説明

血管移植片

血管アクセス移植片(1)は、近位および遠位端部(3、4)を有する細長い導管(2)を備えている。細長い導管(2)の少なくとも一部が、透析針の刺入後に不浸透性を維持するように、この部分は、自己密閉特性を有する。血管アクセス移植片(1)は、細長い導管(2)の内面(5)から内側に突出した、細長い導管(2)の軸に平行に延在する螺旋フィン(6)も備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管アクセス移植片、詳細には、刺入されると自己密閉するタイプの血管アクセス移植片に関する。
【背景技術】
【0002】
腎不全を患っている個体には、定期的な血液透析処置が必要である。このような透析処置は、個体から血液を取り出して、機能不全の腎臓の機能を果たす透析装置を介して血液を循環させる必要がある。処置後、血液を個体に戻す。典型的には、この処置は、何年にも渡って週に3回行われ、処置の度に、血液の抜き取りおよび戻しのために透析針を挿入する必要がある。さらに、透析は、比較的速い血流速度を必要とするため、透析針をかなり太くする必要がある。
【0003】
このタイプの定期的な透析処置の問題は、患者の天然の血管が、大口径の針の頻繁な刺入による崩壊に耐え、かつ透析の許容速度を満たす血管を通る十分な流量を可能にするには不十分であることである。この問題の1つの解決策は、前腕または大腿上部の内部にある皮膚下の動脈と静脈を人工移植片でブリッジすることによって、外科手術中に患者の体内に部位を形成することである。この外科手術により、透析針が挿入される血管に容易にアクセス可能となる。この代わりに、動脈と静脈を縫合してつなげることによって自家移植片を形成することも可能であり、容易にアクセス可能な部位が形成されるが、自家移植片は、あらゆる天然の血管と同様に瘢痕化しやすく、崩壊しやすい。
【0004】
人工移植片(以降、「アクセス移植片」または「シャント移植片」と呼ぶ)が植え込まれる場合は、この移植片は自己密閉特性を有することが望ましい。なぜなら、自己密閉性でないと、特に、アクセス移植片の植え込みの直後の数週間の間および移植片の周囲が完全に治癒する前に、血液が、透析針が刺入された後にアクセス移植片に残る孔から漏れ得る(Daugirdasら、Handbook of Dialysisを参照されたい)。
【0005】
自己密閉特性を有する様々なタイプのアクセス移植片が当技術分野で周知である。例えば、特許文献1に、同軸ダブル・ルーメン・チューブを備えたアクセス移植片が開示されている。内側および外側チューブは、例えば、テフロンPTFEまたはダクロン合成ポリエステル繊維からなる。外側チューブと内側チューブとの間の空間は、シリコーン・ゴム・シーラントなどの生体適合性ポリマーで満たされている。
【0006】
特許文献2に、自己密閉性積層血管アクセス移植片が開示されている。この移植片は、内層、この内層を同軸的に取り囲んでいる中間層、および内層と中間層の両方を同軸的に取り囲んでいる外層を有する。内層は、発泡PTFEからなる。中間層は、PTFE「綿」などの低密度材料を含む密度の異なる材料が交互した領域を備えている。
【0007】
自己密閉性アクセス移植片の他の例として、ヘパリン結合ポリカーボネート(非特許文献1を参照されたい)またはポリウレタン(非特許文献2を参照されたい)からなる移植片が挙げられる。
【0008】
このような合成アクセス移植片の問題は、動脈/静脈接合部において、移植片の内部ルーメンが時間と共に狭くなり得ることである。さらに、たとえ合成の自己密閉性アクセス移植片でも、透析処置の繰り返しの刺入により、流量の低下および最終的な閉塞をもたらす内部瘢痕化が起こり得る。さらに、アクセス移植片を流れる血液は、特に透析中に透析針が移植片に挿入されたときに、通常は著しく乱れる。このような乱流は、アクセス移植片の内部に線維を形成し、同様にアクセス移植片の流量を低下させ、閉塞さえも引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、1つ以上の上記の問題を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によって、遠位および近位端部を有する細長い導管を備え、細長い導管の少なくとも一部が透析針の刺入後に不浸透性を維持するように、細長い導管の少なくとも一部が自己密閉特性を有する、血管アクセス移植片であって、血管アクセス移植片が、細長い導管の内面から内側に突出した、細長い導管の軸に平行に延在する螺旋フィンをさらに備えている、血管アクセス移植片を提供する。
【0011】
都合良くは、螺旋フィンは、細長い導管の遠位端部から細長い導管の近位端部に近い終点まで延びている。
【0012】
好ましくは、螺旋フィンは、細長い導管の遠位端部から、細長い導管の全長の50%未満、好ましくはその25%未満、より好ましくはその15%未満まで延びている。
【0013】
有利には、螺旋フィンは、5度〜20度の螺旋角、好ましくは8度〜17度、最も好ましくは8度〜16度の螺旋角を有する。
【0014】
都合良くは、螺旋フィンの螺旋角は、螺旋フィンの長さに対して変化している。
【0015】
好ましくは、螺旋フィンは、1回の旋回の50%〜150%、より好ましくは1回の旋回の80%〜120%を形成する。
【0016】
都合良くは、螺旋フィンは、細長い導管の内面から、その内面から細長い導管の長手方向軸までの距離の35%〜65%、好ましくはこの距離の40%〜60%、より好ましくはこの距離の45%〜55%、最も好ましくはこの距離の50%の位置まで内側に突出する。
【0017】
