説明

行動域推定装置、方法及びプログラム

【課題】場所に対するユーザの馴染みの度合いをより正確に判定できるようにし、これによりユーザの行動域をより的確に推定できるようにする。
【解決手段】過去の所定期間におけるユーザの位置データを記憶しておき、この位置データをもとにユーザが一定時間以上滞在している滞留地を抽出する。次にこの滞留地の各々について滞留時間長と最終滞在時刻からの経過時間をもとに当該滞留地に対するユーザの記憶の強さ値を算出し、この記憶の強さを示す値をもとに行動拠点であるか否かを判定する。そして、この行動拠点とその他の滞留地との間に接続経路を設定し、上記位置データをもとに当該接続経路におけるユーザの通過頻度と平均通過速度を算出して、その算出結果をもとに当該接続経路及び当該接続経路上に存在する滞留地に対するユーザの馴染み度を算出する。そして、この算出された馴染み度をもとにユーザの行動域を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、場所に対するユーザの馴染みの度合いをもとに当該ユーザの行動域を推定する行動域推定装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
レコメンドサービスを実施する際に、場所に対するユーザの馴染みの度合いを考慮することは、ユーザに対しより適切な情報を提供する上できわめて重要である。例えば、ユーザに新規店舗のお知らせや割引クーポンの配布といったサービスを提供する場合、ユーザにとって「馴染み」の高い場所にできた店舗や「馴染み」のある店舗のクーポンが配布される方が、ユーザの来店意欲が高まることが期待される。また、逆にユーザにとって「馴染み」が低い場所に関するレコメンドを行うことで、ユーザにとって新規性のある情報を提供することも可能になる。
【0003】
自宅等の生活拠点となる場所に対する「馴染み」の度合いが高いことはもちろんであるが、頻繁に買い物に行く場所等のように目的地となる回数が多い場所や、それらの場所に向かう移動経路もその移動手段によっては「馴染み」の度合いが高い場所となりうる。例えば、自宅から近くのコンビニエンスストアに徒歩で買い物に行く場合、自宅近辺やコンビニエンスストア近辺の「馴染み」の度合いだけでなく、自宅とコンビニエンスストアとの間を往復する際に通る経路も、ユーザにとっては「馴染み」の度合いが高いと考えられる。
【0004】
ところで、場所に対するユーザの「馴染み」の度合いを算出するための研究として、従来では位置情報を用いてユーザの行動範囲を推定することで地理的な「生活圏」を推定する手法が提案されている。この手法は、ユーザがレビュー対象とする飲食店の位置情報(緯度・経度)をクラスタリングし、一定数以上の要素が含まれるクラスタの重心を中心とする円で囲われる範囲をユーザの地理的な行動範囲、つまり生活圏とするものである(例えば非特許文献1を参照)。
【0005】
また、ユーザの地域に対する認知度を推定する手法としては、以下のようなものが知られている。すなわちこの手法は、先ずマーキングマップを利用してユーザの地域に対する空間認知を推定する。そして、ユーザが記述したマークから地域におけるユーザの認知する場所を観測し、頻繁に通る経路からの距離に基づいてユーザの認知範囲を決定するものである(例えば非特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】小林卓弥、大島裕明、小山聡、田中克己、“レビュアーの生活圏の特定に基づくCGM評判情報評価”、情報処理学会研究報告、IPSJSIGNotes2007(36),pp.211-216,2007.
【非特許文献2】田中辰弥、竹内亨、鎌倉涼三、下條真司、宮原秀夫、“マーキングマップによる空間認知に基づいた地域情報推薦手法”、電子情報通信学会第14回データエ学ワークショップ(DEWS2003)論文集、Mar,2003.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記従来の手法には以下のような解決すべき課題があった。
先ず、非特許文献1に記載された手法では、抽出された複数の位置情報が集中する重心から範囲が設定される。このため、周囲に店舗が少ない場合や、ある特定の店舗のみに高頻度で滞在する場合等には適用できない。また、個々の滞留地における滞在頻度の高さや滞留地の密集度だけでは、本来であれば生活圏として馴染みがある場所であるにもかかわらず、長時間滞在する滞在地が遠距離に点在する場合には範囲を定めることができない。さらに、近距離の範囲内に存在しない複数の各滞在地間を行動範囲として関連付けることができない。
【0008】
一方、非特許文献2に記載された手法では、認知の有無とその位置情報のみにより認知範囲が決定されるため、長期的なユーザの滞在頻度に基づく認知の程度、つまりユーザがどの程度の馴染みの強さを持っているかを判別することができない。また、マーキングマップによる空間認知の推定では、ユーザが徒歩で歩く経路や電車で通過する経路といった移動手段については考慮されていない。このため、例えば電車で通過するだけでは一般に馴染みが高いとは云えないにもかかわらず、頻繁に通る場所というだけで無条件に馴染みが高いと判定されてしまう。
