血糖値測定装置および食後平均血糖値の測定方法
【課題】被測定者が尿糖値に基づいて食後平均血糖値を簡易に測定することのできる実用的な測定装置および測定方法を提供する。
【解決手段】食後所定時間が経過した時点の食後尿糖値を被測定者の尿より測定する測定部20と、測定された食後尿糖値に基づいて、食後所定時間内における食後平均血糖値を算出する処理部と、食後尿糖値と食後平均血糖値とが対応づけられた検量データが記憶された記憶部と、算出された食後平均血糖値を示すデータを出力する出力部50と、を備え、処理部が、食後所定時間内に任意量の飲水または発汗をおこなった被測定者の尿より測定された食後尿糖値と、検量データとに基づいて食後平均血糖値を算出することを特徴とする血糖値測定装置10。
【解決手段】食後所定時間が経過した時点の食後尿糖値を被測定者の尿より測定する測定部20と、測定された食後尿糖値に基づいて、食後所定時間内における食後平均血糖値を算出する処理部と、食後尿糖値と食後平均血糖値とが対応づけられた検量データが記憶された記憶部と、算出された食後平均血糖値を示すデータを出力する出力部50と、を備え、処理部が、食後所定時間内に任意量の飲水または発汗をおこなった被測定者の尿より測定された食後尿糖値と、検量データとに基づいて食後平均血糖値を算出することを特徴とする血糖値測定装置10。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食後平均血糖値を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、血糖管理における食後血糖値測定の重要性が指摘されている。糖尿病の程度を示す指標の一つとして食後平均血糖値が広く用いられ、これを測定することで糖の代謝機能の評価が行われている。
【0003】
食後血糖値(瞬間血糖値)は食後経過時間とともに刻々と変化するため、従来は食後平均血糖値を算出するにあたって、食後に短時間経過ごとに繰り返し複数回の血糖値測定をおこなっていた。そして、変化する瞬間血糖値から血糖曲線を描き、所定の腎糖排泄閾値を超える曲線下面積を算出してこれを時間平均することによって食後平均血糖値を求めていた。
【0004】
しかし、個人レベルで瞬間血糖値を食後に複数回に亘って測定することは容易ではなく、糖尿病患者や高血糖者が日常的に簡便に食後平均血糖値を把握することのできる技術が強く望まれていた。
【0005】
これに対し、尿糖から瞬間血糖値を推定することが従来試みられてきた。下記特許文献1には、被験者の長期的な尿糖値の変動パターンを予め記憶しておくことで、測定時における当該被験者の瞬間血糖値を推定する技術が記載されている。また、下記特許文献2には、被験者個人ごとに血糖値と瞬間尿糖値との関係を予め統計的に解析しておくことで、測定された尿糖値に基づいて尿採取時の瞬間血糖値を推定する方法が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−270241号公報
【特許文献2】特開2004−286452号公報
【非特許文献1】日本臨牀60巻 増刊号8、株式会社日本臨牀社、p.524−525、2002年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
血液を採取しておこなう血中糖度の直接的な測定に比べて、食後尿糖値の測定は容易で被測定者への負担が小さいという利点がある。しかしながら、飲水や発汗などの水分摂取・排泄(排尿を除く)によって尿が濃縮または希釈されると尿糖値は大きく変動するため、尿糖値に基づいて瞬間血糖値を正確に推定することが困難であることが技術常識であった(上記非特許文献1を参照)。尿糖値は、前回排尿後に膀胱に蓄えられた尿量と、これに含まれる尿糖の蓄積量とによって決まる積分的なパラメータであるため、時々刻々に変動する瞬間血糖値を推定するためのパラメータとして適切でないと考えられてきたためである。
【0008】
特許文献1においても、尿糖値から瞬間血糖値を推定する具体的な方法に関しては記載がない。また、かかる発明では、被測定者の尿糖値と瞬間血糖値との相関関係を長期間に亘って事前に蓄積して把握する必要があるため、このような蓄積のない通常の被測定者にとっては、かかる技術を用いることができないという大きな問題がある。
特許文献2に記載の方法も同様であり、被測定者ごとの統計的なデータを個別に事前取得しておく必要がある。
【0009】
一方、従来の食後平均血糖値の測定にあたっては、刻々に変化する瞬間血糖値の時刻歴的な変動パターンを把握する必要があることから、尿糖値に基づいてこれを算出することは行われていなかった。
例えば特許文献2に記載の方法の場合、食後の短時間間隔(例えば15分や30分)ごとに所定量の尿を採取し、尿糖値を繰り返し測定して瞬間血糖値に換算することは被験者にとって過大な負荷となり、また正確な血糖曲線を描いて曲線下面積を算出することができない。
すなわち、従来のように瞬間血糖値の変動パターンから食後平均血糖値を算出するかぎり、尿糖値の測定結果に基づいてこれをおこなうことは不可能であり、食後平均血糖値を算出するにあたっては、短時間間隔ごとの血中糖度の繰り返しの測定結果に基づいておこなうことが避けられなかった。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、被測定者が尿糖値に基づいて食後平均血糖値を簡易に測定することのできる実用的な測定装置および測定方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明をなすにあたり発明者は、飲水や発汗などによって水分の摂取・排泄がおこなわれた場合、尿糖値や瞬間血糖値は変動するものの、尿糖値と食後平均血糖値との間の相関関係は失われないことを突き止めた。これにより、被測定者の水分の摂取・排泄の程度(以下、水分摂取状況という場合がある。)によらず、食後所定時間経過時の尿糖値(食後尿糖値)の測定結果に基づいて食後平均血糖値が推定可能であることが判明した。
【0012】
さらに、食後尿糖値と食後平均血糖値との関係を示す検量データを多数のサンプル提供者から事前に取得して統計解析しておくことにより、かかる検量データと、被測定者の食後尿糖値の測定データとから食後平均血糖値が推定可能であることもまた判明した。尿糖値の主要な変動原因と考えられていた水分摂取状況が血糖値の推定に対して悪影響を及ぼさないことが判明したことにより、サンプル提供者から取得したデータより検量データが導かれたならば、これを用いて被測定者の食後平均血糖値が推定できることが明らかになったといえるからである。
そして本発明者は、実際に多数のサンプル提供者から検量データを取得し、食後尿糖値と食後平均血糖値との間に一定の相関が認められることを明らかにした。
【0013】
これにより、食後に経時的に変化する瞬間血糖値の変動パターンを把握することなく、食後尿糖値に基づいて食後平均血糖値を推定するという、まったく新しい測定方法にかかる本発明の完成に至った。
【0014】
本発明によれば、食後所定時間が経過した時点の食後尿糖値を被測定者の尿より測定する測定部と、
測定された前記食後尿糖値に基づいて、前記食後所定時間内における食後平均血糖値を算出する処理部と、
算出された前記食後平均血糖値を示すデータを出力する出力部と、を備える血糖値測定装置が提供される。
【0015】
また本発明においては、さらに具体的な実施の態様として、前記測定部が、前記食後所定時間内に飲水または発汗した前記被測定者の前記尿を受け付けて前記食後尿糖値を測定することとしてもよい。
【0016】
また本発明においては、さらに具体的な実施の態様として、前記食後尿糖値と前記食後平均血糖値とが対応づけられた検量データが記憶された記憶部を更に備えるとともに、
前記処理部が、前記食後所定時間内に飲水もしくは発汗した前記被測定者の前記尿より測定された前記食後尿糖値、ならびに、前記食後所定時間内に飲水および発汗していない前記被測定者の前記尿より測定された前記食後尿糖値に対して、共通の前記検量データを用いて前記食後平均血糖値を算出することとしてもよい。
【0017】
また本発明においては、さらに具体的な実施の態様として、前記被測定者の性別を示す性別情報、前記被測定者のヘモグロビンA1cの血中濃度を示す血液情報、または前記被測定者に関する前記食後尿糖値から前記食後平均血糖値への換算比率の大小を示す比率情報のうち少なくとも一つの情報の入力を受け付ける入力部を更に備え、
前記処理部が、測定された前記食後尿糖値と、入力された前記性別情報、前記血液情報または前記比率情報と、に基づいて前記食後平均血糖値を算出することとしてもよい。
【0018】
また本発明においては、さらに具体的な実施の態様として、前記入力部が、大小二通りのいずれかより選択された前記比率情報の入力を受け付けてもよい。
【0019】
また、本発明によれば、複数人のサンプル提供者から、食後所定時間が経過した時点の食後尿糖値と、食後平均血糖値との関係を示す検量データを取得するサンプル取得工程と、
被測定者から、前記食後所定時間が経過した時点の食後尿糖値を測定する測定工程と、
測定された前記食後尿糖値と前記検量データとから、前記被測定者の食後平均血糖値を推定する推定工程と、
を含む食後平均血糖値の測定方法が提供される。
【0020】
また本発明においては、さらに具体的な実施の態様として、前記サンプル取得工程において、所定の腎糖排泄閾値を超える食後血糖値の曲線下面積と前記食後尿糖値との相関関係を示すサンプルデータを前記サンプル提供者ごとに取得するとともに、取得された複数の前記サンプルデータを統計解析して前記検量データを算出することとしてもよい。
【0021】
また本発明においては、さらに具体的な実施の態様として、統計解析して算出された前記検量データが、下式(2);
食後平均血糖値=回帰係数×食後尿糖値+閾値 (2)
で表される検量線を示してもよい。
【0022】
また本発明においては、さらに具体的な実施の態様として、前記被測定者が男性であって、該被測定者のヘモグロビンA1cの血中濃度が9.0%未満の場合、前記閾値を前記腎糖排泄閾値とし、かつ、前記回帰係数を2×10-2とし、
前記被測定者が女性であって、該被測定者のヘモグロビンA1cの血中濃度が7.5%未満の場合、前記閾値を前記腎糖排泄閾値とし、かつ、前記回帰係数を4×10-2としてもよい。
【0023】
また本発明においては、さらに具体的な実施の態様として、前記サンプル取得工程において、前記サンプル提供者から取得した前記サンプルデータを複数の群に分類し、各群に属する前記サンプルデータよりそれぞれ前記検量データを算出する上述の食後平均血糖値の測定方法であって、
前記被測定者に関する前記サンプルデータを取得する予備工程を更に含み、かつ、
前記推定工程において、前記予備工程で取得した前記被測定者の前記サンプルデータが属する前記群を判定するとともに、判定された前記群に対応する前記検量データと、前記測定工程で測定された前記食後尿糖値とから、前記被測定者の食後平均血糖値を推定することとしてもよい。
【0024】
また本発明においては、さらに具体的な実施の態様として、前記サンプル提供者および前記被測定者が、ヘモグロビンA1cの血中濃度が9.0%未満の男性であってもよい。
【0025】
なお、上記発明において、食後所定時間内における食後平均血糖値は、食事終了時点から上記所定時間経過時までの間の全平均として算出してもよく、またはその一部の時間に関する平均として算出してもよい。上記一部の時間は、被測定者の尿中に糖が支配的に排泄される時間帯を包含することが好ましい。
【0026】
また、本発明の血糖値測定装置の各種の構成要素は、その機能を実現するように形成されていればよく、例えば、所定の機能を発揮する専用のハードウェア、所定の機能がコンピュータプログラムにより付与されたデータ処理装置、コンピュータプログラムによりデータ処理装置に実現された所定の機能、これらの任意の組み合わせ、等として実現することができる。また、本発明の血糖値測定装置は、コンピュータプログラムを読み取って対応するデータ処理を実行できるように、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/F(Interface)ユニット、等の汎用デバイスで構築されたハードウェア、所定のデータ処理を実行するように構築された専用の論理回路、これらの組み合わせ、等として実施することができる。
【0027】
また、本発明の血糖値測定装置の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
また、本発明の食後平均血糖値の測定方法は、複数の工程を順番に記載してあるが、その記載の順番は複数の工程を実行する順番を限定するものではない。このため、本発明の測定方法を実施するときには、その複数の工程の順番は内容的に支障しない範囲で変更することができる。