有利には、血管アクセス移植片は、細長い導管の外側に触知可能な外部突出部をさらに備え、導管の突出部の位置が、細長い導管の遠位端部と近位端部との間の螺旋フィンの終点の位置に一致する。
【0018】
好ましくは、触知可能な突出部は、細長い導管の外側を完全に、または部分的に取り囲む触知可能なリングである。
【0019】
好ましくは、触知可能な突出部は、細長い導管の外側から1mm〜4mm、より好ましくは細長い導管の外側から2mm延びている。
【0020】
有利には、触知可能な突出部は、細長い導管の長さに沿って3mm〜6mm、好ましくは4mm〜5mm、最も好ましくは細長い導管の長さに沿って4.5mmの長さを有する。
【0021】
都合良くは、血管アクセス移植片は、細長い導管の外側の周囲に軸方向に延在する、細長い導管を支持する外部螺旋構造をさらに備える。
【0022】
好ましくは、外部螺旋構造の螺旋角は、螺旋フィンの螺旋角よりも大きい。
【0023】
有利には、外部螺旋構造は、50度を超える、好ましくは65度〜80度の螺旋角を有する。
【0024】
都合良くは、細長い導管の遠位および/または近位端部は、吻合フードを備える。吻合フードは、血管アクセス移植片の静脈または動脈への取り付けを容易にする。
【0025】
好ましくは、血管アクセス移植片は、細長い導管の外部の周りに配置された軸方向に延在する外部変形螺旋部をさらに備え、変形螺旋部が、細長い導管を変形させて、細長い導管の内面から内側に突出した螺旋フィンを形成するため、内部螺旋フィンが、外部変形螺旋部に一致し、触知可能な突出部が、変形螺旋部の一体部分である。変形螺旋部および触知可能な突出部は、参照により本明細書に組み入れられる特許文献3に記載されている方法によって形成される。
【0026】
別法では、触知可能な突出部は、変形螺旋部とは別個であり、細長い導管の外側に固定される。例えば、触知可能なリングは、細長い導管の周囲に締め付け固定される。
【0027】
有利には、細長い導管は、ePTFEから形成され、変形螺旋部および触知可能なリングが、ポリウレタンなどの非変形材料から形成されている。
【0028】
螺旋フィンは、血管アクセス移植片を通る血液に螺旋流を生じさせる。
【0029】
本明細書で使用される用語「螺旋」および「螺旋状」は、螺旋および螺旋状の数学的定義ならびに螺旋および螺旋状の数学的定義の組み合わせを包含する。
【0030】
本明細書で使用される用語「螺旋角」は、螺旋とこの螺旋が形成されている中心の軸線、特に管状移植片の軸線との間の角度である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明の一実施形態による血管アクセス移植片の斜視図であり、一部の隠れた詳細が示されている。
【図2】図2は、患者の前腕に植え込まれた後の、本発明の一実施形態による血管アクセス移植片の斜視図であり、一部の隠れた詳細が示されている。
【図3】図3は、本発明の一実施形態による、外部触知可能なリングを備えた血管アクセス移植片の一部の側面図である。
【図4】図4は、本発明の血管アクセス移植片の一実施形態に達する前に使用される型装置に挿入される前の血管アクセス移植片の斜視図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態による血管アクセス移植片の一部の斜視図である。
【図6】図6は、血管アクセス移植片の遠位吻合部における螺旋層流を実証している超音波画像である。画像の中の円で囲まれた薄い灰色/濃い灰色の分裂は、健常な動脈および血管アクセス移植片に見られるものと同様の、動脈の軸線の周りの血流の回転要素を示している。
【図7】図7は、in vivo透析条件をシミュレートした体外血液ポンピング中の血管アクセス移植片の遠位吻合部における螺旋層流を示す超音波画像である。図7の円で囲まれた領域は、薄い灰色/濃い灰色の分裂が存在すること、したがって螺旋層流が存在することを示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図6および図7の画像は、2009年9月に動物実験中に超音波画像技術を用いて得た。
【0033】
図1を参照すると、血管アクセス移植片またはシャント移植片1は、自己密閉特性を有する細長い導管2を備えている。細長い導管2は、可撓性材料から形成されている。この実施形態では、細長い導管2は、外側チューブ内に同軸的に配置された内側チューブを備え、内側および外側チューブはePTFEからなる。内側チューブと外側チューブとの間の空間は、参照により本明細書に組み入れられる特許文献1に記載されているようなシリコーン・ゴム・シーラントなどの自己密閉性の非生体分解性、生体適合性ポリマーで満たされている。
【0034】
しかしながら、細長い導管2の自己密閉特性がこの方式の構造によって与えられることは、本発明にとって必須ではない。したがって、代替の実施形態では、細長い導管2は、参照により本明細書に組み入れられる非特許文献1に記載されているようなヘパリン結合ポリカーボネート/ウレタンからなる。別法では、アクセス移植片は、それぞれ参照により本明細書に組み入れられる非特許文献2に記載されているようなポリウレタン移植片または特許文献2に記載されているような多層アクセス移植片でも良い。重要なことは、透析針による細長い導管2の壁部の刺入の後(すなわち、透析針の挿入および抜去の後)、細長い導管2の壁部が不浸透性を維持し、植え込まれたときに、刺入後に血管アクセス移植片1から血液が漏れないようにすることである。
【0035】
