説明

血管造影用カテーテル

【課題】本発明は、病変部に向けてコントロールし易い硬質材にて形成した主管と、挿入時に血管の内壁を傷めることのない軟質材にて形成した先管とを、特殊な中管を中継ぎとして用いて確実に固着し、外れることをなくすことのできる血管造影用カテーテルを提供
する。
【解決手段】本発明は、層間にスチール層10を有する硬質材にて形成した主管2と、軟質材にて形成した先管5とを、内層を軟質材とし、外層を硬質材とした二層の中管4を介して結合したことを特徴とし、主管2と先管5とを特殊な中管4を中継ぎとして確実に固着できるようにした。また、前記主管2と中管4、中管4と先管5との結合部を、芯材14の存在下で熱収縮チューブ15の熱収縮時の圧迫により熱溶着させたことを特徴とし、結合後芯材及び熱収縮チューブを除去した後、主管と中管と先管を通して内径及び外径を滑らかに一体化させ得るように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断等の目的のために、血管内に挿入し、病変部に造影剤を注入するための血管造影用カテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、心筋梗塞や狭心症の診断には、血管中に造影剤を注入し、体外から血管の状態をX線撮影により写し出せるように使用する血管造影用カテーテルがある。通常、血管造影用カテーテルは、人体に対して無害の合成樹脂により作られ、その主管は、先端部を血管内の病変部に向けて確実に進めていくために硬くなっている一方、先管は血管の内壁を傷つけないために柔らかく構成されている。この硬質材からなる主管と、軟質材からなる先管とをいかに繋ぐかの技術として特表平9−512445号公報があった。この技術は主管と先管とをクサビ止め式に溶着結合することとしていた。
【特許文献1】特表平9−512445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、通常、軟質材と硬質材とを直接結合すると、クサビ止め式になっていても溶着部の強度が低く、また、溶着部位を硬化させた後において脆くなることから、主管と先管とが外れ易く、しかも、生産性も低いものであった。
【0004】
本発明は、上記問題を解消するためのもので、その目的とするところは、病変部に向けてコントロールし易い硬質材にて形成した主管と、挿入時に血管の内壁を傷めることのない軟質材にて形成した先管とを、特殊な中管を中継ぎとして用いて確実に固着し、外れることをなくするとともに、生産性を高められるようにした血管造影用カテーテルを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、層間にスチール層を有する硬質材にて形成した主管と、軟質材にて形成した先管とを、内層を軟質材とし、外層を硬質材とした二層の中管を介して結合したことを特徴とし、主管と先管とを特殊な中管を中継ぎとして確実に固着できるように構成した。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、前記主管と中管、中管と先管との結合部を、芯材の存在下で熱収縮チューブの熱収縮時の圧迫により熱溶着させたことを特徴とし、結合後芯材及び熱収縮チューブを除去した後、主管と中管と先管を通して内径及び外径を滑らかに一体化させ得るように構成した。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、主管と先管、及びこれらを繋ぐ中管をそれぞれ別個に形成し、あとからこれらを繋ぐようにして生産性を高めるとともに、主管と先管とを特殊構成の中管を中継ぎとして確実に固着させて結合力を高め、血管内において外れることのない強度が得られるという優れた効果を奏する。
【0008】
また、請求項2に記載の発明によれば、芯材及び熱収縮チューブを除去した後、主管と中管と先管を通して内径及び外径を滑らかに一体化し、血管中への挿入をスムーズかつ正確に行うことができるとともに、注入する造影剤の流通スピードを安定化できるという優れた効果を奏する。
【0009】
次に、本発明の実施の態様を添付図面に基づいて説明する。図1は先管を渦状にした本願カテーテルの一部省略した斜視図、図2は先管を端小にした本願カテーテルの一部省略した斜視図、図3は本願カテーテルの主管の構成を示す部分切欠斜視図で、(a)は内層のみの突出部、(b)はスチール層を有する突出部、図4は本願カテーテルの中管の構成を示す部分切欠斜視図で、(a)は主管への結合部を内層を削って外層で凹状部にした場合、(b)は主管への結合部をラッパ状にした場合、図5は本願カテーテルの先管の構成を示す部分切欠斜視図で、(a)は中管への結合部を凹状部にした場合、(b)は中管への結合部をラッパ状にした場合、図6は主管と先管とを中管を介して結合した状態を示す断面図、図7は主管の突出部に中管を結合させる他の例を示す断面図、図8は中管の突出部に先管を結合させる他の例を示す断面図、図9は主管と中管とを芯材の存在下で熱収縮チューブを熱収縮させた状態の断面図、図10は中管と先管とを芯材の存在下で熱収縮チューブを熱収縮させた状態の断面図である。
