射標識siRNA(32P−SCR)とともに30分間インキュベートした。次いで、この血管より全RNAを単離して、インタクトsiRNAを非変性PAGEゲル上で分割した(図4Aおよび4B)。次いで、静脈移植片におけるsiRNA取込みの効率を定量するために、摘出した大静脈をsiRNAとともに、取込みを可能にする室温でかまたは能動輸送を阻止する氷上のいずれかでex vivoでインキュベートした(41)。次いで、移植片を灌流で洗浄した後で、32P−siRNAの血管への取込みを定量した。取込みの分析は、約68%の標識siRNAが静脈移植片へ輸送されたことを明らかにした。対照的に、氷上でインキュベートした静脈移植片とは、5%未満のインプットsiRNAが結合した(図4C)。次に、ウェスタンブロット分析により、E2F1およびE2F3(F1−3およびF3−6の組合せ)に抗するsiRNAのマウス静脈移植片への送達が、移植片をマウスに移植して48時間後に、E2F1およびE2F3タンパク質の発現を低減することが実証された。重要なことに、F1−3とF3−6は、他のE2Fファミリーメンバーの発現に対して効果がなかった(E2F2およびE2F4のウェスタンを参照のこと)(図4D)。
【0032】
マウス静脈バイパス移植片における血管内膜過形成の低減
次に、増殖促進性E2F(E2F1およびE2F3の組合せ)に抗するsiRNAの、静脈バイパス移植のマウスモデルにおける血管内膜過形成の発達に及ぼす効果を評価した。簡潔に言えば、実験条件ごとに13匹のマウスについて下大静脈から頚動脈性静脈の移植手技を実施した。術後4週間で移植片を採取し、固定し、切片化して、分析用に染色した。移植片切片の分析は、処置を受けなかった対照動物(Gel対照)、並びにスクランブルsiRNA(SCR)で処置した動物において血管内膜過形成が発達していたことを確認した(図5Aおよび5A’)。対照的に、E2F1とE2F3の両方に抗するsiRNA(それぞれ、F1−3およびF3−6)での静脈移植片の処置は、対照試料と比較したときに、血管内膜過形成の有意な減少をもたらした(図5Bおよび5C)。E2Fに抗するsiRNAは、SCR対照とGel対照の両群へ比較するとき、内膜対内側層の比を約42%と約57%、そして内膜比を約36%と43%低下させた(P<0.0001)(図5C,下パネル)。対照的に、E2F siRNAは、内側面積に対して有意な効果がなかった(図5Bおよび5C)。要約すると、上記データは、この静脈バイパス移植のマウスモデルにおいて、siRNAによるE2F1およびE2F3タンパク産生の阻害が血管内膜過形成の発達を有意に低減することを示している。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1−1】図1A〜1D。E2F1およびE2F3に抗するsiRNAの、E2F仲介性転写活性に対する効果。(図1A)NIH3T3細胞を、HA−E2F1発現ベクター単独、またはE2F1(F1−2、F1−3、F1−4、F1−5)若しくはE2F3(F3−2)に抗する合成siRNA二重鎖と一緒に、E2F1−lucレポータープラスミドでトランスフェクトした。(図1B)NIH3T3細胞を、HA−E2F3発現ベクター単独、またはE2F3(F3a−2、F3−2、F3−5、F3−6)若しくはE2F1(F1−3)に抗する合成siRNA二重鎖と一緒に、p68−lucレポータープラスミドでトランスフェクトした。3回の独立した実験より、ルシフェラーゼ活性をレニラ活性に対して正規化した。脂質ベースの試薬を使用して、マウス大静脈の血管平滑筋細胞(VSMC)を、非特異的な対照siRNA(対照)または(図1C)E2F1(F1−2、F1−3、F1−4、F1−5)若しくは(図1D)E2F3(F3−2、F3−5、F3−6)へのsiRNAのいずれかでトランスフェクトした。siRNAは、単独で、または一緒に(siE2F3プール、siE2F1プール)トランスフェクトした。次いで、トランスフェクトした細胞からの核抽出物をSDSアクリルアミドゲル上で分割して、特異抗体でのウェスタンブロッティングによってE2Fタンパク質の存在を評価した(上パネル)。それぞれの個別siRNAの標的特異性は、非標的E2Fメンバーのレベルを定量することによって評価した(下パネル)。