細長い導管2は、その内面5によって画定された細長い導管2の内側ルーメンによって互いに流体連通した近位および遠位端部3、4を有する。螺旋フィン6は、細長い導管2の内面5から内側に突出し、1回の旋回を構成するように細長い導管2の遠位端部4から終点7まで細長い導管2の軸に平行に延在している。すなわち、螺旋フィン6は、360度の完全な1回転を成している。本明細書の実施の形態1に示されているように、導管2を通る血液に螺旋流を生じさせるためには、内部螺旋フィンの1回の旋回で十分である。代替の実施形態では、螺旋フィンは、これよりも短めでも長めでも良く、例えば、1回の旋回の50%〜150%、好ましくはその80%〜120%とすることができる。
【0036】
この実施形態では、螺旋フィン6の断面はベル型である。しかしながら、代替の実施形態では、螺旋フィンは、それぞれ参照により本明細書に組み入れられる特許文献4に記載されているような「U」型の断面または特許文献5に記載されているような三角形の断面などの様々な断面を有する。
【0037】
螺旋フィン6の高さ(すなわち、細長い導管2の内面5から螺旋フィン6の先端部までの距離)は、細長い導管2の半径の50%である。細長い導管2の半径は、細長い導管2の内面5から細長い導管2の長手方向軸までの距離である。この高さの螺旋フィン6は、導管を通る血液の最適な螺旋血流パターンを形成する。しかしながら、代替の実施形態では、螺旋フィン6の高さは、細長い導管の半径の35%〜65%、40%〜60%、または45%〜55%でも良い。
【0038】
螺旋フィン6は、細長い導管2の長さの一部のみにわたって延在することを理解されたい。細長い導管2の全長(すなわち、近位端部3から遠位端部4までの距離)は、患者によって異なり、植え込み部位によるが、典型的には30〜50cmである。螺旋フィン6を有する細長い導管2の長さの割合は、同様に患者によって異なり、螺旋フィン6を有する細長い導管2の部分は、一般に細長い導管の全長の50%未満である。好ましい実施形態では、細長い導管2の全長の25%未満または15%未満が、螺旋フィン6を有する。透析針を挿入しようとしたときに、透析針が螺旋フィン6に衝突すると、螺旋フィン6が、通常は透析針の挿入を妨げるため、螺旋フィン6を有する細長い導管2の長さを最小限にすることが好ましい。
【0039】
図3は、細長い導管2を取り囲んでいる非変形性の触知可能なリング8が存在する実施形態を示している。導管2の外側の周りの触知可能なリング8の位置は、細長い導管2の遠位端部3と近位端部4との間の螺旋フィン6の終点7の位置に一致している。螺旋フィン6の終点7のこの目安は、上記されているように透析針の螺旋フィン6への誤った挿入を防止するのに有用である。触知可能なリング8は、細長い導管2の外面から径方向外側に均一に2mm突出し、かつ細長い導管2の長さに沿って4.5mmにわたって延在する。本発明の好ましい実施形態では、血管アクセス移植片1は、細長い導管2の遠位端部4に吻合フード17をさらに備えている。吻合フード17は、細長い導管2の遠位端部4を越えて延在するePTFEフラップである。吻合フード17は、細長い導管2の形状に等しい管形状であり、管の一部が切り取られている。図3に示されているように、側面図から、吻合フード17の切り取り縁はS型である。吻合フード17は、線x−xに沿って見るとU型断面を有する。螺旋フィン6は、吻合フード17の反対側の位置から始まっている。吻合フードは、細長い導管の近位端部3にも設けられている(図3には不図示)。
【0040】
螺旋フィン6の螺旋角は、5度〜20度、好ましくは8度〜16度である。螺旋角が大きければ大きいほど、1回の旋回を完了するのに必要な螺旋フィン6が短い(すなわち、終点7が細長い導管2の遠位端部4により近い)。一部の実施形態では、螺旋フィン6の螺旋角は、螺旋フィンの長さに対して変化している。例えば、一部の実施形態では、螺旋フィンの螺旋角は、終点7で5度であり、細長い導管2の遠位端部4で16度となるように螺旋角が徐々に増加している。一実施形態では、細長い導管2の遠位端部4から延びた2つまたは3つの螺旋フィン6が設けられる。一部の実施形態では、細長い導管2を支持する外部螺旋構造が、細長い導管2の周囲に設けられる。外部螺旋構造(不図示)は、螺旋フィン6よりも大きい螺旋角を有する。外部螺旋構造の螺旋角は、一般に50度を超え、好ましくは65度〜80度である。適切な外部螺旋構造のさらなる詳細および内部螺旋フィンおよび任意選択の外部螺旋構造を移植片にどのように設けることができるかのさらなる詳細については、参照により本明細書に組み入れられる特許文献3に開示されている。このような外部螺旋構造は、細長い導管2のねじれを防止する。しかしながら、細長い導管2は、自己密閉性であり、内側チューブと外側チューブとの間に自己密閉性の生体適合性ポリマーで満たされた軸方向のチューブを備えているため、細長い導管2のねじれは、通常は問題ではない。したがって、外部螺旋構造は、省くことができ、これにより、外部螺旋構造が、透析針の細長い導管2への挿入を妨げないという利点が得られる。
【0041】