【0009】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、場所に対するユーザの馴染みの度合いをより正確に判定できるようにし、これによりユーザの行動域をより的確に推定できるようにした行動域推定装置、方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためにこの発明の1つの観点は、過去の所定期間におけるユーザの位置とその時刻を含む位置データを記憶しておき、この記憶された位置データをもとにユーザが一定時間以上滞在している地点を滞留地として抽出する。次に、上記抽出された滞留地の各々について滞留時間の長さと滞留時刻の新しさを求めて、その結果をもとに当該滞留地に対するユーザの記憶の強さを示す値を算出し、この算出された記憶の強さを示す値をもとに当該滞留地がユーザの行動拠点であるか否かを判定する。そして、この行動拠点と判定された滞留地とその他の滞留地との間に接続経路を定義し、上記記憶された位置データをもとに当該接続経路におけるユーザの通過実績を表す値を算出して、その算出結果をもとに当該接続経路及び当該接続経路上に存在する滞留地に対する前記ユーザの馴染みの度合いを算出し、この算出された馴染みの度合いをもとにユーザの行動域を判定するようにしたものである。
【0011】
すなわち、位置データをもとに抽出されたユーザの滞留地の中から、当該滞留地に対するユーザの記憶の強さを示す値をもとにユーザの行動拠点を特定し、この特定された行動拠点と他の滞留地との間を接続する経路におけるユーザの通過実績をもとに当該接続経路及び経路上の滞留地に対するユーザの馴染みの度合いを算出することで、行動拠点を中心としかつユーザにとって馴染みのあるエリアをユーザの行動域として決定するようにしている。
【0012】
したがって、周囲に店舗が少ない場合や、ある特定の店舗のみに高頻度で滞在する場合であっても、また本来であれば生活圏であるにもかかわらず長時間滞在する滞在地が遠距離に点在する場合であっても、行動拠点を基点とする接続経路と当該経路上に存在する滞留地に対するユーザの馴染みの度合いをもとに、当該ユーザの行動域を的確に特定することが可能となる。
【0013】
また、この発明の1つの観点は以下のような態様を備えることを特徴とする。
第1の態様は、滞留地に対するユーザの記憶の強さを示す値を算出する際に、抽出された滞留地の各々について、位置データを用いた統計処理により当該滞留地における総滞留時間長及び最終滞留時刻からの経過時間を算出し、総滞留時間長が長いほど値が大きくなりかつ最終滞留時刻からの経過時間が短いほど値が大きくなる式を用いるものである。
このようにすると、滞留地に対するユーザの記憶の強さを示す値は、当該滞留地における総滞留時間長だけでなく最後に滞留した時期も考慮して算出されるので、例えば引っ越し等により行動域が遷移した場合でも、新たな行動域を的確に特定することができる。
【0014】
第2の態様は、馴染みの度合いを算出する際に、接続経路におけるユーザの通過実績を表す値として、位置データを用いた統計処理により通過頻度及び平均通過速度を算出する。そして、この算出された平均通過速度をもとにユーザが低速移動手段と高速移動手段のいずれを使用しているかを判定し、低速移動手段を使用していると判定された場合にはその速度が遅くかつ上記算出された通過頻度が高いほど馴染みの度合いを高く設定し、高速移動手段を使用していると判定された場合には上記算出された通過頻度にかかわらず馴染みの度合いを低く設定するようにしたものである。
【0015】
このようにすると、滞留地におけるユーザの通過頻度だけでなく、ユーザが徒歩や自転車等の低速移動手段を使用しているか、或いは電車やバス、自家用車等の高速移動手段を使用しているかを考慮した上で馴染みの度合いが求められる。一般に、ユーザの移動経路や滞留地に対する馴染み度は、電車等の高速移動手段を使用する場合より徒歩等の低速移動手段を利用する場合の方が高くなる傾向がある。したがって、上記したように移動手段が低速であるか高速であるかを考慮して馴染みの度合いを設定することで、より現実に即した行動域の推定が可能となる。
【0016】
第3の態様は、馴染みの度合いを算出する際に、接続経路におけるユーザの通過実績を表す値として、上記記憶された位置データに対する統計処理により滞留地におけるユーザの通過の周期性を表す情報をさらに検出し、この検出された通過の周期性が高いほど当該各滞留地に対するユーザの馴染みの度合いを高く設定するものである。
【0017】
一般に、ユーザがストアや飲食店等の店舗を利用する場合、馴染みの度合いが高い店舗ほどリピータとなって定期的に通う傾向性が高い。したがって、上記したように滞留地に対するユーザの通過の周期性をさらに考慮することで、馴染み度の算出精度をさらに高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
すなわちこの発明によれば、場所に対するユーザの馴染みの度合いをより正確に判定できるようになり、これによりユーザの行動域をより的確に推定することが可能な行動域推定装置、方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の第1の実施形態に係わる行動域推定装置の構成を示すブロック図。
【図2】図1に示した行動域推定装置が備える読込みデータ処理ユニットの構成を示すブロック図。
【図3】図1に示した行動域推定装置が備える行動域判定実行ユニットの構成を示すブロック図。
【図4】図1に示した行動域推定装置が備える行動域判定実行ユニットの構成を示すブロック図。
【図5】図1に示した行動域推定装置が備える行動域判定実行ユニットの構成を示すブロック図。
【図6】図2に示した読込みデータ処理ユニットの処理手順と処理内容を示すフローチャート。
【図7】図3乃至図5に示した行動域判定実行ユニットの処理手順と処理内容を示すフローチャート。