【0010】
図において、1は本願カテーテルである。本願カテーテル1は、硬い主管2と、柔らかい先管3とを、特殊な構造の中管4を介して接続してなる。A、Bはその接続部を示している。該本願カテーテル1の先管3には、図1の如く、渦状に形成したもの、図2の如く、短小に形成したものがある。前者は、渦状になっている先管3にガイドワイヤー(図示せず)を通して真っ直ぐにして血管内を通し、所望位置でガイドワイヤーを引き抜いて渦状に戻して血管内を拡大した状態で造影剤を注入できるようにしている。後者は、ガイドワイヤーを通して所望位置まで到達させるときに、血管内壁を傷付けずに行えるようになっている。
【0011】
前記主管2の基端部には、接続管5を備えている。該接続管5は、シリンジ(注射器や造影剤注入器等)6の先端面に設けたテーパ管7にルア接続できる一方、前記シリンジ6のテーパ管7の基部に、内面に雌ねじ(図示せず)を有する筒体6′を設け、前記接続管5を前記テーパ管7に接続後、前記筒体6′を回すことにより前記接続管7の外周に設けた雄ねじ環体5′を締め込めるようにしている。
【0012】
前記主管2は、図3の如く、硬質材からなる内層8と、硬質材からなる外層9と、これらの層間にスチール層10を有している。該スチール層10は、硬い主管2に柔軟性を付与し、先端部から血管(図示せず)内を進めて行くときにコントロール性を高め得るようにしている。前記中管4との接続部(先端側)は、同(a)の如く、外層9と、スチール層10を削って、内層8のみで突出部8′を形成する場合と、同(b)の如く、外層9を削って、内層8の周囲にスチール層10を有する突出部8′を形成する場合とがある。
【0013】
前記中管4は、図4の如く、軟質材からなる内層11と硬質材からなる外層12とからなる特殊なもので、その基端側に、同(a)の如く、主管2の突出部8′との接続部が内層11を削って凹ませ、外層12にて凹状部12′を形成している。この場合、該凹状部12′の内径は、前記主管2の突出部8′の外径及び突出量とも共通している。勿論、前記主管2の突出部8′が図3(b)の如く周囲にスチール層10を有するときは、前記中管4の基端側を、図4(b)の如く、軟質材からなる内層11と硬質材からなる外層12をそのままラッパ状に反り返して凹状部12′を形成してもよい。すなわち、主管2と中管4とは、図6のA部の如く、硬質材同士が接触して一体化する場合と、スチール層(網)と中管4の軟質材とが接触して一体化する場合とがあるからである。
【0014】
前記中管4の先端側には、外層12を削って内層11の突出部11′を形成し、これに前記先管3の基端側の接続凹部3′を接続させている。この中管4の周囲面には内孔4′に連通する側穴12″を複数個備えることもある。すなわち、造影剤は先管の先端面のみならず、中管4の側面からも広く噴出できるようにするためである。
【0015】
前記先管3は、図5の如く、内孔13を有する筒体であり、軟質材のみからなる。その基端側には、同(a)の如く、内孔13に沿って内径を拡大するように削ってなる接続凹部3′を形成する場合と、同(b)の如く、ラッパ状に反り返して接続凹部3′を形成する場合とがある。これら接続凹部3′は、図6のB部の如く、前記中管4の内層11の突出部11′に嵌合し、軟質材同士で結合できるようになっている。
【0016】
前記主管2と、先管3、及びこれらを接続する中管4は、それぞれ別個に形成し、主管2、先管3及び中管4を必要な長さに切断し、それぞれ接続部を作成し、あとから図6の如く接続することにより、生産性が高められるようにしている。なお、これら主管2を構成する内層8及び外層9、中管4を構成する内層11及び外層12、さらに先管3は、それぞれ人体に対して無害の材料(たとえば、ナイロン系)により形成されていることは勿論である。
【0017】
前記本願カテーテル1を組み立てるには、前記主管2の先端側に設けた内層8の突出部8′に、中管4の基端側に設けた凹状部12′を押し込んで硬質材同士を接触させる。このとき、前記主管2の突出部8′の周囲にスチール層10を有するときは、図7の如く、中管4の基端部にラッパ状にした接続部12′を形成し、被せるように接続してもよい。また、中管4の内層11の突出部11′に先管5を接続する際に、図8の如く、先管5の基端部にラッパ状にした接続凹部3′を形成し、被せるように接続してもよい。
【0018】
前記主管2と中管4との接続部Aは、図9の如く、芯材14の存在下で熱収縮チューブ15を熱収縮させて一体化させると、硬質材同士が接触して熱溶着により一体化する。この場合、主管2と中管4との端部同士は硬質材同士で結合している。なお、主管2の突出部8′の表面にスチール層10を有するときは、中管4の基端部に形成したラッパ状の凹状部12′を被せても一体化する。すなわち、網目と軟質材とのかみ合わせで結合するからである。いずれの場合でも、両者の端部同士は硬質材同士で結合するから、端部は接触面積が増大するように斜めにカットしておくと良い。