さらに、本発明の測定方法は、複数の工程が個々に相違するタイミングで実行されることに限定されない。このため、ある工程の実行中に他の工程が発生すること、ある工程の実行タイミングと他の工程の実行タイミングとの一部ないし全部が重複していること、等でもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の血糖値測定装置および食後平均血糖値の測定方法によれば、被測定者は自身の食後尿糖値と食後平均血糖値との関係を示す検量データを予め大量に取得しておく必要がない。これにより被測定者は、食後所定時間が経過した時点で一度だけ尿を採取して尿糖値を測定するだけで、簡易に食後平均血糖値を把握して糖尿病の程度を示す指標を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態にかかる血糖値測定装置(以下、測定装置と略記する場合がある。)および食後平均血糖値の測定方法(以下、測定方法と略記する場合がある。)を図面に基づいて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。図1は、本実施形態の血糖値測定装置の一例を示す外観図である。また、図2は、本実施形態の血糖値測定装置の一例を示すブロック図である。
【0030】
<血糖値測定装置>
本実施形態の血糖値測定装置の概要について説明する。
本実施形態の血糖値測定装置10は、食後所定時間が経過した時点の食後尿糖値を被測定者の尿より測定する測定部20と、測定された食後尿糖値に基づいて食後平均血糖値を算出する処理部30と、算出された食後平均血糖値を示すデータを出力する出力部50と、を備えている。
【0031】
また、血糖値測定装置10は、食後所定時間内に飲水または発汗した被測定者の尿を測定部20が受け付けて食後尿糖値を測定することができる。
【0032】
血糖値測定装置10は、食後尿糖値と食後平均血糖値とが対応づけられた検量データが記憶された記憶部(第一記憶部40)を更に備えている。
そして処理部30は、食後所定時間内に飲水もしくは発汗した被測定者の尿より測定された食後尿糖値、ならびに、食後所定時間内に飲水および発汗していない被測定者の尿より測定された食後尿糖値に対して、共通の検量データを用いて食後平均血糖値を算出する。
すなわち、本実施形態の処理部30は、被測定者の水分摂取状況によらず、共通の検量データに基づいて食後平均血糖値を算出する。
【0033】
測定部20は、被測定者から採取された尿に浸漬されて尿中糖分を電気化学的に検出する尿糖センサを備えている。尿糖センサは、尿中の尿糖値を測定し、その高低を示す尿糖値信号を処理部30に出力する。
【0034】
第一記憶部40に記憶された検量データは、複数人のサンプル提供者から取得した、食後所定時間が経過した時点の食後尿糖値と、食後平均血糖値との関係を示すデータである。
検量データは、食後尿糖値と食後平均血糖値の二つのパラメータを直接的に対応づける統計データであってもよく、または、これらのパラメータから換算可能な他のパラメータ同士を対応づける統計データであってもよい。
サンプル提供者の数は特に限定されないが、検量データの確からしさを向上する観点から10人以上、好ましくは20人以上、より好ましくは100人以上とする。
【0035】
検量データを取得するにあたり、サンプル提供者には食事負荷試験をおこない、所定時間経過時の尿糖値を測定するとよい。食後経過時間は、90分、120分、150分または180分などより選択して採用することができる。かかる経過時間(所定時間)としては、その間の排尿が制限されるサンプル提供者にとって過負荷とならない程度の長さが好ましい。また、食後にピークを示す瞬間血糖値が十分に低減するだけの時間であることが好ましい。瞬間尿糖値が十分に低減した状態において尿を採取することで、採取される尿には、腎糖排泄閾値を越えて血中に排泄されたブドウ糖のほぼ全量が含まれることとなる。これにより、精度のよい尿糖値の測定が可能になる。
【0036】
検量データは、所定の腎糖排泄閾値を超える食後血糖値の曲線下面積と食後平均血糖値とが換算可能であることを利用して算出することができる。具体的には、かかる曲線下面積と食後尿糖値との相関関係を示すサンプルデータをサンプル提供者ごとに取得し、取得したサンプルデータを統計解析して、食後尿糖値と食後平均血糖値との関係を求めることができる。
【0037】
検量データの算出方法およびその形式は特に限定されるものではない。一例として、食後尿糖値と、食後血糖値の曲線下面積または食後平均血糖値との関係を、最小二乗法に基づいて一次関数にて近似するとよい。このほか検量データは、多次関数、指数関数、対数関数またはこれらの組み合わせによって、食後尿糖値と食後平均血糖値とを対応づけたものでもよい。
また検量データは、本実施形態のように関数形式にて第一記憶部40に記憶されていてもよく、またはテーブル形式にて記憶されていてもよい。
【0038】
本実施形態の血糖値測定装置10は、多数の他人より取得した検量データを用いて、被測定者の食後尿糖値より食後平均血糖値を推定するものである。
【0039】
被測定者の食後尿糖値を測定する尿は、サンプル提供者と同様に、食事負荷試験をおこない、上記所定時間経過時に採取するとよい。なお、被測定者が摂取する食事は、サンプル提供者と同様の食事負荷試験用のものであってもよく、日常的な食事内容であってもよい。
【0040】
また、本実施形態の血糖値測定装置10にて被測定者の食後平均血糖値を測定するに際しては、食事中および食後の飲水量および発汗量を任意とすることができる。すなわち、被測定者が食事とともに摂取する水分量を厳密に管理することなく、本実施形態の血糖値測定装置10によれば被測定者の食後平均血糖値を測定することができる。
【0041】
本実施形態の第一記憶部40に記憶しておく検量データは、全サンプル提供者に関する食後尿糖値と食後平均血糖値とを関連づけるデータであってもよく、または、サンプル提供者を様々な観点から複数のカテゴリーに分類し、各カテゴリーについて個別に算出されたデータであってもよい。
具体的には、本実施形態の血糖値測定装置10では性別とヘモグロビンA1c(HbA1c)の血中濃度の高低によって分類されたカテゴリーごとに検量データが記憶されている。
【0042】
そして血糖値測定装置10では、測定部20を尿に浸漬して尿糖値を測定する前に、または測定した後に、被測定者は入力部60を操作することで自身が属するカテゴリーを選択することができる。
【0043】
また本実施形態では、食後尿糖値に対する食後平均血糖値の高低(換算比率)を示す複数の群がカテゴリー分類として設けられている。
【0044】
すなわち、本実施形態の血糖値測定装置10は、被測定者の性別を示す性別情報、被測定者のHbA1cの血中濃度を示す血液情報、または被測定者に関する食後尿糖値から食後平均血糖値への換算比率の大小を示す比率情報のうち少なくとも一つの情報の入力を受け付ける入力部60を更に備えている。
そして処理部30は、測定された食後尿糖値と、入力された性別情報、血液情報または比率情報と、に基づいて食後平均血糖値を算出する。
【0045】
入力部60としては、ひとつまたは複数のボタンが設けられ、男女から選択された性別や、複数通りに分類されたHbA1cの血中濃度とともに、大小二通りのいずれかより選択された比率情報の入力を受け付ける。
【0046】
入力部60を操作して入力された入力情報は、第二記憶部42に格納される。
処理部30は、第二記憶部42に記憶された入力情報に適合するカテゴリーに関する検量データを第一記憶部40より呼び出す。
そして処理部30は、呼び出された検量データに対して、測定部20から送られてきた食後尿糖値に関するデータを適用することで、被測定者の食後平均血糖値に関するデータを算出する。
【0047】
算出されたデータは出力部50で出力されて被測定者に認識される。
出力部50として、図1ではデジタル表示装置を例示しているが、このほか、外部記憶装置に対してデータ出力する外部インタフェースであってもよい。
【0048】
本実施形態の血糖値測定装置10によれば、食後所定時間経過後に採取された尿より尿糖値を測定することで、水分摂取状況によらず実用的に高い精度で被測定者の食後平均血糖値を測定することができる。特に、本実施形態のように被測定者を様々なカテゴリーに分類し、属するカテゴリーに適合する検量データを用いることで、食後平均血糖値の測定精度を向上することができる。
【0049】
<血糖値の測定方法>
以下、本実施形態の血糖値測定装置10を用いておこなう、食後平均血糖値の測定方法の概要について説明する。
本実施形態による食後平均血糖値の測定方法は、複数人のサンプル提供者から、食後所定時間が経過した時点の食後尿糖値と、食後平均血糖値との関係を示す検量データを取得するサンプル取得工程を含む。そして、本実施形態の測定方法は、被測定者から、上記の食後所定時間が経過した時点の食後尿糖値を測定する測定工程と、測定された食後尿糖値と検量データとから、被測定者の食後平均血糖値を推定する推定工程とを含む。
【0050】
以下、本実施形態の測定方法について詳細に説明する。
(サンプル取得工程)
サンプル取得工程では、まず、所定の腎糖排泄閾値を超える食後血糖値の曲線下面積と食後尿糖値との相関関係を示すサンプルデータをサンプル提供者ごとにそれぞれ取得する。そして、取得された複数のサンプルデータを統計解析して検量データを算出する。
サンプル提供者にはそれぞれ食事負荷試験を実施する。かかる食事中、および食後の飲水や発汗による水分摂取状況は、サンプル提供者ごとに共通とすることが好ましい。
【0051】
サンプル提供者は、性別と、ヘモグロビンA1c(HbA1c)の血中濃度の高低によってカテゴリー分類される。そして、分類されたカテゴリーに属するサンプルデータごとに統計解析をおこなって、食後尿糖値と食後平均血糖値との相関を表す検量データを算出する。
【0052】
食後尿糖値と食後平均血糖値との関係は、以下のようにして求めることができる。
図3は、食後血糖値(瞬間血糖値)の経時変化を示す測定結果と、所定レベルに設定された腎糖排泄閾値(例えば、180mg/dL)とから算出される曲線下面積(AUC>180)との関係を示すグラフである。曲線下面積は、食後経過時間および腎糖排泄閾値を用いて、下式(3);
食後平均血糖値=腎糖排泄閾値+曲線下面積/食後経過時間 (3)
により食後平均血糖値に換算できる。
【0053】
また、食後平均血糖値として、上記食後経過時間のうちの一部の時間帯に関する平均血糖値を算出してもよい。
かかる場合、当該一部の時間帯の開始時刻において排尿した上で、当該一部の時間帯の終了時刻において尿を採取して尿糖値を測定し、曲線下面積を求める。そして、上式(3)において、食後経過時間に代えて、当該一部の時間帯の長さ(経過時間)によって曲線下面積を除することで、当該一部の時間帯における平均血糖値を算出することができる。
【0054】
すなわち、本実施形態においては、下式(3');
食後平均血糖値=腎糖排泄閾値+曲線下面積/経過時間 (3')
に基づいてサンプル提供者や被測定者の食後平均血糖値を算出してもよい。
【0055】
食後尿糖値として、本実施形態では食後120分経過時の尿より測定される尿糖値(尿糖120分値)を用いるものとする。
図3には、食後0分および120分経過時に排尿し、120分経過時の尿より測定される尿糖120分値の一例を併せて記載している。
【0056】
同図より、サンプル提供者の食後尿糖値(尿糖120分値)と、食後平均血糖値との関係を示す検量データを取得することができる。
【0057】
つぎに、多数のサンプル提供者について取得したサンプルデータを統計解析して検量データを求める。検量データは、例えば下式(4);
食後平均血糖値(y)=回帰係数×食後尿糖値(x)+閾値 (4)
で表される検量線の形式で求めることができる。
【0058】
また、本実施形態の測定方法では、例えば以下のようにサンプル提供者をカテゴリー分類し、カテゴリーごとに検量データをそれぞれ算出することができる。
【0059】
男性でHbA1cの血中濃度が9.0%未満の場合、下式(5);
食後平均血糖値=2・10-2×食後尿糖値+腎糖排泄閾値 (5)
にて被測定者の食後平均血糖値(mg/dL)を推定することができる。
同様に、女性でHbA1cの血中濃度が7.5%未満の場合、下式(6);
食後平均血糖値=4・10-2×食後尿糖値+腎糖排泄閾値 (6)
にて被測定者の食後平均血糖値(mg/dL)を推定することができる。
【0060】
(測定工程)
本実施形態の測定方法では、被測定者から、食後所定時間が経過した時点の食後尿糖値を測定する。採尿する食後所定時間は、サンプル提供者から検量データを取得した際の食後経過時間と共通とする。すなわち、本実施形態の場合、被測定者に関しても食後120分が経過した時点の尿糖値(尿糖120分値)を測定する。
【0061】
(推定工程)
本実施形態の測定方法では、次に、測定された被測定者の食後尿糖値と、例えば上式(4)〜(6)で表される検量データとから、被測定者の食後平均血糖値に換算する。
かかる換算値を被測定者が知得することで、自身の糖尿病の程度を把握することができる。
【0062】
このように、本実施形態の測定方法については、被測定者の水分摂取状況によらず、食後尿糖値と食後平均血糖値との間に高い相関が認められたことにより、多数のサンプル提供者から取得した検量データを用いて、被測定者の食後平均血糖値を推定することが可能になる。