【図8】図1に示した行動域推定装置が備える緯度・経度・速度データベースに蓄積されるデータの一例を示す図。
【図9】図1に示した行動域推定装置が備える緯度・経度/住所情報データベースに蓄積されるデータの一例を示す図。
【図10】図2に示した読込みデータ処理ユニット21が備える同一滞在時間長/住所情報算出部により算出された滞在住所情報の一例を示す図。
【図11】図1に示した行動域推定装置が備える住所情報/ランドマーク名データベースに蓄積されるデータの一例を示す図。
【図12】図2に示した読込みデータ処理ユニット21が備える滞留有無判定部により滞留地と判定された情報の一例を示す図。
【図13】図2に示した読込みデータ処理ユニット21が備える滞留地間速度算出部の処理内容を説明するための図。
【図14】図2に示した読込みデータ処理ユニット21が備える滞留有無判定部の処理結果の一例を示す図。
【図15】図2に示した読込みデータ処理ユニット21が備える滞留地間速度算出部の処理結果の一例を示す図。
【図16】接続経路の具体例を示す図。
【図17】場所の分類結果の一例を示す図。
【図18】図5に示した行動域判定実行ユニットが備える馴染み度算出部により算出された馴染み度の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
図1は、この発明の第1の実施形態に係わる行動域推定装置の全体構成を示すブロック図である。
この行動域推定装置は、例えば通信事業者又はサービス提供事業者が運用するWebサーバにより構成され、通信インタフェースユニット10と、制御ユニット20と、記憶ユニット30を備えている。
【0021】
通信インタフェースユニット10は、制御ユニット20の制御の下で、通信ネットワークを介して図示しないユーザ端末からユーザの位置データを受信する機能と、制御ユニット20から出力された行動域の判定結果を表す情報を図示しない情報配信サーバ等へ送信する機能を有する。なお、通信ネットワークは、例えばインターネットに代表されるIP(Internet Protocol)網と、このIP網に対しアクセスするための複数のアクセス網とから構成される。アクセス網としては、例えばLAN(Local Area Network)、無線LAN、携帯電話網、有線電話網、CATV(Cable Television)網が用いられる。
【0022】
記憶ユニット30は、記憶媒体としてHDD又はSDD等の不揮発性メモリを使用したもので、この発明を実施するために必要な記憶エリアとして、緯度・経度・速度データベース31と、緯度・経度/住所情報データベース32と、住所情報/ランドマーク名データベース33を備えている。
【0023】
緯度・経度・速度データベース31は、ユーザ端末から取得したユーザの位置データを、その取得時刻と関連付けて記憶するために用いられる。位置データは、ユーザ端末において例えばGPS(Global Positioning System)センサにより一定の時間間隔で計測されるもので、緯度、経度及び速度を表すデータを含んでいる。図8にこの緯度・経度・速度データベース31に記憶された位置データの一例を示す。
【0024】
緯度・経度/住所情報データベース32には、サービスエリア内の緯度・経度に関連付けて当該緯度・経度に対応する住所情報が記憶されている。図9はこの緯度・経度/住所情報データベース32に記憶されたデータの一例を示すもので、住所は「県」、「区・市町村」、「地名」、「番地」により表される。
【0025】
住所情報/ランドマーク名データベース33は、後述する同一滞在時間長/住所情報算出部213により算出された滞在住所情報をランドマーク名に変換したデータを記憶するために用いられる。図11はその一例を示すもので、滞在時間に対応付けてその滞在地の住所に存在するランドマーク名が記憶される。なお、該当するランドマークが存在しない場合には住所情報がそのまま記憶される。
【0026】
制御ユニット20は、例えばCPU(Central Processing Unit)を備え、この発明を実施するために必要な制御機能として、読込みデータ処理ユニット21と、行動域判定実行ユニット22を備えている。なお、これらの処理ユニットはいずれも、記憶ユニット30内のプログラムメモリ(図示せず)に格納されたプログラムを上記CPUに実行させることにより実現される。
【0027】
読込みデータ処理ユニット21は、上記緯度・経度・速度データベース31から読み込んだ位置データ(取得時刻を含む)をもとに、ユーザが過去に一定時間以上滞留した実績がある滞留地を抽出するもので、以下のように構成される。図2はその機能構成を示すブロック図である。
【0028】
すなわち、読込みデータ処理ユニット21は、緯度・経度・速度情報読込部211と、緯度・経度/住所変換部212と、同一滞在時間長/住所情報算出部213と、住所情報/ランドマーク名変換部214と、滞留有無判定部215と、滞留地間速度算出部216を有している。
【0029】
緯度・経度・速度情報読込部211は、行動域推定処理に先立ちオペレータにより入力された行動域推定対象期間の指定情報に従い、緯度・経度・速度データベース31に蓄積された位置データの中から、取得時刻が上記指定期間に含まれる位置データを読み込む処理を行う。
【0030】
緯度・経度/住所変換部212は、上記緯度・経度・速度情報読込部211により読み込まれた位置データに含まれる緯度・経度データをもとに、緯度・経度/住所情報データベース32から当該緯度・経度に対応する住所情報(都道府県名/区/市町村名/地名/番地)を読み出す処理を行う。
【0031】