【0019】
前記中管4と先管5との接続部Bも、図10の如く、芯材14の存在下で熱収縮チューブ15を熱収縮させて熱溶着により軟質材同士を一体化する。この場合、中管4の突出部11′に、先管5のラッパ状にした接続凹部3′を被せたときも一体化できることはもちろんである。
【0020】
前記主管2と中管4との接続部A、及び、中管4と先管5との接続部Bを一体化し、一定の養生時間経過後、機能を終えた芯材14は引き抜かれ、同様に機能を終えた熱収縮チューブ15は除去されることとなる。除去後は、主管と中管との接続部A、中管と先管との接続部Bは、内径及び外径が滑らかに一体化し、血管中への挿入をスムーズかつ正確に行うことができるとともに、注入する造影剤の流通スピードも安定化することとなる。
【0021】
次に、本願カテーテル1の使用方法について述べる。本願カテーテル1は、心筋梗塞や狭心症などの診断に際し、血管内の病変部に造影剤を注入するために使用されるもので、直径が1mm〜2mm程度のチューブであり、血管への挿入は、主に、大腿、上腕などの動脈から先管3を先頭にして挿入し、主管2にて丁寧にコントロールしつつ押し進め、先管3が病変部の近くまで到達したならば、シリンジ5又は注入機械により造影剤を、注入する。これにより先管3の先端穴及び中管の測穴から造影剤を噴出させる。しかる後、X線撮影を行うことにより診断を終える。
【0022】
前記造影剤はX線不透過物質である、ヨード造影剤が一般的に使用されることから、血管の形態及び血流の状態を連続的に撮影できるこのことにより心臓や脳の病気に対する診断を可能にする。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本願血管造影用カテーテルは、心臓や脳の病気に対する診断、検査等の目的のために、血管内に挿入して使用されるが、合成樹脂よりなる主管、中管及び先管の継ぎ目は血管内の血液の熱により経時的に軟化したとしても外れる虞がなく、医療分野において利用可能性は高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】先管を渦状にした本願カテーテルの一部省略した斜視図である。
【図2】先管を端小にした本願カテーテルの一部省略した斜視図である。
【図3】本願カテーテルの主管の構成を示す部分切欠斜視図で、(a)は内層のみの突出部、(b)はスチール層を有する突出部である。
【図4】本願カテーテルの中管の構成を示す部分切欠斜視図で、(a)は主管への結合部を内層を削って外層で凹状部にした場合、(b)は主管への結合部をラッパ状にした場合である。
【図5】本願カテーテルの先管の構成を示す部分切欠斜視図で、(a)は中管への結合部を凹状部にした場合、(b)は中管への結合部をラッパ状にした場合である。
【図6】主管と先管とを中管を介して結合した状態を示す断面図である。
【図7】主管の突出部に中管を結合させる他の例を示す断面図である。
【図8】中管の突出部に先管を結合させる他の例を示す断面図である。
【図9】主管と中管とを芯材の存在下で熱収縮チューブを熱収縮させた状態の断面図である。
【図10】中管と先管とを芯材の存在下で熱収縮チューブを熱収縮させた状態の断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 本願カテーテル
2 主管
3 先管
4 中管
5 接続管
5′ 雄ねじ環
6 シリンジ
7 テーパ管
6′ 雌ねじを有する筒体
8、11 内層
8′11′ 突出部
9、12 外層
13 内孔
14 芯材
15 熱収縮チューブ
A 本管と中管との接続部
B 中管と先管との接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
層間にスチール層を有する硬質材にて形成した主管と、軟質材にて形成した先管とを、内層を軟質材とし、外層を硬質材とした二層の中管を介して結合したことを特徴とする血管造影用カテーテル。
【請求項2】
前記主管と中管、中管と先管との結合部を、芯材の存在下で熱収縮チューブの熱収縮時の圧迫により熱溶着させたことを特徴とする請求項1に記載の血管造影用カテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−31478(P2013−31478A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167806(P2011−167806)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000147785)フォルテ グロウ メディカル株式会社 (6)
【Fターム(参考)】