そして本実施形態では、食後尿糖値と食後平均血糖値との相関係数がより高いカテゴリーにサンプル提供者を分類して検量データを取得する。これにより、被測定者がいずれのカテゴリーに属するかを加味することで、その食後尿糖値からより高い精度で食後平均血糖値を推定することができる。
【0063】
なお本実施形態については種々の変形を許容する。
たとえば、食後尿糖値に対する食後平均血糖値の高低を意味する換算比率に基づいて、サンプル提供者を複数の群にカテゴリー分類し、各群について食後尿糖値と食後平均血糖値との相関を示す検量データを算出してもよい。
【0064】
すなわち、後述する実施例にて説明するように、サンプル提供者のカテゴリー分類によっては、共通の食後尿糖値に対して食後平均血糖値が比較的高い群と、比較的低い群とが存在する。かかる場合、被測定者がいずれの群に属するかを予め把握しておくことで、以降の測定においては、自身が属する群に関する検量データを用いて食後平均血糖値を高精度に推定することが可能となる。
被測定者が属する群の把握に関しては、本変形例の場合、市販の自己血糖測定器を用いて食後血糖値から食後平均血糖値を算出し、一方、市販のデジタル尿糖計を用いて食後尿糖値を算出する。そして、両者を対応付けることで、被測定者がいずれの群に属するかを知得することができる。かかる把握は被測定者ごとに一度のみ行えばよい。
【0065】
すなわち、本変形例のサンプル取得工程においては、サンプル提供者から取得したサンプルデータを複数の群に分類し、各群に属するサンプルデータよりそれぞれ検量データを算出する。
そして、被測定者に関するサンプルデータを取得する予備工程を行う。
さらに、推定工程においては、予備工程で取得した被測定者のサンプルデータが属する群を判定するとともに、判定された群に対応する検量データと、測定工程で測定された食後尿糖値とから、被測定者の食後平均血糖値を推定する。
【0066】
なお、食後尿糖値に対して食後平均血糖値の換算比率の異なる複数の群が存在することの理由は必ずしも明らかではないが、サンプル提供者および被測定者ごとに、インスリンの分泌能力に応じて、食後に血糖値が最大となるまでの時間が60分程度である者と、120分程度である者とが存在することが一因であると考えられる。
【0067】
また、本実施形態の血糖値測定装置10においては、サンプル提供者に関し、複数通りの食後経過時間において食後尿糖値と食後平均血糖値との検量データを取得してもよい。
例えば、食後経過時間を90分とした場合の検量データと、120分とした場合の検量データと、150分とした場合の検量データとを、血糖値測定装置10は第一記憶部40に記憶しておくとよい。
【0068】
そして、被測定者が食後平均血糖値を測定するに際し、尿採取するまでの経過時間に応じて、90分、120分または150分の検量データのいずれかを選択可能とするとよい。
具体的には、被測定者の食後尿糖値の測定前に、または測定後に、入力部60を操作して食後経過時間を選択入力する。そして、処理部30は、入力された食後経過時間に対応する検量データを第一記憶部40より読み出し、食後尿糖値の測定結果をこれに適用して演算処理を行う。
【0069】
かかる構成とすることにより、被測定者に対して過剰の排尿制限を課すことなく食後平均尿糖値を測定することが可能になる。また、食後血糖値の変動速度の大きい被測定者に関しては、比較的短い食後経過時間にて食後平均尿糖値を測定することが可能になる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明にかかる食後平均血糖値の測定方法について、実施例を用いて更に具体的に説明する。
【0071】
(実施例1)
本発明者は、食事負荷試験時および試験後の水分摂取の有無を変化させた場合の血糖値および尿糖値を測定した。
実験条件を下表1に示す。実験は、耐糖能異常者1名(56歳男性、ヘモグロビンA1cの血中濃度:5.6%)に関して行った。すなわち本実験は、共通の被験者について食事負荷試験をおこない、負荷前後の水分摂取(飲水)量を変化させて血糖値と尿糖値との関係を測定したものである。
【0072】
【表1】
【0073】
実験ケース1(Case1)では、食事負荷試験の開始時、すなわち食事直後に、被験者は100mlの水を摂取した。
実験ケース2(Case2)では、食事負荷試験の開始時、すなわち食事直後に、被験者は200mlの水を摂取し、かつ、30分経過ごとに200mlずつの水を更に摂取した。
【0074】
本実験では、Case1,2とも、食事直後および15分経過ごとに血糖値を測定した。あわせて、食事直後および60分経過ごとに尿糖値を測定した。血糖値および尿糖値の測定タイミングを上記表中にて●で示す。
測定には、電極法を用いた市販の自己血糖測定器、および市販のデジタル尿糖計(例えば、タニタ社製:UG−102)を用いた。
【0075】
図4は、被験者の血糖値の経時変化を示す測定結果を示すグラフである。
図5は、被験者の尿糖値の経時変化を示す測定結果を示すグラフである。
【0076】
図4より、試験開始時にともに飲水したCase1と2は、45分経過時までは同様の傾向を示すものの、二度目以降の飲水の影響が現れる60分経過時以降には差異が見られた。飲水量を多くしたCase2は飲水量の少ないCase1に比べ、60分経過時以降、常に約30〜70mg/dL程度、血糖値の低い状態が続いた。
【0077】
図5より、尿糖値に関してはCase1と2で更に顕著な差異が見られた。飲水量の少ないCase1では、120分経過時に採取された尿中の尿糖値が1068mg/dLまで上昇している。より具体的には、60分経過時に採取された尿の尿糖値は224mg/dLであり、180分経過時に採取された尿の尿糖値は62mg/dLとともに低いことから、被験者は60〜120分の間に支配的に尿糖が排泄されたことが分かる。
【0078】
図6は、実験開始時(0分)と、以降60分ごとに採取された尿量を示すグラフである。飲水量に差異のあるCase1と2とでは、特に120分経過時以降の排尿量に大きな差が見られる。
【0079】
図7は、尿糖値と尿量とから計算した尿糖絶対量の変化を示すグラフである。同図の結果より、飲水量の多いCase2において尿糖値(食後尿糖値)が低下したのは(図5を参照)、尿の濃度が薄まっただけではなく、血糖値が低下したことにより(図4を参照)、尿中に排泄される尿糖の絶対量が低減したことによることが判明した。
【0080】
図8は、上記表1と同様の実験条件にて繰り返しおこなった結果より算出した、尿糖120分値と食後平均血糖値との相関を示すグラフである。同図では、腎糖排泄閾値を220mg/dLとして食後平均血糖値の算出をおこなっている。
【0081】
なお同図には、上記Case1,2のそれぞれついて、食後60分経過時、120分経過時および180分経過時の各尿糖値と、前回排尿時からの経過時間(すなわち60分間)内の平均血糖値とを対応づけてプロットしている。横軸の尿糖値は、食後60分、120分および180分経過時の尿糖値(尿糖0−60分値、尿糖60−120分値、尿糖120−180分値)を示す。縦軸の平均血糖値は、食後15分間隔ごとに測定した瞬間血糖値から描いた血糖曲線より、食後0〜60分、60〜120分、120〜180分についてそれぞれ曲線下面積を求め、上式(3')に基づき経過時間を60分として算出している。
【0082】
同様に、図9は腎糖排泄閾値を230mg/dLとした場合、図10は腎糖排泄閾値を240mg/dLとした場合のグラフである。
食後尿糖値と食後平均血糖値との相関の強さを示す決定係数(R2)は、図中に示すように、腎糖排泄閾値を220〜240mg/dLのいずれに設定した場合も、0.95を超えるきわめて高い値となった。
相関係数(R)は、図8の場合で0.978、図9の場合で0.988、図10の場合で0.986であった。
【0083】
これらの結果より、被験者の水分摂取状況の変動によらず、また尿糖値を採取する食後経過時間によらず、食後尿糖値と食後平均血糖値との間には高い相関が見られることが判明した。また、腎臓排泄閾値を変えた場合も、食後尿糖値と食後平均血糖値との強い相関は不変であることが分かった。
【0084】
本実施例により、食後尿糖値は水分摂取により低値を示すが、同時に食後血糖値の上昇も抑制されており、食後平均血糖値と食後尿糖値との相関は飲水により悪影響を受けないことが分かった。
したがって、糖尿病の程度を把握する指標として有用な食後平均血糖値が、被測定者の食後尿糖値に基づいて推定可能であることが明らかとなった。
【0085】
(実施例2)
図11は、男女合計133人のサンプル提供者から測定した尿糖120分値と、血糖曲線の曲線下面積(AUC)との関係を示すサンプルデータの散布図、および最小二乗法により求めた回帰直線(検量線)を示す図である。同図における曲線下面積は、図3に示すようにサンプル提供者から食後30分ごとに計測した食後血糖値より血糖曲線を描き、腎糖排泄閾値を170mg/dLとして算出した。
【0086】
結果として、尿糖120分値(x)と食後血糖値の曲線下面積(y)とに関するサンプルデータは、下式(7);
y=3.3x+3.8・103 (7)
の関係を有することが分かった。
図11の場合、相関係数(R)は0.63と良好な値を示し、多数のサンプル提供者に関して尿糖120分値と血糖値の曲線下面積との間に一定の相関があることが分かった。
よって、尿糖120分値から食後血糖値の曲線下面積を推定するための検量データとして、上式(7)の検量線が得られた。
【0087】
図12は、同じサンプル提供者に関する測定値に基づいて、尿糖120分値と、腎糖排泄閾値を180mg/dLとした場合の曲線下面積との相関を示すサンプルデータの散布図、および図11と同様にして求めた回帰直線を示す図である。
結果として、尿糖120分値(x)と食後血糖値の曲線下面積(y)とに関するサンプルデータは、下式(8);
y=3.1x+3.0・103 (8)
の関係を有することが分かった。
また、上式(8)の相関係数(R)は0.62と良好な値を示した。
【0088】
図13は、同じサンプル提供者に関する測定値に基づいて、尿糖120分値と、腎糖排泄閾値を190mg/dLとした場合の曲線下面積との相関を示すサンプルデータの散布図、および図11と同様にして求めた回帰直線を示す図である。
結果として、尿糖120分値(x)と食後血糖値の曲線下面積(y)とに関するサンプルデータは、下式(9);
y=2.9x+2.4・103 (9)
の関係を有することが分かった。
また、上式(9)の相関係数(R)は0.61と良好な値を示した。
【0089】
図11〜13の結果から、多数のサンプル提供者から取得した食後尿糖値と血糖曲線の曲線下面積とは一定の相関関係が認められた。したがって、上記サンプルデータの検量線を表す上式(7)〜(9)を検量データとして用いることにより、被測定者から測定した尿糖120分値に基づいて当該被測定者に関する食後血糖値の曲線下面積を求めることができた。
【0090】
(実施例3)
サンプル提供者を様々な観点からカテゴリー分類することで、食後尿糖値と食後平均血糖値との間に、より精度の高い相関関係を見出した。
本実施例においては、性別によってサンプル提供者をカテゴリー分類した。
【0091】
図14は、性別で分類した場合の尿糖120分値と食後平均血糖値との関係を示す散布図、およびその回帰直線(検量線)を示す図である。同図(a)は男性、同図(b)は女性に関する結果を示す。
本実施形態においては、下式(10);
食後平均血糖値=腎糖排泄閾値+血糖曲線の曲線下面積/食後尿採取までの経過時間 (10)
に基づいて算出した。本実施形態の場合、腎糖排泄閾値としては180mg/dL、食後尿採取までの経過時間は120分とした。
【0092】
72人の男性のサンプル提供者から取得した尿糖120分値と食後平均血糖値とのサンプルデータを統計解析して求まる検量データとして、下式(11);
食後平均血糖値(y)=回帰係数×食後尿糖値(x)+閾値 (11)
にて表される検量線を算出した。
【0093】
本実施例の閾値としては、最小二乗法により食後尿糖値と食後平均血糖値との相関係数を最大化する閾値を用いた。
【0094】
図14(a)に示す結果より、男性の場合、尿糖120分値(x)と食後平均血糖値(y)とに関するサンプルデータは、下式(12);
y=0.024x+2.0・102 (12)
の関係を有することが分かった。すなわち、回帰係数は0.024、閾値は2.0・102であった。また、この場合の相関係数(R)は0.63と良好な値であった。
【0095】
61人の女性のサンプル提供者に関しても、男性サンプルと同様に統計解析を行い、上式(11)で表される検量データを算出した。結果を同図(b)に示す。
具体的には、女性の場合、尿糖120分値(x)と食後平均血糖値(y)とに関するサンプルデータは、下式(13);
y=0.029x+2.1・102 (13)
の関係を有することが分かった。すなわち、回帰係数は0.029、閾値は2.1・102であった。また、この場合の相関係数(R)は0.64と良好な値であった。
【0096】
(実施例4)