同一滞在時間長/住所情報算出部213は、上記緯度・経度/住所変換部212により変換された県/市町村/地名/番地で示される住所情報を用い、同一の住所に連続して滞在した時間の長さ(滞在時間長)を算出する処理を行う。
【0032】
住所情報/ランドマーク名変換部214は、上記同一滞在時間長/住所情報算出部213により求められた各住所情報を、図示しない変換テーブルを検索することで当該住所に存在するランドマーク名に変換し、この変換後の情報を住所情報/ランドマーク名データベース33に記憶させる処理を行う。なお、該当するランドマーク名が存在しない場合は、ランドマーク名への変換は行わずに住所情報をそのまま記憶させる。
【0033】
滞留有無判定部215は、上記住所情報/ランドマーク名変換部214により変換されたランドマーク名又は住所情報で示される各地点について、上記同一滞在時間長/住所情報算出部213により算出された滞在時間長をもとに、当該地点が滞留した地点であるか短時間で通過した地点であるかを判定する。具体的には、上記滞在時間長を予め設定した閾値と比較し、滞在時間長が閾値以上の場合にその地点を“滞留地”であると判定する。
【0034】
また滞留有無判定部215は、上記“滞留地”であると判定された各地点を表す情報に、その滞留日時、行動域推定対象期間における総滞留時間長、総滞留回数という情報を付加する。さらに、上記滞留地の次に滞留したと判定された地点(以後接続地と称する)を表す情報と、滞留地から当該接続地への接続回数と、接続頻度を表す情報を付加する。なお、ある滞留地とその次に滞留した地点とのつながりを接続と呼ぶ。
【0035】
滞留地間速度算出部216は、上記滞留有無判定部215により“滞留地”であると判定された各地点間に移動経路を定義し、この移動経路上の各地点での平均通過速度を算出する処理を行う。この平均通過速度の算出は、緯度・経度・速度データベース31から読み込んだ滞留地における速度情報をもとに行われる。
【0036】
一方、行動域判定実行ユニット22は、上記読込みデータ処理ユニット21により算出された情報をもとに行動拠点の判定、移動手段の判定、馴染み度の算出及び行動域の判定を行うもので、以下のように構成される。図3乃至図5はその機能構成を処理手順を考慮して示すブロック図である。
【0037】
すなわち、行動域判定実行ユニット22は、拠点判定部221と、接続地判定部222と、記憶の強さ算出部223と、移動手段地判定部224と、馴染み度算出部225と、行動域判定部226を有している。
【0038】
先ず、記憶の強さ算出部223は、上記滞留有無判定部215により“滞留地”であると判定された各地点に関する各情報、つまり上記滞留有無判定部215により各滞留地を表す情報に付加された総滞留時間長及び総滞留回数と、行動域推定対象期間内において最も直近にユーザが滞留した日時情報及び判定期間の最も直近の日時情報を受け取り、この受け取った各情報をもとに“滞留地”であると判定された各地点に対するユーザの“記憶の強さ値”を算出する処理を行う。
【0039】
拠点判定部221は、上記“滞留地”であると判定された各地点について、上記記憶の強さ算出部223により算出された“記憶の強さ値”を閾値と比較し、“記憶の強さ値”が閾値以上の地点を行動域に含めるための行動拠点と判定する処理を行う。閾値は、例えばすべての地点について算出された“記憶の強さ値”の平均値に設定する。
【0040】
接続地判定部222は、上記拠点判定部221により行動拠点と判定された滞留地に対し接続地となっている複数の滞留地の中から、その接続頻度をもとに接続地を判定する。ここで、接続地の接続頻度とは、当該接続地の接続回数及び当該滞留地の接続回数の総和により求めた値とする。接続頻度が閾値以上の接続地を行動域に含める接続地として判定する。
【0041】
移動手段地判定部224は、上記滞留地間速度算出部216において算出された滞留地間の接続経路上の各地点に対応する緯度・経度データとその平均通過速度情報をもとに、上記行動拠点と各接続地を結ぶ接続経路上の各地点における“移動手段値”を算出する処理を行う。判定の基準として、徒歩や自転車といった低速度での移動であるほど該当地点において馴染みがあるとみなし、そのような移動手段に依存した馴染みの度合いを“移動手段値”とする。
【0042】
馴染み度算出部225は、行動拠点と各接続地を結ぶ接続経路上の各地点について、上記滞留有無判定部215により求められた接続頻度と、上記記憶の強さ算出部223により算出された“記憶の強さ値”と、上記移動手段地判定部224により算出された“移動手段値”とをもとに、当該行動拠点と接続地を結ぶ接続経路上の各地点における“馴染み度”を算出する処理を行う。接続頻度は、複数の接続経路が存在する場合には、該当地点が含まれる接続経路の頻度のみの合計値とする。
【0043】
行動域判定部226は、上記馴染み度算出部225により算出された“馴染み度”に基づいてユーザの行動域を決定する。その決定方法としては、例えば算出された“馴染み度”の最大値を基準(最も馴染みがある場所)として、その80%程度の“馴染み度”を持つ範囲を行動域とするものや、算出された“馴染み度”の平均値を超える範囲等をユーザにとって馴染みのある行動域とする方法が考えられる。
【0044】
次に、以上のように構成された行動域推定装置による行動域推定動作を説明する。
(1)滞留地の判定及び滞留地間の平均通過速度の算出
滞留地の判定処理、及び滞留地間の平均通過速度の算出処理は、以下のように行われる。図6はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