図5は、本発明の一実施形態を示し、血管移植片1は、軸方向に延在する外部変形螺旋部9をさらに備え、触知可能な突出部8は、変形螺旋部9の一体部分である。螺旋フィン6は、特許文献3に記載されている方法によって形成される。この方法は、参照により本明細書に組み入れられる。触知可能なリング8の形成は、この方法を使用して達成すると同時に、一体的に連結された変形螺旋部9と触知可能なリング8が得られる。図4は、この方法に使用するのに適した成形装置を示し、細長い導管2が、矢印12の方向に円筒マンドレル10に配置される。マンドレル10は、その表面に軸方向に延在する螺旋溝11を有する。螺旋溝11のサイズおよび長さは、移植片1の螺旋フィン6の望ましい寸法に一致する。細長い導管2およびマンドレル10は、型13の中に嵌めこまれる。導管2およびマンドレル10を取り囲んでいる型13の内面14は、円筒を形成し、この円筒は、その表面に軸方向に延在するリング型の溝15(触知可能なリング8に一致する)を有する。溶融ポリウレタンが、注入路16から導管2と型13との間に注入される。溶融ポリウレタンは、細長い導管2をマンドレル10の螺旋溝11に押し付けることによって細長い導管2を変形させて、内部螺旋フィン6を生じさせる。この溶融ポリウレタンは硬化して一致する外部変形螺旋部9を形成する。溶融ポリウレタンは、導管2を取り囲んでいる円筒のリング型の溝15に流入して、触知可能なリング8を形成する。注入ステップ中の加熱および加圧(100psiおよび190℃)により、ポリウレタンが細長い導管2に焼結する。代替の実施形態では、触知可能なリング8は、導管2とは別個に製造され、締め付け固定などによって導管2の外面に取り付けられる。
【0042】
使用の際は、血管アクセス移植片1が、当技術分野で周知のように、血液透析が必要な患者の前腕または大腿上部に植え込まれる。図2に示されているように、血管アクセス移植片1は、近位および遠位端部3、4が互いに近接するようにU型に形成される。血管移植片1の近位端部3が動脈に縫合され、血管移植片1の遠位端部4が動脈に縫合されて、動脈と静脈がブリッジされる。
【0043】
したがって、血管アクセス移植片1が植え込まれると、血液は、近位端部3から血管アクセス移植片1のルーメンを通り、血管アクセス移植片1の遠位端部4に流れる。血液が、内部螺旋フィン6を通ると、血液に螺旋流が生じて、血液中の乱流が減少し、これにより移植片/静脈接合部におけるルーメンの狭窄の発生が減少する。透析針は、患者の透析を促進するために、血管アクセス移植片1に定期的に挿入される。針がアクセス移植片に挿入されている間は、針によって生じる血液の乱流は、血液が内部螺旋フィン6を通ると血液に螺旋流がもたらされるため最小限である。図7に示されているように、血管アクセス移植片1によってもたらされる螺旋血流パターンは、針が移植片1に挿入されているときにも維持される。すなわち、実施例2に示されているように、(特に、48時間および14日の定量ポンプ分析結果によって)螺旋フィン6によってもたらされる螺旋流は、血流量が増加しても維持される。血流量の増加は、例えば、血液透析で、血液が針を介して取り出されて戻されるために起こる。増加した血流量で移植片1を通る血液に螺旋流が生じるため、遠位吻合部を通る血液の乱流が減少し、これにより組織の蓄積および/または凝固の刺激ならびに血管アクセス移植片1の閉塞の可能性が低減する。さらに、細長い導管2のルーメンの狭窄は概ね回避されるが、たとえこのような狭窄が起きても、細長い導管2を通る血流は、螺旋流であるためより効率的であり、したがって血管アクセス移植片1の機能寿命が延びる。これにより、患者の一生涯で、新たな透析アクセス点を形成するために必要な外科的介入回数が減少する。
【0044】
使用の際は、血管アクセス移植片1が植え込まれると、図3に示されている触知可能なリング8を患者の皮膚を介して感じることができる。触知可能なリング8は、細長い導管2の近位端部3と遠位端部4との間の螺旋フィン6の終点7の位置を示す。導管2の近位および遠位端部3、4も、植え込み後に、患者の適切な血管に接合されている各点で感じることができる。螺旋フィン6を有する導管2の長さは、導管2の遠位端部4と触知可能なリング8と間に延在する導管2の一部として確認することができる。透析中に、螺旋フィン6を通る血液に生じる螺旋流が最適になり、螺旋フィン6が針を妨害しないように、導管2の螺旋フィン6を有する部分には針を挿入しないのが好ましい。触知可能なリング8の存在により、螺旋フィン6の終点7の位置と細長い導管2の近位端部3との間のアクセス移植片1を針の目標とすることができ、これにより細長い導管2の螺旋フィン6を有する部分への挿入を回避することができる。
【0045】
本明細書に記載される血管アクセス移植片1は、増加した流量で螺旋血流を維持する必要がある体内のどこの植え込みにも適している。例えば、血管アクセス移植片1は、前腕または脚における透析のシャントとして、栄養補給または薬物注入用の静脈ラインとして、またはアクセスカテーテルとして使用される。
【実施例】
【0046】
実施例1
はじめに:100mmの長さの直線移植片の短い流動試験を行い、移植片の中を流れる液体に螺旋流を生じさせるためには、移植片における内部螺旋フィンの1回の旋回のみが必要であることを確認した。
【0047】
目的:試験移植片の上流および下流で超音波測定を行って、移植片の上流に螺旋インサートがある場合および無い場合の渦の数(最大線形速度に対するピーク横方向速度)と、100mmの長さの直線移植片の下流のC.T.F.S.(特徴的な横方向の流れのサイン(Characteristics Transverse Flow Signature))の存在を決定すること。
【0048】
目標:この100mmの直線移植片と100mmの螺旋移植片およびC.F.D.(計算流体力学)の結果と比較すること。
【0049】
器具:ネットワークコンピュータ機器(TCTコンピュータおよび付属品)
超音波装置(ソニーのカメラおよび付属品を備えたGE LOGIQ400CL)
定量ポンプおよび水槽設備(Braveheart)
移植片
1×100mmの長さ、内部フィン無し
1×100mmの長さ、完全な旋回の約83%を形成している、8度の螺旋角を有する内部螺旋フィン付き
1×100mmの長さ、完全な旋回の約83%を形成している、17度の螺旋角を有する内部螺旋フィン付き