サンプル提供者を、性別およびHbA1cの血中濃度の観点からカテゴリー分類し、実施例2と同様に尿糖120分値と食後平均血糖値との間の検量データを算出した。
【0097】
図15(a)は、男性かつHbA1c<7.5%である31人のサンプル提供者に関するサンプルデータの散布図である。
かかるサンプルデータから最小二乗法により求めた尿糖120分値(x)と食後平均血糖値(y)との間の検量線は、下式(14);
y=0.021x+2.0・102 (14)
の関係を有し、相関係数(R)は0.52であった。
【0098】
同図(b)は、女性かつHbA1c<7.5%である20人のサンプル提供者に関するサンプルデータの散布図である。
かかるサンプルデータから最小二乗法により求めた尿糖120分値(x)と食後平均血糖値(y)との間の検量線は、下式(15);
y=0.030x+1.9・102 (15)
の関係を有し、相関係数(R)は0.77と良好であった。
【0099】
図16(a)は、男性かつ7.5%≦HbA1c≦8.9%である19人のサンプル提供者に関するサンプルデータの散布図である。
かかるサンプルデータから最小二乗法により求めた尿糖120分値(x)と食後平均血糖値(y)との間の検量線は、下式(16);
y=0.025x+2.0・102 (16)
の関係を有し、相関係数(R)は0.82ときわめて良好であった。
【0100】
同図(b)は、女性かつ7.5%≦HbA1c≦8.9%である24人のサンプル提供者に関するサンプルデータの散布図である。
かかるサンプルデータから最小二乗法により求めた尿糖120分値(x)と食後平均血糖値(y)との間の検量線は、下式(17);
y=0.025x+2.2・102 (17)
の関係を有し、相関係数(R)は0.50であった。
【0101】
図17(a)は、男性かつHbA1c≧9.0%である22人のサンプル提供者に関するサンプルデータの散布図である。
かかるサンプルデータから最小二乗法により求めた尿糖120分値(x)と食後平均血糖値(y)との間の検量線は、下式(18);
y=0.0025x+2.7・102 (18)
の関係を有し、相関係数(R)は0.06と低かった。
【0102】
同図(b)は、女性かつHbA1c≧9.0%である17人のサンプル提供者に関するサンプルデータの散布図である。
かかるサンプルデータから最小二乗法により求めた尿糖120分値(x)と食後平均血糖値(y)との間の検量線は、下式(19);
y=0.024x+2.2・102 (19)
の関係を有し、相関係数(R)は0.58であった。
【0103】
以上の結果より、本実施例においては、被測定者が男性であってそのHbA1cの血中濃度が9.0%未満の場合、および、被測定者が女性であってそのHbA1cの血中濃度が7.5%未満の場合に、食後尿糖値と食後平均血糖値との間に特に良好な相関関係が認められ、高い推定精度による食後平均血糖値が測定可能であることが分かった。
【0104】
(実施例5)
性別およびHbA1cの血中濃度が共通するサンプル提供者を二つの群に分類して、それぞれの群に関して、尿糖120分値と食後平均血糖値との間の検量データを算出した。
【0105】
図18(a)は、図15(a)および図16(a)を合計したグラフである。すなわち、HbA1c<9.0%の男性50人のサンプル提供者から取得した尿糖120分値(x)と食後平均血糖値(y)とのサンプルデータの散布図、およびその回帰直線(検量線)のグラフである。図18(a)は、当該男性サンプルを一つの群として扱い、統計解析をおこなったものである。
【0106】
かかる検量線は、下式(20);
y=0.025x+1.9・102 (20)
の関係を有し、相関係数(R)は0.71と比較的良好であった。
【0107】
図18(b)は、かかる男性50人のサンプルデータを二つの群に分類して、個別に検量線を求めたものである。同図に示す散布図より、HbA1c<9.0%の男性50人のうち、同一の尿糖120分値に対して食後平均血糖値がより低くなる37人のサンプル提供者の群(A)と、これがより高くなる13人のサンプル提供者の群(B)とが存在した。
【0108】
よって、食後尿糖値に対する食後平均血糖値の高低にあたる換算比率に基づいて、サンプル提供者を複数の群にカテゴリー分類し、各群について食後尿糖値と食後平均血糖値との相関を示す検量データを算出した。
【0109】
結果として、群(A)に関しては、下式(21);
y=0.027x+1.8・102 (21)
で示される検量データが導かれた。
また、群(B)に関しては、下式(22);
y=0.021x+2.3・102 (22)
で示される検量データが導かれた。
そして、群(A)の相関係数は0.94であり、群(B)の相関係数は0.73と、いずれもきわめて良好な値となった。
【0110】
なお本実施例に関しては、図18(b)より、サンプル提供者および被測定者が、HbA1cの血中濃度が9.0%未満の男性である場合に好適に用いられるといえる。
サンプル提供者が女性の場合、またはHbA1cの血中濃度が他の数値範囲の場合に関しても、食後尿糖値に対する食後平均血糖値の換算比率の大小によってカテゴリー内を複数に分類してもよい。
【0111】
本実施例の結果より、サンプル取得工程で取得された相関データを複数の群に分類して個別に検量データを算出しておくことで、食後尿糖値と食後平均血糖値とを高い相関係数をもって関連づけることが可能となった。
これにより、被測定者がいずれの群に属するかを、ひとたび把握しておくことで、以降の測定に関しては自身が属する群に関する検量データを用いて、食後平均血糖値を高精度に推定することが可能となる。
【0112】
上記実施例1と、実施例2〜5の結果とを組み合わせることにより、被測定者の飲水や発汗の度合いによらず、食後尿糖値の測定値から食後平均血糖値を推定することが可能になる。
すなわち、図8から10に示すように、被測定者の飲水条件を変化させた場合の食後尿糖値(x)と食後平均血糖値(y)とは、サンプルデータに関する上式(4);
食後平均血糖値(y)=回帰係数×食後尿糖値(x)+閾値 (4)
と同様の傾向を示しつつ、きわめて高い相関係数で対応づけられることが実施例1より明らかとなった。
したがって、実施例2〜5などに示すように、サンプル提供者を様々なカテゴリーに分類して食後尿糖値と食後平均血糖値とを高い相関係数で対応づける検量データを算出することにより、本実施例の測定装置および測定方法によれば、被測定者の水分摂取状況によらず高い精度で食後平均血糖値を推定することが可能であることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の実施形態にかかる血糖値測定装置の外観図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる血糖値測定装置のブロック図である。
【図3】曲線下面積の算出方法を示すグラフである。
【図4】被験者の血糖値の経時変化を示す測定結果を示すグラフである。
【図5】被験者の尿糖値の経時変化を示す測定結果を示すグラフである。
【図6】実験開始時(0分)と、以降60分ごとに採取された尿量を示すグラフである。
【図7】尿糖値と尿量とから計算した尿糖絶対量の変化を示すグラフである。
【図8】腎糖排泄閾値を220mg/dLとした場合の、尿糖値と食後平均血糖値との相関を示すグラフである。
【図9】腎糖排泄閾値を230mg/dLとした場合の、尿糖値と食後平均血糖値との相関を示すグラフである。
【図10】腎糖排泄閾値を240mg/dLとした場合の、尿糖値と食後平均血糖値との相関を示すグラフである。
【図11】腎糖排泄閾値を170mg/dLとした場合の、尿糖120分値と血糖曲線の曲線下面積との関係を示すサンプルデータの散布図、および回帰直線を示す図である。
【図12】腎糖排泄閾値を180mg/dLとした場合のサンプルデータの散布図および回帰直線を示す図である。
【図13】腎糖排泄閾値を190mg/dLとした場合のサンプルデータの散布図および回帰直線を示す図である。
【図14】性別で分類した場合の尿糖120分値と食後平均血糖値との関係を示す散布図および回帰直線を示す図であり、(a)は男性サンプル、(b)は女性サンプルに関する結果を示す。
【図15】性別およびHbA1cの血中濃度で分類した場合の尿糖120分値と食後平均血糖値との関係を示す散布図および回帰直線を示す図であり、(a)は男性サンプル、(b)は女性サンプルに関する結果を示す。
【図16】性別およびHbA1cの血中濃度で分類した場合の尿糖120分値と食後平均血糖値との関係を示す散布図および回帰直線を示す図であり、(a)は男性サンプル、(b)は女性サンプルに関する結果を示す。
【図17】性別およびHbA1cの血中濃度で分類した場合の尿糖120分値と食後平均血糖値との関係を示す散布図および回帰直線を示す図であり、(a)は男性サンプル、(b)は女性サンプルに関する結果を示す。
【図18】(a)はHbA1c<9.0%の男性サンプルを一つの群として扱った場合の散布図および回帰直線を示す図であり、(b)はこれを二つの群として扱った場合の散布図及び回帰直線を示す図である。
【符号の説明】
【0114】
10 血糖値測定装置
20 測定部
30 処理部
40 第一記憶部
42 第二記憶部
50 出力部
60 入力部
【技術分野】
【0001】
本発明は、食後平均血糖値を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、血糖管理における食後血糖値測定の重要性が指摘されている。糖尿病の程度を示す指標の一つとして食後平均血糖値が広く用いられ、これを測定することで糖の代謝機能の評価が行われている。
【0003】
食後血糖値(瞬間血糖値)は食後経過時間とともに刻々と変化するため、従来は食後平均血糖値を算出するにあたって、食後に短時間経過ごとに繰り返し複数回の血糖値測定をおこなっていた。そして、変化する瞬間血糖値から血糖曲線を描き、所定の腎糖排泄閾値を超える曲線下面積を算出してこれを時間平均することによって食後平均血糖値を求めていた。
【0004】
しかし、個人レベルで瞬間血糖値を食後に複数回に亘って測定することは容易ではなく、糖尿病患者や高血糖者が日常的に簡便に食後平均血糖値を把握することのできる技術が強く望まれていた。
【0005】
これに対し、尿糖から瞬間血糖値を推定することが従来試みられてきた。下記特許文献1には、被験者の長期的な尿糖値の変動パターンを予め記憶しておくことで、測定時における当該被験者の瞬間血糖値を推定する技術が記載されている。また、下記特許文献2には、被験者個人ごとに血糖値と瞬間尿糖値との関係を予め統計的に解析しておくことで、測定された尿糖値に基づいて尿採取時の瞬間血糖値を推定する方法が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−270241号公報
【特許文献2】特開2004−286452号公報
【非特許文献1】日本臨牀60巻 増刊号8、株式会社日本臨牀社、p.524−525、2002年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
血液を採取しておこなう血中糖度の直接的な測定に比べて、食後尿糖値の測定は容易で被測定者への負担が小さいという利点がある。しかしながら、飲水や発汗などの水分摂取・排泄(排尿を除く)によって尿が濃縮または希釈されると尿糖値は大きく変動するため、尿糖値に基づいて瞬間血糖値を正確に推定することが困難であることが技術常識であった(上記非特許文献1を参照)。尿糖値は、前回排尿後に膀胱に蓄えられた尿量と、これに含まれる尿糖の蓄積量とによって決まる積分的なパラメータであるため、時々刻々に変動する瞬間血糖値を推定するためのパラメータとして適切でないと考えられてきたためである。
【0008】
特許文献1においても、尿糖値から瞬間血糖値を推定する具体的な方法に関しては記載がない。また、かかる発明では、被測定者の尿糖値と瞬間血糖値との相関関係を長期間に亘って事前に蓄積して把握する必要があるため、このような蓄積のない通常の被測定者にとっては、かかる技術を用いることができないという大きな問題がある。
特許文献2に記載の方法も同様であり、被測定者ごとの統計的なデータを個別に事前取得しておく必要がある。
【0009】
一方、従来の食後平均血糖値の測定にあたっては、刻々に変化する瞬間血糖値の時刻歴的な変動パターンを把握する必要があることから、尿糖値に基づいてこれを算出することは行われていなかった。
例えば特許文献2に記載の方法の場合、食後の短時間間隔(例えば15分や30分)ごとに所定量の尿を採取し、尿糖値を繰り返し測定して瞬間血糖値に換算することは被験者にとって過大な負荷となり、また正確な血糖曲線を描いて曲線下面積を算出することができない。