推定処理に先立ちオペレータが端末により行動域推定対象期間(判定期間)の指定情報を入力すると、制御ユニット20はステップS11により図示しないユーザインタフェースを介して上記指定情報を受信し保存する。
【0045】
上記指定情報を受付けると、先ずステップS12により緯度・経度・速度情報読込部211の制御の下で、上記入力された行動域推定対象期間の指定情報に従い、図8に示した緯度・経度・速度データベース31に蓄積された位置データの中から取得時刻が上記判定期間に含まれる位置データが制御ユニット20に読み込まれる。
【0046】
続いて、ステップS13により緯度・経度/住所変換部212の制御の下で、上記緯度・経度・速度情報読込部211により読み込まれた位置データに含まれる緯度・経度データをもとに、図9に示した緯度・経度/住所情報データベース32から当該緯度・経度に対応する住所情報(都道府県名/区/市町村名/地名/番地)が読み出される。すなわち、緯度・経度データが住所情報に変換される。
【0047】
次に、ステップS14において同一滞在時間長/住所情報算出部213が起動され、この同一滞在時間長/住所情報算出部213の制御の下で、上記緯度・経度/住所変換部212により変換された県/市町村/地名/番地で示される住所情報を用いて、同一の住所に連続して滞在した時間の長さ(滞在時間長)が算出される。図10はこの同一滞在時間長/住所情報算出部213により算出された滞在時間長を表す情報の一例を示すもので、滞在場所の住所情報と関連付けて記憶ユニット30内に一時保存される。
【0048】
続いて、ステップS15により住所情報/ランドマーク名変換部214の制御の下で、上記同一滞在時間長/住所情報算出部213により求められた各住所情報が、図示しない変換テーブルを検索することで当該住所に存在するランドマーク名に変換され、この変換後の情報が住所情報/ランドマーク名データベース33に記憶される。なお、該当するランドマーク名が存在しない場合には、ランドマーク名への変換は行われずに住所情報がそのまま記憶される。図11はこのようにして住所情報/ランドマーク名データベース33に記憶された情報の一例を示すもので、滞在時間長に対しランドマーク名又は住所情報が関連付けられている。
【0049】
次に、ステップS16により滞留有無判定部215の制御の下で、上記住所情報/ランドマーク名変換部214により変換されたランドマーク名又は住所情報で示される各地点について、上記同一滞在時間長/住所情報算出部213により算出された滞在時間長が予め設定した閾値と比較される。そして、滞在時間長が閾値以上の場合に、その地点は“滞留地”であると判定される。例えば、閾値を1時間に設定すると、滞在時間長がこの1時間以上の地点が滞留地と判定される。図12はその判定結果の一例を示すもので、実線で囲った地点が滞留地として判定された地点である。
【0050】
さらにステップS16では、上記“滞留地”であると判定された各地点を表す情報に、その滞留日時、行動域推定対象期間における総滞留時間長、総滞留回数という情報が付加される。また、上記滞留地の次に滞留したと判定された接続地を表す情報と、滞留地から当該接続地への接続回数と、接続頻度を表す情報も付加される。図14は滞留有無判定部215により得られた処理結果の一例を示す図である。
【0051】
続いて、ステップS17において滞留地間速度算出部216が起動され、この滞留地間速度算出部216の制御の下で、上記滞留有無判定部215により“滞留地”であると判定された各地点間の移動経路上の各地点での平均通過速度が算出される。この平均通過速度の算出は、緯度・経度・速度データベース31から読み込んだ滞留地における速度情報をもとに行われる。
【0052】
例えば、いま図13に示すように、自宅(滞留地)から品川(接続地)への接続経路上に存在する各地点での平均通過速度を算出するものとする。この場合、先ず接続経路を通過する日時を直前の滞留地の滞留終了時刻から接続地における滞留開始時刻とする。次に、緯度・経度・速度データベース31から、各地点の通過日時に対応する緯度・経度・速度情報を読み込む。同様の処理を全ての滞留地間の接続経路に対して行う。そして、上記読み込んだ速度情報をもとに各地点における平均通過速度を算出する。
【0053】
その際、頻繁に通る経路上の地点のように、同一の地点を複数回通過する地点については、以下の式(1) により地点pにおける平均通過速度を算出する。
【数1】

hj ;場所pをj回目に通過した際の速度
m;(場所pを通過した回数)−(速度が一定閾値以上である回数)
j;変数
ただし、徒歩や自転車といった低速度で通過する地点は馴染みが高いものとし、車や電車などにより高速で通過する地点については場所に対する馴染みへは影響しないものとして除外する。なお、低速であるか高速であるかは、例えば閾値を30km/hに設定し、平均通過速度がこの閾値以上であるか否かにより判定される。
【0054】
上記ステップS16により判定された滞留地、接続地及びその接続経路上の各地点の緯度・経度・平均通過速度、行動域推定対象期間において当該接続経路を通った最も直近の日時情報を図15に示す。なお、接続経路が複数存在する場合には、接続経路、最新接続日時情報も複数作成される。
【0055】
(2)馴染み度の算出と行動域の判定
次に制御ユニット20は、行動域判定実行ユニット22の制御の下で、滞留地及び滞留地間の経路に対する馴染み度の算出処理と行動域の判定処理を以下のように実行する。図7はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【0056】