螺旋インサート
1.螺旋インサートA
明細:フィン無し、100mmの有効長さ、ラテックス被覆織物材料、直径8mmの直径
2.螺旋インサートB
明細:21度のフィン角度、2.5mmのフィンの深さ、p3プロフィール、1つのフィン、60mmの有効長さ(フィンの直線長さ)、アルミニウム材料、8mmの直径、この続きが、フィン無し、100mmの有効長さ、ラテックス被覆織物材料、8mmの直径
3.螺旋インサートC
明細:−21度のフィン角度、2.5mmのフィンの深さ、p3プロフィール、1つのフィン、60mmの有効長さ(フィンの直線長さ)、アルミニウム材料、8mmの直径、この続きが、フィン無し、100mmの有効長さ、ラテックス被覆織物材料、8mmの直径
環境条件:標準的な室温および圧力
定量ポンプの設定:CONSTANT 17mL/s:17mL/sの一定の流量
参照文献:KangおよびBonneau 2003、ならびにCooney 1976、「Biomedical Engineering Principle」
渦の数(最大線形速度に対するピーク横方向速度)が表1に示されている。
【0050】
【表1】

【0051】
C.T.F.S.(特徴的な横方向の流れのサイン)の存在または非存在の観察結果が表2に示されている。
【0052】
【表2】

【0053】
結論
C.T.F.S.(特徴的な横方向の流れのサイン)、すなわちコヒーレントの流れが、21度のインサートを備えた螺旋移植片、および備えていない螺旋移植片の下流で観察された。これは、移植片の内部螺旋フィンの1回の旋回が、移植片を通る流体に螺旋流を生じさせ得ることを示している。
【0054】
実施例2
ブタモデルにおける血液透析アクセス用の動静脈導管として植え込まれた場合のTFT SLF(商標)動静脈移植片とVascutekから供給される非螺旋動静脈移植片(コントロール移植片)とを比較するために実験を行った。
【0055】
研究の主な目的は、螺旋(TFT)移植片が意図されたように機能する(すなわち、ドップラー超音波を用いて実証されているように螺旋血液層流を回復させる)か否かを決定することであった。
【0056】
他の研究の目的は、螺旋流移植片を内頸静脈および頚動脈に容易かつ安全に植え込むことができるかを確認すること:および血液透析針の挿管中および研究中の流量および血流パターンの傾向を研究することである。
【0057】
この研究は、オランダのHeidelberglaan 100、3584 CX Utrechtに所在のMedical Center Utrecht大学で行った。すべての実験は、試験施設で利用可能な標準操作手順にしたがって有資格のBioSurgicalスタッフの指導の下で行った。
【0058】
試験装置:螺旋流移植片および直線非螺旋流移植片を個別に包装し、固有のシリアル番号(この実施の形態の以下のセクション5に列記)によって識別した。
【0059】
概要:この研究では、合計4匹のブタを使用した。2匹のブタに、同じ手術中に直線移植片と螺旋流移植片(一側:反対側)の両方を植え込み、48時間後に屠殺した。別の2匹の動物を同じように処置し、2週間後に屠殺した。手術の48時間以内に死んだ動物はいなかった。動物の生存は、2日間と2週間にプログラムした。この研究は、血栓の存在または非存在、移植片の機能の妥当性、および内膜過形成を実証した。移植片の機能を、Duplexで評価し、2週間生存したブタの移植片の状態を外植病理学によって評価した。特定の研究の評価項目を調べた。この評価項目には、外科的取り扱いの特徴、in vivoでの移植片の機能性、研究の結論における装置の巨視的および病理学的分析、および研究動物の罹患率および死亡率が含まれる。
【0060】
モデル:ブタは、体重が50kg以上であった。ブタモデルは、解剖学的および生理学的にヒトに類似しているため、血管(外科的)研究に広く使用されていることからこの研究で選択した。加えて、ブタは、入手が容易であり、ブタの大きさは、様々な血管の外科的介入を許容する。
【0061】
飼育および管理:動物は、最初の外科手術の日の約2週間前にUtrecht大学が承認した業者から入手した。動物研究施設に到着時に、被験体の検査を行い、有害な生理的状態について動物を観察した。被験体は、適切な条件下で飼育した。BioSurgicalスタッフが、固有の識別番号が付いた大きな見やすい耳標を取り付けて研究の間、個々の動物を識別した。ブタは、標準条件下で室内区画で飼育し、1日に2回、餌と水を与えた。
【0062】
手術前の投薬:外科手術の6日前に、各動物に80mgの用量のアスピリンを経口(PO)投与した。225mgのクロピドグレル(Plavix)を手術の1日前に投与し、屠殺まで投与を続けた。研究の間中、プラビックスの用量は、アスピリンの80mg/日と共に75mg/日に維持した。動物は、血流遮断の前にヘパリン処置した。
【0063】
動物の準備および麻酔:少なくとも手術の12時間前に固形餌を取り出し、水は自由に与えた。動物に、筋内注射によってアザペロン(2.0mg/kg)およびケタミン(1.5mg/kg)を事前投与した。静脈ラインを確立し、各動物にチオペンタール(2.0mg/kg)およびアトロピン(1.0mg)を静脈投与した。動物に気管内挿管し、機械換気した。麻酔は、酸素と空気(1:1 vol/vol)の混合物の供給、ならびにミダゾラム(1時間に0.6μg/kg)、クエン酸スフェンタニル(1時間に0.6μg/kg)、およびパンクロニウム(Pavulon)の静脈注射によって維持した。すべての換気パラメータを調整して、動脈血液ガスおよびpHを生理学的範囲内に維持した。直腸温度プローブを挿入して中核体温を記録した。