すなわち、従来のように瞬間血糖値の変動パターンから食後平均血糖値を算出するかぎり、尿糖値の測定結果に基づいてこれをおこなうことは不可能であり、食後平均血糖値を算出するにあたっては、短時間間隔ごとの血中糖度の繰り返しの測定結果に基づいておこなうことが避けられなかった。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、被測定者が尿糖値に基づいて食後平均血糖値を簡易に測定することのできる実用的な測定装置および測定方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明をなすにあたり発明者は、飲水や発汗などによって水分の摂取・排泄がおこなわれた場合、尿糖値や瞬間血糖値は変動するものの、尿糖値と食後平均血糖値との間の相関関係は失われないことを突き止めた。これにより、被測定者の水分の摂取・排泄の程度(以下、水分摂取状況という場合がある。)によらず、食後所定時間経過時の尿糖値(食後尿糖値)の測定結果に基づいて食後平均血糖値が推定可能であることが判明した。
【0012】
さらに、食後尿糖値と食後平均血糖値との関係を示す検量データを多数のサンプル提供者から事前に取得して統計解析しておくことにより、かかる検量データと、被測定者の食後尿糖値の測定データとから食後平均血糖値が推定可能であることもまた判明した。尿糖値の主要な変動原因と考えられていた水分摂取状況が血糖値の推定に対して悪影響を及ぼさないことが判明したことにより、サンプル提供者から取得したデータより検量データが導かれたならば、これを用いて被測定者の食後平均血糖値が推定できることが明らかになったといえるからである。
そして本発明者は、実際に多数のサンプル提供者から検量データを取得し、食後尿糖値と食後平均血糖値との間に一定の相関が認められることを明らかにした。
【0013】
これにより、食後に経時的に変化する瞬間血糖値の変動パターンを把握することなく、食後尿糖値に基づいて食後平均血糖値を推定するという、まったく新しい測定方法にかかる本発明の完成に至った。
【0014】
本発明によれば、食後所定時間が経過した時点の食後尿糖値を被測定者の尿より測定する測定部と、
測定された前記食後尿糖値に基づいて、前記食後所定時間内における食後平均血糖値を算出する処理部と、
算出された前記食後平均血糖値を示すデータを出力する出力部と、を備える血糖値測定装置が提供される。
【0015】
また本発明においては、さらに具体的な実施の態様として、前記測定部が、前記食後所定時間内に飲水または発汗した前記被測定者の前記尿を受け付けて前記食後尿糖値を測定することとしてもよい。
【0016】
また本発明においては、さらに具体的な実施の態様として、前記食後尿糖値と前記食後平均血糖値とが対応づけられた検量データが記憶された記憶部を更に備えるとともに、
前記処理部が、前記食後所定時間内に飲水もしくは発汗した前記被測定者の前記尿より測定された前記食後尿糖値、ならびに、前記食後所定時間内に飲水および発汗していない前記被測定者の前記尿より測定された前記食後尿糖値に対して、共通の前記検量データを用いて前記食後平均血糖値を算出することとしてもよい。
【0017】
また本発明においては、さらに具体的な実施の態様として、前記被測定者の性別を示す性別情報、前記被測定者のヘモグロビンA1cの血中濃度を示す血液情報、または前記被測定者に関する前記食後尿糖値から前記食後平均血糖値への換算比率の大小を示す比率情報のうち少なくとも一つの情報の入力を受け付ける入力部を更に備え、
前記処理部が、測定された前記食後尿糖値と、入力された前記性別情報、前記血液情報または前記比率情報と、に基づいて前記食後平均血糖値を算出することとしてもよい。
【0018】
また本発明においては、さらに具体的な実施の態様として、前記入力部が、大小二通りのいずれかより選択された前記比率情報の入力を受け付けてもよい。
【0019】
また、本発明によれば、複数人のサンプル提供者から、食後所定時間が経過した時点の食後尿糖値と、食後平均血糖値との関係を示す検量データを取得するサンプル取得工程と、
被測定者から、前記食後所定時間が経過した時点の食後尿糖値を測定する測定工程と、
測定された前記食後尿糖値と前記検量データとから、前記被測定者の食後平均血糖値を推定する推定工程と、
を含む食後平均血糖値の測定方法が提供される。
【0020】
また本発明においては、さらに具体的な実施の態様として、前記サンプル取得工程において、所定の腎糖排泄閾値を超える食後血糖値の曲線下面積と前記食後尿糖値との相関関係を示すサンプルデータを前記サンプル提供者ごとに取得するとともに、取得された複数の前記サンプルデータを統計解析して前記検量データを算出することとしてもよい。
【0021】
また本発明においては、さらに具体的な実施の態様として、統計解析して算出された前記検量データが、下式(2);
食後平均血糖値=回帰係数×食後尿糖値+閾値 (2)
で表される検量線を示してもよい。
【0022】
また本発明においては、さらに具体的な実施の態様として、前記被測定者が男性であって、該被測定者のヘモグロビンA1cの血中濃度が9.0%未満の場合、前記閾値を前記腎糖排泄閾値とし、かつ、前記回帰係数を2×10-2とし、
前記被測定者が女性であって、該被測定者のヘモグロビンA1cの血中濃度が7.5%未満の場合、前記閾値を前記腎糖排泄閾値とし、かつ、前記回帰係数を4×10-2としてもよい。
【0023】
また本発明においては、さらに具体的な実施の態様として、前記サンプル取得工程において、前記サンプル提供者から取得した前記サンプルデータを複数の群に分類し、各群に属する前記サンプルデータよりそれぞれ前記検量データを算出する上述の食後平均血糖値の測定方法であって、
前記被測定者に関する前記サンプルデータを取得する予備工程を更に含み、かつ、
前記推定工程において、前記予備工程で取得した前記被測定者の前記サンプルデータが属する前記群を判定するとともに、判定された前記群に対応する前記検量データと、前記測定工程で測定された前記食後尿糖値とから、前記被測定者の食後平均血糖値を推定することとしてもよい。
【0024】
また本発明においては、さらに具体的な実施の態様として、前記サンプル提供者および前記被測定者が、ヘモグロビンA1cの血中濃度が9.0%未満の男性であってもよい。
【0025】
なお、上記発明において、食後所定時間内における食後平均血糖値は、食事終了時点から上記所定時間経過時までの間の全平均として算出してもよく、またはその一部の時間に関する平均として算出してもよい。上記一部の時間は、被測定者の尿中に糖が支配的に排泄される時間帯を包含することが好ましい。
【0026】
また、本発明の血糖値測定装置の各種の構成要素は、その機能を実現するように形成されていればよく、例えば、所定の機能を発揮する専用のハードウェア、所定の機能がコンピュータプログラムにより付与されたデータ処理装置、コンピュータプログラムによりデータ処理装置に実現された所定の機能、これらの任意の組み合わせ、等として実現することができる。また、本発明の血糖値測定装置は、コンピュータプログラムを読み取って対応するデータ処理を実行できるように、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/F(Interface)ユニット、等の汎用デバイスで構築されたハードウェア、所定のデータ処理を実行するように構築された専用の論理回路、これらの組み合わせ、等として実施することができる。
【0027】
また、本発明の血糖値測定装置の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
また、本発明の食後平均血糖値の測定方法は、複数の工程を順番に記載してあるが、その記載の順番は複数の工程を実行する順番を限定するものではない。このため、本発明の測定方法を実施するときには、その複数の工程の順番は内容的に支障しない範囲で変更することができる。
さらに、本発明の測定方法は、複数の工程が個々に相違するタイミングで実行されることに限定されない。このため、ある工程の実行中に他の工程が発生すること、ある工程の実行タイミングと他の工程の実行タイミングとの一部ないし全部が重複していること、等でもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の血糖値測定装置および食後平均血糖値の測定方法によれば、被測定者は自身の食後尿糖値と食後平均血糖値との関係を示す検量データを予め大量に取得しておく必要がない。これにより被測定者は、食後所定時間が経過した時点で一度だけ尿を採取して尿糖値を測定するだけで、簡易に食後平均血糖値を把握して糖尿病の程度を示す指標を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態にかかる血糖値測定装置(以下、測定装置と略記する場合がある。)および食後平均血糖値の測定方法(以下、測定方法と略記する場合がある。)を図面に基づいて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。図1は、本実施形態の血糖値測定装置の一例を示す外観図である。また、図2は、本実施形態の血糖値測定装置の一例を示すブロック図である。
【0030】
<血糖値測定装置>
本実施形態の血糖値測定装置の概要について説明する。
本実施形態の血糖値測定装置10は、食後所定時間が経過した時点の食後尿糖値を被測定者の尿より測定する測定部20と、測定された食後尿糖値に基づいて食後平均血糖値を算出する処理部30と、算出された食後平均血糖値を示すデータを出力する出力部50と、を備えている。
【0031】
また、血糖値測定装置10は、食後所定時間内に飲水または発汗した被測定者の尿を測定部20が受け付けて食後尿糖値を測定することができる。
【0032】
血糖値測定装置10は、食後尿糖値と食後平均血糖値とが対応づけられた検量データが記憶された記憶部(第一記憶部40)を更に備えている。
そして処理部30は、食後所定時間内に飲水もしくは発汗した被測定者の尿より測定された食後尿糖値、ならびに、食後所定時間内に飲水および発汗していない被測定者の尿より測定された食後尿糖値に対して、共通の検量データを用いて食後平均血糖値を算出する。
すなわち、本実施形態の処理部30は、被測定者の水分摂取状況によらず、共通の検量データに基づいて食後平均血糖値を算出する。
【0033】
測定部20は、被測定者から採取された尿に浸漬されて尿中糖分を電気化学的に検出する尿糖センサを備えている。尿糖センサは、尿中の尿糖値を測定し、その高低を示す尿糖値信号を処理部30に出力する。
【0034】
第一記憶部40に記憶された検量データは、複数人のサンプル提供者から取得した、食後所定時間が経過した時点の食後尿糖値と、食後平均血糖値との関係を示すデータである。
検量データは、食後尿糖値と食後平均血糖値の二つのパラメータを直接的に対応づける統計データであってもよく、または、これらのパラメータから換算可能な他のパラメータ同士を対応づける統計データであってもよい。
サンプル提供者の数は特に限定されないが、検量データの確からしさを向上する観点から10人以上、好ましくは20人以上、より好ましくは100人以上とする。
【0035】
検量データを取得するにあたり、サンプル提供者には食事負荷試験をおこない、所定時間経過時の尿糖値を測定するとよい。食後経過時間は、90分、120分、150分または180分などより選択して採用することができる。かかる経過時間(所定時間)としては、その間の排尿が制限されるサンプル提供者にとって過負荷とならない程度の長さが好ましい。また、食後にピークを示す瞬間血糖値が十分に低減するだけの時間であることが好ましい。瞬間尿糖値が十分に低減した状態において尿を採取することで、採取される尿には、腎糖排泄閾値を越えて血中に排泄されたブドウ糖のほぼ全量が含まれることとなる。これにより、精度のよい尿糖値の測定が可能になる。
【0036】
検量データは、所定の腎糖排泄閾値を超える食後血糖値の曲線下面積と食後平均血糖値とが換算可能であることを利用して算出することができる。具体的には、かかる曲線下面積と食後尿糖値との相関関係を示すサンプルデータをサンプル提供者ごとに取得し、取得したサンプルデータを統計解析して、食後尿糖値と食後平均血糖値との関係を求めることができる。
【0037】
検量データの算出方法およびその形式は特に限定されるものではない。一例として、食後尿糖値と、食後血糖値の曲線下面積または食後平均血糖値との関係を、最小二乗法に基づいて一次関数にて近似するとよい。このほか検量データは、多次関数、指数関数、対数関数またはこれらの組み合わせによって、食後尿糖値と食後平均血糖値とを対応づけたものでもよい。
また検量データは、本実施形態のように関数形式にて第一記憶部40に記憶されていてもよく、またはテーブル形式にて記憶されていてもよい。
【0038】
本実施形態の血糖値測定装置10は、多数の他人より取得した検量データを用いて、被測定者の食後尿糖値より食後平均血糖値を推定するものである。
【0039】
被測定者の食後尿糖値を測定する尿は、サンプル提供者と同様に、食事負荷試験をおこない、上記所定時間経過時に採取するとよい。なお、被測定者が摂取する食事は、サンプル提供者と同様の食事負荷試験用のものであってもよく、日常的な食事内容であってもよい。
【0040】
また、本実施形態の血糖値測定装置10にて被測定者の食後平均血糖値を測定するに際しては、食事中および食後の飲水量および発汗量を任意とすることができる。すなわち、被測定者が食事とともに摂取する水分量を厳密に管理することなく、本実施形態の血糖値測定装置10によれば被測定者の食後平均血糖値を測定することができる。