先ずステップS18において記憶の強さ算出部223が起動され、上記滞留有無判定部215により“滞留地”であると判定された各地点に関する各情報、つまり上記滞留有無判定部215により各滞留地を表す情報に付加された総滞留時間長及び総滞留回数と、行動域推定対象期間内において最も直近にユーザが滞留した日時情報及び判定期間の最も直近の日時情報をもとに“滞留地”であると判定された各地点に対するユーザの“記憶の強さ値”が算出される。
【0057】
一般に、地点に対する記憶は時間と共に指数関数的に減少するが、滞在を繰り返すごとに記憶に強く残るようになるため、その減少量は緩やかとなる。そこで、総滞留時間長が長くなるほど記憶の減少量が緩やかになり、最終滞在時からの時間の経過が少ないほど記憶に強く残っていることを示すように、日時の変化量に対する記憶の強さの値を以下の式(2) によって定義する。
【数2】

αi ;滞留地iにおける総滞留時間長
βi ;滞留地iにおける総滞留回数
λ;記憶の減少率(定数)
xi ;(判定期間内で最も直近の日時)−(判定期間内で最も直近に滞留地iに滞留した日時)
Ki ;滞留地iに関する“記憶の強さ値”
【0058】
次に、ステップS19により拠点判定部221が起動され、この拠点判定部221の制御の下で、上記“滞留地”と判定された各地点について、上記記憶の強さ算出部223により算出された記憶の強さ値Ki が閾値と比較され、記憶の強さ値Ki が閾値以上の地点が行動域に含めるための行動拠点と判定される。
【0059】
例えば、算出された全ての記憶の強さ値Ki の平均値が下記の式(3) により算出され、この算出された平均値Mが閾値として設定される。そして、この閾値以上の記憶の強さ値Ki値を持つ滞留地が行動拠点と判定される。
【数3】

M;“記憶の強さ値”の平均値
n;滞留地数
【0060】
続いて、ステップS20により接続地判定部222の制御の下で、上記拠点判定部221により行動拠点と判定された滞留地に対し接続地となっている複数の滞留地の中から、その接続頻度をもとに接続地が判定される。
ここで、各接続地の接続頻度とは、該当接続地の接続回数及び該当滞留地の接続回数の総和により求めた値とする。接続頻度が閾値以上、例えば行動拠点と判定された滞留地当たりの接続頻度が0.1以上の接続地が行動域に含める接続地と判定される。滞留地、行動拠点、接続地の分類をまとめた具体例を図17に示す。
【0061】
次に、ステップS21において移動手段地判定部224が起動され、この移動手段地判定部224の制御の下で、上記滞留地間速度算出部216において算出された滞留地間の接続経路上の各地点に対応する緯度・経度データとその平均通過速度情報をもとに、上記行動拠点と各接続地を結ぶ接続経路上の各地点における“移動手段値”が算出される。この“移動手段値”の算出には、式(4) が用いられる。判定の基準として、徒歩や自転車といった低速度での移動であるほど該当地点において馴染みがあるとみなし、そのような移動手段に依存した馴染みの度合いを“移動手段値”とする。
【数4】

a;歩行速度(定数)
b;自動車の速度(定数)
xj ;場所jにおける平均通過速度
yj ;場所jにおける“移動手段値”(馴染みの大きさに比例した値)
【0062】
続いて、ステップS22により記憶の強さ算出部223が再度起動され、この記憶の強さ算出部223の制御の下で、上記行動拠点と各接続地とを結ぶ接続経路上の各地点に対するユーザの“記憶の強さ値”が以下のように算出される。すなわち、ステップS17において得られた、該当地点を含む接続経路の接続回数、最も直近の接続日時情報、行動域推定対象期間内における最も直近の日時情報に基づいて、先に述べたステップS18の処理と同様に、式(2) に従い記憶の強さ値Ki が算出される。
【0063】
次に、ステップS23において馴染み度算出部225が起動され、この馴染み度算出部225の制御の下で、行動拠点と各接続地を結ぶ接続経路上の各地点について、上記滞留有無判定部215により求められた接続頻度と、上記記憶の強さ算出部223により算出された“記憶の強さ値”と、上記移動手段地判定部224により算出された“移動手段値”とをもとに、当該行動拠点と接続地を結ぶ接続経路上の各地点における“馴染み度”が算出される。
【0064】
“馴染み度”は下記の式(5) により算出される。
Familiarj=Kj ・Yj ・Fj (5)
familiarj ;場所jにおける“馴染み度”
Kj ;場所jにおける“記憶の強さ値”
Yj ;場所jにおける“移動手段値”(馴染みの大きさに比例した値)
Fj ;場所jにおける接続頻度
【0065】
接続頻度は、例えば図16に示すように複数の接続経路が存在する場合には、該当地点が含まれる接続経路の頻度のみの合計値が接続頻度となる。例えば、図17において横須賀中央駅から△○デパートまでの接続回数は3回であるが、該当地点が経路L1にのみ含まれる場合は、接続頻度は0.05・1/3となる。
【0066】
次に、ステップS24において行動域判定部226が起動され、この行動域判定部226の制御の下で、上記馴染み度算出部225により算出された“馴染み度”に基づいてユーザの行動域が決定される。その決定方法としては、例えば算出された“馴染み度”の最大値を基準(最も馴染みがある場所)として、その80%程度の“馴染み度”を持つ範囲を行動域とするものや、算出された“馴染み度”の平均値を超える範囲等をユーザにとって馴染みのある行動域とする方法が考えられる。
【0067】