【図1−2】図1A〜1D。E2F1およびE2F3に抗するsiRNAの、E2F仲介性転写活性に対する効果。(図1A)NIH3T3細胞を、HA−E2F1発現ベクター単独、またはE2F1(F1−2、F1−3、F1−4、F1−5)若しくはE2F3(F3−2)に抗する合成siRNA二重鎖と一緒に、E2F1−lucレポータープラスミドでトランスフェクトした。(図1B)NIH3T3細胞を、HA−E2F3発現ベクター単独、またはE2F3(F3a−2、F3−2、F3−5、F3−6)若しくはE2F1(F1−3)に抗する合成siRNA二重鎖と一緒に、p68−lucレポータープラスミドでトランスフェクトした。3回の独立した実験より、ルシフェラーゼ活性をレニラ活性に対して正規化した。脂質ベースの試薬を使用して、マウス大静脈の血管平滑筋細胞(VSMC)を、非特異的な対照siRNA(対照)または(図1C)E2F1(F1−2、F1−3、F1−4、F1−5)若しくは(図1D)E2F3(F3−2、F3−5、F3−6)へのsiRNAのいずれかでトランスフェクトした。siRNAは、単独で、または一緒に(siE2F3プール、siE2F1プール)トランスフェクトした。次いで、トランスフェクトした細胞からの核抽出物をSDSアクリルアミドゲル上で分割して、特異抗体でのウェスタンブロッティングによってE2Fタンパク質の存在を評価した(上パネル)。それぞれの個別siRNAの標的特異性は、非標的E2Fメンバーのレベルを定量することによって評価した(下パネル)。
【図2−1】図2A〜2C。異なるE2Fの欠乏は、VSMCのin vitro増殖を低減または加速可能である。(図2A)マウス大静脈のVSMCを、非特異的な対照siRNA(scr)またはいずれかのE2F1(F1−3、F1−4、F1−5)へのsiRNA単独で、またはその標的siRNA、F1−3により分解されない突然変異転写物を産生するE2F1レスキュー構築体(Rescue)と一緒にトランスフェクトした。次いで、0.5μMヒドロキシ尿素(HU)の添加により、細胞をG1/S境界で同期化した。21時間後、細胞をHU阻止から解放し、血清とH−チミジンを含有する培地の添加によって、細胞周期に再び入るように刺激した。血清添加後24時間で細胞を溶解させ、シンチレーションカウンターを使用して、H−チミジン取込みを分析した。図2B)マウス大静脈のVSMCを、非特異的な対照siRNA(scr)またはいずれかのE2F3(F3−2、F3−5、F3−6)へのsiRNA単独で、またはその標的siRNA、F3−6により分解されない突然変異転写物を産生するE2F3レスキュー構築体(Rescue)と一緒にトランスフェクトした。(図2C)WTまたはE2F4−/−マウスの大静脈からのVSMCを上記のようにトランスフェクトした。
【図2−2】図2A〜2C。異なるE2Fの欠乏は、VSMCのin vitro増殖を低減または加速可能である。(図2A)マウス大静脈のVSMCを、非特異的な対照siRNA(scr)またはいずれかのE2F1(F1−3、F1−4、F1−5)へのsiRNA単独で、またはその標的siRNA、F1−3により分解されない突然変異転写物を産生するE2F1レスキュー構築体(Rescue)と一緒にトランスフェクトした。次いで、0.5μMヒドロキシ尿素(HU)の添加により、細胞をG1/S境界で同期化した。21時間後、細胞をHU阻止から解放し、血清とH−チミジンを含有する培地の添加によって、細胞周期に再び入るように刺激した。血清添加後24時間で細胞を溶解させ、シンチレーションカウンターを使用して、H−チミジン取込みを分析した。図2B)マウス大静脈のVSMCを、非特異的な対照siRNA(scr)またはいずれかのE2F3(F3−2、F3−5、F3−6)へのsiRNA単独で、またはその標的siRNA、F3−6により分解されない突然変異転写物を産生するE2F3レスキュー構築体(Rescue)と一緒にトランスフェクトした。(図2C)WTまたはE2F4−/−マウスの大静脈からのVSMCを上記のようにトランスフェクトした。
【図3】E2F1の欠乏は、VSMCのin vitroアポトーシスを低減可能である。マウス大静脈のVSMCを、非特異的な対照siRNA(scr)、E2F1(F1−3)またはE2F3(F3−2、F3−6)の一方へのsiRNA、またはF1−3のいずれかで、E2F1レスキュー構築体と一緒にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞を100μMシスプラチンで30時間処理した。次いで、細胞を固定して、切断カスパーゼ3に特異的なPE共役抗体を使用して、活性カスパーゼ3を染色した。フローサイトメトリー分析を使用して、PE陽性細胞(%)を定量した。