【0041】
本実施形態の第一記憶部40に記憶しておく検量データは、全サンプル提供者に関する食後尿糖値と食後平均血糖値とを関連づけるデータであってもよく、または、サンプル提供者を様々な観点から複数のカテゴリーに分類し、各カテゴリーについて個別に算出されたデータであってもよい。
具体的には、本実施形態の血糖値測定装置10では性別とヘモグロビンA1c(HbA1c)の血中濃度の高低によって分類されたカテゴリーごとに検量データが記憶されている。
【0042】
そして血糖値測定装置10では、測定部20を尿に浸漬して尿糖値を測定する前に、または測定した後に、被測定者は入力部60を操作することで自身が属するカテゴリーを選択することができる。
【0043】
また本実施形態では、食後尿糖値に対する食後平均血糖値の高低(換算比率)を示す複数の群がカテゴリー分類として設けられている。
【0044】
すなわち、本実施形態の血糖値測定装置10は、被測定者の性別を示す性別情報、被測定者のHbA1cの血中濃度を示す血液情報、または被測定者に関する食後尿糖値から食後平均血糖値への換算比率の大小を示す比率情報のうち少なくとも一つの情報の入力を受け付ける入力部60を更に備えている。
そして処理部30は、測定された食後尿糖値と、入力された性別情報、血液情報または比率情報と、に基づいて食後平均血糖値を算出する。
【0045】
入力部60としては、ひとつまたは複数のボタンが設けられ、男女から選択された性別や、複数通りに分類されたHbA1cの血中濃度とともに、大小二通りのいずれかより選択された比率情報の入力を受け付ける。
【0046】
入力部60を操作して入力された入力情報は、第二記憶部42に格納される。
処理部30は、第二記憶部42に記憶された入力情報に適合するカテゴリーに関する検量データを第一記憶部40より呼び出す。
そして処理部30は、呼び出された検量データに対して、測定部20から送られてきた食後尿糖値に関するデータを適用することで、被測定者の食後平均血糖値に関するデータを算出する。
【0047】
算出されたデータは出力部50で出力されて被測定者に認識される。
出力部50として、図1ではデジタル表示装置を例示しているが、このほか、外部記憶装置に対してデータ出力する外部インタフェースであってもよい。
【0048】
本実施形態の血糖値測定装置10によれば、食後所定時間経過後に採取された尿より尿糖値を測定することで、水分摂取状況によらず実用的に高い精度で被測定者の食後平均血糖値を測定することができる。特に、本実施形態のように被測定者を様々なカテゴリーに分類し、属するカテゴリーに適合する検量データを用いることで、食後平均血糖値の測定精度を向上することができる。
【0049】
<血糖値の測定方法>
以下、本実施形態の血糖値測定装置10を用いておこなう、食後平均血糖値の測定方法の概要について説明する。
本実施形態による食後平均血糖値の測定方法は、複数人のサンプル提供者から、食後所定時間が経過した時点の食後尿糖値と、食後平均血糖値との関係を示す検量データを取得するサンプル取得工程を含む。そして、本実施形態の測定方法は、被測定者から、上記の食後所定時間が経過した時点の食後尿糖値を測定する測定工程と、測定された食後尿糖値と検量データとから、被測定者の食後平均血糖値を推定する推定工程とを含む。
【0050】
以下、本実施形態の測定方法について詳細に説明する。
(サンプル取得工程)
サンプル取得工程では、まず、所定の腎糖排泄閾値を超える食後血糖値の曲線下面積と食後尿糖値との相関関係を示すサンプルデータをサンプル提供者ごとにそれぞれ取得する。そして、取得された複数のサンプルデータを統計解析して検量データを算出する。
サンプル提供者にはそれぞれ食事負荷試験を実施する。かかる食事中、および食後の飲水や発汗による水分摂取状況は、サンプル提供者ごとに共通とすることが好ましい。
【0051】
サンプル提供者は、性別と、ヘモグロビンA1c(HbA1c)の血中濃度の高低によってカテゴリー分類される。そして、分類されたカテゴリーに属するサンプルデータごとに統計解析をおこなって、食後尿糖値と食後平均血糖値との相関を表す検量データを算出する。
【0052】
食後尿糖値と食後平均血糖値との関係は、以下のようにして求めることができる。
図3は、食後血糖値(瞬間血糖値)の経時変化を示す測定結果と、所定レベルに設定された腎糖排泄閾値(例えば、180mg/dL)とから算出される曲線下面積(AUC>180)との関係を示すグラフである。曲線下面積は、食後経過時間および腎糖排泄閾値を用いて、下式(3);
食後平均血糖値=腎糖排泄閾値+曲線下面積/食後経過時間 (3)
により食後平均血糖値に換算できる。
【0053】
また、食後平均血糖値として、上記食後経過時間のうちの一部の時間帯に関する平均血糖値を算出してもよい。
かかる場合、当該一部の時間帯の開始時刻において排尿した上で、当該一部の時間帯の終了時刻において尿を採取して尿糖値を測定し、曲線下面積を求める。そして、上式(3)において、食後経過時間に代えて、当該一部の時間帯の長さ(経過時間)によって曲線下面積を除することで、当該一部の時間帯における平均血糖値を算出することができる。
【0054】
すなわち、本実施形態においては、下式(3');
食後平均血糖値=腎糖排泄閾値+曲線下面積/経過時間 (3')
に基づいてサンプル提供者や被測定者の食後平均血糖値を算出してもよい。
【0055】
食後尿糖値として、本実施形態では食後120分経過時の尿より測定される尿糖値(尿糖120分値)を用いるものとする。
図3には、食後0分および120分経過時に排尿し、120分経過時の尿より測定される尿糖120分値の一例を併せて記載している。
【0056】
同図より、サンプル提供者の食後尿糖値(尿糖120分値)と、食後平均血糖値との関係を示す検量データを取得することができる。
【0057】
つぎに、多数のサンプル提供者について取得したサンプルデータを統計解析して検量データを求める。検量データは、例えば下式(4);
食後平均血糖値(y)=回帰係数×食後尿糖値(x)+閾値 (4)
で表される検量線の形式で求めることができる。
【0058】
また、本実施形態の測定方法では、例えば以下のようにサンプル提供者をカテゴリー分類し、カテゴリーごとに検量データをそれぞれ算出することができる。
【0059】
男性でHbA1cの血中濃度が9.0%未満の場合、下式(5);
食後平均血糖値=2・10-2×食後尿糖値+腎糖排泄閾値 (5)
にて被測定者の食後平均血糖値(mg/dL)を推定することができる。
同様に、女性でHbA1cの血中濃度が7.5%未満の場合、下式(6);
食後平均血糖値=4・10-2×食後尿糖値+腎糖排泄閾値 (6)
にて被測定者の食後平均血糖値(mg/dL)を推定することができる。
【0060】
(測定工程)
本実施形態の測定方法では、被測定者から、食後所定時間が経過した時点の食後尿糖値を測定する。採尿する食後所定時間は、サンプル提供者から検量データを取得した際の食後経過時間と共通とする。すなわち、本実施形態の場合、被測定者に関しても食後120分が経過した時点の尿糖値(尿糖120分値)を測定する。
【0061】
(推定工程)
本実施形態の測定方法では、次に、測定された被測定者の食後尿糖値と、例えば上式(4)〜(6)で表される検量データとから、被測定者の食後平均血糖値に換算する。
かかる換算値を被測定者が知得することで、自身の糖尿病の程度を把握することができる。
【0062】
このように、本実施形態の測定方法については、被測定者の水分摂取状況によらず、食後尿糖値と食後平均血糖値との間に高い相関が認められたことにより、多数のサンプル提供者から取得した検量データを用いて、被測定者の食後平均血糖値を推定することが可能になる。
そして本実施形態では、食後尿糖値と食後平均血糖値との相関係数がより高いカテゴリーにサンプル提供者を分類して検量データを取得する。これにより、被測定者がいずれのカテゴリーに属するかを加味することで、その食後尿糖値からより高い精度で食後平均血糖値を推定することができる。
【0063】
なお本実施形態については種々の変形を許容する。
たとえば、食後尿糖値に対する食後平均血糖値の高低を意味する換算比率に基づいて、サンプル提供者を複数の群にカテゴリー分類し、各群について食後尿糖値と食後平均血糖値との相関を示す検量データを算出してもよい。
【0064】
すなわち、後述する実施例にて説明するように、サンプル提供者のカテゴリー分類によっては、共通の食後尿糖値に対して食後平均血糖値が比較的高い群と、比較的低い群とが存在する。かかる場合、被測定者がいずれの群に属するかを予め把握しておくことで、以降の測定においては、自身が属する群に関する検量データを用いて食後平均血糖値を高精度に推定することが可能となる。
被測定者が属する群の把握に関しては、本変形例の場合、市販の自己血糖測定器を用いて食後血糖値から食後平均血糖値を算出し、一方、市販のデジタル尿糖計を用いて食後尿糖値を算出する。そして、両者を対応付けることで、被測定者がいずれの群に属するかを知得することができる。かかる把握は被測定者ごとに一度のみ行えばよい。
【0065】
すなわち、本変形例のサンプル取得工程においては、サンプル提供者から取得したサンプルデータを複数の群に分類し、各群に属するサンプルデータよりそれぞれ検量データを算出する。
そして、被測定者に関するサンプルデータを取得する予備工程を行う。
さらに、推定工程においては、予備工程で取得した被測定者のサンプルデータが属する群を判定するとともに、判定された群に対応する検量データと、測定工程で測定された食後尿糖値とから、被測定者の食後平均血糖値を推定する。
【0066】
なお、食後尿糖値に対して食後平均血糖値の換算比率の異なる複数の群が存在することの理由は必ずしも明らかではないが、サンプル提供者および被測定者ごとに、インスリンの分泌能力に応じて、食後に血糖値が最大となるまでの時間が60分程度である者と、120分程度である者とが存在することが一因であると考えられる。
【0067】
また、本実施形態の血糖値測定装置10においては、サンプル提供者に関し、複数通りの食後経過時間において食後尿糖値と食後平均血糖値との検量データを取得してもよい。
例えば、食後経過時間を90分とした場合の検量データと、120分とした場合の検量データと、150分とした場合の検量データとを、血糖値測定装置10は第一記憶部40に記憶しておくとよい。
【0068】
そして、被測定者が食後平均血糖値を測定するに際し、尿採取するまでの経過時間に応じて、90分、120分または150分の検量データのいずれかを選択可能とするとよい。
具体的には、被測定者の食後尿糖値の測定前に、または測定後に、入力部60を操作して食後経過時間を選択入力する。そして、処理部30は、入力された食後経過時間に対応する検量データを第一記憶部40より読み出し、食後尿糖値の測定結果をこれに適用して演算処理を行う。
【0069】
かかる構成とすることにより、被測定者に対して過剰の排尿制限を課すことなく食後平均尿糖値を測定することが可能になる。また、食後血糖値の変動速度の大きい被測定者に関しては、比較的短い食後経過時間にて食後平均尿糖値を測定することが可能になる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明にかかる食後平均血糖値の測定方法について、実施例を用いて更に具体的に説明する。
【0071】
(実施例1)
本発明者は、食事負荷試験時および試験後の水分摂取の有無を変化させた場合の血糖値および尿糖値を測定した。
実験条件を下表1に示す。実験は、耐糖能異常者1名(56歳男性、ヘモグロビンA1cの血中濃度:5.6%)に関して行った。すなわち本実験は、共通の被験者について食事負荷試験をおこない、負荷前後の水分摂取(飲水)量を変化させて血糖値と尿糖値との関係を測定したものである。
【0072】
【表1】
【0073】
実験ケース1(Case1)では、食事負荷試験の開始時、すなわち食事直後に、被験者は100mlの水を摂取した。
実験ケース2(Case2)では、食事負荷試験の開始時、すなわち食事直後に、被験者は200mlの水を摂取し、かつ、30分経過ごとに200mlずつの水を更に摂取した。
【0074】
本実験では、Case1,2とも、食事直後および15分経過ごとに血糖値を測定した。あわせて、食事直後および60分経過ごとに尿糖値を測定した。血糖値および尿糖値の測定タイミングを上記表中にて●で示す。
測定には、電極法を用いた市販の自己血糖測定器、および市販のデジタル尿糖計(例えば、タニタ社製:UG−102)を用いた。
【0075】
図4は、被験者の血糖値の経時変化を示す測定結果を示すグラフである。
図5は、被験者の尿糖値の経時変化を示す測定結果を示すグラフである。
【0076】
図4より、試験開始時にともに飲水したCase1と2は、45分経過時までは同様の傾向を示すものの、二度目以降の飲水の影響が現れる60分経過時以降には差異が見られた。飲水量を多くしたCase2は飲水量の少ないCase1に比べ、60分経過時以降、常に約30〜70mg/dL程度、血糖値の低い状態が続いた。