図18に示す例は、算出された馴染み度を網掛けの濃度を異ならせて表したものである。バスや電車により移動した経路Lbは薄く、毎日自宅から最寄り駅まで徒歩又は自転車で往復する経路Laや自宅とコンビニエンスストアとの間の経路Lcは濃くなっており、ランドマークと経路に基づいてユーザにとって馴染みのある範囲が示される。
【0068】
なお、以上のようにして得られた行動域を表す情報は、通信インタフェースユニット10から情報配信サーバなどに送信される。情報配信サーバは、上記行動域を表す情報を参考に該当ユーザ向けの店舗情報等を選択し、この選択された店舗情報等を該当ユーザの端末へ送信する。
【0069】
以上詳述したように第1の実施形態では、過去の所定期間におけるユーザの緯度・経度・速度のデータを緯度・経度・速度データベース31に記憶しておき、この記憶された緯度・経度・速度のデータをもとに、滞留有無判定部215によりユーザが一定時間以上滞在している地点を滞留地として抽出する。次に、上記抽出された滞留地の各々について滞留時間長と最終滞在時刻からの経過時間をもとに、記憶の強さ算出部223により当該滞留地に対するユーザの記憶の強さ値を算出し、この算出された記憶の強さを示す値をもとに、拠点判定部221により当該滞留地がユーザの行動拠点であるか否かを判定する。そして、この行動拠点と判定された滞留地とその他の滞留地との間に接続経路を設定し、上記記憶された位置データをもとに当該接続経路におけるユーザの通過頻度と平均通過速度を算出して、その算出結果をもとに当該接続経路及び当該接続経路上に存在する滞留地に対する前記ユーザの馴染み度を馴染み度算出部225により算出する。そして、この算出された馴染み度をもとに、行動域判定部226によりユーザの行動域を判定するようにしている。
【0070】
したがって、周囲に店舗が少ない場合や、ある特定の店舗のみに高頻度で滞在する場合であっても、また本来であれば生活圏であるにもかかわらず長時間滞在する滞在地が遠距離に点在する場合であっても、行動拠点を基点とする接続経路と当該経路上に存在する滞留地に対するユーザの馴染みの度合いをもとに、当該ユーザの行動域を的確に特定することが可能となる。
【0071】
また、馴染み度を算出する際に、算出された平均通過速度をもとにユーザが低速移動手段と高速移動手段のいずれを使用しているかを判定し、低速移動手段を使用していると判定された場合にはその速度が遅くかつ上記算出された通過頻度が高いほど馴染みの度合いを高く設定し、高速移動手段を使用していると判定された場合には上記算出された通過頻度にかかわらず馴染みの度合いを低く設定するようにしている。
【0072】
このため、滞留地におけるユーザの通過頻度だけでなく、ユーザが徒歩や自転車等の低速移動手段を使用しているか、或いは電車やバス、自家用車等の高速移動手段を使用しているかを考慮した上で馴染み度が求められる。したがって、移動手段が低速であるか高速であるかを考慮して馴染みの度合いを設定することで、より現実に即した行動域の推定が可能となる。
【0073】
(第2の実施形態)
この発明の第2の実施形態は、馴染みの度合いを算出する際に、接続経路におけるユーザの通過実績を表す値として、上記記憶された位置データに対する統計処理により滞留地におけるユーザの通過の周期性を表す情報をさらに検出し、この検出された通過の周期性が高いほど当該各滞留地に対するユーザの馴染みの度合いを高く設定するようにしたものである。
【0074】
例えば、以下に示すような自己相関関数等を用いて、どの程度定期的に滞留又は通過したかを判定し、定期的であるほど馴染み度が高くなるようにする。
A(t) =v(t) ・v(t+σ) (6)
【数5】

A(t) ;自己相関関数における時間平均をとるための量
v(t) ;定数
Sigma;(次の滞留・通過日時)−(一つ前の滞留・通過日時)
A(t) ̄;自己相関関数により算出された値
T;滞留・通過データの総数
このようにすると、馴染み度の算出精度をさらに高めることができる。
【0075】
(その他の実施形態)
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、ユーザ自身が拠点を表す情報を入力するようにしてもよい。このようにすると図7のステップS18及びステップS19を省略することができる。また、行動拠点及び目的地の判定処理ステップS18〜S20を省略して全ての滞留地及び移動経路についての馴染み度を算出し、行動拠点に依らない形で馴染み度の高い場所を抽出するようにしてもよい。
その他、行動域推定装置の構成やこその処理手順と処理内容等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。
【0076】
要するにこの発明は、上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、各実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0077】
10…通信インタフェースユニット、20…制御ユニット、21…読込みデータ処理ユニット、22…行動域判定実行ユニット、30…記憶ユニット、31…緯度・経度・速度データベース、32…緯度・経度/住所情報データベース、33…住所情報/ランドマーク名データベース、211…緯度・経度・速度情報読込部、212…緯度・経度/住所変換部、213…同一滞在時間長/住所情報算出部、214…住所情報/ランドマーク名変換部、215…滞留有無判定部、216…滞留地間速度算出部、221…拠点判定部、222…接続地判定部、223…記憶の強さ算出部、224…移動手段地判定部、225…馴染み度算出部、226…行動域判定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過去の所定期間におけるユーザの位置とその時刻を表す位置データを記憶する手段と、