【図4】図4A〜4D。静脈移植片におけるsiRNAのin vivo取込み。(図4A)移植血管におけるsiRNAの送達を評価するための実験アプローチの概略図。(図4B)siRNA安定性の評価。WTマウスの3つの静脈移植片を32P−スクランブル(scrambled)siRNAとともに25℃で30分間インキュベートした。インキュベーションに続いて、移植片を灌流で洗浄し、2回凍結融解させて組織を壊して、フェノール:クロロホルムを使用してsiRNAを抽出した。引き続き、標識化したsiRNAを非変性アクリルアミドゲル上で分割して、分解の程度を評価した。(図4C)siRNA取込みの評価。マウスから大静脈を摘出し、全部で5ナノモルのスクランブルsiRNAと微量(100,000cpm)の末端標識32P−スクランブルsiRNAを含有するDMEMにおいて、室温または氷上のいずれかで30分間インキュベートした。次いで、この血管を灌流で洗浄した後で、32P−スクランブルsiRNAの血管への取込みを定量した。血管内の32Pの量をインプット(100,000cpm)32P−スクランブルsiRNAで割って100倍することによって取込み(%)を測定した。(図4D)siRNA処理後のE2Fタンパク産物。スクランブルsiRNA(SCR)またはE2F1およびE2F3へのsiRNA(siE2F)のいずれかと一緒にすでにインキュベートした静脈移植片の抽出物をSDS−PAGE上で分割して、その後タンパク質をイムノブロッティングのためにPVDF膜へ移した。
【図5−1】図5A〜5C。E2F1およびE2F3に抗するsiRNAは、静脈バイパス移植片において血管内膜過形成を低減する。(図5A)(左)プルロニック(pluronic)ゲル単独(Gel対照)、(中央)非特異的なスクランブルsiRNA(SCR)、および(右)E2F1およびE2F3に抗するsiRNA(siE2F)で処理した、移植後28日のマウス静脈移植片からの断面を示す顕微鏡写真。Gel対照とSCR処理28日移植片における静脈VSM血管内膜過形成は高度に細胞性であり、結合組織マトリックスに散在する平滑筋細胞より構成される。siE2Fの28日移植片の血管壁は、わずかな細胞層の厚さしかない。(改良マッソントリクロームおよびベルヘーフエラスチン染色)。(図5A’)血管内膜層の厚さを示す、図5Aの囲み領域の40倍拡大図。(図5B)siRNAなし(Gel;プルロニックゲル対照)、5ナノモルの対照siRNA(SRC)、E2F1およびE2F3に抗する各2.5ナノモルのsiRNA(2’OH siRNA)のいずれかで処理したマウス。血管の内膜層(Intima)および内側層(Media)の領域を表す。内膜比(血管内膜の面積を血管の全面積で割ったもの)をバイパス移植後28日目に決定した。(図5C)図5Bのデータを阻害(%)としてプロットした(ここでは、ゲル対照群を血管内膜過形成の100%阻害に設定する)。各バーは、13匹のマウスの平均測定値を表す。内膜比は、E2Fに抗するsiRNAでの処理の後で、約42%低減される(P<0.0001)。内膜厚も約44%低減される(P=0.0003)が、内側の厚さでは有意な変化を観察しない(P=0.8727)。
【図5−2】図5A〜5C。E2F1およびE2F3に抗するsiRNAは、静脈バイパス移植片において血管内膜過形成を低減する。(図5A)(左)プルロニック(pluronic)ゲル単独(Gel対照)、(中央)非特異的なスクランブルsiRNA(SCR)、および(右)E2F1およびE2F3に抗するsiRNA(siE2F)で処理した、移植後28日のマウス静脈移植片からの断面を示す顕微鏡写真。Gel対照とSCR処理28日移植片における静脈VSM血管内膜過形成は高度に細胞性であり、結合組織マトリックスに散在する平滑筋細胞より構成される。siE2Fの28日移植片の血管壁は、わずかな細胞層の厚さしかない。(改良マッソントリクロームおよびベルヘーフエラスチン染色)。(図5A’)血管内膜層の厚さを示す、図5Aの囲み領域の40倍拡大図。(図5B)siRNAなし(Gel;プルロニックゲル対照)、5ナノモルの対照siRNA(SRC)、E2F1およびE2F3に抗する各2.5ナノモルのsiRNA(2’OH siRNA)のいずれかで処理したマウス。血管の内膜層(Intima)および内側層(Media)の領域を表す。内膜比(血管内膜の面積を血管の全面積で割ったもの)をバイパス移植後28日目に決定した。(図5C)図5Bのデータを阻害(%)としてプロットした(ここでは、ゲル対照群を血管内膜過形成の100%阻害に設定する)。各バーは、13匹のマウスの平均測定値を表す。内膜比は、E2Fに抗するsiRNAでの処理の後で、約42%低減される(P<0.0001)。内膜厚も約44%低減される(P=0.0003)が、内側の厚さでは有意な変化を観察しない(P=0.8727)。
【0034】
【表1−1】