【0077】
図5より、尿糖値に関してはCase1と2で更に顕著な差異が見られた。飲水量の少ないCase1では、120分経過時に採取された尿中の尿糖値が1068mg/dLまで上昇している。より具体的には、60分経過時に採取された尿の尿糖値は224mg/dLであり、180分経過時に採取された尿の尿糖値は62mg/dLとともに低いことから、被験者は60〜120分の間に支配的に尿糖が排泄されたことが分かる。
【0078】
図6は、実験開始時(0分)と、以降60分ごとに採取された尿量を示すグラフである。飲水量に差異のあるCase1と2とでは、特に120分経過時以降の排尿量に大きな差が見られる。
【0079】
図7は、尿糖値と尿量とから計算した尿糖絶対量の変化を示すグラフである。同図の結果より、飲水量の多いCase2において尿糖値(食後尿糖値)が低下したのは(図5を参照)、尿の濃度が薄まっただけではなく、血糖値が低下したことにより(図4を参照)、尿中に排泄される尿糖の絶対量が低減したことによることが判明した。
【0080】
図8は、上記表1と同様の実験条件にて繰り返しおこなった結果より算出した、尿糖120分値と食後平均血糖値との相関を示すグラフである。同図では、腎糖排泄閾値を220mg/dLとして食後平均血糖値の算出をおこなっている。
【0081】
なお同図には、上記Case1,2のそれぞれついて、食後60分経過時、120分経過時および180分経過時の各尿糖値と、前回排尿時からの経過時間(すなわち60分間)内の平均血糖値とを対応づけてプロットしている。横軸の尿糖値は、食後60分、120分および180分経過時の尿糖値(尿糖0−60分値、尿糖60−120分値、尿糖120−180分値)を示す。縦軸の平均血糖値は、食後15分間隔ごとに測定した瞬間血糖値から描いた血糖曲線より、食後0〜60分、60〜120分、120〜180分についてそれぞれ曲線下面積を求め、上式(3')に基づき経過時間を60分として算出している。
【0082】
同様に、図9は腎糖排泄閾値を230mg/dLとした場合、図10は腎糖排泄閾値を240mg/dLとした場合のグラフである。
食後尿糖値と食後平均血糖値との相関の強さを示す決定係数(R2)は、図中に示すように、腎糖排泄閾値を220〜240mg/dLのいずれに設定した場合も、0.95を超えるきわめて高い値となった。
相関係数(R)は、図8の場合で0.978、図9の場合で0.988、図10の場合で0.986であった。
【0083】
これらの結果より、被験者の水分摂取状況の変動によらず、また尿糖値を採取する食後経過時間によらず、食後尿糖値と食後平均血糖値との間には高い相関が見られることが判明した。また、腎臓排泄閾値を変えた場合も、食後尿糖値と食後平均血糖値との強い相関は不変であることが分かった。
【0084】
本実施例により、食後尿糖値は水分摂取により低値を示すが、同時に食後血糖値の上昇も抑制されており、食後平均血糖値と食後尿糖値との相関は飲水により悪影響を受けないことが分かった。
したがって、糖尿病の程度を把握する指標として有用な食後平均血糖値が、被測定者の食後尿糖値に基づいて推定可能であることが明らかとなった。
【0085】
(実施例2)
図11は、男女合計133人のサンプル提供者から測定した尿糖120分値と、血糖曲線の曲線下面積(AUC)との関係を示すサンプルデータの散布図、および最小二乗法により求めた回帰直線(検量線)を示す図である。同図における曲線下面積は、図3に示すようにサンプル提供者から食後30分ごとに計測した食後血糖値より血糖曲線を描き、腎糖排泄閾値を170mg/dLとして算出した。
【0086】
結果として、尿糖120分値(x)と食後血糖値の曲線下面積(y)とに関するサンプルデータは、下式(7);
y=3.3x+3.8・103 (7)
の関係を有することが分かった。
図11の場合、相関係数(R)は0.63と良好な値を示し、多数のサンプル提供者に関して尿糖120分値と血糖値の曲線下面積との間に一定の相関があることが分かった。
よって、尿糖120分値から食後血糖値の曲線下面積を推定するための検量データとして、上式(7)の検量線が得られた。
【0087】
図12は、同じサンプル提供者に関する測定値に基づいて、尿糖120分値と、腎糖排泄閾値を180mg/dLとした場合の曲線下面積との相関を示すサンプルデータの散布図、および図11と同様にして求めた回帰直線を示す図である。
結果として、尿糖120分値(x)と食後血糖値の曲線下面積(y)とに関するサンプルデータは、下式(8);
y=3.1x+3.0・103 (8)
の関係を有することが分かった。
また、上式(8)の相関係数(R)は0.62と良好な値を示した。
【0088】
図13は、同じサンプル提供者に関する測定値に基づいて、尿糖120分値と、腎糖排泄閾値を190mg/dLとした場合の曲線下面積との相関を示すサンプルデータの散布図、および図11と同様にして求めた回帰直線を示す図である。
結果として、尿糖120分値(x)と食後血糖値の曲線下面積(y)とに関するサンプルデータは、下式(9);
y=2.9x+2.4・103 (9)
の関係を有することが分かった。
また、上式(9)の相関係数(R)は0.61と良好な値を示した。
【0089】
図11〜13の結果から、多数のサンプル提供者から取得した食後尿糖値と血糖曲線の曲線下面積とは一定の相関関係が認められた。したがって、上記サンプルデータの検量線を表す上式(7)〜(9)を検量データとして用いることにより、被測定者から測定した尿糖120分値に基づいて当該被測定者に関する食後血糖値の曲線下面積を求めることができた。
【0090】
(実施例3)
サンプル提供者を様々な観点からカテゴリー分類することで、食後尿糖値と食後平均血糖値との間に、より精度の高い相関関係を見出した。
本実施例においては、性別によってサンプル提供者をカテゴリー分類した。
【0091】
図14は、性別で分類した場合の尿糖120分値と食後平均血糖値との関係を示す散布図、およびその回帰直線(検量線)を示す図である。同図(a)は男性、同図(b)は女性に関する結果を示す。
本実施形態においては、下式(10);
食後平均血糖値=腎糖排泄閾値+血糖曲線の曲線下面積/食後尿採取までの経過時間 (10)
に基づいて算出した。本実施形態の場合、腎糖排泄閾値としては180mg/dL、食後尿採取までの経過時間は120分とした。
【0092】
72人の男性のサンプル提供者から取得した尿糖120分値と食後平均血糖値とのサンプルデータを統計解析して求まる検量データとして、下式(11);
食後平均血糖値(y)=回帰係数×食後尿糖値(x)+閾値 (11)
にて表される検量線を算出した。
【0093】
本実施例の閾値としては、最小二乗法により食後尿糖値と食後平均血糖値との相関係数を最大化する閾値を用いた。
【0094】
図14(a)に示す結果より、男性の場合、尿糖120分値(x)と食後平均血糖値(y)とに関するサンプルデータは、下式(12);
y=0.024x+2.0・102 (12)
の関係を有することが分かった。すなわち、回帰係数は0.024、閾値は2.0・102であった。また、この場合の相関係数(R)は0.63と良好な値であった。
【0095】
61人の女性のサンプル提供者に関しても、男性サンプルと同様に統計解析を行い、上式(11)で表される検量データを算出した。結果を同図(b)に示す。
具体的には、女性の場合、尿糖120分値(x)と食後平均血糖値(y)とに関するサンプルデータは、下式(13);
y=0.029x+2.1・102 (13)
の関係を有することが分かった。すなわち、回帰係数は0.029、閾値は2.1・102であった。また、この場合の相関係数(R)は0.64と良好な値であった。
【0096】
(実施例4)
サンプル提供者を、性別およびHbA1cの血中濃度の観点からカテゴリー分類し、実施例2と同様に尿糖120分値と食後平均血糖値との間の検量データを算出した。
【0097】
図15(a)は、男性かつHbA1c<7.5%である31人のサンプル提供者に関するサンプルデータの散布図である。
かかるサンプルデータから最小二乗法により求めた尿糖120分値(x)と食後平均血糖値(y)との間の検量線は、下式(14);
y=0.021x+2.0・102 (14)
の関係を有し、相関係数(R)は0.52であった。
【0098】
同図(b)は、女性かつHbA1c<7.5%である20人のサンプル提供者に関するサンプルデータの散布図である。
かかるサンプルデータから最小二乗法により求めた尿糖120分値(x)と食後平均血糖値(y)との間の検量線は、下式(15);
y=0.030x+1.9・102 (15)
の関係を有し、相関係数(R)は0.77と良好であった。
【0099】
図16(a)は、男性かつ7.5%≦HbA1c≦8.9%である19人のサンプル提供者に関するサンプルデータの散布図である。
かかるサンプルデータから最小二乗法により求めた尿糖120分値(x)と食後平均血糖値(y)との間の検量線は、下式(16);
y=0.025x+2.0・102 (16)
の関係を有し、相関係数(R)は0.82ときわめて良好であった。
【0100】
同図(b)は、女性かつ7.5%≦HbA1c≦8.9%である24人のサンプル提供者に関するサンプルデータの散布図である。
かかるサンプルデータから最小二乗法により求めた尿糖120分値(x)と食後平均血糖値(y)との間の検量線は、下式(17);
y=0.025x+2.2・102 (17)
の関係を有し、相関係数(R)は0.50であった。
【0101】
図17(a)は、男性かつHbA1c≧9.0%である22人のサンプル提供者に関するサンプルデータの散布図である。
かかるサンプルデータから最小二乗法により求めた尿糖120分値(x)と食後平均血糖値(y)との間の検量線は、下式(18);
y=0.0025x+2.7・102 (18)
の関係を有し、相関係数(R)は0.06と低かった。
【0102】
同図(b)は、女性かつHbA1c≧9.0%である17人のサンプル提供者に関するサンプルデータの散布図である。
かかるサンプルデータから最小二乗法により求めた尿糖120分値(x)と食後平均血糖値(y)との間の検量線は、下式(19);
y=0.024x+2.2・102 (19)
の関係を有し、相関係数(R)は0.58であった。
【0103】
以上の結果より、本実施例においては、被測定者が男性であってそのHbA1cの血中濃度が9.0%未満の場合、および、被測定者が女性であってそのHbA1cの血中濃度が7.5%未満の場合に、食後尿糖値と食後平均血糖値との間に特に良好な相関関係が認められ、高い推定精度による食後平均血糖値が測定可能であることが分かった。
【0104】
(実施例5)
性別およびHbA1cの血中濃度が共通するサンプル提供者を二つの群に分類して、それぞれの群に関して、尿糖120分値と食後平均血糖値との間の検量データを算出した。
【0105】
図18(a)は、図15(a)および図16(a)を合計したグラフである。すなわち、HbA1c<9.0%の男性50人のサンプル提供者から取得した尿糖120分値(x)と食後平均血糖値(y)とのサンプルデータの散布図、およびその回帰直線(検量線)のグラフである。図18(a)は、当該男性サンプルを一つの群として扱い、統計解析をおこなったものである。
【0106】
かかる検量線は、下式(20);
y=0.025x+1.9・102 (20)
の関係を有し、相関係数(R)は0.71と比較的良好であった。
【0107】
図18(b)は、かかる男性50人のサンプルデータを二つの群に分類して、個別に検量線を求めたものである。同図に示す散布図より、HbA1c<9.0%の男性50人のうち、同一の尿糖120分値に対して食後平均血糖値がより低くなる37人のサンプル提供者の群(A)と、これがより高くなる13人のサンプル提供者の群(B)とが存在した。
【0108】
よって、食後尿糖値に対する食後平均血糖値の高低にあたる換算比率に基づいて、サンプル提供者を複数の群にカテゴリー分類し、各群について食後尿糖値と食後平均血糖値との相関を示す検量データを算出した。
【0109】
結果として、群(A)に関しては、下式(21);
y=0.027x+1.8・102 (21)
で示される検量データが導かれた。
また、群(B)に関しては、下式(22);
y=0.021x+2.3・102 (22)
で示される検量データが導かれた。
そして、群(A)の相関係数は0.94であり、群(B)の相関係数は0.73と、いずれもきわめて良好な値となった。
【0110】
なお本実施例に関しては、図18(b)より、サンプル提供者および被測定者が、HbA1cの血中濃度が9.0%未満の男性である場合に好適に用いられるといえる。
サンプル提供者が女性の場合、またはHbA1cの血中濃度が他の数値範囲の場合に関しても、食後尿糖値に対する食後平均血糖値の換算比率の大小によってカテゴリー内を複数に分類してもよい。
【0111】
本実施例の結果より、サンプル取得工程で取得された相関データを複数の群に分類して個別に検量データを算出しておくことで、食後尿糖値と食後平均血糖値とを高い相関係数をもって関連づけることが可能となった。