前記記憶された位置データをもとに、前記ユーザが一定時間以上滞在している地点を滞留地として抽出する手段と、
前記抽出された滞留地の各々について滞留時間の長さと滞留時刻の新しさを求めて、その結果をもとに当該滞留地に対するユーザの記憶の強さを示す値を算出し、この算出された記憶の強さを示す値をもとに当該滞留地が前記ユーザの行動拠点であるか否かを判定する行動拠点判定手段と、
前記行動拠点と判定された滞留地とその他の滞留地との間の接続経路を定義し、前記位置データをもとに当該接続経路におけるユーザの通過実績を表す値を算出して、その算出結果をもとに当該接続経路及び当該接続経路上に存在する滞留地に対する前記ユーザの馴染みの度合いを算出する馴染み度算出手段と、
前記接続経路及び当該接続経路上に存在する滞留地について算出された馴染みの度合いをもとに、前記ユーザの行動域を判定する行動域判定手段と
を具備することを特徴とする行動域推定装置。
【請求項2】
前記行動拠点判定手段は、前記抽出された滞留地の各々について、前記位置データを用いた統計処理により当該滞留地における総滞留時間長及び最終滞留時刻からの経過時間を算出し、総滞留時間長が長いほど値が大きくなりかつ最終滞留時刻からの経過時間が短いほど値が大きくなる式を用いて、当該滞留地に対するユーザの記憶の強さを示す値を算出することを特徴とする請求項1記載の行動域推定装置。
【請求項3】
前記馴染み度算出手段は、
前記接続経路におけるユーザの通過実績を表す値として、前記位置データを用いた統計処理により通過頻度及び平均通過速度を算出する手段と、
前記算出された平均通過速度をもとに、前記ユーザが低速移動手段と高速移動手段のいずれを使用しているかを判定する手段と、
前記低速移動手段を使用していると判定された場合にはその速度が遅くかつ前記算出された通過頻度が高いほど馴染みの度合いを高く設定し、前記高速移動手段を使用していると判定された場合には前記算出された通過頻度にかかわらず馴染みの度合いを低く設定する手段と
を備えることを特徴とする請求項1記載の行動域推定装置。
【請求項4】
前記馴染み度算出手段は、
前記接続経路におけるユーザの通過実績を表す値として、前記位置データを用いた統計処理により前記接続経路におけるユーザの通過の周期性を検出し、この検出された通過の周期性が高いほど前記接続経路及び当該接続経路上に存在する滞留地に対する前記ユーザの馴染みの度合いを高く設定する手段
を、さらに備えることを特徴とする請求項3記載の行動域推定装置。
【請求項5】
過去の所定期間におけるユーザの位置とその時刻を表す位置データを取得して記憶媒体に記憶させる過程と、
前記記憶された位置データをもとに、前記ユーザが一定時間以上滞在している地点を滞留地として抽出する過程と、
前記抽出された滞留地の各々について滞留時間の長さと滞留時刻の新しさを求めて、その結果をもとに当該滞留地に対するユーザの記憶の強さを示す値を算出し、この算出された記憶の強さを示す値をもとに当該滞留地が前記ユーザの行動拠点であるか否かを判定する過程と、
前記行動拠点と判定された滞留地とその他の滞留地との間の接続経路を定義し、前記位置データをもとに当該接続経路におけるユーザの通過実績を表す値を算出して、その算出結果をもとに当該接続経路及び当該接続経路上に存在する滞留地に対する前記ユーザの馴染みの度合いを算出する過程と、
前記接続経路及び当該接続経路上に存在する滞留地について算出された馴染みの度合いをもとに、前記ユーザの行動域を判定する過程と
を具備することを特徴とする行動域推定方法。
【請求項6】
前記行動拠点であるか否かを判定する過程は、前記抽出された滞留地の各々について、前記位置データを用いた統計処理により当該滞留地における総滞留時間長及び最終滞留時刻からの経過時間を算出し、総滞留時間長が長いほど値が大きくなりかつ最終滞留時刻からの経過時間が短いほど値が大きくなる式を用いて、当該滞留地に対するユーザの記憶の強さを示す値を算出することを特徴とする請求項5記載の行動域推定方法。
【請求項7】
前記馴染みの度合いを算出する過程は、
前記接続経路におけるユーザの通過実績を表す値として、前記位置データを用いた統計処理により通過頻度及び平均通過速度を算出する過程と、
前記算出された平均通過速度をもとに、前記ユーザが低速移動手段と高速移動手段のいずれを使用しているかを判定する過程と、
前記低速移動手段を使用していると判定された場合にはその速度が遅くかつ前記算出された通過頻度が高いほど馴染みの度合いを高く設定し、前記高速移動手段を使用していると判定された場合には前記算出された通過頻度にかかわらず馴染みの度合いを低く設定する過程と
を備えることを特徴とする請求項5記載の行動域推定方法。
【請求項8】
前記馴染みの度合いを算出する過程は、
前記接続経路におけるユーザの通過実績を表す値として、前記位置データを用いた統計処理により前記接続経路におけるユーザの通過の周期性を検出し、この検出された通過の周期性が高いほど前記接続経路及び当該接続経路上に存在する滞留地に対する前記ユーザの馴染みの度合いを高く設定する過程
を、さらに備えることを特徴とする請求項7記載の行動域推定方法。
【請求項9】
請求項5乃至8のいずれかに記載の行動域推定方法が備える各過程において行われる処理をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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