【0064】
外科技術:頸部の中間の長い切開部から、総頸動脈および内頸静脈を両方切開した。5mg/mlの希釈(1:2)パパベリンを無作為に局所的に塗布して血管痙攣を防止した。総頸動脈および内頸静脈を流れる基準流量を、4mmの血管周囲流量プローブ(Transonic Systems)を用いて測定した。血管の処置の前に、100IU/kgのヘパリンを静脈投与した。動脈を自動遮断器で遮断し、8mmの静脈切開術を行った。8−0ポリプロピレンの連続縫合糸を用いて20度〜30度の角度で端部と側面の吻合部を形成した。使用したePTFE移植片は、直径が6mm、長さが10〜15cmであった。同様に静脈吻合部を形成した。吻合が完了したら、動脈(すなわち、吻合部の近位側および遠位側)および静脈(すなわち、近位側および遠位側)を流れる血流を数分測定した。近位総動脈の流量から遠位動脈の流量を減じて移植片の流量を求めた。
【0065】
術後の管理:十分な1回換気量の自発呼吸が始まったらすぐに動物を換気装置から離した。動物を、個々に室内区画に入れ、注意深く観察した。動物に、最初の2日間(1日に2回)は、麻酔薬(ブプレノルフィンTemgesic、0.3mg、筋内)を投与し、5日間は、2日に1回抗生物質(Clamoxyl)を投与した。動物に、研究期間中、餌と共に1日に325mgの用量のアスピリンを経口投与し、毎日75mgのプラビックスも経口投与した。あらゆる合併症および動物の状態の変化を即座に研究責任者に報告した。この研究中に合併症は起こらなかった。
【0066】
外植の手順:動物を48時間(2匹)と14日(2匹)のそれぞれで屠殺した。動物は、プロトコルに上記記載されているように準備し、麻酔した。動物をヘパリン処置(100単位/kg)した後、螺旋および直線ePTFE移植片の開存性および能力を、血管造影法およびカラードップラー超音波法によって評価した。麻酔中に、過量のバルビツレート/飽和KCL溶液を静脈投与して動物を安楽死させた。
【0067】
組織病理学:研究の終了時に、静脈および動脈を緩衝液で灌流し、プロテーゼを含むセグメントを外植し、用意されたサンプル容器内に保存し、病理検査室に送付した。
【0068】
獣医師の監視:すべての実験は、試験施設で利用可能な標準操作手順にしたがって有資格のBioSurgicalスタッフの指導の下で行われた。毎日、動物の健康を担当獣医師が評価し、健康問題は観察されなかった。
【0069】
被験体の識別、研究の日および期間
使用した装置

【0070】
装置のID、研究の日、および植え込みの日

【0071】
螺旋流移植片およびコントロール移植片の結果の詳細な検討
検査−血管造影法および周術期の所見
48時間の外植片の血管造影法
ブタ1およびブタ2の両方は、開存した頸動脈アクセス移植片(螺旋移植片およびコントロール移植片の両方)を示した。ブタ1は、通常の頸静脈開存性を有していたが、ブタ2は、静脈吻合部の遠位側の遠位頸静脈に限定的な狭窄/痙攣が見られた。
【0072】
48時間の外植片における手術中の所見
手術部位の露出後、移植片の切開により、ブタ1およびブタ2の両方において、満足の行く初期の外科的変化、合併症の非存在、無傷の吻合部が示された。
【0073】
14日の外植片の血管造影法
ブタ3およびブタ4の両方は、開存した頸動脈アクセス移植片(螺旋移植片およびコントロール移植片の両方)を示した。ブタ4は、近位吻合部に狭窄/痙攣を有し、正常な頸静脈開存性を有していたが、ブタ3は、静脈側(遠位頸静脈、静脈吻合部の遠位側)における流出部分の直径の最大半分までの限定された狭窄/痙攣を有していた。
【0074】
14日の外植片における手術中の所見
手術部位の露出後、移植片の切開により、ブタ3およびブタ4の両方において、満足の行く初期の外科的変化、合併症の非存在、無傷の吻合部が示された。
【0075】
免疫学的データ
48時間の巨視的所見
外植時に、移植片および遠位吻合部を切除して長手方向の切開によって調べた。螺旋移植片の内部を調べて写真を撮った。リッジの周りの螺旋移植片内には血栓の証拠が存在せず、特に、遠位吻合部に有害な所見が存在しなかった。
【0076】
カラードップラー超音波結果
手術中のカラードップラー超音波
48時間の外植
ブタ1:螺旋移植片およびコントロール移植片は、広く開存し、吻合部が広く開存していた。静脈吻合部の収縮期最大流速は、螺旋移植片が160mls/秒であり、コントロール移植片が244cm/秒であった。螺旋移植片の遠位吻合部の最初の評価は、混合再循環(superimposed recirculation)が心臓拡張期に最も顕著である螺旋流パターンを示した。螺旋流は、コントロール移植片、遠位吻合部、および遠位頸静脈では見られなかった。特に、非螺旋流に一致する二重螺旋が、遠位吻合部で見られた。手術中の監視における第2のステップとして、頸静脈の近位側に生じる頸静脈非螺旋流の要素として遠位吻合部の近位側の頸静脈を結紮することがこれに貢献し得ると判断した。
【0077】
近位頸静脈の結紮の後
螺旋流は、螺旋移植片の遠位吻合部および遠位吻合部の遠位側で実証された。螺旋流は、コントロール移植片の遠位吻合部または静脈で見られなかった。得られた結紮の効果は、螺旋移植片で見られる螺旋流を改善することであり、この効果は、実際に明確に観察された。
【0078】
ブタ2:螺旋移植片およびコントロール移植片は、広く開存し、吻合部が広く開存していた。静脈吻合部の収縮期最大流速は、同様に150〜180cm/秒であった。螺旋移植片の遠位頸静脈は、径の縮小が認められた。近位頸静脈の結紮を行い、螺旋移植片の遠位吻合部における螺旋流が改善された。
【0079】
14日の外植