これにより、被測定者がいずれの群に属するかを、ひとたび把握しておくことで、以降の測定に関しては自身が属する群に関する検量データを用いて、食後平均血糖値を高精度に推定することが可能となる。
【0112】
上記実施例1と、実施例2〜5の結果とを組み合わせることにより、被測定者の飲水や発汗の度合いによらず、食後尿糖値の測定値から食後平均血糖値を推定することが可能になる。
すなわち、図8から10に示すように、被測定者の飲水条件を変化させた場合の食後尿糖値(x)と食後平均血糖値(y)とは、サンプルデータに関する上式(4);
食後平均血糖値(y)=回帰係数×食後尿糖値(x)+閾値 (4)
と同様の傾向を示しつつ、きわめて高い相関係数で対応づけられることが実施例1より明らかとなった。
したがって、実施例2〜5などに示すように、サンプル提供者を様々なカテゴリーに分類して食後尿糖値と食後平均血糖値とを高い相関係数で対応づける検量データを算出することにより、本実施例の測定装置および測定方法によれば、被測定者の水分摂取状況によらず高い精度で食後平均血糖値を推定することが可能であることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の実施形態にかかる血糖値測定装置の外観図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる血糖値測定装置のブロック図である。
【図3】曲線下面積の算出方法を示すグラフである。
【図4】被験者の血糖値の経時変化を示す測定結果を示すグラフである。
【図5】被験者の尿糖値の経時変化を示す測定結果を示すグラフである。
【図6】実験開始時(0分)と、以降60分ごとに採取された尿量を示すグラフである。
【図7】尿糖値と尿量とから計算した尿糖絶対量の変化を示すグラフである。
【図8】腎糖排泄閾値を220mg/dLとした場合の、尿糖値と食後平均血糖値との相関を示すグラフである。
【図9】腎糖排泄閾値を230mg/dLとした場合の、尿糖値と食後平均血糖値との相関を示すグラフである。
【図10】腎糖排泄閾値を240mg/dLとした場合の、尿糖値と食後平均血糖値との相関を示すグラフである。
【図11】腎糖排泄閾値を170mg/dLとした場合の、尿糖120分値と血糖曲線の曲線下面積との関係を示すサンプルデータの散布図、および回帰直線を示す図である。
【図12】腎糖排泄閾値を180mg/dLとした場合のサンプルデータの散布図および回帰直線を示す図である。
【図13】腎糖排泄閾値を190mg/dLとした場合のサンプルデータの散布図および回帰直線を示す図である。
【図14】性別で分類した場合の尿糖120分値と食後平均血糖値との関係を示す散布図および回帰直線を示す図であり、(a)は男性サンプル、(b)は女性サンプルに関する結果を示す。
【図15】性別およびHbA1cの血中濃度で分類した場合の尿糖120分値と食後平均血糖値との関係を示す散布図および回帰直線を示す図であり、(a)は男性サンプル、(b)は女性サンプルに関する結果を示す。
【図16】性別およびHbA1cの血中濃度で分類した場合の尿糖120分値と食後平均血糖値との関係を示す散布図および回帰直線を示す図であり、(a)は男性サンプル、(b)は女性サンプルに関する結果を示す。
【図17】性別およびHbA1cの血中濃度で分類した場合の尿糖120分値と食後平均血糖値との関係を示す散布図および回帰直線を示す図であり、(a)は男性サンプル、(b)は女性サンプルに関する結果を示す。
【図18】(a)はHbA1c<9.0%の男性サンプルを一つの群として扱った場合の散布図および回帰直線を示す図であり、(b)はこれを二つの群として扱った場合の散布図及び回帰直線を示す図である。
【符号の説明】
【0114】
10 血糖値測定装置
20 測定部
30 処理部
40 第一記憶部
42 第二記憶部
50 出力部
60 入力部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食後所定時間が経過した時点の食後尿糖値を被測定者の尿より測定する測定部と、
測定された前記食後尿糖値に基づいて、前記食後所定時間内における食後平均血糖値を算出する処理部と、
算出された前記食後平均血糖値を示すデータを出力する出力部と、を備える血糖値測定装置。
【請求項2】
前記測定部が、前記食後所定時間内に飲水または発汗した前記被測定者の前記尿を受け付けて前記食後尿糖値を測定する請求項1に記載の血糖値測定装置。
【請求項3】
前記食後尿糖値と前記食後平均血糖値とが対応づけられた検量データが記憶された記憶部を更に備えるとともに、
前記処理部が、前記食後所定時間内に飲水もしくは発汗した前記被測定者の前記尿より測定された前記食後尿糖値、ならびに、前記食後所定時間内に飲水および発汗していない前記被測定者の前記尿より測定された前記食後尿糖値に対して、共通の前記検量データを用いて前記食後平均血糖値を算出することを特徴とする請求項2に記載の血糖値測定装置。
【請求項4】
前記被測定者の性別を示す性別情報、前記被測定者のヘモグロビンA1cの血中濃度を示す血液情報、または前記被測定者に関する前記食後尿糖値から前記食後平均血糖値への換算比率の大小を示す比率情報のうち少なくとも一つの情報の入力を受け付ける入力部を更に備え、
前記処理部が、測定された前記食後尿糖値と、入力された前記性別情報、前記血液情報または前記比率情報と、に基づいて前記食後平均血糖値を算出することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の血糖値測定装置。
【請求項5】
前記入力部が、大小二通りのいずれかより選択された前記比率情報の入力を受け付ける請求項4に記載の血糖値測定装置。
【請求項6】
複数人のサンプル提供者から、食後所定時間が経過した時点の食後尿糖値と、食後平均血糖値との関係を示す検量データを取得するサンプル取得工程と、
被測定者から、前記食後所定時間が経過した時点の食後尿糖値を測定する測定工程と、
測定された前記食後尿糖値と前記検量データとから、前記被測定者の食後平均血糖値を推定する推定工程と、
を含む食後平均血糖値の測定方法。
【請求項7】
前記サンプル取得工程において、所定の腎糖排泄閾値を超える食後血糖値の曲線下面積と前記食後尿糖値との相関関係を示すサンプルデータを前記サンプル提供者ごとに取得するとともに、取得された複数の前記サンプルデータを統計解析して前記検量データを算出することを特徴とする請求項6に記載の食後平均血糖値の測定方法。
【請求項8】
統計解析して算出された前記検量データが、下式(1);
食後平均血糖値=回帰係数×食後尿糖値+閾値 (1)
で表される検量線を示すことを特徴とする請求項7に記載の食後平均血糖値の測定方法。
【請求項9】
前記被測定者が男性であって、該被測定者のヘモグロビンA1cの血中濃度が9.0%未満の場合、前記閾値を前記腎糖排泄閾値とし、かつ、前記回帰係数を2×10-2とし、
前記被測定者が女性であって、該被測定者のヘモグロビンA1cの血中濃度が7.5%未満の場合、前記閾値を前記腎糖排泄閾値とし、かつ、前記回帰係数を4×10-2とすることを特徴とする請求項8に記載の食後平均血糖値の測定方法。
【請求項10】
前記サンプル取得工程において、前記サンプル提供者から取得した前記サンプルデータを複数の群に分類し、各群に属する前記サンプルデータよりそれぞれ前記検量データを算出する請求項7から9のいずれかに記載の食後平均血糖値の測定方法であって、
前記被測定者に関する前記サンプルデータを取得する予備工程を更に含み、かつ、
前記推定工程において、前記予備工程で取得した前記被測定者の前記サンプルデータが属する前記群を判定するとともに、判定された前記群に対応する前記検量データと、前記測定工程で測定された前記食後尿糖値とから、前記被測定者の食後平均血糖値を推定することを特徴とする食後平均血糖値の測定方法。
【請求項11】
前記サンプル提供者および前記被測定者が、ヘモグロビンA1cの血中濃度が9.0%未満の男性である請求項10に記載の食後平均血糖値の測定方法。
【請求項1】
食後所定時間が経過した時点の食後尿糖値を被測定者の尿より測定する測定部と、
測定された前記食後尿糖値に基づいて、前記食後所定時間内における食後平均血糖値を算出する処理部と、
算出された前記食後平均血糖値を示すデータを出力する出力部と、を備える血糖値測定装置。
【請求項2】
前記測定部が、前記食後所定時間内に飲水または発汗した前記被測定者の前記尿を受け付けて前記食後尿糖値を測定する請求項1に記載の血糖値測定装置。
【請求項3】
前記食後尿糖値と前記食後平均血糖値とが対応づけられた検量データが記憶された記憶部を更に備えるとともに、
前記処理部が、前記食後所定時間内に飲水もしくは発汗した前記被測定者の前記尿より測定された前記食後尿糖値、ならびに、前記食後所定時間内に飲水および発汗していない前記被測定者の前記尿より測定された前記食後尿糖値に対して、共通の前記検量データを用いて前記食後平均血糖値を算出することを特徴とする請求項2に記載の血糖値測定装置。
【請求項4】
前記被測定者の性別を示す性別情報、前記被測定者のヘモグロビンA1cの血中濃度を示す血液情報、または前記被測定者に関する前記食後尿糖値から前記食後平均血糖値への換算比率の大小を示す比率情報のうち少なくとも一つの情報の入力を受け付ける入力部を更に備え、
前記処理部が、測定された前記食後尿糖値と、入力された前記性別情報、前記血液情報または前記比率情報と、に基づいて前記食後平均血糖値を算出することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の血糖値測定装置。
【請求項5】
前記入力部が、大小二通りのいずれかより選択された前記比率情報の入力を受け付ける請求項4に記載の血糖値測定装置。
【請求項6】
複数人のサンプル提供者から、食後所定時間が経過した時点の食後尿糖値と、食後平均血糖値との関係を示す検量データを取得するサンプル取得工程と、
被測定者から、前記食後所定時間が経過した時点の食後尿糖値を測定する測定工程と、
測定された前記食後尿糖値と前記検量データとから、前記被測定者の食後平均血糖値を推定する推定工程と、
を含む食後平均血糖値の測定方法。
【請求項7】
前記サンプル取得工程において、所定の腎糖排泄閾値を超える食後血糖値の曲線下面積と前記食後尿糖値との相関関係を示すサンプルデータを前記サンプル提供者ごとに取得するとともに、取得された複数の前記サンプルデータを統計解析して前記検量データを算出することを特徴とする請求項6に記載の食後平均血糖値の測定方法。
【請求項8】
統計解析して算出された前記検量データが、下式(1);
食後平均血糖値=回帰係数×食後尿糖値+閾値 (1)
で表される検量線を示すことを特徴とする請求項7に記載の食後平均血糖値の測定方法。
【請求項9】
前記被測定者が男性であって、該被測定者のヘモグロビンA1cの血中濃度が9.0%未満の場合、前記閾値を前記腎糖排泄閾値とし、かつ、前記回帰係数を2×10-2とし、
前記被測定者が女性であって、該被測定者のヘモグロビンA1cの血中濃度が7.5%未満の場合、前記閾値を前記腎糖排泄閾値とし、かつ、前記回帰係数を4×10-2とすることを特徴とする請求項8に記載の食後平均血糖値の測定方法。
【請求項10】
前記サンプル取得工程において、前記サンプル提供者から取得した前記サンプルデータを複数の群に分類し、各群に属する前記サンプルデータよりそれぞれ前記検量データを算出する請求項7から9のいずれかに記載の食後平均血糖値の測定方法であって、
前記被測定者に関する前記サンプルデータを取得する予備工程を更に含み、かつ、
前記推定工程において、前記予備工程で取得した前記被測定者の前記サンプルデータが属する前記群を判定するとともに、判定された前記群に対応する前記検量データと、前記測定工程で測定された前記食後尿糖値とから、前記被測定者の食後平均血糖値を推定することを特徴とする食後平均血糖値の測定方法。
【請求項11】
前記サンプル提供者および前記被測定者が、ヘモグロビンA1cの血中濃度が9.0%未満の男性である請求項10に記載の食後平均血糖値の測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−281884(P2009−281884A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134584(P2008−134584)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年4月25日 社団法人日本糖尿病学会発行の「糖尿病 Vol.51 Supplement1 2008」に発表
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年4月25日 社団法人日本糖尿病学会発行の「糖尿病 Vol.51 Supplement1 2008」に発表
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)
【Fターム(参考)】
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