【0035】
【表1−2】

【0036】
【表1−3】

【0037】
【表1−4】

【0038】
【表1−5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における静脈移植片中の血管内膜過形成を阻害する方法であって、前記阻害をもたらすのに十分な量のE2F1若しくはE2F3特異的な干渉性RNAを前記移植片へ送達することを含んでなる、前記方法。
【請求項2】
前記哺乳動物がバイパス移植手術の患者である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記哺乳動物が末梢若しくは冠状動脈バイパス移植手術の患者である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記干渉性RNAがE2F1特異的である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記干渉性RNAが短鎖干渉性RNA(siRNA)である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記干渉性RNAを前記移植片へ体外で(ex vivo)送達する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記干渉性RNAがE2F4を阻害しない、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
哺乳動物の血管平滑筋細胞の増殖を阻害する方法であって、前記阻害をもたらすのに十分な量のE2F1若しくはE2F3特異的な干渉性RNAを前記細胞へ送達することを含んでなる、前記方法。
【請求項9】
E2F1特異的な干渉性RNAを送達する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞のDNA傷害誘発性アポトーシスを阻害することをさらに含んでなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記干渉性RNAがE2F4を阻害しない、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記干渉性RNAがsiRNAである、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
バイパス移植または血管形成術の間に受ける損傷に続く、患者における病理学的な血管内膜過形成を阻害する方法であって、E2Fの増殖性およびアポトーシス機能を特異的に阻止する薬剤の有効量を送達することを含んでなる、前記方法。
【請求項14】
前記薬剤がE2F1若しくはE2F3特異的なsiRNAである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記損傷をバイパス移植の間に受ける、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記薬剤を前記移植片へ体外で投与する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記薬剤がE2F4を阻害しない、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
E2F1若しくはE2F3特異的なsiRNA。
【請求項19】
請求項18に記載の前記siRNAと担体を含んでなる組成物。

【図1−1】
image rotate

【図1−2】
image rotate

【図2−1】
image rotate

【図2−2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5−1】
image rotate

【図5−2】
image rotate


【公表番号】特表2008−545749(P2008−545749A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514818(P2008−514818)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/021154
【国際公開番号】WO2006/130716
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(507189666)デューク ユニバーシティ (25)
【Fターム(参考)】