ブタ3:螺旋移植片およびコントロール移植片は、広く開存し、吻合部が広く開存していた。静脈吻合部の収縮期最大流速は、螺旋移植片が146cm/秒であり、コントロール移植片が403cm/秒であった。螺旋移植片の遠位吻合部の最初の評価は、螺旋流パターンを示した。螺旋流は、コントロール移植片、遠位吻合部、および遠位頸静脈では見られなかった。特に、非螺旋流に一致する二重螺旋が遠位吻合部で見られた。近位内頸静脈の結紮は、14日の移植片におけるアクセス部が瘢痕化し過ぎていたため不可能であった:結紮することは、流量の評価の前に移植片全体が閉塞するリスクがある。これは、試験、実際に内頸静脈の結紮および非結紮の組み合わせに悪影響を及ぼさず、流量評価により、より強い螺旋流の誘導のために結果に大きな価値を与えることが示され、すなわち流出構造に関係なかった。
【0080】
ブタ4:螺旋移植片およびコントロール移植片は、広く開存し、吻合部が広く開存していた。静脈吻合部の収縮期最大流速は、螺旋移植片が224cm/秒であり、コントロール移植片が178cm/秒であった。コントロール移植片では、移植片の収縮期最大流速は、44cm/秒と低かったことに留意されたい。螺旋移植片の遠位吻合部の最初の評価は、螺旋流パターンを示した。螺旋流は、コントロール移植片、遠位吻合部、および遠位頸静脈では見られなかった。
【0081】
48時間の流量プローブ分析:螺旋移植片の近位側の動脈を通る流れを外植時に測定した。結果は、両方のブタで570mls/分であった。
【0082】
14日の流量プローブ分析:遠位頸静脈、螺旋移植片の遠位側を通る流れを外植時に測定した。結果は、両方のブタで1340および330mls/分であった。
【0083】
48時間の定量ポンプ分析:静脈カニューレを、流れの方向に向けて、螺旋移植片セグメントと非螺旋移植片セグメントの接点から1.5cm以内における螺旋移植片に配置した。動脈(流入)カニューレを、螺旋移植片静脈吻合部の同側の頸動脈に配置した。これは、カニューレが頸動脈を逆行する向きで行った。流量プローブを、頸動脈カニューレの遠位側、かつ他の移植片頚動脈吻合部の近位側に配置した。これは、移植片を流れる流量の増加、移植片と吻合部の完全性、および遠位吻合部の流量パターンにおける流量の増加の効果、すなわち螺旋流の維持を試験するようにデザインされていた。
【0084】
定量ポンプは、30%に設定し、10%の間隔で0に下げ、次いで30%または40%で再試験した。前の実験から%に対する流量を次のように決定した:
10% 160mls/分
20% 240mls/分
30% 420mls/分
40% 490mls/分
50% 570mls/分
60% 660mls/分
ブタ1では、螺旋流パターンは、0〜40%で維持されていることが確認された。ブタ2では、螺旋流パターンは、20%で確認されたが、螺旋流の消失を示す二重螺旋は、30%および40%で確認された。これは、この螺旋移植片では、螺旋流が240mls/分、すなわち基準流量を超えるまで誘導されることを示した。これは、試験に悪影響を及ぼさなかった。
【0085】
14日の定量ポンプ分析:静脈カニューレを、流れの方向に向けて、螺旋移植片セグメントと非螺旋移植片セグメントの接点における螺旋移植片に配置した。動脈(流入)カニューレを、螺旋移植片静脈吻合部の同側の頸動脈に配置した。これは、カニューレが頸動脈を逆行する向きで行った。流量プローブを、移植片静脈吻合部の遠位側に配置した。これは、移植片を流れる流量の増加、移植片と吻合部の完全性、および遠位吻合部の流量パターンにおける流量の増加の効果、すなわち螺旋流の維持を試験するようにデザインされていた。
【0086】
定量ポンプは、10%に設定し、10%の間隔で40%/50%に上げ、次いで10%ずつ戻す、または0%に下げた。前の実験から%に対する流量を次のように決定した:
10% 160mls/分
20% 240mls/分
30% 420mls/分
40% 490mls/分
50% 570mls/分
60% 660mls/分
ブタ3:針の刺入点は、針の先端部が螺旋セグメント内で吻合部近傍であるように順行性であった。螺旋流誘導におけるこの比較的低い効率は、予測されたものであり、針の刺入が移植片の螺旋セグメントにすべきではないと述べるIFUを裏付ける。しかしながら、移植片に対する悪影響がないため、試験に悪影響を及ぼさない。
【0087】
ブタ4:螺旋流は、0〜50%で確認され、0%に戻した。針刺入部位は、螺旋リッジの1.5cm近位側、すなわち遠位吻合部の50mm近位側であることに留意されたい。
【0088】
結果の要約
・合計で4匹のブタ。2匹のブタに、同じ手術中に直線移植片および螺旋流移植片(一側:反対側)の両方を植え込み、48時間後に屠殺した。別の2匹の動物を同じように処置し、2週間後に屠殺した。
・動物の生存は、2日間と2週間にプログラムした。この研究は、血栓の存在または非存在、移植片の機能の妥当性、および内膜過形成を実証した。
・外植時に、移植片および遠位吻合部を切除して長手方向の切開によって調べた。リッジの周りの螺旋移植片内に血栓の証拠がなく、特に遠位吻合部に不都合な所見が見られなかった。
・螺旋流は、螺旋移植片の遠位吻合部および遠位吻合部の遠位側で実証された。螺旋流は、コントロール移植片の遠位吻合部または静脈では見られなかった。得られた結紮の効果は、螺旋移植片で見られる螺旋流を改善することであり、この効果は、実際に明確に観察された。
・生体内の螺旋移植片の透析カニューレおよびポンプによって流量が増加すると、螺旋流の誘導が維持された。螺旋移植片の遠位吻合物を通る螺旋流の維持をもたらす流量のおおよその増加は、240mls/分〜570mls/分の範囲であった。
【0089】
結論
・48時間および14日間でのこの研究の重要な所見は:
・このモデルは、強く、高度の専門技術で実施し、移植片の詳細な流量分析についての満足のいく結果が出る。
・螺旋アクセス移植片は、静脈吻合部を通る螺旋流を誘導するが、コントロール移植片は螺旋流を誘導しない。
・遠位吻合部の近位側の同側頸静脈の結紮により、一方向流出モデルおよび両方向流出モデルの評価が可能になった。この静脈の結紮により、48時間での一方向の流出からデータを作成し、結紮しなかったモデルにより、14日間での両方向モデルを作成する。
・これは、両方のモデルが螺旋アクセス移植片吻合部で螺旋流の流出を示したため有利であり得る。
・螺旋流の誘導は、透析カニューレおよびポンプによって流量が増加されると維持される。
・外植時の螺旋移植片の巨視的評価は、血栓、血管壁の外傷、および遠位血栓の証拠を示さなかった。
・研究中に有害事象は観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位および近位端部を有する細長い導管を備え、前記細長い導管の少なくとも一部が透析針の刺入後に不浸透性を維持するように、前記細長い導管の少なくとも一部が自己密閉特性を有する、血管アクセス移植片であって、
前記血管アクセス移植片が、前記細長い導管の内面から内側に突出した、前記細長い導管の軸に平行に延在する螺旋フィンをさらに備えていることを特徴とする、血管アクセス移植片。
【請求項2】
前記螺旋フィンが、前記細長い導管の前記遠位端部から前記細長い導管の近位端部に近い終点まで延びている、請求項1に記載の血管アクセス移植片。
【請求項3】
前記螺旋フィン6が、前記細長い導管の前記遠位端部から、前記細長い導管の全長の50%未満、好ましくはその25%未満、より好ましくはその15%未満まで延びている、請求項2に記載の血管アクセス移植片。
【請求項4】
前記螺旋フィンが、5度〜20度の螺旋角、好ましくは8度〜16度の螺旋角を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の血管アクセス移植片。
【請求項5】
前記螺旋フィンの前記螺旋角が、前記螺旋フィンの長さに対して変化している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の血管アクセス移植片。
【請求項6】
前記螺旋フィンが、1回の旋回の50%〜150%、好ましくは1回の旋回の80%〜120%を形成する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の血管アクセス移植片。
【請求項7】
前記細長い導管の外側に触知可能な外部突出部をさらに備え、前記導管の前記突出部の位置が、前記細長い導管の前記遠位端部と前記近位端部との間の前記螺旋フィンの前記終点の位置に一致する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の血管アクセス移植片。
【請求項8】
前記触知可能な突出部が、前記細長い導管の前記外側を完全に、または部分的に取り囲む触知可能なリングである、請求項7に記載の血管アクセス移植片。
【請求項9】
前記触知可能な突出部が、前記細長い導管の前記外側から1mm〜4mm、より好ましくは前記細長い導管の前記外側から2mm延びている、請求項7または8に記載の血管アクセス移植片。
【請求項10】
前記触知可能な突出部が、前記細長い導管の長さに沿って3mm〜6mm、好ましくは4mm〜5mm、最も好ましくは前記細長い導管の長さに沿って4.5mmの長さを有する、請求項7〜9のいずれか1項に記載の血管アクセス移植片。
【請求項11】
前記細長い導管の前記外側の周囲に軸方向に延在し、前記細長い導管を支持する外部螺旋構造をさらに備える、請求項1〜10のいずれか1項に記載の血管アクセス移植片。
【請求項12】
前記外部螺旋構造の螺旋角が、前記螺旋フィンの前記螺旋角よりも大きい、請求項11に記載の血管アクセス移植片。
【請求項13】
前記外部螺旋構造が、50度を超える、好ましくは65度〜80度の螺旋角を有する、請求項11または12に記載の血管アクセス移植片。
【請求項14】
前記細長い導管の外部の周りに配置された軸方向に延在する外部変形螺旋部をさらに備え、前記変形螺旋部が、前記細長い導管を変形させて、前記細長い導管の前記内面から内側に突出した前記螺旋フィンを形成するため、前記内部螺旋フィンが、前記外部変形螺旋部に一致し、前記触知可能な突出部が、前記変形螺旋部の一体部分である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の血管アクセス移植片。
【請求項15】
前記細長い導管が、ePTFEから形成され、前記変形螺旋部および前記触知可能な突出部が、ポリウレタンから形成されている、請求項14に記載の血管アクセス移植片。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−527281(P2012−527281A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511340(P2012−511340)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001015
【国際公開番号】WO2010/133848
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(511281095)バスキュラー フロー テクノロジーズ リミテッド (3)
【Fターム(参考)】